JP2003292838A - 保存安定性に優れたインクジェット用水性組成物の製造方法、その方法によって製造されたインクジェット用組成物及び該組成物を含むインクジェット用記録液 - Google Patents
保存安定性に優れたインクジェット用水性組成物の製造方法、その方法によって製造されたインクジェット用組成物及び該組成物を含むインクジェット用記録液Info
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Abstract
成物の製造方法、インクジェット用組成物及び該組成物
を含むインクジェット用記録液を提供する。 【解決手段】 Tgが50℃よりも高く、酸価が100
〜300KOHmg/gであり、重量平均分子量が2,
000〜30,000の式(1)で表される反復単位で
構成される有機高分子化合物(A)を分散剤として使用
して顔料を水中に分散させた後に、Tgが50℃よりも
高く、酸価が50〜200KOHmg/gであり、重量
平均分子量が10,000〜300,000の式(2)
で表される反復単位で構成される有機高分子化合物
(B)を加えることを特徴とする保存安定性に優れたイ
ンクジェット用水性組成物の製造方法: 【化1】 【化2】 その方法によって製造されたインクジェット用組成物及
び該組成物を含むインクジェット用記録液。
Description
安定性、吐出安定性に優れたインクジェット用水性組成
物の製造方法、その方法によって製造されたインクジェ
ット用組成物及び該組成物を含むインクジェット用記録
液に関する。
取り扱いの容易性、安全性、環境問題、等の点から、水
性化が急速に進んでいる。この目的で、インクジェット
用インク組成物として、染料と水性媒体とからなる染料
系の水性インク組成物が普及している。
では、染料の性質上、印刷物の耐光性、耐候性及び耐水
性に劣ると言う問題があり、この問題を解決するため
に、染料に換えて顔料を用いることが検討されるように
なった。
散させる場合に、水の表面張力が大きいことから、非水
系に分散させるのに比べて、水系に分散させるのは極め
て困難である。
て使用される着色剤としての顔料は、印刷の際に吐出安
定性、発色性、透明性等を上げるためにできるだけ微細
化し、微細化の状態が安定に保持されるのが望ましい。
特に、インクジェット用組成物は、低粘度で高い色濃度
が要求されることから、印刷用インクに比べて、顔料が
一層高度に微細化されることが要求され、かかる微細化
要求を満足させ得る顔料の分散機として、ビーズミル、
ロールミル等が主流となってきた。また、ビーズミルの
分散メディアも、ガラスビーズから、一層硬度の高いジ
ルコニアビーズが使用されるようになってきた。
エネルギーが増加することにより、凝集エネルギーが大
きくなるために再凝集が起こりやすくなり、微細化され
た顔料の貯蔵安定性が損なわれることになる。
ては、ノズル部分での乾燥、固化を防止し安定な記録液
の噴射をするため、また、被印刷体への浸透剤として
も、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリ
セリン等の多価アルコール類や、エチレングリコールモ
ノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチル
エーテル等のグリコールエーテル類等の水溶性有機溶剤
を配合する必要がある。しかしながら、これらの水溶性
有機溶剤のうち比較的疎水性の強いものや、多量の水溶
性有機溶剤を使用した場合、記録液の保存安定性が低下
してしまうという問題がある。
物の貯蔵安定性を改良するために、種々の添加剤が加え
られることが一般的に広く行われている。かかる添加剤
としては、界面活性剤が最も一般的である。しかし、界
面活性剤を用いて顔料を分散させた場合に、界面活性剤
の分子量が小さいことから界面活性剤が表面にブリード
しやすく、得られる画像の耐水性が極めて悪くなるとい
う問題がある。
を塩基で中和されたカルボキシル基を有する樹脂中に分
散させ、得られた水性分散体に酸を加えて樹脂を疎水化
することによって樹脂を顔料に固着させる、いわゆる酸
析法が知られている。
より顔料に固着させて分散性の良好な粉末顔料を得る方
法が提案されている。この場合、ロジンは分子量が小さ
いために被膜形成性樹脂となり得ず、インクジェットプ
リンター用水性記録液に使用した場合、ロジン単独では
安定な水性記録液が得られず、また、得られた画像も性
能の低いものとなってしまう、という問題点がある。
−122528号公報、特公昭61−11979号公報
には、分子量が比較的高いアクリル系樹脂という限定し
た樹脂を使用して酸析を行い、粉末又は固形顔料を得る
方法が開示されている。
も、酸析後に粉末化或は固形化されるため、その過程で
もって顔料が少なからず凝集してしまい、インクジェッ
トプリンター用水性記録液に使用する際に、再び分散さ
せなければならないという手間の掛かる工程が必要とな
らざるを得ない。しかも、これらの方法で得られる粉末
または固形顔料は、未処理の粉末顔料に比べて分散が容
易であるとはいえ、一度粉末化或は固形化された顔料で
あるため、インクジェットプリンター用水性記録液に使
用できるような高度な発色性や着色力を発揮する程度に
微分散させるのに、かなりの労力を要する、という問題
点もある。
書には、親水性の高い水溶性樹脂を使用し、酸析後に塩
基性化合物でもって再中和を行ない、水性媒体に分散し
易い顔料を得る方法が開示されている。
化合物でもって再中和した後に、粉末化又は固形化する
に在り、水性媒体中に再分散させる際には、一度粉末化
あるいは固形化されたものは、やはり顔料の再凝集の問
題を有し、高度なレベルで被塗物の発色性や着色力を発
揮できない。また、粉末化又は固形化した後に水性媒体
に再分散させ易くするために、この方法において使用で
きる樹脂は、分子量が低く、かつ、酸価がかなり高く、
着色剤として塗装された塗膜の強靭性や耐水性が極めて
低いものとなってしまう、という問題点もある。
塩基性化合物を用いて中和されたカルボキシル基を有す
る樹脂によって微分散された顔料の水性分散体を、酸性
化合物を用いてpHを中性又は酸性として樹脂を疎水性
化することによって樹脂を顔料に強く固着し(いわゆる
「酸析」)、次いで、必要に応じて、濾過及び水洗した
後に、再度塩基性化合物を用いてカルボキシル基を中和
して水に再分散させることによって、光沢、発色性、着
色力を高度に発揮するに充分な程度に微分散され、しか
も、貯蔵安定性にも優れた水性顔料分散体を得ることが
できると記載されている。
記録液には、一般に、インクとしての印字特性を付加す
るため、エチレングリコール、グリセリン、pH調整
剤、活性剤等が加えられるため、上記ヨーロッパ特許7
78,321号及び特開平9−31360号公報に記載
されている方法により得られた水性顔料分散体をもって
しても、上記したサンドミル、コボールミル、パールミ
ルPM−DCP型、ダイノーミル、ボアミル、ビスコミ
ル及びモーターミル等の流通式湿式ビーズミルによって
製造されたインクジェットプリンター用水性記録液は、
顔料の一次粒子が破砕されるのが避けられず、貯蔵中に
粘度上昇や粒子径増大等を起こし、記録液の貯蔵安定性
を実用的なレベルにまで改良するには至っていない。
は、特定のアクリル樹脂、特定のアルキレンオキサイド
付加物、塩基性化合物及び水性媒体から構成されるイン
クジェット記録用水性組成物が開示されている。しか
し、同公報に開示されるインクジェット記録用水性組成
物は、有機溶媒量を多くすると、ゲル化する等、定着性
不良の問題がある。
する課題は、インクジェット用水性組成物の製造方法に
おいて、従来技術では解決できなかった顔料分散性及び
インクジェット用記録液に使用した際にも保存安定性に
優れたインクジェット用水性組成物を製造する方法を見
出すことにある。
究した結果、分散剤を使用して顔料を水中に分散させて
インクジェット用水性組成物を製造するに、初めに特定
の有機高分子化合物を分散剤として用いて顔料を分散液
中に分散させた後に、更に特定の有機高分子化合物を分
散液中に加えることにより分散液中及びインクジェット
用記録液に使用した際にも顔料同士が凝集するのを防ぐ
ことを見出し、本発明を完成するに至った。
散させて分散体を形成するに、初めに分散剤として、T
gが50℃よりも高く、酸価が100〜300KOHm
g/gである、重量平均分子量が2,000〜30,0
00の有機高分子化合物(A)を用いて顔料を水中に分
散させた後に、Tgが50℃よりも高く、酸価が50〜
200KOHmg/gである、重量平均分子量が10,
000〜300,000の有機高分子化合物(B)を加
えることを特徴とする長期保存性に優れたインクジェッ
ト用水性組成物の製造方法である。また、本発明は、そ
の方法によって製造されたインクジェット用組成物及び
該組成物を含むインクジェット用記録液でもある。
(A)は、ガラス転移点(Tg)が50℃よりも高く、
酸価が100〜300KOHmg/gであり、重量平均
分子量が2,000〜30,000の範囲の有機高分子
化合物を使用する。
ス転移点(Tg)は、DSC法に従って測定する。有機
高分子化合物(A)は、Tgが50℃よりも高いものが
適している。Tgが50℃よりも低いと、べたつきが生
じてブロッキングが発生する傾向にある。
は、JIS−K3504に従って測定する。有機高分子
化合物(A)は、酸価が100〜300KOHmg/g
であり、150〜250KOHmg/gであるのが好ま
しい。有機高分子化合物(A)は、酸価が100よりも
小さいと、疎水性が強くなり、水への溶解度が低くな
り、顔料の分散が困難になり、他方、酸価が300より
も大きいと、親水性が強くなり、塗膜の耐水性が著しく
低下するので、好ましくない。
平均分子量は、GPC(ゲルパーミッションクロマトグ
ラフィー法)に従って測定する。有機高分子化合物
(A)は、重量平均分子量が2,000〜30,000
の範囲であり、5,000〜20,000の範囲である
のが好ましい。重量平均分子量が2,000よりも小さ
いと、インクジェット用水性組成物を混練する際に混練
機での機上安定性が悪く増粘してゲル化し易いこと及び
記録液として使用した際に印刷被膜が脆くなるので、好
ましくない。他方、重量平均分子量が30,000より
も大きいと、顔料が微細に分散された分散体を得るのが
困難になり、実用上好ましくない。
されず、従来当分野で用いられている任意の顔料を使用
することができる。かかる顔料の例として、有機顔料、
例えばキナクリドン系、キナクリドンキノン系、ジオキ
サジン系、フタロシアニン系、アントラピリミジン系、
インダンスロン系、ペリレン系、ペリノンアントラキノ
ン系、アゾ系顔料等、無機顔料、例えばカーボンブラッ
ク、酸化チタン、ベンガラ等を挙げることができる。か
かる顔料は、一種で使用しても又は二種以上で使用して
もよい。
10〜150重量%の量で加え、10〜50重量%の量
で加えるが好ましい。分散剤としての有機高分子化合物
(A)の使用量が、顔料に対して10重量%よりも少な
いと、顔料を微細に分散させるのに十分でなく、他方、
顔料に対して150重量%よりも多いと、分散体中の顔
料の割合が少なくなり、配合設計上の余裕がなくなるの
で、好ましくない。
濁液を調製した後に、これに、有機高分子化合物(B)
を加える。このように、一旦懸濁液を調製した後に、懸
濁液に更に有機高分子化合物(B)を加えることによ
り、分散液中で顔料同士が凝集するのを防ぎ、従来技術
では解決できなかった顔料分散性及び長期保存性に優れ
るばかりでなく、また吐出安定性に優れたインクジェッ
ト用水性組成物及び記録液を得ることができる。
よりも高いものが適している。Tgが50℃よりも低い
と、べたつきが生じてブロッキングが発生する傾向にあ
る。
200KOHmg/gであり、80〜150KOHmg
/gであるのが好ましい。有機高分子化合物(B)は、
酸価が50よりも小さいと疎水性が強くなり、水への溶
解度が低くなり、他方、酸価が200よりも大きいと親
水性が強くなり、塗膜の耐水性が著しく低下するので、
好ましくない。
量が10,000〜300,000の範囲であり、2
0,000〜100,000の範囲であるのが好まし
い。重量平均分子量が10,000よりも小さいと、イ
ンクジェット用水性組成物を製造した際に経時安定性が
悪く、他方、重量平均分子量が300,000よりも大
きいと、水への溶解性が悪くなりかつ粘度が高くなり、
インクジェット用水性組成物が吐出不良を起こすため、
好ましくない。
る有機高分子化合物(A)及び有機高分子化合物(B)
は、それらが有する構造上の特徴が、本発明の予期され
ない効果の達成に寄与するものと考えられる。
化合物(A)は、下記の一般式(3)で表される反復単
位:
〜9の直鎖又は分岐のアルキル基を表し;Mは、最終的
に用いる塩基剤によって変わり、アルカリ金属、アンモ
ニウム、アミン基等を表し;a、b及びcは、それぞれ
重量割合を表し;aは、0.05〜0.40、好ましく
は0.10〜0.30であり;bは、0.10〜0.4
0、好ましくは0.20〜0.30であり;cは、0.
20〜0.85、好ましくは0.40〜0.70であ
り;a+b+c=1.00)によって構成される。
一般式(4)で表される反復単位:
〜9の直鎖又は分岐のアルキル基を表し;Ryは炭素数
が10〜30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表わし;
d、e、f及びgは、それぞれ重量割合を表し;Mは、
最終的に用いる塩基剤によって変わり、アルカリ金属、
アンモニウム、アミン基等を表し;dは、0.05〜
0.30、好ましくは0.10〜0.20であり;e
は、0.05〜0.40、好ましくは0.10〜0.3
0であり;f+g=0.30〜0.90、好ましくは
0.50〜0.80;gは0.05〜0.40であるの
が好ましく、0.10〜0.30であるのが一層好まし
く;d+e+f+g=1.00である)によって構成さ
れる。
類の有機高分子化合物を、分けて加えることにより、驚
くべきことに分散液中で顔料同士が凝集するのを防ぎ、
顔料分散性、保存安定性、吐出安定性に優れたインクジ
ェット用水性組成物ならびに記録液の調製が可能にな
る。
機高分子化合物(A)及び(B)は、下記の(イ)、
(ロ)、(ハ)、(ニ)の単量体成分を共重合させるこ
とによって得られる共重合体である:(イ)の成分とし
ては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸
エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アク
リル酸2−エチルヘキシル等の、炭素数が1〜9のアル
キル基を有するアクリル酸エステル、メタクリル酸エス
テルを挙げることができる。有機高分子化合物(A)
は、主に顔料を分散させる役割を果たすことから、
(イ)の成分としては、アルキル基の炭素数が1〜9と
比較的小さいものを用い、アルキル基の炭素数が1〜7
のものを用いるのが好ましい。
タクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、のようなα,β
−モノエチレン性不飽和カルボン酸単量体を挙げること
ができる。これらは単独で用いても、二種類以上を併用
してもよい。
チルスチレン等の芳香族ビニル単量体を挙げることがで
きる。これらは単独で用いても、二種類以上を併用して
もよい。
リル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル
等の炭素数が10以上で30以下のアルキル基を有する
アクリル酸エステル類及びメタクリル酸エステル類、及
びマレイン酸エステル類を挙げることができるが、疎水
性度及び溶解性から、特に炭素数12−24の長鎖アル
キル基を有するものが好ましい。これらは単独で用いて
も、二種類以上を併用してもよい。
は、上記(イ)、(ロ)及び(ハ)の成分を、それぞれ
0.05〜0.40、0.10〜0.40及び0.20
〜0.85の重量割合で配合する。上記(イ)、(ロ)
及び(ハ)の成分を、それぞれ0.10〜0.30、
0.20〜0.30及び0.40〜0.70の重量割合
で配合するのが好ましい。有機高分子化合物(A)中の
(イ)の成分の重量割合が0.05よりも少ないと、ガ
ラス転移点が高すぎ、被膜がかたくなり強度が低下して
しまい、他方、(イ)の成分の重量割合が0.40を超
えると、顔料の分散性が低下するため、好ましくない。
有機高分子化合物(A)中の(ロ)の成分の重量割合が
0.10よりも少ないと、水性媒体中で良好な溶解性が
得られず、他方、0.40を超えると、プリント画像の
耐水性が低下するので好ましくない。有機高分子化合物
(A)は、(イ)の成分のRxの炭素数が9以下と、比
較的小さく、また、有機高分子化合物(A)の重量平均
分子量が30,000以下と低いことから、主に顔料の
水中への良好な分散性に寄与するものと考えられる。
(ニ)及び(イ)+(ハ)の成分を、それぞれ0.05
〜0.30、0.05〜0.40及び0.30〜0.9
0の重量割合で配合する。上記(ロ)、(ニ)及び
(イ)+(ハ)の成分を、それぞれ0.10〜0.2
0、0.10〜0.30及び0.50〜0.80の重量
割合で配合するのが好ましい。特に、有機高分子化合物
(B)が上記(ニ)を含有することにより、得られるイ
ンクは保存安定性に優れた物性を発揮できることができ
る。
0.05〜0.40の範囲の重量割合で含有し、0.1
0〜0.30の範囲の重量割合で含有するのが好まし
い。(ニ)成分は、上記範囲よりも少ないと保存安定性
に効果を発揮せず、多過ぎると、疎水性が強く水溶液
中、分散液中での安定性が低下してしまう。(ロ)成分
は、0.05よりも少ないと水性媒体中での良好な溶解
性が得られず、他方、0.40を超えると、プリント画
像の耐水性が低下するので好ましくない。有機高分子化
合物(B)は、(ニ)成分のRyの炭素数が10〜30
と、比較的大きく、また、有機高分子化合物(B)の重
量平均分子量が10,000以上と高いことから、主に
水中に分散された顔料の凝集を防いで安定な分散性の維
持に寄与するものと考えられる。
(A)及び(B)は、上述した(イ)、(ロ)、
(ハ)、(ニ)の単量体成分を混合し、溶液重合法、懸
濁重合法、塊状重合法又は乳化重合法のような公知の重
合方法に従って共重合させることによって調製すること
ができる。
えば下記のようにして調製することができる:攪拌機、
還流冷却装置、窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコ
に、有機溶媒を仕込み、加熱して温度60°〜150℃
に調整し、窒素ガスを導入しながら、上述した(イ)、
(ロ)、(ハ)、(ニ)の単量体混合物及び重合開始剤
を1〜5時間かけて滴下する。滴下した後、同じ温度に
保ちながら、2〜10時間共重合させる。共重合させた
後に、必要に応じて、有機溶媒を減圧下で除去する。得
られた樹脂のガラス転移点、酸価及び重量平均分子量を
上述した測定法に従って測定する。
の単量体混合物を共重合させる際に使用する有機溶媒と
しては、酢酸エチル、メチルエチルケトン、イソプロピ
ルアルコール等を挙げることができる。また、重合開始
剤としては、t−ブチルパーオキサイド、ベンゾイルパ
ーオキサイド等のような過酸化物、2,2−アゾビスイ
ソブチルニトリル、2,2−アゾビス(2,4−ジメチ
ル)バレロニトリル等のようなアゾ化合物、過硫酸アン
モニウム、過硫酸カリウム等のような過硫酸塩を挙げる
ことができる。これらを、単独で使用しても又は二種以
上で使用してもよい。本発明において、有機高分子化合
物(A)及び(B)の重量平均分子量は、重合開始剤の
量を変えることによって変えた。有機高分子化合物
(A)及び(B)の重量平均分子量の調整は、共重合時
間を変えることにより、又は重合調節剤を加えることに
よって変えてよいことは、言うまでもない。
いものが望ましく、従来よりインクジェット用インクの
製造において使用されている品質のものでよく、例えば
イオン交換水等を挙げることができる。水の使用量は、
顔料を水中に分散させる工程において顔料を水中に適切
な粘度で効率よく分散させるには、使用する水の量は、
顔料100重量部に対して、水80〜500重量部であ
り、水100〜400重量部であるのが好ましい。
(A)及び(B)は、それぞれ細かく粉砕して、中和量
のアンモニア、トリエタノールアミンのような塩基性溶
媒を溶解したpH6〜10の水に入れて攪拌混合しなが
ら60°〜150℃に加熱して溶解させる。こうして得
られた溶液を、それぞれアクリル系樹脂ワニスA及びB
として使用するのが普通である。
上述した成分を用いて、下記の通りにして調製する。顔
料、イオン交換水及びアクリル系樹脂ワニスAを容器に
仕込み、混合する。得られた混合物をビーズミル、ロー
ルミル、超高圧ホモジナイザー等の分散機に仕込み、分
散させる。ビーズミルの分散メディアとして、直径0.
2〜1.0mmのジルコニアビーズを使用すると、顔料
を容易に微細化することができ、フィルタリングが容易
になるので、好ましい。分散は、中間分散液の顔料粒度
分布を測定し、体積平均粒子径10〜300nmの範囲
になりかつ体積累計99%粒子径が500nm以下にな
るまで行う。
顔料100重量部に対して10〜150重量部、好まし
くは10〜50重量部加える。有機高分子化合物(A)
の量が、顔料100重量部に対して10重量部よりも少
ないと、顔料を微細化するのが困難になり、他方、顔料
100重量部に対して150重量部よりも多いと、粘度
が高くなり、インクとして使用するには実用的でなくな
る。
粒度分布が、体積平均粒子径10〜300nm、好まし
くは20〜200nm、体積累計99%粒子径が500
nm以下、好ましくは400nm以下となる場合に、十
分な発色と濃度、保存安定性に優れた記録液が得られ
る。体積平均粒子径が300nmよりも大きいと、十分
な発色と濃度が得られず、他方、体積累計99%粒子径
が500nmを越えると、フィルタリングが困難になり
実用上好ましくない。
子径が300nm以下、体積累計99%粒子径が500
nm以下の中間分散液に、アクリル系樹脂ワニスB及び
イオン交換水を攪拌下にゆっくり添加して約30分〜2
時間程混合して本発明のインクジェット用インク組成物
を得る。この場合、有機高分子化合物(B)を顔料10
0重量部に対して10〜150重量部、好ましくは10
〜50重量部加える。有機高分子化合物(B)の量が、
顔料100重量部に対して10重量部よりも少ないと、
インクジェット用インク組成物における顔料の保存安定
性を保つ効果を発揮できず、他方、顔料100重量部に
対して150重量部よりも多いと、粘度が高くなり、イ
ンクとして使用するには実用的でなくなる。
組成物全体の重量を基準にして、1〜40重量%であ
り、2〜30重量%であるのが好ましい。顔料の使用量
が1重量%よりも少ないと、色濃度が低下し、他方、顔
料の使用量が40重量%よりも多いと、インク粘度が高
くなったり、流動性が悪くなるために使用困難になる
で、好ましくない。
インク組成物は、実際にインクジェット用インク等のイ
ンクジェット用記録液として使用する際には、これに、
更に水、低級アルコール、多価アルコール類、グリコー
ル類等の水溶性有機溶剤を加え、希釈して濃度を調節し
て使用する。また、インクジェット用インク組成物を調
製する際に、分散効果を高めるために、消泡剤、界面活
性剤や前述したような水溶性有機溶剤等の添加剤を、目
的とする製品の品質を損なわない程度に任意に配合して
もよい。
例における部及び%は重量による。また、以下の実施
例、比較例に基づいて得られたインクジェット用インク
組成物及び実際の印刷適性を調べるために調製した記録
液について、下記の測定法により物性試験を行った。 (a):粒子径測定 レーザーによる動的光散乱法の粒度分布計(日機装株式
会社製:UPA9340)を使用して3回測定し、その
平均値よりmv(体積平均粒子径)及びD99(体積累
計99%粒子径)を求めた。 (b):粘度測定 25℃における粘度を、振動式粘度計(山一電気株式会
社:ビスコメイトVM−1)により測定した。
い、結果を表2に示した。 分散性について ○:分散液の顔料粒度分布が体積平均粒子径10〜30
0nm、体積累計99%粒子径が500nm以下の分散
度のもの ×:分散液の顔料粒度分布が体積平均粒子径300nm
よりも大きく、体積累計99%粒子径が500nmより
も大きい分散度のもの 保存安定性:本発明のインクジェット用インク組成物を
用いて得られた実際の記録液について、70℃、1週間
静置保管し、粘度及び粒子径変化を測定した。 体積平均粒子径について ○:保管前の体積平均粒子径変化が+10nm未満 △:保管前の体積平均粒子径変化が+10〜50nm ×:保管前の体積平均粒子径変化が+50nmよりも大
きい 粘度変化について ○:保管前の粘度より、±0.2mPa・s未満 △:保管前の粘度より、+0.2〜0.5mPa・s未
満 ×:保管前の粘度より、+0.5mPa・sよりも大き
い 吐出安定性について:保存安定性を評価した上記記録液
を、エプソン社製MJ800Cのインクカートリッジに
詰めて印字し、そのままの1時間放置後、再度印字を行
い、吐出安定性を目視評価した。印字は普通紙(ゼロッ
クス社製「P」)に行った。 ○:印刷物にかすれ等がなく、安定に吐出する △:印刷物にややかすれが見える ×:印刷物にかすれが多く、安定に吐出しない
還流冷却装置、窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコ
に、酢酸エチル400部を仕込み、加熱して温度80℃
に調整し、窒素ガスを導入しながら、表1の組成比率の
単量体混合物200部及び重合開始剤としてt−ブチル
パーオキサイド1〜3部の混合物を2時間かけて滴下し
た。滴下した後、温度80℃に保ちながら、2時間共重
合させ、共重合させた後に、酢酸エチルを減圧下で除去
してアクリル系樹脂A−1及びA−2を得た。得られた
樹脂のガラス転移点、酸価及び重量平均分子量を上述し
た測定法に従って測定した。アクリル系樹脂ワニスAの
調製:上記の合成によって得られたアクリル系樹脂A−
1及びA−2のそれぞれ150部を細かく粉砕して、中
和量のトリエタノールアミンを混合した水350部に入
れて攪拌混合しながら80℃に加熱して溶解させて、そ
れぞれアクリル系樹脂ワニスA−1及びA−2を得た。
子化合物(A)の合成と同様にしてアクリル系樹脂B−
1〜B−5を得た。得られた樹脂のガラス転移点、酸価
及び重量平均分子量を上述した測定法に従って測定し
た。アクリル系樹脂ワニスBの調製:上記の合成によっ
て得られたアクリル系樹脂B−1〜B−5を、アクリル
系樹脂ワニスAの調製と同様にして、それぞれアクリル
系樹脂ワニスB−1〜B−5を得た。
30部、アクリル系樹脂ワニスA−1 20部、イオン
交換水50部を容器内で1時間混合した後に、循環型ビ
ーズミル(株式会社アシザワ製:LMZ−2)に仕込
み、5時間分散して体積平均粒子径(mv)95nm、
体積累計99%粒子径(D99)354nmである中間
分散液を製造した。更に、該中間分散液100部に対し
て、アクリル系樹脂ワニスB−1 20部、イオン交換
水80部を攪拌下添加して、本発明のインクジェット用
インク組成物である分散液を得た。この分散液につい
て、分散性を評価して結果を表2に挙げる。
5部、グリセリン5部、トリエチレングリコールモノブ
チルエーテル2部、サーフィノール465(日信化学工
業株式会社)0.5部、イオン交換水57.5部を攪拌
しながら配合して、25℃における粘度が3.3mPa
・sのインクジェット用記録液を得た。得られたインク
ジェット用記録液における体積平均粒子径(mv)及び
体積累計99%粒子径(D99)に変化はなかった。
液を前出の評価項目に従い評価し、表2に得られた結果
を挙げる。
た他は、実施例1と同様にして分散液を製造し、粘度
3.3mPa・sのインクジェット用記録液を調製し
た。このときの中間分散液の物性は、体積平均粒子径
(mv)94nm、体積累計99%粒子径(D99)3
50nmであった。物性試験も実施例1と同様にして行
い、得られた結果を表2に挙げる。
た他は、実施例1と同様にして分散液を製造し、粘度
3.2mPa・sのインクジェット用記録液を調製し
た。このときの中間分散液の物性は、体積平均粒子径
(mv)92nm、体積累計99%粒子径(D99)3
58nmであった。物性試験も実施例1と同様にして行
い、得られた結果を表2に挙げる。
た他は、実施例1と同様にして分散液を製造し、粘度
3.2mPa・sのインクジェット用記録液を調製し
た。このときの中間分散液の物性は、体積平均粒子径
(mv)93nm、体積累計99%粒子径(D99)3
56nmであった。物性試験も実施例1と同様にして行
い、得られた結果を表2に挙げる。
ンキ製造株式会社製:FG−7351)に代えた他は実
施例1と同様にして分散液を製造し、粘度3.1mPa
・sのインクジェット用記録液を調製した。このときの
中間分散液の物性は、体積平均粒子径(mv)94n
m、体積累計99%粒子径(D99)352nmであっ
た。物性試験も実施例1と同様にして行い、得られた結
果を表2に挙げる。
おいて分散終了後に添加したアクリル系樹脂ワニスB−
1に変えて、同様の条件で分散を行ったが、所望の分散
度が得られなかった。
りに同割合のイオン交換水を添加した他は、実施例1と
同様に分散、調製を行い、粘度3.1mPa・sのイン
クジェット用記録液を得た。このときの中間分散液の物
性は、体積平均粒子径(mv)92nm、体積累計99
%粒子径(D99)351nmであった。物性試験も実
施例1と同様にして行い、結果を表2に挙げる。
脂ワニスA−1に代える他は、実施例1と同様に分散、
調製を行い、粘度3.1mPa・sのインクジェット用
記録液を得た。このときの中間分散液の物性は、体積平
均粒子径(mv)92nm、体積累計99%粒子径(D
99)351nmであった。物性試験も実施例1と同様
にして行い、結果を表2に挙げる。
樹脂ワニスB−4に代える他は、実施例1と同様に分
散、調製を行い、粘度3.0mPa・s、インクジェッ
ト用記録液を得た。このときの中間分散液の物性は、体
積平均粒子径(mv)93nm、体積累計99%粒子径
(D99)352nmであった。物性試験も実施例1と
同様にして行い、結果を表2に挙げる。
脂ワニスB−5に代える他は、実施例1と同様に分散、
調製を行い、粘度3.2mPa・s、インクジェット用
記録液を得た。このときの中間分散液の物性は、体積平
均粒子径(mv)93nm、体積累計99%粒子径(D
99)353nmであった。物性試験も実施例1と同様
にして行い、表1に記載した。
る代わりに、A−1を10部、B−1を10部添加して
同様の条件で分散を行ったが、所望の分散度が得られな
かった。
及び6では、所望の分散度が得られず、比較例2及び3
ではゲル化のため吐出試験ができなかった。また、比較
例4及び5では保存安定性に劣り、粘度が高くなった吐
出が不安定で、目詰まりが発生した。これに対して本発
明のインクジェット用インク組成物を用いた実施例1〜
5では優れた保存安定性、吐出安定性、光沢性等の効果
を発揮するものである。
の製造法では、分散性良好な有機高分子化合物で分散し
た後、保存安定性を付与するために特定の部分構造を有
する水溶性有機高分子化合物の二種類を併用することで
完成したものである。これによって、顔料同士の凝集を
防ぎ保存安定性、吐出安定性に優れ、かつ十分な発色と
濃度を持つインクジェット用インク組成物を製造する方
法を提供するものである。
Claims (15)
- 【請求項1】 分散剤を使用して顔料を水中に分散させ
て分散体を形成するに、初めに分散剤として、Tgが5
0℃よりも高く、酸価が100〜300KOHmg/g
であり、重量平均分子量が2,000〜30,000の
有機高分子化合物(A)を用いて顔料を水中に分散させ
た後に、Tgが50℃よりも高く、酸価が50〜200
KOHmg/gであり、重量平均分子量が10,000
〜300,000の有機高分子化合物(B)を加え、該
有機高分子化合物(A)が、下記の一般式(1)で表さ
れる反復単位: 【化1】 (式中、 Yは、H又はCH3を表し;Rxは、炭素数1〜9の直
鎖又は分岐のアルキル基を表し;a、b及びcは、それ
ぞれ重量割合を表し;aは、0.05〜0.40であ
り;bは、0.10〜0.40であり;cは、0.20
〜0.85であり;a+b+c=1.00)によって構
成され、該有機高分子化合物(B)が、下記の一般式
(2)で表される反復単位: 【化2】 (式中、 Yは、H又はCH3を表し;Rxは、炭素数9以下の直
鎖又は分岐のアルキル基を表し;Ryは炭素数が10〜
30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表わし;d、e、
f及びgは、それぞれ重量割合を表し;dは、0.05
〜0.30であり;eは、0.05〜0.40であり;
f+g=0.30〜0.90;d+e+f+g=1.0
0である)によって構成されることを特徴とする保存安
定性に優れたインクジェット用水性組成物の製造方法。 - 【請求項2】 前記有機高分子化合物(A)が、重量平
均分子量5,000〜20,000の範囲を有する請求
項1記載の方法。 - 【請求項3】 前記有機高分子化合物(A)が、(メ
タ)アクリル系樹脂である請求項1記載の方法。 - 【請求項4】 前記有機高分子化合物(A)が、メタク
リル酸メチル又はメタクリル酸エチルと、アクリル酸
と、スチレンとのコポリマーである請求項3記載の方
法。 - 【請求項5】 前記有機高分子化合物(A)を顔料に対
して10〜150重量%加える請求項1〜4のいずれか
一記載の方法。 - 【請求項6】 前記有機高分子化合物(B)が、重量平
均分子量20,000〜100,000の範囲を有する
請求項1記載の方法。 - 【請求項7】 前記有機高分子化合物(B)が、(メ
タ)アクリル系樹脂である請求項1記載の方法。 - 【請求項8】 前記有機高分子化合物(B)が、メタク
リル酸ステアリルと、メタクリル酸メチルと、アクリル
酸と、α−メチルスチレンとのコポリマーである請求項
7記載の方法。 - 【請求項9】 前記有機高分子化合物(B)が、アクリ
ル酸n−ヘキサデシルと、メタクリル酸メチルと、アク
リル酸と、α−メチルスチレンとのコポリマーである請
求項7記載の方法。 - 【請求項10】 前記有機高分子化合物(B)を顔料に
対して10〜150重量%加える請求項6〜9のいずれ
か一記載の方法。 - 【請求項11】 使用する水の量が、顔料100重量部
に対して、水80〜500重量部である請求項1記載の
方法。 - 【請求項12】 有機高分子化合物(A)を用いた顔料
の分散を、体積平均粒子径10〜300nmの範囲にな
りかつ体積累計99%粒子径が500nm以下になるま
で行う請求項1記載の方法。 - 【請求項13】 顔料の使用量が、インクジェット用イ
ンク組成物全体の重量を基準にして、1〜40重量%で
ある請求項1〜12のいずれか一記載の方法。 - 【請求項14】 上記請求項1〜13記載の方法によっ
て製造されたインクジェット用組成物。 - 【請求項15】 請求項14記載のインクジェット用組
成物を含むことを特徴とするインクジェット用記録液。
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