JP4034927B2 - 水性インクジェット用インク組成物、それを用いたインクジェット記録方法および記録物 - Google Patents
水性インクジェット用インク組成物、それを用いたインクジェット記録方法および記録物 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性インクジェット用インク組成物、それを用いたインクジェット記録方法および記録物に関する。さらに詳しくは、特定の分散樹脂成分を含み、長期保存安定性、吐出安定性および記録媒体への密着性にすぐれ、とくにインクジェット記録方法に好適に使用し得る水性インクジェット用インク組成物、該インク組成物を用いたインクジェット記録方法、および該記録方法による記録物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、インクジェット用インク用の着色剤として、直接染料、酸性染料、塩基性染料などの水溶性染料が主に用いられてきた。しかしながら、これら水溶性染料では、紙に印字した場合の耐水性がわるく、水に滲むという問題点があるほか、耐光性にも劣っているため、変色しやすく長期間にわたって印字物を保存することが不可能であった。これらの問題点を解決するために、たとえば特開平6−248210号公報や特開平9−194775号公報に記載のように、顔料と樹脂とを併用することが試みられてきた。
【0003】
一方、近年のインクジェットプリンターのカラー化、高速化により、インクジェットプリンター用インクは、いわゆる超浸透インクが主流となってきている。該超浸透インクとは、被記録体に付着後、瞬時に浸透するインクであるが、浸透性を付与するために、たとえば界面活性剤、浸透性溶剤などの浸透剤がインクに添加されている。しかしながら、これらの浸透剤は、顔料の安定した分散を阻害するという問題点を有する。したがって、超浸透組成であっても長期保存安定性を保持することができる顔料インクの開発が必要とされている。
【0004】
さらに、近年の画像の高精細化を実現するためには、インクの着弾精度を向上させる必要があるが、かかるインクの着弾精度を向上させるには、ノズルの吐出安定性を確保する必要がある。加えて、インクの被記録体への密着性も課題となっているのが現状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記従来技術に鑑みてなされたものであり、特定の分散樹脂を選択して使用することにより、超浸透組成であってもインクとしての長期保存安定性にすぐれ、かつノズルの目詰まりがなく吐出安定性にすぐれ、しかも記録媒体への密着性にも同時にすぐれた水性インクジェット用インク組成物を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
[1] 顔料、分散樹脂、界面活性剤、有機溶剤および水を少なくとも含有してなり、顔料が分散樹脂にて分散されてなるインクジェット用インク組成物であって、
前記分散樹脂が式(1):
【0007】
【化7】
【0008】
で表わされるモノマー(A)、式(2):
【0009】
【化8】
【0010】
で表わされるモノマー(B)および式(3):
【0011】
【化9】
【0012】
で表わされるモノマー(C)を含むモノマー成分(I)を重合させてなる共重合体(I)と、式(4):
【0013】
【化10】
【0014】
で表わされるモノマー(D)および式(5):
【0015】
【化11】
【0016】
で表わされるモノマー(E)を含むモノマー成分(II)を重合させてなる共重合体(II)とからなることを特徴とする水性インクジェット用インク組成物、
▲2▼前記水性インクジェット用インク組成物の液滴を吐出させて記録媒体に付着させ、印字を行なうことを特徴とするインクジェット記録方法、および
▲3▼前記インクジェット記録方法にて記録された記録物
に関する。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の水性インクジェット用インク組成物は、前記したように、顔料、分散樹脂、界面活性剤、有機溶剤および水を少なくとも含有し、顔料が分散樹脂にて分散されており、かつ該分散樹脂が式(1):
【0018】
【化12】
【0019】
で表わされるモノマー(A)、式(2):
【0020】
【化13】
【0021】
で表わされるモノマー(B)および式(3):
【0022】
【化14】
【0023】
で表わされるモノマー(C)を含むモノマー成分(I)を重合させてなる共重合体(I)と、式(4):
【0024】
【化15】
【0025】
で表わされるモノマー(D)および式(5):
【0026】
【化16】
【0027】
で表わされるモノマー(E)を含むモノマー成分(II)を重合させてなる共重合体(II)とからなる特定のものである。
【0028】
本発明の水性インクジェット用インク組成物に使用される顔料にはとくに限定がなく、有機顔料および無機顔料を使用することができる。
【0029】
前記無機顔料としては、たとえばファーネス法、チャンネル法、アセチレン法、ランプ法などにより製造されたカーボンブラック、黒鉛、酸化鉄黒、酸化チタン、黄鉛、酸化鉄黄、ベンガラ、チタンエローなどがあげられる。
【0030】
前記有機顔料としては、たとえばアゾレーキ、不溶性モノアゾ顔料、不溶性ジスアゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などのアゾ顔料;フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料などの多環式顔料;塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなどの染料キレート;ニトロ顔料;ニトロソ顔料などがあげられる。
【0031】
水性インクジェット用インク組成物中の顔料の含有量は、着色効果が充分に発現されるようにするには、0.5重量%以上、好ましくは2重量%以上であることが望ましく、またインク組成物の粘度を吐出性能を良好に保持し得る適性粘度にするには、25重量%以下、好ましくは10重量%以下であることが望ましい。
【0032】
なお前記顔料は、分散剤にて水性媒体中に分散させて得られた顔料分散液として添加することが好ましく、該分散剤として後述する共重合体(I)および共重合体(II)からなる分散樹脂が用いられる。
【0033】
本発明における分散剤である前記共重合体(I)および共重合体(II)は、いずれもそれぞれ特定のモノマーを含むモノマー成分を重合させて得られるものである。本発明において、これら共重合体(I)および共重合体(II)を分散樹脂として併用することが大きな特徴の1つである。
【0034】
共重合体(I)を得る際のモノマー(A)、モノマー(B)およびモノマー(C)の割合は、インク組成物の長期保存安定性を確保し、密着性や耐水性などの性能を充分に発現させる点から、モノマー成分(I)中、モノマー(A)が20重量%以上、好ましくは25重量%以上、モノマー(B)が3重量%以上、好ましくは5重量%以上、モノマー(C)が3重量%以上、好ましくは5重量%以上であり、またモノマー(A)が90重量%以下、好ましくは80重量%以下、モノマー(B)が50重量%以下、好ましくは45重量%以下、モノマー(C)が40重量%以下、好ましくは35重量%以下であることが望ましい。
【0035】
共重合体(II)を得る際のモノマー(D)およびモノマー(E)の割合は、顔料の分散性を高め、粗大粒子の発生を抑制するという点から、モノマー成分(II)中、モノマー(D)が10重量%以上、好ましくは20重量%以上、モノマー(E)が5重量%以上、好ましくは10重量%以上であることが望ましく、またモノマー(D)が95重量%以下、好ましくは90重量%以下、モノマー(E)が90重量%以下、好ましくは80重量%以下であることが望ましい。
【0036】
共重合体(I)および共重合体(II)の製造方法にはとくに限定がなく、モノマー成分(I)としてモノマー(A)、(B)、(C)を、またモノマー成分(II)としてモノマー(D)、(E)の所望量を必要に応じてトルエン、キシレン、ベンゼンなどの溶媒中に溶解させ、アゾビスイソブチロニトリルなどの重合開始剤とともに重合に供すればよい。重合方法としては、通常の懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法などがあるが、一般に、重合温度のコントロールや作業性の点で溶液重合法が好ましい。かくして得られる共重合体(I)および共重合体(II)は、通常いずれもランダム共重合体である。
【0037】
前記共重合体(I)は、インク組成物としての長期保存安定性に関与しており、有機溶剤が多く配合されたインクにおいても安定した系を保持する作用を有するほか、記録媒体への密着性にすぐれた効果を発現する。
【0038】
共重合体(I)のカルボキシル基に基づく酸価は、樹脂の溶解性の点から、30KOHmg/g以上、好ましくは35KOHmg/g以上であることが望ましく、またインク組成物中の有機溶剤との相互作用の点から、100KOHmg/g以下、好ましくは90KOHmg/g以下であることが望ましい。
【0039】
前記共重合体(II)は、顔料の分散性を向上させる効果があり、しかもノズルの目詰まりをなくし、インクの吐出性を格段に安定化させる作用を有する。
【0040】
共重合体(II)のカルボキシル基に基づく酸価は、顔料の分散性を高め、経時安定性を向上させるという点から、100KOHmg/g以上、好ましくは120KOHmg/g以上であることが望ましく、またインク組成物の耐水性の確保の点から、250KOHmg/g以下、好ましくは220KOHmg/g以下であることが望ましい。
【0041】
前記のごとき共重合体(I)および共重合体(II)の各作用を考慮し、各共重合体の性能をいかんなく発揮させるために、該共重合体(I)と共重合体(II)との割合(共重合体(I)/共重合体(II)(重量比))は20/80以上、好ましくは25/75以上であることが望ましく、また98/2以下、好ましくは95/5以下であることが望ましい。また同時にいずれもランダム共重合体であることが好ましい。
【0042】
前記共重合体(I)および共重合体(II)からなる分散樹脂の量は、顔料を充分に分散させるために、顔料に対して10重量%以上、好ましくは15重量%以上であることが望ましく、またインク組成物が高粘度となったり、顔料の分散吸着に関与していない樹脂がインク適性に悪影響を及ぼさないようにするために、顔料に対して50重量%以下、好ましくは40重量%以下であることが望ましい。
【0043】
なお本発明においては、前記したように、顔料を分散剤にて水性媒体中に分散させて得られた顔料分散液として添加することが好ましく、該分散剤として前記共重合体(I)および共重合体(II)からなる分散樹脂が用いられる。
【0044】
具体的には、前記分散樹脂を、たとえばアンモニア、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、トリエチルアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ剤で中和したアルカリ中和塩を使用することが好ましい。
【0045】
また本発明においては、さらに前記分散樹脂に、以下のような他の分散樹脂を添加することができる。該他の分散樹脂としては、たとえばスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル(該アクリル酸エステルとは、炭素数1〜4程度の低級アルキルエステルを示す。以下同様)共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体;スチレン−メチルスチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−メタクリル酸エステル共重合体;スチレン−アクリル酸エステル−スチレンスルホン酸共重合体、スチレン−メタクリルスルホン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−アリルスルホン酸共重合体;これらのアルカリ中和塩などがあげられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して適宜使用することができる。
【0046】
本発明に使用する界面活性剤は、水性インクジェット用インク組成物の吐出安定性を向上させる作用を有するものである。本発明に用いられる界面活性剤にはとくに限定がなく、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤のいずれも単独でまたは2種以上を混合して添加することができる。
【0047】
前記アニオン性界面活性剤としては、たとえば高級脂肪酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩などがあげられる。
【0048】
前記カチオン性界面活性剤としては、たとえば脂肪族アミン塩、第4アンモニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、脂肪族トリメチルアンモニウムクロライドなどがあげられる。
【0049】
前記両性界面活性剤としては、たとえばアルキルベタイン、アミノカルボン酸塩、レシチンなどがあげられる。
【0050】
前記ノニオン性界面活性剤としては、たとえばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどがあげられる。
【0051】
本発明においては、吐出安定性を向上させる効果が大きいという点から、前記界面活性剤のなかでも、一般式(6):
【0052】
【化17】
【0053】
(式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基、mおよびnの合計は1〜40の整数を示す)で表わされる化合物が好適に使用される。
【0054】
前記一般式(6)で表わされる化合物としては、たとえばオルフィンY、オルフィンE1010、サーフィノール82、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール485(以上、エアー・プロダクツ・アンド・ケミカルス・インコーポレイテッド製、商品名)などがあげられる。
【0055】
水性インクジェット用インク組成物中の界面活性剤の含有量は、インク組成物の吐出安定性を充分に向上させるとともに、記録媒体への濡れ性および浸透性を充分に確保するには、0.1重量%以上、好ましくは0.2重量%以上であることが望ましく、またインク組成物の吐出安定性を確保し、高粘度でノズルの吐出むらや泡立ちが多くならないようにするには、5重量%以下、好ましくは4重量%以下であることが望ましい。
【0056】
本発明の水性インクジェット用インク組成物に使用される有機溶剤としては、たとえば高沸点有機溶剤があげられる。該高沸点有機溶剤は、インク組成物の乾燥を防ぐことによりヘッドの目詰まりを防止する作用を有するものである。
【0057】
前記高沸点有機溶剤の具体例としては、たとえばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの多価アルコール類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンなどがあげられる。
【0058】
水性インクジェット用インク組成物中の有機溶剤の量にはとくに限定がないが、充分にインク組成物の乾燥を防ぎ、ヘッドの目詰まりを防止するという点から、0.5重量%以上、好ましくは2重量%以上であることが望ましく、またインク組成物が高粘度となり、吐出性が低下したり、紙などの記録媒体への滲みがいちじるしくならないようにするという点から、40重量%以下、好ましくは20重量%以下であることが望ましい。
【0059】
また本発明の水性インクジェット用インク組成物には、前記有機溶剤とともに浸透性溶剤を添加することが好ましい。
【0060】
前記浸透性溶剤は、紙などの記録媒体への浸透を早め、乾燥速度を上昇させる効果を有する溶剤である。
【0061】
浸透性溶剤の具体例としては、たとえばエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルなどの多価アルコールのアルキルエーテルがあげられる。
水性インクジェット用インク組成物中の浸透性溶剤の量にはとくに限定がないが、紙などの記録媒体への浸透を早め、乾燥速度を上昇させる効果を充分に発現させるという点から、0.5重量%以上、好ましくは2重量%以上であることが望ましく、またインク組成物が高粘度となり、吐出性が低下したり、紙などの記録媒体への滲みがいちじるしくならないようにするという点から、40重量%以下、好ましくは20重量%以下であることが望ましい。
【0062】
さらに本発明の水性インクジェット用インク組成物には、前記高沸点有機溶剤および浸透性溶剤のほかにも、溶剤として、インクの乾燥時間を短縮する効果を有する低沸点有機溶剤が含まれていてもよい。
【0063】
前記低沸点有機溶剤としては、たとえばメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、i−ブタノール、n−ペンタノールなどの、とくに1価アルコールが好ましく例示される。
【0064】
水性インクジェット用インク組成物中の低沸点有機溶剤の量は、0.5〜10重量%、好ましくは1.5〜6重量%であることが望ましい。
【0065】
本発明の水性インクジェット用インク組成物に使用される水にはとくに限定がなく、通常インク組成物に使用される純水、精製水、イオン交換水などを、たとえばインク組成物中の顔料濃度が前記のごとき0.5〜25重量%となるように適宜その添加量を調整して使用すればよい。
【0066】
また本発明の水性インクジェット用インク組成物には、インクの保湿効果およびヘッドの目詰まり防止という点から糖類を含有させることが好ましい。
【0067】
前記糖類としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類および四糖類を含む)および多糖類があげられる。具体的には、該糖類として、たとえばグルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハオース、マルトトリオース、マルトテトラオースなどが好適に例示される。なお、前記多糖類とは広義の糖を意味し、アルギン酸、α−シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含むものである。
【0068】
また前記糖類の誘導体としては、たとえば一般式:HOCH2(CHOH)pCH2OH(式中、pは2〜5の整数を示す)で表わされる糖アルコールなどの、前記のごとき糖類の還元糖;たとえばアルドン酸、ウロン酸などの、前記のごとき糖類の酸化糖;アミノ酸;チオ糖などがあげられる。これらのなかでは、とくに糖アルコールが好ましく、具体例としては、たとえばマルチトール、ソルビトールなどがあげられる。
【0069】
水性インクジェット用インク組成物中の糖類の含有量は、インクの保湿効果およびヘッドの目詰まり防止効果を充分に発現することができるという点から、0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上であることが望ましく、またインク組成物が高粘度となってインクの吐出性が低下し、紙などの記録媒体へ印字した場合の耐水性が低下しないようにするという点から、40重量%以下、好ましくは35重量%以下であることが望ましい。
【0070】
本発明の水性インクジェット用インク組成物には、その他必要に応じて、浸透剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤などを適宜添加してもよい。
【0071】
本発明の水性インクジェット用インク組成物の調製方法にはとくに限定がなく、たとえば顔料、分散樹脂、界面活性剤および有機溶剤、ならびにその他の任意成分の配合量を適宜調整し、これらと水との混合液を、たとえばサンドミル中でガラスビーズとともに分散させたのち、メンブランフィルターなどで濾過するなどすればよい。
【0072】
かくして得られる本発明の水性インクジェット用インク組成物は、顔料が分散樹脂にて均一に分散されたものである。
【0073】
水性インクジェット用インク組成物中で分散された顔料の体積平均粒子径は、ノズルの目詰まりがないようにするために、200nm以下、好ましくは150nm以下であることが望ましく、さらに体積粒子径が500nm以上、好ましくは300nm以上の粗大粒子を含有しないインク組成物であることが望ましい。
【0074】
本発明の水性インクジェット用インク組成物は、インクとしての長期保存安定性にすぐれ、かつノズルの目詰まりがなく吐出安定性にすぐれ、しかも記録媒体への密着性にも同時にすぐれたものであるので、インクジェット記録に好適に使用することができる。
【0075】
すなわち本発明のインクジェット記録方法は、前記水性インクジェット用インク組成物の液滴を吐出させて記録媒体に付着させ、印字を行なうことを特徴とするものである。
【0076】
水性インクジェット用インク組成物の液滴を吐出させ、印字を行なうには、通常のインクジェットプリンタを用いればよく、また記録媒体としては、たとえば印刷用、コピー用などの普通紙、市販の各種専用記録媒体などを適宜使用することができる。
【0077】
前記のごときインクジェット記録方法にて記録された記録物は、用いた水性インクジェット用インク組成物のすぐれた長期保存安定性が充分に発現されたものである。
【0078】
【実施例】
つぎに、本発明の水性インクジェット用インク組成物、それを用いたインクジェット記録方法および記録物を以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0079】
製造例1(分散樹脂a(共重合体(I))の調製)
反応容器にモノマー(A)250g、モノマー(B)82g、モノマー(C)30g、アゾビスイソブチロニトリル0.67gおよびベンゼン350gの溶液を入れ、チッ素ガス置換後、撹拌しながら60℃で7.5時間加熱重合させた。反応物を3リットルのメチルエチルケトンに溶解させたのち、7倍量のn−へキサンで沈殿させ、カルボキシル基に基づく酸価が65の共重合体を得た。この共重合体を乾燥粉砕したのち、水系にてアンモニア水で中和溶解させ、分散樹脂aを得た。
【0080】
製造例2(分散樹脂b(共重合体(II))の調製)
反応容器にモノマー(D)225g、モノマー(E)132g、アゾビスイソブチロニトリル0.54gおよびベンゼン300gの溶液を入れ、チッ素ガス置換後、撹拌しながら70℃で6.0時間加熱重合させた。さらに続けて、n−ブタノールでハーフエステル化を行なった。反応物を3リットルのメチルエチルケトンに溶解させたのち、5倍量のn−へキサンで沈殿させ、カルボキシル基に基づく酸価が164の共重合体を得た。この共重合体を乾燥粉砕したのち、水系にてモノエタノールアミンで中和溶解させ、分散樹脂bを得た。
【0081】
製造例3(分散樹脂c(共重合体(I))の調製)
製造例1において、モノマー(C)の量を55gに変更したほかは製造例1と同様にして、カルボキシル基に基づく酸価が110の共重合体を得た。この共重合体を乾燥粉砕したのち、水系にてアンモニア水で中和溶解させ、分散樹脂cを得た。
【0082】
製造例4(分散樹脂d(共重合体(II))の調製)
製造例2において、モノマー(E)の量を50gに変更したほかは製造例2と同様にして、カルボキシル基に基づく酸価が91の共重合体を得た。この共重合体を乾燥粉砕したのち、水系にてイソプロパノールを溶解助剤として使用してモノエタノールアミンで中和溶解させ、分散樹脂dを得た。
【0083】
実施例1〜8および比較例1〜2
表1に示される種類および量の顔料と、表2に示される種類および量の分散樹脂とを混合し、分散された顔料の濃度が25重量%となるように純水で調製して混合液を得た。この混合液をサンドミル(安川製作所(株)製)中でガラスビーズ(直径1.0mm、混合液の1.5倍量)とともに2時間分散させた。こののちガラスビーズを取り除き、グリセリン20.0重量%、マルチトール7.0重量%、2−ピロリドン2.0重量%、界面活性剤(一般式(6)中、R1およびR2がCH3、R3およびR4がCH2C2H4CH3、mおよびnの合計が10である化合物)1.0重量%およびトリエタノールアミン0.9重量%を添加し、常温で20分間撹拌した。最後にメンブランフィルター(孔径:5μm)で濾過を行ない、水性インクジェット用インク組成物を得た。
【0084】
得られた水性インクジェット用インク組成物における分散された顔料の体積平均粒子径を測定し、体積粒子径が500nm以上の粗大粒子の有無を調べた。その結果を以下の表3に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
試験例
実施例1〜8および比較例1〜2で得られた水性インクジェット用インク組成物について、インクの保存安定性、吐出安定性および密着性を以下の方法にしたがって調べた。その結果を表3に示す。
【0088】
(1)インクの保存安定性
水性インクジェット用インク組成物をサンプル瓶に入れ、70℃の恒温槽にて1週間放置した。
【0089】
放置前および放置後のインク組成物の粘度をそれぞれELD型粘度計にて測定し、放置前後の粘度差から保存安定性を以下の評価基準に基づいて評価した。
【0090】
(評価基準)
A:粘度変化が0.1mPa・s未満である。
B:粘度変化が0.1mPa・s以上、0.15mPa・s未満である。
C:粘度変化が0.15mPa・s以上、0.2mPa・s未満である。
D:粘度変化が0.2mPa・s以上、0.25mPa・s未満である。
E:粘度変化が0.25mPa・s超過である。
【0091】
(2)インクの吐出安定性
水性インクジェット用インク組成物をインクジェットプリンタ(MJ8000C、セイコーエプソン(株)製)に充填し、常温下で印刷用紙(A4サイズ、ファイン紙、セイコーエプソン(株)製)10000枚に通常の方法にて印刷を行なった。印刷中、ノズルの目詰まりによる印刷物の曲がりや抜けが発生したときにクリーニングを行ない、クリーニングの回数を調べて以下の評価基準に基づいて評価した。
【0092】
(評価基準)
A:クリーニングの回数が2回未満である。
B:クリーニングの回数が2回以上、5回未満である。
C:クリーニングの回数が5回以上、8回未満である。
D:クリーニングの回数が8回以上、10回未満である。
E:クリーニングの回数が10回以上である。
【0093】
(3)インクの密着性(対ラインマーカー性試験)
前記(2)インクの吐出安定性の試験と同様にして水性インクジェット用インク組成物にて印刷を行なった。得られた印刷物を1日以上乾燥させたのち、水性蛍光ペン(ZEBRA PEN2、ゼブラ(株)製、色:イエロー)を用いて筆圧4.9×105N/m2で印刷物の表面を擦り、印刷物の汚れを調べて以下の評価基準に基づいて評価した。
【0094】
(評価基準)
A:1回の擦りでは汚れがまったく生じていない。
B:1回の擦りでほんのわずかに汚れが生じている。
C:1回の擦りで部分的に汚れが生じている。
D:1回の擦りで全体的に汚れが生じている。
E:1回の擦りで汚れがいちじるしい。
【0095】
【表3】
【0096】
表3に示された結果から、実施例1〜8で得られた水性インクジェット用インク組成物はいずれも、70℃にて1週間放置したのちであっても粘度変化が0.15mPa・s未満で、10000枚の印刷のあいだのクリーニング回数が5回未満で、ラインマーカーの擦りによってもほとんど汚れが生じず、長期保存安定性、吐出安定性および密着性に同時にすぐれたものであることがわかる。
【0097】
【発明の効果】
本発明の水性インクジェット用インク組成物は、インクとしての長期保存安定性にすぐれ、かつノズルの目詰まりがなく吐出安定性にすぐれ、しかも記録媒体への密着性にも同時にすぐれたものであるので、インクジェット記録に好適に使用することができる。
【0098】
したがって、前記水性インクジェット用インク組成物を用いた本発明のインクジェット記録方法によれば、長期保存安定性が充分に発現された記録物を容易に得ることができる。
Claims (11)
- 共重合体(I)と共重合体(II)との割合(共重合体(I)/共重合体(II)(重量比))が20/80〜98/2であり、共重合体(I)および共重合体(II)がいずれもランダム共重合体である請求項1記載の水性インクジェット用インク組成物。
- 共重合体(I)のカルボキシル基に基づく酸価が30〜100KOHmg/gであり、共重合体(II)のカルボキシル基に基づく酸価が100〜250KOHmg/gである請求項1記載の水性インクジェット用インク組成物。
- さらに浸透性溶剤を含有してなる請求項1記載の水性インクジェット用インク組成物。
- 浸透性溶剤が多価アルコールのアルキルエーテルである請求項5記載の水性インクジェット用インク組成物。
- 多価アルコールのアルキルエーテルがエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルおよびトリエチレングリコールモノブチルエーテルから選ばれた少なくとも1種である請求項6記載の水性インクジェット用インク組成物。
- さらに糖類を含有してなる請求項1記載の水性インクジェット用インク組成物。
- 分散された顔料の体積平均粒子径が200nm以下であり、体積粒子径が500nm以上の粗大粒子を含有しない請求項1記載の水性インクジェット用インク組成物。
- 請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9記載の水性インクジェット用インク組成物の液滴を吐出させて記録媒体に付着させ、印字を行なうことを特徴とするインクジェット記録方法。
- 請求項10記載のインクジェット記録方法にて記録された記録物。
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