JP2002331741A - インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置 - Google Patents

インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置

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JP2002331741A
JP2002331741A JP2001140564A JP2001140564A JP2002331741A JP 2002331741 A JP2002331741 A JP 2002331741A JP 2001140564 A JP2001140564 A JP 2001140564A JP 2001140564 A JP2001140564 A JP 2001140564A JP 2002331741 A JP2002331741 A JP 2002331741A
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liquid composition
fine particles
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recording
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English (en)
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Daisaku Ide
大策 井手
Masao Kato
真夫 加藤
Fumitaka Goto
文孝 後藤
Hiroshi Tomioka
洋 冨岡
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Canon Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 カラー画像の形成において発色性と色の均一
性に優れた画像を得ることができるインクジェット記録
方法及びインクジェット記録装置の提供。 【解決手段】 色材を含むアニオン性若しくはカチオン
性の水性インクと、上記水性インクに対して逆極性に表
面が帯電している微粒子が分散状態で含まれている水性
の液体組成物とを用いるインクジェット記録方法であっ
て、印刷対象画像中の無彩色部分を前記液体組成物及び
複数の有彩色インクで表現することを特徴とするインク
ジェット記録方法及びインクジェット記録装置。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カラー画像の形成
において発色性と色の均一性に優れた画像を得ることが
できるインクジェット記録方法及びインクジェット記録
装置に関する。
【0002】
【従来の技術】インクジェット記録方法は、インクを飛
翔させ、紙等の被記録媒体にインクを付着させて記録を
行うものである。例えば、特公昭61−59911号公
報、特公昭61−59912号公報及び特公昭61−5
9914号公報において開示されている、吐出エネルギ
ー供給手段として電気熱変換体を用い、熱エネルギーを
インクに与えて気泡を発生させることにより液滴を吐出
させる方式のインクジェット記録方法によれば、記録ヘ
ッドの高密度マルチオリフィス化を容易に実現すること
ができ、高解像度及び高品位の画像を高速で記録するこ
とができる。
【0003】ところで、従来のインクジェット記録方法
に用いられるインクは、水を主成分とし、これにノズル
内でのインクの乾燥防止、ノズルの目詰まり防止等の目
的でグリコール等の水溶性高沸点溶剤を含有しているも
のが一般的である。そのためこのようなインクを用いて
被記録媒体に記録を行った場合には、十分な定着性が得
られなかったり、被記録媒体としての記録紙表面におけ
る填料やサイズ剤の不均一な分布によると推定される不
均一画像の発生等の問題を生じる場合がある。一方、近
年は、インクジェット記録画像に対しても、銀塩写真と
同レベルの高い画質を求める要求が強くなっており、イ
ンクジェット記録画像の画像濃度を高めること、色再現
領域を広げること、更には記録画像の色の均一性を向上
させることに対する技術的な要求が非常に高くなってい
る。
【0004】このような状況のもとで、インクジェット
記録方法の安定化、そしてインクジェット記録方法によ
る記録画像の品質向上を図るために、これまでにも種々
の提案がなされてきている。被記録媒体に関する提案の
うちの一つとして、被記録媒体の基紙表面に、充填材や
サイズ剤を塗工する方法が提案されている。例えば、充
填材として色材を吸着する多孔質微粒子を基紙に塗工
し、この多孔質微粒子よってインク受容層を形成する技
術が開示されている。これらの技術を用いた被記録媒体
として、インクジェット用コート紙等が発売されてい
る。
【0005】このような状況のもとで、インクジェット
記録方法の安定化、そしてインクジェット記録方法によ
る記録画像の品質向上を図るために、これまでにも種々
の提案がなされてきている。以下に、その代表的なもの
の幾つかをまとめる。 (1)インクに揮発性溶剤や浸透溶剤を内添する方法;
被記録媒体へのインクの定着性を早める手段として特開
昭55−65269号公報に、インク中に界面活性剤等
の浸透性を高める化合物を添加する方法が開示されてい
る。また、特開昭55−66976号公報には、揮発性
溶剤を主体としたインクを用いることが開示されてい
る。 (2)インクに、インクと反応する液体組成物を被記録
媒体上で混合する方法;画像濃度の向上、耐水性の向
上、更にはブリーディングの抑制を目的として、記録画
像を形成するためのインクの噴射に先立ち或いは噴射後
に、被記録媒体上に画像を良好にせしめる液体組成物を
付与する方法が提案されている。
【0006】例えば、特開昭63−60783号公報に
は、塩基性ポリマーを含有する液体組成物を被記録媒体
に付着させた後、アニオン染料を含有したインクによっ
て記録する方法が開示されており、特開昭63−226
81号公報には、反応性化学種を含む第1の液体組成物
と該反応性化学種と反応を起こす化合物を含む第二の液
体組成物を被記録媒体上で混合する記録方法が開示され
ており、更に特開昭63−299971号公報には、1
分子当たり2個以上のカチオン性基を有する有機化合物
を含有する液体組成物を被記録媒体上に付与した後、ア
ニオン染料を含有するインクで記録する方法が開示され
ている。また、特開昭64−9279号公報には、コハ
ク酸等を含有した酸性液体組成物を被記録媒体上に付与
した後、アニオン染料を含有したインクで記録する方法
が開示されている。
【0007】また、更に特開昭64−63185号公報
には、染料を不溶化させる液体組成物をインクの付与に
先立って紙に付与するという方法が開示されている。更
に特開平8−224955号公報には、分子量分布領域
の異なるカチオン性物質を含む液体組成物を、アニオン
性化合物を含むインクとともに用いる方法が開示され、
また、特開平8−72393号公報には、カチオン性物
質と微粉砕セルロースを含む液体組成物をインクととも
に用いる方法が開示されており、いずれも画像濃度が高
く、印字品位、耐水性が良好で、色再現性、ブリーディ
ングにおいても良好な画像が得られることが記載されて
いる。また、特開昭55−150396号公報には、被
記録媒体上に染料インクで記録した後に、染料とレーキ
を形成する耐水化剤を付与する方法が開示され、記録画
像の耐水性を付与することが提案されている。
【0008】(3)インクと微粒子含有液体組成物とを
被記録媒体上で混合する方法;特開平4−259590
号公報に、無機物質からなる無色の微粒子を含有する無
色液体を被記録媒体上に付与した後、非水系記録液を付
着させる方法が開示され、特開平6−92010号公報
には、微粒子を含む溶液、又は微粒子及びバインダーポ
リマーを含む溶液を被記録媒体上に付与した後、顔料、
水溶性樹脂、水溶性溶剤及び水を含むインクを付着させ
る方法が開示されており、いずれも、紙種によらず印字
品位や発色性の良好な画像が得られることが記載されて
いる。
【0009】(背景技術)本発明者らは上記したような
各種のインクジェット記録技術について検討を重ねた結
果、各々の技術課題に対しては優れた効果を確認できる
ものの、それと引き換えに、他のインクジェット記録特
性が低下してしまう場合があることを見出した。例え
ば、上記した被記録媒体の基紙表面に充填材やサイズ剤
を塗工して得られる被記録媒体(以降コート紙という)
は、高品質な画像を形成することができる技術として認
知されている。
【0010】一般に、高彩度の画像を得るためには、色
材を凝集させずに単分子状態で被記録媒体の表面に残す
ことが必要であることは知られている。コート紙の多孔
質微粒子にはこのような機能がある。しかしながら、高
い画像濃度と画像彩度を得るためには、与えられたイン
ク中の色材に対して、多量の多孔質微粒子で、基紙を覆
い隠すような厚いインク受容層の形成が不可欠となり、
結果として、基紙の質感が失われてしまうという問題が
ある。本発明者らは、このように基紙の質感を失う程の
インク受容層が必要なのは、色材が多孔質微粒子に効率
的に吸着していないことに起因すると推測した。
【0011】1層のインク受容層を有するコート紙を想
定して以下に説明する。図9は、コート紙表面付近の断
面を模式的に示したものである。同図において、901
は基紙であり、903はインク受容層を示す。一般に、
インク受容層903は、多孔質微粒子905とそれらを
固定化する接着剤907を有する。インクが付与される
と、インクは多孔質微粒子905間の空隙を毛管現象に
よって浸透し、インク浸透部909を形成する。同図に
示したようにインク受容層での多孔質微粒子は局所的に
は密度が異なるため、この毛管現象によるインクの浸透
の仕方は場所によって異なる。このため、インクの浸透
過程において、色材は多孔質微粒子表面に均一には接触
できず、色材が効率的に多孔質微粒子に吸着されない。
【0012】更に接着剤907によってインクの浸透が
阻害される部分も生じており、インク受容層903内に
はインクが浸透できない部分が存在し、発色には寄与し
ない部分が発生する。即ち、従来のコート紙において
は、上記のような理由により、多孔質微粒子の量に対し
て効率的に色材を単分子状態で吸着することができず、
この結果、高品質の画像を得るためには多量の多孔質微
粒子が必要となり、基紙の質感を損なうこととなってい
た。
【0013】更に上記(1)の技術を採用することで、
インクの被記録媒体への定着性は向上するものの、画像
濃度の低下や、普通紙への記録やカラー画像の記録に重
要とされる色再現範囲が低下してしまう場合があった。
また、上記(2)の技術によれば、インク中の色材を被
記録媒体表面に留めることができるため、高い画像濃度
の記録画像を得ることができる。しかし、色材を被記録
媒体の表面で凝集させているためか、色の再現範囲や彩
度が十分に得られない場合があった。また、上記(3)
で説明した従来技術では、微粒子を含む溶液の付与によ
り被記録媒体の表面状態の改質はえられたものの、コー
ト紙と同等レベルの高精彩な画像は得られなかった。更
に特に、非水系記録液に関しては色材の選択性や記録付
与方法等の制限もあり、その自由度に課題が残る。この
ように、従来の方法にはいずれも課題が残されているた
め、近年において求められているより一層の高品位なイ
ンクジェット記録画像に対しては、新たなインクジェッ
ト記録技術の開発が必要であるとの認識を、本発明者ら
は持つに至った。本発明は、上記した新たな知見に基づ
き為されたものである。
【0014】また、近年はプリンタの小型化がクローズ
アップされつつあるが、該微粒子に関する発明は該微粒
子を含む液体として用いるため、従来のプリンタの基本
であるインク袋数に加えて該液体用袋を必要としてしま
うという小型化とは相反する要素も持つ。そこで本発明
者らは、プリンタ小型化を実現可能な該微粒子のプリン
タ搭載形態に関する発明をも為すに至った。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】従って本発明の目的
は、印字における信頼性にも優れる液体組成物と該液体
組成物を組み合わせたインクセットを用いて、より一層
色再現範囲が広く、ブリードの抑制や色の均一性にも優
れ、ベタ部のスジムラの発生が良好な状態に抑制された
耐擦過性にも優れたインクジェット記録方法と、小型化
をも実現可能なインクジェット記録装置を提供すること
にある。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記目的は、下記の本発
明によって達成することができる。即ち、本発明は、色
材を含むアニオン性若しくはカチオン性の水性インク
と、上記水性インクに対して逆極性に表面が帯電してい
る微粒子が分散状態で含まれている水性の液体組成物と
を用いるインクジェット記録方法であって、印刷対象画
像中の無彩色部分を前記液体組成物及び複数の有彩色イ
ンクで表現することを特徴とするインクジェット記録方
法を提供する。
【0017】また、本発明は、複数の有彩色インクには
少なくともマゼンタインク及びシアンインク、イエロー
インクが含まれている上記のインクジェット記録方法:
液体組成物中の微粒子が、被記録媒体上に着色部を形成
する際に、該微粒子表面にインク中の色材が単分子状態
で吸着されるように構成されている上記のインクジェッ
ト記録方法:微粒子がアルミナ又はアルミナ水和物であ
る上記のインクジェット記録方法を提供する
【0018】また、本発明は、色材を含むアニオン性若
しくはカチオン性の水性インクと、上記水性インクに対
して逆極性に表面が帯電している微粒子が分散状態で含
まれている水性の液体組成物とを用いるインクジェット
記録装置であって、印刷対象画像中の無彩色部分を前記
液体組成物及び有彩色インクで表現するようにしたこと
を特徴とするインクジェット記録装置;複数の有彩色イ
ンクには少なくともマゼンタインク、シアンインク及び
イエローインクが含まれている上記のインクジェット記
録装置;液体組成物中の微粒子が、被記録媒体上に着色
部を形成する際に、該微粒子表面にインク中の色材が単
分子状態で吸着されるように構成されている上記のイン
クジェット記録装置;微粒子がアルミナ又はアルミナ水
和物である上記のインクジェット記録装置を提供する。
【0019】また、本発明によれば、従来ブラックイン
クを用いて表現していた印刷部をカラーインクと該液体
組成物の併用によりその品位を損なうことなく印刷する
ことにより、インクジェット記録装置を小型化すること
ができる。尚、本明細書において「色材と微粒子との反
応」とは、両者の共有結合の他、イオン的結合、物理的
・化学的吸着、吸収、付着、その他の両者の相互作用を
意味するものとする。
【0020】
【発明の実施の形態】次に好ましい実施の形態を挙げて
本発明を更に詳しく説明する。被記録媒体に着色部を形
成する方法の好ましい実施態様としては、(i)色材を
含むインクを被記録媒体に付与する過程、及び(ii)液
体組成物を被記録媒体に付与する過程とを有し、且つ上
記被記録媒体の表面において、インクと液体組成物とが
互いに液体状態で接するように付与されるように構成す
ることが挙げられる。かかる実施態様を採用することに
よって、より一層広い色再現領域を有し、ブリードの抑
制や色の均一性にも優れ、更にベタ部のスジムラが少な
く、良好な耐擦過性をも備えたインクジェット記録画像
が安定して得られる。
【0021】更に上記目的を達成することのできる本発
明のインクセットの1実施態様としては、色材を含むイ
ンク及び液体組成物とを組み合わせたものが挙げられ
る。このような実施態様のインクセットを用いれば、よ
り一層広い色再現領域を有し、ブリードの抑制や色の均
一性にも優れ、更にベタ部のスジムラが少なく良好な耐
擦過性をも備えたインクジェット記録画像が安定して得
られる。また、記録に用いるインクや液体組成物自体
は、上記したようにその構成が極めてシンプルであるた
めに、高品質且つ高信頼性のインクジェット記録を行な
うことができるという効果が得られる。
【0022】本発明によって上記したような優れた効果
が奏される理由は明らかでないが、本発明者らは、以下
の理由によるものと考えている。先ず、本発明における
記録のメカニズムについて、図13及び図14に従って
説明する。尚、ここでは、インクとしてアニオン性基を
有する水溶性染料(アニオン性染料)を含む水性インク
を用い、同時に液体組成物として、表面がカチオン性に
帯電している微粒子が分散状態で含まれている水性の液
体組成物を用いた場合について説明する。
【0023】以下に、本発明にかかる記録画像について
図13を用いて説明する。先ず、説明に先立ち言葉の定
義を行う。本発明において「単分子状態」とは、染料や
顔料等の色材が、インク中で溶解若しくは分散した状態
をほぼ保っていることを指している。このとき、色材が
多少の凝集を引き起こしたとしても、彩度が低下しない
範囲であれば、この「単分子状態」に含まれることとす
る。例えば、染料の場合、単分子であることが好ましい
と考えられるため、便宜上染料以外の色材についても
「単分子状態」と呼ぶこととする。
【0024】図13は、本発明にかかる記録画像の着色
部Iが、主画像部IMとその周辺部ISとから成り立っ
ている状態を模式的に示した図である。図13におい
て、1301は被記録媒体、1302は被記録媒体の繊
維間に生じる空隙を示す。また、1303は、色材13
05が化学的に吸着する微粒子を模式的に示したもので
ある。図13に示したように、本発明のインクジェット
記録画像では、主画像部IMは、色材1305が、単分
子或いは単分子に近い状態(以降「単分子状態」と略
す)で均一に表面に吸着した微粒子1303と、色材の
単分子状態を保持した微粒子の凝集物1307とで構成
されている。
【0025】1309は、主画像部IM内の被記録媒体
繊維近傍に存在する微粒子同士の凝集物である。主画像
部IMは、被記録媒体繊維に微粒子1303が物理的又
は化学的に吸着する過程と、色材1305と微粒子13
03とが液−液状態で吸着する過程によって形成された
ものである。そのため、色材自体の発色特性が損なわれ
ることが少なく、普通紙等のインクの沈み込み易い記録
媒体においても、画像濃度や彩度が高く、コート紙並み
の色再現範囲の広い画像の形成が可能となる。
【0026】一方、微粒子表面1303に吸着されず、
インク中に残った色材1305は、被記録媒体1301
に対して横方向にも深さ方向にも浸透するため、周辺部
ISにインクは微少な滲みを形成する。このように記録
媒体1301の表面近傍に色材が残り、且つ周辺部にイ
ンクの微少な滲みを形成させるために、シャドウ部やベ
タ部等のインク付与量が多い画像領域においても、白モ
ヤや色ムラが少なく色の均一性に優れる。尚、図13に
示したように、被記録媒体1301がインクや液体組成
物の浸透性を有するものである場合には、本態様はイン
ク成分や液体組成物成分の被記録媒体内部への浸透は必
ずしも妨げられるものではなく、ある程度の浸透を許容
するものである。
【0027】更に本発明の液体組成物を用いた場合にお
いては、被記録媒体の表面近傍に存在する微粒子凝集物
1309が形成される際に、凝集物の内部にある程度の
大きさの細孔が形成される。前述のインク中で単独に存
在していた色材1305は被記録媒体内部へと浸透して
いく際に微粒子凝集物1309の細孔内部へと浸透し、
細孔の入口付近や内壁に理想的な単分子状態で吸着し
て、色材をより多く被記録媒体の表面近傍に残留させる
ことができる。これによってより一層優れた発色性の記
録画像を得ることができる。
【0028】図14(1)〜(4)は、本発明にかかる
被記録媒体に着色部を形成する方法の1実施態様の着色
部1400の概略断面図及びその形成過程を説明する概
略過程図である。同図において、1401はインクと液
体組成物との反応物、例えば、色材と微粒子との反応物
を主として含む部分(以降「反応部」と略す)であり、
図13の主画像部IMに相当する部分である。1402
は、液体組成物との反応に実質的に関与しなかったイン
クが、反応部1401の辺縁に流出することによって形
成された部分(以降「インク流出部」と略す)であり、
図13の周辺部ISに相当する。かかる着色部1400
は、例えば、以下のようにして形成される。尚、同図に
示した1405は、被記録媒体の繊維間に生じる空隙を
模式的に表したものである。
【0029】先ず、色材1404と反応性を有する液体
組成物1406とが液滴として被記録媒体1403に付
与され(図14(1))、その結果、液体組成物の液溜
り1407が形成される(図14(2))。該液溜り1
407内で、被記録媒体の繊維表面の近傍の微粒子14
09は、被記録媒体の繊維表面に物理的又は化学的に吸
着する。この時、分散状態が不安定となって微粒子同士
の凝集物1411を形成するものもあると考えられる。
一方で、液溜り1407内の繊維より離れた部分では、
微粒子1409は、もとの分散状態を保っていると考え
られる。
【0030】次いで、インク1413が、液滴として被
記録媒体1403に付与される(図14(2))。その
結果、先ずインク1413と液溜り1407の界面にお
いて色材1404は、微粒子1409に化学的に吸着す
る。この反応は液同士の反応(液−液反応)であるた
め、色材1404は単分子状態で、微粒子1409の表
面に均一に吸着すると考えられる(図14(3)−
2)。即ち、微粒子表面では、色材同士は凝集を起こさ
ないか或いは凝集しても僅かであると推測される。その
結果、反応部1401の表層部に単分子状態で色材14
04が吸着された微粒子が多数形成され、発色に最も影
響を与える表面層に色材を単分子状態で残存させること
ができるため、高画像濃度であって、且つ彩度の高い記
録画像を形成する。
【0031】次いで、これら色材1404が吸着した微
粒子は、分散状態が不安定となるため微粒子同士で凝集
すると考えられる(図14(3)−2)。即ち、ここで
形成された凝集物1415は、その内部にも単分子状態
の色材を保持している。この凝集物1415により、高
画像濃度、且つ高彩度の記録画像が形成される。
【0032】更に未反応の色材1404の一部は、液溜
り1407内を拡散し、未反応の微粒子1409の表面
に吸着する。このように、液溜り1407内部で色材と
微粒子との反応が更に進行するため、より高濃度で彩度
の高い画像が形成される。先に説明した被記録媒体の繊
維表面に形成された微粒子の凝集物1411には、液溜
り1407の液相が被記録媒体内への浸透を抑制する役
割があると考えられる。このため、液溜り1407で
は、浸透が抑制された液体組成物中の微粒子1409と
色材1404とがより多く混在することが可能となる。
これにより、色材1404と微粒子1409との接触確
率が高められ、反応が比較的均一に、且つ充分に進行
し、より均一で、画像の濃度と彩度とに優れた画像が形
成される。
【0033】また、液体組成物1406が被記録媒体1
403に付与された際(図14(1))や、液溜り14
07にインク1413が付与された際には(図14
(2))、微粒子1409を分散させている分散媒が変
化することによって微粒子1409の分散が不安定とな
り、色材1404が吸着する前に微粒子1409間で凝
集を起こすものも存在する。ここでいう分散媒の変化と
は、2種若しくはそれ以上の異種の液体が混合したとき
に一般的に観察される変化、例えば、液相のpHや固形
分濃度、溶剤組成、溶存イオン濃度等の物性変化を指
し、液体組成物が被記録媒体やインクと接触した際にこ
れらの変化が急激且つ複合的に生じて、微粒子の分散安
定性を破壊し凝集物を生成するものと考えられる。これ
らの凝集物は、繊維間の空隙を埋める効果や、色材を吸
着した微粒子を、より被記録媒体の表面近傍に残存させ
る効果をもたらすと推測される。
【0034】また、これら液溜り1407内で形成され
た凝集物は、被記録媒体に吸着しているものもあれば、
液相内を動ける(流動性を有する)ものも存在するが、
流動性を有するものは、前述の色材と微粒子との反応過
程と同様に、微粒子凝集物表面に色材が単分子状態で吸
着し、より大きな凝集塊を形成し、これが発色性の向上
に寄与しているものである。液相が繊維に沿って浸透す
る際に液相とともに移動し、空隙を埋めて被記録媒体の
表面を平滑化し、より均一で高濃度の画像の形成に寄与
すると考えられる。
【0035】本発明によって高発色の画像が得られるこ
とは、後述の結果により明らかであるが、これは、上記
したように、色材が単分子状態で微粒子若しくは微粒子
凝集物に吸着され、その状態で被記録媒体の表面近傍に
残ったためであると考えられる。色材が単分子状態で吸
着し、被記録媒体の表面近傍に残った微粒子は被記録媒
体の表面に定着する。これにより画像の耐擦過性や耐水
性等の堅牢性が向上する。
【0036】尚、これまで、液体組成物及びインクの順
で、被記録媒体に付与した場合で説明してきたが、イン
クと液体組成物との液−液反応が達成されれば、インク
と液体組成物との被記録媒体への付与順はこれに何ら限
られるものでなく、先ずインクを、次いで液体組成物を
付与する順であってもよい。更に図14(2)にも示し
た通り、被記録媒体に付与した液体組成物中の微粒子の
少なくとも一部は、液媒体の被記録媒体内部への浸透に
伴って、被記録媒体内部に浸透していると考えられる。
【0037】他方、図14(4)に明示したように、色
材が、先に浸透している微粒子に、単分子状態で吸着若
しくは結合していることも十分に想定し得ることであ
る。このように被記録媒体内部において、色材が単分子
状態で吸着若しくは結合している微粒子も、発色性の向
上に寄与していると考えられる。更にこのような液媒体
の浸透により、定着性も向上すると考えられる。
【0038】また、本発明の液体組成物を用いることに
より、前述の被記録媒体の表面近傍に存在する微粒子凝
集物1411が形成される際に、凝集物の内部にある程
度の大きさの細孔が形成される。液溜り1407の中で
微粒子1409に吸着しきれなかった色材1404は、
被記録媒体内部へと浸透していく際に溶媒成分とともに
細孔を通って微粒子凝集物1411の内部へと浸透する
ものもある。その際、色材1305は微粒子凝集物内の
細孔の入口付近や細孔内壁に吸着し、溶媒成分のみが被
記録媒体内部へと浸透していくことによって、色材をよ
り多く微粒子凝集物1411の表面や内部に効率よく吸
着させ、被記録媒体の表面近傍に残留させることができ
る。
【0039】更に色材1404が染料の場合、微粒子凝
集物1411の細孔直径は色材1404のインク中で存
在している分子サイズの1〜数倍程度であるために、細
孔内部に吸着した色材1404は、色材同士の凝集が極
めて起こり難く、理想的な単分子状態を形成することが
可能となる。このことが発色性の更なる向上に大きく寄
与し、より一層広い色再現範囲を有する記録画像を得る
ことができる。
【0040】また、微粒子凝集物1411の細孔物性
は、液体組成物中に含まれる微粒子だけでなく、溶媒組
成等によっても影響されることが分かり、液体組成物か
ら微粒子凝集物を形成し、この微粒子凝集物のある特定
の細孔半径領域における細孔容積が、被記録媒体上で形
成される画像形成能と非常に相関性が高いことを見出し
た。
【0041】更に本発明では、被記録媒体の表面で、微
粒子と色材とを液相で反応させることにより、色材がア
ニオン性であるときは、極めて効率的にカチオン性微粒
子表面に色材が吸着することとなる。
【0042】以下に本発明と従来技術の思想の相違点に
ついて述べる。インクジェット用コート紙において、本
発明と同程度の色材吸着を達成しようとすると、多量の
カチオン性多孔質微粒子が必要となり、基紙を覆い隠す
ような厚いインク受容層の形成が不可欠となる。そのた
めに、コート紙では基紙の質感を損ねる結果に繋がる
が、本発明の液体組成物を構成する微粒子の量は少なく
できるため、被記録媒体の質感を損ねることなく、印字
部と未印字部で質感において違和感のない画像形成が可
能となる。そして前記(1)の技術のように色材自体の
被記録媒体表面での残存量が十分で無かったり、前記
(2)の技術のように色材の被記録媒体表面での残存量
が十分であっても、色材同士を凝集させてしまうもので
は無く、本発明では、微粒子表面に吸着した色材が微粒
子とともに被記録媒体表面に残すことが出来、かつ、そ
れらの色材が単分子状態を保持しているため高発色な画
像が得ることが可能となる。
【0043】また、本発明は、微粒子を含む液体組成物
とインクとを被記録媒体の表面に付与して画像を形成す
るという点において、前記した従来技術において(3)
に挙げて説明した、インクに微粒子含有液体組成物を外
添する方法と一見類似しているかのように見える。しか
し、本発明は、上記したように液体組成物と色材とを積
極的に反応させ、液体組成物中の微粒子を色材の凝集
(レーキ)を抑える手段として用いているのに対し、上
記(3)で説明した従来技術では、微粒子を含む溶液の
付与の目的は、被記録媒体の表面状態の改質であり、極
性の異なる微粒子とインク中の色材との間で化学的な反
応を生じさせるという思想は何ら開示されていない。そ
して、そのメカニズムの差異に基づくと推測される、こ
れらの記録技術にかかる記録画像と、本発明によって得
られる記録画像との品質の差異は明白なものであった。
【0044】以下、本発明を特徴づける液体組成物及び
インクについて詳細に説明する。先ず、本明細書におけ
るカチオン性のインク若しくはアニオン性のインクの定
義について述べる。インクのイオン特性についていうと
き、インク自体は荷電されておらず、それ自体では中性
であることは、当該技術分野においてよく知られている
ことである。ここでいうアニオン性のインク若しくはカ
チオン性のインクとは、インク中の成分、例えば、色材
がアニオン性基若しくはカチオン性基を有し、インク中
において、これらの基がアニオン性基又はカチオン性基
として挙動するように調整されているインクを指すもの
である。また、アニオン性又はカチオン性の液体組成物
に関してもその意味は上記と同様である。
【0045】<液体組成物>以下に本発明にかかる液体
組成物について説明する。 [液体組成物の測定方法]本発明では、以下の方法に従
って少なくとも微粒子と溶媒を含む液体組成物から得ら
れる微粒子凝集物のある特定の細孔半径領域における細
孔容積を測定する。先ず、これらの細孔物性を測定する
に当たり、上記液体組成物を以下の手順で前処理する。 (1)上記液体組成物を大気雰囲気下120℃で10時
間乾燥してほぼ溶媒分を蒸発させて乾燥する。 (2)上記乾燥物を120℃から700℃まで1時間で
昇温させた後700℃で3時間焼成する。 (3)焼成後、上記焼成物を徐々に常温に戻し焼成物を
粉体化する。 ここで上記前処理を施す理由としては、乾燥によって液
体組成物から微粒子凝集物を形成させ、焼成により溶媒
成分を完全に除去して凝集物の内部の細孔を空にして空
隙を形成するためである。
【0046】本発明で用いる細孔半径と細孔容積の測定
方法として、窒素吸着脱離法を好適に用いることができ
る。本発明で測定する対象となる微粒子凝集物の細孔の
サイズは、細孔半径が3nm〜30nmの領域での細孔
容積である。この領域における細孔容積が画像形成能に
対し相関性が高い理由は明確ではないが、推測するに、
この細孔半径より小さい領域では微粒子凝集物の内部へ
の色材や溶媒成分の浸透が著しく低下し、細孔に起因し
た色材の吸着が少なく、実質的に発色性の向上に関与し
ないと考えられる。一方、この細孔半径の領域よりも大
きな細孔では色材や溶媒成分の浸透が起こりやすくなる
反面、細孔の入口付近や内部に吸着した色材は細孔自体
の光散乱の影響によって色材が光の吸収に関与しにくく
なり、逆に発色性の低下が引き起こされると考えられ
る。
【0047】よって細孔半径が3nm〜30nmの領域
と、30nmを越える領域での細孔容積を測定すること
が形成画像の発色性能の測定に効果的である。この領域
における細孔物性の測定方法としては窒素吸着脱離法に
よる方法がもっとも最適である。細孔半径と細孔容積は
前処理した試料を120℃8時間真空脱気した後、窒素
吸着脱離法よりBarrettらの方法(J.Am.C
hem.Soc.,Vol73,373,1951)か
ら求めることができる。更に好ましい測定方法としては
細孔半径が3nm〜20nmの領域と、20nmを越え
る領域での細孔容積を測定することである。この範囲で
は色材が染料である場合、特により一層の発色性の向上
を測定するうえで好ましい。
【0048】[細孔半径及び細孔容積]微粒子凝集物の
細孔半径は前述の如く、色材の速やかな浸透と細孔入口
付近や内壁への吸着及び細孔内部での色材の凝集を防ぐ
観点から3nm〜30nmの範囲であることが好ましい
と考えられる。また、発色性の向上に寄与するだけの色
材を内部に取り込むためには同時にある程度の容量が必
要である。また、細孔容積が増すことで微粒子凝集物内
の細孔の数も増加すると考えられ、細孔内部への色材の
吸着量だけでなく、細孔の入口付近での吸着量も増加す
ると考えられる。よってこれらの観点から本発明に好適
に用いられる液体組成物は、細孔半径が3nm〜30n
mの範囲における細孔容積が0.4ml/g以上で、細
孔半径が30nmを越える領域での細孔容積が0.1m
l/g以下であるのが好ましい。即ち、細孔半径を上記
したような範囲とした場合、色材や溶媒成分が細孔内部
に浸透し易い為に、微粒子凝集物の細孔が発色性の向上
に効率的に寄与することとある。また、細孔半径が30
nmを越える領域において細孔容積が0.1ml/g以
下とすることによって、光散乱が大きな細孔を少なくす
ることができるために、細孔入口付近や内壁に吸着した
色材が発色性の向上に有効に寄与することとなる。ま
た、上記細孔半径の領域内での細孔容積が、上記の範囲
内であることによって、微粒子凝集物の内部へ浸透する
色材や溶媒成分が十分に確保されるために、細孔の入口
付近や内部に吸着する色材量が少なくなることに起因す
る発色性の向上に対する寄与の低下を有効に抑制するこ
とができる。
【0049】より好ましい範囲としては細孔半径が3n
m〜20nmの範囲における細孔容積が0.4ml/g
以上で、細孔半径が20nmを越える領域での細孔容積
が0.1ml/g以下であるのが好ましい。細孔が3n
m〜20nmの半径の範囲に多く存在することによって
特に色材に染料を用いた場合において、発色性は更に向
上し、より一層広い色再現範囲を有する画像が形成でき
る。液体組成物から形成される微粒子凝集物の細孔半径
や細孔容積は、含まれる微粒子の化学種や形状、大きさ
ばかりでなく、溶剤種やその他の添加物及びそれらの組
成比等により変化し、これらの条件を制御することによ
って微粒子凝集物の形成状態をコントロールできると考
えられる。
【0050】(微粒子)本発明において、液体組成物中
に含まれる微粒子に望まれる作用としては、 1)インクと混合した際に、色材の本来持つ発色性を損
なわずに、色材を吸着すること。 2)インクと混合した際、或いは被記録媒体に付与され
た際に、分散安定性が低下して、被記録媒体の表面に残
存すること。 等が挙げられる。これらの作用は1種若しくは2種以上
の微粒子によって達成されてもよい。
【0051】上記1)の作用を満たすための性質とし
て、例えば、微粒子が色材と逆のイオン性を呈すること
が挙げられる。これにより、微粒子は色材を静電的に吸
着できる。色材がアニオン性の場合は、カチオン性の微
粒子を用い、逆に色材がカチオン性の場合はアニオン性
の微粒子が用いられる。イオン性以外に色材を吸着する
要素としては、微粒子のサイズや質量或いは表面の形状
が挙げられる。例えば、表面に多数の細孔を持つ多孔質
微粒子は、特有の吸着特性を示し、細孔の大きさや形状
等、複数の要素によって色材を吸着できる。
【0052】上記2)の作用は、インクや被記録媒体と
の相互作用によって引き起こされる。このため、各構成
により達成されればよいが、例えば、微粒子の性質とし
て、インク組成成分や被記録媒体構成成分と逆のイオン
性を呈することが挙げられる。また、インク中或いは液
体組成物中に電解質を共存させることによっても、微粒
子の分散安定性は影響を受ける。本発明において、上記
1)と2)の作用のどちらか一方の作用が瞬時に得られ
ることが望ましい。更には上記1)と2)と両方の作用
が瞬時に得られることが好ましい。以下、夫々のイオン
性微粒子を含有する液体組成物に関して具体的に説明す
る。
【0053】[カチオン性液体組成物]カチオン性の液
体組成物としては、例えば、カチオン性基を表面に有す
る微粒子と酸を含み、該微粒子が安定に分散されてなる
液体組成物が挙げられる。本発明においては、カチオン
性の液体組成物として、例えば、酸を含みpHが2〜7
に調整されたもの、また、ゼータ電位が+5〜+90m
Vのものを好適に用いることができる。
【0054】(pH及びゼータ電位について)液体組成
物のゼータ電位について述べる。ゼータ電位の基本原理
について以下に示す。一般に、固体が液体中に分散して
いる系において、固相の表面に遊離電荷がある場合、固
相界面付近の液相には反対電荷の荷電層が電気的中性を
保つように現れる。これは電気的二重層と呼ばれ、この
電気的二重層による電位差のことをゼータ電位と呼んで
いる。ゼータ電位がプラスである場合、微粒子の表面は
カチオン性を示し、マイナスではアニオン性を示す。一
般に、その絶対値が高いほど微粒子間に働く静電的反発
力が強くなり、分散性がよいと言われ、同時に微粒子表
面のイオン性が強いことが考えられる。即ち、カチオン
性微粒子のゼータ電位が高いほどカチオン性が強く、イ
ンク中のアニオン性化合物を引き付ける力が強いと言え
る。
【0055】更に本発明者らが鋭意検討した結果、ゼー
タ電位が+5〜+90mVの範囲にある液体組成物を用
いた場合に、被記録媒体上に形成してなる着色部が、特
に優れた発色特性を呈することを見出した。その理由は
定かではないが、おそらく、微粒子のカチオン性が適度
であるために、急速なアニオン性化合物(アニオン性色
材)の凝集が起こらずに、アニオン性化合物が微粒子表
面に薄く均一に吸着するので、色材が巨大なレーキを形
成しにくく、その結果、色材本来の発色特性がより良好
な状態で発現されるものと考えられる。更に本発明のカ
チオン性の液体組成物では、アニオン性化合物を微粒子
表面に吸着した後も、微粒子が弱いカチオン性を呈しつ
つ、分散不安定状態となることで、微粒子が凝集しなが
ら被記録媒体中に存在するアニオン性のセルロース繊維
等の表面に容易に吸着して、被記録媒体の表面近傍に残
り易くなっていると考えられる。
【0056】この結果、以下に挙げる優れた効果が得ら
れるものと考えられる。即ち、インクジェット用コート
紙並みの優れた発色特性と、シャドウ部やベタ部等のイ
ンク付与量が多い画像領域において、白モヤや色ムラが
少なく、色の均一性に優れたものとなる。また、コート
紙と比べて極めて効率よく微粒子にアニオン性化合物が
吸着して発色するために、カチオン性微粒子の付与量も
少なくできるので、とりわけ普通紙に印字した場合に
は、紙の風合いを損なうことがなく、記録画像の耐擦過
性にも優れる。より好ましいゼータ電位の範囲として
は、例えば、ゼータ電位が+10〜+85mVの範囲に
あるカチオン性微粒子を含む液体組成物を使用した場合
には、ベタ印字した際にドット間の境界が目立ち難くな
り、ヘッドスキャンによるスジムラのより一層の低減を
達成することができ、更には、ゼータ電位が+15〜+
65mVの範囲にあるカチオン性微粒子を含む液体組成
物を使用すると、紙種によらず、極めて優れた発色性を
有する画像を得ることが可能となる。
【0057】本発明にかかるカチオン性の液体組成物の
pHは、保存安定性とアニオン性化合物の吸着性の観点
から、25℃付近で2〜7の範囲にあることが好まし
い。このpHの範囲内においては、アニオン性のインク
と混合した際に、アニオン性化合物の安定性を著しく低
下させることがないため、アニオン性化合物同士の強い
凝集を引き起こすことがなく、記録画像の彩度が下がっ
たり、くすんだ画像となることを有効に防止することが
できる。また、上記範囲内であるとカチオン性微粒子の
分散状態も良好であるので、液体組成物の保存安定性や
記録ヘッドからの吐出安定性を良好に維持することがで
きる。更にはインクと混合した際に、アニオン性物質が
カチオン性微粒子表面に十分に吸着されるので、被記録
媒体内部への色材の過度の浸透が抑えられ、優れた発色
性のインクジェット記録画像を得られる。より好ましい
pHの範囲としては3〜6であり、この範囲では、長期
保存による記録ヘッドの腐食を極めて有効に防止できる
とともに、記録画像の耐擦過性もより一層向上する。
【0058】(カチオン性微粒子)次に、本発明にかか
るカチオン性の液体組成物を構成する成分について述べ
る。第1の成分として挙げられるカチオン性の微粒子
は、上記した作用効果を達成するために、液体組成物中
に分散された状態において粒子自体の表面がカチオン性
を呈することを要する。表面をカチオン性とすることに
よって、アニオン性のインクと混合した際に、アニオン
性の色材が粒子表面に速やかに吸着し、色材の被記録媒
体内部への過度の浸透が抑えられるので、十分な画像濃
度のインクジェット記録画像が得られる。
【0059】これに対し、微粒子表面がカチオン性でな
く、且つ液体組成物の中で水溶性のカチオン性化合物と
別々に存在しているような場合には、カチオン性化合物
を中心に色材が凝集を起こし、色材自体の発色特性を損
なうためにインクジェット用コート紙並みの発色性を達
成することが困難となる。そのため本発明の液体組成物
に用いられる微粒子は、その表面がカチオン性である必
要があるが、本質的にカチオン性である微粒子は勿論の
こと、本来は静電的にアニオン性或いは中性である微粒
子であっても、処理によって表面がカチオン化された微
粒子であれば本発明の液体組成物に用いることができ
る。
【0060】本発明で好適に用いられるカチオン性微粒
子は、被記録媒体上で形成されるこれらの微粒子による
凝集物に細孔が形成されるものであれば本発明の目的を
達成するに十分であるために特に微粒子の材料種に限定
はない。1例として具体例を挙げるとすれば、例えば、
カチオン化した、シリカ、アルミナ、アルミナ水和物、
チタニア、ジルコニア、ボリア、シリカボリア、セリ
ア、マグネシア、シリカマグネシア、炭酸カルシウム、
炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト等や
これらの複合微粒子や有機微粒子、無機有機複合微粒子
等が挙げられる。そして、本発明の液体組成物において
は、これらを1種又は2種以上混合して使用することが
できる。
【0061】特に微粒子としてアルミナ水和物を用いた
場合は粒子表面が正電荷をもっているために好ましく、
中でもX線回折法で、べーマイト構造を示すアルミナ水
和物が優れた発色性や色の均一性、保存安定性等の点で
好ましい。アルミナ水和物は下記の一般式により定義さ
れる。 Al23-n(OH)2n・mH2O 但し式中、nは0〜3の整数の1つを表し、mは0〜1
0、好ましくは0〜5の値を有する。mH2Oの表現
は、多くの場合に結晶格子の形成に関与しない脱離可能
な水相を表すものであり、そのために、mは整数でない
値をとることもできる。但し、mとnは同時に0とはな
らない。
【0062】一般にベーマイト構造を示すアルミナ水和
物の結晶は、その(020)面が巨大平面を形成する層
状化合物であり、X線回折図形に特有の回折ピークを示
す。完全ベーマイトの他に擬ベーマイトと称する、過剰
な水を(020)面の層間に含んだ構造をとることもで
きる。この擬ベーマイトのX線回折図形はベーマイトよ
りもブロードな回折ピークを示す。
【0063】ベーマイトと擬ベーマイトは明確に区別の
できるものではないので、本発明では特に断わらない限
り、両者を含めてベーマイト構造を示すアルミナ水和物
(以下アルミナ水和物という)という。(020)面が
面間隔及び(020)の結晶厚さは、回折速度2θが1
4〜15°に現れるピークを測定して、ピークの回折角
度2θと半値幅Bから、面間隔はブラッグ(Bragg)の
式で、結晶厚さはシェラー(Scherrer)の式を用いて求
めることができる。(020)の面間隔はアルミナ水和
物の親水性・疎水性の目安として用いることができる。
本発明で用いるアルミナ水和物の製造方法としては、特
に限定されないが、ベーマイト構造をもつアルミナ水和
物を製造できる方法であれば、例えば、アルミニウムア
ルコキシドの加水分解、アルミン酸ナトリウムの加水分
解等の公知の方法で製造することができる。
【0064】特開昭56−120508号公報に開示さ
れているように、X線回折的に無定形のアルミナ水和物
を、水の存在下で50℃以上で加熱処理することによっ
てベーマイト構造に変えて用いることができる。特に好
ましく用いることができる方法は、長鎖のアルミニウム
アルコキシドに対して酸を添加して加水分解・解膠を行
うことによってアルミナ水和物を得る方法である。ここ
で、長鎖のアルミニウムアルコキシドとは、例えば、炭
素数が5以上のアルコキシドであり、更に炭素数12〜
22のアルコキシドを用いると、後述するようにアルコ
ール分の除去及びアルミナ水和物の形状制御が容易にな
るために好ましい。
【0065】添加する酸としては有機酸及び無機酸の中
から1種又は2種以上を自由に選択して用いることがで
きるが、加水分解の反応効率及び得られたアルミナ水和
物の形状制御や分散性の点で硝酸が最も好ましい。この
過程の後に水熱合成等を行って粒子径を制御することも
可能である。硝酸を含むアルミナ水和物の分散液を用い
て水熱合成を行うと、水溶液中の硝酸がアルミナ水和物
表面に硝酸根として取り込まれ、該水和物のて水分散性
を向上させることができる。また、水熱合成の後、アル
ミナ水和物スラリーに適宜酸を加えpH調整して濃縮す
ることで、少量の酸濃度で極めて安定な高固形分濃度の
アルミナ水和物スラリーを調製することができる。こう
したスラリーを用いた場合は後述する酸を別途外添する
必要なく、アルミナ水和物微粒子の分散安定性に優れた
液体組成物を作製することができる。
【0066】上記アルミニウムアルコキシドの加水分解
による方法は、アルミナヒドロゲルやカチオン性アルミ
ナを製造する方法と比較して、各種イオン等の不純物が
混入し難いという利点がある。更に長鎖のアルミニウム
アルコキシドは加水分解後の長鎖のアルコールが、例え
ば、アルミニウムイソプロキシド等の短鎖のアルコキシ
ドを用いる場合と比較して、アルミナ水和物の脱アルコ
ールを完全に行うことができるという利点もある。加水
分解の開始時の溶液のpHを6未満に設定することが好
ましい。pHが8を越えると、最終的に得られるアルミ
ナ水和物が結晶質になるので好ましくない。
【0067】また、本発明で用いられるアルミナ水和物
としては、X線回折法でベーマイト構造を示すものであ
れば、二酸化チタン等の金属酸化物を含有したアルミナ
水和物を用いることもできる。二酸化チタン等の金属酸
化物の含有比率はアルミナ水和物の0.01〜1.00
質量%が光学濃度が高くなるので好ましく、より好まし
くは0.13〜1.00質量%であり、色材の吸着速度
が速くなって、滲みやビーディングが発生し難くなる。
更に前記二酸化チタンはチタンの価数が+4価であるこ
とが必要である。二酸化チタンの含有量は硼酸に融解し
てICP法で調べることができる。また、アルミナ水和
物中の二酸化チタンの分布とチタンの価数はESCAを
用いて分析することができる。
【0068】アルミナ水和物の表面をアルゴンイオンで
100秒及び500秒エッチングして、チタンの含有量
の変化を調べることができる。二酸化チタンはチタンの
価数が+4価よりも小さくなると、二酸化チタンが触媒
として働くようになって記録画像の耐候性が低下した
り、記録画像の黄変が起こり易くなることがある。
【0069】二酸化チタンの含有はアルミナ水和物の表
面近傍だけでもよく、内部まで含有していてもよい。ま
た、含有量が表面から内部にかけて変化していてもよ
い。表面のごく近傍にのみ二酸化チタンが含有されてい
ると、アルミナ水和物の電気的特性が維持され易いの
で、更に好ましい。
【0070】二酸化チタンを含有したアルミナ水和物の
製造方法としては、例えば、学会出版センター刊「表面
の科学」第327頁(田丸謙二編、1985年)に記載
されているような、アルミニウムアルコキシドとチタン
アルコキシドの混合液を加水分解して製造する方法が好
ましい。その他の方法としては前記アルミニウムアルコ
キシドとチタンアルコキシドの混合液を加水分解すると
きに、結晶成長の核としてアルミナ水和物を添加して製
造することもできる。
【0071】二酸化チタンの代わりにシリカ、マグネシ
ウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、
硼素、ゲルマニウム、錫、鉛、ジルコニウム、インジウ
ム、燐、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリ
ブデン、タングステン、マンガン、鉄、コバルト、ニッ
ケル、ルテニウム等の酸化物を含有させて用いることが
できる。例えば、シリカを含有したアルミナ水和物は記
録画像の耐擦過性の向上に効果がある。
【0072】本発明に好適に用いられるアルミナ水和物
の(020)面の面間隔は0.614nm〜0.626
nmの範囲が好適に用いられ、この範囲内では液体組成
物中でのアルミナ水和物粒子の分散安定性が良好で、保
存安定性や吐出安定性に優れた液体組成物が得られる。
この理由は定かでないが、(020)面の面間隔が上記
範囲内であれば、アルミナ水和物の疎水性及び親水性の
両比率が適度な範囲であるため、液体組成物中で粒子同
士の適度な反発による分散安定や吐出口内部での濡れ性
のバランスが適度であることにより、液体組成物の吐出
安定性が良好になるものと推測している。
【0073】また、アルミナ水和物の(020)面の結
晶厚さは4.0〜10.0nmの範囲が好ましく、この
範囲内であると透明性や色材の吸着性が優れるために好
ましい。本発明者らの知見によれば、(020)面の面
間隔と(020)面の結晶厚さは相関があるので、(0
20)面の面間隔が上記範囲内であれば(020)面の
結晶厚さを4.0〜10.0nmの範囲に調整すること
ができる。
【0074】更に、上記アルミナ水和物や金属アルミニ
ウム、アルミニウム塩等をカ焼等の熱処理により生成さ
れるアルミナ(酸化アルミニウム)も同様に正電荷をも
つため好適に用いられる。アルミナとしてはα型、γ
型、更にδ、χ、η、ρ、β型などの結晶状態を持つも
のがあり、表面がカチオン性に保たれた形で、水中にて
安定的に分散するものであればいずれも用いることが出
来る。中でもγ型は表面が活性で、色材の吸着力が高
く、比較的微粒化された安定な微粒子分散体も形成しや
すいため、発色性や保存性、吐出安定性等に優れ、好適
に用いることが出来る。
【0075】また、本発明で使用する上記したようなカ
チオン性微粒子は、印字後の発色性、色の均一性及び保
存安定性等の観点から、動的光散乱方式により測定され
る平均粒子直径が0.005〜1μmの範囲のものが好
適に用いられる。この範囲内では、被記録媒体内部への
過度の浸透を有効に防ぐことができ、発色性や色の均一
性の低下を抑えることができる。また、カチオン性微粒
子が液体組成物中で沈降することも抑えられ、液体組成
物の保存安定性の低下も有効に防止することができる。
より好ましくは平均粒子直径が0.01〜0.8μmの
範囲内のものであり、このような微粒子を用いれば、被
記録媒体に印字した後の画像の耐擦過性や記録画像の質
感が特に好ましいものとなる。更に好ましくは平均粒子
直径が0.03〜0.3μmの範囲内のものであり、こ
のような微粒子は被記録媒体上で形成される微粒子凝集
物の細孔が、目的とする細孔半径領域において効果的に
形成し易いために好ましい。
【0076】(カチオン性微粒子の細孔物性・形状)ま
た、本発明で使用する上記したようなカチオン性微粒子
は、被記録媒体上で形成される微粒子凝集物の細孔を効
率的に形成すると同時に、微粒子自体の表面に色材を効
率よく吸着させるうえにおいて、上記窒素吸着脱離法に
おける微粒子の極大細孔半径が2nm〜12nmで、全
細孔容積が0.3ml/g以上であるものが好ましい。
より好ましくは微粒子の極大細孔半径が3nm〜10n
mで、全細孔容積が0.3ml/g以上であるものが、
被記録媒体上で形成される微粒子凝集物の細孔が、目的
とする細孔半径領域において効果的に形成され易いため
に好ましい。
【0077】本発明で使用する上記微粒子のBET比表
面積が70〜300m2/gの範囲内であると、微粒子
表面への色材の吸着点が十分存在することによって、単
分子状態で色材をより効果的に被記録媒体の表面近傍に
残し易くなり、発色性の向上に寄与する。
【0078】また、本発明で使用する微粒子の形状は、
微粒子をイオン交換水に分散させてコロジオン膜上に滴
下して測定用試料を作製し、透過型電子顕微鏡で観察し
て求めることができる。本発明においては被記録媒体上
で微粒子凝集物を形成させる際に凝集物内に細孔を形成
させる点で、微粒子形状が針状や平板形状、若しくは球
状の一次粒子が、ある方向性を持って繋がった二次粒子
を形成している棒状やネックレス状等の非球形状のもの
を好適に用いることができる。
【0079】本発明者らの知見によれば、平板状の形状
の方が針状や毛状束(繊毛状)よりも水への分散性が良
く、微粒子凝集物を形成した場合に微粒子の配向がラン
ダムになるために細孔容積が大きくなるのでより好まし
い。ここで毛状束形状とは針状の微粒子が側面同士を接
して髪の毛の束のように集まった状態をいう。特に本発
明で好ましく用いることができるアルミナ水和物の中で
も擬ベーマイトには前記文献(Rocek J., etal, Applie
d Catalysis,74巻、29〜36頁、1991年)に
記載されたように、繊毛状とそれ以外の形状があること
が一般に知られている。
【0080】平板形状の粒子のアスペクト比は特公平5
−16015号公報に定義されている方法で求めること
ができる。アスペクト比は粒子の厚さに対する直径の比
で示される。ここで直径とは、アルミナ水和物を顕微鏡
又は電子顕微鏡で観察したときの粒子の投影面積と等し
い面積を有する円の直径を示すものとする。縦横比はア
スペクト比と同じように観察して平板面の最小値を示す
直径と最大値を示す直径の比で表わされる。
【0081】また、毛状束形状の場合には、アスペクト
比を求める方法は、毛状束を形成する個々の針状のアル
ミナ水和物粒子を円柱として、上下の円の直径と長さを
それぞれ求めて、その比をとって求めることができる。
最も好ましいアルミナ水和物の形状は、平板状では平均
アスペクト比が3〜10の範囲で、毛状束では平均アス
ペクト比が3〜10の範囲が好ましい。平均アスペクト
比が上記範囲内であれば、微粒子凝集物を形成したとき
に粒子間に隙間が形成され易いため多孔質構造を容易に
形成することができる。
【0082】本発明にかかる液体組成物中における上記
したようなカチオン性微粒子の含有量としては、使用す
る物質の種類により、最適な範囲を適宜決定すればよい
が、質量基準で0.1〜40%の範囲が本発明の目的を
達成するうえで好適な範囲であり、より好ましくは1〜
30%、更には3〜15%の範囲が好適である。このよ
うな範囲内では、紙種によらず優れた発色の画像を安定
に得ることができ、また、液体組成物の保存安定性や吐
出安定性にも特に優れている。
【0083】(酸)先に述べたように、本発明にかかる
液体組成物は、酸を含み、pHが2〜7に調整されたも
のであることが好ましいが、この第2の成分である酸
は、カチオン性微粒子表面をイオン化し、表面電位を高
めることにより、液中での微粒子の分散安定性を向上さ
せるとともに、インク中のアニオン性化合物(アニオン
性色材)の吸着性向上や、液体組成物の粘度調整の役割
を果たす。本発明に好適に用いられる酸は、使用するカ
チオン性微粒子と組み合わせて、所望のpHやゼータ電
位或いは微粒子分散性等の物性が得られるものであれば
特に限定はなく、下記に挙げる無機酸や有機酸等から自
由に選択して使用することができる。
【0084】具体的には、無機酸としては、例えば、塩
酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、燐酸、硼酸、炭酸等
が挙げられ、有機酸としては、例えば、下記に挙げるよ
うなカルボン酸やスルホン酸、アミノ酸等が挙げられ
る。
【0085】カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢
酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、フル
オロ酢酸、トリメチル酢酸、メトキシ酢酸、メルカプト
酢酸、グリコール酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カ
プロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリ
スチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、
リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、
フェニル酢酸、安息香酸、o−トルイル酸、m−トルイ
ル酸、p−トルイル酸、o−クロロ安息香酸、m−クロ
ロ安息香酸、p−クロロ安息香酸、o−ブロモ安息香
酸、m−ブロモ安息香酸、p−ブロモ安息香酸、o−ニ
トロ安息香酸、m−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香
酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジ
ピン酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、フ
タル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、p
−ヒドロキシ安息香酸、アントラニル酸、m−アミノ安
息香酸、p−アミノ安息香酸、o−メトキシ安息香酸、
m−メトキシ安息香酸、p−メトキシ安息香酸等が挙げ
られる。
【0086】また、スルホン酸としては、例えば、ベン
ゼンスルホン酸、メチルベンゼンスルホン酸、エチルベ
ンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、2,
4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2,4−ジメ
チルベンゼンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、1−
スルホナフタレン、2−スルホナフタレン、ヘキサンス
ルホン酸、オクタンスルホン酸、ドデカンスルホン酸等
が挙げられる。
【0087】また、アミノ酸としては、グリシン、アラ
ニン、バリン、α−アミノ酪酸、γ−アミノ酪酸、β−
アラニン、タウリン、セリン、ε−アミノ−n−カプロ
ン酸、ロイシン、ノルロイシン、フェニルアラニン等が
挙げられる。
【0088】そして、本発明にかかる液体組成物におい
ては、これらを1種又は2種以上混合して使用すること
ができる。これらの中でも、酸の水中での一次解離定数
pkaが5以下のものは、カチオン性微粒子の分散安定
性やアニオン性化合物の吸着性に特に優れるため、好適
に用いることができる。具体的には、塩酸、硝酸、硫
酸、燐酸、酢酸、ギ酸、シュウ酸、乳酸、クエン酸、マ
レイン酸、マロン酸等が挙げられる。
【0089】本発明にかかる液体組成物では、液体組成
物中におけるカチオン性微粒子(A)と酸(B)の混合
比率を、質量基準でA:B=200:1〜5:1、より
好ましくは150:1〜8:1の範囲となるようにする
ことが、カチオン性微粒子の分散安定性の向上及びアニ
オン性化合物の微粒子表面への吸着性の向上を図るうえ
で好ましい。
【0090】(他の構成成分)次に、カチオン性の液体
組成物を構成するその他の成分について具体的に説明す
る。本発明のカチオン性の液体組成物は、上記したカチ
オン性微粒子を必須の成分とし、好ましくは上記したよ
うな酸を含み、その他に、通常は液媒体として水を含む
が、更に水溶性有機溶剤及びその他の添加剤を含んでい
てもよい。
【0091】この際に使用する水溶性有機溶剤として
は、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトア
ミド等のアミド類、アセトン等のケトン類、テトラヒド
ロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ポリエチレング
リコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレ
ングリコール類、エチレングリコール、プロピレングリ
コール、ブチレングリコール、トリエチレングリコー
ル、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコー
ル、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等の
アルキレングリコール類、エチレングリコールメチルエ
ーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ト
リエチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アル
コールの低級アルキルエーテル類、エタノール、イソプ
ロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチル
アルコール等の1価アルコール類の他、グリセリン、N
−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−イミダ
ゾリジノン、トリエタノールアミン、スルホラン、ジメ
チルサルホキサイド等が挙げられる。上記水溶性有機溶
剤の含有量については特に制限はないが、例えば、液体
組成物全質量の5〜60%、更には5〜40%が好適な
範囲である。
【0092】また、本発明にかかる液体組成物には、更
にこの他、必要に応じて、粘度調整剤、pH調整剤、防
腐剤、各種界面活性剤、酸化防止剤及び蒸発促進剤、水
溶性カチオン性化合物やバインダー樹脂等の添加剤を適
宜に配合しても構わない。界面活性剤の選択は、液体組
成物の被記録媒体への浸透性を調整するうえで特に重要
である。水溶性カチオン性化合物は、液体組成物のカチ
オン性の更なる付与等を目的に、本発明の作用効果を阻
害しない範囲において自由に選択して添加できる。
【0093】バインダー樹脂は、カチオン性微粒子の更
なる耐擦過性の向上等の目的で、被記録媒体の質感や液
体組成物の保存安定性や吐出安定性を損ねない範囲にお
いて併用することができ、例えば、水溶性ポリマーやエ
マルジョン、ラテックス等から自由に選択し、使用する
ことができる。
【0094】(液体組成物の表面張力)本発明にかかる
液体組成物は、無色或いは白色であることがより好まし
いが、被記録媒体の色に合わせて調色してもよい。更に
以上のような液体組成物の各種物性の好適な範囲として
は、表面張力を10〜60mN/m(dyn/cm)、
より好ましくは10〜40mN/m(dyn/cm)と
し、粘度を1〜30mPa・s(cP)としたものであ
る。
【0095】[アニオン性液体組成物]本発明にかかる
アニオン性の液体組成物は、アニオン性基を表面に有す
る微粒子を必須の構成成分とし、該微粒子が安定に分散
していることを特徴とするが、更には塩基を含み、pH
が7〜12に調整されているものや、ゼータ電位が−5
〜−90mVであるものが好ましい。
【0096】(pH及びゼータ電位について)本発明者
らが鋭意検討した結果、液体組成物のゼータ電位が−5
〜−90mVの範囲にあるものは、インク中のカチオン
性化合物(カチオン性色材)がアニオン性微粒子の表面
に特に効率よく吸着し、被記録媒体上において特に優れ
た発色特性を呈することを見出した。その理由は定かで
はないが、おそらく先に説明したカチオン性液体組成物
の場合と同様に、微粒子のアニオン性が適度であるため
に、インク中のカチオン性化合物の急速な凝集が起こら
ずに、微粒子表面に薄く均一に吸着することで色材が巨
大なレーキを形成せず、色材本来の発色特性がよりよく
発現されるものと考えられる。更に本発明のアニオン性
の液体組成物においては、カチオン性化合物を微粒子表
面に吸着した後に分散不安定となり、被記録媒体上で溶
媒成分が浸透する際の濃度変化で微粒子同士が凝集して
表面近傍に残り易くなるものと考えられる。
【0097】この結果、以下に挙げる優れた効果が得ら
れるものと考えられる。即ち、インクジェット用コート
紙並みの優れた発色特性とシャドウ部やベタ部等のイン
ク付与量が多い画像領域において、白モヤや色ムラが少
なく色の均一性に優れる。また、コート紙と比べて極め
て効率よく微粒子表面にカチオン性化合物が吸着し、発
色するために、アニオン性微粒子の付与量も少なくで
き、とりわけ普通紙に印字した場合には、紙の風合いが
保たれ、記録画像の耐擦過性も良くなる。より好ましい
ゼータ電位の範囲としては、例えば、ゼータ電位が−1
0〜−85mVの範囲にあるアニオン性微粒子を含む液
体組成物を使用した場合には、ベタ印字した際にドット
間の境界が目立ち難くなり、ヘッドスキャンによるスジ
ムラのより一層の低減を達成することができ、更には、
ゼータ電位が−15〜−65mVの範囲にあるアニオン
性微粒子を含む液体組成物を使用すると、紙種によら
ず、極めて優れた発色性を有する画像を得ることが可能
となる。
【0098】本発明のアニオン性の液体組成物のpH
は、保存安定性とカチオン性化合物の吸着性の観点から
25℃付近で7〜12の範囲であることが好ましい。こ
のpH範囲内においては、カチオン性のインクと混合し
た際に、カチオン性化合物の安定性を著しく低下させる
ことがないため、カチオン性化合物同士の強い凝集を引
き起こすことがなく、記録画像の彩度が下がったり、く
すんだ画像となることを有効に防止することができる。
【0099】また、上記のような範囲内にあれば、アニ
オン性微粒子の分散性も良好であるため、液体組成物の
保存安定性や記録ヘッドからの吐出安定性を良好に維持
することができる。更にはインクと混合した際に、カチ
オン性物質がアニオン性微粒子表面に十分に吸着され、
被記録媒体の内部への色材の過度の浸透を抑えるため、
優れた発色性のインクジェット記録画像を得られる。よ
り好ましい液体組成物のpHの範囲は8〜11であり、
pHがこの範囲内であれば、長期保存による記録ヘッド
の腐食を極めて有効に防止できるとともに、記録画像の
耐擦過性もより一層向上する。
【0100】(アニオン性微粒子)次に、本発明にかか
るアニオン性の液体組成物を構成する成分について述べ
る。第1の成分として挙げられるアニオン性の微粒子
は、上記した作用効果を達成するために、液体組成物中
に分散された状態において粒子自体の表面がアニオン性
を呈するものであることが好ましい。表面をアニオン性
とすることによってカチオン性のインクと混合した際
に、カチオン性の色材を粒子表面に吸着でき、色材が被
記録媒体内部へ過度に浸透することが抑えられるので、
十分な画像濃度のインクジェット記録画像を得ることが
できる。
【0101】これに対し、微粒子表面がアニオン性でな
く、且つ液体組成物の中で、水溶性のアニオン性化合物
と別々に存在している場合には、アニオン性化合物を中
心に色材が凝集を起こし、色材自体の発色特性を損なう
ために、インクジェット用コート紙並みの発色性を達成
することが困難となる。そのため本発明の液体組成物で
用いる微粒子は、表面がアニオン性に帯電していること
が必要であるが、本質的にアニオン性である微粒子は勿
論のこと、本来は静電的にカチオン性或いは中性の微粒
子であっても、処理によって表面がアニオン化された微
粒子であれば用いることができる。
【0102】本発明で好適に用いられるアニオン性微粒
子は、被記録媒体上で形成されるこれらの微粒子による
凝集物に細孔が形成されるものであれば本発明の目的を
達成するに十分であるために特に微粒子の材料種に限定
はない。1例として具体例を挙げるとすれば、例えば、
アニオン化した、シリカ、チタニア、ジルコニア、ボリ
ア、シリカボリア、セリア、マグネシア、シリカマグネ
シア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛等
やこれらの複合微粒子や有機微粒子、無機有機複合微粒
子等が挙げられる。そして、本発明の液体組成物におい
ては、これらを1種又は2種以上混合して使用すること
ができる。
【0103】また、本発明で使用するアニオン性微粒子
は、先に説明したカチオン性微粒子の場合と同様に、印
字後のインクの発色性、色の均一性及び保存安定性の観
点から、動的光散乱方式により測定される平均粒子直径
が0.005〜1μmの範囲のものが好適である。より
好ましくは平均粒子直径が0.01〜0.8μmの範囲
内のものであり、このような微粒子を用いれば、被記録
媒体に印字した後の耐擦過性や質感が特に好ましいもの
となる。更に好ましくは平均粒子直径が0.03〜0.
3μmの範囲内のものであり、このような微粒子は被記
録媒体上で形成される微粒子凝集物の細孔が、目的とす
る細孔半径領域において効果的に形成し易いために好ま
しい。
【0104】(アニオン性微粒子の細孔物性・形状)ま
た、本発明で使用する上記したようなアニオン性微粒子
は、被記録媒体上で形成される微粒子凝集物の細孔を効
率的に形成すると同時に、微粒子自体の表面に色材を効
率よく吸着させるうえにおいて前記窒素吸着脱離法にお
ける微粒子の極大細孔半径が2nm〜12nmで、全細
孔容積が0.3ml/g以上であるものが好ましい。よ
り好ましくは微粒子の極大細孔半径が3nm〜10nm
で、全細孔容積が0.3ml/g以上であるものが被記
録媒体上で形成される微粒子凝集物の細孔が、目的とす
る細孔半径領域において効果的に形成され易いために好
ましい。
【0105】本発明で使用する微粒子のBET比表面積
は70〜300m2/gの範囲内であると、微粒子表面
への色材の吸着点が十分存在ことによって単分子状態で
色材をより効果的に被記録媒体の表面近傍に残し易くな
り、発色性の向上に寄与する。
【0106】また、本発明で使用する微粒子の形状は、
微粒子をイオン交換水に分散させてコロジオン膜上に滴
下して測定用試料を作製し、透過型電子顕微鏡で観察し
て求めることができる。本発明においては被記録媒体上
で微粒子凝集物を形成させる際に凝集物内に細孔を形成
させる点で、微粒子形状が針状や平板形状、若しくは球
状の一次粒子がある方向性を持って繋がった二次粒子を
形成している棒状やネックレス状等の非球形状のものを
好適に用いることができる。本発明者らの知見によれ
ば、平板状の形状の方が針状よりも水への分散性が良
く、微粒子凝集物を形成した場合に微粒子の配向がラン
ダムになるために細孔容積が大きくなるのでより好まし
い。
【0107】上記したようなアニオン性微粒子の液体組
成物中の含有量としては、使用する物質の種類により、
最適な範囲を適宜に決定すればよいが、質量基準で0.
1〜40%の範囲とすることが本発明の目的を達成する
上で好適な範囲であり、より好ましくは1〜30%、更
には3〜15%の範囲が好適である。このような範囲内
では、紙種によらず、優れた発色の画像を安定に得るこ
とができ、また、液体組成物の保存安定性や吐出安定性
にも特に優れている。
【0108】(塩基)先に述べたように、本発明にかか
るアニオン性の液体組成物は、塩基を含み、pHが7〜
12に調整されたものであることが好ましいが、この第
2の成分である塩基は、アニオン性微粒子表面をイオン
化し、表面電位を高めることにより液中での分散安定性
を向上させるとともに、インク中のカチオン性化合物
(カチオン性色材)の吸着性向上や液体組成物の粘度調
整の役割を果たす。本発明に好適に用いられる塩基は、
使用するアニオン性微粒子と組み合わせた場合に、所望
のpH、ゼータ電位及び微粒子分散性等の物性が得られ
るものであれば特に限定はなく、下記に挙げるような無
機化合物や有機化合物等から自由に選択して、使用する
ことができる。
【0109】具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、
水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、
アンモニア、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、モル
ホリン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、
トリエタノールアミン、エチルモノエタノールアミン、
ノルマルブチルモノエタノールアミン、ジメチルエタノ
ールアミン、ジエチルエタノールアミン、エチルジエタ
ノールアミン、ノルマルブチルジエタノールアミン、ジ
ノルマルブチルエタノールアミン、モノイソプロパノー
ルアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパ
ノールアミン等のアルカノールアミンを用いることがで
きる。これらの中でも特に、塩基の水中での一次解離定
数pkbが5以下の塩基は、アニオン性微粒子の分散安
定性やカチオン性化合物(カチオン性色材)の吸着性に
特に優れるため、好適に用いられる。
【0110】本発明にかかる液体組成物中でのアニオン
性微粒子(A)と塩基(B)の混合比率は、質量基準で
A:B=200:1〜5:1、より好ましくは150:
1〜8:1の範囲であれば、アニオン性微粒子の分散安
定性や、該微粒子表面へのカチオン性化合物の吸着性に
優れるために好ましい。
【0111】(他の構成成分)次に、アニオン性の液体
組成物を構成するその他の成分について具体的に説明す
る。本発明のアニオン性の液体組成物は、上記したアニ
オン性微粒子を必須の成分とし、好ましくは上記したよ
うな塩基を含み、その他に、通常は液媒体として水を含
むが、更に水溶性有機溶剤及びその他の添加剤、例え
ば、粘度調整剤、pH調整剤、防腐剤、各種界面活性
剤、酸化防止剤、蒸発促進剤、水溶性アニオン性化合物
やバインダー樹脂等の添加剤を適宜配合してもかまわな
い。
【0112】(液体組成物の表面張力)本発明にかかる
アニオン性の液体組成物は、無色或いは白色であるのが
より好ましいが、被記録媒体の色に合わせて調色しても
よい。更に以上のような液体組成物の各種物性の好適な
範囲としては、表面張力を10〜60mN/m(dyn
/cm)、より好ましくは10〜40mN/m(dyn
/cm)とし、粘度を1〜30mPa・s(cP)とし
たものである。
【0113】(液体組成物の製造方法)前記微粒子を含
む本発明にかかる液体組成物の製造方法としては、一般
に分散に用いられている方法等の中から選択して用いる
ことができる。具体的には液体組成物中の微粒子の平均
粒子径や粒度分布を上記範囲にするために、ロールミ
ル、サンドミル、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザ
ー、超高圧乳化機(例えば、商品名ナノマイザー等)等
の分散機を用いて分散処理や、遠心分離や限外ろ過等に
よる分級処理等が好適に用いられ,これらの処理手段に
よって液体組成物中の微粒子の分散粒子径を揃えること
ができる。
【0114】<水性インク> [アニオン性インク]次に、上記で説明したカチオン性
の液体組成物と組み合わせて本発明にかかるインクセッ
トを構成する水性のアニオン性インクについて説明す
る。ここでいうインクセットとは、本発明にかかる液体
組成物と、アニオン性物質(アニオン性色材)を含有す
る少なくとも1種類のアニオン性インクとの組み合わせ
をいう。また、このインクセットから本発明にかかる液
体組成物を除いた、少なくとも1種類のインクの組み合
わせをインクサブセットと呼ぶ。
【0115】本発明で使用するアニオン性インクは、色
材としてアニオン性基を含有する水溶性染料を用いるか
或いは色材として顔料を用いる場合には、アニオン性化
合物を併用させたもの(これも本発明ではアニオン性色
材という)を用いることが好ましい。本発明で使用され
る上記のようなアニオン性インクには、更にこれに、
水、水溶性有機溶剤及びその他の成分、例えば、粘度調
整剤、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、酸化防止剤等
が必要に応じて含まれて構成される。以下、これらのイ
ンクの各構成成分について説明する。
【0116】(水溶性染料)本発明で使用するアニオン
性基を有する水溶性染料としては、例えば、カラーイン
デックス(Color Index)に記載されている水溶性の酸
性染料、直接染料、反応性染料であれば特に限定されな
い。また、カラーインデックスに記載のないものでも、
アニオン性基、例えば、スルホン基、カルボキシル基等
を有するものであれば特に限定されない。ここでいう水
溶性染料の中には、溶解度のpH依存性があるものも含
まれる。
【0117】(顔料)水性のアニオン性インクの別の形
態としては、上記のようなアニオン性基を有する水溶性
染料の代わりに、顔料及びアニオン性化合物を用い、
水、水溶性有機溶剤及びその他の成分、例えば、粘度調
整剤、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、酸化防止剤等
を必要に応じて含むインクであってもよい。ここで、ア
ニオン性化合物が顔料の分散剤であってもよいし、顔料
の分散剤がアニオン性でない場合に、分散剤とは別のア
ニオン性化合物を添加したものでもよい。勿論、分散剤
がアニオン性化合物である場合でも、更に他のアニオン
性化合物を添加したものでもよい。
【0118】本発明で使用することができる顔料には特
に限定はないが、例えば、以下に説明する顔料が好適に
使用できる。イエローインクに使用される顔料として
は、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、C.I.Pigment Yel
low 2、C.I.Pigment Yellow 3、C.I.Pigment Yellow
13、C.I.Pigment Yellow 16、C.I.Pigment Yellow
83等が挙げられる。
【0119】マゼンタインクとして使用される顔料とし
ては、例えば、C.I.Pigment Red 5、C.I.Pigment Red
7、C.I.Pigment Red 12、C.I.Pigment Red 48(C
a)、C.I.Pigment Red 48(Mn)、C.I.Pigment Red
57(Ca)、C.I.Pigment Red112、C.I.Pigment Red
122等が挙げられる。
【0120】シアンインクとして使用される顔料として
は、例えば、C.I.Pigment Blue 1、C.I.Pigment Blue
2、C.I.Pigment Blue 3、C.I.Pigment Blue 15:
3、C.I.Pigment Blue 16、C.I.Pigment Blue 22、
C.I.Vat Blue 4、C.I.Vat Blue 6等が挙げられる。ま
た、上記いずれの色の色材に関しても、本発明のために
新たに製造されたものでも使用可能である。
【0121】(顔料分散剤)本発明で使用するインクに
用いることができる顔料の分散剤としては、アニオン性
基の存在によって、顔料を水、若しくは水性媒体に安定
に分散させる機能を有する水溶性樹脂ならどんなもので
も使用可能である。特に、重量平均分子量が1,000
〜30,000の範囲のものが好ましい。更に好ましく
は重量平均分子量が3,000〜15,000の範囲で
ある。具体的には、例えば、スチレン、スチレン誘導
体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、α,
β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエ
ステル等の疎水性単量体、又はアクリル酸、アクリル酸
誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、
イタコン酸誘導体、フマル酸及びフマル酸誘導体から選
ばれる二つ以上の単量体からなるブロック共重合体、グ
ラフト共重合体或いはランダム共重合体、又はこれらの
塩等が挙げられる。これらの樹脂は、塩基を溶解させた
水溶液に可溶なアルカリ可溶型の樹脂である。
【0122】更に親水性単量体からなるホモポリマー又
はそれらの塩でもよい。また、ポリビニルアルコール、
カルボキシメチルセルロース、ナフタレンスルホン酸ホ
ルムアルデヒド縮合物等の水溶性樹脂も使用することが
可能である。しかし、アルカリ可溶型の樹脂を用いた場
合の方が、分散液の低粘度化が可能で、分散も容易であ
るという利点がある。前記水溶性樹脂は、インク全量に
対して0.1〜5質量%の範囲で使用されることが好ま
しい。
【0123】本発明で使用し得る顔料インクは、以上の
如き顔料及び水溶性樹脂を水溶性媒体中に分散又は溶解
して構成される。本発明に用い得る顔料インクにおいて
好適な水性媒体としては、水及び水溶性有機溶剤の混合
溶媒であり、水としては種々のイオンを含有する一般の
水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するの
が好ましい。
【0124】分散剤が、アニオン性高分子ではない場
合、上述した顔料を含むインクに更にアニオン性化合物
を添加することが好ましい。本発明で好適に使用される
アニオン性化合物としては、顔料分散剤の項で説明した
アルカリ可溶性樹脂等の高分子物質の他、下記に挙げる
ような低分子量のアニオン性界面活性剤を挙げることが
できる。
【0125】低分子量のアニオン性界面活性剤の具体的
なものとしては、例えば、スルホコハク酸ラウリル二ナ
トリウム、スルホコハク酸ポリオキシエチレンラウロイ
ルエタノールアミドエステル二ナトリウム、ポリオキシ
エチレンアルキルスルホコハク酸二ナトリウム、カルボ
キシル化ポリオキシエチレンラウリルエーテルナトリウ
ム塩、カルボキシル化ポリオキシエチレントリデシルエ
ーテルナトリウム塩、ポリオキシエチレンラウリルエー
テル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエー
テル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンア
ルキルエーテル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウ
ム、アルキル硫酸トリエタノールアミン等が挙げられる
が、これらに限定されるわけではない。以上のようなア
ニオン性物質の好適な使用量としては、インク全量に対
して、0.05〜10質量%の範囲であり、更に好適に
は0.05〜5質量%である。
【0126】(自己分散型顔料)また、アニオン性のイ
ンクに用いることのできる顔料としては、分散剤を用い
ることなしに、水若しくは水性媒体に分散させることの
できる自己分散型の顔料も使用できる。自己分散型の顔
料は、顔料表面に少なくとも1種のアニオン性親水性基
が直接若しくは他の原子団を介して結合されているもの
である。アニオン性の親水性基としては、例えば、下記
に挙げた親水性基の中から選択される少なくとも1種で
あるもの、更に他の原子団が、炭素原子数1〜12のア
ルキレン基、置換基を有してもよいフェニレン基又は置
換基を有してもよいナフチレン基であるものが挙げられ
る。 −COOM、−SO3M、−SO2NH2、 −PO3HM、−PO32 (上記式中のMは、水素原子、アルカリ金属、アンモニ
ウム、又は有機アンモニウムを表わす。)
【0127】このように顔料表面への親水性基の導入に
よってアニオン性に帯電させた顔料は、イオンの反発に
よって優れた水分散性を有するため、水性インク中に含
有させた場合にも分散剤等を添加しなくても安定した分
散状態を維持する。
【0128】(インク中の添加成分)また、上記の成分
の他に、必要に応じて所望の物性値を持つインクとする
ために、界面活性剤、消泡剤或いは防腐剤等をインク中
に添加することができ、更に市販の水溶性染料等を添加
することもできる。
【0129】界面活性剤としては、脂肪酸塩類、高級ア
ルコール硫酸エステル塩類、液体脂肪油硫酸エステル塩
類、アルキルアリルスルホン酸塩類等の陰イオン界面活
性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオ
キシエチレンアルキルエステル類、ポリオキシエチレン
ソルビタンアルキルエステル類、アセチレンアルコー
ル、アセチレングリコール等の非イオン性界面活性剤が
あり、これらの1種又は2種以上を適宜選択して使用で
きる。
【0130】その使用量は、分散剤の添加量により異な
るが、インク全量に対して、0.01〜5質量%が望ま
しい。この際、インクの表面張力は30mN/m(dy
n/cm)以上になるように活性剤の添加する量を決定
することが好ましい。なぜなら、本発明で使用するイン
クジェット記録方式においては、ノズル先端の濡れによ
る印字ヨレ(インク滴の着弾点のズレ)等の発生を有効
に抑えることができるからである。
【0131】以上で説明したような顔料インクの作成方
法としては、はじめに、顔料分散用樹脂及び水を少なく
とも含有する水溶液に、顔料を添加して攪拌した後、後
述の分散手段を用いて分散処理を行い、必要に応じて遠
心分離処理を行って、所望の分散液を得る。次に、この
分散液に上記に掲げたような成分を更に加えて攪拌し
て、インクとすればよい。
【0132】また、アルカリ可溶型の樹脂を使用する場
合には、樹脂を溶解させるために塩基を添加することを
要する。この際、樹脂を溶解させるためのアミン或いは
塩基の量は、樹脂の酸価から計算によって求められるア
ミン或いは塩基量の1倍以上を添加することが必要であ
る。アミン或いは塩基の量は以下の式によって計算で求
められる。
【0133】更に顔料を含む水溶液を分散処理する前に
プレミキシングを30分間以上行うと、顔料の分散効率
が良くなる。このプレミキシング操作は、顔料表面の濡
れ性を改善し、顔料表面への分散剤の吸着を促進するも
のである。
【0134】アルカリ可溶型樹脂を使用した場合の分散
液に添加される塩基類としては、例えば、モノエタノー
ルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミ
ン、アミンメチルプロパノール、アンモニア等の有機ア
ミン或いは水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機
塩基を用いることが好ましい。
【0135】一方、顔料インクの調製に使用する分散機
は、一般に使用される分散機ならいかなるものでもよい
が、例えば、ボールミル、サンドミル等が挙げられる。
その中でも、高速型のサンドミルが好ましく、例えば、
スーパーミル、サンドグラインダー、ビーズミル、アジ
テータミル、グレンミル、ダイノールミル、パールミ
ル、コボルミル(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0136】尚、本発明で使用するインクは、上記成分
の他に必要に応じて、水溶性有機溶剤、界面活性剤、p
H調製剤、防錆剤、防カビ剤、酸化防止剤、蒸発促進
剤、キレート化剤及び水溶性ポリマー等の添加剤を添加
してもよい。
【0137】本発明で用いることのできる上記色材を溶
解又は分散する液媒体は、水と水溶性有機溶剤との混合
物であることが好ましい。具体的な水溶性有機溶剤とし
ては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、
n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n
−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、te
rt−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルア
ルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトア
ミド等のアミド類、アセトン等のケトン類、テトラヒド
ロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ポリエチレング
リコール、ポリプロピレングコリコール等のポリアルキ
レングリコール類、エチレングリコール、プロピレング
リコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコー
ル、1,2,6−へキサントリオール、チオジグリコー
ル、へキシレングリコール、ジエチレングリコール等の
アルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレング
リコール類、グリセリン、エチレングリコールモノメチ
ル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノ
メチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低
級アルキルエーテル類、N−メチル−2−ピロリドン、
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラ
ン、ジメチルサルフォオキサイド、2−ピロリドン、ε
−カプロラクタム等の環状アミド化合物及びスクシンイ
ミド等のイミド化合物等が挙げられる。
【0138】上記水溶性有機溶剤の含有量は、一般に
は、インクの全質量に対して質量%で1%〜40%が好
ましく、より好ましくは3%〜30%の範囲である。ま
た、インク中の水の含有量は30〜95質量%の範囲と
した場合、色材の溶解性等も良好であり、インクの粘度
が高くなることを抑えることができ、且つ固着特性を十
分に満足させることができる。
【0139】本発明で使用するアニオン性インクは、一
般の水性筆記用具のインクとしても使用できるが、熱エ
ネルギーによるインクの発泡現象によりインクを吐出さ
せるタイプのインクジェット記録方法に適用する場合に
特に好適であり、吐出が極めて安定となり、サテライト
ドットの発生等が生じないという特徴がある。但し、こ
の場合には、熱的な物性値(例えば、比熱、熱膨張係
数、熱伝導率)を調整する場合もある。
【0140】[カチオン性インク]次に、先に説明した
アニオン性の液体組成物と組み合わせて本発明にかかる
インクセットを構成する水性のカチオン性インクについ
て説明する。ここでいうインクセットとは、本発明の液
体組成物とカチオン性物質(カチオン性色材)を含有す
る少なくとも1種類のインクとの組み合わせをいう。ま
た、このインクセットから本発明の液体組成物を除い
た、少なくとも1種類のインクの組み合わせをインクサ
ブセットと呼ぶ。
【0141】本発明で使用するカチオン性インクは、色
材として、カチオン性基を含有する水溶性染料を用いる
か、又は色材として顔料を用いる場合には、カチオン性
化合物を併用させること(本発明ではこの併用もカチオ
ン性色材という)が好ましい。本発明で使用される上記
のようなインクには、更にこれに、水、水溶性有機溶剤
及びその他の成分、例えば、粘度調整剤、pH調整剤、
防腐剤、界面活性剤、酸化防止剤等が必要に応じて含ま
れて構成される。以下、これらのインクの各構成成分に
ついて説明する。
【0142】(水溶性染料)本発明で使用するカチオン
性基を有する水溶性染料としては、例えば、カラーイン
デックス(Color Index)に記載されている水溶性の染
料であれば特に限定はない。また、カラーインデックス
に記載のないものでも、カチオン性基を有するものであ
れば特に限定はない。尚、ここでいう水溶性染料の中に
は、溶解度のpH依存性があるものも含まれる。
【0143】(顔料)本発明で使用するインクの別の形
態としては、上記したカチオン性基を有する水溶性染料
の代わりに、顔料及びカチオン性化合物を用い、水、水
溶性有機溶剤及びその他の成分、例えば、粘度調整剤、
pH調整剤、防腐剤、界面活性剤或いは酸化防止剤等を
必要に応じて含むインクであってもよい。ここで、カチ
オン性化合物が顔料の分散剤であってもよいし、顔料の
分散剤がカチオン性でない場合に、分散剤とは別のカチ
オン性化合物を添加したものでもよい。勿論、分散剤が
カチオン性化合物である場合でも、更に他のカチオン性
化合物を添加してもよい。本発明で使用することができ
る顔料としては特に限定はなく、アニオン性インクの項
で述べた顔料を好適に用いることができる。
【0144】(顔料分散剤)本発明で使用するインク中
の顔料の分散剤は、カチオン性基の存在によって顔料を
水、若しくは水性媒体に安定に分散させる機能を有する
水溶性樹脂ならどんなものでも使用可能である。具体例
としては、ビニルモノマーの重合によって得られるもの
であって、得られる重合体の少なくとも一部がカチオン
性を有するものであればよい。カチオン性の部分を構成
するためのカチオン性モノマーとしては、下記の如き第
3級アミンモノマーの塩及びこれらの4級化された化合
物が挙げられる。
【0145】具体的には、N,N−ジメチルアミノエチ
ルメタクリレート[CH2=C(CH3)−COO−C2
4N(CH32]、N,N−ジメチルアミノエチルア
クリレート[CH2=CH−COO−C24N(CH3
2]、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート
[CH2=C(CH3)−COO−C36N(C
32]、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレー
ト[CH2=CH−COO−C36N(CH32]、
N,N−ジメチルアクリルアミド[CH2=CH−CO
N(CH32]、N,N−ジメチルメタクリルアミド
[CH2=C(CH3)−CON(CH32]、N,N−
ジメチルアミノエチルアクリルアミド[CH2=CH−
CONHC24N(CH32]、N,N−ジメチルアミ
ノエチルメタクリルアミド[CH2=C(CH3)−CO
NHC24N(CH32]、N,N−ジメチルアミノプ
ロピルアクリルアミド[CH2=CH−CONH−C3
6N(CH32]、N,N−ジメチルアミノプロピルメ
タクリルアミド[CH2=C(CH3)−CONH−C3
6N(CH32]等が挙げられる。
【0146】第3級アミンの場合において、塩を形成す
るための化合物としては、塩酸、硫酸及び酢酸等が挙げ
られ、4級化に用いられる化合物としては、塩化メチ
ル、ジメチル硫酸、ベンジルクロライド、エピクロロヒ
ドリン等が挙げられる。これらの中でも、塩化メチルや
ジメチル硫酸等が本発明で使用する分散剤を調製するう
えで好ましい。以上のような第3級アミンの塩或いは第
4級アンモニウム化合物は水中ではカチオンとして振る
舞い、中和された条件では酸性が安定溶解領域である。
これらモノマーの共重合体中での含有率は20〜60質
量%の範囲が好ましい。
【0147】上記高分子分散剤の構成に用いられるその
他モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルメ
タクリレート、長鎖のエチレンオキシド鎖を側鎖に有す
るアクリル酸エステル等のヒドロキシ基を有するアクリ
ル酸エステル、スチレン系モノマー等の疎水性モノマー
類及びpH7近傍の水に溶解可能な水溶性モノマーとし
て、アクリルアミド類、ビニルエーテル類、ビニルピロ
リドン類、ビニルピリジン類、ビニルオキサゾリン類が
挙げられる。疎水性モノマーとしては、スチレン、スチ
レン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導
体、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、アクリロ
ニトリル等の疎水性モノマーが用いられる。共重合によ
って得られる高分子分散剤中において水溶性モノマー
は、共重合体を水溶液中で安定に存在させるために15
〜35質量%の範囲で用い、且つ疎水性モノマーは、共
重合体の顔料に対する分散効果を高めるために20〜4
0質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0148】(自己分散型顔料)カチオン性に帯電した
顔料の場合、直接若しくは他の原子団を介して結合した
親水性基が、例えば、下記に挙げる第4級アンモニウム
基から選ばれる少なくとも1つを結合したものが挙げら
れる。しかし、本発明はこれらに限定されるものではな
い。
【0149】
【0150】上記式中、Rは炭素原子数1〜12の直鎖
状又は分岐鎖状のアルキル基、置換若しくは未置換のフ
ェニル基、又は置換若しくは未置換のナフチル基を表
す。尚、上記のカチオン性基には、カウンターイオンと
して、例えば、NO3 -やCH3COO-が存在する。
【0151】上記したような親水性基が結合されてカチ
オン性に帯電している自己分散型顔料を製造する方法と
しては、例えば、下記に示す構造のN−エチルピリジル
基を結合させる方法を例にとって説明すると、顔料を3
−アミノ−N−エチルピリジニウムブロマイドで処理す
る方法が挙げられる。
【0152】このように顔料表面への親水性基の導入に
よってカチオン性に帯電させた顔料は、イオンの反発に
よって優れた水分散性を有するため、水性インク中に含
有させた場合にも分散剤等を添加しなくても安定した分
散状態を維持する。特に上記顔料がカーボンブラックで
ある場合が好ましい。
【0153】(インクの表面張力)更に本発明で使用す
るカチオン性インクは普通紙等に記録した場合の印字記
録画像のインクの浸透性と同時に、インクジェット用ヘ
ッドに対するマッチングを良好にする面から、インク自
体の物性として25℃における表面張力が30〜68m
N/m(dyn/cm)、粘度が15mPa・s(c
P)以下、好ましくは10mPa・s(cP)以下、よ
り好ましくは5mPa・s(cP)以下に調整されるこ
とが望ましい。
【0154】<水性インクの濃度>上記したアニオン性
及びカチオン性のインク中に含まれる色材成分の質量濃
度は、水性染料、顔料や自己分散型顔料等の色材の種類
に応じて適宜選択されるが、インクの全質量に対し、
0.1〜20%、特には0.1〜12%の範囲が好まし
い。また、色材成分の質量濃度が0.3〜7%の範囲で
は、液体組成物中の微粒子の濃度とインク中の色材の濃
度との関係に関して、質量基準で、該微粒子1に対して
色材が1.2以下、特には1.0以下とした場合、通常
の2液系の記録条件の下で形成される画像の発色性は特
に優れたものとなる。
【0155】<被記録媒体に着色部を形成する方法>次
に、本発明にかかる被記録媒体に着色部を形成する方法
について説明する。本発明の被記録媒体に着色部を形成
する方法は、(i)色材を含む、アニオン性若しくはカ
チオン性の水性インクを被記録媒体に付与する過程、及
び(ii)該インクとは逆の極性に表面が帯電している微
粒子が分散状態で含まれている液体組成物を被記録媒体
に付与する過程とを有し、上記被記録媒体の表面におい
て、水性インクと液体組成物とが互いに液体状態で接す
るように付与することを特徴とする。以下、上述したよ
うに構成されている液体組成物及び水性インクを被記録
媒体上に付与する方法について説明する。
【0156】本発明にかかる被記録媒体に着色部を形成
する方法は、上記で説明したような液体組成物を被記録
媒体上に付与する過程(ii)と、色材を含む、アニオン
性若しくはカチオン性の水性インクを被記録媒体に付与
する過程(i)を含むが、その際に、色材を含む水性イ
ンクによって形成される被記録媒体の着色部形成領域、
又は着色部形成領域とその近傍に液体組成物を付与し
て、水性インクと液体組成物とが互いに液体状態で接す
るように付与する。ここでいう着色部形成領域とは、イ
ンクのドットが付着する領域のことであり、着色部形成
領域の近傍とは、例えば、インクのドットが付着する領
域の外側の1〜5ドット程度離れた領域のことを指す。
【0157】本発明にかかる被記録媒体に着色部を形成
する方法では、前記した本発明の液体組成物と水性イン
クとが被記録媒体上で互いに液体状態で接するようにな
れば、これらをいずれの方法で付与させてもよい。従っ
て、液体組成物とインクのいずれを先に被記録媒体上に
付与してもよい。例えば、過程(ii)を行なった後に過
程(i)を行なってもよいし、過程(i)を行なった後
に過程(ii)を行なてもよい。また、過程(i)を行な
った後に、過程(ii)を行ない、その後に再び過程
(i)を行なうことも好ましい。また、液体組成物を被
記録媒体に先に付与させた場合に、液体組成物を被記録
媒体に付与してから、インクを被記録媒体上に付与させ
るまでの時間については特に制限されるものではない
が、互いを液体状態で接触させることを効率的にするた
めには、ほぼ同時或いは数秒以内にインクを被記録媒体
上に付与させることが好ましい。
【0158】(被記録媒体)上記した本発明の被記録媒
体に着色部を形成する方法に使用される被記録媒体とし
ては、特に限定されるものではなく、従来から使用され
ている、コピー用紙、ボンド紙等のいわゆる普通紙が好
適に使用される。勿論、インクジェット記録用に特別に
作製されたコート紙やOHP用透明フィルムも好適に使
用される。更に一般の上質紙や光沢紙にも好適に使用す
ることができる。
【0159】(液体組成物の付与方法)本発明にかかる
液体組成物を被記録媒体上に付与せしめる方法として
は、例えば、スプレーやローラー等によって被記録媒体
の全面に付与せしめる方法も考えられるが、更に好まし
くはインクを付与する着色部形成領域或いは着色部形成
領域とその着色部形成領域の近傍にのみに選択的且つ均
一に液体組成物を付与せしめることのできるインクジェ
ット方式により行うのが好ましい。また、この際には、
種々のインクジェット記録方式を用いることができる
が、特に好ましいのは、熱エネルギーによって発生した
気泡を用いて液滴を吐出する方式である。
【0160】<インクジェット記録装置>次いで、本発
明にかかるインクジェット記録装置について説明する。
本発明にかかるインクジェット記録装置は、色材を含
む、アニオン性若しくはカチオン性の水性インクを収容
したインク収容部と、該インクを吐出させるインクジェ
ットヘッドと、前記本発明にかかる液体組成物、好まし
くは上記水性インクとは逆の極性に表面が帯電している
微粒子が分散状態で含まれている液体組成物を収容した
液体組成物収容部と、該液体組成物を吐出させるインク
ジェットヘッドを備えていることを特徴とする。以下、
これらについて説明する。
【0161】図1は、本発明を適用したインクジェット
記録装置の概略構成の1例を示す模式的斜視図である。
図1において、1は、インクを吐出して記録を行うため
の記録ヘッドを構成するカートリッジであり、2は、液
体組成物を吐出するための液体組成物吐出ヘッドを構成
するカートリッジである。図示の例では、異なる色のイ
ンクを用いる3個の記録用カートリッジ1と1個の液体
組成物吐出用カートリッジ2が使用されている。
【0162】記録用の各カートリッジ1は、その上部に
インクタンク部、下部にインク吐出部(記録部)を設け
た構造をしている。液体組成物用のカートリッジ2は、
その上部に液体組成物タンク部、下部に液体組成物吐出
部を設けた構造をしている。更に、これらカートリッジ
1、2には、駆動信号等を受信するためのコネクタが設
けられている。3はキャリッジである。
【0163】キャリッジ3上には、それぞれ異なる色の
インクで記録するための3個の記録ヘッドカートリッジ
(記録ヘッド)1と1個の液体組成物吐出用ヘッドカー
トリッジ(液体組成物吐出ヘッド)2が位置決め搭載さ
れている。また、該キャリッジ3には各記録ヘッド1及
び液体組成物吐出ヘッド2を駆動するための信号等を伝
達するためのコネクタホルダーが設けられており、該コ
ネクタホルダーを介して各ヘッドカートリッジ1、2に
電気的に接続されている。
【0164】各記録ヘッド1は、それぞれ異なった色の
インク、例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及び
シアン(C)のインクを収納している。本図では、図示
左から、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各
インクの記録ヘッドカートリッジ(記録ヘッド)1Y、
1M及び1Cが搭載され、そして右端には前記液体組成
物を収納した液体組成物吐出ヘッドカートリッジ(液体
組成物吐出ヘッド)2が搭載されている。
【0165】図1において、4はキャリッジ3の主走査
方向に延在し、該キャリッジを摺動自在に支持する走査
レール、5はキャリッジ3を往復動させるための駆動力
を伝達する駆動ベルトである。また、6、7及び8、9
は、それぞれ、記録ヘッドによる記録位置の前後に配置
されて被記録媒体10の挟持搬送を行うための搬送ロー
ラ対である。紙等の被記録媒体10は、記録位置の部分
で、記録面を平坦に規制するためのプラテン(不図示)
に圧接状態で案内支持されている。この時、キャリッジ
3に搭載された各ヘッドカートリッジ(ヘッド)1、2
の吐出口形成面は、該キャリッジ3から下方へ突出して
被記録媒体搬送用ローラ7、9間に位置し、プラテン
(不図示)の案内面に圧接された被記録媒体10に平行
に対向するようになっている。
【0166】本図にかかるインクジェット記録装置の記
録領域を外れた左側に設定されたホームポジションの近
傍には、回復ユニット11が配設されている。回復ユニ
ット11には、3個の記録ヘッド(ヘッドカートリッ
ジ)1Y、1M及び1Cに対応する3個のキャップ12
と1個の液体組成物吐出ヘッド(ヘッドカートリッジ)
2に対応する1個のキャップ13が上下方向に昇降可能
に設けられている。そして、キャリッジ3がホームポジ
ションにあるときには、各ヘッド1、2の吐出口形成面
に対して対応するキャップ12、13とが圧接接合され
ることにより、各ヘッド1、2の吐出口が密封(キャッ
ピング)される。キャッピングすることにより、吐出口
内のインク溶剤の蒸発によるインクの増粘・固着が防止
され、吐出不良の発生が防止されている。
【0167】また、回復ユニット11は、各キャップ1
2に連通した吸引ポンプ14とキャップ13に連通した
吸引ポンプ15を備えている。これらのポンプ14、1
5は、記録ヘッド1や液体組成物吐出ヘッド2に吐出不
良が生じた場合に、それらの吐出口形成面をキャップ1
2、13でキャッピングして吸引回復処理を実行するの
に使用される。更に、回復ユニット11には、ゴム等の
弾性部材から成る2個のワイピング部材(ブレード)1
6、17が設けられている。ブレード16はブレードホ
ルダー18によって保持され、ブレード17はブレード
ホルダー19によって保持されている。
【0168】前記ブレードホルダー18、19は、それ
ぞれ、キャリッジ3の移動を利用して駆動されるブレー
ド昇降機構(不図示)により昇降され、それによって、
前記ブレード16、17は、ヘッド(カートリッジ)
1、2の吐出口形成面に付着したインクや異物をワイピ
ングすべく突出(上昇)した位置(ワイピング位置)と
吐出口形成面に接触しない後退(下降)した位置(待機
位置)との間で昇降する。この場合、記録ヘッド1をワ
イピングするブレード16と液体組成物吐出ヘッド2を
ワイピングするブレード17は、互いに独立して、個別
に昇降できるように構成されている。
【0169】そして、キャリッジ3が図1中右側(記録
領域側)からホームポジション側へ移動するとき、或い
はホームポジション側から記録領域側へ移動するとき
に、ブレード16が各記録ヘッド1の吐出口形成面と当
接し、ブレード17が液体組成物吐出ヘッド2の吐出口
形成面と当接し、相対移動によってそれらの吐出口形成
面の拭き取り(ワイピング)動作が行われる。
【0170】図2は、インク吐出部とインクタンクを一
体化した構造の記録ヘッド(カートリッジ)1を示す模
式的斜視図である。尚、液体組成物吐出ヘッド2は、貯
蔵及び使用する液体が液体組成物である点を除き、記録
ヘッド1と実質上同じ構成をしている。図2において、
記録ヘッド1は、上部にインクタンク部21を、下部に
インク吐出部(記録ヘッド部)22を有しており、更
に、インク吐出部22を駆動するための信号等を受信す
るとともにインク残量検知信号を出力するためのヘッド
側コネクタ23を有している。このコネクタ23はイン
クタンク部21に並ぶ位置に設けられている。
【0171】記録ヘッド1は、図2中底面側(被記録媒
体10側)に吐出口形成面81を有し、該吐出口形成面
81には複数の吐出口が形成されている。各吐出口に通
じる液路部分に、インクを吐出するのに必要なエネルギ
ーを発生する吐出エネルギー発生素子が配置されてい
る。
【0172】前記記録ヘッド(ヘッドカートリッジ)1
は、インクを吐出して記録を行うインクジェット記録手
段であり、インク吐出部22とインクタンク21を一体
化した交換可能なインクジェットカートリッジで構成さ
れている。この記録ヘッド1は、熱エネルギーを利用し
てインクを吐出するインクジェット記録手段であって、
熱エネルギーを発生するための電気熱変換体を備えたも
のである。また、前記記録ヘッド1は、前記電気熱変換
体によって印加される熱エネルギーにより生じる膜沸騰
による気泡の成長及び収縮によって生じる圧力変化を利
用して、吐出口よりインクを吐出させ、記録を行なうも
のである。
【0173】図3は、記録ヘッド1(液体組成物吐出ヘ
ッド2)のインク吐出部22(液体組成物吐出部22
A)の構造を模式的に示す部分斜視図である。図3にお
いて、被記録媒体(記録用紙等)10と所定の隙間(例
えば、約0.5〜2.0mm程度)をおいて対面する吐
出口形成面81には、所定のピッチで複数の吐出口82
が形成され、共通液室83と各吐出口82とを連通する
各液路84の壁面に沿ってインク吐出用のエネルギーを
発生するための電気熱変換体(発熱抵抗体等)85が配
設されている。前記複数の吐出口82は記録ヘッド1の
移動方向(主走査方向)と交叉する方向に並ぶような位
置関係で配列されている。こうして、画像信号又は吐出
信号に基づいて対応する電気熱変換体85を駆動(通
電)して、液路84内のインクを膜沸騰させ、その時に
発生する圧力によって吐出口82からインクを吐出させ
る記録ヘッド1が構成されている。
【0174】図4〜図6は、以上のインクジェット記録
装置のワイピング動作を示す模式図である。図4は、キ
ャリッジ3が記録領域側からホームポジション側へ移動
する場合を示す。図4において、(A)のようにキャリ
ッジ4上の記録ヘッド1及び液体組成物吐出ヘッド2が
右側(記録領域側)よりホームポジションに向かって移
動してくる。そうすると、(B)のように、先ず、イン
ク用のキャップ12と液体組成物用のキャップ13との
間にあるインク用のブレード16が上昇し、キャリッジ
3の移動に伴って各記録ヘッド1Y、1M及び1Cを順
次ワイピングしていく。
【0175】更に、図4の(C)のように、各記録ヘッ
ド1が液体組成物用のブレード17上を通過した後、こ
の液体組成物用のブレード17を上昇させて(D)のよ
うに液体組成物吐出ヘッド2の吐出口形成面を同時にワ
イピングする。インク用のブレード16が3個目の記録
ヘッド1をワイピングし、更に液体組成物路用のブレー
ド17が液体組成物吐出ヘッド2をワイピングし終わっ
た後、それぞれのブレード16、17は下降し、待機位
置で待機する。図4では、キャリッジ3が図1中の右側
(記録領域)から回復ユニット11の有るホームポジシ
ョン側へ移動するときにブレード16、17によるワイ
ピングが実行されるように構成したが、ワイピング方向
はこれに限定されるものではなく、図5のようにキャリ
ッジ3がホームポジション側から右側(記録領域側)へ
移動する際にワイピングを行うように構成してもよい。
【0176】図5において、(A)では、インク用のブ
レード16と液体組成物用のブレード17を同時に上昇
させ、キャリッジ3を右方向へ(記録領域側へ)移動さ
せることにより、記録ヘッド1と液体組成物吐出ヘッド
2を同時にワイピングし(B)、液体組成物吐出ヘッド
2のワイピングが終了すると同時に液体組成物用のブレ
ード17のみを下降させて待機させ、インク用のブレー
ド17はそのまま残りの記録ヘッド1のワイピングを行
う(C)。最後に、図5の(D)のように、全ての記録
ヘッド1のワイピングが終了したところで、インク用の
ブレード16を下降させて一連のワイピング動作を終了
する。
【0177】図5で説明したようなワイピング方向を採
用することにより、ワイピングにより除去されてブレー
ド16、17に付着した液滴が該ブレードの弾性によっ
て被記録媒体10の搬送部へ飛散し、被記録媒体10を
不用意に汚す危険性を無くすことができる。
【0178】更に、図6に示すように、記録ヘッド1の
ワイピング方向と液体組成物吐出ヘッド2のワイピング
方向を異ならせてもよい。図6において、例えば、
(A)及び(B)に示すように、キャリッジ3がホーム
ポジション側から右側(記録領域側)へ移動するときに
インク用のブレード16で記録ヘッド1をワイピング
し、(C)及び(D)に示すように、キャリッジ3が記
録領域側からホームポジション側へ移動するときに液体
組成物用のブレード17で液体組成物吐出ヘッド2のみ
をワイピングするようにしてもよい。このようなワイピ
ング方向を採ることにより、ブレード16の弾性力によ
って飛散するインクが液体組成物吐出ヘッド2に付着し
たり、逆に、ブレード17の弾性力によって飛散した液
体組成物が記録ヘッド1に付着するという不都合(危険
性)を無くすか、或いは大幅に減少させることができ
る。
【0179】また、図1においては、記録ヘッド1用の
キャップ12と液体組成物吐出ヘッド2用のキャップ1
3とを別々にして互いに独立させ(専用にし)、更に、
これらのキャップ12、13に接続される吸引ポンプ1
4、15も記録ヘッド1用と液体組成物吐出ヘッド2用
とに独立させて別々(専用)にした。これにより、キャ
ップ12、13及びポンプ14、15内において、イン
クと該インクと反応性を有する液体組成物とを接触させ
ることなく、これらの廃液を処理することができ、高い
信頼性を維持することが可能になる。
【0180】図7は、ポンプ14、15から排出される
インク及び液体組成物を廃インクタンク内へ回収するた
めの回収系統を示す模式図である。図7において、キャ
ップ12に連通した吸引ポンプ14により記録ヘッド1
から吸引された廃インク、並びにキャップ13に連通し
た吸引ポンプ15により液体組成物吐出ヘッド2から吸
引された廃液は、記録装置外へ漏れ出さないように、そ
れぞれ独立した経路を通して廃液タンク24内に回収さ
れ、収納される。
【0181】前記廃液タンク24は、その内部に多孔質
の吸収体25が充填され、該吸収体25に廃液を吸収保
持するように構成されている。この廃液タンク24は、
記録装置本体内に設けられている。図7では、記録ヘッ
ド1用の吸引ポンプ14からの廃インク導管26と液体
組成物吐出ヘッド2用の吸引ポンプ15からの廃液導管
27とは、図示のように、廃液タンク24の両端の互い
に離れた位置に接続されている。こうすることにより、
廃液タンク24内の液体組成物とインクは吸収体25内
に液が充分に吸収された状態で、はじめて接触するよう
になるため、多孔質吸収体25が吸収保持できる液の量
を充分に確保することができる。
【0182】図8は、図7の廃液回収系統において、廃
液タンク24内の吸収体25を上下2段に配置し、下段
の吸収体25Aにインクを吸収させ、上段の吸収体25
Bに液体組成物を吸収させるように構成した廃液回収系
統を示す模式図である。図8の構成によれば、下段のイ
ンク吸収体25Aが溢れた場合でも、上段の吸収体25
Bとそこに吸収されている液体組成物により、インク中
の染料は上段の吸収体25Bで反応して固定化されるた
め、該インクが漏れ出して記録装置内外を汚すことはな
い。
【0183】また、別の形態のインクジェット記録装置
としては、色材を含む、アニオン性若しくはカチオン性
の水性インクを収容したインク収容部と、前記本発明の
液体組成物、好ましくは上記水性インクとは逆の極性に
表面が帯電している微粒子が分散状態で含まれている液
体組成物を収容した液体組成物収容部と、上記インク収
容部に収容されている水性インクと上記液体組成物収容
部に収容されている液体組成物とを各々独立に吐出させ
るためのインクジェットヘッドとを備えていることを特
徴とする。以下これらについて説明する。
【0184】図10は、そのようなカートリッジ100
1の1例を示すものであるが、図中の1003は、イン
クが収容されているインク収容部、1005は、液体組
成物が収容されている液体組成物収容部である。該カー
トリッジは、図11に示すように、インク及び液体組成
物の各々を吐出せしめる記録ヘッド1101に着脱可能
に構成されてなるとともに、カートリッジ1001を記
録ヘッド1101に装着した状態では、液体組成物及び
インクが、記録ヘッド1101に供給されるように構成
されているものである。
【0185】本発明で使用されるインクジェット記録装
置としては、前記の如きヘッドとインクカートリッジと
が別体となったものに限らず、図6に示す如きそれらが
一体となったものも好適に用いられる。
【0186】図15において、1500は記録ユニット
であって、この中にインクを収容したインク収容部、例
えば、インク吸収体が収納されており、かかるインク吸
収体中のインクが複数のオリフィスを有するヘッド部1
501からインク滴として吐出される構成になってい
る。インク吸収体の材料としては、例えば、ポリプロピ
レンやポリウレタンを用いることができる。1502
は、記録ユニット内部を大気に連通させるための大気連
通口である。
【0187】更に本発明で使用する記録ユニットの他の
実施態様として、インクと液体組成物とを、1個のイン
クタンク内の各々の収納部に収納し、且つインク及び液
体組成物の各々を吐出させるための記録ヘッドを一体的
に備えた記録ユニット、具体的には、例えば、図12に
示すように、液体組成物を収容部1201Lに、また、
イエロー、シアン及びマゼンタのカラーインクを各々カ
ラーインク収納部1201Y、1201M及び1201
Cに収納し、更に各々のインクを各々個別に吐出させる
ことができるように、インク流路を分けて構成した記録
ヘッド1203を備えているような記録ユニット120
1が挙げられる。
【0188】尚、本発明に使用する記録装置において、
上記ではインク及び液体組成物に熱エネルギーを作用さ
せてインク液滴を吐出するインクジェット記録装置を例
に挙げたが、その他、圧電素子を使用するピエゾ方式の
インクジェット記録装置でも同様に利用できる。
【0189】
【実施例】次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更
に具体的に説明する。尚、文中、「部」及び「%」とあ
るのは特に断りのない限り質量基準である。
【0190】先ず、本発明の液体組成物の作製について
説明する。以下に示す各成分を混合溶解した後、ポアサ
イズが1μmのメンブレンフィルター(商品名、フロロ
ポアフィルター、住友電工(株)製)にて加圧濾過し、
本発明の液体組成物A〜Dを得た。
【0191】(アルミナ水和物の合成例)米国特許明細
書第4,242,271号に記載の方法でアルミニウム
ドデキシドを製造した。次に、米国特許明細書第4,2
02,870号に記載された方法で、前記アルミニウム
ドデキシドを加水分解してアルミナスラリーを製造し
た。このアルミナスラリーをアルミナ水和物の固形分が
8.2%になるまで水を加えた。アルミナスラリーのp
Hは9.7であった。3.9%の硝酸溶液を加えてpH
を調整し、表1に示す熟成条件でコロイダルゾルを得
た。このコロイダルゾルを表1に示す酸でpHを調整
し、固形分濃度20%に濃縮してA〜Dのアルミナ水和
物スラリーを作製した。これらのスラリー中のアルミナ
水和物は水中で表面がプラスに帯電し、カチオン性を示
す。また、これらのアルミナ水和物スラリーをイオン交
換水に希釈し分散させてコロジオン膜上に滴下して測定
用試料を作製し、透過型電子顕微鏡で観察したところす
べて平板形状の微粒子であった。
【0192】
【0193】<液体組成物Aの組成> ・グリセリン 10.0部 ・ジエチレングリコール 7.5部 ・アセチレノールEH (川研ケミカルス社製) 1.0部 ・アルミナ水和物スラリーA 50.0部 ・水 31.5部
【0194】上記成分を乳化分散機TKロボミックス
(特殊機化工業(株)製)にて3000rpmで30分
間混合した後、遠心分離処理(4000rpm、15分
間)を行い、粗大粒子を除去して液体組成物Aとした。
【0195】<液体組成物Bの組成> ・1.5−ペンタンジオール 10.0部 ・エチレングリコール 7.5部 ・アセチレノールEH (川研ケミカルス社製) 1.0部 ・アルミナ水和物スラリーB 50.0部 ・水 31.5部
【0196】上記成分を乳化分散機TKロボミックス
(特殊機化工業(株)製)にて3000rpmで30分
間混合した後、遠心分離処理(4000rpm、15分
間)を行い、粗大粒子を除去して液体組成物Bとした。
【0197】<液体組成物Cの組成> ・グリセリン 7.5部 ・プロピレングリコール 7.5部 ・アセチレノールEH (川研ケミカルス社製) 1.0部 ・アルミナ水和物スラリーC 50.0部 ・水 34.0部
【0198】上記成分を乳化分散機TKロボミックス
(特殊機化工業(株)製)にて3000rpmで30分
間混合した後、遠心分離処理(4000rpm、15分
間)を行い、粗大粒子を除去して液体組成物Cとした。
【0199】<液体組成物Dの組成> ・2−ピロリドン 7.5部 ・エチレン尿素 7.5部 ・アセチレノールEH (川研ケミカルス社製) 1.0部 ・アルミナ水和物スラリーD 50.0部 ・水 34.0部
【0200】上記成分を乳化分散機TKロボミックス
(特殊機化工業(株)製)にて3000rpmで30分
間混合した後、遠心分離処理(4000rpm、15分
間)を行い、粗大粒子を除去して液体組成物Dとした。
【0201】上記液体組成物A〜Dを下記評価方法によ
り測定を行い、各々の評価結果を表2に示した。 1)微粒子の平均粒子径 微粒子の固形分濃度を0.1%になるよう液体組成物を
イオン交換水で希釈した後、超音波洗浄機にて5分間分
散させて、電気泳動光散乱光度計(大塚電子(株)社
製、ELS−8000、液温25℃、石英セル使用)を
用いて散乱強度を測定した。平均粒子径は付属のソフト
ウェアを用い、散乱強度からキュムラント解析法により
求めた。
【0202】2)pH 液体組成物に対し、液温25℃でpHメーター計(堀場
製作所(株)製、カスタニーpHメーターD−14)を
用いて測定した。 3)ゼータ電位 微粒子の固形分濃度が0.1%になるよう液体組成物を
イオン交換水で分散させた後に、ゼータ電位測定機(ブ
ルックヘブン社製、BI−ZETA plus、液温2
0℃、アクリルセル使用)で測定した。
【0203】4)タンク保存性 液体組成物をインクタンクに詰めた後、60℃の恒温槽
に1ヶ月間静置保存してタンク内の液体組成物の液物性
及び記録ヘッドからの吐出性を評価した。 ○:タンク内でほぼ沈降が見られず、吐出安定性も良
好。 ×:タンク内で著しく沈降し吐出性も不安定。
【0204】5) 細孔半径及び細孔容積 下記手順に従って前処理した後、試料をセルに入れ、1
20℃で8時間真空脱気してカンタクローム社製のオム
ニソーブ1を用いて窒素吸着脱離法により測定した。細
孔半径及び細孔容積はBarrettらの方法(J.A
m.Chem.Soc.,Vol73,373,195
1)により計算から求めた。 (1)上記液体組成物を大気雰囲気下120℃で10時
間乾燥してほぼ溶媒分を蒸発させて乾燥する。 (2)上記乾燥物を120℃から700℃まで1時間で
昇温させた後700℃で3時間焼成する。 (3)焼成後、上記焼成物を徐々に常温に戻し焼成物を
メノウ乳鉢で摺り潰して粉体化する。
【0205】
【0206】次に、本発明の実施例及び比較例で使用す
るインクサブセット1及び2の作製について説明する。 <インクサブセット1の作製>下記に示す各成分を混合
し、十分攪拌して溶解後、ポアサイズが0.45μmの
フロロポアフィルター(商品名、住友電工(株)製)に
て加圧濾過し、イエロー、マゼンタ及びシアンの各染料
インク、Y1、M1及びC1を得、これらの染料インク
からなる組み合わせをインクサブセット1とした。
【0207】[イエローインクY1] ・Projet Fast Yellow 2 (Zeneca社製) 2.0部 ・C.I.ダイレクトイエロー86 1.0部 ・チオジグリコール 8部 ・エチレングリコール 8部 ・イソプロピルアルコール 4部 ・アセチレノールEH (川研ケミカルス社製) 1.0部 ・水 76.0部
【0208】[マゼンタインクM1] ・Projet Fast Magenta 2 (Zeneca社製) 3部 ・グリセリン 7部 ・尿素 7部 ・イソプロピルアルコール 4部 ・アセチレノールEH (川研ケミカルス社製) 1.0部 ・水 78.0部
【0209】[シアンインクC1] ・C.I.ダイレクトブルー199 3部 ・エチレングリコール 7部 ・ジエチレングリコール 10部 ・アセチレノールEH (川研ケミカルス社製) 1.0部 ・水 79.0部
【0210】<インクサブセット2の作製>下記に示す
各成分によって顔料分散液を調製し、これを用いてイエ
ロー、マゼンタ及びシアンの各顔料インク、Y2、M2
及びC2を得、これらの顔料インクからなる組み合わせ
をインクサブセット2とした。
【0211】[[イエローインクY2] (顔料分散液の作製) ・スチレン-アクリル酸-アクリル酸エチル共重合体 (酸価140、重量平均分子量5,000) 1.5部 ・モノエタノールアミン 1.0部 ・ジエチレングリコール 5.0部 ・イオン交換水 81.5部
【0212】上記成分を混合し、ウォーターバスで70
℃に加温し、樹脂分を完全に溶解させる。この溶液にピ
グメントイエロー74を10部、イソプロピルアルコー
ル1部を加え、30分間プレミキシングを行った後、下
記の条件で分散処理を行った。 ・分散機:サンドグラインダー(五十嵐機械製) ・粉砕メディア:ジルコニウムビーズ、1mm径 ・粉砕メディアの充填率:50%(体積比) ・粉砕時間:3時間 更に遠心分離処理(12,000rpm.、20分間)
を行い、粗大粒子を除去して分散液とした。
【0213】(イエローインクY2の作製)上記の顔料
分散液を使用し、下記の組成比を有する成分を混合し、
顔料を含有するインクを作製し、これをイエローインク
Y2とした。 ・上記顔料分散液 30.0部 ・グリセリン 10.0部 ・エチレングリコール 5.0部 ・N−メチルピロリドン 5.0部 ・エチルアルコール 2.0部 ・アセチレノールEH (川研ケミカルス社製) 1.0部 ・イオン交換水 47.0部
【0214】[マゼンタインクM2]イエローインクY
2の調製の際に使用したピグメントイエロー74の10
部を、ピグメントレッド7に代えたこと以外はイエロー
インクY2の調製と同様にして、顔料含有マゼンタイン
クM2を調製した。
【0215】[シアンインクC2]イエローインクY2
の調製の際に使用したピグメントイエロー74の10部
を、ピグメントブルー15に代えたこと以外はイエロー
インクY2の調製と同様にして、顔料含有シアンインク
C2を調製した。
【0216】(実施例1〜実施例8)上記のようにして
得られた本発明の液体組成物A〜Dと、インクサブセッ
ト1(Y1、M1及びC1)、及びインクサブセット2
(Y2、M2及びC2)の各色インクを用いて、下記の
表3の組み合わせで、印字を行った。これを本発明の実
施例1〜8とした。
【0217】
【0218】上記のようにして液体組成物A〜Dとイン
クサブセット1及び2を組み合わせて使用する実施例1
〜8の着色部の形成方法においては、PPC用紙(キヤ
ノン製)に記録を行った。また、その際に使用したイン
クジェト記録装置としては、図1に示したのと同様の記
録装置を用い、図3に示した記録ヘッドを4つ用いてカ
ラー画像を形成した。この際、液体組成物を先打ちして
先ず記録紙上に付着させ、その後インクを付着させた。
【0219】具体的には、評価項目(1)〜(6)まで
は印字領域を4回の走査で印字する4パスファイン印字
を行い、評価項目(7)では2パス印字を行った。この
とき、液体組成物は各パス毎にイエロー、マゼンタ及び
シアンのいずれかのインクが印字される画素位置に印字
を行った。即ち、各パス毎のイエロー、マゼンタ及びシ
アンの印字データの論理和を液体組成物の印字データと
して用いた。尚、該ファイン印字時のファインマスクの
種類には、特に制限はなく、公知の技術が利用可能であ
るので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0220】ここで用いた記録ヘッドは、1200dp
iの記録密度を有し、駆動条件としては、駆動周波数
9.6kHzとした。1200dpiのヘッドを使用し
たときの1ドット当たりの吐出量はイエロー、マゼン
タ、シアンインク及び液体組成物について夫々約5ng
であった。尚、これらの記録条件は、実施例及び比較例
を通じて同一である。
【0221】(比較例1〜比較例2)インクサブセット
1及び2のみを用いて、下記の表4のようにして印字を
行った。
【0222】
【0223】上記インクサブセット1及びインクサブセ
ット2のみを用いて記録(比較例1及び2)において用
いた記録ヘッドは、1200dpiの記録密度を有し、
駆動条件としては、駆動周波数9.6kHzとした。1
200dpiのヘッドを使用したときの1ドット当たり
の吐出量は、イエロー、マゼンタ及びシアンインクにつ
いて夫々約5ngで、実施例1〜8の場合と同条件で記
録を行った。
【0224】[評価方法及び評価基準]上記の実施例1
〜実施例8及び比較例1、2で得られた夫々の記録画像
について、下記の評価方法及び評価基準で評価を行っ
た。その結果を表5に示した。
【0225】(記録画像の評価方法) (1)発色性 高精細XYZ・CIELAB・RGB標準画像(SHIPP)(監修:高
精細標準画像作成委員会、発行:画像電子学会)のRG
Bカラーチャートをプリンタを用いて印字し、それらの
カラーチャートを測色した。発色性の評価は同技術解説
書に記載されている方法で色彩分布の3次元的な広がり
(以下、文中では色域体積と呼ぶ)の計算を行い、比較
した。その際、印字画像を形成する際の画像処理は同一
条件とし、測色は、印字後24時間経過後、GRETAGスペ
クトロリノで光源:D50、視野:2°の条件で測定し
た。その評価基準を以下に示した。インクサブセットの
みの印字画像(比較例1及び2)に対しての色域体積の
比を評価基準とした。
【0226】 AAA:色域体積比が1.7倍以上。 AA :色域体積比が1.5〜1.7倍未満。 A :色域体積比が1.4〜1.5倍未満。 BB :色域体積比が1.2〜1.4倍未満。 B :色域体積比が1.0〜1.2倍未満。 C :色域体積比が1.0倍未満。
【0227】尚、これとは別に、インクジェット用コー
ト紙(商品名:カラーBJ用紙LC−101、キヤノン
(株)製)を用いてインクサブセット1で印字して画像
を形成し、上記の比較例1の記録画像との色域体積の比
を求めたところ1.3倍であった。
【0228】(2)均一性 前記したプリンターを用いて、二次色のレッド、ブルー
及びグリーンのベタ画像を印字した後、目視にて白モヤ
と色ムラに関して色の均一性を評価した。特に均一性の
悪い色を評価対象とした。評価基準は、以下の通りであ
る。 A:白モヤや色ムラは殆ど発生しない。 B:紙の繊維に沿って白モヤや色ムラが若干見えるが、
実質上問題のないレベルである。 C:紙の繊維に沿って著しく白モヤや色ムラが見える。
【0229】(3)スジムラ 前記したプリンターを用いて、二次色のレッド、ブルー
及びグリーンのベタ画像を印字した後、目視にてスジム
ラを評価した。特にスジムラの悪い色を評価対象とし
た。評価基準は以下の通りである。 A:スジムラは殆ど発生しない。 B:ヘッドスキャン毎のスジムラが若干見えるが、実質
上問題のないレベルである。 C:ヘッドスキャン毎の白いスジムラが著しく見える。
【0230】(4)耐擦過性 前記したプリンターを用いて、イエロー、マゼンタ及び
シアン各色のインクのベタ画像を印字した。印字して1
6時間後、記録画像の上にシルボン紙を重ね、更にその
上に3.5cm×3.5cmの分銅を載せ、40g/c
3の圧力をかけながら15cm/secの速度でシル
ボン紙を引張って記録画像の耐擦過性を評価した。特に
耐擦過性の悪い色を評価対象とした。評価基準は以下の
通りである。 A:インク落ちは殆ど発生しない。 B:インクがシルボン紙に若干付着するが、記録画像の
色落ちは目立つレベルではない。 C:インクがシルボン紙に多く付着し、明確に記録画像
の色落ちが生じる。
【0231】(5)風合い 前記したプリンターを用いて、イエロー、マゼンタ及び
シアン各色のインクのベタ画像を印字した後、目視にて
被記録媒体の風合いを評価した。評価基準は以下の通り
である。 A:記録画像及び未印字部ともに違和感がなく普通紙の
風合いを残している。 B:記録画像と未印字部で風合いが異なる、又は記録媒
体全体が普通紙の風合いと大きく異なる。
【0232】(6)ブラックのベタ画像部濃度 前記したプリンターを用いて、イエロー、マゼンタ及び
シアン各色よりブラックのベタ画像を印字した後その濃
度を測定した。その際、印字画像を形成する際の画像処
理は同一条件(ブラックベタ部を形成する各インクと前
記液体組成物の使用量及び比率に関しては、定着及びベ
タ部の縁からのインクの溢れがないよう制限をかけてい
る。)とし、測色は、印字後24時間経過後、GRETAGス
ペクトロリノで光源:D50、視野:2°の条件で測定
した。その評価基準を以下に示した。インクサブセット
のみの印字画像(比較例1及び2)に対しての濃度の比
を評価基準とした。
【0233】AA:1.2以上1.3未満(現在、イン
クジェットプリンタの中で特に濃いブラック濃度域) A :1.1以上1.2未満(現在、主流のインクジェ
ットプリンタのブラック濃度域) B :1.0以上1.1未満(本発明の液体組成物を用
いず、カラーインクよりブラック部を生成した場合の濃
度域) C:1.0未満
【0234】(7)ブリード プリンターを用いて、イエローとイエロー、マゼンタ及
びシアン各色より形成されるブラックのベタ画像を隣接
して印字した後、色間境界部のブリードを目視で評価し
た。評価基準は以下の通りである。 AA:ブリーディングを視認できない。 A :ブリーディングは殆ど目立たない。 B :ブリーディングはしているが、実質上問題のない
レベルである。 C :色の境界部がハッキリしないほどブリーディング
している。
【0235】
【0236】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
特に、普通紙の風合いを残しながらインクジェット用コ
ート紙並みの優れた発色性と色の均一性が得ることがで
き、ベタ画像部のスジムラが少ない高品位なインクジェ
ット記録画像を得ることができる。また、ブラック画像
に関して、従来の複数の有彩色インクを重ね合わせるこ
とによって得られるブラックベタ部は、十分な濃度を達
成することが困難である場合が多かったが、本発明によ
れば、複数の有彩色インクの重ね合わせによって得られ
るブラックベタ部の濃度を、ブラックインクを用いて形
成したブラックベタ部の濃度とほぼ同程度の濃度を保証
できる。更には記録画像の耐擦過性に優れたインクジェ
ット記録画像が得られ、且つ保存性や記録ヘッドに対す
る発一性、目詰まり等の信頼性にも優れるインクジェッ
ト記録方法及びインクジェット記録装置が提供される。
【0237】また、インクタンク数で表現すると、該液
体組成物用インクタンクを必要とするため1つ増える
が、ブラック用インクタンクは必要とせず1つ減るた
め、本発明を適用することによりプリンタ本体が大きく
なることはない。従って、小型で且つ印刷メディアによ
らず、優れた印刷品位(特に高発色性)を有するインク
ジェット記録装置が提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を適用したインクジェット記録装置を
模式的に示す一部破断斜視図。
【図2】 図1中のヘッドカートリッジの模式的斜視
図。
【図3】 図1中のヘッドカートリッジのインク吐出部
の構造を模式的に示す部分斜視図。
【図4】 図1のインクジェット記録装置のワイピング
動作を示す模式図であり、(A)は各ヘッドの記録領域
側からホームポジションへの移動とインク用ブレードの
上昇、(B)は記録ヘッドのワイピング、(C)は液体
組成物吐出ヘッドのワイピング、(D)は各ブレードの
下降をそれぞれ示す。
【図5】 図1のインクジェット記録装置のワイピング
動作を示す模式図であり、(A)は各ブレードの上昇、
(B)は各ヘッドのホームポジションから記録領域側へ
の移動、(C)は液体組成物用ブレードの下降、(D)
は記録ヘッドのワイピングとインク用ブレードの下降を
それぞれ示す。
【図6】 図1のインクジェット記録装置のワイピング
動作を示す模式図であり、(A)はインク用ブレードの
上昇、(B)は各ヘッドのホームポジション側から記録
領域側への移動と記録ヘッドのワイピング、(C)は各
ヘッドの記録領域側からホームポジション側への移動と
インク用ブレードの待機と液体組成物用ブレードの上
昇、(D)各ヘッドのホームポジション側への移動と液
体組成物吐出ヘッドのワイピングをそれぞれ示す。
【図7】 図1のインクジェット記録装置の廃液回収系
統を示す模式図。
【図8】 図7の廃液回収系統の一部変更例を示す模式
図。
【図9】 コート紙にインクジェット記録を行なったと
きの着色部の状態を説明する模式的断面図。
【図10】 本発明にかかるインクカートリッジの1実
施態様を示す概略図。
【図11】 図10のインクカートリッジを装着した記
録ヘッドの概略図。
【図12】 本発明にかかる記録ユニットの1実施態様
を示す概略図。
【図13】 本発明にかかるインクジェット画像の着色
部の状態を説明する模式的断面図。
【図14】 本発明にかかるインクジェット記録画像の
着色部の形成過程を示す概略過程図。
【図15】 記録ユニットの斜視図。
【符号の説明】
1:記録ヘッド(インク吐出ヘッドカートリッジ) 2:液体組成物吐出ヘッド(液体組成物吐出ヘッドカー
トリッジ) 3:キャリッジ 4:ガイド軸(走査レール) 5:駆動ベルト 6,7:搬送ローラ 8,9:搬送ローラ 10:被記録媒体 11:回復ユニット 12:キャップ(記録ヘッド用) 13:キャップ(液体組成物吐出ヘッド用) 14:吸引ポンプ(インク用) 15:吸引ポンプ(液体組成物用) 16:ブレード(記録ヘッド用) 17:ブレード(液体組成物吐出ヘッド用) 18:ブレードホルダー(記録ヘッドブレード用) 19:ブレードホルダー(液体組成物吐出ヘッドブレー
ド用) 21:液貯留タンク部 22:(インク)吐出部 22A:(液体組成物)吐出部 23:ヘッド側コネクタ 24:廃液タンク 25:吸収体 25A:インク吸収体 25B:液体組成物吸収体 26:廃インク導管 27:廃液導管 81:吐出口形成面 82:吐出口 83:共通液室 84:液路 85:電気熱変換体(発熱抵抗体等) 901:基紙 903:インク受容層 905:多孔質微粒子 907:接着剤 909:インク浸透部 1001:カートリッジ 1003:インク収容部 1005:液体組成物収容部 1101:記録ヘッド 1201:記録ユニット 1201Y:イエローインク収容部 1201M:マゼンタインク収容部 1201C:シアンインク収容部 1201L:液体組成物収容部 1203:記録ヘッド 1301:被記録媒体 1302:被記録媒体の繊維間の空隙 1303:微粒子 1305:色材 1307:(色材を保持する)微粒子の凝集物 1309:(被記録媒体の繊維付近の)微粒子の凝集物 I:着色部 IM:主画像部 IS:周辺部 1400:着色部 1401:反応部 1402:インク流出部 1403:被記録媒体 1404:色材 1405:被記録媒体の繊維間の空隙 1406:液体組成物 1407:液溜り 1409:微粒子 1411:微粒子同士の集まり 1413:インク 1415:色材が付着した微粒子の凝集物 1500:記録ユニット 1501:ヘッド部 1502:大気連通孔
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 後藤 文孝 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 冨岡 洋 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 Fターム(参考) 2C056 EA05 EA11 EA13 EE17 FC02 2H086 BA02 BA04 BA05 BA53 BA55 4J039 BA13 BA21 BD04 CA03 CA06 EA15 EA16 EA17 EA21 EA47 GA24

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 色材を含むアニオン性若しくはカチオン
    性の水性インクと、上記水性インクに対して逆極性に表
    面が帯電している微粒子が分散状態で含まれている水性
    の液体組成物とを用いるインクジェット記録方法であっ
    て、印刷対象画像中の無彩色部分を前記液体組成物及び
    複数の有彩色インクで表現することを特徴とするインク
    ジェット記録方法。
  2. 【請求項2】 複数の有彩色インクには少なくともマゼ
    ンタインク及びシアンインク、イエローインクが含まれ
    ている請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  3. 【請求項3】 液体組成物中の微粒子が、被記録媒体上
    に着色部を形成する際に、該微粒子表面にインク中の色
    材が単分子状態で吸着されるように構成されている請求
    項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
  4. 【請求項4】 微粒子がアルミナ又はアルミナ水和物で
    ある請求項1〜3の何れか1項に記載のインクジェット
    記録方法。
  5. 【請求項5】 色材を含むアニオン性若しくはカチオン
    性の水性インクと、上記水性インクに対して逆極性に表
    面が帯電している微粒子が分散状態で含まれている水性
    の液体組成物とを用いるインクジェット記録装置であっ
    て、印刷対象画像中の無彩色部分を前記液体組成物及び
    有彩色インクで表現するようにしたことを特徴とするイ
    ンクジェット記録装置。
  6. 【請求項6】 複数の有彩色インクには少なくともマゼ
    ンタインク、シアンインク及びイエローインクが含まれ
    ている請求項5に記載のインクジェット記録装置。
  7. 【請求項7】 液体組成物中の微粒子が、被記録媒体上
    に着色部を形成する際に、該微粒子表面にインク中の色
    材が単分子状態で吸着されるように構成されている請求
    項5又は6に記載のインクジェット記録装置。
  8. 【請求項8】 微粒子がアルミナ又はアルミナ水和物で
    ある請求項5〜7の何れか1項に記載のインクジェット
    記録装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010000691A (ja) * 2008-06-20 2010-01-07 Konica Minolta Holdings Inc インクジェット記録方法
US8274695B2 (en) 2006-08-30 2012-09-25 Fuji Xerox Co., Ltd. Image processing apparatus and droplet ejection apparatus

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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