JP3559762B2 - 液体組成物、及び、それを用いたインクセット及び画像形成方法 - Google Patents

液体組成物、及び、それを用いたインクセット及び画像形成方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カラー画像の形成において発色性と色の均一性に優れた画像を形成し得る技術に関し、とりわけ、インクジェット記録方式を利用した画像形成に最適に使用される液体組成物、及び、これを用いたインクセット及び画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方法は、インクを飛翔させ、紙等の被記録媒体にインクを付着させて記録を行うものである。特に、特公昭61−59911号公報、特公昭61−59912号公報及び特公昭61−59914号公報において開示された、吐出エネルギー供給手段として電気変換体を用い、熱エネルギーをインクに与えて気泡を発生させることにより液滴を吐出させる方式のインクジェット記録方法によれば、記録ヘッドの高密度マルチオリフィス化を容易に実現することができ、高解像度及び高品位の画像を高速で記録することができる。
【0003】
ところで、従来のインクジェット記録方法に用いられるインクは、水を主成分とし、これにノズル内でのインクの乾燥防止、ノズルの目詰まり防止等の目的でグリコール等の水溶性高沸点溶剤を含有している水系インクが一般的である。そのため、このようなインクを用いて、紙等の被記録媒体に記録を行った場合には、十分な定着性が得られなかったり、被記録媒体として、記録紙を用いた場合には、表面における填料やサイズ剤の不均一な分布によると推定される不均一画像の発生等の問題を生じることがある。
一方、近年は、インクジェット記録物に対しても、銀塩写真と同レベルの高い画質を求める要求が強くなっており、インクジェット記録画像の画像濃度を高めること、色再現領域を広げること、更には、記録物の色の均一性を向上させること、等に対する技術的な要求が非常に高くなっている。
【0004】
このような状況下、インクジェット記録方法の安定化、更には、インクジェット記録方法によって得られる記録物の品質向上を図るために、これまでにも種々の提案がなされてきている。被記録媒体に対する提案のうちの一つとして、被記録媒体の基紙表面に、充填材やサイズ剤を塗工する方法が提案されている。例えば、充填材として色材を吸着する多孔質微粒子を基紙に塗工し、この多孔質微粒子よってインク受容層を形成する技術が開示されている。かかる技術を用いた被記録媒体として、インクジェット用コート紙等が販売されている。
【0005】
又、被記録媒体に噴射される記録液(インク)に関する技術提案のうちの一つとして、インク及び該インクと反応する処理液を用い、被記録媒体上で該インクと該処理液とが反応するようにして、被記録媒体上にこれらを付与する方法が提案されており、この技術を用いたインクジェットプリンタが販売されている。
【0006】
具体的には、例えば、特開昭63−60783号公報には、塩基性ポリマーを含有する液体組成物を付着させた後、アニオン性の染料が含有されたインクを付着させることによって記録する方法が開示されており、特開昭63−22681号公報には、反応性化学種を含む第1の液体組成物と該反応性化学種と反応を起こす化合物を含む液体組成物とを被記録媒体上で混合する記録方法が開示されており、更に、特開昭63−299971号公報には、1分子当たり2個以上のカチオン性基を有する有機化合物を含有する液体組成物を被記録媒体上に付与した後、アニオン性の染料を含有するインクで記録する方法が開示されている。又、特開昭64−9279号公報には、コハク酸等を含有した酸性液体組成物を被記録媒体上に付与した後、アニオン性の染料を含有するインクで記録する方法が開示されている。又、更に、特開昭64−63185号公報には、インク中に含有されている染料を不溶化させる液体組成物をインクの記録に先立って付与するという方法が開示されている。
【0007】
更に、特開平8−224955号公報では、分子量分布領域の異なる第1のカチオン性物質を含む液体組成物を、アニオン性の色材を含むインクと共に用いる方法が開示され、又、特開平8−72393号公報では、カチオン性物質と微粉砕セルロースとを含む液体組成物をインクと共に用いる方法が提案されており、いずれも画像濃度が高く、印字品位、耐水性が良好で、色再現性、ブリーディングにおいても問題のない良好な画像が得られることが記載されている。又、特開昭55−150396号公報では、被記録媒体上に染料インクで記録した後に染料とレーキを形成する耐水化剤を付与する方法が開示され、記録画像に耐水性を付与することが提案されている。
【0008】
一方、インクジェット記録における他の技術課題として、ブリードの発生の問題がある。即ち、マルチカラー画像をインクジェット記録法で形成しようとした場合には、複数の、異なる色のインクが被記録媒体上で次々と重ねられることから、異色の画像の境界部分で色が滲んだり、不均一に混ざりあってしまう所謂ブリードという問題がある。
【0009】
これに対し、被記録媒体(記録紙等)へのインクの定着性を早める手段として、特開昭55−65269号公報に、インク中に界面活性剤等の浸透性を高める化合物を添加する方法が開示されている。又、特開昭55−66976号公報には、揮発性溶剤を主体としたインクを用いることが開示されている。しかし、インク中に界面活性剤等を添加する前者の方法では、被記録媒体へのインクの浸透性が高まり、インクの定着性やブリードの抑制についてはある程度の向上が図られるものの、インク中の色材も被記録媒体の奥深くまで浸透してしまうため、画像濃度及び彩度が低下する等の不都合が生じる。
【0010】
(背景技術)
・コート紙の画像の検討
先に述べた基紙表面に充填材やサイズ剤を塗工して得られる被記録媒体(以降コート紙と呼ぶ)は、高品質な画像を形成することができる技術として認知されている。一般に、高彩度の画像を得るためには、色材を凝集させずに単分子状態で被記録媒体表面に残すことが必要であることは知られており、コート紙の多孔質微粒子には、このような機能がある。しかしながら、与えられたインク中の色材に対して、画像濃度と画像彩度とを同時に高めるためには、多量の多孔質微粒子を用い、基紙を覆い隠すような厚いインク受容層の形成が不可欠となり、結果として、基紙の質感が損なわれてしまうという問題点があった。本発明者らは、このように、基紙本来の質感を失う程のインク受容層が必要なのは、インク中の色材が、インク受容層を形成している多孔質微粒子に効率的に吸着されていないことに起因すると推測した。
【0011】
一層のインク受容層を有するコート紙を想定して、以下に説明する。図9は、コート紙表面付近の断面を模式的に示したものである。同図において、901は基紙であり、903はインク受容層を示す。一般に、インク受容層903は、多孔質微粒子905とそれらを固定化するための接着剤907を有する。インクがコート紙に付与されると、インクは多孔質微粒子905間の空隙を毛管現象によって浸透し、インク浸透部909を形成する。同図にも示しされているように、インク受容層での多孔質微粒子は局所的に密度が異なるため、この毛管現象によるインクの浸透の仕方は場所によって異なる。このため、インクの浸透過程において、色材は多孔質微粒子表面に均一には接触できず、色材が効率的には多孔質微粒子に吸着されないことが生じる。
【0012】
更に、インク受容層中に含まれる接着剤907によってインクの浸透が阻害される部分も生じており、インク受容層903内にはインクが浸透できない部分が存在し、発色には寄与しない部分が発生する。即ち、従来のコート紙においては、上記のような理由により、多孔質微粒子の量に対して効率的に色材を単分子状態で吸着することができず、この結果、高品質の画像を得るためには多量の多孔質微粒子が必要となり、基紙の質感を損なう原因となっていた。
本発明者らは、以上のような新たな知見に基づき、色材を吸着する作用を有する微粒子を用い、且つ、該微粒子に効率的に色材を吸着させるために、微粒子を液相に分散させ、これを色材を有するインクと共に液体状態で用いることにより、色材と微粒子とを液−液状態で反応させることを可能とし、この結果、得られる画像の濃度と彩度とを共に向上させることができることを見出した。
【0013】
先に述べたように、インクジェット記録における他の技術課題として、特にマルチカラー画像を得ようとした場合に、複数の異なる色のインクが次々と重ねられることから、異色の画像の境界部分で色が滲んだり、不均一に混ざり合ってしまうブリードの発生という問題があった。これに対し、本発明者らは、上記した微粒子に効率的に色材を吸着させて画像濃度及び彩度の向上を図る技術をベースとして、このブリードの発生の問題をも解決できる技術の検討を重ねてきた。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
以上に記載したような、技術的背景に鑑み、本発明者らは、次のような目的を設定するに至った。
即ち、得られる画像の濃度の向上と彩度の向上の両立に貢献せしめるためには、従来よりも、与えられたインク(特にインク中の色材)を効率よく微粒子に吸着させることが重要である。従って、本発明の目的は、被記録媒体上で、かかる状態を実現することができ、被記録媒体の質感を損なうことなく、高濃度で、しかも高彩度を有するインクジェット記録画像を形成することのできるインクセットを提供することにある。
【0015】
又、本発明の他の目的は、複数の異なる色のインクを被記録媒体上に付与し、異なる色の画像が接する境界領域を有するマルチカラー画像を形成したときに、該境界領域におけるブリードの発生を緩和することのできるインクセットを提供することにある。
【0016】
又、本発明の他の目的は、被記録媒体の質感を損なうことなく、高濃度で、しかも彩度の高い、そして、マルチカラー画像を形成したときにも異なる色の画像の境界領域においてもブリードが目立たない、若しくは殆ど認識できないような高品位なインクジェット記録画像を形成することのできる画像形成方法を提供することにある。
【0017】
、本発明の他の目的は、高濃度で彩度の高く、マルチカラー画像における異色画像が接している領域におけるブリードが充分に緩和されているインクジェット記録画像、及びこのような画像が得られる画像のブリード緩和方法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、以下の本発明によって達成される。即ち、本発明は、第1のカチオン性物質と、該第1のカチオン性物質とは異なる第2のカチオン性物質の2種類のカチオン性物質を含有している液体組成物であって、上記第1のカチオン性物質は、少なくとも表面がカチオン性に帯電しているカチオン性微粒子(色材を除く)であることを特徴とする液体組成物である。
【0019】
又、本発明は、色材を含むアニオン性の水性インクと共に被記録媒体に印刷する際に用いられ、該被記録媒体上で上記水性インクと混合された場合に反応するカチオン性物質を有する液体組成物であって、カチオン性物質として、第1のカチオン性物質と該第1のカチオン性物質とは異なる第2のカチオン性物質の2種類のものを含み、且つ、上記第1のカチオン性物質は、少なくとも表面がカチオン性に帯電しているカチオン性微粒子(色材を除く)であることを特徴とする液体組成物である
、本発明の実施形態は、上記において、液体組成物に含まれる前記第2のカチオン性物質が、水溶性金属塩である場合、前記水溶性金属塩の1%水溶液が酸性である液体組成物が好ましい。
更に又、本発明の実施形態は、上記において、液体組成物に含まれる前記第2のカチオン性物質が、水溶性金属塩である場合、前記第1のカチオン性物質と前記第2のカチオン性物質との重量比が10:1〜1000:1である液体組成物が好ましい。
【0020】
又、本発明は、上記の液体組成物と色材を含有するインクと組み合わせたインクセットであって、該インクが下記i)〜 iii )のいずれかを含有することを特徴とするインクセット
i)アニオン性基を有する水溶性染料
ii )顔料と該顔料の分散剤であるアニオン性化合物
iii )顔料表面にアニオン性基が直接若しくは他の原子団を介して結合されている顔料
【0021】
又、本発明は、上記の液体組成物とアニオン性の色材を含有するインクとを、両者が互いに被記録媒体上で接する状態となるようにして付与される過程を有することを特徴とする画像形成方法である。
画像形成方法の好ましい実施の形態としては、上記において、
1)前記過程が、液体組成物を被記録媒体に付与した後に、インクを上記液体組成物と接するように付与する過程である画像形成方法
2)前記過程が、インクを被記録媒体に付与した後に、液体組成物を上記インクと接するように付与する過程である画像形成方法
等が挙げられる。
【0031】
上記したような本発明にかかる種々の態様によって、上記した目的が達成できる理由は明らかでないが、以下のように考えられる。
前記した通り、本発明によって高発色の画像が得られる原理の1つは、色材分子と微粒子との静電的な吸着力を利用して、色材をレーキさせることなく分散定着させたことによる。一方で、ブリードと耐水性は、色材をレーキさせることで実現される。これらは、一見相反する原理であるが、双方の反応を互いに阻害しないバランスで使いこなすことで、発色性とブリード、耐水性の両立が実現されていると思われる。
【0032】
これを証明するために本発明者らは以下の実験を行なった。本発明を具現化する液体組成物の中から本発明で言うところの第2のカチオン性物質を除いた液体組成物を調製し、該液体組成物をインクと混合させ、この時に微粒子に吸着されている染料分子の比率を調べた。微粒子やインクの種類、組成によって該比率は前後するが、微粒子に吸着されている染料分子はおよそ1/3程度であることが確認された。言い換えれば、インク中に含まれる1/3程度の染料分子を紙表層部に染料分子単体で分散できれば高発色特性は十分に得られることが分かった。この時、カチオン性微粒子によって拘束を受けていない残りの2/3の染料分子は紙の深部に浸透していき定着するが、浸透の遅い普通紙の場合にあっては隣接画像領域にインクが流れ出してしまう場合がある。これがブリードをもたらす可能性がある。この流れ出しが適度であれば、スジムラ等の解消に有効であるものの、ブリードを確実に緩和するためには、カチオン性微粒子との反応に関与しない色材の流れ出しを制御することが重要である。又、画像記録部に水がかかると、位置拘束力を受けていない染料分子は流れ出す場合がある。又、微粒子自体も位置拘束されていないので条件によっては微粒子の一部が染料分子を吸着したまま流れ出す場合もあった。これが一部の普通紙でブリード、耐水性が優れなかった理由であると考えている。
【0033】
以上の結果から、高発色の実現に必要な量の色材分子を微粒子に吸着させて記録紙表層部で単分子定着させると共に、微粒子に吸着されていない残りの色材分子をカチオン性化合物でレーキし、その位置を拘束させることで、得られる記録画像に対し、高発色性とブリードの緩和、耐水性能を同時に実現させることができるとの考えに至った。事実、カチオン性微粒子とカチオン性の物質とを双方バランスよく含有させた液体組成物を用いることにより、高発色、ブリード抑制、耐水性の向上の各効果が見られた。
【0034】
又、カチオン性の化合物として水溶性金属塩を用いた場合は、例えば、これと比較して分子量の大きいカチオン性のポリマー(以下単に、高分子のカチオン性ポリマーと呼ぶ)を用いた場合と比べると、分子量が小さいために色材の過度の凝集が起こりにくい上に、水溶性金属塩を単独で用いるよりも微粒子と併用することによって色材の位置拘束能が高まるので、かかる水溶性金属塩を有する液体組成物を使用することによって、より効果的に、高発色性、耐水性の向上、ブリードの抑制が達成できることがわかった。
【0035】
更に又、カチオン性の水溶性金属塩を用いることによって、液体組成物の保存性の向上、特に、低温環境下での粘度上昇によるチキソトロピー性の発現を抑制するという別の効果があることがわかった。その理由は定かではないが、恐らく液体組成物中で、水溶性金属塩が微粒子表面に何らかの影響を与えて、微粒子の静電反発力を向上させることによって、低温環境下での分散性を向上させるものと考えられる。又、カチオン性の水溶性金属塩が水中で酸性を呈するものである場合は、微粒子を分散させるにあたり微粒子表面のイオン化を促して分散させるための酸を添加する量を抑制若しくは不要とすることが可能となるので、耐腐食性や安全性の点でより好ましい。
本発明者らが検討を重ねた結果、実験的に、液体組成物中の微粒子とカチオン性の水溶性金属塩のバランスは、[カチオン性の水溶性金属塩の総量]<[微粒子の総量]が望ましいことが分かった。更には、上記比率が1/5以下であるバランスで使用することが好ましい(但し、総量は重量%)。
【0036】
【発明の実施の形態】
次に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明をより詳細に説明する。
先ず、以下に、本発明によって得られる、少なくとも表面がカチオン性に帯電しているカチオン性微粒子である第1のカチオン性物質と、該第1のカチオン性物質とは異なる第2のカチオン性物質の2種類のカチオン性物質を含有している液体組成物と、アニオン性の色材を含有するインクとを、両者が互いに被記録媒体上で接する状態となるようにして付与することで形成される記録画像について説明する。
【0037】
ここで、説明に先立ち、言葉の定義を行う。本発明において、「単分子状態」とは、染料や顔料等の色材が、インク中で溶解若しくは分散した状態をほぼ保っていることを指している。このとき、色材が多少の凝集を引き起こしたとしても、彩度が低下しない範囲であれば、この「単分子状態」に含まれることとする。例えば、染料の場合、単分子であることが好ましいと考えられるため、便宜上染料以外の色材についても「単分子状態」と呼ぶこととする。
【0038】
先ず、上記記録画像における液体組成物に含有されている第1のカチオン性物質であるカチオン性微粒子の役割を説明する。
図11は、本発明にかかる記録画像の着色部Iが、主画像部IMとその周辺部ISとから成り立っている状態を模式的に示した図である。図11において、1101は被記録媒体、1102は被記録媒体の繊維間に生じる空隙を示す。又、1103は、色材1105が化学的に吸着する微粒子を模式的に示したものである。
図11に示したように、本発明のインクジェット記録画像では、主画像部IMは、色材1105が、単分子或いは単分子に近い状態(以降、「単分子状態」と略す)で均一に表面に吸着した微粒子1103と、色材の単分子状態を保持した微粒子の凝集物1107とで構成されている。1109は、主画像部IM内の被記録媒体繊維近傍に存在する微粒子同士の凝集物である。主画像部IMは、被記録媒体繊維に微粒子1103が物理的又は化学的に吸着する過程と、色材1105と微粒子1103とを液−液状態で吸着する過程によって形成されたものである。そのため、色材自体の発色特性が損なわれることが少なく、普通紙等のインクの沈み込み易い被記録媒体においても、画像濃度や彩度が高く、コート紙並みの色再現範囲の広い画像の形成が可能となる。
【0039】
一方、微粒子表面1103に吸着に関与しない色材は、液体組成物中のカチオン性化合物と反応し、凝集体1111を形成する。これによって、微粒子との反応に関与しない色材の画像形成部における挙動を制御することができる。これが本態様がブリードの抑制効果を奏する理由の一つであると考えられる。
ところで、発色性の向上のためには、色材を単分子状態で画像形成部に存在させることが好ましいことは先に述べた。そして、画像形成部における色材の凝集物の存在は、発色性の向上という観点からは必ずしも好ましいものではないが、本態様においては、画像形成部に凝集物1111を形成させた場合にも微粒子を用いたことによる発色性の向上効果を阻害するものではなかった。それは、色材の凝集体1111が色材を単分子状態で吸着若しくは結合している微粒子の間隙に存在していること、そして色材とカチオン性化合物との反応は、色材とカチオン性微粒子との反応よりも速度的に速く、凝集物1111が色材を吸着、結合した微粒子よりも先に沈降するため、画像を形成している着色部の下部に比較的多く存在しているためではないかと考えている。
【0040】
図10(1)〜(4)は、本発明のインクジェット記録画像形成方法の一実施態様の着色部1000の概略断面図及びその形成過程を説明するための模式的な概略図である。同図において、1001はインクと液体組成物との反応物、例えば、色材と微粒子の反応物を主として含む部分(以降「反応部」と略す)であり、図11の主画像部IMに相当する部分である。1002は、液体組成物との反応に実質的に関与しなかったインクが、反応部1001の辺縁に流出することによって形成された部分(以降「インク流出部」と略す)であり、図11の周辺部ISに相当する。かかる着色部1000は、例えば、以下のようにして形成される。尚、同図に示した1005は、被記録媒体の繊維間に生じる空隙を模式的に表したものである。
【0041】
先ず、色材1004と反応性を有する液体組成物1006が液滴として被記録媒体1003に付与され(図10(1))、その結果、液体組成物の液溜り1007が形成される(図10(2))。該液溜り1007内で、被記録媒体の繊維表面の近傍の微粒子1209は、被記録媒体の繊維表面に物理的又は化学的に吸着する。この時、分散状態が不安定となって微粒子同士の凝集物1011を形成するものもあると考えられる。一方で、液溜り1007内の繊維より離れた部分では、微粒子1009は、もとの分散状態を保っていると考えられる。
【0042】
次いで、インク1013が、液滴として被記録媒体1003に付与される(図10(2))。その結果、先ずインク1013と液溜り1007の界面において色材1004は、微粒子1009に化学的に吸着する。この反応は、液同士の反応(液−液反応)であるため、色材1004は単分子状態で、微粒子1009の表面に均一に吸着すると考えられる(図10(3)−2)。即ち、微粒子表面近傍では、色材同士は凝集を起こさないか、或いは凝集しても僅かであると推測される。その結果、反応部1001の表層部に単分子状態で色材1004が吸着された微粒子が多数形成され、発色に最も影響を与える表面層に色材を単分子状態で残存させることができるため、高画像濃度であって且つ彩度の高い記録画像を形成する。
【0043】
次いで、これら色材1004が吸着した微粒子は、分散状態が不安定となるため微粒子同士で凝集すると考えられる(図10(3)−2)。即ち、ここで形成された凝集物1015は、その内部にも単分子状態の色材を保持している。この凝集物1015により、高画像濃度、且つ、高彩度の記録画像が形成される。
更に、未反応の色材1004の一部は、液溜り1007内を拡散し、未反応の微粒子1009表面に吸着する。このように、液溜り1007内部で更に反応が進行するため、より高濃度で彩度の高い画像が形成される。先に説明した被記録媒体の繊維表面に形成された微粒子の凝集物1011には、液溜り1007の液相が被記録媒体内への浸透を抑制する役割があると考えられる。このため、液溜り1007では、浸透が抑制された液体組成物中の微粒子1009と色材1004とがより多く混在することが可能となる。これにより、色材1004と微粒子1009との接触確率が高められ、反応が比較的均一に、且つ充分に進行し、その結果、より均一で、画像濃度で彩度の高い画像が形成される。
【0044】
又、液体組成物1006が被記録媒体1003に付与された際(図10(1))や、液溜り1007にインク1013が付与された際には(図10(2))、微粒子1009を分散させている分散媒が変化することによって微粒子1009の分散が不安定となり、色材1004が吸着する前に微粒子1009間で凝集を起こすものも存在する。ここでいう分散媒の変化とは、2種若しくはそれ以上の異種の液体が混合したときに一般的に観察される変化、例えば、液相のpHや固形分濃度、溶剤組成、溶存イオン濃度等の物性変化を指し、液体組成物が被記録媒体やインクと接触した際にこれらの変化が急激且つ複合的に生じて、微粒子の分散安定性を破壊し凝集物を生成するものと考えられる。これらの凝集物は、空隙を埋める効果や、色材を吸着した微粒子を、より被記録媒体表面近傍に残存させる効果をもたらすと推測される。又、これら液溜り1007内で形成された凝集物は、被記録媒体に吸着しているものもあれば、液相内を動ける(流動性を有する)ものも存在する。流動性を有するものは、前述の色材と微粒子との反応過程と同様に、微粒子凝集物表面に色材が単分子状態で吸着し、より大きな凝集塊を形成し、これが発色性の向上に寄与しているものである。液相が繊維に沿って浸透する際に液相と共に移動し、空隙を埋めて被記録媒体表面を平滑化し、より均一で高濃度の画像の形成に寄与すると考えられる。
【0045】
本発明によって高発色の画像が得られることは、後述の結果により明らかであるが、これは、上記したように、色材が単分子状態で微粒子に吸着され、その状態で被記録媒体表面に残ったためであると考えられる。色材が単分子状態で吸着し、被記録媒体表面に残った微粒子は被記録媒体表面に定着する。これにより、堅牢性が向上する。尚、これまで、液体組成物及びインクの順で、被記録媒体に付与した場合で説明してきたが、インクと液体組成物との液―液の混合が達成されるのであれば、液体組成物とインクとの被記録媒体への付与順はこれに何ら限られるものでなく、インク、液体組成物の順であってもよい。
【0046】
更に、図10(2)にも示した通り、被記録媒体に付与した液体組成物中の微粒子の少なくとも一部は、液媒体の被記録媒体内部への浸透に伴って、被記録媒体内部に浸透していると考えられる。他方、図10(4)に示したようにインク中の色材も、その全てが被記録媒体上の微粒子に吸着若しくは結合される訳ではなく、インクの液媒体の浸透に伴って、被記録媒体内部に浸透していく。その過程で、図10(4)に明示したように、色材が、先に浸透している微粒子に、単分子状態で吸着若しくは結合していることを想定し得ることである。このように被記録媒体内部において、色材が単分子状態で吸着若しくは結合している微粒子も、発色性の向上に寄与していることが考えられる。更にこのような液媒体の浸透により、定着性も向上すると考えられる。
【0047】
一方、液体組成物の液滴1006中の第2のカチオン性物質1025は、色材を含んでいるアニオン性の水性インクとの接触によって、以下の(1)及び(2)の現象のうち少なくとも一つが生じることによってブリードの緩和に作用しているものと考えられる。
(1)液体組成物中の第2のカチオン性物質が、イオン的又は分子的相互作用によりアニオン性の色材と結合して、溶液相から分離を起こし色材の凝集物を形成する。そして、形成された凝集物が紙等の被記録媒体の繊維の隙間に入り込みにくくなることで、被記録媒体上での色材の移動度が、溶媒の移動度よりも極めて小さくなる。
(2)液体組成物中の第2のカチオン性物質がイオン的又は分子的相互作用により、アニオン性の色材と結合して、溶液相から分離を起こし色材の凝集物を形成する。そして又、第2のカチオン性物質が被記録媒体の繊維の隙間を小さくし、色材の凝集物が被記録媒体の繊維の隙間に入り込みにくくなり、被記録媒体上での色材の移動度が、溶媒の移動度よりも極めて小さくなる。
【0048】
第1のカチオン性物質の作用によって、色材がカチオン性微粒子の表面に単分子状態を維持しつつ吸着するために、色材本来の発色特性を損なうことが少なく、高発色性に寄与する。又、第1のカチオン性物質(カチオン性微粒子)の表面への吸着若しくは結合に関与しない色材は、第2のカチオン性物質1025の作用によって、色材の凝集物1026を形成するため、被記録媒体上における微粒子と反応しなかった色材の被記録媒体上における移動度は、溶媒の移動度よりもきわめて低く、その結果として、例えば、当該着色部に隣接して他の色のインク滴が付与された場合にも、微粒子との結合に関与していない色材も、凝集物1026の形成によってその存在位置を拘束されているために、インク滴との境界部においてブリードを生じることがないか、若しくは極めて有効に抑制される。以上のように第1のカチオン性物質は主に発色性の向上に、そして第2のカチオン性物質は主にブリードの抑制に寄与する。又、同時に両者はインク中の色材を被記録媒体の表面近傍に残す効果があるために、画像のシャドウ部やベタ部等のインク付与量が多い画像領域においても、白モヤや色ムラが少なく色の均一性に優れたものとなる。
【0049】
更に、本発明では被記録媒体の表面で第1のカチオン性物質と色材との液相反応が起こることにより、極めて効率的に第1のカチオン性物質である微粒子表面に色材を吸着することができる。一方、前記したようにインクジェット用コート紙を用いることによって同程度の色材吸着を達成するためには、多量のカチオン性多孔質微粒子が必要となり、該微粒子によって基紙を覆い隠すような厚いインク受容層の形成が不可欠となる。そのためにコート紙では基紙の質感を損ねる結果につながるが、本発明では、用いる微粒子の量を少なくできるため、被記録媒体の質感を損ねることなく、印字部と未印字部で違和感のない画像形成が可能となる。
【0050】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
[液体組成物]
<第1の実施態様>−第1のカチオン性物質と、これとは異なる第2のカチオン性物質として表面がカチオン性に帯電している微粒子を含有している液体組成物について−
本発明の第1の実施態様にかかる液体組成物について説明すると、第1のカチオン性物質と、該第1のカチオン性物質とは異なる第2のカチオン性物質との、2種類のカチオン性物質を含んでいる。そして具体的には、第1のカチオン性物質として、例えば、粒子自体の表面がカチオン性に帯電している微粒子(以下、カチオン性微粒子と呼ぶ)を含み、該液体組成物のpHが2〜7で、且つ、ゼータ電位が+5〜+90mVであるものが挙げられる。
【0051】
本態様にかかる第1のカチオン性物質であるところのカチオン性微粒子に望まれる作用としては、例えば、
[1]インクと混合したときに色材が本来持っている色を損なわず、色材を吸着すること、
[2]インクと混合した際、或いは被記録媒体に付与された際に、分散安定性が低下して、被記録媒体表面に残存すること、
等が挙げられ、これらの作用を達成できる微粒子が好適に用いられる。尚、これらの作用は、1種のカチオン性微粒子に限らず、2種以上のカチオン性微粒子を併用することで達成されてもよい。
【0052】
上記[1]の作用を満たすための性質として、表面のカチオン性に加え、微粒子のサイズや重量、表面の形状が挙げられる。例えば、表面に多くの細孔を持つ多孔質微粒子は、特有の吸着特性を示し、細孔の大きさや形状等複数の要素によって色材を吸着できる。
【0053】
上記[2]の作用は、インクや被記録媒体との相互作用によって引き起こされる。このため、各構成により達成されればよいが、例えば、微粒子の性質として、インク組成成分や被記録媒体構成成分と逆のイオン性を呈することが挙げられる。又、インク中或いは液体組成物中に電解質を共存させることによっても、微粒子の分散安定性は影響を受ける。
【0054】
本発明において、上記[1]と[2]の作用のどちらか一方の作用が、瞬時に得られることが望ましい。更には、上記[1]と[2]と両方の作用が、瞬時に得られることが好ましい。以下、カチオン性の微粒子を含有する液体組成物に関して、具体的に説明する。
【0055】
カチオン性の液体組成物としては、例えば、カチオン性基を表面に有する微粒子と酸を含み、該カチオン性微粒子が安定に分散されてなる液体組成物が挙げられる。本発明においては、カチオン性の液体組成物として、例えば、酸を含みpHが2〜7に調整されたもの、又、ゼータ電位が+5〜+90mVのものを好適に用いることができる。
【0056】
(pH及びゼータ電位について)
カチオン性の液体組成物のゼータ電位について説明する。
先ず、ゼータ電位の基本原理について以下に述べる。一般に、固体が液体中に分散している系において、固相の表面に遊離電荷がある場合、固相界面付近の液相には反対電荷の荷電層が電気的中性を保つように現れる。これは、電気的二重層と呼ばれ、この電気的二重層による電位差のことをゼータ電位と呼んでいる。ゼータ電位がプラスである場合、微粒子の表面はカチオン性を示し、マイナスではアニオン性を示す。一般にその絶対値が高いほど微粒子間に働く静電的反発力が強くなり、分散性がよいと言われ、同時に微粒子表面のイオン性が強いことが考えられる。即ち、カチオン性微粒子のゼータ電位が高いものほど、カチオン性が強く、インク中のアニオン性の色材を引き付ける力が強いと言える。
【0057】
本発明者らが鋭意検討した結果、好ましくはカチオン性の液体組成物のゼータ電位が+5〜+90mVの範囲にある場合において、インク中のアニオン性の色材が、液体組成物中のカチオン性微粒子の表面に吸着し、被記録媒体上において優れた発色特性を呈することを見出した。その理由は定かではないが、恐らく微粒子のカチオン性が適度であるために、急速なアニオン性の色材の凝集が起こらずに、アニオン性の色材が微粒子表面に薄く均一に吸着することによりアニオン性の色材が巨大なレーキを形成せず、色材本来の発色特性が発現されるものと考えられる。
【0058】
更に、本発明にかかるカチオン性の液体組成物は、アニオン性の色材を吸着した後も微粒子が弱いカチオン性を呈しつつ分散不安定状態となることで、微粒子が被記録媒体中に存在するセルロース繊維表面に容易に吸着して、被記録媒体の表面近傍に残り易くなっていると考えられる。よって、インクジェット用コート紙に形成される画像並みの優れた発色特性と画像のシャドウ部やベタ部等のインク付与量が多い画像領域において、白モヤや色ムラが少なく発色の均一性に優れる。又、コート紙と比べて極めて効率よく微粒子にアニオン性の色材が吸着して発色するために、カチオン性微粒子の付与量も少なくでき、とりわけ、普通紙に印字した場合には紙の風合いが損なわれることなく保たれて、又、印字部の擦過性もよい。
【0059】
より好ましいゼータ電位は+10〜+85mVであって、この範囲では、ベタ印字した際にドット間の境界が目立ち難くなるために、ヘッドスキャンによるスジムラのより少ない良好な画像が得られる。更には+15〜+65mVの範囲では、紙種に因らず極めて優れた発色性を有する画像を得ることが可能である。
【0060】
本発明にかかるカチオン性の液体組成物のpHは、ゼータ電位が上記の値となるように調整される。保存安定性とアニオン性の色材の吸着性の観点から25℃付近で2〜7の範囲であることが好ましい。長期保存による記録ヘッドに対する耐腐食性や、印字部の擦過性がよいことから、pHが3〜6の範囲であることがより好ましい。
【0061】
(カチオン性微粒子)
カチオン性微粒子とは、ゼータ電位がプラスの値を示すものである。
そのため、本発明で使用する液体組成物に用いられる微粒子は、その表面がカチオン性である必要があるが、本質的にカチオン性である微粒子は勿論のこと、本来は静電的にアニオン性或いは中性である微粒子であっても、処理によって表面がカチオン化された微粒子であれば用いることができる。
【0062】
本発明で好適に用いられるカチオン性微粒子としては、特に材料種に限定はなく、具体的には、下記に列挙するような、無機系微粒子や有機系微粒子、無機有機複合微粒子等が挙げられる。
例えば、無機系微粒子としては、カチオン化した、シリカ、アルミナ、アルミナ水和物、チタニア、ジルコニア、ボリア、シリカボリア、セリア、マグネシア、シリカマグネシア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト等が挙げられ、有機系微粒子としては、スチレンアクリルやアクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、SBRラテックス等の共役ジエン系共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体等のビニル系共重合体のカチオン性エマルジョンやラテックス、又はメラミンビーズやプラスチックピグメント等のカチオン変性体等が挙げられる。又、無機有機複合微粒子としては、1級、2級及び3級アミン塩型の官能基を表面に有する無機微粒子等が挙げられる。
【0063】
又、本発明で使用する上記したようなカチオン性微粒子は、印字後の発色性や色の均一性、保存安定性等の観点から、動的光散乱方式により測定される平均粒子直径が0.005〜1μmの範囲のものが好適に用いられる。この範囲内では、被記録媒体内部への過度の浸透を有効に防ぐことができ、発色性や色の均一性の低下を抑えることができる。又、カチオン性微粒子が液体組成物中で沈降することも抑えられ、液体組成物の保存安定性の低下も有効に防止することができる。より好ましくは、平均粒子直径が0.01〜0.8μmの範囲内のものであり、このような微粒子を用いれば、被記録媒体に印字した後の画像の耐擦過性や記録物の質感が特に好ましいものとなる。
【0064】
本発明で使用する液体組成物中における上記したようなカチオン性微粒子の含有量としては、使用する物質の種類により、最適な範囲を適宜に決定すればよいが、質量基準で0.1〜40質量%の範囲が本発明の目的を達成する上で好適な範囲である。より好ましくは、1〜30質量%、更には3〜15質量%の範囲とすることが好適である。このような範囲内では、紙種に因らず、優れた発色の画像を安定に得ることができ、又、液体組成物の保存安定性や吐出安定性にも特に優れている。
【0065】
(酸)
本発明において好ましく用いられる酸は、第1のカチオン性微粒子表面をイオン化し、表面電位を高めることにより微粒子の液中での分散安定性を向上させると共に、インク中のアニオン性の色材の吸着性向上や液体組成物の粘度調整の役割を果たす。本発明に好適に用いられる酸は、使用するカチオン性微粒子と組み合わせて、所望のpHやゼータ電位、微粒子分散性等の物性が得られるものであれば特に限定はなく、下記に列挙するような無機酸や有機酸等を自由に選択することができる。
【0066】
具体的に無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、燐酸、硼酸、炭酸等が挙げられ、有機酸としては、例えば、カルボン酸やスルホン酸、アミノ酸等が挙げられ、具体的に、カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、フルオロ酢酸、トリメチル酢酸、メトキシ酢酸、メルカプト酢酸、グリコール酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カブリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、o−トルイル酸、m−トルイル酸、p−トルイル酸、o−クロロ安息香酸、m−クロロ安息香酸、p−クロロ安息香酸、o−ブロモ安息香酸、m−ブロモ安息香酸、p−ブロモ安息香酸、o−ニトロ安息香酸、m−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、アントラニル酸、m−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、o−メトキシ安息香酸、m−メトキシ安息香酸、p−メトキシ安息香酸等が挙げられ、スルホン酸としては、例えば、ベンゼンスルホン酸、メチルベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2,4−ジメチルベンゼンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、1−スルホナフタレン、2−スルホナフタレン、ヘキサンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ドデカンスルホン酸等が挙げられ、アミノ酸としては、例えば、グリシン、アラニン、バリン、α−アミノ酪酸、γ−アミノ酪酸、β−アラニン、タウリン、セリン、ε−アミノ−n−カプロン酸、ロイシン、ノルロイシン、フェニルアラニン等が挙げられ、これらを一種又は二種以上混合して使用することができる。
【0067】
これらの中でも、特に、水中での一次解離定数pKaが5以下である酸は、カチオン性微粒子の分散安定性やアニオン性の色材の吸着性に優れるため、本発明において好適に用いられる。具体的には、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、燐酸、酢酸、ギ酸、シュウ酸、乳酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸等が挙げられる。本発明の液体組成物中での第1のカチオン性微粒子と酸との混合比率は、重量基準で200:1〜2:1がカチオン性微粒子の分散安定性やアニオン性の色材の吸着性に優れるために好適な範囲であり、より好ましくは150:1〜5:1の範囲である。以上が本発明に使用する酸についての説明である。
【0068】
(第2のカチオン性物質)
次に、本発明にかかる液体組成物中に上記したカチオン性微粒子と併有される第2のカチオン性物質について説明する。本態様における第2のカチオン性物質としては、分子量分布を有するような物質、即ち、ポリマーやオリゴマーを用いる場合には、GPC(ゲルパーミェーションクロマトグラフィー)で測定したときの分子量が、400以上10,000以下、特には400以上2,000以下の有機化合物が好適に用いられる。その理由は、このような有機化合物を併有させれば、これらのカチオン性化合物は、インクに含まれるアニオン性基を有する水溶性染料やアニオン性化合物と共存した場合に、速やかに結合体を形成し、これによって色材の移動度を制限せしめ、溶媒の被記録媒体への浸透に追随して色材が被記録媒体中に拡散、浸透して行くのを抑えることができるためであると考えられる。又、第2のカチオン性物質として低分子量の化合物を用いる場合には、その分子量分布が単分散に近いものが好適に使用でき、例えば、分子量1,000以下の領域にGPCのピークを有するものが好適に用いられる。
【0069】
次に、第2のカチオン性物質として、分子量分布を有しないものを用いる場合には、GPCで測定したときの分子量が100〜1,000程度である比較的低分子量の化合物が好適に用いられる。このようなカチオン性物質の具体例としては、1級、2級及び3級アミン(具体的には、ラウリルアミン、ヤシアミン、ステアリルアミン、ロジンアミン等)の塩酸塩、硝酸塩や硫酸塩等の無機酸塩や酢酸塩等の有機酸塩等の化合物、第4級アンモニウムの塩酸塩、硝酸塩や硫酸塩等の無機酸塩や酢酸塩等の有機酸塩、具体的には、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、セチルトリメチルアンモニウムクロライド等があり、更にピリジニウム塩型化合物、具体的には、セチルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムブロマイド等、更には、イミダゾリン型カチオン性化合物、具体的には、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン等があり、更に第二級アルキルアミンのエチレンオキシド付加物、具体的には、ジヒドロキシエチルステアリルアミン等が好ましい例として挙げられる。
【0070】
更に、本発明では、あるpH領域においてカチオン性を示す両性界面活性剤も第2のカチオン性物質として使用でき、具体的には、アミノ酸型両性界面活性剤、RNHCH−CHCOOH型の化合物があり、ベタイン型の化合物、例えば、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン等が挙げられる。勿論、これらの両性界面活性剤を使用する場合には、それらの等電点以下のpHになるように液体組成物を調整するか、被記録媒体上でインクと混合した場合に、等電点以下のpHになるように調整するかのいずれかの方法をとることが好ましい。
以上、カチオン性物質の低分子量の化合物について例示したが、本発明にて使用することのできる化合物は、必ずしもこれらに限定されないことはいうまでもない。
【0071】
第2のカチオン性物質として用いることのできる低分子量の化合物の別の例としては、例えば、下記に挙げるようなカチオン性の高分子量の化合物の形成材料であるモノマーやオリゴマーが挙げられる。カチオン性物質である高分子量の化合物の具体例としては、例えば、ポリアリルアミン、ポリアミンスルホン、ポリビニルアミン、キトサン及びこれらの塩酸、酢酸等の酸による中和物又は部分中和物を挙げることができるが、これらに限定されないことは言うまでもない。尚、本発明において使用する分子量分布を有する高分子量の化合物の分子量は、特に断わらない限り、GPCを使用して求めた平均分子量のことを指し、ポリエチレンオキサイド換算の重量平均分子量のことである。
【0072】
又、第2のカチオン性物質として使用することのできるカチオン性の高分子量化合物の別の具体例としては、ノニオン性高分子物質の一部をカチオン化した化合物を用いてもよい。例えば、ビニルピロリドンとアミノアルキルアルキレート4級塩との共重合体、アクリルアマイドとアミノメチルアクリルアマイド4級塩との共重合体等を具体的に挙げることができるが、勿論、これらの化合物に限定されないことは言うまでもない。
【0073】
更に、上記で第2のカチオン性物質として列挙したカチオン性の高分子量の化合物は、水溶性であれば申し分ないが、ラテックスやエマルジョンのような分散体であっても構わない。又、液体組成物に用いる第2のカチオン性物質としては、特に、分子量が低分子領域から高分子領域にまで広く分布している物質が好適である。そして、このようなカチオン性物質としては、単一の繰り返し単位を有する1種類のカチオン性のポリマーからなるものであってもよく、或いは、2種若しくはそれ以上の異なる構造のカチオン性のポリマーの混合物であってもよい。このようなものとしては、例えば、前記したカチオン性の高分子量の化合物成分として用いられるポリマーであって、特に分子量分布が広くなるように合成したポリマー、或いはポリマーとオリゴマーの混合物等が挙げられる。
【0074】
<第2の実施態様>−第2のカチオン性物質として2種類の化合物用いる場合について−
本発明にかかる液体組成物は、第2のカチオン性物質として、2種類以上の化合物を用いた態様であってもよい。本発明者らは、液体組成物の構成成分として用いるカチオン性化合物の種類によって、ブリードと耐水性の向上に差異が生じるとの知見を得ている。これは、例えば、カチオン性物質の分子量の違いや反応性の差によって、先に述べた微粒子への色材の吸着と、色材のレーキの起こる割合に変化が生じるためと思われる。実験結果的には、分子量の小さいカチオン性化合物を用いることで主にブリードの改良が顕著に起こり、分子量の大きなカチオン性化合物を用いることで耐水性の改善が顕著に認められた。これは、以下のような理由によるものと考えられる。
【0075】
分子量の小さい化合物の分子は、ブラウン運動が活発になるので比較的短時間で色材と遭遇する。このため、比較的高速に色材のレーキが起こり、短時間で起こるブリードの抑制に効果が発揮されるのではないかと思われる。一方で、記録画像の耐水性を発現させるためには、色材を高速にレーキさせる必要性は薄く、高速性よりは、むしろ長い化合物になって紙のセルロースと絡み付きながらレーキ(不溶化)していることが重要となる。分子量の大きいカチオン性化合物が併存していれば、このようにして、前記位置拘束されていない色材が流れ出すことを防止すると共に、微粒子をも縛り付けて該微粒子の流れ出しをも防止しているのではないかと予測される。これが、分子量の大きいカチオン性化合物が、耐水性の向上に効果的である理由であると推定している。
【0076】
本発明者らの検討の結果、実験的に、液体組成物中の微粒子とカチオン性化合物のバランスが、[カチオン性化合物の総量]<[微粒子の総量]となっていることが望ましいことが分かった。更には、微粒子に対するカチオン性化合物の比率が、1/5以下とすることが好ましいことがわかった(但し総量は重量%)。そして、例えば、第2のカチオン性物質として2種類の化合物を用いる場合の具体例としては、例えば、分子量が500以上の分子量の高い化合物(以下、単に高分子量の化合物)と、分子量が500未満の分子量の低い化合物(以下、単に高分子量の化合物)とを用いる例が挙げられる。以下、本発明で使用することのできるこのような高分子量のカチオン性化合物及び低分子量のカチオン性化合物について説明する。
【0077】
(高分子量のカチオン性化合物)
上記したような分子量を有する高分子量のカチオン性化合物としては、例えば、カチオン性単量体を重合して合成することができる。この際に使用するカチオン性単量体の例としては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート〔CH=C(CH)−COO−CN(CH〕、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート〔CH=CH−COO−CN(CH〕、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート〔CH=C(CH)−COO−CN(CH〕、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート〔CH=CH−COO−CN(CH〕、N,N−ジメチルアクリルアミド〔CH=CH−CON(CH〕、N,N−ジメチルメタクリルアミド〔CH=C(CH)−CON(CH〕、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド〔CH=CH−CONHCN(CH〕、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリルアミド〔CH=C(CH)−CONHCN(CH〕、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド〔CH=CH−CONH−CN(CH〕、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド〔CH=C(CH)−CONH−CN(CH〕等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0078】
(低分子量のカチオン性化合物)
上記したような分子量を有する低分子量のカチオン性化合物としては、例えば、ポリアミンが含有されている化合物、具体的には、エチレンアミン類やポリエチレンイミン、スペルミジン、スペルミン等が挙げられる。又、1級、2級及び3級アミン塩型の化合物、具体的には、ラウリルアミン、ヤシアミン、ステアリルアミン、ロジンアミン等の塩酸塩、酢酸塩等;第4級アンモニウム塩型の化合物、具体的には、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム等;ピリジニウム塩型化合物、具体的には、セチルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムブロマイド等;イミダゾリン型カチオン性化合物、具体的には、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン等;高級アルキルアミンのエチレンオキシド付加物、具体的には、ジヒドロキシエチルステアリルアミン等が挙げられる。
【0079】
又、上記したような分子量を有する高分子量のカチオン性化合物若しくは低分子量のカチオン性化合物としては、上記のものに限定されず、例えば、あるpH領域においてカチオン性を示す様な両性界面活性剤も用いることができる。具体的には、例えば、アミノ酸型両性界面活性剤;R−NH−CH−CH−COOH型の化合物;ベタイン型の化合物、具体的には、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン等のカルボン酸塩型両性界面活性剤の他、硫酸エステル型、スルホン酸型、燐酸エステル型等の両性界面活性剤等が挙げられる。勿論、これらの両性界面活性剤を使用する場合には、それらの等電点以下のpHになるように液体組成物のpHを調整するか、この液体組成物が、被記録媒体上でインクと混合された際に等電点以下のpHとなるように調整するかの、いずれかの方法をとる必要がある。尚、上記にはカチオン性物質として低分子量のカチオン性化合物の例を挙げたが、本発明で使用することのできるカチオン性物質は必ずしもこれらに限定されないことは言うまでもない。
【0080】
(第1のカチオン性物質と第2のカチオン性物質の液体組成物中における量比)
ところで、本態様にかかる液体組成物中に含有される第1カチオン性物質と第2のカチオン性物質との総含有量としては、質量基準で0.1〜40質量%の範囲が本発明の目的を達成する上で好適な範囲であり、より好ましくは1〜30質量%、更には3〜15質量%の範囲が好適である。このような範囲内では、紙種に因らず、優れた発色の画像を安定に得ることができ、又、液体組成物の保存安定性や吐出安定性にも特に優れている。又、第1のカチオン性物質と第2のカチオン性物質との含有比率は、質量比で1:1〜100:1、特には2:1〜50:1の範囲とすることが好ましい。
【0081】
<第3の実施態様>−第2のカチオン性物質としてカチオン性の水溶性金属塩を用いる場合について−
本発明にかかる液体組成物においては、第2のカチオン性化合物として、カチオン性の水溶性金属塩を用いることもできる。ここでいうカチオン性の水溶性金属塩とは、水溶液中で溶解した際にカチオン性の挙動を示す金属イオンや金属を含む錯イオンを発生させ、これがアニオン性の挙動を示す色材を静電的に引き付けてレーキを引き起こす能力を有するのもである。ここで好適に用いられるカチオン性の水溶性金属塩としては、一般的に無機系凝集剤といわれているものを特に好ましく用いることができる。このようなものとしては、例えば、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸アルミニウム、アルミニウムミョウバン、カリウムミョウバン、含鉄硫酸アルミニウム等の水溶性アルミニウム塩や、オキシ塩化ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、オキシ硫酸ジルコニウム、オキシ酢酸ジルコニウム、オキシ蟻酸ジルコニウム等の水溶性ジルコニウム塩、硫酸鉄、塩化鉄、塩化コッパラス、ポリ塩化鉄、ポリ硫酸鉄等の水溶性鉄塩、及びこれらの水和物化合物が挙げられる。
又、二価以上の多価金属塩等もアニオン性の色材を凝集させる能力があるものも好ましく用いることが出来、具体的にはCa、Mg、Ba、Sr、Cu、Zn、Ni、Fe、Al、Cr等のアルカリ土類金属や遷移金属等の塩化物塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩等が挙げられる。勿論これらに限定されるわけではないが、これらを1種若しくは2種以上添加するのが好ましい。
【0082】
又、特に、水溶液中で酸性に呈するカチオン性の水溶性金属塩は、前述の第1のカチオン性物質であるカチオン性微粒子の表面をイオン化し、表面電位を高めることによって液体中での微粒子分散安定化にも寄与するため好ましい。又、カチオン性の水溶性金属塩が酸性を呈する場合、別途微粒子を分散させるために酸を添加する量が減る若しくは不要となるために、より一層腐食性や安全性の面で好ましい。具体的には、カチオン性の水溶性金属塩の1%水溶液のpHが6以下になるものが好ましい。
【0083】
(第1のカチオン性物質と第2のカチオン性物質の液体組成物中における量比)
本態様にかかる液体組成物中に含有される第1カチオン性物質とカチオン性の水溶性金属塩との総含有量としては、質量基準で0.1〜40質量%の範囲が本発明の目的を達成する上で好適な範囲であり、より好ましくは1〜30質量%、更には3〜15質量%の範囲が好適である。このような範囲内では、紙種に因らず、優れた発色の画像を安定に得ることができ、又、液体組成物の保存安定性や吐出安定性にも特に優れている。又、カチオン性微粒子とカチオン性の水溶性金属塩との含有比率は、使用するカチオン性の水溶性金属塩によって適宜調整することが好ましいが、質量比で10:1〜1000:1の範囲であり、より好ましくは20:1〜100:1の範囲である。以上が第2のカチオン性物質についての説明である。
【0084】
<液体組成物の他の構成成分について>
次に、液体組成物を構成するその他の成分について具体的に説明する。本発明にかかる液体組成物は、前述した第1のカチオン性物質と第2のカチオン性物質(更に好ましくは酸)の他に通常、水、水溶性有機溶剤及びその他の添加剤からなる。本発明で使用される水溶性有機溶剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレングリコール類、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等の1価アルコール類の他、グリセリン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、トリエタノールアミン、スルホラン、ジメチルサルホキサイド等が用いられる。上記水溶性有機溶剤の含有量について特に制限はないが、液体全重量の5〜60重量%、更に好ましくは、5〜40重量%が好適な範囲である。
【0085】
<液体組成物への添加物>
又、本発明にかかる液体組成物には、更にこの他、必要に応じて粘度調整剤、pH調整剤、防腐剤、各種界面活性剤、酸化防止剤及び蒸発促進剤、水溶性カチオン性化合物やバインダー樹脂等の添加剤を適宜配合してもかまわない。界面活性剤の選択は、液体の被記録媒体への浸透性を調整する上で特に重要である。又、バインダー樹脂はカチオン性微粒子の更なる擦過性の向上等の目的に、被記録媒体の質感や液体組成物の保存安定性や吐出安定性を損ねない範囲において併用でき、水溶性ポリマーやエマルジョン、ラテックス等から自由に選択できる。
【0086】
本発明にかかる液体組成物は、無色或いは白色であることがより好ましいが、被記録媒体の色に合わせて調色してもよい。更に、以上のような液体組成物の各種物性の好適な範囲としては、表面張力を10〜60mN/m(dyn/cm)、より好ましくは10〜40mN/m(dyn/cm)とし、粘度を1〜30mPa・s(cP)としたものである。
【0087】
[アニオン性のインクについて]
次に、本発明にかかるインクセットを構成するインクについて説明する。ここで言うインクセットとは、前記に説明したような本発明の液体組成物と、少なくとも一種類以上のアニオン性の水性インクの組み合わせをいう。又、本明細書では、このインクセットから本発明の液体組成物を除いた少なくとも一種類以上のインクの組み合わせをインクサブセットという。本発明で使用されるインクは、色材としてアニオン性基を含有する水溶性染料を用いるか、又は色材として顔料を用いる場合には、アニオン性化合物を併用させたものを用いるのが好ましい。本発明で使用される上記のようなインクには、更にこれに、水、水溶性有機溶剤及びその他の成分、例えば、粘度調整剤、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、酸化防止剤等が必要に応じて含まれる。
【0088】
本発明で使用するアニオン性基を有する水溶性染料としては、例えば、カラーインデックス(Color Index)に記載されている水溶性の酸性染料、直接染料、反応性染料であれば特に限定はない。又、カラーインデックスに記載のないものでも、アニオン性基、例えば、スルホン基、カルボキシル基等を有するものであれば特に限定はない。ここで言う水溶性染料の中には、溶解度のpH依存性があるものも含まれる。
【0089】
このインクの別の形態としては、アニオン性基を有する水溶性染料のかわりに顔料及びアニオン性化合物を用い、水、水溶性有機溶剤、及びその他の成分、例えば、粘度調整剤、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、酸化防止剤等を必要に応じて含むインクであってもよい。ここで、アニオン性化合物が顔料の分散剤であってもよいし、顔料の分散剤がアニオン性でない場合、分散剤とは別のアニオン性化合物を添加してもよい。勿論、分散剤がアニオン性化合物である場合でも、更に他のアニオン性化合物を添加してもよい。
【0090】
本発明で使用することができる顔料に特に限定はないが、例えば、以下に説明する顔料が好適に使用される。先ず、ブラック顔料インクに使用されるカーボンブラックとしては、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックで、一次粒径が15〜40nm(mμm)、BET法による比表面積が50〜300m/g、DBP吸油量が40〜150ml/100g、揮発分が0.5〜10%、pH値が2〜9を有し、例えば、No.2300、No.900、MCF88、No.40、No.52、MA7、MA8、No.2200B(以上三菱化成製)、RAVEN 1255(コロンビア製)、REGAL 400R、REGAL 660R、MOGUL L(キヤボット製)、Color Black FW1、Color Black FW18、Color Black S170、Color Black S150、Printex 35、Printex U(デグッサ)等の市販品を使用することができる。又、本発明のために新たに試作されたものでもよい。
【0091】
イエローインクに使用される顔料としては、C.I.Pigment Yellow 1、C.I.Pigment Yellow 2、C.I.Pigment Yellow 3、C.I.Pigment Yellow 13、C.I.Pigment Yellow 16、C.I.Pigment Yellow 83、
マゼンタインクとして使用される顔料としては、C.I.Pigment Red 5、C.I.Pigment Red 7、C.I.Pigment Red 12、C.I.Pigment Red 48(Ca)、C.I.Pigment Red 48(Mn)、C.I.Pigment Red 57(Ca)、C.I.Pigment Red 112、C.I.Pigment Red 122、
シアンインクとして使用される顔料としては、C.I.Pigment Blue 1、C.I.Pigment Blue 2、C.I.Pigment Blue 3、C.I.Pigment Blue 15:3、C.I.Pigment Blue 16、C.I.Pigment Blue 22、C.I.Vat Blue 4、C.I.Vat Blue 6等が挙げられる。
又、いずれの色の色材に関しても、本発明のために新たに製造されたものでも使用可能である。上述した顔料は、インク全量に対して、1〜20重量%、好ましくは2〜12重量%の範囲で用いることが好ましい。
【0092】
本発明で使用するインク中の顔料の分散剤は、水溶性樹脂ならどのようなものでも使用可能であるが、重量平均分子量が1,000〜30,000の範囲のものが好ましい。更に、好ましくは3,000〜15,000の範囲である。具体的には、例えば、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等の疎水性単量体、又はアクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体から選ばれる二つ以上の単量体からなるブロック共重合体、グラフト共重合体、或いはランダム共重合体、又はこれらの塩等が挙げられる。
【0093】
これらの樹脂は、塩基を溶解させた水溶液に可溶なアルカリ可溶型の樹脂である。更に、親水性単量体からなるホモポリマー又はそれらの塩でもよい。又、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等の水溶性樹脂も使用することが可能である。しかし、アルカリ可溶型の水溶性樹脂を用いた場合の方が、分散液の低粘度化が可能で、分散も容易であるという利点がある。これらの水溶性樹脂は、インク全量に対して、0.1〜5重量%の範囲で使用されることが好ましい。
【0094】
以上の如き、顔料及び水溶性樹脂は、水溶性媒体中に分散又は溶解される。上記の本発明に用い得る顔料系の水性インクにおいて好適な水性媒体は、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒であり、水としては種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。分散剤が、アニオン性高分子ではない場合、上述した顔料を含むインクに、更に、アニオン性化合物を添加する必要がある。本発明で好適に使用されるアニオン性化合物としては、顔料分散剤の項で説明したアルカリ可溶性樹脂等の高分子物質の他、低分子量のアニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0095】
低分子量のアニオン性界面活性剤の具体的な例としては、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、スルホコハク酸ポリオキシエチレンラウロイルエタノールアミドエステル二ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二ナトリウム、カルボキシル化ポリオキシエチレンラウリルエーテルナトリウム塩、カルボキシル化ポリオキシエチレンラウリルエーテルナトリウム塩、カルボキシル化ポリオキシエチレントリデシルエーテルナトリウム塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミン等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。以上のようなアニオン性物質の好適な使用量としては、インク全量に対して、0.05〜10重量%の範囲であり、更に好適には、0.05〜5重量%である。
【0096】
又、本発明で使用される顔料としては、分散剤を必要としない、即ち、自己分散型の顔料も使用できる。自己分散型の顔料は、顔料表面に少なくとも1種の親水性基が直接若しくは他の原子団を介して結合された自己分散型の顔料である。親水性基としては、下記に挙げた親水性基の中から選択される少なくとも1種であり、更に他の原子団が炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基であってもよい。
−COOM、−SOM、−SONH、−POHM、−PO
−SONHCOR
(式中のMは水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表し、Rは炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基を表す。)
【0097】
又、本発明のインクは、上記の成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つインクとするために、界面活性剤、消泡剤、防腐剤等を添加することができ、更に、市販の水溶性染料等を添加することもできる。
界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩類、液体脂肪油硫酸エステル塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類等の陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類、アセチレンアルコール、アセチレングリコール等の非イオン性界面活性剤があり、これらの1種又は2種以上を適宜選択して使用できる。その使用量は分散剤により異なるが、インク全量に対して0.01〜5重量%が望ましい。この際、インクの表面張力は30mN/m(dyn/cm)以上になるように活性剤の添加する量を決定することが好ましい。なぜなら、本発明のような記録方式においては、ノズル先端の濡れによる印字ヨレ(インク滴の着弾点のズレ)等の発生を有効に抑えることができるからである。
【0098】
以上で説明したような顔料系インクの作製方法としては、はじめに、顔料分散用樹脂及び水を少なくとも含有する水溶液に顔料を添加し、攪拌した後、後述の分散手段を用いて分散を行い、必要に応じて遠心分離処理を行い、所望の分散液を得る。次に、この分散液に上記に掲げたような成分を加え、攪拌してインクとする。
【0099】
又、先に挙げたようなアルカリ可溶型樹脂を使用する場合、樹脂を溶解させるために塩基を添加することが必要である。この際、樹脂を溶解させるアミン或いは塩基の量としては、樹脂の酸価から計算によって求めたアミン或いは塩基量の1倍以上添加することが必要である。このアミン或いは塩基の量は以下の式によって求められる。
【数1】
Figure 0003559762
【0100】
更に、顔料を含む水溶液を分散処理する前にプレミキシングを30分間以上行うと分散効率がよい。このプレミキシング操作は、顔料表面の濡れ性を改善し、顔料表面への分散用樹脂の吸着を促進するものである。
【0101】
アルカリ可溶型樹脂を使用した場合の分散液に添加される塩基類としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミンメチルプロパノール、アンモニア等の有機アミン、或いは水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基が好ましい。
【0102】
一方、本発明に使用する分散機は、一般に使用される分散機ならいかなるものでもよいが、例えば、ボールミル、サンドミル等が挙げられる。その中でも、高速型のサンドミルが好ましく、例えば、スーパーミル、サンドグラインダー、ビーズミル、アジテータミル、グレンミル、ダイノールミル、パールミル、コボルミル(いずれも商品名)等が挙げられる。尚、本発明のインクは、上記成分の他に必要に応じて、水溶性有機溶剤、界面活性剤、pH調製剤、防錆剤、防カビ剤、酸化防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤及び水溶性ポリマー等の添加剤を添加してもよい。
【0103】
本発明で使用される上記色材を溶解又は分散する液媒体は、水と水溶性有機溶剤との混合物であることが好ましい。具体的な水溶性有機溶剤の例としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジアキサン等のエーテル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングコリコール等のポリアルキレングリコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−へキサントリオール、チオジグリコール、へキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類、グリセリン、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラン、ジメチルサルフォオキサイド、2−ピロリドン、ε−カプロラクタム等の環状アミド化合物及びスクシンイミド等のイミド化合物等が挙げられる。
【0104】
上記水溶性有機溶剤の含有量は、一般には、インクの全重量に対して重量%で1%〜40%が好ましく、より好ましくは3%〜30%の範囲である。又、インク中の水の含有量は、30〜95重量%の範囲で使用される。30重量%より少ないと顔料の分散性等が悪くなり、インクの粘度も高くなるため好ましくない。一方、95%より多いと蒸発成分が多過ぎて、十分な固着特性を満足できない。
【0105】
本発明で使用するインクは、一般の水溶性筆記用具としても使用できるが、熱エネルギーによるインクの発泡現象によりインクを吐出させるタイプのインクジェット記録方法に適用する場合に特に好適であり、吐出が極めて安定となり、サテライトドットの発生等が生じないという特徴がある。但し、この場合には、熱的な物性値(例えば、比熱、熱膨張係数、熱伝導率)を調整する場合もある。更に、本発明で使用するインクは、普通紙等に記録した場合の印字記録物のインクの浸透性と同時に、インクジェット用ヘッドに対するマッチングを良好にする面から、インク自体の物性として25℃における表面張力が30〜68mN/m(dyn/cm)、粘度が15mPa・m(cP)以下、好ましくは10mPa・s(cP)以下、より好ましくは5mPa・s(cP)以下に調整されることが望ましい。
【0106】
次に、本発明の画像形成方法について説明するが、本発明の画像形成方法は、上記したような本発明にかかる液体組成物と、アニオン性の色材を含有するインクとを、両者が互いに被記録媒体上で接する状態となるようにして付与される過程を有することを特徴とする。
【0107】
本発明の画像形成方法としては、前記した本発明の液体組成物とインクとが被記録媒体上で接し、両者が共存する状態となるものであれば何れのものでもよく、従って、液体組成物とインクの何れを先に被記録媒体上に付与するかは問題ではない。又、液体組成物を被記録媒体に先に付着させた場合に、液体組成物を被記録媒体に付着せしめてからインクを被記録媒体上に付着させるまでの時間については特に制限されるものではないが、ほぼ同時、或いは数秒以内にインクを被記録媒体上に付着させるのが好ましい。上記した画像形成方法に使用される被記録媒体としては、特に限定されるものではなく、従来から使用されている、コピー用紙、ボンド紙等のいわゆる普通紙が好適に使用される。勿論、インクジェット記録用に特別に作製されたコート紙やOHP用透明フィルムも好適に使用できる。更に、一般の上質紙や光沢紙も好適に使用することができる。
【0108】
本発明にかかる液体組成物を被記録媒体上に付着せしめる方法としては、例えば、スプレーやローラー等によって被記録媒体の全面に付着せしめる方法も考えられるが、更に好ましくは、インクが付着する着色部形成領域、或いは着色部形成領域とその着色部形成領域の近傍にのみに選択的且つ均一に液体組成物を付着せしめることのできるインクジェット方式により行うのが好ましい。又、この際には、種々のインクジェット記録方式を用いることができるが、特に好ましいのは、熱エネルギーによって発生した気泡を用いて液滴を吐出する方式である。尚、ここでいう着色部形成領域とは、インクのドットが付着する領域のことであり、着色部形成領域の近傍とは、インクのドットが付着する領域の外側の1〜5ドット程度離れた領域のことを指す。
【0109】
次いで、本発明にかかる画像記録装置について説明する。本発明にかかる画像記録装置は、上記したような本発明にかかる液体組成物と、アニオン性物質を含有する少なくとも1種類以上の色のアニオン性インクとを個別に収納するためのインク収納部と、液体組成物及びアニオン性インクの各々を液滴として吐出させるための記録ヘッド部を備えた記録ユニットとを備えていることを特徴とする。
【0110】
更に、本発明においては、記録ヘッドの記録インクに記録信号を与え、発生した熱エネルギーにより液滴を吐出する方式のものが好ましい。その装置の主要部である記録ヘッドの構成を図1、図2及び 図3に示す。
ヘッド13はインクを通す溝14を有するガラス、セラミック、又はプラスチック板等と感熱記録に用いられる発熱抵抗体を有する発熱ヘッド15(図では薄膜ヘッドが示されているが、これに限定されるものではない)とを接着して得られる。発熱ヘッド15は酸化シリコン等で形成される保護膜16、アルミニウム電極17−1及び17−2、ニクロム等で形成される発熱抵抗体層18、蓄熱層19、アルミナ等の放熱性のよい基板20よりなっている。
【0111】
記録インク21は吐出オリフィス22まで来ており、圧力Pによりメニスカス23を形成している。ここで、アルミニウム電極17−1及び17−2に電気信号が加わると、発熱ヘッド15のnで示される領域が急激に発熱し、ここに接しているインク21に気泡が発生し、その圧力でメニスカス23が突出し、吐出オリフィス22よりインク小滴24となり、被記録材25に向かって飛翔する。図3には図1に示したノズルを多数並べた記録ヘッドの概略図を示す。該記録ヘッドは多数の流路を有するガラス板等27と図1において説明したものと同様の発熱ヘッド28を密着して作られる。尚、図1は、インク流路に沿ったヘッド13の断面図であり、図2は図1のA−B線での断面図である。
【0112】
図4に、該ヘッドを組み込んだインクジェット記録装置の一例を示す。図4において、61はワイピング部材としてのブレードで、その一端はブレード保持部材によって保持されて固定端となり、カレンチレバーの形態をなす。ブレード61は記録ヘッド65による記録領域に隣接した位置に配置され、又、本例の場合、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。62は、記録ヘッド65の吐出口面のキャップであり、ブレード61に隣接するホームポジションに配設され、記録ヘッド65の移動方向と垂直な方向に移動して、インク吐出口面と当接し、キャッピングを行う構成を備える。更に63はブレード61に隣接して設けられるインク吸収体であり、ブレード61と同様、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。前記ブレード61、キャップ62及びインク吸収体63によって吐出回復部64が構成され、ブレード61及びインク吸収体63によってインク吐出口面に水分、塵等の除去が行われる。
【0113】
65は吐出エネルギー発生手段を有し、吐出口を配した吐出口面に対向する被記録材にインクを吐出して記録を行う記録ヘッド、66は記録ヘッド65を搭載してその移動を行うためのキャリッジである。キャリッジ66はガイド軸67と慴動可能に係合し、キャリッジ66の一部はモータ−68によって駆動されるベルト69と接続(図示せず)している。これによりキャリッジ66はガイド軸67に沿った移動が可能となり、記録ヘッド65による記録領域及びその隣接した領域の移動が可能となる。
51は被記録材を挿入するための給送部、52はモーター(図示せず)により駆動される送りローラーである。これらの構成によって記録ヘッド65の吐出口面と対向する位置へ被記録材が給送され、記録が進行するにつれて、排出ローラー53を配した排出部へ排出される。
【0114】
上記構成において記録ヘッド65が記録終了等でホームポジションに戻る際、吐出回復部64のキャップ62は記録ヘッド65の移動経路から退避しているが、ブレード61は移動経路中に突出している。この結果、記録ヘッド65の吐出口面がワイピングされる。尚、キャップ62が記録ヘッド65の吐出口面に当接してキャッピングを行う場合、キャップ62は記録ヘッドの移動経路中に突出するように移動する。
記録ヘッド65がホームポジションから記録開始位置へ移動する場合、キャップ62及びブレード61は前記したワイピング時の位置と同一の位置にある。この結果、この移動においても記録ヘッド65の吐出口面はワイピングされる。前記の記録ヘッド65のホームポジションへの移動は、記録終了時や吐出回復時ばかりではなく、記録ヘッド65が記録のために記録領域を移動する間に所定の間隔で記録領域に隣接したホームポジションへ移動し、この移動に伴って上記ワイピングが行われる。
【0115】
図5は、ヘッドにインク供給部材、例えばチューブを介して供給されるインクを収容したインクカートリッジ45の一例を示す図である。ここで40は供給用インクを収容したインク収容部、例えばインク袋であり、その先端にはゴム製の栓42が設けられている。この栓42に針(図示せず)を挿入することにより、インク袋40中のインクをヘッドに供給可能ならしめる。44は廃インクを受容するインク吸収体である。インク収容部としては、インクとの接液面がポリオレフィン、特にポリエチレンで形成されているものが好ましい。
本発明で使用されるインクジェット記録装置としては、前記の如きヘッドとインクカートリッジが別体となったものに限らず、図6に示す如きそれらが一体となったものも好適に用いられる。
【0116】
図6において、70は記録ユニットであって、この中にインクを収容したインク収容部、例えばインク吸収体が収納されており、かかるインク吸収体中のインクが複数のオリフィスを有するヘッド部71からインク滴として吐出される構成になっている。インク吸収体の材料としては、例えばポリウレタンを用いることができる。72は記録ユニット内部を大気に連通させるための大気連通口である。この記録ユニット70は、図4で示す記録ヘッドに代えて用いられるものであって、キャリッジ66に対し着脱自在になっている。尚、本発明に使用する記録装置において、上記ではインクに熱エネルギーを作用させてインク液滴を吐出するインクジェット記録装置を例に挙げたが、そのほか圧電素子を使用するピエゾ方式のインクジェット記録装置でも同様に利用できる。
【0117】
さて、本発明の記録方法を実施する場合には、例えば、前記図3に示した記録ヘッドを5つキャリッジ上に並べた記録装置を使用する。図7はその一例である。81、82、83、84はそれぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラック各色の記録インクを吐出するための記録ヘッドである。又、85は本発明の液体組成物を吐出するヘッドである。該ヘッドは前記した記録装置に配置され、記録信号に応じて、各色の記録インクを吐出する。又、本発明の液体組成物は、例えば、それに先立ち、少なくとも各色の記録インクが被記録媒体に付着する部分に予め付着させておく。図7では記録ヘッドを5つ使用した例を示したが、これに限定されるものではなく、図8に示したように、1つの記録ヘッドでイエロー、マゼンタ、シアン、ブラック及び無色の液体組成物を液流路を分けて行うのも好ましい。勿論、液体組成物とインクの記録順が上記した順序とは逆になるようなヘッドの配置をとってもよい。
【0118】
図12は、本発明にかかるインクジェットプリント装置の他の実施態様の概略構成を示す模式的斜視図である。
図12において、1204はキャリッジ1203の主走査方向に延在し該キャリッジを摺動自在に支持する走査レール、1205はキャリッジ1203を往復動させるための駆動力を伝達する駆動ベルトである。又、1206、1207及び1208、1209は、それぞれ、プリントヘッドによるプリント位置の前後に配置されて被記録材1210の挟持搬送を行うための搬送ローラ対である。紙等の被記録材1210は、プリント位置の部分で、プリント面を平坦に規制するためのプラテン(不図示)に圧接状態で案内支持されている。この時、キャリッジ1203に搭載された各ヘッドカートリッジ(ヘッド)1201、1202の吐出口形成面は、該キャリッジ1203から下方へ突出して被記録媒体搬送用ローラ1207、1209間に位置し、プラテン(不図示)の案内面に圧接された被記録媒体1210に平行に対向するようになっている。
【0119】
図12において、キャリッジ1203上には合計6個のヘッドカートリッジが位置決め搭載されており、本実施例では、キャリッジ1203上の図示左端から右側へ向けて、イエローのプリントヘッド1201Y、マゼンタのプリントヘッド1201M、シアンのプリントヘッド1201C、ブラックのプリントヘッド1201B、液体組成物吐出ヘッド1202、第2のブラックのプリントヘッド1201BBの順に配置されている。液体組成物吐出ヘッド1202はインク中の色材と反応性を有する液体組成物を被記録媒体1210へ吐出するものである。又、右端の第2のブラックのプリントヘッド1201BBは、往復プリントでの副走査プリント時等に使用されるブラックインクを用いるプリントヘッドである。つまり、前述の各実施例におけるブラックプリントヘッド1201Bの次に(右隣に)液体組成物吐出ヘッド1202を配置し、更にその次に(右端)に前記ブラックのプリントヘッド1201BBを配置する構成が採られている。
【0120】
図12において、プリント領域の左側には回復ユニット1211が配設され、該回復ユニット1211においては、前記ヘッドカートリッジ1201、1202の配置に対応して、左から右へ、プリントヘッド1201Y、1201M、1201C、1201Bをキャッピングするキャップ1212が順次配置され、その次に(右隣に)液体組成物吐出ヘッド1202をキャッピングするキャップ1213が配置され、更にその右隣(右端)には第2のブラックプリントヘッド1201BBをキャッピングするキャップ1212が配置されている。そして各々のキャップは、は上下方向に昇降可能に設けられており、キャリッジ1203がホームポジションにあるときには、各ヘッド1201、1202の吐出口形成面に対して対応するキャップ1212、1213が各々圧接されることにより、各ヘッド1201、1202の吐出口が密封(キャッピング)され、これにより吐出口内のインク溶剤の蒸発によるインクの増粘、固着が防止され、吐出不良の発生が防止されている。
【0121】
又、回復ユニット1211は、各キャップ1201、1202に連通した吸引ポンプ1214とキャップ1213に連通した吸引ポンプ1215を備えている。これらのポンプ1214、1215はプリントヘッド1201や液体組成物吐出ヘッド1202に吐出不良が生じた場合に、それらの吐出口形成面をキャップ1212、1213でキャッピングして吸引回復処理を実行するのに使用される。更に左端から5番目の液体組成物用のキャップ1213と6番目(右端)のブラックインク用のキャップ1212との間に液体組成物吐出ヘッド1202用のブレード1217が配置され、右端のキャップ1212の右側(プリント領域側)に各プリントヘッド1201用のブレード1216が配置されている。そしてブレード1217はブレードホルダー1219によって保持され、ブレード1216はブレードホルダー1218によって保持されている。この態様においては、ブレードホルダー1218、1219は、各々キャリッジ1203の移動を利用して駆動されるブレード昇降機構(不図示)により昇降され、それによってブレード1216、1217は、ヘッド1201、1202の吐出口形成面に付着したインクや異物をワイピングすべく突出した位置(ワイピング位置)と吐出口形成面に接触しない後退した位置(待機位置)との間で昇降する。この場合、プリントヘッド1201をワイピングするブレード1216と液体組成物吐出ヘッド1202をワイピングするブレード1217は、互いに独立して個別に昇降できるように構成されている。
【0122】
図13は、図12のインクジェットプリント装置のワイピング動作を示す模式図である。図13において、(A)に示すように、プリントヘッド用のブレード1216が突出(上昇)した後、キャリッジ1203に搭載された各ヘッドが右側(プリント領域側)からホームポジションに向かって移動してくる。上昇したプリントヘッド用のブレード1216は、(B)に示すように、キャリッジ1203の左向き移動に伴いプリントヘッド1201を順次ワイピングしていく。そして、(C)に示すように、液体組成物吐出ヘッド1202がプリントヘッド用のブレード1216の手前(右隣)にきた時点で該ブレード1216が待機位置まで後退(下降)し、該ブレード1216と液体組成物吐出ヘッド1202との接触が防止される。
【0123】
更に、キャリッジ1203が左向きに移動して液体組成物吐出ヘッド1202がプリントヘッド用ブレード1206を通過した時点で、(D)に示すように、プリントヘッド用ブレード1206及び液体組成物吐出ヘッド用ブレード1217の両方を突出(上昇)させる。そして、キャリッジ1203の左向き移動に伴って、(E)に示すように、ブレード1217による液体組成物吐出ヘッド1202のワイピングとブレード1216による右端のプリントヘッド1201BBのワイピングを同時に行う。全てのヘッド1201、1202のワイピングが終了した後、(F)に示すように、両方のブレード1216、1217を後退(下降)させ、待機位置で待機させる。
【0124】
図12及び図13の実施例では、キャリッジ1203がプリント領域側(右側)から回復ユニット1211のあるホームポジション側へ移動するときにブレード1216、1217によるワイピングを行うようにしたが、ワイピング方向はこれに限定されるものではなく、ホームポジション側から右側(プリント領域側)へ移動する際にワイピングするようにしてもよい。
【0125】
図12のインクジェットプリント装置は、液体組成物吐出ヘッド1202からインク中の色材と反応性を有するような、本発明にかかる液体組成物を被記録材1210に吐出し、各プリントヘッド1201から吐出されたインクと被記録媒体1210上で接触させて記録物を形成可能なように構成されている。被記録媒体1210上ではインク中の色材が液体組成物と反応することによって、インク中の色材が単分子状態で微粒子表面に吸着し、その微粒子によって画像の形成がなされるため、発色性や色の均一性に優れた画像が得られる。
【0126】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、文中、部及び%とあるのは、特に断りのない限り重量基準である。
ここで、文中のゼータ電位は、微粒子の固形分濃度を0.1%になるよう液体組成物をイオン交換水で分散させた後に、ゼータ電位測定機(ブルックヘブン社製、BI−ZETA plus、液温20℃、アクリルセル使用)で測定した値である。又、pHは、作製した液体組成物について、液温25℃でpHメーター計(堀場製作所(株)製、カスタニーpHメーターD−14)を用いて測定した。又、微粒子の平均粒子直径は、液体組成物をイオン交換水に分散させて、液中における微粒子の固形分濃度が0.1%になるように側庭用試料を調製し、その後に、動的光散乱法粒度分布計(ブルックヘブン社製、BI−90、液温20℃、アクリルセル使用)を用いて測定した。又、分子量の測定は、ゲルパーミェーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した。
【0127】
先ず、液体組成物の作製について説明する。以下に示す各成分を混合溶解した後、ポアサイズが1μmのメンブレンフィルター(商品名、フロロポアフィルター、住友電工(株)製)にて加圧濾過し、本発明の液体組成物A〜Lを得た。
Figure 0003559762
【0128】
上記の液体組成物Aの調製で用いたアルミナ水和物は、下記合成方法により得た。
(アルミナ水和物の合成例)
米国特許第4,242,271号明細書に記載の方法でアルミニウムドデキシドを製造した。次に、米国特許第4,202,870号明細書に記載された方法で、前記アルミニウムドデキシドを加水分解してアルミナスラリーを製造した。このアルミナスラリーをアルミナ水和物の固形分が7.9%になるまで水を加えた。アルミナスラリーのpHは9.3であった。3.9%の硝酸溶液を加えてpHを調整し、コロイダルゾルを得た。このコロイダルゾルを83℃でスプレードライすることによってアルミナ水和物を作製した。このアルミナ水和物は、水中で表面がプラスに帯電し、カチオン性を示した。
【0129】
上記で得られた液体組成物Aは、pH値が3.5、ゼータ電位が+39mVであった。又、インクタンクに液体組成物Aを充填し、60℃/Dryの環境下、1ヶ月の保存試験を行ったが、その後もインクタンクに沈降物は見られず、記録ヘッドからの吐出安定性も良好であった。
【0130】
<液体組成物Bの組成>
・グリセリン 7.5重量%
・ジエチレングリコール 7.5重量%
・コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスAK
日産化学工業(株)製、平均粒子直径:0.02
μm) 10.0重量%
・ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド
(商品名:エレクトロストリッパーQE、花王
(株)製、分子量340) 0.1重量%
・ポリアリルアミン塩酸塩(分子量:8,500、
自社合成、) 0.3重量%
・硝酸 0.6重量%
・水 74.0重量%
上記の液体組成物Bの調製で用いたコロイダルシリカは、表面にカチオン処理を施したものであり、水中でカチオン性を示す。
【0131】
上記で得られた液体組成物Bは、pH値が3.8、ゼータ電位が+68mVであった。又、インクタンクに液体組成物Bを充填し、60℃/Dryの環境下、1ヶ月の保存試験を行ったが、その後もインクタンクに沈降物は見られず、記録ヘッドからの吐出安定性も良好であった。
【0132】
Figure 0003559762
上記の液体組成物Cの調製で用いたジルコニアは、水中で表面がプラスに帯電し、カチオン性を示す。
【0133】
上記で得られた液体組成物Cは、pH値が3.1、ゼータ電位が+82mVであった。又、インクタンクに液体組成物Cを充填し、60℃/Dryの環境下、1ヶ月の保存試験を行ったが、その後もインクタンクに沈降物は見られず、記録ヘッドからの吐出安定性も良好であった。
【0134】
<液体組成物Dの組成>
・グリセリン 7.5重量%
・ジエチレングリコール 7.5重量%
・ポリウレタン微粒子(平均粒子直径:0.45
μm、商品名:パーマリンUC−20、三洋化成
工業(株)製) 10.0重量%
・ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド
(商品名:エレクトロストリッパーQE、花王
(株)製、分子量340) 0.1重量%
・ポリアミンスルホン塩酸塩(商品名;PAS−
A−5、日東紡績(株)製、分子量分布のピーク
の位置3,500) 0.2重量%
・酢酸 2.5重量%
・水 72.2重量%
上記の液体組成物Dの調製で用いたポリウレタン微粒子は、表面にカチオン処理を施したものであり、水中でカチオン性を示す。
【0135】
上記で得られた液体組成物Dは、pH値が5.2、ゼータ電位が+12mVであった。又、インクタンクに液体組成物Dを充填し、60℃/Dryの環境下、1ヶ月の保存試験を行ったが、その後もインクタンクに沈降物は見られず、記録ヘッドからの吐出安定性も良好であった。
【0136】
Figure 0003559762
【0137】
上記の液体組成物Eの調製で用いたアルミナ水和物は、下記合成方法により得た。
(アルミナ水和物の合成例)
米国特許第4,2426271号明細書に記載の方法でアルミニウムドデキシドを製造した。次に、米国特許第4,202,870号明細書に記載された方法で、前記アルミニウムドデキシドを加水分解してアルミナスラリーを製造した。このアルミナスラリーをアルミナ水和物の固形分が7.9重量%になるまで水を加えた。アルミナスラリーのpHは9.3であった。3.9%の硝酸溶液を加えてpHを調整し、コロイダルゾルを得た。このコロイダルゾルを83℃でスプレードライすることによってアルミナ水和物を作製した。このアルミナ水和物は水中で表面がプラスに帯電しており、カチオン性を示した。
【0138】
上記で得られた液体組成物Eは、pH値が3.5、ゼータ電位が+39mVであった。又、インクタンクに液体組成物Eを充填し、60℃/Dryの環境下、1ヶ月の保存試験を行ったが、その後もインクタンクに沈降物は見られず、記録ヘッドからの吐出安定性も良好であった。
【0139】
Figure 0003559762
上記で使用したアルミナ水和物は、液体組成物Aで使用したと同様のものである。
【0140】
上記で得られた液体組成物Fは、pH値が3.8、ゼータ電位が+39mVであった。又、インクタンクに液体組成物Fを充填し、60℃/Dryの環境下、1ヶ月の保存試験を行ったが、その後もインクタンクに沈降物は見られず、記録ヘッドからの吐出安定性も良好であった。
【0141】
<液体組成物Gの組成>
・グリセリン 7.5重量%
・ジエチレングリコール 7.5重量%
・ポリアリルアミン酢酸塩(分子量2,000、
自社合成 0.5重量%
・硝酸 0.2重量%
・ポリウレタン微粒子(平均粒子直径:0.45
μm、商品名:パーマリンUC−20、三洋化成
工業(株)製) 10.0重量%
・塩化ベンザルコニウム 0.5重量%
・水 73.8重量%
上記で使用したアルミナ水和物は、液体組成物Aで使用したと同様のものである。又、ポリウレタン微粒子は表面にカチオン処理を施したものであり、水中でカチオン性を示す。
【0142】
上記で得られた液体組成物Gは、pH値が4.8、ゼータ電位が+12mVであった。又、インクタンクに液体組成物Gを充填し、60℃/Dryの環境下、1ヶ月の保存試験を行ったが、その後もインクタンクに沈降物は見られず、記録ヘッドからの吐出安定性も良好であった。
【0143】
<液体組成物Hの組成>
・グリセリン 7.5重量%
・ジエチレングリコール 7.5重量%
・ポリアリルアミン酢酸塩(分子量2,000、
自社合成) 0.5重量%
・硝酸 0.2重量%
・ポリウレタン微粒子(平均粒子直径:0.45
μm、商品名:パーマリンUC−20、三洋化成
工業(株)製) 10.0重量%
・トリエチレンテトラミン塩酸塩 0.5重量%
[HN(CHCHNH)H・HCl]
・水 73.8重量%
上記で使用したアルミナ水和物は、液体組成物Eで使用したと同様のものである。又、ポリウレタン微粒子は表面にカチオン処理を施したものであり、水中でカチオン性を示す。
【0144】
上記で得られた液体組成物Hは、pH値が4.7、ゼータ電位が+12mVであった。又、インクタンクに液体組成物Hを充填し、60℃/Dryの環境下、1ヶ月の保存試験を行ったが、その後もインクタンクに沈降物は見られず、記録ヘッドからの吐出安定性も良好であった。
【0145】
Figure 0003559762
上記で使用したオキシ硝酸ジルコニウム2水和物の1%水溶液のpHは2.7だった。又、上記で使用したアルミナ水和物は、下記合成方法により得た。
【0146】
(アルミナ水和物の合成例)
米国特許第4,242,271号明細書に記載の方法でアルミニウムドデキシドを製造した。次に米国特許第4,202,870号明細書に記載された方法で、前記アルミニウムドデキシドを加水分解してアルミナスラリーを製造した。このアルミナスラリーをアルミナ水和物の固形分が7.9重量%になるまで水を加えた。アルミナスラリーのpHは9.3であった。3.9%の硝酸溶液を加えてpHを調整し、コロイダルゾルを得た。このコロイダルゾルを83℃でスプレードライすることによってアルミナ水和物を作製した。このアルミナ水和物は水中で表面がプラスに帯電し、カチオン性を示す。
【0147】
上記で得られた液体組成物Iは、pH値が3.8、ゼータ電位が+42mVであった。又、インクタンクに液体組成物Iを充填し、60℃及び5℃/Dryの環境下、1ヶ月の保存試験を行ったが、その後もインクタンクに沈降物やインクの増粘は見られず、記録ヘッドからの吐出安定性も良好であった。
【0148】
<液体組成物J>
・グリセリン 7.5重量%
・ジエチレングリコール 7.5重量%
・コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスAK
日産化学工業(株)製、平均粒子直径:0.02
μm) 10.0重量%
・15%ポリ塩化アルミニウム水溶液(商品名:
Paho#2S、浅田化学工業(株)製)2重量%
・水 73.0重量%
上記で使用したコロイダルシリカは、表面にカチオン処理を施したものであり、水中でカチオン性を示す。又、上記で使用したポリ塩化アルミニウムの1%水溶液のpHは、4.3であった。
【0149】
上記で得られた液体組成物Jは、pH値が3.9、ゼータ電位が+71mVであった。又、インクタンクに液体組成物Jを充填し、60℃及び5℃/Dryの環境下、1ヶ月の保存試験を行ったが、その後もインクタンクに沈降物やインクの増粘は見られず、記録ヘッドからの吐出安定性も良好であった。
【0150】
<液体組成物K>
・グリセリン 7.5重量%
・ジエチレングリコール 7.5重量%
・コロイダルジルコニア(平均粒子直径:0.10
μm、商品名ZrOゾル、第一稀元素化学工業
(株)製) 10.0重量%
・オキシ酢酸ジルコニウム 0.5重量%
・硝酸 0.2重量%
・水 74.3重量%
上記で用いたジルコニアは、水中で表面がプラスに帯電しており、カチオン性を示した。又、上記で使用したオキシ酢酸ジルコニウムの1%水溶液のpHは、3.5であった。
【0151】
上記で得られた液体組成物Kは、pH値が3.4、ゼータ電位が+78mVであった。又、インクタンクに液体組成物Kを充填し、60℃及び5℃/Dryの環境下、1ヶ月の保存試験を行ったが、その後もインクタンクに沈降物やインクの増粘は見られず、記録ヘッドからの吐出安定性も良好であった。
【0152】
Figure 0003559762
上記で使用したアルミナ水和物は液体組成物Aと同一のものを用いた。又、上記で使用したオキシ硝酸ジルコニウム2水和物の1%水溶液のpHは、2.7であった。
【0153】
上記で得られた液体組成物Lは、pH値が3.8、ゼータ電位が+45mVであった。又、インクタンクに液体組成物Iを充填し、60℃及び5℃/Dryの環境下、1ヶ月の保存試験を行ったが、その後もインクタンクに沈降物やインクの増粘は見られず、記録ヘッドからの吐出安定性も良好であった。
【0154】
次に、本発明で使用するインクサブセット1及び2の作製について説明する。
<インクサブセット1の作製>
下記に示す各成分を混合し、十分攪拌して溶解後、ポアサイズが0.45μmのフロロポアフィルター(商品名、住友電工(株)製)にて加圧濾過し、本実施例のブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各染料インクBk1、Y1、M1及びC1を得、この記録液をインクサブセット1とする。
【0155】
Figure 0003559762
【0156】
Figure 0003559762
【0157】
Figure 0003559762
【0158】
Figure 0003559762
【0159】
<インクサブセット2の作製>
下記に示す各成分を混合し、十分攪拌して溶解後、ポアサイズが0.45μmのフロロポアフィルターに(商品名、住友電工(株)製)にて加圧濾過し、本実施例のブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各顔料インクBk2、Y2、M2及びC2を得、この記録液をインクサブセット2とする。
【0160】
Figure 0003559762
【0161】
上記成分を混合し、ウォーターバスで70℃に加温し、樹脂分を完全に溶解させる。この溶液に新たに試作されたカーボンブラック(MCF88、三菱化成製)10部及びイソプロピルアルコール1部を加え、30分間プレミキシングを行った後、下記の条件で分散処理を行った。
・分散機:サンドグラインダー(五十嵐機械製)
・粉砕メディア:ジルコニウムビーズ、1mm径
・粉砕メディアの充填率:50%(体積比)
・粉砕時間:3時間
更に、遠心分離処理(12,000rpm.、20分間)を行い、粗大粒子を除去して分散液とした。
【0162】
[インクの作製]
上記の分散液を使用し、下記の組成比を有する成分を混合し、顔料を含有するインクを作製し、これをブラックインクBk2とした。
・上記顔料分散液 30.0重量%
・グリセリン 10.0重量%
・エチレングリコール 5.0重量%
・N−メチルピロリドン 5.0重量%
・エチルアルコール 2.0重量%
・イオン交換水 48.0重量%
【0163】
(イエローインクY2)
ブラックインクBk2の調製の際に使用したカーボンブラック(MCF88、三菱化成製)10部をピグメントイエロー74に代えたこと以外は、ブラックインクBk2の調製と同様にして顔料を含有イエローインクY2を調製した。
【0164】
(マゼンタインクM2)
ブラックインクBk2の調製の際に使用したカーボンブラック(MCF88、三菱化成製)10部をピグメントレッド7に代えたこと以外は、ブラックインクBk2の調製と同様にして顔料を含有マゼンタインクM2を調製した。
【0165】
(シアンインクC2)
ブラックインクBk2の調製の際に使用したカーボンブラック(MCF88、三菱化成製)10部をピグメントブルー15に代えたこと以外は、ブラックインクBk2の調製と同様にして顔料を含有シアンインクC2を調製した。
【0166】
<実施例1〜実施例8>
液体組成物A、B、C及びDと、インクサブセット1(Bk1、Y1、M1、C1)及びインクサブセット2(Bk2、Y2、M2、C2)の各色インクを下記表1に記載したように組み合わせて、普通紙[(商品名:キヤノンオフィスマルチ)(以降「KG紙」と略)]に記録を行い、実施例1〜8の画像を得た。使用したインクジェット記録装置としては、図4に示したのと同様の記録装置を用い、図8に示した5つの記録ヘッドを用いてカラー画像を形成した。この際、液体組成物を先打ちして先ず被記録媒体上に付着させ、その後インクを付着させた。
【0167】
具体的には、印字領域を3回の走査で印字する3パスファイン印字を行なった。このとき液体組成物は、各パス毎に、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのいずれかのインクが印字される画素位置に印字を行なった。即ち、各パス毎のイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの印字データの論理和を液体組成物の印字データとして用いた。尚、ファイン印字時のファインマスクの種類には特に制限はなく、公知の技術が利用可能であるので、ここでの詳細な説明は省略する。又、ここで用いた記録ヘッドは、600dpiの記録密度を有し、駆動条件としては、駆動周波数9.6kHzとした。600dpiのヘッドを使用したときの1ドットあたりの吐出量はイエロー、マゼンタ、シアンインク及び液体組成物については夫々15ng、ブラックインクについては1ドットあたり30ngのヘッドを使用した。
【0168】
【表1】
Figure 0003559762
【0169】
(比較例1及び比較例2)
インクサブセット1及び2とを各々用いて印字を行った。上記インクサブセット1及びインクサブセット2のみを用いて記録(比較例1及び2)において用いた記録ヘッドは、600dpiの記録密度を有し、駆動条件としては、駆動周波数9.6kHzとした。600dpiのヘッドを使用したときの1ドット当たりの吐出量はイエロー、マゼンタ、及びシアンインクについては夫々約15ng、ブラックインクについては1ドット当たり約30ngのヘッドを使用し、実施例1〜8の場合と同条件で、同種の被記録媒体に記録を行った。
【0170】
<評価方法及び評価基準>
実施例1〜8及び比較例1、2で得られた夫々の記録画像について、下記の評価方法及び評価基準で評価を行った。その結果を表2に示す。
【0171】
(記録画像の評価方法)
(1)発色性
高精細XYZ・CIELAB・RGB標準画像(SHIPP)(監修:高精細標準画像作成委員会、発行:画像電子学会)のRGBカラーチャートをプリンタを用いて印字し、それらのカラーチャートを測色した。発色性の評価は同技術解説書に記載されている方法で色彩分布の3次元的な広がり(以下文中では色域体積と呼ぶ)の計算を行い、比較した。その際、印字画像は画像処理を同一条件とし、測色は印字後24時間経過後、GRETAGスペクトロリノで光源:D50、視野:2°の条件で測定した。評価基準を以下に示す。インクサブセットのみの印字に対しての色域体積の比を評価基準とした。
【0172】
尚、インクジェット用コート紙(商品名:カラーBJ用紙LC−101、キヤノン(株)製)を用いてインクサブセット1で印字して比較例1の印字物との色域体積の比を求めたところ、1.3倍であった。
AA:色域体積比が1.4倍以上
A:色域体積比が1.2以上1.4倍未満
B:色域体積比が1.0以上1.2倍未満
C:色域体積比が1.0倍未満
【0173】
(2)ブリード
プリンターを用いて、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラック各色のインクのベタ画像を隣接して印字し、各色の境界部でのブリードの程度を目視により観察した。評価は各色の隣接部のうちで最もブリードが発生している色境界について着目し、判定基準は、以下の通りである。
A:ブリードが殆ど発生しないもの。
B:ややブリードが発生するが、事実上問題のないもの。
C:上記以外のもの。
【0174】
(3)均一性
プリンターを用いて、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラック各色のインクのベタ画像を印字した後、目視にて白モヤと色ムラに関して色の均一性を評価した。特に均一性の悪い色を評価対象とした。評価基準は、以下の通りである。
A:白モヤや色ムラは殆ど発生しない。
B:若干紙の繊維に沿って白モヤや色ムラが見えるが、実質上問題のないレベルである。
C:紙の繊維に沿って著しく白モヤや色ムラが見える。
【0175】
(4)スジムラ
プリンターを用いて、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラック各色のインクのベタ画像を印字した後、目視にてスジムラを評価した。特にスジムラの悪い色を評価対象とした。評価基準は以下の通りである。
A:スジムラは殆ど発生しない。
B:若干ヘッドスキャン毎のスジムラが見えるが、実質上問題のないレベルである。
C:著しくヘッドスキャン毎の白いスジムラが見える。
【0176】
(5)擦過性
プリンターを用いて、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラック各色のインクのベタ画像を印字した。印字して16時間後、印字部の上にシルボン紙を重ね、更にその上に3.5cm×3.5cmの分銅を載せ、40g/cmの圧力をかけながら15cm/secの速度でシルボン紙を引張って印字部の擦過性を評価した。特に擦過性の悪い色を評価対象とした。評価基準は以下の通りである。
A:インク落ちは殆ど発生しない。
B:若干インクがシルボン紙に付着するが、印字部の色落ちは目立つレベルではない。
C:インクがシルボン紙に多く付着し、明確に印字部の色落ちが生じる。
【0177】
(6)風合い
プリンターを用いて、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラック各色のインクのベタ画像を印字した後、目視にて被記録媒体の風合いを評価した。評価基準は、以下の通りである。
A:印字部及び未印字部ともに違和感がなく普通紙の風合いを残している。
B:印字部と未印字部で風合いが異なる、又は被記録媒体全体が普通紙の風合いと大きく異なる。
【0178】
【表2】
Figure 0003559762
【0179】
<実施例9〜16>
前述のようにして得られた液体組成物E、F、G及びHと、インクサブセット1(Bk1、Y1、M1、C1)、インクサブセット2(Bk2、Y2、M2、C2)の各色インクを用いて、下記表3の組み合わせの実施例9〜16のインクセットを作製した。そして、これらのインクセットを用いて印字を行った。
【0180】
【表3】
Figure 0003559762
【0181】
上記表3に示したようにして液体組成物E〜Hとインクサブセット1及び2を組み合わせて使用する実施例9〜16の着色部の形成方法においては、下記7種の普通紙の各々に記録を行った。又、その際に使用したインクジェット記録装置としては、図4に示したのと同様の記録装置を用い、図8に示した5つの記録ヘッドを用いてカラー画像を形成した。この際、液体組成物を先打ちして先ず記録紙上に付着させ、その後、インクを付着させた。尚、これらの記録条件は、実施例及び比較例を通じて同一である。
【0182】
(被記録媒体7種(普通紙))
1)キヤノン社製:PB用紙
2)キヤノン社製:Brilliant White paper
3)Union Camp社製:Great White Inkjet
4)ハンマーミル(Hammermill)社製:Jet Print
5)ゼロックス(Xerox)社製:Xerox 4024
6)ヒューレットパッカード(Hewlett Packard)社製:Bright White Inkjet Paper
7)Aussdat Ray社製:Rey Jet
【0183】
上記の実施例9〜16で得られた各々の記録画像について、その結果を下記表4に示した。尚、ブリード及び耐水性以外の評価項目の評価基準は、上記と同様である。そして、ブリード及び耐水性の評価は以下の基準にしたがって行った。尚、表4の結果は各項目毎に上記7種の被記録媒体でほぼ同じ結果が得られたものについては平均的な評価結果を示し、媒体種によりばらつきが見られた項目については一番悪いものについての評価結果を示した。
【0184】
・ブリード
前記したプリンタを用いて、イエロー、マゼンタ、シアン、から選ばれる2色のインクを組み合わせた2次色のベタ画像とブラックインクを用いて形成したベタ画像を隣接印字した後、目視にて2次色のベタ画像とブラックのベタ画像の境界領域におけるブリードの程度を目視にて観察した。
A:画像境界部でブリードは殆ど発生していない。
B:紙種によっては、ブリードが発生している。
C:殆どの紙種でブリードが発生していた。
【0185】
・耐水性
前記したプリンターを用いて、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラック各色のインクのベタ画像を印字し、24時間放置する。マクベス濃度計によって各色ベタ画像の濃度を測定した後、静水に浸す。5分後に静水から取り出し、24時間放置する。マクベス濃度計によって、静水浸漬後の各色ベタ画像の濃度を測定する。評価基準は以下の通りである。
A:静水浸漬後の濃度が静水浸漬前の濃度の90%以上(濃度残存率≧90%)
B:静水浸漬後の濃度が静水浸漬前の濃度の80%以上90%未満(90%>濃度残存率≧80%)
C:静水浸漬後の濃度が静水浸漬前の濃度の80%未満(80%>濃度残存率)
【0186】
【表4】
Figure 0003559762
【0187】
実施例17〜24
液体組成物I、J、K及びLとインクサブセット1、2とを下記表5に示したように組み合わせて、実施例1〜8と同様の方法で記録画像を形成し、実施例1〜8と同様の方法ならびに評価基準にて該記録画像を評価した。その結果を下記表6に示す。
【0188】
【表5】
Figure 0003559762
【0189】
【表6】
Figure 0003559762
【0190】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、特に、普通紙に対するカラーインクジェット記録を行った場合に、普通紙の風合いを損なうことなく保持しながらインクジェット用コート紙に形成される画像並みの優れた発色性と色の均一性が得られ、且つ、印字部の擦過性に優れ、更にブリードをも抑制したインクジェット記録画像が提供される。又、本発明によれば、保存安定性や記録ヘッドからの吐出安定性にも優れた液体組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】インクジェット記録装置のヘッド部の縦断面図である。
【図2】インクジェット記録装置のヘッド部の横断面図である。
【図3】インクジェット記録装置のヘッド部の外観斜視図である。
【図4】インクジェット記録装置の一例を示す斜視図である。
【図5】インクカートリッジの縦断面図である。
【図6】記録ユニットの斜視図である。
【図7】本発明の実施例で使用した複数の記録ヘッドが配列した記録ユニットを示した斜視図である。
【図8】本発明に使用する別の記録ヘッドの斜視図である。
【図9】コート紙にインクジェット記録を行なったときの着色部の状態を説明する模式的断面図である。
【図10】本発明にかかるインクジェット記録画像の着色部の形成過程を示す模式的な概略図である。
【図11】本発明にかかるインクジェット画像の着色部の状態を説明する模式的断面図である。
【図12】本発明にかかるインクジェットプリント装置の一つの実施態様を模式的に示す一部破断斜視図である。
【図13】図12のインクジェットプリント装置のワイピング動作を示す模式図であり、(A)はインク用ブレードの上昇、(B)はプリントヘッドのワイピング、(C)はインク用ブレードの下降、(D)は液体組成物が適正位置についた後の両ブレードの上昇、(E)は液体組成物と第2のブラックインク用ヘッドのワイピング、(F)は両ブレードの下降をそれぞれ示す。
【符号の説明】
13:ヘッド
14:溝
15:発熱ヘッド
16:保護膜
17−1:アルミニウム電極
17−2:アルミニウム電極
18:発熱抵抗体層
19:蓄熱層
20:基板
21:インク
25:被記録媒体
26:マルチ溝
27:ガラス板
28:発熱ヘッド
40:インク袋
42:栓
44:インク吸収体
45:インクカートリッジ
51:給紙部
52:紙送りローラ
53:排紙ローラ
61:ブレード
62:キャップ
63:インク吸収体
64:ヘッド回復部
65:記録ヘッド
66:キャリッジ
67:ガイド軸
68:モータ
69:ベルト
70:記録ユニット
71:ヘッド部
72:大気連通孔
81:記録ヘッド(イエロー)
82:記録ヘッド(マゼンタ)
83:記録ヘッド(シアン)
84:記録ヘッド(ブラック)

Claims (16)

  1. 第1のカチオン性物質と、該第1のカチオン性物質とは異なる第2のカチオン性物質の2種類のカチオン性物質を含有している液体組成物であって、
    上記第1のカチオン性物質は、少なくとも表面がカチオン性に帯電しているカチオン性微粒子(色材を除く)であることを特徴とする液体組成物。
  2. 色材を含むアニオン性の水性インクと共に被記録媒体に印刷する際に用いられ、該被記録媒体上で上記水性インクと混合された場合に反応するカチオン性物質を有する液体組成物であって、カチオン性物質として、第1のカチオン性物質と該第1のカチオン性物質とは異なる第2のカチオン性物質の2種類のものを含み、且つ、上記第1のカチオン性物質は、少なくとも表面がカチオン性に帯電しているカチオン性微粒子(色材を除く)であることを特徴とする液体組成物。
  3. 少なくとも1種類のカチオン性微粒子に起因したゼータ電位が+5〜+90mVに存在する請求項1又は2に記載の液体組成物。
  4. 更に水中での一次解離定数pKaが5以下である酸を含み、pHが2〜7に調整されてなる請求項1又は2に記載の液体組成物。
  5. 前記カチオン性微粒子の平均粒子直径が、0.005〜1μmの範囲である請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体組成物。
  6. 前記第2のカチオン性物質が、カチオン性のポリマー或いはオリゴマーである請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体組成物。
  7. 前記第2のカチオン性物質は、ゲル・パーミェーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定した時に、該第2のカチオン性物質に起因した分子量が400以上10,000以下の範囲にある請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体組成物。
  8. 前記第2のカチオン性物質が、少なくとも2種類以上の化合物からなる請求項1〜7のいずれか1項に記載の液体組成物。
  9. 前記第1のカチオン性物質と前記第2のカチオン性物質との重量比が1:1〜100:1である請求項1〜8のいずれか1項に記載の液体組成物。
  10. 前記第2のカチオン性物質が、カチオン性の水溶性金属塩である請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体組成物。
  11. 前記第1のカチオン性物質と前記第2のカチオン性物質との総量が液体組成物の全質量を基準として0.1〜40質量%である請求項1〜10のいずれか1項に記載の液体組成物。
  12. 前記液体組成物がインクジェット用である請求項1〜11のいずれか1項に記載の液体組成物。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の液体組成物と色材を含有するインクとを組み合わせたインクセットであって、
    該インクが下記i)〜iii)のいずれかを含有することを特徴とするインクセット
    i)アニオン性基を有する水溶性染料
    ii)顔料と該顔料の分散剤であるアニオン性化合物
    iii)顔料表面にアニオン性基が直接若しくは他の原子団を介して結合されている顔料。
  14. 前記インクが、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、レッド、ブルー及びグリーンからなる各色インク群から選ばれる少なくとも1色である請求項13に記載のインクセット。
  15. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の液体組成物と、アニオン性の色材を含有するインクとを、両者が互いに被記録媒体上で接する状態となるようにして付与される過程を有することを特徴とする画像形成方法。
  16. 前記液体組成物の被記録媒体への付与及び前記インクの被記録媒体への付与の少なくとも一方を、記録信号に応じてオリフィスから吐出させて行うインクジェット記録方法によって行う請求項15に記載の画像形成方法。
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