JP3379319B2 - インクジェットインキおよびその製造方法 - Google Patents

インクジェットインキおよびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,耐水性の優れたイ
ンクジェットインキ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来よりインクジェット用記録液として
は,特開昭53ー61412号公報,特開昭54ー89
811号公報,特開昭55ー65269号公報に開示さ
れるように,酸性染料,直接染料,塩基性染料等の水溶
性染料をグリコール系溶剤と水に溶解したものがよく用
いられている。しかし,水溶性染料としては,記録液の
安定性を得るために,水に対する溶解性の高いものが一
般的に用いられており,インクジェット記録物の耐水性
が悪く,水をこぼしたりすると容易に記録部分の染料の
にじみを生じるという問題があった。
【0003】このような耐水性の不良を改良するため,
特開昭56−57862号公報に開示されるように,染
料の構造を変えたり,塩基性の強い記録液を調製するこ
とが試みられている。また,特開昭50ー49004号
公報,特開昭57ー36692号公報,特開昭59ー2
0696号公報,特開昭59ー146889号公報に開
示されるように,記録紙と記録液との反応をうまく利用
して耐水性の向上を図ることも行われている。これらの
方法は,ある種の記録紙については著しい効果をあげて
いるが,インクジェット方式においては種々の記録紙を
用いるため,水溶性染料を使用する記録液では記録物の
充分な耐水性が得られないことが多い。
【0004】また,耐水性の良好な記録液としては,油
溶性染料を高沸点溶剤に分散ないし溶解したもの,油溶
性染料を揮発性の溶剤に溶解したものがあるが,溶剤の
臭気や溶剤の排出に対して環境上嫌われることがあり,
大量の記録を行う場合や装置の設置場所によっては,溶
剤回収等の必要性が問題となることがある。したがっ
て,記録物の耐水性をよくするために,水系媒体に顔料
を分散した記録液の開発が行われている。しかし,顔料
は,染料と異なり記録媒体中にて不溶解であり,微小粒
子として分散させることおよび分散状態を安定に保つこ
とが非常に困難である。そして,耐水性,耐光性に優れ
る顔料の特長を発揮させながら,記録液の吐出条件への
調整,長期保存安定性,紙等の被記録体への定着,画像
の色,にじみ等の品質につき,染料並みないしそれ以上
の特性をえるためには,さらなる改良を必要としている
のが現状である。
【0005】また,インクジェット用記録液において
は,プリンターの高解像度化からノズル径が小さくなっ
たのに伴い,着色剤の粒子径を微細化する必要が生じて
いる。さらに,顔料を分散させた記録液には,記録液に
対する再溶解性と紙面での耐水性という相反した特性を
要求されるが,水溶解性の樹脂を用いると再溶解性では
優位であるが,紙面での耐水性では充分な特性が得られ
にくかった。また,耐水性から水分散性の樹脂を用いる
と,紙面での耐水性は良好であるが,ヘッド部等にイン
キが付着すると再溶解性がなくなり使用にあたっての制
約があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は,紙面
での耐水性を充分有しながら,ヘッドでのインキの再溶
解性に優れ,ノズルでの吐出安定性が良好なインクジェ
ットインキおよびその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は,水性の液体中
に酸化処理カーボンブラック,並びにアクリル酸,スチ
レンおよびαメチルスチレンよりなる酸価90〜120
の3元共重合体を分散もしくは溶解してなることを特徴
とするインクジェットインキを提供する。また,本発明
は,酸化処理カーボンブラック,並びにアクリル酸,ス
チレンおよびαメチルスチレンよりなる酸価90〜12
の3元共重合体を含む濃縮状態の水分散液をあらかじ
め調整した後,水および添加剤を加えて希釈することを
特徴とするインクジェットインキの製造方法を提供す
る。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明のインクジェットインキ
は,一般には,カーボンブラック1〜5重量%,染料0
〜1重量%,防黴剤0.03〜1.0重量%,アクリル
酸,スチレン,αメチルスチレンよりなる3元共重合体
0.5〜10重量%,水性溶剤0〜25重量%,水50
〜95重量%を含む。
【0009】アクリル酸,スチレン,αメチルスチレン
よりなる3元共重合体(以下,3元共重合体と略すこと
がある。)は,カーボンブラックの極めて安定した分散
に寄与するものであり,インキ中に0.5〜10重量%
用いることが好ましい。これよりも少ないと,カーボン
ブラックによる導電性が高くなり,コンティニュアスタ
イプのマルチヘッドにおいて偏向電極等でショートの恐
れが増加する。また,これよりも多いとインキの粘度を
低く設定することが困難となり,液滴の生成が充分でき
なくなる。アクリル酸,スチレン,αメチルスチレンよ
りなる3元共重合体の分子量は,顔料の分散性およびイ
ンキの吐出安定性の面,インキベタ印字面の抵抗値等か
ら2000〜8000,さらには2000〜5000で
ある。また,該3元共重合体の酸価は,紙面での耐水性
とヘッド部でのインキの再溶解性,インキベタ印字面の
抵抗値等から90〜120である。
【0010】3元共重合体は,アクリル酸,スチレン,
αメチルスチレンを公知の方法で共重合して得られる
が,アクリル酸1モルに対してスチレンおよびαメチル
スチレンの合計3〜5モルの共重合体であることが好ま
しい。さらに,アクリル酸1モルに対して,スチレン
2.0〜4.0モル,好ましくは2.2〜3.5モル,
αメチルスチレン0.3〜1.5モル,好ましくは0.
5〜1.2モルの共重合体であることが好ましい。この
割合の共重合体は,分散の安定性,耐水性,再溶解性,
ベタ画像形成面での高抵抗値のバランスが良い。
【0011】本発明のインクジェットインキには,3元
共重合体をインキの液体成分に安定に溶解させておくた
めに,アルカリ金属であるナトリウム,カリウムの水酸
化物,脂肪族アミン,エタノールアミン,プロパノール
アミン,メチルエタノールアミン等のアルコールアミ
ン,モルホリン,N−メチルモルホリン,ジメチルアミ
ノエタノール,ジエチルアミノエタノール等が中和剤と
して用いられる。中和剤を上記3元共重合体と等モルな
いし過剰量用いることにより,溶解性の維持,耐水性の
維持,再溶解性の維持が良好に行われる。
【0012】カーボンブラックとしては,中性,塩基
性,酸性カーボンブラックのいずれも使用できる。具体
的には,三菱化学社製のMA7,MA100,MA8,
MA33,MA11,NO50,NO2300,No9
50,No850,MCF88,NO2600,デグサ
社製のPrintex95,90,85,75,55,
45,40,Color Black FW18,S1
60,SpecialBlack550,350,コロ
ンビアカーボン社製のRAVEN1030,850,7
60,780,500,1255,1250,150
0,キャボット社製のBlack PEAR,VULC
AN XC,P,REGAL 550R,330I,E
LFEX8,東海カーボン社製のシースト5H,3H等
が挙げられる。
【0013】本発明では,これらのカーボンブラックを
酸化処理して用いる。カーボンブラックを酸化処理する
ことにより,カーボンブラック表面に親水性の官能基が
結合し,抵抗値が高くなる。このようなカーボンブラッ
クは,酸性の水性液体中では沈降するが,pHを中性な
いしアルカリ性に調整すると,容易に自己分散する。酸
化処理の方法としては,オゾン処理,次亜塩素酸処理,
過酸化水素処理,発煙硫酸処理,硝酸処理,過マンガン
酸処理,プラズマ処理等が挙げられるが,カーボンブラ
ック表面の酸化処理を均一かつ充分に行うためには,6
0〜120℃の硝酸中にて3〜10時間処理することが
好ましい。
【0014】酸化処理したカーボンブラックは,水性の
液体中で3元共重合体とともに分散し,あるいは,予め
3元共重合体と分散したのち水性の液体にて希釈し,イ
ンクジェットインキを製造する。分散後の好ましいカー
ボンブラックの粒子径は,レーザー散乱法による平均粒
径において0.2μ以下,さらに好ましくは,0.1μ
以下である。このような粒径であると,記録時のインキ
の吐出が安定するほか,インキの製造における濾過操作
が容易であり,インキの経時での沈降も起こりにくくな
る。カーボンブラックは,インキの1〜5重量%の範囲
で用いることが好ましい。これよりも少ないと画像の濃
度,色の再現が不充分になる。また,これよりも多い
と,吐出の安定性が著く低下し,ノズルでのめ詰まりが
頻発しやすくなる。また,インキの粘度調整が困難にな
ったりする。
【0015】本発明のインクジェットインキには,色相
の調整,濃度の付与およびインキの特性の調整を目的と
して,耐水性,耐光性に問題の無いような形で,染料を
併用することもできる。ただし,染料の使用によってカ
ーボンブラックの分散の安定性を悪くすることもあるの
で,その使用量は顔料の40重量%以下,好ましくは2
5重量%以下に止める必要がある。染料としては,酸性
染料,塩基性染料,直接染料,反応性染料,分散染料,
含金属染料等が用いられる。染料は,無機塩の除去され
た精製染料が好ましい。
【0016】染料としては,C.I.ダイレクトブラック1
7,19,32,51,71,108,146,15
4,166,C.I.アシッドブラック2,7,24,2
6,31,52,63,112,118,C.I.ベーシッ
クブラック2,C.I.ダイレクトブルー6,22,25,
71,90,106,フードブラック1,2およびこれ
らのリチウムないしカリウム置換物,C.I.アシッドブル
ー9,22,40,59,93,102,104,11
3,117,120,167,229,234,C.I.ベ
イシックブルー1,3,5,7,9,24,25,2
6,28,29等を例示できる。
【0017】本発明のインクジェットインキの媒体であ
る水性の液体は,水と,必要に応じて水性溶剤とからな
る。水としては,金属イオン等を除去したイオン交換水
ないし蒸留水が好適に用いられる。水は,インキの50
〜95重量%の範囲で用いることが好ましい。水性溶剤
は,インキのノズル部分での乾燥,固化を防止し,安定
なインキの噴射およびノズルの経時での乾燥を防止し,
保湿剤としても働くものであり,単独ないし混合してイ
ンキの0〜25重量%の範囲で用いる。
【0018】水性溶剤としては,エチレングリコール,
ジエチレングリコール,プロピレングリコール,トリエ
チレングリコール,ポリエチレンリコール,グリセリ
ン,テトラエチレングリコール,ジプロピレングリコー
ル,ケトンアルコール,ジエチレングリコールモノブチ
ルエーテル,エチレングリコールモノブチルエーテル,
エチレングリコールモノエチルエーテル,1,2ーヘキ
サンジオール ,N−メチルー2ーピロリドン,置換ピ
ロリドン,2,4,6ーキサントリオール,テトラフル
フリルアルコール,4−メトキシー4メチルペタノン等
を例示できる。また,インキの紙での乾燥を速めること
を目的として,メタノール,エタノール,イソプロピル
アルコール等のアルコール類も用いることができる。
【0019】インキの被印刷体が紙のような浸透性のあ
る材料のときには,紙へのインキの浸透をはやめ見掛け
の乾燥性を早くするため,浸透剤を加えることができ
る。このような浸透剤としては,水性溶剤として例示し
たジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコ
ールエーテル,アルキレングリコール,ポリエチレング
リコールモノラウリルエーテル,ラウリル硫酸ナトリウ
ム,ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム,オレイン
酸ナトリウム,ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等
を用いることができる。これらは,インキの5重量%以
下の使用量で十分な効果があり,これよりも多いと印字
の滲み,紙抜け(プリントスルー)を起こし好ましくな
くなる。
【0020】防黴剤は,インキへの黴および微生物の発
生を防止するものであり,デヒドロ酢酸ナトリウム,安
息香酸ナトリウム,ソジウムピリジンチオンー1ーオキ
サイド,ジンクピリジンチオンー1ーオキサイド,1,
2ーベンズイソチアゾリンー3ーオン,1ーベンズイソ
チアゾリンー3ーオンのアミン塩等が用いられる。これ
らは,インキの0.03〜0.5重量%程度の範囲で用
いる。キレート剤は,インキ中の金属イオンを封鎖し,
ノズル部での金属の析出やインキ中での不溶解性物の析
出等を防止するものであり,エチレンジアミンテトラア
セティックアシド,エチレンジアミンテトラアセティッ
クアシドのナトリウム塩,エチレンジアミンテトラアセ
ティックアシドのジアンモニウム塩,エチレンジアミン
テトラアセティックアシドのテトラアンモニウム塩等が
用いられる。これらは,インキの0〜0.5重量%の範
囲で用いる。
【0021】また,インキのpHを調整し,インキの安
定ないし記録装置中のインキ配管との安定性を得るた
め,アミン,無機塩,アンモニア等のpH調整剤,リン
酸等の緩衝液を用いることができる。また,インキの循
環,移動,あるいはインキ製造時の泡の発生を防止する
ため,消泡剤を添加することもできる。さらに,酸化処
理したカーボンブラックの分散および画像の品質向上を
目的として,アニオン性,非イオン性,カチオン性,両
イオン性活性剤等の界面活性剤や分散剤を用いることが
できる。
【0022】アニオン性活性剤としては,脂肪酸塩,ア
ルキル硫酸エステル塩,アルキルアリールスルホン酸
塩,アルキルナフタレンスルホン酸塩,ジアルキルスル
ホン酸塩,ジアルキルスルホコハク酸塩,アルキルジア
リールエーテルジスルホン酸塩,アルキルリン酸塩,ポ
リオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩,ポリオキシ
エチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩,ナフタレン
スルホン酸フォルマリン縮合物,ポリオキシエチレンア
ルキルリン酸エステル塩,グリセロールボレイト脂肪酸
エステル,ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エス
テル等を例示できる。
【0023】非イオン性活性剤としては,ポリオキシエ
チレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンアルキル
アリールエーテル,ポリオキシエチレンオキシプロピレ
ンブロックコポリマー,ソルビタン脂肪酸エステル,ポ
リオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキ
シエチレンソルビトール脂肪酸エステル,グリセリン脂
肪酸エステル,ポリオキシエチレン脂肪酸エステル,ポ
リオキシエチレンアルキルアミン,フッ素系,シリコン
系等の非イオン性活性剤が例示できる。
【0024】カチオン性活性剤としては,アルキルアミ
ン塩,第4級アンモニウム塩,アルキルピリジニウム
塩,アルキルイミダゾリウム塩等を例示できる。両イオ
ン性活性剤としては,アルキルベタイン,アルキルアミ
ンオキサイド,ホスファジルコリン等が例示できる。ま
た,尿素,ジメチル尿素等の添加剤や,その他の従来公
知の各種溶剤,添加剤,塩類,合成樹脂,天然樹脂等を
併用することもできる。
【0025】本発明のインクジェットインキは,酸化処
理したカーボンブラックおよびアクリル酸,スチレン,
αメチルスチレンよりなる3元共重合体を含む濃縮状態
の水分散液をあらかじめ分散させたのち,水および添加
剤を加えて希釈することにより製造することができる。
なかでも,カーボンブラックを60〜120℃の硝酸中
にて3〜10時間処理したのち水洗を行い,pHを6.
0〜9.0に調整した濃縮分散液(固形分15〜40重
量%)およびアクリル酸,スチレン,αメチルスチレン
よりなる3元共重合体を含む濃縮状態の溶解液を混合し
てあらかじめ分散させたのち,水および添加剤を加えて
希釈し,60〜80℃の温度にて5〜48時間保持する
ことにより製造することが好ましい。
【0026】60〜80℃の温度にて5〜48時間の加
熱処理を加えると,インクジェットインキの安定性が向
上し、印字物の表面抵抗をさらに高くすることができ、
コンティニュアスタイプのプリンターでの適性が得られ
る。酸化処理したカーボンブラックおよび3元共重合体
を含む濃縮状態の水分散液の製造は,酸化処理したカー
ボンブラック,水,必要に応じて分散剤,水性溶剤を混
合し,サンドミル,ホモジナイザー,ボールミル,ペイ
ントシェーカー,超音波分散機等で分散した後,3元共
重合体の溶解液を加えて混合攪拌して行う。3元共重合
体は,予め中和剤にて充分溶解した状態で用いても良
く,溶解のため加温することも有効である。混合攪拌
は,通常の羽を用いた攪拌機による攪拌のほか,高速の
分散機,乳化機等により行うことができる。
【0027】あるいは,酸化処理したカーボンブラッ
ク,3元共重合体,水,必要に応じ分散剤,水性溶剤を
混合し,サンドミル,ホモジナイザー,ボールミル,ペ
イントシェーカー,超音波分散機等で分散して行う。あ
るいは,二本ロールミルで酸化処理したカーボンブラッ
クおよび3元共重合体をあらかじめ良く混練したち,サ
ンドミル等でさらに分散し,適宜水にて希釈,他の添加
剤を混合して行う。また,カーボンブラックを酸化処理
する際に得られる分散液をそのままカーボンブラックの
濃縮分散液として用い,3元共重合体の濃縮液と混合お
よび前記のように分散したのち,希釈,他の添加剤を混
合して製造することもできる。カーボンブラックを酸化
処理する際に得られる分散液をそのままカーボンブラッ
クの濃縮分散液として用いる方法は,カーボンブラック
の乾燥工程を経ないため,分散の過程を短縮し,良好な
分散状態を得ることができる。また,カーボンブラック
の粉体を扱う時の飛散による問題も発生しない。
【0028】濃縮状態の分散液は,希釈の前あるいは後
に,孔径3μ以下のフィルター,好ましくは1.0μ以
下のフィルター,さらに好ましくは0.45μ以下のフ
ィルターにて十分濾過する。フィルター濾過に先立っ
て,遠心分離による濾過を行うこともでき,これにより
フィルター濾過における目詰まりを少なくし,フィルタ
ー交換を少なくする。
【0029】インキは,記録装置の方式にもよるが,粘
度0.8〜15cps(25℃)の液体として調整す
る。表面張力は,25〜60dyn/cmである。pH
は,特に制約されないが7〜12の範囲であり,7〜1
0の弱アルカリ性が好ましい。本発明のインキは,コン
ティニュアスタイプのプリンターおよびオンデマンドタ
イプのプリンターのいずれにも使用できる。コンティニ
ュアスタイプのプリンターにおいては,液滴が適度に帯
電するようにインキの電導度を調整する。
【0030】
【実施例】以下,実施例に基づいて本発明を説明する。
実施例中,部および%は,重量部および重量%をそれぞ
れ表す。 (1)カーボンブラックの酸化処理 (処理例1:過酸化水素処理)カーボンブラック(三菱
化学社製「MA7」)10部を30%の過酸化水素水4
50部と混合し,硫酸を加えてpHを1に調整した。こ
の混合物を1晩静置したのち,十分に水洗し,20%の
カーボンブラック分散液とした。
【0031】(処理例2:次亜塩素酸処理)カーボンブ
ラック(デグサ社製「Printex40」)10部を
4%の次亜塩素酸ナトリウム溶液500部と混合し,約
80℃で加熱還流を10時間行った。しかるのち,水洗
と遠心分離を繰り返して20%のカーボンブラック分散
液とした。 (処理例3:過マンガン酸カリウム処理)カーボンブラ
ック(デグサ社製「Printex40」)10部を過
マンガン酸カリウムの4規定硫酸溶液250部と混合
し,2時間静置したのち,濾過,水洗を繰り返し,20
%のカーボンブラック分散液とした。
【0032】(処理例4:硝酸処理)カーボンブラック
(三菱化学社製「MA7」)10部を30%の硝酸10
0部と混合し,約90℃で加熱還流を10時間行った。
次いで,水洗と遠心分離を繰り返したのち,トリエチル
アミンを加えてpHを7に調整し,20%のカーボンブ
ラック分散液とした。 (処理例5:過硫酸カリウム処理)カーボンブラック
(三菱化学社製「MA7」)10部を過硫酸カリウムの
4規定硫酸水溶液300部と混合し,80℃で6時間の
加熱処理を行った。しかるのち,濾過,水洗を繰り返
し,20%のカーボンブラック分散液とした。
【0033】(処理例6:硝酸処理)カーボンブラック
(三菱化学社製「No.2600」)10部を30%の
硝酸100部と混合し,約100℃で加熱還流を8時間
行った。次いで,水洗と遠心分離を繰り返したのち,ジ
メチルアミノエタノールを加えてpHを7.3に調整
し,20%のカーボンブラック分散液とした。 (処理例7:硝酸処理)カーボンブラック(デグサ社製
「Printex40」)10部を30%の硝酸100
部と混合し,約100℃で加熱還流を8時間行った。次
いで,水洗と遠心分離を繰り返したのち,ジエチルアミ
ノエタノールを加えてpHを6.8に調整し,20%の
カーボンブラック分散液とした。
【0034】(2)3元共重合体濃縮液の調製 アクリル樹脂の合成法に従い,下記組成の3元共重合体
を合成したのち,得られた3元共重合体30部,ジメチ
ルアミノエタノール3部,精製水70部を混合し,3元
共重合体濃縮液を得た。 スチレン:αメチルスチレン(モル比) 酸価 分子量 合成例1 2.5: 0.7 105 3500 2 2.5: 0.9 100 5000 3 2.3: 0.7 102 2500 4 3.0: 1.0 95 4500 5 3.4: 0.7 90 4000 6 2.1: 1.2 120 3000 7 2.5: 0.8 250 7000 8 2.5: 0.7 70 5000
【0035】〔実施例1〕 サンドミルに下記の原料を入れて分散し、分散物を作製
した。 処理例1のカーボンブラック分散液 150部 合成例1の3元共重合体濃縮液 10.0部 グリセリン 6.0部 分散後,下記のものと混合した。混合後,0.45μの
メンブランフィルターにて濾過し,インキを製造した。
得られたインキの粒度分布をレーザー回折方式の粒度分
布計(大塚電子社製「DSL−700」)で測定したと
ころ、平均粒径は80nmであった。
【0036】 上記分散物 17.3部 界面活性剤(花王社製「エマルゲン420」) 0.2部 合成例1の3元共重合体濃縮液 10.8部 エチレングリコール 10.0部 防黴剤(オーリン社製「ソジウムオマジン」) 0.15部 エチレンジアミンテトラアセティックアシドナトリウム塩 0.02部 精製水 53.03部
【0037】〔実施例2〕 サンドミルに下記の原料を入れ分散し、分散物を作製し
た。 処理例2のカーボンブラック分散液 200部 青色顔料分散剤(P−〔CH2 NH(CH 2 4N(CH 32 3) Pは銅フタロシアニン残基 0.6部 合成例2の3元共重合体濃縮液 10.0部 分散剤(ゼネカ社製「ソルスパース27000」) 0.5部 ジエチレングリコールモノブチルエーテル 1.0部
【0038】分散後,下記のものと混合した。混合後,
0.45μのメンブランフィルターにて濾過し,インキ
を製造した。得られたインキの平均粒径は85nmであ
った。 上記分散物 16.0部 界面活性剤(花王社製「エマルゲン420」) 0.2部 合成例1の3元共重合体濃縮液 14.3部 エチレングリコール 10.0部 防黴剤(オーリン社製「ソジウムオマジン」) 0.15部 エチレンジアミンテトラアセティックアシドナトリウム塩 0.02部 精製水 50.53部
【0039】〔実施例3〕 サンドミルに下記の原料を入れ分散後,1μのメンブラ
ンフィルターにて濾過し,さらに0.45μのメンブラ
ンフィルターにて濾過してインキを製造した。得られた
インキの平均粒径は94nmであった。 処理例6のカーボンブラック分散液 15.5部 青色顔料分散体(P−〔CH2 NH(CH2 4 N(CH3 2 3 ) Pは銅フタロシアニン残基 0.1部 染料(C.Iダイレクトブラック154) 0.5部 合成例2の3元共重合体濃縮液 11.9部 ジエチルアミノエタノール 0.6部 界面活性剤(花王社製「エマルゲン420」) 0.4部 分散剤(ゼネカ社製「ソルスパース27000」) 0.5部 ジエチレングリコールモノブチルエーテル 1.0部 エチレングリコール 1.0部 防黴剤(オーリン社製「ソジウムオマジン」) 0.15部 エチレンジアミンテトラアセティックアシドナトリウム塩 0.02部 精製水 68.50部
【0040】〔実施例4〜10〕合成例2の3元共重合
体濃縮液のかわりに下記の3元共重合体濃縮液を用い,
実施例3と同様にしてインキを製造した。 濃縮液 酸価 分子量 使用量 実施例4 合成例3 102 2500 17.2部 5 4 95 4000 17.2部 6 5 90 4000 17.2部 7 3 102 2500 13.7部 8 4 95 4000 13.7部 9 5 90 4000 13.7部 10 6 120 3000 13.7部
【0041】〔実施例11〕サンドミルに下記の原料を
入れ分散後,1μのメンブランフィルターにて濾過し,
さらに0.45μのメンブランフィルターにて濾過して
インキを製造した。得られたインキの平均粒径は94n
mであった。 処理例4のカーボンブラック分散液 15.5部 青色顔料分散剤(P−〔CH2 NH(CH 2 4N(CH 32 3) Pは銅フタロシアニン残基 0.1部 合成例2の3元共重合体濃縮液 12.9部 ジエチルアミノエタノール 0.1部 分散剤(ゼネカ社製「ソルスパース27000」) 0.5部 エチレングリコール 1.0部 防黴剤(オーリン社製「ソジウムオマジン」) 0.15部 エチレンジアミンテトラアセティックアシドナトリウム塩 0.02部 精製水 68.50部
【0042】〔実施例12〕処理例4のカーボンブラッ
ク分散液のかわりに処理例5のカーボンブラック分散液
を用いた以外は,実施例11と同様にしてインキを製造
した。得られたインキの平均粒径は85nmであった。 〔実施例13〕処理例4のカーボンブラック分散液のか
わりに処理例6のカーボンブラック分散液を用いた以外
は,実施例11と同様にしてインキを製造した。得られ
たインキの平均粒径は88nmであった。
【0043】〔実施例14〕 処理例4のカーボンブラック分散液のかわりに処理例7
のカーボンブラック分散液を用いた以外は,実施例11
と同様にしてインキを製造した。得られたインキの平均
粒径は93nmであった。 〔比較例14〕 処理例4のカーボンブラック分散液のかわりに処理例1
のカーボンブラック分散液を用い,合成例2の3元共重
合体濃縮液のかわりに合成例7の3元共重合体濃縮液を
用いた以外は,実施例11と同様にしてインキを製造し
た。得られたインキの平均粒径は85nmであった。
【0044】〔比較例15〕 処理例4のカーボンブラック分散液のかわりに処理例1
のカーボンブラック分散液を用い,合成例2の3元共重
合体濃縮液のかわりに合成例8の3元共重合体濃縮液を
用いた以外は,実施例11と同様にしてインキを製造し
た。得られたインキの平均粒径は88nmであった。
【0045】〔比較例1〜9〕サンドミルに下記の原料
を入れ分散後,1μのメンブランフィルターにて濾過
し,さらに0.45μのメンブランフィルターにて濾過
してインキを製造した。 カーボンブラック(三菱化学社製「MA7」) 3.2部 染料(C.Iダイレクトブラック154) 0.5部 下記の樹脂または樹脂エマルション 下記の量 ジエチルアミノエタノール 0.6部 界面活性剤(花王社製「エマルゲン420」) 0.4部 分散剤(ゼネカ社製「ソルスパース27000」) 0.5部 ジエチレングリコールモノブチルエーテル 1.0部 エチレングリコール 1.0部 防黴剤(オーリン社製「ソジウムオマジン」) 0.15部 エチレンジアミンテトラアセティックアシドナトリウム塩 0.02部 精製水 93.50部
【0046】 樹脂 酸価 分子量 使用量 比較例1 A−St 150 6800 4部 2 A−St 195 10000 5部 3 A−St 200 5000 5部 4 A−St 200 7000 4部 5 A−St 200 7500 5部 6 A−St 235 1600 5部 7 A−エマルション1 13部 8 A−エマルション2 17部 9 ポリエステル 5部
【0047】なお,A−Stはスチレンアクリル樹脂
を,A−エマルション1はアクリル系樹脂エマルション
(日本ポリマー工業社製「リオクリルPFX030
2」,固形分約30%)を,A−エマルション2はアク
リル系樹脂エマルション(日本ポリマー工業社製「トー
クリルS740」,固形分約30%)を,ポリエステル
は水溶解性ポリエステル樹脂(互応化学工業社製「Z−
446」)を表す。
【0048】〔比較例10〜12〕サンドミルに下記の
原料を入れ分散後,1μのメンブランフィルターにて濾
過し,さらに0.45μのメンブランフィルターにて濾
過してインキを製造した。 処理例5のカーボンブラック分散液 16.1部 染料(C.Iダイレクトブラック154) 0.5部 下記の樹脂 下記の量 ジエチルアミノエタノール 0.6部 界面活性剤(花王社製「エマルゲン420」) 0.4部 分散剤(ゼネカ社製「ソルスパース27000」) 0.5部 ジエチレングリコールモノブチルエーテル 1.0部 エチレングリコール 1.0部 防黴剤(オーリン社製「ソジウムオマジン」) 0.15部 エチレンジアミンテトラアセティックアシドナトリウム塩 0.02部 精製水 81.50部
【0049】 樹脂 酸価 分子量 使用量 比較例10 A−St 150 6800 4部 11 A−St 195 10000 5部 12 A−St 200 5000 5部 なお,A−Stはスチレンアクリル樹脂を表す。
【0050】〔比較例13〕サンドミルに下記の原料を
入れ分散後,1μのメンブランフィルターにて濾過し,
さらに0.45μのメンブランフィルターにて濾過して
インキを製造した。しかし,分散工程では,実施例の処
理カーボンの分散体を使う方法に較べ,粒径が小さくな
らず,また,過剰な分散を行う過程で分散体のゲル化を
生じた。 カーボンブラック(三菱化学社製「MA7」 3.2部 合成例2の3元共重合体濃縮液 9.5部 ジエチルアミノエタノール 0.1部 界面活性剤(花王社製「エマルゲン420」) 0.4部 ジエチレングリコールモノブチルエーテル 1.0部 エチレングリコール 1.0部 防黴剤(オーリン社製「ソジウムオマジン」) 0.15部 エチレンジアミンテトラアセティックアシドナトリウム塩 0.02部 精製水 93.50部
【0051】実施例および比較例で得られたインキにつ
いて,耐水性,再溶解性,濾過性,粘度,噴射特性,抵
抗値および分散性を評価した。結果を表1に示す。ま
た,実施例で得られたインキについては,−40℃で一
週間保存後に自然解凍したところ,初期の粘度を維持し
ており,安定な噴射特性を示した。また,60℃の恒温
槽で1月保存したところ,初期の粘度を維持しており,
安定な噴射特性を示した。さらに,−40℃7時間,室
温7時間,50℃7時間のサイクルを3回繰り返して行
ったところ,初期の印字特性およびインキの物性値を維
持していた。
【0052】なお,評価は下記のようにして行った。 (1) 耐水性 インキをインクジェットプリンター(日立製作所社製
「GXII」)のカートリッジに入れて普通紙(ゼロック
ス社製「K」)に印字したものを乾燥後,1分間水に浸
漬した時のにじみの有無を目視で評価した(○:にじみ
無し,×:にじみ有り)。また,アート紙にベタ印字し
たものを湿った綿棒で3回こすったときの印字部の変化
を目視で評価した(○:変化無し,△:少々変化有り,
×:変化有り)。
【0053】(2) 再溶解性 ニッケル板上にインキを滴下,乾燥2日後に,同じイン
キに浸漬したときの溶解性を目視で評価した(○:溶
解,△:溶解に時間を要する,×:不溶解)。 (3) 濾過性 90mm直径のメンブランフィルターでの濾過量を調べ
た。 (4) 粘度 振動式粘度計(山一電機社製「VM−1A」)で25℃
における粘度を測定した。
【0054】(5) 噴射特性 連続印字中のノズルの噴射不良を印字物の欠陥の有無で
評価した(○:欠陥無し,×:欠陥有り)。 (6) 抵抗値 コート紙(日本製紙社製「NPIコート紙」)に,イン
キをNo.6のバーコーターで塗工し,乾燥後の塗工面
の抵抗値を抵抗率計(三菱油化社製「MCP−T40
0〕)で測定した。同様の抵抗値の測定を,70℃12
時間の加熱処理を施したインキについても行った。イン
キを50℃で7日間保存前後の粒子径の変化から分散性
を評価した(○:15nm未満,×:15nm以上)。
【0055】
【表1】
【0056】
【発明の効果】本発明のインクジェットインキは,水を
媒体しながら,被記録体の種類に係わらず耐水性の良好
な記録物を与えるため,オフィスにおける書類の作成,
ダンボールのマーキング,ナンバリング等の分野で利用
することができる。また,本発明のインキは再溶解性に
優れるため,偏向電極にインキが付着した際もインキの
付着,堆積によるトラブルが少なくなる。さらに,特に
カーボンブラックを使用したインキの場合は,偏向電極
でのインキに基づく電流のショート等も問題となる恐れ
があるが,本発明のインキは乾燥後の抵抗値が高いた
め,このようなトラブルの低減がはかれる。
フロントページの続き (72)発明者 飯田 保春 東京都中央区京橋二丁目3番13号東洋イ ンキ製造株式会社内 (56)参考文献 特開 平2−276875(JP,A) 特開 平8−3498(JP,A) 特開 平6−212110(JP,A) 特開 平8−253716(JP,A) 特許3254969(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C09D 11/00 - 11/20

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水性の液体中に酸化処理カーボンブラッ
    ク,並びにアクリル酸,スチレンおよびαメチルスチレ
    ンよりなる酸価90〜120の3元共重合体を分散もし
    くは溶解してなることを特徴とするインクジェットイン
    キ。
  2. 【請求項2】 3元共重合体の中和剤を含む請求項1記
    載のインクジェットインキ。
  3. 【請求項3】 3元共重合体が0.5〜10重量%含有
    される請求項1又は2記載のインクジェットインキ。
  4. 【請求項4】 酸化処理カーボンブラック1〜5重量
    %,防黴剤0.03〜1.0重量%,3元共重合体0.
    5〜10重量%,水性溶剤0〜25重量%および水50
    〜95重量%を含む請求項1又は2記載のインクジェッ
    トインキ。
  5. 【請求項5】 粘度が0.8〜15cps(25℃)で
    ある請求項1ないし4いずれか記載のインクジェットイ
    ンキ。
  6. 【請求項6】 コート紙上でのベタ印字面の抵抗値が1
    6 Ω(5mmの電極間)以上である請求項1ないし5
    いずれか記載のインクジェットインキ。
  7. 【請求項7】 酸化処理カーボンブラック,並びにアク
    リル酸,スチレンおよびαメチルスチレンよりなる酸価
    90〜120の3元共重合体を含む濃縮状態の水分散液
    をあらかじめ調整した後,水および添加剤を加えて希釈
    することを特徴とするインクジェットインキの製造方
    法。
  8. 【請求項8】 水および添加剤を加えて希釈した後,6
    0〜80℃の温度にて5〜48時間保持する請求項7記
    載のインクジェットインキの製造方法。
  9. 【請求項9】 孔径0.45μm以下のフィルターにて
    濾過する工程を含む請求項7又は8記載のインクジェッ
    トインキの製造方法。
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