JP2009083314A - 画像形成方法及びインクジェット記録装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】処理液とインクとを反応させてインクを凝集させる画像形成方式において、画像形成体上におけるドットサイズの異常やドットの位置ズレを防止し、高品位かつ定着性に優れた画像の形成を可能とする画像形成方法及びインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】中間転写体12の画像形成領域の全面にインクを凝集させない機能を有し、ポリマー微粒子21を含有する第1処理液を付与し、第1処理液層22に画像データに基づいて顔料微粒子を含有するインク液滴24を打滴し、インク液滴24に対応して第2処理液を打滴する。第1処理液層22に着弾したインク液滴24は凝集することなく所定の大きさに広がることができ、中間転写体12との所定の接着力を得ることができる。また、第1処理液層22内のポリマー微粒子21によってインク液滴24の移動を抑制し、ドットサイズ異常やドットの位置ズレが防止された好ましい画像を得ることができる。
【選択図】図3
【解決手段】中間転写体12の画像形成領域の全面にインクを凝集させない機能を有し、ポリマー微粒子21を含有する第1処理液を付与し、第1処理液層22に画像データに基づいて顔料微粒子を含有するインク液滴24を打滴し、インク液滴24に対応して第2処理液を打滴する。第1処理液層22に着弾したインク液滴24は凝集することなく所定の大きさに広がることができ、中間転写体12との所定の接着力を得ることができる。また、第1処理液層22内のポリマー微粒子21によってインク液滴24の移動を抑制し、ドットサイズ異常やドットの位置ズレが防止された好ましい画像を得ることができる。
【選択図】図3
Description
本発明は画像形成方法及びインクジェット記録装置に係り、特に画像形成体上にインク液滴及びインクの凝集作用(硬化作用)を発現させる処理液を付与し、画像形成体にインク液滴によるドットを形成する画像形成技術に関する。
現在、デジタルカメラにより撮影された画像や印刷物の複製画像などを出力する汎用の画像形成装置としてインクジェット記録装置が好適に用いられている。インクジェット記録装置は、紙のみならず樹脂シートや金属シートなど多種多様な記録媒体を用いることが可能であり、最近の動向として、記録媒体の種類によらず高品位画像を出力したいという要望が高くなっている。
しかし、普通紙や再生紙などの浸透性を有する記録媒体(非浸透媒体)を用いる場合には、記録媒体の繊維に沿ったインク滲みである「フェザーリング」が発生する。また、非浸透性媒体や浸透速度が非常に遅い低浸透性を有する記録媒体を用いる場合には、記録媒体上に吐出されたインクを記録媒体が吸収しきれずに流れてしまう「はじき」と呼ばれる現象が発生したり、記録媒体に着弾したインクによるドットが集合し、隣接したインクドット同士が混ざり合う「ビーディング」が発生したりする。更にまた、カラー画像を形成する場合には、重なり合った色の境界部分が滲む「ブリーディング」が発生する。
浸透性媒体を用いる場合に生じるフェザーリングを防止する方式として、中間転写体上に画像(鏡像)を形成し、中間転写体に画像を仮固定した後に中間転写体上に形成された画像を記録媒体に転写する転写方式が提案されている。
転写方式では、非浸透性を有する中間転写体上に1次画像を形成した後に当該1次画像を記録媒体へ転写記録するので、中間転写体上の1次画像にはインクの浸透によるフェザーリングが発生しない。また、中間転写体に1次画像を仮固定する際に、インク液滴を乾燥させるとともに増粘させるので、記録媒体に転写された後の記録媒体へのインクの浸透が抑制されるとともに、記録媒体の繊維に沿ってインクが広がるフェザーリングも抑制される。
一方、中間転写体上で隣接するインク液滴同士が接触すると、着弾干渉(ビーディング)が発生することがある。図14(a)には、少なくとも接触するように配置される2つのドットを形成する2つのインク液滴200及びインク液滴202が記録媒体204上に着弾した状態を示す。図14(a)に示すように、2つのドットを形成するインク液滴200、202は、大気中に存在するために、その周囲にはメニスカス(大気とインク液滴の界面)206、208が存在する。インク液滴200のメニスカス206とインク液滴202のメニスカス208が互いに接触すると(図14(a)には、メニスカスの接触部分を符号210で図示)、インク液滴200とインク液滴202は表面張力(表面自由エネルギーのバランス)の関係で互いに引き合い、その結果、インク液滴200及びインク液滴202は記録媒体204上で合一してしまう。図14(b)には、図14(a)に示すインク液滴200とインク液滴202が合一して形成されたインク液滴212を示す。
このような現象は、樹脂シートや金属シートなどの非浸透性を有する記録媒体に直接画像形成を行う方式でも問題となる。
上述した着弾干渉よる画像劣化を回避する方法として、中間転写体上(または、非浸透性を有する記録媒体上)でインクと処理液を反応させて中間転写体へのインクの定着を促進する、いわゆる2液系の画像形成方式が提案されている。
例えば、溶媒中に着色材として顔料を分散させた顔料系インクを用いる場合には、インク中に含まれる顔料の凝集を発現する処理液213をインク液滴212に先立ち記録媒体214に付与し、その後、画像データに応じてインク液滴212を付与する(図15(a)参照)。
記録媒体214上で処理液213とインク液滴212が接触し混合すると、図15(b)に示すように、記録媒体214上で処理液213とインク液滴212が反応し、インク凝集体216が形成される。図15(c)には、インク液滴212と処理液213の反応が終わり、インク凝集体216によるドットが形成された状態を図示する。
このように、記録媒体上でインク液滴を着弾と同時に素早く凝集(硬化)させることで、はじき、ビーディング、ブリーディングなどの現象の発生を防止することができる。上述した2液系の画像形成方式は、非浸透性有する媒体を用いる場合に、特に効果を発揮する。
特許文献1には、はじきやビーディング、ブリーディングが抑制された画像を中間転写体上に形成する方法として、転写ドラム(中間転写体)へインクの流動性を低下させる第1材料を付与し、その第1材料に対して着色インク液を付与し、樹脂を含有する第2材料を付与して、中間転写体上に形成されたインク像を記録媒体へ転写するインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置が提案されている。
特開2005−170036号公報
しかしながら、図15(a)〜(c)を用いて説明した従来技術に係る2液系の画像形成方式では、処理液量がインク液滴量に対して少な過ぎる場合には、インク液滴を凝集させる効果を十分に発揮することができない。また、処理液量がインク液滴量に対して過剰な場合には、インク液滴が十分に広がる前に凝集反応が終了してしまうので、インク液滴が所定の大きさに広がらず、所定のサイズのインク凝集体(ドット)を得ることができず、また、インク凝集体と記録媒体との間の所定の接触面積を確保できない。
更に、インク液滴が記録媒体に到着するまでに凝集反応が終了してしまうので、インク凝集体と記録媒体との間の接着力が十分ではなくなってしまい、インク凝集体(ドット)が不安定な付着状態(例えば、処理液内を浮遊する状態)となってしまう。即ち、処理液量がインク液滴量に対して過剰な場合には、ドットの移動及びドットサイズの異常による画像乱れが発生してしまう。
例えば、特許文献1に記載された発明において、インクの流動性を低下させる(凝集させる)ために転写ドラム上に付与する第1材料の厚さを3.5μm以上にして真球に換算したときの直径が30μm以下のインクを付与すると、インク(または、インク凝集体)が第1材料中を浮遊し画像が乱れるという問題が発生することが本願出願人の検証によって明らかになった。
一方、第1材料の厚さを1μm以上3.5μm未満にしてインク滴を付与すると、第1材料がインク滴に集まり、中間転写体に第1材料がなくなる「引け」現象が発生してしまう。インクの凝集力によって第1材料中でインク液滴が広がらず、所望のサイズのドットが形成されず、好ましいベタ画像が形成できないといった現象や、所望の幅よりも線幅が狭まるといった現象、ベタ画像が複数の線状に分離するといった現象などが発生してしまい、インクの凝集力による広がり率の低下や、色材(ドット)の移動が見られる。
更に、第1材料の厚さを1μm未満にすると、隣接する打滴点に重なるようにインク液滴を打滴する場合に、隣接するインク滴同士に着弾干渉が発生し、合一したインク液滴となってしまい、ドット形状に乱れが発生する現象(図14(b)参照)が見られることも明らかになった。
また、樹脂を含有する第2材料を付与して、中間転写体の画像を記録媒体に加熱転写すると、中間転写体の温度ムラに起因して樹脂が残存してしまい、中間転写体のクリーニング負荷を増加させてしまうとともに、第2材料が記録媒体に転写されて記録媒体に付着すると、記録画像の品質を低下させてしまうという問題が生じてしまうことも、本願出願人の検証により明らかになった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、処理液とインクとを反応させてインクを凝集させる画像形成方式において、画像形成体上におけるドットサイズの異常やドットの位置ズレを防止し、高品位かつ定着性に優れた画像の形成を可能とする画像形成方法及びインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る画像形成方法は、画像形成体上に着色材を含有するインク液を用いて画像を形成する画像形成方法であって、前記画像形成体に対して、微粒子水分散物を含有するとともに、前記インク液に含有する着色材の凝集反応を発現させない機能を有する第1処理液を付与し、前記画像形成体上に第1処理液層を形成する第1処理液付与工程と、前記第1処理液層が形成された前記画像形成体に画像データに基づいて前記インク液を液滴化して打滴するインク液滴打滴工程と、前記インク液滴打滴工程の後に、前記画像形成体に前記インク液の凝集反応を発現させる第2処理液を付与する第2処理液付与工程と、前記第2処理液付与工程の後に、前記画像形成体上の前記第1処理液及び前記インク液、前記第2処理液の液体溶媒を除去する溶媒除去工程と、を含むことを特徴とする。
本発明によれば、インク液の凝集作用を発現しない第1処理液を画素形成媒体に付与した後に液滴化されたインク液を打滴するので、第1処理液に着弾したインク液滴は第1処理液中で凝集することなく所定の大きさに広がることができるとともに、インク液滴が所定の大きさに広がることでインク液滴と画像形成媒体との間の所定の接着力が得られるので、インク液滴(ドット)が第1処理中を浮遊せずに画像形成体の所定の位置に付着する。また、第1処理液中において複数のインク液滴同士が接触しても、インク液滴間にメニスカスが存在しないので、これらのインク液滴は合一することがない。
更に、第1処理液に含有する微粒子水分散物は、第1処理液中におけるインク液滴の移動を抑制するので、請求項1に係る発明は非浸透性を有する画像形成体を用いるときに特に効果を発揮する。
第1処理液に含有する微粒子水分散物とは、微粒子として無機微粒子、ワックスなどの低分子有機化合物微粒子、ポリマー微粒子、有機化合物などを含有したマイクロカプセルなどを含む水分散物である。
インク液には、溶媒中に着色材として顔料微粒子を分散させた顔料系インクが好適に用いられる。また、インク液にも微粒子水分散物(例えば、ポリマー微粒子)を含有する態様も好ましい。
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の画像形成方法の一態様に係り、前記溶媒除去工程の後に、前記画像形成体上に形成された画像を記録媒体に転写する転写工程を含むことを特徴とする。
請求項2に記載の発明によれば、第1処理液に含有する微粒子水分散物が画像形成体と画像の間に介在することで、転写工程において画像形成体から画像を容易に剥離することができ、転写工程における転写性の向上が見込まれる。
転写工程において、画像形成体の温度が微粒子水分散物の軟化点温度になるように画像形成体を加熱する態様が好ましい。また、転写工程の前に画像が形成された画像形成体を微粒子水分散物の軟化点温度よりも低い温度で加熱する予備加熱工程を備えると、転写工程の処理時間を短縮することができ、好ましい。
また、転写工程後に画像形成体及び記録媒体を冷却する冷却工程と、画像形成体から記録媒体を剥離する剥離工程と、剥離工程後に画像形成体を清掃する清掃工程と、画像形成体から剥離された記録媒体に画像を定着させるために記録媒体を加熱する定着工程と、を含む態様が好ましい。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載の画像形成方法の一態様に係り、前記微粒子水分散物はポリマー微粒子であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明によれば、第1処理液に微粒子水分散物としてポリマー微粒子を含有することで、第2処理液と反応して増粘、凝集作用を発現し、また、ポリマー微粒子が記録画像の表面に皮膜を形成し、当該記録画像の耐刷性、耐水性の向上に寄与する。
ポリマー微粒子は、インク液に含有する着色材粒子よりも小さいものが好ましい。
請求項4に記載の発明は、請求項3記載の画像形成方法の一態様に係り、前記ポリマー微粒子は、80℃での動的貯蔵弾性率をG1、150℃での動的貯蔵弾性率をG2としたときに、次式Log(G1/G2)≦2を満たすことを特徴とする。
請求項4に係る発明によれば、ポリマー微粒子の80℃における動的貯蔵弾性率G1と150℃における動的貯蔵弾性率G2との変化が2以下の場合には、第1処理液中のインク液滴の浮遊や移動を抑制する。また、請求項2に記載の転写工程を含む態様では、加熱定着における温度分布に起因する転写性の悪化が抑止され、画像形成体から記録媒体への転写性の向上が見込まれる。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の画像形成方法の一態様に係り、前記第1処理液のpHは5以上であり、前記インク液はpH5未満で凝集する酸ポリマーを含有し、前記第2処理液のpHは5未満であることを特徴とする。
請求項5に記載の発明によれば、微粒子水分散物が極性変換を起こし、インク液に含有する着色材粒子との間に引力が発生し凝集力が強くなるとともに、インク液滴の凝集速度が速くなり、インク液滴は素早く凝集することができる。
また、上記目的を達成するための装置発明を提供する。即ち、請求項6に記載の発明に係るインクジェット記録装置は、画像形成体上に着色材を含有するインク液を用いて画像を形成するインクジェット記録装置であって、画像形成体上に対して、微粒子水分散物を含有するとともに、前記インク液に含有する着色材の凝集反応を発現させない機能を有する第1処理液を付与し、前記画像形成体上に第1処理液層を形成する第1処理液付与手段と、前記第1処理液層が形成された前記画像形成体に画像データに基づいて前記インク液を液滴化して打滴するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドによりインク液滴が吐出された前記画像形成体に、前記インク液の凝集反応を発現させる第2処理液を付与する第2処理液付与手段と、前記第2処理液付与手段により前記画像形成体上に第2の処理液が付与された後に、前記画像形成体上の前記第1処理液及び前記インク液、前記第2処理液の液体溶媒を除去する溶媒除去手段と、を備えたことを特徴とする。
第1処理液付与手段には、画像形成体の少なくとも画像形成領域の全域にわたって第1処理液を塗布する塗布手段を適用してもよいし、第1処理液を液滴化して打滴する打滴手段を適用してもよい。
また、溶媒除去手段は、画像形成体に接触して画像形成体上の溶媒成分を吸収除去する接触式の吸収手段を適用してもよいし、画像形成体に非接触で画像形成体上の溶媒成分を除去する非接触式の手段を適用してもよい。
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のインクジェット記録装置の一態様に係り、前記溶媒除去手段により前記画像形成体上の液体溶媒が除去された後に、前記画像形成体上に形成された画像を記録媒体に転写する転写手段を備えたことを特徴とする。
転写手段を備える転写方式では、画像形成体に形成される1次画像は、記録媒体に形成される画像の鏡像画像となる。
転写手段による転写時に、画像形成体及び記録媒体の温度が第1処理液に含有する微粒子水分散物の軟化点温度となるように、画像形成体及び記録媒体を加熱する加熱手段を備える態様が好ましい。
また、溶媒除去手段により画像形成体上の溶媒が除去された後、転写手段による転写前に、画像形成体を予備加熱する予備加熱手段を備える態様が好ましい。予備加熱手段により画像形成体及び記録媒体の温度を微粒子水分散物の軟化点温度未満とする態様が好ましい。
また、転写後に画像形成体及び記録媒体を冷却する冷却手段と、画像形成体から記録媒体を剥離する剥離手段と、画像形成体から記録媒体を剥離した後に画像形成体を清掃する清掃手段と、画像形成体から剥離された記録媒体に画像を定着させるために記録媒体を加熱する定着手段と、を含む態様が好ましい。
本発明によれば、インク液の凝集作用を発現しない第1処理液を画素形成媒体に付与した後に液滴化されたインク液を打滴するので、第1処理液に着弾したインク液滴は第1処理液中で凝集することなく所定の大きさに広がることができるとともに、インク液滴が所定の大きさに広がることでインク液滴と画像形成媒体との間の所定の接着力が得られるので、インク液滴(ドット)が第1処理中を浮遊せずに画像形成体の所定の位置に付着する。また、第1処理液中において複数のインク液滴同士が接触しても、インク液滴間にメニスカスが存在しないので、これらのインク液滴は合一することがない。更に、第1処理液に含有する微粒子水分散物は、第1処理液中におけるインク液滴の移動を抑制するので、所定の形状(サイズ)を有するドットが形成されるとともに、ドットの位置ズレが防止される。
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔第1実施形態、装置構成〕
図1は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置の概略構成図である。
図1は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置の概略構成図である。
図1に示すインクジェット記録装置10は、中間転写体12上に1次画像(鏡像画像)を形成し、中間転写体12上に形成された1次画像を記録媒体14へ転写する転写記録方式が適用される。
図2(a)〜(f)は、図1に示すインクジェット記録装置10の画像形成方式を手順に従い模式的に図示したものである。
先ず、インク液滴を凝集させない機能を有する第1処理液を中間転写体12に付与すると、第1処理液は中間転写体12に浸透せず、図2(a)に示すように、中間転写体12上には所定の厚みを有する第1処理液層(下塗層)22が形成される。
次いで、第1処理液層22が形成された中間転写体12にインク液滴24を連続して打滴する。第1処理液はインク液滴を凝集させる機能を有していないので、第1処理液層22に着弾したインク液滴24は、インク液滴24の飛翔エネルギーと界面エネルギーとの関係によって第1処理液層22内で十分に広がることができる(図2(b)参照)。
インク液滴24が連続的に順次打滴されると、隣接する打滴位置に打滴されたインク液滴が互いに接触した状態となるが(図2(c)参照)、これらの境界部分(接触部分)にはメニスカスが存在しないので、インク液滴の表面張力に起因する着弾干渉(合一)は発生しない。一方、インク液滴24と第1処理液との間には、濃度拡散による着色材の移動が発生するが、拡散速度は大きいものではなく、図2(d)に示す第2処理液25の打滴をインク液滴の打滴から所定の時間内に行うことができれば、拡散によるドットのぼやけは許容範囲内に抑止することが可能である。
即ち、拡散によるドット径の拡大(ぼやけ)は制御することが可能である。第1処理液の表面エネルギーがインク液滴24の表面エネルギーより大きい場合は、系全体(インク液滴24と第1処理液)の表面エネルギーを低下させるために、第1処理液中のインク液滴(ドット)は拡散し拡大する。即ち、(インク液滴の表面エネルギー)<(第1処理液の表面エネルギー)の場合には、インク液滴24が第1処理液に対して相対的に広がることで系全体の表面エネルギーが小さくなり安定した状態に遷移する。
しかしながら、第1処理液の表面エネルギーがインク液滴24の表面エネルギーより小さい場合には、同様の理由により系全体のエネルギーが高くなるので、第1処理液中のインク液滴の拡大が抑えられる。それ以降(表面エネルギー差によってインク液滴の広がる面積が規定された以降)の熱拡散(インク液滴の拡散)は極めて遅いため、第2処理液が供給されるまでの間(1秒以下)に拡散はほとんど進行しない。したがって、(インク液滴の表面エネルギー)>(第1処理液の表面エネルギー)の場合には、インク液滴24が第1処理液に対して相対的に縮むことで系全体の表面エネルギーが小さくなり安定した状態に遷移する。
図2(d)に示すように、インク液滴24に第2処理液25(図2(d)参照)が作用して、インク液滴の凝集反応が発現すると、インク凝集体26が形成される。なお、図2(d)に図示する状態では、インク液滴24は十分に広がり所定のサイズを有しているので、インク凝集体26と中間転写体12は所定の接着力が確保され、凝集反応によるインク凝集体の不安定な移動を防止することができる。インク液滴24と第2処理液25との凝集反応が終了すると、図2(f)に示すように、中間転写体12上にインク凝集体26によるドットが形成される。
即ち、本例に示すインクジェット記録装置10には、中間転写体12に第1処理液による第1処理液層22を形成し、第1処理液層22内にインク液滴24を打滴し、その後、第1処理液層22内のインク液滴24に対応して、インク液滴を凝集させる機能を有する第2処理液25が打滴され、インク液滴24と第2処理液25が反応することによりインク液滴(インク液滴に含まれる着色材(顔料))が凝集して、インク凝集体26が形成されるように構成される3液系画像形成方式が適用される。
図1に示すインクジェット記録装置10は、第1処理液を中間転写体12に付与する塗布ローラ16Aを含む第1処理液付与部16と、第1処理液付与部16の後段側に設けられ、黒(K),イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C)の各色の着色材を含むインクに対応して設けられた複数のインクジェットヘッド(インクヘッド)18K,18Y,18M,18Cを有する印字部18と、印字部18の後段側に設けられ、印字部18によってインクが付与された中間転写体12に対して、インクと反応してインクの凝集を発現する第2処理液を打滴する処理液ヘッド20と、を備えて構成されている。
本例に適用される中間転写体12は、印字部18と対向する表面(画像形成面)12Aの少なくとも1次画像が形成される画像形成領域(不図示)には、樹脂、金属やゴムなどのインク液滴が浸透しない非浸透性を有している。即ち、中間転写体12の画像形成領域に付与された第1処理液は、中間転写体12の内部に浸透することなく中間転写体12の表面12Aに保持され、所定の厚みを有する第1処理液層22を形成する。また、中間転写体12の少なくとも画像形成領域は、所定の平坦性を有する水平面(フラット面)をなすように構成されている。
なお、中間転写体12の画像形成領域を第1処理液に対する浸透速度が遅い媒体(第1処理液が付与されてから印字部18の直下に移動するまでに、第1処理液の量(厚み)の減少が10%以下の低浸透性を有する媒体)を適用することもできる。言い換えると、中間転写体12には、第1処理液が付与されてから印字部18の直下に移動するまでに、第1処理液の量(厚み)の減少が1%以下の難浸透性を有する媒体や、第1処理液の減少量が10%以下の低浸透性を有する媒体を含む非浸透性を有する媒体が適用される。
第1処理液は、インク液滴と接触してもインク液滴を凝集させる機能を有していない液体であって、例えば、インクヘッド18K,18Y,18M,18Cから打滴される各色インクから着色材を取り除いた液体を用いることができる。また、図3(a)に示すように、第1処理液は、微粒子水分散物21を含有し、第1処理液から成る第1処理液層22に打滴されたインク液滴(図3(b)に符号24で図示)の移動を抑制する機能を有している。
即ち、第1処理液は、実質的にインク液滴の着色材を凝集させることなく、且つ、第1処理液中におけるインク液滴の移動を防止するために、微粒子水分散物を含有している。第1処理液中でインク液滴を凝集させないことで、第1処理液に着弾するインク液滴は所定の大きさに広がることができ(所望の広がり率を確保することが可能となり)、所定サイズのドットが形成されることで、例えば、ベタ画像形成が可能となる。
更に、第1の処理液は、微粒子水分散物21を含有する。微粒子水分散物21同士は分散機能を有しているので、第1の処理液層22内における微粒子水分散物21の移動が抑止され、微粒子水分散物21がインク液滴24の浮遊や移動を抑えるという効果を発揮するとともに、中間転写体12とインク液滴24との間に微粒子水分散物21があることで、中間転写体12とインク液滴との密着性を高める効果を発揮する。
ここで、インク液滴の「広がり率」とは、液柱状インク液滴を真球に置き換えたときに、吐出体積から算出される当該真球の直径に対する記録媒体上のドット定着直径の割合で定義される。インク液滴の広がり率が1.5以上になると、インクの広がり率が1.5未満の場合に比べて中間転写体12に形成される画像の鮮明度が増すので好ましい。なお、インク液滴の広がり率を2.0以上とすると、中間転写体12に形成される画像はより鮮明になる。
例えば、文字品質とベタ画像の濃度を両立させるために、記録画像の解像度を1200dpi×1200dpi、ドットの直径を30μmとしたときに、インク液滴(ドット)の広がり率が1.5以上であれば、最小限のインク液滴量で所望の画像を得ることができるとともに、溶媒除去の負荷も低減できる。
第1処理液層22に含まれる微粒子水分散物21は、シリコンオイルやワックス、ポリマー微粒子等が好適に用いられる。なお、第1処理液層22は、画像形成の観点から無色透明であることが好ましい。したがって、第1処理液層22に含有する微粒子水分散物21として顔料(着色材)は適していないので、第1処理液層22に含有する微粒子水分散物21から顔料は除かれる。
特に、微粒子水分散物21としてポリマー微粒子を用いる場合には、アニオン部位とカチオン部位の両方を備えた構造が好ましい。第2処理液25を打滴した後に、第1処理液層22とインク液滴24と第2処理液25の混合液がpH5以下となると、微粒子水分散物21(ポリマー微粒子)がマイナスからプラスへの極性変換を起こし、インク液滴24に含有する着色材との間に引力が発生し凝集力が強くなるとともに、インク液滴24の凝集速度が速くなり、インク液滴24は素早く凝集することができる。
中間転写体12に第1処理液層22が形成された状態で、画像データに応じてインク液滴24を打滴すると、図3(b)に示すように、第1処理液層22に着弾したインク液滴24は凝集することなく、当該インク液滴24は所定のサイズに広がるとともに中間転写体12の表面12Aに保持される。また、図示は省略するが、第1処理液層22内で隣接する打滴位置に打滴されたインク液滴同士が接触しても、これらのインク液滴の境界部分にはメニスカス(気相と液相の界面)が存在しないので、これらのインク液滴に作用する表面張力に起因する合一の発生が防止される。
また、第1処理液層22内におけるインク液滴24の拡散速度を低減化するために、第1処理液とインクの表面張力の差を小さくすることが好ましい。例えば、第1処理液の表面張力をγ1(mN/m)、インクの表面張力をγ2(mN/m)とするときに、γ1(mN/m)≦γ2−5(mN/m)の関係を満たすように第1処理液及びインクの表面張力を調整すると、インク液滴24が第1処理液層22の中で拡散せずに留まろうとする作用を発現することが可能になる。第1処理液及びインクの表面張力に含有する界面活性剤の含有量を相対的に大きくすると、第1処理液及びインクの表面張力を相対的に大きくすることができ、第1処理液及びインクの表面張力に含有する界面活性剤の含有量を相対的に小さくすると、第1処理液及びインクの表面張力を相対的に小さくすることができる。
一方、第2処理液25は、インク液滴24と接触するとインク液滴24の凝集を発現させる機能を有している。第1処理液層22中にインク液滴24が打滴された後に、インク液滴24に応じて第2処理液25を打滴すると、第1処理液層22内でインク液滴24と第2処理液25が接触し、インク液滴24の凝集作用が発現し、図3(c)に示すように、ドットとなるインク凝集体26が形成される。
インクヘッド18K,18Y,18M,18Cから打滴される各色インクは、各色の着色材を含有する着色インクであり、本例では、着色材として顔料粒子を溶媒中に分散させた顔料系インクが適用される。なお、第1処理液及びインク、第2処理液の詳細については後述する。
図1に示す中間転写体12には無端状ベルトが適用され、中間転写体(無端状ベルト)12は複数の張架ローラ(図1には7つの張架ローラ30A〜30Gを図示)に巻きかけられた構造を有し、張架ローラ30A〜30Gの少なくとも1つにモータ(図1中不図示、図8に符号88として図示)の動力が伝達されることにより、中間転写体12は、図1において反時計回り方向(図1中、矢印線Aで示す方向)に駆動される。
中間転写体12の画像形成面12Aを含む表面層に用いられる好ましい材料としては、例えば、ポリイミド系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、フッ素系樹脂等の公知の材料が挙げられる。
また、中間転写体12の表面層の表面張力は10mN/m以上40mN/m以下とする態様が好ましい。中間転写体12の表面層の表面張力を40mN/m以上とすると、1次画像が転写される記録媒体14との表面張力差がなくなり(または、極めて小さくなり)、インク凝集体の転写性が悪化する。更に、中間転写体12の表面層の表面張力が10mN/m以下であると、第1処理液のぬれ性を考慮した場合に、第1処理液の表面張力を中間転写体12の表面層の表面張力よりも小さくする必要があり、第1処理液の表面張力を10mN/m以下とすることが困難となり、中間転写体12及び第1処理液の設計自由度(選択範囲)が狭くなる。
なお、中間転写体12の表面層に表面粗さRa0.3μm程度の凹凸があると、インク液滴やインク凝集体の移動が抑制される効果があり、より好ましい。
第1処理液を付与する第1処理液付与部16は、塗布ローラ16Aと、第1処理液が収容される塗布液容器16Bを備え、塗布ローラ16Aを介して塗布液容器16B内に収容される第1処理液は中間転写体12の画像形成面12Aに塗布される。
塗布ローラ16Aは中間転写体12に対して従動して回動するか、独立して塗布ローラ16Aが駆動し回動制御可能に構成されている。第1処理液の中間転写体12への塗布厚(図2(a)に示す第1処理液層22の膜厚t)は、3〜10μmの範囲で設定することが好ましい。塗布厚が3μm未満となり薄すぎると塗布ムラの発生が懸念され、一方、塗布厚が10μmを超え厚すぎると溶媒除去の負荷が増加してしまう。
即ち、第1処理液の塗布厚tは、着弾して広がったインク液滴(図2(b)に符号24で図示)の厚みである中間転写体12の表面に対して垂直方向の高さh(図2(b)参照)より厚いこと(広がったインク液滴を第1の処理液で被覆すること)が好ましい。第1処理液の塗布厚よりもインク液滴の厚みが大きいと、インク滴表面と空気層に界面ができて、隣接するインク液滴同士が表面張力により液滴が合一してしまう。
第1処理液中にインク液滴が存在し、インク液滴が第1の処理液で完全に覆われることで、インク液滴と空気層との界面が存在せず、合一が発生しない。
第1処理液の塗布厚を制御するには、塗布ローラ16Aと中間転写体12との接触時間を制御する態様が好ましい。塗布ローラ16Aと中間転写体12との接触時間を相対的に長くすると第1処理液の塗布厚は相対的に大きくなり、塗布ローラ16Aと中間転写体12との接触時間を相対的に短くすると第1処理液の塗布厚は相対的に小さくなる。なお、インク液滴サイズが複数存在する場合には、最も大きいサイズのインク液滴に合わせて第1処理液の塗布厚を決めるとよい。
本例では、最大ドット径は15μmであり、このサイズのドットを形成するインク液滴の体積は2plとなり、体積2plを有するインク液滴が第1処理液に打滴されて第1処理液内で広がると高さ2.5μmとなる。
塗布ローラ16Aには、多孔質材料や表面に凹凸がある材料が望ましく、例えば、グラビアロール状のもの等を用いることができる。本例では、第1処理液を中間転写体12に付与する手段としては、ローラ形状を有する塗布部材を例示したが、第1処理液を中間転写体12に付与する手段はローラ形状に限定されず、ブレードにより塗布する方式やスプレー、インクジェット方式の液体吐出ヘッドを用いることができる。特に、インクジェット方式の場合、記録画像(画像データ)に応じて第1処理液を正確にパターンニングして付与することができる。
第1処理液付与部16によって第1処理液を付与された中間転写体12の画像形成領域は、中間転写体12の移動とともに、第1処理液付与部16の中間転写体移動方向下流側に設けられる印字部18の直下に移動し、印字部18より各色インクが打滴される。その後、各色インクが打滴された中間転写体12の画像形成領域は、印字部18の中間転写体移動方向下流側に設けられる処理液ヘッド20の直下に移動し、処理液ヘッド20から第2処理液が打滴される。
印字部18の各ヘッド18K,18Y,18M,18C及び処理液ヘッド20は、中間転写体12における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有し(図4参照)、そのインク吐出面には画像形成領域の全幅にわたりインク吐出用のノズル(図4中不図示、図5に符号51で図示)が複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている。
ヘッド18K,18Y,18M,18Cは、中間転写体12の移動方向(矢印線Aで図示)に沿って上流側から黒(K),イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C)の色順に配置され、それぞれのヘッド18K,18Y,18M,18Cが中間転写体12の移動方向と直交する方向に延在するように固定設置される。また、印字部18の中間転写体12の移動方向下流側に設けられた処理液ヘッド20も同様に、中間転写体12の移動方向と直交する方向に延在するように固定設置される。
中間転写体12の幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッドを各色インク及び処理液に対してそれぞれ設ける構成によれば、中間転写体12の移動方向(副走査方向、図5参照)について、中間転写体12と印字部18及び処理液ヘッド20を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち1回の副走査で)、中間転写体12の画像形成領域に1次画像を記録することができる。これにより、ヘッド18K,18Y,18M,18C及び処理液ヘッド20が中間転写体12の移動方向と直交する主走査方向(図5参照)に往復動作するシリアル(シャトル)型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、プリント生産性を向上させることができる。
本例では、KYMCの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。また、粘度等の条件を変えた複数種類の第2処理液を用いる場合には、処理液の種類ごとに処理液ヘッド20を複数備える態様も可能である。
図1に示すように、各ヘッド18K,18Y,18M,18Cに供給する各色のインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部32は、各ヘッド18K,18Y,18M,18Cに対応する色のインクを貯蔵するインクタンク(図1中不図示、図7に符号60で図示)を有し、各色のインクタンクは所要の流路を介して各色のヘッド18K,18Y,18M,18Cと連通されている。また、インク貯蔵/装填部32は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。処理液ヘッド20についても、インク貯蔵/装填部32と同様の構成を有する処理液貯蔵/装填部34を備えている。
本例では、第2処理液を付与する処理液ヘッド20は、印字部18のインクヘッド18K,18Y,18M,18Cと同一構成が適用される。なお、処理液ヘッド20は中間転写体12に対して非接触で第2処理液を付与可能なものであればよく、インクヘッド18K,18Y,18M,18Cよりも打滴密度(解像度)を落とした構造のヘッドを適用してもよいし、スプレー方式など他のインクジェット方式以外の方式を適用してもよい。
本例に示すインクジェット記録装置10では、第1処理液層(図2(a)〜(c)に符号22で図示)にインク液滴(図2(a)〜(c)に符号24で図示)が付与されても、当該インク液滴は凝集しないので、当該インク液滴に第2処理液を付与する部材が接触式であると、インク液滴が移動してしまい画像乱れが発生してしまう。したがって、第2処理液を付与する手段は非接触式であることが好ましい。本例に示すインクジェット記録装置10では、第2処理液が付与されて始めてインク液滴は凝集する。
処理液ヘッド20の中間転写体12の移動方向下流側には、中間転写体12上に付着したインク液滴が凝集した結果、インク凝集体と分離した溶媒液体を吸収除去する溶媒除去部36と、溶媒除去処理が施された中間転写体12を予備加熱する予備加熱部38と、給紙部39から供給される記録媒体14を支持して搬送するための記録媒体搬送用ローラ対40A,40Bと、記録媒体搬送用ローラ対40A,40Bでニップ搬送される記録媒体14へ中間転写体12に形成された1次画像を転写する加熱転写部42と、中間転写体12と記録媒体14とが貼り合わさった状態で中間転写体12及び記録媒体14を冷却する冷却部44と、中間転写体12から記録媒体14を剥離する剥離部46と、転写後の中間転写体12の画像形成面12Aに付着している残インクや溶媒等を除去するクリーニング部48と、を備えている。更に、剥離部46の記録媒体14の搬送方向(図1に符号Bで図示)の下流側には、定着部49を備えている。
第2処理液の作用によってインク凝集体が形成され、インク凝集体と分離した第1処理液の溶媒成分とインク液の溶媒成分と第2処理液の溶媒成分は、溶媒除去部36により中間転写体12の画像形成面12Aから除去される。溶媒除去部36には、中間転写体12を挟んでローラ30Bに対向する位置に溶媒除去ローラ36Aが設けられている。溶媒除去ローラ36Aはローラ状の多孔質体で構成され、中間転写体12の画像形成面に当接させるように配置されている。
溶媒除去ローラ36Aの表面(中間転写体の画像形成面と接触する面)の表面エネルギーは中間転写体12の画像形成面12Aの表面エネルギーよりも小さいことが好ましく、本例では、溶媒除去ローラ26Aはその表面の表面エネルギーが30mN/m以下の部材が適用される。
上述した表面エネルギーの条件を満たす溶媒除去ローラ36Aを用いて溶媒除去を行うことで、溶媒除去ローラ36Aにインク凝集体が付着することを防止し、中間転写体12上の溶媒のみ除去が可能となる。なお、溶媒除去部36の他の態様として、溶媒除去ローラ26Aに代わりエアナイフで余剰な溶媒を中間転写体12から取り除く方式や、中間転写体12を加熱して溶媒を蒸発させ除去する方式などを適用してもよい。溶媒除去の方式としては、先に例示した何れの方式でもよいが、加熱によらない方式を用いる方がより好ましい。
中間転写体12の表面を加熱する方式や、中間転写体12上のインク凝集体に熱を付与して溶媒を蒸発させる方式では、インク凝集体の過剰加熱により溶媒を過剰除去してしまい、転写時において好ましい凝集体の粘弾性を維持できず、かえって記録媒体14への転写性が低下することがある。更にまた、過剰加熱により生じた熱が印字部18及び処理液ヘッド20からの吐出性能へ影響を与えることも懸念される。
一方、溶媒除去ローラ36Aによって中間転写体12の画像形成面上の溶媒を除去する態様では、中間転写体12の画像形成面12Aに処理液が多く付与されるような場合でも、中間転写体12上の溶媒が好適に除去されるため、転写部42で記録媒体14に多量の溶媒(分散媒)が転写されることはない。したがって、記録媒体14として紙類が用いられるような場合でも、カール、カックルといった水系溶媒に特徴的な問題が発生しない。
また、溶媒除去部36を用いてインク凝集体から余分な溶媒を除去することによって、インク凝集体を濃縮し、より内部凝集力を高めることができる。これによりインク凝集体に含まれる樹脂粒子の融着が効果的に促進され、転写部42による転写工程までにより強い内部凝集力をインク凝集体に付与することができる。更に、溶媒除去によるインク凝集体の効果的な濃縮により、記録媒体14に画像を転写した後も良好な定着性や光沢性を画像に付与することができる。
なお、溶媒除去部36によって、中間転写体12上の溶媒すべてを除去する必要は必ずしもない。過剰に除去しすぎてインク凝集体を濃縮しすぎるとインク凝集体の転写体の付着力が強くなりすぎて、転写に過大な圧力を必要とするため好ましくない。むしろ転写性に好適な粘弾性を保つためには、少量残留させることが好ましい。
このような溶媒除去ローラを用いる場合には、ローラのメニスカスのデッドスペース由来と思われる2μm厚程度の溶媒の残留が実証されており、本系に適応している。言い換えると、溶媒除去ローラ36Aを用いる場合には、溶媒除去ローラ36Aと中間転写体12との間にデッドスペース(両者が密着しない部分)が存在してしまうので、溶媒除去を行った後の中間転写体12には、膜厚は2μm程度の溶媒が残留してしまう。しかし、中間転写体12上に残留する溶媒によって転写性に好適な粘弾性を保つことができる。
中間転写体12上の溶媒を少量残留させることで得られる効果として、次のことが挙げられる。即ち、インク凝集体は疎水性であり、揮発しにくい溶媒成分(主にグリセリンなどの有機溶剤)は親水性であるので、インク凝集体と残留溶媒成分は溶媒除去実施後に分離し、残留溶媒成分からなる薄い液層がインク凝集体と中間転写体との間に形成される。したがって、インク凝集体の中間転写体12への付着力は弱くなり、転写性向上に有利である。
予備加熱部38は、中間転写体12の画像形成面12Aの裏面12B側にヒータ(図1中不図示、図7に符号89で図示)が配置されており、1次画像が形成された中間転写体12を予備加熱する構成となっている。
このヒータの加熱温度範囲は30℃〜100℃であり、転写時の加熱温度よりも低く設定される。中間転写体12の画像形成領域を予備加熱することで、予備加熱を行わない場合に比べて転写部42の加熱温度を低く設定することが可能となり、更に、転写部42の転写時間を短縮することができる。
例えば、転写部42における加熱温度を130℃としたときに、予備加熱を行わない場合には、転写部42において中間転写媒体の温度を30℃から130℃へ上げるための加熱を行わなければならない。一方、予備加熱を併用して中間転写媒体の温度を予備加熱で100℃に上げておくと、転写部42における加熱では、中間転写媒体の温度を100℃から130℃へ上げる加熱でよく、転写部42における加熱時間を短縮できるとともに、転写部42の加熱負荷を抑えることが可能となる。
記録媒体14を転写部42へ供給する給紙部39の構成としては、ロール紙(連続用紙)のマガジンを備える態様、或いは、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給する態様がある。ロール紙を使用する装置構成の場合、裁断用のカッターが設けられており、該カッターによってロール紙は所望のサイズにカットされる。紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンやカセットを併設してもよい。
複数種類の記録媒体を利用可能な構成にした場合、メディアの種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される記録媒体の種類(メディア種)を自動的に判別し、メディア種に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
本例に適用される記録媒体14の具体例を挙げると、普通紙、インクジェット専用紙などの浸透性媒体、コート紙などの非浸透性又は低浸透性の媒体、裏面に粘着剤と剥離ラベルの付いたシール用紙、OHPシートなどの樹脂フィルム、金属シート、布、木など様々な媒体がある。
転写部42は、ヒータ(図1中不図示、図8に複数のヒータを代表して符号89で図示)を有した転写加熱ローラ42Aが配置されており、この転写加熱ローラ42Aと、これに対向して配置される加熱加圧ニップ用の加熱対向ローラ42Bとによって中間転写体12と記録媒体14とを挟み込み、所定の温度(後述する微粒子水分散物の軟化点以上の温度)に加熱しながら、所定の圧力(ニップ圧)で加圧することにより、中間転写体12上に形成された1次画像を記録媒体14に転写する構成となっている。
転写部42による転写時の加熱温度は80℃(軟化点温度)〜170℃が好ましく、転写性の観点から100℃〜150℃がさらに好ましい。転写部42による転写時の加熱温度が170℃以上になると、中間転写体12の変形等の問題があり、一方、80℃以下になると転写性が悪化するという問題がある。
転写部42における転写時のニップ圧を調整するための手段としては、例えば、転写加熱ローラ42Aを図1の上下方向(符号Cで図示)に移動させる機構(駆動手段)が挙げられる。
冷却部44は、転写部42を通過して中間転写体12と記録媒体14が張り合わさった状態のものを冷却する。冷却部44には、冷却ファン等で冷気を送風する態様が適用され、冷却温度等を調整可能であることが好ましい。本例に示す冷却部44は、所望の温度まで冷却するための中間転写体12の移動時間(冷却時間)が確保されている構成となっている。中間転写体12と記録媒体14とを冷却後に剥離することで、温度ムラ等に起因した転写不良を防止することができ、安定した画像の転写(剥離)が可能となる。
なお、第1処理液に含まれる微粒子水分散物がポリマー微粒子であり、転写加熱温度近傍での弾性率変化量をより小さくすることで、中間転写体12の温度ムラに起因するポリマー微粒子の弾性ムラが起こらず、中間転写体12から均一にインク凝集体を剥離することができ、記録媒体14への転写性が向上する。なお、微粒子水分散物(ポリマー微粒子)の弾性率変化量と転写性との関係の詳細は後述する。
剥離部46は、中間転写体12の剥離ローラ30Eの巻き付け曲率によって、記録媒体14自身の剛性(腰の強さ)で中間転写体12から記録媒体14を剥離するように構成されている。剥離部46には、剥離爪等の剥離を促進させる手段を併用してもよい。
定着部49は、100℃〜180℃の範囲で温度調整可能な加熱ローラ対49Aを含んで構成される。第1処理液及びインク液滴、第2処理液の少なくとも1つにポリマー微粒子を含有し、ポリマー微粒子を造膜させる(画像の最表面にポリマー微粒子が溶解した薄膜が形成される)ことで、定着性・耐擦過性を向上させる。転写部42にて転写性と造膜化が両立することができれば、定着部49を省略する態様も可能である。
記録媒体14への画像転写終了後の中間転写体12をクリーニングする手段としてのクリーニング部48は、中間転写体12の画像形成面12Aに当接しながら残インク凝集体を払拭除去するブレード(不図示)と、除去された残インク凝集体を回収する回収部(不図示)を有している。なお、中間転写体12から残インクを除去するクリーニング手段の構成は、上記の例に限らず、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、粘着ロール方式或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
〔ヘッドの構造〕
次に、図1に示すインクヘッド18K,18Y,18M,18C及び処理液ヘッド20の構造について詳説する。インクヘッド18K,18Y,18M,18C及び処理液ヘッド20の構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によってヘッドを示す。
〔ヘッドの構造〕
次に、図1に示すインクヘッド18K,18Y,18M,18C及び処理液ヘッド20の構造について詳説する。インクヘッド18K,18Y,18M,18C及び処理液ヘッド20の構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によってヘッドを示す。
図5(a)はヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図5(b)はその一部の拡大図である。また、図5(c)はヘッド50の他の構造例を示す平面透視図、図6はインク室ユニットの立体的構成を示す断面図(図5(a),(b)中の6−6線に沿う断面図)である。
中間転写体12上に形成されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド50は、図5(a),(b)に示すように、インク滴の吐出孔であるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット53を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する副走査方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
中間転写体12の移動方向と略直交する方向に中間転写体12の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図5(a)の構成に代えて、図5(c)に示すように、複数のノズル51が2次元に配列された短尺のヘッドブロック50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで中間転写体12の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。また、図示は省略するが、短尺のヘッドを一列に並べてラインヘッドを構成してもよい。
各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51と供給口54が設けられている。各圧力室52は供給口54を介して共通流路55と連通されている。共通流路55はインク供給源たるインク供給タンク(図5中不図示、図7に符号60で図示)と連通しており、該インク供給タンクから供給されるインクは図6の共通流路55を介して各圧力室52に分配供給される。
圧力室52の天面を構成し共通電極と兼用される振動板56には個別電極57を備えた圧電素子58が接合されており、個別電極57に駆動電圧を印加することによって圧電素子58が変形してノズル51からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
本例では、ヘッド50に設けられたノズル51から吐出させるインクの吐出力発生手段として圧電素子58を適用したが、圧力室52内にヒータを備え、ヒータの加熱による膜沸騰の圧力を利用してインクを吐出させるサーマル方式を適用することも可能である。
かかる構造を有するインク室ユニット53を図5(b)に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
即ち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなり、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
なお、本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されず、副走査方向に1列のノズル列を有する配置構造など、様々なノズル配置構造を適用できる。
また、本発明の適用範囲はライン型ヘッドによる印字方式に限定されず、中間転写体12の幅方向の長さに満たない短尺のヘッドを中間転写体12の幅方向に走査させて当該幅方向の印字を行い、1回の幅方向の印字が終わると中間転写体12を幅方向と直交する方向に所定量だけ移動させて、次の印字領域の中間転写体12の幅方向の印字を行い、この動作を繰り返して中間転写体12の印字領域の全面にわたって印字を行うシリアル方式を適用してもよい。
〔供給系の構成〕
図7はインクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。なお、処理液ヘッド20についても図7に図示するインク供給系と同様の構成が備えられている。
図7はインクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。なお、処理液ヘッド20についても図7に図示するインク供給系と同様の構成が備えられている。
インク供給タンク60はヘッド50にインクを供給する基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部32に含まれる。インク供給タンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。
図7に示したように、インク供給タンク60とヘッド50の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
なお、図7には示さないが、ヘッド50の近傍又はヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
また、インクジェット記録装置10には、ノズル51の乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ヘッド50のインク吐出面の清掃手段としてクリーニングブレード66が設けられている。
これらキャップ64及びクリーニングブレード66を含むメンテナンスユニットは、不図示の移動機構によってヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置からヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
キャップ64は、図示せぬ昇降機構によってヘッド50に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、ヘッド50に密着させることにより、ノズル面をキャップ64で覆う。
印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、ある時間以上インクが吐出されない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してインク粘度が高くなってしまう。このような状態になると、圧電素子58が動作してもノズル51からインクを吐出できなくなってしまう。
このような状態になる前に(圧電素子58の動作により吐出が可能な粘度の範囲内で)圧電素子58を動作させ、その劣化インク(粘度が上昇したノズル近傍のインク)を排出すべくキャップ64(インク受け)に向かって予備吐出(パージ、空吐出、つば吐き、ダミー吐出)が行われる。
なお、中間転写体12に向けてインク及び第2処理液を打滴して予備吐出を行う態様も可能である。例えば、複数の画像を連続的に形成する場合には、画像間で予備吐出を実行することが可能である。特に、同一画像を複数枚形成する場合には、特定のノズルにおいてインク(処理液)吐出の頻度が低くなり、吐出異常の発生する可能性が高くなり、当該特定のノズルについて画像間で予備吐出を行うことが好ましい。
中間転写体12に予備吐出を行う場合には、溶媒除去ローラ36Aや転写加熱ローラ42Aに予備吐出によるインク(処理液)が付着しないように、溶媒除去ローラ36A及び転写加熱ローラ42Aを移動させて、溶媒除去ローラ36A及び転写加熱ローラ42Aと中間転写体12との間に所定のクリアランス(例えば、10mm程度)を設けるとよい。
また、ヘッド50内のインク(圧力室52内)に気泡が混入した場合、圧電素子58が動作してもノズルからインクを吐出させることができなくなる。このような場合にはヘッド50にキャップ64を当て、吸引ポンプ67で圧力室52内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク68へ送液する。
この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。なお、吸引動作は圧力室52内のインク全体に対して行われるので、インク消費量が大きくなる。したがって、インクの粘度上昇が小さい場合には予備吐出を行う態様が好ましい。
クリーニングブレード66はゴムなどの弾性部材で構成されており、図示せぬブレード移動機構によりヘッド50のインク吐出面に摺動可能である。インク吐出面にインク液滴または異物が付着した場合、クリーニングブレード66をインク吐出面に摺動させることでインク吐出面を拭き取り、インク吐出面を清掃する。
〔制御系の説明〕
図8はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、インクヘッドドライバ84等を備えている。
図8はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、インクヘッドドライバ84等を備えている。
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦メモリ74に記憶される。
メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。即ち、システムコントローラ72は、通信インターフェース70、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御し、ホストコンピュータ86との間の通信制御、メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
メモリ74には、システムコントローラ72のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。なお、メモリ74は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。メモリ74は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示にしたがってモータ88を駆動するドライバである。図8には、装置内の各部に配置されるモータ(アクチュエータ)を代表して符号88で図示されている。例えば、図8に示すモータ88には、図1のローラ30A〜30Gの中の駆動ローラを駆動するモータや、溶媒除去ローラ36Aの移動機構のモータ、転写加熱ローラ42Aの移動機構のモータなどが含まれている。
ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示に従って、ヒータ89を駆動するドライバである。図8には、インクジェット記録装置10に備えられる複数のヒータを代表して符号89で図示されている。例えば、図8に示すヒータ89には、図1に示す予備加熱部38のヒータや、定着部49の加熱ローラ対49Aに含まれるヒータなどが含まれている。
また、図8には図示しないが、図1に示す冷却部44の冷却温度を制御する冷却制御部を備え、冷却制御部はシステムコントローラ72からの指示に従って、冷却部44の制御を行う。
転写制御部79は、転写部42の転写加熱ローラ42Aの押圧制御や温度制御を行う。記録媒体14の種類やインクの種類ごとに、転写加熱ローラ42Aの押圧最適値や温度最適値が予め求められ、データテーブル化されて所定のメモリ(例えば、メモリ74)に記憶され、記録媒体14の情報や使用インクの情報を取得すると、当該メモリを参照して転写加熱ローラ42Aの押圧や温度が制御される。
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をインクヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいて、インクヘッドドライバ84を介してヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
第1処理液付与制御部81は、図1に示す塗布ローラ16Aによる第1処理液の塗布量を制御する。本例では、中間転写体12と塗布ローラ16Aとを接触、離間可能に構成し、塗布ローラ16Aを中間転写体12に接触させる時間を可変することで、第1処理液の付与量を制御する。
また、塗布液容器内の第1処理液の残量を検出するセンサを備え、第1処理液付与制御部81は該センサから得られる情報に基づいて塗布液容器内の第1処理液の残量を判断し、残量が所定量以下になると、その旨を報知する。
インクヘッドドライバ84は、プリント制御部80から与えられる画像データに基づいてヘッド50(インクヘッド18K,18Y,18M,18C)の圧電素子58に印加される駆動信号を生成するとともに、該駆動信号を圧電素子58に印加して圧電素子58を駆動する駆動回路を含んで構成される。なお、図8に示すインクヘッドドライバ84には、ヘッド50の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
また、処理液ヘッドドライバ85は、プリント制御部80から与えられる画像データに基づいて処理液ヘッド20の圧電素子58に印加される駆動信号を生成するとともに、該駆動信号を圧電素子58に印加して圧電素子58駆動する駆動回路を含んで構成される。
印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース70を介して外部から入力され、メモリ74に蓄えられる。この段階では、RGBの画像データがメモリ74に記憶される。
メモリ74に蓄えられた画像データは、システムコントローラ72を介してプリント制御部80に送られ、該プリント制御部80においてインク色ごとのドットデータ及び第2処理液のドットデータに変換される。即ち、プリント制御部80は、入力されたRGB画像データをKCMYの4色のドットデータ及び第2処理液のドットデータに変換する処理を行う。プリント制御部80で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ82に蓄えられる。
なお、中間転写体12上に形成される1次画像は、転写の際に反転することを考慮して、最終的に記録媒体14に形成される2次画像の鏡面画像としなければならない。即ち、インクヘッド18K,18Y,18M,18C及び処理液ヘッド20に供給される駆動信号は鏡面画像に対応した駆動信号であり、プリント制御部80にて入力画像に対して反転処理を施す必要がある。
プログラム格納部90には各種制御プログラムが格納されており、システムコントローラ72の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。プログラム格納部290はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記録媒体のうち、複数の記録媒体を備えてもよい。なお、プログラム格納部90は動作パラメータ等の記録手段(不図示)と兼用してもよい。
〔第1処理液の説明〕
本例に適用される第1処理液は、微粒子水分散物、水溶性有機溶媒及び水などを含有する水性溶液が好適に用いられる。
本例に適用される第1処理液は、微粒子水分散物、水溶性有機溶媒及び水などを含有する水性溶液が好適に用いられる。
第1処理液は、インクと接触してもインクを凝集させない機能を有しており、後述するインクに含有される顔料やラテックスと反応してインクを凝集させる凝集開始剤を含有していない。一方、後述する第2処理液には、インクと反応してインクを凝集させる凝集開始剤を含有している。凝集開始剤としては酸、カチオンや多価金属、ポリアミンなどが挙げられる。なお、高速凝集の観点から、酸を用いる態様が好ましい。
第1処理液の表面張力は、中間転写体へのぬれ性を考慮して10mN/m以上30mN/mであることが好ましい。また、第1処理液には、インク液滴(着色材)の浮遊や移動を抑制するために、微粒子水分散物が添加される。
第1処理液に含有する微粒子水分散物とは、微粒子の水分散物であれば如何なる分散物であってもかまわないが、微粒子の具体例としては無機微粒子、ワックスなどの低分子有機化合物微粒子、ポリマー微粒子、有機化合物などを含有したマイクロカプセルなどが挙げられる。
本発明で用いられる微粒子は実質的に白色または透明であることが好ましく、微粒子塗設量(中間転写体に付与された第1処理液中に含有する微粒子の量)が1g/m2である場合の濃度は、全可視領域(400nm〜800nm)において0.1以下であることが好ましい。当該濃度が0.1を超えると本発明の効果を発揮した場合に、最終画像(記録媒体に転写記録された画像)に不必要な色が乗ってしまう。
以下に好ましい微粒子の具体例を記載する。本実施形態で用いられる無機微粒子の具体例としては二酸化チタン、二酸化珪素、炭酸カルシウム、酸化錫、酸化アルミニウムなどの無機顔料、無機結晶、アルミニウム、銀、プラチナ等の金属微粒子、シリコンオイル等の無機液体が挙げられる。
低分子有機化合物微粒子としては、ワックス状のもの結晶状のもの、液体状のものが挙げられ、中でもワックス状のものが好ましい。ワックスとしては、カルナバワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、アルコールワックス、ポリエチレンワックス、PTFEワックス、合成酸化ワックス、αオレフィン−無水マレイン酸共重合体等が具体的に挙げられる。
ポリマー微粒子としてはポリオレフィン、ポリスチレン、ポリビニル、ポリアクリル、ポリハロオレフィン、ポリジエン、ポリエーテル、ポリスルフィド、ポリエチレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリイミド、ポリ酸無水物、ポリカーボネート、ポリイミン、ポリシロキサン、ポリフォスファゼン、ポリケトン、ポリスルホン、ポリフェニレンの単独重合体や供重合体が挙げられる。マイクロカプセルとしてはウレタン系のマイクロカプセルが挙げられ、含有されるものとしてはリン酸エステル、フタル酸エステル、脂肪酸エステルなどの可塑剤や、アクリレートなどの重合性モノマーなどが用いられる。
これらの微粒子の中ではポリマー微粒子が更に好ましく用いられる。中でも以下に示す動的貯蔵弾性率を有するポリマー微粒子が特に好ましく用いられる。
本実施形態において、特に好ましく用いられるポリマー微粒子は,80℃での動的貯蔵弾性率をG’(80℃)(G1)、150℃での動的貯蔵弾性率をG’(80℃)(G2)とした時、Log[G’(80℃)/G’(150℃)]≦2を満たすものである。なお、ここでいう「ポリマー微粒子の動的貯蔵弾性率」とは、ポリマー微粒子を粉体化したもの動的貯蔵弾性率のことである。
動的貯蔵弾性率G’は、ポリマー微粒子分散物を凍結乾燥機で粉体化し、錠剤成形機で約直径10mmの円柱型の錠剤を作製し、Anton Paar社製、粘弾性測定装置Physica MCR301にて測定した。
測定条件は粉体化したポリマーを150℃に昇温した後、直径8.0mmのパラレルプレートを用い、各周波数ω6.28rad/sec(1Hz)、ひずみ角0.1°、ギャップ1.0mmで、150℃から20℃まで3℃/分で降温しながら測定を行った。Log[G’(80℃)/G’(150℃)]の値は、2.0以下であることが好ましく、より好ましくは1.0以下であり、更に好ましくは0.75以下である。
150℃における動的貯蔵弾性率G‘(150℃)としては、1.0×103Pa以上1.0×106Pa以下が好ましく、より好ましくは、1.0×104Pa以上1.0×106Pa以下である。また、80℃におけるG‘(80℃)としては、1.0×104Pa以上1.0×107Pa以下が好ましく、より好ましくは、1.0×105Pa以上1.0×107Pa以下である。
ポリマーの組成は、上述した動的貯蔵弾性率G’の条件を満足するものであればよく、例えば、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリビニル、ポリアクリル、ポリハロオレフィン、ポリジエン、ポリエーテル、ポリスルフィド、ポリエチレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリイミド、ポリ酸無水物、ポリカーボネート、ポリイミン、ポリシロキサン、ポリフォスファゼン、ポリケトン、ポリスルホン、ポリフェニレンの単独重合体や供重合体が挙げられる。
好ましくはポリオレフィン、ポリスチレン、ポリビニル、ポリアクリル、ポリハロオレフィン、ポリジエン、ポリエーテル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリイミンの単独重合体あるいはその供重合体が挙げられ、更に好ましくはポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアクリル、ポリハロオレフィン、ポリジエン、ポリエーテル、ポリエチレンの単独重合体あるいはその供重合体であり、特に好ましくはポリスチレン、ポリアクリルの単独重合体あるいはその供重合体であり、スチレン−アクリル共重合体が好ましい。また、上述した動的貯蔵粘弾性特性を満たす化合物としはスチレンが50%以上含まれていることが好ましい。
ポリスチレンを構成するスチレンモノマー誘導体としては、具体的には、スチレン、2−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン等が挙げられる。ポリアクリルを構成するモノマーとしてはアクリル酸およびそのエステル、アミド、メタクリル酸およびそのエステル、アミドが挙げられる。
アクリル酸エステル類としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、グリシジルアクリレート、等が挙げられ、アクリル酸アミド化合物としては、アクリルアミド、N、N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N、N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等が挙げられ、メタクリル酸エステル類としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、等が挙げられる。
また、ポリスチレンやポリアクリル共重合可能な成分であれば、共重合成分として含有されていてもよく、例えば、ビニルエステル類(例えば、酢酸ビニルなどが挙げられる)、ビニルシアン化合物類(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。)、ハロゲン化単量体類(例えば、塩化ビニリデン、塩化ビニル等が挙げられる。)、オレフィン類(例えば、エチレン、プロピレン、イソプロピレンが挙げられる。)、ジエン類(例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。)ビニル単量体類(例えば、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルピロリドン等が挙げられる)などが挙げられる。
また、ポリマー微粒子の分散安定化効果を向上させるモノマーとして、アニオン性ポリマーやカチオン性ポリマーを有していてもよい。
アニオン性モノマーとは、マイナスの電荷を持ちうるアニオン性基を含んでいるモノマー化合物のことを表しており、アニオン性基は、マイナスの電荷を有するものであれば何れでもよいが、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、硫酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基またはカルボン酸基であることが好ましく、リン酸基、カルボン酸基であることがより好ましく、カルボン酸基であることがさらに好ましい。
アニオン性モノマーとしては、前述のノニオン性モノマーの置換基としてアニオン性基を持っているモノマー、あるいはカルボン酸を含有するモノマー(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸等が挙げられる。)などが挙げられ、好ましくはカルボン酸を含有するモノマーであり、より好ましくはアクリル酸、メタクリル酸である。
カチオン性モノマーとは、プラスの電荷を持ちうるカチオン性基を含んでいるモノマーのことを表しており、カチオン性基は、プラスの荷電を有するものであれば何れでもよいが、有機のカチオン性置換基であることが好ましく、窒素またはリンのカチオン性基であることがより好ましい。また、ピリジニウムカチオン又はアンモニウムカチオンであることがさらに好ましい。
カチオン性モノマーとしては、前述のノニオン性モノマーの置換基としてカチオン性基を持っているモノマー、あるいはピリジニウムカチオン、アンモニウムカチオンを含有するモノマーなどが挙げられ、好ましくアンモニウムカチオンを含有するモノマーであり、より好ましくはN、N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N、N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、ビニルイミダゾール等が挙げられる。
ポリマーの質量平均分子量は1000〜100万であり、より好ましくは1万〜100万であり、更に好ましくは2万〜50万であり、特に好ましくは4万〜50万である。
以下に本発明のポリマー微粒子を構成するポリマーの1次構造の具体例を示す。
本発明の微粒子の粒子サイズ(直径)は0.01μm以上15μm以下が好ましく、0.05μm以上10μm以下が更に好ましく、0.1μm以上5μm以下が特に好ましい。即ち、微粒子のサイズを0.01μm未満、或いは10μmを超えるサイズとすると、第1処理液中に打滴されたインク液滴を固定する効果が発揮できない。
また、微粒子の使用量としては、0.01g/m2以上10g/m2以下とする態様が好ましく、0.05g/m2以上5g/m2以下とする態様が更に好ましく、0.1g/m2以上2g/m2以下とする態様が特に好ましい。微粒子分散物の使用量が0.1未満の場合には第1処理液中に打滴されたインク液滴を固定する効果が発揮できず、10g/m2を超える場合には、画像が劣化してしまう。
即ち、中間転写体12から記録媒体14へ画像を転写するときの温度範囲において(本例では、80℃〜170℃、好ましくは100℃〜150℃)、動的貯蔵弾性率G’の変化が所定の値よりも小さい場合には、着色材の浮遊や移動を抑制することができるとともに、加熱定着における温度ムラ起因による転写性悪化が抑止され、中間転写体12から記録媒体14への1次画像の転写性が向上する。
本実施形態において、画像形成時、溶媒除去時には、微粒子は形状を保つとともに顔料(インク色材)の凝集体及び中間転写体と密着し、顔料凝集体を中間転写体に結合しておくことが求められる。
これに対し、転写時には顔料凝集体と中間転写体の結合を解除しなければならない。画像形成時、溶媒除去時と転写時の状態の違いは画像形成時、溶媒除去時に対し転写時は温度が高いことであり、このディスクリミネーション(溶媒除去時と転写時との温度差)を利用することが有用である。したがって、微粒子の性質として90℃を超える温度で軟化することが必要であるが、90℃以下ではリジット(硬い)であることが求められる。
転写時に、微粒子が軟化しないと中間転写体と色材はラテックスを介して結合されているが、微粒子が軟化すると場合はラテックス部分から泣き別れて中間転写体と色材が離れやすくなる。この原理を利用して、室温(常温)では色材浮遊や移動を抑えるとともに、高温となる転写時には中間転写体と色材が離れやすくなる。
しかしながら、存在するポリマーはシャープメルトであるものは少なく、150℃でこの範囲まで軟化するものであれば、前述のディスクリミネーション付与に有効である。
言い換えると、中間転写体12の画像形成領域に温度分布が生じたとしても、当該領域内におけるポリマー微粒子の動的貯蔵弾性率の均一性を確保でき、当該画像の一部が転写されないといった転写性の悪化が防止される。なお、ポリマー微粒子の動的貯蔵弾性率については、後述する(実施例2)で詳細に説明する。
更に、第1処理液は、第2処理液と反応する成分を添加することが好ましい。ポリマー微粒子は、第2処理液との反応によりインクの増粘作用、凝集作用を強め、画像品位の向上させることができる。第2処理液と反応して増粘・凝集作用を起こすポリマー微粒子を第1処理液に含有することにより、画像の品位を高めることができると同時に、ポリマー微粒子の種類によっては、ポリマー微粒子が記録画像の表面に皮膜を形成し、画像の耐擦性、耐水性をも向上させる効果を有する。
なお、ポリマー微粒子の分散方法はエマルジョンや、溶解したコロイダルディスパージョン状態で存在していてもよい。ポリマー微粒子は、乳化剤を用いてポリマー微粒子を分散させたものであっても、また、乳化剤を用いないで分散させたものであってもよい。乳化剤としては、通常、低分子量の界面活性剤が用いられているが、高分子量の界面活性剤を乳化剤として用いることもできる。外殻がアクリル酸、メタクリル酸などにより構成されたカプセル型のポリマー微粒子(粒子の中心部と外縁部で組成を異にしたコア・シェルタイプのポリマー微粒子)を用いることも好ましい。
分散手法として、低分子量の界面活性剤を用いていないポリマー微粒子は、高分子量の界面活性剤を用いたポリマー微粒子及び乳化剤を使用しないポリマー微粒子を含めてソープフリーラテックスと呼ばれている。例えば、上述したスルホン酸基、カルボン酸基等の水に可溶な基を有するポリマー(可溶化基がグラフト結合しているポリマー、可溶化基を持つ単量体と不溶性の部分を持つ単量体とから得られるブロックポリマー)を乳化剤として用いたポリマー微粒子もこれに含まれる。
第1処理液には、特に、このソープフリーラテックスを含有することが好ましく、ソープフリーラテックスは従来の乳化剤用いて重合したポリマー微粒子に比べて、乳化剤がポリマー微粒子の反応凝集や造膜を阻害する懸念や、遊離した乳化剤がポリマー微粒子の造膜後に表面に移動し、顔料とポリマー微粒子の混合した凝集体と記録媒体との接着性を低下させる懸念がない。
ポリマー微粒子として添加する樹脂成分としては、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂などが挙げられる。
ポリマー微粒子への高速凝集性付与の観点から、解離度の小さいカルボン酸基を有するものがより好ましい。カルボン酸基はpH変化によって影響を受けやすいので、分散状態が変化しやすく、凝集性が高い。
ポリマー微粒子のpH変化に対する分散状態の変化は、アクリル酸エステルなどのカルボン酸基を有する、ポリマー微粒子中の構成成分の含有割合によって調整することができ、分散剤として用いるアニオン性の界面活性剤によっても調整可能である。
ポリマー微粒子の樹脂成分は、親水性部分と疎水性部分とを併せ持つ重合体が好ましい。疎水性部分を有することで、ポリマー微粒子の内側に疎水部分が配向し、外側に親水部分が効率よく外側に配向され、液体のpH変化に対する分散状態の変化がより大きくなる効果があり、凝集がより効率よくおこなわれる。
市販のポリマー微粒子の例としては、ジョンクリル537、7640(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、ジョンソンポリマー株式会社製)、マイクロジェルE−1002、E−5002(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、日本ペイント株式会社製)、ボンコート4001(アクリル系樹脂エマルジョン、大日本インキ化学工業株式会社製)、ボンコート5454(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、大日本インキ化学工業株式会社製)、SAE−1014(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、日本ゼオン株式会社製)、ジュリマーET−410、FC−30(アクリル系樹脂エマルジョン、日本純薬株式会社製)、アロンHD−5、A−104(アクリル系樹脂エマルジョン、東亞合成株式会社製)、サイビノールSK−200(アクリル系樹脂エマルジョン、サイデン化学株式会社製)、ザイクセンL(アクリル系樹脂エマルジョン、住友精化株式会社製)などが挙げられるが、ここに列挙したポリマー微粒子はあくまでも例示であって、本実施形態の適用範囲を限定するものではない。
ポリマー微粒子の体積平均粒子径は、20nm〜500nmの範囲が好ましく、30〜200nmの範囲がより好ましく、50〜100nmの範囲が特に好ましい。ポリマー微粒子の体積平均粒子径が20nm以下では、インク液滴の移動を抑止する効果が低く、また、凝集しても画質の改善効果、転写性の向上に対する効果があまり期待できない。また、ポリマー微粒子の体積平均粒子径が500nm以上では、保存安定性が悪化するおそれがある。
ポリマー粒子の体積平均粒子径分布に関しては、特に制限は無く、広い体積平均粒子径分布を持つものあるいは、単分散の体積平均粒子径分布を持つものの何れを適用してもよい。また、ポリマー微粒子を、インク内に2種以上混合して含有させて使用してもよい。
水溶性有機溶媒としては、例えば、多価アルコール類、多価アルコール類誘導体、含窒素溶媒、アルコール類、含硫黄溶媒等が挙げられる。具体例としては、多価アルコール類では、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等が挙げられる。多価アルコール誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
含窒素溶媒としては、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等が、アルコール類としてはエタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類が、含硫黄溶媒としては、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルフォラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。その他、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等を用いることもできる。
本実施形態に適用される第1処理液には、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤の一例としては、炭化水素系では脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。
また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好ましい。
更に、特開昭59−157636号の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)に界面活性剤として挙げられたものも使うことができる。更に、特開2003−322926号、特開2004−325707号、特開2004−309806号の各公報に記載されているようなフッ素(フッ化アルキル系)系、シリコーン系の界面活性剤も用いることができる。これら表面張力調整剤は消泡剤としても使用することができ、フッ素系、シリコーン系化合物やEDTAに代表されるキレート剤等も使用することができる。
第1処理液に上述した界面活性剤を含有する態様によれば、第1処理液の表面張力を相対的に下げて、中間転写体12上における第1処理液のぬれ性を高め、中間転写体12上に形成される第1処理液層(図2、図3の符号22)の膜厚をより薄くすることができる。
また、第1処理液の表面張力は、10〜30mN/mであることが好ましく、インク液滴中の着色材拡散防止の観点から、第1処理液の表面張力はインクの表面張力より小さいことが好ましい。第1処理液付与後に打滴されるインク液滴により発生する引けを抑えるという観点からは、15〜25mN/mであることが更に好ましい。
第1処理液の粘度は、液体吐出方式(インクジェットヘ方式)で第1処理液を付与する場合には1.0〜20.0cPであることが好ましい。なお、必要に応じて、第1処理液にpH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、等を添加してもよい。
〔インクの説明〕
本例に適用される各色インク(K、Y、M、C)は、溶媒不溶性材料として、着色材である顔料やポリマー微粒子などを含有する水性顔料インクが用いられる。溶媒不溶性材料の濃度は、インクジェット方式による打滴(吐出)に適切な粘度20mPa・s以下を考慮して1wt%以上20wt%以下であることが好ましい。より好ましくは画像の光学濃度を得るために4wt%以上の顔料濃度である。インクの表面張力は、吐出安定性を考慮して20mN/m以上40mN/mであることが好ましい。
本例に適用される各色インク(K、Y、M、C)は、溶媒不溶性材料として、着色材である顔料やポリマー微粒子などを含有する水性顔料インクが用いられる。溶媒不溶性材料の濃度は、インクジェット方式による打滴(吐出)に適切な粘度20mPa・s以下を考慮して1wt%以上20wt%以下であることが好ましい。より好ましくは画像の光学濃度を得るために4wt%以上の顔料濃度である。インクの表面張力は、吐出安定性を考慮して20mN/m以上40mN/mであることが好ましい。
インクに使用される色材は、顔料のみを用いてもよいし、染料と顔料とを混合して用いてもよい。第2処理液との接触時における凝集性の観点から、インク中で分散状態にある顔料の方がより効果的に凝集するため好ましい。顔料の中でも、分散剤により分散されている顔料、自己分散顔料、樹脂により顔料表面を被覆された顔料(マイクロカプセル顔料)、及び高分子グラフト顔料が特に好ましい。また、顔料凝集性の観点から、解離度の小さいカルボキシル基によって修飾されている形態がより好ましい。
マイクロカプセル顔料の樹脂は、水に対して自己分散能又は溶解能を有し、かつアニオン性基(酸性)を有する高分子の化合物であるのが好ましい。この樹脂は、通常、数平均分子量が1000〜100000範囲程度のものが好ましく、3000〜50000範囲程度のものが特に好ましい。また、この樹脂は有機溶剤に溶解して溶液となるものが好ましい。樹脂の数平均分子量がこの範囲であることにより、顔料における被覆膜として、又はインク組成物における塗膜としての機能を十分に発揮することができる。
前記樹脂は、自己分散能あるいは溶解するものであっても、又はその機能が何らかの手段によって付加されたものであってもよい。例えば、有機アミンやアルカリ金属を用いて中和することにより、カルボキシル基、スルホン酸基、またはホスホン酸基等のアニオン性基を導入されてなる樹脂であってもよい。また、同種または異種の一又は二以上のアニオン性基が導入された樹脂であってもよい。本発明にあっては、塩基をもって中和されて、カルボキシル基が導入された樹脂が好ましくは用いられる。
インクに含有する顔料の一例を挙げると、オレンジまたはイエロー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等が挙げられる。
レッドまたはマゼンタ用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
グリーンまたはシアン用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
また、ブラック用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。
インクには、処理液と反応する成分として、着色材を含まないポリマー微粒子を添加することが好ましい。ポリマー微粒子は、第2処理液との反応によりインクの増粘作用、凝集作用を強め、画像品位の向上させることができる。特に、アニオン性のポリマー微粒子をインクに含有せしめることにより、安全性の高いインクが得られる。
第2処理液と反応して増粘・凝集作用を起こすポリマー微粒子をインクに用いることにより、画像の品位を高めることができると同時に、ポリマー微粒子の種類によっては、ポリマー微粒子が記録画像の表面に皮膜を形成し、画像の耐擦性、耐水性をも向上させる効果を有する。ポリマー微粒子の分散方法は、エマルジョン状態で分散していてもよいし、溶解していてコロイダルディスパージョン状態で分散していてもよい。
ポリマー微粒子は、乳化剤を用いてポリマー微粒子を分散させたものであっても、また、乳化剤を用いないで分散させたものであってもよい。乳化剤としては、通常、低分子量の界面活性剤が用いられているが、高分子量の界面活性剤を乳化剤として用いることもできる。外殻がアクリル酸、メタクリル酸などにより構成されたカプセル型のポリマー微粒子(粒子の中心部と外縁部で組成を異にしたコア・シェルタイプのポリマー微粒子)を用いることも好ましい。
分散手法として低分子量の界面活性剤を用いていないポリマー微粒子は、高分子量の界面活性剤を用いたポリマー微粒子及び乳化剤を使用しないポリマー微粒子を含めてソープフリーラテックスと呼ばれている。例えば、上述したスルホン酸基、カルボン酸基等の水に可溶な基を有するポリマー(可溶化基がグラフト結合しているポリマー、可溶化基を持つ単量体と不溶性の部分を持つ単量体とから得られるブロックポリマー)を乳化剤として用いたポリマー微粒子もこれに含まれる。
本例では、特に、このソープフリーラテックスを用いることが好ましく、ソープフリーラテックスは従来の乳化剤用いて重合したポリマー微粒子に比べて、乳化剤がポリマー微粒子の反応凝集や造膜を阻害する懸念がなく、また、遊離した乳化剤がポリマー微粒子の造膜後に表面に移動し、顔料とポリマー微粒子の混合した凝集体と記録媒体との接着性を低下させる懸念がない。
インクに含有するポリマー微粒子として添加する樹脂成分は、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂などが挙げられる。
ポリマー微粒子への高速凝集性付与の観点から、解離度の小さいカルボン酸基を有するものがより好ましい。カルボン酸基はpH変化によって影響を受けやすいので、分散状態が変化しやすく、凝集性が高い。
本実施形態に用いられる酸ポリマーは、カルボン酸系の酸ポリマーが好ましく用いられる。カルボン酸のpKaは概ね3〜4であるため、酸ポリマーのpHが5以下であると、非解離状態となり電化反発が失われ、凝集を起こす。一方、酸ポリマーのpHが5を超えるのであれば、当該酸ポリマーはほとんど解離した状態であるので、電化反発により分散安定性を有し、凝集を起こさない。したがって、インクにはpH5以下の酸ポリマーを含有する態様が好ましい。
ポリマー微粒子のpH変化に対する分散状態の変化は、アクリル酸エステルなどのカルボン酸基を有する、ポリマー微粒子中の構成成分の含有割合によって調整することができ、分散剤として用いるアニオン性の界面活性剤によっても調整可能である。
ポリマー微粒子の樹脂成分は、親水性部分と疎水性部分とを併せ持つ重合体であるのが好ましい。疎水性部分を有することで、ポリマー微粒子の内側に疎水部分が配向し、外側に親水部分が効率よく外側に配向され、液体のpH変化に対する分散状態の変化がより大きくなる効果があり、凝集がより効率よくおこなわれる。
市販のポリマー微粒子の例としては、ジョンクリル537、7640(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、ジョンソンポリマー株式会社製)、マイクロジェルE−1002、E−5002(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、日本ペイント株式会社製)、ボンコート4001(アクリル系樹脂エマルジョン、大日本インキ化学工業株式会社製)、ボンコート5454(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、大日本インキ化学工業株式会社製)、SAE−1014(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、日本ゼオン株式会社製)、ジュリマーET−410、FC−30(アクリル系樹脂エマルジョン、日本純薬株式会社製)、アロンHD−5、A−104(アクリル系樹脂エマルジョン、東亞合成株式会社製)、サイビノールSK−200(アクリル系樹脂エマルジョン、サイデン化学株式会社製)、ザイクセンL(アクリル系樹脂エマルジョン、住友精化株式会社製)などが挙げられる。
顔料に対するポリマー微粒子添加量の重量比率は1:0.5から1:10が好ましい、より好ましくは1:1から1:3である。顔料に対するポリマー微粒子添加量の重量比率は1:0.5より少ないと、樹脂の融着による凝集体の凝集力が効果的に向上しない。また、添加量が1:10より多くてもインクの粘度が高くなりすぎ、吐出性などが悪化する。
インクに添加するポリマー微粒子の分子量は融着したときの接着力を鑑みて、5,000以上が好ましい。5,000未満だと、凝集したときのインク凝集体の内部凝集力向上や記録媒体に画像の定着性に効果が不足し、また画質改善効果が不足する。
ポリマー微粒子の体積平均粒子径は、10nm〜1μmの範囲が好ましく、10〜500nmの範囲がより好ましく、20〜200nmの範囲が更に好ましく、50〜200nmの範囲が特に好ましい。10nm以下では、凝集しても画質の改善効果、転写性の向上に効果があまり期待できない。1μm以上では、インクのヘッドからの吐出性や保存安定性が悪化するおそれがある。また、ポリマー粒子の体積平均粒子径分布に関しては、特に制限は無く、広い体積平均粒子径分布を持つもの及び、単分散の体積平均粒子径分布を持つもの何れでもよい。また、ポリマー微粒子をインク内に2種以上混合して含有させて使用してもよい。
インクに添加するpH調整剤としては、中和剤として、有機塩基、無機アルカリ塩基を用いることができる。pH調整剤はインクジェット用インクの保存安定性を向上させる目的でpH値が6〜10となるように添加するのが好ましい。
また、乾燥によってインクジェットヘッドのノズルが詰まるのを防止する目的から、インクには水溶性有機溶媒を含有することが好ましい。このような水溶性有機溶媒には、湿潤剤及び浸透剤が含まれる。水溶性有機溶媒としては、第1処理液と同様のものを適用することができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコール類誘導体、含窒素溶媒、アルコール類、含硫黄溶媒等が挙げられる。更に具体例を挙げると、多価アルコール類では、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等が挙げられる。多価アルコール誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
含窒素溶媒としては、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等が、アルコール類としてはエタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類が、含硫黄溶媒としては、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルフォラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。その他、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等を用いることもできる。
インクには界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤の例としては、炭化水素系では脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。
また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好ましい。
更に、特開昭59−157636号の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも使うことができる。また、特開2003−322926号、特開2004−325707号、特開2004−309806号の各公報に記載されているようなフッ素(フッ化アルキル系)系、シリコーン系の界面活性剤も用いることができる。
これら表面張力調整剤は消泡剤としても使用することができ、フッ素系、シリコーン系化合物やEDTAに代表されるキレート剤等も使用することができる。表面張力を下げて第1処理液上でのぬれ性を高め、広がり率を増化させることができる。
インクの表面張力は、10〜50mN/mであることが好ましく、インクの着色材の拡散防止の観点から第1処理液の表面張力より大きいことが好ましい。液滴の微液滴化および吐出性の両立の観点からは、15〜45mN/mであることが更に好ましい。
インクの粘度は、インクジェットヘッドから吐出する点を考慮すると、1.0〜20.0cPであることが好ましい。なお、インクにpH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、等を添加してもよい。
〔第2処理液〕
本例の第2処理液は、インクのpHを変化させることにより、インクに含有される顔料(着色材)およびポリマー微粒子を凝集させ、インク凝集物(図2、3に符号26で図示)を生じさせる機能を持つ処理液が好ましい。
本例の第2処理液は、インクのpHを変化させることにより、インクに含有される顔料(着色材)およびポリマー微粒子を凝集させ、インク凝集物(図2、3に符号26で図示)を生じさせる機能を持つ処理液が好ましい。
第2処理液の成分として、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ビリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等の中から選ばれることが好ましい。
また、第2処理液の好ましい例として、多価金属塩あるいはポリアリルアミンを添加した処理液を挙げることができる。これらの化合物は、1種類で使用されてもよく、2種類以上併用されてもよい。
第2処理液のインク凝集物を生じさせる具体的な物質を挙げると、上述の第2処理液の成分で記載されているポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ビリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩、多価金属塩、ポリアミン、カチオンが挙げられる。なお、ここに列挙したインク凝集物を生じさせる物質は、第1処理液には含まれていない。
第2処理液は、インクとのpH凝集性能の観点からpHは1〜6であることが好ましく、pHは2〜5であることがより好ましく、pHは3〜5であることが特に好ましい。
第2処理液中におけるインクの顔料およびポリマー微粒子を凝集させる成分の添加量としては、液体の全重量に対し、0.01重量%以上20重量%以下であることが好ましい。0.01重量%以下の場合は第2処理液とインクが接触時に、濃度拡散が十分に進まずpH変化による凝集作用が十分に発生しないことがある。また20重量%以上であると、インクジェットヘッドからの吐出性能の悪化(例えば、吐出異常の発生)が懸念される。
第2処理液は、乾燥によってインクジェットヘッドのノズルが詰まるのを防止する目的から、水,その他添加剤溶性有機溶媒を含有することが好ましい。このような水,その他添加剤溶性有機溶媒には、湿潤剤及び浸透剤が含まれる。これらの溶媒は、水,その他添加剤と共に単独若しくは複数を混合して用いることができる。
水、その他添加剤溶性有機溶媒の含有量は第2処理液の全重量に対し、60重量%以下であることが好ましい。60重量%以上よりも多い場合は処理液の粘度が増加し、インクジェットヘッドからの吐出性が悪化することがある。
第2処理液には、定着性および耐擦性を向上させるため、樹脂成分をさらに含有してもよい。樹脂成分は、処理液をインクジェット方式によって打滴する場合ヘッドからの吐出性を損なわないもの、保存安定性があるものであればよく、水溶性樹脂や樹脂エマルジョンなどを自由に用いることができる。
樹脂成分としては、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、ビニル系、スチレン系等が考えられる。定着性向上といった機能を充分に発現させるには、比較的高分子のポリマーを高濃度1重量%〜20重量%に添加することが必要である。しかし、上記材料を液体に溶解させて添加しようとすると高粘度化し、吐出性が低下する。適切な材料を高濃度に添加し、かつ粘度上昇を抑えるには、ラテックスとして添加する手段が有効である。ラテックス材料としては、アクリル酸アルキル共重合体、カルボキシ変性SBR(スチレン−ブタジエンラテックス)、SIR(スチレン−イソプレン)ラテックス、MBR(メタクリル酸メチル−ブタジエンラテックス)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンラテックス)、等が考えられる。
ラテックスのガラス転移点温度Tgはプロセス上、定着時に影響の強い値で、常温保存時の安定性と加熱後の転写性を両立するために、50℃以上120℃以下であることが好ましい。さらに最低造膜温度MFTはプロセス上、定着時に影響の強い値で、低温で充分な定着を得る為に100℃以下、さらに好ましくは50℃以下である。
第2処理液にインクと逆極性のポリマー微粒子を含有し、インク中の顔料及びポリマー微粒子と凝集させることによってさらに凝集性を高める態様も好ましい。また、第2処理液に、インクに含まれるポリマー微粒子成分に対応した硬化剤を含有し、インクと第2処理液が接触した後に、インク成分中の樹脂エマルジョンが凝集するとともに架橋又は重合するようにして、凝集性を高めてもよい。
第2処理液は、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤の例としては、炭化水素系では脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。
また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好ましい。更に、特開昭59−157636号の第(37)〜(38)頁に界面活性剤として挙げられたものや、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)に界面活性剤として挙げられたものを第2処理液の界面活性剤として使うことができる。
更に、特開2003−322926号、特開2004−325707号、特開2004−309806号の各公報に記載されているようなフッ素(フッ化アルキル系)系、シリコーン系の界面活性剤を用いることも可能である。これら表面張力調整剤は消泡剤としても使用することができ、フッ素系、シリコーン系化合物やEDTAに代表されるキレート剤等も使用することができる。
第2処理液に上述した界面活性剤を含有すると、第2処理液の表面張力を下げて中間転写体上でのぬれ性を高めるのに効果がある。第2処理液の表面張力は、10〜50mN/mであることが好ましく、インクジェット方式による付与において、液滴の微液滴化および吐出性能の観点からは、第2処理液の表面張力は15〜45mN/mであることがより好ましい。
第2処理液の粘度は、インクジェット方式による付与の観点から1.0〜20.0cPであることが好ましい。なお、第2処理液にpH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線、吸収剤、等も添加してもよい。
〔実施例〕
次に、上述した第1処理液及びインク、第2処理液の具体的な実施例を説明する。本実施形態に適用される各色インク、第1処理液及び第2処理液を以下に示す処方に従い作製した。
次に、上述した第1処理液及びインク、第2処理液の具体的な実施例を説明する。本実施形態に適用される各色インク、第1処理液及び第2処理液を以下に示す処方に従い作製した。
(実施例1)
<顔料インクCの作製>
(顔料分散物の作製)
大日精化社製のシアニンブルーA−22(PB15:3)10g、低分子量分散剤2−1、10.0g、グリセリン4.0g、イオン交換水26gを攪拌混合させて分散液を調製した。次いで、超音波照射装置(SONICS社製 Vibra-cell VC-750、テーパーマイクロチップ:φ5mm、Ampitude:30%)を用いて、前述の分散液に、超音波を間欠照射(照射0.5秒、休止1.0秒)で2時間照射して顔料を更に分散させ、20質量%顔料分散液とした。なお、低分子量分散剤2−1は次の化学式で表される。
<顔料インクCの作製>
(顔料分散物の作製)
大日精化社製のシアニンブルーA−22(PB15:3)10g、低分子量分散剤2−1、10.0g、グリセリン4.0g、イオン交換水26gを攪拌混合させて分散液を調製した。次いで、超音波照射装置(SONICS社製 Vibra-cell VC-750、テーパーマイクロチップ:φ5mm、Ampitude:30%)を用いて、前述の分散液に、超音波を間欠照射(照射0.5秒、休止1.0秒)で2時間照射して顔料を更に分散させ、20質量%顔料分散液とした。なお、低分子量分散剤2−1は次の化学式で表される。
上述したものとは別に、以下に示す化合物を秤量攪拌混合して、混合液Iを調製した。
グリセリン 5.0g
ジエチレングリコール 10.0g
オルフィンE1010(日信化学工業製) 1.0g
イオン交換水 11.0g
この混合液Iを、攪拌した44%SBR分散液(ポリマー微粒子:アクリル酸3質量%、Tg(ガラス転移点温度)30℃)23.0gにゆっくりと滴下して攪拌混合し、混合液IIを調製した。
ジエチレングリコール 10.0g
オルフィンE1010(日信化学工業製) 1.0g
イオン交換水 11.0g
この混合液Iを、攪拌した44%SBR分散液(ポリマー微粒子:アクリル酸3質量%、Tg(ガラス転移点温度)30℃)23.0gにゆっくりと滴下して攪拌混合し、混合液IIを調製した。
また、混合液IIを上述した20質量%顔料分散液にゆっくりと滴下しながら攪拌混合して、シアン色の顔料インクC(シアンインク)を100g調製した。東亜DKK(株)製pHメーターWM−50EGを用いて、このようにして調製された顔料インクCのpHを測定したところ、pH値は8.5であった。
<顔料インクMの作製>
顔料インクCの調製に使用した顔料に代えて、チバ・スペシャリティーケミカルズ社のCromophtal Jet Magenta DMQ(PR-122)とした。顔料以外は、上述した顔料インクCの調製と同様の方法でマゼンタ色の顔料インクM(マゼンダインク)を調整した。東亜DKK(株)製pHメーターWM−50EGにて、このように調製された顔料インクMのpHを測定したところ、pH値は8.5であった。
顔料インクCの調製に使用した顔料に代えて、チバ・スペシャリティーケミカルズ社のCromophtal Jet Magenta DMQ(PR-122)とした。顔料以外は、上述した顔料インクCの調製と同様の方法でマゼンタ色の顔料インクM(マゼンダインク)を調整した。東亜DKK(株)製pHメーターWM−50EGにて、このように調製された顔料インクMのpHを測定したところ、pH値は8.5であった。
<顔料インクYの作製>
顔料インクCの調製に使用した顔料に代えて、チバ・スペシャリティーケミカルズ社のIrgalite Yellow GS(PY74)とした。顔料以外は、上述した顔料インクCの調製と同様の方法でイエロー色の顔料インクY(イエローインク)を調整した。東亜DKK(株)製pHメーターWM−50EGにて、このように調製された顔料インクYのpHを測定したところ、pH値は8.5であった。
顔料インクCの調製に使用した顔料に代えて、チバ・スペシャリティーケミカルズ社のIrgalite Yellow GS(PY74)とした。顔料以外は、上述した顔料インクCの調製と同様の方法でイエロー色の顔料インクY(イエローインク)を調整した。東亜DKK(株)製pHメーターWM−50EGにて、このように調製された顔料インクYのpHを測定したところ、pH値は8.5であった。
<顔料インクKの作製>
顔料インクCの調製に使用した顔料分散液をCABOT社製分散体CAB−O−JETTM_200(カーボンブラック)としたこと以外は、上述した顔料インクCの調製と同様の方法でブラック色の顔料インクK(ブラックインク)を調整した。東亜DKK(株)製pHメーターWM−50EGにて、このように調製された顔料インクKのpHを測定したところ、pH値は8.5であった。
顔料インクCの調製に使用した顔料分散液をCABOT社製分散体CAB−O−JETTM_200(カーボンブラック)としたこと以外は、上述した顔料インクCの調製と同様の方法でブラック色の顔料インクK(ブラックインク)を調整した。東亜DKK(株)製pHメーターWM−50EGにて、このように調製された顔料インクKのpHを測定したところ、pH値は8.5であった。
<第1処理液の作製>
第1処理液は、以下の材料を混合して作製した。
・44%SBR分散 23g
(ポリマー微粒子:アクリル酸3質量%。Tg(ガラス転移点温度30℃)
・グリセリン 5g
・ジエチレングリコール 10g
・オルフィンE1010(日信化学工業製) 1g
・イオン交換水 61g
東亜DKK(株)製pHメーターWM−50EGにて、このように調製された第1処理液のpHを測定したところ、pH値は9.0であった。
第1処理液は、以下の材料を混合して作製した。
・44%SBR分散 23g
(ポリマー微粒子:アクリル酸3質量%。Tg(ガラス転移点温度30℃)
・グリセリン 5g
・ジエチレングリコール 10g
・オルフィンE1010(日信化学工業製) 1g
・イオン交換水 61g
東亜DKK(株)製pHメーターWM−50EGにて、このように調製された第1処理液のpHを測定したところ、pH値は9.0であった。
<第2処理液の作製>
第2処理液は、以下の材料を混合して作製した。
・ジエチレングリコール 20g
・オルフィンE1010(日信化学工業製) 1g
・2−ピロリドン−5−カルボン酸 1g
・水酸化ナトリウム 0.25g
・イオン交換水 77.8g
東亜DKK(株)製pHメーターWM−50EGにて、このように調製された第2処理液のpHを測定したところ、pH値は3.5であった。
第2処理液は、以下の材料を混合して作製した。
・ジエチレングリコール 20g
・オルフィンE1010(日信化学工業製) 1g
・2−ピロリドン−5−カルボン酸 1g
・水酸化ナトリウム 0.25g
・イオン交換水 77.8g
東亜DKK(株)製pHメーターWM−50EGにて、このように調製された第2処理液のpHを測定したところ、pH値は3.5であった。
このようにして作製された第1処理液及びインク、第2処理液を用いて、先に説明したインクジェット記録装置10により画像記録を行ったところ、画質劣化が生じない好ましい記録画像が得られた。
(実施例2)
次に、上記実施例1に記載の第1処理液のポリマー微粒子に代えて、以下の(1)〜(3)のポリマー微粒子を用いて画像形成を行い、当該画像の官能評価を行った。
次に、上記実施例1に記載の第1処理液のポリマー微粒子に代えて、以下の(1)〜(3)のポリマー微粒子を用いて画像形成を行い、当該画像の官能評価を行った。
<ポリマー微粒子の合成>
(1)ラテックスLX−1(スチレン−ブチルアクリレート−アクリル酸(62/35/3=w/w/w))の合成
攪拌装置、還流冷却管を装着した1リットル三口フラスコに、パイオニンA−43s(竹本油脂社製)8.1g、蒸留水236.0gを入れ、窒素気流下70℃に加熱攪拌した。スチレン6.2g、n−ブチルアクリレート3.5g、アクリル酸0.3g、過硫酸アンモニウム1.0g、蒸留水40gを添加し、30分間攪拌した後、スチレン117.8g、n−ブチルアクリレート66.5g、アクリル酸5.7gからなるモノマー溶液を2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。
(1)ラテックスLX−1(スチレン−ブチルアクリレート−アクリル酸(62/35/3=w/w/w))の合成
攪拌装置、還流冷却管を装着した1リットル三口フラスコに、パイオニンA−43s(竹本油脂社製)8.1g、蒸留水236.0gを入れ、窒素気流下70℃に加熱攪拌した。スチレン6.2g、n−ブチルアクリレート3.5g、アクリル酸0.3g、過硫酸アンモニウム1.0g、蒸留水40gを添加し、30分間攪拌した後、スチレン117.8g、n−ブチルアクリレート66.5g、アクリル酸5.7gからなるモノマー溶液を2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。
滴下完了後、過硫酸アンモニウム0.5g、蒸留水20gからなる水溶液を加え、70℃で4時間攪拌した後、85℃に昇温して更に2時間攪拌を続けた。反応液を冷却し、1(mol/l)の水酸化ナトリウム水溶液でpH7に調整した後、75μmフィルタで濾過して、ラテックスLX−1を505g得ることができた。
ラテックスLX−1の固形分濃度は39.2%(固形分収率97.0%)、ラテックスLX−1を粒子径の測定に適した濃度に希釈し、マイクロトラックUPA EX−150(日機装(株)製)で平均粒子径を測定した結果、ラテックスLX−1の平均粒子径75nmであった。
ポリマーの分子量は、予めラテックスの水分を乾燥させ、得られた固形分をテトラヒドロフランにて0.1質量%に希釈し、高速GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)HCL−8220GPCにて、TSKgel SuperHZM−H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ2000を3本直列につなぎ測定し、ポリスチレン換算で質量平均分子量286000であった。また、最低造膜温度(MFT)は、YOSHIMITSU SEIKI製のMFT測定装置で測定し、47.5℃であった。
(2)ラテックスLX−2(スチレン−ブチルアクリレート−アクリル酸[52/45/3=w/w/w])の合成
ラテックスLX−1のモノマー組成を変更した以外は、ラテックスLX−1と同様の方法でラテックスLX−2を固形分32.0%の分散液として得ることができた。分子量は44.7万、MFTは21℃であった。また、当該分散液中のラテックスLX−2の平均粒径は59nmであった。
ラテックスLX−1のモノマー組成を変更した以外は、ラテックスLX−1と同様の方法でラテックスLX−2を固形分32.0%の分散液として得ることができた。分子量は44.7万、MFTは21℃であった。また、当該分散液中のラテックスLX−2の平均粒径は59nmであった。
(3)ラテックスLX−3(スチレン−ブチルアクリレート−アクリル酸[62/35/3=w/w/w])の合成
ラテックスLX−1の合成時に連鎖移動剤としてメルカプトエタノールを0.5質量%添加した以外は、ラテックスLX−3を固形分32.0%の分散液として得ることができた。分子量は6.3万、MFTは38℃であった。また、当該分散液中のラテックスLX−3の平均粒径は70nmであった。
ラテックスLX−1の合成時に連鎖移動剤としてメルカプトエタノールを0.5質量%添加した以外は、ラテックスLX−3を固形分32.0%の分散液として得ることができた。分子量は6.3万、MFTは38℃であった。また、当該分散液中のラテックスLX−3の平均粒径は70nmであった。
上記(1)〜(3)のポリマー微粒子の80℃、100℃、150℃における動的貯蔵弾性率を以下に示す方法で測定し、その結果を図9に示す。
ポリマー微粒子の動的弾性率測定は、ポリマー微粒子分散物を凍結乾燥し、粉体化したものを粘弾性測定装置Physica MCR301(Anton Paar社製)にて行った。測定条件は、粉体化したポリマーを150℃に昇温した後、直径8.0mmのパラレルプレートを用い、角周波数ω=6.28(rad/sec)(1Hz)、ひずみ角0.1°、ギャップ1.0mmで150℃から20℃まで3℃/分で降温しながら測定を行った。
なお、図9における比較ラテックス1及び比較ラテックス2は、上記(1)〜(3)との比較のためのものであり、本実施例では、ジュリマーET−410(日本純薬社製)、ジョンクリル537(BASFジャパン社製)を使用した。
また、図9には、参考データとして100℃(転写温度の最大値)における動的貯蔵弾性率G’(100℃)を記載した。
本実施例では、各ポリマー微粒子の評価値は、150℃における動的貯蔵弾性率G2(G’(150℃))に対する80℃における動的貯蔵弾性率G1(G’(80℃))の比G1/G2の対数Log(G1/G2)とした。
図9に示すように、比較ラテックス1の評価値は2.45、比較ラテックス2の評価値は2.38となり、比較ラテックス1及び比較ラテックス2は、評価値>2の関係を満たしている。
一方、本例の第1処理液に含有されるラテックスLX−1の評価値は0.5、ラテックスLX−2の評価値は0.26、ラテックスLX−3の評価値は1.82である。即ち、本例に適用されるポリマー微粒子であるラテックスLX−1及びラテックスLX−2、ラテックスLX−3は、評価値≦2を満たしている。
図10には、ラテックスLX−1及びラテックスLX−2、ラテックスLX−3を含有する第1処理液を用いた場合(処理液3〜5)と、図9に示す比較ラテックス1及び比較ラテックス2を含有する第1処理液(処理液1、2)及びポリマー微粒子を含有しない第1処理液を用いた場合(比較処理液)における画像品質の違いを官能評価により比較した結果を示す。なお、画像記録方法は、以下のとおりである。
中間転写体は、シリコーンゴムシートSRシリーズ0.5mm膜厚(タイガースポリマー社製)を用い、第1処理液は、インクに先立ってバーコーターで塗布した。
描画機としてリコー社製GELJET GX5000改造機を使用し、主走査方向にドット密度600dpi、打滴量2.5plの条件で、中間転写体上にインクを打滴し、印字パターン画像(図11、図12参照)を形成した。インクと同一条件で第2処理液を中間転写体上に打滴した。
第2処理液打滴後、ローラ状の多孔質体(炭化珪素)を中間転写体に当接させて吸引除去を行う方法により、中間転写体上の溶媒除去を行った。溶媒除去後に中間転写体上の画像を記録媒体に加熱加圧転写した。記録媒体は、特菱アート(三菱製紙社製)を使用した。
転写条件は、転写部温度95℃、ニップ圧力1MPa、搬送速度100mm/sとし、中間転写体や記録媒体の予備加熱は適宜加熱温度を設定して行うこととして記録媒体に転写を行った。更に、記録媒体に転写記録された画像は、加熱設定温度95℃に設定した定着ローラ対に通して加熱定着処理を施した。
評価の観点は、(1)ドット乱れ、(2)広がり率、(3)転写率とした。
(1)ドット乱れについて
着目するドットの実際の形成位置と理論上の形成位置の誤差がドット間ピッチ(42μm)の1/2(21μm)以上の場合は×評価、当該誤差がドット間ピッチの1/2未満の場合は○評価とする。なお、ドットの中心の位置をドットの位置とする。
着目するドットの実際の形成位置と理論上の形成位置の誤差がドット間ピッチ(42μm)の1/2(21μm)以上の場合は×評価、当該誤差がドット間ピッチの1/2未満の場合は○評価とする。なお、ドットの中心の位置をドットの位置とする。
(2)広がり率について
広がり率が2以上の場合には○評価、2以下の場合には×評価とする。
広がり率が2以上の場合には○評価、2以下の場合には×評価とする。
(3)転写率について
中間転写体のインク凝集体の残量を測定し、転写率評価とした。
中間転写体のインク凝集体の残量を測定し、転写率評価とした。
転写率100%は中間転写体に残量がない場合を示し、転写率0%は記録媒体に転写されず中間転写体にすべてのインク凝集体が残った状態を示す。転写率80%未満を×評価、80%以上90%未満を△評価、90%以上を○評価とする。
図10に示す評価結果によれば、第1処理液に比較処理液を用いた場合には、ドット乱れ、広がり率、転写評価とも×評価である。即ち、第1処理液に微粒子水分散物(ポリマー微粒子)を含有しない場合には、第1処理液内においてインク液滴の移動が起こり、ドットの位置ズレが発生するとともに、第1処理液内でインク液滴が所定の大きさに広がらず、ドット径異常が発生する。更に、転写時の画像劣化も発生してしまう。
図11には、第1処理液に比較処理液を用いた場合の記録画像100を示す。なお、図11に示す記録画像100は、撮像装置にて撮影した写真画像を模式的に表現したものである。図11に図示した画像100を見ると明らかなように、ドットの移動(符号102で図示)やドットの移動によるドットの合一(符号104で図示)が発生し、更に、転写時に生じたと思われるドット欠落(符号106で図示)が発生していることがわかる。
また、第1処理液に比較ラテックス1を含有した処理液1及び比較ラテックス2を含有した処理液2を用いた場合には、ドット乱れ、広がり率は○評価であり、第1処理液中におけるインク液滴の移動が抑制されるとともに、所定のドット径を得ることができる。しかし、転写評価は×評価であり、転写時の画像劣化が懸念される。
これに対して、第1処理液にラテックスLX−1を含有する処理液3及びラテックスLX−2を含有する処理液4、ラテックスLX−5を含有する処理液5を用いる場合には、ドット乱れ、広がり率とも○評価であり、第1処理液中におけるインク液滴の移動が抑制されるとともに、所定のドット径を得ることができる。更に、転写評価も○評価であり、好ましい転写性を確保でき、良好な画像記録が実現される。
図12には、第1処理液に図10の処理液3を用いた場合の記録画像120を示す。なお、図12に示す記録画像120は撮像装置にて撮影した写真画像を模式的に表現したものである。図12に示す記録画像120を見ると明らかなように、第1処理液に図10の処理液3を用いた場合には、ドット位置の移動やドット形状(サイズ)の異常、ドットの欠落が発生していない良好な画像を得ることができる。
上記の如く構成された画像形成方法及びインクジェット記録装置によれば、中間転写体上でインクと第2処理液を反応させてインクを凝集させる画像形成方式において、微粒子水分散物を含有するとともに、インクを凝集させる機能を有していない第1処理液を中間転写体に付与して、所定の厚みを有する第1処理液層を形成し、中間転写体上に形成された第1処理液層にインク液滴を打滴するので、インク液滴は第1処理液層内で凝集することなく所定の大きさに広がることができ、中間転写体との間に所定の接着力(接触面積)を得ることができる。
また、微粒子水分散物の作用によって中間転写体上におけるインク液滴の移動が防止される。この状態で第2処理液を付与することで、ドットの位置ズレやドット形状の異常のない、好ましい画像形成が実現される。
更に、微粒子水分散物の80℃における動的貯蔵弾性率G1と、150℃における動的貯蔵弾性率G2との比(G1/G2)の対数Log(G1/G2)の値を2以下とすることで、転写時に中間転写体に温度分布が生じる場合にも、良好な転写性能を確保することができる。
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図13は、本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置10’の概略構成図である。図13に示すインクジェット記録装置10’は、樹脂シートや金属シートなどの非浸透性を有する記録媒体14’に直接画像を形成する方式が適用される。なお、図13中、図1と同一または類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図13は、本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置10’の概略構成図である。図13に示すインクジェット記録装置10’は、樹脂シートや金属シートなどの非浸透性を有する記録媒体14’に直接画像を形成する方式が適用される。なお、図13中、図1と同一または類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
インクジェット記録装置10’は、記録媒体14’に第1処理液を付与する第1処理液付与部16’と、第1処理液が付与されて第1処理液層が形成された記録媒体14にKYMYの各色インクを記録媒体14に打滴するインクヘッド18K,18Y,18M,18Cを含む印字部18と、KYMYの各色インクが打滴された記録媒体14’に第2処理液を打滴する処理液ヘッド20と、第2処理液が打滴された後に記録媒体14’上に残留する溶媒成分を除去する溶媒除去ローラ36Aを含む溶媒除去部36と、を備えている。
給紙部(不図示)から送り出される記録媒体14’は、吸着ベルト搬送部130に送られる。吸着ベルト搬送部130は、ローラ131、132間に無端状のベルト133が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも第1処理液付与部16’及び印字部18、処理液ヘッド20に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト33は、記録媒体14’の幅よりも広い幅を有しており、ベルト面には多数の吸引口(不図示)が形成されている。図13に示したとおり、ローラ131、132に掛け渡されたベルト133の内側において、第1処理液付与部16’及び印字部18、処理液ヘッド20に対向する位置には吸着チャンバー134が設けられており、この吸着チャンバー134をポンプ135で吸引して負圧にすることによってベルト133上の記録媒体14が吸着保持される。
ベルト133が巻かれているローラ131、132の少なくとも一方にモータ(図13中不図示、図8に符号88で図示)の動力が伝達されることにより、ベルト133は図13上の反時計回り方向に駆動され、ベルト133上に保持された記録媒体14は図13の右から左へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト133上にもインクが付着するので、ベルト133の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部136が設けられている。ベルト清掃部136の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、吸着ベルト搬送部130に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面をローラが接触するので画像が染み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
第1処理液付与部16’には、図1に示す塗布ローラ16Aを含む構成を適用してもよいし、インクジェットヘッドを適用してもよい。なお、図13に示すインクジェット記録装置10’のインク及び第2処理液の供給系、インクヘッド18K,18Y,18M,18C及び処理液ヘッド20のメンテナンス機構、制御系については、図7及び図8に示した構成が適用される。
なお、図13に図示を省略した構成としては、給紙部から送り出された記録媒体14のカールを除去するデカール処理部、長尺の記録媒体(ロール状の記録媒体)を用いる場合に、記録媒体を所定のサイズにカットするカッター、記録媒体14を加熱するヒータなどがある。
図13に示すインクジェット記録装置10’は、記録媒体14’に第1処理液、インク、第2処理液に対して非浸透性を有する媒体(非浸透媒体)を適用するときに、特に効果を発揮する。非浸透性媒体の一例を挙げると、コート紙、OHPフィルムなどの樹脂フィルム、金属シートなどが挙げられる。なお、記録媒体14の適用範囲は非浸透性を有する媒体に限定されず、普通紙などの浸透性を有する媒体に比べて浸透速度が遅い低浸透性を有する媒体を適用してもよい。
本発明の第2実施形態によれば、非浸透性媒体(低浸透性媒体)に対して直接画像を形成する方式においても、ドット位置の異常やドット形状の異常が抑制された好ましい画像を得ることができる。
10,10’…インクジェット記録装置、12…中間転写体、14,14’…記録媒体、16…第1処理液付与部、18…印字部、20…処理液ヘッド、21…微粒子水分散物、22…第1処理液(層)、24…インク液滴、25…第2処理液、26…インク凝集体
Claims (7)
- 画像形成体上に着色材を含有するインク液を用いて画像を形成する画像形成方法であって、
前記画像形成体に対して、微粒子水分散物を含有するとともに、前記インク液に含有する着色材の凝集反応を発現させない機能を有する第1処理液を付与し、前記画像形成体上に第1処理液層を形成する第1処理液付与工程と、
前記第1処理液層が形成された前記画像形成体に画像データに基づいて前記インク液を液滴化して打滴するインク液滴打滴工程と、
前記インク液滴打滴工程の後に、前記画像形成体に前記インク液の凝集反応を発現させる第2処理液を付与する第2処理液付与工程と、
前記第2処理液付与工程の後に、前記画像形成体上の前記第1処理液及び前記インク液、前記第2処理液の液体溶媒を除去する溶媒除去工程と、
を含むことを特徴とする画像形成方法。 - 前記溶媒除去工程の後に、前記画像形成体上に形成された画像を記録媒体に転写する転写工程を含むことを特徴とする請求項1記載の画像形成方法。
- 前記微粒子水分散物はポリマー微粒子であることを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成方法。
- 前記ポリマー微粒子は、80℃での動的貯蔵弾性率をG1、150℃での動的貯蔵弾性率をG2としたときに、次式
Log(G1/G2)≦2
を満たすことを特徴とする請求項3記載の画像形成方法。 - 前記第1処理液のpHは5以上であり、前記インク液はpH5未満で凝集する酸ポリマーを含有し、前記第2処理液のpHは5未満であることを特徴とする請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の画像形成方法。
- 画像形成体上に着色材を含有するインク液を用いて画像を形成するインクジェット記録装置であって、
画像形成体上に対して、微粒子水分散物を含有するとともに、前記インク液に含有する着色材の凝集反応を発現させない機能を有する第1処理液を付与し、前記画像形成体上に第1処理液層を形成する第1処理液付与手段と、
前記第1処理液層が形成された前記画像形成体に画像データに基づいて前記インク液を液滴化して打滴するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドによりインク液滴が吐出された前記画像形成体に、前記インク液の凝集反応を発現させる第2処理液を付与する第2処理液付与手段と、
前記第2処理液付与手段により前記画像形成体上に第2の処理液が付与された後に、前記画像形成体上の前記第1処理液及び前記インク液、前記第2処理液の液体溶媒を除去する溶媒除去手段と、
を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。 - 前記溶媒除去手段により前記画像形成体上の液体溶媒が除去された後に、前記画像形成体上に形成された画像を記録媒体に転写する転写手段を備えたことを特徴とする請求項6記載のインクジェット記録装置。
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