JPWO2011136000A1 - インクジェットインク及びインクジェット記録方法 - Google Patents

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Abstract

本発明の目的は非吸収性記録媒体に耐擦性や接着性が高く、高画質な画像を形成でき、高射出性とインク保存性に優れたインクジェットインクとインクジェット記録方法を提供することである。このインクジェットインクは水、顔料、水溶性樹脂、水溶性有機溶剤及び界面活性剤を含有し、該水溶性樹脂の酸価が50〜130mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)が30〜100℃、重量平均分子量(Mw)が2万〜8万で、かつメタクリル酸メチル、アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステル、及び酸モノマーを含むモノマーから合成される共重合樹脂であって、かつ前記メタクリル酸メチルとアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの総質量が、共重合樹脂を構成する全モノマー質量に対して80〜95%である水溶性樹脂を含み、界面活性剤がフッ素系界面活性剤とポリオキシエチレンアルキルエーテル類を含む事を特徴とする。

Description

本発明は水性インクジェットインク及びインクジェット記録方法に関し、特に非吸収性記録媒体(以下記録メディアともいう)に記録可能なインクジェットインク及びインクジェット記録方法に関する。
産業用途のインクジェットインクとして塩ビシートなどの非吸収性の記録メディアに直接印字できるインクが開発されている。これらのインクとしては、有機溶剤をベヒクルとした溶剤インクや、重合性モノマーを主成分とするUVインクが挙げられる。溶剤インクはその溶剤を乾燥させて大気中に蒸発させるため、近年社会問題となっているVOCが多いという課題がある。また作業者にたいしても、臭気や安全上の影響が懸念され十分な換気等の設備対応が必要である。UVインクは印字後すぐに硬化させるのでVOCはゼロに近いが、使用するモノマーによっては皮膚感作性を有するものが多く問題であり、また、高価なUV光源をプリンターに組み込むという制約から使用する分野に制限がある。さらに、光沢系のシート等に印字した場合、インクの付着した部分で著しく光沢感が損なわれてしまい、高画質の画像が得られなかった。
このような背景の中で、環境負荷の少ない、従来からホーム等でも広く使用されている水を主成分とする水系インクで直接、非吸水性記録メディアにも印字できるインクの開発が行われている。
特許文献1には、グリコールおよびグリコールエーテルよりなる群から選択される水と相溶性の溶媒を含有する水系インクが提案されており、さらに疎水性の主鎖と、非イオン性で親水性の側鎖とを有し、水と水溶性有機溶剤を含有する水性ビヒクルには溶解するが、水には不溶性であるグラフトコポリマーバインダーを含有するインクが提案されている。しかしながら、本発明者らが検討した結果、特許文献1の方法では、非吸収性記録メディア上で隣接して着弾したインクドットが合一するインク混じりがおこり、均一な中間濃度のベタ画像部分でドットが寄り集まってまだら状の模様が発生したり、多色印刷時にカラーブリード(色境界部分でインクが混ざり合って不鮮明になる現象)が発生するなど、画質が不十分であった。また、得られた画像の耐久性も不十分であった。さらに特許文献1の方法ではインクジェットヘッドを連続使用したときに射出不良が発生する。出射性を回復するために、一般的にはある頻度でのメンテナンスがなされるが、そのメンテナンスでの回復性も満足いくものではなかった。
特許文献2にはインクにスチレン−アクリル酸共重合高分子を添加することが記載されている。しかし、スチレンを含有する共重合性高分子は、画像の光沢感が高い特性がある反面、疎水性基材などに直接プリントした画像は耐擦性や接着性が悪い。
市販の水溶性樹脂としては、スチレン及びα−メチルスチレンとアクリル酸などの酸モノマーとの共重合体が市販されている。これらはインクジェットインクに用いた場合、高い光沢が得られる反面、耐擦性、接着性が非常に悪い。この理由は明確には判っていないがスチレンの基材密着性が悪い、あるいは塗膜が硬すぎ柔軟性に欠けるため軟質塩ビなどが擦りで変形するのに追随できず塗膜が割れ、はがれるためと推定している。
一方、スチレンの替わりにメタクリル酸メチルを用い、スチレン成分を含まないオールアクリルタイプというものも市販されている。しかし、スチレンを含まないこれらのタイプは、画像光沢が低下しやすいという課題がある。
スチレンを含まない水溶性アクリル樹脂をインクに添加することが、特許文献3に開示されている。顔料分散体として樹脂被覆顔料を用いることにより、塩化ビニル基材に直接プリントした場合でもある程度の高い画像耐久性(擦過性)が得られている。しかし、市場では更に強い摩擦に対する耐性が求められており、そのような強い摩擦にはまだ充分耐えられないのが現状である。
さらにこれらのインクを長期間保存すると、インクの表面張力が保存前よりも上昇する現象がいくつかのインクでみられた。このようなインクで長期間保存後に疎水性基材にプリントするとインクがはじいたり、ドットが縮小して画像に白い抜けが発生するといった課題があることもわかった。
特開2000−44858号公報 特開2006−249393号公報 特開2008−208153号公報
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、非吸収性記録媒体に印字した画像が高い耐擦性や接着性を有し、プリント画像ではじきや白ぬけがない高画質な画像を形成するとともに、高い射出性とインク保存性に優れたインクジェットインクとそれを用いたインクジェット記録方法を提供することにある。
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
1.少なくとも水と顔料、水溶性樹脂、水溶性有機溶剤、および界面活性剤を含有する水性の非吸収性記録媒体用インクジェットインクにおいて、該水溶性樹脂が、酸価が50mgKOH/g以上、130mgKOH/g以下であり、ガラス転移温度(Tg)が30℃以上、100℃以下であり、かつ重量平均分子量(Mw)が2万以上、8万以下であり、モノマーとして少なくともメタクリル酸メチル、アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステル、及び酸モノマーを含むモノマーから合成される共重合樹脂であって、かつ前記メタクリル酸メチルとアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの総質量が、共重合樹脂を構成する全モノマー質量に対して80%以上、95%以下である水溶性樹脂を含み、界面活性剤が少なくともフッ素系界面活性剤とポリオキシエチレンアルキルエーテル類を含むことを特徴とするインクジェットインク。
2.前記アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数が2以上、8以下であり、前記酸モノマーがアクリル酸またはメタクリル酸であることを特徴とする前記1に記載のインクジェットインク。
3.前記メタクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数が2以上、8以下であり、前記酸モノマーがアクリル酸またはメタクリル酸であることを特徴とする前記1に記載のインクジェットインク。
4.前記顔料に対する前記共重合樹脂の質量比が1倍以上、20倍以下であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
5.前記フッ素系界面活性剤が分子内に直鎖または分岐のパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基を有する界面活性剤であって、該パーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基の主鎖の炭素数が3以上、6以下であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
6.沸点が100℃以上、200℃以下のアミン類を前記インクジェットインクに対して0.1質量%以上、1質量%以下含有することを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
7.前記1〜6のいずれか1項に記載のインクジェットインクを用いて、35℃以上、60℃以下に加熱された非吸収性記録媒体にプリントし、その後プリント物を50℃以上、90℃以下で加熱乾燥することを特徴とするインクジェット記録方法。
本発明により、非吸収性記録媒体に印字した画像が高い耐擦性や接着性を有し、プリント画像ではじきや白ぬけがない高画質な画像を形成するとともに、高い射出性とインク保存性に優れたインクジェットインクとそれを用いたインクジェット記録方法を提供することができた。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
本発明者らは、水系顔料インクについて、サイン用途に用いられる塩ビシートをはじめ種々の樹脂基材や、印刷本紙などの吸収が遅い紙支持体に対しても耐擦性や接着性の高い画像を形成するとともに、プリント画像ではじきや白ぬけがない高画質な画像を形成し、射出性とインク保存性を向上することを目的に検討を重ねた。
(非吸収性記録媒体)
前記非吸収性記録媒体は塩ビ、PET、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート等の水をほとんど吸収しない疎水性樹脂からなる記録媒体、またはコート紙等の印刷用本紙のようにある程度水を吸収するが、吸収速度が遅く、常温常湿環境下の通常のインクジェット印刷の印刷工程内では水系インクが乾かずに支障をきたす記録媒体である。
(共重合樹脂)
前記共重合樹脂は、着色剤である顔料のバインダー(定着樹脂)として機能し、塩ビなどの非吸収性記録媒体との接着性を有し、かつ塗膜の耐擦性を向上させる機能がある。
また、該共重合樹脂には光沢が高く、光学濃度も高い画像を形成させる機能も必要とされ、このため共該重合樹脂自体が塗膜中で高い透明性を持ち、顔料、あるいは顔料分散樹脂との相溶性があることも必要である。
このように塩ビシートをはじめ種々の前記非吸収性記録媒体に対しても高画質かつ高耐久性の印字画像を得るためにはインクの非吸収性記録媒体に対する濡れ性が必要であり、非吸収性記録媒体に対してよく濡れるインクほど画質や画像耐久性が高くなる。したがって、インクに添加する樹脂としては、インクの非吸収性記録媒体に対する濡れ性を悪化させないことが好ましい。
また、インクに樹脂を添加することで射出特性を劣化させてはない。
インクの射出性劣化の機構としてはいくつかあるが、インクジェットヘッドの吐出ノズル近傍にインク滴やゴミが付着すると、ノズル口が汚れ、吐出するインク滴の方向が曲がったり、吐出量が低下したり、吐出しなくなる等のトラブルがあげられる。また、付着したインクがノズル口全面を覆うと、インク滴が吐出不能になる。このようなトラブルを回避するために、ノズル口の周囲をフッ素系の樹脂でコーティングするなどの撥インク処理をして、吐出ノズル近傍にインク滴が付着することを防ぐことが行われている。
したがって、インクに添加される樹脂としては、ノズル口の周囲の撥インク処理に対して、インクを濡らさないものであることが射出性が良好となる条件の一つである。
以上のようにインクに樹脂を添加することは多くの目的に対して十分効果が出るようにする必要があり、特に非吸収性記録媒体に対しては濡れやすく、ノズル口の周囲の撥インク処理に対しては濡れないという相反する機能を有する樹脂を設計、選択する必要がある。
本発明者らは、種々の樹脂について詳細に検討した結果、特に低酸価のアクリル酸アルキルエステルまたはメタクリルアルキルエステル系の共重合樹脂で、メタクリル酸メチルとアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの総質量が、共重合樹脂を構成する全モノマー質量に対して80%以上、95%以下の樹脂を添加したインクは耐擦性が良いことがわかった。
アクリル酸エステルやメタクリル酸エステルをモノマーとして共重合されるアクリル系の樹脂は、周知のごとく非常に多種類のモノマーから自由に選択、設計することができ、重合しやすく、また低コストで製造できるため本発明に適している。特に、先に述べたように、インクに添加する際に求められる多数の要求にこたえるには設計自由度の大きいアクリル系の樹脂が適している。
市販のアクリル系の樹脂には、水分散型のアクリルエマルジョンと水溶性樹脂がある。エマルジョンタイプは一般的に分子量が水溶性のものより大きく樹脂が作る皮膜強度を高めやすいメリットがあるが、一方で乾燥した皮膜は水に溶解することはない。よって、ひとたびヘッド上などで乾燥した場合、溶解除去することはできず物理的にこすってとることが必要であり、メンテナンスが困難であるものが多い。したがって前記共重合樹脂は水溶性樹脂が用いられる。
水溶性樹脂とは、後述する中和を行った後の前記共重合樹脂が、25℃の水に2質量%を超えて溶解すればよく、25℃の水に5%以上溶解することが好ましく、10%以上溶解することが更に好ましい。
本発明の共重合樹脂は酸価が50mgKOH/g以上、130mgKOH/g以下である。
本発明者らは種々の水溶性樹脂について詳細に検討したところ、該共重合樹脂の酸価と耐擦性や接着性の間には密接な関係があり、該共重合樹脂の酸価が低いほど耐擦性や接着性が向上することがわかった。このことについて本発明者らは、該共重合樹脂の酸価が高いと樹脂の親水性が高くなり、疎水性の基材との親和性が低くなって樹脂と基材が接着しにくくなり、逆に酸価が低いと樹脂が疎水的になり、疎水性の基材との親和性が高まって樹脂と基材とが良好に接着するためと考えている。
また、該共重合樹脂の酸価は樹脂の水溶性やインクの射出性、メンテナンス性とも関係があり、酸価が高いと樹脂の水溶性が高くなって溶解しやすくなり、インクがヘッド上などで乾燥したときに溶解除去しやすくなって物理的にこすってとる力を小さく出来、メンテナンスが容易となる。逆に、該共重合樹脂の酸価は光沢にも影響を与え、酸価が低いと光沢が向上する傾向がある。
以上のことから、前記共重合樹脂の酸価は50mgKOH/g以上、130mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは50mgKOH/g以上、100mgKOH/g以下である。
酸価は、樹脂1g中に存在する酸を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数を示し、いわゆる分子端末等に存在する酸性極性基の量を示す。酸価が高いほどカルボキシル基などの酸性基が多い。
酸価は、JISのK0070に規定された方法で測定することができる。
また、前記共重合樹脂はガラス転移温度(Tg)が、30℃以上、100℃以下である。Tgが30℃以上では耐擦性が高く、またブロッキングも発生しない。また、Tgが100℃以下では耐擦性が良好である。これは乾燥後の皮膜が室温で、脆くならずに柔軟性を保っているためと考えている。なお、該共重合樹脂のTgは共重合されるモノマーの種類と組成比で調整できる。
前記共重合樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2万以上、8万以下である。重量平均分子量が2万以上であれば耐擦性が良好であり、8万以下であればインクの射出性やメンテナンス性が優れているためである。更に好ましい該共重合樹脂の重量平均分子量は2万5千以上、7万以下である。
前記共重合樹脂の重量平均分子量は重合時のモノマー濃度や開始剤の量などの反応条件で調整することができ、例えば、モノマー濃度を高くすることにより重量平均分子量を大きくしたり、開始剤の量を増やすことにより重量平均分子量を小さくすることができる。
前記共重合樹脂を構成する共重合させるモノマーとして、少なくともメタクリル酸メチル、アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステル、及び酸モノマーを含むことが、画像の耐擦性や接着性を向上させる上で必要である。
本発明者らの検討の結果、アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数が多く、酸モノマーがアクリル酸またはメタクリル酸であること、またメタクリル酸メチルとアクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルの共重合比率を高くすることにより、水溶性樹脂の非吸収性記録媒体に対する耐擦性や接着性が高くなる傾向があることがわかった。これはおそらく水溶性樹脂の疎水性が高いものほど非吸収性記録媒体に対する耐擦性や接着性が高まるためと考えている。
一方でインクジェットヘッドの撥インク処理に対する撥インク性は、アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数が少ないほうが良い傾向があり、アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数が8以下であると、撥インク性に対する劣化の影響が小さくて好ましい。
したがって耐擦性や接着性と撥インク性を両立させるには、メタクリル酸メチルとアルキル基の炭素数が2〜8のアクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルを撥インク性が良好な量で共重合することが好ましい。
前記アルキル基の炭素数が2〜8のアクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルの具体例としては、アクリル酸(メタクリル酸)エチル、アクリル酸(メタクリル酸)n−ブチル、アクリル酸(メタクリル酸)i−ブチル、アクリル酸(メタクリル酸)t−ブチル、アクリル酸(メタクリル酸)n−ヘキシル、アクリル酸(メタクリル酸)シクロヘキシル、アクリル酸(メタクリル酸)オクチル、アクリル酸(メタクリル酸)2−エチルヘキシル等が挙げられる。
本発明に係る共重合樹脂の全モノマーに対する、アルキル基の炭素数が2〜8のアクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルの共重合比率は、その質量比が5質量%以上であると耐擦性や接着性の点で好ましく、50質量%以下であるとインクジェットヘッドの撥インク処理に対する撥インク性の点で好ましい。より好ましくは5質量%以上、40質量%以下である。
メタクリル酸メチルは該共重合樹脂の原料となる全モノマーに対して15〜85質量%添加されることが好ましく、40〜80質量%添加されることが更に好ましい。
さらにメタクリル酸メチルとアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの総質量が、共重合樹脂を構成する全モノマー質量に対して80%以上、95%以下であることが耐擦性や接着性の点で必要である。
酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸ハーフエステルなどが挙げられる。なかでも、アクリル酸、メタクリル酸は射出安定性が高く、またメンテナンス性も良好で好ましい。
前記共重合樹脂で共重合されるモノマーとしては、前記のメタクリル酸メチル、アクリル酸アルキルエステル類やメタクリル酸アルキルエステル類、酸モノマー以外に、耐擦性や撥インク性、メンテナンス性を損なわない限りスチレンなど他のモノマーを含んでもかまわない。
前記共重合樹脂は、顔料を分散する前に添加されてもよいし、分散した後で添加されても良いが、分散した後で添加されることが好ましい。顔料に対する前記共重合樹脂の質量比は1倍以上、20倍以下であることが好ましい。
前記共重合樹脂は、インク中に、1質量%〜20質量%添加することが好ましい。更に好ましくは、3質量%から15質量%である。
前記共重合樹脂は、顔料固形分に対する質量比が1倍以上であれば良好な画像の耐擦性や接着性、光沢が得られ、質量比が20倍以下であればインクの射出性やメンテナンス性が損なわれないため好ましい。より好ましくは質量比が1倍以上、10倍以下である。
本発明のインクジェットインクには前記共重合樹脂以外の樹脂を併せて使用できる。インクに含有される全樹脂に対する該共重合樹脂の好ましい含有率は50質量%以上、100質量%以下である。
(共重合樹脂の中和)
前記共重合樹脂は、酸モノマーに相当する部分の全部あるいは一部を塩基で中和して用いることが好ましい。中和塩基としては、アルカリ金属含有塩基(例えば、NaOH、KOH等)、アミン類(例えば、アルカノールアミン、アルキルアミン等)又はアンモニアを用いることが好ましい。
特に、沸点が100℃以上、200℃以下のアミン類で中和することは、該共重合樹脂をインクに溶解したり、画像耐久性を向上させる上で好ましく、N,N−ジメチルアミノエタノール、2−アミノ−2−メチルプロパノールなどが射出安定性上特に好ましい。
中和塩基の添加量は、少なすぎると該共重合樹脂の中和による効果が得られず、多すぎると画像の耐水性や変色、臭気などの課題があるため、前記共重合樹脂の酸基の化学当量に対し、0.8倍以上3倍未満の化学当量が好ましく、インクに対しては0.1質量%以上、1質量%以下含有することが好ましい。
(界面活性剤)
次に、界面活性剤について説明する。
本発明において、界面活性剤を添加してインクの表面張力を低くコントロールすることで、塩ビシートをはじめ種々の疎水性樹脂からなる記録媒体や印刷本紙などの吸収が遅い記録媒体に対して、印字面のはじきがなく、インク混じりを抑えることができ、高画質な印字画像が得られる。
ここで表面張力とは、液体においてその表面積をできるだけ小さくしようと作用する力で、この表面張力をコントロールすることで液体の固体への濡れ性を制御でき、表面張力が低いほど疎水性の基材に濡れやすくなる。なお表面張力は、液体がほとんど流動していない状態での表面張力である静的表面張力と、界面が流動している状態での表面張力である動的表面張力とがあり、どちらもインクジェットで画像を形成する上で重要である。
インクの静的表面張力はインクを印字して画像を形成したときに基材に対するインクの濡れの指標となり、疎水的な基材に対してインクの静的表面張力が高いと印字後数秒以内にインクがはじいてしまい、画質が低下する。一方で動的表面張力はインクの液滴が基材に着弾した瞬間の広がりに影響し、動的表面張力が高いとインクの液滴が広がらず、着弾して形成されるドットが小さくなり、ベタ印字部分の画像が埋まらずに白い抜けが発生する。
本発明の定着樹脂を使ったインクにおいては、界面活性剤の種類によってはインクを長期間保存するとインクの静的表面張力が上昇することがあり、保存後のインクを使って疎水性な記録媒体に印字すると印字面にはじきなどが発生して画質が低下することがあった。
この現象について本発明者らは次のように考えている。すなわち、本発明の定着樹脂で特に水溶性の定着樹脂を使用した場合、樹脂は酸価が低く水溶性が低下している上に疎水的なアルキル基を有している。この定着樹脂が水を主成分とするインク中に溶解しているところに界面活性剤が加わったとき、疎水的な定着樹脂に対して通常は界面活性剤が吸着と脱着を繰り返していると思われる。このときインクを長期間保存すると、界面活性剤は高分子である定着樹脂に徐々にからめとられて脱着できなくなってしまい、有効に働くことができる界面活性剤の量が減ってしまって、表面張力が上昇してしまうと考えられる。
このインクの長期間保存後に静的表面張力が上昇する現象は、本発明の定着樹脂を使ったインクの場合に顕著に起こる現象であって、通常の酸価が大きく水溶性が高い水溶性樹脂では樹脂そのものが親水的であるため界面活性剤が吸着せず、長期間保存しても静的表面張力の上昇はほとんど起こらない。
この現象に対して本発明者らは、界面活性剤としてフッ素系界面活性剤を使うと、インクを長期間保存しても静的表面張力の変動がなくなることを見出した。
これについては次のように考えている。すなわち、界面活性剤は本発明の疎水的な定着樹脂にからめとられてしまうのだが、界面活性剤の分子中の疎水的な部分の長さが長いものほど高分子に絡まりやすく、保存後の静的表面張力の低下が大きくなると考えられる。これに対してフッ素系の界面活性剤は、フッ素の強力な疎水性作用を利用した界面活性剤であり、分子中のフッ素を含む疎水的な部分の長さが短くても十分に界面活性作用を発現するため、他の界面活性剤よりも分子中の疎水的な部分の長さが短い。そのため他の界面活性剤よりも定着樹脂にからめとられにくく、長期間保存をしても静的表面張力の低下が起こりにくいものと考えている。
しかしながら、界面活性剤としてフッ素系界面活性剤だけを使用するとインクジェットの液滴から形成されるドットが他の界面活性剤よりも小さくなり、画像に白い抜けが発生することがあった。これはフッ素系界面活性剤は静的表面張力を下げる作用はおおきいものの、動的表面張力を下げる作用があまりないためである。
そこで、フッ素系界面活性剤にさらに動的表面張力を低下させるポリオキシエチレンアルキルエーテル類の界面活性剤を併用することで、本発明の定着樹脂を使ったインクでも長期間保存しても静的表面張力の変動がなく、印字後のはじきを抑制でき、さらにドットが縮小して画像に白い抜けが発生したりすることもなくなり、高画質な印字画像の形成を長期間にわたり維持できることを見出したものである。
本発明で使用されるフッ素系界面活性剤について説明する。
フッ素系界面活性剤は通常の界面活性剤の疎水性基の炭素に結合した水素の代わりに、その一部または全部をフッ素で置換したものを意味する。この内、分子内に直鎖または分岐のパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基を有するものが好ましい。
好ましいフッ素系界面活性剤として下記一般式(1)のものがあげられる。
式中、Rは直鎖または分岐のパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基を表し、Xは2価の連結器、例えばエチレン基、フェニレン基、酸素原子などを表し、Yは水溶性基、例えばカルボン酸塩、スルホン酸塩などのアニオン性基や4級アンモニウム塩などのカチオン性基、またはポリエチレンオキサイド基のようなノニオン性基を表し、nは0または1の整数を表す。
さらにフッ素系界面活性剤において、該パーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基の主鎖の炭素数が3以上、6以下であると、定着樹脂に界面活性剤がからめとられにくくなるため、長期間の保存による静的表面張力の上昇がより抑制できてさらに好ましい。
該フッ素系の界面活性剤の内、ある種のものはDIC社からメガファック(Megafac)Fなる商品名で、旭硝子社からサーフロン(Surflon)なる商品名で、ミネソタ・マイニング・アンド・マニファクチュアリング・カンパニー社からフルオラッド(Fluorad)FCなる商品名で、インペリアル・ケミカル・インダストリー社からモンフロール(Monflor)なる商品名で、イー・アイ・デュポン・ネメラス・アンド・カンパニー社からゾニルス(Zonyls)なる商品名で、またファルベベルケ・ヘキスト社からリコベット(Licowet)VPFなる商品名で、またNEOS社からフタージェントなる商品名でそれぞれ市販されている。
次に本発明で使用されるポリオキシエチレンアルキルエーテル類の界面活性剤について説明する。
本発明においてはポリオキシエチレンアルキルエーテル類の界面活性剤はいかなるものも使用できるが、好ましいものとして下記一般式(2)のものがあげられる。
式中、Rは直鎖または分岐のアルキル基を表し、Xは2価の連結器、例えばエチレン基、フェニレン基、酸素原子などを表し、mは0または1の整数を表し、kは10〜30の整数を表す。
さらにポリオキシエチレンアルキルエーテル類として、一般式(2)のRの炭素数が4以上9以下の直鎖または分岐のアルキル基であることが定着樹脂に界面活性剤がからめとられにくくなるため好ましく、分岐のアルキル基がより好ましい。
該ポリオキシエチレンアルキルエーテル類の界面活性剤は各社から多数市販されているが、例えばビックケミー社からBYK−DYNWET800なる商品名で市販されている。
本発明のインクジェットインクには、前記界面活性剤以外も加えて使用することができ、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、アセチレングリコール類などのノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。
(顔料)
本発明に使用できる顔料としては、従来公知の有機及び無機顔料が使用できる。例えばアゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料や、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサンジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロニ顔料等の多環式顔料や、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキや、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料、カーボンブラック等の無機顔料が挙げられる。
好ましい具体的な有機顔料を以下に例示する。
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
グリーンまたはシアン用の顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
(顔料分散体)
上記の顔料は、水系インク中で安定な分散状態を保つために、各種の加工がされ、顔料分散体が作製される。
該分散体は水系で安定に分散できるものであればよく、高分子の分散樹脂により分散した顔料分散体、水不溶性樹脂で被覆されたカプセル顔料、顔料表面を修飾し分散樹脂を用いなくても分散可能な自己分散顔料等から選択することができる。
また顔料の分散樹脂として、前記本発明に係る共重合樹脂を用いて分散しても良い。
顔料の分散方法としては、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等各種を用いることができる。
前記顔料分散体の粗粒分を除去する目的で遠心分離装置を使用すること又はフィルターを使用することも好ましく用いられる。
また、顔料として水不溶性樹脂で被覆されたカプセル顔料を用いても良い。水不溶性樹脂とは、弱酸性ないし弱塩基性の範囲の水に対して不溶な樹脂であり、好ましくは、pH4〜10の水溶液に対する溶解度が2質量%以下の樹脂である。
該水不溶性樹脂として好ましくは、アクリル系、スチレン−アクリル系、アクリロニトリル−アクリル系、酢酸ビニル系、酢酸ビニル−アクリル系、酢酸ビニル−塩化ビニル系、ポリウレタン系、シリコーン−アクリル系、アクリルシリコン系、ポリエステル系、エポキシ系の各樹脂を挙げることができる。
前記分散樹脂または前記水不溶性樹脂の分子量として好ましくは、平均分子量で、3000から500000のものを用いることができ、更に好ましくは、7000〜200000のものを用いることができる。
該分散樹脂または該水不溶性樹脂のTgは、好ましくは−30℃〜100℃程度のものを用いることができ、更に好ましくは−10℃〜80℃程度のものを用いることができる。
顔料と、該分散樹脂または該水不溶性樹脂との質量比率は、好ましくは顔料/樹脂比で100/150以上、100/30以下の範囲で選択することができる。顔料/樹脂比が100/150未満であると、顔料に吸着していない分散樹脂または顔料を被覆していない水不溶性樹脂がインク中に多く存在するようになり、インクの射出安定性や保存安定性を劣化させることがある。特に画像耐久性と射出安定性やインク保存性が良好なのは100/100以上、100/40以下の範囲である。
前記水不溶性樹脂で被服された顔料粒子の平均粒子径は、80ないし150nm程度がインク保存安定性、発色性の観点から好ましい。
顔料を水不溶性樹脂で被覆する方法としては公知の種々の方法を用いることができるが、好ましくは、水不溶性樹脂をメチルエチルケトンなどの有機溶剤に溶解し、さらに塩基にて樹脂中の酸性基を部分的、もしくは完全に中和後、顔料およびイオン交換水を添加し、分散したのち、有機溶剤を除去、必要に応じて加水し調整する製造方法が好ましい。または、顔料を重合性界面活性剤を用いて分散し、そこへモノマーを供給し、重合しながら被覆する方法も好ましい。
また、自己分散顔料としては表面処理済みの市販品を用いることもでき、好ましい自己分散顔料として、例えば、CABO−JET200、CABO−JET300(キャボット社製)、ボンジェットCW1(オリエント化学工業(株)製)等を挙げることができる。
(水溶性有機溶剤)
本発明のインクには水溶性有機溶剤が含まれるが、水溶性有機溶剤としては低表面張力の水溶性有機溶剤であることが好ましい。
低表面張力の水溶性有機溶剤を添加することで、軟質塩ビシートをはじめ種々の疎水性樹脂からなる記録媒体や、印刷本紙などの吸収が遅い紙支持体に対しても、インク混じりをいっそう抑えることができ、高画質な印字画像を得られるからである。低表面張力の水溶性有機溶剤は、塩ビなどに対してインクの濡れ性を改善する作用があるほか、前記共重合樹脂を用いた場合、インク中の水分の乾燥にともなうインクの増粘性を向上する作用があるためと考えられる。
特に、グリコールエーテル類もしくは1,2−アルカンジオール類を添加することは好ましく、具体的には下記の低表面張力の水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。
グリコールエーテル類としてはエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
また、1,2−アルカンジオール類としては、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール等が挙げられる。
また、塩ビなどの記録メディアを溶解もしくは軟化あるいは膨潤しうる溶剤を添加することは好ましい。塩ビと該共重合樹脂の接着性がいっそう向上し、画像の接着性、耐擦性が向上するため好ましい。
このような溶剤としては、窒素、もしくはイオウ原子を含む環状溶剤、環状エステル溶剤、乳酸エステル、アルキレングリコールジエーテル、アルキレングリコールモノエーテルモノエステル及びジメチルスルフォキシドが挙げられる。
該窒素原子を含有する環状溶剤の好ましい具体例としては、環状アミド化合物が好ましく、5〜8員環が好ましく、たとえば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ε−カプロラクタム、メチルカプロラクタム、2−アザシクロオクタノン等が挙げられる。
該イオウ原子を含有する環状溶剤の好ましい具体例としては、環状の5〜7員環が好ましく、たとえば、スルフォラン等が挙げられる。
該環状エステル溶剤の好ましい具体例としては、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトンが、乳酸エステルとしては乳酸ブチル、乳酸エチルなどが挙げられる。
該アルキレングリコールジエーテルの好ましい具体例としては、ジエチレングリコールジエチルエーテルが挙げられる。
該アルキレングリコールモノエーテルモノエステルの好ましい具体例としては、ジエチレングリコールモノエチルモノアセテートが挙げられる。
その他に、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、等が挙げられる。
(記録媒体の加熱)
本発明の水系インクを用いることで、前記非吸収性記録媒体にインク混じりのない高画質な印字ができ、光沢が高く、耐擦性や接着性の高い画像を形成することができる。
よりいっそう高画質で耐擦性や接着性の高い画像を形成するため、及びより高速の印字条件にも対応できるようにするために、記録媒体を35℃以上、60℃以下の温度に加熱しながら印字することが好ましい。35℃以上では加熱の効果が十分発揮され、60℃以下では、塩ビの記録媒体の平面性が良好であり、また、ヘッドでのインクが乾燥しにくく、射出安定性が良いためである。
また、加熱しながら印字した後、プリントを50℃以上、90℃以下で加熱乾燥することを併用することは、印字後の加熱で乾燥を促進するとともに、前記共重合樹脂と該非吸収性記録媒体との接着性を高めるためいっそう好ましい。これは、非吸収性媒体に記録するときに起こりやすい現象である。すなわち、インク中に含まれる水よりも比較的高沸点の有機溶剤が乾燥しきれずに印字面の表面に残存することがあり、残存溶剤が印字表面で定着樹脂とともに存在することで、定着樹脂の成膜、硬化が不十分となって耐擦性や接着性が低下することがあり、印字後にさらに加熱乾燥をすることで、非吸収性記録媒体の表面にある残存溶媒が除去され、耐擦性、接着性をさらに向上させることができる。
この現象は紙のような吸収性の記録媒体では残存溶剤が記録媒体中に吸収され、印字表面には存在しないために起こらない現象である。
加熱乾燥の温度としては50℃以上であれば残存溶媒の除去が促進されるため好ましく、90℃以下であれば記録媒体の熱による変形などを抑制できるため好ましい。
具体的な印字後の加熱乾燥方法としては、印字後の記録媒体を裏面からヒーターで加熱する方法や、印字面側に温風をあてたり、ハロゲンランプなどを使った赤外線などの放射熱を利用する方法などで記録媒体を加熱して乾燥する方法があげられる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
実施例1
(共重合樹脂の合成)
(本発明の共重合樹脂P−1の合成)
滴下ロート、還流管、窒素導入管、温度計および攪拌装置を備えたフラスコに2−プロパノールを186部入れて窒素バブリングしながら加熱還流した。そこへメタクリル酸メチル76部とアクリル酸2−エチルヘキシル13部、メタクリル酸11部の混合液に開始剤(AIBN)0.5部を溶解させたモノマー溶液を滴下ロートより2時間かけて滴下した。滴下後さらに5時間加熱還流を続けた後に放冷し、減圧下で2−プロパノールを留去して共重合樹脂P−1を得た。
(共重合樹脂P−2〜P−21の合成)
共重合樹脂P−1の合成と同様にして、表1に示すモノマー組成比にて共重合樹脂P−2〜P−21を合成した。なお、共重合樹脂の重量平均分子量(Mw)は開始剤の量を変えることで調整した。
なお、前記共重合樹脂のTg、および重量平均分子量(Mw)について、下記の方法で測定した。
(Tgの測定)
共重合樹脂のTgの測定はDSCにて窒素気流中で行った(DSC−7示差走査カロリメータ(パーキンエルマー社製)および、TAC7/DX熱分析装置コントローラ(パーキンエルマー社製を使用)。DSCの測定条件は−30〜100℃あるいは0〜130℃を10℃/minで昇温し、冷却後、再度昇温したときに測定した。再度昇温したときの測定値からTgを求めた。
(重量平均分子量の測定)
共重合樹脂の重量平均分子量(Mw)はGPCで測定した。測定条件を以下に示す。
カラム:東ソー製TSKgel G40000+2500+2000HXL、40℃
溶離液:THF 1.0(ml/min)
注入量:100μl
検 出:RI
較正曲線:標準ポリスチレン。
(共重合樹脂の水溶液の作製)
前記共重合樹脂P−1の20部にイオン交換水67.8部、中和塩基としてN,N−ジメチルアミノエタノール12.2部を加え、70℃にて加熱攪拌して樹脂を溶解し、樹脂固形分が20%の共重合樹脂P−1の水溶液を得た。なお、N,N−ジメチルアミノエタノールの量は共重合樹脂P−1の酸基の化学当量数に対して1.05倍の化学当量数相当となる量である。
続いて、共重合樹脂P−1に代わってP−2〜P−21を用い、N,N−ジメチルアミノエタノールに代わって表2の中和塩基を用いた他は、上記共重合樹脂P−1の水溶液と同様に、共重合樹脂P−2〜P−21の水溶液を作製した。
なお、共重合樹脂P−21は樹脂がN,N−ジメチルアミノエタノール水溶液、及び25℃の水で2質量%にも溶解せず、溶液が白濁してしまったため、以後のインク作成には用いることができなかった。
上記共重合樹脂のTg(℃)、酸価(mgKOH/g)、重量平均分子量(Mw)を表1に示す。なお、表1ではモノマーを略称で記載したが、モノマーの略称と化合物名の関係は下記の通りである。
MMA:メタクリル酸メチル
EA:アクリル酸エチル
BA:アクリル酸n−ブチル
HA:アクリル酸n−ヘキシル
EHA:アクリル酸2−エチルヘキシル
LA:アクリル酸ラウリル
EMA:メタクリル酸エチル
BMA:メタクリル酸n−ブチル
HMA:メタクリル酸n−ヘキシル
EHMA:メタクリル酸2−エチルヘキシル
SMA:メタクリル酸ステアリル
MAA:メタクリル酸
AA:アクリル酸
St:スチレン
(シアン顔料分散体の作製)
顔料分散剤としてDISPERBYK−190(ビックケミー社製)15部をイオン交換水60部に加え、ここへ2−ピロリジノン10部を混合した。この溶液にC.I.ピグメントブルー15:3を15部添加し、プレミックスした後、0.5mmジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、顔料固形分15%のシアン顔料分散体を得た。
(インクC−1の作製)
前記共重合樹脂P−1の水溶液30部にイオン交換水23.5部、ジプロピレングリコールプロピルエーテル5部、ジプロピレングリコールメチルエーテル10部、2−ピロリジノン10部、フッ素系界面活性剤の化合物(F−1)を0.5部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類の化合物(O−1)を1部加えて攪拌した。ついでここへ前記シアン顔料分散体を20部加えて攪拌した後、1μmのフィルターによりろ過してシアンインクC−1を得た。
(インクC−2〜C−25の作製)
インクC−1において、共重合樹脂P−1の水溶液、共重合樹脂の含有量、有機溶剤、界面活性剤、および共重合樹脂/顔料の質量比を表2のように変更して、インクC−2〜C−25を作成した。表2において、共重合樹脂の含有量及び有機溶剤含有量はインクに対する含有率(質量%)を表す。
表2では中和塩基、有機溶剤、及び界面活性剤を略称で記載したが、以下に該略称について説明する。
(中和塩基)
DMAE:N,N−ジメチルアミノエタノール
AMP:2−アミノ−2−メチルプロパノール
(有機溶剤)
DPGPE:ジプロピレングリコールプロピルエーテル
DEGBE:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
HDO:1,2−ヘキサンジオール
DPGME:ジプロピレングリコールメチルエーテル
2−PDN:2−ピロリジノン
(界面活性剤)
F−1:CF(CFCHCHCOONH
F−3:CF(CFCOONH
O−1:C17(OCHCHOH ただしC17は2−エチルヘキシル基、hは15〜30の整数。
O−2:C1225(OCHCHOH ただしC1225はn−ドデシル基、gは20〜40の整数。
S−1:シリコーン系界面活性剤 BYK−348(ビックケミー社)
なおF−1〜3と0−1,2はおのおの本発明に係るフッ素系界面活性剤とポリオキシエチレンアルキルエーテル類の化合物である。
上記により調製した各インクについて、下記の方法に従って評価を行った。なお、各インクについてプレート法で測定したインク作成直後の静的表面張力は22〜28mN/mの範囲であった。
(画像の形成)
ノズル口径28μm、駆動周波数18kHz、ノズル数512、最小液滴量12pl、ノズル密度180dpiであるピエゾ型ヘッドを4列搭載したオンデマンド型インクジェットプリンタのヘッドの1つに各シアンインクを装填した。
またプリンターには接触式ヒーターによって記録媒体を裏面(ヘッドと対向する面とは反対の面)より任意に加温できるようにし、ヘッド格納ポジションにインク空打ちポジションとブレードワイプ式のメンテナンスユニットを備え、任意の頻度でヘッドクリーニングができるようにした。
次いで、記録媒体として溶剤インクジェットプリンタ用の軟質塩化ビニルシートに印字解像度720dpi×720dpiで、100%Dutyと30%Dutyの画像をそれぞれ10cm×10cmの大きさでプリントした。
なお、ポリ塩化ビニル製の記録媒体へのプリント中は、記録媒体を裏面から加温して、画像記録時の記録媒体の表面温度が50℃になるようにヒーターで制御した。記録媒体の表面温度は、非接触温度計(IT−530N形 堀場製作所社製)を用いて測定した。プリント後、プリント物を室温(25℃)にて24時間乾燥した後、下記の記録画像およびプリント性の評価をした。
(インクおよび記録画像の評価)
(耐擦性)
100%Dutyの画像について、画像を乾いた木綿(カナキン3号)で300gの加重をかけて擦り、下記基準に従って耐擦過性を評価した。
◎:50回以上擦っても画像は変化しない
○:50回擦った段階で多少の傷が残るが画像濃度には影響せず、実用上問題ない
△:21〜50回擦る間に画像濃度が低下するが、実用可能なレベルである
×:20回以下擦る間に画像濃度が低下し、実用上問題がある
(接着性の評価)
100%Dutyの画像にセロファンテープを3cm貼り付け、はがした後の画像表面を観察した。
◎:まったく変化がない
○:わずかに跡が残るが、実用上問題ない
△:画像の一部がわずかにはがれて一部濃度が低下するが、実用可能なレベルである
×:画像の大部分がはがれて基材の白地が見え、実用上問題がある
(射出性の評価)
25℃、相対湿度25%の条件で100%Dutyの画像を連続10回プリントし、10回目の画像を観察した。
◎:画像欠陥は見られない
○:画像の書き出し部(2mm以下)にごくわずかにかすれが見られる
△:画像欠陥(インク射出不良によるスジ)がわずかに見られる
×:インク射出不良による画像欠陥がかなり見られる。
(はじき評価)
100%Dutyの画像を目視で観察した。
◎:印字部分にはじきによる故障はまったくない
○:ルーペで拡大すると、ごく僅かに画像のムラが見られるが、画質に影響はない
△:画像を注視すると一部に画像のムラがあるが、目立たない範囲である
×:画像に点々とはじきが見られ、目立ち、実用上問題がある
(ドット径)
30%Dutyの画像を光学顕微鏡で500倍に拡大し、孤立したドットの直径を測定した。
◎:55μm以上
○:51μm以上、55μm未満
△:47μm以上、51μm未満
×:47μm未満
なお、ドット径が47μm未満では、100%Dutyの画像でもドットで画像が完全には被覆されておらず、白抜けが発生していた。
(表面張力保存安定性)
インクを25℃にて1カ月間保存した後、静的表面張力を測定し、保存前の値と比較した。
◎:保存前後の静的表面張力の差は1mN/m未満
○:保存後の静的表面張力が1〜1.5mN/m未満上昇した
△:保存後の静的表面張力が1.5〜2mN/m未満上昇した
×:保存後の静的表面張力が2mN/m以上上昇した
評価結果を表3に示す。
なお、表中において、評価結果に×が1つでもあるインクは実用上問題がある。
表3に記載の結果より明らかなように、本発明のインクは比較例に対し、記録媒体としてポリ塩化ビニルに画像記録した際の耐擦性、接着性の特性に優れ、またインクの射出性や画像形成時のはじき、ドット径も優れており、しかもインク保存時の表面張力の変動も少ないことが分かる。
実施例2
実施例1で使用したインクのC−1とC−21を用いて実施例1のプリント条件と同様にしてプリントをした後、プリント後の乾燥を室温(25℃)で24時間するかわりに、プリント直後に表4に記載の温度で5分間乾燥後さらに室温で12時間乾燥させたプリント記録画像を作製した。
なお、プリント後の加熱乾燥における加熱はプリント後の記録画像をヒーターにて裏面から加温して、記録媒体の表面温度が表4に記載の温度になるようにヒーターで制御した。記録媒体の表面温度は、非接触温度計を用いて測定した。
得られた記録画像について、下記の評価を行った。
(耐擦性2)
記録画像の100%Duty画像部分について、画像を乾いた木綿(カナキン3号)で600gの加重をかけて擦り、下記基準に従って耐擦過性を評価した。
◎:50回以上擦っても画像は変化しない
○:50回擦った段階で多少の傷が残るが画像濃度には影響しない
△:21〜50回擦る間に、画像濃度が低下する
×:20回以下擦る間に、画像濃度が低下する
上記評価ランクにおいて、△〜◎が実用上好ましいランクと判断した。
(接着性2)
記録画像の100%Duty画像部分にセロファンテープを3cm貼り付け、その後はがすという操作を同じ場所で5回繰り返し、その後の画像表面状態を観察した。
◎:まったく変化がない
○:わずかに跡が残る
△:画像の一部がわずかにはがれて一部濃度が低下する
×:画像の大部分がはがれて、基材の白地が見える
上記評価ランクにおいて、△〜◎が実用上好ましいランクと判断した。
評価結果を表4に示す。
表4に記載の結果より明らかなように、本発明のインクでポリ塩化ビニルに画像記録した際の耐擦性と接着性の特性は比較例よりも優れており、さらに加熱乾燥した場合のほうが室温のみでの乾燥した場合よりも特性が向上している。
実施例3
(顔料分散体およびインクの作製)
C.I.ピグメントブルー15:3の他に、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントレッド122、カーボンブラックを使って、実施例1のシアン顔料分散体の作製と同様にしてイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの顔料分散体をそれぞれ作製した。
表5に示した様に、これらの顔料分散体、実施例1で作製した共重合樹脂、中和塩基、有機溶剤、界面活性剤を用い、表5に示したインクに対する共重合樹脂の含有率、及び顔料に対する共重合樹脂の質量比となるように調製した他は実施例1と同様にして、表5に記載のインクセットを得た。
(画像の形成)
これらのインクセットを実施例1で用いたプリンターに装填し、実施例1と同様にしてプリントして各色10cm×10cmの100%Dutyと30%Dutyの画像を得た。
(インクおよび記録画像の評価)
得られた評価画像について、実施例1と同様にして耐擦性、接着性、射出性、はじき、ドット径、表面張力保存安定性の評価をした。
評価結果を表6に示す。
表6に記載の結果より明らかなように、本発明のインクからなるインクセットは比較例に対し、ポリ塩化ビニルに画像記録した際の耐擦性、接着性の特性に優れ、またインクの射出性や画像形成時のはじき、ドット径も優れており、しかもインク保存時の表面張力の変動も少ないことが分かる。

Claims (7)

  1. 少なくとも水と顔料、水溶性樹脂、水溶性有機溶剤、および界面活性剤を含有する水性の非吸収性記録媒体用インクジェットインクにおいて、該水溶性樹脂が、酸価が50mgKOH/g以上、130mgKOH/g以下であり、ガラス転移温度(Tg)が30℃以上、100℃以下であり、かつ重量平均分子量(Mw)が2万以上、8万以下であり、モノマーとして少なくともメタクリル酸メチル、アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステル、及び酸モノマーを含むモノマーから合成される共重合樹脂であって、かつ前記メタクリル酸メチルとアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの総質量が、共重合樹脂を構成する全モノマー質量に対して80%以上、95%以下である水溶性樹脂を含み、界面活性剤が少なくともフッ素系界面活性剤とポリオキシエチレンアルキルエーテル類を含むことを特徴とするインクジェットインク。
  2. 前記アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数が2以上、8以下であり、前記酸モノマーがアクリル酸またはメタクリル酸であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットインク。
  3. 前記メタクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数が2以上、8以下であり、前記酸モノマーがアクリル酸またはメタクリル酸であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットインク。
  4. 前記顔料に対する前記共重合樹脂の質量比が1倍以上、20倍以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
  5. 前記フッ素系界面活性剤が分子内に直鎖または分岐のパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基を有する界面活性剤であって、該パーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基の主鎖の炭素数が3以上、6以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
  6. 沸点が100℃以上、200℃以下のアミン類を前記インクジェットインクに対して0.1質量%以上、1質量%以下含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェットインクを用いて、35℃以上、60℃以下に加熱された非吸収性記録媒体にプリントし、その後プリント物を50℃以上、90℃以下で加熱乾燥することを特徴とするインクジェット記録方法。
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