JP2004099800A - 水性インク組成物、その製造方法、及び水性インク組成物を用いる画像形成方法 - Google Patents

水性インク組成物、その製造方法、及び水性インク組成物を用いる画像形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】顔料・樹脂の固形分含量を高くでき、この場合でも長期間顔料が安定に分散され粘度上昇を起こさず、得られる画像が高色調・高画質で、高い耐久性と耐水性を有する水性インク組成物、その製造方法及び画像形成方法を提供すること。
【解決手段】アルケン、スチレン及びビニルナフタレンから選ばれる1種以上、イオン解離酸性基含有モノマーの1種以上、及びα,β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステルの1種以上からの各構成単位を含む共重合体のアルカリ中和物、顔料、及び水性媒体を含み、前記共重合体のアルカリ中和物は平均径が10nmないし300nmのミセル会合体を形成している水性インク組成物、前記共重合体をアルカリを含む水性媒体中、共重合体のTgより15℃高い温度以上に保持しつつ攪拌してミセル会合体溶液を作製し、これに顔料を分散させる水性インク組成物の製造方法、及び画像形成後加熱処理を行なう画像形成方法。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性インク組成物、その製造方法、及び該水性インク組成物を用いる画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近の環境問題への要請の高まりから、各種分野において有機溶剤の使用に代えて水性媒体の使用が推奨あるいは法的規制されるようになっている。
例えば塗料分野においては、有機溶剤型塗料から水性塗料や無溶剤型塗料(静電粉体塗料等)への転換が著しい。また、印刷分野においても、印刷作業環境等の問題から、水性印刷インクの使用を義務付ける法的規制の要請があり、水性印刷インクの開発が急がれている。しかし、水性印刷インク中における顔料の分散不良が完全には解決されておらず、また、現在の水性印刷インクを用いた画像は堅牢性、特に耐水性に問題があり、現段階では実用に耐えうる画像特性は得られていない。先ず非溶剤型であることに応えなければならない場合には、やむを得ず画像特性を落として水性印刷インクを用いているのが現状である。したがって、必要な画像特性を有する水性印刷インクの出現が切望されている。
【0003】
また、水性インクの他の応用例として、近年、インクジェット記録用インクを用いる画像記録が普及している。インクジェット記録は装置が簡便で低電力消費であるにもかかわらず、高品質の画像記録が行えるという特徴を有し、特に最近の多色インクジェット記録では、写真に匹敵する画質のものが得られるようになりつつある。
インクジェット記録は、水性液体インクをノズルより小滴として吐出させ、これを記録媒体に付着させることにより記録を行う。従来はこのインク液の着色色材として染料を用い、インク媒体は一般に表面張力の関係から水系液体が選ばれ、均一液体系であった。色材としての染料は水溶性が高くノズル詰まりを起こしにくく、染料を用いたインク液はニュートニアンに近い液性をもつためインク吐出が安定であり、さらに色の種類も極めて多いという利点を有する。
しかし、一般に染料は顔料に比較して耐水性や耐光性に劣るので、染料を含むインクにより記録した画像は耐水性及び耐光性が劣る他、滲みやすいという欠点がある。また、染料は水に溶解性が高く、化学構造的に電子結合の強いものが多く、人的安全性に問題があるものが多い。さらに、染料を含むインクを用いるインクジェット記録においては、色再現性が普通紙においては実現していない(特殊紙を使えば色再現域が得られる)。
一方、インクジェット記録が普及するにつれその記録特性に対する要求も一層高くなっており、インクジェット記録を用いることにより、印刷をした場合の画像と同等レベルの性能が求められるようになっており、前記のごとき染料含有インクのもつ耐水性、耐光性、色滲み、色再現性及び安全性の問題は緊急に解決しなくてはならない課題となっている。
【0004】
これに対し、色材として顔料を用いるインクジェット記録インクに関する開発研究は様々な角度からアプローチされ、高分子分散剤や水性溶剤の検討など、種々行われてきたが、充分な特性のものが得られずに今日に至っている。
例えば以下の特許文献1には、顔料入りインクとして水性キャリア媒体、窒素複素環ジオール補助溶剤及び顔料分散物(重合体分散剤により安定化された顔料粒子の水性分散物)を含む目詰まり耐性が向上したインクジェット記録インクが記載され、高分子分散剤としてAB又はBABブロックコポリマー(Aセグメントはアクリル系の疎水性ポリマー、Bセグメントはアクリル系親水性ポリマー)が記載されている。
【0005】
また、以下の特許文献2には、顔料を含む記録液において、保湿剤としてエチレングリコール等に代え糖類を用いることにより、同等の保湿性能をより低い粘度で実現したものが記載され、また、顔料の分散剤である高分子化合物として、スチレン、その誘導体、ビニルナフタレン及びその誘導体から選ばれるモノマーとアクリル酸等の不飽和カルボン酸との共重合体を用いることが記載されている。
【0006】
さらに、以下の特許文献3には、顔料を含む水性インクジェットインクの顔料分散剤として、少なくとも1つの塩基性アミン官能基を有する疎水性ポリマーブロックと非イオン性ポリマーブロック又は酸性官能基含有ポリマーブロックからなるブロックポリマーを用いることにより、顔料分散が安定化された水性インクジェットインクが得られることが記載されている。
【0007】
さらに、以下の特許文献4には、顔料をスチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体等の高分子分散剤で分散したインクジェット記録用インクが記載されている。
【0008】
前記のごとき特許文献に記載のインクジェット記録インクは、いずれも顔料の分散剤として高分子化合物(バインダー樹脂)を含み、該高分子化合物は水への溶解性を助ける酸性基と顔料に対する親和性が高い疎水性基を含んでいる。ところで前記高分子化合物は、顔料の分散剤として作用するだけでなく、顔料を記録媒体に付着させる機能を有し、さらに顔料を高分子化合物被膜で覆うことにより顔料による粒子表面光散乱を防ぎ、画像の反射濃度を向上させる機能をも有している。
したがって、記録画像の色濃度を向上させるためには、インクの顔料濃度を上げるだけでなく、インク中の高分子化合物の含有量を高くして、顔料表面の高分子被覆性を高くすることが望ましい。
しかしながら、前記特許文献1ないし4に記載の高分子化合物を多量インク中に含ませると、インク粘度が上昇し、インクジェット記録インクとして使用不可能となる。また、前記特許文献1ないし4に記載のインクを用いて記録した画像は耐水性に乏しいという問題点を有している。
【0009】
【特許文献1】
特開平5−214284号公報(段落0016、0037〜0053)
【特許文献2】
特開平7−11182号公報(特許請求の範囲、段落0010、0016〜0025)
【特許文献3】
特開平6−136311号公報(段落0016〜0025)
【特許文献4】
特開2002−38061号公報(段落0051、0054、0102)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記のごとき問題点及び要請に基づいてなされたものであり、その目的は、顔料及びバインダー樹脂の濃度を高くすることが可能で、その場合でも長期間顔料が安定に分散され粘度上昇を起こさず、かつそれを用いて画像記録した場合、得られる記録画像が高色調で高画質であり、また高い耐久性と耐水性を有する水性インク組成物を提供すること、前記水性インク組成物の製造方法及び前記水性インク組成物を用いる画像形成方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、以下の水性インク組成物、その製造方法及び画像形成方法を提供することにより解決される。
(1)少なくとも、1)アルケン、スチレン及びその誘導体ならびにビニルナフタレン及びその誘導体から選ばれるモノマーの1種以上、イオン解離する酸性基を含有するモノマーの1種以上、及びα,β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステルの1種以上からの各構成単位を含む共重合体のアルカリ中和物、2)顔料、及び3)水性媒体を含む水性インク組成物であって、前記水性インク組成物中において前記共重合体のアルカリ中和物はミセル会合体を形成し、該ミセル会合体の平均径が10nmないし300nmであることを特徴とする水性インク組成物。
【0012】
(2)前記共重合体の酸価が60〜160であることを特徴とする前記(1)に記載の水性インク組成物。
(3)前記共重合体の数平均分子量が6,000〜30,000であることを特徴とする前記(1)に記載の水性インク組成物。
(4)前記共重合体の、アルケン、スチレン及びその誘導体ならびにビニルナフタレン及びその誘導体から選ばれるモノマーからの構成単位が15〜55質量%であり、イオン解離する酸性基を含有するモノマーからの構成単位が9〜28質量%であり、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステルからの構成単位が20〜75質量%であることを特徴とする前記(1)に記載の水性インク組成物。
【0013】
(5)前記顔料一次粒子の数平均粒径が2〜200nmであることを特徴とする前記(1)に記載の水性インク組成物。
(6)前記共重合体の含有量が0.1〜35質量%であることを特徴とする前記(1)に記載の水性インク組成物。
(7)前記顔料の含有量が1〜35質量%であることを特徴とする前記(1)に記載の水性インク組成物。
(8)前記水性インク組成物の固形分含有量が2〜40質量%であることを特徴とする前記(1)に記載の水性インク組成物。
(9)前記ミセル会合体が水性媒体を内包することを特徴とする前記(1)に記載の水性インク組成物。
【0014】
(10)前記共重合体として、共重合体水溶液のpHを変化させた場合、pH変化量が2.5以内において、共重合体が溶解又はコロイド状態から上澄みを生じて沈殿する共重合体を用いることを特徴とする前記(1)に記載の水性インク組成物。
(11)前記水性インク組成物のpHを、共重合体が溶解状態から上澄みを発生して沈殿を生じるpH点から、0.5ないし4.0高いpH領域に調節することを特徴とする前記(1)に記載の水性インク組成物。
【0015】
(12)沸点が40℃〜150℃のpH調節剤によりpH調節を行なうことを特徴とする前記(1)に記載の水性インク組成物。
(13)前記pH調節剤の添加量が100ミリモル/Kg〜20モル/Kgであることを特徴とする前記(1)に記載の水性インク組成物。
(14)さらに、水に可溶の液体で、沸点80℃以上蒸気圧が100mmHg以下の湿潤剤を5〜50質量%含むことを特徴とする前記(1)に記載の水性インク組成物。
(15)さらに、防腐剤および/または防カビ剤を0.05〜4質量%含むことを特徴とする前記(1)に記載の水性インク組成物。
【0016】
(16)アルケン、スチレン及びその誘導体ならびにビニルナフタレン及びその誘導体から選ばれるモノマーの1種以上、イオン解離する酸性基を含有するモノマーの1種以上、及びα,β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステルの1種以上からの各構成単位を含む共重合体、アルカリ及び水性媒体を含む液を、前記共重合体のガラス転移点よりも15℃以上高い温度に保持しながら攪拌して、共重合体アルカリ中和物のミセル会合体を作製する工程、前記ミセル会合体を含む液に顔料微粒子を添加分散させる工程、を少なくとも有する水性インク組成物の製造方法。
(17)前記ミセル会合体作製工程において、アルカリの量が、共重合体の全酸基を中和する量(当量)より2当量%から30当量%少ない量であることを特徴とする前記(16)に記載の水性インク組成物の製造方法。
(18)前記ミセル会合体作製工程において、共重合体としてガラス転移点が10℃から120℃の範囲のものを用い、液の保持温度を前記ガラス転移点より20℃から50℃高い温度とし、かつ超音波振動を与えながら液を攪拌することを特徴とする前記(16)に記載の水性インク組成物の製造方法。
(19)前記(1)に記載の水性インク組成物を用いて記録媒体の上に画像形成をした後、記録媒体の画像形成面に、50℃〜150℃の温度での加熱処理を行なう画像形成方法。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の水性インク組成物は、少なくとも、1)アルケン、スチレン及びその誘導体ならびにビニルナフタレン及びその誘導体から選ばれるモノマーの1種以上、イオン解離する酸性基を含有するモノマーの1種以上、及びα,β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステルの1種以上からの構成単位を含む共重合体のアルカリ中和物、2)顔料、及び3)水性媒体を含む水性インク組成物であって、前記水性インク組成物中において前記共重合体のアルカリ中和物はミセル会合体を形成し、該ミセル会合体の平均径が10nmないし300nmであることを特徴とする。
ミセル会合体の平均径は20nmないし200nmがより好ましく、30nmないし120nmの範囲がさらに好ましい。ミセル会合体の平均径が10nmより小さいと、顔料粒子をミセル会合体が包含できなくなり、また接触面積の関係上付着・吸着もしにくくなり、また顔料表面に付着・吸着されたとしても付着・吸着は不十分であり、分散状態が不安定となる。また、ミセル会合体の平均径が300nmより大きいと、液が白濁し、顔料の分散安定性が不十分で水性インク組成物の寿命の低下を引き起こし、さらに、分散顔料が画像中で凝集・成長する結果、望まない光散乱が生じて濁りが発生し、画像の色再現域を狭くしたり、色彩の彩度低下を引き起こす。
ミセル会合体の平均径や分散状態は、クライオTEM法、クライオSEM法、動的光散乱法、静的光散乱法、レーザー散乱法等により測定される。
本発明の水性インク組成物において、顔料微粒子はミセル会合体により分散保持される。
【0018】
前記ミセル会合体(micelle  aggregation)は、前記共重合体分子の中和物が複数絡み合った集合体で、粒子形態を有している。水性インク組成物中においてミセル会合体は単独で及び/又は複数のミセル会合体が複数集合してコロイド分散しており、前記の粒子形態に基づき安定なコロイド状態となる(前記ミセル会合体が複数集合したものは他のミセル会合体と会合しにくくなり、また、高分子の鎖の多くが液中に大きく開かれないため会合体間の相互作用が小さく、低い粘度の状態を維持すると考えられる)。また、ミセル会合体はその内部に水性媒体を内包しているため、比重が水性媒体と近くなり重量の観点からも安定なコロイド状態を作り出す。さらに、ミセル会合体の径は、液のpH値が多少変化しても大きく変わらないという特徴を有する。本発明におけるミセル会合体は、このような特徴を有するため、本発明の課題解決に大きく寄与し、後述のように水性インク組成物に優れた特性を与える。
顔料微粒子はミセル会合体により保持される。顔料微粒子の粒径がミセル会合体の径に比較して小さい場合には、顔料微粒子は各ミセル会合体の内部に保持され、またその粒径がミセル会合体の径に比較して大きい場合、複数のミセル会合体により保持されていると考えられる。そして、ミセル会合体の径を非常に小さくすることができるので、微細な顔料粒子も十分安定に分散保持できる。
【0019】
本発明の水性インク組成物における共重合体分子は、前記のごときミセル会合体を形成し液中で分子が広がって存在していないため、共重合体の含有量を高くしても液の粘度は低くまたその粘度は長期間安定的に保持される。図1に、本発明のミセル会合体を含むコロイド溶液(スチレン−アクリル酸−アクリル酸ブチルエステル共重合体)(図中Aの曲線)と対照のための樹脂溶液(スチレン−アクリル酸共重合体)(図中Bの曲線)の、固形分濃度(質量%)と粘度との関係を示す。スチレン−アクリル酸共重合体溶液では固形分が20質量%で急激に粘度が上昇するが、本発明のミセル会合体コロイド溶液の場合、固形分粘度が高くなるにつれ粘度も上昇するが、30質量%に至るまで急激な粘度上昇は見られない。
また、顔料微粒子はミセル会合体により保持されているので、水性インク組成物に高濃度の顔料を含有せしめることが可能で、またその分散性も安定に保持される。
したがって、本発明の水性インク組成物では、液の粘度を上げることなく、共重合体及び顔料の双方の濃度を高くすることが可能になり、また、紙などの記録媒体の表面に顔料/高分子共存物質が膜状に形成可能となり、その結果、色再現範囲が広くなり普通紙を用いても高色調画像が得られ、また、他の特性(例えば、インクジェットノズル噴射特性や印刷特性)を損なうことなく、画像が高濃度化され高画質の画像が得られる。また、印刷用のインク組成物は、通常20〜30質量%程度の固形分(樹脂バインダー+色材)を含むことが必要であるが、本発明の水性インク組成物にはこの程度の固形分を含ませることできるので、印刷用のインク組成物として用いることが可能で、高光学反射濃度の画像が得られる。
さらに、水性インク組成物中の顔料微粒子はミセル会合体に内包されているので、画像被膜の顔料は共重合体樹脂被膜内に保持され、顔料が脱離しにくく(画像耐久性)、また画像に水が接触しても色材再分散に至らないので画像滲みが生ずることがない(耐水性)。そして、ミセル会合体の径を非常に小さくすることができるので、微細な顔料粒子も十分安定に分散保持でき、その結果、印字画像が高い色透明性を有し、色再現範囲が広い(高色調画像)。
また、本発明で用いる共重合体は前記のごとき特定のモノマーからの単位を有する共重合体であり、特に疎水性の高いスチレンモノマー等を用いることにより、画像被膜を構成する樹脂部分が高い耐水性を有する。このことと、前記の、顔料微粒子がミセル会合体に内包されていることと相俟って、本発明の水性インク組成物を用いて形成される画像は、非常に耐水性と堅牢性に優れたものとなる。
【0020】
また、本発明の水性インク組成物は前記のごときミセル会合体を含むため緩衝作用(pHの変化を阻害)を有し、通常インクに加えるpH緩衝剤の添加が不用となる。図2に、本発明のミセル会合体を含むコロイド溶液(スチレン−アクリル酸−アクリル酸ブチルエステル共重合体)にアルカリ剤(TMAH(N(CHOH))を添加した場合のコロイド溶液のpHの変化を示す。
さらに、本発明の水性インク組成物は色材として顔料を用いているので、画像滲みの少ない画像が得られることは勿論である。
また、本発明の水性インク組成物をインクジェット記録に用いる場合、ミセル会合体がその内部に水を内包していることに基づき、保湿による湿潤効果が発現され、ノズルからのインク吐出性(ノズル目詰まり等)に関する信頼性が向上する。
【0021】
[ミセル会合体]
次に、本発明におけるミセル会合体について説明する。
(共重合体)
ミセル会合体を構成する共重合体は、少なくとも、アルケン、スチレン及びその誘導体ならびにビニルナフタレン及びその誘導体から選ばれるモノマーの1種以上、イオン解離する酸性基を含有するモノマーの1種以上、及びα,β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステルの1種以上からの構成単位を含む共重合体である。
【0022】
前記アルケン、スチレン及びその誘導体ならびにビニルナフタレン及びその誘導体から選ばれるモノマーから構成される単位は疎水性が強く、顔料微粒子を強く吸着して顔料分散を安定化する。さらに前記構成単位はその疎水性により形成画像の耐水性に寄与し、また、画像部に堅牢性を与える。さらに前記構成単位は共重合体のイオン解離する酸性基を含有するモノマーのイオン解離機能の抑制にも影響を与える。
アルケンは炭素数が2〜20程度のものが好ましく、より好ましくは2〜10
であり、疎水性が大きく損なわれない限り他の置換基を有していてもよい。
スチレン及びこの誘導体としてはスチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレンや、これらのスチレン及びその誘導体のベンゼン環に疎水性を大きく損なわない置換基あるいはさらに疎水性を増す置換基が置換したものなどを挙げることができる。また、ビニルナフタレン及びその誘導体としてはビニルナフタレンの他、ナフタレン環に疎水性を大きく損なわない置換基あるいはさらに疎水性を増す置換基が置換したビニルナフタレンが挙げられる。
中でも、アルケン、スチレン及びその誘導体は、共重合体製造時の制御性が高く有用な疎水性モノマ−である。
【0023】
前記アルケン、スチレン及びその誘導体ならびにビニルナフタレン及びその誘導体から選ばれるモノマーからの構成単位は、前記の顔料分散性、画像の耐水性及び堅牢性の観点からみて、共重合体中、好ましくは15〜55質量%、より好ましくは25〜40質量%、特に好ましくは29〜37質量%である。
前記構成単位が15質量%未満の共重合体は、顔料分散性の不足、耐水性の不足、紙への接着性やインキ膜強度の不足が生ずることがあり、また、55質量%を越えると水性媒体への溶解性が不十分となり、インキの作製が難しかったり、インキが濁ったり、インキ中で材料の不溶沈殿物が生じたり、インキの粘度が不安定になることがあるので、前記範囲が適切である。
【0024】
イオン解離する酸性基を含有するモノマーからの構成単位は、共重合体をアルカリ性の水性媒体に溶解させる機能を有し、前記モノマーとしては、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸が好ましく挙げられ、例えばメタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸又はそのモノエステル、フマル酸又はそのモノエステル、イタコン酸又はそのモノエステル、クロトン酸などが挙げられる。特に、メタクリル酸、アクリル酸は本発明のインク組成物として挙げた前記効果を達成するのに好ましい。
イオン解離する酸性基を含有するモノマーからの構成単位は、共重合体中、9〜28質量%が好ましく、より好ましくは12〜21質量%、特に好ましくは14〜18質量%である。この構成単位が9%より少ないと共重合体が水性媒体(アルカリ性)に溶解しにくく、ミセル会合体溶液を安定して作製しにくくなる。一方、28質量%より多くなると記録画像の耐水性や堅牢性が損なわれる場合があるので、前記範囲が適切である。
【0025】
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステルからの構成単位は共重合体に屈曲性を与える成分であり、この成分を含ませることによりミセル会合体が良好に形成でき、また、ミセル会合体の径のばらつきが小さくなる。α,β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステルのアルキル基は炭素数1〜20が好ましく、より好ましくは2〜10である。例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸エステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等のマレイン酸エステル類、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル等のフマル酸エステル類等が挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステルからの構成単位は、ミセル会合体の形成性及び形成されるミセル会合体の径のばらつきの観点から、共重合体中、20〜75質量%が好ましく、より好ましくは35〜65質量%、特に好ましくは45〜60質量%である。
【0026】
また、本発明の共重合体には、前記3種の構成単位の他、本発明の目的に合致するミセル会合体の形成を損なわない範囲で他の共重合単位を含ませることが可能である。
【0027】
本発明に使用される共重合体は、ランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。水性インク組成物の顔料分散性や保存性の制御性を考慮すると、ブロック共重合体の方が好ましいが、共重合体の製造のし易さやコストの点からはランダム共重合体が好ましい。また、水性インク組成物における顔料分散性のバラツキを小さくする点からはランダム共重合体を用いることが好ましい。
【0028】
本発明の共重合体は、画像被膜の強度や接着強度の点から、数平均分子量が6,000から30,000のものが好ましい。より好ましくは数平均分子量が13,000から22,000である。数平均分子量が6,000より低いと、粉末化したりし易く画像被膜が不均一で、また画像被膜の耐水性(堅牢性)が低くなりがちである。一方、数平均分子量が30,000より高いと、水性媒体への溶解性が不十分となり、分散液の固形分濃度を適正値まで上げることができなくなったり、液体が濁ったり沈殿物が生じたり、液粘度が上昇したり、画像被膜表面の平滑性が劣ったりする場合がある。
また、本発明の共重合体は、ガラス転移点が120℃より低いものが好ましく、環境安定性等を考慮すると35℃から70℃の範囲にあるものが好ましい。また、流動開始点が180℃より低く、分解点は150℃より高い熱特性の材料を用いることにより物理的着膜特性の制御余裕度が広くなり、さらに透光性の高い画像被膜が得られる。
【0029】
本発明の共重合体の酸価は、60から160の範囲が好ましく、より好ましくは90から140の範囲で、特に100〜130の範囲が好ましい。共重合体の酸価が60より小さいと、水性媒体への溶解性が不十分となり、分散時の固形分濃度を適正値まで上げることができなくなったり、液体が濁ったり沈殿物が生じたり、液粘度が上昇したりすることがある。また、共重合体の酸価が160より大きいと、画像被膜の耐水性が低かったり、画像濃度が充分得られなかったり、画像滲みが生じやすくなる。
ところで、一般に印刷用紙やインクジェット用紙は、酸性紙が多く使用されている。そのため、酸価160以下の共重合体(イオン性部分が少ない)を用いて酸性紙の上に画像被膜を形成した場合、共重合体は酸性紙の上でHイオンの影響をより強く受けやすく、画像被膜が乾燥された固体状態では水への溶解性が大変低くなり、画像被膜の耐水性(水に短時間濡れても画像は影響されず、画像定着性が高い)が良好となる。
【0030】
(ミセル会合体の作製)
本発明のミセル会合体は、例えば以下のような方法により作製される。微細で均一な径のミセル会合体を作るには、前記共重合体、アルカリ及び水性媒体を含む液を、前記共重合体のガラス転移点よりも15℃以上高い温度に保持しながら攪拌することにより作製される。
まず、前記液中のアルカリ含有量は、それにより共重合体の酸性基を中和するに当たり、酸性基を完全に中和しないような量とすることが好ましい。具体的には、共重合体の全酸基を中和する量(当量)より2当量%から30当量%少ない量が好ましく、より好ましくは6当量%から15当量%少ない量がよい。2当量%から30当量%少ない量を用いることにより微細で均一な径のミセル会合体が作製できる。2当量%少ない量よりアルカリ含有量を多くすると、ミセル会合体の径の制御性が悪くなり、特にミセル会合体を形成しなかったり、ミセル会合体の径分布が広くなったりする。その結果、顔料分散安定性が損なわれたり、画像の色特性の劣化が生じることがある。一方、30当量%少ない量よりアルカリの量を少なくすると、最終的に不溶解分が生じたり、液が濃い白濁を生じたり、必要な固形分濃度のミセル会合体溶液を作製することが困難になることがある。
用いるアルカリとしては、NaOH、KOH等のアルカリ金属水酸化物、TMAH、TEAH、アンモニア、アンモニウム系化合物、第4級アンモニウム系化合物、アミン系化合物が用いられる。
次に、液攪拌時の温度であるが、液の温度が、用いる共重合体のガラス転移点よりも15℃以上高いことが好ましい。好ましくは25℃以上高い温度がよいが、その温度が水の沸点に近くなる場合は、水に共沸性の良溶解多価アルコール系の高沸点溶剤を混合することが有効である。
アルカリの量を前記のように調節した場合でも、液温が共重合体のガラス転移点から15℃高い温度より低いと、平均径が300nm以上の白色気味の液が生成し、この液では分散顔料の径が小さくならず、凝集体も生じやすく、またミセル会合体に多くの顔料を内包し過ぎて重量的に重くなり、長期分散安定性が損なわれる。
攪拌時間は2〜6時間程度が適切である。攪拌時、強力な剪断力を特にかける必要はない。したがって、攪拌装置としては通常のものが制限なく使用できる。例えば、プロペラ攪拌法、回転子攪拌法だけでなく、超音波による振動攪拌が挙げられる。超音波攪拌の場合、共重合体としてガラス転移点が10℃から120℃の範囲のものを用い、このガラス転移点より20℃から50℃、好ましくは30℃から50℃高い温度範囲で超音波振動を与えながら共重合体溶液を攪拌することが好ましい。
【0031】
[顔料]
色材として分散される顔料は、有機顔料、無機顔料、含金属顔料等が適用でき、一種又は複数種混合して用いることもできる。有機顔料としては、アゾ系顔料、ナフトール系顔料、インドリノン系顔料、アントラキノン系顔料、インジゴ系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、フタロシアニン系顔料、ジケトピロロ系顔料、ペリレン系顔料等が好ましい。無機顔料としては、カーボンブラック系、酸化亜鉛系、酸化チタン系、酸化鉄系、群青、金属粉末等の顔料が好ましい。
顔料粒子の数平均粒子径(一次粒子径)が2nmから200nmの範囲が適切であり、好ましくは30nmから100nmの範囲にあることが好ましい。2nmから200nmの範囲の場合、顔料分散安定性が向上し、画像被膜の透明性も向上し、画像部の色再現域が広がり、高色調・高彩度の印字画像が得られる。
本発明の水性インク組成物においては、いかなる顔料を用いても良好な顔料分散性が得られる。したがって、顔料は自己分散型顔料であったり、特にイオン基を表面に持つものである必要性はない。また、表面処理により親水性基を含む金属化合物粒子に対しても良い分散性も得られる。本発明において特に顕著な分散効果が得られるのは、通常分散が難しい、表面が疎水性の有機顔料用いる場合である。(なお、自己分散性顔料は、顔料粒子表面のイオン状態を乱し、良好な分散性を損なうことがある。)
顔料は、そのままでもまた顔料分散物としてミセル会合体溶液に加えることができる。その後、一時的にホモジナイザーやブラストミル等の強い分散処理を与えてもよい。
本発明においては、前記のごとき径の範囲のミセル会合体を含有する液に、顔料を分散させることにより、良好な顔料分散性と長期分散安定性が得られる。
【0032】
[水性インク組成物の調製]
水性インク組成物の調製法に特に制限はないが、前記のようにして作製したミセル会合体のコロイド溶液に顔料又はその分散物を分散させる方法が好ましい。ミセル会合体溶液中への顔料の分散は、例えばビーズミル法、ロールミル法、超音波分散法、ジェットミル法、ホモジナイザー法等の1つ又は複数を用いることにより行われる。
分散工程の精度を上げるため、分級工程として遠心分離法や各種開口径の異なるフィルターによる多段加圧濾過分級法等も用いることもできる。
【0033】
本発明の水性インク組成物には、顔料を35質量%程度まで含有しうる。また、共重合体を35質量%程度まで含有しうる。例えば、インクジェット記録インクの場合には、顔料を1〜35質量%程度、好ましくは2〜10質量%程度含み、印刷インクでは5〜35質量%程度、好ましくは10〜25質量%程度含むことが適切である。また、共重合体は、インクジェット記録インクの場合には、0.1〜35質量%程度、好ましくは1〜5質量%程度含み、印刷インクでは10〜35質量%程度、好ましくは15〜30質量%程度含むことが適切である。
また、インクジェット記録インクの場合、顔料と共重合体の比(質量)は、10:0.1〜10:20が好ましく、より好ましくは10:1から10:5である。また、印刷インキの場合、顔料と共重合体の比(質量)は、10:1〜10:200が好ましく、より好ましくは10:5〜10:50である。
また、本発明の水性インク組成物には、適宜他の成分を加えることができる。たとえば、インクジェット記録インクには湿潤剤を添加することができる。湿潤剤は水に可溶の液体で、沸点80℃以上で、蒸気圧が100mmHg以下である液体が用いられ、水性インク組成物に対し5〜65質量%程度加えることが適切である。
湿潤剤としては、多価アルコール類、グリコールエーテル類等が用いられ、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、カルビトール、ブチルカルビトール、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、2‐(2−n−ブトキシエトキシ)エタノール等であり、1種又は2種以上が用いられる。
さらに、防腐剤および/または防カビ剤を水性インク組成物全体に対し、0.05〜4質量%含ませることができる。
本発明の水性インク組成物における固形分含有量は2〜40質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
【0034】
[画像形成]
本発明の水性インク組成物を用いて画像形成を行なった後、画像に特定の処理を行なうことにより、耐水性等の画像堅牢性を一層向上させることができる。例えば、酸性溶液又は酸性溶液ミストによる記録面の処理やコロナ放電処理、その他画像表面から画像被膜層を酸性化させる処理等が有効な処理手段となる。
さらに、前記アルカリ水性媒体の調製時、アルカリとしてその全部又は一部を沸点が40℃〜150℃以下のアルカリ(pH調整剤)を用い、画像乾燥時に簡易な加熱処理を行なって、前記pH調整剤を揮散せしめる処理も有効な手段である。この処理により画像堅牢性が向上する他、pH調整剤が画像被膜に悪影響を与える場合、この悪影響を除くことができる。前記pH調整剤は、アンモニウム系化合物、第4級アンモニウム化合物及びアミン系化合物等である。
沸点が40℃より低いものは水性インク組成物から常温においても揮散する可能性が高く、水性インク組成物のpH安定性が損なわれることがあり、また沸点が150℃より高いものは簡易な加熱処理(低温加熱)によっては画像被膜から取り除くことができず、加熱処理温度を高くすると加熱手段が複雑になったり、画像形成媒体の品質が保持できなくなる。
前記のpH調整剤は、水性インク組成物中の濃度が、50mmモル/Kgから20モル/Kgの範囲 、好ましくは0.11モル/Kgから10モル/Kgの範囲 、より好ましくは0.66モル/Kgから5モル/Kgの範囲が適切である。
【0035】
前記のごとき処理により得られる効果は、本発明において用いる共重合体の構成単位に基づく特有な効果である。すなわち、酸性基を有する共重合体は、液のpHを高いところから低いところへ変化させることにより、良溶解状態(均一透明溶液液)から白濁状態(溶解から沈殿に至る過渡状態)を経て上澄みを生じる沈殿(2層分離)に至るが、本発明の共重合体は酸性基の他特定の構成単位を有するため、前記白濁液を生ずるpH領域が狭く、良溶解状態から沈殿析出への移行が急峻である。そのため、前記のごとき処理(画像被膜への酸性ミストの適用、揮発性pH調整剤の加熱揮散など)を行なうと、わずかなpHの低下によっても共重合体の溶解性が劇的に減少し、耐水性などの画像の堅牢性が向上する。
共重合体の、溶解状態から上澄みを生じる沈殿の現象が、pH変化量が2.5以内、好ましくは1.0以内であると、前記のごとき処理を行なうことにより耐水性が良好となる。
【0036】
前記共重合体のpH特性は、電気化学的現象解析法である「EQCM法」により評価することができる。EQCM測定装置は、容器の中にpH特性を測定すべき共重合体溶液を収納し、溶液中にセンサー(水晶振動子と作用電極を有する)、対向電極及び参照電極を置き、これらを電圧印加装置に連結したもので、対向電極と作用電極の間にかける印加電圧を変化させて、作用電極上への共重合体の付着量の変化を調べるものである。
共重合体溶液の、良溶解状態から上澄みを生じる沈殿の現象が、pH変化量が小さくても生ずることに加え、一旦沈殿した共重合体が、pHの上昇にもかかわらずその沈殿状態を維持すること、すなわちヒステリシス特性を示すことが好ましい。この特性を示すものは、前記EQCM法による印加電圧−共重合体付着量の変化において、わずかに水素イオン濃度を高くした場合でも急激に共重合体膜の析出(例えば+1.8Vの陽極電極上)が生じ、液の水素イオン濃度をこれより低くした場合(例えば+1.0Vから+0.2Vへ電圧低下させた場合)や、更にpHが変化して高い水酸イオン濃度域(例えば−0.5Vから−1.5Vへ上昇させた場合)になった場合でも、陽極電極上に析出した共重合体膜が溶解することなく維持される。本発明において用いる共重合体は前記のごとき構成単位を有するため、ヒステリシス特性を示し、この特性は画像被膜の耐水性に大きく寄与する。さらに前記耐水性の他、画像被膜の凝集力が向上され、画像濃度低下や画像堅牢性の低下、画像の滲みが低減される。
本発明の共重合体の酸性基がカルボキシル基の場合、このヒステリシス特性への寄与が大きい。
【0037】
また、このようなヒステリシス特性を有する共重合体を含む水性インク組成物のpHが、その溶解状態から上澄みを発生して沈殿を生じるpH点(白濁開始pH点)から、好ましくは、0.5から4.0高いpH領域、より好ましくは、1.0から3.0高いpH領域にあると、画像被膜の水性媒体に対する堅牢性が発現し(耐水機能の付与)、画像被膜の凝集力が高まり、画像濃度低下や画像の滲みが低減される。
【0038】
また、印刷用紙、上質紙、インクジェット用紙に多く用いられる酸性紙の場合には、画像被膜に酸性ミストを付与するなどの積極的な酸性処理をしないでも、耐水性を得ることができる。この場合、インクが用紙に付着した後でも、乾燥工程を経ながら、紙の酸性分が画像被膜に拡散ないし移行し、画像被膜の堅牢性が向上する。
【0039】
また、カルボキシル基を有する共重合体の場合、70℃以上、より好ましくは150℃以上でコルベ反応を起こしたり、共重合体内部で架橋反応を起したりしてカルボキシル基の数が減少するので、水への共重合体の溶解度が大きく低下する現象がある。この現象を利用して、画像形成の後、画像を50℃から150℃、好ましくは70℃から110℃の温度範囲で加熱処理することにより、効率よく画像の耐水性を改善することができる。
【0040】
以下に実施例を示し本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例1
共重合体( スチレン−アクリル酸−アクリル酸へキシルのランダム三元共重合体:重量平均分子量19,000、共重合比(重量)=36/18/46、酸価120、ガラス転移点55℃、流動開始点90℃、分解点237℃、析出開始点pH5.8)200g、蒸留水750g及び水酸化カリウム21gを徐々に混合しながら溶解を行い、得られた溶液を89℃に加熱しながら、5時間30分スリーワンモータープロペラ攪拌機を用いて溶解兼コロイド溶液作製工程を行った。そして最終的に液の濃度調整を行い、固形分濃度が20質量%のコロイド水溶液(平均コロイド径52nm、pH8.1)を調製した。このコロイド溶液と銅フタロシアニン青色超微粒子顔料(一次平均粒子32nm)を固形分比率で4対6に混合し、これにジエチレングリコールを添加後の液の20質量%になるように加え、強制加圧型顔料分散装置を用いて分散させた。分散顔料粒子径をレーザー散乱微粒子径測定装置を用いて測定したところ、平均粒子径76nmであった。
これに更に、蒸留水、ジエチレングリコール、水酸化カリウム及び防カビ剤を添加し、1μm径メッシュの加圧濾過工程を経て、pH8.2、顔料濃度4質量%、共重合体濃度2.7質量%、エチレングリコール16質量%のシアン色インクジェット用インク液が得られた。
市販のインクジェットプリンターを用いて、印字特性を評価した。上質紙上にベタ印字し、乾燥後のソリッド画像部において、シアン色光学反射濃度が1.65であった。画像部を白い布で擦っても顔料の離脱は観察されなかった。また、この画像記録紙を蒸留水に10分浸漬し画像濃度を評価したが、前記光学反射濃度が1.64であり、劣化は殆ど確認できなかった。また、画像の滲みやムラを生じることもなく良好な画質特性であった。
次ぎに、市販インクジェトプリンターの印字ヘッド部を取り出し、ヘッド部100個に上記シアンインキを充填し、3週間、温湿度30℃50%の環境に放置し、一度ワイピング後に印字噴射とその印字位置ずれについて評価したところ、噴射率100%でノズルの詰まりはなく、噴射位置ずれ100μm以上の噴射率4%で、3回ワイピング後の全ノズルの印字位置ずれは50μm以内となり、印字良好であった。
また、前記インクジェット用インク液の調製直後の粘度は2.5mPa・sであったが、これを2ヶ月間、常温で保管したところ、粘度は2.7mPa・sとなり、使用上不利な粘度上昇は認められなかった。
【0041】
比較例1
実施例1で用いた共重合体を200g、蒸留水750g及び水酸化カリウム21gを徐々に混合しながら溶解を行い、得られた溶液を65℃に加熱しながら、5時間スリーワンモータープロペラ攪拌機を用いて溶解兼コロイド溶液作製工程を行った。そして最終的に液の濃度調整を行い、固形分濃度20質量%のコロイド水溶液(平均コロイド径360nm、pH値7.9)を調製した。得られたコロイド水溶液は巨大ミセル(500nm近辺)の存在に基づく乳白色を呈していた。
このコロイド溶液と銅フタロシアニン青色超微粒子顔料を固形分比率で4対6に混合し、これにジエチレングリコールを添加後の液の15質量%になるように加え、強制加圧型顔料分散装置を用いて分散させた。分散顔料粒子径をレーザー散乱微粒子径測定装置を用いて測定したところ 平均粒子径450nm であった。 これに更に、蒸留水、ジエチレングリコール、水酸化カリ及び防カビ剤を添加し、1μm径メッシュの加圧濾過工程を経て、pH8.0、顔料濃度4質量%、共重合体濃度2.7質量%、エチレングリコール16質量%のシアン色インクジェット用インク液が得られた。
市販のインクジェットプリンターを用いて、印字特性を評価した。上質紙上にベタ印字し、乾燥後のソリッド画像部において、シアン色光学反射濃度が1.41であった。また、この画像記録紙を蒸留水に10分浸漬し、前記光学反射濃度画像濃度を評価したが1.31に低下しており、水による劣化を確認した。また、一部に画像の滲みやムラも生じる画質特性であった。
次ぎに、市販インクジェトプリンターの印字ヘッド部を取り出し、ヘッド部100個に上記シアンインキを充填し、3週間、温湿度30℃50%の環境に放置し、一度ワイピング後に印字噴射とその印字位置ずれについて評価したところ、噴射率85%、噴射位置ずれ100μm以上の噴射率35%の印字特性となった。
また、前記インクジェット用インク液の調製直後の粘度は5.1mPa・sであったが、これを2ヶ月間、常温で保管したところ、粘度は7.3mPa・sとなり、インク噴射特性も不安定で不十分なインク特性であった。
【0042】
比較例2
実施例1において、水酸化カリウム21gを40gに変更する他は、実施例1と同様にして共重合体溶液を調製したところ、透明な液が得られたが、ミセル会合体は得られなかった。共重合体溶液に顔料を実施例1と同様にして分散させ、実施例1と同様にしてインクジェット用インク液を調製した。
前記インクジェット用インク液の調製直後の粘度は3.2mPa・sであったが、これを2ヶ月間、常温で保管したところ、粘度は5.8mPa・sに上昇し、安定なインク噴射が不可能になった。
【0043】
比較例3
実施例1において共重合体として、スチレン−アクリル酸−アクリル酸へキシルのランダム三元共重合体(重量平均分子量20,000、共重合比(重量)=30/25/45、酸価190、ガラス転移点80℃、流動開始点125℃、分解点221℃、析出開始点pH4.8)を用い、液攪拌温度を85℃にする他は、実施例1と同様にしてインクジェット用インク液を得た。
前記インク液の調製過程(ミセル形成工程)で得た共重合体溶液は透明液体であり、粒子測定から完全溶解状態となっており、良好なミセルは形成されていなかった。
また、市販のインクジェットプリンターを用いて、印字特性を評価した。上質紙上にベタ印字し、乾燥後のソリッド画像部において、シアン色光学反射濃度が1.47であった。また、この画像記録紙を蒸留水に10分浸漬し、画像濃度を評価したが前記光学反射濃度が1.29であり、水による劣化を確認した。
【0044】
比較例4
実施例1において共重合体として、スチレン−アクリル酸のランダム二元共重合体(重量平均分子量18,000、共重合比(重量)=50/50、酸価260、ガラス転移点155℃、流動開始点175℃、分解点210℃、析出開始点pH4.1)を用いる他は、実施例1と同様にしてインクジェット用インク液を得た。
前記インク液の調製過程(ミセル形成工程)で得た共重合体溶液は透明であり、光散乱測定法で調べたところミセル会合体は検出されず、完全溶解状態となっており、良好なミセルは形成されていなかった。
【0045】
実施例2
共重合体(α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸ブチルのブロック共重合体:重量平均分子量9,000、共重合比(重量)=30/15/50、酸価108、ガラス転移点39℃、流動開始点76℃、分解開始点209℃、析出開始点pH6.2)450g、蒸留水1000g及び水酸化テトラメチルアンモニウム(25質量%水溶液)200gを混合しながら溶解を行い、得られた溶液を90℃に加熱しながら、4時間スリーワンモータープロペラ攪拌機を用いて溶解兼コロイド溶液作製工程を行った。そして最終的に液の濃度調整を行い、固形分濃度40質量%コロイド水溶液(平均コロイド径80nm、pH値8.2)を調製した。
その後、このコロイド溶液と銅フタロシアニン系青色超微粒子顔料とを、質量固形分比率が5対5になるように混合し、液の温度が78℃になるように加熱した状態で、高強度ロールミル分散装置を用いて混合分散させて、顔料を含むインキベースにした。このインキベースを希釈し、分散顔料粒子径をレーザー散乱微粒子径測定装置を用いて測定したところ、平均粒子径92nmであった。
これに更に、蒸留水、ジエチレングリコール、水酸化カリウム及び防カビ剤を添加し、1μm径メッシュの加圧濾過工程を経て、pH8.2、顔料濃度7.1質量%、共重合体濃度3.0質量%、エチレングリコール22質量%のシアン色インクジェット用インク液が得られた。
次に、前記インクを用いて、上質紙にオフセット印刷後、120℃の加熱雰囲気中を2秒通過させて乾燥し、インキ膜の硬質化処理工程をおこなった。この処理物を純水に5分間浸漬させる実験を行ったが、画像流れは確認されなかった。又、画像濃度の低下も確認されなかった。
【0046】
実施例3
共重合体(α−メチルスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸ブチルブロック共重合体:重量平均分子量17,000、共重合比(質量)=36/14/50、酸価111、ガラス転移点75℃、流動開始点104℃、分解開始点235℃、析出開始点pH6.2)400g、水酸化カリ11g及び蒸留水1700gを混合しながら溶解を行い、得られた溶液を90℃に加熱しながら、6時間高強度の強制攪拌をスリーワンモータプロペラ攪拌機を用いて行い、溶解兼コロイド溶液調製工程を行った。そして最終的に液の濃度調整を行い、固形分濃度20質量%コロイド水溶液(平均コロイド径32nm、pH値8.1)を得た。
次にこのコロイド溶液とアゾ系赤色超微粒子顔料を固形分比率で8対2で混合し、これにジエチレングリコールを添加後の液の20質量%になるように加え、高強度サンドミル分散装置を用いて、顔料を含む分散液を作製した。この液の分散顔料粒子径をレーザー散乱微粒子径測定装置を用いて測定したところ、平均粒子径46nmであった。
これに更に、蒸留水、ジエチレングリコール、水酸化カリ及び防カビ剤を添加し、1μm径メッシュの加圧濾過工程を経て、pH8.0、顔料濃度8質量%、共重合体濃度2.5質量%、エチレングリコール26質量%のマゼンタ色インクジェット用インク液を得た。
市販のインクジェットプリンターを用いて、印字特性を評価した。上質紙上にベタ印字し、乾燥後のソリッド画像部において、マゼンタ色光学反射濃度が1.61であった。画像部を擦っても顔料の離脱は観察されなかった。また、この画像記録紙を蒸留水に10分浸漬し、画像濃度を評価したが1.59であり、劣化は殆ど確認されなかった。また、画像の滲みやムラを生じることもなく良好な画質特性であった。
次ぎに、市販インクジェトプリンターの印字ヘッド部を取り出し、ヘッド部100個に上記マゼンタ色インキを充填し、3週間、温湿度30℃40%の環境に放置し、一度ワイピング後に印字噴射とその印字位置ずれについて評価したところ、噴射率100%でノズルの詰まりはなく、噴射位置ずれ100μm以上の噴射率3%で、3回ワイピング後の全ノズルの印字位置ずれは50μm以内となり、良好印字となった。
【0047】
実施例4
共重合体(α−メチルスチレン−メタクリル酸−アクリル酸エチルランダム共重合体:重量平均分子量20,000、共重合比(質量)=31/15/54、酸価121、ガラス転移点75℃、流動開始点104℃、分解開始点245℃、析出開始点pH6.2)400g、蒸留水1000g及びテトラメチルアンモニウムヒドロキシド200gを混合しながら溶解を行い、得られた溶液を90℃に加熱しながら、3時間高強度の強制攪拌を、スリーワンモータープロペラ攪拌機と超音波震動機も併用して行い、溶解兼コロイド溶液調製工程を行った。そして最終的に液の濃度調整を行い、固形分濃度27質量%のコロイド水溶液(平均コロイド径68nm、pH値8.1)を調製した。次にこの樹脂溶液とカーボンブラック黒色超微粒子顔料とを固形分比率で4対6で混合し、これにジエチレングリコールを添加後の液の15質量%になるように加え、高強度ロールミル分散装置を用いて、顔料を含む分散液を作製した。この液の分散顔料粒子径をレーザー散乱微粒子径測定装置を用いて測定したところ、平均粒子径76nmであった。
これに更に、蒸留水、ジエチレングリコール、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド及び防カビ剤を添加し、0.7μm径メッシュの加圧濾過工程を経て、pH7.9、顔料濃度5.5質量%、共重合体濃度2.7質量%、エチレングリコール30質量%の黒色インクジェット用インク液を得た。
市販のインクジェットプリンターを用いて、印字特性を評価した。上質紙上にベタ印字し、乾燥後のソリッド画像部において、黒色光学反射濃度が1.91であった。画像部を擦っても顔料の離脱は観察されなかった。また、この画像記録紙を蒸留水に10分浸漬し、前記光学反射濃度を評価したが1.89であり、劣化は殆ど確認されなかった。また、画像の滲みやムラを生じることもなく良好な画質特性であった。
次ぎに、市販インクジェトプリンターの印字ヘッド部を取り出し、ヘッド部100個に上記黒色インキを充填し、3週間、温湿度30℃40%の環境に放置し、一度ワイピング後に印字噴射とその印字位置ずれについて評価したところ、噴射率 99%、噴射位置ずれ100μm以上の噴射率3%で、3回ワイピング後の全ノズルの印字位置ずれは50μm以内となり、印字良好であった。
【0048】
実施例5
実施例1と同様にして調製した固形分濃度が32質量%のコロイド溶液と、銅フタロシアニン顔料を固形分比率で10対5になるように混合し、強制加圧型顔料分散装置を用いて分散させ、最後に蒸留水を加えて、固形分濃度40質量%の印刷インクを得た。
この印刷インクを常温で、2ヶ月間保存したところ、大きな粘度変化は認められなかった。また、このインクをオフセット印刷法を用いて印刷したところ、画像濃度1.51で充分な性能の印刷インクであった。
【0049】
【発明の効果】
本発明の水性インク組成物は、液の粘度を上げることなく、共重合体及び顔料の双方の濃度を高くすることが可能になり、その結果、色再現範囲が広くなり普通紙を用いても高色調画像が得られ、また、他の特性(例えば、インクジェットノズル噴射特性や印刷特性)を損なうことなく、画像が高濃度化され高画質の画像が得られる。また、本発明の水性インク組成物を用いて形成される画像は高透明性で色再現範囲が広い(高色調画像)という特徴を有し、画像被膜は耐久性や耐水性に優れている。
さらに本発明の水性インク組成物では、通常インクに加えるpH緩衝剤の添加が不用となる。この他、本発明の水性インク組成物をインクジェット記録に用いる場合、ノズルからのインク吐出性(ノズル目詰まり等)に関する信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のミセル会合体を含むコロイド溶液と対照のための樹脂溶液の、固形分濃度と粘度との関係を示すグラフである。
【図2】本発明のミセル会合体を含むコロイド溶液にアルカリ剤を添加した場合の、コロイド溶液のpHの変化を示すグラフである。

Claims (19)

  1. 少なくとも、1)アルケン、スチレン及びその誘導体ならびにビニルナフタレン及びその誘導体から選ばれるモノマーの1種以上、イオン解離する酸性基を含有するモノマーの1種以上、及びα,β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステルの1種以上からの各構成単位を含む共重合体のアルカリ中和物、2)顔料、及び3)水性媒体を含む水性インク組成物であって、前記水性インク組成物中において前記共重合体のアルカリ中和物はミセル会合体を形成し、該ミセル会合体の平均径が10nmないし300nmであることを特徴とする水性インク組成物。
  2. 前記共重合体の酸価が60〜160であることを特徴とする請求項1に記載の水性インク組成物。
  3. 前記共重合体の数平均分子量が6,000〜30,000であることを特徴とする請求項1に記載の水性インク組成物。
  4. 前記共重合体の、アルケン、スチレン及びその誘導体ならびにビニルナフタレン及びその誘導体から選ばれるモノマーからの構成単位が15〜55質量%であり、イオン解離する酸性基を含有するモノマーからの構成単位が9〜28質量%であり、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステルからの構成単位が20〜75質量%であることを特徴とする請求項1に記載の水性インク組成物。
  5. 前記顔料一次粒子の数平均粒径が2〜200nmであることを特徴とする請求項1に記載の水性インク組成物。
  6. 前記共重合体の含有量が0.1〜35質量%であることを特徴とする請求項1に記載の水性インク組成物。
  7. 前記顔料の含有量が1〜35質量%であることを特徴とする請求項1に記載の水性インク組成物。
  8. 前記水性インク組成物の固形分含有量が2〜40質量%であることを特徴とする請求項1に記載の水性インク組成物。
  9. 前記ミセル会合体が水性媒体を内包することを特徴とする請求項1に記載の水性インク組成物。
  10. 前記共重合体として、共重合体水溶液のpHを変化させた場合、pH変化量が2.5以内において、共重合体が溶解又はコロイド状態から上澄みを生じて沈殿する共重合体を用いることを特徴とする請求項1に記載の水性インク組成物。
  11. 前記水性インク組成物のpHを、共重合体が溶解状態から上澄みを発生して沈殿を生じるpH点から、0.5ないし4.0高いpH領域に調節することを特徴とする請求項1に記載の水性インク組成物。
  12. 沸点が40℃〜150℃のpH調節剤によりpH調節を行なうことを特徴とする請求項1に記載の水性インク組成物。
  13. 前記pH調節剤の添加量が100ミリモル/Kg〜20モル/Kgであることを特徴とする請求項1に記載の水性インク組成物。
  14. さらに、水に可溶の液体で、沸点80℃以上蒸気圧が100mmHg以下の湿潤剤を5〜50質量%含むことを特徴とする請求項1に記載の水性インク組成物。
  15. さらに、防腐剤および/または防カビ剤を0.05〜4質量%含むことを特徴とする請求項1に記載の水性インク組成物。
  16. アルケン、スチレン及びその誘導体ならびにビニルナフタレン及びその誘導体から選ばれるモノマーの1種以上、イオン解離する酸性基を含有するモノマーの1種以上、及びα,β−エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステルの1種以上からの各構成単位を含む共重合体、アルカリ及び水性媒体を含む液を、前記共重合体のガラス転移点よりも15℃以上高い温度に保持しながら攪拌して、共重合体アルカリ中和物のミセル会合体を作製する工程、前記ミセル会合体を含む液に顔料微粒子を添加分散させる工程、を少なくとも有する水性インク組成物の製造方法。
  17. 前記ミセル会合体作製工程において、アルカリの量が、共重合体の全酸基を中和する量(当量)より2当量%から30当量%少ない量であることを特徴とする請求項16に記載の水性インク組成物の製造方法。
  18. 前記ミセル会合体作製工程において、共重合体としてガラス転移点が10℃から120℃の範囲のものを用い、液の保持温度を前記ガラス転移点より20℃から50℃高い温度とし、かつ超音波振動を与えながら液を攪拌することを特徴とする請求項16に記載の水性インク組成物の製造方法。
  19. 請求項1に記載の水性インク組成物を用いて記録媒体の上に画像形成をした後、記録媒体の画像形成面に、50℃〜150℃の温度での加熱処理を行なう画像形成方法。
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