JP4752599B2 - 液滴吐出装置 - Google Patents

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Description

本発明は、液滴吐出ヘッドから吐出された液滴が付着する部材の清掃を行う液滴吐出装置に関する。
液滴吐出装置としてのインクジェットプリンタでは、印字中に用紙ジャムが発生すると、搬送ベルト(搬送部材)上に用紙が無い状態でインクジェット記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)からインク滴が吐出されて、搬送ベルトにインクが付着することがある。また、ダミージェット、即ち、未使用ノズルの目詰まりを防止することを目的として印字とは無関係なインク滴の吐出を、搬送ベルトに向けて行う場合にも、搬送ベルトにインクが付着する。このため、搬送ベルトに付着したインクを清掃する清掃手段を設置する必要がある。
この清掃手段としては、搬送ベルトに付着したインクを掻き取るブレードが挙げられる(例えば、特許文献1参照)。しかし、ブレードは、摩擦によって搬送ベルトに傷を付け、また、搬送ベルトとの摩擦によって自身も傷付くので、長期間の信頼性に欠ける、搬送ベルトがブレードから受ける負荷が変動する、といった問題がある。
特開2004−196505号公報
本発明は上記事実を考慮してなされたものであり、液滴吐出ヘッドから吐出された液滴が付着する部材と、該部材を清掃する部材との信頼性を向上させることを目的とする。
液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、
記録媒体を保持し前記液滴吐出ヘッドに対向させて搬送する搬送部材と、
潤滑剤を前記搬送部材に塗布する塗布部材と、
前記搬送部材を清掃する清掃部材と、
前記搬送部材を帯電する帯電手段と、
前記搬送部材を除電する除電手段と、
を備え、
搬送部材の搬送方向の順に、前記清掃部材、前記除電手段、前記塗布部材が前記搬送部材に沿って配置されるとともに、前記清掃部材が前記搬送部材を清掃する搬送方向と直交する方向の幅L1、前記塗布部材が前記搬送部材に前記潤滑剤を塗布する搬送方向と直交する方向の幅L2、記録媒体の搬送方向と直交する方向の幅L3、前記帯電手段が前記搬送部材を帯電する搬送方向と直交する方向の幅L4および前記除電手段が前記搬送部材を除電する搬送方向と直交する方向の幅L5が、下記(1)式および(2)式を満足することを特徴とする液滴吐出装置。
L2≧L1≧L3・・・(1)
L5≧L4≧L3・・・(2)
請求項1に記載の液滴吐出装置では、帯電手段によって帯電した記録媒体が、塗布部材によって潤滑剤が塗布された搬送部材に静電吸着され、液滴吐出ヘッドに対向するように搬送され、この際、液滴吐出ヘッドが液滴を吐出することで、記録媒体に画像等が記録される。また、搬送部材に付着した液滴は、清掃部材によって清掃され、その後に除電手段によって除電が行われるため、除電手段にはインクが付着しない。また、塗布部材によって潤滑剤が塗布された搬送部材と清掃部材との間に潤滑剤の膜が介在し、搬送部材と清掃部材との間の摩擦が緩和される。
本発明は上記構成にしたので、液滴吐出ヘッドから吐出された液滴が付着する部材と、該部材を清掃する部材との信頼性を向上できる。
以下、図面を参照して本発明の第1実施形態について説明する。
図1には、本実施形態の液滴吐出装置としてのインクジェット記録装置12が示されている。インクジェット記録装置12の筐体14内の下部には給紙トレイ16が備えられており、給紙トレイ16内に積層された用紙Pをピックアップロール18で1枚ずつ取り出すことができる。取り出された用紙Pは、所定の搬送経路22を構成する複数の搬送ローラ対20で搬送される。
給紙トレイ16の上方には、搬送部材としての無端状の搬送ベルト28が、駆動ロール24及び従動ロール26、27、29に張架されている。駆動ロール24と従動ロール26とが、略水平に配設され、その下方で、従動ロール27、29が略水平に配設されている。
また、搬送ベルト28の上方には記録ヘッドアレイ30が配置されており、駆動ロール24と従動ロール26との間の搬送ベルト28の平坦部分28Fに対向している。この対向した領域が、記録ヘッドアレイ30からインク滴が吐出される吐出領域SEとなっている。搬送経路22を搬送された用紙Pは、搬送ベルト28で保持されてこの吐出領域SEに至り、記録ヘッドアレイ30に対向した状態で、記録ヘッドアレイ30から画像情報に応じたインク滴が付着される。
記録ヘッドアレイ30は、本実施形態では、有効な記録領域が用紙Pの幅(搬送方向と直交する方向の長さ)以上とされた長尺状とされ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、サイアン(C)、及びブラック(K)の4色それぞれに対応した4つの液滴吐出ヘッドとしてのインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッドという)32が搬送方向に沿って配置されており、フルカラーの画像を記録可能になっている。
各記録ヘッド32は、ヘッド駆動回路(図示省略)によって駆動される。ヘッド駆動回路は、たとえば、画像情報に応じてインク滴の吐出タイミングや使用するインク吐出口(ノズル)を決め、駆動信号を記録ヘッド32に送る構成である。
また、記録ヘッドアレイ30は、搬送方向と直交する方向に不動とされていてもよいが、必要に応じて移動するように構成しておくと、マルチパスによる画像記録で、より解像度の高い画像を記録したり、記録ヘッド32の不具合を記録結果に反映させないようにしたりできる。
記録ヘッドアレイ30の両側には、それぞれの記録ヘッド32に対応した4つのメンテナンスユニット34が配置されている。図2に示すように、記録ヘッド32に対してメンテナンスを行う場合には、記録ヘッドアレイ30が上方へ移動され、搬送ベルト28との間に構成された間隙にメンテナンスユニット34が移動して入り込む。そして、ノズル面に対向した状態で、所定のメンテナンス動作(吸引、ワイピング、キャッピング等)を行う。
また、記録ヘッドアレイ30の上方には、各色のインクを貯留するインクタンク35が配置されている。各インクタンク35には、各記録ヘッド32が接続されている。
図3に示すように、記録ヘッドアレイ30の上流側には、電源38が接続された、帯電手段としての帯電ロール36が配置されている。帯電ロール36は、従動ロール26との間で搬送ベルト28及び用紙Pを挟みつつ従動し、用紙Pを搬送ベルト28に押圧する。この際、接地された従動ロール26との間に所定の電位差が生じるため、用紙Pに電荷を与えて用紙Pを搬送ベルト28に静電吸着させることができる。
記録ヘッドアレイ30の下流側には、剥離爪40が配置されており、用紙Pを搬送ベルト28から剥離させる。剥離された用紙Pは、剥離爪40の下流側で排出経路44を構成する複数の排出ローラ対42で搬送され、筐体14の上部に設けられた排紙トレイ46に排出される。
また、剥離爪40の下方には、ベルトクリーニングユニット48が配置されている。このベルトクリーニングユニット48は、搬送ベルト28の駆動ロール24に巻き掛けられた部分に当接し、搬送ベルト28に付着したインク等を掻き取る、清掃部材としてのブレード49と、ブレード49によって搬送ベルト28から掻き取られたインク等を回収する回収ボックス51とを備えている。なお、回収ボックス51の底部には、吸収体53が敷き詰められており、ブレード49から滴下する液体を吸収する。
また、ベルトクリーニングユニット48の下流側には、接地された、除電手段としての除電ロール62が配置されている。除電ロール62は、従動ロール27との間で搬送ベルト28を挟みつつ従動し、搬送ベルト28上の電荷を除去する。
また、オイル塗布ユニット64とバックアッププレート66とが、従動ロール26と従動ロール27との間で搬送ベルト28を間に置いて対向している。オイル塗布ユニット64は、搬送ベルト28の外周面に対向し、バックアッププレート66は、搬送ベルト28の内周面に当接している。
オイル塗布ユニット64は、ケース68と、ケース68に回転可能に支持された、塗布部材としてのオイル塗布ロール70と、ケース68に支持されたオイル用ブレード72と、を備えている。オイル塗布ロール70は、搬送ベルト28を間に置いてバックアップブレード66に圧接されており、搬送ベルト28に従動して回転する。また、オイル塗布ロール70は、ポリエチレンやウレタン等の多孔質体で形成され、潤滑剤としてのシリコーンオイルを含浸しており、搬送ベルト28にシリコーンオイルを塗布する。このため、搬送ベルト28とブレード49との間にシリコーンオイルの膜が介在するので、搬送ベルト28とブレード49との間の摩擦が緩和される。
また、記録ヘッド32から吐出されるインクが、水性インクとなっているので、用紙ジャム時の不必要なインク吐出、又は搬送ベルト28上へ吐出されるダミージェット等によって搬送ベルト28にインクが付着した場合、搬送ベルト28上のシリコーンオイルの膜の撥水効果によりインクが凝集する。従って、インクが搬送ベルト28に付着する力の増加を抑制でき、ブレード49によって搬送ベルト28をクリーニングする際、インクが搬送ベルト28から容易に剥離される。
ここで、ダミージェットは、記録ヘッド32内のインクの増粘を防止するために、数十秒に1回等の短い周期で行われるので、本実施形態のように、常時、搬送ベルト28上にシリコーンオイルの膜を形成しておくことは効果的である。
なお、オイル塗布ロール70は、駆動ロールとしても良い。この場合、オイル塗布ロール70が搬送ベルト28に対して滑ることを防止できる。
また、オイル用ブレード72は、オイル塗布ロール70より搬送ベルト28の回転方向下流側で搬送ベルト28に当接しており、搬送ベルト28に塗布されたシリコーンオイルの余剰分を掻き落し、シリコーンオイルの膜厚を所定の厚みにする。なお、オイル用ブレード72は、フッ素ゴム、NBR等のゴム、SUS等の金属の薄板、ポリウレタン、PET等の樹脂フィルム等を用いる。
また、ケース68の底部には、スポンジ等の吸収部材74が敷き詰められており、この吸収部材74が、オイル用ブレード72によって搬送ベルト28から掻き取られたシリコーンオイルを吸収する。
また、搬送ベルト28は、PET、PI、PA、PC等の樹脂、又はCR、NBR、HNBR、ウレタンゴム等のゴム材料で形成し、表面にコーティングを施したもの等を使用する。また、ブレード49は、フッ素ゴム、NBR、HNBR等のゴム材料で形成したもの、SUS等の金属の薄板、ポリウレタン、PET等の樹脂で形成したフィルム等を使用する。また、オイル塗布ロール70のロール部は、ポリエステルやポリアミド等で形成された不織布が好適であるが、インクを所定量含浸可能で、巻取り可能であれば、他のものに変えても良い。
また、オイル塗布ロール70によって搬送ベルト28に塗布する潤滑剤としては、上述したようにシリコーンオイルを使用し、インクは水性インクを使用する。ここで、ブレード49による搬送ベルト28のクリーニング性を考慮すると、潤滑剤は、インクをはじく液体が適しており、水性インクに対しては、シリコーンオイルの他に、オレイン酸、リノール酸等の高級脂肪酸、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソデシル、マレイン酸ジブチル等の可塑剤、n−デカノール、ジメチルブタノール等の非水溶性のアルコール類、フッ素オイル、鉱物オイル、植物オイル等の撥水性を有する液体が使用可能である。
また、潤滑剤の搬送ベルト28への塗布を安定させるためには、潤滑剤の動粘度を10〜10mm/sの範囲にすることが望ましく、50〜10mm/sの範囲にすることがより望ましい。
また、潤滑剤の塗布厚が厚すぎると、用紙Pにオイルが浸透して用紙Pがインクをはじく等、画質に悪影響を及ぼす可能性があり、逆に、潤滑剤の塗布厚が薄すぎると、ブレード49と搬送ベルト28との摩擦を緩和できなくなり、また、ブレード49によるインクのクリーニングが良好に行われなくなるので、潤滑剤の塗布厚を適当な範囲に設定することが必要である。潤滑剤の塗布厚の適当な範囲は、1nm〜20μmである。
また、潤滑剤は常温にて不揮発性である必要がある。具体的には蒸気圧が25℃で13.33Pa以下である。また、潤滑剤は、インクと相溶しない性質である必要がある。具体的には、インクに対する溶解度が常温(25℃)で0.1wt%以下である。
また、潤滑剤は、搬送ベルト28上で濡れ広がる必要があるので、下記(A)式の関係が必要である。但し、図4に示すように、潤滑剤Jの表面張力をγ、搬送ベルト28の臨界表面張力γとする。なお、臨界表面張力とは、種々の液体の表面張力と固体表面の接触角θとの関係において、cosθを1に補正したとき(すなわち液体の固体表面に対する接触角が0°となったとき)の表面張力をいう。一般に固体表面は、その表面が有する臨界表面張力よりも小さい表面張力を持つ液体によく濡れる。
γ<γ…(A)
また、潤滑剤Jに撥水性を持たせるためには、下記(B)式の関係が必要となる。但し、インクIの表面張力をγとする。
γ<γ…(B)
これによって、インクIは潤滑剤Jの膜上で濡れ広がることなく、凝集する。なお、搬送ベルト28を臨界表面張力γが43[mN/m]程度のPETのベルト、潤滑剤を表面張力γが20[mN/m]程度のシリコーンオイル、インクを表面張力γが30[mN/m]程度の水性インクとしてクリーニング性能を評価する実験を行った結果、搬送ベルト28上にインクの残渣は存在せず、クリーニング性は良好であった。
ここで、搬送ベルト28に付着したインク滴を、残らずクリーニングするためには、まず、記録ヘッド32から搬送ベルト28へ向けて吐出されたインク滴が、必ず、搬送ベルト28上のシリコーンオイルの膜の上に着弾するようにしなければならず、そして、シリコーンオイルの膜の上に着弾した全てのインク滴に対して、ブレード49によるクリーニングが行われなければならない。
また、搬送ベルト28とブレード49との長期間の信頼性を確保し、搬送ベルト28がブレード49から受ける負荷の変動を抑制するためには、搬送ベルト28とブレード49との摩擦を、搬送方向と直交する方向の幅全域において緩和しなければならない。
そのためには、図5に示すように、記録ヘッド32がインク滴を吐出する搬送方向と直交する方向の幅の最大値(以下、最大印字幅という)L0と、ブレード49が搬送ベルト28を清掃する搬送方向と直交する方向の幅(以下、清掃幅という)L1と、オイル塗布ロール70が搬送ベルト28にシリコーンオイルを塗布する搬送方向と直交する方向の幅(以下、塗布幅という)L2とが下記(1)式を満足している必要がある。なお、清掃幅L1は、ブレード49と搬送ベルト28とが接触する搬送方向と直交する方向の幅と等しく、塗布幅L2は、オイル塗布ロール70と搬送ベルト28とが接触する搬送方向と直交する方向の幅と等しい。
L2≧L1≧L0…(1)
ブレード49の清掃幅L1が、記録ヘッド32の最大印字幅L0以上であることによって、搬送ベルト28上のシリコーンオイルの膜のインク滴が付着した範囲全域に対して、ブレード49による清掃が行われる。
また、オイル塗布ロール70の塗布幅L2が、記録ヘッド32の最大印字幅L0以上であることによって、搬送ベルト28上の全てのインク滴と搬送ベルト28との間にシリコーンオイルの膜が介在し、搬送ベルト28上の全てのインク滴と搬送ベルト28との付着力の増加が抑制される。従って、搬送ベルト28上にインクの残渣が存在しないように、良好に搬送ベルト28をクリーニングできる。
さらに、オイル塗布ロール70の塗布幅L2が、ブレード49の清掃幅L1以上であることによって、搬送ベルト28の搬送方向と直交する方向の全域において、搬送ベルト28とブレード49との間にシリコーンオイルの膜が介在し、搬送ベルト28とブレード49との摩擦が緩和される。従って、搬送ベルト28とブレード49との傷の発生を抑制できるので、搬送ベルト28とブレード49との信頼性を向上でき、また、搬送ベルト28がブレード49から受ける負荷の変動を抑制できる。
なお、本実施形態では、塗布幅L2、清掃幅L1を最大印字幅L0より長くし、塗布幅L2を清掃幅L1より長くしている。
また、搬送ベルト28に付着したインクミストによって用紙Pが汚れることを防止するためには、用紙Pの搬送方向と直交する方向の幅(以下、用紙幅という)L3と、清掃幅L1とが、下記(2)式を満足する必要がある。
L1≧L3…(2)
清掃幅L1が、用紙幅L3以上であることによって、搬送ベルト28上の用紙Pが接触する範囲内に付着したインクミストが、ブレード49によって全て掻き取られるので、搬送ベルト28に付着したインクミストによって用紙Pが汚れることを防止できる。
また、図6に示すように、搬送ベルト28によって用紙Pを安定して搬送するためには、用紙幅L3と、帯電ロール36が搬送ベルト28を帯電する搬送方向と直交する方向の幅(以下、帯電幅という)L4とが、下記(3)式を満足する必要がある。なお、帯電ロール36の帯電幅L4は、帯電ロール36と搬送ベルト28とが接触する搬送方向と直交する方向の幅と等しい。
L4≧L3…(3)
帯電ロール36の帯電幅L4が、用紙幅L3以上であることによって、用紙Pの幅全体を搬送ベルト28に静電吸着させることができ、搬送ベルト28によって用紙Pを安定して搬送することができる。なお、本実施形態では、帯電幅L4を用紙幅L3より長くしている。
また、搬送ベルト28上に除電ロール62による除電が行われない範囲が存在する場合、この範囲において、埃の付着やスパークの発生等が起こったり、また、この範囲と記録ヘッド32との間の静電吸引力が異常に増大して記録ヘッド32と搬送ベルト28との接触が発生したりすることがある。
このため、搬送ベルト28上の電荷を、除電ロール62によって完全に除去することが望ましいので、帯電ロール36の帯電幅L4と、除電ロール62が搬送ベルト28を除電する搬送方向と直交する方向の幅(以下、除電幅という)L5が下記(4)式を満足している必要がある。
L5≧L4…(4)
除電ロール62の除電幅L5が、帯電ロール36の帯電幅L4以上であることによって、搬送ベルト28上の帯電ロール36によって帯電された範囲全域が、除電ロール62によって除電されるので、搬送ベルト28上の残留電荷に起因する種々の問題の発生を抑制できる。なお、本実施形態では、除電幅L5を帯電幅L4より長くしている。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
図7、図8に示すように、本実施形態の液滴吐出装置としてのインクジェット記録装置100は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、黒(K)、シアン(C)の4色のインクで用紙Pにフルカラー画像を形成するフルカラープリンタである。また、インクジェット記録装置100は、所謂オフセット印刷方式を用いたプリンタであり、記録ヘッドアレイ30が、担持体としての中間転写ドラム14に向けてインクを吐出して一旦中間転写ドラム104上にインク像を形成し、中間転写ドラム104から用紙Pにインク像を転写する。
インクジェット記録装置100の最下部には、給紙トレイ16が挿抜可能に設けられている。この給紙トレイ16には、用紙Pが積載されており、最上位の用紙Pにはピックアップロール18が当接している。用紙Pは、ピックアップロール18によって1枚ずつ給紙トレイ16から搬送方向下流側へ給紙され、搬送経路に沿って順に配設された搬送ロール109、120、121、123、125によって画像形成部122へ給紙される。なお、搬送ロール123、125は、用紙Pのインク像を転写される面に当接するロールがスターホイールとなっている。
画像形成部122では、中間転写ドラム104が搬送経路に面して配設され、記録ヘッドアレイ30が中間転写ドラム104の上方に配設され、また、メンテナンスユニット34が記録ヘッドアレイ30に近接されている。
図7に示すように、記録ヘッドアレイ30は、インク滴吐出時に、中間転写ドラム14に接近する。また、図8に示すように、記録ヘッドアレイ30は、メンテナンス時に、中間転写ドラム14から遠ざかって中間転写ドラム14との間にメンテナンスユニット34が入り込むスペースを確保する。
また、図7に示すように、メンテナンスユニット34は、画像形成時に、記録ヘッドアレイ30からインク滴が吐出される吐出領域SEの外側に退避する。また、図8に示すように、メンテナンスユニット34は、非画像形成時に、吐出領域SEに侵入する。
また、図7、図8に示すように、中間転写ドラム104の搬送経路側には、搬送方向上流側から順に転写手段としての帯電ロール128、転写手段としての除電ロール130、及び剥離爪132が当接している。帯電ロール128は、用紙Pを中間転写ドラム104に押圧しながら搬送すると共に用紙Pに電荷を与えることで、用紙Pを中間転写ドラム104に静電吸着させ、インク像を用紙Pに転写させる。また、除電ロール130は、用紙Pを搬送しながら用紙Pの電荷を除去することで、用紙Pと中間転写ドラム104との静電吸着を解除する。そして、剥離爪132は、用紙Pを中間転写ドラム104から剥離する。
そして、剥離爪132の搬送方向下流側には、搬送方向上流側から順に搬送ロール127、129、131、133、135、137、139が配置されている。搬送ロール127、133、135、137、139は、用紙Pのインク像が転写された面に当接するロールがスターホイールとなっており、用紙Pのインク像が転写された面とロールとの接触が少なくなっている。
また、インクタンク35の上方には排紙トレイ46が配置され、この排紙トレイ46の側方には搬送ロール139が配置されている。即ち、搬送ロール139によって用紙Pが排紙トレイ46上に排出される。
図9に示すように、剥離爪132より中間転写ドラム14の回転方向下流側且つ記録へッドアレイ30より中間転写ドラム14の回転方向上流側には、ドラムクリーニングユニット148が配置されている。このドラムクリーニングユニット148は、中間転写ドラム104の周面に当接し、用紙Pに転写されずに中間転写ドラム104に残留したインク等を掻き取る、清掃手段としてのブレード49と、ブレード49によって中間転写ドラム104から掻き取られたインク等を回収する回収ボックス51とを備えている。なお、回収ボックス51の底部には、吸収体53が敷き詰められており、ブレード49から滴下する液体を吸収する。
また、ブレード49より中間転写ドラム14の回転方向下流側且つ記録ヘッドアレイ30より中間転写ドラム14の回転方向上流側には、オイル塗布ユニット164が配置されている。このオイル塗布ユニット164は、ケース68と、ケース68に回転可能に支持された、塗布手段としてのオイル塗布ロール70と、を備えている。オイル塗布ロール70は、中間転写ドラム104に圧接されており、中間転写ドラム104に従動して回転する。また、オイル塗布ロール70は、ポリエチレンやウレタン等の多孔質体で形成され、潤滑剤としてのシリコーンオイルを含浸しており、中間転写ドラム104にシリコーンオイルを塗布する。このため、中間転写ドラム104とブレード49との間にシリコーンオイルの膜が介在するので、中間転写ドラム104とブレード49との間の摩擦が緩和される。
また、記録ヘッド32から吐出されるインクは、水性インクとなっているので、中間転写ドラム104上のシリコーンオイルの膜の撥水効果によりインクが凝集する。従って、インクが中間転写ドラム104に付着する力の増加を抑制でき、ブレード49によって中間転写ドラム104をクリーニングする際、インクが中間転写ドラム104から容易に剥離される。
なお、オイル塗布ロール70は、駆動ロールとしても良い。この場合、オイル塗布ロール70が中間転写ドラム104に対して滑ることを防止できる。
ここで、潤滑剤は、中間転写ドラム104上で濡れ広がる必要があるので、下記(A)式の関係が必要である。但し、図10に示すように、潤滑剤Jの表面張力をγ、中間転写ドラム104の臨界表面張力γとする。
γ<γ…(A)
また、潤滑剤Jに撥水性を持たせるためには、下記(B)式の関係が必要となる。但し、インクIの表面張力をγとする。
γ<γ…(B)
これによって、第1実施形態と同様、インクIは潤滑剤Jの膜上で濡れ広がることなく、凝集するので、ブレード49によって中間転写ドラム104上のインクが掻き取られ易くなる。
ここで、中間転写ドラム104に残留したインク滴を、残らずクリーニングするためには、まず、記録ヘッド32から中間転写ドラム104へ向けて吐出されたインク滴が、必ず、中間転写ドラム104上のシリコーンオイルの膜の上に着弾するようにしなければならず、そして、シリコーンオイルの膜の上に着弾した全てのインク滴に対して、ブレード49によるクリーニングが行われなければならない。
また、中間転写ドラム104とブレード49との長期間の信頼性を確保し、中間転写ドラム104がブレード49から受ける負荷の変動を抑制するためには、中間転写ドラム104とブレード49との摩擦を、搬送方向と直交する方向の幅全域において緩和しなければならない。
そのためには、図11に示すように、記録ヘッド32がインク滴を吐出する搬送方向と直交する方向の幅の最大値(以下、最大印字幅という)D0と、ブレード49が中間転写ドラム104を清掃する搬送方向と直交する方向の幅(以下、清掃幅という)D1と、オイル塗布ロール70が中間転写ドラム104にシリコーンオイルを塗布する搬送方向と直交する方向の幅(以下、塗布幅という)D2とが下記(5)式を満足している必要がある。なお、清掃幅D1は、ブレード49と中間転写ドラム104とが接触する搬送方向と直交する方向の幅と等しく、塗布幅D2は、オイル塗布ロール70と中間転写ドラム104とが接触する搬送方向と直交する方向の幅と等しい。
D2≧D1≧D0…(5)
ブレード49の清掃幅D1が、記録ヘッド32の最大印字幅D0以上であることによって、中間転写ドラム104上のシリコーンオイルの膜のインク滴が付着した範囲全域に対して、ブレード49による清掃が行われる。
また、オイル塗布ロール70の塗布幅D2が、記録ヘッド32の最大印字幅D0以上であることによって、中間転写ドラム104上の全てのインク滴と中間転写ドラム104との間にシリコーンオイルの膜が介在し、中間転写ドラム104上の全てのインク滴と中間転写ドラム104との付着力の増加が抑制される。従って、中間転写ドラム104上にインクの残渣が存在しないように、良好に中間転写ドラム104をクリーニングできる。
さらに、オイル塗布ロール70の塗布幅D2が、ブレード49の清掃幅D1以上であることによって、中間転写ドラム104の搬送方向と直交する方向の全域において、中間転写ドラム104とブレード49との間にシリコーンオイルの膜が介在し、中間転写ドラム104とブレード49との摩擦が緩和される。従って、中間転写ドラム104とブレード49との傷の発生を抑制できるので、中間転写ドラム104とブレード49との信頼性を向上でき、また、中間転写ドラム104がブレード49から受ける負荷の変動を抑制できる。
なお、本実施形態では、塗布幅D2、清掃幅D1を最大印字幅D0より長くし、塗布幅D2を清掃幅D1より長くしている。
また、図12に示すように、中間転写ドラム104に付着したインクミストによって用紙Pが汚れることを防止するためには、用紙Pの搬送方向と直交する方向の幅(以下、用紙幅という)D3と、清掃幅D1とが、下記(6)式を満足する必要がある。
D1≧D3…(6)
清掃幅D1が、用紙幅D3以上であることによって、中間転写ベルト104上の用紙Pが接触する範囲内に付着したインクミストが、ブレード49によって全て掻き取られるので、中間転写ドラム104に付着したインクミストによって用紙Pが汚れることを防止できる。
なお、第1、第2実施形態では、インクジェット記録装置を例に取って本発明を説明したが、本発明は、インクジェット記録装置に限らず、高分子フィルム上に着色インクを吐出して行うディスプレイ用のカラーフィルターの作製、有機EL溶液を基板上に吐出させて行うELディスプレイパネルの形成など、様々な工業的用途を対象とした液滴吐出装置一般に対して、適用可能である。
また、本発明の液滴吐出装置において画像記録の対象となる「記録媒体」には、液滴吐出ヘッドが液滴を吐出する対象物であれば広く含まれる。したがって、記録媒体には、記録用紙やOHPシートなどが含まれるのはもちろんであるが、これら以外にも、たとえば、高分子フィルムなどが含まれる。
また、本発明の液滴吐出装置における「液滴吐出ヘッド」には、記録媒体や担持体等に向けて液滴を吐出する手段であれば広く含まれる。例えば、用紙Pの幅よりも短尺で用紙Pの幅方向に移動しながらインク滴を吐出するインクジェット記録ヘッドなどが含まれる。
また、本発明の液滴吐出装置における「搬送部材」には、記録媒体を保持して搬送する部材であれば広く含まれる。例えば、記録媒体を周面で保持して回転するドラムや、記録媒体を保持して往復動するテーブルなどが含まれる。
また、本発明の液滴吐出装置における「搬送手段」には、記録媒体を担持体に接触させて搬送する手段であれば広く含まれる。例えば、記録媒体を狭持搬送する搬送ロールなどが含まれる。
また、本発明の液滴吐出装置における「担持体」には、液滴吐出ヘッドから吐出された液体を担持する部材であれば広く含まれる。例えば、液滴を担持して回転するベルトなどが含まれる。
また、本発明の液滴吐出装置における「清掃部材」には、搬送部材に付着した液滴を清掃する部材であれば広く含まれる。例えば、搬送部材に接触して回転し、液滴を吸収するクリーニングロールや、搬送部材に接触して、搬送方向と交差する方向へ移動する移動式のブレードなどが含まれる。
また、本発明の液滴吐出装置における「清掃手段」には、担持体に付着した液滴を清掃する手段であれば広く含まれる。例えば、担持体に接触して回転し、液滴を吸収するクリーニングロールや、担持体に接触して、搬送方向と交差する方向へ移動する移動式のブレードなどが含まれる。
また、本発明の液滴吐出装置における「塗布部材」には、潤滑剤を、搬送部材に塗布する部材であれば広く含まれる。例えば、搬送部材に向けて潤滑剤を吐出する液滴吐出ヘッドや、潤滑剤を含浸し、搬送部材に接触するウェブや、潤滑剤を表面に保持し、搬送部材に接触して回転するロールや、潤滑剤を含浸又は表面に保持し、搬送部材に接触して搬送方向と交差する方向へ移動するロールなどが含まれる。
また、本発明の液滴吐出装置における「塗布手段」には、潤滑剤を、担持体に塗布する手段であれば広く含まれる。例えば、担持体に向けて潤滑剤を吐出する液滴吐出ヘッドや、潤滑剤を含浸し、担持体に接触するウェブや、潤滑剤を表面に保持し、担持体に接触して回転するロールや、潤滑剤を含浸又は表面に保持し、担持体に接触して搬送方向と交差する方向へ移動するロールなどが含まれる。
また、本発明の液滴吐出装置における「帯電手段」には、搬送部材を帯電する手段であれば広く含まれる。例えば、搬送部材を非接触帯電するコロトロンなどが含まれる。
さらに、本発明の液滴吐出装置における「除電手段」には、搬送部材を除電する手段であれば広く含まれる。例えば、搬送部材を除電する除電ランプなどが含まれる。
本発明の第1実施形態のインクジェット記録装置の概略を示す側面図である。 本発明の第1実施形態のインクジェット記録装置の概略を示す側面図である。 本発明の第1実施形態のインクジェット記録装置の印字部の概略を示す側面図である。 本発明の第1実施形態のインクジェット記録装置に備えられた搬送ベルトを拡大して示す断面図である。 本発明の第1実施形態のインクジェット記録装置における、記録ヘッドの最大印字幅L0と、ブレードの清掃幅L1と、オイル塗布ロールの塗布幅L2と、用紙幅L3との関係を示す図である。 本発明の第1実施形態のインクジェット記録装置における、用紙幅L3と、帯電ロールの帯電幅L4と、除電ロールの除電幅L5との関係を示す図である。 本発明の第2実施形態のインクジェット記録装置の概略を示す側面図である。 本発明の第2実施形態のインクジェット記録装置の概略を示す側面図である。 本発明の第2実施形態のインクジェット記録装置の印字部の概略を示す側面図である。 本発明の第2実施形態のインクジェット記録装置に備えられた中間転写ドラムの表面を拡大して示す断面図である。 本発明の第2実施形態のインクジェット記録装置における、記録ヘッドの最大印字幅D0と、ブレードの清掃幅D1と、オイル塗布ロールの塗布幅D2との関係を示す図である。 本発明の第2実施形態のインクジェット記録装置における、ブレードの清掃幅D1と用紙幅D3との関係を示す図である。
符号の説明
12 インクジェット記録装置(液滴吐出装置)
28 搬送ベルト(搬送部材)
32 インクジェット記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)
36 帯電ロール(帯電手段)
49 ブレード(清掃部材、清掃手段)
62 除電ロール(除電手段)
70 オイル塗布ロール(塗布部材、塗布手段)
100 インクジェット記録装置(液滴吐出装置)
104 中間転写ドラム(担持体)
128 帯電ロール(転写手段)
130 除電ロール(転写手段)
P 用紙(記録媒体)

Claims (4)

  1. 液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、
    記録媒体を保持し前記液滴吐出ヘッドに対向させて搬送する搬送部材と、
    潤滑剤を前記搬送部材に塗布する塗布部材と、
    前記搬送部材を清掃する清掃部材と、
    前記搬送部材を帯電する帯電手段と、
    前記搬送部材を除電する除電手段と、
    を備え、
    搬送部材の搬送方向の順に、前記清掃部材、前記除電手段、前記塗布部材が前記搬送部材に沿って配置されるとともに、前記清掃部材が前記搬送部材を清掃する搬送方向と直交する方向の幅L1、前記塗布部材が前記搬送部材に前記潤滑剤を塗布する搬送方向と直交する方向の幅L2、記録媒体の搬送方向と直交する方向の幅L3、前記帯電手段が前記搬送部材を帯電する搬送方向と直交する方向の幅L4および前記除電手段が前記搬送部材を除電する搬送方向と直交する方向の幅L5が、下記(1)式および(2)式を満足することを特徴とする液滴吐出装置。
    L2≧L1≧L3・・・(1)
    L5≧L4≧L3・・・(2)
  2. 前記搬送部材は、回転可能に設けられた複数のロールに張架された無端状のベルトであって、前記清掃部材は、前記液滴吐出ヘッドの前記搬送方向下流側で最も当該液滴吐出ヘッドに近い位置にある前記ロールに、前記ベルトを介して押し当てられていることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出装置。
  3. 前記塗布部材は、前記搬送部材に向けて前記潤滑剤を吐出して塗布することを特徴とする請求項1または2に記載の液滴吐出装置。
  4. 前記搬送部材に前記塗布部材が前記潤滑剤を塗布した後、当該潤滑剤のうち余剰分を掻き取ることで所定の厚みに調整することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の液滴吐出装置。
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