JP3927850B2 - 記録方法、記録装置、記録物、記録物の製造方法 - Google Patents

記録方法、記録装置、記録物、記録物の製造方法 Download PDF

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    • C09D11/54Inks based on two liquids, one liquid being the ink, the other liquid being a reaction solution, a fixer or a treatment solution for the ink

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、色材を含有するインクと微粒子を含有する液体組成物とをインクジェット方式等を用いて被記録媒体に付与し、発色性と色の均一性に優れた画像を得る技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方法は、インクを飛翔させ、紙等の被記録媒体にインクを付着させて記録を行うものである。例えば、特公昭61−59911号公報、特公昭61−59912号公報及び特公昭61−59914号公報において開示されている、吐出エネルギー供給手段として電気変換体を用い、熱エネルギーをインクに与えて気泡を発生させることにより液滴を吐出させる方式のインクジェット記録方法によれば、記録ヘッドの高密度マルチオリフィス化を容易に実現することができ、高解像度及び高品位の画像を高速で記録することができる。
【0003】
ところで、従来のインクジェット記録方法に用いられるインクは、水を主成分とし、これにノズル内でのインクの乾燥防止、ノズルの目詰まり防止等の目的でグリコール等の水溶性高沸点溶剤を含有しているものが一般的である。そのためこのようなインクを用いて被記録媒体に記録を行った場合には、十分な定着性が得られなかったり、被記録媒体としての記録紙表面における填料やサイズ剤の不均一な分布によると推定される不均一画像の発生等の問題を生じる場合がある。一方、近年は、インクジェット記録物に対しても、銀塩写真と同レベルの高い画質を求める要求が強くなっており、インクジェット記録画像の画像濃度を高めること、色再現領域を広げること、更には記録物の色の均一性を向上させることに対する技術的な要求が非常に高くなっている。
【0004】
このような状況のもとで、インクジェット記録方法の安定化、そしてインクジェット記録方法による記録物の品質向上を図るために、これまでにも種々の提案がなされてきている。被記録媒体に関する提案のうちの一つとして、被記録媒体の基紙表面に、充填材やサイズ剤を塗工する方法が提案されている。例えば、充填材として色材を吸着する多孔質微粒子を基紙に塗工し、この多孔質微粒子よってインク受容層を形成する技術が開示されている。これらの技術を用いた被記録媒体として、インクジェット用コート紙等が発売されている。
【0005】
このような状況のもとで、インクジェット記録方法の安定化、そしてインクジェット記録方法による記録物の品質向上を図るために、これまでにも種々の提案がなされてきている。以下に、その代表的なものの幾つかをまとめる。
【0006】
(1)インクに揮発性溶剤や浸透溶剤を内添する方法;
被記録媒体へのインクの定着性を早める手段として特開昭55−65269号公報に、インク中に界面活性剤等の浸透性を高める化合物を添加する方法が開示されている。また、特開昭55−66976号公報には、揮発性溶剤を主体としたインクを用いることが開示されている。
【0007】
(2)インクに、インクと反応する液体組成物を被記録媒体上で混合する方法;画像濃度の向上、耐水性の向上、更にはブリーディングの抑制を目的として、記録画像を形成するためのインクの噴射に先立ち或いは噴射後に、被記録媒体上に画像を良好にせしめる液体組成物を付与する方法が提案されている。
【0008】
例えば、特開昭63−60783号公報には、塩基性ポリマーを含有する液体組成物を被記録媒体に付着させた後、アニオン染料を含有したインクによって記録する方法が開示されており、特開昭63−22681号公報には、反応性化学種を含む第1の液体組成物と該反応性化学種と反応を起こす化合物を含む第二の液体組成物を被記録媒体上で混合する記録方法が開示されており、更に特開昭63−299971号公報には、1分子当たり2個以上のカチオン性基を有する有機化合物を含有する液体組成物を被記録媒体上に付与した後、アニオン染料を含有するインクで記録する方法が開示されている。また、特開昭64−9279号公報には、コハク酸等を含有した酸性液体組成物を被記録媒体上に付与した後、アニオン染料を含有したインクで記録する方法が開示されている。
【0009】
また、更に特開昭64−63185号公報には、染料を不溶化させる液体組成物をインクの付与に先立って紙に付与するという方法が開示されている。更に特開平8−224955号公報には、分子量分布領域の異なるカチオン性物質を含む液体組成物を、アニオン性化合物を含むインクと共に用いる方法が開示され、また、特開平8−72393号公報には、カチオン性物質と微粉砕セルロースを含む液体組成物をインクと共に用いる方法が開示されており、いずれも画像濃度が高く、印字品位、耐水性が良好で、色再現性、ブリーディングにおいても良好な画像が得られることが記載されている。また、特開昭55−150396号公報には、被記録媒体上に染料インクで記録した後に、染料とレーキを形成する耐水化剤を付与する方法が開示され、記録画像の耐水性を付与することが提案されている。
【0010】
(3)インクと微粒子含有液体組成物とを被記録媒体上で混合する方法;
特開平4−259590号公報に、無機物質からなる無色の微粒子を含有する無色液体を被記録媒体上に付与した後、非水系記録液を付着させる方法が開示され、特開平6−92010号公報には、微粒子を含む溶液、又は微粒子及びバインダーポリマーを含む溶液を被記録媒体上に付与した後、顔料、水溶性樹脂、水溶性溶剤及び水を含むインクを付着させる方法が開示されており、いずれも、紙種によらず印字品位や発色性の良好な画像が得られることが記載されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは上記したような各種のインクジェット記録技術について検討を重ねた結果、各々の技術課題に対しては優れた効果を確認できるものの、それと引き換えに、他のインクジェット記録特性が低下してしまう場合があることを見出した。例えば、上記した被記録媒体の基紙表面に充填材やサイズ剤を塗工して得られる被記録媒体(以降コート紙という)は、高品質な画像を形成することができる技術として認知されている。
【0012】
一般に、高彩度の画像を得るためには、色材を凝集させずに単分子状態で被記録媒体の表面に残すことが必要であることは知られている。コート紙の多孔質微粒子には、このような機能がある。しかしながら、高い画像濃度と画像彩度を得る為には、与えられたインク中の色材に対して、多量の多孔質微粒子で、基紙を覆い隠すような厚いインク受容層の形成が不可欠となり、結果として、基紙の質感が失われてしまうという問題がある。本発明者らは、このように基紙の質感を失う程のインク受容層が必要なのは、色材が、多孔質微粒子に効率的に吸着していないことに起因すると推測した。
【0013】
一層のインク受容層を有するコート紙を想定して、以下に説明する。図9は、コート紙表面付近の断面を模式的に示したものである。同図において、901は基紙であり、903はインク受容層を示す。一般に、インク受容層903は、多孔質微粒子905とそれらを固定化する接着剤907を有する。インクが付与されると、インクは多孔質微粒子905間の空隙を毛管現象によって浸透し、インク浸透部909を形成する。同図に示した様にインク受容層での多孔質微粒子は局所的には密度が異なるため、この毛管現象によるインクの浸透の仕方は場所によって異なる。このため、インクの浸透過程において、色材は多孔質微粒子表面に均一には接触できず、色材が効率的に多孔質微粒子に吸着されない。
【0014】
更に接着剤907によってインクの浸透が阻害される部分も生じており、インク受容層903内にはインクが浸透できない部分が存在し、発色には寄与しない部分が発生する。即ち、従来のコート紙においては、上記のような理由により、多孔質微粒子の量に対して効率的に色材を単分子状態で吸着することができず、この結果、高品質の画像を得るためには多量の多孔質微粒子が必要となり、基紙の質感を損なうこととなっていた。
【0015】
さらに上記(1)の技術を採用することで、インクの被記録媒体への定着性は向上するものの、画像濃度の低下や、普通紙への記録やカラー画像の記録に重要とされる色再現範囲が低下してしまう場合があった。又、上記(2)の技術によれば、インク中の色材を被記録媒体表面に留めることができるため、高い画像濃度の記録物を得ることができる。しかし、色材を被記録媒体の表面で凝集させているためか、色の再現範囲や彩度が十分に得られない場合があった。また上記(3)で説明した従来技術では、微粒子を含む溶液の付与により被記録媒体の表面状態の改質はえられたものの、コート紙と同等レベルの高精彩な画像は得られなかった。さらに特に、非水系記録液ものに関しては色材の選択性や記録付与方法などの制限もあり、その自由度に課題が残る。
【0016】
このように、従来の方法にはいずれも課題が残されているため、近年において求められているより一層の高品位なインクジェット記録物に対しては、新たなインクジェット記録技術の開発が必要であるとの認識を、本発明者らは持つに至った。本発明者らは、以上のような新たな知見に基づき、色材を吸着する作用を有する微粒子を用い、且つ該微粒子に効率的に色材を吸着もしくは結合させる為に、該微粒子を分散させ、インクと共に液体状態で用いることにより、色材と微粒子とを液−液状態で反応させることが可能となり、その結果として画像の濃度や彩度を信頼性良く向上させることができることを見出し、本発明を為すに至った。
【0017】
また、さらなる検討により、インクと反応する液体組成物を被記録媒体上で混合する場合、インクと液体組成物との記録条件によっては被記録媒体上に形成される画像の品位(例えば、発色性)が異なり、コート紙と同等のレベルの高い発色性を得るには、特定の記録条件を満たす必要があることが解かった。そこで本発明者らは、高発色な画像が得られる記録条件を規定する必要があるとの認識を持つに至った。特に、先行してインクを付与し、その後に液体組成物を付与する場合において、ある特定の記録条件を用いることで高発色画像を得ることができるということを本発明らは見出したのである。
【0018】
本発明は上記した新たな知見に基づき為されたものであり、その目的とするところは、より一層広い色再現範囲を有し、ブリードの抑制や色の均一性、発色性等にも優れた高品質な記録物を得ること、また、インクジェット方式等により記録を行うに際し、上記高発色な画像を有する記録物を得る為に必要な記録条件を提供すること、さらには前記記録条件にて記録を行う記録方法および記録装置を提供することである。特に、先行してインクを付与し、その後に液体組成物を付与する場合において、高発色画像を得ることを目的とする。
【0019】
また、高発色画像が記録された記録物を製造する方法を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明は、アニオン性の色材を含む水性インクを被記録媒体に付与する工程と、前記被記録媒体に付与されたインクに対し、カチオン性に表面が帯電している微粒子が分散状態で含まれる液体組成物を付与する工程とを有し、前記液体組成物のゼータ電位が10〜85mvであり、前記インクに含有される色材の濃度が2.5〜4.5%であり、前記被記録媒体に対するインクの吸収係数が0.1〜2.5μm/msec1/2であり、前記被記録媒体にインクが付与されてから150msec以内に、前記液体組成物が前記付与されたインクに接触することを特徴とするインクジェット記録方法である。
【0024】
また、本発明は、アニオン性の色材を含む水性インクを被記録媒体に吐出するためのインク吐出部と、前記被記録媒体に吐出されたインクに対し、カチオン性に表面が帯電している微粒子が分散状態で含まれる液体組成物を吐出するための液体吐出部とを有し、前記液体組成物のゼータ電位が10〜85mvであり、前記インクに含有される色材の濃度が2.5〜4.5%であり、前記被記録媒体に対するインクの吸収係数が0.1〜2.5μm/msec1/2であり、前記被記録媒体にインクが吐出されてから150msec以内に、前記液体組成物が前記吐出されたインクに接触することを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0030】
また、本発明は、被記録媒体に画像が記録された記録物を製造する方法であって、アニオン性の色材を含む水性インクを被記録媒体に付与した後に、当該付与されたインクに対し、カチオン性に表面が帯電している微粒子が分散状態で含まれる液体組成物を付与することにより、前記被記録媒体に画像を記録する工程を有し、前記液体組成物のゼータ電位が10〜85mvであり、前記インクに含有される色材の濃度が2.5〜4.5%であり、
前記被記録媒体に対するインクの吸収係数が0.1〜2.5μm/msec1/2であり、
前記被記録媒体にインクが付与されてから150msec以内に、前記液体組成物が前記付与されたインクに接触することを特徴とする。
【0046】
尚、本明細書において「色材と微粒子との反応」とは、両者の共有結合の他、イオン的結合、物理的・化学的吸着、吸収、付着、その他の両者の相互作用を意味するものとする。
【0047】
【発明の実施の形態】
次に、好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
【0048】
被記録媒体に着色部を形成する方法の好ましい実施態様としては、(i)色材を含むインクを被記録媒体に付与する工程及び(ii)上記本発明の液体組成物を被記録媒体に付与する工程とを有し、且つ上記被記録媒体の表面において、インクと液体組成物とが互いに液体状態で接するように付与されるように構成することが挙げられる。かかる実施態様を採用することによって、より一層広い色再現領域を有し、ブリードの抑制や色の均一性、発色性等にも優れ、更にベタ部のスジムラが少なく、良好な耐擦過性をも備えたインクジェット記録物が安定して得られる。
【0049】
更に上記目的を達成することのできる本発明のインクセットの一実施態様としては、色材を含むインク及び上記本発明の液体組成物とを組み合わせたものが挙げられる。このような実施態様のインクセットを用いれば、より一層広い色再現領域を有し、ブリードの抑制や色の均一性、発色性等にも優れ、更にベタ部のスジムラが少なく良好な耐擦過性をも備えたインクジェット記録物が安定して得られる。また、記録に用いるインクや液体組成物自体は、上記したように、その構成が極めてシンプルであるために高品質かつ高信頼性のインクジェット記録を行うことができるという効果が得られる。
【0050】
本発明によって上記したような優れた効果が奏される理由は明らかでないが、本発明者らは、以下の理由によるものと考えている。
【0051】
先ず、本発明における記録のメカニズムについて、図13及び図14に従って説明する。尚、ここでは、インクとしてアニオン性基を有する水溶性染料(アニオン性染料)を含むインクを用い、同時に液体組成物として、表面がカチオン性に帯電している微粒子が分散状態で含まれている液体組成物を用いた場合について説明する。
【0052】
以下に、本発明にかかる記録画像について、図13を用いて説明する。
【0053】
先ず、説明に先立ち、言葉の定義を行う。本発明において、「単分子状態」とは、染料や顔料等の色材が、インク中で溶解若しくは分散した状態をほぼ保っていることを指している。このとき、色材が多少の凝集を引き起こしたとしても、彩度が低下しない範囲であれば、この「単分子状態」に含まれることとする。例えば、染料の場合、単分子であることが好ましいと考えられるため、便宜上染料以外の色材についても「単分子状態」と呼ぶこととする。
【0054】
図13は、本発明にかかる記録画像の着色部Iが、主画像部IMとその周辺部ISとから成り立っている状態を模式的に示した図である。図13において、1301は被記録媒体、1302は被記録媒体の繊維間に生じる空隙を示す。また、1303は、色材1305が化学的に吸着する微粒子を模式的に示したものである。図13に示したように、本発明のインクジェット記録画像では、主画像部IMは、色材1305が、単分子或いは単分子に近い状態(以降「単分子状態」と略す)で均一に表面に吸着した微粒子1303と、色材の単分子状態を保持した微粒子の凝集物1307とで構成されている。1309は、主画像部IM内の被記録媒体繊維近傍に存在する、微粒子同士の凝集物である。主画像部IMは、被記録媒体繊維に微粒子1303が物理的又は化学的に吸着する工程と、色材1305と微粒子1303とが液−液状態で吸着する工程によって形成されたものである。そのため、色材自体の発色特性が損なわれることが少なく、普通紙等のインクの沈み込み易い記録媒体においても、画像濃度や彩度が高く、コート紙並みの色再現範囲の広い画像の形成が可能となる。
【0055】
一方、微粒子表面1303に吸着されず、インク中に残った色材1305は、被記録媒体1301に対して横方向にも深さ方向にも浸透するため、周辺部ISにインクは微少な滲みを形成する。このように記録媒体1301の表面近傍に色材が残り、且つ周辺部にインクの微少な滲みを形成させるために、シャドウ部やベタ部等のインク付与量が多い画像領域においても、白モヤや色ムラが少なく色の均一性に優れる。なお、図13に示した様に、被記録媒体1301がインクや液体組成物の浸透性を有するものである場合には、本態様はインク成分や液体組成物成分の被記録媒体内部への浸透は必ずしも妨げられるものではなく、ある程度の浸透を許容するものである。
【0056】
更に本発明の液体組成物を用いた場合においては、被記録媒体の表面近傍に存在する微粒子凝集物1309が形成される際に、凝集物の内部にある程度の大きさの細孔が形成される。前述のインク中で単独に存在していた色材1305は被記録媒体内部へと浸透していく際に微粒子凝集物1309の細孔内部へと浸透し、細孔の入口付近や内壁に理想的な単分子状態で吸着して、色材をより多く被記録媒体の表面近傍に残留させることができる。これによってより一層優れた発色性の記録物を得ることができる。
【0057】
図14(1)〜(4)は、図13の着色部を形成する方法の一実施態様を示す図であり、着色部1400の概略断面図及びその形成過程を説明する概略工程図である。同図において、1401はインクと液体組成物との反応物、例えば、色材と微粒子との反応物を主として含む部分(以降「反応部」と略す)であり、図13の主画像部IMに相当する部分である。1402は、液体組成物との反応に実質的に関与しなかったインクが、反応部1401の辺縁に流出することによって形成された部分(以降「インク流出部」と略す)であり、図13の周辺部ISに相当する。かかる着色部1400は、例えば、以下のようにして形成される。尚、同図に示した1405は、被記録媒体の繊維間に生じる空隙を模式的に表したものである。
【0058】
先ず、色材1404と反応性を有する液体組成物1406とが液滴として被記録媒体1403に付与され(図14(1))、その結果、液体組成物の液溜り1407が形成される(図14(2))。該液溜り1407内で、被記録媒体の繊維表面の近傍の微粒子1409は、被記録媒体の繊維表面に物理的又は化学的に吸着する。この時、分散状態が不安定となって微粒子同士の凝集物1411を形成するものもあると考えられる。一方で、液溜り1407内の繊維より離れた部分では、微粒子1409は、もとの分散状態を保っていると考えられる。
【0059】
次いで、インク1413が、液滴として被記録媒体1403に付与される(図14(2))。その結果、先ずインク1413と液溜り1407の界面において色材1404は、微粒子1409に化学的に吸着する。この反応は、液同士の反応(液−液反応)であるため、色材1404は単分子状態で、微粒子1409の表面に均一に吸着すると考えられる(図14(3)−2)。即ち、微粒子表面では、色材同士は凝集を起こさないか或いは凝集しても僅かであると推測される。その結果、反応部1401の表層部に単分子状態で色材1404が吸着された微粒子が多数形成され、発色に最も影響を与える表面層に色材を単分子状態で残存させることができるため、高画像濃度であって、且つ彩度の高い記録画像を形成する。
【0060】
次いで、これら色材1404が吸着した微粒子は、分散状態が不安定となるため微粒子同士で凝集すると考えられる(図14(3)−2)。即ち、ここで形成された凝集物1415は、その内部にも単分子状態の色材を保持している。この凝集物1415により、高画像濃度、且つ高彩度の記録画像が形成される。
【0061】
更に未反応の色材1404の一部は、液溜り1407内を拡散し、未反応の微粒子1409の表面に吸着する。このように、液溜り1407内部で色材と微粒子との反応が更に進行するため、より高濃度で彩度の高い画像が形成される。先に説明した被記録媒体の繊維表面に形成された微粒子の凝集物1411には、液溜り1407の液相が被記録媒体内への浸透を抑制する役割があると考えられる。このため、液溜り1407では、浸透が抑制された液体組成物中の微粒子1409と色材1404とがより多く混在することが可能となる。これにより、色材1404と微粒子1409との接触確率が高められ、反応が比較的均一に、且つ充分に進行し、より均一で、画像の濃度と彩度とに優れた画像が形成される。
【0062】
また、液体組成物1406が被記録媒体1403に付与された際(図14(1))や、液溜り1407にインク1413が付与された際には(図14(2))、微粒子1409を分散させている分散媒が変化することによって微粒子1409の分散が不安定となり、色材1404が吸着する前に微粒子1409間で凝集を起こすものも存在する。ここでいう分散媒の変化とは、2種もしくはそれ以上の異種の液体が混合したときに一般的に観察される変化、例えば液相のpHや固形分濃度、溶剤組成、溶存イオン濃度などの物性変化を指し、液体組成物が被記録媒体やインクと接触した際にこれらの変化が急激かつ複合的に生じて、微粒子の分散安定性を破壊し凝集物を生成するものと考えられる。これらの凝集物は、繊維間の空隙を埋める効果や、色材を吸着した微粒子を、より被記録媒体の表面近傍に残存させる効果をもたらすと推測される。また、これら液溜り1407内で形成された凝集物は、被記録媒体に吸着しているものもあれば、液相内を動ける(流動性を有する)ものも存在するが、流動性を有するものは、前述の色材と微粒子との反応過程と同様に、微粒子凝集物表面に色材が単分子状態で吸着し、より大きな凝集塊を形成し、これが発色性の向上に寄与しているものである。液相が繊維に沿って浸透する際に液相と共に移動し、空隙を埋めて被記録媒体の表面を平滑化し、より均一で高濃度の画像の形成に寄与すると考えられる。
【0063】
本発明によって高発色の画像が得られることは、後述の結果により明らかであるが、これは、上記したように、色材が単分子状態で微粒子もしくは微粒子凝集物に吸着され、その状態で被記録媒体の表面近傍に残ったためであると考えられる。色材が単分子状態で吸着し、被記録媒体の表面近傍に残った微粒子は被記録媒体の表面に定着する。これにより画像の耐擦過性や耐水性等の堅牢性が向上する。
【0064】
更に図14(2)にも示した通り、被記録媒体に付与した液体組成物中の微粒子の少なくとも一部は、液媒体の被記録媒体内部への浸透に伴って、被記録媒体内部に浸透していると考えられる。他方、図14(4)に明示したように、色材が、先に浸透している微粒子に、単分子状態で吸着もしくは結合していることも十分に想定し得ることである。この様に被記録媒体内部において、色材が単分子状態で吸着もしくは結合している微粒子も、発色性の向上に寄与していると考えられる。更にこのような液媒体の浸透により、定着性も向上すると考えられる。
【0065】
また、以下に本発明により高発色画像が得られる更なる理由を記す。本発明の液体組成物を用いることにより、前述の被記録媒体の表面近傍に存在する微粒子凝集物1411が形成される際に、凝集物の内部にある程度の大きさの細孔が形成される。液溜り1407の中で微粒子1409に吸着しきれなかった色材1404は、被記録媒体内部へと浸透していく際に溶媒成分とともに細孔を通って微粒子凝集物1411の内部へと浸透するものもある。その際、色材1305は微粒子凝集物内の細孔の入口付近や細孔内壁に吸着し、溶媒成分のみが被記録媒体内部へと浸透していくことによって、色材をより多く微粒子凝集物1411の表面や内部に効率よく吸着させ、被記録媒体の表面近傍に残留させることができる。更に色材1404が染料の場合、微粒子凝集物1411の細孔直径は色材1404のインク中で存在している分子サイズの1〜数倍程度であるために、細孔内部に吸着した色材1404は、色材同士の凝集が極めて起こり難く、理想的な単分子状態を形成することが可能となる。このことが発色性の更なる向上に大きく寄与し、より一層広い色再現範囲を有する記録物を得ることができる。
【0066】
また、微粒子凝集物1411の細孔物性は、液体組成物中に含まれる微粒子だけでなく、溶媒組成等によっても影響されることが分かり、液体組成物から微粒子凝集物を形成し、この微粒子凝集物のある特定の細孔半径領域における細孔容積が、被記録媒体上で形成される画像形成能と非常に相関性が高いことを見出した。
【0067】
更に本発明では、被記録媒体の表面で、微粒子と色材とを液相で反応させることにより、色材がアニオン性であるときは、極めて効率的にカチオン性微粒子表面に色材が吸着することとなる。ここで、インクジェット用コート紙において、本発明と同程度の色材吸着を達成しようとすると、多量のカチオン性多孔質微粒子が必要となり、基紙を覆い隠すような厚いインク受容層の形成が不可欠となる。そのために、コート紙では基紙の質感を損ねる結果に繋がるが、本発明の液体組成物を構成する微粒子の量は少なくできるため、被記録媒体の質感を損ねることなく、印字部と未印字部で質感において違和感のない画像形成が可能となる。
【0068】
また、本発明は、微粒子を含む液体組成物とインクとを被記録媒体の表面に付与して画像を形成するという点において、前記した従来技術において(3)に挙げて説明した、インクに微粒子含有液体組成物を外添する方法と一見類似しているかのように見える。しかし、本発明は、上記したように液体組成物と色材とを積極的に反応させ、液体組成物中の微粒子を色材の凝集(レーキ)を抑える手段として用いているのに対し、上記(3)で説明した従来技術では、微粒子を含む溶液の付与の目的は、被記録媒体の表面状態の改質であり、極性の異なる微粒子とインク中の色材との間で化学的な反応を生じさせるという思想は何ら開示されていない。そして、そのメカニズムの差異に基づくと推測される、これらの記録技術にかかる記録物と、本発明によって得られる記録物との品質の差異は明白なものであった。
【0069】
上記では、先行して液体組成物を付与し、その後にインクを付与することで高発色画像を記録する例を示した。一方、インクと液体組成物の付与の仕方として、先行してインクを付与し、その後に液体組成物を付与する場合がある。そこで、本発明者らは、先行してインクを付与し、その後に液体組成物を付与する場合において高発色画像を形成してみようと試みた。そして、鋭意研究の結果、インクと液体組成物との記録条件、詳しくは、例えばインクが被記録媒体に接触した後、該インクに後から付与する液体組成物が接触するまでの時間差によって、画像の品位が大きく異なることを本発明者らは見出した。前記時間差により画像の品位が異なる理由を本発明者らは、以下のように考えている。
【0070】
被記録媒体に対して先行してインクを付与し、その後、その付与されたインク上に液体組成物を付与することで高発色な着色部が形成される過程を図18により説明する。図18はインク次いで液体組成物の順で被記録媒体に付与した際の着色部1800の概略断面図及びその形成過程を説明する概略工程図である。同図において、1801はインクと液体組成物との反応物、例えば、色材と微粒子との反応物を主として含む部分(以降「反応部」と略す)であり、図13の主画像部IMに相当する部分である。1802は、液体組成物との反応に実質的に関与しなかったインクが、反応部1801の辺縁に流出することによって形成された部分(以降「インク流出部」と略す)であり、図13の周辺部ISに相当する。かかる着色部1800は、例えば、以下のようにして形成される。尚、同図に示した1805は、被記録媒体の繊維間に生じる空隙を模式的に表したものである。
【0071】
先ず、インク1813が、液滴として被記録媒体1803に付与され(図18(1))、その結果、インクの液溜り1807が形成される(図18(2))。液溜り1807内で、被記録媒体の繊維表面の近傍の色材1804は、被記録媒体の繊維表面に物理的又は化学的に吸着したり、液の状態で繊維内に浸透する。一方で、液溜り1807内の繊維より離れた部分では、色材1809は、もとの溶解状態を保っていると考えられる。
【0072】
次いで、色材1804と反応性を有する液体組成物1806が、液滴として被記録媒体1803に付与される(図18(2))。その結果、先ず液体組成物1806と液溜り1807の界面において色材1804は、微粒子1809に化学的に吸着する。この反応は、液同士の反応(液−液反応)であるため、色材1804は単分子状態で、微粒子1809の表面に均一に吸着すると考えられる(図18(3)−2)。即ち、微粒子表面では、色材同士は凝集を起こさないか或いは凝集しても僅かであると推測される。その結果、反応部1801の表層部に単分子状態で色材1804が吸着された微粒子が多数形成され、発色に最も影響を与える表面層に色材を単分子状態で残存させることができるため、高画像濃度であって、且つ彩度の高い記録画像を形成する。
【0073】
次いで、これら色材1804が吸着した微粒子は、分散状態が不安定となるため微粒子同士で凝集すると考えられる(図18(3)−2)。即ち、ここで形成された凝集物1815は、その内部にも単分子状態の色材を保持している。この凝集物1815により、高画像濃度、且つ高彩度の記録画像が形成される。
【0074】
更に未反応の微粒子1809の一部は、液溜り1807内を拡散し、未反応の色材1804が表面に吸着する。このように、液溜り1807内部で色材と微粒子との反応が更に進行するため、より高濃度で彩度の高い画像が形成される。拡散している微粒子1809は分散状態が不安定となり微粒子同士の凝集物1811や上記した凝集物1815を形成することも考えられる。また、被記録媒体の繊維表面に到達した微粒子1809は分散状態が不安定になり凝集物1811を形成し、拡散中に形成された凝集物1811と凝集物1815の中にも前記繊維表面に吸着するものがある。繊維表面に吸着した凝集物1811と1815は液溜り1807の液相が被記録媒体内への浸透を抑制する役割があると考えられる。このため、液溜り1807では、浸透が抑制された液体組成物中の微粒子1809と色材1804とがより多く混在することが可能となる。これにより、色材1804と微粒子1809との接触確率が高められ、反応が比較的均一に、且つ充分に進行し、より均一で、画像の濃度と彩度とに優れた画像が形成される。
【0075】
また、インク1813が被記録媒体1803に付与された際(図18(1))や、液溜り1807に液体組成物1806が付与された際には(図18(2))、微粒子1809を分散させている分散媒が変化することによって微粒子1809の分散が不安定となり、色材1804が吸着する前に上記したように微粒子1809間で凝集を起こすものも存在する。ここでいう分散媒の変化とは、2種もしくはそれ以上の異種の液体が混合したときに一般的に観察される変化、例えば液相のpHや固形分濃度、溶剤組成、溶存イオン濃度などの物性変化を指し、液体組成物が被記録媒体やインクと接触した際にこれらの変化が急激かつ複合的に生じて、微粒子の分散安定性を破壊し凝集物を生成するものと考えられる。これらの凝集物は、繊維間の空隙を埋める効果や、色材を吸着した微粒子を、より被記録媒体の表面近傍に残存させる効果をもたらすと推測される。また、これら液溜り1807内で形成された凝集物は、被記録媒体に吸着しているものもあれば、液相内を動ける(流動性を有する)ものも存在するが、流動性を有するものは、前述の色材と微粒子との反応過程と同様に、微粒子凝集物表面に色材が単分子状態で吸着し、より大きな凝集塊を形成し、これが発色性の向上に寄与しているものである。液相が繊維に沿って浸透する際に液相と共に移動し、空隙を埋めて被記録媒体の表面を平滑化し、より均一で高濃度の画像の形成に寄与すると考えられる。
【0076】
次に、インク次いで液体組成物の順で被記録媒体に付与した際に、前記図18の場合と比較して、相対的に発色性が劣る着色部が形成される過程を図19により説明する。図19はインク次いで液体組成物の順で被記録媒体に付与した際の着色部1900の概略断面図及びその形成過程を説明する概略工程図である。同図において、1901は液体組成物の凝集物である。1902は、液体組成物との反応に実質的に関与しなかったインクが、反応部1901の辺縁に流出することによって形成された部分である。かかる着色部1900は、例えば、以下のようにして形成される。尚、同図に示した1905は、被記録媒体の繊維間に生じる空隙を模式的に表したものである。
【0077】
先ず、インク1913が、液滴として被記録媒体1903に付与され(図19(1))、その結果、インクの液溜り1907が形成される(図19(2))。該液溜り1907内で、被記録媒体の繊維表面の近傍の色材1904は、被記録媒体の繊維表面に物理的又は化学的に吸着したり、液の状態で繊維内に浸透する。一方で、液溜り1907内の繊維より離れた部分では、色材1909は、もとの溶解状態を保っていると考えられる。
【0078】
次いで、色材1904と反応性を有する液体組成物1906が、液滴として被記録媒体1903に付与される(図19(3))。このとき、先に付与されたインクは被記録媒体中に浸透しており、被記録媒体表面層に残存しているインク1913及び色材1904は非常に少ない。その結果、微粒子1909と色材1904の接触確率は低くなり、液体組成物1906とインク1913との液同士の反応(液−液反応)は僅か、若しくは起こらない。そのため、被記録媒体表面には微粒子1909の凝集物1911のみが残るか、若しくは僅かな色材1904が吸着している該凝集物1911が残る(図19(4))。その結果、発色に最も影響を与える表面層に残存させる色材1804が図18の場合に比べ少なくなり、図18の場合と比較し、相対的に発色性が劣る画像が形成されるものと考えられる。
【0079】
即ち、高発色な画像形成を行うには発色に寄与する被記録媒体表面層に特定量以上の色材が残存している内に液体組成物を接触させる必要があるという認識に、本発明者らは至った。好ましくは図18の着色部形成がよいと考えている。
【0080】
以下、本発明を特徴づける液体組成物及びインクについて詳細に説明する。
【0081】
先ず、本明細書におけるカチオン性のインク若しくはアニオン性のインクの定義について述べる。インクのイオン特性についていうとき、インク自体は荷電されておらず、それ自体では中性であることは、当該技術分野においてよく知られていることである。ここでいうアニオン性のインク若しくはカチオン性のインクとは、インク中の成分、例えば、色材がアニオン性基若しくはカチオン性基を有し、インク中において、これらの基がアニオン性基又はカチオン性基として挙動するように調整されているインクを指すものである。また、アニオン性又はカチオン性の液体組成物に関してもその意味は上記と同様である。
【0082】
[液体組成物の測定方法]
本発明では、以下の方法に従って少なくとも微粒子と溶媒を含む液体組成物から得られる微粒子凝集物のある特定の細孔半径領域における細孔容積を測定する。先ず、これらの細孔物性を測定するに当たり、上記液体組成物を以下の手順で前処理する。
(1)上記液体組成物を大気雰囲気下120℃で10時間乾燥してほぼ溶媒分を蒸発させて乾燥する。
(2)上記乾燥物を120℃から700℃まで1時間で昇温させた後700℃で3時間焼成する。
(3)焼成後、上記焼成物を徐々に常温に戻し焼成物を粉体化する。
【0083】
ここで上記前処理を施す理由としては、乾燥によって液体組成物から微粒子凝集物を形成させ、焼成により溶媒成分を完全に除去して凝集物の内部の細孔を空にして空隙を形成するためである。
【0084】
本発明で用いる細孔半径と細孔容積の測定方法として、窒素吸着脱離法を好適に用いることができる。本発明で測定する対象となる微粒子凝集物の細孔のサイズは、細孔半径が3nm〜30nmの領域での細孔容積である。この領域における細孔容積が画像形成能に対し相関性が高い理由は明確ではないが、推測するに、この細孔半径より小さい領域では微粒子凝集物の内部への色材や溶媒成分の浸透が著しく低下し、細孔に起因した色材の吸着が少なく、実質的に発色性の向上に関与しないと考えられる。一方、この細孔半径の領域よりも大きな細孔では色材や溶媒成分の浸透が起こりやすくなる反面、細孔の入口付近や内部に吸着した色材は細孔自体の光散乱の影響によって色材が光の吸収に関与しにくくなり、逆に発色性の低下が引き起こされると考えられる。
【0085】
よって細孔半径が3nm〜30nmの領域と、30nmを越える領域での細孔容積を測定することが形成画像の発色性能の測定に効果的である。この領域における細孔物性の測定方法としては窒素吸着脱離法による方法がもっとも最適である。細孔半径と細孔容積は前処理した試料を120℃8時間真空脱気した後、窒素吸着脱離法よりBarrettらの方法(J.am.Dhem.Soc.,Vol73,373,1951)から求めることができる。更に好ましい測定方法としては細孔半径が3nm〜20nmの領域と、20nmを越える領域での細孔容積を測定することである。この範囲では色材が染料である場合、特により一層の発色性の向上を測定するうえで好ましい。
【0086】
<液体組成物>
以下に本発明の液体組成物について説明する。
【0087】
[細孔半径及び細孔容積]
微粒子凝集物の細孔半径は前述の如く、色材の速やかな浸透と細孔入口付近や内壁への吸着及び細孔内部での色材の凝集を防ぐ観点から3nm〜30nmの範囲であることが好ましいと考えられる。また、発色性の向上に寄与するだけの色材を内部に取り込むためには同時にある程度の容量が必要である。また、細孔容積が増すことで微粒子凝集物内の細孔の数も増加すると考えられ、細孔内部への色材の吸着量だけでなく、細孔の入口付近での吸着量も増加すると考えられる。
【0088】
よってこれらの観点から本発明に好適に用いられる液体組成物は、細孔半径が3nm〜30nmの範囲における細孔容積が0.4ml/g以上で、細孔半径が30nmを越える領域での細孔容積が0.1ml/g以下であるのが好ましい。細孔半径が3nmよりも小さい細孔では、色材や溶媒成分が細孔内部に浸透しにくく、実質的に微粒子凝集物の細孔が発色性の向上に寄与しない。細孔半径を上記したような範囲内とすることにより、細孔内部へ色材や溶媒成分が浸透し、微粒子凝集物の細孔が発色性の向上に有効に寄与することとなる。また、細孔による光散乱が抑えられるため、細孔入口付近や内壁に吸着した色材が発色性に寄与しにくくなることも有効に抑制することができる。
【0089】
より好ましい範囲としては細孔半径が3nm〜20nmの範囲における細孔容積が0.4ml/g以上で、細孔半径が20nmを越える領域での細孔容積が0.1ml/g以下あるのが好ましい。細孔が3nm〜20nmの半径の範囲に多く存在することによって特に色材に染料を用いた場合において、発色性は更に向上し、より一層広い色再現範囲を有する画像が形成できる。液体組成物から形成される微粒子凝集物の細孔半径や細孔容積は、含まれる微粒子の化学種や形状、大きさばかりでなく、溶剤種やその他の添加物及びそれらの組成比等により変化し、これらの条件を制御することによって微粒子凝集物の形成状態をコントロールできると考えられる。従って、本発明の液体組成物を作製する場合には、これらのことを勘案して、微粒子凝集物内に形成される細孔の形状が上記の範囲内となるようにすることが好ましい。
【0090】
(微粒子)
本発明において、液体組成物中に含まれる微粒子に望まれる作用としては、
1)インクと混合した際に、色材の本来持つ発色性を損なわずに、色材を吸着すること、2)インクと混合した際或いは被記録媒体に付与された際に、分散安定性が低下して、被記録媒体の表面に残存すること、等が挙げられる。これらの作用は、1種若しくは2種以上の微粒子によって達成されてもよい。
【0091】
1)の作用を満たすための性質として、例えば、微粒子が色材と逆のイオン性を呈することが挙げられる。これにより、微粒子は色材を静電的に吸着できる。色材がアニオン性の場合は、カチオン性の微粒子が用いられる。イオン性以外に色材を吸着する要素としては、微粒子のサイズや重量或いは表面の形状が挙げられる。例えば、表面に多数の細孔を持つ多孔質微粒子は、特有の吸着特性を示し、細孔の大きさや形状等、複数の要素によって色材を吸着できる。2)の作用は、インクや被記録媒体との相互作用によって引き起こされる。このため、各構成により達成されればよいが、例えば、微粒子の性質として、インク組成成分や被記録媒体構成成分と逆のイオン性を呈することが挙げられる。また、インク中或いは液体組成物中に電解質を共存させることによっても、微粒子の分散安定性は影響を受ける。本発明において、上記1)と2)の作用のどちらか一方の作用が、瞬時に得られることが望ましい。更には上記1)と2)と両方の作用が、瞬時に得られることが好ましい。
【0092】
以下、イオン性微粒子を含有する液体組成物に関して、具体的に説明する。すなわち、本発明で適用可能なカチオン性液体組成物について説明する。
【0093】
[カチオン性液体組成物]
まず、本発明で適用可能な液体組成物の一例である、カチオン性液体組成物について説明する。カチオン性の液体組成物としては、例えば、カチオン性基を表面に有する微粒子と酸を含み、該微粒子が安定に分散されてなる液体組成物が挙げられる。本発明においては、カチオン性の液体組成物として、例えば、酸を含みpHが2〜7に調整されたもの、また、ゼータ電位が+5〜+90mVのものを好適に用いることができる。
【0094】
(pH及びゼータ電位について)
液体組成物のゼータ電位について述べる。ゼータ電位の基本原理について以下に示す。一般に、固体が液体中に分散している系において、固相の表面に遊離電荷がある場合、固相界面付近の液相には反対電荷の荷電層が電気的中性を保つように現れる。これは、電気的二重層と呼ばれ、この電気的二重層による電位差のことをゼータ電位と呼んでいる。ゼータ電位がプラスである場合、微粒子の表面はカチオン性を示し、マイナスではアニオン性を示す。一般に、その絶対値が高いほど微粒子間に働く静電的反発力が強くなり、分散性がよいと言われ、同時に微粒子表面のイオン性が強いことが考えられる。即ち、カチオン性微粒子のゼータ電位が高いほどカチオン性が強く、インク中のアニオン性化合物を引き付ける力が強いと言える。
【0095】
更に本発明者らが鋭意検討した結果、ゼータ電位が+5〜+90mVの範囲にある液体組成物を用いた場合に、被記録媒体上に形成してなる着色部が、特に優れた発色特性を呈することを見出した。その理由は定かではないが、おそらく、微粒子のカチオン性が適度であるために急速なアニオン性化合物(アニオン性色材)の凝集が起こらずに、アニオン性化合物が微粒子表面に薄く均一に吸着するので、色材が巨大なレーキを形成しにくく、その結果、色材本来の発色特性がより良好な状態で発現されるものと考えられる。更に本発明のカチオン性の液体組成物では、アニオン性化合物を微粒子表面に吸着した後も、微粒子が弱いカチオン性を呈しつつ分散不安定状態となることで、微粒子が凝集しながら被記録媒体中に存在するアニオン性のセルロース繊維等の表面に容易に吸着して、被記録媒体の表面近傍に残り易くなっていると考えられる。
【0096】
この結果、以下に挙げる優れた効果が得られるものと考えられる。即ち、インクジェット用コート紙並みの優れた発色特性と、シャドウ部やベタ部等のインク付与量が多い画像領域において、白モヤや色ムラが少なく、色の均一性に優れたものとなる。また、コート紙と比べて極めて効率よく微粒子にアニオン性化合物が吸着し発色するために、カチオン性微粒子の付与量も少なくできるので、とりわけ普通紙に印字した場合には、紙の風合いを損なうことがなく、印字部の耐擦過性にも優れる。より好ましいゼータ電位の範囲としては、例えば、ゼータ電位が+10〜+85mVの範囲にあるカチオン性微粒子を含む液体組成物を使用した場合には、ベタ印字した際にドット間の境界が目立ち難くなり、ヘッドスキャンによるスジムラのより一層の低減を達成することができ、更には、ゼータ電位が+15〜+65mVの範囲にあるカチオン性微粒子を含む液体組成物を使用すると、紙種に因らず、極めて優れた発色性を有する画像を得ることが可能となる。
【0097】
本発明のカチオン性の液体組成物のpHは、保存安定性とアニオン性化合物の吸着性の観点から、25℃付近で2〜7の範囲にあることが好ましい。このpHの範囲内においては、アニオン性のインクと混合した際に、アニオン性化合物の安定性を著しく低下させることがないため、アニオン性化合物同士の強い凝集を引き起こすことがなく、記録画像の彩度が下がったり、くすんだ画像となることを有効に防止することができる。また、上記範囲内であるとカチオン性微粒子の分散状態も良好であるので、液体組成物の保存安定性や記録ヘッドからの吐出安定性を良好に維持することができる。更にはインクと混合した際に、アニオン性物質がカチオン性微粒子表面に十分に吸着されるので、被記録媒体内部への色材の過度の浸透が抑えられ、優れた発色性のインクジェット記録物を得られる。より好ましいpHの範囲としては、pHが3〜6であり、この範囲では、長期保存による記録ヘッドの腐食を極めて有効に防止できると共に、印字部の耐擦過性もより一層向上する。
【0098】
(カチオン性微粒子)
次に、本発明のカチオン性の液体組成物を構成する成分について述べる。第1の成分として挙げられるカチオン性の微粒子は、上記した作用効果を達成するために、液体組成物中に分散された状態において粒子自体の表面がカチオン性を呈することを要する。表面をカチオン性とすることによって、アニオン性のインクと混合した際に、アニオン性の色材が粒子表面に速やかに吸着し、色材の被記録媒体内部への過度の浸透が抑えられるので、十分な画像濃度のインクジェット記録物が得られる。これに対し、微粒子表面がカチオン性でなく、且つ液体組成物の中で水溶性のカチオン性化合物と別々に存在しているような場合には、カチオン性化合物を中心に色材が凝集を起こし、色材自体の発色特性を損なうためにインクジェット用コート紙並みの発色性を達成することが困難となる。そのため本発明の液体組成物に用いられる微粒子は、その表面がカチオン性である必要があるが、本質的にカチオン性である微粒子は勿論のこと、本来は静電的にアニオン性或いは中性である微粒子であっても、処理によって表面がカチオン化された微粒子であれば本発明の液体組成物に用いることができる。
【0099】
本発明で好適に用いられるカチオン性微粒子は、被記録媒体上で形成されるこれらの微粒子による凝集物に細孔が形成されるものであれば本発明の目的を達成するに十分であるため、特に微粒子の材料種に限定はない。一例として具体例をあげるとすれば、例えば、カチオン化した、シリカ、アルミナ、アルミナ水和物、チタニア、ジルコニア、ボリア、シリカボリア、セリア、マグネシア、シリカマグネシア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト等やこれらの複合微粒子や有機微粒子、無機有機複合微粒子などが挙げられる。そして、本発明の液体組成物においては、これらを一種又は二種以上混合して使用することができる。
【0100】
特に微粒子としてアルミナ水和物を用いた場合は粒子表面が正電荷をもっているため好ましく、中でもX線回折法で、べーマイト構造を示すアルミナ水和物が優れた発色性や色の均一性、保存安定性等の点で好ましい。アルミナ水和物は下記の一般式により定義される。
【0101】
Al2O3−n(OH)2n・mH2O
但し式中、nは0〜3の整数の一つを表し、mは0〜10、好ましくは0〜5の値を有する。mH2Oの表現は、多くの場合に結晶格子の形成に関与しない脱離可能な水相を表すものであり、そのために、mは整数でない値をとることもできる。但し、mとnは同時に0とはならない。
【0102】
一般にベーマイト構造を示すアルミナ水和物の結晶は、その(020)面が巨大平面を形成する層状化合物であり、X線回折図形に特有の回折ピークを示す。完全ベーマイトの他に擬ベーマイトと称する、過剰な水を(020)面の層間に含んだ構造をとることもできる。この擬ベーマイトのX線回折図形はベーマイトよりもブロードな回折ピークを示す。
【0103】
ベーマイトと擬ベーマイトは明確に区別のできるものではないので、本発明では特に断わらない限り、両者を含めてベーマイト構造を示すアルミナ水和物(以下アルミナ水和物という)という。(020)面が面間隔及び(020)の結晶厚さは、回折速度2θが14〜15°に現れるピークを測定して、ピークの回折角度2θと半値幅Bから、面間隔はブラッグ(Bragg)の式で、結晶厚さはシェラー(Scherrer)の式を用いて求めることができる。(020)の面間隔はアルミナ水和物の親水性・疎水性の目安として用いることができる。本発明で用いるアルミナ水和物の製造方法としては、特に限定されないが、ベーマイト構造をもつアルミナ水和物を製造できる方法であれば、例えば、アルミニウムアルコキシドの加水分解、アルミン酸ナトリウムの加水分解等の公知の方法で製造することができる。
【0104】
特開昭56−120508号公報に開示されているように、X線回折的に無定形のアルミナ水和物を、水の存在下で50℃以上で加熱処理することによってベーマイト構造に変えて用いることができる。特に好ましく用いることができる方法は、長鎖のアルミニウムアルコキシドに対して酸を添加して加水分解・解膠を行うことによってアルミナ水和物を得る方法である。ここで、長鎖のアルミニウムアルコキシドとは、例えば、炭素数が5以上のアルコキシドであり、更に炭素数12〜22のアルコキシドを用いると、後述するようにアルコール分の除去及びアルミナ水和物の形状制御が容易になるため好ましい。
【0105】
添加する酸としては有機酸及び無機酸の中から1種又は2種以上を自由に選択して用いることができるが、加水分解の反応効率及び得られたアルミナ水和物の形状制御や分散性の点で硝酸が最も好ましい。この工程の後に水熱合成等を行って粒子径を制御することも可能である。硝酸を含むアルミナ水和物の分散液を用いて水熱合成を行うと、水溶液中の硝酸がアルミナ水和物表面に硝酸根として取り込まれ、該水和物の水分散性を向上させることができる。また、水熱合成の後、アルミナ水和物スラリーに適宜酸を加えpH調整し濃縮することで、少量の酸濃度で極めて安定な高固形分濃度のアルミナ水和物スラリーを調製することができる。こうしたスラリーを用いた場合は後述する酸を別途外添する必要なくアルミナ水和物微粒子の分散安定性に優れた液体組成物を作製することが出来る。
【0106】
上記アルミニウムアルコキシドの加水分解による方法は、アルミナヒドロゲルやカチオン性アルミナを製造する方法と比較して、各種イオン等の不純物が混入し難いという利点がある。更に長鎖のアルミニウムアルコキシドは加水分解後の長鎖のアルコールが、例えば、アルミニウムイソプロキシド等の短鎖のアルコキシドを用いる場合と比較して、アルミナ水和物の脱アルコールを完全に行うことができるという利点もある。加水分解の開始時の溶液のpHを6未満に設定することが好ましい。pHが8を越えると、最終的に得られるアルミナ水和物が結晶質になるので好ましくない。
【0107】
また、本発明で用いられるアルミナ水和物としては、X線回折法でベーマイト構造を示すものであれば、二酸化チタン等の金属酸化物を含有したアルミナ水和物を用いることもできる。二酸化チタン等の金属酸化物の含有比率はアルミナ水和物の0.01〜1.00重量%が光学濃度が高くなるので好ましく、より好ましくは0.13〜1.00重量%であり、色材の吸着速度が速くなって、ニジミやビーディングが発生し難くなる。更に前記二酸化チタンはチタンの価数が+4価であることが必要である。二酸化チタンの含有量は硼酸に融解してICP法で調べることができる。また、アルミナ水和物中の二酸化チタンの分布とチタンの価数はESCAを用いて分析することができる。
【0108】
アルミナ水和物の表面をアルゴンイオンで100秒及び500秒エチングして、チタンの含有量の変化を調べることができる。二酸化チタンはチタンの価数が+4価よりも小さくなると、二酸化チタンが触媒として働くようになって印字物の耐候性が低下したり、印字部の黄変が起こりやすくなることがある。
【0109】
二酸化チタンの含有はアルミナ水和物の表面近傍だけでもよく、内部まで含有していてもよい。また、含有量が表面から内部にかけて変化していてもよい。表面のごく近傍にのみ二酸化チタンが含有されていると、アルミナ水和物の電気的特性が維持され易いので、更に好ましい。
【0110】
二酸化チタンを含有したアルミナ水和物の製造方法としては、例えば、学会出版センター刊「表面の科学」第327頁(田丸謙二編、1985年)に記載されているような、アルミニウムアルコキシドとチタンアルコキシドの混合液を加水分解して製造する方法が好ましい。その他の方法としては前記アルミニウムアルコキシドとチタンアルコキシドの混合液を加水分解するときに、結晶成長の核としてアルミナ水和物を添加して製造することもできる。
【0111】
二酸化チタンの代わりにシリカ、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、硼素、ゲルマニウム、錫、鉛、ジルコニウム、インジウム、燐、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム等の酸化物を含有させて用いることができる。例えば、シリカを含有したアルミナ水和物は印字部の耐擦過性の向上に効果がある。
【0112】
本発明に好適に用いられるアルミナ水和物の(020)面の面間隔は0.614nm〜0.626nmの範囲が好適に用いられ、この範囲内では液体組成物中でのアルミナ水和物粒子の分散安定性が良好で、保存安定性や吐出安定性に優れた液体組成物が得られる。この理由は定かでないが、(020)面の面間隔が上記範囲内であれば、アルミナ水和物の疎水性及び親水性の量比率が適度な範囲であるため、液体組成物中で粒子同士の適度な反発による分散安定や吐出口内部での濡れ性のバランスが適度であることにより、液体組成物の吐出安定性が良好になるものと推測している。
【0113】
また、アルミナ水和物の(020)面の結晶厚さは4.0〜10.0nmの範囲が好ましく、この範囲内であると透明性や色材の吸着性が優れるために好ましい。本発明者らの知見によれば、(020)面の面間隔と(020)面の結晶厚さは相関があるので、(020)面の面間隔が上記範囲内であれば(020)面の結晶厚さを4.0〜10.0nmの範囲に調整することができる。更に、上記アルミナ水和物や金属アルミニウム、アルミニウム塩等をか焼等の熱処理することにより作製されるアルミナ(酸化アルミニウム)も同様に正電荷をもつため好適に用いられる。アルミナとしては、α型、γ型、更に、δ、χ、η、ρ、β型等の結晶状態を持つものがあり、表面がカチオン性に保たれた形で、水中にて安定的に分散するものであればいずれも用いることができる。中でもγ型は、表面が活性で、色材の吸着力が高く、比較的微粒化された安定な微粒子分散体も形成し易いため、発色性や保存性、吐出安定性等に優れ、好適に用いることができる。
【0114】
また、本発明で使用する上記したようなカチオン性微粒子は、印字後の発色性、色の均一性及び保存安定性等の観点から、動的光散乱方式により測定される平均粒子直径が0.005〜1μmの範囲のものが好適に用いられる。この範囲内では、被記録媒体内部への過度の浸透を有効に防ぐことができ、発色性や色の均一性の低下を抑えることができる。また、カチオン性微粒子が液体組成物中で沈降することも抑えられ、液体組成物の保存安定性の低下も有効に防止することができる。より好ましくは平均粒子直径が0.01〜0.8μmの範囲内のものであり、このような微粒子を用いれば、被記録媒体に印字した後の画像の耐擦過性や記録物の質感が特に好ましいものとなる。更に好ましくは平均粒子直径が0.03〜0.3μmの範囲内のものであり、このような微粒子は被記録媒体上で形成される微粒子凝集物の細孔が、目的とする細孔半径領域において効果的に形成しやすいため好ましい。
【0115】
(カチオン性微粒子の細孔物性・形状)
また、本発明で使用する上記したようなカチオン性微粒子は、被記録媒体上で形成される微粒子凝集物の細孔を効率的に形成すると同時に、微粒子自体の表面に色材を効率よく吸着させるうえにおいて、上記窒素吸着脱離法における微粒子の極大細孔半径が2nm〜12nmで、全細孔容積が0.3ml/g以上であるものが好ましい。より好ましくは微粒子の極大細孔半径が3nm〜10nmで、全細孔容積が0.3ml/g以上であるものが、被記録媒体上で形成される微粒子凝集物の細孔が、目的とする細孔半径領域において効果的に形成されやすいため好ましい。
【0116】
本発明で使用する上記微粒子のBET比表面積が70〜300m2/gの範囲内であると、微粒子表面への色材の吸着点が十分存在することによって、単分子状態で色材をより効果的に被記録媒体の表面近傍に残しやすくなり、発色性の向上に寄与する。
【0117】
また、本発明で使用する微粒子の形状は、微粒子をイオン交換水に分散させてコロジオン膜上に滴下して測定用試料を作製し、透過型電子顕微鏡で観察することができる。本発明においては被記録媒体上で微粒子凝集物を形成させる際に凝集物内に細孔を形成させる点で、微粒子形状が針状や平板形状、若しくは球状の1次粒子が、ある方向性を持って繋がった二次粒子を形成している棒状やネックレス状等の非球形状のものを好適に用いることができる。
【0118】
本発明者らの知見によれば、平板状の形状の方が針状や毛状束(繊毛状)よりも水への分散性が良く、微粒子凝集物を形成した場合に微粒子の配向がランダムになるために細孔容積が大きくなるのでより好ましい。ここで毛状束形状とは針状の微粒子が側面同志を接して髪の毛の束のように集まった状態をいう。特に本発明で好ましく用いることが出来るアルミナ水和物の中でも擬ベーマイトには前記文献(RocekJ.,etal,AppliedCatalysis,74巻、29〜36頁、1991年)に記載されたように、繊毛状とそれ以外の形状があることが一般に知られている。
【0119】
平板形状の粒子のアスペクト比は特公平5−16015号公報に定義されている方法で求めることができる。アスペクト比は粒子の厚さに対する直径の比で示される。ここで直径とは、アルミナ水和物を顕微鏡又は電子顕微鏡で観察したときの粒子の投影面積と等しい面積を有する円の直径を示すものとする。縦横比はアスペクト比と同じように観察して平板面の最小値を示す直径と最大値を示す直径の比で表わされる。また、毛状束形状の場合には、アスペクト比を求める方法は、毛状束を形成する個々の針状のアルミナ水和物粒子を円柱として、上下の円の直径と長さをそれぞれ求めて、その比をとって求めることができる。最も好ましいアルミナ水和物の形状は、平板状では平均アスペクト比が3〜10の範囲で、毛状束では平均アスペクト比が3〜10の範囲が好ましい。平均アスペクト比が上記範囲内であれば、微粒子凝集物を形成したときに粒子間に隙間が形成され易いため多孔質構造を容易に形成することができる。
【0120】
本発明の液体組成物中における上記したようなカチオン性微粒子の含有量としては、使用する物質の種類により、最適な範囲を適宜決定すればよいが、質量基準で0.1〜40%の範囲が本発明の目的を達成するうえで好適な範囲であり、より好ましくは1〜30%、更には3〜15%の範囲が好適である。このような範囲内では、紙種に因らず優れた発色の画像を安定に得ることができ、また液体組成物の保存安定性や吐出安定性にも特に優れている。
【0121】
(酸)
先に述べたように、本発明の液体組成物は、酸を含み、pHが2〜7に調整されたものであることが好ましいが、この第2の成分である酸は、カチオン性微粒子表面をイオン化し、表面電位を高めることにより、液中での微粒子の分散安定性を向上させると共に、インク中のアニオン性化合物(アニオン性色材)の吸着性向上や、液体組成物の粘度調整の役割を果たす。本発明に好適に用いられる酸は、使用するカチオン性微粒子と組み合わせて、所望のpHやゼータ電位或いは微粒子分散性等の物性が得られるものであれば特に限定はなく、下記に挙げる無機酸や有機酸等から自由に選択して使用することができる。
【0122】
具体的には、無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、燐酸、硼酸、炭酸等が挙げられ、有機酸としては、例えば、下記に挙げるようなカルボン酸やスルホン酸、アミノ酸等が挙げられる。
【0123】
カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、フルオロ酢酸、トリメチル酢酸、メトキシ酢酸、メルカプト酢酸、グリコール酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、o−トルイル酸、m−トルイル酸、p−トルイル酸、o−クロロ安息香酸、m−クロロ安息香酸、p−クロロ安息香酸、o−ブロモ安息香酸、m−ブロモ安息香酸、p−ブロモ安息香酸、o−ニトロ安息香酸、m−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、アントラニル酸、m−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、o−メトキシ安息香酸、m−メトキシ安息香酸、p−ャgキシ安息香酸等が挙げられる。
【0124】
また、スルホン酸としては、例えば、ベンゼンスルホン酸、メチルベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2,4−ジメチルベンゼンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、1−スルホナフタレン、2−スルホナフタレン、ヘキサンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ドデカンスルホン酸等が挙げられる。
【0125】
また、アミノ酸としては、グリシン、アラニン、バリン、α−アミノ酪酸、γ−アミノ酪酸、β−アラニン、タウリン、セリン、ε−アミノ−n−カプロン酸、ロイシン、ノルロイシン、フェニルアラニン等が挙げられる。
【0126】
そして、本発明の液体組成物においては、これらを一種又は二種以上混合して使用することができる。これらの中でも、酸の水中での一次解離定数pkaが5以下のものは、カチオン性微粒子の分散安定性やアニオン性化合物の吸着性に特に優れるため、好適に用いることができる。具体的には、塩酸、硝酸、硫酸、燐酸、酢酸、ギ酸、シュウ酸、乳酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸等が挙げられる。
本発明の液体組成物では、液体組成物中におけるカチオン性微粒子(A)と酸(B)の混合比率を、重量基準でA:B=200:1〜5:1、より好ましくは150:1〜8:1の範囲となるようにすることが、カチオン性微粒子の分散安定性の向上及びアニオン性化合物の微粒子表面への吸着性の向上を図るうえで好ましい。
【0127】
(他の構成成分)
次に、カチオン性の液体組成物を構成するその他の成分について具体的に説明する。本発明のカチオン性の液体組成物は、上記したカチオン性微粒子を必須の成分とし、好ましくは上記したような酸を含み、その他に、通常は液媒体として水を含むが、更に水溶性有機溶剤及びその他の添加剤を含んでいてもよい。
【0128】
この際に使用する水溶性有機溶剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレングリコール類、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等の1価アルコール類の他、グリセリン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、トリエタノールアミン、スルホラン、ジメチルサルホキサイド等が挙げられる。上記水溶性有機溶剤の含有量については特に制限はないが、例えば、液体組成物全重量の5〜60%、更には5〜40%が好適な範囲である。
【0129】
また、本発明の液体組成物には、更にこの他、必要に応じて、粘度調整剤、pH調整剤、防腐剤、各種界面活性剤、酸化防止剤及び蒸発促進剤、水溶性カチオン性化合物やバインダー樹脂等の添加剤を適宜に配合しても構わない。界面活性剤の選択は、液体組成物の被記録媒体への浸透性を調整するうえで特に重要である。水溶性カチオン性化合物は、液体組成物のカチオン性の更なる付与等を目的に、本発明の作用効果を阻害しない範囲において自由に選択し、添加できる。
【0130】
バインダー樹脂は、カチオン性微粒子の更なる耐擦過性の向上等の目的で、被記録媒体の質感や液体組成物の保存安定性や吐出安定性を損ねない範囲において併用することができ、例えば、水溶性ポリマーやエマルジョン、ラテックス等から自由に選択し、使用することができる。
【0131】
(液体組成物の表面張力)
本発明の液体組成物は、無色或いは白色であることがより好ましいが、被記録媒体の色に合わせて調色を行ってもよい。更に以上のような液体組成物の各種物性の好適な範囲としては、表面張力を10〜60mN/m(dyn/cm)、より好ましくは10〜40mN/m(dyn/cm)とし、粘度を1〜30mPa・s(cP)としたものである。
【0147】
(液体組成物の製造方法)
前記微粒子を含む本発明の液体組成物の製造方法としては、一般に分散に用いられている方法等の中から選択して用いることができる。具体的には液体組成物中の微粒子の平均粒子径や粒度分布を上記範囲にするために、ロールミル、サンドミル、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、超高圧乳化機(例えば商品名ナノマイザーなど)等の分散機を用いて分散処理や、遠心分離や限外ろ過等による分級処理等が好適に用いられ,これらの処理手段によって液体組成物中の微粒子の分散粒子径を揃えることが出来る。
【0148】
<水性インク>
[アニオン性インク]
次に、上記で説明したカチオン性の液体組成物と組み合わせて本発明のインクセットを構成する水性のアニオン性インクについて説明する。ここでいうインクセットとは、本発明の液体組成物と、アニオン性物質(アニオン性色材)を含有する少なくとも一種類以上のアニオン性インクとの組み合わせをいう。また、このインクセットから本発明の液体組成物を除いた、少なくとも一種類のインクの組み合わせをインクサブセットと呼ぶ。本発明で使用するアニオン性インクは、色材としてアニオン性基を含有する水溶性染料を用いるか或いは色材として顔料を用いる場合には、アニオン性化合物を併用させたもの(これも本発明ではアニオン性色材という)を用いることが好ましい。本発明で使用される上記のようなアニオン性インクには、更にこれに、水、水溶性有機溶剤及びその他の成分、例えば、粘度調整剤、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、酸化防止剤等が必要に応じて含まれて構成される。以下、これらのインクの各構成成分について説明する。
【0149】
(水溶性染料)
本発明で使用するアニオン性基を有する水溶性染料としては、例えば、カラーインデックス(Color Index)に記載されている水溶性の酸性染料、直接染料、反応性染料であれば特に限定されない。また、カラーインデックスに記載のないものでも、アニオン性基、例えば、スルホン基、カルボキシル基等を有するものであれば特に限定されない。ここでいう水溶性染料の中には、溶解度のpH依存性があるものも含まれる。
【0150】
(顔料)
水性のアニオン性インクの別の形態としては、上記のようなアニオン性基を有する水溶性染料の代わりに、顔料及びアニオン性化合物を用い、水、水溶性有機溶剤及びその他の成分、例えば、粘度調整剤、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、酸化防止剤等を必要に応じて含むインクであってもよい。ここで、アニオン性化合物が顔料の分散剤であってもよいし、顔料の分散剤がアニオン性でない場合に、分散剤とは別のアニオン性化合物を添加したものでもよい。勿論、分散剤がアニオン性化合物である場合でも、更に他のアニオン性化合物を添加したものでもよい。
【0151】
本発明で使用することができる顔料には特に限定はないが、例えば、以下に説明する顔料が好適に使用できる。
【0152】
先ず、ブラック顔料インクに使用されるカーボンブラックとしては、ファーネス法やチャネル法で製造されたカーボンブラックで、一次粒径が15〜40mμm、BET法による比表面積が50〜300m2/g、DBP吸油量が、40〜150ml/100g、揮発分が0.5〜10重量%、pH値が2〜9を有するものが好ましい。
【0153】
このようなものとしては、例えば、No.2300、No.900、MCF88、No.40、No.52、MA7、MA8、No.2200B(以上、三菱化成製)、RAVEN1255(コロンビア製)、REGAL400R、REGAL660R、MOGULL(以上、キヤボット製)、ColorBlackFW1、ColorBlackFW18、ColorBlackS170、ColorBlackS150、Printex35、PrintexU(以上、デグッサ製)等の市販品を使用することができる。また、本発明のために新たに試作されたものでもよい。
【0154】
イエローインクに使用される顔料としては、例えば、C.I.PigmentYellow1、C.I.PigmentYellow2、C.I.PigmentYellow3、C.I.PigmentYellow13、C.I.PigmentYellow16、C.I.PigmentYellow83等が挙げられる。
【0155】
マゼンタインクとして使用される顔料としては、例えば、C.I.PigmentRed5、C.I.PigmentRed7、C.I.PigmentRed12、C.I.PigmentRed48(Ca)、C.I.PigmentRed48(Mn)、C.I.PigmentRed57(Ca)、C.I.PigmentRed112、C.I.PigmentRed122等が挙げられる。
【0156】
シアンインクとして使用される顔料としては、例えば、C.I.PigmentBlue 1、C.I.PigmentBlue2、C.I.PigmentBlue 3、C.I.PigmentBlue15:3、C.I.PigmentBlue16、C.I.PigmentBlue22、C.I.VatBlue4、C.I.VatBlue6等が挙げられる。
【0157】
また、上記いずれの色の色材に関しても、本発明のために新たに製造されたものでも使用可能である。
【0158】
(顔料分散剤)
本発明で使用するインクに用いることができる顔料の分散剤としては、アニオン性基の存在によって、顔料を水、若しくは水性媒体に安定に分散させる機能を有する水溶性樹脂ならどんなものでも使用可能である。特に、重量平均分子量が1,000〜30,000の範囲のものが好ましい。更に好ましくは3,000〜15,000の範囲である。具体的には、例えば、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等の疎水性単量体、又はアクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸及びフマル酸誘導体から選ばれる二つ以上の単量体からなるブロック共重合体、グラフト共重合体或いはランダム共重合体、又はこれらの塩等が挙げられる。これらの樹脂は、塩基を溶解させた水溶液に可溶なアルカリ可溶型の樹脂である。
【0159】
更に親水性単量体からなるホモポリマー又はそれらの塩でもよい。また、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等の水溶性樹脂も使用することが可能である。しかし、アルカリ可溶型の樹脂を用いた場合の方が、分散液の低粘度化が可能で、分散も容易であるという利点がある。前記水溶性樹脂は、インク全量に対して0.1〜5重量%の範囲で使用されることが好ましい。
【0160】
本発明で使用し得る顔料インクは、以上のごとき顔料及び水溶性樹脂を水溶性媒体中に分散又は溶解して構成される。本発明に用い得る顔料系インクにおいて好適な水性媒体としては、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒であり、水としては種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。
【0161】
分散剤が、アニオン性高分子ではない場合、上述した顔料を含むインクに更にアニオン性化合物を添加することが好ましい。本発明で好適に使用されるアニオン性化合物としては、顔料分散剤の項で説明したアルカリ可溶性樹脂等の高分子物質の他、下記に挙げるような低分子量のアニオン性界面活性剤を挙げることができる。
【0162】
低分子量のアニオン性界面活性剤の具体的なものとしては、例えば、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、スルホコハク酸ポリオキシエチレンラウロイルエタノールアミドエステル二ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二ナトリウム、カルボキシル化ポリオキシエチレンラウリルエーテルナトリウム塩、カルボキシル化ポリオキシエチレントリデシルエーテルナトリウム塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミン等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。以上のようなアニオン性物質の好適な使用量としては、インク全量に対して、0.05〜10重量%の範囲であり、更に好適には0.05〜5重量%である。
【0163】
(自己分散型顔料)
また、アニオン性のインクに用いることのできる顔料としては、分散剤を用いることなしに、水若しくは水性媒体に分散させることのできる自己分散型の顔料も使用できる。自己分散型の顔料は、顔料表面に少なくとも1種のアニオン性親水性基が直接若しくは他の原子団を介して結合されているものである。アニオン性の親水性基としては、例えば、下記に挙げた親水性基の中から選択される少なくとも1種であるもの、更に他の原子団が、炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基であるものが挙げられる。
【0164】
−COOM、−SO3M、−SO2NH2、−PO3HM、−PO3M2
(上記式中のMは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムを表わす。)
このように顔料表面への親水性基の導入によってアニオン性に帯電させた顔料は、イオンの反発によって優れた水分散性を有するため、水性インク中に含有させた場合にも分散剤等を添加しなくても安定した分散状態を維持する。特に顔料がカーボンブラックである場合に好ましい。
【0165】
(インク中の添加成分)
また、上記の成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つインクとするために、界面活性剤、消泡剤或いは防腐剤等をインク中に添加することができ、更に市販の水溶性染料等を添加することもできる。
【0166】
界面活性剤としては、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩類、液体脂肪油硫酸エステル塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類等の陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類、アセチレンアルコール、アセチレングリコール等の非イオン性界面活性剤があり、これらの1種又は2種以上を適宜選択して使用できる。その使用量は、分散剤の添加量により異なるが、インク全量に対して、0.01〜5重量%が望ましい。この際、インクの表面張力は30mN/m(dyn/cm)以上になるように活性剤の添加する量を決定することが好ましい。なぜなら、本発明で使用するインクジェット記録方式においては、ノズル先端の濡れによる印字ヨレ(インク滴の着弾点のズレ)等の発生を有効に抑えることができるからである。
【0167】
以上で説明したような顔料系インクの作成方法としては、はじめに、顔料分散用樹脂及び水を少なくとも含有する水溶液に、顔料を添加して攪拌した後、後述の分散手段を用いて分散処理を行い、必要に応じて遠心分離処理を行って、所望の分散液を得る。次に、この分散液に上記に掲げたような成分を更に加えて攪拌して、インクとすればよい。
【0168】
また、アルカリ可溶型の樹脂を使用する場合には、樹脂を溶解させるために塩基を添加することを要する。この際、樹脂を溶解させるためのアミン或いは塩基の量は、樹脂の酸価から計算によって求められるアミン或いは塩基量の1倍以上を添加することが必要である。アミン或いは塩基の量は、以下の式によって計算で求められる。
【0169】
【外19】
Figure 0003927850
【0170】
更に顔料を含む水溶液を分散処理する前にプレミキシングを30分間以上行うと、顔料の分散効率が良くなる。このプレミキシング操作は、顔料表面の濡れ性を改善し、顔料表面への分散剤の吸着を促進するものである。
【0171】
アルカリ可溶型樹脂を使用した場合の分散液に添加される塩基類としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミンメチルプロパノール、アンモニア等の有機アミン或いは水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基を用いることが好ましい。
【0172】
一方、顔料インクの調製に使用する分散機は、一般に使用される分散機ならいかなるものでもよいが、例えば、ボールミル、サンドミル等が挙げられる。その中でも、高速型のサンドミルが好ましく、例えば、スーパーミル、サンドグラインダー、ビーズミル、アジテータミル、グレンミル、ダイノールミル、パールミル、コボルミル(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0173】
尚、本発明で使用するインクは、上記成分の他に必要に応じて、水溶性有機溶剤、界面活性剤、pH調製剤、防錆剤、防カビ剤、酸化防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤及び水溶性ポリマー等の添加剤を添加してもよい。
【0174】
本発明で用いることのできる上記色材を溶解又は分散する液媒体は、水と水溶性有機溶剤との混合物であることが好ましい。具体的な水溶性有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジアキサン等のエーテル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングコリコール等のポリアルキレングリコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−へキサントリオール、チオジグリコール、へキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類、グリセリン、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラン、ジメチルサルフォオキサイド、2−ピロリドン、ε−カプロラクタム等の環状アミド化合物及びスクシンイミド等のイミド化合物等が挙げられる。
【0175】
上記水溶性有機溶剤の含有量は、一般には、インクの全重量に対して重量%で1%〜40%が好ましく、より好ましくは3%〜30%の範囲である。また、インク中の水の含有量は30〜95重量%の範囲とした場合、色材の溶解性なども良好であり、インクの粘度が高くなることを抑えることができ、且つ固着特性を十分に満足させることができる。
【0176】
本発明で使用するアニオン性インクは、一般の水性筆記用具としても使用できるが、熱エネルギーによるインクの発泡現象によりインクを吐出させるタイプのインクジェット記録方法に適用する場合に特に好適であり、吐出が極めて安定となり、サテライトドットの発生等が生じないという特徴がある。但し、この場合には、熱的な物性値(例えば、比熱、熱膨張係数、熱伝導率)を調整する場合もある。
【0191】
<水性インクの濃度>
上記したアニオン性のインク中に含まれる色材成分の質量濃度は、水性染料、顔料や自己分散型顔料等の色材の修理に応じて適宜選択されるが、インクの質量に対し、0.1〜20質量%、特には0.1〜12質量%の範囲が好ましい。
【0192】
又、色材成分の質量濃度が0.3〜7質量%の範囲では、液体組成物中の微粒子の濃度とインク中の色材の濃度との関係に関して、質量基準で、該微粒子1に対して色材が1.2以下、特には1.0以下とした場合、通常の2液系の記録条件の下で形成される画像の発色性は特に優れたものとなる。
【0193】
<被記録媒体に着色部を形成する方法>
次に、本発明の被記録媒体に着色部を形成する方法について説明する。本発明の被記録媒体に着色部を形成する方法は、(i)色材を含む、アニオン性のインクを被記録媒体に付与する工程及び(ii)該インクとは逆の極性に表面が帯電している微粒子が分散状態で含まれている液体組成物を被記録媒体に付与する工程とを有し、上記被記録媒体の表面において、インクと液体組成物とが互いに液体状態で接するように付与することを特徴とする。以下、上述したように構成されている液体組成物及びインクを被記録媒体上に付与する方法について説明する。
【0194】
本発明の被記録媒体に着色部を形成する方法は、上記で説明したような液体組成物を被記録媒体上に付与する工程(ii)と、色材を含む、アニオン性のインクを被記録媒体に付与する工程(i)を含むが、その際に、色材を含むインクによって形成される被記録媒体の着色部形成領域、又は着色部形成領域とその近傍に液体組成物を付与して、インクと液体組成物とが互いに液体状態で接するように付与する。ここでいう着色部形成領域とは、インクのドットが付着する領域のことであり、着色部形成領域の近傍とは、インクのドットが付着する領域の外側の1〜5ドット程度離れた領域のことを指す。
【0195】
本発明において被記録媒体に着色部を形成する方法では、前記した本発明の液体組成物とインクとが被記録媒体上で互いに液体状態で接するようになればよい。例えば、上記工程(i)を行なった後に工程(ii)を行ってもよいし、工程(i)を行なった後に、工程(ii)を行ない、その後に再び工程(i)を行うようにしてもよい。
【0196】
(被記録媒体)
上記した本発明の被記録媒体に着色部を形成する方法に使用される被記録媒体としては、特に限定されるものではなく、従来から使用されている、コピー用紙、ボンド紙等のいわゆる普通紙が好適に使用される。勿論、インクジェット記録用に特別に作製されたコート紙やOHP用透明フィルムも好適に使用される。更に一般の上質紙や光沢紙にも好適に使用することができる。
【0197】
(液体組成物の付与方法)
本発明の液体組成物を被記録媒体上に付与せしめる方法としては、例えば、スプレーやローラー等によって被記録媒体の全面に付与せしめる方法も考えられるが、更に好ましくはインクを付与する着色部形成領域或いは着色部形成領域とその着色部形成領域の近傍にのみに選択的且つ均一に液体組成物を付与せしめることのできるインクジェット方式により行うのが好ましい。また、この際には、種々のインクジェット記録方式を用いることができるが、特に好ましいのは、熱エネルギーによって発生した気泡を用いて液滴を吐出する方式である。
【0198】
<インクジェット記録装置>
次いで、本発明において適用可能なインクジェット記録装置について説明する。本発明のインクジェット記録装置では、色材を含む、アニオン性のインクを収容したインク収容部(インクタンク部)と、該インクを吐出するためのインク吐出部(インク吐出用ヘッド)とを有する第1の記録ユニット(プリント用カートリッジ)および、本発明の液体組成物、好ましくは上記インクとは逆の極性に表面が帯電している微粒子が分散状態で含まれている液体組成物を収容した液体組成物収容部(液体組成物タンク部)と、該液体組成物を吐出するための液体組成物吐出部(液体組成物吐出用ヘッド)とを有する第2の記録ユニット(液体組成物用カートリッジ)とを用いて記録を行うものである。
【0199】
以下、これらについて説明する。
【0200】
図1は本発明において適用可能なインクジェットプリント装置の概略構成の一例を示す模式的斜視図である。図1において、1はインクを吐出してプリントを行うためのプリント用カートリッジであり、2は液体組成物を吐出するための液体組成物用カートリッジである。図示の例では、それぞれ異なる色のインクを用いる4個のプリント用カートリッジ1と1個の液体組成物用カートリッジ2とが使用されている。
【0201】
プリント用カートリッジの各々は、上部のインクタンク部(インク収容部)と下部のインク吐出部(インク吐出用ヘッド)とから構成されている。液体組成物用カートリッジ2は、上部の液体組成物タンク部(液体組成物収容部)と下部の液体組成物吐出部(液体組成物吐出用ヘッド)とから構成されている。さらに、これらカートリッジ1、2には、駆動信号などを受信するためのコネクタが設けられている。3はキャリッジである。
【0202】
キャリッジ3上には、それぞれ異なる色のインクを吐出するための4個のプリント用ヘッドカートリッジ1と1個の液体組成物用カートリッジ2とが位置決め搭載される。また、キャリッジ3には各プリント用カートリッジ1の各インク吐出部および液体組成物用カートリッジ2の液体組成物吐出部を駆動するための信号などを伝達するためのコネクタホルダーが設けられており、このコネクタホルダーを介してキャリッジ3と各カートリッジ1、2とは電気的に接続されている。
【0203】
各インク吐出部1は、それぞれ異なった色のインク、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(B)のインクを吐出する。本図では、図示左から、イエロー、マゼンタ、シアン,ブラックの各インクのプリント用ヘッドカートリッジ1Y、1M、1C、1Bが搭載され、そして右端には液体組成物を吐出するための液体組成物用カートリッジ2が搭載されている。
【0204】
図1において、4はキャリッジ3の主走査方向に延在し該キャリッジを摺動自在に支持する走査レール、5はキャリッジ3を往復走査させるための駆動力を伝達する駆動ベルトである。また、6、7および8、9は、それぞれ、プリント用カートリッジのインク吐出部によるプリント位置の前後に配置されて被記録媒体10の挟持搬送を行うための搬送ローラ対である。紙などの被記録媒体10は、プリント位置の部分で、プリント面を平坦に規制するためのプラテン(不図示)に圧接状態で案内支持されている。この時、キャリッジ3に搭載された各カートリッジ1、2の吐出口形成面は、該キャリッジ3から下方へ突出して被記録媒体搬送用ローラ7、9間に位置し、プラテン(不図示)の案内面に圧接された被記録媒体10に平行に対向するようになっている。
【0205】
本図のインクジェットプリント装置のプリント領域を外れた左側に設定されたホームポジションの近傍には、回復ユニット11が配設されている。回復ユニット11には、4個のプリント用カートリッジ(インク吐出部)1Y、1M、1C、1Bに対応する4個のキャップ12と1個の液体組成物用カートリッジ(液体組成物吐出部)2に対応する1個のキャップ13が上下方向に昇降可能に設けられている。そして、キャリッジ3がホームポジションにあるときには、各カートリッジの1、2の吐出口形成面に対して対応するキャップ12、13とが圧接接合されることにより各カートリッジ1、2の吐出口が密封(キャッピング)される。キャッピングすることにより、吐出口内のインク溶剤の蒸発によるインクの増粘・固着が防止され、吐出不良の発生が防止されている。
【0206】
また、回復ユニット11は、各キャップ12に連通した吸引ポンプ14とキャップ13に連通した吸引ポンプ15を備えている。これらのポンプ14、15は、インク吐出部や液体組成物吐出部に吐出不良が生じた場合に、それらの吐出口形成面をキャップ12、13でキャッピングして吸引回復処理を実行するのに使用される。さらに、回復ユニット11には、ゴムなどの弾性部材から成る2個のワイピング部材(ブレード)16、17が設けられている。ブレード16はブレードホルダー18によって保持され、ブレード17はブレードホルダー19によって保持されている。
【0207】
本発明の概略図においては、前記ブレードホルダー18、19は、それぞれ、キャリッジ3の移動を利用して駆動されるブレード昇降機構により昇降され、それによって、前記ブレード16、17は、各カートリッジ1、2の吐出口形成面に付着したインクや異物をワイピングすべく突出(上昇)した位置(ワイピング位置)と吐出口形成面に接触しない後退(下降)した位置(待機位置)との間で昇降する。この場合、プリント用カートリッジ1の吐出口形成面をワイピングするためのブレード16と液体組成物用カートリッジ2の吐出口形成面をワイピングするためのブレード17は、互いに独立して、個別に昇降できるように構成されている。
【0208】
そして、キャリッジ3が図1中右側(プリント領域側)からホームポジション側へ移動するとき、あるいはホームポジション側からプリント領域側へ移動するときに、ブレード16が各プリント用カートリッジ1の吐出口形成面と当接し、ブレード17が液体組成物用カートリッジ2の吐出口形成面と当接し、相対移動によってそれらの吐出口形成面の拭き取り(ワイピング)動作が行われる。
【0209】
図2はインク吐出部とインクタンクを一体化した構造のプリント用カートリッジ1を示す模式的斜視図である。なお、液体組成物用カートリッジ2は、貯蔵および使用するものがインクではなく液体組成物である点を除き、プリント用カートリッジ1と実質上同じ構成をしている。図2において、プリント用カートリッジ1は、上部にインクタンク部21を、下部にインク吐出部(インク吐出用ヘッド部)22を有しており、さらに、インク吐出部22を駆動するための信号などを受信するとともにインク残量検知信号を出力するためのヘッド側コネクタ23を有している。このコネクタ23はインクタンク部21に並ぶ位置に設けられている。
【0210】
図2中底面側(被記録媒体10側)に示されるインク吐出部22は吐出口形成面81を有し、該吐出口形成面81には複数の吐出口が形成されている。各吐出口に通じる液路部分に、インクを吐出するのに必要なエネルギーを発生するための吐出エネルギー発生素子が配置されている。
【0211】
プリントヘッド用カートリッジ1は、インクを吐出してプリントを行うインクジェットプリント手段であり、インク吐出部22とインクタンク部21を一体化した、交換可能な構成となっている。また、インク吐出部22は、熱エネルギーを利用してインクを吐出するためのインクジェットプリントヘッドであって、熱エネルギーを発生するための電気熱変換体を備えたものである。このインク吐出部22は、電気熱変換体によって印加される熱エネルギーにより生じる膜沸騰を生じさせ、該膜沸騰による気泡の成長、収縮によって生じる圧力変化を利用して、吐出口よりインクを吐出させ、プリントを行うものである。
【0212】
図3は、インク吐出部22(液体組成物吐出部22A)の構造を模式的に示す部分斜視図である。図3において、被記録媒体(プリント用紙等)10と所定の隙間(例えば、約0.5〜2.0ミリ程度)をおいて対面する吐出口形成面81には、所定のピッチで複数の吐出口82が形成され、共通液室83と各吐出口82とを連通する各液路84の壁面に沿ってインク吐出用のエネルギーを発生するための電気熱変換体(発熱抵抗体など)85が配設されている。複数の吐出口82はプリント用カートリッジ1の移動方向(主走査方向)と交叉する方向に並ぶような位置関係で配列されている。このように構成されるインク吐出部22では、画像信号または吐出信号に基づいて対応する電気熱変換体85を駆動(通電)して、液路84内のインクを膜沸騰させ、その時に発生する圧力によって吐出口82からインクを吐出させる。
【0213】
図4〜図6は上記インクジェットプリント装置のワイピング動作を示す模式図である。図4はキャリッジ3がプリント領域側からホームポジション側へ移動する場合を示す。図4において、(A)のようにキャリッジ4上のプリント用カートリッジ1および液体組成物用カートリッジ2が右側(プリント領域側)よりホームポジションに向かって移動してくる。そうすると、(B)のように、先ず、インク用のキャップ12と液体組成物用のキャップ13との間にあるインク用のブレード16が上昇し、キャリッジ3の移動に伴って各プリント用カートリッジ1Y、1M、1C、1Bの吐出口形成面を順次ワイピングしていく。
【0214】
さらに、図4の(C)のように、各プリント用カートリッジ1が液体組成物用のブレード17上を通過した後、この液体組成物用のブレード17を上昇させて(D)のように液体組成物用カートリッジ2の吐出口形成面を同時にワイピングする。インク用のブレード16が4個目のプリント用カートリッジ1の吐出口面をワイピングし、さらに液体組成物路用のブレード17が液体組成物用カートリッジ2の吐出口面をワイピングし終わった後、それぞれのブレード16、17は下降し、待機位置で待機する。図4では、キャリッジ3が図1中の右側(プリント領域)から回復ユニット11の有るホームポジション側へ移動するときにブレード16、17によるワイピングが実行されるように構成したが、ワイピング方向はこれに限定されるものではなく、図5のようにキャリッジ3がホームポジション側から右側(プリント領域側)へ移動する際にワイピングを行うように構成してもよい。
【0215】
図5において、(A)では、インク用のブレード16と液体組成物用のブレード17を同時に上昇させ、キャリッジ3を右方向へ(プリント領域側へ)移動させることにより、プリント用カートリッジ1と液体組成物用カートリッジ2の吐出口形成面を同時にワイピングし(B)、液体組成物用カートリッジ2の吐出口面のワイピングが終了すると同時に液体組成物用のブレード17のみを下降させて待機させ、インク用のブレード17はそのまま残りのプリント用カートリッジ1の吐出口面のワイピングを行う(C)。最後に、図5の(D)のように、全てのプリン用カートリッジ1のワイピングが終了したところで、インク用のブレード16を下降させて一連のワイピング動作を終了する。
【0216】
図5で説明したようなワイピング方向を採用することにより、ワイピングにより除去されてブレード16、17に付着した液滴がブレードの弾性によって被記録媒体10の搬送部へ飛散し、被記録媒体10を不用意に汚す危険性を無くすことができる。
【0217】
さらに、図6に示すように、プリント用カートリッジ1の吐出口形成面をワイピングする方向と液体組成物用カートリッジ2の吐出口形成面をワイピングする方向とを異ならせてもよい。図6において、例えば(A)および(B)に示すように、キャリッジ3がホームポジション側から右側(プリント領域側)へ移動するときにインク用のブレード16でプリント用カートリッジ1の吐出口形成面をワイピングし、(C)および(D)に示すように、キャリッジ3がプリント領域側からホームポジション側へ移動するときに液体組成物用のブレード17で液体組成物用カートリッジ2の吐出口形成面のみをワイピングするようにしてもよい。このようなワイピング方向を採ることにより、ブレード16の弾性力によって飛散するインクが液体組成用カートリッジ2の液体組成物吐出部22Aに付着したり、逆に、ブレード17の弾性力によって飛散した液体組成物がプリント用カートリッジ1のインク吐出部22に付着するという不都合(危険性)を無くすか大幅に減少させることができる。
【0218】
また、図1においては、プリント用カートリッジ1用のキャップ12と液体組成物用カートリッジ2用のキャップ13とを別々にして互いに独立させ(専用にし)、さらに、これらのキャップ12、13に接続される吸引ポンプ14、15もプリント用カートリッジ1用と液体組成物用カートリッジ2用とに独立させて別々(専用)にした。これにより、キャップ12、13およびポンプ14、15内において、インクと該インクと反応性を有する液体組成物とを接触させることなく、これらの廃液を処理することができ、高い信頼性を維持することが可能になる。
【0219】
図7はポンプ14、15から排出されるインクおよび液体組成物を廃インクタンク内へ回収するための回収系統を示す模式図である。図7において、キャップ12に連通した吸引ポンプ14によりプリント用カートリッジ1から吸引された廃インク、並びにキャップ13に連通した吸引ポンプ15により液体組成物用カートリッジ2から吸引された廃液は、プリント装置外へ漏れ出さないように、それぞれ独立した経路を通して廃液タンク24内に回収され、収納される。
【0220】
廃液タンク24は、その内部に多孔質の吸収体25が充填され、該吸収体25に廃液を吸収保持するように構成されている。この廃液タンク24は、プリント装置本体内に設けられている。図7では、プリント用カートリッジ1用の吸引ポンプ14からの廃インク導管26と液体組成物用カートリッジ2用の吸引ポンプ15からの廃液導管27とは、図示のように、廃液タンク24の両端の互いに離れた位置に接続されている。こうすることにより、廃液タンク24内の液体組成物とインクは吸収体25内に液が充分に吸収された状態ではじめて接触するようになるため、多孔質吸収体25が吸収保持できる液の量を充分に確保することができる。
【0221】
図8は、図7の廃液回収系統において、廃液タンク24内の吸収体25を上下2段に配置し、下段の吸収体25Aにインクを吸収させ、上段の吸収体25Bに液体組成物を吸収させるように構成した廃液回収系統を示す模式図である。図8の構成によれば、下段のインク吸収体25Aが溢れた場合でも、上段の吸収体25Bとそこに吸収されている液体組成物により、インク中の染料は上段の吸収体25Bで反応し固定化されるため、該インクが漏れ出してプリント装置内外を汚すことはない。
【0222】
また、本発明において適用可能なカートリッジは上述した形態のものには限定されず別の形態でもよい。ここで、本発明で適用可能な別の形態のカートリッジについて説明する。
【0223】
図10はインクタンクカートリッジ1001の一例を示すものであり、図中の1003はインクが収容されているインク収容部(インクタンク部)、1005は液体組成物が収容されている液体組成物収容部(液体組成物タンク部)である。インクタンクカートリッジ1001は、図11に示すように、インク及び液体組成物の各々を吐出せしめる記録ヘッド1101に着脱可能に構成されてなると共に、インクタンクカートリッジ1001を記録ヘッド1101に装着した状態では、液体組成物及びインクが、記録ヘッド1101に供給されるように構成されているものである。なお、本発明で使用されるカートリッジとしては、前記の如きヘッドとインクタンクとが別体となったものに限らず、それらが一体となったものも好適に用いられる。
【0224】
図15は、記録ユニット(カートリッジ)の一例を示す図である。1500は記録ユニット(カートリッジ)であって、この中にインクを収容したインク収容部、例えば、インク吸収体が収納されており、かかるインク吸収体中のインクが複数のオリフィスを有するヘッド部1501からインク滴として吐出される構成になっている。インク吸収体の材料としては、例えば、ポリプロピレンやポリウレタンを用いることができる。1502は、記録ユニット内部を大気に連通させるための大気連通口である。
【0225】
更に本発明で適用可能な記録ユニット(カートリッジ)の他の実施態様として、インクと液体組成物とを、1個のインクタンク内の各々の収納部に収納し、且つインク及び液体組成物の各々を吐出させるための記録ヘッドを一体的に備えた記録ユニット、具体的には、例えば、図12に示すように、液体組成物を収容部1201Lに、ブラックインクを収容部1201Bkに、また、イエロー、シアン及びマゼンタのカラーインクを各々カラーインク収納部1201Y、1201M及び1201Cに収納し、更に各々のインクを各々個別に吐出させることができるように、インク流路を分けて構成した記録ヘッド1203を備えているような記録ユニット1201が挙げられる。
【0226】
図16は、本発明にかかるインクジェットプリント装置の他の実施態様の概略構成を示す模式的斜視図である。図16において、4はキャリッジ3の主走査方向に延在し該キャリッジを摺動自在に支持する走査レール、5はキャリッジ3を往復動させるための駆動力を伝達する駆動ベルトである。また、6、7および8、9は、それぞれ、プリント用カートリッジによるプリント位置の前後に配置されて被プリント材10の挟持搬送を行うための搬送ローラ対である。紙などの被プリント材10は、プリント位置の部分で、プリント面を平坦に規制するためのプラテン(不図示)に圧接状態で案内支持されている。この時、キャリッジ3に搭載された各ヘッドカートリッジ1、2の吐出口形成面は、該キャリッジ3から下方へ突出して被記録媒体搬送用ローラ7、9間に位置し、プラテン(不図示)の案内面に圧接された被記録媒体10に平行に対向するようになっている。
【0227】
図16において、キャリッジ3上には合計6個のヘッドカートリッジが位置決め搭載されており、本実施例では、キャリッジ3上の図示左端から右側へ向けて、イエローのプリントヘッド1Y、マゼンタのプリントヘッド1M、シアンのプリントヘッド1C、ブラックのプリントヘッド1B、液体組成物吐出ヘッド2、第2のブラックのプリントヘッド1BBの順に配置されている。液体組成物吐出ヘッド2はインク中の色材と反応性を有する液体組成物を被記録媒体10へ吐出するものである。また、右端の第2のブラックのプリントヘッド1BBは、往復プリントでの副走査プリント時などに使用されるブラックインクを用いるプリントヘッドである。つまり、前述の各実施例におけるブラックプリントヘッド1Bの次に(右隣に)液体組成物吐出ヘッド2を配置し、さらにその次に(右端)に前記ブラックのプリントヘッド1BBを配置する構成が採られている。
【0228】
図16において、プリント領域の左側には回復ユニット11が配設され、該回復ユニット11においては、前記ヘッドカートリッジ1、2の配置に対応して、左から右へ、プリントヘッド1Y、1M、1C、1Bをキャッピングするキャップ12が順次配置され、その次に(右隣に)液体組成物吐出ヘッド2をキャッピングするキャップ13が配置され、さらにその右隣(右端)には第2のブラックプリントヘッド1BBをキャッピングするキャップ12が配置されている。そして各々のキャップは、は上下方向に昇降可能に設けられており、キャリッジ3がホームポジションにあるといには、各ヘッド1、2の吐出口形成面に対して対応するキャップ12、13が各々圧接されることにより、各ヘッド1、2の吐出口が密封(キャッピング)され、これにより吐出口内のインク溶剤の蒸発によるインクの増粘、固着が防止され、吐出不良の発生が防止されている。
【0229】
また回復ユニット11は、各キャップ1、2に連通した吸引ポンプ14とキャップ13に連通した吸引ポンプ15を備えている。これらのポンプ14、15はプリントヘッド1や液体組成物吐出ヘッド2に吐出不良が生じた場合に、それらの吐出口形成面をキャップ12、13でキャッピングして吸引回復処理を実行するのに使用される。更に左端から5番目の液体組成物用のキャップ13と6番目(右端)のブラックインク用のキャップ12との間に液体組成物吐出ヘッド2用のブレード17が配置され、右端のキャップ12の右側(プリント領域側)に各プリントヘッド1用のブレード16が配置されている。そしてブレード17はブレードホルダー19によって保持され,ブレード16はブレードホルダーによって保持されている。この態様においては、ブレードホルダー、19は、各々キャリッジ3の移動を利用して駆動されるブレード昇降機構(不図示)による昇降され、それによってブレード16、17は、ヘッド1、2の吐出口形成面に付着したインクや異物をワイピングすべく突出した位置(ワイピング位置)と吐出口形成面に接触しない後退した位置(待機位置)との間で昇降する。この場合、プリントヘッド1をワイピングするブレード16と液体組成物吐出ヘッド2をワイピングするブレード17は、互いに独立して個別に昇降できるように構成されている。
【0230】
図17は図16のインクジェットプリント装置のワイピング動作を示す模式図である。図16において、(A)に示すように、プリントヘッド(インク吐出部)用のブレード16が突出(上昇)した後、キャリッジ3に搭載された各ヘッドが右側(プリント領域側)からホームポジションに向かって移動してくる。上昇したプリントヘッド用のブレード16は、(B)に示すように、キャリッジ3の左向き移動に伴いプリントヘッド1を順次ワイピングしていく。そして、(C)に示すように、液体組成物吐出ヘッド(液体組成物吐出部)2がプリントヘッド用のブレード16の手前(右隣)にきた時点で該ブレード16が待機位置まで後退(下降)し、該ブレード16と液体組成物吐出ヘッド2との接触が防止される。
【0231】
さらにキャリッジ3が左向きに移動して液体組成物吐出ヘッド2がプリントヘッド用ブレード6を通過した時点で、(D)に示すように、プリントヘッド用ブレード6および液体組成物吐出ヘッド用ブレード17の両方を突出(上昇)させる。そして、キャリッジ3の左向き移動に伴って、(E)に示すように、ブレード17による液体組成物吐出ヘッド2のワイピングとブレード16による右端のプリントヘッド1BBのワイピングを同時に行う。全てのヘッド1、2のワイピングが終了した後、(F)に示すように、両方のブレード16、17を後退(下降)させ、待機位置で待機させる。
【0232】
図16および図17の例では、キャリッジ3がプリント領域側(右側)から回復ユニット11のあるホームポジション側へ移動するときにブレード16、17によるワイピングを行うようにしたが、ワイピング方向はこれに限定されるものではなく、ホームポジション側から右側(プリント領域側)へ移動する際にワイピングするようにしてもよい。
【0233】
図16のインクジェットプリント装置は、液体組成物吐出ヘッド2からインク中の色材と反応性を有するような、本発明にかかる液体組成物を被プリント材10に吐出し、各プリントヘッド01から吐出されたインクと被記録媒体10上で接触させて記録物を形成可能な様に構成されている。被記録媒体10上ではインク中の色材が液体組成物と反応することによって、インク中の色材が単分子状態で微粒子表面に吸着し、その微粒子によって画像の形成がなされる為、発色性や色の均一性に優れた画像が得られる。
【0234】
尚、本発明に使用する記録装置において、上記ではインク及び液体組成物に熱エネルギーを作用させてインク液滴を吐出するインクジェット記録装置を例に挙げたが、その他、圧電素子を使用するピエゾ方式のインクジェット記録装置でも同様に利用できる。
【0235】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、文中、部及び%とあるのは特に断りのない限り重量基準である。
先ず、本発明の液体組成物の作製について説明する。
【0236】
以下に示す各成分を混合溶解した後、ポアサイズが1μmのメンブレンフィルター(商品名、フロロポアフィルター、住友電工株式会社製)にて加圧濾過し、本発明の液体組成物A〜Dを得た。
【0237】
(アルミナ水和物の合成例)
米国特許明細書第4,242,271号に記載の方法でアルミニウムドデキシドを製造した。次に、米国特許明細書第4,202,870号に記載された方法で、前記アルミニウムドデキシドを加水分解してアルミナスラリーを製造した。このアルミナスラリーをアルミナ水和物の固形分が8.2%になるまで水を加えた。アルミナスラリーのpHは9.7であった。3.9%の硝酸溶液を加えてpHを調整し、表1に示す熟成条件でコロイダルゾルを得た。このコロイダルゾルを表1に示す酸でpHを調整し、固形分濃度20%に濃縮してA〜Dのアルミナ水和物スラリーを作製した。これらのスラリー中のアルミナ水和物は水中で表面がプラスに帯電し、カチオン性を示す。また、これらのアルミナ水和物スラリーをイオン交換水に希釈し分散させてコロジオン膜上に滴下して測定用試料を作製し、透過型電子顕微鏡で観察したところすべて平板形状の微粒子であった。
【0238】
【表1】
Figure 0003927850
【0239】
<液体組成物Aの組成>
・グリセリン10.0重量部
・ジエチレングリコール7.5重量部
・アルミナ水和物スラリーA50.0重量部
・水32.5重量部
上記成分を乳化分散機TKロボミックス(特殊機化工業株式会社製)にて3000rpmで30分間混合した後、遠心分離処理(4000rpm、15分間)を行い、粗大粒子を除去して液体組成物Aとした。
【0240】
<液体組成物Bの組成>
・1.5−ペンタンジオール10.0重量部
・エチレングリコール7.5重量部
・アルミナ水和物スラリーB50.0重量部
・水32.5重量部
上記成分を乳化分散機TKロボミックス(特殊機化工業株式会社製)にて3000rpmで30分間混合した後、遠心分離処理(4000rpm、15分間)を行い、粗大粒子を除去して液体組成物Bとした。
【0241】
<液体組成物Cの組成>
・グリセリン7.5重量部
・プロピレングリコール7.5重量部
・アルミナ水和物スラリーC50.0重量部
・水35.0重量部
上記成分を乳化分散機TKロボミックス(特殊機化工業株式会社製)にて3000rpmで30分間混合した後、遠心分離処理(4000rpm、15分間)を行い、粗大粒子を除去して液体組成物Cとした。
【0242】
<液体組成物Dの組成>
・2−ピロリドン7.5重量部
・エチレン尿素7.5重量部
・アルミナ水和物スラリーD50.0重量部
・水35.0重量部
上記成分を乳化分散機TKロボミックス(特殊機化工業株式会社製)にて3000rpmで30分間混合した後、遠心分離処理(4000rpm、15分間)を行い、粗大粒子を除去して液体組成物Dとした。
【0243】
上記液体組成物A〜Dを下記評価方法により測定を行い、各々の評価結果を表2に示した。
【0244】
1)微粒子の平均粒子径
微粒子の固形分濃度を0.1%になるよう液体組成物をイオン交換水で希釈した後、超音波洗浄機にて5分間分散させて、電気泳動光散乱光度計(大塚電子株式会社社製、ELS−8000、液温25℃、石英セル使用)を用いて散乱強度を測定した。平均粒子径は付属のソフトウェアを用い、散乱強度からキュムラント解析法により求めた。
【0245】
2)pH
液体組成物に対し、液温25℃でpHメーター計(堀場製作所株式会社製、カスタニーpHメーターD−14)を用いて測定した。
【0246】
3)ゼータ電位
微粒子の固形分濃度が0.1%になるよう液体組成物をイオン交換水で分散させた後に、ゼータ電位測定機(ブルックヘブン社製、BI−ZETA plus、液温20℃、アクリルセル使用)で測定した。
【0247】
4)タンク保存性
液体組成物をインクタンクに詰めた後、60℃の恒温槽に1ヶ月間静置保存してタンク内の液体組成物の液物性及び記録ヘッドからの吐出性を評価した。
【0248】
○:タンク内でほぼ沈降が見られず、吐出安定性も良好。
【0249】
×:タンク内で著しく沈降し吐出性も不安定。
【0250】
5)細孔半径及び細孔容積
下記手順に従って前処理した後、試料をセルに入れ、120℃で8時間真空脱気してカンタクローム社製のオムニソーブ1を用いて窒素吸着脱離法により測定した。細孔半径及び細孔容積はBarrettらの方法(J.am.Dhem.Soc.,Vol73,373,1951)により計算から求めた。
(1)上記液体組成物を大気雰囲気下120℃で10時間乾燥してほぼ溶媒分を蒸発させて乾燥する。
(2)上記乾燥物を120℃から700℃まで1時間で昇温させた後700℃で3時間焼成する。
(3)焼成後、上記焼成物を徐々に常温に戻し焼成物をメノウ乳鉢で摺り潰して粉体化する。
【0251】
【表2】
Figure 0003927850
【0252】
次に、本発明の実施例及び比較例で使用するインクの作製について説明する。
【0253】
<インクサブセット1の作製>
下記に示す各成分を混合し、十分攪拌して溶解後、ポアサイズが0.45μmのフロロポアフィルター(商品名、住友電工株式会社製)にて加圧濾過し、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各染料インク、Bk1、Y1、M1及びC1を得、これらの染料インクからなる組み合わせをインクサブセット1とした。
【0254】
[ブラックインクBk1]
・C.I.ダイレクトブラック1952.5部
・2−ピロリドン10部
・グリセリン5部
・イソプロピルアルコール4部
・水酸化ナトリウム0.4部
・水78.1部
[イエローインクY1]
・Projet Fast Yellow 2(Zeneca社製) 2.0部
・C.I.ダイレクトイエロー861.0部
・チオジグリコール8部
・エチレングリコール8部
・アセチレノールEH
(川研ケミカルス社製)0.2部
・イソプロピルアルコール4部
・水76.8部
[マゼンタインクM1]
・Projet Fast Magenta 2(Zeneca社製)3部
・グリセリン7部
・尿素7部
・アセチレノールEH
(川研ケミカルス社製)0.2部
・イソプロピルアルコール4部
・水78.8部
[シアンインクC1]
・C.I.ダイレクトブルー1993部
・エチレングリコール7部
・ジエチレングリコール10部
・アセチレノールEH
(川研ケミカルス社製)0.3部
・水79.7部
<インクサブセット2の作製>
下記に示す各成分によって顔料分散液を調製し、これを用いてブラックインクBk2を作製した。更に同様の顔料分散液を用いてイエロー、マゼンタ及びシアンの各顔料インク、Y2、M2及びC2を得、これらの顔料インクからなる組み合わせをインクサブセット2とした。
【0255】
[ブラックインクBk2]
(顔料分散液の作製)
・スチレン−アクリル酸−アクリル酸エチル共重合体
(酸価140、重量平均分子量5,000)1.5部
・モノエタノールアミン1.0部
・ジエチレングリコール5.0部
・イオン交換水81.5部
上記成分を混合し、ウォーターバスで70℃に加温し、樹脂分を完全に溶解させる。この溶液に新たに試作されたカーボンブラック(MCF88、三菱化成製)10部、イソプロピルアルコール1部を加え、30分間プレミキシングを行った後、下記の条件で分散処理を行った。
・分散機:サンドグラインダー(五十嵐機械製)
・粉砕メディア:ジルコニウムビーズ、1mm径
・粉砕メディアの充填率:50%(体積比)
・粉砕時間:3時間
更に遠心分離処理(12,000rpm、20分間)を行い、粗大粒子を除去して分散液とした。
【0256】
(ブラックインクBk2の作製)
上記の顔料分散液を使用し、下記の組成比を有する成分を混合し、顔料を含有するインクを作製し、これをブラックインクBk2とした。
・上記顔料分散液30.0部
・グリセリン10.0部
・エチレングリコール5.0部
・N−メチルピロリドン5.0部
・エチルアルコール2.0部
・イオン交換水48.0部
[イエローインクY2]
ブラックインクBk2の調製の際に使用したカーボンブラック(MCF88、三菱化成製)10部を、ピグメントイエロー74に代えたこと以外はブラックインクBk2の調製と同様にして、顔料含有イエローインクY2を調製した。
【0257】
[マゼンタインクM2]
ブラックインクBk2の調製の際に使用したカーボンブラック(MCF88、三菱化成製)10部を、ピグメントレッド7に代えたこと以外はブラックインクBk2の調製と同様にして、顔料含有マゼンタインクM2を調製した。
【0258】
[シアンインクC2]
ブラックインクBk2の調製の際に使用したカーボンブラック(MCF88、三菱化成製)10部を、ピグメントブルー15に代えたこと以外はブラックインクBk2の調製と同様にして、顔料含有シアンインクC2を調製した。
【0259】
上記したように高濃度、高彩度なインクジェット記録物を得るには被記録媒体の表面層において液体組成物とインクを特定量以上接触させる必要があるとの認識を本発明者らは持つに至り、以下の検討を行った。
【0260】
(実施例)
下記表3に示すC1−1−1〜4、C1−2−1〜4、C1−3−1〜4、C1−4−1〜4の16種類のインクの何れか1つと、10、25、50、100、150、200msecの6種類の時間差で上記液体組成物A、B、C、Dの何れか1つを接触させる384種類の組み合わせで、インクジェット記録装置により記録を行った。
【0261】
色材濃度と浸透性を以下に示すように組み合わせたC1−1−1〜4、C1−2−1〜4、C1−3−1〜4、C1−4−1〜4の16種類のインクと上記液体組成物との組み合わせにより各着色部を形成するに際し、下記1)〜7)の商品名で広く流通している7種類の「普通紙」を用いた。
1)キヤノン社製:PB用紙(被記録媒体1)
2)キヤノン社製:BrilliantWhitepaper(被記録媒体2)
3)UnionCamp社製:GreatWhiteInkjet(被記録媒体3)
4)ハンマーミル(Hammermill)社製:JetPrint(被記録媒体4)
5)ゼロックス(Xerox)社製:Xerox4024(被記録媒体5)
6)ヒューレットパッカード(HewlettPackard)社製:BrightWhiteInkjetPaper(被記録媒体6)
7)AussdatRay社製:RayJet(被記録媒体7)
なお、ここで使用したインクジェット記録装置としては図1に示したのと同様の記録装置を用い、図3に示した記録ヘッドを用いて解像度1200dpi、サイズ2inch×2inchのベタ画像を形成した。この際、インクを先打ちして先ず被記録媒体上に付着させ、その後液体組成物を付着させた。また、インクを付着させて後、そのインク上に液体組成物を付着させるまでの時間を上記のように6通りに変化させた。以下に使用したインクの色材濃度と浸透性、被記録媒体に対するインクの付与量、インクが被記録媒体に接触した後、該インクに液体組成物が接触するまでの時間差について説明する。
【0262】
(インクの色材濃度と浸透性)
上記したシアンインクC1をベースにし、C.I.ダイレクトブルー199の量を異ならせることにより色材濃度を変化させ、アセチレノールEHの量を異ならせることにより浸透性を変化させた。以下に作製したインクC1−1−1〜4、C1−2−1〜4、C1−3−1〜4、C1−4−1〜4の各成分比を表3に示す。表3中C.I.ダイレクトブルー199はDB199、エチレングリコールはEG、ジエチレングリコールはDEG、アセチレノールEHはAEHの略称で示す。尚、本実施例中では、インクが被記録媒体に接触した瞬間の色材濃度を、表3に示すインクの作製時の色材濃度と同等として扱っている。厳密には、インクが被記録媒体に接触した瞬間の色材濃度が重要で、このときの色材濃度はインク作製時の色材濃度とは差がある可能性があると本発明者らは認識している。しかしながら、前記差の範囲では、画像品位に影響は及ばないことを確認しており、インクが被記録媒体に接触した瞬間の色材濃度を、作製時の色材濃度として扱っても、本発明には何ら影響がないと本発明者らは認識している。
【0263】
【表3】
Figure 0003927850
【0264】
(インクおよび液体組成物の付与量)
ここで用いた図3の記録ヘッドは1200dpiの記録密度を有し、該ヘッドを使用したときの被記録媒体における1ドットあたりの付与量はインク及び液体組成物について夫々約4ngであった。
【0265】
(インクと液体組成物との被記録媒体における接触までの時間)
解像度1200dpiの印字領域を1回の走査で印字する1パス印字を行った。このとき、液体組成物の印字データはインクの印字データと同じにして、液体組成物とインクとが同一位置に着弾するようにした。ここで本発明の重要なパラメータである、インクが被記録媒体に付与されてから、液体組成物がそのインクと接触するまでの時間間隔(時間差t(msec))は、同一位置に付与されるインクと液体組成物がそれぞれの記録ヘッドから吐出される時間差と同等として扱っている。厳密には前記接触までの時間差と吐出時間差は、インクと液体組成物の吐出速度、吐出口と被記録媒体との距離、及び先に付与したインクが被記録媒体表面から盛り上がっている高さ等の記録条件により異なることを本発明者らは認識しているが、吐出時間差を接触までの時間差としても、実質的大きく異ならないので本実施例中では同等のものとしている。なお、仮に、上記吐出時間差と上記接触までの時間差とが大きく異なってしまう場合は、吐出時間差を上記接触までの時間差と同等であるとは扱わず、上記時間差t(msec)は上記接触までの時間差とする。
【0266】
なお、同一画素に付与されるインクと液体組成物の吐出時間差は、インク吐出用ヘッド(インク吐出部)のインク吐出口と液体組成物吐出用ヘッド(液体吐出部)の液体吐出口との距離、およびヘッドの駆動周波数により決定される。本実施例では、このように決定された吐出時間差を上記接触までの時間差と同等として扱い検討を行った。ここではインク吐出用ヘッドのインク吐出口と液体組成物吐出用ヘッドの液体吐出口との距離が0.25inchのものを使用した。また、下表4に示す駆動周波数f(kHz)により上記時間差t(msec)として10、25、50、100、150、200msecを実現し、これらの時間差で記録を行った。
【0267】
また本発明では同一パスで記録インクと液体組成物との吐出を行っているが、本発明の意図するところではこれら(インクと液体組成物)が互いに異なるパスで吐出されていても、時間差tが実質的に記録インクと液体組成物の吐出時間差であることを考慮すれば、何ら問題はない。
【0268】
【表4】
Figure 0003927850
【0269】
上記したようにインクの被記録媒体に対する浸透性はアセチレノールEHの量を異ならせることにより変化させたが、本検討に用いた上記1)〜7)の7種類の被記録媒体における浸透性を吸収係数Ka(μm/msec1/2)としてブリストウ法により測定した。以下にブリストウ法による測定方法と測定結果について説明する。以下では上記インクとの組み合わせで最も吸収係数が大きくなる、即ち浸透性が最も高い被記録媒体における結果のみを記す。
【0270】
(ブリストウ法による測定方法)
ブリストウ(動的浸透性)試験装置(東洋精機製作所製JAPANTAPPI紙パルプ試験方法No.51に記載の紙及び板紙の液体吸収性試験方法(ブリストウ法)に準拠)を使用した。被記録媒体1)〜7)に対する、C1−1−1〜4、C1−2−1〜4、C1−3−1〜4、C1−4−1〜4の16種類のインクそれぞれの吸収係数Ka(μm/msec1/2)を測定した。また、同時に前記インクのそれぞれの濡れ時間tw(msec)も測定した。測定環境は常温である。尚、ブリストウ法による吸収係数と濡れ時間の算出方法はJAPANTAPPINo.51紙パルプ試験方法に取り上げられており、また多くの市販図書にも説明がある為、ここでの詳細な説明は省略する。尚、以下に記す他の実施例における吸収係数も前記ブリストウ試験装置により測定した。
【0271】
(ブリストウ法による測定結果)
前記ブリストウ試験装置を使用して算出した前記16種類のインクの吸収係数と濡れ時間を表5に示す。
【0272】
【表5】
Figure 0003927850
【0273】
(比較例)
上記のようなC1−1−1〜4、C1−2−1〜4、C1−3−1〜4、C1−4−1〜4の16種類のインクを用いて上記1)〜7)の普通紙に記録を行った。記録した画像は上記実施例と同解像度、同サイズのベタ画像である。また記録に用いた図3の記録ヘッドは1200dpiの記録密度を有し、該ヘッドを使用したときの被記録媒体における1ドットあたりの付与量は約4ngであった。
【0274】
以下に実施例で得られた画像の評価方法と評価結果について説明する。
【0275】
(評価方法)
同じ種類の被記録媒体に記録された上記実施例で得られた384種類の画像と比較例で得られた16種類の画像を本発明者らの目視により評価した。実施例の画像と該画像に用いられているインクと同じインクで形成された比較例の画像とを比べ、実施例の画像が比較例の画像より発色性が非常に優れていると判断すれば◎とし、発色性が優れていると判断すれば○とし、発色性が同等以下と判断すれば×と評価した。
【0276】
(評価結果)
表6に吸収係数Ka=0.1(μm/msec1/2)であるインクC1−1−1〜4と時間差t=10〜200msecの組み合わせでの評価結果を、表7にKa=1.0(μm/msec1/2)であるインクC1−2−1〜4と時間差t=10〜200msecの組み合わせでの評価結果を、表8にKa=2.0(μm/msec1/2)であるインクC1−3−1〜4と時間差t=10〜200msecの組み合わせでの評価結果を、表9にKa=2.5(μm/msec1/2)であるインクC1−4−1〜4と時間差t=10〜200msecの組み合わせでの評価結果を示す。
【0277】
【表6】
Ka=0.1(μm/msec1/2
Figure 0003927850
【0278】
【表7】
Ka=1.0(μm/msec1/2
Figure 0003927850
【0279】
【表8】
Ka=2.0(μm/msec1/2
Figure 0003927850
【0280】
【表9】
Ka=2.5(μm/msec1/2
Figure 0003927850
【0281】
(その他のインクによる実施例)
その他の実施例として上記Bk1、Y1、M1、Bk2、Y2、M2、C2をベースに色材濃度と浸透性を変化させ、液体組成物A、B、C、Dとの被記録媒体における接触までの時間を変化させて上記実施例と同解像度、同サイズのベタ画像の記録を行った。被記録媒体には上記した被記録媒体1)〜7)を用いた。また、被記録媒体における1ドットあたりの付与量はインク及び液体組成物共に4ngであり、記録には上記実施例と同じインクジェット記録装置と記録ヘッド、記録方法及び表4に示す記録時間を用いた。吸収係数Ka(μm/msec1/2)は上記したブリストウ試験装置(東洋精機製作所製)を使用して上記と同様の方法により測定した。作製したBk1、Y1、M1、Bk2、Y2、M2、C2ベースのインクの各成分比と吸収係数をそれぞれ表10、表11、表12、表13、表14、表15、表16に示す。尚、表中には比を変更した成分のみを記し、表記していない成分はベースインクの成分とその比と同じである。以下の表においてC.I.ダイレクトブラック195はDBk195、ProjetFastYellow2はPFY2、C.I.ダイレクトイエロー86はDY86、ProjetFastMagenta2はPFM2、カーボンブラックはCBk、ピグメントイエロー74はPGY74、ピグメントレッド7はPGR7、ピグメントブルー15はPGB15、アセチレノールEHはAEHの各略称で記した。また、吸収係数は上記インクと上記被記録媒体との組み合わせで最も吸収係数が大きくなる被記録媒体における結果のみを記す。
【0282】
【表10】
ベースインク:Bk1
Figure 0003927850
【0283】
【表11】
ベースインク:Y1
Figure 0003927850
【0284】
【表12】
ベースインク:M1
Figure 0003927850
【0285】
【表13】
ベースインク:Bk2
Figure 0003927850
【0286】
【表14】
ベースインク:Y2
Figure 0003927850
【0287】
【表15】
ベースインク:M2
Figure 0003927850
【0288】
【表16】
ベースインク:C2
Figure 0003927850
【0289】
また、上記その他の実施例で得られた画像と該画像の被記録媒体と同じ種類の被記録媒体にその他の比較例として上記Bk1−4−1〜4、Y1−4−1〜4、M1−4−1〜4、Bk2−4−1〜4、Y2−4−1〜4、M2−4−1〜4、C2−4−1〜4の各インクのみで上記実施例と同解像度、同サイズのベタ画像を記録した。被記録媒体における1ドットあたりの付与量は約4ngである。その他の実施例の画像と該画像に用いられているインクと同じインクで形成されたその他の比較例の画像を比べ、その他の実施例の画像がその他の比較例の画像より発色性が非常に優れていると判断すれば◎とし、発色性が優れていると判断すれば〇とし、発色性が同等以下と判断すれば×と評価した。
【0290】
表17にインクBk1−4−1〜4と時間差t=10〜200msecの組み合わせでの評価結果を、表18にインクY1−4−1〜4と時間差t=10〜200msecの組み合わせでの評価結果を、表19にインクM1−4−1〜4と時間差t=10〜200msecの組み合わせでの評価結果を、表20にインクBk2−4−1〜4と時間差t=10〜200msecの組み合わせでの評価結果を、表21にインクY2−4−1〜4と時間差t=10〜200msecの組み合わせでの評価結果を、表22にインクM2−4−1〜4と時間差t=10〜200msecの組み合わせでの評価結果を、表23にインクC2−4−1〜4と時間差t=10〜200msecの組み合わせでの評価結果を示す。
【0291】
【表17】
Ka=2.5(μm/msec1/2
Figure 0003927850
【0292】
【表18】
Ka=2.5(μm/msec1/2
Figure 0003927850
【0293】
【表19】
Ka=2.5(μm/msec1/2
Figure 0003927850
【0294】
【表20】
Ka=2.5(μm/msec1/2
Figure 0003927850
【0295】
【表21】
Ka=2.5(μm/msec1/2
Figure 0003927850
【0296】
【表22】
Ka=2.5(μm/msec1/2
Figure 0003927850
【0297】
【表23】
Ka=2.5(μm/msec1/2
Figure 0003927850
【0298】
(高発色に寄与する色材の被記録媒体表面からの深さ)
従来、図20(a)に示すように被記録媒体2000の表面から30〜50μmの深さに色材2002をより多く残存させれば、前記深さより深い領域により多くの色材が残存している場合に比べ、光学濃度を向上できることが一般的に知られている。しかしながら、さらなる検討の結果、本発明のインクと液体組成物とを用いて画像を形成する場合、前記深さ領域とは異なる領域に残存している色材が発色に寄与していることが解かった。本発明者らは、高発色を得る為には従来発色に寄与すると知られてきた領域とは異なる領域に色材を残存させる必要があると認識するに至った。以下の検討を行ったが、まず、深さの定義をここで行う。被記録媒体表面とはインクを付与する面のことであり、図20は被記録媒体2000の表面及び内部を示している。図20に示すように被記録媒体表面は平滑ではなく、凹凸があり、深さとは凸部2001の頂点から被記録媒体の深さ方向への距離である。
【0299】
本発明者らは、上記説明したインクと液体組成物とを用いた実施例及びその他の実施例により得た高発色な画像及び発色性が劣る画像に対して、X線マイクロ分析(XMA)を行い、色材と微粒子が残存している深さ領域を測定した。以下にXMAの説明をする。
【0300】
(XMA)
元素分析はXMA(商品名:EDAX;EDAX社製)を用いて行った。XMAは深さ方向に数μmオーダーで元素分析できる装置であり、表面の元素分析に適している。インクと液体組成物とを用いて画像が形成されている被記録媒体の深さ方向に残存している色材に由来する元素及び微粒子に由来する元素をXMAによる元素分析により確認し、色材と微粒子が残存している深さ領域を測定した。また、加速電圧は、分析する元素によって変える必要があり、夫々元素に適した値に設定した。
【0301】
(色材及び微粒子の深さと発色性)
実施例及びその他の実施例のインクと液体組成物とを用いた画像をXMAにより分析した結果、図20(b)に示すように深さ10μm以内の領域に付与したインクの色材2002と液体組成物の微粒子2003の大部分が残存している画像と深さ10μmより深い領域により多くの色材と微粒子が残存している画像があった。また、色材と微粒子がより多く残存している深さと画像の発色性には表24に示す関係があることが解かった。本発明者らの目視により発色性が良いと判断した画像は○とし、前記画像より発色性が劣ると判断した画像は×とした。深さ10μm以内の領域に色材と微粒子の大部分が残存している画像は高発色であり、それに比べ深さ10μmより深い領域により多くの色材と微粒子が残存している画像は発色性が劣る。
【0302】
【表24】
Figure 0003927850
【0303】
このように、被記録媒体の表面から少なくとも深さ10μm以内に、色材と微粒子を残存させることで高発色性の画像を得ることができる。なお、図13や図14にて説明したように、本発明では、単分子状態の色材を微粒子の表面に吸着させることで発色性を高めている。このことを考慮すれば、被記録媒体の表面から少なくとも深さ10μm以内に、単分子状態の色材が吸着された微粒子を存在させることで、高発色性の画像を形成できることが導かれる。また、上述したように、単分子状態の色材が吸着された微粒子同士は凝集し凝集物となる。従って、このことを考慮すれば、被記録媒体の表面から少なくとも深さ10μm以内に、単分子状態の色材が吸着された微粒子同士が凝集した凝集物を存在させることで、高発色性の画像を形成できることが導かれる。
【0304】
(高発色条件)
本発明者らは、表24の結果に基づき、高発色画像を得るための記録条件(下記式)を導いた。上述したように、高発色画像を記録するための記録条件としては、先に付与したインクの色材が被記録媒体表面から特定の深さ以内(被記録媒体の表面層)に特定量以上存在している間に、後から付与する液体組成物を先行して付与されたインクに接触させることが必要である。ここで、「特定の深さ」とは、表24にて説明したように、被記録媒体表面から10μmの深さであり、また、「特定量」とは、前記10μm以内の深さにおいて0.07pg/μmの量である。なお、0.07pg/μmの導き方は後述する通りである。
【0305】
すると、被記録媒体表面から深さ10μm以内の深さに残存する色材量W(pg/μm)は、
【外22】
Figure 0003927850
【0306】
(但し、M(pg/μm)は、インクの被記録媒体への単位面積あたりの付与量であり、
D(%)は、インクの色材濃度であり、
Ka(μm/msec1/2)は、被記録媒体のインクに対する吸収係数であり、
tw(msec)は、被記録媒体におけるインクの濡れ時間であり、
t(msec)は、インクが被記録媒体に付与された後、インクに液体組成物が接触するまでの時間である)
で表すことができる。
【0307】
ここで、図21は、インクC1−3−3が被記録媒体に付与された後、インクC1−3−3に液体組成物Aが接触するまでの時間と、光学濃度O.D.との関係を示すグラフである。図1に示したのと同様の記録装置を用い、図3に示した記録ヘッドを用いて解像度1200dpi、サイズ2inch×2inchのベタ画像を形成し、そして、そのベタ画像の光学濃度を、記録後24時間経過後、GRETAGスペクトロリノで測定した。なお、インクC1−3−3と液体組成物Aの被記録媒体への1ドットあたりの付与量は約4ngであった。また、インクC1−3−3のみにより記録した場合のO.D.は1.15であった。よって、高発色効果を得るためには、図21においてO.D.が1.15より大きくなるような時間差、つまり、525msec未満の時間差とする必要がある。
【0308】
そして、525msec時の色材量W(pg/μm)は
【外23】
Figure 0003927850
【0309】
から、0.06885(pg/μm)となるので、本発明者らは、上記「特定量」を、被記録媒体表面から10μm以内の深さにおいて約0.07(pg/μm)の量であると認識した。また、表6〜9及び表17〜23においても、10μm以内の深さにおいて0.07(pg/μm)以上の色材が残存する時間差では〇または◎の判定となり、0.07(pg/μm)未満の色材が残存する時間差では×の判定となった。
【0310】
このように、高発色画像を記録するための記録条件は、(A)インクの被記録媒体への付与量、(B)インクの色材濃度、(C)インクの被記録媒体への浸透速度(または被記録媒体のインクに対する吸収係数)、(D)インクの被記録媒体における濡れ時間、(E)インクが被記録媒体に付与された後、インクに液体組成物が接触するまでの時間によって定まるのである。
【0311】
以上の知見を基に、高発色画像を得るための記録条件を導いた。インクの被記録媒体への単位面積あたりの付与量をM(pg/μm)、インクの色材濃度をD(%)、記録媒体のインクに対する吸収係数をKa(μm/msec1/2)、被記録媒体におけるインクの濡れ時間をtw(msec)、インクが被記録媒体に付与された後、インクに液体組成物が接触するまでの時間をt(msec)とした場合、これらM、D、Ka、tw、tが
【外24】
Figure 0003927850
【0312】
なる関係を満たすとき、すなわち、上記M、D、Ka、tw、tが
【外25】
Figure 0003927850
【0313】
なる関係を満たすとき、高発色な画像を得ることができるのである。
【0314】
なお、本実施例では微粒子量を10%として説明を行ったが、微粒子量を3%、6%、8%のように変更した液体組成物を用いても、上記式の記録条件を満たしていれば高発色な画像を得ることができた。
【0315】
(好適な条件)
更に好適にはインクの色材濃度が2.5%以上のとき、より高発色であった。また、吸収係数が2.0μm/ms1/2以下のとき、より高発色であった。
【0316】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、特に、普通紙の風合いを残しながらインクジェット用コート紙並みの優れた発色性と色の均一性を有する画像を記録することができる。また、本発明による記録条件によれば、高発色な画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において適用可能なインクジェットプリント装置の概略構成を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1のカートリッジを模式的に示す斜視図である。
【図3】図2のインク吐出部の構造を模式的に示す斜視図である。
【図4】図1のインクジェットプリント装置のワイピング動作を示す模式図であり、(A)は各カートリッジのプリント領域側からホームポジションへの移動とインク用ブレードの上昇、(B)はプリント用カートリッジの吐出口面のワイピング、(C)は液体組成物用カートリッジの吐出口面のワイピング、(D)は各ブレードの下降をそれぞれ示している。
【図5】図1のインクジェットプリント装置のワイピング動作を示す模式図であり、(A)は各ブレードの上昇、(B)は各カートリッジのホームポジションからプリント領域側への移動、(C)は液体組成物用ブレードの下降、(D)はプリント用カートリッジの吐出口面のワイピングとインク用ブレードの下降をそれぞれ示している。
【図6】図1のインクジェットプリント装置のワイピング動作を示す模式図であり、(A)はインク用ブレードの上昇、(B)は各カートリッジのホームポジション側からプリント領域側への移動とプリント用カートリッジの吐出口面のワイピング、(C)は各カートリッジのプリント領域側からホームポジション側への移動とインク用ブレードの待機と液体組成物用ブレードの上昇、(D)各カートリッジのホームポジション側への移動と液体組成物用カートリッジの吐出口面のワイピングをそれぞれ示している。
【図7】図1のインクジェットプリント装置の廃液回収系統を示す模式図である。
【図8】図7の廃液回収系統の一部変更例を示す模式図である。
【図9】コート紙にインクジェット記録を行ったときの着色部の状態を説明する模式的断面図である。
【図10】本発明にかかるインクタンクカートリッジの一実施態様を示す概略図である。
【図11】図10のインクタンクカートリッジを記録ヘッドに装着させた様子を示した図である。
【図12】本発明にかかる記録ユニットの一実施態様を示す概略図である。
【図13】本発明にかかるインクジェット画像の着色部の状態を説明する模式的断面図である。
【図14】本発明にかかる着色部の形成する方法の一例を示した図である。
【図15】本発明にかかる記録ユニットの一実施態様を示す概略図である。
【図16】本発明にかかるインクジェットプリント装置の一実施態様を模式的に示す斜視図である。
【図17】図16のインクジェットプリント装置のワイピング動作を示す模式図であり、(A)はインク用ブレードの上昇、(B)はプリント用カートリッジの吐出口面のワイピング、(C)はインク用ブレードの下降、(D)は液体組成物が適正位置についた後の両ブレードの上昇、(E)は液体組成物と第2のブラックインク用ヘッドのワイピング、(F)は両ブレードの下降をそれぞれ示す。
【図18】本発明にかかるインクジェット画像の高発色な着色部の状態を説明する模式的断面図である。
【図19】図18の比較としてインクジェット画像の高発色でない着色部の状態を説明する模式的断面図である。
【図20】被記録媒体の深さと残存する色材および微粒子との関係を説明するための図である。
【図21】インクが被記録媒体に付与された後、インクに液体組成物が接触するまでの時間と光学濃度O.D.の関係を説明するグラフである。
【符号の説明】
1 プリント用カートリッジ
2 液体組成物用カートリッジ
3 キャリッジ
4 ガイド軸(走査レール)
5 駆動ベルト
6 搬送ローラ
8 搬送ローラ
10 被記録媒体
11 回復ユニット
12 キャップ(インク吐出部用)
13 キャップ(液体組成物吐出部用)
14 吸引ポンプ(インク用)
15 吸引ポンプ(液体組成物用)
16 ブレード(インク吐出部用)
17 ブレード(液体組成物吐出部用)
18,19 ブレードホルダー
21 液貯留タンク部
22 インク吐出部
22A 液体組成物吐出部
23 ヘッド側コネクタ
24 廃液タンク
25 吸収体
81 吐出口 形成面
82 吐出口
83 共通液室
84 液路
85 電気熱変換体(発熱抵抗体など)
1800 着色部
1801 反応部
1802 インク流出部
1803 インク
1804 色材
1805 被記録媒体の繊維間に生じる空隙
1806 液体組成物
1809 微粒子
1815 凝集物
2000 被記録媒体
2002 色材
2003 微粒子

Claims (6)

  1. アニオン性の色材を含む水性インクを被記録媒体に付与する工程と、
    前記被記録媒体に付与されたインクに対し、カチオン性に表面が帯電している微粒子が分散状態で含まれる液体組成物を付与する工程とを有し、
    前記液体組成物のゼータ電位が10〜85mvであり、
    前記インクに含有される色材の濃度が2.5〜4.5%であり、
    前記被記録媒体に対するインクの吸収係数が0.1〜2.5μm/msec1/2であり、
    前記被記録媒体にインクが付与されてから150msec以内に、前記液体組成物が前記付与されたインクに接触することを特徴とするインクジェット記録方法。
  2. 前記インク中の色材と前記液体組成物中の微粒子が接触することにより、前記微粒子の表面に前記色材が単分子状態で吸着されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  3. 前記液体組成物のPHが2〜7であることを特徴とする請求項1または2に記載の記録方法。
  4. 前記液体組成物に含有される微粒子の濃度は3〜15%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の記録方法。
  5. アニオン性の色材を含む水性インクを被記録媒体に吐出するためのインク吐出部と、
    前記被記録媒体に吐出されたインクに対し、カチオン性に表面が帯電している微粒子が分散状態で含まれる液体組成物を吐出するための液体吐出部とを有し、
    前記液体組成物のゼータ電位が10〜85mvであり、
    前記インクに含有される色材の濃度が2.5〜4.5%であり、
    前記被記録媒体に対するインクの吸収係数が0.1〜2.5μm/msec1/2であり、
    前記被記録媒体にインクが吐出されてから150msec以内に、前記液体組成物が前記吐出されたインクに接触することを特徴とするインクジェット記録装置。
  6. 被記録媒体に画像が記録された記録物を製造する方法であって、
    アニオン性の色材を含む水性インクを被記録媒体に付与した後に、当該付与されたインクに対し、カチオン性に表面が帯電している微粒子が分散状態で含まれる液体組成物を付与することにより、前記被記録媒体に画像を記録する工程を有し、
    前記液体組成物のゼータ電位が10〜85mvであり、
    前記インクに含有される色材の濃度が2.5〜4.5%であり、
    前記被記録媒体に対するインクの吸収係数が0.1〜2.5μm/msec1/2であり、
    前記被記録媒体にインクが付与されてから150msec以内に、前記液体組成物が前記付与されたインクに接触することを特徴とする記録物の製造方法。
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