JP2009082830A - Wax剤塗布装置、wax剤塗布方法、及び画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】非浸透媒体上に均一なWAX層を形成する。
【解決手段】非浸透媒体上にWAX剤を塗布する塗布ローラと、前記WAX剤を加熱溶融して前記塗布ローラの表面に供給するWAX剤供給手段と、前記塗布ローラの表面温度を前記WAX剤の融点以下に調節する塗布ローラ温調手段と、を備えたことを特徴とするWAX剤塗布装置を提供することにより、前記課題を解決する。
【選択図】 図7
【解決手段】非浸透媒体上にWAX剤を塗布する塗布ローラと、前記WAX剤を加熱溶融して前記塗布ローラの表面に供給するWAX剤供給手段と、前記塗布ローラの表面温度を前記WAX剤の融点以下に調節する塗布ローラ温調手段と、を備えたことを特徴とするWAX剤塗布装置を提供することにより、前記課題を解決する。
【選択図】 図7
Description
本発明はWAX剤塗布装置、WAX剤塗布方法、及び画像形成装置に係り、特に、非浸透媒体上にWAX剤を塗布する技術に関する。
一般にインクジェット記録方式は、画像データに応じて、インクジェットヘッドに形成される複数のノズルからインク液滴をそれぞれ吐出することによって、記録媒体上に画像を記録する方式であり、低騒音、低ランニングコスト、装置の小型化が容易などの利点を有することから幅広く利用されている。
インクジェット記録方式には、単尺のヘッド(シリアル型ルヘッド)を記録媒体の幅方向に走査させながら記録を行うものや、記録媒体の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッド(フルライン型ヘッド)を用いるものがある。ラインヘッドを用いたものでは、記録媒体の搬送方向について記録媒体とラインヘッドを相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち1回の副走査で)、記録媒体の全面に画像を記録することができる。これにより、シリアル型ヘッドを用いる場合に比べて高速記録が可能であり、生産性を向上させることができる。
近年、インクジェット記録方式による記録画像の品質に対する要求が高まっており、記録媒体の種類によらず、画像品質を向上させることが重要な技術的課題の一つに挙げられており、これまでに様々な技術が提案されている。
特許文献1には、インクと処理液(液体組成物)のうち、一方を酸性、他方をアルカリ性にして、記録媒体上における顔料凝集性を制御して、光学濃度、滲み、色間滲み(ブリード)、乾燥時間を改善する技術が開示されている。
特許文献2には、インクジェットヘッドによる印字物の耐候性、付着性、耐転写性、印字の保存性を良好に保つために、素材に塗膜層を形成後、形成された塗膜層が未硬化の状態の上にインクジェットヘッドで印字し、インクと塗膜層を同時に硬化させる方法が開示されている。塗膜層の形成方法として、エアスプレー塗装、エアレス塗装、静電塗装、グラビアコーティング、ロールコーティング、カーテンコーティング、バーコーティング、オフセットグラビアコーティングが例示されている。
特許文献3には、普通紙に対しても、優れた耐久性を有し、インクの裏抜けによる画質の劣化や色間の滲みのない画像を得ることを目的として、インクジェットヘッドによる画像記録が行われる前に、常温でWAX(ワックス)状の染料不溶化成分を記録媒体上に塗布する方法が開示されている。WAX状の染料不溶化成分の付与方法として、WAX剤を含浸したローラでWAX剤を塗布する方法が挙げられている。
特許文献4には、中間転写体上に液体と接触することにより増粘する粉体を塗布後、インクジェットヘッドから吐出された液体を中間転写体上の粉体に接触させて増粘した画像を形成し、該画像を記録媒体(転写媒体)に転写する方法が開示されている。また、中間転写体上に粉体を塗布後、粉体層をブレードによって略一層とする方法も開示されている。
特開2004−10633号公報
特開平3−222749号公報
特開平11−334196号公報
特開2000−335106号公報
インクジェット記録方式では、記録媒体上に着弾した隣接するインク液滴(ドット)同士が重なるようにインク吐出が行われると、これらインク液滴同士がその表面張力の作用で合一する現象(着弾干渉)が発生する問題がある。同一色のドット同士の場合はドット形状が崩れてしまい、異なる色間のドット同士の場合は更に混色が発生する。
特許文献1に記載された発明は、着弾干渉の発生を抑えることができるものの、プラスチックシートのような非浸透媒体に対して処理液を付与した後にインク液滴を打滴すると、インクと処理液との凝集反応により形成されるインク凝集体(色材凝集体)が所望の位置に留まらず、移動してしまい、結果として出力画像が所望の画像と比べて大きく乱れてしまうという新たな問題が発生する。特に、非浸透性の中間転写体上にインク画像(1次画像)を形成してから記録媒体に転写する方式(転写記録方式)では、転写性を向上させる観点から中間転写体には低表面エネルギーの材質が用いられるため、上記現象は顕著となる。
本発明者らの検討によれば、上記問題を解決するためには、非浸透性の中間転写体上に処理液やインクを付与する前にポリエチレングリコール(PEG)等のWAX剤を塗布する方法が有効であり、色材移動による画像乱れを抑えつつ、転写性を向上させることができる。しかしながら、中間転写体に対するWAX剤の塗布量が多い場合、インク画像が転写された記録媒体上の非画像部に光沢感が発生してしまう問題がある。このため、中間転写体へのWAX剤の塗布に関しては、膜厚1μm以下であるWAX剤の薄層(WAX層)を均一に形成することが必要である。
特許文献2に開示されている種々の塗布方法では、常温で固体又は半固体状であるWAX剤の塗布に関する記載はない。仮に、WAX剤を加熱溶融し、液体状にして塗布した場合であっても塗布膜を1μm以下に塗布することができず、特に、中間転写体の表面エネルギーが低い場合には弾きが発生するため均一に塗布することはできない。
特許文献3には、WAX剤を含浸したローラでWAX剤を記録媒体に塗布する方法が開示されているが、この方法ではシリアル型ヘッドが用いられる場合のように搬送速度が遅い場合には塗布を行うことは可能であるが、フルライン型ヘッドが用いられる場合のように搬送速度が速い場合にはWAX剤の供給速度が間に合わず段ムラが発生し、均一にWAX剤を塗布することができない。
特許文献4には、粉体を塗布する手段として、ゴム及びスポンジローラが記載されているが、WAX剤を塗布するためにはWAX剤を溶融させて塗布を行う必要があるため、特許文献4の構成ではWAX剤を塗布することはできない。仮に、WAX剤を溶融させて塗布を行うことができても、中間転写体上で固体化したWAX層をブレードにより掻き取ることもできない。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、非浸透媒体上に均一なWAX層を形成することができるWAX剤塗布装置、WAX剤塗布方法、及び画像形成装置を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明に係るWAX剤塗布装置は、非浸透媒体上にWAX剤を塗布する塗布ローラと、前記WAX剤を加熱溶融して前記塗布ローラの表面に供給するWAX剤供給手段と、前記塗布ローラの表面温度を前記WAX剤の融点以下に調節する塗布ローラ温調手段と、を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、WAX剤供給手段から塗布ローラに供給されるWAX剤は、塗布ローラ温調手段によって冷却され高粘度化されてから非浸透媒体上に塗布されるので、低粘度状態で塗布が行われる場合に比べて、非浸透媒体上でのWAX剤の弾きを防止することができ、非浸透媒体上に均一なWAX剤の薄層(WAX層)を形成することができる。
WAX剤供給手段は、塗布ローラを浸漬させるWAX剤受け皿と、加熱溶融したWAX剤が収容されるサブタンクと、サブタンクからWAX剤受け皿に加熱溶融したWAX剤を送液する送液手段と、WAX剤受け皿のWAX剤量が所定量以上になるとWAX剤受け皿からWAX剤がサブタンクへオーバーフローするオーバーフロー手段と、サブタンク内のWAX剤が所定量以下になるとサブタンクに個体状のWAX剤を補充するWAX剤補充手段とから構成されることが好ましい。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のWAX剤塗布装置の一態様に係り、前記非浸透媒体の表面エネルギーが25mN/m以下であることを特徴とする。
本発明において、低表面エネルギー(25mN/m以下)の非浸透媒体上にWAX剤が塗布される態様が好ましく、非浸透媒体上でのWAX剤の弾きを防止しつつ、均一なWAX層を形成することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のWAX剤塗布装置の一態様に係り、前記塗布ローラはグラビアローラであることを特徴とする。
本発明の塗布ローラはグラビアローラ(アニロックスローラ)が好適であり、非浸透媒体上に均一なWAX層を形成することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のWAX剤塗布装置の一態様に係り、前記塗布ローラの表面温度をTr[℃]、前記WAX剤の融点をTm[℃]、前記WAX剤供給手段から前記塗布ローラの表面に前記WAX剤が供給されてから前記非浸透媒体上に該WAX剤が塗布されるまでの時間をt[sec]とするとき、前記塗布ローラの表面温度Trは、次の式(1)を満たすことを特徴とする。
(Tm−14)−(1.2/t)−10≦Tr≦(Tm−14)−(1.2/t)+10 ・・・(1)
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のWAX剤塗布装置の一態様に係り、前記塗布ローラは、前記非浸透媒体に対して相対的に移動する方向とは逆方向に回転するとともに、前記塗布ローラの表面の余剰WAX剤をブレード手段によって掻き取りながら、前記非浸透媒体上に前記WAX剤を塗布することを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のWAX剤塗布装置の一態様に係り、前記塗布ローラは、前記非浸透媒体に対して相対的に移動する方向とは逆方向に回転するとともに、前記塗布ローラの表面の余剰WAX剤をブレード手段によって掻き取りながら、前記非浸透媒体上に前記WAX剤を塗布することを特徴とする。
請求項5に記載の発明によれば、塗布ローラの表面に供給されたWAX剤を均一な厚さに薄膜化することができ、中間転写体上に形成されるWAX層の面状を向上させることができる。
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のWAX剤塗布装置の一態様に係り、前記塗布ローラによって前記非浸透媒体上に塗布された前記WAX剤を軟化させるように該WAX剤の温度を調節するWAX剤温調手段と、前記WAX剤温調手段により温度が調節された前記WAX剤を薄層化する薄層形成ブレードと、を備えたことを特徴とする。
本発明において、非浸透媒体上に塗布されたWAX剤を軟化させながら薄層形成ブレードで薄層化する態様が好ましく、WAX剤の均一な薄層を高速に形成することができる。
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のWAX剤塗布装置の一態様に係り、前記WAX剤温調手段によって調節される前記WAX剤の温度をTn[℃]、前記WAX剤の融点をTm[℃]としたとき、前記WAX剤の温度Tnは、次の式(2)を満たすことを特徴とする。
Tm−12≦Tn≦Tm−2 ・・・(2)
請求項7に記載の発明によれば、非浸透媒体上に形成されるWAX層を更に均一にすることができる。
請求項7に記載の発明によれば、非浸透媒体上に形成されるWAX層を更に均一にすることができる。
請求項8に記載の発明は、請求項6又は請求項7に記載のWAX剤塗布装置の一態様に係り、前記薄層形成ブレードは、前記WAX剤温調手段を兼ねることを特徴とする。
請求項8に記載の発明によれば、薄層形成ブレードに対するWAX剤の蓄積を防止しつつ、非浸透媒体上のWAX剤を均一に薄層化することができる。
請求項9に記載の発明(WAX剤塗布方法)は、WAX剤を加熱溶融して塗布ローラの表面に供給する工程と、前記塗布ローラの表面温度を前記WAX剤の融点以下に調節しながら非浸透媒体上に前記WAX剤を塗布する工程と、を含むことを特徴とする。
請求項10に記載の発明(画像形成装置)は、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のWAX剤塗布装置と、前記塗布ローラによる前記WAX剤の塗布によって前記非浸透媒体上に形成されたWAX層の表面に、インクに含まれる色材を凝集させる成分を含有した凝集処理剤からなる固体状又は半固溶状の凝集処理層を形成する凝集処理層形成手段と、画像データに応じて、前記WAX層及び前記凝集処理層が形成された前記非浸透媒体に対して前記インクを液滴化して打滴するインク打滴手段と、前記非浸透媒体上の液体溶媒を除去する溶媒除去手段と、前記非浸透媒体上に形成された画像を記録媒体に転写する転写手段と、を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、非浸透媒体(中間転写体)上に形成されたWAX層の表面に固体状又は半固溶状の凝集処理層を形成してからインク液滴を打滴することにより、凝集処理層上にインク液滴が着弾すると瞬時に凝集反応が開始され、所定の大きさに広がったインク凝集体(色材凝集体)からなるドットが形成される。この結果、色材移動による画像劣化が防止され、高品質な画像記録が可能となる。
本明細書において、「固体状又は半固溶状の凝集処理剤(凝集処理層)」とは、凝集処理剤(凝集処理層)の含水率が0〜70%の範囲であるものを指す。なお、「含水率」は、凝集処理剤の単位面積あたりの重量X1[g/m2]に対する凝集処理剤中に含まれる水の単位面積あたりの重量X2[g/m2]の比(即ち、X2/X1)と定義する。
また、「凝集処理剤」は、固体状又は半固溶状のものだけでなく、それ以外の液体状のものも含む広い概念で用いるものとし、特に、含水率を70%以上として液体状にした凝集処理剤を「凝集処理液」又は単に「処理液」と称する。
本発明において、WAX層上に凝集処理液を付与した後に、WAX層上の凝集処理液を乾燥させて、WAX層上に固体状又は半固溶状の凝集処理層を形成してもよいし、WAX層上に固体状又は半固溶状の凝集処理剤を直接付与してもよい。
本発明によれば、WAX剤供給手段から塗布ローラに供給されるWAX剤は、塗布ローラ温調手段によって冷却され高粘度化されてから非浸透媒体上に塗布されるので、低粘度状態で塗布が行われる場合に比べて、非浸透媒体上でのWAX剤の弾きを防止することができ、非浸透媒体上に均一なWAX剤の薄層(WAX層)を形成することができる。
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
まず、本発明で用いられるインク及び凝集処理液(処理液)について説明し、次いで、本発明に係る画像形成装置(インクジェット記録装置)について説明する。
〔インクの説明〕
本発明で用いられるインクは、溶媒不溶性材料として、色材(着色剤)である顔料やポリマー微粒子などを含有する水性顔料インクが用いられる。
本発明で用いられるインクは、溶媒不溶性材料として、色材(着色剤)である顔料やポリマー微粒子などを含有する水性顔料インクが用いられる。
溶媒不溶性材料の濃度は、吐出に適切な粘度20mPa・s以下を考慮して1wt%以上20wt%以下であることが好ましい。より好ましくは画像の光学濃度を得るために4wt%以上の顔料濃度である。
インクの表面張力は、吐出安定性を考慮して20mN/m以上40mN/mであることが好ましい。
インクの表面張力は、吐出安定性を考慮して20mN/m以上40mN/mであることが好ましい。
インクに使用される色材は、顔料あるいは染料と顔料とを混合して用いることができる。処理液との接触時における凝集性の観点から、インク中で分散状態にある顔料の方がより効果的に凝集するため好ましい。顔料の中でも、分散剤により分散されている顔料、自己分散顔料、樹脂により顔料表面を被覆された顔料(マイクロカプセル顔料)、及び高分子グラフト顔料が特に好ましい。また、顔料凝集性の観点から、解離度の小さいカルボキシル基によって修飾されている形態がより好ましい。
マイクロカプセル顔料の樹脂は、限定されるものではないが、水に対して自己分散能又は溶解能を有し、かつアニオン性基(酸性)を有する高分子の化合物であるのが好ましい。この樹脂は、通常、数平均分子量が1,000〜100,000範囲程度のものが好ましく、3,000〜50,000範囲程度のものが特に好ましい。また、この樹脂は有機溶剤に溶解して溶液となるものが好ましい。樹脂の数平均分子量がこの範囲であることにより、顔料における被覆膜として、又はインク組成物における塗膜としての機能を十分に発揮することができる。
前記樹脂は、自己分散能あるいは溶解するものであっても、又はその機能が何らかの手段によって付加されたものであってもよい。例えば、有機アミンやアルカリ金属を用いて中和することにより、カルボキシル基、スルホン酸基、またはホスホン酸基等のアニオン性基を導入されてなる樹脂であってもよい。また、同種または異種の一又は二以上のアニオン性基が導入された樹脂であってもよい。本発明にあっては、塩基をもって中和されて、カルボキシル基が導入された樹脂が好ましく用いられる。
本発明に用いる顔料としては、特に限定はされないが、具体例としては、オレンジまたはイエロー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等が挙げられる。
レッドまたはマゼンタ用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
グリーンまたはシアン用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
また、ブラック用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。
本発明に係る着色インク液には、処理液と反応する成分として、着色剤を含まないポリマー微粒子を添加することが好ましい。ポリマー微粒子は、処理液との反応によりインクの増粘作用、凝集作用を強め、画像品位を向上させることができる。特に、アニオン性のポリマー微粒子をインクに含有せしめることにより、安全性の高いインクが得られる。
処理液と反応して、増粘・凝集作用を起こすポリマー微粒子をインクに用いることにより、画像の品位を高めることができると同時に、ポリマー微粒子の種類によっては、ポリマー微粒子が記録媒体で皮膜を形成し、画像の耐擦性、耐水性をも向上させる効果を有する。
ポリマーインクでの分散方法はエマルジョンに限定するものではなく、溶解していても、コロイダルディスパージョン状態で存在していてもよい。
ポリマー微粒子は、乳化剤を用いてポリマー微粒子を分散させたものであっても、また、乳化剤を用いないで分散させたものであってもよい。乳化剤としては、通常、低分子量の界面活性剤が用いられているが、高分子量の界面活性剤を乳化剤として用いることもできる。外殻がアクリル酸、メタクリル酸などにより構成されたカプセル型のポリマー微粒子(粒子の中心部と外縁部で組成を異にしたコア・シェルタイプのポリマー微粒子)を用いることも好ましい。
分散手法として、低分子量の界面活性剤を用いていないポリマー微粒子は、高分子量の界面活性剤を用いたポリマー微粒子、乳化剤を使用しないポリマー微粒子を含めてソープフリーラテックスと呼ばれている。例えば上記に記述した、スルホン酸基、カルボン酸基等の水に可溶な基を有するポリマー(可溶化基がグラフト結合しているポリマー、可溶化基を持つ単量体と不溶性の部分を持つ単量体とから得られるブロックポリマー)を乳化剤として用いたポリマー微粒子もこれに含まれる。
本発明では、特にこのソープフリーラテックスを用いることが好ましく、ソープフリーラテックスは従来の乳化剤を用いて重合したポリマー微粒子にくらべ、乳化剤がポリマー微粒子の反応凝集や造膜を阻害したり、遊離した乳化剤がポリマー微粒子の造膜後に表面に移動し、顔料とポリマー微粒子の混合した凝集体と記録媒体との接着性を低下させる懸念がない。
インクにポリマー微粒子として添加する樹脂成分としては、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂などが挙げられる。
ポリマー微粒子への高速凝集性付与の観点から、解離度の小さいカルボン酸基を有するものがより好ましい。カルボン酸基はpH変化によって影響を受けやすいので、分散状態が変化しやすく、凝集性が高い。
ポリマー微粒子のpH変化に対する分散状態の変化は、アクリル酸エステルなどのカルボン酸基を有する、ポリマー微粒子中の構成成分の含有割合によって調整することができ、分散剤として用いるアニオン性の界面活性剤によっても調整可能である。
ポリマー微粒子の樹脂成分は、親水性部分と疎水性部分とを併せ持つ重合体であるのが好ましい。疎水性部分を有することで、ポリマー微粒子の内側に疎水部分が配向し、外側に親水部分が効率よく外側に配向され、液体のpH変化に対する分散状態の変化がより大きくなる効果があり、凝集がより効率よく行われる。
市販のポリマー微粒子の例としては、ジョンクリル537、7640(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、ジョンソンポリマー株式会社製)、マイクロジェルE−1002、E−5002(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、日本ペイント株式会社製)、ボンコート4001(アクリル系樹脂エマルジョン、大日本インキ化学工業株式会社製)、ボンコート5454(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、大日本インキ化学工業株式会社製)、SAE−1014(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、日本ゼオン株式会社製)、ジュリマーET−410、FC−30(アクリル系樹脂エマルジョン、日本純薬株式会社製)、アロンHD−5、A−104(アクリル系樹脂エマルジョン、東亞合成株式会社製)、サイビノールSK−200(アクリル系樹脂エマルジョン、サイデン化学株式会社製)、ザイクセンL(アクリル系樹脂エマルジョン、住友精化株式会社製)などが挙げられるが、これに限定するものではない。
顔料に対するポリマー微粒子添加量の重量比率は2:1から1:10が好ましい、より好ましくは1:1から1:3である。顔料に対するポリマー微粒子添加量の重量比率は2:1より少ないと、樹脂の融着による凝集体の凝集力が効果的に向上しない。また、添加量が1:10より多くてもインクの粘度が高くなりすぎ、吐出性などが悪化する。
インクに添加するポリマー微粒子の分子量は融着したときの付着力を鑑みて、5,000以上が好ましい。5,000未満だと、凝集したときのインク凝集体の内部凝集力向上や記録媒体に画像の定着性に効果が不足し、また画質改善効果が不足する。
ポリマー微粒子の体積平均粒子径は、10nm〜1μmの範囲が好ましく、10〜500nmの範囲がより好ましく、20〜200nmの範囲が更に好ましく、50〜200nmの範囲が特に好ましい。10nm以下では、凝集しても画質の改善効果、転写性の向上に効果があまり期待できない。1μm以上では、インクのヘッドからの吐出性や保存安定性が悪化するおそれがある。また、ポリマー粒子の体積平均粒子径分布に関しては、特に制限は無く、広い体積平均粒子径分布を持つもの、又は単分散の体積平均粒子径分布を持つもの、いずれでもよい。
また、ポリマー微粒子を、インク内に2種以上混合して含有させて使用してもよい。
本発明のインクに添加するpH調整剤としては中和剤として、有機塩基、無機アルカリ塩基を用いることができる。pH調整剤はインクジェット用インクの保存安定性を向上させる目的で、該インクジェット用インクがpH6〜10となるように添加するのが好ましい。
本発明のインクは、乾燥によってインクジェットヘッドのノズルが詰まるのを防止する目的から、水溶性有機溶媒を含有することが好ましい。このような水溶性有機溶媒には、湿潤剤及び浸透剤が含まれる。
水溶性有機溶媒としては、処理液の場合と同様に、例えば、多価アルコール類、多価アルコール類誘導体、含窒素溶媒、アルコール類、含硫黄溶媒等が挙げられる。具体例としては、多価アルコール類では、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等が挙げられる。多価アルコール誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。含窒素溶媒としては、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等が、アルコール類としてはエタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類が、含硫黄溶媒としては、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルフォラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。その他、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等を用いることもできる。
本発明のインクには、界面活性剤を含有することができる。
界面活性剤の例としては、炭化水素系では脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好ましい。
更に、特開昭59−157636号の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも使うことができる。また、特開2003−322926号、特開2004−325707号、特開2004−309806号の各公報に記載されているようなフッ素(フッ化アルキル系)系、シリコーン系の界面活性剤も用いることができる。
これら表面張力調整剤は消泡剤としても使用することができ、フッ素系、シリコーン系化合物やEDTAに代表されるキレート剤等も使用することができる。
表面張力を下げて固体状又は半固溶状の凝集処理層上でのぬれ性を高め、拡がり率を増加させることができる。
本発明のインクの表面張力は、10〜50mN/mであることが好ましく、直接記録を行う場合には浸透性記録媒体への浸透性、また中間転写方式によって記録を行う場合には中間転写体上でのぬれ性と液滴の微液滴化および吐出性の両立の観点からは、15〜45mN/mであることが更に好ましい。
本発明のインクの粘度は、1.0〜20.0cPであることが好ましい。
その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、等も添加することができる。
〔処理液(凝集処理液)の説明〕
本発明に係る処理液として、インクのpHを変化させることにより、インクに含有される顔料およびポリマー微粒子を凝集させ、凝集物を生じさせるような処理液が好ましい。
本発明に係る処理液として、インクのpHを変化させることにより、インクに含有される顔料およびポリマー微粒子を凝集させ、凝集物を生じさせるような処理液が好ましい。
処理液の成分として、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ビリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等の中から選ばれることが好ましい。
また、本発明に係る処理液の好ましい例として、多価金属塩あるいはポリアリルアミンを添加した処理液を挙げることができる。これらの化合物は、1種類で使用されてもよく、2種類以上併用されてもよい。
本発明に係る処理液はインクとのpH凝集性能の観点からpHは1〜6であることが好ましく、pHは2〜5であることがより好ましく、pHは3〜5であることが特に好ましい。
本発明に係る処理液の中における、インクの顔料およびポリマー微粒子を凝集させる成分の添加量としては、液体の全重量に対し、0.01重量%以上20重量%以下であることが好ましい。0.01重量%以下の場合は処理液とインクが接触時に、濃度拡散が十分に進まずpH変化による凝集作用が十分に発生しないことがある。また20重量%以上であると、インクジェットヘッドからの吐出性が悪化することがある。
本発明に係る処理液は、乾燥によってインクジェットヘッドのノズルが詰まるのを防止する目的から、水、その他添加剤溶性有機溶媒を含有することが好ましい。このような水、その他添加剤溶性有機溶媒には、湿潤剤及び浸透剤が含まれる。
これらの溶媒は、水,その他添加剤と共に単独若しくは複数を混合して用いることができる。
水、その他添加剤溶性有機溶媒の含有量は処理液の全重量に対し、60重量%以下であることが好ましい。60重量%以上よりも多い場合は処理液の粘度が増加し、インクジェットヘッドからの吐出性が悪化することがある。
処理液には、定着性および耐擦性を向上させるため、樹脂成分をさらに含有してもよい。樹脂成分は、処理液をインクジェット方式によって打滴する場合ヘッドからの吐出性を損なわないもの、保存安定性があるものであればよく、水溶性樹脂や樹脂エマルジョンなどを自由に用いることができる。
樹脂成分としては、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、ビニル系、スチレン系等が考えられる。定着性向上といった機能を充分に発現させるには、比較的高分子のポリマーを高濃度1重量%〜20重量%に添加することが必要である。しかし、上記材料を液体に溶解させて添加しようとすると高粘度化し、吐出性が低下する。適切な材料を高濃度に添加し、かつ粘度上昇を抑えるには、ラテックスとして添加する手段が有効である。ラテックス材料としては、アクリル酸アルキル共重合体、カルボキシ変性SBR(スチレン−ブタジエンラテックス)、SIR(スチレン−イソプレン)ラテックス、MBR(メタクリル酸メチル−ブタジエンラテックス)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンラテックス)、等が考えられる。ラテックスのガラス転移点Tgはプロセス上、定着時に影響の強い値で、常温保存時の安定性と加熱後の転写性を両立するために、50℃以上120℃以下であることが好ましい。さらに最低造膜温度MFTはプロセス上、定着時に影響の強い値で、低温で充分な定着を得る為に100℃以下、さらに好ましくは50℃以下である。
インクと逆極性のポリマー微粒子を処理液に含ませ、インク中の顔料及びポリマー微粒子と凝集させることによってさらに凝集性を高めてもよい。
また、インクに含まれるポリマー微粒子成分に対応した硬化剤を処理液に含有し、二液が接触後、インク成分中の樹脂エマルジョンが凝集するとともに架橋又は重合するようにして、凝集性を高めてもよい。
本発明に係る処理液は、界面活性剤を含有することができる。
界面活性剤の例としては、炭化水素系では脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好ましい。
更に、特開昭59−157636号の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも使うことができる。また、特開2003−322926号、特開2004−325707号、特開2004−309806号の各公報に記載されているようなフッ素(フッ化アルキル系)系、シリコーン系の界面活性剤も用いることができる。これら表面張力調整剤は消泡剤としても使用することができ、フッ素系、シリコーン系化合物やEDTAに代表されるキレート剤等も使用することができる。
表面張力を下げて画像形成体(記録媒体、中間転写体など)上でのぬれ性を高めるのに効果がある。また、インクを先立って打滴する場合においてもインク上でのぬれ性を高め、二液の接触面積の増加により効果的に凝集作用がすすむ。
本発明に係る処理液の表面張力は、10〜50mN/mであることが好ましく、直接記録を行う場合には浸透性記録媒体への浸透性、また中間転写方式によって記録を行う場合には、中間転写体上でのぬれ性と液滴の微液滴化および吐出性の両立の観点からは、15〜45mN/mであることが更に好ましい。
本発明に係る処理液の粘度は、1.0〜20.0cPであることが好ましい。
その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線、吸収剤、等も添加することができる。
〔ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールエステル、ポリオキシアルキレングリコールエーテルの説明〕
本発明において、WAX剤を構成する材料として、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールエステル、及びポリオキシアルキレングリコールエーテルが用いられる。これらの中でポリアルキレングリコールエステル、ポリオキシアルキレングリコールエーテルが特に好ましく用いられる。
〔ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールエステル、ポリオキシアルキレングリコールエーテルの説明〕
本発明において、WAX剤を構成する材料として、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールエステル、及びポリオキシアルキレングリコールエーテルが用いられる。これらの中でポリアルキレングリコールエステル、ポリオキシアルキレングリコールエーテルが特に好ましく用いられる。
ポリアルキレングリコールとしては、特に限定されず用いることが可能であるが、具体的にはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールジオール型、ポリプロピレングリコールトリオール型、ポリブチレングリコール等が挙げられる。アルキレン鎖の繰り返し単位は2〜100000が好ましく、4〜500が更に好ましく、20〜100が特に好ましい。具体例としては、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール1000、ポリエチレングリコール1540、ポリエチレングリコール2000、ポリエチレングリコール3400、ポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール6000、ポリエチレングリコール8000、ポリエチレングリコール20000、ポリエチレングリコール500000、ポリエチレングリコール3500000、ポリプロピレングリコールジオール型平均分子量700、1000、2000、3000、ポリプロピレングリコールトリオール型平均分子量300、700、1500、3000、4000等が挙げられる。特に好ましく用いられるポリアルキレングリコールはポリエチレングリコール1000、ポリエチレングリコール1540、ポリエチレングリコール2000、ポリエチレングリコール3400である。
ポリアルキレングリコールエステルとしては、特に限定されず用いることが可能であるが、具体的にはポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノオレート、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノサッカレート、ポリエチレングリコールモノノニルフェニレート、ポリエチレングリコールモノオクチレート、ポリエチレングリコールモノオクチルフェニレート、ポリエチレングリコールモノセチレートなどが挙げられる。この中ではポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノオレートが好ましく、アルキレン鎖の繰り返し単位は2〜500が好ましく、15〜60が特に好ましい。
具体例としては、ポリエチレングリコールモノステアレートn=2、ポリエチレングリコールモノステアレートn=4、ポリエチレングリコールモノステアレートn=10、ポリエチレングリコールモノステアレートn=25、ポリエチレングリコールモノステアレートn=40、ポリエチレングリコールモノステアレートn=45、ポリエチレングリコールモノステアレートn=55、ポリエチレングリコールモノオレートn=2、ポリエチレングリコールモノオレートn=7、ポリエチレングリコールモノオレートn=10、ポリエチレングリコールモノオレートn=20、ポリエチレングリコールモノオレートn=50、ポリエチレングリコールモノラウレートn=10、ポリエチレングリコールモノラウレートn=25、ポリエチレングリコールモノノニルフェニレートn=2、ポリエチレングリコールモノノニルフェニレートn=5、ポリエチレングリコールモノノニルフェニレートn=7.5、ポリエチレングリコールモノノニルフェニレートn=10、ポリエチレングリコールモノノニルフェニレートn=15、ポリエチレングリコールモノノニルフェニレートn=18、ポリエチレングリコールモノノニルフェニレートn=20、ポリエチレングリコールモノオクチルn=23、ポリエチレングリコールモノオクチルフェニレートn=10、ポリエチレングリコールモノセチレートn=23などが挙げられ、ポリエチレングリコールモノステアレートn=25、ポリエチレングリコールモノステアレートn=40、ポリエチレングリコールモノステアレートn=45、ポリエチレングリコールモノステアレートn=55、ポリエチレングリコールモノオレートn=20、ポリエチレングリコールモノオレートn=50などが特に好ましい。
本発明のポリオキシアルキレンエーテルとしては、特に限定されず用いることが可能であるが、ポリオキシエチレンエーテルが好ましく用いられる。ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンドコシエルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等が挙げられる。具体的にはポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(7)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(50)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(4)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(5)ドコシエルエーテル、ポリオキシエチレン(10)ドコシエルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ドコシエルエーテル、ポリオキシエチレン(30)ドコシエルエーテル、ポリオキシエチレン(9)ドデシルエーテル、ポリオキシエチレン(10)ドデシルエーテル、ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(2)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(5)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(7.5)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(9)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(15)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(18)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(8)オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(9)オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル等が挙げられる。これらの中ではポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(4)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル等が特に好ましく用いられる。
これらの化合物は室温で液状、ワックス(WAX)状、フレーク状を示すものがあり、その中でワックス(WAX)状のものが中間転写体との付着力を維持するため特に好ましい。
また、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールエステル、ポリオキシアルキレングリコールエステルは、単独で用いることもでき、2種以上を混合して用いることもできる。また、その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線、吸収剤、等も添加することができるが、単独で用いることが好ましい。
〔画像形成装置〕
次に、本発明に係る画像形成装置の一実施形態としてのインクジェット記録装置について説明する。
次に、本発明に係る画像形成装置の一実施形態としてのインクジェット記録装置について説明する。
図1は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成を示した概略構成図である。図1に示すインクジェット記録装置10は、中間転写体12上にインク画像(1次画像)を形成し、該インク画像を記録媒体14に転写する、いわゆる「転写記録方式」が適用された記録装置である。
本実施形態のインクジェット記録装置10は、中間転写体12上にポリアルキレングリコール(以下、「PAG」ともいう。)、ポリアルキレングリコールエステル、又はポリオキシアルキレングリコールエステル(以下、「PAG等」ともいう。)からなるWAX剤を塗布するWAX剤塗布部16と、液体状の凝集処理剤(凝集処理液)を塗布する凝集処理液付与部18と、中間転写体12上に付与された凝集処理液を加熱して乾燥させる加熱乾燥部20と、中間転写体12上に複数色のインクを液滴化して打滴する印字部(インク打滴部)22と、中間転写体12上の液体溶媒(インク及び凝集処理液の溶媒成分)を除去する溶媒除去部24と、中間転写体12上に形成されたインク画像を記録媒体14に転写する転写部26とから主に構成される。
図1に示す中間転写体12には無端状ベルトが適用され、中間転写体(無端状ベルト)12は複数の張架ローラ(図1には7つの張架ローラ28A〜28Gを図示)に巻きかけられた構造を有し、張架ローラ28A〜28Gの少なくとも1つにモータ(図1中不図示、図6に符号88として図示)の動力が伝達されることにより、中間転写体12は、図1において反時計回り方向(図1中、矢印Aで示す方向)に駆動される。
中間転写体(無端状ベルト)12は、印字部22と対向する表面(画像形成面)12Aの少なくとも1次画像(インク画像)が形成される画像形成領域(不図示)には、樹脂、金属やゴムなどのインク液滴が浸透しない非浸透性を有している。また、中間転写体12の少なくとも画像形成領域は、所定の平坦性を有する水平面(フラット面)をなすように構成されている。
図1には、中間転写体12の一態様として無端状のベルトを示したが、本発明に適用される中間転写体はドラム形状でもよいし、平板形状でもよい。
中間転写体12の画像形成面12Aを含む表面層に用いられる好ましい材料としては、例えば、ポリイミド系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、フッ素系樹脂等の公知の材料が挙げられる。
また、中間転写体12の表面層の表面張力は40mN/m以下とする態様が好ましく、より好ましくは25mN/mとする態様が好ましい。中間転写体12の表面層の表面張力を40mN/mより大きくすると、1次画像が転写される記録媒体14との表面張力差がなくなり(または、極めて小さくなり)、インク凝集体の転写性が悪化する。一方、中間転写体12の表面層の表面張力を40mN/m以下、好ましくは25mN/mとすることにより、転写時の温度を低温化できる等、転写条件の自由度を広くすることができる。
中間転写体搬送方向(図1中、矢印Aで示す方向)最上流側には、本発明の特徴的部分であるWAX剤塗布部16が配置される。このWAX剤塗布部16の構成については後で詳説するが、塗布ローラ及びWAX剤が収容されるWAX剤受け皿(容器)を含んで構成され、中間転写体12の画像形成面12AにPAG等からなるWAX剤が塗布され、中間転写体12上にWAX層が形成される。
WAX剤塗布部16の中間転写体搬送方向下流側には凝集処理液付与部18が配置される。凝集処理液付与部18は、塗布ローラ18A及び凝集処理液が収容される塗布液容器18Bを含んで構成される。塗布ローラ18Aは中間転写体12に対して従動して回転するか、独立して塗布ローラ18Aが駆動し回転制御可能となっている。このように、塗布ローラ18Aが回転することによって、塗布液容器18B内の凝集処理液が中間転写体12上に形成されたWAX層の表面に塗布される。
凝集処理液の塗布厚は、0.5〜20μmの範囲で設定することが好ましい。塗布厚0.5μm未満では液切れによる膜不均一性が生じやすく品質上の問題となる。また、塗布厚20μmを超えると乾燥工程におけるエネルギー付加が大きくなり、また、面状も悪くなる。
凝集処理液の塗布厚を制御するには、塗布ローラ18Aと中間転写体12との接触時間を制御する態様が好ましい。塗布ローラ18Aと中間転写体12との接触時間を相対的に長くすると凝集処理液の塗布厚は相対的に大きくなり、塗布ローラ18Aと中間転写体12との接触時間を相対的に短くすると凝集処理液の塗布厚は相対的に小さくなる。
塗布ローラ18Aには、多孔質材料や表面に凹凸がある材料が望ましく、例えば、グラビアロール状のもの等を用いることができる。
図1には、凝集処理液の付与形態の一態様として、塗布ローラ18Aを用いる態様を例示したが、凝集処理液の付与形態は本例に限定されず、ブレードによる塗布、インクジェットヘッドによる打滴など様々な方式を適用することが可能である。特にインクジェット方式では、記録画像(画像データ)に応じて凝集処理液を正確にパターンニングして付与することができ、後段に配置される加熱乾燥部20の加熱時間の短縮や加熱エネルギーの削減が可能となる。
凝集処理液付与部18の中間転写体搬送方向下流側には加熱乾燥部20が配置される。加熱乾燥部20は、中間転写体12の画像形成面12Aの裏面12B側に設けられたヒータ(図1中不図示、図6に符号89で図示)を含んで構成され、凝集処理液が付与された中間転写体12を裏面12B側からヒータで加熱された熱風を吹き付けることによって中間転写体12上の凝集処理液の乾燥が行われる。
加熱乾燥部20に配置されるヒータの加熱温度は、凝集処理液の種類、凝集処理液の付与量(厚み)、環境温度などの諸条件に応じて設定され、加熱乾燥部20を通過した中間転写体12のWAX層上に固体状又は半固溶状の凝集処理層が形成される。
ここで、乾燥によりWAX剤が融点を超える温度になると、溶融してしまい均一に形成したWAX剤の薄層が中間転写体12から弾かれてしまうため、WAX剤の融点以下の温度で乾燥を行う必要がある。
例えば、凝集処理液付与部18に配置される塗布ローラ18Aよって中間転写体12上に約10μmの膜厚で凝集処理液を塗布した後、加熱乾燥部20のヒータによる50℃の熱風乾燥を行うことにより、中間転写体12上に約4μmの固体状又は半固溶状の凝集処理層を形成することができる。
本実施形態では、中間転写体12上にWAX層を形成後、WAX層上に凝集処理液を付与して、中間転写体12上の凝集処理液を加熱により乾燥させて、WAX層上に固体状又は半固溶状の凝集処理層を形成する態様を例示したが、本発明の実施に際して本例に限定されず、中間転写体12上に固体状又は半固溶状の凝集処理剤を直接付与する態様もある。
WAX層上に固体状又は半固溶状の凝集処理剤を直接付与する態様としては、例えば、流動浸漬法、静電煙霧法、溶射法、静電乾式吹き付け法、散布法などの公知の粉体散布方法を用いることができる。また、開閉式の蓋の設けられた開口部を有し、且つ、内部に粉体(固体状又は半固溶状の凝集処理剤)を貯蔵することが可能な容器などを用いて粉体を散布することも可能である。このとき、転写体通過時のみ蓋を開き、転写体上に粉体を散布し、非使用時には蓋を閉じ、粉体が散布されないように調節する制御手段などを備えて粉体の散布を精密に制御することも可能である。
加熱乾燥部20の中間転写体搬送方向下流側には印字部22が配置される。印字部22は、中間転写体搬送方向に沿って上流側から、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、黒(K)の各色に対応したインクジェットヘッド(以下、単に「ヘッド」という。)22C、22M、22Y、22Kが順に設けられる。各ヘッド22C、22M、22Y、22Kから中間転写体12の画像形成面12Aに対してそれぞれ対応する色インクが液滴化され打滴される。
図2に示すように、各ヘッド22C、22M、22Y、22Kは、それぞれ中間転写体12における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有し、そのインク吐出面には画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズル(図2中不図示、図3に符号51で図示)が複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている。各ヘッド22C、22M、22Y、22Kが中間転写体搬送方向と直交する方向に延在するように固定設置される。
中間転写体12の画像形成領域の全幅をカバーするノズル列を有するフルラインヘッドがインク色毎に設けられる構成によれば、中間転写体12の搬送方向(副走査方向)について、中間転写体12と印字部22を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち1回の副走査で)、中間転写体12の画像形成領域に1次画像を記録することができる。これにより、中間転写体搬送方向と直交する方向(主走査方向;図3参照)に往復動作するシリアル(シャトル)型ヘッドが適用される場合に比べて高速印字が可能であり、プリント生産性を向上させることができる。
本例では、各ヘッド22C、22M、22Y、22Kの各ノズルから吐出されるインク液滴の最小打滴量(吐出体積)は2plであり、最高記録密度(最高ドット密度)は主走査方向(中間転写体搬送方向と直交する方向)及び副走査方向(中間転写体搬送方向)のいずれも1200dpiである。
また、本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
インク貯蔵/装填部30は、各ヘッド22C、22M、22Y、22Kに対応する色インクを貯蔵するインクタンク(図1中不図示、図5に符号60で図示)を含んで構成され、各インクタンクは所要の流路を介してそれぞれ対応するヘッドと連通されている。また、インク貯蔵/装填部30は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
印字部22の中間転写体搬送方向下流側には溶媒除去部24が配置される。溶媒除去部24は、溶媒吸収ローラ24Aを含んで構成される。この溶媒吸収ローラ24Aはローラ状の多孔質体(吸収体)によって構成され、中間転写体12上の液体溶媒(インク及び凝集処理液の溶媒成分)に多孔質体の表面を接触させて、多孔質体の毛細管力により多孔質体内部に当該液体溶媒を吸収させることによって、中間転写体12上から液体溶媒の除去が行われる。
溶媒吸収ローラ24Aは、中間転写体12の移動(搬送)に応じて従動回転させてもよいし、独立して回転させるようにしてもよい。また、中間転写体12の画像形成面12Aから離間可能となるように構成されていることが好ましい。
溶媒吸収ローラ24Aの表面(中間転写体12の画像形成面12Aと接触する面)の表面エネルギーは中間転写体12の画像形成面12Aの表面エネルギーよりも小さいことが好ましく、本例では、溶媒吸収ローラ24Aには表面エネルギーが30mN/m以下の部材が適用される。
上述した表面エネルギーの条件を満たす溶媒吸収ローラ24Aを用いて溶媒除去を行うことにより、溶媒吸収ローラ24Aへの色材付着を防止しつつ、中間転写体12上の液体溶媒を吸収除去することが可能となる。
なお、溶媒吸収ローラ24Aに代えて、エアナイフで余剰な溶媒を中間転写体12から取り除く方式や、中間転写体12を加熱(例えば、平板加熱ヒータによる加熱)したり、乾燥風を吹き付けたりして溶媒を蒸発させ除去する方式などを適用してもよい。溶媒除去の方式としては、先に例示した何れの方式でもよいが、加熱によらない方式を用いる方がより好ましい。
中間転写体12の表面を加熱する方式や、中間転写体12上のインク凝集体に熱を付与して溶媒を蒸発させる方式では、インク凝集体の過剰加熱により溶媒を過剰除去してしまい、転写時において好ましい凝集体の粘弾性を維持できず、かえって記録媒体14への転写性が低下することがある。更にまた、過剰加熱により生じた熱が各ヘッド22C、22M、22Y、22Kの吐出性能へ影響を与えることも懸念される。
一方、溶媒吸収ローラ24Aによって中間転写体12の画像形成面12A上の溶媒を吸収除去する態様では、中間転写体12上に多くの溶媒が残存する場合でも、他の方式に比べて短時間で多量の溶媒を除去することができるため、後段の転写部26で記録媒体14に多量の溶媒(分散媒)が転写されることはない。したがって、記録媒体14として紙類が用いられるような場合でも、カール、カックルといった水系溶媒に特徴的な問題が発生しない。
また、溶媒除去部24を用いてインク凝集体から余分な溶媒を除去することによって、インク凝集体を濃縮し、より内部凝集力を高めることができる。これにより、転写部26による転写工程までにより強い内部凝集力をインク凝集体に付与することができる。更に、溶媒除去によるインク凝集体の効果的な濃縮により、記録媒体14に画像を転写した後も良好な定着性や光沢性を画像に付与することができる。
なお、溶媒除去部24によって、中間転写体12上の溶媒すべてを除去する必要は必ずしもない。過剰に除去しすぎてインク凝集体を濃縮しすぎるとインク凝集体の中間転写体12への付着力が強くなりすぎて、転写に過大な圧力を必要とするため好ましくない。むしろ転写性に好適な粘弾性を保つためには、少量残留させることが好ましい。
中間転写体12上の溶媒を少量残留させることで得られる効果として、次のことが挙げられる。即ち、インク凝集体は疎水性であり、揮発しにくい溶媒成分(主にグリセリンなどの有機溶剤)は親水性であるので、インク凝集体と残留溶媒成分は溶媒除去実施後に分離し、残留溶媒成分からなる薄い液層がインク凝集体と中間転写体との間に形成される。したがって、インク凝集体の中間転写体12への付着力は弱くなり、転写性向上に有利である。
上述した溶媒除去の制御は、溶媒吸収ローラ24Aの中間転写体12への押圧を変化させることで可能である。溶媒除去量を相対的に多くする場合には、溶媒吸収ローラ24Aの中間転写体12への押圧を大きくし、溶媒除去量を相対的に少なくする場合には、溶媒吸収ローラ24Aの中間転写体12への押圧を小さくすればよい。
また、吸収特性の異なる複数の溶媒吸収ローラを備え、溶媒除去量に応じて使用する溶媒吸収ローラを選択的に切り替える態様も可能である。
図1に示すインクジェット記録装置10には、溶媒除去部24と転写部26の間に予備加熱部32が設けられる。予備加熱部32は、中間転写体12の画像形成面12Aの裏面12B側に設けられたヒータ(図1中不図示、図6に符号89で図示)を含んで構成され、1次画像(インク画像)が形成された中間転写体12を裏面12B側からヒータによって予備加熱する構成となっている。本例の予備加熱部32には、平板加熱ヒータが好適に用いられる。また、本例では、中間転写体12の外部にヒータを配置した構成を示したが、中間転写体12にヒータを内蔵する態様も可能である。
予備加熱部32に配置されるヒータの加熱温度範囲は40〜80℃であり、転写時の加熱温度よりも低く設定される。中間転写体12の画像形成領域を予備加熱することで、予備加熱を行わない場合に比べて転写部26の加熱温度を低く設定することが可能となり、更に、転写部26の転写時間を少なくすることができる。
予備加熱部32では、中間転写体12の画像形成面12Aの温度(画像が形成されている領域の温度)がインクに含まれるポリマー微粒子のガラス転移点温度Tgを超える温度となるように、加熱温度が設定されることが好ましい。
予備加熱部32の中間転写体搬送方向下流側には転写部26が配置される。転写部26は、ヒータ(図1中不図示、図6に複数のヒータを代表して符号89で図示)を有した転写加熱ローラ26Aと、これに対向して配置される加熱加圧ニップ用の加熱対向ローラ26Bとを含んで構成され、これらローラ26A、26B間に中間転写体12と記録媒体14とを挟み込み、所定の温度で加熱しながら、所定の圧力(ニップ圧力)で加圧することにより、中間転写体12上に形成された1次画像を記録媒体14に転写する構成となっている。
転写部26による加熱温度(転写温度)はWAX層が溶解する温度であることが好ましく、60℃〜90℃が好ましく、転写性の観点から80℃〜90℃が更に好ましい。転写部26による加熱温度が上記範囲を超えると、中間転写体12の変形等の問題がある。一方、転写部26による加熱温度が上記範囲より低いと転写性が悪化するという問題がある。
転写部26によるニップ圧力は1.5〜2.5MPaが好ましい。転写部26における転写時のニップ圧力を調整するための手段としては、例えば、転写加熱ローラ26Aを図1の上下方向(符号Cで図示)に移動させる機構(駆動手段)が挙げられる。即ち、転写加熱ローラ26Aを加熱対向ローラ26Bから離れる方向に移動させるとニップ圧力は小さくなり、加熱対向ローラ26Bに近づく方向に移動させるとニップ圧力は大きくなる。
記録媒体14を転写部26へ供給する給紙部34の構成としては、ロール紙(連続用紙)のマガジンを備える態様、或いは、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給する態様がある。ロール紙を使用する装置構成の場合、裁断用のカッターが設けられており、該カッターによってロール紙は所望のサイズにカットされる。紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンやカセットを併設してもよい。
複数種類の記録媒体を利用可能な構成にした場合、メディアの種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される記録媒体の種類(メディア種)を自動的に判別し、メディア種に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
本例に適用される記録媒体14の具体例を挙げると、普通紙、インクジェット専用紙などの浸透性媒体、コート紙などの非浸透性又は低浸透性の媒体、裏面に粘着剤と剥離ラベルの付いたシール用紙、OHPシートなどの樹脂フィルム、金属シート、布、木など様々な媒体がある。
転写部26の中間転写体搬送方向下流側には冷却部36が配置される。冷却部36は、転写部26を通過して中間転写体12と記録媒体14が張り合わさった状態のものを冷却する。冷却部36には、冷却ファン等で冷気を送風する態様が適用され、冷却温度等を調整可能であることが好ましい。本例に示す冷却部36は、所望の温度まで冷却するための中間転写体12の移動時間(冷却時間)が確保されている構成となっている。中間転写体12と記録媒体14とを冷却後に剥離することで、温度ムラ等に起因した転写不良を防止することができ、安定した画像の転写(剥離)が可能となる。
冷却部36の中間転写体搬送方向下流側には剥離部38が配置される。剥離部38は、中間転写体12の剥離ローラ28Eの巻き付け曲率によって、記録媒体14自身の剛性(腰の強さ)で中間転写体12から記録媒体14を剥離するように構成されている。剥離部38には、剥離爪等の剥離を促進させる手段を併用してもよい。
剥離部38の記録媒体搬送方向(図1中、矢印Bで示す方向)下流側には定着部40が配置される。定着部40は、100℃〜180℃の範囲で温度調整可能な加熱ローラ対40Aを含んで構成され、加熱ローラ対40Aの間に挟みこまれた記録媒体14を加熱加圧しながら、記録媒体14に転写された画像を定着させる。
定着部40の加熱温度は、インクに含有されるポリマー微粒子のガラス転移点温度などに応じて設定することが好ましい。本例では、定着部40の加熱温度は130℃に設定される。また、定着部40のニップ圧力は1.0〜2.0MPaとする態様が好ましい。なお、転写部26にて画像の転写と定着を両立させることができれば、定着部40を省略する態様も可能である。
剥離部38の中間転写体搬送方向下流側にはクリーニング部42が配置される。クリーニング部42は、記録媒体14への画像転写が行われた後の中間転写体12をクリーニングする手段として、中間転写体12の画像形成面12Aに当接しながら転写後残留物(インク凝集体など)を払拭除去するブレード(不図示)と、除去された転写後残留物を回収する回収部(不図示)とを含んで構成される。
なお、中間転写体12から転写後残留物を除去するクリーニング手段の構成は、上記の例に限らず、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、粘着ロール方式或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
次に、印字部22に配置されるヘッド22C、22M、22Y、22Kの構造について詳説する。なお、ヘッド22C、22M、22Y、22Kの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によってヘッドを示す。
図3(a)はヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図3(b)はその一部の拡大図であり、図3(c)はヘッド50の他の構造例を示す平面透視図である。また、図4はインク室ユニットの立体的構成を示す断面図(図3(a)、(b)中の4−4線に沿う断面図)である。
中間転写体12上に形成されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド50は、図3(a)、(b)に示すように、インク滴の吐出孔であるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット53を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(中間転写体搬送方向と直交する主走査方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
中間転写体12の搬送方向と略直交する方向に中間転写体12の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図3(a)の構成に代えて、図3(c)に示すように、複数のノズル51が2次元に配列された短尺のヘッドブロック50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで中間転写体12の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。また、図示は省略するが、短尺のヘッドを一列に並べてラインヘッドを構成してもよい。
各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51と供給口54が設けられている。各圧力室52は供給口54を介して共通流路55と連通されている。共通流路55はインク供給源たるインク供給タンク(図4中不図示、図5に符号60で図示)と連通しており、該インク供給タンクから供給されるインクは共通流路55を介して各圧力室52に分配供給される。
圧力室52の天面を構成し共通電極と兼用される振動板56には個別電極57を備えた圧電素子58が接合されており、個別電極57に駆動電圧を印加することによって圧電素子58が変形してノズル51からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
本例では、ヘッド50に設けられたノズル51から吐出させるインクの吐出力発生手段として圧電素子58を適用したが、圧力室52内にヒータを備え、ヒータの加熱による膜沸騰の圧力を利用してインクを吐出させるサーマル方式を適用することも可能である。
かかる構造を有するインク室ユニット53を図3(b)に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
即ち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなり、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
なお、本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されず、副走査方向に1列のノズル列を有する配置構造など、様々なノズル配置構造を適用できる。
また、本発明の適用範囲はライン型ヘッドによる印字方式に限定されず、中間転写体12の幅方向(主走査方向)の長さに満たない短尺のヘッドを中間転写体12の幅方向に走査させて当該幅方向の印字を行い、1回の幅方向の印字が終わると中間転写体12を幅方向と直交する方向(副走査方向)に所定量だけ移動させて、次の印字領域の中間転写体12の幅方向の印字を行い、この動作を繰り返して中間転写体12の印字領域の全面にわたって印字を行うシリアル方式を適用してもよい。
図5は、インクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。図5に示すように、インク供給タンク60はヘッド50にインクを供給する基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部30に含まれる。インク供給タンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。
図5に示したように、インク供給タンク60とヘッド50の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
なお、図5には示さないが、ヘッド50の近傍又はヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
また、インクジェット記録装置10には、ノズル51の乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ヘッド50のインク吐出面の清掃手段としてクリーニングブレード66が設けられている。
これらキャップ64及びクリーニングブレード66を含むメンテナンスユニットは、不図示の移動機構によってヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置からヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
キャップ64は、図示せぬ昇降機構によってヘッド50に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、ヘッド50に密着させることにより、ノズル面をキャップ64で覆う。
印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、ある時間以上インクが吐出されない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してインク粘度が高くなってしまう。このような状態になると、圧電素子58が動作してもノズル51からインクを吐出できなくなってしまう。
このような状態になる前に(圧電素子58の動作により吐出が可能な粘度の範囲内で)圧電素子58を動作させ、その劣化インク(粘度が上昇したノズル近傍のインク)を排出すべくキャップ64(インク受け)に向かって予備吐出(パージ、空吐出、つば吐き、ダミー吐出)が行われる。
なお、中間転写体12に向けてインクを打滴して予備吐出を行う態様も可能である。例えば、複数の画像を連続的に形成する場合には、画像間で予備吐出を実行することが可能である。特に、同一画像を複数枚形成する場合には、特定のノズルにおいてインク吐出の頻度が低くなり、吐出異常の発生する可能性が高くなり、当該特定のノズルについて画像間で予備吐出を行うことが好ましい。
中間転写体12に予備吐出を行う場合には、溶媒吸収ローラ24Aや転写加熱ローラ26Aに予備吐出によるインクが付着しないように、溶媒吸収ローラ24A及び転写加熱ローラ26Aを移動させて、溶媒吸収ローラ24A及び転写加熱ローラ26Aと中間転写体12との間に所定のクリアランス(例えば、10mm程度)を設けるとよい。
また、ヘッド50内のインク(圧力室152内)に気泡が混入した場合、圧電素子58が動作してもノズルからインクを吐出させることができなくなる。このような場合にはヘッド50にキャップ64を当て、吸引ポンプ67で圧力室52内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク68へ送液する。
この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。なお、吸引動作は圧力室52内のインク全体に対して行われるので、インク消費量が大きくなる。したがって、インクの粘度上昇が小さい場合には予備吐出を行う態様が好ましい。
クリーニングブレード66はゴムなどの弾性部材で構成されており、図示せぬブレード移動機構によりヘッド50のインク吐出面に摺動可能である。インク吐出面にインク液滴または異物が付着した場合、クリーニングブレード66をインク吐出面に摺動させることでインク吐出面を拭き取り、インク吐出面を清掃する。
図6は、インクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦メモリ74に記憶される。
メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。即ち、システムコントローラ72は、通信インターフェース70、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御し、ホストコンピュータ86との間の通信制御、メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
メモリ74には、システムコントローラ72のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。なお、メモリ74は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。メモリ74は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示にしたがってモータ88を駆動するドライバである。図6には、装置内の各部に配置されるモータ(アクチュエータ)を代表して符号88で図示されている。例えば、図6に示すモータ88には、図1のローラ28A〜28Gの中の駆動ローラを駆動するモータや、溶媒吸収ローラ24Aの移動機構のモータ、転写加熱ローラ26Aの移動機構のモータなどが含まれている。
ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがって、ヒータ89を駆動するドライバである。図6には、インクジェット記録装置10に備えられる複数のヒータを代表して符号89で図示されている。例えば、図6に示すヒータ89には、図1に示す加熱乾燥部20のヒータや、予備加熱部32のヒータ、定着部40の加熱ローラ対40Aに含まれるヒータなどが含まれている。
転写制御部79は、転写部26の転写加熱ローラ26Aの押圧制御や温度制御を行う。記録媒体14の種類やインクの種類ごとに、転写加熱ローラ28Aの押圧最適値や温度最適値が予め求められ、データテーブル化されて所定のメモリ(例えば、メモリ74)に記憶され、記録媒体14の情報や使用インクの情報を取得すると、当該メモリを参照して転写加熱ローラ26Aの押圧や温度が制御される。
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいて、ヘッドドライバ84を介してヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
WAX剤塗布制御部81は、WAX剤塗布部16によるWAX剤の塗布量や温度を制御する。本例では、中間転写体12と塗布ローラ102(図7参照)とを接触、離間可能に構成し、塗布ローラ102を中間転写体12に接触させる時間を可変することで、WAX剤の塗布量を制御する。また、WAX剤塗布部16を構成する各部(図7に示すWAX剤受け皿104、塗布ローラ102、薄層形成ブレード124など)の温度制御を行う。
凝集処理液付与制御部83は、図1に示す塗布ローラ18Aによる凝集処理液の塗布量を制御する。本例では、中間転写体12と塗布ローラ18Aとを接触、離間可能に構成し、塗布ローラ18Aを中間転写体12に接触させる時間を可変することで、凝集処理液の塗布量を制御する。
また、塗布液容器18B内の凝集処理液の残量を検出するセンサを備え、凝集処理液付与制御部83は該センサから得られる情報に基づいて塗布液容器18B内の凝集処理液の残量を判断し、残量が所定量以下になると、その旨を報知する。
ヘッドドライバ84は、プリント制御部80から与えられる画像データに基づいてヘッド50の圧電素子58に印加される駆動信号を生成するとともに、該駆動信号を圧電素子58に印加して圧電素子58を駆動する駆動回路を含んで構成される。なお、図6に示すヘッドドライバ84には、ヘッド50の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース70を介して外部から入力され、メモリ74に蓄えられる。この段階では、RGBの画像データがメモリ74に記憶される。
メモリ74に蓄えられた画像データは、システムコントローラ72を介してプリント制御部80に送られ、該プリント制御部80においてインク色ごとのドットデータに変換される。即ち、プリント制御部80は、入力されたRGB画像データをCMYKの4色のドットデータに変換する処理を行う。プリント制御部80で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ82に蓄えられる。
なお、中間転写体12上に形成される1次画像は、転写の際に反転することを考慮して、最終的に記録媒体14に形成される2次画像の鏡面画像としなければならない。即ち、ヘッド50に供給される駆動信号は鏡面画像に対応した駆動信号であり、プリント制御部80にて入力画像に対して反転処理を施す必要がある。
プログラム格納部90には各種制御プログラムが格納されており、システムコントローラ72の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。プログラム格納部90はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記録媒体のうち、複数の記録媒体を備えてもよい。なお、プログラム格納部90は動作パラメータ等の記録手段(不図示)と兼用してもよい。
次に、本発明の特徴的部分であるWAX剤塗布部16の構成について説明する。
図7は、図1に示したインクジェット記録装置10のWAX剤塗布部16の周辺部を示した拡大構成図である。図7に示すWAX剤塗布部16は、塗布ローラ102とWAX剤受け皿104とから主に構成され、WAX剤受け皿104内に収容されるWAX剤が塗布ローラ102によって中間転写体12の画像形成面12Aに塗布される。
中間転写体12の裏面12B側には2つのバックアップローラ106A、106Bが所定の間隔をあけて隣接配置されており、これらバックアップローラ106A、106Bの略中間の中間転写体12を挟んで対向する位置(即ち、画像形成面12A側)に塗布ローラ102が設けられている。
塗布ローラ102には、多孔質材料や表面に凹凸がある材料が望ましく、例えば、グラビアロール状のもの等を用いることができる。本例では、表面に凹凸の模様が彫刻されたグラビアローラ(アニロックスローラ)が好適に用いられる。後述する計量ブレード108を用いて塗布ローラ(グラビアローラ)102の表面に供給されたWAX剤の一部を掻き取ることにより、該WAX剤を一定厚の薄膜にすることができる。
WAX剤塗布部16には、WAX剤受け皿104の内部を温調する温調装置(不図示)が設けられており、この温調装置によってWAX剤受け皿104内に収容されるWAX剤は融点以上に加熱されて溶融状態(液体状態)になっている。
塗布ローラ102は中間転写体12に対して従動して回転、又は独立して回転駆動可能なように構成されており、塗布ローラ102が回転することによって、WAX剤受け皿104内で加熱溶融されたWAX剤が中間転写体12の画像形成面12Aに塗布される。
このとき、WAX剤受け皿104内で加熱溶融されたWAX剤が低粘度状態のまま中間転写体12上に塗布されると、中間転写体12には表面エネルギーが低い材質が一般的に適用されるため、中間転写体12上でWAX剤の弾きが発生してしまい、均一にWAX剤を塗布することができない問題がある。
そこで本発明では、塗布ローラ102の表面温度がWAX剤の融点以下となるように温調する塗布ローラ温調手段を設け、塗布ローラ102の表面に付着したWAX剤を一旦冷却して高粘度化してから中間転写体12上に塗布を行う。これにより、中間転写体12が表面エネルギーの低い材質で構成される場合でも、中間転写体12上に均一なWAX剤の薄層(WAX層)を形成することができる。中間転写体12上に形成されるWAX層の厚さは、例えば2〜3μm程度である。
本実施形態の塗布ローラ102は、塗布ローラ温調手段を兼ねており、ジャケットロール構造を有する温調ローラが好適に用いられる。
図8は、ジャケットロール構造を有する塗布ローラ102の構成を示した一部断面を含む構成図である。図8に示すように、塗布ローラ102には、回転支持軸110に対して回転可能に構成された円筒状のロール本体(回転体)112が設けられており、このロール本体112内部には軸心方向(図8の横方向)に沿ってジャケット室114が形成されている。回転支持軸110には冷媒(冷却水)の導入口116及び排出口118が設けられており、導入口116から導入された冷媒は、ジャケット室114内部に配置される液体流路120を通ってジャケット室114の一端側(回転支持軸110とは反対側)から他端側(回転支持軸110側)に循環して排出口118から排出される。なお、ジャケット室114の内部を循環する冷媒は、図7に示すチラー122によって一定温度に調節される。このようにジャケット室114の内部を冷媒が循環することによって、ロール本体112の表面温度が一定に維持される。
本発明において、塗布ローラ温度をTr[℃]、WAX剤の融点をTm[℃]、WAX剤受け皿104内のWAX剤が塗布ローラ102により掻き上げられてから中間転写体に塗りつけられるまでの時間(冷却時間)をt[sec]としたとき、塗布ローラ温度Trが次の式(3)の関係を満たすことが好ましく、WAX剤の塗布状態を良好にすることができる。
(Tm−14)−(1.2/t)−10≦Tr≦(Tm−14)−(1.2/t)+10 ・・・(3)
但し、WAX剤の融点が所定の範囲をもつ場合は、TmはWAX剤の融点下限値とする。
但し、WAX剤の融点が所定の範囲をもつ場合は、TmはWAX剤の融点下限値とする。
本発明の好ましい態様として、塗布ローラ102を中間転写体搬送方向に対して逆方向(図7において反時計回り方向)に回転駆動するとともに、計量ブレード108を塗布ローラ102の表面に摺接させて、塗布ローラ102の表面に付着した余剰WAX剤を掻き取る態様が好ましい。これにより、中間転写体12上に形成されるWAX層の面状を向上させることができる。
また、本発明の好ましい態様として、中間転写体12上に形成されたWAX層を軟化させながら薄層形成ブレード124によって掻き取る態様が好ましい。WAX層の温調手段としては、薄層形成ブレード124が温調手段を兼ねる態様、中間転写体12の表面(画像形成面)12A及び裏面12Bの少なくとも一方からの赤外線輻射や温風による加熱を行う態様、中間転写体12の裏面12Bからのプレートヒータによる接触加熱を行う態様などを適用することができるが、これらの中でも薄層形成ブレード124が温調手段を兼ねる態様が好ましく、薄層形成ブレード124に対するWAX剤の蓄積を防止することができる。
中間転写体12上に形成されたWAX層は冷えて固体状となるが、中間転写体12上のWAX層の温調手段によって該WAX層を軟化させながら薄層形成ブレード124によって掻き取ることによって、中間転写体12上に厚さ1μm以下の均一なWAX剤の薄層(WAX層)を高速に形成することができる。
本発明において、中間転写体12上のWAX層の温度(WAX層温度)をTn[℃]、WAX剤の融点をTm[℃]としたとき、WAX層温度Tnが次の式(4)の関係を満たすことが好ましく、薄層形成ブレード124によるWAX剤の掻き取り状態が良好となり、中間転写体12上のWAX層を更に均一化することができる。
Tm−12≦Tn≦Tm−2 ・・・(4)
但し、WAX剤の融点が所定の範囲をもつ場合は、TmはWAX剤の融点下限値とする。
但し、WAX剤の融点が所定の範囲をもつ場合は、TmはWAX剤の融点下限値とする。
中間転写体12の表面エネルギーが低い場合には、WAX層温度Tnが低すぎると良好にWAX剤を掻き取ることができない。一方、WAX層温度Tnの温度が高すぎるとWAX層の粘度が下がりすぎてWAX剤を弾いてしまい、均一なWAX剤の薄層を形成することができない。従って、WAX層温度Tnは式(4)を満たすように設定されることが好ましい。
WAX剤受け皿104へのWAX剤の補充方法としては、常温で固体状のWAX剤をサブタンク124内で加熱溶融しておき、このWAX剤をフィルタF及びポンプP(送液手段)を介してWAX剤受け皿104に供給する。また、WAX剤受け皿104からオーバーフローしたWAX剤はサブタンク124に戻して、再びWAX剤受け皿104に供給する。サブタンク124からWAX剤受け皿104に対するWAX剤の供給は常時でもよいし、WAX剤受け皿104内のWAX剤が不足しない程度に一定時間毎に行うようにしてもよい。
また、サブタンク124内のWAX剤の残量を検出する手段(不図示)が設けられていることが好ましく、WAX剤の残量が基準値以下となった場合には、電磁弁126を開いて補充タンク128内の固体状のWAX剤をサブタンク124に補充するようにするとよい。
このように、WAX剤受け皿104とサブタンク124との間でWAX剤を循環させるとともに、補充タンク128からサブタンク124にWAX剤を適宜補充することにより、WAX剤の安定塗布が可能となる。
図9は、本実施形態のインクジェット記録装置10により画像が形成される様子を示した模式図である。以下、図1、図7、及び図9を参照しながら、本実施形態のインクジェット記録装置10の動作について説明する。
まず、中間転写体12が中間転写体搬送方向(図1中、矢印Aで示す方向)に搬送されつつ、WAX剤塗布部16において、WAX剤受け皿104内のWAX剤が塗布ローラ102によって中間転写体12の画像形成面12Aに塗布され、中間転写体12上にWAX層200が形成される(図9(a))。このとき、WAX剤受け皿104内のWAX剤は加熱されて溶融状態(液体状態)となっているが、そのままの状態で中間転写体12上に塗布されることなく、温調手段を兼ねる塗布ローラ102によって冷却されて高粘度状態になってから中間転写体12上に塗布される。このため、中間転写体12の表面エネルギーが25mN/m以下の材質で構成される場合でも、中間転写体12上にWAX剤を均一に塗布することが可能となる。
また、塗布ローラ102が中間転写体搬送方向に対して逆方向(図7において反時計回り方向)に回転駆動するとともに、計量ブレード108によって塗布ローラ102の表面に付着した余剰WAX剤を掻き取りながら、中間転写体12上にWAX剤を塗布する態様が好ましく、中間転写体12上に形成されるWAX層200の面状を向上させることができる。
また、温調手段を兼ねる薄層形成ブレード124によって中間転写体12上に形成されたWAX層200を軟化させながら掻き取る態様が好ましく(図9(b))、中間転写体12上に均一なWAX剤の薄層(WAX層)を高速に形成することができる。薄層形成ブレード124により薄層化されたWAX層200の厚みは、好ましくは、0.2〜2.0μmであり、より好ましくは0.5〜1.0μmである。
次に、凝集処理液付与部18によって、中間転写体12上に形成されたWAX層200の表面に均一な膜厚(例えば10μm)で凝集処理液が塗布される。続いて、加熱乾燥部20によって凝集処理液の乾燥(例えば、50℃の熱風乾燥)が行われ、WAX層200上に固体状又は半固溶状の凝集処理層202が形成される(図9(c))。
次に、印字部22において、固体状または半固溶状の凝集処理層202が形成された中間転写体12に対してインク液滴204が打滴される(図9(d))。インク液滴204の打滴が行われる前にWAX層200上に固体状または半固溶状の凝集処理層202を形成しておくことにより、凝集処理層202上にインク液滴204が着弾すると瞬時に凝集反応が開始され、WAX層200上で所定の大きさに広がったインク凝集体(色材凝集体)206からなるドットが形成される(図9(e))。このとき、WAX層200は、中間転写体12より表面エネルギーが高いので、インク凝集体206はWAX層200に固着し、画像縮みを抑えることができる。
インク液滴の打滴が行われるときの温度は、WAX層200を構成するWAX剤の融点以下で行われることが好ましい。WAX剤の融点を超える温度で行われると、WAX層200が流動性を有するため、WAX層200と中間転写体12との付着力が維持できず、色材移動による画像乱れが発生しやすくなる。
次に、溶媒除去部24の溶媒吸収ローラ24Aによって、中間転写体12上の液体溶媒(インク及び凝集処理液の溶媒成分)が吸収除去される。上述したように、インク凝集体206はWAX層200との間で十分な付着力を得ることができ、また、WAX層200と中間転写体12は、WAX層200の粘性により付着しているため、溶媒吸収ローラ24Aに対する色材付着を防止しつつ、液体溶媒を吸収除去することが可能となる。
次に、予備加熱部32において、中間転写体12に対する予備加熱が行われた後、転写部26において、中間転写体12から記録媒体14に対して画像転写が行われる(図9(g))。このとき、転写部26の加熱温度(転写温度)はWAX剤の融点より高く設定され、WAX層200は溶解し、中間転写体12上でWAX剤206を弾くようになる(図9(h))。これは、WAX剤が低温である場合は、濡れ性が悪くても粘性などにより、中間転写体12に付着してWAX層200を構成するが、WAX剤が溶解すると流動性を有し、粘性がなくなるためである。従って、このような加熱温度で転写が行われることにより、溶解したWAX剤208の一部はインク凝集体206とともに記録媒体14に転写される(図9(i))。
その後、剥離部38において中間転写体12から記録媒体14が剥離されると、記録媒体14は、定着部40によって転写されたインク画像の定着が行われる。一方、中間転写体12は、クリーニング部42によって転写後残存物の除去が行われる。以後、上述した各工程が順次繰り返される。
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔評価実験A〕
本評価実験では、図1に示すインクジェット記録装置10と同等のシステムを用いて、低表面エネルギーをもつ中間転写体(表面エネルギー 20mN/m)へのWAX剤の塗布性について評価実験を行った。
本評価実験では、図1に示すインクジェット記録装置10と同等のシステムを用いて、低表面エネルギーをもつ中間転写体(表面エネルギー 20mN/m)へのWAX剤の塗布性について評価実験を行った。
WAX剤を塗布する塗布ローラを中間転写体の搬送速度(200mm/s)と同じ周速度で中間転写体とは逆方向に塗布ローラを回転させながらWAX剤を塗布した。その際、WAX剤受け皿内のWAX剤が融点上限温度から3℃高い温度(融点上限温度+3℃)となるように温調しつつ、塗布ローラ温度(塗布ローラの表面温度)を適宜変化させたときのWAX剤の塗布性について目視評価を行った。
本評価実験で用いたWAX剤1、2を以下に示す。
WAX剤1:ポリエチレングリコールモノステアレート10.E.O
(融点:47〜52℃)
WAX剤2:ポリエチレングリコール20000(融点:56〜63℃)
評価基準としては、中間転写体に塗布されたWAX剤の膜厚が均一である場合を「○」、一部に不均一な部分が存在する場合を「△」、全体的に不均一である場合を「×」とした。評価実験Aの評価結果を図10に示す。
(融点:47〜52℃)
WAX剤2:ポリエチレングリコール20000(融点:56〜63℃)
評価基準としては、中間転写体に塗布されたWAX剤の膜厚が均一である場合を「○」、一部に不均一な部分が存在する場合を「△」、全体的に不均一である場合を「×」とした。評価実験Aの評価結果を図10に示す。
図10から分かるとおり、WAX剤1が用いられる場合、塗布ローラ温度が20〜40℃であるときの評価は「○」であり、この温度範囲では良好な塗布状態を得ることができる。一方、塗布ローラ温度が19℃又は41℃であるときの評価は「△」であり、更に、塗布ローラ温度が18℃以下又は42℃以上になると評価は「×」となる。つまり、塗布ローラ温度が20℃より低くなるか、又は40℃より高くなると、良好なWAX剤の塗布状態を得ることができない。
また、WAX剤2が用いられる場合、塗布ローラ温度が29〜49℃であるときの評価は「○」であり、この温度範囲では良好な塗布状態を得ることができる。一方、塗布ローラ温度が28℃又は50℃であるときの評価は「△」であり、更に、塗布ローラ温度が27℃以下又は51℃以上になると評価は「×」となる。つまり、塗布ローラ温度が29℃より低くなるか、又は49℃より高くなると、良好なWAX剤の塗布状態を得ることができない。
これらの結果から、式(3)の関係を満たすように塗布ローラ温度Tr[℃]を設定することにより、WAX剤の塗布状態を良好にすることができることを確認することができた。なお、本評価実験で用いた塗布ローラの直径(ローラ径)は60mm、塗布液面(WAX剤受け皿の液面)から塗布面(中間転写体との接触面)までの周長(冷却距離)は80mmであり、式(3)における冷却時間tは0.4[sec]である。
〔評価実験B〕
本評価実験では、評価実験Aと同一条件により中間転写体上にWAX剤を塗布した後、中間転写体上に形成されたWAX層の温度を適宜変化させたときの薄層形成ブレードによるWAX剤の掻き取り性能について評価を行った。
本評価実験では、評価実験Aと同一条件により中間転写体上にWAX剤を塗布した後、中間転写体上に形成されたWAX層の温度を適宜変化させたときの薄層形成ブレードによるWAX剤の掻き取り性能について評価を行った。
評価基準としては、中間転写体上のWAX層が均一に掻き取られている場合を「○」、一部に不均一な部分が存在する場合を「△」、全体的に不均一に掻き取られている場合を「×」とした。評価実験Bの評価結果を図11に示す。
図11から分かるとおり、WAX剤1が用いられる場合、WAX層温度が35〜45℃であるときの評価は「○」であり、この温度範囲ではWAX層の掻き取り状態が良好となる。一方、WAX層温度が34℃又は46℃であるときの評価は「△」であり、更に、WAX層温度が32℃以下又は47℃以上になると評価は「×」となる。つまり、WAX層温度が35℃より低くなるか、又は45℃より高くなると、良好なWAX層の掻き取り状態を得ることができない。
また、WAX剤2が用いられる場合、WAX層温度が44〜54℃であるときの評価は「○」であり、この温度範囲ではWAX層の掻き取り状態が良好となる。一方、WAX層温度が43℃又は55℃であるときの評価は「△」であり、更に、WAX層温度が41℃以下又は56℃以上になると評価は「×」となる。つまり、WAX層温度が44℃より低くなるか、又は54℃より高くなると、良好なWAX層の掻き取り状態を得ることができない。
また、これらの結果から、式(4)の関係を満たすようにWAX層温度Tn[℃]を設定することにより、薄層形成ブレードによるWAX剤の掻き取り状態を良好にすることができることを確認することができた。
〔評価実験C〕
まず、評価実験Cで用いた凝集処理剤及びインクについて説明する。
まず、評価実験Cで用いた凝集処理剤及びインクについて説明する。
(凝集処理剤の調整)
以下の組成で材料を混合し、調整を行った。
・ジエチレングリコール 20g
・オルフィンE1010(日信化学工業製) 1g
・2−ピロリドン−5−カルボン酸 1g
・水酸化ナトリウム 0.25g
・イオン交換水 77.8g
混合後、pHメーターWM−50EG(東亜DKK(株)製)にて処理液のpHを測定したところ、pHは3.5であった。
以下の組成で材料を混合し、調整を行った。
・ジエチレングリコール 20g
・オルフィンE1010(日信化学工業製) 1g
・2−ピロリドン−5−カルボン酸 1g
・水酸化ナトリウム 0.25g
・イオン交換水 77.8g
混合後、pHメーターWM−50EG(東亜DKK(株)製)にて処理液のpHを測定したところ、pHは3.5であった。
(インクの調整)
・Cromophtal Jet Magenta DMQ(PR-122)(チバ・スペシャリティーケミカルズ製)
10g
・低分子量分散剤 10g
・グリセリン 4g
・イオン交換水 26g
なお、インクの調整に用いた低分子量分子剤の化学式は次の化学式で表わされる。
・Cromophtal Jet Magenta DMQ(PR-122)(チバ・スペシャリティーケミカルズ製)
10g
・低分子量分散剤 10g
・グリセリン 4g
・イオン交換水 26g
なお、インクの調整に用いた低分子量分子剤の化学式は次の化学式で表わされる。
上記材料を攪拌混合させて分散液を調整した。次に、超音波照射装置(Vibra-cell VC-750、テーパーマイクロチップ:φ 5mm、Ampitude:30%)(SONICS社製)を用いて、分散液に超音波を間欠照射(照射0.5s/休止1.0s)で2時間行い、顔料を更に分散させ、20質量%顔料分散液を調整した。
20質量%顔料分散液とは別に、下記の化合物を秤量攪拌混合して、混合液Iを調整した。
・グリセリン 5g
・ジエチレングリコール 10g
・オルフィンE1010(日信化学工業製) 1g
・イオン交換水 11g
この混合液Iを。攪拌した44%SBR分散液(ポリマー微粒子:アクリル酸3質量%、Tg:30℃)23.0gにゆっくり滴下を行い、攪拌混合し、混合液IIを調整した。この混合液IIを、上述の20%顔料分散液に、ゆっくり滴下しながら攪拌混合して、マゼンタインクを100g調整した。
・グリセリン 5g
・ジエチレングリコール 10g
・オルフィンE1010(日信化学工業製) 1g
・イオン交換水 11g
この混合液Iを。攪拌した44%SBR分散液(ポリマー微粒子:アクリル酸3質量%、Tg:30℃)23.0gにゆっくり滴下を行い、攪拌混合し、混合液IIを調整した。この混合液IIを、上述の20%顔料分散液に、ゆっくり滴下しながら攪拌混合して、マゼンタインクを100g調整した。
(実験方法)
図1に示したインクジェット記録装置10と同等のシステムを用いて、上述した凝集処理剤及びインクを用いて次のような方法で実験を行った。
図1に示したインクジェット記録装置10と同等のシステムを用いて、上述した凝集処理剤及びインクを用いて次のような方法で実験を行った。
まず、洗浄工程を通過した中間転写体(SIFEL:信越化学工業(株)製)にポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールエステル、又はポリオキシアルキレングリコールエステルからなるWAX剤を均一に塗布し、膜厚1μmのWAX層を形成した。次に、凝集処理剤を約10μmの膜厚で均一に塗布し、50℃の熱風乾燥で乾燥させて中間転写体のWAXの表面に固体状または半固溶状の凝集処理層を形成した。
次に、画像信号に応じてインクジェットヘッドからインク液滴を吐出して打滴を行った。インク液滴の吐出体積は2plで、記録密度は主走査方向及び副走査方向のいずれも1200dpiで記録を行った。そして、インクが凝集反応により顔料の凝集体と溶媒とに分離した状態で、多孔質体からなる溶媒吸収ローラを用いて溶媒の吸収除去を行った。
次に、中間転写体を70℃に平板加熱ヒータにより加熱した後、転写ローラにて中間転写体から記録媒体にニップ圧2.0MPaで転写を行った。転写ローラから剥離部までの区間を冷却部材によって冷却してから記録媒体を中間転写体から剥離して、最後に記録媒体を90℃、1.0MPaで加圧・加熱を行い定着させ、記録媒体に画像の形成を行った。中間転写体上での画像縮み、溶媒吸収ローラへの色材付着、および、記録媒体への転写率を測定し評価を行った。なお、比較例として、WAX層を形成せずに画像を形成したものについても評価を行った。
(実験結果)
評価実験Cの結果を図12に示す。なお、表中の評価は以下の基準により評価を行った。
評価実験Cの結果を図12に示す。なお、表中の評価は以下の基準により評価を行った。
[画像縮み]
○・・・画像縮み 1%以下
△・・・画像縮み 5%以下
×・・・画像縮み 5%超
[色材付着]
○・・・色材付着なし
△・・・色材付着わずかに有(インク量換算で5%以下)
×・・・色材付着あり(インク量換算で5%超)
[転写率]
○・・・転写率 95%以上
△・・・転写率 90%以上
×・・・転写率 90%未満
図12に示すようにWAX層を形成しなかった比較例1は、画面縮み、色材付着、転写率が不良であったが、WAX層を形成した実施例1から10は良好な結果が得られた。特に、WAX層を形成する材料として、室温でWAX状の材料を用いることで、特に良好な結果が得られた。
○・・・画像縮み 1%以下
△・・・画像縮み 5%以下
×・・・画像縮み 5%超
[色材付着]
○・・・色材付着なし
△・・・色材付着わずかに有(インク量換算で5%以下)
×・・・色材付着あり(インク量換算で5%超)
[転写率]
○・・・転写率 95%以上
△・・・転写率 90%以上
×・・・転写率 90%未満
図12に示すようにWAX層を形成しなかった比較例1は、画面縮み、色材付着、転写率が不良であったが、WAX層を形成した実施例1から10は良好な結果が得られた。特に、WAX層を形成する材料として、室温でWAX状の材料を用いることで、特に良好な結果が得られた。
以上、本発明のWAX剤塗布装置、WAX剤塗布方法、及び画像形成装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
10…インクジェット記録装置、12…中間転写体、14…記録媒体、16…WAX剤塗布部、18…凝集処理液付与部、20…加熱乾燥部、22…印字部、24…溶媒除去部、26…転写部、50…ヘッド、102…塗布ローラ、104…WAX剤受け皿、108…計量ブレード、124…薄層形成ブレード
Claims (10)
- 非浸透媒体上にWAX剤を塗布する塗布ローラと、
前記WAX剤を加熱溶融して前記塗布ローラの表面に供給するWAX剤供給手段と、
前記塗布ローラの表面温度を前記WAX剤の融点以下に調節する塗布ローラ温調手段と、を備えたことを特徴とするWAX剤塗布装置。 - 前記非浸透媒体の表面エネルギーが25mN/m以下であることを特徴とする請求項1に記載のWAX剤塗布装置。
- 前記塗布ローラはグラビアローラであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のWAX剤塗布装置。
- 前記塗布ローラの表面温度をTr[℃]、前記WAX剤の融点をTm[℃]、前記WAX剤供給手段から前記塗布ローラの表面に前記WAX剤が供給されてから前記非浸透媒体上に該WAX剤が塗布されるまでの時間をt[sec]とするとき、前記塗布ローラの表面温度Trは、次の式(1)を満たすことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のWAX剤塗布装置。
(Tm−14)−(1.2/t)−10≦Tr≦(Tm−14)−(1.2/t)+10 ・・・(1) - 前記塗布ローラは、前記非浸透媒体に対して相対的に移動する方向とは逆方向に回転するとともに、前記塗布ローラの表面の余剰WAX剤をブレード手段によって掻き取りながら、前記非浸透媒体上に前記WAX剤を塗布することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のWAX剤塗布装置。
- 前記塗布ローラによって前記非浸透媒体上に塗布された前記WAX剤を軟化させるように該WAX剤の温度を調節するWAX剤温調手段と、
前記WAX剤温調手段により温度が調節された前記WAX剤を薄層化する薄層形成ブレードと、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のWAX剤塗布装置。 - 前記WAX剤温調手段によって調節される前記WAX剤の温度をTn[℃]、前記WAX剤の融点をTm[℃]としたとき、前記WAX剤の温度Tnは、次の式(2)を満たすことを特徴とする請求項6に記載のWAX剤塗布装置。
Tm−12≦Tn≦Tm−2 ・・・(2) - 前記薄層形成ブレードは、前記WAX剤温調手段を兼ねることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のWAX剤塗布装置。
- WAX剤を加熱溶融して塗布ローラの表面に供給する工程と、
前記塗布ローラの表面温度を前記WAX剤の融点以下に調節しながら非浸透媒体上に前記WAX剤を塗布する工程と、
を含むことを特徴とするWAX剤塗布方法。 - 請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のWAX剤塗布装置と、
前記塗布ローラによる前記WAX剤の塗布によって前記非浸透媒体上に形成されたWAX層の表面に、インクに含まれる色材を凝集させる成分を含有した凝集処理剤からなる固体状又は半固溶状の凝集処理層を形成する凝集処理層形成手段と、
画像データに応じて、前記WAX層及び前記凝集処理層が形成された前記非浸透媒体に対して前記インクを液滴化して打滴するインク打滴手段と、
前記非浸透媒体上の液体溶媒を除去する溶媒除去手段と、
前記非浸透媒体上に形成された画像を記録媒体に転写する転写手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
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