JP3631129B2 - インクセット及び被記録媒体への着色部の形成方法 - Google Patents

インクセット及び被記録媒体への着色部の形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カラー画像の形成において、発色性と色の均一性に優れた画像を得る技術に関し、とりわけ、インクジェット記録方式を利用した画像形成に最適に使用できる液体組成物と有色の水性インクとを組み合わせたインクセット及び被記録媒体への着色部の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方法は、インクを飛翔させ、紙等の被記録媒体にインクを付着させて記録を行うものである。例えば、特公昭61−59911号公報、特公昭61−59912号公報及び特公昭61−59914号公報において開示されている、吐出エネルギー供給手段として電気変換体を用い、熱エネルギーをインクに与えて気泡を発生させることにより液滴を吐出させる方式のインクジェット記録方法によれば、記録ヘッドの高密度マルチオリフィス化を容易に実現することができ、高解像度及び高品位の画像を高速で記録することができる。
【0003】
ところで、従来のインクジェット記録方法に用いられるインクは、水を主成分とし、これにノズル内でのインクの乾燥防止、ノズルの目詰まり防止等の目的でグリコール等の水溶性高沸点溶剤を含有しているものが一般的である。そのためこのようなインクを用いて被記録媒体に記録を行った場合には、十分な定着性が得られなかったり、被記録媒体としての記録紙表面における填料やサイズ剤の不均一な分布によると推定される不均一画像の発生、等の問題を生じる場合がある。
一方、近年は、インクジェット記録物に対しても、銀塩写真と同レベルの高い画質を求める要求が強くなっており、インクジェット記録画像の画像濃度を高めること、色再現領域を広げること、更には、記録物の色の均一性を向上させることに対する技術的な要求が非常に高くなっている。
【0004】
このような状況のもとで、インクジェット記録方法の安定化、そしてインクジェット記録方法による記録物の品質向上を図るために、これまでにも種々の提案がなされてきている。被記録媒体に関する提案のうちの一つとして、被記録媒体の基紙表面に、充填材やサイズ剤を塗工する方法が提案されている。例えば、充填材として色材を吸着する多孔質微粒子を基紙に塗工し、この多孔質微粒子よってインク受容層を形成する技術が開示されている。これらの技術を用いた被記録媒体として、インクジェット用コート紙等が販売されている。
【0005】
以下に、記録物の品質向上を図るその他の技術の代表的なものの幾つかをまとめる。
(1)インクに揮発性溶剤、浸透溶剤を内添する方法;
被記録媒体への定着性を早める手段として特開昭55−65269号公報に、インク中に界面活性剤等の浸透性を高める化合物を添加する方法が開示されている。又、特開昭55−66976号公報には、揮発性溶剤を主体としたインクを用いることが開示されている。
【0006】
(2)インクと、インクと反応する液体組成物とを被記録媒体上で混合する方法;
画像濃度の向上、耐水性の向上、更にはブリーディングの抑制を目的として、記録画像を記録するためのインクの噴射に先立ち、或いは噴射後に、被記録媒体上に画像を良好にせしめる液体組成物を付与する方法が提案されている。
【0007】
例えば、特開昭63−60783号公報には、塩基性ポリマーを含有する液体組成物を付着させた後、アニオン染料を含有したインクによって記録する方法が開示されており、特開昭63−22681号公報には、反応性化学種を含む第1の液体組成物と該反応性化学種と反応を起こす化合物を含む液体組成物を被記録媒体上で混合する記録方法が開示されており、更に、特開昭63−299971号公報には、1分子あたり2個以上のカチオン性基を有する有機化合物を含有する液体組成物を被記録媒体上に付与した後、アニオン染料を含有するインクで記録する方法が開示されている。又、特開昭64−9279号公報には、コハク酸等を含有した酸性液体組成物を被記録媒体上に付与した後、アニオン染料を含有したインクで記録する方法が開示されている。
【0008】
又、更に、特開昭64−63185号公報には、染料を不溶化させる液体組成物をインクの記録に先立って付与するという方法が開示されている。更に、特開平8−224955号公報には、分子量分布領域の異なるカチオン性物質を含む液体組成物をアニオン性化合物を含むインクと共に用いる方法が開示され、又、特開平8−72393号公報には、カチオン性物質と微粉砕セルロースを含む液体組成物をインクと共に用いる方法が開示されており、いずれも画像濃度が高く、印字品位、耐水性が良好で、色再現性、ブリーディングにおいても良好な画像が得られることが記載されている。又、特開昭55−150396号公報には、被記録媒体上に染料インクで記録した後に染料とレーキを形成する耐水化剤を付与する方法が開示され、記録画像の耐水性を付与することが提案されている。
【0009】
(3)インクと微粒子含有液体組成物とを被記録媒体上で混合するする方法;
特開平4−259590号公報に、無機物質からなる無色の微粒子を含有する無色液体を被記録媒体上に付与した後、非水系記録液を付着させる方法が開示され、特開平6−92010号公報には、微粒子を含む溶液、又は、微粒子及びバインダーポリマーを含む溶液を被記録媒体上に付与した後、顔料、水溶性樹脂、水溶性溶剤及び水を含むインクを付着させる方法が開示されており、いずれも、紙種によらず印字品位や発色性の良好な画像が得られることが記載されている。
【0010】
(背景技術)
本発明者らは上記したような各種のインクジェット記録技術について検討を重ねた結果、各々の技術課題に対しては優れた効果を確認できるものの、それと引き換えに、他のインクジェット記録特性が低下してしまう場合があることを見出した。例えば、上記(1)の技術を採用することで、インクの被記録媒体への定着性は向上するものの、画像濃度の低下や、普通紙への記録やカラー画像の記録に重要とされる色再現範囲が低下してしまう場合があった。又、上記(2)の技術によれば、インク中の色材を被記録媒体表面に留めることができるため、高い画像濃度の記録物を得ることができる。しかし、色材を被記録媒体の表面で凝集させているためか、色の再現範囲や彩度が低下する場合があった。
【0011】
上記した被記録媒体の基紙表面に充填材やサイズ剤を塗工して得られる被記録媒体(以降コート紙)は、高品質な画像を形成することができる技術として認知されている。
一般に、高彩度の画像を得るためには、色材を凝集させずに単分子状態で被記録媒体表面に残すことが必要であることは知られていおり、コート紙の多孔質微粒子には、確かにこのような機能がある。しかしながら、高い画像濃度と画像彩度を得るためには、与えられたインク中の色材に対して、多量の多孔質微粒子で、基紙を覆い隠すような厚いインク受容層の形成が不可欠となり、結果として、基紙の質感が失われてしまうという問題がある。本発明者らは、このように基紙の質感を失う程のインク受容層が必要なのは、色材が多孔質微粒子に、効率的に吸着していないことに起因すると推測した。
【0012】
一層のインク受容層を有するコート紙を想定して、以下に説明する。図9は、コート紙表面付近の断面を模式的に示したものである。同図において、901は基紙であり、903はインク受容層を示す。一般に、インク受容層903は、多孔質微粒子905とそれらを固定化するための接着剤907を有する。インクが付与されると、インクは多孔質微粒子905間の空隙を毛管現象によって浸透し、インク浸透部909を形成する。同図に示したようにインク受容層での多孔質微粒子は局所的には密度が異なるため、この毛管現象によるインクの浸透の仕方は場所によって異なる。このため、インクの浸透過程において、色材は多孔質微粒子表面に均一には接触できず、色材が効率的には多孔質微粒子に吸着されない。
【0013】
更に、接着剤907によってインクの浸透が阻害される部分も生じており、インク受容層903内にはインクが浸透できない部分が存在し、発色には寄与しない部分が発生する。
即ち、従来のコート紙においては、上記のような理由により、多孔質微粒子の量に対して効率的に色材を単分子状態で吸着することができず、この結果、高品質の画像を得るためには多量の多孔質微粒子が必要となり、基紙の質感を損なうこととなっていた。
【0014】
本発明者らは、以上のような新たな知見に基づき、色材を吸着する作用を有する微粒子を用い、且つ、該微粒子に効率的に色材を吸着若しくは結合させる方法として、該微粒子を液相に分散させ、インクと共に液体状態で用いることが有効であり、このように構成すれば、色材と微粒子とを液−液状態で反応させることが可能となり、その結果として、画像の濃度と彩度とを向上させることができることを見出した。
【0015】
一方、インクジェット記録における他の技術課題として、ブリードの発生の問題が挙げられる。即ち、マルチカラー画像をインクジェット記録方法で形成しようとした場合、複数の、異なる色のインクを被記録媒体上で重ねたり、或いは隣接するように付与する必要があるが、このときに互いに隣接した異色領域の境界で色が滲んだり、不均一に混ざりあってしまい、画像の品位を低下させてしまう。そして高品位なマルチカラー画像を得るためには、ブリードの抑制も一つの重要な技術要素である。
【0016】
そこで本発明者らは、先に述べた、微粒子に効率的に色材を吸着若しくは結合させて画像濃度、彩度の向上を図る技術をベースとして、ブリードの問題をも解決することのできる技術の検討を重ねてきた。そして本発明は、かかる検討によってもたらされたものである。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、高い濃度、高い彩度を有し、且つブリードも高度に抑制された、より高品質なインクジェット記録物を得るために用いられるインクセットを提供することにある。
又、本発明の目的は、広い色再現領域を有し、色の均一性にも優れ、更に被記録材上で異なる色領域が隣接した場合の色境界部におけるブリーディングを有効に抑制することができ、更に擦過性にも優れた着色部を被記録材に形成する方法を提供する点にある。
【0018】
又、本発明の他の目的は、色再現範囲が広く、色の均一性にも優れ、被記録材上で異なる色領域が隣接した場合の色境界部におけるブリーディングが有効に抑制され、更に擦過性にも優れた着色部を被記録材上に形成することのできる方法を提供する点にある
に、本発明の他の目的は、保存安定性や、記録ヘッドからの吐出安定性にも優れるインクジェット記録特性に優れるインクセットを提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明の一実施態様によれば、凝集開始pHを有する色材を含むアニオン性若しくはカチオン性の水性インクと、該インクとは逆の極性に表面が帯電している微粒子を分散状態で含む液体組成物とを独立して有するインクセットであって、上記インク及び上記液体組成物は、各々を略1対1の重量比で混合したときの混合液のpHが、少なくとも上記色材の凝集を引き起こすpHとなるように調整されているインクセットが提供される。
【0021】
本発明の他の実施態様によれば、凝集開始pHを有するアニオン性若しくはカチオン性の色材を含むインク及び該色材との反応性を有する微粒子を分散状態で含む液体組成物とを独立して有するインクセットであって、
上記液体組成物中の微粒子は、上記インク及び上記液体組成物が互いに液体の状態で混合されたときに、該微粒子の表面にインク中の色材を該色材がインク中で有していた分子状態を維持しつつ吸着若しくは結合させるものであり、且つ、上記インク及び上記液体組成物を混合して液−液反応させたときの混合液のpHが、上記色材の凝集を引き起こすpHとなるように調整されているインクセットが提供される。
【0022】
本発明の他の実施態様によれば、凝集開始pHを有する色材を含む水性インクと表面がカチオン性に帯電している微粒子を分散状態で含む液体組成物とを独立して有するインクセットであって、該インクが下記i)〜iii)のいずれかを含有し、
i)アニオン性基を有する水溶性染料、
ii)顔料とアニオン性基を有する顔料分散剤、
iii)顔料表面にアニオン性基が直接若しくは他の原子団を介して結合されている顔料、
且つ、該インク及び該液体組成物は、各々を略1対1の重量比で混合したときの混合液のpHが、少なくとも上記色材の凝集を引き起こすpHとなるように調整されているインクセットが提供される。
本発明の他の実施態様によれば、凝集開始pHを有する色材を含む水性インクと表面がアニオン性に帯電している微粒子を分散状態で含む水性の液体組成物とを独立して有するインクセットであって、該インクが下記i)〜iii)のいずれかを含有し、
i)カチオン性基を有する水溶性染料、
ii)顔料とカチオン性基を有する顔料分散剤、
iii)顔料表面にカチオン性基が直接若しくは他の原子団を介して結合されている顔料、
且つ、該インク及び該液体組成物は、各々を略1対1の重量比で混合したときの混合液のpHが、少なくとも上記色材の凝集を引き起こすpHとなるように調整されているインクセットが提供される。
本発明の他の実施態様によれば、凝集開始pHを有する色材を含むアニオン性若しくはカチオン性のインク及び該色材との反応性を有する微粒子を分散状態で含む液体組成物とを独立して有するインクセットであって、
上記液体組成物中の微粒子は、上記インク及び上記液体組成物が互いに液体の状態で混合されたときに、該微粒子の表面にインク中の色材を該色材がインク中で有していた分子状態を維持しつつ吸着若しくは結合し、それによって上記微粒子の分散状態を不安定化して微粒子同士の凝集を引き起こすものであり、且つ、上記インク及び上記液体組成物を混合して液−液反応させたときの混合液のpHが、上記色材の凝集を引き起こすpHとなるように調整されているインクセットが提供される。
【0023】
本発明の他の実施態様によれば、水性インクの液滴と、液体組成物の液滴とが、被記録媒体上において、液−液状態で接している状態が達成されるように、該両液滴を被記録媒体に向けて吐出させる工程を有する被記録媒体への着色部の形成方法であって、
上記水性インク上記液体組成物が上記に記載のインクセットに含まれる水性インクと液体組成物である被記録媒体への着色部の形成方法が提供される。
被記録媒体への着色部の形成方法の好ましい実施形態としては、上記において、
1)前記工程が、前記液体組成物の液滴を被記録媒体に付与した後に、前記水性インクの液滴を、該被記録媒体上の液体組成物と液−液状態で接するように付与する過程を含む形成方法
2)前記工程が、前記水性インクの液滴を被記録媒体に付与した後に、前記液体組成物の液滴を、該被記録媒体上の水性インクと液−液状態で接するように付与する過程を含む形成方法
3)前記工程が、前記被記録媒体に前記水性インクの液滴を付与する第1の過程と、該第1の過程で被記録媒体上に付与された水性インクと液−液状態で接するように前記液体組成物の液滴を付与する第2の過程と、該第1及び2の過程によって被記録媒体上に形成された水性インクと液体組成物との混合液と液−液状態で接するように更に水性インクの液滴を付与する第3の過程とを含む形成方法
が挙げられる。
【0026】
【発明の実施の形態】
次に、好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
本発明の一実施態様にかかるインクセットは、色材を含むアニオン性若しくはカチオン性の水性インクと、該水性インクとは逆の極性に表面が帯電している微粒子を分散状態で含む液体組成物とを独立して有するインクセットであって、上記水性インク及び上記液体組成物は、各々を略1対1の重量比で混合したときの該混合液のpHが、少なくとも上記色材の凝集を引き起こすpHとなるように調整されている点に一つの特徴を有している。
【0027】
上記した構成の本発明によれば、広い色再現領域を有し、色の均一性にも優れ、色境界部におけるブリーディングを有効に抑制することができ、更に良好な耐擦過性をも備えたインクジェット記録物を安定して形成することができるという効果を奏する。
又、記録に用いる水性インクや液体組成物自体は、上記したように、その構成が極めてシンプルであるため、水性インク及び液体組成物は、いずれもその保存性に優れ、その結果として、高品質なインクジェット記録物が得られる画像形成を安定して行なうことができるという効果も奏する。
【0028】
本発明によって上記したような優れた効果が奏される理由は明らかでないが、本発明者らは、以下の理由によるものと考えている。
以下に、本発明にかかる記録画像について、図14を用いて説明する。
まず、説明に先立ち、言葉の定義を行う。本発明において、「単分子状態」とは、染料や顔料等の色材が、インク中で溶解若しくは分散した状態をほぼ保っていることを指している。このとき、色材が多少の凝集を引き起こしたとしても、彩度が低下しない範囲であれば、この「単分子状態」に含まれることとする。例えば、染料の場合、単分子であることが好ましいと考えられるため、便宜上染料以外の色材についても「単分子状態」と呼ぶこととする。
【0029】
図14は、本発明にかかる記録画像の着色部Iが、主画像部IMとその周辺部ISとから成り立っている状態を模式的に示した図である。図14において、1401は被記録媒体、1402は被記録媒体の繊維間に生じる空隙を示す。又、1403は、色材1405が化学的に吸着する微粒子を模式的に示したものである。
図14に示したように、本発明のインクジェット記録画像では、主画像部IMは、色材1405が、単分子或いは単分子に近い状態(以降、「単分子状態」と略す)で均一に表面に吸着した微粒子1403と、色材の単分子状態を保持した微粒子の凝集物1407とで構成されている。1409は、主画像部IM内の被記録媒体繊維近傍に存在する微粒子同士の凝集物である。主画像部IMは、被記録媒体繊維に微粒子1403が物理的又は化学的に吸着する過程と、色材1405と微粒子1403とが液−液状態で吸着する過程によって形成されたものである。そのため、色材自体の発色特性が損なわれることが少なく、普通紙等のインクの沈み込み易い記録媒体においても、画像濃度や彩度が高く、コート紙並みの色再現範囲の広い画像の形成が可能となる。
【0030】
ところで、本発明者らの知見によれば、水性インクと液体組成物とを略1対1の重量比率で被記録媒体である記録紙上に記録した時(即ち、被記録媒体上で夫々を1ドットずつ重ね印字した時)に、前記微粒子に吸着される色材は、色材全体のおよそ30〜50%に過ぎない。即ち、残りの50〜70%の色材は、液体組成物中の微粒子の影響を受けることがなく、分散、浸透若しくは分散及び浸透によって、着色部の形成に寄与することになる。本発明者らは、微粒子の表面に吸着されている色材が、インク中に含まれる色材全体の半分以下であっても、コート紙並みの色再現範囲を実現することができ、一方、微粒子との反応に寄与しない色材の存在は、画素の周囲に微小な滲みを形成し、スジムラの解消等には極めて大きな効果を奏することを確認している。
【0031】
つまり、微粒子表面1403に吸着されず、インク中に残った色材1405は、被記録媒体1401に対して横方向にも深さ方向にも浸透するため、周辺部ISにインク微少な滲みを形成する。このように記録媒体1401の表面近傍に色材が残り、且つ周辺部にインクの微少な滲みを形成させるために、シャドウ部やベタ部等のインク付与量が多い画像領域においても、白モヤや色ムラが少なく色の均一性にも優れたものとなる。
【0032】
一方、本発明者らの更なる検討によれば、異なる色の画像が隣接して付与されるような記録物を形成する際には、異なる色画像同士が隣接してなる色境界部においては、微粒子とは反応しなかった色材によって形成される周辺部のインクの滲みを、より高度に制御することが、ブリーディングを抑える上で好ましいとの知見を得た。そして、水性インクと液体組成物とを、被記録媒体上で液体状態で接触するように付与させる際に、被記録媒体上で混ざった時に形成される水性インクと液体組成物との混合液のpHを制御することで、上記微小な滲みの制御が可能となり、ひいてはブリーディングの抑制に大きな効果が発揮されることが分かった。
【0033】
即ち、水性インクと液体組成物との混合液のpHが、色材(染料)が凝集を開始する凝集開始pHよりも低いpH値となるように制御されていれば、該混合液中にいて、微粒子との反応に関わらなかった色材1405の挙動を制御することが可能となる。これが、本態様が、上記の効果を奏する理由の一つであると考えられる。より具体的に述べれば、被記録媒体1401上に付与されたインク中の色材1405のうち、微粒子1403との反応には関わらないものは、インクと液体組成物とが混合されたことによる溶媒の特性変化、例えば、pH変化によって色材の凝集物1411を形成する。この色材の凝集物自体は、発色の点で好ましいものでないことは前記した通りであるが、本態様においては、凝集物の存在は画像の発色をさほど劣化させるものではなった。その理由は明らかでないが、図14に示したように、色材の凝集物1411が、色材を単分子状態で吸着若しくは結合している微粒子の間隙に存在していること、又、色材の凝集現象が、微粒子表面に色材が単分子状態で吸着或いは結合するよりも速度的に速く、色材同士の凝集物は、画像を構成している着色部分の下部に比較的多く存在する傾向にあるためではないかと推定される。
【0034】
図15(1)〜(4)は、本発明にかかるインクジェット記録画像形成方法の一実施態様の着色部1500の概略断面図及びその形成過程を説明する概略図である。同図において、1501はインクと液体組成物との反応物、例えば、色材と微粒子の反応物を主として含む部分(以降「反応部」と略す)であり、図14の主画像部IMに相当する部分である。1502は、液体組成物との反応に実質的に関与しなかったインクが、反応部1501の辺縁に流出することによって形成された部分(以降「インク流出部」と略)であり、図14の周辺部ISに相当する。かかる着色部1500は、例えば、以下のようにして形成される。尚、同図に示した1505は、被記録媒体の繊維間に生じる空隙を模式的に表したものである。
【0035】
先ず、色材1504と反応性を有する液体組成物1506が液滴として被記録媒体1503に付与され(図15(1))、その結果、液体組成物の液溜り1507が形成される(図15(2))。該液溜り1507内で、被記録媒体の繊維表面の近傍の微粒子1509は、被記録媒体の繊維表面に物理的又は化学的に吸着する。この時、分散状態が不安定となって微粒子同士の凝集物1511を形成するものもあると考えられる。一方で、液溜り1507内の繊維より離れた部分では、微粒子1509は、もとの分散状態を保っていると考えられる。
【0036】
次いで、インク1513が、液滴として被記録媒体1503に付与される(図15(2))。その結果、まずインク1513と液溜り1507の界面において色材1504は、微粒子1509に化学的に吸着する。この反応は、液同士の反応(液−液反応)であるため、色材1504は単分子状態で、微粒子1509の表面に均一に吸着すると考えられる(図15(3)−2)。即ち、微粒子表面では、色材同士は凝集を起こさないか、或いは凝集しても僅かであると推測される。その結果、反応部1501の表層部に単分子状態で色材1504が吸着された微粒子が多数形成され、発色に最も影響を与える表面層に色材を単分子状態で残存させることができるため、高画像濃度であって且つ彩度の高い記録画像を形成する。一方、微粒子との反応に関与しない色材1504の一部は、インクと液体組成物の混合による液媒体の特性の変化、例えば、pHの変化によって色材の凝集物1517を形成し、被記録媒体上の混合液中を沈殿していく。
【0037】
次いで、これら色材1504が吸着した微粒子は、分散状態が不安定となるため微粒子同士で凝集すると考えられる(図15(3)−2)。即ち、ここで形成された凝集物1515は、その内部にも単分子状態の色材を保持している。この凝集物1515により、高画像濃度、且つ、高彩度の記録画像が形成される。
更に、未反応の色材1504の一部は、液溜り1507内を拡散し、未反応の微粒子1509表面に吸着する。このように、液溜り1507内部で更に反応が進行するため、より高濃度で彩度の高い画像が形成される。先に説明した被記録媒体の繊維表面に形成された微粒子の凝集物1511には、液溜り1507の液相が被記録媒体内への浸透を抑制する役割があると考えられる。このため、液溜り1507では、浸透が抑制された液体組成物中の微粒子1509と色材1504とがより多く混在することが可能となる。これにより、色材1504と微粒子1509との接触確率が高められ、反応が比較的均一に、且つ、充分に進行し、より均一で、画像濃度と彩度とが高い画像が形成される。
【0038】
又、液体組成物1506が被記録媒体1503に付与された際(図15(1))や、液溜り1507にインク1513が付与された際には(図15(2))、微粒子1509を分散させている分散媒が変化することによって微粒子1509の分散が不安定となり、色材1504が吸着する前に微粒子1509間で凝集を起こすものも存在する。ここで言う分散媒の変化とは、2種若しくはそれ以上の異種の液体が混合したときに一般的に観察される変化、例えば、液相のpHや固形分濃度、溶剤組成、溶存イオン濃度等の物性変化を指し、液体組成物が、被記録媒体やインクと接触した際にこれらの変化が急激且つ複合的に生じて、微粒子の分散安定性を破壊し、凝集物を生成するものと考えられる。
【0039】
これらの凝集物は、空隙を埋める効果や、色材を吸着した微粒子を、より被記録媒体表面近傍に残存させる効果をもたらすと推測される。又、これら液溜り1507内で形成された凝集物は、被記録媒体に吸着しているものもあれば、液相内を動ける(流動性を有する)ものも存在するが、流動性を有するものは、前述の色材と微粒子との反応過程と同様に、微粒子凝集物表面に色材が単分子状態で吸着し、より大きな凝集塊を形成し、これが発色性の向上に寄与しているものである。
【0040】
液相が繊維に沿って浸透する際に液相と共に移動し、空隙を埋めて被記録媒体表面を平滑化し、より均一で高濃度の画像の形成に寄与すると考えられる。
本発明によって高発色の画像が得られることは、後述の結果により明らかであるが、これは、上記したように、色材が単分子状態で微粒子若しくは微粒子凝集物に吸着され、その状態で被記録媒体表面近傍に残ったためであると考えられる。色材が単分子状態で吸着し、被記録媒体表面に残った微粒子は被記録媒体表面に定着する。これにより、堅牢性が向上する。
更に、本態様にかかる水性インクと液体組成物とは、被記録媒体上で液−液状態で接触して混合液を作ったときに、色材の凝集が開始されるように調整されているため、色材の一部による色材凝集物1517が形成され、未反応の色材が被記録媒体へ無秩序に浸透していくことを有効に抑えることができる。
【0041】
以下、染料の溶解度のpH依存関係について説明する。図10は、溶液のpHと、そのpH値での染料の溶解度相対値とを説明する図である。図10からわかる通り、pH10から徐々に溶液を酸性にしていくと、pH7.5近傍から溶けていた染料が析出してくる(凝集開始pH)。更に、pHを下げていくと、この染料の場合には約pH6.5で不溶化することがわかる。尚、この実験は、染料としてブラック染料「ダイレクトブラック−195」を用い、該染料を水で溶解し、該溶液に硝酸を添加して10分間攪拌することでpH調整し、上記データを得た。
【0042】
つまり、被記録媒体上で混合された液体組成物とインクとの混合液のpHを、インク中の染料の凝集開始pH以下の適当な値となるように制御すれば、所望の染料分子を、所望の速さで不溶化させることができることがわかる。即ち、液体組成物中の微粒子に吸着されなかった染料分子を、pHの調整によって適度に拘束し、抑制制御することが可能となる。従って、液体組成物とインクとの混合液のpHの調整によって、異なる色間で生じる前記ブリーディングの低減と、広い色再現領域との両立が図れるようになる。
【0043】
又、被記録媒体の表面近傍には、微粒子染料が残るために、シャドウ部やベタ部等のインク付与量が多い画像領域においても、白モヤや色ムラが少なく、色の均一性に優れる。
又、定着性に関しては、所望のインク浸透性能を満たすように、前記界面活性剤等の浸透剤をインクに含有させることが有効である。即ち、このようにすればインクの上記染料分子を適度に吸着、凝集させることができるので、上記浸透剤をインクに含有させても画像濃度の低下や、エッジのシャープさの低下、解像度の低下等の弊害を抑制しながら高速に定着させるメカニズムを具現化できる。
【0044】
更に、本発明の被記録媒体への着色部の形成方法では、被記録媒体上に、液体組成物とインクとを、互いが液体状態で接触するようにして付与するので、被記録媒体の表面で、カチオン性微粒子と色材との液相反応が起こり、極めて効率的に、微粒子表面に色材が吸着することが可能となる。
一方、インクジェット用コート紙において、本発明と同程度の色材吸着を達成するためには、多量のカチオン性多孔質微粒子が必要となり、基紙を覆い隠すような厚いインク受容層の形成が不可欠となる。そのために、コート紙では基紙の質感を損ねる結果に繋がるが、本発明では、液体組成物に用いる微粒子の量を少なくできるため、被記録媒体の質感を損ねることなく、印字部と未印字部で違和感のない画像形成が可能となる。
【0045】
以下、本発明を特徴づける水性インク及び液体組成物について詳細に説明する。先ず、本明細書におけるカチオン性のインク若しくはアニオン性のインクの定義について述べる。インクのイオン特性について言うとき、インク自体は荷電されておらず、それ自体では中性であることは、当該技術分野においてよく知られていることである。ここでいうアニオン性のインク若しくはカチオン性のインクとは、インク中の成分、例えば、色材がアニオン性基若しくはカチオン性基を有し、インク中において、これらの基がアニオン性基又はカチオン性基として挙動するように調整されているインクを指すものである。
【0046】
<液体組成物>
以下に、液体組成物について説明する。本発明で使用する液体組成物は、これと共に用いるインクのイオン性と逆極性に表面が帯電していることを特徴とする。従って、インクのイオン性に応じて、カチオン性の液体組成物若しくはアニオン性の液体組成物が用いられる。
【0047】
[カチオン性の液体組成物]
カチオン性の液体組成物としては、例えば、カチオン性基を表面に有する無機微粒子と酸を含み、このようなカチオン性微粒子が安定に分散されてなる液体組成物が挙げられる。本発明においては、カチオン性の液体組成物として、例えば、酸を含みpHが2〜7に調整されたもの、又、ゼータ電位が高いカチオン性微粒子を含むことで、液体組成物のゼータ電位が+5〜+90mVのものを好適に用いることができる。
【0048】
(pH及びゼータ電位について)
液体組成物のゼータ電位について述べる。ゼータ電位の基本原理について以下に示す。一般に、固体が液体中に分散している系において、固相の表面に遊離電荷がある場合、固相界面付近の液相には反対電荷の荷電層が電気的中性を保つように現れる。これは、電気的二重層と呼ばれ、この電気的二重層による電位差のことをゼータ電位と呼んでいる。ゼータ電位がプラスである場合、微粒子の表面はカチオン性を示し、マイナスではアニオン性を示す。一般に、その絶対値が高いほど微粒子間に働く静電的反発力が強くなり、分散性がよいと言われ、同時に微粒子表面のイオン性が強いことが考えられる。即ち、カチオン性微粒子のゼータ電位が高いほどカチオン性が強く、インク中のアニオン性化合物を引き付ける力が強いと言える。
【0049】
更に、本発明者らが鋭意検討した結果、ゼータ電位が+5〜+90mVの範囲にある液体組成物を用いた場合に、被記録媒体上に形成してなる着色部が、特に優れた発色特性を呈することを見出した。その理由は定かではないが、恐らく、微粒子のカチオン性が適度であるために急速なアニオン性化合物の凝集が起こらずに、アニオン性化合物が微粒子表面に薄く均一に吸着するので、色材が巨大なレーキを形成しにくく、その結果、色材本来の発色特性がより良好な状態で発現されるものと考えられる。更に、本発明で使用するカチオン性の液体組成物では、アニオン性化合物を微粒子表面に吸着した後も、微粒子が弱いカチオン性を呈しつつ分散不安定状態となることで、微粒子が被記録媒体中に存在するアニオン性のセルロース繊維等の表面に容易に吸着して、被記録媒体の表面近傍に残り易くなっていると考えられる。
【0050】
この結果、以下に挙げる、優れた効果が得られるものと考えられる。即ち、インクジェット用コート紙並みの優れた発色特性と、シャドウ部やベタ部等のインク付与量が多い画像領域において、白モヤや色ムラが少なく、色の均一性に優れたものとなる。又、コート紙と比べて極めて効率よく微粒子にアニオン性化合物が吸着し発色するために、カチオン性微粒子の付与量も少なくできるので、とりわけ普通紙に印字した場合には、紙の風合いを損なうことがなく、印字部の耐擦過性にも優れる。更に、より好ましい液体組成物のゼータ電位は+10〜+85mVであり、この範囲であれば、ベタ印字した際にドット間の境界が目立ち難くなり、ヘッドスキャンによるスジムラのより少ない良好な画像が得られる。更にはゼータ電位が+15〜+65mVの範囲のも使用すると、紙種に因らず、極めて優れた発色性を有する画像を得ることが可能となる。
【0051】
本発明で使用するカチオン性の液体組成物のpHは、保存安定性とアニオン性化合物の吸着性の観点から、25℃付近で2〜7の範囲に調製されていることが好ましい。このpHの範囲内においては、アニオン性のインクと混合した際に、アニオン性化合物の安定性を著しく低下させることがないため、アニオン性化合物同士の強い凝集を引き起こすことがなく、記録画像の彩度が下がったり、くすんだ画像となることを有効に防止することができる。又、上記範囲内であるとカチオン性微粒子の分散状態も良好であるので、液体組成物の保存安定性や記録ヘッドからの吐出安定性を良好に維持することができる。更には、インクと混合した際に、アニオン性物質がカチオン性微粒子表面に十分に吸着されるので、被記録媒体内部への色材の過度の浸透が抑えられ、優れた発色性のインクジェット記録物を得られる。より好ましいpHの範囲としては、pHが3〜6であり、この範囲では、長期保存による記録ヘッドの腐食を極めて有効に防止できると共に、印字部の耐擦過性もより一層向上する。
【0052】
(カチオン性微粒子)
次に、本発明のカチオン性の液体組成物を構成する成分について述べる。第1の成分として挙げられるカチオン性の微粒子は、上記した作用効果を達成するために、液体組成物中に分散された状態において粒子自体の表面がカチオン性を呈することを要する。表面をカチオン性とすることによって、アニオン性のインクと混合した際に、アニオン性の色材が粒子表面に速やかに吸着し、色材の被記録媒体内部への過度の浸透が抑えられるので、十分な画像濃度のインクジェット記録物が得られる。これに対し、微粒子表面がカチオン性でなく、且つ、液体組成物の中で水溶性のカチオン性の水溶性金属塩と別々に存在しているような場合には、カチオン性化合物を中心に色材が凝集を起こし、色材自体の発色特性を損なうためにインクジェット用コート紙並みの発色性を達成することが困難となる。そのため本発明の液体組成物に用いられる微粒子は、その表面がカチオン性である必要があるが、本質的にカチオン性である微粒子は勿論のこと、本来は静電的にアニオン性或いは中性である微粒子であっても、処理によって表面がカチオン化された微粒子であれば用いることができる。
【0053】
本発明に好適に用いられるカチオン性微粒子の具体的なものとしては、特に材料種に限定はなく、下記に挙げるような無機系微粒子や有機系微粒子、無機有機複合微粒子等を用いることができる。例えば、無機系微粒子としては、カチオン化した、シリカ、アルミナ、アルミナ水和物、チタニア、ジルコニア、ボリア、シリカボリア、セリア、マグネシア、シリカマグネシア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト等が挙げられ、有機系微粒子としては、スチレンアクリルやアクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、SBRラテックス等の共役ジエン系共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体等のビニル系共重合体のカチオン性エマルジョンやラテックス、又はメラミンビーズやプラスチックピグメント等のカチオン変性体等が挙げられる。又、無機有機複合微粒子としては、1級、2級及び3級アミン塩型の官能基を表面に有する無機微粒子等が挙げられる。
【0054】
又、本発明で使用する上記したようなカチオン性微粒子は、印字後の発色性や色の均一性、保存安定性等の観点から、動的光散乱方式により測定される平均粒子直径が0.005〜1μmの範囲のものが好適に用いられる。この範囲内では、被記録媒体内部への過度の浸透を有効に防ぐことができ、発色性や色の均一性の低下を抑えることができる。又、カチオン性微粒子が液体組成物中で沈降することも抑えられ、液体組成物の保存安定性の低下も有効に防止することができる。より好ましくは、平均粒子直径が0.01〜0.8μmの範囲内のものであり、このような微粒子を用いれば、被記録媒体に印字した後の画像の耐擦過性や記録物の質感が特に好ましいものとなる。
【0055】
本発明で使用する液体組成物中における上記したようなカチオン性微粒子の含有量としては、使用する物質の種類により、最適な範囲を適宜決定すればよいが、質量基準で0.1〜40質量%の範囲が本発明の目的を達成する上で好適な範囲であり、より好ましくは、1〜30質量%、更には3〜15質量%の範囲が好適である。このような範囲内では、紙種に因らず優れた発色の画像を安定に得ることができ、又、液体組成物の保存安定性や吐出安定性にも特に優れている。
【0056】
(酸)
先に述べたように、本発明で使用するカチオン性の液体組成物は、酸を含み、pHが2〜7に調整されたものであることが好ましいが、この際に使用される酸は、カチオン性微粒子表面をイオン化し、表面電位を高めることにより、液中での微粒子の分散安定性を向上させると共に、インク中のアニオン性化合物の吸着性向上や、液体組成物の粘度調整の役割を果たす。本発明に好適に用いられる酸は、使用するカチオン性微粒子と組み合わせて、所望のpHやゼータ電位、微粒子分散性等の物性が得られるものであれば特に限定はなく、下記に挙げる無機酸や有機酸等から、自由に選択して使用することができる。
【0057】
具体的には、無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、燐酸、硼酸、炭酸等が挙げられ、有機酸としては、例えば、下記に挙げるようなカルボン酸やスルホン酸、アミノ酸等が挙げられる。カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、フルオロ酢酸、トリメチル酢酸、メトキシ酢酸、メルカプト酢酸、グリコール酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カブリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、o−トルイル酸、m−トルイル酸、p−トルイル酸、o−クロロ安息香酸、m−クロロ安息香酸、p−クロロ安息香酸、o−ブロモ安息香酸、m−ブロモ安息香酸、p−ブロモ安息香酸、o−ニトロ安息香酸、m−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、アントラニル酸、m−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、o−メトキシ安息香酸、m−メトキシ安息香酸、p−メトキシ安息香酸等が挙げられる。又、スルホン酸としては、例えば、ベンゼンスルホン酸、メチルベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2,4−ジメチルベンゼンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、1−スルホナフタレン、2−スルホナフタレン、ヘキサンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ドデカンスルホン酸等が挙げられる。又、アミノ酸としては、グリシン、アラニン、バリン、α−アミノ酪酸、γ−アミノ酪酸、β−アラニン、タウリン、セリン、ε−アミノ−n−カプロン酸、ロイシン、ノルロイシン、フェニルアラニン等が挙げられる。
【0058】
そして、本発明で使用する液体組成物においては、これらを一種又は二種以上混合して使用することができる。これらの中でも、水中での一次解離定数pkaが5以下の酸は、カチオン性微粒子の分散安定性やアニオン性化合物の吸着性に特に優れるため、好適に用いることができる。このようなものとしては、具体的には、塩酸、硝酸、硫酸、燐酸、酢酸、ギ酸、シュウ酸、乳酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸等が挙げられる。
【0059】
本発明で使用する液体組成物では、液体組成物中におけるカチオン性微粒子と酸の混合比率を、重量基準で200:1〜5:1、より好ましくは150:1〜8:1の範囲となるようにすることが、カチオン性微粒子の分散安定性の向上、インク中の含まれるアニオン性化合物の微粒子表面への吸着性の向上を図る上で特に好ましい。
【0060】
(他の構成成分)
次に、カチオン性の液体組成物を構成するその他の成分について具体的に説明する。本発明で使用するカチオン性の液体組成物は、上記したカチオン性微粒子を必須の成分とし、好ましくは上記したような酸を含み、その他に、通常は液媒体として水を含むが、更に、水溶性有機溶剤及びその他の添加剤を含んでいてもよい。この際に使用する水溶性有機溶剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレングリコール類、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等の1価アルコール類の他、グリセリン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、トリエタノールアミン、スルホラン、ジメチルサルホキサイド等が挙げられる。上記水溶性有機溶剤の含有量については特に制限はないが、例えば、液体組成物全重量の5〜60重量%、更には、5〜40重量%が好適な範囲である。
【0061】
又、本発明で使用する液体組成物には、更にこの他、必要に応じて、粘度調整剤、pH調整剤、防腐剤、各種界面活性剤、酸化防止剤及び蒸発促進剤、水溶性カチオン性化合物やバインダー樹脂等の添加剤を適宜に配合しても構わない。界面活性剤の選択は、液体組成物の被記録媒体への浸透性を調整する上で特に重要である。水溶性カチオン性化合物は、液体組成物のカチオン性の更なる付与等を目的に、本発明の作用効果を阻害しない範囲において自由に選択し、添加できる。
【0062】
水溶性カチオン性化合物としては、具体的には、例えば、ポリアリルアミン、ポリアミンスルホン、ポリビニルアミン、キトサン、及び、これらの塩酸或いは酢酸等の酸による中和物又は部分中和物、高分子のノニオン性化合物の一部をカチオン化した化合物、例えば、ビニルピロリドンとアミノアルキルアルキレート4級塩との共重合体、アクリルアマイドとアミノメチルアクリルアマイド4級塩との共重合体等、その他1級、2級及び3級アミン塩型の化合物やアミノ酸型両性化合物等から一種若しくは二種以上選択して使用することができる。更にバインダー樹脂は、カチオン性微粒子の更なる耐擦過性の向上等の目的で、被記録媒体の質感や液体組成物の保存安定性や吐出安定性を損ねない範囲において併用することができ、例えば、水溶性ポリマーやエマルジョン、ラテックス等から自由に選択し、使用することができる。
【0063】
(カチオン性の液体組成物の表面張力)
本発明で使用する液体組成物は、無色或いは白色であることがより好ましいが、被記録媒体の色に合わせて調色してもよい。更に、以上のような液体組成物の各種物性の好適な範囲としては、表面張力を10〜60mN/m(dyn/cm)、より好ましくは10〜40mN/m(dyn/cm)とし、粘度を1〜30mPa・s(cP)としたものである。
【0064】
(カチオン性の液体組成物の色材凝集機能)
本発明で使用するカチオン性の液体組成物のpHは、前記したように、保存安定性とアニオン性化合物の吸着性の観点から、25℃付近で2以上であることが好ましい。即ち、pHが2以上とした場合には、インクと混合した際に、インク中のアニオン性化合物の安定性が著しく低下することがないため、液体組成物中の前記微粒子に単分子状態を維持しつつ吸着されるより先にアニオン性化合物同士の間で強い凝集が生じることを避けることができる。一方、pHの上限は特に限定されないが、前記微粒子に吸着されなかった染料分子が被記録媒体上、或いは被記録媒体内を自由に浸透、拡散し、画像の滲みやブリーディング等を抑えるためには、未吸着染料分子を凝集させることが有効である。従って、本発明では、使用する液体組成物と水性インクとを、これらが記録媒体上で混合された混合液のpHが、急速な凝集が起こらないpH2以上で、且つ、染料の凝集開始pH以下のpHとなるように制御することが好ましい。このようにすれば、普通紙への記録でありながら、ブリーディングの低減と、インクジェットコート紙並みの色再現とを両立することが可能となる。
【0065】
又、液体組成物のpHを抑えることで、カチオン性微粒子の分散性の悪化を抑制できる。よって、液体組成物の保存安定性や記録ヘッドからの吐出安定性の向上が図れる。
そして、アニオン性インクとカチオン性液体組成物の混合液中において、該アニオン性インク中のアニオン性色素の凝集が生じるようなpH変化を生じさせることのできるアニオン性インクとカチオン性液体組成物との具体的な組合せとしては、例えば、以下のような例を挙げることができる。
【0066】
(アニオン性インク:pH=9.8)
・ダイレクトブラック195 2.5部
・2−ピロリドン 10部
・グリセリン 5部
・イソプロピルアルコール 4部
・NaOH 0.4部
・水 残部(全量で100部)
【0067】
(カチオン性液体組成物:pH=3.5)
・グリセリン 7.5部
・ジエチレングリコール 7.5部
・アルミナ水和物 10部
・酢酸 3部
・水 残部(全量で100部)
【0068】
そして上記のアニオン性インクとカチオン性インクとが1:1の重量比で混合されると、該混合液のpHは、図10に示したダイレクトブラック195が不溶化が始まるpH6.5〜7.5近傍にまで変化し、ダイレクトブラック195のアルミナ水和物表面への単分子状態での吸着或いは結合と共に、ダイレクトブラック195の穏やかな凝集が観察される。
【0069】
[アニオン性の液体組成物]
本発明で使用するアニオン性の液体組成物は、アニオン性基を表面に有する微粒子を必須の構成成分とし、該微粒子が安定に分散していることを特徴とするが、更には、塩基を含み、pHが7〜12に調整されているものや、ゼータ電位が−5〜−90mVであるものが好ましい。
【0070】
(pH及びゼータ電位について)
本発明者らが鋭意検討した結果、液体組成物のゼータ電位が−5〜−90mVの範囲にあるものは、インク中のカチオン性化合物がアニオン性微粒子の表面に特に効率よく吸着し、被記録媒体上において特に優れた発色特性を呈することを見出した。その理由は定かではないが、恐らく先に説明したカチオン性液体組成物の場合と同様に、微粒子のアニオン性が適度であるために、インク中のカチオン性化合物の急速な凝集が起こらずに、微粒子表面に薄く均一に吸着することで色材が巨大なレーキを形成せず、色材本来の発色特性がよりよく発現されるものと考えられる。更に、本発明で使用するアニオン性の液体組成物においては、カチオン性化合物を微粒子表面に吸着した後に分散不安定となり、被記録媒体上で溶媒成分が浸透する際の濃度変化で微粒子同士が凝集して表面近傍に残り易くなるものと考えられる。
【0071】
この結果、以下に挙げる、優れた効果が得られるものと考えられる。即ち、インクジェット用コート紙並みの優れた発色特性とシャドウ部やベタ部等のインク付与量が多い画像領域において白モヤや色ムラが少なく色の均一性に優れる。又、コート紙と比べて極めて効率よく微粒子表面にカチオン性化合物が吸着し、発色するために、アニオン性微粒子の付与量も少なくでき、とりわけ普通紙に印字した場合には、紙の風合いが保たれ、印字部の耐擦過性もよくなる。より好ましいゼータ電位は−10〜−85mVであり、この範囲にある液体組成物では、カチオン性化合物を表面に吸着したアニオン性微粒子が被記録媒体上で適度に広がり、ベタ印字した際にドット間の境界が目立ち難くなるために、ヘッドスキャンによるスジムラの少ない良好な画像が得られる。更には、−15〜−65mVの範囲では、紙種に因らず極めて優れた発色性を有する画像を得ることが可能である。
【0072】
本発明で使用するアニオン性の液体組成物のpHは、保存安定性とカチオン性化合物の吸着性の観点から25℃付近で7〜12の範囲であることが好ましい。このpH範囲内においては、カチオン性のインクと混合した際に、カチオン性化合物の安定性を著しく低下させることがないため、カチオン性化合物同士の強い凝集を引き起こすことがなく、記録画像の彩度が下がったり、くすんだ画像となることを有効に防止することができる。又、上記のような範囲内にあれば、アニオン性微粒子の分散性も良好であるため、液体組成物の保存安定性や記録ヘッドからの吐出安定性を良好に維持することができる。更には、インクと混合した際に、カチオン性物質がアニオン性微粒子表面に十分に吸着され、被記録媒体内部への色材の過度の浸透を抑えるため、優れた発色性のインクジェット記録物を得られる。より好ましい液体組成物のpHの範囲は、8〜11であり、pHがこの範囲内であれば、長期保存による記録ヘッドの腐食を極めて有効に防止できると共に、印字部の耐擦過性もより一層向上する。
【0073】
(アニオン性微粒子)
次に、本発明のアニオン性の液体組成物を構成する成分について述べる。第1の成分として挙げられるアニオン性の微粒子は、上記した作用効果を達成するために、液体組成物中に分散された状態において粒子自体の表面がアニオン性を呈するものであることが好ましい。表面をアニオン性とすることによってカチオン性のインクと混合した際に、カチオン性の色材を粒子表面に吸着でき、色材が被記録媒体内部へ過度に浸透することが抑えられるので、十分な画像濃度のインクジェット記録物を得ることができる。これに対し、微粒子表面がアニオン性でなく、且つ、液体組成物の中で、水溶性のアニオン性化合物と別々に存在している場合には、アニオン性化合物を中心に色材が凝集を起こし、色材自体の発色特性を損なうために、インクジェット用コート紙並みの発色性を達成することが困難となる。そのため本発明の液体組成物で用いる微粒子は、表面がアニオン性に帯電していることが必要であるが、本質的にアニオン性である微粒子は勿論のこと、本来は静電的にカチオン性或いは中性の微粒子であっても、処理によって表面がアニオン化された微粒子であれば用いることができる。
【0074】
本発明で好適に用いられるアニオン性微粒子の具体的なものとしては、特に材料種に限定はなく、下記に挙げるような無機系微粒子や有機系微粒子、無機有機複合微粒子等を用いることができる。例えば、無機系微粒子としては、アニオン化した、シリカ、チタニア、ジルコニア、ボリア、シリカボリア、セリア、マグネシア、シリカマグネシア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、及び酸化亜鉛等が挙げられ、有機系微粒子としては、例えば、スチレンアクリルやアクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、SBRラテックス等の共役ジエン系共重合体、及びエチレン酢酸ビニル共重合体等のビニル系共重合体のアニオン性エマルジョンやラテックス、或いはメラミンビーズやプラスチックピグメント等のアニオン変性体等が挙げられる。又、無機有機複合微粒子としては、例えば、水中でアニオン性を呈する官能基を表面に有する無機微粒子等が挙げられる。
【0075】
又、本発明で使用するアニオン性微粒子は、先に説明したカチオン性微粒子の場合と同様に、印字後の発色性や色の均一性、保存安定性の観点から、動的光散乱方式により測定される平均粒子直径が0.005〜1μmの範囲のものが好適である。より好ましくは、平均粒子直径が0.01〜0.8μmの範囲内のものであり、このような微粒子を用いれば、被記録媒体に印字した後の耐擦過性や質感が特に好ましいものとなる。
【0076】
上記したようなアニオン性微粒子の液体組成物中の含有量としては、使用する物質の種類により、最適な範囲を適宜に決定すればよいが、重量基準で0.1〜40重量%の範囲とすることが本発明の目的を達成する上で好適な範囲であり、より好ましくは1〜30重量%、更には3〜15重量%の範囲が好適である。このような範囲内では、紙種に因らず、優れた発色の画像を安定に得ることができ、又、液体組成物の保存安定性や吐出安定性にも特に優れている。
【0077】
(塩基)
先に述べたように、本発明で使用するアニオン性の液体組成物は、塩基を含み、pHが7〜12に調整されたものであることが好ましいが、この際に使用する塩基は、アニオン性微粒子表面をイオン化し、表面電位を高めることにより液中での分散安定性を向上させると共に、インク中のカチオン性化合物の吸着性向上や液体組成物の粘度調整の役割を果たす。本発明に好適に用いられる塩基は、使用するアニオン性微粒子と組み合わせた場合に、所望のpHやゼータ電位、微粒子分散性等の物性が得られるものであれば特に限定はなく、下記に挙げるような無機化合物や有機化合物等から自由に選択して、使用することができる。
【0078】
具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、モルホリンやモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルモノエタノールアミン、ノルマルブチルモノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、ノルマルブチルジエタノールアミン、ジノルマルブチルエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のアルカノールアミンを用いることができる。これらの中でも特に、塩基の水中での一次解離定数pkbが5以下の塩基は、アニオン性微粒子の分散安定性やカチオン性化合物の吸着性に特に優れるため、好適に用いられる。
【0079】
本発明で使用する液体組成物中でのアニオン性微粒子と塩基の混合比率は、重量基準で200:1〜5:1、より好ましくは150:1〜8:1の範囲であれば、アニオン性微粒子の分散安定性や、該微粒子表面へのカチオン性化合物の吸着性に優れるため好ましい。
【0080】
(他の構成成分)
次に、アニオン性の液体組成物を構成するその他の成分について具体的に説明する。本発明で使用するアニオン性の液体組成物は、上記したアニオン性微粒子を必須の成分とし、好ましくは上記したような塩基を含み、その他に、通常は液媒体として水を含むが、更に、水溶性有機溶剤及びその他の添加剤、例えば、粘度調整剤、pH調整剤、防腐剤、各種界面活性剤、酸化防止剤及び蒸発促進剤、水溶性アニオン性化合物やバインダー樹脂等の添加剤を適宜配合してもかまわない。
【0081】
(アニオン性の液体組成物の表面張力)
本発明で使用する液体組成物は、無色或いは白色であるのがより好ましいが、被記録媒体の色に合わせて調色してもよい。更に、以上のような液体組成物の各種物性の好適な範囲としては、表面張力を10〜60mN/m(dyn/cm)、より好ましくは10〜40mN/m(dyn/cm)とし、粘度を1〜30mPa・s(cP)としたものである。
【0082】
(アニオン性の液体組成物の色材凝集機能)
本発明で使用するアニオン性の液体組成物は、被記録媒体上でインクと混合されたときに、次の2つの機能を有する。1つは、液体組成物の含有微粒子がインクの色材である染料分子等のカチオン性化合物を適度の吸着力で吸着する機能であり、もう1つは、インクと混合されたときに、混合液のpHを前述した染料の色材の凝集pH値とする機能である。そのために、少なくとも、液体組成物に含有される微粒子自体の表面は、アニオン性の微粒子と塩基を含んでいることが好ましく、又、液体組成物のゼータ電位は、−5〜−90mVの範囲に調整されていることが好ましい。
【0083】
<水性インク>
[アニオン性インク]
次に、前記で説明したカチオン性の液体組成物と組み合わせて本発明のインクセットを構成する水性のアニオン性インクについて説明する。ここで言うインクセットとは、前記で説明したような構成を有するカチオン性の液体組成物と、少なくとも一種類以上のアニオン性インクとの組み合わせのことである。又、本明細書では、このインクセットから液体組成物を除いた少なくとも一種類以上のインクの組み合わせを、インクサブセットと呼ぶ。本発明で使用するアニオン性インクは、アニオン性化合物を含有させることで作製できるが、例えば、色材としてアニオン性基を含有する水溶性染料を用いるか、或いは、色材として顔料を用いる場合には、アニオン性化合物を併用させることで得られる。本発明で使用するこれらのアニオン性インクは、更にこれに、水、水溶性有機溶剤等の液媒体と、その他の成分である、例えば、粘度調整剤、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、酸化防止剤等が必要に応じて含まれて構成される。以下、これらのインクの各構成成分について説明する。
【0084】
(水溶性染料)
本発明で使用するアニオン性基を有する水溶性染料としては、例えば、カラーインデックス(Color Index)に記載されている水溶性の酸性染料、直接染料、及び反応性染料であれば特に限定されない。又、カラーインデックスに記載のないものでも、アニオン性基、例えば、スルホン基、カルボキシル基等を有するものであれば特に限定されない。また、アニオン性基としてカルボキシル基を有した水溶性染料は特にpH変化による凝集が効果的に起こりやすいため好ましく用いられる。なお、ここで言う水溶性染料の中には、溶解度のpH依存性があるものも含まれる。
【0085】
(顔料)
水性のアニオン性インクの別の形態としては、色材として、上記のようなアニオン性基を有する水溶性染料の代わりに顔料を用い、更にこれと共にアニオン性化合物を用い、水、水溶性有機溶剤等の液媒体、及びその他の成分、例えば、粘度調整剤、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、酸化防止剤等を必要に応じて含むインクであってもよい。ここで、アニオン性化合物が顔料の分散剤であってもよいし、顔料の分散剤がアニオン性でない場合に、分散剤とは別のアニオン性化合物を添加したものでもよい。勿論、分散剤がアニオン性化合物である場合でも、更に他のアニオン性化合物を添加したものでもよい。
【0086】
本発明で使用することができる顔料に特に限定はないが、例えば、以下に説明する顔料が好適に使用できる。
先ず、ブラック顔料インクに使用されるカーボンブラックとしては、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックで、一次粒径が、15〜40ミリミクロン、BET法による比表面積が、50〜300平方メートル/g、DBP吸油量が、40〜150ml/100g、揮発分が0.5〜10%、pH値が2〜9を有するものが好ましい。このようなものとしては、例えば、No.2300、No.900、MCF88、No.40、No.52、MA7、MA8、No.2200B(以上、三菱化成製)、RAVEN1255(コロンビア製)、REGAL400R、REGAL660R、MOGUL L(以上、キヤボット製)、Color Black FW1、Color Black FW18、Color Black S170、Color Black S150、Printex 35、Printex U(以上、デグッサ製)等の市販品を使用することができる。又、本発明のために新たに試作されたものでもよい。
【0087】
イエローインクに使用される顔料としては、例えば、C.I.PigmentYellow 1、C.I.Pigment Yellow 2、C.I.Pigment Yellow 3、C.I.Pigment Yellow 13、C.I.Pigment Yellow 16、C.I.Pigment Yellow 83等が挙げられる。
【0088】
マゼンタインクとして使用される顔料としては、例えば、C.I.Pigment Red 5、C.I.Pigment Red 7、C.I.Pigment Red 12、C.I.Pigment Red 48(Ca)、C.I.Pigment Red 48(Mn)、C.I.Pigment Red 57(Ca)、C.I.Pigment Red 112、C.I.Pigment Red 122等が挙げられる。
【0089】
シアンインクとして使用される顔料としては、例えば、C.I.Pigment Blue 1、C.I.Pigment Blue 2、C.I.Pigment Blue 3、C.I.Pigment Blue 15、3、C.I.Pigment Blue 16、C.I.Pigment Blue 22、C.I.Vat Blue 4、C.I.Vat Blue 6等が挙げられる。
又、いずれの色の色材に関しても、本発明のために新たに製造されたものでも使用可能である。
【0090】
(顔料分散剤)
本発明で使用するインクに用いることができる顔料の分散剤としては、アニオン性基の存在によって、顔料を水、若しくは水性媒体に安定に分散させる機能を有する水溶性樹脂ならどんなものでも使用可能である。特に、重量平均分子量が1,000〜30,000の範囲のものが好ましい。更に、好ましくは、3,000〜15,000の範囲である。具体的には、例えば、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等の疎水性単量体、又は、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体から選ばれる二つ以上の単量体からなるブロック共重合体、グラフト共重合体、或いは、ランダム共重合体、又、これらの塩等が挙げられる。これらの樹脂は、塩基を溶解させた水溶液に可溶なアルカリ可溶型の樹脂である。
【0091】
更に、親水性単量体からなるホモポリマー又、それらの塩でもよい。又、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等の水溶性樹脂も使用することが可能である。しかし、アルカリ可溶型の樹脂を用いた場合の方が、分散液の低粘度化が可能で、分散も容易であるという利点がある。前記、水溶性樹脂は、インク全量に対して、0.1〜5重量%の範囲で使用されることが好ましい。
【0092】
本発明で使用し得る顔料インクは、以上のごとき顔料及び水溶性樹脂を水溶性媒体中に分散又は溶解して構成される。本発明に用い得る顔料系インクにおいて好適な水性媒体としては、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒であり、水としては種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。
【0093】
分散剤が、アニオン性高分子ではない場合、上述した顔料を含むインクに更に、アニオン性化合物を添加することが好ましい。本発明で好適に使用されるアニオン性化合物としては、顔料分散剤の項で説明したアルカリ可溶性樹脂等の高分子物質の他、下記に挙げるような低分子アニオン性界面活性剤を挙げることができる。
【0094】
低分子アニオン性界面活性剤の具体的なものとしては、例えば、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、スルホコハク酸ポリオキシエチレンラウロイルエタノールアミドエステル二ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二ナトリウム、カルボキシル化ポリオキシエチレンラウリルエーテルナトリウム塩、カルボキシル化ポリオキシエチレンラウリルエーテルナトリウム塩、カルボキシル化ポリオキシエチレントリデシルエーテルナトリウム塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミン等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
以上のようなアニオン性物質の好適な使用量としては、インク全量に対して、0.05〜10重量%の範囲であり、更に好適には、0.05〜5重量%である。
【0095】
(自己分散型顔料)
又、アニオン性のインクに用いることのできる顔料としては、分散剤を用いることなしに、水若しくは水性媒体に分散させることのできる自己分散型の顔料も使用できる。自己分散型の顔料は、顔料表面に少なくとも1種のアニオン性親水性基が直接若しくは他の原子団を介して結合されているものである。アニオン性の親水性基としては、例えば、下記に挙げた親水性基の中から選択される少なくとも1種であるもの、更に、他の原子団が、炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基であるものが挙げられる。
Figure 0003631129
【0096】
このようにカーボンブラック表面への親水性基の導入によってアニオン性に帯電させたカーボンブラックは、イオンの反発によって優れた水分散性を有するため、水性インク中に含有させた場合に、特別に分散剤が添加されていなくても安定した分散状態を維持できる。
【0097】
(インクの他の添加成分)
又、上記の成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つインクとするために、界面活性剤、消泡剤、防腐剤等を添加することができ、更に、市販の水溶性染料等を添加することもできる。
【0098】
界面活性剤としては、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩類、液体脂肪油硫酸エステル塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類等の陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類、アセチレンアルコール、アセチレングリコール等の非イオン性界面活性剤があり、これらの1種又は2種以上を適宜選択して使用できる。その使用量は、分散剤の添加量により異なるが、インク全量に対して、0.01〜5重量%が望ましい。この際、インクの表面張力は30mN/m(dyn/cm)以上になるように活性剤の添加する量を決定することが好ましい。なぜなら、本発明で使用するインクジェット記録方式においては、ノズル先端のぬれによる印字ヨレ(インク滴の着弾点のズレ)等の発生を有効に抑えることができるからである。
【0099】
以上で説明したような顔料系インクの作成方法としては、はじめに、分散樹脂、水を少なくとも含有する水溶液に、顔料を添加して攪拌した後、後述の分散手段を用いて分散処理を行い、必要に応じて遠心分離処理を行って、所望の分散液を得る。次に、この分散液に上記に掲げたような成分を更に加えて攪拌して、インクとすればよい。
【0100】
又、アルカリ可溶型の樹脂を使用する場合には、樹脂を溶解させるために塩基を添加することを要する。この際、樹脂を溶解させるためのアミン或いは塩基の量は、樹脂の酸価から計算によって求められるアミン或いは塩基量の1倍以上を添加することが必要である。アミン或いは塩基の量は、以下の式によって計算で求められる。
Figure 0003631129
【0101】
更に、顔料を含む水溶液を分散処理する前にプレミキシングを30分間以上行うと、分散効率がよくなる。このプレミキシング操作は、顔料表面の濡れ性を改善し、顔料表面への分散剤の吸着を促進するものである。
【0102】
アルカリ可溶型樹脂を使用した場合の分散液に添加される塩基類としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミンメチルプロパノール、アンモニア等の有機アミン、或いは水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基を用いることが好ましい。
【0103】
一方、顔料インクの調製に使用する分散機は、一般に使用される分散機ならいかなるものでもよいが、例えば、ボールミル、サンドミル等が挙げられる。その中でも、高速型のサンドミルが好ましく、例えば、スーパーミル、サンドグラインダー、ビーズミル、アジテータミル、グレンミル、ダイノールミル、パールミル、コボルミル(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0104】
尚、本発明で使用するインクは、上記成分の他に必要に応じて、水溶性有機溶剤、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防カビ剤、酸化防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤及び水溶性ポリマー等の添加剤を添加してもよい。
【0105】
本発明で用いるアニオン性インクは、上記に挙げたような色材を液媒体中に溶解又は分散させることで構成される。この際に使用する液媒体としては、水と、下記に挙げるような水溶性有機溶剤との混合物であることが好ましい。具体的な水溶性有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジアキサン等のエーテル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングコリコール等のポリアルキレングリコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−へキサントリオール、チオジグリコール、へキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類、グリセリン、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラン、ジメチルサルフォオキサイド、2−ピロリドン、ε−カプロラクタム等の環状アミド化合物及びスクシンイミド等のイミド化合物等が挙げられる。
【0106】
上記水溶性有機溶剤の含有量は、一般には、インクの全重量に対して重量%で1%〜40%が好ましく、より好ましくは3%〜30%の範囲である。又、インク中の水の含有量は、30〜95重量%の範囲とした場合に、色材の溶解性等が良好であり、インクの粘度が高くなることを抑えることができ、且つ、不固着特性を十分に満足させることもできるため、好ましい。
【0107】
本発明で使用するアニオン性インクは、一般の水溶性筆記用具としても使用できるが、熱エネルギーによるインクの発泡現象によりインクを吐出させるタイプのインクジェット記録方法に適用する場合に特に好適であり、吐出が極めて安定となり、サテライトドットの発生等が生じないという特徴がある。但し、この場合には、熱的な物性値(例えば、比熱、熱膨張係数、熱伝導率)を調整する場合もある。
【0108】
[カチオン性インク]
次に、先に説明したアニオン性の液体組成物と組み合わせて本発明のインクセットを構成する水性のカチオン性インクについて説明する。ここで言うインクセットとは、前記で説明したような構成を有するアニオン性の液体組成物と、少なくとも一種類以上のカチオン性インクとの組み合わせのことである。又、本明細書では、このインクセットから液体組成物を除いた少なくとも一種類以上のインクの組み合わせを、インクサブセットと呼ぶ。本発明で使用するカチオン性インクは、カチオン性化合物を含有させることで作製できるが、例えば、色材としてカチオン性基を含有する水溶性染料を用いるか、或いは、色材として顔料を用いる場合には、カチオン性化合物を併用させることで得られる。本発明で使用される上記のようなカチオン性インクには、上記した成分に更に、水、水溶性有機溶剤等からなる液媒体、及びその他の成分、例えば、粘度調整剤、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、酸化防止剤等が必要に応じて含まれて構成される。以下、これらのインクの各構成成分について説明する。
【0109】
(水溶性染料)
本発明で使用するカチオン性基を有する水溶性染料としては、例えば、カラーインデックス(Color Index)に記載されているカチオン性の水溶性染料であれば特に限定されることなく使用できる。又、カラーインデックスに記載のないものでも、カチオン性基を有するものであれば特に限定はない。尚、ここで言う水溶性染料の中には、溶解度のpH依存性があるものも含まれる。
【0110】
(顔料)
本発明で使用するインクの別の形態としては、色材として上記したカチオン性基を有する水溶性染料を使用する代わりに顔料を用い、これにカチオン性化合物を併用し、更に、水、水溶性有機溶剤等の液媒体、及びその他の成分、例えば、粘度調整剤、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、酸化防止剤等を必要に応じて含むで構成される。この際、併用するカチオン性化合物が顔料の分散剤であってもよいし、顔料の分散剤がカチオン性でない場合に、分散剤とは別にカチオン性化合物を添加させてもよい。勿論、分散剤がカチオン性化合物である場合でも、更に他のカチオン性化合物を添加してもよい。本発明で使用することができる顔料としては特に限定はなく、先にアニオン性インクの項で述べた顔料を好適に用いることができる。
【0111】
(顔料分散剤)
本発明で使用するインク中の顔料の分散剤としては、カチオン性基の存在によって顔料を水、若しくは水性媒体に安定に分散させる機能を有する水溶性樹脂ならどのようなものでも使用可能である。具体例としては、ビニルモノマーの重合によって得られるものであって、得られる重合体の少なくとも一部がカチオン性を有するものであればよい。カチオン性の部分を構成するためのカチオン性モノマーとしては、下記の如き第3級アミンモノマーの塩及びこれらの4級化された化合物が挙げられる。
【0112】
N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート[CH=C(CH)−COO−CN(CH]、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート[CH=CH−COO−CN(CH]、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート[CH=C(CH)−COO−CN(CH]、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート[CH=CH−COO−CN(CH]、N,N−ジメチルアクリルアミド[CH=CH−CON(CH]、N,N−ジメチルメタクリルアミド[CH=C(CH)−CON(CH]、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド[CH=CH−CONHCN(CH]、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリルアミド[CH=C(CH)−CONHCN(CH]、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド[CH=CH−CONH−CN(CH]、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド[CH=C(CH)−CONH−CN(CH]等が挙げられる。
【0113】
第3級アミンの場合において、塩を形成するための化合物としては、塩酸、硫酸、及び酢酸等が挙げられ、4級化に用いられる化合物としては、塩化メチル、ジメチル硫酸、ベンジルクロライド、及びエピクロロヒドリン等が挙げられる。これらの中でも、特に、塩化メチル及びジメチル硫酸等が、本発明で使用する顔料分散剤を調製する上で好適に用いられる。以上のような第3級アミンの塩、或いは第4級アンモニウム化合物は水中ではカチオンとして振る舞い、中和された条件では酸性が安定溶解領域である。これらモノマーの共重合体中での含有率は、20〜60重量%の範囲が好ましい。
【0114】
上記高分子分散剤の構成に用いられるその他のモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、長鎖のエチレンオキシド鎖を側鎖に有するアクリル酸エステル等のヒドロキシ基を有するアクリル酸エステル、スチレン系モノマー等の疎水性モノマー類、及びpH7近傍の水に溶解可能な水溶性モノマーとして、アクリルアミド類、ビニルエーテル類、ビニルピロリドン類、ビニルピリジン類、ビニルオキサゾリン類が挙げられる。疎水性モノマーとしては、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、アクリロニトリル等の疎水性モノマーが用いられる。共重合によって得られる高分子分散剤中において水溶性モノマーは、共重合体を水溶液中で安定に存在させるために15〜35重量%の範囲で用い、且つ、疎水性モノマーは、共重合体の顔料に対する分散効果を高めるために20〜40重量%の範囲で用いることが好ましい。
【0115】
(自己分散型顔料)
カチオン性に帯電したカーボンブラックの場合、直接若しくは他の原子団を介して結合した親水性基が、例えば、下記に挙げる第4級アンモニウム基から選ばれる少なくとも1つを結合したものが挙げられる。しかし、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0116】
Figure 0003631129
上記式中、Rは炭素原子数1〜12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、置換若しくは未置換のフェニル基、又は、置換若しくは未置換のナフチル基を表す。尚、上記のカチオン性基には、カウンターイオンとして、例えば、NO やCHCOOが存在する。
【0117】
上記したような親水性基が結合されてカチオン性に帯電している自己分散型カーボンブラックを製造する方法としては、例えば、下記に示す構造のN−エチルピリジル基を結合させる方法を例にとって説明すると、カーボンブラックを3−アミノ−N−エチルピリジニウムブロマイドで処理する方法が挙げられる。
【0118】
Figure 0003631129
【0119】
このようにカーボンブラック表面への親水性基の導入によってカチオン性に帯電させたカーボンブラックは、イオンの反発によって優れた水分散性を有するため、水性インク中に含有させた場合に、特に分散剤等を添加しなくても安定した分散状態を示す。
【0120】
(インクの表面張力)
更に、本発明で使用する上記したような水性インクは、普通紙等に記録した場合の印字記録物のインクの浸透性と同時に、インクジェット用ヘッドに対するマッチングを良好にする面から、インク自体の物性として、25℃における表面張力が30〜68mN/m(dyn/cm)であって、粘度が15mPa・s(cP)以下、好ましくは10mPa・s(cP)以下、より好ましくは5mPa・s(cP)以下に調整されることが望ましい。
【0121】
(水性インクの濃度)
本発明で使用される上記したような構成のアニオン性及びカチオン性の水性インク中に含まれる色材成分の重量濃度は、水性染料、顔料や自己分散型顔料等の色材の種類に応じて適宜に選択されるが、インクの重量に対し、0.1〜20重量%、特には0.1〜12重量%の範囲であることが好ましい。
又、これらの色材成分の重量濃度が0.3〜7重量%の範囲である場合には、液体組成物中に含有されている微粒子の濃度とインク中の色材の濃度との関係に関して、重量基準で、液体組成物中の微粒子1に対して、色材が1.2以下、特には1.0以下とした場合、通常の2液系の記録条件の下で形成される画像の発色性は特に優れたものとなる。
【0122】
<被記録媒体への着色部の形成方法>
次に、本発明の被記録媒体への着色部の形成方法について説明する。本発明の被記録媒体への着色部の形成方法は、上記のように構成されている液体組成物と水性インクとを組み合わせたインクセットを用い、(i)水性インクを被記録媒体に付与させる過程と、(ii)液体組成物を被記録媒体に付与させる過程とを有し、上記被記録媒体上において、水性インクと液体組成物とが互い液−液状態で接している状態が形成されるように両液滴を被記録媒体に向けて吐出して付与することを特徴とする。
【0123】
以下、先に説明したような構成を有する液体組成物及び水性インクを被記録媒体上に付与する方法について説明する。本発明の被記録媒体への着色部の形成方法では、具体的には、被記録媒体上にインクによって形成される着色部形成領域、又は該着色部形成領域とその近傍に液体組成物を付与し、被記録媒体上に、水性インクと液体組成物とが液−液状態で接すた状態が形成されるようにする。ここでいう着色部形成領域とは、インクのドットが付着する領域のことであり、着色部形成領域の近傍とは、インクのドットが付着する領域の外側の1〜5ドット程度離れた領域のことを指す。
【0124】
本発明の被記録媒体への着色部の形成方法では、前記した本発明で使用する液体組成物と水性インクとが被記録媒体上で互いに液体状態で接するようになれば、これらを何れの方法で付与させてもよい。従って、液体組成物とインクの何れを先に被記録媒体上に付与するかは問題ではない。例えば、過程(ii)を行なった後に過程(i)を行なってもよいし、過程(i)を行なった後に過程(ii)を行なってもよい。又、過程(i)を行なった後に、過程(ii)を行ない、その後に再び過程(i)を行なうことも好ましい。又、液体組成物を被記録媒体に先に付与させた場合に、液体組成物を被記録媒体に付与してから、インクを被記録媒体上に付与させるまでの時間については特に制限されるものではないが、互いが液−液状態で接するようにするためには、ほぼ同時、或いは数秒以内にインク及び液体組成物を被記録媒体上に付与させることが好ましい。
【0125】
(被記録媒体)
上記した本発明の被記録媒体への着色部の形成方法に使用される被記録媒体としては、特に限定されるものではなく、従来から使用されている、コピー用紙、ボンド紙等のいわゆる普通紙が好適に使用される。勿論、インクジェット記録用に特別に作製されたコート紙やOHP用透明フィルムも好適に使用される。更に、一般の上質紙や光沢紙にも好適に使用することができる。
【0126】
(液体組成物の付与方法)
液体組成物を被記録媒体上に付与せしめる方法としては、例えば、スプレーやローラー等によって被記録媒体の全面に付与せしめる方法も考えられるが、更に好ましくは、インクが付与されることで形成される着色部形成領域、或いは、該着色部形成領域とその近傍にのみに、液体組成物を、選択的且つ均一に付与せしめることのできるインクジェット記録方式により行うのが好ましい。又、この際には種々のインクジェット記録方式を用いることができるが、特に好ましくは、熱エネルギーによって気泡を発生させることで液滴を吐出させる方式のインクジェット記録である。
【0127】
<インクジェット記録装置>
次いで、本発明のインクジェット記録装置について説明する。本発明のインクジェット記録装置は、色材を含むアニオン性若しくはカチオン性の水性インクを収容したインク収容部と、該インクを吐出させるインクジェット記録ヘッドを備えた第1の記録ユニットと、該水性インクとは逆の極性に表面が帯電している微粒子が分散状態で含まれている液体組成物を収容した液体組成物収容部と、該液体組成物を吐出させるインクジェット記録ヘッドを備えた第2の記録ユニットとを備えていることを特徴とする。又、別の形態のインクジェット記録装置としては、色材を含むアニオン性若しくはカチオン性の水性インクを収容したインク収容部と、該水性インクとは逆の極性に表面が帯電している微粒子が分散状態で含まれている液体組成物を収容した液体組成物収容部と、上記インク収容部に収容されている水性インクと上記液体組成物収容部に収容されている液体組成物とを各々独立に吐出させるためのインクジェット記録ヘッドとを備えていることを特徴とする。以下、これらについて説明する。
【0128】
本発明のインクジェット記録装置は、記録ヘッドの記録インクに記録信号を与え、発生した熱エネルギーにより液滴を吐出する方式のものが特に好ましい。その装置の主要部である記録ヘッドの構成を図1、図2、図3に示した。尚、図1は、インク流路に沿ったヘッド13の断面図であり、図2は、図1のA−B線での断面図である。
【0129】
記録ヘッド13は、インクを通す溝14を有するガラス、セラミック、又はプラスチック板等と、感熱記録に用いられる発熱抵抗体を有する発熱ヘッド15(図では薄膜ヘッドが示されているが、これに限定されるものではない)とを接着して得られる。発熱ヘッド15は、酸化シリコン等で形成される保護膜16、アルミニウム電極17−1及び17−2、ニクロム等で形成される発熱抵抗体層18、蓄熱層19、アルミナ等の放熱性のよい基板20よりなっている。
【0130】
記録インク21は、吐出オリフィス22まで来ており、圧力Pによりメニスカス23を形成している。ここで、アルミニウム電極17−1及び17−2に電気信号が加わると、発熱ヘッド15のnで示される領域が急激に発熱し、ここに接しているインク21に気泡が発生し、その圧力でメニスカス23が突出し、吐出オリフィス22よりインク小滴24となり、被記録材25に向かって飛翔する。図3は、図1に示したノズルを多数並べた記録ヘッドの概略図を示す。該記録ヘッドは多数の流路を有するガラス板等27と図1において説明したものと同様の発熱ヘッド28を密着して作られる。
【0131】
図4に、上記で説明したヘッドを組み込んだインクジェット記録装置の一例を示した。図4において、61はワイピング部材としてのブレードで、その一端はブレード保持部材によって保持されて固定端となり、カレンチレバーの形態をなす。ブレード61は記録ヘッド65による記録領域に隣接した位置に配置され、又、本例の場合、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。62は、記録ヘッド65の吐出口面のキャップであり、ブレード61に隣接するホームポジションに配設され、記録ヘッド65の移動方向と垂直な方向に移動して、インク吐出口面と当接し、キャッピングを行う構成を備える。更に63はブレード61に隣接して設けられるインク吸収体であり、ブレード61と同様、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。前記ブレード61、キャップ62及びインク吸収体63によって吐出回復部64が構成され、ブレード61及びインク吸収体63によってインク吐出口面に水分、塵等の除去が行われる。
【0132】
65は吐出エネルギー発生手段を有し、吐出口を配した吐出口面に対向する被記録材にインクを吐出して記録を行う記録ヘッド、66は記録ヘッド65を搭載してその移動を行うためのキャリッジである。キャリッジ66はガイド軸67と慴動可能に係合し、キャリッジ66の一部はモーター68によって駆動されるベルト69と接続(図示せず)している。これによりキャリッジ66はガイド軸67に沿った移動が可能となり、記録ヘッド65による記録領域及びその隣接した領域の移動が可能となる。
【0133】
51は被記録材を挿入するための給紙部、52はモーター(図示せず)により駆動される送りローラーである。これらの構成によって記録ヘッド65の吐出口面と対向する位置へ被記録材が給送され、記録が進行するにつれて、排紙ローラー53を配した排出部へ排出される。
【0134】
上記構成において記録ヘッド65が記録終了等でホームポジションに戻る際、吐出回復部64のキャップ62は記録ヘッド65の移動経路から退避しているが、ブレード61は移動経路中に突出している。この結果、記録ヘッド65の吐出口面がワイピングされる。尚、キャップ62が記録ヘッド65の吐出口面に当接してキャッピングを行う場合、キャップ62は記録ヘッドの移動経路中に突出するように移動する。
【0135】
記録ヘッド65がホームポジションから記録開始位置へ移動する場合、キャップ62及びブレード61は前記したワイピング時の位置と同一の位置にある。この結果、この移動においても記録ヘッド65の吐出口面はワイピングされる。前記の記録ヘッド65のホームポジションへの移動は、記録終了時や吐出回復時ばかりではなく、記録ヘッド65が記録のために記録領域を移動する間に所定の間隔で記録領域に隣接したホームポジションへ移動し、この移動に伴って上記ワイピングが行われる。
【0136】
図5は、ヘッドにインク供給部材、例えばチューブを介して供給されるインクを収容したインクカートリッジ45の一例を示す図である。ここで40は供給用インクを収容したインク収容部、例えば、インク袋であり、その先端にはゴム製の栓42が設けられている。この栓42に針(図示せず)を挿入することにより、インク袋40中のインクをヘッドに供給可能ならしめる。44は廃インクを受容するインク吸収体である。インク収容部としては、インクとの接液面がポリオレフィン、特にポリエチレンで形成されているものが好ましい。又、本発明にかかるカートリッジの他の態様として、本発明にかかるインクセットを構成するインクと液体組成物とが各々個別に収容した2つの収容部を有し、該インク及び該液体組成物を吐出させるためのヘッドに対して着脱可能に構成され、且つ、インク及び液体組成物が該記録ヘッドに供給可能に構成されているカートリッジを挙げることができる。
【0137】
図11は、そのようなカートリッジ1001の一例を示すものであるが、図中の1003は、インクが収容されているインク収容部、1005は、液体組成物が収容されている液体組成物収容部である。該カートリッジは、図12に示すように、インク及び液体組成物の各々を吐出せしめる記録ヘッド1101に着脱可能に構成されてなると共に、カートリッジ1001を記録ヘッド1101に装着した状態では、液体組成物及びインクが、記録ヘッド1101に供給されるように構成されているものである。
【0138】
本発明で使用されるインクジェット記録装置としては、前記の如きヘッドとインクカートリッジとが別体となったものに限らず、図6に示す如きそれらが一体となったものも好適に用いられる。
【0139】
図6において、70は記録ユニットであって、この中にインクを収容したインク収容部、例えば、インク吸収体が収納されており、かかるインク吸収体中のインクが複数のオリフィスを有するヘッド部71からインク滴として吐出される構成になっている。インク吸収体の材料としては、例えば、ポリウレタンを用いることができる。72は、記録ユニット内部を大気に連通させるための大気連通口である。この記録ユニット70は、図4で示す記録ヘッドに代えて用いられるものであって、キャリッジ66に対し着脱自在になっている。
【0140】
更に、本発明で使用する記録ユニットの他の実施態様として、インクと液体組成物とを、1個のインクタンク内の各々の収納部に収納し、且つ、インク及び液体組成物の各々を吐出させるための記録ヘッドを一体的に備えた記録ユニット、具体的には、例えば、図13に示すように、液体組成物を収容部1201Lに、該ブラックインクを収容部1201Bkに、又、イエロー、シアン及びマゼンタのカラーインクを各々カラーインク収納部1201Y、1201M及び1201Cに収納し、更に、各々のインクを各々個別に吐出させることができるように、インク流路を分けて構成した記録ヘッド1203を備えているような記録ユニット1201挙げられる。
【0141】
尚、本発明に使用する記録装置において、上記ではインク及び液体組成物に熱エネルギーを作用させてインク液滴を吐出するインクジェット記録装置を例に挙げたが、その他、圧電素子を使用するピエゾ方式のインクジェット記録装置でも同様に利用できる。
【0142】
さて、本発明の被記録媒体への着色部の形成方法を実施する場合には、例えば、前記図3に示した記録ヘッドを5つキャリッジ上に並べた記録装置を使用する。図7は、その一例である。81、82、83及び84は、夫々、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック各色の記録インクを吐出するための記録ヘッドである。又、85は、本発明で使用する液体組成物を吐出させるためのヘッドである。該ヘッドは前記した記録装置に配置され、記録信号に応じて、各色の記録インクを吐出する。又、本発明で使用する液体組成物は、各色の記録インクを吐出に先立ち、例えば、少なくとも各色の記録インクが記録紙に付着する部分に予め付着させておく。図7では記録ヘッドを5つ使用した例を示したが、これに限定されるものではなく、図8に示したように、1つの記録ヘッドで液流路をイエロー801Y、マゼンタ801M、シアン801C、ブラック801Bk及び無色の液体組成物801S毎に分けて行うのも好ましい。勿論、液体組成物とインクの記録順が上記した順序とは逆になるようなヘッドの配置をとってもよい。
【0143】
図16は、本発明にかかるインクジェットプリント装置の他の実施態様の概略構成を示す模式的斜視図である。
図16において、1604は、キャリッジ1603の主走査方向に延在し、該キャリッジを摺動自在に支持する走査レール、1605は、キャリッジ1603を往復動させるための駆動力を伝達する駆動ベルトである。又、1606と1607、及び、1608と1609は、それぞれ、プリントヘッドによるプリント位置の前後に配置されて、被プリント材1610の挟持搬送を行うための搬送ローラ対である。紙等の被プリント材1610は、プリント位置の部分で、プリント面を平坦に規制するためのプラテン(不図示)に圧接状態で案内支持されている。この時、キャリッジ1603に搭載された各ヘッドカートリッジ(ヘッド)1601、1602の吐出口形成面は、該キャリッジ1603から下方へ突出して被記録媒体搬送用ローラ1607、1609間に位置し、プラテン(不図示)の案内面に圧接された被記録媒体1610に平行に対向するようになっている。
【0144】
図16において、キャリッジ1603上には合計6個のヘッドカートリッジが位置決め搭載されておいる。本実施例では、キャリッジ1603上の図示左端から右側へ向けて、イエローのプリントヘッド1601Y、マゼンタのプリントヘッド1601M、シアンのプリントヘッド1601C、ブラックのプリントヘッ1601B、液体組成物吐出ヘッド1602、第2のブラックのプリントヘッド1601BBの順に配置されている。液体組成物吐出ヘッド1602は、インク中の色材と反応性を有する液体組成物を被記録媒体1610へ吐出するものである。又、右端の第2のブラックのプリントヘッド1601BBは、往復プリントでの副走査プリント時等に使用されるブラックインクを用いるプリントヘッドである。つまり、ブラックプリントヘッド1601Bの次に(右隣に)液体組成物吐出ヘッド1602を配置し、更にその次に(右端)に前記ブラックのプリントヘッド1601BBを配置する構成が採られており、この結果、被記録媒体に、先ず第1の過程で水性インクの液滴を付与し、次に、第2の過程で、該第1の過程で被記録媒体上に付与された水性インクと液−液状態で接するようにして液体組成物の液滴を付与し、更に第3の過程で、該第1及び2の過程によって被記録媒体上に形成された水性インクと液体組成物との混合液と液−液状態で接するように更に水性インクの液滴を付与することが可能となる。
【0145】
図16において、プリント領域の左側には回復ユニット1611が配設されている。該回復ユニット1611においては、前記ヘッドカートリッジ1601、1602の配置に対応して、左から右へ、プリントヘッド1601Y、1601M、1601C、1601Bをそれぞれキャッピングするためのキャップ1612が順次配置され、その次に(右隣に)、液体組成物の吐出ヘッド1602をキャッピングするキャップ1613が配置され、更にその右隣(右端)には、第2のブラックプリントヘッド1601BBをキャッピングするためのキャップ1612が配置されている。そして各々のキャップは、上下方向に昇降可能に設けられており、キャリッジ1603がホームポジションにあるときには、各ヘッド1601、1602の吐出口形成面に対して対応するキャップ1612、1613が各々圧接されることにより、各ヘッド1601、1602の吐出口が密封(キャッピング)され、これにより吐出口内のインク溶剤の蒸発によるインクの増粘、固着が防止され、吐出不良の発生が防止されている。
【0146】
又、回復ユニット1611は、各キャップ1612、1613に連通した吸引ポンプ1614とキャップ1613に連通した吸引ポンプ1615を備えている。これらのポンプ1614、1615はプリントヘッド1601や液体組成物吐出ヘッド1602に吐出不良が生じた場合に、それらの吐出口形成面を、キャップ1612及び1613でキャッピングして吸引回復処理を実行するのに使用される。更に左端から5番目の液体組成物用のキャップ1613と、6番目(右端)のブラックインク用のキャップ1612との間には、液体組成物吐出ヘッド1602用のブレード1617が配置され、右端のキャップ1612の右側(プリント領域側)に各プリントヘッド1601用のブレード1616が配置されている。そしてブレード1617はブレードホルダー1619によって保持され,ブレード1616はブレードホルダー1618によって保持されている。この態様においては、ブレードホルダー1618及び1619は、各々キャリッジ1603の移動を利用して駆動されるブレード昇降機構(不図示)により昇降され、それによってブレード1616及び1617は、ヘッド1601及び1602の吐出口形成面に付着したインクや異物をワイピングすべく突出した位置(ワイピング位置)と、吐出口形成面に接触しない後退した位置(待機位置)との間で昇降する。この場合、プリントヘッド1601をワイピングするブレード1616と、液体組成物吐出ヘッド1602をワイピングするブレード1617とは、互いに独立して個別に昇降できるように構成されている。
【0147】
図17は、図16のインクジェットプリント装置のワイピング動作を示す模式図である。図16において、(A)に示すように、プリントヘッド用のブレード1616が突出(上昇)した後、キャリッジ1603に搭載された各ヘッドが右側(プリント領域側)からホームポジションに向かって移動してくる。上昇したプリントヘッド用のブレード1616は、(B)に示すように、キャリッジ1603の左向き移動に伴い、プリントヘッド1601を順次ワイピングしていく。そして、(C)に示すように、液体組成物吐出ヘッド1602がプリントヘッド用のブレード1616の手前(右隣)にきた時点で該ブレード1616が待機位置まで後退(下降)し、該ブレード1616と液体組成物吐出ヘッド1602との接触が防止される。
【0148】
更に、キャリッジ1603が左向きに移動して液体組成物吐出ヘッド1602がプリントヘッド用ブレード1616を通過した時点で、(D)に示すように、プリントヘッド用ブレード1616及び液体組成物吐出ヘッド用ブレード1617の両方を突出(上昇)させる。そして、キャリッジ1603の左向き移動に伴って、(E)に示すように、ブレード1617による液体組成物吐出ヘッド1602のワイピングとブレード1616による右端のプリントヘッド1601BBのワイピングを同時に行う。全てのヘッド1601、1602のワイピングが終了した後、(F)に示すように、両方のブレード1616、1617を後退(下降)させ、待機位置で待機させる。
【0149】
図16及び図17の実施例では、キャリッジ1603がプリント領域側(右側)から回復ユニット1611のあるホームポジション側へ移動するときに、ブレード1616、1617によるワイピングを行うようにしたが、ワイピング方向はこれに限定されるものではなく、ホームポジション側から右側(プリント領域側)へ移動する際にワイピングするようにしてもよい。
【0150】
図16のインクジェットプリント装置は、液体組成物吐出ヘッド1602からインク中の色材と反応性を有するような、本発明にかかる液体組成物を被プリント材1610に吐出し、各プリントヘッド1601から吐出されたインクと被記録媒体1610上で接触させて記録物を形成可能なように構成されている。被記録媒体1610上ではインク中の色材が液体組成物と反応することによって、インク中の色材が単分子状態で微粒子表面に吸着し、その微粒子によって画像の形成がなされるため、発色性や色の均一性に優れた画像が得られる。
【0151】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、文中、部及び%とあるのは特に断りのない限り重量基準である。
又、文中のゼータ電位は、微粒子の固形分濃度が0.1%になるように液体組成物をイオン交換水で分散させた後に、ゼータ電位測定機(ブルックヘブン社製、BI−ZETA plus、液温20℃、アクリルセル使用)で測定した値である。pHは、作成した液体組成物を測定用試料として、pHメーター計(堀場製作所(株)製、カスタニーpHメーターD−14)を用いて、液温25℃の条件下で測定した。液体組成物中の含有された微粒子の平均粒子直径は、微粒子の固形分濃度が0.1%になるよう液体組成物をイオン交換水で分散させた後に、動的光散乱法粒度分布計(ブルックヘブン社製、BI−90、液温20℃、アクリルセル使用)を用いて測定した。
【0152】
先ず、本発明で使用する液体組成物の作製方法について説明する。
以下に示す各成分を混合溶解した後、ポアサイズが1μmのメンブレンフィルター(商品名、フロロポアフィルター、住友電工(株)製〉にて加圧濾過し、本発明で使用する液体組成物A、B、C及びDを得た。
Figure 0003631129
【0153】
ここで、上記で用いたアルミナ水和物は、下記合成方法により得た。
(アルミナ水和物の合成例)
米国特許明細書第4,242,271号に記載の方法でアルミニウムドデキシドを製造した。次に、米国特許明細書第4,202,870号に記載された方法で、前記アルミニウムドデキシドを加水分解してアルミナスラリーを製造した。このアルミナスラリーをアルミナ水和物の固形分が7.9重量%になるまで水を加えた。アルミナスラリーのpHは9.3であった。3.9%の硝酸溶液を加えてpHを調整し、コロイダルゾルを得た。このコロイダルゾルを83℃でスプレードライすることによってアルミナ水和物を作製した。このアルミナ水和物は水中で表面がプラスに帯電し、カチオン性を示す。
【0154】
上記で得られた液体組成物AのpHは3.5であり、ゼータ電位は+39mVであった。又、インクタンクに液体組成物Aを充填し、60℃/Dry1ヶ月の保存試験を行い、その後にインクタンク内を目視によって観察したが、インクタンク内に沈降物は見られなかった。又、保存後のインクを用いて記録を行ったところ、記録ヘッドからの吐出安定性も良好であった。
【0155】
Figure 0003631129
ここで、上記コロイダルシリカは、表面にカチオン処理を施したもので、水中でカチオン性を示す。
【0156】
上記で得られた液体組成物BのpHは3.7であり、ゼータ電位は+68mVであった。又、インクタンクに液体組成物Bを充填し、60℃/Dry1ヶ月の保存試験を行い、その後にインクタンク内を目視によって観察したが、インクタンク内に沈降物は見られなかった。又、保存後のインクを用いて記録を行ったところ、記録ヘッドからの吐出安定性も良好であった。
【0157】
Figure 0003631129
上記で用いたアルミナ水和物は、液体組成物Aと同様のものを用いた。
【0158】
上記で得られた液体組成物CのpHは3.4であり、ゼータ電位は+39mVであった。又、インクタンクに液体組成物Cを充填し、60℃/Dry1ヶ月の保存試験を行い、その後にインクタンク内を目視によって観察したが、インクタンク内に沈降物は見られなかった。又、保存後のインクを用いて記録を行ったところ、記録ヘッドからの吐出安定性も良好であった。
【0159】
Figure 0003631129
ここで、上記コロイダルシリカは、液体組成物Bの場合と同様に、表面にカチオン処理を施したもので、水中でカチオン性を示すものを使用した。
【0160】
上記で得られた液体組成物DのpHは3.5であり、ゼータ電位は+68mVであった。又、インクタンクに液体組成物Dを充填し、60℃/Dry1ヶ月の保存試験を行い、その後にインクタンク内を目視によって観察したが、インクタンク内に沈降物は見られなかった。又、保存後のインクを用いて記録を行ったところ、記録ヘッドからの吐出安定性も良好であった。
【0161】
次に、本発明の実施例及び比較例で使用するインクサブセット1及び2の作製について説明する。
<インクサブセット1の作製>
下記に示す各成分を混合し、十分攪拌して溶解後、ポアサイズが0.45μmのフロロポアフィルター(商品名、住友電工(株)製)にて加圧濾過し、ブラック及びシアンの各染料インク、Bk1及びC1を得、これらの染料インクからなる組み合わせをインクサブセット1とした。
【0162】
[ブラックインクBk1]
・C.I.ダイレクトブラック195 2.5部
・2−ピロリドン 10部
・グリセリン 5部
・イソプロピルアルコール 4部
・水酸化ナトリウム 0.4部
・水 78.1部
【0163】
上記ブラックインクBk1のpHは9.8であった。又、ブラックインクBk1はpH依存型の染料で、染料の凝集開始pHは7.5(即ち、溶液のpHが7.5を下回ると染料は凝集をし始める)のインクである。又、上記液体組成物A、B、C及びDと、ブラックインクBk1とを1対1の重量比で混合した混合液のpHは、夫々、4.3、4.6、4.3及び4.5であった。
【0164】
Figure 0003631129
【0165】
上記で得られたシアンインクC1のpHは10.2であった。又、シアンC1はpH依存型の染料で、染料の凝集開始pHは、8.0(即ち、溶液のpHが8.0を下回ると染料は凝集を始める)のインクである。又、上記液体組成物A、B、C及びDと、シアンインクC1とを1対1の重量比で混合した混合液のpHは、夫々、4.9、5.1、4.7及び4.9であった。
【0166】
上記のようにして得られた液体組成物A〜Dと、インクサブセット1とを用いて、本発明のインクセットを構成し、PPC用紙(キヤノン製)に記録を行った。使用したインクジェット記録装置としては、図4に示したのと同様の記録装置を用い、図8に示した5つの記録ヘッドを用いてカラー画像を形成した。この際、液体組成物を先うちして先ず記録紙上に付着させ、その後インクを付着させた。具体的には、印字領域を3回の走査で印字する3パスファイン印字を行なった。この時液体組成物は、各パス毎に、シアン、ブラックのいずれかのインクが印字される画素位置に印字を行なった。即ち、各パス毎のシアン、ブラックの印字データの論理和を液体組成物の印字データとして用いた。尚、ファイン印字時のファインマスクの種類には特に制限はなく、公知の技術が利用可能であるので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0167】
ここで用いた記録ヘッドは、600dpiの記録密度を有し、駆動条件としては、駆動周波数9.6kHzとした。600dpiのヘッドを使用したときの1ドットあたりの吐出量はシアンインク及び液体組成物については夫々15ng、ブラックインクについては1ドットあたり30ngのヘッドを使用した。これらの記録条件は、以下に述べる染料インクを使用した場合の実施例及び比較例を通じて同一である。
【0168】
[実施例1〜実施例4]
上記で得られた液体組成物A、B、C、Dと、インクサブセット1(Bk1及びC1)の各色インクを用いて印字を行った。各記録条件を表1に示す。
【0169】
Figure 0003631129
【0170】
[比較例1、2]
<インクサブセット2の作製>
下記に示す各成分を混合し、十分攪拌して溶解後、ポアサイズが0.45μmのフロロポアフィルター(商品名、住友電工(株)製)にて加圧濾過し、ブラック及びシアンの各染料インク、Bk2及びC2を得、この記録液をインクサブセット2とする。
【0171】
[ブラックインクBk2]
・フードブラック2 2.5部
・2−ピロリドン 10部
・グリセリン 5部
・イソプロピルアルコール 4部
・水酸化ナトリウム 0.3部
・水 78.2部
【0172】
上記で得られたシブラックインクBk2のpHは9.5であった。上記液体組成物AとブラックインクBk2とを1対1の重量比で混合した混合液のpHは、4.2であった。尚、ブラックインクBk2の場合は、染料の凝集開始pHは存在しない。
【0173】
Figure 0003631129
【0174】
上記で得られたシアンインクC2のpHは10.0であった。上記液体組成物AとシアンインクC1とを1対1の重量比で混合した混合液のpHは、4.8であった。尚、シアンインクC2の場合は、染料の凝集開始pHは存在しない。
【0175】
インクサブセット1と2、液体組成物Aを用いて印字を行った。各記録条件を表2に示す。
上記インクサブセット1及びインクサブセット2のみを用いた記録(比較例1及び2)において用いた記録ヘッドは、600dpiの記録密度を有し、駆動条件としては、駆動周波数9.6kHzとした。600dpiのヘッドを使用したときの1ドットあたりの吐出量は、シアンインクについては夫々約15ng、ブラックインクについては1ドットあたり約30ngのヘッドを使用し、実施例1〜4の場合と同条件で記録を行った。
【0176】
Figure 0003631129
【0177】
[評価]
実施例1〜実施例4及び比較例1及び2で得られた夫々の記録画像について、下記の評価方法及び評価基準で評価を行った。その結果を表3に示した。
【0178】
<記録画像の評価方法及び評価基準>
(1)発色性
プリンターを用いてシアンインクの中間調のパッチパターンを印字した。具体的には、印字比率を10%ずつ上げた中間調のパッチパターンを、ベタパッチまで10パッチ印字し、各パッチを測色した。
そして、発色性の評価は、各パッチの彩度値を計算し行なった。詳細には、比較例2の彩度値を基準として各実施例、比較例の対応パッチの彩度値の比率を計算し平均した。その際、印字画像の画像処理は同一条件とし、測色は、印字後24時間経過後、GRETAGスペクトロリノで光源:D50、視野:2°の条件で測定した。測色値はCIEのL値で出力し、彩度値はa、b各値の2乗値の和の平方根とした。
尚、インクジェット用コート紙(商品名:カラーBJ用紙LC−101、キヤノン(株)製)を用いてインクサブセット1で印字し、比較例2の印字物との平均彩度比を求めた所、1.2倍であった。
【0179】
評価基準は、以下の通りである。
A:平均彩度比が1.15倍超
B:平均彩度比が1.00超〜1.15倍以下
C:平均彩度比が1.00倍以下
【0180】
(2)ブリーディング
プリンターを用いて、シアンとブラックのベタ画像を隣接して印字した後、色間境界部のブリーディングを目視で評価した。
評価基準は、以下の通りである。
A:ブリーディングを視認できない。
B:ブリーディングは殆ど目立たない。
C:ブリーディングはしているが、実質上問題のないレベルである。
D:色の境界紙がハッキリしないほどブリーディングしている。
【0181】
(3)均一性
前記したプリンターを用いて、シアンとブラックインクのベタ画像を印字した後、目視にて、白モヤと色ムラに関して色の均一性を評価した。特に均一性の悪い色を評価対象とした。評価基準は、以下の通りである。
A:白モヤや色ムラは殆ど発生しない。
B:若干紙の繊維に沿って白モヤや色ムラが見えるが、実質上問題のないレベルである。
C:紙の繊維に沿って著しく白モヤや色ムラが見える。
【0182】
(4)耐擦過性
前記したプリンターを用いて、シアンとブラックインクのベタ画像を印字した。印字して16時間後、印字部の上にシルボン紙を重ね、更にその上に3.5cm×3.5cmの分銅を載せ、40g/cmの圧力をかけながら15cm/sec.の速度でシルボン紙を引張って印字部の耐擦過性を評価した。特に耐擦過性の悪い色を評価対象とした。評価基準は以下の通りである。
A:インク落ちは殆ど発生しない。
B:若干インクがシルボン紙に付着するが、印字部の色落ちは目立つレベルではない。
C:インクがシルボン紙に多く付着し、明確に印字部の色落ちが生じる。
【0183】
(5)風合い
前記したプリンターを用いて、シアンとブラック各色のインクのベタ画像を印字した後、目視にて被記録媒体の風合いを評価した。評価基準は、以下の通りである。
A:印字部及び未印字部共に違和感がなく普通紙の風合いを残している。
B:印字部と未印字部で風合いが異なる、又は被記録媒体全体が普通紙の風合いと大きく異なる。
【0184】
Figure 0003631129
【0185】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、色境界部においてブリーディングが抑制され、コート紙並みの広い色再現範囲を有し、シャドウ部やベタ部等のインク付与量が多い画像領域においても白もやや色ムラが少なく、色の均一性に優れた記録画像を提供することが可能な液体組成物と水性インクを組み合わせたインクセット、被記録媒体への着色部の形成方法及びインクジェット記録装置が提供される。
又、本発明によれば、特に、普通紙に対するカラーインクジェット記録を行った場合に、普通紙の風合いを残しながらインクジェット用コート紙並みの優れた発色性と色の均一性が得られ、且つ、ベタ画像部のスジムラが少なく、印字部の耐擦過性に優れたインクジェット記録画像が得られる。更に、本発明によれば、保存安定性や記録ヘッドからの吐出安定性にも優れたインクジェット記録特性に優れるインクセットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】インクジェット記録装置のヘッド部の縦断面図である。
【図2】インクジェット記録装置のヘッド部の横断面図である。
【図3】インクジェット記録装置のヘッド部の外観斜視図である。
【図4】インクジェット記録装置の一例を示す斜視図である。
【図5】インクカートリッジの縦断面図である。
【図6】記録ユニットの斜視図である。
【図7】本発明の実施例で使用した複数の記録ヘッドが配列した記録ユニットを示した斜視図である。
【図8】本発明に使用する別の記録ヘッドの斜視図である。
【図9】コート紙にインクジェット記録を行なったときの着色部の状態を説明する模式的断面図である。
【図10】インク染料の溶解度と溶液pHの関係を説明する説明図である。
【図11】本発明にかかるインクカートリッジの一実施態様を示す該略図である。
【図12】図11のインクカートリッジを装着した記録ヘッドの該略図である。
【図13】本発明にかかる記録ユニットの一実施態様を示す該略図である。
【図14】本発明にかかるインクジェット画像の着色部の状態を説明する模式的断面図である。
【図15】本発明にかかるインクジェット記録画像の着色部の形成過程を示す概略図である。
【図16】本発明にかかるインクジェットプリント装置の一つの実施態様を模式的に示す一部破断斜視図である。
【図17】図16のインクジェットプリント装置のワイピング動作を示す模式図であり、(A)はインク用ブレードの上昇、(B)はプリントヘッドのワイピング、(C)はインク用ブレードの下降、(D)は液体組成物が適正位置についた後の両ブレードの上昇、(E)は液体組成物と第2のブラックインク用ヘッドのワイピング、(F)は両ブレードの下降をそれぞれ示す。
【符号の説明】
13:ヘッド
14:溝
15:発熱ヘッド
16:保護膜
17−1:アルミニウム電極
17−2:アルミニウム電極
18:発熱抵抗体層
19:蓄熱層
20:基板
21:インク
22:吐出オリフィス
23:メスニカス
24:インク小滴
25:被記録材
26:マルチ溝
27:ガラス板
28:発熱ヘッド
40:インク袋
42:栓
44:インク吸収体
45:インクカートリッジ
51:給紙部
52:紙送りローラ
53:排紙ローラ
61:ブレード
62:キャップ
63:インク吸収体
64:ヘッド回復部
65:記録ヘッド
66:キャリッジ
67:ガイド軸
68:モータ
69:ベルト
70:記録ユニット
71:ヘッド部
72:大気連通孔
81〜84:記録ヘッド
85:液体組成物吐出ヘッド

Claims (16)

  1. 凝集開始pHを有する色材を含むアニオン性若しくはカチオン性の水性インクと、該インクとは逆の極性に表面が帯電している微粒子を分散状態で含む液体組成物とを独立して有するインクセットであって、上記インク及び上記液体組成物は、各々を略1対1の重量比で混合したときの混合液のpHが、少なくとも上記色材の凝集を引き起こすpHとなるように調整されていることを特徴とするインクセット。
  2. 液体組成物中の微粒子が、水性インクと混合された時に、色材の凝集を防ぎつつ微粒子表面に色材を吸着するものである請求項1に記載のインクセット。
  3. 液体組成物中の微粒子が、水性インクと混合された時に、インク中の色材を単分子状態で該微粒子表面に吸着する請求項1に記載のインクセット。
  4. 凝集開始pHを有する色材を含む水性インクと表面がカチオン性に帯電している微粒子を分散状態で含む液体組成物とを独立して有するインクセットであって、該インクが下記i)〜iii)のいずれかを含有し、
    i)アニオン性基を有する水溶性染料、
    ii)顔料とアニオン性基を有する顔料分散剤、
    iii)顔料表面にアニオン性基が直接若しくは他の原子団を介して結合されている顔料、
    且つ、該インク及び該液体組成物は、各々を略1対1の重量比で混合したときの混合液のpHが、少なくとも上記色材の凝集を引き起こすpHとなるように調整されていることを特徴とするインクセット。
  5. 前記アニオン性基がカルボン酸基である請求項4に記載のインクセット。
  6. 液体組成物のゼータ電位が、+5〜+90mVである請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクセット。
  7. 液体組成物が水中での一次解離定数pKaが5以下である酸を含み、pHが2以上7未満に調整されている請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクセット。
  8. 凝集開始pHを有する色材を含む水性インクと表面がアニオン性に帯電している微粒子を分散状態で含む水性の液体組成物とを独立して有するインクセットであって、該インクが下記i)〜iii)のいずれかを含有し、
    i)カチオン性基を有する水溶性染料、
    ii)顔料とカチオン性基を有する顔料分散剤、
    iii)顔料表面にカチオン性基が直接若しくは他の原子団を介して結合されている顔料、
    且つ、該インク及び該液体組成物は、各々を略1対1の重量比で混合したときの混合液のpHが、少なくとも上記色材の凝集を引き起こすpHとなるように調整されていることを特徴とするインクセット。
  9. 液体組成物のゼータ電位が、−5〜−90mVである請求項1〜3及び8のいずれか1項に記載のインクセット。
  10. 液体組成物が水中での一次解離定数pKbが5以下である塩基を含み、pHが7より大きく12以下に調整されている請求項1〜3、8及び9のいずれか1項に記載のインクセット。
  11. 液体組成物の微粒子の平均粒子直径が、0.005〜1μmの範囲である請求項1〜10のいずれか1項に記載のインクセット。
  12. インクが、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインク、レッドインク、ブルーインク及びグリーンインクから選ばれる少なくとも1つである請求項1〜11のいずれか1項に記載のインクセット。
  13. 前記インク及び前記液体組成物がインクジェット記録用である請求項1〜12のいずれか1項に記載のインクセット。
  14. 水性インクの液滴と、液体組成物の液滴とが、被記録媒体上において、液−液状態で接している状態が形成されるように両液滴を被記録媒体に向けて吐出させる工程を有する被記録媒体への着色部の形成方法であって、 上記水性インクと上記液体組成物が請求項1〜13のいずれか1項に記載のインクセットに含まれる水性インクと液体組成物であることを特徴とする被記録媒体への着色部の形成方法。
  15. 前記液体組成物の液滴の被記録媒体への付与、及び、前記水性インクの液滴の被記録媒体への付与の少なくとも一方を、記録信号に応じてオリフィスから吐出させて行うインクジェット記録方法によって行う請求項14に記載の形成方法。
  16. 凝集開始pHを有するアニオン性若しくはカチオン性の色材を含むインクと、該色材との反応性を有する微粒子を分散状態で含む液体組成物とを独立して有するインクセットであって、
    上記液体組成物中の微粒子は、上記インク及び上記液体組成物が互いに液体の状態で混合されたときに、該微粒子の表面にインク中の色材を該色材がインク中で有していた分子状態を維持しつつ吸着若しくは結合させるものであり、且つ、上記インク及び上記液体組成物を混合して液−液反応させたときの混合液のpHが上記色材の凝集を引き起こすpHとなるように調整されていることを特徴とするインクセット。
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