JP2016539240A - インク処方物およびそのフィルム構築物 - Google Patents

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Abstract

間接印刷システムの中間転写成員上への付着およびそこから基板への転写に適したインク処方物。インクは、有機高分子樹脂と着色料とを含む水性インクジェットインクである。このほか、このようなインクによって得られ、印刷基板に固定的に接着された複数の連続インクフィルムを含む、インクフィルム構築物が開示される。インクおよび印刷された構築物は、インクフィルムおよびこれを構成する乾燥インクが、60℃〜87.5℃の第一範囲内の少なくとも1つの第一温度で106cP〜5・107cPの範囲内の第一動的粘度および50℃〜55℃の第二範囲内の少なくとも1つの第二温度で少なくとも6・107cPの第二動的粘度を有するようにしたものである。【選択図】図4A

Description

(本開示の分野および背景)
本発明は、インクジェット印刷システム、より具体的には間接印刷システムに適したインク処方物に関する。このほか、このようなインクを用いて作製されるインクフィルム構築物、例えば印刷基板に接着されるインクドット、より具体的には連続インクドットなどが開示される。
石版印刷は現在、新聞および雑誌の製造に最もよく用いられている工程である。石版印刷は、印刷されるべき画像を保有するプレートの調製を伴い、このプレートは、版胴上に載せられる。版胴上に生成されるインク画像は、ラバーブランケットを有するオフセットシリンダーに転写される。画像は、ブランケットから基板と呼ばれる紙、カードをはじめとする印刷媒体に塗布され、これがオフセットシリンダーと圧胴との間に供給される。実に様々な周知の理由から、オフセット石版印刷は長期印刷実行にのみ適しており、経済的に実行可能である。
最近になって、デジタル印刷技術が開発されてきたが、これは、印刷版を調製する必要なしに、コンピュータから印刷装置に直接指示を受け取らせる。これらの1つが、静電写真法を用いるカラー・レーザ・プリンタである。乾式トナーを用いるカラー・レーザ・プリンタはある特定の用途には適しているが、雑誌のような出版物に許容可能な品質の画像は得られない。
HP−Indigoデジタル印刷機では、短期高品質デジタル印刷の方に適した工程が用いられる。この工程では、レーザ光への曝露により、荷電画像保有シリンダ上に静電画像が生成される。静電電荷は、油性インクを引き付けて、画像保有シリンダ上にカラーインク画像を形成する。次いで、インク画像はブランケットシリンダにより基板上に転写される。このようなシステムの方が高品質デジタル印刷には適しているが、油性インクの使用は環境問題を引き起こしている。
このほか、間接的インクジェット印刷方法を用いる様々な印刷装置がこれまで提案されてきたが、これは、インクジェットプリントヘッドを用いて中間転写成員(画像転写成員またはITMとも呼ばれる)の表面に画像を印刷し、次いでこれを用いて、画像を基板上に転写する。中間転写成員は、本明細書中ではブランケットとも呼ばれる剛性ドラムまたは柔軟性ベルトであり得、ローラ上に誘導される。
間接印刷技術を用いることにより、基板上に直接印刷するインクジェット印刷に伴う多数の問題が克服される。例えば、多孔性紙をはじめとする繊維性材料上に直接印刷するインクジェット印刷は、プリントヘッドと基板表面との間の距離が変動するという理由および基板が芯として作用するという理由から、貧画像品質を生じる。紙などの繊維性基板は一般に、制御方式で液体インクを吸収するよう、あるいは基板の表面下のその浸透を防止するよう工学処理された特別なコーチングを要する。しかし、特別に被覆された基板を用いることは、ある特定の印刷用途には適さない出費のかさむ選択肢である。さらに、被覆基板の使用は、基板の表面が湿ったままであり、のちに基板を取り扱う際に、例えばローラ中に積重されたり、巻き込まれたりして汚損されないようインクを乾燥させるために経費のかかる追加のステップが必要とされるという点で、それ自体の問題を作り出す。さらに、基板の過剰湿潤はコックリングを生じ、基板の両側での印刷(両面印刷とも呼ばれる)が不可能でないにしても、困難なものになる。
他方で、間接技法の使用は、画像転写表面(放出層とも呼ばれる)とインクジェットプリントヘッドとの間の距離を一定に保持させ、インクが基板に塗布される前に画像転写表面で乾燥され得るので、基板の湿潤を低減する。その結果、基板上のインクフィルムの最終画像品質は、基板の物理的特性による影響をあまり受けない。
このような複雑な間接印刷システムは、とりわけインクの処方、それと連動する放出層の組成、インクを付着、乾燥および転写させる温度ならびに乾燥させたインク画像の転写を可能にするために加える圧力を含めた相互に関連する変数が多数組み合わさって作動する。
インク処方物が提案され、それぞれが適用される印刷システムで高い品質を示しているものの、インク射出に適したインク処方物、特に、間接印刷システムの中間転写成員上へのインク射出に適したインク処方物のさらなる改善が依然として必要とされている。ほかにも、高品質のインクフィルム構築物が望まれている。
本発明のいくつかの教示によれば、(a)少なくとも1つの着色料;および(b)少なくとも1つの有機高分子樹脂を含む、インク製品が提供され;このインク製品は、実質的に乾燥した残渣として、(i)60℃〜87.5℃の第一温度範囲の少なくとも一部分にわたって、10cP〜5・10cPの範囲内にある動的粘度;および(ii)50℃〜55℃の第二温度範囲の少なくとも一部分にわたって、少なくとも6・10cPである動的粘度を示す。
本発明の一態様によれば、(a)少なくとも1つの着色料;および(b)少なくとも1つの有機高分子樹脂を含むインク製品が提供され;このインク製品は、実質的に乾燥した残渣として:(i)60℃〜87.5℃、60℃〜100℃、60℃〜105℃または60℃〜110℃の第一温度範囲の少なくとも一部分にわたって、10cP〜5・10cP、8・10cP、1・10cP、2・10cPまたは3・10cPの範囲内にある動的粘度;および(ii)50℃〜55℃第二温度範囲の少なくとも一部分にわたって、少なくとも6・10cPの動的粘度を示す。
本発明の別の態様によれば、インク製品と印刷基板をと含むインクフィルム構築物が提供され;インク製品は、前記印刷基板の表面に固定的に接着される少なくとも1つの実質的に乾燥したインクフィルムとして配置される。
本発明の別の態様によれば、インク製品は、インク製品と、水を含有する溶媒、溶媒中に分散または少なくとも部分的に溶解される前記少なくとも1つの着色料、溶媒中に分散される前記少なくとも1つの有機高分子樹脂とを含む、インク処方物である。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、インク処方物は、通常、(i)20〜60℃の射出温度範囲内の少なくとも1つの特定温度で、2〜25cPの粘度;および(ii)前記射出温度範囲内にある少なくとも1つの特定温度で、せいぜい50ミリニュートン/mの表面張力のうちの少なくとも1つを有する、水性インクジェットインクである。
本発明の別の態様によれば、(a)水を含有する溶媒;(b)溶媒中に分散または少なくとも部分的に溶解される少なくとも1つの着色料;および(c)溶媒中に分散される少なくとも1つの有機高分子樹脂を含む、水性インクジェットインク処方物が提供され;このインク処方物は、乾燥したとき、(i)60℃〜87.5℃の第一温度範囲の少なくとも一部分にわたって、10cP〜5・10cPの粘度範囲内の動的粘度;および(ii)50℃〜55℃の第二温度範囲の少なくとも一部分にわたって、少なくとも6・10cPの動的粘度を有する、実質的に乾燥したインク残渣を形成する。
本発明の別の態様によれば、(a)印刷基板;および(b)印刷基板の表面に固定的に接着される少なくとも1つの実質的に乾燥したインクフィルムであって、有機高分子樹脂中に分散される少なくとも1つの着色料を含有するインクフィルムを含む、インクフィルム構築物が提供され;インクフィルムの動的粘度は、60℃〜87.5℃の第一温度範囲の少なくとも一部分にわたって、10cP〜5・10cPの範囲内にあり、50℃〜55℃の第二温度範囲の少なくとも一部分にわたって、少なくとも6・10cPである。
本発明の別の態様によれば、(a)水を含有する溶媒;(b)溶媒中に分散または少なくとも部分的に溶解される少なくとも1つの着色料;および(c)溶媒中に分散される少なくとも1つの有機高分子樹脂を含む、水性インクジェットインク処方物が提供され;このインク処方物は、乾燥したとき、(i)60℃〜100℃、60℃〜105℃または60℃〜110℃の第一温度範囲の少なくとも一部分にわたって、10cP〜3・10cPの範囲内の第一動的粘度;および(ii)50℃〜55℃の第二温度範囲の少なくとも一部分にわたって、少なくとも6・10cPの第二動的粘度を有する、実質的に乾燥したインク残渣を形成し;55℃における第二動的粘度は、85℃における第一動的粘度を上回り;インク処方物は、以下の構造的特性のうちの少なくとも1つを満たす:(A)有機高分子樹脂のうちの少なくとも1つの特定の樹脂が、少なくとも52℃、少なくとも54℃、少なくとも56℃、少なくとも58℃、少なくとも60℃、少なくとも65℃、少なくとも70℃、少なくとも75℃、少なくとも80℃、少なくとも85℃、少なくとも90℃または少なくとも95℃の高いガラス転移温度(T)を有する;(B)実質的に乾燥したインク残渣が、100℃、90℃、85℃、80℃、75℃および70℃のうちの少なくとも1つにおいて、少なくとも0.90の総転写率を有する;(C)少なくとも1つの特定の樹脂の最低フィルム形成温度(MFFT)は、少なくとも48℃、少なくとも50℃、少なくとも52℃、少なくとも54℃、少なくとも56℃、少なくとも58℃、少なくとも60℃、少なくとも65℃、少なくとも70℃または少なくとも75℃である;(D)処方物は、150℃でせいぜい0.40kPa、せいぜい0.35kPa、せいぜい0.25kPa、せいぜい0.20kPa、せいぜい0.15kPa、せいぜい0.12kPa、せいぜい0.10kPa、せいぜい0.08kPa、せいぜい0.06kPaまたはせいぜい0.05kPaの蒸気圧を有する軟化剤を含む;ならびに(E)処方物は、前記高いガラス転移温度を少なくとも5℃、少なくとも7℃、少なくとも10℃、少なくとも15℃、少なくとも20℃、少なくとも25℃、少なくとも30℃、少なくとも40℃または少なくとも50℃低下させるよう選択された軟化剤を含む。
本発明の別の態様によれば、(a)印刷基板;および(b)印刷基板の表面に固定的に接着される少なくとも1つの実質的に乾燥したインクフィルムであって、有機高分子樹脂中に分散される少なくとも1つの着色料を含有するインクフィルムを含むインクフィルム構築物が提供され;インクフィルムは以下の構造的特性、すなわち、(A)有機高分子樹脂のうちの少なくとも1つの特定の樹脂が、少なくとも52℃、少なくとも54℃、少なくとも56℃、少なくとも58℃、少なくとも60℃、少なくとも65℃、少なくとも70℃、少なくとも75℃、少なくとも80℃、少なくとも85℃、少なくとも90℃または少なくとも95℃の高いガラス転移温度(T)を有する;(B)実質的に乾燥したインク残渣が、100℃、90℃、85℃、80℃、75℃および70℃のうちの少なくとも1つにおいて、少なくとも0.90の転写率を有する;(C)少なくとも1つの特定の樹脂の最低フィルム形成温度(MFFT)は、少なくとも48℃、少なくとも50℃、少なくとも52℃、少なくとも54℃、少なくとも56℃、少なくとも58℃、少なくとも60℃、少なくとも65℃、少なくとも70℃または少なくとも75℃である;(D)処方物は、150℃における蒸気圧がせいぜい0.40kPa、せいぜい0.35kPa、せいぜい0.25kPa、せいぜい0.20kPa、せいぜい0.15kPa、せいぜい0.12kPa、せいぜい0.10kPa、せいぜい0.08kPa、せいぜい0.06kPaまたはせいぜい0.05kPaの軟化剤を含む;ならびに(E)処方物は、前記高いガラス転移温度を少なくとも5℃、少なくとも7℃、少なくとも10℃、少なくとも15℃、少なくとも20℃、少なくとも25℃、少なくとも30℃、少なくとも40℃または少なくとも50℃低下させるよう選択された軟化剤を含む、という構造的特性のうちの少なくとも1つを満たし;インクフィルムは、以下の構造的特性のうちの少なくとも1つを示す:(I)60℃〜100℃、60℃〜105℃または60℃〜110℃の第一温度範囲の少なくとも一部分にわたって、10cP〜3・10cPの範囲内の第一動的粘度;および50℃〜55℃の第二温度範囲の少なくとも一部分にわたって、少なくとも6・10cPの第二動的粘度であって、55℃における粘度が85℃における第一動的粘度を上回る、第二動的粘度;(II)インクフィルムは、表面の面積を被覆する単一インクドットを含み;インクドットは、面積全体の表面に対して垂直な方向に関して、単一インクドットが面積の上全体に配置される構造的条件を満たし;単一インクドットの平均または特徴的厚みはせいぜい1,800nmである;(III)インクフィルムは、印刷基板上に突出する正方形の幾何学的突出部内に含有されるインクドット組またはインクドット領域を含み、インクドット組は、印刷基板の表面に固定して接着される少なくとも10個の異なるインクドットを含有し、正方形幾何学的突出部内のすべてのインクドットは前記組の個々の成員として計数され、各ドットは、2,000nm未満の平均厚および5〜300マイクロメートルの直径を有し;各インクドットは、一般に凸形状を有し、この場合、凸状性からの偏差(DCdot)は、次式:
DCdot=1−AA/CSA
により定義され、式中、AAは、ドットの算出突出面積であり、この面積は一般に第一繊維性印刷基板と平行に配置され;CSAは、突出面積の外郭を最小限に境界する凸形状の表面積であり、インクドット組の凸状性からの平均偏差(DCdot mean)は、せいぜい0.085である;(IV)上記インクドット組は、各ドットが、2,000nm未満の平均厚および5〜300マイクロメートルの直径を有し;各インクドットは、次式で表される平滑円形状からの偏差(DCdot):
DCdot=[P/(4π・A)]−1
を有し、式中、Pは、インクドットの測定または算出周囲長であり;Aは、周囲長に含有される最大測定または算出面積であり、インクドット組の平均偏差(DCdot mean)はせいぜい0.85である。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、第一温度範囲内の動的粘度は、せいぜい2・10cP、1・10cPまたは8・10cPである。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、85℃での第一動的粘度に対する55℃での第二動的粘度の比は、少なくとも1.7、少なくとも2、少なくとも2.5、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも4.5、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8または少なくとも10である。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、この粘度比は、せいぜい30、せいぜい25、せいぜい20、せいぜい15またはせいぜい12である。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、着色料は、少なくとも1つの顔料を含む。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、インクドット内の着色料および樹脂の総濃度は、少なくとも7%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%または少なくとも85%である。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、複数のインクフィルム内の樹脂に対する着色料の重量比は、少なくとも1:1、少なくとも1.25:1、少なくとも1.5:1、少なくとも1.75:1、少なくとも2:1、少なくとも2.5:1、少なくとも3:1、少なくとも3.5:1、少なくとも4:1、少なくとも5:1、少なくとも7:1または少なくとも10:1である。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、インクドットは、2%未満、1%未満、0.5%未満または0.1%未満の1つ以上の電荷誘導物を含有するか、電荷誘導物を実質的に含まない。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、インクフィルムは、せいぜい5重量%、せいぜい3重量%、せいぜい2重量%、せいぜい1重量%またはせいぜい0.5重量%の無機充填剤粒子(シリカまたはチタニアなど)を含有する。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、処方物は、せいぜい20重量%、せいぜい16重量%、せいぜい13重量%、せいぜい10重量%、せいぜい8重量%、せいぜい6重量%、せいぜい4重量%、せいぜい3重量%、せいぜい2重量%、せいぜい1重量%またはせいぜい0.2重量%のグリセロールを含有する。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、インクドットは、5%未満、3%未満、2%未満または0.5%未満の1つ以上の炭化水素または油を含有するか、このような炭化水素または油を実質的に含まない。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、インクフィルムは、印刷基盤の表面上に積層物として配置される。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、繊維性印刷基板の繊維はインクドットと直接接触する。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、汎用被覆繊維性印刷基板は、10重量%未満、5重量%未満、3重量%未満または1重量%未満の水吸収性ポリマーを有するコーチングを含有する。
記載されたる好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、繊維性印刷基板は、ボンド紙、非塗工オフセット紙、塗工オフセット紙、コピー紙、更紙、塗工更紙、フリーシート紙、塗工フリーシート紙およびレーザプリンタ用紙からなる群から任意に選択される紙である。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、インクフィルムの平均(合計)厚は、100〜1,200nm、200〜1,200nm、200〜1,000nm、100〜800nm、100〜600nm、100〜500nm、100〜450nm、100〜400nm、100〜350nm、100〜300nm、200〜450nm、200〜400nmまたは200〜350nmの範囲内である。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、平均(合計)インクフィルム厚または単一インクドット厚は、少なくとも150nm、少なくとも200nm、少なくとも250nm、少なくとも300nmまたは少なくとも350nmである。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、平均単一インクドット厚は、100〜800nm、100〜600nm、100〜500nm、100〜450nm、100〜400nm、100〜350nm、100〜300nm、200〜450nm、200〜400nmまたは200〜350nmの範囲内である。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、インクフィルムは、せいぜい5,000nm、せいぜい4,000nm、せいぜい3,500nm、せいぜい3,000nm、せいぜい2,500nmまたはせいぜい2,000nmの平均厚または高さを有する。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、インクフィルムは、せいぜい1,800nm、せいぜい1,500nm、せいぜい1,200nm、せいぜい1,000nm、せいぜい800nm、せいぜい650nm、せいぜい500nm、せいぜい450nmまたはせいぜい400nmの平均厚または高さを有する。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、正方形幾何学的突出部は、0.5mm〜15mmの範囲内または約10mm、5mm、2mm、1mm、0.8mmもしくは0.6mmの辺長を有する。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、インクジェットドットの直径は、少なくとも7、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも18または少なくとも20マイクロメートルである。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、第一動的粘度は、せいぜい4・10cP、せいぜい3・10cP、せいぜい2.5・10cP、せいぜい2・10cP、せいぜい1.5・10cPまたはせいぜい1・10cPである。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、第一動的粘度は、少なくとも2・10cP、少なくとも4・10cP、少なくとも6・10cP、少なくとも7・10cP、少なくとも8・10cPまたは少なくとも9・10cPである。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、第一動的粘度は、10cP〜4・10cP、10cP〜3・10cP、10cP〜2・10cP、3・10cP〜4・10cP、3・10cP〜3・10cP、5・10cP〜3・10cP、7・10cP〜3・10cP、8・10cP〜3・10cP、9・10cP〜3・10cP、10cP〜5・10cP、10cP〜5・10cP、10cP〜4・10cP、10cP〜3・10cP、1.5・10cP〜3・10cPまたは10cP〜3・10cPの範囲内である。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、第二温度範囲の第二動的粘度は、少なくとも8・10cP、少なくとも9・10cP、少なくとも10cP、少なくとも1.2・10cP、少なくとも1.5・10cP、少なくとも2.0・10cP、少なくとも2.5・10cP、少なくとも3.0・10cP、少なくとも3.5・10cP、少なくとも4.0・10cP、少なくとも5.0・10cPまたは少なくとも7.5・10cPである。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、この第二動的粘度は、せいぜい6・10cP、せいぜい4・10cP、せいぜい3・10cP、せいぜい2・10cP、せいぜい1.5・10cPまたはせいぜい10cPである。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、この第二動的粘度は、7・10cP〜5・10cP、7・10cP〜3・10cP、7・10cP〜2・10cP、7・10cP〜1・10cP、8・10cP〜5・10cP、9・10cP〜5・10cP、9・10cP〜3・10cP、9・10cP〜2・10cP、9・10cP〜1.5・10cP、1・10cP〜5・10cP、1・10cP〜3・10cP、1・10cP〜2・10cPまたは1.5・10cP〜1.5・10cPの範囲内である。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、第一温度範囲の温度上限は、87℃、86℃、85℃、84℃、82℃、80℃、78℃、76℃、74℃、72℃、70℃または68℃である。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、この範囲の温度下限は、61℃、62℃、63℃、64℃または65℃である。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、インクフィルムまたは乾燥インク残渣は、少なくとも52℃、少なくとも54℃、少なくとも56℃、少なくとも58℃、少なくとも60℃、少なくとも65℃、少なくとも70℃、少なくとも75℃、少なくとも80℃、少なくとも85℃、少なくとも90℃または少なくとも95℃のガラス転移温度(T)を有する。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、複数のインクフィルムまたは乾燥インク残渣は、任意選択で水性分散剤を含む、少なくとも1つの水溶性材料または少なくとも1つの水分散性材料を含有する。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、インクフィルムまたは乾燥インク残渣は、少なくとも2重量%、少なくとも3重量%、少なくとも5重量%または少なくとも8重量%の水溶性材料を含有する。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、インクフィルムまたは乾燥インク残渣は、少なくとも1.2重量%、少なくとも1.5重量%、少なくとも2重量%、少なくとも3重量%、少なくとも4重量%、少なくとも6重量%、少なくとも8重量%、少なくとも10重量%、少なくとも12重量%、少なくとも15重量%または少なくとも20重量%の着色料を含有する。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、インクフィルムまたは乾燥インク残渣は、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%または少なくとも70重量%の樹脂を含有する。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、ΔTは、インクフィルムまたは乾燥インク残渣が特定の流動度を示し始める温度(T)とベースライン温度(T)との温度差を定義するものであり:
ΔT=T−T
流動度は、その流動度が得られる臨界粘性(μCR)によって定義され、ここでは、ベースライン温度が50℃であり、かつ臨界粘性が10cPである場合、温度差は、少なくとも3℃、少なくとも4℃、少なくとも5℃、少なくとも7℃、少なくとも12℃、少なくとも15℃、少なくとも18℃、少なくとも20℃または少なくとも25℃である。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、印刷基板は、繊維性印刷基板、汎用被覆印刷基板、非被覆印刷基板または被覆もしくは非被覆オフセット基板である。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、複数の連続インクフィルムの連続インクフィルムは、インクドットと定義され、無次元アスペクト比(Raspect)は:
aspect=Ddot/Hdot
により定義され、式中、Ddotはドットの平均直径であり;Hdotはドットの平均厚であり;無次元アスペクト比は、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25または少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも75、少なくとも85、少なくとも95、少なくとも110または少なくとも120である。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、無次元アスペクト比は、せいぜい200またはせいぜい175である。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、複数の連続インクフィルムは、印刷基板の表面に直接、固定的に接着される。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、着色料は、処方物の少なくとも0.3重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも0.7重量%、少なくとも0.85重量%、少なくとも1重量%、少なくとも1.2重量%、少なくとも1.4重量%、少なくとも1.6重量%、少なくとも1.8重量%または少なくとも2重量%を占める。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、処方物は、150℃でせいぜい0.40kPa、せいぜい0.35kPa、せいぜい0.25kPa、せいぜい0.20kPa、せいぜい0.15kPa、せいぜい0.12kPa、せいぜい0.10kPa、せいぜい0.08kPa、せいぜい0.06kPaまたはせいぜい0.05kPaの蒸気圧を任意選択で有する、軟化剤をさらに含む。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、軟化剤は、少なくとも170℃、少なくとも185℃、少なくとも200℃または少なくとも220℃の温度まで化学的に安定である。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、処方物または少なくとも1つの有機高分子樹脂は水性分散剤をさらに含み、この分散剤は任意選択で、処方物のせいぜい5%、せいぜい4.5%、せいぜい4%、せいぜい3.5重量%、せいぜい3重量%、せいぜい2.5重量%、せいぜい2重量%、せいぜい1.5重量%、せいぜい1重量%またはせいぜい0.5重量%を占める。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、分散剤は、高分子量ポリウレタンまたはアミノウレタン、スチレン−アクリルコポリマー、修飾ポリアクリル酸ポリマー、制御されたフリーラジカル重合化によって作製されるアクリルブロックコポリマー、スルホスクシナート、アセチレンジオール、カルボン酸のアンモニウム塩、カルボン酸のアルキロールアンモニウム塩、酸性基を有する脂肪族ポリエーテルおよびエトキシ化非イオン性脂肪族アルコールからなる群より選択される。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、高分子樹脂は、アクリルポリマーおよびアクリル−スチレンコポリマーからなる群より選択されるアクリル系ポリマーを含むか、これを主として含む;またはポリエステルまたはコポリエステルの線状または分枝鎖樹脂を含むか、これを主として含む。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、インク処方物は、希釈溶媒または水により重量/重量基準で少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも350%または少なくとも400%希釈したとき、得られる混合物が、(i)20〜60℃の範囲内の少なくとも1つの特定温度で2〜25cPの粘度;および(ii)その範囲内の少なくとも1つの特定温度でせいぜい50ミリニュートン/mの表面張力を有する水性インクジェットインクになるように処方される。
ここで、例として添付の図面を参照しながら本発明をさらに説明する。
印刷システムの分解斜視図であり、これに従って本発明の一実施形態を用い得る。 図1の印刷システムの縦断面模式図であり、印刷システムの各種構成成分は縮尺通りに描いたものではない。 本発明の印刷システムを模式的に表した図であり、これに従って本発明の一実施形態を用い得る。 本発明によるインク処方物を含めた様々なインク処方物の乾燥インク残渣について温度の関数として表した動的粘度の温度スイーププロットである。 様々なポリエステル樹脂を含有する本発明のインク処方物の乾燥インク残渣について温度の関数として表した動的粘度の温度スイーププロットである。 図4Aおよび4Bに示される様々なインク処方物の代表的な乾燥インク乾燥残渣について温度の関数として表した、動的粘度の温度スイーププロットである。 本発明のインク処方物の代表的な乾燥インク残渣対いくつかの市販のインクジェットインクの乾燥インク残渣について温度の関数として表した、動的粘度の温度スイーププロットである。 第一の熱可塑性樹脂と第一の軟化剤とを用いて、構成成分を同一にして軟化剤の比率を変えた5種類のインク処方物の乾燥インク残渣について温度の関数として表した、第一の複数の動的粘度の温度スイーププロットである。 図7Aで使用したものとは異なる熱可塑性樹脂と軟化剤とを用いて、構成成分を同一にして軟化剤の比率を変えた5種類のインク処方物の乾燥インク残渣について温度の関数として表した、第二の複数の動的粘度の温度スイーププロットである。 軟化剤が異なり、軟化剤の濃度も異なるインク処方物の残渣フィルムについて温度の関数として表した、動的粘度の温度スイーププロットである。 着色料(C、M、Y、K)は異なるが、それ以外の処方物構成成分は同じである4種類のインク処方物の乾燥インク残渣についてについて温度の関数として表した、動的粘度の温度スイーププロットである。 様々な印刷技法を用いて得られた汎用塗工紙基板上のインクフィルムにレーザ顕微鏡を用いて取得した二次元(図10A〜10C)および三次元(図10D〜10F)の拡大画像であり、ここでは、図10Aおよび10Dは液体電子写真フィルム(LEP)の拡大画像であり;図10Bおよび10Eはオフセット染みの拡大画像であり;図10Cおよび10Fは本発明によるインクジェットインクフィルム構築物の拡大画像である。 様々な印刷技法を用いて得られた非塗工紙基板上のインクフィルムにレーザ顕微鏡を用いて取得した二次元(図11A〜11C)および三次元(図11D〜11F)の拡大画像であり、ここでは、図11Aおよび11Dは液体電子写真フィルム(LEP)の拡大画像であり;図11Bおよび11Eは石版オフセット染みの拡大画像であり;図11Cおよび11Fは本発明によるインクジェットインクフィルム構築物の拡大画像である。 本発明のインク処方物を用いて汎用被覆繊維性基板(図12A−1〜12C−1)および非被覆繊維性基板(図12D−1および12E−1)上に作製したインクドットまたはフィルムの拡大視野である。 図12A−1〜12E−1の枠の一部分をさらに拡大した図であり、図12A−2〜12C−2には汎用塗工紙上に配置されたインクフィルムが示され、図12D−2および12E−2には非塗工紙上に配置されたインクフィルムが示され、図12A−3〜12E−3には対応する光学的均一性プロフィールが示されている。 図12A−3〜12E−3には対応する光学的均一性プロフィールが示されている。 塗工紙(図12A−4〜12C−4)および非塗工紙(図12D−4および12E−4)上に配置されたインクフィルムを、これに対応する画像処理計算した外郭および凸状突起とともに示した拡大図であり、インクフィルムは本発明のインク処方物を用いて作製したものである。 本発明のインク処方物を用いて汎用被覆繊維性基板(図12A−1〜12C−1)および非被覆繊維性基板(図12D−1および12E−1)上に作製したインクドットまたはフィルムの拡大視野である。 図12A−1〜12E−1の枠の一部分をさらに拡大した図であり、図12A−2〜12C−2には汎用塗工紙上に配置されたインクフィルムが示され、図12D−2および12E−2には非塗工紙上に配置されたインクフィルムが示され、図12A−3〜12E−3には対応する光学的均一性プロフィールが示されている。 図12A−3〜12E−3には対応する光学的均一性プロフィールが示されている。 塗工紙(図12A−4〜12C−4)および非塗工紙(図12D−4および12E−4)上に配置されたインクフィルムを、これに対応する画像処理計算した外郭および凸状突起とともに示した拡大図であり、インクフィルムは本発明のインク処方物を用いて作製したものである。 本発明のインク処方物を用いて汎用被覆繊維性基板(図12A−1〜12C−1)および非被覆繊維性基板(図12D−1および12E−1)上に作製したインクドットまたはフィルムの拡大視野である。 図12A−1〜12E−1の枠の一部分をさらに拡大した図であり、図12A−2〜12C−2には汎用塗工紙上に配置されたインクフィルムが示され、図12D−2および12E−2には非塗工紙上に配置されたインクフィルムが示され、図12A−3〜12E−3には対応する光学的均一性プロフィールが示されている。 図12A−3〜12E−3には対応する光学的均一性プロフィールが示されている。 塗工紙(図12A−4〜12C−4)および非塗工紙(図12D−4および12E−4)上に配置されたインクフィルムを、これに対応する画像処理計算した外郭および凸状突起とともに示した拡大図であり、インクフィルムは本発明のインク処方物を用いて作製したものである。 本発明のインク処方物を用いて汎用被覆繊維性基板(図12A−1〜12C−1)および非被覆繊維性基板(図12D−1および12E−1)上に作製したインクドットまたはフィルムの拡大視野である。 図12A−1〜12E−1の枠の一部分をさらに拡大した図であり、図12A−2〜12C−2には汎用塗工紙上に配置されたインクフィルムが示され、図12D−2および12E−2には非塗工紙上に配置されたインクフィルムが示され、図12A−3〜12E−3には対応する光学的均一性プロフィールが示されている。 図12A−3〜12E−3には対応する光学的均一性プロフィールが示されている。 塗工紙(図12A−4〜12C−4)および非塗工紙(図12D−4および12E−4)上に配置されたインクフィルムを、これに対応する画像処理計算した外郭および凸状突起とともに示した拡大図であり、インクフィルムは本発明のインク処方物を用いて作製したものである。 本発明のインク処方物を用いて汎用被覆繊維性基板(図12A−1〜12C−1)および非被覆繊維性基板(図12D−1および12E−1)上に作製したインクドットまたはフィルムの拡大視野である。 図12A−1〜12E−1の枠の一部分をさらに拡大した図であり、図12A−2〜12C−2には汎用塗工紙上に配置されたインクフィルムが示され、図12D−2および12E−2には非塗工紙上に配置されたインクフィルムが示され、図12A−3〜12E−3には対応する光学的均一性プロフィールが示されている。 図12A−3〜12E−3には対応する光学的均一性プロフィールが示されている。 塗工紙(図12A−4〜12C−4)および非塗工紙(図12D−4および12E−4)上に配置されたインクフィルムを、これに対応する画像処理計算した外郭および凸状突起とともに示した拡大図であり、インクフィルムは本発明のインク処方物を用いて作製したものである。 市販の水性ダイレクトインクジェットプリンタを用いて汎用被覆繊維性基板上に作製したインクドットの視野の拡大図である。 同一の市販の水性ダイレクトインクジェットプリンタを用いて非被覆繊維性基板上に作製したインクドットの視野の拡大図である。 様々な従来技術の印刷技法を用いて非塗工紙(図14A−2〜14C−2)および塗工紙(図14D−2〜14F−2)上に得られたインク染みおよびフィルムの画像ならびにその光学的均一性プロフィール(図14A−1〜14F−1)である。 凸状性組の数学的特性を有する二次元形状を示す図である。 非凸状性組の数学的特性を有する二次元形状を示す図である。 細流および入江を有するインクフィルムの上方投影模式図であり、インク画像を平滑化した投影図を示している。 それぞれ本発明のインクフィルム構築物および従来技術のインクジェットインクドット構築物の横断模式図であり、基板は繊維性紙基板である。 中間転写成員の外層の表面の画像である。 本発明に従い上記の外層を用いて作製されたインクフィルム表面の対応する画像である。 中間転写成員の外層の表面の画像である。 本発明に従い上記の外層を用いて作製されたインクフィルム表面の対応する画像である。
本発明によるインク処方物およびインクフィルム構築物は、図面および添付の説明を参照すれば、さらによく理解され得る。
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明が、以下の説明に記述されるか、図面に図示される構築物の詳細および構成成分の配合への適用に限定されないことが理解されるべきである。本発明は、様々な方法で他の実施形態を実施または実行することが可能である。このほか、本明細書で用いられる語句および用語は説明を目的とするものであって、本発明を限定するものではないことが理解されるべきである。
特に以下の印刷工程によって、あるいはこのような工程を履行する任意の印刷システムを用いることによって、本発明のインク処方物を使用し、インクフィルム構築物を得ることができる。本明細書に開示されるインク処方物の使用および本発明によるインクフィルムの調製に適した印刷工程は、インク画像を形成するために中間転写成員上にインクの小滴を向けることを包含し、インクは、有機高分子樹脂および着色料(例えば、顔料または染料)を水性担体中に含み、転写成員は疎水性外表面を有し、インク画像中の各インク小滴は中間転写成員上に衝突して拡がって、湿性インクフィルム(例えば、衝突時に存在する小滴の平坦化および水平拡張の主要部分を保存するか、小滴中のインクの質量によって面積を覆う薄いフィルム)を形成する。インク画像から水性担体を蒸発させることにより、インク画像が中間転写成員により運搬されている間、インクは乾燥されて、樹脂および着色料を含む乾燥したまたは実質的に乾燥した残留フィルムをあとに残す。次いで、残留フィルムは基板に転写される(例えば、基板に対して中間転写成員を加圧して、残留フィルムをその上に押しつけることによる)。インクおよび中間転写成員表面の化学組成は、各小滴の外皮中の分子と中間転写成員の表面上の分子との間の分子間吸引力が、中間転写成員の表面を湿潤することにより、各小滴を広げることなく、水性担体の表面張力の作用下で数珠形になる各小滴により生成されるインクフィルムの傾向を相殺するよう選択される。本発明のインク処方物の使用に適し、そのインクフィルム構築物を可能にする、このような員工程および例示的印刷システムに関するさらなる詳細は、国際公開第2013/132418号、同第2013/132419号および同第2013/132420号に開示されている。
印刷工程は、中間転写成員(放出層とも呼ばれる)の表面に衝突時に、この層の低い表面エネルギーおよび疎水性にもかかわらず、インク小滴の平坦化により引き起こされる各水性インク小滴の薄いパンケーキ円盤形を保存または凍結することを目指すものである。この目的を達成するため、この新規の工程は、インク中の分子と、転写成員の外表面中の分子との間の静電的相互作用に依っており、分子は、それぞれの媒質中で荷電されるか、相互に荷電可能であり、インクおよび放出層間の相互作用時に逆に荷電されるようになる。印刷工程に関するさらなる詳細を以下で説明する。
印刷工程およびシステムの概要
図1および2に示される印刷システムは基本的に、3つの独立した相互に作用するシステム、すなわち、ブランケットシステム100、ブランケットシステム100の上にある画像形成システム300およびブランケットシステム100の下にある基板運搬システム500を含む。ブランケットは、ループを循環しながら各種の部を通過する。以下の説明は、中間転写成員がエンドレスベルトであるものとして記載されるが、本発明によるインク処方物は、中間転写成員がドラムである印刷システムにも同じように適用でき、したがって、各種の部の特定の設計が適合される。
ブランケットシステム100は、中間転写成員としての役割を果たし2つのローラ104、106上を誘導されるエンドレスベルトまたはブランケット102を含む。水性インクのドットからなる画像が画像形成システム300によって、ブランケット102の上側走行部分の本明細書中で画像形成部と呼ばれる位置に当てられる。基板運搬システム500の2つの圧胴502および504を有する2つの圧部で下側走行部分が選択的に相互作用し、ブランケット102と圧胴502、504それぞれとの間で圧力を加えられる基板上に画像を押しつける。以下で説明するように、2つの圧胴502、504がある目的は、両面印刷を可能にすることである。図示されてはいないが、圧部の最初の面が既に印刷された基板の反対側に再供給することが可能な適合する両面刷りシステムを用いた単一の圧部で両面印刷を達成することもできる。片面プリンタの場合、必要な圧部は1つだけになる。
作動時、それぞれが最終的な基板に押しつける画像の鏡像であるインク画像が、画像形成システム300によってブランケット102の上側走行部分に印刷される。この文脈において、「走行部分」という用語は、ブランケットを誘導する任意の2つの所与のローラの間にあるブランケットの長さまたはセグメントを意味するのに用いられる。ブランケット102によって運搬される間、インクが加熱され、液体担体の全部ではないがほとんどが蒸発することによって、インクが乾燥する。インク画像はさらに加熱されて粘着性を帯び、液体担体が蒸発した後にはインク固形分のフィルムが残る。このフィルムは残渣フィルムと呼ばれ、各インク滴の平坦化によって形成される液状フィルムと区別される。圧胴502、504では、基板運搬システム500により投入スタック506から圧胴502、504を通って排出スタック508まで運搬される基板の個々のシート501上に画像が押しつけられる。図には示されていないが、基板は連続ウェブであってもよく、この場合、投入スタックおよび排出スタックは供給ローラおよび送出ローラに置き換えられ得る。それに応じて、例えば、誘導ローラおよびダンサーを用いてウェブのたるみを取り、圧部にしかるべく揃えることにより、基板運搬システムを適合させる必要がある。
画像形成システム
画像形成システム300は、ブランケット102の表面上方の固定された高さに位置する枠にそれぞれがスライド可能なように取り付けられ得る、プリントバー302を含む。プリントバー302は、それぞれブランケット102上の印刷領域と同じ幅の細長いプリントヘッドを含んでよく、またそれぞれが、制御可能なプリントノズルを含む。画像形成システムは、異なる色または同じ色の水性インクをそれぞれ含み得る任意の個数のバー302を有してよく、通常、それぞれのバーがシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)またはブラック(K)のインクを射出する。プリントバーは異なる色調の同じ色(例えば、ブラックを含めた異なる色調のグレー)を付着させることも、2つ以上のプリントバーが同じ色(例えば、ブラック)を付着させることも可能である。さらに、プリントバーは、顔料を含まない液体(例えば、装飾ワニスまたは保護ワニス)および/または特殊な色(例えば、金属のような外観、きらきら光る外観、蛍光を発する外観もしくは光り輝く外観などの視覚効果または場合によっては、香り効果をもたらすもの)に用いることができる。
特定の印刷作業では一部のプリントバーを必要としないことがあり得るため、ヘッドがブランケット102を覆う作動位置(バーが固定されている位置)と、不作動位置(メンテナンスの際にバーに触れることができる位置)との間にヘッドを動かすことができる。
各プリントバー内では、当業者であればさらに詳細な説明を必要とせずにわかる通り、インクが常時再循環し、ろ過され、脱気され、所望の温度および圧力で維持され得る。
ブランケットの長さに沿って異なるプリントバー302が互いに間隔をあけて配置されるが、当然のことながら、プリントバーの作動がブランケット102の動きと正確に同期することが不可欠である。
必要に応じて、中間転写成員に高温の気体、好ましくは空気を緩やかに流し、プリントバー302が付着させたインク滴の乾燥を開始させるために、各プリントバー302の後に送風機を設置することが可能である。このことは、各プリントバー302が付着させたインク滴を固定する、つまり、インク滴の収縮を抑え、中間転写成員上でのその移動を防ぐほか、続いて別のプリントバー302が付着させるインク滴に混ざるのを防ぐのに役立つ。このような付着したばかりのインク滴の射出後処理には、インク滴を実質的に乾燥させる必要はないが、その外表面に膜を形成することだけはできなければならない。
ブランケットおよびブランケット支持システム
一変形形態では、ブランケット102に継ぎ目がある。特に、ブランケットは、最初は平坦な細長い一片を、両端を切離し可能なように、または切離し不可能なように互いに締結して、多くの場合ベルトと呼ばれる連続した輪にしたものから形成され得る。切離し可能な締結は、ブランケットを誘導するローラ104および106の軸に実質的に平行になっているジッパまたは面ファスナであり得る。切離し不可能な締結は、接着剤またはテープの使用によって達成され得る。繋がったベルトは、1つ以上の細長いブランケット細片によって形成されていてよく、したがって、1つ以上の継ぎ目があってよい。あるいは、別とは継ぎ目がないものであってもよい。
継ぎ目が支持システムのローラをはじめとする部位の上を通過する際に、ブランケットの張力が急激に変化するのを避けるため、継ぎ目をブランケットの残りの部分とできる限り同じ厚みにするのが望ましい。
ブランケットの主要な目的は、画像形成システムからインク画像を受け取り、その画像を乾いたまま圧部に転写することである。各圧部でのインク画像の容易な転写を可能にするため、ブランケットは、薄くて高疎水性であり得る上部放出層を有する。適切な条件下では、放出層の組成には、シラノール、シリルまたはシランで修飾または末端化したポリジアルキルシロキサンシリコーン材料およびアミノケイ素が良好に機能することがわかっている。しかし、選択する材料が、画像を転写成員から最終的な基板に放出するのを可能にするものである限り、硬化させるシリコーンの正確な処方はそれほど重要ではない。
ブランケットの強度は支持層または補強層に由来するものであり得る。ある場合には、補強層はから形成されている。布を織る場合、ブランケットが、後述する理由により、縦方向よりも横方向(ローラ104および106の軸に平行な方向)の方が弾性が強くなるように、布の縦糸と横糸は組成または物理的構造が同じであっても異なっていてもよい。
ブランケットは、例えば、基板の表面に対する放出層の適合性および圧縮性をもたらすために、補強層と放出層との間に追加の層を含み得る。ほかにも、熱貯留層または熱貯留層または断熱層としての役割を果たす層をさらに含み得る。ブランケットがその支持構造上を回転する際に、ブランケット上の摩擦抵抗を抑えるため、さらに内層を備え得る。ほかにも、上記各層を互いに接着または接続する、あるいはその間の分子の移動を防ぐ層を含み得る。
ブランケット支持システムは、支持枠の上側と下側の両方の表面に連続する平坦な支持表面を形成する熱伝導性の支持板130を含み得る。支持板130の横軸の穴に電熱要素を挿入して、支持板130に熱を加え、さらに支持板130を介してブランケット102に熱を加えることができる。当業者にはほかのブランケット加熱手段が思いつくと思われ、ブランケットの下方、上方またはブランケット自体の内側からの加熱がこれに含まれ得る。
このほか、ブランケット支持枠に取り付けられるものには、ブランケットの下側走行部分から上下させることが可能な2つの加圧ローラまたはニップローラ140、142がある。加圧ローラは支持枠裏面に位置し、枠の裏面を覆う2つの支持板130の隙間にある。加圧ローラ140、142は、それぞれ基板運搬システムの圧胴502、504に合わせて並んでいる。加圧ローラおよびそれに対応する加圧ローラはそれぞれ、ブランケットがその間を通過する際に両者がブランケットと連動するときに圧部を形成する。
いくつかの場合には、ブランケット支持システムは、ブランケットの側端に形成物をはめ込みブランケットの横方向の緊縮性を維持することができる、連続したトラックをさらに含む。この形成物は、縫合または別の方法でブランケットの側端に取り付けたジッパの片方の歯など、間隔をあけて並んだ突起物であり得る。あるいは、この形成物は、ブランケットよりも厚みのある連続した柔軟なビーズであってもよい。側部の形成物は、ブランケットの端に直接取り付けてもよく、あるいは、特に画像形成部でブランケットを平坦に維持しながら、任意選択で適切な弾性を与えて、それぞれの誘導トラックに形成物を取り付けることができる中間細片を介して取り付けてもよい。側部トラックの誘導溝は、ブランケットの側部形成物を受け止めて保持し、その緊縮性を維持するのに適した任意の断面を有し得る。摩擦を減らすため、誘導溝は、突起物またはビーズを溝の内側に保持するための回転軸受要素を有し得る。本発明のインク処方物とともに使用するのに適切な中間転写成員に適し得る例示的なブランケット側部の形成物または継ぎ目に関するさらなる詳細については、国際公開第2013/136220号に記載されている。
画像がブランケット上で適切に形成されて最終的な基板に転写され、両面印刷で表と裏の画像のアラインメントが達成されるためには、システムの多数の様々な要素が適切に同期しなければならない。画像をブランケット上の適切な位置に置くためには、ブランケットの位置および速度を知るとともにこれを制御しなければならない。この目的のため、ブランケットの端またはその付近に、ブランケットの移動方向に間隔をあけて配置された1つまたは複数の印を付けることができる。この印が1つまたは複数のセンサ107を通過するとき、このセンサが印のタイミングを感知する。画像が転写ブランケットから基板に適切に転写されるためには、ブランケットの速度と加圧ローラ表面の速度が同じでなければならない。センサ(1つまたは複数)107からコントローラ109にシグナルが送られ、コントローラ109はほかにも、例えば、一方または両方の加圧ローラの軸上にあるエンコーダ(図示されていない)から加圧ローラの回転速度および角度位置の表示を受け取る。このほか、センサ107または別のセンサ(図示されていない)が、ブランケットの継ぎ目がセンサを通過する時点を決定する。使用可能なブランケットの長さを最大限に活用するには、ブランケット上の画像が、可能な限り継ぎ目に近い位置から出発するのが望ましい。本発明のインク処方物とともに使用するのに適切な印刷システムに適し得る例示的制御システムのさらなる詳細については、国際公開第2013/132424号に開示されている。
ブランケットの前処理
図1は、ブランケット外側のローラ106のすぐ前に位置するローラ190を模式的に示している。任意選択で、このようなローラ190を用いて、状態調節化学物質を含有する前処理溶液の薄膜を塗布し得る。
ローラを用いて均一な膜を塗布することができるが、別法として、ブランケットの表面に前処理物質または状態調節物質を噴霧してもよく、任意選択で、例えばエアナイフの噴流を当てることによって、これをさらに均一に広げてもよい。あるいは、任意選択の状態調節溶液を、ブランケットを放出層の表面に直接接触していない布から染み出る状態調節溶液の薄膜を通過させることによって塗布してもよい。任意選択の状態調節溶液の塗布に用いる方法とは無関係に、必要に応じて、このような印刷前処理を実施し得る場所を本明細書中では状態調節部と呼ぶことがある。図3に示される代替的な印刷システムも状態調節部を含み得る。
記載されるように、インク滴が転写成員に衝突すると、インク滴の運動量によって比較的平坦な形に広がる。従来技術では、このインク滴の平坦化は、インク滴の表面張力と転写成員表面の疎水性との組合せによって、ほぼ直後に打ち消される。
いくつかの場合には、衝突時にみられるインク滴の平坦化および水平方向への伸展の少なくとも一部、好ましくはその大部分が保持されるように、インク滴の形状を「フリーズ」させる。衝突後のインク滴の形状の復元は極めて短時間で起こるため、従来技術の方法では、凝集および/または凝固および/または移動による相変化が生じることはないことを理解するべきである。
理論に束縛されることを望むものではないが、衝突時、転写成員の表面に存在していた正電荷が、成員表面に直接隣接し負に荷電したインク滴の高分子樹脂粒子を引き付けるものと考えられる。インク滴が広がり、広がったインク滴と転写成員との間の接触面が、インク滴が数珠形になるのを遅らせる、または妨げるのに十分な面積になると、それに沿って、この作用が少なくとも、一般には数秒程度の印刷工程の時間尺度で起こるものと考えられる。
電荷の量は、インク内の少数の荷電樹脂粒子以上のものを引き付けるには足りないため、インク滴中の荷電樹脂粒子の濃度および分布は、放出層上での化学物質との接触によって実質的に変化することはないものと考えられる。さらに、インクが水性であるため、特に、インク滴の形状をフリーズさせるのに必要な極めて短い時間では、正電荷の作用は極めて局所的なものとなる。
理論に束縛されることを望むものではないが、中間転写成員の表面に状態調節剤または状態調節溶液を塗布する際に、状態調節剤の正に荷電した少なくとも1種類の官能基が、吸着または別の方法で放出層の表面に付着するものと考えられる。射出されたインク滴に面する放出層の反対側には、状態調節剤の正に荷電した少なくとも1種類の官能基が存在し、インク中(例えば、樹脂中)の負に荷電した化学種と相互作用する位置にある。
このような処置が可能な中間転写成員はその放出層に、例を挙げれば、シラノール、シリルもしくはシランで修飾もしくは末端化したポリジアルキル−シロキサンシリコーンまたはその組合せを含み得る。本発明のインク処方物とともに使用するのに適し得る例示的放出層のさらなる詳細については、国際公開第2013/132432号に開示されている。
このような状態調節溶液の調製に適した化学物質は、必要に応じて、比較的高い電荷密度を有し、複数の官能基中にアミン窒素を含有するポリマーであり得るが、これは同一物である必要はなく、組合せであってもよい(例えば、第一、第二、第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩)。数百〜数千の分子量を有する高分子は適切な状態調節剤であり得るが、本発明者らは、10,000g/モル以上の高分子量を有するポリマーが好ましいものと考える。適切な状態調節剤としては、陽イオン性グアー、グアー系ポリマー、陽イオン性メタクリルアミド、メタクリルアミド系ポリマーおよび線状、分枝鎖または修飾ポリエチレンイミンポリエチレンイミン(PEI)が挙げられる。本発明のインク処方物とともに使用するのに適切な印刷システムに適し得る例示的状態調節剤およびその状態調節溶液のさらなる詳細については、国際公開第2013/132339号に開示されている。
この方法およびそれに関連する水性処理溶液(「状態調節溶液」とも呼ばれる)の効果は、実験室での実験設定および予備的なパイロット印刷実験で確認されている。上記出願に開示されているように、中間転写成員から印刷基板に転写した後の画像の印刷品質による評価では、このような溶液の使用は極めて有益である。印刷物の光学密度は極めて妥当であると考えられ、インク射出前にこのようなブランケット処理法を用いることにより、印刷基板での測定結果が明らかに改善された。
同発明者によって最初に開発された方法では、転写成員に状態調節溶液の極めて薄いコーチングを塗布して直ちに除去し、蒸発させ、数層の適切な化学物質の分子層のみを残している。このように予備処理したブランケットにインク滴を射出し、乾燥させ、印刷基板に転写している。通常、このように印刷されたインクフィルム画像は、その外表面に状態調節剤が存在することによって特定することが可能であった。換言すれば、乾燥したインク滴が転写時に状態調節剤の下層を剥がし、次いで、これが最終的な基板に逆方向に押し付けられた。
例示的状態調節溶液としては、以下に記載する状態調節溶液Aおよびその状態調節剤に添加剤を加えずに蒸留水で希釈した(1:99)単純な対応物が挙げられる。
Figure 2016539240
インク画像の加熱
支持板130に挿入されているか、中間乾燥システム224および乾燥部214としてブランケット上方に位置する加熱器を用いて、インク担体の迅速な蒸発に適し、ブランケットの組成に適合性のある温度までブランケットを加熱する。放出層内に例えば、シラノール修飾または末端化ポリジアルキルシロキサンシリコーンを含むブランケットでは、加熱温度は、インクおよび/または必要に応じて状態調節溶液の組成などの様々な因子に応じて70℃〜180℃の範囲内で変化し得る。アミノシリコーンを含むブランケットは一般に、70℃〜130℃の温度に加熱し得る。放出層に硬化アミノ官能化シリコーンを含む例示的ブランケットは、国際公開第2013/132438号に開示されている。
いくつかの印刷システムでは、ブランケットの温度は、任意選択で(例えば、乾燥したインク画像の転写成員から印刷基板への転写を促進するため)局所的に温度が一時的に変化するものの、ブランケットが進むループに沿って比較的同一に保持され得る。別の印刷システムでは、ブランケットの温度は、ブランケットが通過する部の間で所望に応じて変化し得る。例えば、画像形成部では、インク担体の蒸発温度を下回る比較的低い温度(例えば、60℃〜100℃、通常70℃〜90℃)でインク処方物がブランケット上に射出され得る。付着したインク滴はその後、インク担体の蒸発を促進するさらに高い温度(例えば、最高200℃)のブランケット上で乾燥し得る。ブランケットの温度は、乾燥したインク画像を圧部で転写できる程度になるように変更され得る。高温の転写工程では、ブランケットが圧部のニップで(例えば、231によって)さらに加熱され、表面温度は一時的に最大170℃まで上昇し得る。低温の転写工程では、インク乾燥後にブランケットがそれ以上加熱されることはなく、圧部における表面温度は140℃未満、通常120℃未満であり得る。圧部の後、ブランケットの温度をさらに変化させ、印刷システムが含み得る任意の部の最適な作動条件に適合させ得る。例えば、ブランケットをさらに加熱または冷却して、印刷されたインク画像に任意選択でワニスを塗布し得るコーチング部に適合させ得る。最終的に、ブランケットの温度をさらに変更して、ブランケットが所望の温度で画像形成部に再び入れるようにし得る。この目的のために、本発明によるインク処方物とともに使用するのに適した印刷システムは、ブランケット冷却部を含み得る。
転写成員の下部加熱を用いる場合、任意選択の前処理部または状態調節部、画像形成部および圧部(1つまたは複数)の間を移動する際にブランケット102本体の温度があまり変化しないように、ブランケットは熱容量が高く、熱伝導率が低いのが望ましいと思われる。転写成員の上部加熱を用いる場合、加えた熱を必要以上に散逸させないように、ブランケットは断熱層を含むのが好ましいと思われる。転写表面によって運ばれるインク画像に様々な速度で熱を加えるため、具体的な印刷システムの構造に関係なく、例えば、圧部に到達する前にインク残渣を粘着性にするために(例えば、図3の231を参照されたい)、画像形成部の前に必要に応じて状態調節剤を乾燥させるために、またインク射出部でインク滴がブランケット表面に衝突した後、担体ができるだけ速やかにインク滴から蒸発し始めるように、追加の外部加熱器またはエネルギー源(図示されていない)を用いて局所的にエネルギーを加え得る。これとは逆に、印刷システムは、余分な熱を局所的に除去する冷却部を含み得る。
外部加熱器は、例えば、高温の気体または空気の送風機306(図1に模式的に示されている)または例えばブランケット表面に赤外線放射を集中させる放射加熱器であってよく、これにより50℃、75℃、100℃、125℃、150℃、175℃、190℃、200℃、210℃または場合によっては220℃を上回る温度が得られる。
インク画像から任意の液状保湿剤を含む水性担体を蒸発させた後、樹脂および着色料を含む乾燥した、または実質的に乾燥した残渣フィルムが得られる。残った乾燥残渣フィルムは、単一滴インクフィルムの平均厚が1,500nm(nm)未満、1,200nm未満、1,000nm未満、800nm未満、600nm未満、500nm未満、400nm未満または300nm未満であり得る。
複数滴インクフィルムでは、平均厚が2,500nm未満、2,000nm未満、1,600nm未満、1,400nm未満、1,200nm未満、1,000nm未満、800nm未満または600nm未満であり得る。
上で説明したように、高品質の印刷画像を得ようとする場合、印刷システムにとって温度制御が最も重要である。このことは、図3の実施形態において、ベルトの熱容量が図1および2の実施形態のブランケット102のものよりもはるかに低いという点で、大幅に単純化される。図3に模式的に示される例示的印刷システムは、画像形成部212、乾燥部214および圧部216を循環するエンドレスベルト210を有するものであり、各部は既に述べたように働く。例えば、図3の画像形成部212は、既に記載されている、例えば図1に示される画像形成システム300とほぼ同じである。画像形成部の各プリントバー222の後には、ベルト210の表面に高温気体(通常は空気)を吹きかけてインク滴を部分的に乾燥させるための中間乾燥システム224が備えられている。この高温気体の流れは、インクジェットノズルの閉塞を防止するほか、ベルト210上にある異なる色のインクの滴が互いに混ざらないにするのに役立つ。乾燥部214では、ベルト210上のインク滴をさらに十分に乾燥させるためにインクを放射および/または高温気体に曝し、液体担体の全部ではないが一部を追い出して、樹脂と着色剤の層のみを残し、これを粘着性になる程度まで加熱する。
圧部216では、圧胴220と圧縮可能なブランケット219を有する加圧胴218との間をベルト210が通過する。ブランケット219の長さは、印刷する基板のシート226の最大長以上である。圧胴220は直径が加圧胴218の2倍であり、シート226を2枚同時に支持することができる。基板のシート226は、適切な運搬機構(図3には示されていない)によって供給スタック228から運ばれ、圧胴220と加圧胴218との間のニップを通過する。ニップ内では、インク画像を運ぶベルト220の表面が加圧胴218のブランケット219によって基板に対して強く圧力をかけられて、インク画像が基板上に押しつけられ、ベルトの表面からきれいに分離する。次いで、基板は排出スタック230まで運搬される。
いくつかの印刷システムでは、基板への転写を促進するため、画像圧部の2つの胴218および220の間の直前に、インクフィルムを粘着性にするのに役立つ加熱器231を備え得る。
インクがベルト210の表面からきれいに分離するためには、後者の表面が疎水性の放出層を有する必要がある。図1の実施形態では、この疎水性の放出層は厚いブランケットの一部分として形成され、このブランケットはほかにも、圧部での放出層と基板との間の適切な接触を確保するのに必要な圧縮可能で適合性のある層を含む。得られるブランケットは極めて高重量で、費用がかかる製品であり、それが果たす多数の機能のいずれかに不具合が生じた場合には交換する必要がある。
図3の実施形態では、疎水性の放出層は、それを基板シート226に対して押しつけるのに必要なブランケット219から分離した要素の一部分を形成している。図3では、放出層は、柔軟で薄く伸長性でないベルト210の上に形成され、ベルト210は、その縦方向への引張強度が増大するよう強化された布であるのが好ましい。
図3に示される印刷システムに関する説明は、当業者が本発明を理解し実施することができる程度に詳細に記載されていることが理解されよう。
上ではほかにも、厚いブランケット102を用いる実施形態に関して、下部から加熱するブランケットを考慮し、ブランケットの熱容量に影響を及ぼす追加の層を含めることを提案している。図3の実施形態では、ベルト210がブランケット219から分離することにより、乾燥部214ではるかに少ないエネルギーを用いて、インク滴を乾燥させ加熱する温度を樹脂の軟化温度にすることが可能になる。さらに、ベルトは画像形成部に戻る前に冷え得るため、インクジェットノズルのごく近くを走行する熱い表面にインク滴を噴霧しようとして生じる問題点を軽減または回避される。上記のものに代えておよび加えて、印刷システムに冷却部を加えて、ベルトが画像形成部に入る前にベルトの温度を所望の値まで低下させてもよい。冷却は、下半分が冷却液(水もしくは洗浄/処理溶液であり得る)に漬かったローラの上にベルト210を通過させることにより、ベルト上に冷却液を噴霧することにより、または冷却液の噴出容器の上にベルト210を通過させることにより達成され得る。
説明のために、慣用的疎水性表面、例えばシリコーン被覆表面などは、容易に電子を産生し、負に荷電されるとみなされる。同様に水性担体中の高分子樹脂も一般に、負に荷電される。したがって、付加的ステップの非存在下では、正味分子間力を必要とされることは、中間転写成員にインクをはじかせ、小滴は小球形に数珠形を形成する傾向がある。
本発明によるインクフィルム構築物の調製に適した新規の印刷工程では、中間転写成員の表面の化学組成は、正電荷を提供するよう変更される。これは、例えば、1つ以上のブレンステッド塩基性官能基を有する分子、特に窒素含有分子を中間転写成員の表面に含む(例えば、放出層中に包埋される)ことにより達成され得る。適切な正に荷電した基または正に荷電可能な基としては、第一級アミン、第二級アミンおよび第三級アミンが挙げられる。このような基は高分子主鎖と共有結合することができ、例えば、中間転写成員の外表面はアミノシリコーンを含み得る。
放出層の分子のこのような正に荷電可能な官能基は、インクの分子のブレンステッド酸性官能基と相互作用し得る。適切な負に荷電した基または負に荷電可能な基としては、例えば、カルボン酸基(−COOH)、アクリル酸基(−CH=CH−COOH)、メタクリル酸基(−CH=C(CH)−COOH)を有するカルボキシル化酸およびスルホン酸基(−SOH)を有するようなスルホナートが挙げられる。このような基は、高分子主鎖と共有結合することができ、好ましくは水溶性または水分散性であり得る。適切なインク分子は、例えば、カルボン酸官能基を有するアクリルポリマーおよびアクリル−スチレンコポリマーなどのアクリル系樹脂を含み得る。
インク
本明細書に記載される工程での使用および本明細書に記載されるシステムとの使用に適した、本願で特許請求される発明の実施形態によるインクは、例えば、水性インクジェットインクは、(i)水および任意選択で共溶媒を含む溶媒と、(ii)負に荷電可能な高分子樹脂(インクは、ポリマーが確実に負に荷電するように少量のpH上昇物質を含み得る)と、(iii)少なくとも1つの着色料とを含む。
インクは射出前、通常、(i)20〜60℃の範囲内の少なくとも1つの温度で2〜25センチポアズ(cP)の粘度;および(ii)20〜60℃の範囲内の少なくとも1つの温度で50ミリニュートン/m以下の表面張力を有する。着色料は、顔料、好ましくは、例えば平均粒子サイズ(d50)が120nm以下のナノ顔料を含有し得る。
いくつかの実施形態では、高分子樹脂は、主として、またはもっぱら、1つまたは複数の負に荷電可能なポリマー、例えばポリアニオン系ポリマーなどを含む。「負に荷電可能なポリマー」または「負に荷電可能な高分子樹脂」は、容易に除去されて負荷電を生じ得るプロトンを少なくとも1つ有するポリマーまたは高分子樹脂を意味し;この用語は、本明細書で使用される場合、ポリマーの固有の性質を指すものであり、したがって、そのようなプロトンが除去される環境中にあるポリマーのほか、そのようなプロトンが除去されない環境中にあるポリマーを包含し得る。
それに対して「負に荷電した高分子樹脂」は、1つまたは複数の上記プロトンが除去されている環境中にある樹脂を指す。
負に荷電可能な基の例には、アクリル酸基(−CH=CH−COOH)およびメタクリル酸基(−CH=C(CH)−COOH)を含めたカルボン酸基(−COOH)ならびにスルホン酸基(−SOH)がある。このような基はポリマー主鎖と共有結合することができ、例えば、スチレン−アクリルコポリマー樹脂は、容易のプロトンを失って負荷電部分を生じる、カルボン酸官能基を有する。本発明の実施形態に使用するのに適したポリマーの多くは水に溶かすと負に荷電するが、負に荷電するのにpH上昇化合物の存在を必要とするものもある。ポリマーは、単一のポリマー分子上にこのような負に荷電可能な基を多数有するため、ポリアニオン系ポリマーと呼ばれることが多い。
ポリアニオン系ポリマーの例としては、例えば、ポリスルホン酸、例えばポリビニルスルホン酸、ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム)(PSS)などのポリ(スチレンスルホン酸)、スルホン化ポリ(テトラフルオロエチレン)など、ポリビニルスルホン酸などのポリビニル硫酸などのポリ硫酸、アクリル酸ポリマーなどのポリカルボン酸とその塩(例えば、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩など)、例えば、BASF Resins社およびDSM Resins社から入手可能なもの、メタクリル酸ポリマーとその塩(例えば、EUDRAGIT(登録商標)、メタクリル酸とエチルアクリル酸のコポリマー)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルアミロースおよびその他の各種ポリマーのカルボン酸誘導体、ポリアニオン系ペプチドおよびタンパク質、例えばグルタミン酸、アスパラギン酸またはその組合せなどの酸性アミノ酸のホモポリマーおよびコポリマーなど、マンヌロン酸、ガラクツロン酸およびグルロン酸などのウロン酸のホモポリマーおよびコポリマーとその塩、アルギン酸とその塩、ヒアルロン酸とその塩、ゼラチン、カラゲナン,各種ポリマーのリン酸誘導体などのポリリン酸、ポリビニルホスホン酸などのポリホスホン酸、とりわけ上記物質のコポリマー、塩、誘導体および組合せが挙げられる。いくつかの実施形態では、高分子樹脂は、アクリル系ポリマー、すなわち、アクリル酸またはアクリル酸誘導体(例えば、メタクリル酸またはアクリル酸エステル)から生成されるポリマーまたはコポリマー、例えばポリアクリル酸またはアクリル酸−スチレンコポリマーを含む。名目上、高分子樹脂は、アクリルスチレンコポリマーであってもこれを含むものであってもよい。いくつかの実施形態では、高分子樹脂は、主として、またはもっぱら、アクリルポリマーおよびアクリル−スチレンコポリマーから選択されるアクリル系ポリマーを含む。いくつかの場合には、高分子樹脂は少なくとも部分的に水溶性であり、いくつかの場合には、高分子樹脂は水分散性であり、乳濁液またはコロイドとして準備され得る。
有機高分子樹脂は多数存在し、インク組成物の調製の役立つと認められている多くのものが市販されており、この業界の当業者には公知である。このようなポリマーは一般に、インク樹脂として十分に確立されたものであっても、この分野でそれほど典型的ではないものであっても、取込み(例えば、封入)または別の方法で適切な着色剤を固定化する、あるいは物理的相互作用、共有結合性相互作用またはイオン相互作用を介してこれと結合する働きがあるほか、最終的にはインク画像が印刷済み基板に付着するのを可能にする。このため、このような高分子樹脂は結合剤と呼ばれることが多い。一部のポリマーは、上記のものに代えてまたは加えて、分散剤として働き、インク処方物を所望の懸濁液または乳濁液の形態で維持し得る。有機高分子樹脂の正確な機能は、具体的な処方物に応じて変化し得るか、2つ以上の機能を含み得るが、本明細書中では、通常最終的なインク組成物中に存在するそのようなポリマーのほとんどを占める主要な結合剤機能を指すのに用いられる。
水分散性熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、線状および分岐鎖アクリルポリマー、アクリルスチレンコポリマー、スチレンポリマー、ポリエステル、コポリエステル、ポリエーテル、ポリアミドまたはポリエステルアミド、ポリウレタンおよびポリアミンが挙げられる。このようなポリマーには通常、その平均分子量(MW)、ガラス転移温度(T)または軟化温度、最低フィルム形成温度(MFFT)、硬度、最終的に印刷されたインクの光沢または印刷済み基板への付着または摩耗に対する耐性に寄与する能力に関する基礎データが供給されている。一部のポリマーはその反応性またはその官能基の密度によって特徴付けられ、酸価またはヒドロキシル価はそのような能力の例ではあっても、そのものではない。
インク処方者は、上記のようなパラメータに精通しており、適切な有機高分子樹脂の選択が意図する目的によって決まることを容易に理解するであろう。例えば、印刷済み画像を艶消しにしようとする場合または独自に所望の視覚効果が得られるようにインク画像をさらにワニスで積層もしくはコーチングしようとする場合、結合剤は高光沢が得られるものである必要はない。このような光沢に関する情報は一般に、供給元によって提供されるが、例えば、入射角を固定して光沢計を使用することにより、独自に測定することができる。単一角度75°のMicro−gloss(BYK−Gardner、Germany)光沢計を用いて、65〜70を上回る光沢を示す印刷物は光沢があるとみなされるのに対して、光沢が65を下回る印刷物は艶消しであるとみなされる。
同様に、積層またはワニスがあれば、良好ないし極めて優れた耐摩耗性が得られるポリマーを選択する必要性が減少し得る。各供給元は、標準的な耐性試験ASTM D5264のバリエーションを用いて、この特性を評価し得る。コーチング保護がなく、印刷製品をこするつもりであるか、こすられる可能性がある場合、耐摩耗性の高いポリマーが好ましいはずである。ポリマーの硬度は、ポリマーが所望の耐摩耗性を有し得るインクフィルム画像を形成する能力と相関することが理解される。したがって、特定の目的には、良好ないし極めて優れた硬度を有する樹脂が好ましい。
このようなコーチングはほかにも、特定の基板へのインク画像の接着を改善し得る。ポリマーが有する必要のある接着力は、意図する基板によって左右されることが理解される。一部の有機樹脂は、通常は表面粗さが比較的低い被覆基板または合成基板に対して良好な接着が得られる。このほか、優れた性能を有し、上記のものに加えてまたは代えて、ほとんどの非被覆印刷基板のようなさらに表面粗さの高い基板に接着することが可能な樹脂もある。樹脂はほかにも、商業印刷の分野でよく用いられるセルロース系、無セルロース、プラスチック系または金属系の印刷基板に適するように選択してもよい。適切な有機高分子樹脂は、必ずとは言えないものの、広範囲の可能な基板に適するという点で有利である。選択した基板に接着するこの性能は、樹脂製造業者によって提供されなくても、意図する印刷基板にテープ付着試験を用いて容易に評価することができる。
酸価は中和価とも呼ばれ、ある化学物質1グラムを中和するのに必要な水酸化カリウム(KOH)の量のミリグラム数と関係がある。酸価は通常、製造業者によって提供されるが、その定義に従って容易に測定することが可能である。酸価が高い樹脂は、水に曝露したときの安定性(耐水性)が低いインクフィルムが得られることが予想されるため、意図する印刷物の用途が、このような樹脂を含むフィルムに悪影響を及ぼす条件に曝露し得るものである場合、避けるべきである。本発明に適した樹脂は一般に、酸価が220未満、180未満、150未満、120未満、100未満または90未満である。いくつかの実施形態では、有機高分子樹脂は、酸価が20〜220、60〜100、特に70〜90である。
いくつかの実施形態では、特にポリエステル樹脂またはポリエステル系樹脂を用いる種々の実施形態に関して、酸価は、15未満、12未満、10未満、7未満、5未満または2.5未満であり得る。このような高分子樹脂は、酸価が0〜15、0〜10、特に0〜5または1〜5であり得る。
アクリル系ポリマーなどの高分子樹脂は、アルカリ性pHで負に荷電し得る。このため、いくつかの実施形態では、高分子樹脂は7.5超、8超または9超のpHで負荷電を有する。さらに、高分子樹脂の水への溶解性または分散性は、pHによって影響され得る。このため、いくつかの実施形態では、処方物はpH上昇化合物を含む。このような化合物の例には、ジエチルアミン、モノエタノールアミンおよび2−アミノ−2−メチルプロパノールがある。このようなpH上昇化合物をインクに含ませる場合、一般に少量で、例えば、処方物の約1重量%、通常、処方物の約2重量%以下で含ませる。
このような樹脂の特徴はヒドロキシル価によって表される。ヒドロキシル価は化合物中の遊離ヒドロキシル基の含有量の尺度となるため、通常、エステルに関して用いられる。ヒドロキシル価は、提供されていなくても、当該技術分野で公知のように、目的とする化合物の遊離ヒドロキシル基をアセチル化し、標準的な滴定および計算を実施することによって求めることができる。この値を評価するのに用いられる化学反応には、第一級または第二級アミンなどの他の官能基が関与し得るため、これらもヒドロキシルとして報告され得る。このため、ヒドロキシル価は、樹脂のより一般的な反応性/官能性を評価するのに役立ち得る。ヒドロキシル価は、同じ材料の非アセチル化試料の滴定によりカルボキシルヒドロキシル基について補正した、化学物質1グラムのヒドロキシル含有量に相当する水酸化カリウム(KOH)の量のミリグラム数として表される。いくつかの適切な樹脂、例えば、コポリエステル樹脂を含めたポリエステル樹脂またはポリエステル系樹脂、線状および分枝鎖ポリエステル樹脂またはコポリエステル樹脂は、ヒドロキシル価が15〜60、25〜55または35〜50であり得る。
さらに、適切な樹脂は、のちの節でさらに詳細に説明する熱−流動学的条件を満たすのが好ましい。このような流動学的パターンも同じく、意図する目的に適合させることができる。例えば、表面粗さが低い印刷基板に使用する場合、乾燥インクフィルムの高温時の粘度を、これよりも表面粗さが高い基板に接着させることを意図する乾燥インクフィルムの粘度よりも高くし得る。換言すれば、非被覆基板に適合させるインク組成物は、画像が表面構造の外郭に沿いやすくなり、これにより接触面積が増大して接着しやすくなるように、比較的粘度を低くする必要がある。全般的なことを述べると、本明細書に記載される印刷工程に使用するうえで、本開示のインク処方物に含ませる有機高分子(結合剤)樹脂の選択には、画像形成部でインクを射出する温度、インクジェットヘッドのタイプ(コンティニュアスインクジェット(CIJ)またはドロップオンデマンド(DOD)方式など)、インクが中間転写成員と接触する温度、転写成員上でインクを乾燥させる温度のほか、圧部でインクを転写成員から意図する印刷基板に転写する温度をさらに考慮に入れ得る。
いくつかの実施形態では、適切な有機高分子樹脂は、アクリルポリマー、アクリルスチレンコポリマー、スチレンポリマー、ポリエステルを含む。ほかの実施形態では、樹脂は、Joncryl(登録商標)90,Joncryl(登録商標)530,Joncryl(登録商標)537E,Joncryl(登録商標)538,Joncryl(登録商標)631,Joncryl(登録商標)1158,Joncryl(登録商標)1180,Joncryl(登録商標)1680E,Joncryl(登録商標)1908,Joncryl(登録商標)1925,Joncryl(登録商標)2038,Joncryl(登録商標)2157,Joncryl(登録商標)Eco2189,Joncryl(登録商標)LMV7051,Joncryl(登録商標)8055,Joncryl(登録商標)8060,Joncryl(登録商標)8064,Joncryl(登録商標)8067(いずれのアクリル系ポリマーもBASFから入手可能である);Dynacoll(登録商標)7150,Desmophen(登録商標)XP2607およびHoopol(登録商標)F−37070(いずれのポリエステル系ポリマーも、それぞれEvonik、Bayer社およびSynthesia International社から入手可能である)ならびに他の任意の市販されているその化学的同等物を含む群から選択される、1つまたは複数のポリマーである。便宜のため、上に挙げた材料に関してそれぞれの供給元によって提供されるデータを以下に複製する。比較目的で分散剤のJoncryl HPD296を含めた。
Figure 2016539240
Figure 2016539240
樹脂の分子量を限定する必要はない。いくつかの実施形態では、樹脂は、平均分子量が少なくとも1,200、少なくとも1,500、少なくとも2,000または少なくとも5,000、少なくとも25,000、少なくとも50,000、少なくとも100,000、少なくとも150,000または少なくとも200,000である。いくつかの実施形態では、適切な有機高分子樹脂、特にコポリエステル樹脂、線状および分枝鎖ポリエステル樹脂またはコポリエステル樹脂を含めたポリエステル樹脂またはポリエステル系樹脂は、平均分子量がせいぜい12,000、せいぜい10,000、せいぜい8,000、せいぜい6,000、せいぜい5,000、せいぜい4,000、せいぜい3,500またはせいぜい3,000であり得る。
以下の実施例は、本開示の教示によるインクジェットインク処方物を説明するものである。
材料および化学薬品は、以下のものを含めた様々な製造業者から購入したものである:
Figure 2016539240
以下の処方物は、示される製造業者それぞれの商標の下で供給される材料を用いて調製されたものであるが、このような成分は、化学式が類似した他の市販の化合物に置き換えることが可能である。
簡潔にするため、以下の処方物は、ブラック(K)のカラーインクに役立つ顔料としてカーボンブラックを用いたものにする。以下の処方物の一部は、ブラック顔料で示される濃度と同じ濃度のシアン顔料(例えば、PV Fast Blue BG)、マゼンタ顔料(例えば、Cromophtal(登録商標)Jet Magenta DMQ)またはイエロー顔料(例えば、Hansa Brilliant Yellow 5GX03)を用いて調製し、それぞれシアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)のインクを得たものである。ブラックインクで得られた結果は、それぞれのしかるべき実施例の番号で呼ぶ。ブラック以外の色に関してこのような結果を示すか、論じる場合、その具体的な色の一文字表記で示す。例えば、「Ex.4C」は、実施例4に開示されるシアン版の処方物に対応する。同様に、以下の処方物の一部は、顔料の代わりに染料を用いて調製したものである。本発明のインク処方物とともに試験した被験染料には、Basonyl(登録商標)Red485およびBasonyl(登録商標)Blue636を含めた。このような処方物に適し得る代替的な着色剤(顔料、染料を問わない)は、印刷インク処方の分野の当業者であれば容易にわかる。
高分子結合剤樹脂は、非晶質構造または結晶構造などの各種の固体形態を含めた多数の形態で市販されている。樹脂は、自由流動粉末およびペレットとして入手可能である。樹脂は、通常、適切な添加剤を配合した乳濁液または懸濁液として、液体形態で入手可能である。さらに、このような市販の樹脂は、それぞれが固有の特徴的な粒子サイズ分布を有し得る。
公知のように、組成物の粘度は、それが含有する成分の種類、各成分に固有のレオロジー特性および成分の濃度に影響され得る。インク処方物の分野の当業者に理解される通り、同じ量の材料であっても、粒子サイズが小さい方が、材料本来の物理化学的特性の一部を変化させることができる相互作用に利用可能な表面積が大きくなるため、粘度は粒子サイズにもある程度され得る。ただし、粒子サイズはパラメータの1つに過ぎないため、これを限定する必要はない。
いくつかの実施形態では、樹脂は、平均粒子サイズd50が3マイクロメートル(μm)以下、1μm未満、0.5μm未満、400nm未満、300nm未満、200nm未満または100nm未満である。
液体形態で入手可能な樹脂で本発明の実施形態に従ってインクを調製する基本手順は以下の通りである:まず、蒸留水、高分子樹脂または分散剤の少なくとも一部(通常、約20%)および着色料(使用する場合)を混合し、当該技術分野で公知の手順により、任意のしかるべき装置を用いて、適切な粒子サイズに達するまで粉砕することによって、顔料または染料の濃縮物を調製する。ステップで分散剤を使用した場合、その着色料との比は通常、1:1であった。あるいは、市販のナノ顔料(例えば、d50が1μm未満のもの)またはサブミクロンないし低ミクロン範囲の樹脂(例えば、d50が5μm未満のもの)を本開示のインク処方物の調製に容易に使用し得る。pH上昇化合物を使用する場合、このステップに含めてもよい。粉砕工程は、動的光散乱粒子サイズ分析器(例えば、Malvern Instruments社(英国)のZETASIZER(商標)Nano−S、ZEN1600)を用いた粒子サイズ測定値に基づき、標準的技法を用いてモニターした。特に明記されない限り、この工程は、平均粒子サイズ(d50)が約70nmに達した時点で停止させた。
次いで、残りの材料を顔料濃縮物に加えて混合した。混合後、0.5μmフィルタでインクを濾過した。このようにして得られたインクの粘度を、粘度計(Brookfield社製のDV II+Pro)を用いて25℃で測定したところ、通常、約2cP〜25cPの範囲内にあった。標準的な液体張力計(Kruss社製のEasyDyne)を用いて表面張力を測定したところ、概ね約20〜30mN/mの範囲内にあった。得られたpHは通常、6.5〜10.5の範囲内にあり、より通常には7.0〜9.0の範囲内にあった。
他の実施形態では、高分子樹脂が固体形態で入手可能な場合、代替的手順を用いることができる。通常、樹脂を分散剤とともに十分に粉砕した後、着色剤をはじめとするインク処方物のあらゆる成分と混合する。本明細書に開示される一部の処方物の調製では、Dynacoll(登録商標)7150(Evonik、フレーク)37.5gと、Dispex Ultra PX4575(BASF、EFKA(登録商標)4575としても知られる)93.75gと、蒸留水131.25mlとからなるスラリーを、セラミック製の内表面および0.8mmのジルコニアビーズを有するボールミル(Atrittor 0S、Union Process、USA)に入れ、5℃で48時間粉砕した。次いで、粉砕されたスラリーを着色剤の濃縮物(例えば、標準的な粉砕装置内で分散剤により分散させたブラック顔料)と所望の比で混合した。本実施形態では、樹脂と分散剤の比が最終的に1:0.35になるように顔料を同じDispex Ultra PX4575で分散させた。所望に応じて、樹脂−顔料混合物に軟化剤を添加し、必要であれば水を添加して、最終処方物を得た。次いで、完全に処方されたインクをかき混ぜ、0.5μmのフィルタで濾過した。粘度、表面張力およびpHを上記の通りに測定した。
上に挙げた例示的方法によって調製されたインク処方物の一部のリストを以下に示す。各成分の含有量はストック材料の重量パーセント(重量%)で表し、重量パーセントは、液体または固体の化学薬品、目的とする材料を含む希釈した溶液、懸濁液または乳濁液を問わず、最終処方物の総重量に対するものである。固体含有量が少なくとも45%の濃縮版(実施例42を参照されたい)および約80%(実施例40および41)の濃縮版についても記載する。本発明に関連する分野の当業者であれば、同じように適し得る調製方法がほかにもあることが容易に理解されよう。
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本発明のインク処方物には様々な市販のナノ顔料を用い得る。これらは、Cabot社製のCAB−O−JET(登録商標)352K、Hostajet Magenta E5B−PTおよびHostajet Black O−PT(ともにClariant社製)などの顔料調製物ならびにCromophtal Jet Magenta DMQおよびIrgalite Blue GLO(ともにBASF社製)などの分散後工程が必要な顔料を包含する。
当業者であれば、本発明のインクまたはインクジェットインク処方物には様々な既知の着色料および着色料処方物を用い得ることを容易に理解し得る。一実施形態では、このような顔料および顔料処方物は、インクジェット着色料およびインクジェット着色料処方物を含むものであるか、本質的にそれよりなるものであり得る。
上記のものに代えてまたは加えて、着色料は染料であり得る。本発明のインク処方物中に用いるのに適した染料の例としては、以下のものが挙げられる:Duasyn Yellow 3GF−SF液、Duasyn Acid Yellow XX−SF、Duasyn Red 3B−SF液、Duasyn Cyan FRL−SF液(以上Clariant社製);Basovit Yellow 133、Fastusol Yellow 30L、Basacid Red495、Basacid Red510液、Basacid Blue 762液、Basacid Black X34液、Basacid Black X38液、Basacid Black X40液(以上BASF社製)。
市販の製品を含めた様々な適切な分散剤が当業者によって選択され得る。このような分散剤としては、高分子量ポリウレタンもしくはアミノウレタン(例えば、Disperbyk(登録商標)198)、スチレン−アクリルコポリマー(例えば、Joncryl(登録商標)HPD296)、修飾ポリアクリル酸ポリマー(例えば、EFKA(登録商標)4560、EFKA(登録商標)4580)、制御されたフリーラジカル重合化によって作製されたアクリルブロックコポリマー(例えば、EFKA(登録商標)4585、EFKA(登録商標)7702)、スルホスクシナート(例えば、Triton GR、Empimin OT)、アセチレンジオール(例えば、Surfynol CT)、カルボン酸のアンモニウム塩(例えば、EFKA(登録商標)7571)、カルボン酸のアルキロールアンモニウム塩(例えば、EFKA(登録商標)5071)、脂肪族と酸性基とのポリエーテル(例えば、EFKA6230)またはエトキシ化非イオン性脂肪族アルコール(例えば、Lumiten(登録商標)N−OC30)を挙げ得る。
いくつかの実施形態では、高分子樹脂、着色料、水および任意選択の共溶媒に加えて、界面活性剤を少量、例えば、インクの0.5〜1.5重量%含むのが望ましい場合がある。このような界面活性剤は湿潤剤および/または平滑剤としての役割を果たし得る。いくつかの実施形態では、界面活性剤は非イオン性界面活性剤である。湿潤剤および/または平滑剤の例示的種類としては、シリコーン、修飾有機ポリシロキサンおよびポリエーテル修飾シロキサン(例えば、BYK社のBYK(登録商標)−307、BYK(登録商標)−333、BYK(登録商標)−345、BYK(登録商標)−346、BYK(登録商標)−347、BYK(登録商標)−348もしくはBYK(登録商標)−349またはBASF社のHydropalat WE3240)が挙げられる。このほか、Capstone FS−10、Capstone FS−22、Capstone FS−31、Capstone FS−65(DuPont社)、Hydropalat WE3370およびHydropalat WE3500などのフッ素系界面活性剤が適し得る。ブロックコポリマー(例えば、Hydropalat WE3110、WE3130)、スルホスクシナート(例えば、Hydropalat WE3475)およびアセチレンジオール誘導体(例えば、Hydropalat WE3240)などの炭化水素系界面活性剤を湿潤剤および/または平滑剤として用いてもよい。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの保湿剤を含ませるのが望ましい場合がある。水と混和する保湿剤の例には、グリコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、オリゴまたはポリエチレングリコール、オリゴまたはポリプロピレングリコール、グリセロールおよびグリコールエーテルなど;N−メチルピロリドンおよび2−ピロリドンなどの窒素含有溶媒;ならびにジメチルスルホキシド(DMSO)などの硫黄含有溶媒のほか、これらの混合物がある。
当業者には、本発明のインク処方物に使用するのに適し得る様々な他のまたは追加の分散剤、保湿剤および湿潤/平滑剤が明らかであろう。
熱−流動学的特性
インク処方物を使用することができる本発明の工程は、画像転写成員の表面での転写時、インクフィルムまたは画像を加熱して、インク画像から水性担体を蒸発させることを含み得る。加熱はほかにも、インク粘度の減少を促進して、ITMから基板への転写条件を可能にする。インク画像は、水性担体の蒸発後に残存する有機高分子樹脂および着色料の残渣フィルムが(例えば、樹脂の軟化によって)粘着性になる温度まで加熱し得る。
印刷基板に転写する直前、画像転写成員の表面の残渣フィルムは、乾燥しているか、実質的に乾燥していてよい。フィルムは、インク処方物からの樹脂および着色料を含む。残渣フィルムはさらに、通常はインクのpHにおいて(すなわち、射出前に)可溶性である、1つまたは複数の界面活性剤または分散剤を少量含み得る。
インク残渣フィルムは、それが圧胴に到達する前に粘着性にされ得る。この場合、フィルムは、基板との接触および環境への曝露によって圧部で冷却され得る。既に粘着性であるフィルムは、圧力下で押しつけられる基板に直ちに接着し、フィルムの冷却は、基板への接着性を損なわずに、画像転写成員からフィルムがきれいに剥がれ落ちる程度に画像転写面へのフィルム接着性を低下させるのに十分なものであり得る。
粘性(または粘着性)は、ある材料が軽圧力下で表面に直接接触して結合することを可能にするその特性と定義される。粘着性能は、材料(高分子樹脂またはインク固形物)の種々の粘弾特性と強い相関がある。粘性および弾性の両方が重要であると思われる。つまり、粘性は少なくとも部分的には、材料が表面全体に広がり、密な接触を形成する能力に特徴を明らかにするものであり、弾性は少なくとも部分的には、材料の結合強度を明らかにするものである。上記のものをはじめとする熱−流動学的特性は速度および温度に依存する。
画像形成部を低温で作動させることに付随する重要な問題点については既にいくつか記載した。簡潔に述べれば、画像形成部での温度を低くすると、インク担体の蒸発によって生じるノズル詰まりが軽減され、次いでそれほど厳密ではない作動条件に曝されるブランケットの寿命が延び得るが、担体の蒸発温度を下回るまで画像形成部下方のブランケット区画の温度を低下させることによって、それ独自の問題点が生じる。インクはプリントヘッドノズルから射出できる状態に保たれる必要があると同時に、付着した滴は、蒸発速度が大幅に低下することを主な理由に、同じ処方物でより高い温度において得られる粘度より粘土が低下してもITMの外表面に容易に付着する必要がある。このようなインク滴は、ITM表面に付着したら直ちに、インク担体が完全に蒸発するまでの間ブランケット上のインク滴の位置および形状の乱れを防止する膜を形成することができる必要がある。インク射出および画像形成前にブランケットを状態調節溶液で処理することによって接着を促進する必要がある場合、ほかにも、任意選択の状態調節剤との相互作用の種類が温度に影響され得る。
生じたインク滴は次いで、加熱され、乾燥させられ、印刷基板に転写されて、残渣インクフィルムを生じる。本発明のインク処方物から生じ、実質的に本明細書に記載されるように処理され得るこの残渣フィルムは、以下のようないくつかの顕著な特徴を有し得る:
・フィルム厚が極めて薄い(通常、単一層フィルムで約0.5μm);
・温度勾配がある:フィルムのZ軸(厚みの方向)に沿う位置に応じて温度差がある;
・ITMとそれに隣接するフィルム表面との間の境界面を含め実質的に、または完全に乾燥したフィルムである;および
・ITMを剥がして残渣フィルムに不可欠な部分を形成する点で有利であり得る本発明の状態調節層を有する。
さらに、この工程は、本発明の残渣フィルムが低温(例えば、140℃未満、120℃未満、100℃未満または90℃未満)でITMから印刷基板へ容易に転写されるのに十分な流動性を有することが必要であり得る。この工程はほかにも、残渣フィルムが他の表面に接着する傾向を生じずに低温(例えば、55℃未満)で印刷基板に「永久的に」接着する程度に十分な流動性を、そのような温度で有することが必要であり得る。
残渣フィルムの熱−流動学的特徴の適切な選択により、冷却の作用は残渣フィルムの結合を増大させることになり得、それにより、この結合が転写成員へ接着を上回り、残渣フィルムのすべてまたは実質的にすべてが画像転写成員から分離し、基板上にフィルムとして押しつけられる。このようにして、フィルムにより被覆される面積もその厚みも大幅に変化させずに、残渣フィルムを確実に基板上に押しつけることが可能になる。
本発明者らは、乾燥している、または実質的に乾燥しているインク残渣またはインク残渣フィルムが、60℃〜87.5℃の第一範囲内にある少なくとも1つの第一温度で、10cP〜5・10cPの範囲内の第一動的粘度を有するのが有利であることを発見した。本発明者らは、このような第一動的粘度が、乾燥インクフィルムを極めて低い転写圧でITMから様々な繊維性基板(例えば、塗工紙、非塗工紙およびボール紙)および非繊維性基板(例えば、様々な種類のプラスチック)に低温で極めて効果的に転写することと関係があり得ることを発見した。
本発明者らはさらに、インク残渣フィルムが、50℃〜55℃の第二温度範囲にある少なくとも1つの第二温度で、少なくとも7・10cPの第二動的粘度を有するのが有利であることを発見した。このような粘度および温度では、残渣フィルムは、印刷基板の表面と良好に接触すると同時に、インクフィルム冷却時に表面の粘性が他の表面との接触を妨げるのに十分な程度低くなるように、十分な流動性を示し得る。
熱−流動学的特性の測定
TM−PE−P Peltierプレート温度モジュールおよびP20 Ti L測定幾何学的構造またはPP20ディスポーザブル(紡錘)を有するThermo Scientific HAAKE Mars III流量計を用いて、粘度温度ステップスイープを実施した。
直径2cmのモジュールに入れた深さ1mmの実質的に乾燥したインク残渣の試料を試験した。熱−流動学的評価の前に、試料の重量が実質的に一定に保たれ、通常、不揮発性物質に基づいて予測される重量に達するまで、試料をオーブンで作動温度100℃〜110℃にて一晩乾燥させた。通常、試料は真空度10mbar(絶対真空度)で一晩(すなわち、少なくとも12時間、最大18時間)乾燥させ、視覚的にも触覚的にも乾燥しているが確認されてから、流量計モジュールに導入した。
直径2cmのモジュールに一定体積の試料(ペレット)を挿入し、試料表面と紡錘との間に十分な接触が生じるように、穏やかに加熱(通常、80℃で1分未満)することによって軟化させた。次いで、紡錘を下げることにより試料体積を所望のサイズまで減少させて、試料体積を所望の深さ1mmまで減少させた。
試料温度を温度傾斜方式で低温(通常、45℃〜55℃、具体的には約50℃)にて120秒間安定させた後、高温(通常、150℃〜190℃、具体的には約180℃)まで上昇させた。
それぞれ「長時間法」および「短時間法」と呼ばれる2つのレジメンで測定を実施した。長時間法では、温度が約0.08℃/秒の速度で約110℃まで上昇し、さらに高い温度(110℃超)では約0.04℃/秒の速度で上昇するよう設定した。約10℃間隔で粘度測定を実施し、各時点では反復測定を20回実施した。次いで、試料温度を高温で120秒間安定させた後、同じ速度で低温まで低下させた。110℃までは1〜500Paの応力下で、110℃〜180℃は5Paの応力下で、1Hz(Ω=6.2832rad/秒)の周波数にて振動温度スイープを実施した。
短時間法では、温度が約0.11℃/秒の速度で約110℃まで上昇し、さらに高い温度では約0.07℃/秒の速度で上昇するよう設定した。約110℃までの範囲では、約90秒間隔で粘度測定を実施し、各時点では反復測定を10回実施した。次いで、試料温度を目標の高さの温度まで940秒間上昇させ、この時点で最後の粘度測定を実施し、低温まで戻さなかった。紡錘は1Hzの周波数で振動するよう設定した。
この実験設定で使用した流量計は、所与の温度について、100℃の温度まで、反復測定を最大10回実施するものであり、各測定の精度は流量計によって順位が付けられ、訓練を受けた操作者が必要に応じて、線形的な粘弾性の範囲内にある最も代表的な値(通常、所与の温度で実施した一連の測定のうち少なくとも最後の3回の測定値)を手動で選択することが可能なものであった。110℃超では、試料は全般的に粘性であり、その線形的粘弾性の範囲は全般的に、自動測定を実施するのに十分なものであった。
再現性に問題があることが明らかになった試料については、剪断力10Pa(0.5Hz)の周波数で60秒間、120℃で振動を実施して20時点を取り;同じ条件下で600秒間、120℃〜50℃で振動を実施し;剪断力10Pa(0.5Hz)で60秒間、120℃で振動を実施して20時点を取ることによって、その試料の「メモリ」を格下げするか、実質的に消去し得る。
当業者であれば、紡錘および/またはステージへの接着が不十分な試料物質は、その試料物質に固有の熱−流動学的特性が反映されていないか、十分には反映されていない結果を示し得ることが理解されよう。そのような場合、試料物質の特性に適するもので利用可能なほかの手段によって粘度を評価しなければならないことが、当業者には容易に理解されよう。
例えば、メルトフローインデクサーを用いて乾燥インク処方物のメルトフローインデックス(MFI)を決定し得る。このような装置は、代替(の)規定の選択温度で規定の選択重量によって圧力が加えられた結果、予めセットした時間(例えば、10分)ごとに特定の直径と長さを有するキャピラリの中を流れる質量のグラム数をモニターするものである。大まかに言えば、このような方法によって測定される溶融流れ速度は、被験条件における溶融物の粘度に反比例する。このような測定値には基準が存在する。このような装置を用いて、物質の流動性の特徴を複数の個別の温度の関数として明らかにし得る。
本明細書およびのちの特許請求の範囲の節では、動的粘度に関する値は、上記の「短時間法」によって定量的に決定されるものである。
振動周波数を1.0Hzから0.1Hzまで減少させた種々の実験および/または温度上昇速度を約2℃/分から約10℃/分までは止めた種々の実験を実施した。このような修正は、試料に観察される熱−流動学的挙動にはあまり影響を及ぼさなかった。
熱−流動学的結果
図4Aは、本発明のインク処方物を含めた様々なインク処方物の残渣フィルムの動的粘度の温度スイーププロットを温度の関数として示している。実施例1〜4、7〜15、18、20、23、24、28、31および33のインク処方物の乾燥インク残渣に対応する20のプロットが示されており、粘度軸の範囲は1・10cP〜1・10cPである。乾燥インク残渣は、のちに示す乾燥手順を用いて得られたものである。
上記の通り、乾燥インク残渣は、50℃〜55℃の温度範囲内では少なくとも7・10cPの動的粘度を示すのが有利であり得る。乾燥インク残渣は、少なくとも8・10cP、少なくとも9・10cP、少なくとも1・10cPまたは少なくとも1.5・10cPの動的粘度を示すのが有利であり得る。このような粘度および温度では、残渣フィルムは印刷基板との良好な接着を示し得ると同時に、表面の粘性は他の表面との接着を妨げるの十分な程度に低い。
図4Aにプロットされている最初の方形窓(W1)は、温度スイープ内の60℃〜約87.5℃において乾燥インク残渣に適した粘度を示している。本発明者らは、低温で良好な転写特性を示す残渣フィルムは全般的に、この窓内に収まる温度スイープ粘度曲線を示すことを発見した。
同じく図4Aにプロットされている方形窓(W2)は、温度スイープ内の50℃〜55℃において乾燥インク残渣に適した粘度を示している。当然のことながら、乾燥インク残渣は、プロットの上限、すなわち1・10cPを上回る粘度を有するのが有利であり得る。
本発明のインクフィルム構築物および本発明のインク処方物では、残渣フィルムについて温度の関数として表した動的粘度の温度スイーププロットは、両方の窓(W1、W2)の範囲内に収まり得る。
図4Bは、様々なポリエステル樹脂を含有する本発明のインク処方物の乾燥インク残渣について温度の関数として表した動的粘度の温度スイーププロットを示している。示されるプロットは実施例34〜39のインク処方物の乾燥インク残渣に対応し、粘度軸の範囲は目的の領域を拡大するため1・10cP〜1・10cPとなっている。乾燥インク残渣は、後に示す乾燥手順を用いて得られたものである。
本発明のインクフィルム構築物および本発明のインク処方物では、ポリエステル系樹脂を含有する残渣フィルムについて温度の関数として表した動的粘度の温度スイーププロットは、図4Bに切り取った形で示されている両方の窓(W1、W2)の範囲に収まり得る。
このことは図5を用いてさらに明瞭に示され得る。図5は、一部が図4Aおよび4Bに示される様々なインク処方物の代表的な乾燥インク残渣について温度の関数として表した、動的粘度の温度スイーププロットを示している。グラフの上左隅付近では、残渣#16(実施例16の処方物#16のもの)の温度スイープが約1・10cPの粘度でW2を通過している。55℃超の温度では、残渣#16の粘度は単調に減少している。しかし、その傾き(または負の傾き)は、残渣#16の熱−流動学的プロットがW1を通過するには決して十分なものではない。同様に、残渣#19(実施例19のもの)の温度スイープも1・10cP超の粘度でW2を通過するように思われる。55℃超の温度では、残渣#19の粘度は残渣#16の粘度よりも急勾配で低下している。しかし、その傾きも依然として残渣#19の熱−流動学的プロットがW1を通過するには不十分なものである。しかし、残渣#16および残渣#19はともに、W1の範囲を広げて拡張し、窓が100℃、105℃または110℃まで延長され、上方へ7・10cP、1・10cP、2・10cPまたは3・10cPまで延長されたものであるW’(図示されていない)を通過している。このW’の領域は目的とする領域であり、本明細書に開示されるシステム、工程およびインク処方物によって用いられ得るものである。
残渣#2(実施例2で得られた本発明のインク処方物のもの)の温度スイープは、1・10cPに近い粘度でW2を通過し、約55℃超の温度では、粘度は単調に減少している。しかし、前の実施例によって示された熱−流動学的挙動とは対照的に、その勾配は、残渣#2の熱−流動学的プロットがW1を通過するのに十分であると容易に言えるものである。
残渣#34(実施例34で得られた本発明のインク処方物のもの)の温度スイープは、約7・10cPの粘度でW2を通過し、55℃超の温度では、粘度は単調に減少している。しかし、その勾配は残渣#2および残渣#19に対して低いものとなっている。
次に残渣#8(実施例8で得られた本発明のインク処方物のもの)に関して、温度スイープは2・10cP付近の粘度でW2を通過している。55℃超の温度では、粘度は単調に減少し、その傾きは残渣#2のものと同程度である。温度スイープはW2の中央の領域を通過している。
残渣#7(実施例7で得られた本発明のインク処方物のもの)のは残渣#8と同じく、温度スイープが約2・10cPの粘度でW2を通過している。55℃超の温度では、粘度は急激に減少し、このため、スイープがW1の下左隅下付近を通過し、粘度が約70℃で1・10cPに達している。
残渣#15(実施例15で得られたインク処方物のもの)の温度スイープは、傾きが残渣#7のものとほぼ同じであったが、残渣の低温での流動性は、温度スイープがW1およびW2の両方の範囲から外れる程度に十分に高いものであった。
残渣#14(実施例14で得られたインク処方物のもの)温度スイープはW1を通過しているが、50℃〜55℃の低温では、本発明による乾燥インク残渣に必要な粘度がみられない。
図6は、本発明のインク処方物の代表的な乾燥インク残渣対いくつかの市販のインクジェットインクの乾燥インク残渣について温度の関数として表した、動的粘度の温度スイーププロットを示している。本発明のインク処方物2、7および8の乾燥インク残渣は、図5に関して上に記載したものであり;残渣#35は、実施例35で得られた本発明のインク処方物を乾燥させることによって得られたものである。市販のインクジェットインクは、Canon社、Epson社、HP社およびToyo社のブラックインクであり、それぞれに名前が付してある。
プロットおよび粘度の大きさから、各種の従来技術インク処方物の乾燥インク残渣は、測定した全範囲の温度にわたって流動挙動を示さないか、実質的に示さないことが明らかである。従来技術処方物の一部のプロットには極めて高い粘度が認められたが、このことに物理的意味はないものと思われる。重要なのは、60℃〜87.5℃の温度範囲内では、従来技術残渣フィルムはいずれも、W2の上限である5・10cPの2桁半上方にある1・1010cPを上回る最小粘度を示しているということである。
実際、本発明の発明者らは、本発明のいずれのインク残渣も印刷基板に良好に転写したが、従来技術フィルムはいずれも、160℃以上に加熱した後でも印刷基板に転写することができなかった。
上の実施例に記載した通りに調製したインク処方物の印刷基板への転写性を以下のように評価した:通常は70℃〜130℃、特に目的とする範囲は70℃〜90℃である所与の表面温度に予め加熱したホットプレート上の大きさ約20cm×30cmの印刷ブランケットの外表面に被験処方物を塗布した。特に明記されない限り、この表面はシラノール末端化ポリジメチル−シロキサンシリコーン(PDMS)放出層を含むものであった。状態調節溶液は一般に、水に0.3重量%のポリエチレンイミン(水で1:100に希釈したLupasol(登録商標)PS;PEI)を含むものとし、Statitech 100%ポリエステルクリーンルームワイパーをこの溶液で湿らせ、放出層表面を拭くことにより、手作業で放出層表面に塗布した。次いで、状態調節溶液を加熱ブランケット上で自然に乾燥させ、Extech Instruments社製のIR Thermometer Dual Laserを用いて放出層の温度をモニターした。特に明記されない限り、標準的な転写性実験は90℃で実施した。
こののち、加熱し任意選択で予め状態を調節したブランケットの表面にコーチングロッド(例えば、Mayerロッド)を用いてインク処方物(例えば、約1〜2ml)を塗布して平らにし、約24マイクロメートルの特徴的厚みを有する湿潤層にした。このように形成したインクフィルムを視覚的に乾燥が確認されるまで熱風(約200℃)で乾燥させた。乾燥したフィルムは、まだ熱いうちにCondat Gloss(登録商標)135gsm塗工紙、無地のオフィス用プリンタ非塗工紙およびポリエステルのプラスチック箔などの所望の印刷基板に転写した。重量1.5kgの金属ローラの表面に基板を置き、乾燥インクの上を転がし、手動で10kgの力に等しい圧力をかけながら転写を実施した。胴は、約1秒間に乾燥インク1cmが印刷基板と接する速度で転がした。
転写した画像の質を視覚的に評価し、0〜5のスコアまたは評定を付けた。スコア0は、乾燥インクフィルム面積の20%未満が印刷基板に転写されたことを表し、等級1は、乾燥インク面積の20%〜40%が印刷基板に転写されたことを表し、等級2は、乾燥インク面積の40%〜60%が印刷基板に転写されたことを表し、等級3は、乾燥インク面積の60%〜80%が印刷基板に転写されたことを表し、等級4は乾燥インク面積の80%〜95%、等級5は乾燥インク面積の95%超がそれぞれ印刷基板に転写されたことを表すものとした。特に転写が不完全な場合、ほかにも放出層の表面を観察した。不完全な転写の主なタイプとしては、(a)画像の一部のみが印刷基板に転写され、それを補完する部分はブランケット上に残っている部分的転写;および(b)基板に転写されるインク画像とブランケット上に残っているインクが少なくとも部分的に重なっている分断転写の2つが観察される。ブランケットから転写の程度は、印刷ブランケットの表面に透明な粘着テープを貼り付けてから剥がすことによって評価した。粘着テープに転写された乾燥インクがあれば、その面積はブランケット上に残っている未転写インクの面積に実質的に対応するものと考えられた。0〜5のスコアを付けて、ブランケット上に残っている乾燥インクのパーセント面積を推定した。スコア5は、乾燥インクの5%未満がブランケット上に残っていることを表し、スコア4.5は、最大10%のインク画像がブランケット上に残っていることを表し、スコア4は、最大20%のインク画像がブランケット上に残っていることを表し、スコア3は最大40%、スコア2は最大60%、スコア1は最大80%、スコア0は最大100%の乾燥インクがそれぞれブランケット上に残っていることを意味する。インク処方物の一部のみが転写される場合、印刷基板上およびブランケット上のパーセント面積の合計は約100%±5〜10%になることに留意するべきである。しかし、基板に転写される画像とブランケット上に残っている画像が完全に分断される場合、両方の値の合計が最大200%の乾燥インク面積になる可能性がある。このほか、部分的転写と部分的分断が組み合わさる可能性もあり、それに応じて報告する。あるインクについて、その転写性のスコアまたは評価(印刷基板への転写)が少なくとも4.5、好ましくは5であり、未転写インクのスコアが少なくとも4.5、好ましくは5である場合、それは特定の温度において、必要に応じて選択した状態調節剤で処理した特定のブランケットから転写するのに適しているものと見なされる。総合的な転写性の評定は、転写されたインクと未転写インクの2つのスコアを合計し10で除することによって得られる。満点では評定が1.0になる。
表面上のパーセント面積は、訓練を受けた操作者が上記の評価を付けることによって、十分確実に視覚的に評価することができる。必要に応じて、印刷ヘッドによりインクをブランケットに射出し、目的とする作動条件の下でインク転写性をさらに定量的に評価することを容易にする試験画像を付着させてもよい。これは例えば、印刷した画像を高解像度でスキャンし、しかるべき画像キャプチャ/解析プログラムでスキャン画像を解析することによって達成することができる。
本発明のインク処方物は典型的には、総合的な転写性の評定総転写率が少なくとも0.9、より典型的には0.95または1.0に達した。
いくつかの実施形態では、90℃に加熱しPEIで処理したPDMS放出層に(例えば、手作業または射出のいずれかによって)付着させた本教示によるインク処方物は、乾燥インク画像の面積の少なくとも90%、放出層上で乾燥させた画像の面積の少なくとも95%、少なくとも97.5%、少なくとも99%または実質的に全面積を被覆繊維性印刷基板に転写することができる。
いくつかの実施形態では、90℃に加熱しPEIで処理したPDMS放出層に付着させた本教示によるインク処方物は、乾燥させた画像の面積の少なくとも90%または放出層上で乾燥させた画像の面積の少なくとも95%、少なくとも97.5%、少なくとも99%もしくは実質的に全面積を非被覆繊維性印刷基板に転写することができる。
いくつかの実施形態では、90℃に加熱しPEIで処理したPDMS放出層に付着させた本教示によるインク処方物は、乾燥させた画像の面積の少なくとも90%または放出層上で乾燥させた画像の面積の少なくとも95%、少なくとも97.5%、少なくとも99%もしくは実質的に全面積をプラスチック印刷基板に転写することができる。
いくつかの実施形態では、90℃に加熱しPEIで処理したPDMS放出層に付着させた本教示によるインク処方物は、基板に転写されない乾燥インク画像の面積が、せいぜい5%,せいぜい2.5%,せいぜい1%,せいぜい0.5%または実質的に0%になるように、被覆繊維性印刷基板、非被覆繊維性印刷基板またはプラスチック印刷基板に転写することができる。各処方物について、転写性の評価を各温度および/または印刷基板で少なくとも3回実施した。実験と実験の間にブランケットの放出層の表面をイソプロパノール(工業銘柄)と糸くずの出ない拭き取り布で掃除した。報告する結果は、同じ実験条件下での反復の平均値に相当する。
軟化剤
本発明者らは、本発明によるインク処方物に特定の軟化剤を導入し得ることを発見した。本発明のインク処方物のいくつかの実施形態では、このような軟化剤を添加することにより、低温での流動性が低いことを特徴とする様々な樹脂の使用が可能になり得る。
本明細書に記載されるように、本発明者らは、中間転写成員から印刷基板への乾燥インクフィルムの転写を低温で実施するインクフィルム構築物作製のためのシステムおよび工程ならびにそれに適したインク処方物を開発したが、この低温に相当する温度は、基板との接触時間および/または基板の温度に応じて60℃〜140℃であってよく、上記範囲の高い側の温度では通常、室温(約23℃)の印刷基板にインクフィルムを短時間(例えば、100ミリ秒)の間、例えば100℃〜130℃で接触させ、上記範囲の低い側の温度では通常、印刷基板にブランケット上のインクフィルムを十分な時間(例えば、数秒)の間、例えば60℃〜100℃で接触させて接触面の間の温度勾配を減少させる。最適な転写温度に影響を及ぼし得る因子はほかにもあり、これらは特に、用いる印刷システム、ブランケット放出層および状態調節溶液(存在する場合)の組成、インクおよび基板の性質、その接触滞留時間、圧部に加える圧力などに従属し得る。
本明細書に開示される印刷システムでは、インク処方物を転写成員に付着させる画像形成部に40℃〜100℃または70℃〜90℃の温度を用いることができ、この段階では、インクは放出層の表面に十分に保持される必要がある。さらに、インク処方物はプリントヘッドの温度、より具体的にはノズル板の温度で射出可能である必要がある。プリントヘッドは通常、約20℃〜約50℃または約25℃〜約40℃の温度で作動する。
このような低温乾式転写には様々な利点(例えば、省エネルギー)があると同時に、かなり不利な点もある。例えば、明らかな設計制約のひとつには、そのような低温での乾式転写が可能になるよう高分子樹脂または結合剤を軟化させる必要があるという点がある。このため、印刷済みのインク画像またはインクフィルム構築物の様々な機械的特性が損なわれ得る。耐摩耗性が低下するほか、ほぼ周囲条件(例えば、日光に曝された車の中)であっても、印刷済み画像が粘着性になることが考えられる。
乾式転写には、インクフィルムの最初の転写温度から相対的に低温の印刷基板に接触させた後のフィルム温度までにおける粘度の大幅な増大(Δη)が必要であり得る。本発明者らは、低温での乾式転写工程には、同じように相当なΔηが必要であり得ることを発見した。また本発明者らはさらに、より高い温度での乾式転写工程ではフィルムの最初の転写温度が低下するため、転写を実施するのに利用可能なΔTが相当低下し得ることを発見した。いくつかの場合には、このことにより、転写時のインクフィルムが分断し、かつ/または印刷済みのインクフィルム製品の軟性または流動性が過剰になることがわかっている。
が比較的高い樹脂は、このような低温では高い粘度を示すため、印刷基板への適切な転写を実質的に不可能にし得る。のちに説明するように、この問題は、インクフィルム全体の厚みが小さい(例えば、2.5μm未満)ため、フィルム厚全体が急速に冷却され、インクフィルムの粘度が転写に適したものになる間の時間窓が短くなる場合に特に重要である。したがって、このような高T樹脂は、有利な機械的特性がいくつかあるものの、低温での乾式転写工程、特に本教示による薄いインクフィルムには全く適さないものと思われる。
本発明者らは、高T特性がなければ、低温でのインクフィルム転写に適すると思われる様々な高T樹脂を含有するインク処方物に軟化剤を導入し得ることを発見した。このような本発明の処方物では、樹脂は、プリントヘッド付近のブランケット温度が40℃〜50℃またはこれよりいくぶん高い温度である場合にもインクジェットプリントヘッドの詰まりを抑制またはほどんど抑制するのに十分硬いものであり得る。
軟化剤は、純粋な樹脂の流動性を大幅に改善し、乾燥インク残渣の場合、乾燥インク固形分の流動性を大幅に改善し得る。軟化剤を選択し適切な割合で添加して、高Tg樹脂および/または高Tg樹脂を含有する乾燥インク固形分の粘度を大幅に低下させ得る。粘度は、60℃〜110℃で、軟化剤を含まない同一の高Tg樹脂または乾燥インク固形分に比べて少なくとも20%、少なくとも35%、少なくとも50%、少なくとも75%または少なくとも100%低下し得る。多くの場合、粘度は少なくとも150%、少なくとも200%または少なくとも300%低下する。
選択される軟化剤は、インクが蒸発および加熱を受けた後も乾燥インクフィルム中に残留またはほどんど残留する程度に十分に低い蒸気圧を有し得る。したがって、150℃における少なくとも1つの軟化剤の蒸気圧は、せいぜい1.0kPa、せいぜい0.8kPa、せいぜい0.7kPa、せいぜい0.6kPaまたはせいぜい0.5kPaであり得る。しかし、本発明者らは、いくつかの実施形態では、蒸気圧がさらに低く、せいぜい0.40kPa、せいぜい0.35kPa、せいぜい0.25kPa、せいぜい0.20kPa、せいぜい0.15kPa、せいぜい0.12kPa、せいぜい0.10kPa、せいぜい0.08kPa、せいぜい0.06kPaまたはせいぜい0.05kPaであるのが有利であることを発見した。
例えば、このように蒸気圧が低いと、インク処方物の様々な特性が大幅に安定するほか、推測ながらも最も注目するべきこととして、フィルムを少なくとも1時間、少なくとも6時間、少なくとも24時間または少なくとも3日間にわたって(例えば、ITM上で)連続的に加熱しても、その間、乾燥済みのインクフィルムがその転写特性を保持またはほとんど保持することが可能になる。
本発明者らは、本発明のインク処方物にこのような軟化剤を導入すると、印刷済み画像の様々な機械的特性が損なわれ得ることを発見した。耐摩耗性が低下し得るほか、印刷済み画像が35℃〜45℃の周囲温度付近で粘着性になり得る。しかし、本発明者らはさらに、以下に挙げることを少なくとも1つ実施することによって、このような有害な傾向を大幅に軽減し得ることを発見した:
・高T樹脂に対する軟化剤の重量比をせいぜい1、せいぜい0.50、せいぜい0.40、せいぜい0.30、せいぜい0.20、せいぜい0.17、せいぜい0.15、せいぜい0.12またはせいぜい0.10に抑える;
・総樹脂含有量に対する軟化剤の重量比をせいぜい0.25、せいぜい0.20、せいぜい0.15、せいぜい0.12、せいぜい0.10、せいぜい0.08またはせいぜい0.06に抑える;
・総固形分に対する軟化剤の重量比をせいぜい0.20、せいぜい0.15、せいぜい0.12、せいぜい0.10、せいぜい0.08、せいぜい0.06、せいぜい0.05またはせいぜい0.04に抑える。
高T樹脂に対する軟化剤の重量比は通常、少なくとも0.02、少なくとも0.04、少なくとも0.06、少なくとも0.08、少なくとも0.10、少なくとも0.12、少なくとも0.15または少なくとも0.20である。総樹脂含有量に対する軟化剤の重量比は、少なくとも0.01、少なくとも0.02、少なくとも0.03、少なくとも0.04、少なくとも0.06、少なくとも0.08、少なくとも0.10または少なくとも0.12であり得る。総固形分に対する軟化剤の重量比は、少なくとも0.01、少なくとも0.02、少なくとも0.03、少なくとも0.04、少なくとも0.06、少なくとも0.08または少なくとも0.10であり得る。
それでも、上記の軟化剤の量は相当なものであり、印刷済み画像の機械的特性にさらに大きな影響を及ぼすことが予想されてもおかしくはない。本発明者らは驚くべきことに、このようなことにもかかわらず、影響を受けた様々な印刷済み画像の機械的特性が適切な範囲内に留まっていることを発見した。理論に束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、この現象が少なくとも部分的には、本明細書に記載されるシステムおよび工程を用いて得られるインクフィルムが特徴的に薄いことに起因するものと考える。このような薄いインクフィルムは、平均フィルム厚がせいぜい2.5マイクロメートル(μm)またはせいぜい2.0μm、より通常にはせいぜい1.8μm、せいぜい1.6μm、せいぜい1.4μm、せいぜい1.2μm、せいぜい1.0μm、せいぜい0.8μmまたはせいぜい0.6μmであり得る。
当業者であれば特定の樹脂化学に特に適し得る化学族または化学基を認識し得るが、本発明者らは、属するメンバーが実に様々な有機高分子樹脂の軟化剤としての役割を果たす可能性のある特定の化学族を発見した。このような化学族としては、低蒸気圧エステル、より具体的にはソルビタン、ポリオキシエチレンソルビタンおよびポリソルベート;ならびに低蒸気圧エーテル、より具体的にはポリエチレングリコールが挙げられる。例示的化合物には、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミタート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアラート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアラート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレアート、ソルビタンモノラウラート、ソルビタンステアラート、ソルビタントリステアラート、ソルビタンモノオレアート、ソルビタントリオレアートおよび室温で固体形態の中MWないし高MW PEGがある。これらの物質は、例えば、Tween(登録商標)20、Tween(登録商標)40、Tween(登録商標)60、Tween(登録商標)65、Tween(登録商標)80、Tween(登録商標)85、Span(登録商標)20、Span(登録商標)60、Span(登録商標)65、Span(登録商標)80、Span(登録商標)85、PEG8,000およびPEG20,000として市販されている。
このような軟化剤は、アクリルポリマー、アクリルスチレンコポリマー、スチレンポリマーおよびポリエステルから選択される樹脂に特に適し得る。例示的化合物は、Joncryl(登録商標)90、Joncryl(登録商標)530、Joncryl(登録商標)537E、Joncryl(登録商標)538、Joncryl(登録商標)631、Joncryl(登録商標)1158、Joncryl(登録商標)1180、Joncryl(登録商標)1680E、Joncryl(登録商標)1908、Joncryl(登録商標)1925、Joncryl(登録商標)2038、Joncryl(登録商標)2157、Joncryl(登録商標)Eco2189、Joncryl(登録商標)LMV7051、Joncryl(登録商標)8055、Joncryl(登録商標)8060、Joncryl(登録商標)8064、Joncryl(登録商標)8067(以上のアクリル系ポリマーはBASF社から入手可能である);Dynacoll(登録商標)7150、Desmophen(登録商標)XP2607およびHoopol(登録商標)F−37070(以上のポリエステル系ポリマーはそれぞれ、Evonik社、Bayer社およびSynthesia International社から入手可能である)および他の任意のこれらの化学的同等物として市販されている。
本発明とともに使用される軟化剤の分子量は、少なくとも300、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700または少なくとも800の分子量を有し得るものであり;分子量は、せいぜい20,000、せいぜい10,000、せいぜい5,000、せいぜい3,000、せいぜい2,500、せいぜい2,000、せいぜい1,750、せいぜい1,500またはせいぜい1,400であり得る。
軟化剤の水への溶解度は、少なくとも0.1%(重量:水の重量)、より通常には少なくとも0.2%、少なくとも0.3%または少なくとも0.5%であり得る。
本願では、軟化剤という用語は、樹脂に添加される化合物であって、その樹脂のガラス転移温度を有意に低下させることができる化合物を指すのに用いられる。軟化剤は、目的とする樹脂と固体重量で1:1の比で混合したとき、その混合物のTが樹脂の最初のTよりも少なくとも5℃、少なくとも10℃、少なくとも15℃、少なくとも20℃または少なくとも25℃低下する場合、有意な効果があると見なされる。
例として、図7Aは、第一の熱可塑性樹脂(Joncryl(登録商標)1680E)と第一の軟化剤(ポリエチレングリコール(PEG)20,000)とを用いて、構成成分を同じにし軟化剤の比率を変えた5種類のインク処方物の乾燥インク残渣について温度の関数として表した、第一の複数の動的粘度の温度スイーププロットを示している。乾燥残渣は実施例5、6、7、25および26に対応するインク処方物から得られたものである。
図7Bは、第二の熱可塑性樹脂、すなわちJoncryl(登録商標)8060と、第二の軟化剤、すなわちPEG8,000とを用いて、構成成分を同じにし軟化剤の比率を変えた5種類のインク処方物の乾燥インク残渣について温度の関数として表した、第二の複数の動的粘度の温度スイーププロットを示している。乾燥残渣は実施例16、17、21、22および23に対応するインク処方物から得られたものである。
図8A〜8Dは、軟化剤が異なり、軟化剤の濃度も異なるインク処方物の残渣フィルムについて温度の関数として表した、動的粘度の温度スイーププロットである。比較の都合上、全試料とも、顔料および高分子樹脂は同じブラック顔料およびJoncryl(登録商標)2038とし、比は1:4に揃えた。図8Aは、Tween(登録商標)20を含むインク処方物(実施例27〜28)の乾燥残渣の熱−流動学的挙動を示し;図8Bは、Tween(登録商標)40を含む処方物(実施例29〜31)で観察されたスイーププロットを示し;図8Cは、Tween(登録商標)60を含む処方物(実施例9〜10)のプロットを示し;図8Dは、Tween(登録商標)80を含む処方物(実施例32〜33)のプロットを示している。
いくつかの実施形態では、軟化剤は、150℃において蒸気圧がせいぜい0.40kPa、せいぜい0.35kPa、せいぜい0.25kPa、せいぜい0.20kPa、せいぜい0.15kPa、せいぜい0.12kPa、せいぜい0.10kPa、せいぜい0.08kPa、せいぜい0.06kPaまたはせいぜい0.05kPaであり得る。
いくつかの実施形態では、軟化剤は、少なくとも170℃、少なくとも185℃、少なくとも200℃または少なくとも220℃の温度まで安定であり得る。
いくつかの実施形態では、処方物中の軟化剤と樹脂の重量比は、少なくとも0.05:1、少なくとも0.10:1、少なくとも0.15:1、少なくとも0.2:1、少なくとも0.25:1、少なくとも0.35:1、少なくとも0.4:1、少なくとも0.5:1、少なくとも0.6:1、少なくとも0.75:1、少なくとも1:1、少なくとも1.25:1、少なくとも1.5:1、少なくとも1.75:1または少なくとも2:1であり得る。
いくつかの実施形態では、この重量比は、せいぜい3:1、せいぜい2.5:1、せいぜい2:1、せいぜい1.6:1またはせいぜい1.4:1であり得る。
様々な分析方法および装置を用いて、水性インク処方物の各種構成成分およびこれより作製されるインクフィルムの各種構成成分を同定することができ、これらは当業者には明らかであろう。樹脂をはじめとするあらゆるポリマー物質と、軟化剤を含有する水相とを分離するのが有利であり得る。軟化剤は、HPLC、MSをはじめとする既知の分析方法および装置を用いて同定され得る。軟化剤は、様々な手段によって樹脂およびポリマーから抽出され得る。ある方法では、軟化剤を解離させ得るしかるべき溶媒(例えば、ISOPAR)を用いて、樹脂を膨張させ得る。場合によっては、ナノ濾過も適切であり得る。
着色剤
本明細書およびのちの特許請求の範囲の節で使用される「着色料」または「着色剤」という用語は、印刷業界において着色料であると見なされているか、見なされると考えられる物質を指す。着色料は少なくとも1つの顔料を含み得る。着色料は、上記のものに代えてまたは加えて、少なくとも1つの染料を含み得る。
本明細書およびのちの特許請求の範囲の節で使用される「顔料」という用語は、通常は微粉化されている、固形着色料を指す。顔料は、有機および/または無機組成物を有し得る。顔料は通常、それらが組み入れられるビヒクルまたは媒質中で不溶性であり、本質的に、それらによる物理的および化学的影響を受けない。顔料は、着色性、蛍光性、金属性、磁気性、透明または不透明であり得る。顔料は、光の選択的吸収、干渉および/または散乱によって外観が変化し得る。それらは通常、様々な系での分散によって組み入れられ、着色工程全体を通じてその結晶性または粒子性を保持し得る。
本明細書およびのちの特許請求の範囲の節で使用される「染料」という用語は、塗布工程で溶解性であるか、溶液になり、光の選択的吸収によって色を付与する、少なくとも1つの着色物質を指す。
本発明のインクの様々な実施形態に用いる顔料には、広範囲の平均粒子サイズ(d50)または粒子サイズ分布(PSD)が適切であり得るが、本発明者らは、d50の顔料が20nm〜300nmの範囲内(例えば、せいぜい120nm、せいぜい100nmまたは40〜80nm)にあるとき、最良の結果が得られるものと考える。したがって、顔料はナノ顔料であり得、ナノ顔料の粒子サイズは、顔料の種類および顔料の調製に用いるサイズ減少法によって異なり得る。様々な色を付与するために用いられる様々な粒子サイズの顔料を同じ印刷に使用し得る。このような粒子サイズの顔料のいくつかは市販されており、本発明の実施形態にそのまま用いることができ、別の場合には、顔料をしかるべきサイズに粉砕し得る。顔料は一般に、高分子樹脂とともに溶媒中に分散させる(または少なくとも部分的に溶解させる)か、あるいは最初に(例えば、混練によって)高分子樹脂中に分散させて着色された樹脂粒子を得た後、溶媒と混合してもよいことが理解されよう。
インク処方物中の少なくとも1つの着色料の濃度は、処方物が実質的に乾燥している場合、少なくとも2重量%、少なくとも3重量%、少なくとも4重量%、少なくとも6重量%、少なくとも8重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%または少なくとも22重量%であり得る。通常、インクフィルム中の少なくとも1つの着色料の濃度は、せいぜい40重量%、せいぜい35重量%、せいぜい30重量%またはせいぜい25重量%である。より通常には、乾燥インク残渣は、少なくとも1つの着色料を2〜30%、3〜25%または4〜25%含有し得る。
いくつかの用途では、特に印刷基板上に積層される超薄インクフィルムを有することが望ましい場合、高分子樹脂と着色料の重量比は、せいぜい10:1、せいぜい7:1、せいぜい5:1、せいぜい3:1、せいぜい2.5:1、せいぜい2:1またはせいぜい1.7:1であり得る。
図9は、着色料(C、M、Y、K)は異なるが、それ以外の処方物構成成分は同じである4種類のインク処方物の乾燥インク残渣について温度の関数として表した、動的粘度の温度スイーププロットを示している。ブラックの処方物は実施例4に開示した通りのものである。
当業者には、本発明の処方物を明瞭に予測可能な方法で修正して所望の処方物の特性、特に熱−流動学的特性を達成し得ることが理解されよう。この目的に向けて、例示的処方物およびその熱−流動学的プロットが多数提供されている。さらに、プロットは、樹脂と顔料の比が熱−流動学的挙動に及ぼす影響に関する指針が得られるよう図面中に配置されている。図7Aおよび図7Bは、2種類の異なる熱可塑性樹脂および2種類の異なる軟化剤について、軟化剤と樹脂の比が熱−流動学的挙動に及ぼす影響を示している。全般的には、軟化剤と樹脂の比が高くなると粘度が低くなる。軟化剤によって、低温転写に適した比較的硬い樹脂を作製し得る。図8A〜8Dは、軟化剤と樹脂の比を変化させ、それ以外の処方物のパラメータを一定に保った状態での様々な軟化剤が熱−流動学的性能に及ぼす影響を示している。図9の曲線と類似していることから、着色料は何らかの熱−流動学的役割を果たしているが、その役割は一般に二次的に重要なものであることが明らかである。
第一に、「高温」での粘度(W1に関連する)は、ITMの放出層からのフィルムの転写に重要なフィルム転写特性の全般的な指標となる。その物理的特性と相関する粘度の最大値は、W1の最上部の線または領域によって表され得る。
第二に、「低温」での粘度(W2の50〜55℃に関連する)は、フィルムが印刷基板上でいかなる挙動を示すかの全般的な指標となる。その物理的特性と相関する粘度の最小値は、W2の最下部によって表され得る。
乾燥インク試料の熱−流動学的試験の際にインクを乾燥させることに関して、本発明者らは、インク残渣が十分なレベルの乾燥状態に達して試料間での比較試験が可能になり、同一のインク処方物から得られた乾燥インク残渣の熱−流動学的結果に良好な再現性が得られるように、様々な厳密な手順および作動条件を用いた。
本発明者らは、このような厳密な手順および作動条件の一部は、熱−流動学的再現性にあまり影響を及ぼさずに緩和し得ることを発見したため、インク残渣の乾燥状態について以下のような定義を用い得る。すなわち、本明細書およびのちの特許請求の範囲の節でインク残渣に関して使用される「実質的に乾燥している」などの用語は、特定のインクを乾燥させることによって得られるインク残渣を指し、このインク残渣は、その特定のインクの「標準的な」層と同じく溶媒をはじめとする揮発性化合物を含有せず、そのような層をオーブン中、100℃で12時間、真空度10mbar(絶対真空度)で乾燥させた後でも最初の厚み1mmを有するのが好ましい。乾燥させるのが困難であることがわかったインクの場合、真空度を5mbarに増大させ得る。乾燥させるのが特に困難であることがわかったインクの場合、インク残渣は、「標準的な」層が示す%乾燥減量(LOD)よりも最大で1%または最大で2%低い%LODを示してもよい。
同様に、「実質的に乾燥している」インク残渣を形成するよう乾燥させたインク処方物も「実質的に乾燥している」と称される。
いくつかの実施形態では、インク処方物は蝋を含まないか、実質的に含まない。インク処方物は通常、30重量%未満の蝋、20重量%未満の蝋、15重量%未満の蝋、10重量%未満の蝋、7重量%未満の蝋、5重量%未満の蝋、3重量%未満の蝋、2重量%未満の蝋または1重量%未満の蝋を含有する。他の実施形態では、印刷されたインクの耐摩耗性を増大させるため、インク処方物に蝋を含ませる。このような蝋は、天然の蝋または例えば脂肪酸と脂肪族アルコールのエステルもしくは長鎖アルカン(パラフィン蝋)に基づく合成の蝋あるいはその混合物であり得る。このような場合、処方物は、例えば、0.1〜10重量%の蝋、例えば最大0.1重量%、0.3重量%、0.5重量%、0.7重量%、1.0重量%、1.5重量%、2重量%、3重量%、4重量%、6重量%、8重量%または10重量%の蝋を含み得る。蝋は、小さい蝋粒子、例えば、平均サイズが10マイクロメートル以下、好ましくは平均サイズが1μm以下の蝋粒子の水分散液として処方物に組み入れ得る。
いくつかの実施形態では、インク処方物は鉱油および植物油(例えば、亜麻仁油およびダイズ油)などの油を含まないか、実質的に含まない。インク処方物は通常、風乾時に生成する1つまたは複数の油、架橋脂肪酸または脂肪酸誘導体をせいぜい20重量%、せいぜい12重量%、せいぜい8重量%、せいぜい5重量%、せいぜい3重量%、せいぜい1重量%、せいぜい0.5重量%またはせいぜい0.1重量%含有する。
いくつかの実施形態では、インク処方物はグリセロールを含まないか、実質的に含まない。インク処方物は通常、せいぜい10重量%、せいぜい8重量%、せいぜい6重量%、せいぜい4重量%、せいぜい2重量%、せいぜい1重量%、せいぜい0.5%またはせいぜい0.2%のグリセロールを含有する。
いくつかの実施形態では、インク処方物は、転写成員上または基板上でインクを凝固または沈殿させるために用いられる塩(例えば、塩化カルシウム)を含めた1つまたは複数の塩を含まないか、実質的に含まない。インク処方物は通常、せいぜい8重量%、せいぜい5重量%、せいぜい3重量%、せいぜい1重量%、せいぜい0.5重量%、せいぜい0.1重量%または実質的に0重量%の1つまたは複数の塩を含有する。このような塩は、本明細書中では「沈殿剤」と呼ばれることがあり、処方物が塩を含まない、または特定の重量パーセント未満の量の塩を含有すると言う場合、これは、高分子樹脂のポリマー(1つまたは複数)とアルコールアミンなどのpH調節剤との間で形成され得る塩を指すものでも、高分子樹脂を塩として準備する場合に高分子樹脂そのものに存在し得る塩を指すものでもないことが理解されよう。上で述べたように、現時点では、高分子樹脂中に負荷電が存在することが印刷工程に有益であると考えられる。
いくつかの実施形態では、インク処方物は無機粒子、例えば、シリカ粒子、チタニア粒子またはアルミナ粒子を含まないか、実質的に含まず、無機粒子を2重量%未満、1重量%未満、0.1重量%未満含有するか、実質的に含有しない。「シリカ粒子」は、ヒュームドシリカ、シリカチップ、シリカコロイドなどを意味する。このようなシリカ粒子の具体例としては、Ludox(登録商標)AM−30,Ludox(登録商標)CL,Ludox(登録商標)HS−30の名称でDuPont社から入手可能なシリカ粒子;およびNexSil(商標)12,NexSil(商標)20,NexSil(商標)8,NexSil(商標)85の名称でNyacol Nanotechnologies社から入手可能なシリカ粒子が挙げられる。本願においては、「シリカ粒子」という用語は着色料を包含しない。
インクフィルム構築物
本発明のインクフィルム構築物では、インクドットが本質的に印刷基板の上面に積層され得る。本明細書に記載されるように、ドットの形態は、転写操作の前に決定またはほとんど決定され得るものであり、ドットは、一体型ユニットとして基板に転写される。この一体型ユニットは実質的に溶媒を含まないものであり得るため、いかなる種類の材料もブランケット転写成員から基板繊維の中または間に浸透し得ない。連続ドットは大部分が有機高分子樹脂および着色料を含有し得るものであり、繊維性印刷基板の上面と接着するか、その上に薄層状の層を形成する。
上に開示したインク組成物を用いた印刷試験では、以下の図面の一部に示すように、実に様々な紙およびプラスチック基板に対して良好な転写が認められる。
図10A〜10Fは、様々な印刷技法を用いて得られた汎用塗工紙基板上のインクフィルムにレーザ顕微鏡を用いて取得した二次元(図10A〜10C)および三次元(図10D〜10F)の拡大画像を示しており、ここでは、図10Aおよび10Dは液体電子写真フィルム(LEP)の拡大画像であり;図10Bおよび10Eはオフセット染みの拡大画像であり;図10Cおよび10Fは本発明によるインクジェットインクフィルム構築物の拡大画像である。レーザ顕微鏡撮像は、Olympus LEXT 3D測定レーザ顕微鏡モデルOLS4000を用いて実施した.
図11A〜11Fは、様々な印刷技法を用いて得られた非塗工紙基板上のインクフィルムにレーザ顕微鏡を用いて取得した二次元(図11A〜11C)および三次元(図11D〜11F)の拡大画像を示しており、ここでは、図11Aおよび11Dは液体電子写真フィルム(LEP)の拡大画像であり;図11Bおよび11Eは石版オフセット染みの拡大画像であり;図11Cおよび11Fは本発明によるインクジェットインクフィルム構築物の拡大画像である。
本発明のインクドット構築物中のインクドットは、基板の特定の局所構造的特徴とはあまり関係なく、また印刷基板の種類(被覆または非被覆印刷基板、プラスチック印刷基板など)とはあまり関係なく、一貫して良好な形態特性(例えば、真円性、エッジぎざぎざ性など)を示し得る。
これに対して、様々な既知の印刷技法、特に直接水性インクジェット技法におけるインクドットの質は、印刷基板の種類および基板の特定の局所構造的特徴によって大きく異なり得る。例として、インク滴が、比較的均質な基板表面(広幅繊維など)を有する特に平坦な局所的外郭に射出される場合、得られるインクドットは、他のインクドットまたは基板上の他の場所に配置される平均的なインクドットよりも大幅に良好な形状特性を示し得ることが容易に理解されよう。
これらの従来技術のインクおよび基板構築物では、図11D〜11Fに最もよく示されるように、インクジェットインク滴が紙の表面に浸透している。非被覆または汎用塗工紙を用いる様々な印刷技法では、紙がインク担体溶媒および顔料を紙線維のマトリクス内に吸い込むことがあり、このような浸透が典型的なものとなり得る。
このような従来技術のインク構築物とは対照的に、本発明のインクジェットインクフィルム構築物は、輪郭の明瞭な個々のインクフィルムが全般的に被覆繊維性基板(図10C、10F)、非被覆繊維性基板(図11C、11F)とも、その上に、またはそれに接着して配置されることを特徴とし得る。
本発明のインクジェット単一滴インクフィルム(または個々のインクドット)構築物は、本明細書に記載される本発明のシステムおよび方法に本発明によるインク処方物の実施例29を用いて作製されたものである。
ドット周囲の特性化
オフセットインク染みの周囲およびLEPインク染みの周囲は、複数の突起または細流および複数の入江または陥凹を有する。これらのインク形態は不規則および/または不連続であり得る。それとは対照的に、本発明に従って作製されるインクジェットインクドットは、図10Cおよび11Cに最もよく示されるように、明白に丸みのある、凸状の形状を有する。インクフィルムの周囲は比較的平滑で、規則性および連続性があり、輪郭が明瞭である。
より具体的には、基板表面に対する本発明のインクフィルムの突起(すなわち、上から見た突起)は、丸みのある凸状の突起となり、これが凸状組を形成する傾向を有する、すなわち、突起内の点のすべての対に関して、それらを繋ぐ線分上の点もすべて突起内にある。このような凸状組は図15Aに示されている。これとは明らかに対照的に、種々の従来技術の突起では、細流および入江がその突起を非凸状組として特徴付けている、すなわち、図15Bに示されるように、特定の突起内の少なくとも1つ線分に関して、その線分の一部分が突起の外側に配置されている。
強調しなければならないのは、インク画像には個々のまたは単一のインクフィルムを極めて多数含まれ得るということである。例えば、600dpiでは、5mm×5mmのインク画像にこのような単一インクフィルムが10,000超含まれ得る。このため、本発明のインクフィルム構築物を統計学的に定義するのが適切であり得る、すなわち、単一インクドットまたはその突起の少なくとも10%、少なくとも20%または少なくとも30%、さらに典型的には、少なくとも50%、少なくとも70%または少なくとも90%の(無作為に選択される)が凸状組であり得る。
ほかにも強調しなければならない点として、インク画像は、特にその境界を高倍率で見る場合、明瞭な境界を有し得ないということがある。このため、凸状組の定義を緩めることにより、最大3,000nm、最大1,500nm、最大1,000nm、最大700nm、最大500nm、最大300nmまたは最大200nmの半径長L(図15Cに示される)を有する非凸状(細流または入江)を無視、除外または「平滑化」し、それによりインクフィルムまたはインクフィルム突起が凸状組であると見なすのが適切であり得る。半径長Lは、インクフィルム画像の中心点Cから特定の細流または入江を通って半径線Lを描くことにより測定される。半径長Lは、細流または入江の実エッジと、その細流または入江がなく、インクフィルム画像の外郭と一致するインク画像の平滑化突起Pとの間の距離である。
相対的にみれば、凸状組の定義を緩めることにより、フィルム/滴/染み直径または平均直径の最大15%、最大10%、より通常には最大5%、最大3%、最大2%または最大1%の半径長を有する非凸状(細流または入江)を上記と同様に無視、除外または「平滑化」し、それによりインクフィルムまたはインクフィルム突起が凸状組であると見なすのが適切であり得る。
従来技術の種々のインクドットまたはフィルムの周囲は、複数の突起または細流および複数の入江または凹所を特徴的に有し得る。これらのインク形態は、不規則かつ/または不連続であり得る。これとは明らかに対照的に、本発明に従って作製したインクジェットインクドットは、明らかに丸い、凸状の円形を有する。本発明のインクドットの周囲は、比較的平滑で、規則的で、連続しており、輪郭が明瞭である。インクドットの真円性、凸状性およびエッジぎざぎざ性は、形状を評価または特性化するために用いられる構造パラメータまたはその光学的表示である。
図10Aの従来技術のインク形態と図10Bの本発明のインクドット構築物の拡大画像を比較することにより、あるいは図11Aおよび11Bの従来技術のインク形態と図11Cの本発明のインクドット構築物の拡大画像を比較することにより、本発明のインクドットの外観がこれらの従来技術のインク形態とは明らかに異なることが容易に観察され得る。肉眼で容易に観察されるものは、画像処理技法を用いて定量され得る。インク形態の種々の特性化は、画像取得方法の説明の後に、本明細書中で以下に記載される。
取得方法
(1)試験で比較する既知の印刷技法ではそれぞれ、多数の被覆および非被覆繊維性基板ならびに様々なプラスチック印刷基板を含めた塗工紙ならびに非塗工紙上に印刷される単一ドット、染みまたはフィルム画像を用いた。
(2)本発明による印刷技法に関しては、単一滴ドット画像を塗工紙上におよび非塗工紙上に印刷した。(1)で用いた既知のインクドット構築物の基板に類似した特質を有する基板を選択するよう注意を払った。
(3)ドット画像の取得はOLS4000(Olympus)顕微鏡を用いて実施した。画像の詳細が明瞭に見えるよう、顕微鏡を調節して、必要な焦点、明るさ、コントラストを得る方法は当業者には既知である。これらの画像の詳細には、ドット外郭、ドット領域内の色変異および基板表面の繊維性構造が含まれる。
(4)129マイクロメートルX129マイクロメートルの解像度を有するX100光学ズームレンズを用いて画像を取得した。この程度の高解像度は、ドットおよび基板表面の繊維性構造の微細な詳細を得るのに不可欠であり得る。
(5)圧縮時に画像データが失われることがあるため、1024×1024ピクセルの解像度を有する非圧縮フォーマット(Tiff)で画像を保存した。
(6)各印刷技法の単一ドットまたは染みを全般的に評価した。しかし、統計学的観点から言えば、画像処理には、分析対象となる各型のハードコピー印刷についてドット画像を(少なくとも)15例取得し、最も代表的なドット画像を(少なくとも)10例、手動で選択するのが有利であり得る。選択したドット画像は、ドット形状、外郭およびドット領域内の色変異に関して代表的なものであるべきである。印刷ドットサンプリングの別のアプローチ(「視野」と呼ばれる)については本明細書でのちに記載する。
ドット外郭コンピュータ処理
画像処理ソフトウェア(ImageXpert)にドット画像をロードした。各画像をレッド、グリーンおよびブルーチャネルのそれぞれにロードした。最高視度判定基準に基づいてプロセシングチャネルを選択した。例えば、シアンドットに関しては、レッドチャネルは通常最もドットの特徴が視認しやすいため、画像処理ステップに選択した;グリーンチャネルは通常、マゼンタドットに最も適していた。単一閾値に基づいて、ドットエッジ外郭を検出した(自動コンピュータ処理)。21.5インチ・ディスプレイでの「フルスクリーンビュー」モードを用いて、コンピュータで処理されたエッジ外郭が実際のドットエッジおよび視認できるドットエッジに最も一致するように、この閾値を各画像に関して手動で選択した。単一の画像チャネルを処理したため、閾値はグレー値とした(0〜255;グレー値は、非色彩値である)。
コンピュータ処理周囲値を画像処理ソフトウェア(例えば、ImageXpert)から得た。周囲値は、ドットまたは染みのエッジにある隣接したピクセル同士を結んだ距離をすべて合計したものとした。例えば、隣接するピクセルのXY座標をそれぞれ(x1,y1)、(x2,y2)とすると、その距離は√[(x2−x1)+(y2−y1)]となり、その周囲はΣ{√[(xi+1−x+(yi+1−y]}となる。
本発明の様々な実施形態では、インクドットの周囲の長さを測定することが望ましい。そこで、周囲長を測定するための代替的方法を記載する。第一ステップとして、インクドットを含む画像を、周囲長を出力するアルゴリズムの入力データとして用いる。画像のピクセル寸法MxNは、2要素アレイまたは順序対画像ピクセルサイズ(image_pixel_size)で保存され得る。画像ピクセルサイズ(image_pixel_size)の一例が1280、760であり、この例では、M=1280およびN=760である。これは、水平軸が1280ピクセル、垂直軸が760ピクセルの画像に対応する。その後、画像倍率非またはスケールを得て、可変画像拡大(image_magnification)で保存する。可変画像拡大(image_magnification)の一例が500である。インクドットの周囲を第一の画像と第二の画像とで比較する場合、2つの画像の変数画像ピクセルサイズ(image_pixel_size)および画像拡大(image_magnification)が必ず等しくなければならない。ここで、1つの正方形ピクセルの対応する長さ、すなわち、実世界長単位(例えば、マイクロメートル)またはピクセルでの辺長を算出することが可能になる。この値は、可変ピクセルピッチ(pixel_pitch)で保存される。可変ピクセルピッチ(pixel_pitch)の一例が0.05μmである。ここで、当業者に既知の方法により、画像をグレースケールに変換する。提唱される方法のひとつは、入力画像(通常、sRGB色空間における画像)をLb色空間に変換することである。画像がLab色空間に入った後、変数aおよびbの値をゼロに変化させる。ここで、画像にエッジ検出オペレータを適用し得る。好ましいオペレータは、Cannyエッジ検出オペレータである。しかし、当該技術分野で既知の任意のオペレータが適用され得る。オペレータは、Cannyオペレータなどの一次導関数に限定されるわけではなく、二次導関数でも可能である。さらに、オペレータ間で比較され得る結果を得た後、「望ましくない」エッジを取り除くために、オペレータを組合せて用いてもよい。エッジ検出オペレータを適用する前に、Gaussian blurなどの平滑化オペレータを適用するのが好ましい。エッジ検出オペレータを適用する場合に適用される閾値レベルは、エンドレスループを形成するエッジが、前記最小外周インクドット巻き込み円と最大外周インクドット取り囲み円との間の領域で得られているようなレベルである。ここで、細線化オペレータを実行してエンドレスループエッジの幅を実質的に1ピクセルにする。エンドレスループエッジの一部でない任意のピクセルは、そのL値がゼロに変化し、エンドレスループエッジの一部である任意のピクセルは、そのL値が100に変化する。エンドレスループエッジは、インクドットの周囲として定義される。ピクセルリンクは、ピクセルとの直線連結と定義される。周囲に沿った各ピクセルは、2つのピクセルリンク、すなわち第一ピクセルリンクおよび第二ピクセルリンクを組み入れる。この2つのピクセルリンクが単一ピクセル内のピクセルリンク経路を定める。周囲長をコンピュータ処理するこの方法では、各ピクセルは正方形ピクセルである。したがって、各ピクセルリンクは、ピクセルの中心から8つの考え得るノードのうちの1つに向かって直線を形成し得る。考え得るノードは、ピクセルの隅またはピクセルの隣接する2つの隅の中点である。ピクセルの隅のノードはnode_1型であり、2つの隅の間の中点の1つのノードはnode_2型である。したがって、ピクセル内のピクセルリンク経路には6つの可能性が存在する。これらはグループA、BおよびCの3つのグループに分類される。各グループには、それ自体の対応する係数、すなわち、係数A、係数Bおよび係数Cがある。係数Aの値は1であり、係数Bの値はsqrt(2)であり、係数Cの値は(1+sqrt(2))/2である。グループAには、ピクセルリンク経路がnode_2型のノードと一致するピクセルが含まれる。グループBには、ピクセルリンク経路がnode_1型のノードと一致するピクセルが含まれる。グループCには、ピクセルリンク経路がnode_1型およびnode_2型のノードと一致するピクセルが含まれる。ここで、周囲のピクセル長を算出することが可能になる。周囲のピクセル長は、周囲のピクセル数にその対応する係数を乗じて合計することにより算出される。この値は、可変周囲ピクセル長(perimeter_pixel_length)で保存される。ここで、インクドット周囲の実長を算出することが可能となる。これは、周囲ピクセル長(perimeter_pixel_length)にピクセルピッチ(pixel_ptch)を乗じることにより実行される。
真円性
無次元真円因子(ER)は、次式により定義され得る:
ER=P/(4π・A)
(式中、Pは、測定または算出周囲長であり、Aは、インクフィルム、ドットまたは染み内の測定面積またはコンピュータ処理面積である)。完全に平滑で円形のドットは、ERが1である。
丸みのある平滑な形状からの偏差は、式(ER−1)により表される。完全に円形の理想的インクドットは、この式がゼロである。
真円性因子のR−正方形は、各型の印刷技法に関して選択される最も代表的なドット画像10例それぞれに関してコンピュータ処理され、単一値に平均され得る。
繊維性基板(例えば、紙)が被覆されていないインクフィルム構築物または繊維性基板がコーチング、例えば塗工オフセット紙における汎用コーチングなど(または例えば従来の水性インクジェットインクからの担体を紙繊維に到達させるコーチングなど)で被覆されているインクフィルム構築物では、本発明のインクドットの丸い平滑円形形状からの偏差[(ER−1)、以後「偏差」]は理想値ではなく、0を超える。
図14A−2〜14F2には、以下のプリンタについて非被覆および被覆基板に配置された例示的拡大インクフィルム画像が示されている:ダイレクトインクジェット:HP DeskJet9000(非被覆:図14A−2;被覆:図14D−2);デジタルプレス:HP Indigo7500(非被覆:図14B−2;被覆:図14E−2);および石版オフセット:Ryobi755(非被覆:図14C−2;被覆:図14F−2).
図12A−2〜12E−2は、本発明に従って塗工紙(12A−2〜12C−2)および非塗工紙(12D−2および12E−2)上に配置されたインクフィルムの拡大図を示している。これらのインクフィルム画像は一般に、上で詳述した画像取得方法に従って得られたものである。
真円からの偏差(ER−1)の定量分析については以下に記載する。
凸状性
既に記載したように、従来技術のインクドットまたはフィルムは、複数の突起または細流および複数の入江または凹所を有することを特徴とし得る。これらのインクフィルムは、不規則かつ/または不連続であり得る。これとは明らかに対照的に、本発明に従って作製されるインクジェットインクフィルムは、明白に丸い、凸状の円形形状を有することを特徴とする。ドット凸状性またはそれからの偏差は、形状またはその光学的表示を評価または特性化するために用いられ得る構造パラメータである。
画像取得方法は上記の方法と実質的に同一であってよい。
凸状性測定
画像処理ソフトウェア(ImageXpert)にドット画像をロードした。各画像をレッド、グリーンおよびブルーチャネルのそれぞれにロードした。最高視度判定基準に基づいて、プロセシングチャネルを選択した。例えば、シアンドットに関しては、レッドチャネルは通常最もドットの特徴が視認しやすいため、画像処理ステップに選択した;グリーンチャネルは通常、マゼンタドットに最も適していた。単一閾値に基づいて、ドットエッジ外郭を検出した(自動コンピュータ処理)。21.5インチ・ディスプレイでの「フルスクリーンビュー」モードを用いて、コンピュータで処理されたエッジ外郭が実際のドットエッジおよび視認できるドットエッジに最も一致するように、この閾値を各画像に関して手動で選択した。単一画像−チャネルを処理したため、閾値はグレー値であった(0〜255;グレー値は、非色彩値である)。
MATLABスクリプトを作成して、ドット外郭を境界する最小凸形状の面積とドットの実面積との間の比をコンピュータ処理した。各インクドット画像に関して、ImageXpertにより作成されたドットエッジ外郭の点の(X,Y)組を、MATLABにロードした。
ノイズに対する測定感度を低減するため、ドットエッジをSavitzky−Golayフィルタ(画像処理低域通過フィルタ)に通し、そのぎざぎざ性をほとんど変質させせずにエッジ外郭をわずかに平滑化した。5ピクセルのウィンドウ枠サイズが概ね適切であることがわかった。
次いで、最小領域凸形状を生成して平滑エッジ外郭の境界を示した。次いで、凸形状面積(CSA)と実(算出)ドットまたはフィルム面積(AA)との間の凸状比を、以下のようにコンピュータ処理した:
CX=AA/CSA
この凸状比からの偏差または「非凸状性」は、1−CXまたはDCdotにより表される。
この非凸状性の定量分析については以下に記載する。
視野
汎用被覆繊維性基板上でも汎用非被覆繊維性基板上でも、本発明のインクドット構築物中のインクドットは、基板の特定の局所構造的特徴とはほとんど関係なく、また印刷基板の型(被覆または非被覆印刷基板、プラスチック印刷基板など)とはある程度関係なく、一貫して良好な形状特性(例えば、凸状性、真円性、エッジぎざぎざ性など)を示し得る。これに対して、種々の既知の印刷技法、特に直接水性インクジェット技法におけるインクドットの質は、印刷基板の型および基板の特定の局所構造的地特徴によって大きく異なり得る。
しかし、より頑健な統計学的アプローチを用いれば、本発明のインクドット構築物と当該技術分野のインクドット構築物とをさらに明確に区別し得る。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、インクドット構築物を、代表的視野内で基板上に配置される複数のインクドットとして特性化し得る。ドットの特性化を画像処理により実施すれと仮定すると、視野には複数のドット画像が含まれ、このうち、少なくとも10個のドット画像が画像処理に適している。分析のために選択する視野およびドット画像はともに、(ドット形状に関して)基板上のインクドット集団全体の代表的なものであるのが好ましい。
手順
好ましくは高出現率の単一インクドットを含有する印刷試料を、LEXT顕微鏡を20倍の倍率で用いて手動で走査し、単一枠中に少なくとも10個の単一ドットを含む視野を得る。インクドットの質が印刷試料全体のインクドットの質を適正に代表するものになるよう注意を払うべきである。
選択枠内の各ドットを個別に分析する。枠の縁(正方形の幾何学突出部と見なされ得る)により「切断」されるドットは、枠の一部であると見なされ、分析される。任意のサテライトおよび重複ドットは、分析から除外される。「サテライト」は、概ね均一なドットサイズを有する枠では、その面積が枠内のドットの平均面積の25%未満であるインクドットと定義し、また不均一な枠では、その面積が最も近い隣接ドットの25%未満であるインクドットと定義する。
次いで、別個のインクドットを100倍ズームで拡大し、凸状性および真円性手順に関して上に記載した手順に従って画像処理を実行し得る。
結果
図13Aは、市販の水性ダイレクトインクジェットプリンタを用いて汎用被覆繊維性基板(Arjowiggins被覆再生グロス、170gsm)上に作製したインクドットの視野の拡大図を示している。図13Bは、これと同一の市販の水性ダイレクトインクジェットプリンタを用いて非被覆繊維性基板(Hadar Top非被覆オフセット、170gsm)上に作製したインクドットの視野の拡大図を示している。厳密に言えば、インクドットの「視野」には単一枠内に単一ドットが少なくとも10個必要であり、図13Aの枠はこのような視野とは見なされないが、説明のために、この枠を示し、ドットの特徴を明らかにした。
図13Aでは、インク画像Aはサテライトであり、分析から除外される。ドットBは、枠の縁により切断されており、分析に含まれる(すなわち、インクドット全体が分析される)。尾部または突出部Cは、その左側に配置されているインクドットの一部であると考えられる。したがって、この視野には画像処理のためのインクドットが6個のみ含まれる。
図13Bに関して、高倍率にして初めて、ドットEとFが異なる個々のドットであることが明らかになった。いくつかの染みは適度に円形で形がしっかりしているが、ほとんどの染みは不十分な真円性および凸状性を示し、輪郭の不明瞭なエッジを有し、関連するかまたは関連性が薄い多数のインク中心を含んでいるように見える。
図12A−1〜12E−1は、本発明に従って汎用被覆繊維性基板(図12A−1〜12C−1)および非被覆繊維性基板(図12D−1および12E−1)上に作製したインクドットまたはフィルムを示している。印刷画像は、濃縮硬化したシラノール末端化ポリジメチルシロキサンを含む放出層を有するブランケット上に実施例29に対応するインクを射出することによって調製したものである。ブランケットは、基本的な転写性試験について既に記載した通りに、約70℃に加熱し、PEIを含む状態調節溶液で処理した後、これを除去し蒸発させた。処理済みの放出層に解像度600×1200dpi(インク滴の平均体積が9pLになる)の従来のインクジェットヘッドを用いて、実施例29に対するブラックインクを射出し、インク被覆率/ドット密度の異なるインク画像を形成した。プリントバーに対するブランケットの相対速度を0.5m/秒とした。インク画像を200℃で最大5秒間乾燥させ、乾燥済みの画像に手動で圧力をかけて、下の表および図12A−1〜12E−3に示される基板に転写した。
図12A−2〜12E−2は、図12A−1〜12E−1の枠の一部分をさらに拡大して示したものであり、このうち図12A−2〜12C−2には汎用塗工紙上に配置されたインクフィルムの拡大図が示され、図12D−2および12E−2には非塗工紙上に配置されたインクフィルムの拡大図が示されている。
図の比較から、本発明のインク構築物中のインクドットの視野は、図13Aおよび13Bに示される従来技術の視野と比較して、優れたドット形状(真円性、凸状性およびエッジの鮮明度)および平均的なドット形状を示しているのは明らかである。実際、図12D−1に示されるインクドットの視野では、非被覆基板が最も粗く難易度が高いが、本発明のインク構築物は、基板が比較的滑らかな被覆基板である従来技術の視野(図13A)と比較しても優れたドット形状および平均的なドット形状を示している。
肉眼で容易に観察されるものは、上記の画像処理技法および視野処理手順を用いて定量化し得る。
Figure 2016539240
Figure 2016539240
これらの例示的結果は、また別の汎用被覆および非被覆の両方の繊維性基板で裏付けられた。
試験した汎用被覆繊維性基板のいずれについても、本発明によるインクドット構築物の視野が示した平均非凸度は、せいぜい0.05、せいぜい0.04、せいぜい0.03、せいぜい0.025、せいぜい0.020、せいぜい0.015、せいぜい0.012、せいぜい0.010、せいぜい0.009またはせいぜい0.008であった。
試験した非被覆繊維性基板のいずれについても、本発明によるインクドット構築物の視野が示した平均非凸度は、せいぜい0.085、せいぜい0.07、せいぜい0.06、せいぜい0.05、せいぜい0.04、せいぜい0.03、せいぜい0.025、せいぜい0.020、せいぜい0.018またはせいぜい0.015であった。
いくつかの実施形態では、視野非凸度は、少なくとも0.0005、少なくとも0.001、少なくとも0.002、少なくとも0.003または少なくとも0.004である。いくつかの場合には、特に非被覆繊維性基板については、視野または平均非凸度は、少なくとも0.05、少なくとも0.07、少なくとも0.10、少なくとも0.12、少なくとも0.15、少なくとも0.16、少なくとも0.17または少なくとも0.18であり得る。
試験した汎用被覆繊維性基板のいずれについても、本発明によるインクドット構築物の視野が示した真円からの平均偏差は、せいぜい0.60、せいぜい0.50、せいぜい0.45、せいぜい0.40、せいぜい0.35、せいぜい0.30、せいぜい0.25、せいぜい0.20、せいぜい0.17、せいぜい0.15、せいぜい0.12またはせいぜい0.10であった。
試験した非被覆繊維性基板のいずれについても、本発明によるインクドット構築物の視野が示した真円からの平均偏差は、せいぜい0.85、せいぜい0.7、せいぜい0.6、せいぜい0.5、せいぜい0.4、せいぜい0.35、せいぜい0.3、せいぜい0.25、せいぜい0.22またはせいぜい0.20であった。
いくつかの実施形態では、真円からの平均偏差は、少なくとも0.010、少なくとも0.02、少なくとも0.03または少なくとも0.04である。いくつかの場合には、真円からの偏差は、少なくとも0.05、少なくとも0.07、少なくとも0.10、少なくとも0.12、少なくとも0.15、少なくとも0.16、少なくとも0.17または少なくとも0.18であり得る。
上記の非凸度および真円からの偏差値は、評価に適したドットを少なくとも10個有する視野のためのものであるが、それらはさらに、このような適切なドットを少なくとも20個、少なくとも50個または少なくとも200個有する視野にも適用される。本発明者らはさらに、非凸度値および真円からの偏差値はともに、視野サイズの増大に伴って、本発明のインクドット構築物と従来技術のインクドット構築物との間の差がさらに統計学的に有意になることを発見した。
プラスチック基板のいずれについても、本発明によるインクドット構築物の視野が示し得る平均非凸度は、せいぜい0.075、せいぜい0.06、せいぜい0.05、せいぜい0.04、せいぜい0.03、せいぜい0.025、せいぜい0.020、せいぜい0.015、せいぜい0.012、せいぜい0.010、せいぜい0.009またはせいぜい0.008であり;本発明によるインクドット構築物の視野が示し得る真円からの平均偏差は、せいぜい0.8、せいぜい0.7、せいぜい0.6、せいぜい0.5、せいぜい0.4、せいぜい0.35、せいぜい0.3、せいぜい0.25、せいぜい0.20、せいぜい0.18またはせいぜい0.15である。アタクチックポリプロピレンおよび各種ポリエステルはなどの平滑プラスチックが示す真円からの平均偏差は通常、せいぜい0.35、せいぜい0.3、せいぜい0.25、せいぜい0.20、せいぜい0.18、せいぜい0.15、せいぜい0.12、せいぜい0.10、せいぜい0.08、せいぜい0.06、せいぜい0.05、せいぜい0.04またはせいぜい0.035である。
光学的均一性
図5Aおよび5Bに示されるインクフィルムは、光学的に均一ではない。非塗工紙上に配置されたインクフィルム画像は全般的に、塗工紙上に配置された対応するインクフィルム画像より光学的均一性が低い。
さらに、本発明のインクドットは、種々の従来技術のインク形態と比較して、優れた光学的均一性を示すことが観察され得る。これは非被覆印刷基板および被覆印刷基板の両方について当てはまるように思われる。肉眼で容易に観察されるものは、画像処理技法を用いて定量され得る。インクドット均一性の測定方法を以下に記載する。
光学的均一性測定
好ましくは上に記載した統計学的規則を用いて、ドット画像をImageXpertソフトウェアにロードする。各画像をレッド、グリーンおよびブルーチャネルのそれぞれにロードする。画像処理のために選択されるチャネルは、ドット領域内のドット外郭および色変動ならびに基質表面繊維構造を含め、詳細を最も明確に示すチャネルである。例えば、レッドチャネルは通常、シアンドットに最も適しており、グリーンチャネルは通常、マゼンタドットに最も適している。
選択した各ドットについて、ドットの中心を通るようにして、ドット領域全体の線プロフィール(好ましくは、少なくとも10の最も代表的なドットそれぞれについて3つの線プロフィール)を測定する。線プロフィールは単一チャネルで測定されるため、グレー値(0〜255;非色彩値)が測定される。エッジ効果を回避するため、ドットの中心を通り、ドット直径の内側3分の2のみにわたる線プロフィールを得る。試料採取頻度の基準は、線プロフィールに沿った8個前後の光学測定値(各マイクロメートルに沿って等間隔を空けた8個の測定グレー値または線プロフィールに沿った125nm+/−25nm/測定)であり、これは、ImageXpertソフトウェアの自動頻度であり、手動での作業に適し頑健であることが明らかであった。
線プロフィールの標準偏差(STD)をそれぞれコンピュータで計算し、印刷画像の各型の多重線プロフィールSTDを単一値に平均化する。
図14A−1〜14F−2は様々な印刷技術を利用して得られたインクの汚れ又はドッとの画像が示している。具体的に、図14A−2〜14C−2はHPDeskJet9000(図14A−2)、Digital press:HPIndigo7500(図14B−2)、及びOffset:Ryobi755(図14C―s)という印刷技術のための塗工紙上に配置されているインクドット画像を示している。同様に、図14D−2〜14F−2はこの印刷技術のために、汎用塗工紙に配置されているインクドット画像を示している。
図14A−1〜14F−1は、インクドット画像の中心を通る直線上の位置の関数として表した(非彩色)グレー相対値を示しており、図14A−2〜14C−2(非塗工紙上)および図14D−2〜14F−2(塗工紙上)にそれぞれの印刷技法によるインクドット画像が示されている。
図14A−3〜14−F3は、上記の当該技術分野の印刷技法によって非被覆基板および被覆基板上に得られた外郭の分析を示している。印刷されたドットの凸状性の計算には外郭プロフィールが用いられている。
図12A−3〜12E−3はそれぞれ、インクドット画像の中心を通る線上の位置の関数として(非彩色)グレー相対値をプロットしたグラフを示しており、図12A−3〜12C−3(塗工紙上)および12D−3〜12E−3(非塗工紙上)に各インクドット画像が示されている。特定のインクドット画像の線形プロフィールが比較的平坦であれば、線に沿って光学的均一性が高いことを示している。
この結果から、非被覆繊維性印刷基板上に配置されたインクドットが、被覆繊維性印刷基板上に配置された対応するインクドットよりも均一性が劣ることを裏付けているのではないかと思われる。
さらに、非被覆基板では、本発明のシステムおよび工程に作製した本発明のインクフィルムの線プロフィールは、平均STDが約4.7であったが、これは、従来技術を用いて達成されるSTD(19)と比較しても遜色ない値である。被覆基板では、本発明のシステムおよび工程により作製した本発明のインクドットの線プロフィールは、STDが約2〜2.7であったが、これは、程度はそれほどではないものの、従来技術を用いて達成されるSTD(4)と比較しても遜色ない値である。
塗工紙上のフィルムまたはドットを比較すると、本発明のドットプロフィールの標準偏差(STD)それぞれの平均値はいずれも3.5未満であった。より一般的には、本発明のドットプロフィールのSTDは、3.2未満、3.0未満、2.9未満または2.8未満である。
非塗工紙上のフィルムまたはドットの比較では、本発明のドットプロフィールの標準偏差(STD)はいずれも6未満であった。より一般的には、本発明のドットプロフィールのSTDは、15未満、12未満、10未満、8未満、7未満または6未満である。
上記のように、インク画像には、個々のまたは単一のインクドットが極めて多数(少なくとも20個、少なくとも100個、少なくとも1,000個、少なくとも10,000個または少なくとも100,000個)が含まれ得るため、本発明のインクドット構築物を統計学的に定義することは有意義であると思われ、この場合、任意の非被覆または被覆(または汎用被覆)繊維性基板上に配置される本発明のインクドット(または本発明の単一滴インクドット)の少なくとも10%、少なくとも20%または少なくとも30%、いくつかの場合には、少なくとも50%、少なくとも70%または少なくとも90%が、非塗工紙および汎用塗工紙で上記の標準偏差を示す。
浸透
本発明のインクフィルム構築物では、インクドットは本質的に印刷基板の上面に積層され得る。本明細書に記載されるように、ドットの形態は転写操作の前に決定またはほとんど決定され得るものであり、ドットは一体型ユニットとして基板に転写される。この一体型ユニットは実質的に溶媒を含まないものであり得るため、いかなる種類の材料もブランケット転写成員から基板繊維の中または間に浸透し得ない。連続ドットは大部分が有機高分子樹脂および着色料を含有し得るものであり、繊維性印刷基板の上面と接着するか、その上に薄層状の層を形成する。
このような連続ドットは通常、様々な射出技法、例えばドロップオンデマンドおよび連続射出技法などにより生じる。
再び図面を参照すると、図16Aおよび16Bは、本発明のインクフィルム構築物300および従来技術のインクジェットインク染みまたはフィルム構築物370の模式的横断面図を示している。ここで、図16Bを参照すると、インクジェットインクフィルム構築物370には、繊維性印刷基板350の特定の連続領域中の複数の基板繊維320に接着するか積層される単一滴インク染み305が含まれている。繊維性印刷基板350は、例として、非塗工紙、例えばボンド紙、コピー紙またはオフセット紙であり得る。繊維性印刷基板350はこのほか、種々の汎用被覆繊維性印刷基板のうちの1つ、例えば塗工オフセット紙などであり得る。
インク染み305の一部分は、基板350の上面の下、繊維320の間に配置される。インクの様々な構成成分は、着色料の一部分を含め、インク担体溶媒とともに上面に浸透して、繊維320の間に配置される容積380を少なくとも部分的に満たす。図に示されるように、着色料の一部分は、繊維320の下層にあり繊維320の下に配置される容積390に拡散または移動し得る。いくつかの場合(図示されていない)、着色料の一部が繊維中に浸透し得る。
これとは明らかに対照的に、図16Aに示される本発明のインクフィルム構築物300には、繊維性印刷基板350の特定の連続領域の複数の基板繊維320の上面に配置され、固定して接着する(または積層される)一体型連続インクドット、例えば個々のインクドット310などが含まれる。接着または積層は、主にまたは実質的に、物理的結合であり得る。接着または積層は、化学結合特性、より具体的にはイオン結合特性をほとんど、または実質的に全く有し得ない。
インクドット310は、有機高分子樹脂中に分散する少なくとも1つの着色料を含有する。繊維性基板350の特定の連続領域内では、印刷基板350の上面に垂直な方向が少なくとも1つ(矢印360により示されるような数個の方向)が存在する。ドット領域全体を覆うこの上面に垂直な方向すべてに関して、インクドット310は完全に領域の上方に配置される。繊維320の間の体積380および繊維320の下層の体積390には、着色料、樹脂をはじめとするインク構成成分はいずれも含まれないか、実質的に含まれない。
印刷基板中へのインクの浸透の程度は、様々な分析技法を用いて定量的に決定され得るものであり、このような技法の多くは当業者に公知である。様々な商業的分析実験室は、浸透の程度のこのような定量的決定を実施し得る。
これらの分析技法には、四酸化オスミウム染色などの様々な染色技法の使用が含まれる(Patrick Echlin,”Handbook of Sample Preparation for Scanning Electron Microscopy and X−Ray Microanalysis” Springer Science+Business Media,LLC 2009,pp.140−143参照)。
染色技法に代わる技法のひとつは、銅などの金属を含有するインクに特に適し他ものであり得る。TOF−SIMS V分光計[Ion−ToF(Munster,Germany)]を用いて、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を実施した。この装置では、有機および無機表面の最上層に関する元素および分子の情報が得られるほか、ナノメートル規模での深さ分解能を有する深さプロファイリングおよび画像処理、サブマイクロメートルの横方向分解能および1ppmのオーダーでの化学的感受性が得られる。
TOF−SIMSの生データの濃度への翻訳は、得られたシグナルをX線光電子分光法(XPS)により測定される試料中の炭素(C+)濃度に対して正規化することにより実施され得る。Thermo VG Scientific Sigma Probe(England)を用いてXPSデータを得た。微小焦点(15〜400μm)モノクロX線源を用いることにより、化学結合情報を有する個体表面の小域化学分析を得た。試料を傾けた場合と、傾けない場合とで、角度分解情報を得る。これにより、深さ分解能の高い深度プロファイリングが可能になる。
ベースラインとして、繊維性紙基板中の銅の原子濃度を深度の関数として測定した。銅の原子濃度は、表面から数マイクロメートルの深さに至るまで実質的にゼロであることがわかった。この手順を従来技術の2つのシアン色インクジェットインクフィルム構築物および本発明のシアン色インクフィルム構築物でも反復した。
従来技術の第一のシアン着色インクジェットインクフィルム構築物では、おおよその深度の関数としてのインクドット中および繊維性紙基板中の銅[Cu]の原子濃度の測定を上記の通りに測定した。シアン含有インクフィルム構築物の上面近くで測定された初期[Cu]は、約0.8原子%であった。深度約100nmまでは、[Cu]は約0.1原子%まで着実に低下した。深度範囲約100nm〜1,000nmにわたって、[Cu]は約0.1原子%から約ゼロに低下した。したがって、インクジェットインク含量が繊維性紙基板中に浸透し、可能性としては少なくとも700nm、少なくとも800nmまたは少なくとも900nmの浸透深度に至ったことは明らかである。
従来技術の第二のシアン着色インクジェットインクフィルム構築物において、おおよその深度の関数としてのインクドット構築物中の銅の原子濃度の測定をさらに実施ししたところ、以下のような結果が得られた:上面近くで測定されたインクドット構築物内の銅[Cu]の初期原子濃度は、約0.02原子%であった。この濃度は約3,000nmの深度まで概ね維持された。約3,000nm〜約6,000nmの深度範囲にわたって、[Cu]は約0.01原子%まで極めて緩やかに低下した。この従来技術の構築物は、基板の表面にほとんどまたは全くインクフィルムがなく、また基板中への顔料の浸透が顕著である(少なくとも5〜6マイクロメートル)であるように思われた。
上記の(特に図16Aおよび16Bに関する)本発明の積層フィルム転写技法の基本的性質および本発明者らが同様のインクフィルム構築物で実施した銅[Cu]の原子濃度測定の結果を考慮すると、本発明の構築物のインクフィルムは実質的に基板の表面のみに配置され、基板への顔料の浸透は浸透深度の点でも、浸透の量および割合の点でも実質的に無視できる程度であることは明らかであるものと思われる。
フィルムの高さおよび厚み
測定レーザ顕微鏡(Olympus LEXT 3D、モデルOLS4000)を用いて、単一フィルムインクドットまたは染みの高さ(H)または厚みの機器測定値を得た。LEP検体は通常、高さまたは厚みが900〜1150nmの範囲内にあり;石版オフセット検体は通常、高さまたは厚みが750〜1200nmの範囲内にあった。
ジェットインク滴から生成されるインクドットまたはフィルムでは、インクドットの最大平均基板上厚が以下の方程式から算出され得ることが明らかになった:
AVG(MAX)=VDROP/[AFILM VOL] (I)
(式中、
AVG(MAX)は、最大平均基板上厚であり;
DROPは、射出滴の体積、あるいは射出滴の公称または特徴的体積(例えば、インクジェットヘッド・メーカーまたは供給元により提供される公称体積)であり;
FILMは、インクドットの測定または算出面積であり;
VOLは、元のインクの体積対そのインクから生成された乾燥インク残渣の体積の無次元比である)。
例として、プラスチック印刷基板上に配置されるインクドットは、1075平方マイクロメートルの面積を有する。射出滴の公称サイズは、10.0±0.3ピコリットルである。RVOLを実験的に決定した:20.0mlのインクを含有する容器を、乾燥残渣が得られるまで130℃で加熱した。残渣は体積が1.8mlであった。方程式(I)に当てはめると、TAVG(MAX)=10ピコリットル/[1075μm2*(20.0/1.8)]=837nmとなる。
概ね円形のインクドットでは、インクドットの面積はインクドット直径から算出され得る。さらに、無次元体積比RVOLは、様々なインクジェットインクで一般に約10であることがわかった。
基板中に浸透するインクでは、実平均厚がTAVG(MAX)よりもいくぶん低いが、この計算は平均厚の上限として確実に役立ち得る。さらに、様々なプラスチック基板の場合および様々な上質被覆基板の場合、最大平均基板上厚は平均基板上厚と実質的に等しくなり得る。様々な汎用被覆基板の場合、最大平均基板上厚は平均基板上厚に近く、多くの場合、100nm、200nmまたは300nm以内であり得る。
ジェットインク滴から生成されるインクドットまたはフィルムでは、インクドットの最大平均基板上厚が以下の方程式から算出され得ることがわかった:
AVG(MAX)=[VDROP ρINK nRESIDUE]/[AFILM ρFILM] (II)
(式中、
ρINKは、インクの比重であり;
nRESIDUEは、乾燥インク残渣の重量をもとのインクの重量で割った値であり;
ρFILMは、インクの比重である)。
通常、ρFILMに対するρINKの比は約1であり、したがって、方程式(II)は、以下のように簡約され得る:
AVG(MAX)=[VDROP nRESIDUE]/AFILM (III)
多種多様な水性インクジェットインクにおいて、FnRESIDUEは、インクジェットインク中の固体の重量分画とほぼ等しい。
上記のOlympusLEXT 3D測定レーザ顕微鏡を用いて、様々なインクドット構築物の基板表面上の高さを測定した。
原子力顕微鏡(AFM)は、基板上の高さを測定し、インクドット厚を決定するのに極めて精確なもうひとつの測定技法である。AFM測定は、市販の装置、例えばPark Scientific Instruments・モデルAutoprobe CP、走査プローブ顕微鏡(プロスキャン・バージョン1.3(またはそれ以後のバージョン)ソフトウェアを装備)を用いて実施され得る。AFMの使用については、例えば、Renmei Xuら,”The Effect of Ink Jet Papers Roughness on Print Gloss and Ink Film Thickness”[Department of Paper Engineering,Chemical Engineering,and Imaging Center for Ink and Printability,Western Michigan University(Kalamazoo,MI)]により、文献に詳細に記載されている。
本発明者らは、本発明のインクフィルム構築物では、インクジェットインク処方物を修正することにより基板上の乾燥インクフィルムの厚みを調整し得ることを発見した。より低いドット厚を得るためには、このような修正は、以下のうちの少なくとも1つを伴い得る:
・顔料に対する樹脂の比を小さくする;
・顔料に対する樹脂の比が小さくなっても、適切なフィルム転写を可能にする1つまたは複数の樹脂を選択すること;
・より微細な顔料粒子を用いること;
・顔料の絶対量を減らすこと。
より厚いドットを得るためには、これと逆の修正(例えば、顔料に対する樹脂の比を増大させる)を少なくとも1つを実施し得る。
処方物におけるこのような変化は、工程操作条件の様々な修正を必要とするか、それを有利にし得る。本発明者らは、顔料に対する樹脂の比が小さいほど、比較的高い転写温度を必要とし得ることを発見した。
所与のインクジェットインク処方物では、転写温度が高くなるとインクフィルム厚が減少し得る。ほかにも、圧部で残留フィルムが基板へ転写されるときに加圧ローラまたは胴の圧胴方向への圧力が増大するとインクフィルム厚が減少し得る。このほか、基板と中間転写成員(本明細書では互換的に「画像転写成員」と呼ばれ、ともにITMと略される)との間の接触時間が増大することによってインクフィルム厚が減少し得る。
このようなことがあるにもかかわらず、本発明に従って作製されるインクフィルムの実際の最小の特徴的(すなわち、中央値)厚みまたは平均厚は、約100nmであり得る。より通常には、このようなインクフィルムは、基板に対するドット厚、平均ドット厚または(ドット上面の)高さが少なくとも125nm、少なくとも150nm、少なくとも175nm、少なくとも200nm、少なくとも250nm、少なくとも300nm、少なくとも350nm、少なくとも400nm、少なくとも450nmまたは少なくとも500nmの単一滴インクフィルムである。
本発明者らは上記のフィルム厚指針を用いて、少なくとも600nm、少なくとも700nm、少なくとも800nm、少なくとも1,000nm、少なくとも1,200nmまたは少なくとも1,500nmの特徴的厚みまたは平均厚を有する本発明のフィルム構築物を得ることができる。単一滴フィルム(または個々のインクドット)の特徴的厚みまたは平均厚は、せいぜい約2,000nm、せいぜい1,800nm、せいぜい1,500nm、せいぜい1,200nm、せいぜい1,000nmまたはせいぜい900nmであり得る。より通常には、単一滴フィルムの特徴的厚みまたは平均厚は、せいぜい800nm、せいぜい700nm、せいぜい650nm、せいぜい600nm、せいぜい500nm、せいぜい450nmせいぜい400nmまたはせいぜい350nmであり得る。
本発明者らは上記の下フィルム厚指針を用いて、インクフィルムの特徴的厚みまたは平均厚が100nm、125nmまたは150nmから1,800nm、1,500nm、1,200nm、1,000nm、800nm、700nm、600nm、550nm、500nm、450nm、400nmまたは350nmまでの範囲内に収まり得る本発明のフィルム構築物を得ることができる。より通常には、インクフィルムの特徴的厚みまたは平均厚は、175nm、200nm、225nmまたは250nmから800nm、700nm、650nm、600nm、550nm、500nm、450nmまたは400nmまでの範囲内であり得る。本発明のシステム、工程およびインク処方物を用いて、適切な光学密度および光学的均一性が得られる。
単一滴インクフィルムまたは個々のインクドット(図16Aのドット310として模式的に示される)の厚み(Hdot)は、せいぜい1,800nm、せいぜい1,500nm、せいぜい1,200nm、せいぜい1,000nmまたはせいぜい800nm、より通常には、せいぜい650nm、せいぜい600nm、せいぜい550nm、せいぜい500nm、せいぜい450nmまたはせいぜい400nmであり得る。単一滴インクドット310の厚み(Hdot)は、少なくとも50nm、少なくとも100nmまたは少なくとも125nm、より通常には、少なくとも150nm、少なくとも175nm、少なくとも200nmまたは少なくとも250nmであり得る。
アスペクト比
本発明者らは、特に、ITM上へのインクの塗布(例えば射出)に適したインク送達システムによって、またインク処方物の特性(例えば、表面張力)を特定のインクヘッドに必要な条件に合わせて調整することによって、本発明のインクフィルム構築物中の個々のインクドットの直径を調整し得ることを発見した。
このインクフィルムの直径Ddotまたは基板表面の平均ドット直径Ddot averageは、少なくとも10マイクロメートル、少なくとも15μmまたは少なくとも20μm、より通常には、少なくとも30μm、少なくとも40μm、少なくとも50μm、少なくとも60μmまたは少なくとも75μmであり得る。DdotまたはDdot averageは、せいぜい300マイクロメートル、せいぜい250μmまたはせいぜい200μm、さらに典型的には、せいぜい175μm、せいぜい150μm、せいぜい120μmまたはせいぜい100μmであり得る。
dotまたはDdot averageは一般に、10〜300マイクロメートル、10〜250μm、15〜250μm、15〜200μm、15〜150μm、15〜120μmまたは15〜100μmの範囲内であり得る。より通常には、現在用いられているインク処方物および特定のインクヘッドでは、DdotまたはDdot averageが20〜120μm、20〜120μm、20〜100μm、20〜80μm、20〜60μm、20〜50μmまたは25〜50μmの範囲内であり得る。
各単一滴インクフィルムまたは個々のインクドットは、次式により定義される無次元アスペクト比を特徴とする:
aspect=Ddot/Hdot
(式中、Raspectはアスペクト比であり;Ddotはドット最長直径であり;Hdotは基板に対するドット上面の平均の高さである)。
アスペクト比は、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25または少なくとも30、より通常には、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも75であり得る。多くの場合、アスペクト比は、少なくとも95、少なくとも110または少なくとも120であり得る。アスペクト比は通常、200未満または175未満である。
表面粗さ
本発明者らはレーザ顕微鏡画像処理をはじめとする技法を用いて、本発明のインクフィルム構築物中のインクドットの上面が、特にその構築物の基板が高い紙(または基板)光沢を有する場合、表面粗さが低いことを特徴とし得ることを観察した。
理論に束縛されることを望むものではないが、本発明のインクフィルム構築物が比較的平坦または平滑であるのは、大部分が、ITM表面の放出層の平滑性に起因するほか、出現するフィルム面がその表面層の面を実質的に補足し、発現するインクフィルム画像が印刷基板上への転写によりその相補的構造を実質的に保持するか、完全に保持し得る本発明のシステムおよび工程に起因すると本発明者らは考える。
ここで図17Aを参照すると、図17Aは、本発明に従って用いられるITMまたはブランケットの放出層の表面の画像である。表面は名目上、平坦であり得るが、通常、1〜5μm程度の小さなへこみ(凹所)および突出部が観察され得る。これらの痕跡の多くは鋭く不規則な外観を有する。図17Bに示されるこのブランケットを用いて作製したインクドット表面の画像は、図17Aに示されるものと事実上極めて類似した構造的特徴を示している。ドット表面には、ブランケット表面の不規則な痕跡と極めて類似し(かつ同じサイズ範囲内にあり)鋭く不規則な外観を有する多数の痕跡が一面に見られる。
より平滑なブランケットを取り付けた;図17Cは、このブランケットの放出層の画像を示している。図17Aの不規則なへこみが存在しないのが明確にわかる。極めて平滑な表面には、気泡により生じたと思われる高円形の表面傷が散在し、その直径は通常、約1〜2μmである。図17Dに示されるこのブランケットを用いて作製したインクドット表面の画像は、図17Cに示されるものと事実上極めて類似した構造的特徴を示している。この画像には事実上、特徴的なへこみは見られないが、ブランケット面に見られるものとサイズおよび形態が極めて類似した高円形の表面傷が多数見られる。
プラスチック基板
様々な繊維性基板で観察された上記の結果および本発明の転写技法の基本的性質を考慮すると、本発明のインクドットはプラスチック基板上でも、真円性、凸状性、エッジぎざぎざ性および表面粗さを含め、優れた光学的特性および形状特性を示すことが予想される。
多種多様なプラスチック印刷基板上に印刷されるインクドットの非凸度または凸状性からの偏差は通常、せいぜい0.020、せいぜい0.018、せいぜい0.016、せいぜい0.014、せいぜい0.012またはせいぜい0.010であり得る。インクドットの少なくとも一部は、せいぜい0.008、せいぜい0.006、せいぜい0.005、せいぜい0.004、せいぜい0.0035、せいぜい0.0030、せいぜい0.0025またはせいぜい0.0020の非凸度を示し得る。いくつかの基板(例えば、ポリエステルおよびアタクチックポリプロピレン基板)上では、典型的インクドットは、せいぜい0.006、せいぜい0.004、せいぜい0.0035、より通常には、せいぜい0.0030、せいぜい0.0025またはせいぜい0.0020の非凸度を示し得る。
いずれのプラスチック基板上でも、本発明によるインクドット構築物中の個々のインクドットは、せいぜい0.8、せいぜい0.7、せいぜい0.6、せいぜい0.5、せいぜい0.4、せいぜい0.35、せいぜい0.3、せいぜい0.25、せいぜい0.20、せいぜい0.18またはせいぜい0.15の真円からの典型的偏差を示し得る。アタクチックポリプロピレンなどの様々な平滑プラスチックおよび様々なポリエステル上では、個々のインクドットは、せいぜい0.35、せいぜい0.3、せいぜい0.25、せいぜい0.20、せいぜい0.18、せいぜい0.15、せいぜい0.12、せいぜい0.10、せいぜい0.08、せいぜい0.06、せいぜい0.05、せいぜい0.04またはせいぜい0.035の真円からの典型的偏差を示し得る。
樹脂のガラス転移温度
本発明者らは、本発明のインクフィルム構築物を支持する処方物中に用いる樹脂を選択するうえで、軟化温度(または少なくとも部分的に非晶質の樹脂に関してはガラス転移温度)はが樹脂適合性の有用な指標となり得ることを発見した。具体的には、インク処方物中に用いる(および本発明のインクフィルム中に配置される)樹脂は、ガラス転移温度(T)が、少なくとも42℃、少なくとも44℃、少なくとも46℃、少なくとも48℃または少なくとも50℃であり得る。しかし、このような樹脂は軟らか過ぎることがあり、このことは、印刷された画像の耐摩耗性に悪影響を及ぼし得るほかに、周囲温度付近(例えば、40℃前後)で画像に粘着性および流動性が生じる原因にもなり得る。さらに重要なのは、このような樹脂は、特にブランケットが高温で射出ユニットに熱が伝わる場合、インクジェットヘッドの目詰まりを引き起こし得るということである。したがって、Tgは通常、少なくとも52℃、少なくとも54℃、少なくとも56℃、少なくとも58℃、少なくとも60℃、少なくとも65℃、少なくとも70℃、少なくとも75℃、少なくとも80℃、少なくとも85℃、少なくとも90℃または少なくとも95℃であり得る。ガラス転移温度は通常、せいぜい120℃、せいぜい110℃、せいぜい105℃またはせいぜい100℃、いくつかの場合には、せいぜい95℃、せいぜい90℃またはせいぜい85℃である。
より一般的に工程の観点から言えば、ITM上に配置されるインク処方物は、水がなくなるか、実質的になくなった後、任意の共溶媒をはじめとする工程条件下で気化されるあらゆる気化物質、例えばpH調節剤(「インク固形物」および「インク残渣」などを生じる)および/またはその樹脂は、Tが少なくとも42℃、少なくとも44℃、少なくとも46℃、少なくとも48℃または少なくとも50℃であり得る。
複数のガラス転移温度が観察される場合、本明細書で使用されるTという用語は、(i)重量基準で最も多い樹脂のガラス転移温度および(ii)複数の樹脂のなかで最も高いTgのうちの少なくとも一方を指す。
印刷済み基板上のインクフィルムの分析
3枚の印刷物(B2、750×530mmを土台とする)を以下の手順に供した:1週間後、シートを3×3cm片に切断し、水に溶解した2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール1%を含有する溶液300gに導入した。これで様々な水溶性インクを用いて印刷されたインク画像を十分に溶解することが可能であるが、溶液が無色で変わらない場合には、水を分離して取り出し、極性の小さい溶媒であるエタノールを同重量導入する。それでも溶液が無色で変わらない場合には、溶媒を分離して取り出し、さらに極性の小さい溶媒、メチルエチルケトンを導入する。良好に極性の小さい溶媒、すなわち酢酸エチル、トルエンおよびIsopar(商標)(イソパラフィンの合成混合物)を用いて、この手順を継続する。最も適した溶媒とともに室温で5時間撹拌した後、混合物を5マイクロメートルのフィルタで濾過する。溶解したインクを含有する1つまたは複数の濾液を、回転蒸発器を用いて乾燥した。次いで、残渣を5グラムのDMSO(または上記溶媒のうちの1つ)に溶解し、110℃で12時間、オーブン中で乾燥させて「回収残渣」を得た。
次いで、(例えば、上記のように、温度の関数としての粘度「スイープ」を実施することによって)回収残渣の熱−流動学的挙動を特性化し、利用可能であれば、元のインクの乾燥試料の熱−流動学的挙動と比較し得る。本発明者らは、この手順によって回収残渣の熱−流動学的挙動と、元のインクの乾燥試料の熱−流動学的挙動との間に強い相関が得られることを発見した。本発明者らは、この相関が滞留時間の増大および様々な極性の追加の溶媒の使用の両方に起因し得るものと考える。
この手順は、雑誌およびパンフレットなどの印刷物から回収される乾燥インク残渣を作製し特性化するために有利に用い得る。
当業者であれば、その他の潜在的に優れた手法を用いて、印刷済み基板を脱インクして、流動学的、熱−流動学的および/または化学的分析のための回収インク残渣を作製し得ることが容易に理解されよう。
インク処方物およびインクフィルム組成物
本発明のインクジェットインクはとりわけ、通常少なくとも30重量%、より一般的には約50重量%以上の水;任意選択で、1つまたは複数の水混和性共溶媒;水および任意の共溶媒中に分散するか、少なくとも部分的に溶解する少なくとも1つの着色料;ならびに水および任意の共溶媒に分散するか、少なくとも部分的に溶解する有機高分子樹脂結合剤を含有する点で水性インクである。
アクリル系ポリマーはアルカリ性pHで負に荷電され得ることが理解されよう。したがって、いくつかの実施形態では、樹脂結合剤は、pH8以上で負電荷を有する。さらに、水中の樹脂結合剤の溶解性または分散性は、pH9による影響を受け得る。したがって、いくつかの実施形態では、処方物はpH上昇化合物を含み、pH上昇化合物の非限定的な例としては、ジエチルアミン、モノエタノールアミンおよび2−アミノ−2−メチルプロパノールが挙げられる。このような化合物をインク中に含ませる場合、一般に少量で、例えば、処方物の約1重量%、通常は処方物の約2重量%以下の量で含ませる。他の実施形態では、インク処方物にpH調節剤を添加しない。
本発明のインクフィルム構築物のインクフィルムは、少なくとも1つの着色料を含有する。インクフィルム中の少なくとも1つの着色料の濃度は、完全インク処方物の重量の少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも6%、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%または少なくとも22%であり得る。通常、インクフィルム中の少なくとも1つの着色料の濃度は、せいぜい40%、せいぜい35%、せいぜい30%またはせいぜい25%である。
より通常には、インクフィルムは、少なくとも1つの着色料を2〜30%、3〜25%または4〜25%含有し得る。
顔料の粒子サイズは、顔料の種類および顔料の調製に用いるサイズ減少法によって決まり得る。顔料粒子のd50は一般に、20nm〜300nmの範囲内に収まると予想される。異なる色を生じさせるために使用される様々な粒子サイズの顔料を同じ印刷に用い得る。
インクフィルムは、少なくとも1つの樹脂または樹脂結合剤、通常は有機高分子樹脂を含有する。インクフィルム中の少なくとも1つの樹脂の濃度は、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%または少なくとも80重量%であり得る。
インクフィルム中の着色料および樹脂の総濃度は、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%少なくとも30重量%または少なくとも40重量%であり得る。しかし、より通常には、インクフィルム中の着色料および樹脂の総濃度は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも85%であり得る。多くの場合、インクフィルム中の着色料と樹脂の総濃度は、インクフィルム重量の少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも97%であり得る。
名目上、樹脂分散液は、ポリエステル(コポリエステルを含む)またはアクリルスチレンコポリマー(またはコ(エチルアクリラートメタクリル酸))分散液であるか、これを含み得る。インク処方物のアクリルスチレンコポリマーは最終的に、印刷基板に接着するインクフィルム中に残存する。
一実施形態では、本発明によるインクフィルム構築物中のインクフィルムは、蝋を含まないか、実質的に含まない。通常、本発明によるインクフィルムは、30%未満の蝋、20%未満の蝋、15%未満の蝋、10%未満の蝋、7%未満の蝋、5%未満の蝋、3%未満の蝋、2%未満の蝋または1%未満の蝋を含有する。
一実施形態では、本発明によるインクフィルムは、油、例えば鉱油および植物油(例えば亜麻仁油およびダイズ油)またはオフセットインク処方物中に用いられる各種の油を含まないか、実質的に含まない。通常、本発明によるインクフィルムは、風乾時に生成される1つまたは複数の油、架橋脂肪酸または脂肪酸誘導体をせいぜい20重量%、せいぜい12重量%、せいぜい8重量%、せいぜい5重量%、せいぜい3重量%、せいぜい1重量%、せいぜい0.5重量%またはせいぜい0.1重量%含有する。
一実施形態では、本発明によるインクフィルムは、転写成員または基板上でインクを凝固または沈殿させるために用いられる塩(例えば、塩化カルシウム)を含めた1つまたは複数の塩を含まないか、実質的に含まない。通常、本発明によるインクフィルムは、1つまたは複数の塩をせいぜい8%、せいぜい5%、せいぜい4%、せいぜい3%、せいぜい1%、せいぜい0.5%、せいぜい0.3%またはせいぜい0.1%含有する。
一実施形態では、本発明によるインクフィルムは、1つまたは複数の光開始剤を含まないか、実質的に含まない。通常、本発明によるインクフィルムは、1つまたは複数の光開始剤をせいぜい2%、せいぜい1%、せいぜい0.5%、せいぜい0.3%、せいぜい0.2%またはせいぜい0.1%含有する。
一実施形態では、本発明のインクフィルム構築物の印刷基板は、基板上でインクを凝固または沈殿させるために用いられるか、これに適した塩(例えば、塩化カルシウム)を含めた1つもしくは複数の可溶性塩またはその構成成分を含まないか、実質的に含まない。一実施形態では、本発明のインクフィルム構築物の印刷基板は、紙1m当たり、せいぜい100mgの可溶性塩、せいぜい50mgの可溶性塩またはせいぜい30mgの可溶性塩、より通常には、せいぜい20mgの可溶性塩、せいぜい10mgの可溶性塩、せいぜい5mgの可溶性塩またはせいぜい2mgの可溶性塩を含有する。
一実施形態では、インクフィルムおよび処方物は、実質的に糖類を含まない。通常、本発明のインク中の糖類の濃度は、せいぜい6重量%、せいぜい4重量%、せいぜい3重量%、せいぜい1重量%、せいぜい0.5重量%、せいぜい0.3重量%またはせいぜい0.1重量%である。
一実施形態では、本発明によるインクフィルムは、1つまたは複数の下塗り剤(凝固剤または増粘剤など)を含まないか、実質的に含まない。このような下塗り剤は、当業者により理解されるように、基板の表面に射出または別の方法で塗布され得る。下塗り剤は、のちに射出される滴付近のみに塗布しても、あるいは実質的に基板の印刷表面全体に塗布してもよい。通常、本発明によるインクフィルムは、このような下塗り剤をせいぜい2%、せいぜい1%、せいぜい0.5%、せいぜい0.3%、せいぜい0.2%またはせいぜい0.1%含有する。
このような下塗り剤は、印刷基板、より一般にはインクドットインクの構成成分と化学的に相互作用して「結合した下塗り剤」を生成し得ることが理解されよう。したがって、一実施形態では、本発明によるインクフィルムは、1つまたは複数の結合した下塗り剤を含まないか、実質的に含まない。通常、本発明によるインクフィルムは、このような下塗り剤をせいぜい2%、せいぜい1%、せいぜい0.5%、せいぜい0.3%、せいぜい0.2%またはせいぜい0.1%含有する。
一実施形態では、本発明によるインクフィルム構築物中のインクフィルムは、シリカなどの無機充填剤粒子をせいぜい5重量%、せいぜい3重量%、せいぜい2重量%、せいぜい1重量%またはせいぜい0.5重量%含有する。
一実施形態では、本発明のインクフィルム中に存在する乾燥樹脂は、7.5〜10の範囲内または8〜11の範囲内のpHにおいて、20℃〜60℃の温度範囲内の少なくとも1つの特定温度で、水への溶解度が少なくとも3%、少なくとも5%または少なくとも10%であり得る。別の実施形態では、高分子樹脂は水への溶解度は高くない(例えば、7.5〜10の範囲内の少なくとも1つのpHで3重量%未満)が、水に分散する。
一実施形態では、本発明の回収インクフィルムは、8〜10の範囲内または8〜11の範囲内のpHにおいて、20℃〜60℃の温度範囲内の少なくとも1つの特定温度で、水への溶解度が少なくとも3%、少なくとも5%または少なくとも10%であり得る。
印刷画像の耐水性
ASTM標準F2292−03(2008)“Standard Practice for Determining the Waterfastness of Images Produced by Ink Jet Printers Utilizing Four Different Test Methods−Drip,Spray,Submersion and Rub”を用いて、様々な基板上に印刷されるインクドットおよびフィルムの耐水性を評価し得る。本発明によるインク構築物の耐水性は、滴下、噴霧および浸水の3種類の試験方法を用いて評価することができる。
3種類のいずれの試験でも、本発明のインクフィルム構築物は完全な耐水性を示し、インクブリージング、インク汚れまたは転写は観察されなかった。
いくつかの実施形態では、上部フィルム面は、PEI、ポリクオタニウム陽イオン性グアー、例えばグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドおよびヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドなどのなどのうちの少なくとも1つを含有する。
いくつかの実施形態では、上部フィルム面は、様々な第一級アミンのHCl塩などの第四級アミン基を含有する。
本明細書およびのちの特許請求の範囲の節で使用される「染料」という用語は、塗布工程で溶解性であるか、溶液になり、光の選択的吸収によって色を付与する、少なくとも1つの着色物質を指す。
本明細書およびのちの特許請求の範囲の節で顔料の粒子サイズに関して使用される「平均粒子サイズ」または「d50」という用語は、標準的実施方法を用いてレーザ回析粒子サイズ分析器(例えば、Mastersizer(商標)2000;Malvern Instruments、England)または動的光散乱粒子サイズ分析器(例えば、Zetasizer(商標)Nano−S、ZEN1600、同じくMalvern Instruments、England)により決定される、体積での平均粒子サイズを指す。
本明細書およびのちの特許請求の範囲の節で使用される「幾何学的突出部」という用語は、印刷基板の印刷面上に突出する画像幾何学的構造物を指す。
本明細書およびのちの特許請求の範囲の節で使用される「異なるインクドット」という用語は、「幾何学的突出部」内に少なくとも部分的に配置される任意のインクドットまたはインクドット画像を指するものであり、「サテライト」でも、重複するドットまたはドット画像でもない。
本明細書およびのちの特許請求の範囲の節で真円性、凸状性等に関して使用される複数の「異なるインクドット」の「平均偏差」という用語は、個々の異なるインクドットの偏差の総和を個々の異なるインクドットの数で除したものを指す。
本明細書およびのちの特許請求の範囲の節で処方物または乾燥インク残渣中の樹脂に関して使用される「重量」または「重量比」という用語は、例として樹脂「結合剤」および任意の樹脂分散剤を含めた、その処方物または残渣中の総樹脂含有量を包含するものとする。
本明細書およびのちの特許請求の範囲の節で使用される「軟化剤」という用語は、この用語が高分子樹脂の分野の当業者によって通常理解されるものとして使用される。したがって、例として、ある物質を特定の高分子樹脂に1:1の重量比で添加し、その樹脂の軟化がごくわずかである(例えば、Tgの低下が1℃未満である)場合、その物質は、その特定の高分子に対する「軟化剤」であるとは見なされない。
繊維性印刷基板に関して、印刷業界の当業者であれば、印刷に用いられる塗工紙は一般に、機能的および/または化学的に2つの群、すなわち、非インクジェット印刷法(例えば、オフセット印刷)に用いるよう設計された塗工紙と、特に水性インクを用いるインクジェット印刷方法に用いるよう設計された塗工紙とに分類されることが理解されよう。当該技術分野で知られているように、前者の型の塗工紙は、コスト削減のために一部の紙繊維と取り替えるだけでなく、紙に特別な特性、例えば改善された印刷性、明度、不透明度および平滑性などを付与するために、無機充填剤を用いるものである。紙をコーチングする際に、無機物を白色顔料として用いて繊維を隠すことにより、明度、白色度、不透明度および平滑性を改善する。この目的のために一般に用いられる無機物には、カオリン、焼成粘土、粉砕炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、タルク、石膏、アルミナ、繻子白、沈降硫酸バリウム、硫化亜鉛、酸化亜鉛およびプラスチック顔料(ポリスチレン)がある。
非インクジェット印刷法に用いるよう設計された塗工紙は、これまで水性インクジェットインクに用いるのには適していないものであったか、本発明の印刷インクフィルム構築物とは明らかに異なり得るプリントドットまたは染みを生じるものである。
これに対して、インクジェットインクに用いるよう設計された特殊塗工紙は、他の型の塗工紙と同じように充填剤顔料の層を有する場合もあるが、インクが印刷されるときに結合剤として作用するポリビニルアルコール(PVA)またはポリビニルピロリドン(PVP)などの水溶性ポリマーとともに高多孔性無機物、通常はシリカの層を含み得る。このような塗工インクジェット紙は、印刷インクから水を迅速に除去し、均一性およびエッジ粗さに優れたインク小滴の印刷を促進するよう設計される。本発明は、非塗工紙およびインクジェット使用のために設計されてない塗工紙に印刷されるインク小滴を包含するが、本発明のいくつかの実施形態は、特殊塗工インクジェット紙に印刷されるインク小滴を包含することを意図するものではない。
したがって、いくつかの実施形態では、基板は非塗工紙である。他の実施形態では、基板は、インクが印刷される層に水溶性ポリマー結合剤を含有しない塗工紙である。
本明細書およびのちの特許請求の範囲の節で使用される「汎用被覆繊維性印刷基板」という用語は、写真紙および塗工インクジェット紙を含めた特殊および高性能塗工紙は包含しないものとする。
汎用被覆繊維性印刷基板の典型的な紙コーチングでは、カオリン粘土および炭酸カルシウムなどの顔料を水に分散させた後、ポリスチレンブタジエンコポリマーなどの結合剤および/または加工デンプンの水溶液に加えることにより、コーチング処方物を調製し得る。コーチング中にはこのほか、他の紙コーチング成分、例えば流動学的改質剤、殺生物剤、滑剤、消泡性化合物、架橋剤およびpH調節剤などが少量存在し得る。
コーチング処方物に使用し得る顔料の例には、カオリン、炭酸カルシウム(チョーク)、陶土、非晶質シリカ、ケイ酸塩、硫酸バリウム、繻子白、アルミニウム三水和物、タルク、二酸化チタンおよびその混合物がある。結合剤の例には、デンプン、カゼイン、ダイズタンパク質、ポリビニルアセタート、スチレンブタジエンラテックス、アクリラートラテックス、ビニルアクリルラテックスおよびその混合物がある。紙コーチング中に存在し得るその他の成分には、ポリアクリラートなどの分散剤、ステアリン酸塩などの滑剤、防腐剤、炭化水素油に分散させたシリカなどの油性またはキサレングリコールなどの水性であり得る消泡剤、水酸化ナトリウムなどのpH調節剤、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、デンプン、タンパク質、高粘性ヒドロキシエチルセルロースおよびアルカリ可溶性格子などのレオロジー調整剤がある。
本明細書およびのちの特許請求の範囲の節で使用される本発明の「繊維性印刷基板」という用語は、具体的には以下のものを包含するものとする:
・標準新聞用紙を含めた新聞用紙、電話帳用紙、マシン仕上げ紙および超光沢紙;
・軽量塗工紙、中重量塗工紙、重量塗工紙、機械仕上げ塗工紙、フィルム塗工オフセットを含めた塗工機械パルプ紙、;
・オフセット紙、軽量紙を含めた上質非塗工紙;
・標準塗工上質紙、低コート重量紙、アート紙を含めた上質塗工紙;
・コピー用紙、デジタル印刷用紙、連続帳票を含めた特殊上質紙;
・ボール紙、カートン用板紙;ならびに
・段ボール原紙。
本明細書およびのちの特許請求の範囲の節で使用される本発明の「繊維性印刷基板」という用語は、具体的にはISO12647−2に記載される5種類の繊維性オフセット基板をすべて包含するものとする。
本明細書およびのちの特許請求の範囲の節で高分子樹脂に関して使用される「分散した」という用語は、部分的に溶解した高分子樹脂を包含するものとする。
本明細書およびのちの特許請求の範囲の節で使用される「射出可能なインク処方物」などの用語は、ドロップオンデマンド圧電プリントヘッドを用いてドロップオンデマンド射出を反復するのに適したインク処方物を指す。
特許または出願ファイルには、カラーで作成された図面が少なくとも1つ含まれる。カラー図面(1つまたは複数)を有するこの特許または特許出願広報のコピーは、特許庁に請求し必要料金を支払うことにより提供される。
明確にするために別個の実施形態の形で記載されている本発明の特定の特徴については、単一の実施形態で組合せても提供され得ることが理解される。これとは逆に、簡略にするために単一の実施形態の形で記載されている本発明の様々な特徴については、別個でも任意の適切な部分的組合せでも提供され得る。
本発明を、その具体的実施形態とともに記載してきたが、当業者には多数の代替物、修正および変更が明らかになることは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の概念および広範な範囲内にあるこのような代替物、修正および変更はすべて包含されるものとする。本明細書で言及される刊行物、特許および特許出願は、国際公開第2013/132418号、同第2013/132419号、同第2013/132420号、同第2013/132424号、同第2013/136220号、同第2013/132339号、同第2013/132432号および同第2013/132438号を含めいずれも、個々の刊行物、特許または特許出願が具体的に独立して、参照により本明細書に組み込まれることが明示された場合と同様に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。さらに、本願において任意の参考文献が引用または特定される場合、このような参考文献が本発明に対して従来技術として利用可能であることの承認としてこれを解釈してはならない。

Claims (21)

  1. (a)水を含有する溶媒と、
    (b)前記溶媒中に分散した、または少なくとも部分的に溶解した少なくとも1つの着色料と、
    (c)前記溶媒中に分散した少なくとも1つの有機高分子樹脂と、
    (d)前記高分子樹脂のガラス転移温度(T)を低下させるよう選択された軟化剤と
    を含む水性インク処方物であって、乾燥時、
    (i)60℃〜110℃の第一温度範囲の少なくとも一部分にわたって、10cP〜3・10cPの範囲内の第一動的粘度と、
    (ii)50℃〜55℃の第二温度範囲の少なくとも一部分にわたって、少なくとも6・10cPの第二動的粘度と
    を含む実質的に乾燥したインク残渣を形成し、
    55℃における前記第二動的粘度が、85℃における前記第一動的粘度を上回り、
    前記軟化剤が、150℃において、せいぜい0.40kPaの純粋蒸気圧を有する、
    水性インク処方物。
  2. 前記軟化剤が、150℃において、せいぜい0.35kPa、せいぜい0.25kPa、せいぜい0.20kPa、せいぜい0.15kPa、せいぜい0.12kPa、せいぜい0.10kPa、せいぜい0.08kPa、せいぜい0.06kPaまたはせいぜい0.05kPaの蒸気圧を有する、請求項1に記載の処方物。
  3. 前記有機高分子樹脂のうちの少なくとも1つの特定の樹脂が、少なくとも50℃、少なくとも52℃、少なくとも54℃、少なくとも56℃、少なくとも58℃、少なくとも60℃、少なくとも65℃、少なくとも70℃、少なくとも75℃、少なくとも80℃、少なくとも85℃、少なくとも90℃または少なくとも95℃の高いガラス転移温度(T)を有する、請求項1または2に記載の処方物。
  4. 前記軟化剤が、前記高いガラス転移温度を少なくとも5℃、少なくとも7℃、少なくとも10℃、少なくとも15℃、少なくとも20℃、少なくとも25℃、少なくとも30℃、少なくとも40℃または少なくとも50℃低下させるよう選択され、かつ/またはそのような量で添加される、請求項3に記載の処方物。
  5. 前記実質的に乾燥したインク残渣が、100℃、90℃、85℃、80℃、75℃および70℃のうちの少なくとも1つにおいて、少なくとも0.90、少なくとも0.95または1.0の総転写率を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の処方物。
  6. 前記実質的に乾燥したインク残渣が100℃、90℃、85℃、80℃、75℃および70℃のうちの少なくとも1つにおいて、少なくとも0.90、少なくとも0.95または1.0の総転写率を有するように、前記軟化剤が選択され、かつそのような量で添加される、請求項3または4に記載の処方物。
  7. 前記少なくとも1つの有機高分子樹脂のうちの少なくとも1つの高分子樹脂が、少なくとも48℃、少なくとも50℃、少なくとも52℃、少なくとも54℃、少なくとも56℃、少なくとも58℃、少なくとも60℃、少なくとも65℃、少なくとも70℃または少なくとも75℃の最低フィルム形成温度(MFFT)を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の処方物。
  8. 前記第一温度範囲が60℃〜100℃である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の処方物。
  9. 前記第一温度範囲が60℃〜87.5℃であり、前記第一動的粘度が、前記第一温度範囲の少なくとも一部分にわたって10cP〜5・10cPの範囲内にある、請求項1〜7のいずれか1項に記載の処方物。
  10. 前記実質的に乾燥したインク残渣に対する前記軟化剤の重量比が、0.01〜0.25、0.025〜0.25、0.04〜0.25、0.06〜0.25、0.08〜0.25、0.10〜0.25、0.10〜0.20または0.12〜0.20の範囲内にある、請求項1〜9のいずれか1項に記載の処方物。
  11. (i)20〜60℃の射出温度範囲内の少なくとも1つの特定温度において、2〜25cPの粘度;および
    (ii)前記射出温度範囲内の少なくとも1つの特定温度において、せいぜい50ミリニュートン/mの表面張力
    のうちの少なくとも1つを有する水性インクジェットインクである、請求項1〜10のいずれか1項に記載のインク処方物。
  12. 総固形分を有し、前記総固形分に対する前記軟化剤の第一の重量比が、少なくとも0.01、少なくとも0.02、少なくとも0.03、少なくとも0.04、少なくとも0.06、少なくとも0.08または少なくとも0.10である、請求項1〜11のいずれか1項に記載のインク処方物。
  13. 前記第一の重量比が、せいぜい0.20、せいぜい0.15、せいぜい0.12またはせいぜい0.11である、請求項12に記載の処方物。
  14. 総樹脂含有量を有し、前記総樹脂含有量に対する前記軟化剤の第二の重量比が、少なくとも0.01、少なくとも0.02、少なくとも0.03、少なくとも0.04、少なくとも0.06、少なくとも0.08、少なくとも0.10または少なくとも0.12である、請求項1〜13のいずれか1項に記載のインク処方物。
  15. 前記第二の重量比が、せいぜい0.25、せいぜい0.20、せいぜい0.15またはせいぜい0.13である、請求項14に記載の処方物。
  16. が50℃を上回る少なくとも1つの高T樹脂を有し、前記少なくとも1つの高T樹脂に対する前記軟化剤の第三の重量比が、少なくとも0.02、少なくとも0.04、少なくとも0.06、少なくとも0.08、少なくとも0.10、少なくとも0.12、少なくとも0.15または少なくとも0.20である、請求項1〜15のいずれか1項に記載のインク処方物。
  17. 前記第三の重量比が、せいぜい1.0、せいぜい0.70、せいぜい0.50、せいぜい0.40、せいぜい0.30、せいぜい0.20、せいぜい0.17、せいぜい0.15、せいぜい0.12またはせいぜい0.10である、請求項16に記載の処方物。
  18. ΔTが:
    ΔT=T−T
    において、前記乾燥インク残渣が特定の流動度を示し始める温度(TF)とベースライン温度(TB)との温度差を定義し、
    前記流動度が、前記流動度が得られる臨界粘性(μCR)によって定義され、
    前記ベースライン温度が50℃であり、かつ前記臨界粘性が10cPである場合、前記温度差が、少なくとも3℃、少なくとも4℃、少なくとも5℃、少なくとも7℃、少なくとも12℃、少なくとも15℃、少なくとも18℃、少なくとも20℃または少なくとも25℃である、
    請求項1〜17のいずれか1項に記載の処方物。
  19. 前記高分子樹脂が、アクリルポリマーおよびアクリル−スチレンコポリマーからなる群より選択されるアクリル系ポリマーを含むか、主としてこれを含むか、実質的にこれよりなる、請求項1〜18のいずれか1項に記載の処方物。
  20. 水の重量/重量基準で少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも350%または少なくとも400%、水で希釈したとき、得られる混合物が、(i)20〜60℃の範囲内の少なくとも1つの特定温度で2〜25cPの粘度;および(ii)前記範囲内の少なくとも1つの特定温度でせいぜい50ミリニュートン/mの表面張力を有する水性インクジェットインクになるように適合させた、請求項1〜19のいずれか1項に記載の処方物
  21. 前記実質的に乾燥したインク残渣の粘度が、85℃から55℃までの温度低下に伴って単調に増大する、請求項1〜20のいずれか1項に記載の処方物。
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