以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔画像形成方法の説明〕
図1(a)〜(h)には、本発明に係る画像形成方法における各工程が模式的に図示されている。同図に示す画像形成方法は、記録媒体10(画像形成媒体)の所定の領域にインクと反応してインクを凝集させる成分を含有する凝集処理液を付与し、記録媒体10上に厚さtの凝集処理液層12を形成する処理液付与工程と(図1(a))、記録媒体10上に形成された凝集処理液層12の上に真球に換算したときの直径dを有するインク液滴14を打滴するインク打滴工程と(図1(b))、凝集処理液層12に着弾したインク液滴14’が凝集処理液(凝集処理液層12)と反応してインク14’の凝集体16が形成される凝集工程と(図1(c),(d))、溶媒除去ローラ18Aを用いて記録媒体10上の溶媒(液体溶媒)を除去する溶媒除去工程と(図1(e),(f))、押圧ローラ20を用いて記録媒体10上の凝集体16を押圧し、凝集体16を扁平化して広げて所望のサイズのドット16’を形成する扁平化処理工程と(図1(g),(h))と、を含んでいる。
本例に示す画像形成方法では、図1(a)に示す凝集処理液層12の厚み(膜厚)tsと、図1(b)に示すインク液滴14の真球に換算したときの直径dと、の関係は、次式〔数1〕に示す関係を満たしている。
〔数1〕
ts/d≧0.64
即ち、直径dを有するインク液滴14が、厚みts(≧0.64×d)を有する凝集処理液層12に着弾すると、インク液滴14’が記録媒体10に到達する前に凝集処理液とインク液滴14との反応が始まり、凝集処理液層12内の液中で凝集反応が起こるので、インク液滴14のすべての表面が凝集処理液層12との接触界面となり、インク液滴全体が素早く凝集して(インク液滴14が記録媒体10に到達してつぶれる前に凝集して)、球形状の均一な凝集体16が形成される。
言い換えると、インク液滴14は凝集処理液層12中に着弾すると凝集作用により縮むため、凝集処理液層12の厚みはインク液滴14の直径dの0.64倍程度あれば、インク液滴14のすべての表面が凝集処理液層12との接触界面とすることができる。
本例に示す画像形成方法では、インク液滴14の1滴の体積に基づいてインク液滴14の真球に換算したときの直径dが求められ、上記〔数1〕の関係を満たす凝集処理液層12の厚みtが求められる。更に、先に求められた凝集処理液層12の厚みtに基づいて凝集処理液の付与量が決められる。なお、インク液滴の打滴量(体積)が複数存在する場合には、インク液滴14の1滴の最大体積に基づいて、凝集処理液層12の厚みtsを算出するためのインク液滴14の真球に換算したときの直径dが求められる。
また、本例に示す画像形成方法では、凝集処理液層12を構成する凝集処理液の表面張力γsの値と、インク液滴14の表面張力γiの値と、の関係は、次式〔数2〕に示す関係を満たしている。
〔数2〕
γs<γi
インク液滴14の表面張力γiの値が凝集処理液の表面張力γsの値を超える値となるインク及び凝集処理液を用いることで、インク液滴14は凝集処理液層12内で球形状となり、インク液滴14の表面の全領域で凝集反応が発現し、均一に凝集した凝集体16が形成される(図1(c),(d)参照)。
記録媒体10上にインク凝集体16が形成されると、記録媒体10上に存在する不要な溶媒が除去される(図1(e)参照)。図1(e)に示す溶媒除去工程では、表面に多孔質部材などの吸収体を具備し、記録媒体10上の溶媒に吸収体を接触させて該溶媒を記録媒体10から除去する溶媒除去部材18を用いて溶媒除去処理が行われる。図1(f)には、記録媒体10上の溶媒が除去された状態が図示されている。
なお、溶媒除去部材18は、表面に吸引口を備え、該吸引口を介して記録媒体10上の溶媒を吸引除去する方式を適用してもよいし、溶媒除去部材18を用いた接触除去方式に代わり、加熱ヒータを用いて記録媒体10上の溶媒を乾燥させる方式を適用してもよい。
次に、図1(g)に示すように、押圧ローラ20を用いて記録媒体10上に形成された凝集体16を押圧して扁平化させ、凝集体16(ドット)が所定のサイズに広げられる。本例に示す画像形成方法では、インク液滴14が広がる前に凝集させているので、このままでは所定のドット広がり率(インク液滴の吐出時の体積を真球の体積に換算した直径d1に対する記録媒体上に形成されるドットの直径d2の割合d2/d1で表される指標)を得ることができない。
所定のドット広がり率を得ることができないと、実際に記録媒体に形成されるドットのサイズは理論上のドットサイズよりも小さくなってしまい、ベタ画像のようにドット被覆率が高い画像を形成する場合には、所定の色濃度を得ることができなくなる。なお、色濃度とは、各色のベタ画像における光学濃度を意味し、本例では、X-rite(エックスライト社製)または同等の濃度測定装置を用いて測定した値を適用している。
言い換えると、画像データの上では隣接するドットが重なっているにもかかわらず、当該ドットのサイズが理論上のサイズよりも小さくなってしまうことで隣接するドット同士が重ならず、記録媒体の所定の領域をドットで被覆できなくなってしまう。このようなドットサイズの異常は、特に、ベタ画像などのドット被覆率(記録媒体の記録領域の面積に対する記録媒体のドットで被覆される面積)が高い画像において視認性が高くなる。
本例に示す画像形成方法では、上述した2液凝集方式で発生していた凝集ムラを解消でき、ドットサイズの異常を生じさせることなく所望のドット広がり率を確保することができる。
〔凝集処理液およびインクの説明〕
本例に適用される凝集処理液の組成例として、以下に示す処理液1及び処理液2が挙げられる。
<処理液1>
グリセリン :12.5質量%
ジエチレングリコール :10質量%
2−ピロリドン−5−カルボン酸 :10質量%
水酸化リチウム :1.95質量%
オルフィンE1010 :1.5質量%
イオン交換水 :残部
処理液1の物性値を測定した結果、pH3.6、表面張力28.0(mN/m)、粘度3.1(mPa・s)であった。
<処理液2>
グリセリン :12.5質量%
ジエチレングリコール :10質量%
硫酸アルミニウムアンモニウム :5質量%
オルフィンE1010 :1.5質量%
イオン交換水 :残部
処理液2の物性値を測定した結果、pH3.0、表面張力28.2(mN/m)、粘度2.1(mPa・s)であった。
また、本例に適用されるインク(顔料分散液)の作製例として、以下のインク1が挙げられる。
<インク1>
シアン顔料Pigment Blue 15:3(大日精化製)400g、オレイン酸ナトリム(和光純薬製)40g、グリセリン(和光純薬製)200g、及びイオン交換水1360gを乳鉢で1時間混錬した後、日本精機製小型攪拌機付超音波分散機US-600CCVP(600W、超音波発振部50mm)で20分間、粗分散を行った。
次に、粗分散液と0.05mmジルコニアビーズ1.3kgをコトブキ技研興業製スーパーアペックスミル(形式SAM-1)へ添加し、回転数2500rpm、処理流量15(l/h)で160分間分散を実施した。分散終了後、32μm濾布で濾過し、20質量%シアン顔料分散液とした。得られたシアン分散液の顔料粒径は77nmであった。
得られたシアン分散を用いて以下に記載の組成になるようを調液し、5μmフィルタで粗大粒子を除去し、インク1を調整した。得られたインク1の物性値を測定した結果、pH9.1、表面張力31.9(mN/m)、粘度4.2(mPa・s)であった。
なお、インク1の組成は次のとおりである。
Pigment Blue 15:3 :4質量%
ポリマー微粒子(ジュリマーET-410(日本純薬製)) :8質量%
グリセリン :20質量%
ジエチレングリコール :10質量%
オルフィンE1010(日信化学工業製) :1質量%
イオン交換水 :残部
なお、処理液1、処理液2及びインク1の表面張力は〔化1〕に示すフッ素界面活性剤の添加によって調整した。言い換えると、処理液1、処理液2及びインク1の表面張力は〔化1〕に示すフッ素界面活性剤の添加量によって制御することができる。
以下に、本願発明の有効性(作用効果)を検証した評価実験について説明する。
〔実験1:凝集処理液層の厚みとインク液滴の直径との関係〕
先ず、凝集処理液層の厚みとインク液滴の直径との関係について説明する。実験1では、凝集処理液層12の厚み(処理液の膜厚)ts(μm)と、インク液滴14の真球に換算したときの直径d(μm)と、の関係を評価した。
図2には、実験1の評価結果を示す。実験1では、凝集処理液層12の厚みtsを段階的に変えてベタ画像(記録媒体の画像記録領域の全域をドットで被覆した画像)を形成し、扁平化処理を行った後に、当該ベタ画像における凝集ムラ、画像濃度、扁平化部材への色材の付着を目視評価した。
凝集ムラの評価は、凝集体の全体に視認できる程度のムラが発生している場合を×、凝集体の一部に視認できる程度のムラが発生している場合を△、視認できる程度のムラは発生していない場合を○とした。
また、画像濃度の評価は、所定の濃度が得られた場合を◎、所定の濃度を得られない場合を×とした。扁平化部材への色材付着の評価は、扁平化部材に付着した色材が目視で確認できない場合には◎、扁平化部材に付着した色材が目視で確認できた場合には×とした。
実験1の諸条件は、以下のとおりである、
(1)凝集処理液 :処理液1
(2)インク :インク1
(3)インク液滴の吐出量 :2pl
(4)インク液滴の真球に換算したときに直径d:15.6μm
(5)凝集処理液の表面張力γs :28mN/m
(6)インクの表面張力γi :32mN/m
(7)記録媒体 :PET(表面エネルギーγa2=40mN/m)
(8)扁平化部材の表面エネルギーγb1 :29mN/m
図2に示すように、凝集処理液層12の厚みtsが12μmのとき(参考例1)、10μmのときには(参考例2)、視認される程度の凝集ムラは発生しなかった(評価○)。
一方、凝集処理液層12の厚みtsが8μmのときには(比較例1)、凝集体の一部に濃度ムラとして視認される凝集ムラが発生した(評価△)。
凝集処理液層12の厚みtsが6μmのときには(比較例2)、凝集体の全体に凝集ムラが発生した(評価×)。
また、扁平化処理を実施した結果、実施例1及び実施例2では所望の画像濃度(所望のドットサイズ)を得られた(評価◎)。
これに対して、比較例1及び比較例2では、凝集ムラによるドット内部の色材量の偏在化によりって濃度ムラが発生するためにドット内で白抜け部分が生じ、画像全体の濃度も低下するので、所望の画像濃度を得ることができなかった(評価×)。
また、扁平化部材へのインク色材の付着を確認したところ、図2に示す何れの場合にも扁平化部材への色材の付着は認められなかった(評価◎)。
実験1において、インク液滴14の真球に換算したときの直径dに対する凝集処理液層12の厚みtsで表される指標ts/dを導入すると、ts/dの値が0.77のとき(参考例1)、0.66のときには(参考例2)、濃度ムラとして視認される凝集ムラは発生していない(評価○)。
一方、指標ts/dの値が0.51のときには(比較例1)、凝集体の一部に濃度ムラとして視認される程度の凝集ムラが発生し(評価△)、指標ts/dの値が0.38のときには(比較例2)、凝集体の全体に凝集ムラが発生した(評価×)。
即ち、指標ts/dの値が、上記〔数1〕を満たす場合には、濃度ムラとして視認されるような凝集ムラは発生せず、かつ、所望の画像濃度を得ることができた。
一方、指標ts/dの値が、上記〔数1〕を満たさない場合、即ち、ts/d<0.64の場合には、濃度ムラとして視認される凝集ムラが発生するとともに、所望の画像濃度を得ることができなかった。
以上、実験1の評価結果をまとめると、凝集処理液層の厚みtsと真球に換算したときのインク液滴の直径dとの関係をts/d≧0.64とすると、凝集ムラの発生が防止され、所定の画像濃度を得ることができる。なお、所定の画像濃度が得られる条件(画像濃度の評価が◎になる条件)として、所定のドットサイズが得られえることと、ドット内において凝集ムラが発生しないことの両方を満たすことが挙げられる。
〔実験2:凝集処理液の表面張力とインクの表面張力との関係〕
次に、凝集処理液の表面張力とインクの表面張力との関係(実験2)について説明する。図3には、実験2の評価結果を示す。実験2では、凝集処理液の表面張力γsを一定(28mN/n)としたときにインクの表面張力γiを段階的に変えてベタ画像を形成し、当該ベタ画像における凝集ムラ(扁平化前)、画像濃度(扁平化後)及び扁平化部材への色材付着の評価を行った。
実験2の諸条件は、以下のとおりである、
(1)凝集処理液 :処理液1
(2)インク :インク1
(3)インク液滴の吐出量 :2pl
(4)インク液滴の真球に換算したときに直径d:15.6μm
(5)凝集処理液の表面張力γs :28mN/m
(6)凝集処理液層12の厚みts :10μm(ts/d=0.64)
(7)記録媒体 :PET(表面エネルギーγa2=40mN/m)
(8)扁平化部材の表面エネルギーγb1 :29mN/m
実験2において、インク1の表面張力は、上記〔化1〕に示すフッ素界面活性剤の添加によって調整した。
図3に示すように、凝集処理液の表面張力γsが28mN/m、インクの表面張力γiが32mN/mのときには(参考例2、図2と同一)、濃度ムラとして視認される程度の凝集ムラは発生せず(評価○)、所望の画像濃度を得ることができた(評価◎)。
また、参考例2において、扁平化部材を表面エネルギーが29mN/mのものから35mN/mのものに変更した場合にも(参考例3)、濃度ムラとして視認される程度の凝集ムラは発生せず(評価○)、所望の画像濃度を得ることができた(評価◎)。
なお、参考例3では、扁平化部材への少量の色材の付着が認められたが、画像品質には影響しない程度であった(評価○)。
一方、凝集処理液の表面張力γsが28mN/m、インクの表面張力γiが25mN/mのときには(比較例4)、濃度ムラとして視認される程度の凝集ムラが発生し(評価×)、扁平化によって所望のドットサイズを得ることはできるが、ドット内の凝集ムラに起因する画像濃度の低下(画像品質に影響する程度の濃度低下)が発生した(評価△)。
なお、実施例2において、扁平化処理を行わない場合には(比較例5)、視認される程度の凝集ムラは発生しないが(評価○)、所望のドットサイズを得ることができず、所望の画像濃度を得ることはできなかった(評価×)。
即ち、凝集処理液の表面張力γsとインクの表面張力γiとの関係が、上記〔数2〕に示すγs<γiを満たすのときには、濃度ムラとして視認される程度の凝集ムラは発生しない。
また、記録媒体の表面エネルギーγa1と扁平化部材の表面エネルギーγb1との関係について説明すると、実施例2では、扁平化処理のときに扁平化部材にインク色材が付着しないが、実施例3では、画像品質に劣化が認められない程度ではあるが、扁平化処理のときに扁平化部材にインク色材が付着した。即ち、記録媒体の表面エネルギーγa1と扁平化部材の表面エネルギーγb1との差がより大きいと、扁平化処理のときに扁平化部材にインク色材が付着しにくくなる。
即ち、扁平化部材へのインク色材の付着(扁平化処理時の画像劣化)の観点から、記録媒体の表面エネルギーγa1と扁平化部材の表面エネルギーγb1とのより好ましい関係は、次式〔数3〕に示す条件を満たす場合である。
〔数3〕
γa1−γb1≧10(mN/m)
上記の表面エネルギーの関係を満たす記録媒体及び扁平化部材を用いることで、扁平化処理時における画像品質の劣化が防止される。また、扁平化部材の清掃負荷の低減化(扁平化部材の交換寿命の延長)が見込まれる。
〔実験3:転写記録方式への適用〕
次に、上述した実験1、2を転写記録方式に適用した実験3について説明する。図4には、実験3の評価結果を示す。実験3では、中間転写媒体に鏡像の1次画像を形成した後に、中間転写媒体上の1次画像を記録媒体に押圧転写する転写記録方式を適用し、ベタ画像を形成し、記録媒体に転写記録を行い、記録媒体に転写記録されたベタ画像における凝集ムラ、画像濃度及び記録媒体への色材付着(転写性)の評価を行った。記録媒体への色材付着の評価では、インクがより多く記録媒体に付着するものをよい評価とした。
なお、転写記録方式では、転写記録時に1次画像が押圧されるので、転写記録が扁平化処理に対応し、実験1、2における扁平化部材に対応する部材(即ち、画像に接触する部材)は記録媒体である。言い換えると、実験1、2における「扁平化部材」には「記録媒体」が対応する。
実験3の諸条件は、以下のとおりである、
(1)凝集処理液 :処理液1
(2)インク :インク1
(3)インク液滴の吐出量 :2pl
(4)インク液滴の真球に換算したときに直径d:15.6μm
(5)凝集処理液の表面張力γs :28mN/m
(6)凝集処理液層12の厚みts :10μm(ts/d=0.64)
(7)中間転写媒体 :シリコンゴム(表面エネルギーγa2=20mN/m)
(8)記録媒体の表面エネルギーγb2 :29mN/m
図4に示すように、凝集処理液の表面張力γsが20mN/m、インクの表面張力γiが32mN/mのときには(実施例4)、凝集ムラは発生せず(評価◎)、所望の画像濃度を得ることができた(評価◎)。ここで、凝集ムラの評価◎は、目視によって凝集ムラが認識されない画像(ドット)を顕微鏡等で拡大しても凝集ムラを確認できない場合を表している。一方、凝集ムラの評価○は、目視によって凝集ムラが認識されないが、当該画像を顕微鏡等で拡大すると凝集ムラが確認できる場合を表している。したがって、転写記録方式は直接描画に比べて凝集ムラ改善する効果があるといえる。
また、実験3において、記録媒体の表面エネルギーが40mN/mのときには(実施例4)、転写記録において中間転写媒体へのインク色材の残留はなく、中間転写媒体に形成された1次画像がすべて記録媒体に転写された(評価◎)。また、表面エネルギーが29mN/mの記録媒体(シリコンシートPET)に変更すると(実施例5)、転写記録において中間転写媒体へのごく少量のインク色材の残留があったが、記録媒体に転写された画像の品質には影響しない程度であった(評価○)。
即ち、転写記録方式では、表面エネルギーγb2のより大きい(中間転写媒体に対する表面エネルギーの差が大きい)記録媒体を用いることで、転写効率(転写性)が向上し、高品質の記録画像を得ることができる。
即ち、転写記録方式における中間転写媒体へのインク色材の残留といった観点から、中間転写媒体の表面エネルギーγa2と記録媒体の表面エネルギーγb2との関係は、次式〔数4〕を満たすことが好ましいといえる。
〔数4〕
γb2−γa2≧10(mN/m)
また、インクの表面張力γiを25mN/mとした場合にも(参考例6)、視認される程度の凝集ムラは発生せず(評価○)、所望の画像濃度を得ることができた(評価◎)。更に、転写記録において中間転写媒体へのインク色材の残留はなく、中間転写媒体に形成された画像がすべて記録媒体に転写された(評価◎)。
即ち、転写記録方式においても、凝集処理液の表面張力γsとインクの表面張力γiとの関係が、上記〔数2〕に示すγs<γiの関係を満たすのときには、視認される程度の凝集ムラは発生せず、所定の画像濃度を得ることができる。
〔実験4:凝集処理液の表面張力の考察1〕
次に、凝集処理液の表面張力について説明する。図5には、実験4の評価結果を示す。実験4では、インク表面張力を一定(32mN/m)とし、凝集処理液の表面張力γsを20mN/mから31mN/mまで段階的に可変させてベタ画像を形成し、当該ベタ画像における凝集ムラ及び画像濃度を評価した。
実験4の諸条件は、以下のとおりである。
(1)凝集処理液 :処理液1
(2)インク :インク1
(3)インク液滴の吐出量 :2pl
(4)インク液滴の真球に換算したときに直径d:15.6μm
(5)インクの表面張力γi :32mN/m
(6)凝集処理液層12の厚みts :10μm(ts/d=0.64)
(7)記録媒体 :シリコンゴム(表面エネルギーγa2=20mN/m)
図5の実施例7では、凝集処理液の表面張力γsを20mN/mとした。実施例7では凝集ムラは発生せず(評価◎)、所望の画像濃度を得ることができた(評価◎)。また、実施例8では凝集処理液の表面張力γsを22mN/mとした。実施例7と同様に、凝集ムラは発生せず(評価◎)、所望の画像濃度を得ることができた(評価◎)。
また、参考例9では凝集処理液の表面張力γsを24mN/m、参考例10では凝集処理液の表面張力γsを28mN/mとした。参考例9、10では、視認される程度の濃度ムラは発生せず(評価○)、所望の画像濃度を得ることができた(評価◎)。
更に、参考例11では凝集処理液の表面張力γsを31mN/mとした。参考例10では、視認される程度の濃度ムラは発生せず(評価○)、画像濃度の低下が認められたが、画像品質には影響しない程度であった(評価○)。
即ち、凝集処理液の表面張力γsと、インクの表面張力γiと、の関係が、次式〔数5〕を満たす場合には、より凝集ムラの発生を防止することができ(評価◎となり)、更に、より好ましい画像濃度を得ることができる。
〔数5〕
γi−γs≧10(mN/m)
なお、上記〔数5〕に示す関係を満たす凝集処理液及びインクの組み合わせであれば、本願明細書に示した処理液1以外の凝集処処理液を用いても同様の結果を得ることができる。以下にその実験結果を示す。
〔実験5:凝集処理液の表面張力の考察2〕
図6には、実験5の評価結果を示す。実験5では、上述した実験4において、処理液1に代わり上記処理液2を用いてベタ画像を形成し、凝集ムラ及び画像濃度を評価した。実験5では、処理液1に代わり処理液2を用いた以外の条件はすべて実験4と同一である。
実験5の諸条件は、以下のとおりである。
(1)凝集処理液 :処理液2
(2)インク :インク1
(3)インク液滴の吐出量 :2pl
(4)インク液滴の真球に換算したときに直径d:15.6μm
(5)インクの表面張力γi :32mN/m
(6)凝集処理液層12の厚みts :10μm(ts/d=0.64)
(7)記録媒体 :シリコンゴム(表面エネルギーγa2=20mN/m)
図6に示す実施例12,13は、図5の実施例7,8に対応しており、実験5では実験4と同様の結果が得られた。
即ち、凝集処理液の表面張力γsと、インクの表面張力γiとの関係が、上記〔数2〕に示す関係を満たすとともに次式〔数5〕に示す関係を満たすと、凝集ムラの発生を確実に防止することができる。
〔実験6:ポリマー微粒子の濃度〕
図7には、実験6の評価結果を示す。実験6は、上記に示したインク1中のポリマー微粒子の濃度(質量%)を0(ポリマー微粒子を含有しない)、4質量%、8質量%というように段階的に変えてベタ画像を形成し、当該ベタ画像における凝集ムラ及び画像濃度の評価を行った。
実験6の諸条件は、以下のとおりである。
(1)凝集処理液 :処理液1
(2)インク :インク1
(3)インク液滴の吐出量 :2pl
(4)インク液滴の真球に換算したときに直径d:15.6μm
(5)凝集処理液の表面張力γs :28mN/m
(6)インクの表面張力γi :32mN/m
(7)凝集処理液層12の厚みts :10μm(ts/d=0.64)
(8)記録媒体 :シリコンゴム(表面エネルギーγa2=20mN/m)
(9)ポリマー微粒子のガラス転移点温度 :45℃
(10)記録媒体の温度 :50℃
図7に示すように、インク中のポリマー微粒子の濃度が0質量%のとき(ポリマー微粒子を含有しないとき、実施例17)、4%のときは(実施例18)、濃度ムラとして視認される程度の凝集ムラは発生しなかった(評価○)。また、画像濃度の低下が認められたが、画像品質には影響しない程度であった(評価○)。
ポリマー微粒子の濃度が8%のときには(実施例19)、凝集ムラは発生せず(評価◎)、所定の画像濃度を得ることができた(評価◎)。即ち、インクに含有されるポリマー微粒子の濃度をより大きくすることで、凝集ムラが抑制され、より好ましい画像濃度を得ることができる。
〔実験7:扁平化部材の温度(転写温度)〕
次に、扁平下部材の温度(転写温度)について説明する。図8には、実験7の評価結果を示す。実験7では、実験6において記録媒体(転写記録方式では、記録媒体が扁平化部材に対応する)の温度をパラメータとして、凝集ムラ及び画像濃度の評価を行った。言い換えると、実験7では、凝集体を扁平化するときの温度依存性を評価した。
実験7における諸条件は、以下のとおりである。
(1)凝集処理液 :処理液1
(2)インク :インク1
(3)インク液滴の吐出量 :2pl
(4)インク液滴の真球に換算したときに直径d:15.6μm
(5)凝集処理液の表面張力γs :32mN/m
(6)インクの表面張力γs :32mN/m
(7)凝集処理液層12の厚みts :10μm(ts/d=0.64)
(8)記録媒体 :シリコンゴム(表面エネルギーγa2=20mN/m)
(9)ポリマー微粒子のガラス転移点温度 :45℃
(10)ポリマー微粒子の濃度 :8重量%
なお、実験7における記録媒体の温度は、転写温度(扁平化処理時におけるポリマー微粒子の温度)として取り扱うことができる。記録媒体の温度と凝集体に含有するポリマー微粒子の温度とは一致しないが、記録媒体の温度とポリマー微粒子の温度の差は扁平化処理時の条件ごとにほぼ一定になるといえる。したがって、記録媒体の温度から処理条件における差分を差し引くことで、ポリマー微粒子の温度を把握することができる。
図8に示すように、記録媒体の温度が35℃の場合には(実施例20)、濃度ムラとして視認される程度の凝集ムラは発生せず(評価○)、所定の画像濃度を得ることができた(評価◎)。なお、実施例20の条件で記録された画像を顕微鏡等で拡大すると、凝集ムラが確認された。
また、記録媒体の温度が50℃の場合(実施例21)及び80℃の場合(実施例22)には、凝集ムラは発生せず(評価◎)、所定の画像濃度を得ることができた(評価◎)。なお、実施例21、22の条件で記録された画像を顕微鏡等で拡大しても、凝集ムラは確認できなかった。
即ち、記録媒体の温度Tとポリマー微粒子のガラス転移点温度Tgとの関係が、次式〔数6〕を満たすと、ポリマー微粒子に弾性力が付与された結果、凝集体(ドット)の広がり効果が増強されるとともに、転写記録時に画像が押圧されることで凝集ムラの視認性をより低下させることができる。
〔数6〕
T>Tg
なお、ポリマー微粒子のガラス転移点温度Tgは温度範囲として表されるので、記録媒体の温度Tは、その温度範囲の最小値よりも大きくすればよい。直接記録方式では、記録媒体の温度Tは扁平化部材の温度(扁平化部材の表面温度)となる。
〔実験1〜7のまとめ〕
実験1〜7における評価結果をまとめると、以下(1)〜(6)のとおりである。
(1)凝集処理液層の厚みtsと、真球に換算したときのインク液滴の直径dと、の関係が、ts/d≧0.64(〔数1〕)の関係を満たすとともに、凝集処理液の表面張力γsと、インクの表面張力γiと、の関係が、γs<γi(〔数2〕)を満たす凝集処理液及びインクを用いることで凝集ムラの発生が防止される。
(2)上記(1)に示す関係を満たす凝集処理液とインクとの反応で形成された凝集体に扁平化処理を施すことで、所定のサイズのドットを形成することがで、所定の画像濃度を得ることができる。特に、ベタ画像を形成する場合には効果的であるといえる。
(3)凝集処理液の表面張力γsと、インクの表面張力γiと、の関係がγs<γi(〔数2〕)、γi−γs≧10mN/m(〔数4〕)を満たすように凝集処理液の表面張力γs及びインクの表面張力γiのうち少なくとも何れか一方を調整することで、凝集処理液層に着弾したインク液滴の広がりを抑制し、さらなる凝集均一性の向上が見込まれる。
(4)直接記録方式では、記録媒体の表面エネルギーγa1と、扁平化部材の表面エネルギーγb1との関係が、γa1−γb1≧10mN/m(〔数3〕)を満たす場合には、扁平化による画像品質の劣化が防止される。同様に、転写記録方式では、中間転写媒体の表面エネルギーγa2と記録媒体(扁平化部材)の表面エネルギーγb2との関係が、γb2−γa2≧10mN/m(〔数5〕)を満たす場合には、扁平化による画像品質の劣化が防止される。
(5)インクに含有するポリマー微粒子の濃度をより大きくすることで、凝集ムラを抑制することができ、凝集ムラに起因する濃度ムラの発生が防止される。
(6)扁平化部材(転写記録方式の場合には記録媒体)の温度Tと、インクに含有されるポリマー微粒子のガラス転移点温度Tgと、の関係が、T>Tgを満たすように扁平化部材(記録媒体)の温度を変更することで、ポリマー微粒子に弾性力を付加することができ、ドットの広がり効果が増強される。
〔装置例〕
次に、本発明に係る画像形成方法を適用した画像形成装置(インクジェット記録装置)について説明する。図9に示すインクジェット記録装置100は、転写記録方式及び2液凝集方式が適用されている。
図9に示すインクジェット記録装置100は、印字部112からのインク打滴に先立ち、中間転写媒体116の画像形成領域(不図示)に凝集処理液を付与する塗布ローラ136を含む処理液付与部138と、処理液付与部138の後段側に設けられ、黒(K),イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C)の各色の着色材を含むインクに対応して設けられた複数のインクジェットヘッド112K,112C,112M,112Yを有する印字部112と、印字部112の各ヘッド112K,112C,112M,112Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部114と、各印字部112の後段側(中間転写媒体の移動方向下流側)に設けられ、1次画像が形成された中間転写媒体116上に残留する溶媒(未反応の凝集処理液及び未反応のインク)を吸収除去する吸収ローラ118Aと、溶媒が除去された中間転写媒体116に形成された1次画像を加熱する加熱ヒータ120と、中間転写媒体116に形成された1次画像が転写記録される記録媒体122を収容するとともに、記録媒体122を転写記録部126へ供給する給紙部124と、加熱ヒータ120の後段側に設けられ、給紙部124から供給された記録媒体122の画像記録面(画像記録領域)を中間転写媒体116の画像形成領域に接触させた状態で中間転写媒体116と記録媒体122とを押圧して、中間転写媒体に形成された1次画像を記録媒体122に転写記録する転写記録部126と、転写記録部の後段側に設けられ、中間転写媒体116から記録媒体を剥離させる剥離部128と、中間転写媒体から剥離された後に、転写記録された画像を記録媒体に定着させる定着部130と、定着部130によって定着処理が施された記録媒体を装置外部へ排出する排紙部132と、剥離部128の後段側に設けられ、転写記録後の中間転写媒体116の画像形成領域をクリーニングするクリーニング部134と、を備えて構成されている。
インク貯蔵/装填部114は、各ヘッドに対応する色のインクを貯蔵するインク供給タンク(図9中不図示、図13に符号160で図示)を有し、各色のインクは所要のインク流路を介してヘッドと連通されている。
また、インク貯蔵/装填部114は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有する部材が用いられる。
中間転写媒体116は、複数の張架ローラ140A〜140Gに巻きかけられた無端状のベルトであり、複数の張架ローラ140A〜140Gのうち少なくとも1つの張架ローラ(駆動ローラ)を回動させると、該駆動ローラの回動に同期して中間転写媒体116が所定の方向に移動する。例えば、張架ローラ140Aを駆動ローラとして時計と反対回り方向に回動させると、中間転写媒体116は、印字部直下の印字領域において、図1の右から左へ移動する。本例のインクジェット記録装置100では、中間転写媒体116の移動速度は、一連の画像形成プロセスを通じて一定であり、その値は500mm/sである。
また、中間転写媒体116は、印字部112と対向する表面(画像形成面)の少なくとも1次画像が形成される画像形成領域は、樹脂、金属やゴムなどのインク液滴が浸透しない非浸透性を有している。即ち、中間転写媒体116の画像形成領域に付与された凝集処理液は、中間転写媒体116の内部に浸透することなく中間転写媒体116の表面に保持され、所定の厚みを有する凝集処理液層(図1の符号12)を形成する。また、中間転写媒体116の少なくとも画像形成領域は、所定の平坦性を有する水平面(フラット面)をなすように構成されている。
なお、中間転写媒体116の画像形成領域を凝集処理液に対する浸透速度が遅い媒体(凝集処理液が付与されてから印字部112の直下に移動するまでに、凝集処理液の量(厚み)の減少が10%以下の低浸透性を有する媒体)を適用してもよい。即ち、中間転写媒体116には、凝集処理液が付与されてから印字部112直下の印字領域に移動するまでに、凝集処理液の量(厚み)の減少が1%以下の難浸透性を有する媒体や、凝集処理液の減少量が10%以下の低浸透性を有する媒体を含む非浸透性を有する媒体が適用される。
図9には、中間転写媒体116の一態様として無端状のベルトを示したが、本発明に適用される中間転写媒体はドラム形状でもよいし、平板形状でもよい。
中間転写媒体116の画像形成面を含む表面層に用いられる好ましい材料としては、例えば、ポリイミド系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、フッ素系樹脂等の公知の材料が挙げられる。
また、中間転写媒体116の表面層の表面エネルギーは10mN/m以上40mN/m以下とする態様が好ましい。中間転写媒体116の表面層の表面エネルギーを40mN/m以上とすると、1次画像が転写記録される記録媒体122との表面張力差がなくなり(または、極めて小さくなり)、インク凝集体の転写性が悪化する。更に、中間転写媒体116の表面層の表面エネルギーが10mN/m以下であると、凝集処理液のぬれ性を考慮した場合に、凝集処理液の表面張力を中間転写媒体116の表面層の表面エネルギーよりも小さくする必要があり、凝集処理液の表面張力を10mN/m以下とすることが困難となり、中間転写媒体116及び凝集処理液の設計自由度(選択範囲)が狭くなる。
なお、中間転写媒体116の表面層に表面粗さRa0.3μm程度の凹凸があると、インク液滴やインク凝集体の移動が抑制される効果があり、より好ましい。
クリーニング部134による洗浄工程を終えた中間転写媒体116には、塗布ローラ136と凝集処理液が収容されるトレイ137と、トレイ137内の凝集処理液の残量に応じて、トレイ137に凝集処理液を補充する凝集処理液補充部(不図示)と、を具備する凝集処理液付与部138によって凝集処理液が塗布される(凝集処理液付与工程)。
凝集処理液の塗布量は中間転写媒体116の移動速度や、塗布ローラ136の中間転写媒体116に対する押圧によって制御され、印字部112の直下の印字領域において、1滴のインク液滴の真球に換算したときの直径の0.64倍よりも大きい値の膜厚となるように凝集処理液の塗布量が決められる。
凝集処理液層の膜厚(凝集処理液の塗布量)を制御するには、塗布ローラ136と中間転写媒体116との接触時間を制御する態様が好ましい。塗布ローラ136と中間転写媒体116との接触時間を相対的に長くすると凝集処理液の塗布厚は相対的に大きくなり、塗布ローラ136と中間転写媒体116との接触時間を相対的に短くすると凝集処理液の塗布厚は相対的に小さくなる。
例えば、インク打滴量が2plの場合には、当該インク液滴の真球に換算したときの直径は15.6μmであり、凝集処理液層の厚みtは10μm以上15.6μm未満に設定される。なお、1つの画像を形成する際に複数のインク打滴量が存在する場合には、インク打滴量の最大値を基準にして凝集処理液層の膜厚が決められる。
塗布ローラ16Aには、多孔質材料や表面に凹凸がある材料が望ましく、例えば、グラビアロール状のもの等を用いることができる。
処理液付与部138から印字部112の直下までの移動の間に、蒸発や中間転写媒体116への浸透等により凝集処理層の膜厚が塗布時に比べて減少してしまうことがあり得るので、この減少分を考慮して凝集処理液の塗布量を決める態様が好ましい。凝集処理液の塗布時に対する印字部112の直下における減少量は、環境温度、凝集処理液の種類、中間転写媒体の凝集処理液に対する浸透速度(浸透性)等の条件によって把握することが可能である。
即ち、環境温度、凝集処理液の種類、中間転写媒体の凝集処理液に対する浸透速度(浸透性)等の条件ごとに、凝集処理液の塗布時に対する印字部112の直下における減少量を予め把握しておき(データテーブル化して記憶しておき)、これらの条件に応じて凝集処理液の塗布量を変更するように構成する態様が好ましい。
例えば、温度が相対的に高い場合には、凝集処理液の塗布量を相対的に多くし、温度が相対的に低い場合には、凝集処理液の塗布量を相対的に少なくするように凝集処理液の塗布量を制御することが考えられる。
図9には、凝集処理液の付与形態の一態様として、塗布ローラ136を用いる態様を例示したが、凝集処理液の付与形態は、ブレードによる塗布やスプレー方式による塗布、インクジェットヘッドによる打滴など、様々な方式が適用可能である。特に、インクジェット方式の場合、記録画像(画像データ)に応じて凝集処理液を正確にパターンニングして付与することができる。
中間転写媒体116の画像記録領域に所定の膜厚を有する凝集処理液層が形成されると、画像データ(ドットデータ)に応じて、印字部112直下の印字領域において、ヘッド112K,112C,112M,112YからKCMY各色に対応したカラーインクが打滴される(印字工程、インク打滴工程)。
本例に示すインクジェット記録装置100のインクの最小打滴量は2plであり、最高記録密度(最高ドット密度)は主走査方向(中間転媒体移動方向と直交する方向)、副走査方向(中間転媒体移動方向)とも1200dpiである。
ヘッド112K,112C,112M,112Yから打滴されると、中間転写媒体の表面でインクの凝集反応が発現してインク(顔料色材)の凝集体が形成される。言い換えると、凝集処理液及びインクの混合液体は、ドットとなるインク凝集体と溶媒(液体溶媒)に分離される。
中間転写媒体116上でインクの凝集体と溶媒に分離されると、溶媒除去部118によって中間転写媒体116上の溶媒が除去される。図9に示す溶媒除去部118は、多孔質部材から成る吸収ローラ118Aを備え、中間転写媒体116の移動に応じて従動回転する吸収ローラ118Aを中間転写媒体116上の溶媒に接触させて、当該溶媒を吸収除去する。吸収ローラ118Aはローラ状の多孔質体で構成され、中間転写媒体116の画像形成面に当接及び離間可能な構造を有している。また、吸収ローラ118Aの表面積(中間転写媒体116に接触する面の面積)は、最大画像サイズに対応している。
吸収ローラ118Aの表面(中間転写媒体の画像形成面と接触する面)の表面エネルギーγcは中間転写媒体116の画像形成面の表面エネルギーγa2よりも小さいこと(γc<γa2)が好ましく、本例では、吸収ローラ118Aはその表面の表面エネルギーγcが30mN/m以下の部材が適用される。
上述した吸収ローラ118Aを用いて溶媒除去を行うことで、吸収ローラ118Aにインク凝集体が付着することを防止し、中間転写媒体116上の溶媒のみ除去が可能となる。なお、溶媒除去部118の他の態様として、吸収ローラ118Aに代わりエアナイフで余剰な溶媒を中間転写媒体116から取り除く方式や、中間転写媒体116を加熱して溶媒を蒸発させ除去する方式などを適用してもよい。
吸収ローラ118Aによって中間転写媒体116の画像形成面上の溶媒を除去する態様では、中間転写媒体116の画像形成面に凝集処理液が多く(過剰に)に付与されるような場合でも、中間転写媒体116上の溶媒が確実に除去されるため、転写記録時に記録媒体122に多量の溶媒(分散媒)が転写されることはない。したがって、記録媒体122として紙類(特に、浸透性を有する普通紙などの紙媒体)が用いられるような場合でも、カール、カックルといった水系溶媒に特徴的な問題が発生しない。
また、溶媒除去部118を用いてインク凝集体から余分な溶媒を除去することによって、インク凝集体を濃縮し、より内部凝集力を高めることができる。これにより転写記録部126による転写記録工程までにより強い内部凝集力をインク凝集体に付与することができる。更に、溶媒除去によるインク凝集体の効果的な濃縮により、記録媒体122に画像を転写した後も良好な定着性や光沢性を画像に付与することができる。
なお、溶媒除去部118によって、中間転写媒体116上の溶媒すべてを除去する必要は必ずしもない。過剰に除去しすぎてインク凝集体を濃縮しすぎるとインク凝集体の転写体の付着力が強くなりすぎて、転写に過大な圧力を必要とするため好ましくない。むしろ転写性に好適な粘弾性を保つためには、少量残留させることが好ましい。
溶媒除去部118による溶媒除去工程が終わると、中間転写媒体116の画像形成領域の表面温度が120℃となるように加熱ヒータ120を動作させる。中間転写媒体116を加熱して中間転写媒体116に形成された画像を軟化させることで、当該画像は転写記録に適した粘度となり、転写記録時の画像劣化を防止するとともに、転写記録工程が効率化される。
中間転写媒体116上の溶媒を少量残留させることで得られる効果として、次のことが挙げられる。即ち、インク凝集体は疎水性であり、揮発しにくい溶媒成分(主にグリセリンなどの有機溶剤)は親水性であるので、インク凝集体と残留溶媒成分は溶媒除去実施後に分離し、残留溶媒成分からなる薄い液層がインク凝集体と中間転写媒体との間に形成される。したがって、インク凝集体の中間転写媒体116への付着力は弱くなり、転写性向上に有利である。
上述した溶媒除去の制御は、吸収ローラ118Aの中間転写媒体116への押圧を変えることで可能となる。溶媒除去量を相対的に多くする場合には、吸収ローラ118Aの中間転写媒体116への押圧を大きくし、溶媒除去量を相対的に少なくする場合には、吸収ローラ118Aの中間転写媒体116への押圧を小さくすればよい。
また、吸収特性の異なる複数の吸収ローラを備え、溶媒除去量に応じて使用する吸収ローラを選択的に切り換える態様も可能である。
溶媒除去工程を終えると、加熱ヒータ120によって中間転写媒体116に予備加熱処理が施される。加熱ヒータ120には平板ヒータが好適に用いられる。図9には、中間転写媒体116の外部に加熱ヒータ120を備える態様を例示したが、加熱ヒータ120を中間転写媒体116に内蔵してもよい。
当該予備加熱工程では、中間転写媒体116の画像形成面の温度(画像が形成されている領域の温度)がインクに含まれるポリマー微粒子のガラス転移点温度Tgを超える温度となるように、加熱ヒータ120の加熱温度が設定される。なお、インク中の水分が急激に揮発して画像品質を損なわないために、予備加熱温度の上限値は100℃未満に設定される。
加熱ヒータ120によって中間転写媒体116が所定の温度に予備加熱されると、転写ローラ126Aと転写ローラ126Bの間に中間転写媒体116と記録媒体122を挟み込んだ状態で所定の圧力によって押圧し、中間転写媒体116上の1次画像が記録媒体122に転写記録される(転写記録工程)。
即ち、転写記録部126は、中間転写媒体116をはさんで配置される2つの転写ローラ126A及び転写ローラ126Bを備え、中間転写媒体116の画像形成面側に転写ローラ126Aが配置され、画像形成面の反対側に転写ローラ126Bが配置される構造を有している。
給紙部124から供給された記録媒体122は、中間転写媒体116と転写ローラ126Aとの間に挟みこまれ、この状態を維持したまま転写ローラ126Aを介して所定のニップ圧力(押圧)が印加される。
本例に示す転写工程では、所定のニップ圧力を1.5MPa〜2.0MPaとする態様が好ましい。転写記録部126における転写記録時のニップ圧を調整するための手段としては、例えば、転写ローラ126A、126Bを図9の上下方向に移動させる機構(駆動手段)が挙げられる。即ち、転写ローラ126Aと転写ローラ126Bとのクリアランスを広げる方向に転写ローラ126A、126Bを移動させるとニップ圧は小さくなり、転写ローラ126Aと転写ローラ126Bとのクリアランスを狭くする方向に転写ローラ126A、126Bを移動させるとニップ圧は大きくなる。
図9では、給紙部124の一例としてカット紙が積層装填されたカセットが示されているが、紙幅や紙質等が異なる記録媒体に対応して複数のカセットを併設してもよい。また、カット紙が積層装填されたカセットに代えて、又はこれと併用して、ロール紙(連続用紙)のマガジンによって用紙を供給してもよい。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をカセットに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される記録媒体の種類(メディア種)を自動的に判別し、メディア種に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、裁断用のカッターが設けられており、該カッターによってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッターは、記録媒体の搬送路幅以上の長さを有する固定刃と、該固定刃に沿って移動する丸刃とから構成されており、印字裏面側に固定刃が設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃が配置される。
また、本例に適用される記録媒体122の具体例を挙げると、普通紙、インクジェット専用紙などの浸透性媒体、コート紙などの非浸透性又は低浸透性の媒体、裏面に粘着剤と剥離ラベルの付いたシール用紙、OHPシートなどの樹脂フィルム、金属シート、布、木など様々な媒体がある。
上述した転写記録工程では、中間転写媒体116に形成された1次画像の記録媒体122への転写記録と同時に、中間転写媒体116に形成された1次画像(凝集体)の扁平化処理が行われる。例えば、1.5MPa〜2.0MPaのニップ圧力を与えた場合には、真球に換算したときの直径が15.6μmのインク液滴によって形成された直径(最大値)が18.8μmの凝集体は、直径(記録媒体上のドットの直径)29.7μmに広げられる。言い換えると、2plの体積を有するインク液滴によって、凝集反応、扁平化処理を経て、直径29.7μmのドットが形成される。
このようにして、凝集処理液とインクの凝集反応によりインク凝集体を形成し、その後、当該インク凝集体に扁平化処理を施すことで、インクジェット記録装置における一般的なインク液滴の広がり率が確保される。
なお、インク液滴の「広がり率」とは、液柱状インク液滴を真球に置き換えたときに、吐出体積から算出される当該真球の直径に対する記録媒体上のドット定着直径の割合で定義され、インク液滴の広がり率が1.5以上になると、インクの広がり率が1.5未満の場合に比べて中間転写媒体116に形成される画像の鮮明度が増すので好ましい。なお、インク液滴の広がり率を2.0以上とすると、中間転写媒体116に形成される画像はより鮮明になる。
例えば、文字品質とベタ画像の濃度を両立させるために、記録画像の解像度を1200dpi×1200dpi、ドットの直径を30μmとしたときに、インク液滴(ドット)の広がり率が1.5以上であれば、最小限のインク液滴量で所望の画像を得ることができるとともに、溶媒除去の負荷も低減できる。
また、転写記録前に記録媒体122を予備加熱する態様も好ましい。更に、転写記録部126に加熱手段を備え、転写記録時の中間転写媒体116及び記録媒体122を所定の温度に加熱する態様もこのましい。即ち、転写ローラ126A及び転写ローラ126Bのうち少なくとも何れか一方にヒータを内蔵し、記録媒体122が供給されると該ヒータによって転写記録時の中間転写媒体116及び記録媒体122に加熱処理が施される態様も好ましい。なお、このときの加熱温度は、中間転写媒体116の温度あるいは、記録媒体122の温度がインクに含まれるポリマー微粒子のガラス転移点温度Tgを超える温度とすることが好ましい。
図9には、記録転写工程時と扁平化処理工程を共通の転写ローラ126A、126Bによって同時に実行する態様を例示したが、転写記録用の転写ローラと、扁平化処理用の王圧ローラ別々に備え、記録転写工程時と扁平化処理工程を別々に実行してもよい。
また、吸収ローラ118Aを用いて溶媒除去工程時に扁平化処理を行う態様も好ましい。溶媒除去工程と扁平化処理工程を共通の部材(溶媒除去ローラ)で同時に実行する態様では、印字部112と吸収ローラ118Aとの間に加熱ヒータを備える態様や、中間転写媒体116の少なくとも画像形成領域にヒータを内蔵して、扁平化処理工程実行前に中間転写媒体(中間転写媒体に形成された1次画像)を予備加熱する態様が好ましい。
転写記録部126において記録媒体122への転写記録が終了すると、剥離部128において中間転写媒体116から画像記録済みの記録媒体122が剥離され、記録媒体122は定着部130へ送られる。
剥離部128は、中間転写媒体116の剥離ローラの巻き付け曲率によって、記録媒体122自身の剛性(腰の強さ)で中間転写媒体116から記録媒体122を剥離するように構成されている。剥離部128には、剥離爪等の剥離を促進させる手段を併用してもよい。なお、転写記録部126と剥離部128との間に記録媒体122を冷却する冷却装置を備える態様も好ましい。剥離後の記録媒体122を冷却することで、記録媒体に転写記録された画像の光沢性を向上させることができる。
冷却装置の一例を挙げると、記録媒体122に冷風をあてるファンを備える構成や、ペルチェ素子、ヒートシンクなどの冷却部材を備える構成などが挙げられる。
定着部130では、記録媒体122と加熱及び加圧して、記録媒体122に記録された画像を定着させる(定着処理工程)。
定着部130は、50℃〜150℃の範囲で温度調整可能な加熱ローラ対を含んで構成される。定着部130の加熱温度は50℃〜150℃、加圧力は2.5MPa〜3.0MPaとする態様が好ましい。なお、定着部130の加熱温度は、インクに含有するポリマー微粒子のガラス転移点温度などに応じて設定するとよい。
本例では、インクにポリマー微粒子を含有しており、ポリマー微粒子を造膜させる(画像の最表面にポリマー微粒子が溶解した薄膜が形成される)ことで、定着性・耐擦過性を向上させることができる。転写記録部126にて転写性と造膜化が両立することができれば、定着部130を省略する態様も可能である。
定着処理工程が終了すると、画像記録済みの記録媒体122は排紙部132を介して装置外部に排出される。なお、図示は省略するが、排紙部132に排出された記録媒体122を収容する収容トレイを備える態様が好ましい。
記録媒体122への転写記録工程の終了後、中間転写媒体116はクリーニング部134によってクリーニング処理が施される。クリーニング部134は、中間転写媒体116の画像形成面に当接しながら残インク凝集体を払拭除去するブレード(不図示)と、除去された残インク凝集体を回収する回収部(不図示)を有している。なお、中間転写媒体116から残インクを除去するクリーニング手段の構成は、上記の例に限らず、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、粘着ロール方式或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
〔印字部の説明〕
次に図9に示す印字部112について詳説する。印字部112の各ヘッド112K,112C,112M,112Yは、中間転写媒体116における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有し(図10参照)、そのインク吐出面には画像形成領域の全幅にわたりインク吐出用のノズル(図10中不図示、図11に符号151で図示)が複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている。
ヘッド112K,112C,112M,112Yは、中間転写媒体116の移動方向(白抜き矢印線で図示)に沿って上流側から黒(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の色順に配置され、それぞれのヘッド112K,112C,112M,112Yが中間転写媒体116の移動方向と直交する方向に延在するように固定設置される。
中間転写媒体116の幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッドを各色インク及び処理液に対してそれぞれ設ける構成によれば、中間転写媒体116の移動方向(副走査方向、図11参照)について、中間転写媒体116と印字部112とを相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち、1回の副走査で)、中間転写媒体116の画像形成領域に1次画像を記録することができる。これにより、ヘッド112K,112C,112M,112Yが中間転写媒体116の移動方向と直交する主走査方向(図11参照)に往復動作するシリアル(シャトル)型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、プリント生産性を向上させることができる。
本例では、KYMCの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。また、粘度等の条件を変えた複数種類の凝集処理液を用いる場合には、処理液の種類ごとに処理液付与部(塗布ローラ136)を複数備える態様も可能である。
〔ヘッドの構造〕
次に、図9に示すヘッド112K,112C,112M,112Yの構造について詳説する。ヘッド112K,112C,112M,112Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によってヘッドを示す。
図11(a)はヘッド150の構造例を示す平面透視図であり、図11(b)はその一部の拡大図である。また、図11(c)はヘッド150の他の構造例を示す平面透視図、図12はインク室ユニットの立体的構成を示す断面図(図11(a),(b)中のXII−XII線に沿う断面図)である。
中間転写媒体116上に形成されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド150におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド150は、図11(a),(b)に示すように、インク滴の吐出孔であるノズル151と、各ノズル151に対応する圧力室152等からなる複数のインク室ユニット153を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する副走査方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
中間転写媒体116の移動方向と略直交する方向に中間転写媒体116の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図11(a)の構成に代えて、図11(c)に示すように、複数のノズル151が2次元に配列された短尺のヘッドブロック150’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで中間転写媒体116の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。また、図示は省略するが、短尺のヘッドを一列に並べてラインヘッドを構成してもよい。
各ノズル151に対応して設けられている圧力室152は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル151と供給口154が設けられている。各圧力室152は供給口154を介して共通流路155と連通されている。共通流路155はインク供給源たるインク供給タンク(図11中不図示、図13に符号160で図示)と連通しており、該インク供給タンクから供給されるインクは図12の共通流路155を介して各圧力室152に分配供給される。
圧力室152の天面を構成し共通電極と兼用される振動板156には個別電極157を備えた圧電素子158が接合されており、個別電極157に駆動電圧を印加することによって圧電素子158が変形してノズル151からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路155から供給口154を通って新しいインクが圧力室152に供給される。
本例では、ヘッド150に設けられたノズル151から吐出させるインクの吐出力発生手段として圧電素子158を適用したが、圧力室152内にヒータを備え、ヒータの加熱による膜沸騰の圧力を利用してインクを吐出させるサーマル方式を適用することも可能である。
かかる構造を有するインク室ユニット153を図11(b)に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
即ち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット153を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなり、主走査方向については、各ノズル151が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
なお、本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されず、副走査方向に1列のノズル列を有する配置構造など、様々なノズル配置構造を適用できる。
また、本発明の適用範囲はライン型ヘッドによる印字方式に限定されず、中間転写媒体116の幅方向の長さに満たない短尺のヘッドを中間転写媒体116の幅方向に走査させて当該幅方向の印字を行い、1回の幅方向の印字が終わると中間転写媒体116を幅方向と直交する方向に所定量だけ移動させて、次の印字領域の中間転写媒体116の幅方向の印字を行い、この動作を繰り返して中間転写媒体116の印字領域の全面にわたって印字を行うシリアル方式を適用してもよい。
〔供給系の構成〕
図13はインクジェット記録装置100におけるインク供給系の構成を示した概要図である。
インク供給タンク160はヘッド150にインクを供給する基タンクであり、図9で説明したインク貯蔵/装填部114に含まれる。インク供給タンク160の形態には、インク残量が少なくなった場合に不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。
図13に示したように、インク供給タンク160とヘッド150の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ162が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
なお、図13には示さないが、ヘッド150の近傍又はヘッド150と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
また、インクジェット記録装置100には、ノズル151の乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ164と、ヘッド150のインク吐出面の清掃手段としてクリーニングブレード166が設けられている。
これらキャップ164及びクリーニングブレード166を含むメンテナンスユニットは、不図示の移動機構によってヘッド150に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置からヘッド150下方のメンテナンス位置に移動される。
キャップ164は、図示せぬ昇降機構によってヘッド150に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ164を所定の上昇位置まで上昇させ、ヘッド150に密着させることにより、ノズル面をキャップ164で覆う。
印字中又は待機中において、特定のノズル151の使用頻度が低くなり、ある時間以上インクが吐出されない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してインク粘度が高くなってしまう。このような状態になると、圧電素子158が動作してもノズル151からインクを吐出できなくなってしまう。
このような状態になる前に(圧電素子158の動作により吐出が可能な粘度の範囲内で)圧電素子158を動作させ、その劣化インク(粘度が上昇したノズル近傍のインク)を排出すべくキャップ164(インク受け)に向かって予備吐出(パージ、空吐出、つば吐き、ダミー吐出)が行われる。
なお、中間転写媒体116に向けてインクを打滴して予備吐出を行う態様も可能である。例えば、複数の画像を連続的に形成する場合には、画像間で予備吐出を実行することが可能である。特に、同一画像を複数枚形成する場合には、特定のノズルにおいてインク(処理液)吐出の頻度が低くなり、吐出異常の発生する可能性が高くなり、当該特定のノズルについて画像間で予備吐出を行うことが好ましい。
中間転写媒体116に予備吐出を行う場合には、吸収ローラ118Aや転写ローラ126Aに予備吐出によるインク(処理液)が付着しないように、吸収ローラ118A及び転写ローラ126Aを移動させて、吸収ローラ118A及び転写ローラ126Aと中間転写媒体116との間に所定のクリアランス(例えば、10mm程度)を設けるとよい。
また、ヘッド150内のインク(圧力室152内)に気泡が混入した場合、圧電素子158が動作してもノズルからインクを吐出させることができなくなる。このような場合にはヘッド150にキャップ164を当て、吸引ポンプ167で圧力室152内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク168へ送液する。
この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。なお、吸引動作は圧力室152内のインク全体に対して行われるので、インク消費量が大きくなる。したがって、インクの粘度上昇が小さい場合には予備吐出を行う態様が好ましい。
クリーニングブレード166はゴムなどの弾性部材で構成されており、図示せぬブレード移動機構によりヘッド150のインク吐出面に摺動可能である。インク吐出面にインク液滴または異物が付着した場合、クリーニングブレード166をインク吐出面に摺動させることでインク吐出面を拭き取り、インク吐出面を清掃する。
〔制御系の説明〕
図14はインクジェット記録装置100のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置100は、通信インターフェース170、システムコントローラ172、メモリ174、モータドライバ176、ヒータドライバ178、プリント制御部180、画像バッファメモリ182、ヘッドドライバ184等を備えている。
通信インターフェース170は、ホストコンピュータ186から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース170にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ186から送出された画像データは通信インターフェース170を介してインクジェット記録装置100に取り込まれ、一旦メモリ174に記憶される。
メモリ174は、通信インターフェース170を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ172を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ174は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ172は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置100の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。即ち、システムコントローラ172は、通信インターフェース170、メモリ174、モータドライバ176、ヒータドライバ178等の各部を制御し、ホストコンピュータ186との間の通信制御、メモリ174の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ188やヒータ189を制御する制御信号を生成する。
メモリ174には、システムコントローラ172のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。なお、メモリ174は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。メモリ174は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
モータドライバ176は、システムコントローラ172からの指示にしたがってモータ188を駆動するドライバである。図14には、装置内の各部に配置されるモータ(アクチュエータ)を代表して符号188で図示されている。例えば、図14に示すモータ188には、図9の張架ローラ140A〜140Gの中の駆動ローラを駆動するモータや、吸収ローラ118Aの移動機構のモータ、転写ローラ126A、126Bの移動機構のモータなどが含まれている。
ヒータドライバ178は、システムコントローラ172からの指示にしたがって、ヒータ189を駆動するドライバである。図14には、インクジェット記録装置100に備えられる複数のヒータを代表して符号189で図示されている。例えば、図14に示すヒータ189には、図9に示す加熱ヒータ120や、定着部49の加熱ローラ対に含まれるヒータなどが含まれている。
転写制御部179は、図9に示す転写記録部126の転写ローラ126A、126Bの押圧制御を行う。記録媒体122の種類やインクの種類ごとに、転写ローラ126A、126Bの押圧最適値が予め求められ、データテーブル化されて所定のメモリ(例えば、メモリ174)に記憶されている。記録媒体122の情報や使用インクの情報を取得すると、当該メモリを参照して転写ローラ126A、126Bの押圧が制御される。
プリント制御部180は、システムコントローラ172の制御に従い、メモリ174内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッドドライバ184に供給する制御部である。プリント制御部180において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいて、ヘッドドライバ184を介してヘッド150のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部180には画像バッファメモリ182が備えられており、プリント制御部180における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ182に一時的に格納される。また、プリント制御部180とシステムコントローラ172とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
凝集処理液付与制御部181は、図9に示す塗布ローラ136による凝集処理液の塗布量を制御する。本例では、中間転写媒体116と塗布ローラ136とを接触、離間可能に構成し、塗布ローラ136を中間転写媒体116に接触させる時間を可変することで、凝集処理液の付与量を制御する。
また、トレイ137内の凝集処理液の残量を検出するセンサを備え、凝集処理液付与制御部181は該センサから得られる情報に基づいて塗布液容器内の凝集処理液の残量を判断し、残量が所定量以下になると、その旨を報知する。
ヘッドドライバ184は、プリント制御部180から与えられる画像データに基づいてヘッド150(ヘッド112K,112C,112M,112Y)の圧電素子158に印加される駆動信号を生成するとともに、該駆動信号を圧電素子158に印加して圧電素子158を駆動する駆動回路を含んで構成される。なお、図14に示すヘッドドライバ184には、ヘッド150の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース170を介して外部から入力され、メモリ174に蓄えられる。この段階では、RGBの画像データがメモリ174に記憶される。
メモリ174に蓄えられた画像データは、システムコントローラ172を介してプリント制御部180に送られ、該プリント制御部180においてインク色ごとのドットデータ及び第2処理液のドットデータに変換される。即ち、プリント制御部180は、入力されたRGB画像データをKCMYの4色のドットデータに変換する処理を行う。プリント制御部180で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ182に蓄えられる。
なお、中間転写媒体116上に形成される1次画像は、転写の際に反転することを考慮して、最終的に記録媒体122に形成される2次画像(記録画像)の鏡面画像としなければならない。即ち、インクヘッド112K,112C,112M,112Yに供給される駆動信号は鏡面画像に対応した駆動信号であり、プリント制御部180にて入力画像に対して反転処理を施す必要がある。
プログラム格納部190には各種制御プログラムが格納されており、システムコントローラ172の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。プログラム格納部190はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記録媒体のうち、複数の記録媒体を備えてもよい。なお、プログラム格納部190は動作パラメータ等の記録手段(不図示)と兼用してもよい。
〔他の装置例〕
次に、本発明に適用される他の装置例について説明する。図15(a)は、インクジェット記録装置200の概略構成図である。図15(a)に示すインクジェット記録装置200は、記録媒体222に直接画像を形成する直接記録方式が適用される。
インクジェット記録装置200は、記録媒体222に凝集処理液を付与する処理液付与部238と、凝集処理液が付与されて凝集処理液層が形成された記録媒体122にKCMYの各色インクを記録媒体222に打滴するヘッド212K,212C,212M,212Yを含む印字部212と、KCMYの各色インクが打滴された記録媒体222上に残留する溶媒成分を除去する吸収ローラ218Aを含む溶媒除去部218と、記録媒体222上に形成された画像を押圧して扁平化する押圧ローラ223Aを含む扁平化処理部223と、を備えている。
給紙部(不図示)から送り出される記録媒体222は、吸着ベルト搬送部240に送られる。吸着ベルト搬送部240は、ローラ242、244間に無端状のベルト246が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも処理液付与部238及び印字部212、溶媒除去部218、扁平化処理部223に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト246は、記録媒体222の幅よりも広い幅を有しており、ベルト面には多数の吸引口(不図示)が形成されている。図15(a)に図示したとおり、ローラ242、244(ローラ244は扁平化処理部223の支持ローラと兼用)に掛け渡されたベルト246の内側において、処理液付与部238及び印字部212、溶媒除去部218、扁平化処理部223に対向する位置には吸着チャンバー(不図示)が設けられており、この吸着チャンバーをポンプ(不図示)で吸引して負圧にすることによってベルト246上の記録媒体222が吸着保持される。
ベルト246が巻かれているローラ242、244の少なくとも一方にモータ(図15(a)中不図示、図14に符号188で図示)の動力が伝達されることにより、ベルト246は図15(a)における反時計回り方向に駆動され、ベルト246上に保持された記録媒体222は図15(a)の右から左へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト246上にもインクが付着するので、ベルト246の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部(不図示)が設けられている。ベルト清掃部(不図示)の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、吸着ベルト搬送部240に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面をローラが接触するので画像が染み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
処理液付与部238には、図9に図示したような塗布ローラ136を含む構成を適用してもよいし、インクジェットヘッドを適用してもよい。なお、図15(a)に示すインクジェット記録装置200のインクの供給系、ヘッド212K,212C,212M,212Yのメンテナンス機構、制御系については、図13及び図14に示した構成が適用される。
なお、図15(a)に図示を省略した構成としては、給紙部から送り出された記録媒体222のカールを除去するデカール処理部、長尺の記録媒体(ロール状の記録媒体)を用いる場合に、記録媒体を所定のサイズにカットするカッター、記録媒体222を加熱するヒータなどがある。
図15(a)に示すインクジェット記録装置200は、記録媒体222に凝集処理液及びインクに対して非浸透性を有する媒体(非浸透媒体)を適用するときに、特に効果を発揮する。非浸透性媒体の一例を挙げると、コート紙、OHPフィルムなどの樹脂フィルム、金属シートなどが挙げられる。なお、記録媒体222の適用範囲は非浸透性を有する媒体に限定されず、普通紙などの浸透性を有する媒体に比べて浸透速度が遅い低浸透性を有する媒体を適用してもよい。
図15(b)及び図15(c)には、図15(a)に図示したインクジェット記録装置200の変形例を示す。なお、図15(b)及び図15(c)中図15(a)と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図15(b)に示すインクジェット記録装置200’は、図15(a)に示すインクジェット記録装置200と扁平化処理部の構成が異なっている。即ち、図15(b)に示すインクジェット記録装置200’の扁平化処理部250は、2つの押圧ローラ252、254を記録媒体搬送方向(矢印線で図示)に沿って配置した構造を有している。
なお、図15(b)には、2つの押圧ローラ252、254を含む態様を例示したが、3つ以上の押圧ローラから構成される態様も可能である。また、各押圧ローラの押圧力を変えてもよいし、各押圧ローラの材質(性質)を変えてもよい。
図15(b)に示す複数の押圧ローラを用いて扁平化処理を施す態様によれば、複数回に分けて扁平化処理を行うことができ、押圧ローラ1つあたりの処理負荷を低減化することができる。また、材質の異なる押圧ローラを備える態様では、記録媒体や画像に応じて押圧ローラを選択的に切り換えることも可能である。
図15(c)には他の変形例を示す。図15(c)に示すインクジェット記録装置200”は、溶媒除去部218が扁平化処理部(250)を兼用している。図15(c)に示す態様によれば、溶媒除去工程と扁平化処理工程を同時に共通の部材で行うことができ、画像記録工程の全体が短縮化されるとともに、装置構成が簡略化される。
本発明の装置例として、インク液滴を用いて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置を例示したが、本発明の適用範囲はインクジェット記録装置に限定されない。例えば、基板上に樹脂液(レジスト液)によってマスクパターンを形成する画像形成装置や、水、薬液等の液体を吐出し、当該液体を所定の形状にパターンニングして基板上に付着させる液体吐出装置などに広く適用することができる。
10,122…記録媒体、12…凝集処理液層、14…インク液滴、16…凝集体、18…溶媒除去部材、20…扁平化部材、50,112K,112C,112M,112Y,212K,212C,212M,212Y…ヘッド、100,200,200’,200”…インクジェット記録装置、112,222…印字部、118,218…溶媒除去部、120…加熱ヒータ、126…転写記録部、138…処理液付与部、223、250…扁平化処理部