以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
まず、本発明で用いられるインク及び凝集処理液(以下、単に「処理液」という。)について説明する。
〔インク〕
本発明で用いられるインクは、溶媒不溶性材料として、色材(着色剤)である顔料やポリマー微粒子などを含有する水性顔料インクが用いられる。
溶媒不溶性材料の濃度は、吐出に適切な粘度20mPa・s以下を考慮して1wt%以上20wt%以下であることが好ましい。より好ましくは画像の光学濃度を得るために4wt%以上の顔料濃度である。
インクの表面張力は、吐出安定性を考慮して20mN/m以上40mN/m以下であることが好ましい。
インクに使用される色材は、顔料あるいは染料と顔料とを混合して用いることができる。処理液との接触時における凝集性の観点から、インク中で分散状態にある顔料の方がより効果的に凝集するため好ましい。顔料の中でも、分散剤により分散されている顔料、自己分散顔料、樹脂により顔料表面を被覆された顔料(マイクロカプセル顔料)、及び高分子グラフト顔料が特に好ましい。また、顔料凝集性の観点から、解離度の小さいカルボキシル基によって修飾されている形態がより好ましい。
マイクロカプセル顔料の樹脂は、限定されるものではないが、水に対して自己分散能又は溶解能を有し、かつアニオン性基(酸性)を有する高分子の化合物であるのが好ましい。この樹脂は、通常、数平均分子量が1,000〜100,000範囲程度のものが好ましく、3、000〜50、000範囲程度のものが特に好ましい。また、この樹脂は有機溶剤に溶解して溶液となるものが好ましい。樹脂の数平均分子量がこの範囲であることにより、顔料における被覆膜として、又はインク組成物における塗膜としての機能を十分に発揮することができる。
前記樹脂は、自己分散能あるいは溶解するものであっても、又はその機能が何らかの手段によって付加されたものであってもよい。例えば、有機アミンやアルカリ金属を用いて中和することにより、カルボキシル基、スルホン酸基、またはホスホン酸基等のアニオン性基を導入されてなる樹脂であってもよい。また、同種または異種の一又は二以上のアニオン性基が導入された樹脂であってもよい。本発明にあっては、塩基をもって中和されて、カルボキシル基が導入された樹脂が好ましくは用いられる。
本発明に用いる顔料としては、特に限定はされないが、具体例としては、オレンジまたはイエロー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等が挙げられる。レッドまたはマゼンタ用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
グリーンまたはシアン用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
また、ブラック用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。
本発明に係る着色インク液には、処理液と反応する成分として、着色剤を含まないポリマー微粒子を添加することが好ましい。ポリマー微粒子は、処理液との反応によりインクの増粘作用、凝集作用を強め、画像品位の向上させることができる。特に、アニオン性のポリマー微粒子をインクに含有せしめることにより、安全性の高いインクが得られる。
処理液と反応して、増粘・凝集作用を起こすポリマー微粒子をインクに用いることにより、画像の品位を高めることができると同時に、ポリマー微粒子の種類によっては、ポリマー微粒子が記録媒体で皮膜を形成し、画像の耐擦性、耐水性をも向上させる効果を有する。
ポリマーインクでの分散方法はエマルジョンに限定するものではなく、溶解していても、コロイダルディスパージョン状態で存在していてもよい。
ポリマー微粒子は、乳化剤を用いてポリマー微粒子を分散させたものであっても、また、乳化剤を用いないで分散させたものであってもよい。乳化剤としては、通常、低分子量の界面活性剤が用いられているが、高分子量の界面活性剤を乳化剤として用いることもできる。外殻がアクリル酸、メタクリル酸などにより構成されたカプセル型のポリマー微粒子(粒子の中心部と外縁部で組成を異にしたコア・シェルタイプのポリマー微粒子)を用いることも好ましい。
分散手法として、低分子量の界面活性剤を用いていないポリマー微粒子は、高分子量の界面活性剤を用いたポリマー微粒子、乳化剤を使用しないポリマー微粒子を含めてソープフリーラテックスと呼ばれている。例えば上記に記述した、スルホン酸基、カルボン酸基等の水に可溶な基を有するポリマー(可溶化基がグラフト結合しているポリマー、可溶化基を持つ単量体と不溶性の部分を持つ単量体とから得られるブロックポリマー)を乳化剤として用いたポリマー微粒子もこれに含まれる。
本発明では、特にこのソープフリーラテックスを用いることが好ましく、ソープフリーラテックスは従来の乳化剤を用いて重合したポリマー微粒子にくらべ、乳化剤がポリマー微粒子の反応凝集や造膜を阻害したり、遊離した乳化剤がポリマー微粒子の造膜後に表面に移動し、顔料とポリマー微粒子の混合した凝集体と記録媒体との接着性を低下させる懸念がない。
インクにポリマー微粒子として添加する樹脂成分としては、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂などが挙げられる。
ポリマー微粒子への高速凝集性付与の観点から、解離度の小さいカルボン酸基を有するものがより好ましい。カルボン酸基はpH変化によって影響を受けやすいので、分散状態が変化しやすく、凝集性が高い。
ポリマー微粒子のpH変化に対する分散状態の変化は、アクリル酸エステルなどのカルボン酸基を有する、ポリマー微粒子中の構成成分の含有割合によって調整することができ、分散剤として用いるアニオン性の界面活性剤によっても調整可能である。
ポリマー微粒子の樹脂成分は、親水性部分と疎水性部分とを併せ持つ重合体であるのが好ましい。疎水性部分を有することで、ポリマー微粒子の内側に疎水部分が配向し、外側に親水部分が効率よく外側に配向され、液体のpH変化に対する分散状態の変化がより大きくなる効果があり、凝集がより効率よく行われる。
市販のポリマー微粒子の例としては、ジョンクリル537、7640(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、ジョンソンポリマー株式会社製)、マイクロジェルE−1002、E−5002(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、日本ペイント株式会社製)、ボンコート4001(アクリル系樹脂エマルジョン、大日本インキ化学工業株式会社製)、ボンコート5454(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、大日本インキ化学工業株式会社製)、SAE−1014(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、日本ゼオン株式会社製)、ジュリマーET−410、FC−30(アクリル系樹脂エマルジョン、日本純薬株式会社製)、アロンHD−5、A−104(アクリル系樹脂エマルジョン、東亞合成株式会社製)、サイビノールSK−200(アクリル系樹脂エマルジョン、サイデン化学株式会社製)、ザイクセンL(アクリル系樹脂エマルジョン、住友精化株式会社製)などが挙げられるが、これに限定するものではない。
顔料に対するポリマー微粒子添加量の重量比率は2:1から1:10が好ましい、より好ましくは1:1から1:3である。顔料に対するポリマー微粒子添加量の重量比率は2:1より少ないと、樹脂の融着による凝集体の凝集力が効果的に向上しない。また、添加量が1:10より多くてもインクの粘度が高くなりすぎ、吐出性などが悪化する。
インクに添加するポリマー微粒子の分子量は融着したときの付着力を鑑みて、5,000以上が好ましい。5,000未満だと、凝集したときのインク凝集体の内部凝集力向上や記録媒体に画像の定着性に効果が不足し、また画質改善効果が不足する。
ポリマー微粒子の体積平均粒子径は、10nm〜1μmの範囲が好ましく、10〜500nmの範囲がより好ましく、20〜200nmの範囲が更に好ましく、50〜200nmの範囲が特に好ましい。10nm以下では、凝集しても画質の改善効果、転写性の向上に効果があまり期待できない。1μm以上では、インクのヘッドからの吐出性や保存安定性が悪化するおそれがある。また、ポリマー粒子の体積平均粒子径分布に関しては、特に制限は無く、広い体積平均粒子径分布を持つもの、又は単分散の体積平均粒子径分布を持つもの、いずれでもよい。
また、ポリマー微粒子を、インク内に2種以上混合して含有させて使用してもよい。
本発明のインクに添加するpH調整剤としては中和剤として、有機塩基、無機アルカリ塩基を用いることができる。pH調整剤はインクジェット用インクの保存安定性を向上させる目的で、該インクジェット用インクがpH6〜10となるように添加するのが好ましい。
本発明のインクは、乾燥によってインクジェットヘッドのノズルが詰まるのを防止する目的から、水溶性有機溶媒を含有することが好ましい。このような水溶性有機溶媒には、湿潤剤及び浸透剤が含まれる。
水溶性有機溶媒としては、処理液の場合と同様に、例えば、多価アルコール類、多価アルコール類誘導体、含窒素溶媒、アルコール類、含硫黄溶媒等が挙げられる。具体例としては、多価アルコール類では、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等が挙げられる。多価アルコール誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。含窒素溶媒としては、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等が、アルコール類としてはエタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類が、含硫黄溶媒としては、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルフォラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。その他、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等を用いることもできる。
本発明のインクには、界面活性剤を含有することができる。
界面活性剤の例としては、炭化水素系では脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好ましい。
更に、特開昭59−157636号の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも使うことができる。また、特開2003−322926号、特開2004−325707号、特開2004−309806号の各公報に記載されているようなフッ素(フッ化アルキル系)系、シリコーン系の界面活性剤も用いることができる。これら表面張力調整剤は消泡剤としても使用することができ、フッ素系、シリコーン系化合物やEDTAに代表されるキレート剤等も使用することができる。
表面張力を下げて固体状又は半固溶状の凝集処理剤層上でのぬれ性を高め、拡がり率を増加させることができる。
本発明のインクの表面張力は、10〜50mN/mであることが好ましく、浸透性記録媒体への浸透性、液滴の微液滴化、及び吐出性の両立の観点からは、15〜45mN/mであることが更に好ましい。
本発明のインクの粘度は、1.0〜20.0cPであることが好ましい。
その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、等も添加することができる。
〔処理液〕
本発明に係る処理液(凝集処理液)として、インクのpHを変化させることにより、インクに含有される顔料およびポリマー微粒子を凝集させ、凝集物を生じさせるような処理液が好ましい。
処理液の成分として、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ビリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等の中から選ばれることが好ましい。
また、本発明に係る処理液の好ましい例として、多価金属塩あるいはポリアリルアミンを添加した処理液を挙げることができる。これらの化合物は、1種類で使用されてもよく、2種類以上併用されてもよい。
本発明に係る処理液はインクとのpH凝集性能の観点からpHは1〜6であることが好ましく、pHは2〜5であることがより好ましく、pHは3〜5であることが特に好ましい。
本発明に係る処理液の中における、インクの顔料およびポリマー微粒子を凝集させる成分の添加量としては、液体の全重量に対し、0.01重量%以上20重量%以下であることが好ましい。0.01重量%以下の場合は処理液とインクが接触時に、濃度拡散が十分に進まずpH変化による凝集作用が十分に発生しないことがある。また20重量%以上であると、インクジェットヘッドからの吐出性が悪化することがある。
本発明に係る処理液は、乾燥によってインクジェットヘッドのノズルが詰まるのを防止する目的から、水、その他添加剤溶性有機溶媒を含有することが好ましい。このような水、その他添加剤溶性有機溶媒には、湿潤剤及び浸透剤が含まれる。
これらの溶媒は、水,その他添加剤と共に単独若しくは複数を混合して用いることができる。
水、その他添加剤溶性有機溶媒の含有量は処理液の全重量に対し、60重量%以下であることが好ましい。60重量%以上よりも多い場合は処理液の粘度が増加し、インクジェットヘッドからの吐出性が悪化することがある。
処理液には、定着性および耐擦性を向上させるため、樹脂成分をさらに含有してもよい。樹脂成分は、処理液をインクジェット方式によって打滴する場合ヘッドからの吐出性を損なわないもの、保存安定性があるものであればよく、水溶性樹脂や樹脂エマルジョンなどを自由に用いることができる。
樹脂成分としては、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、ビニル系、スチレン系等が考えられる。定着性向上といった機能を充分に発現させるには、比較的高分子のポリマーを高濃度1重量%〜20重量%に添加することが必要である。しかし、上記材料を液体に溶解させて添加しようとすると高粘度化し、吐出性が低下する。適切な材料を高濃度に添加し、かつ粘度上昇を抑えるには、ラテックスとして添加する手段が有効である。ラテックス材料としては、アクリル酸アルキル共重合体、カルボキシ変性SBR(スチレン−ブタジエンラテックス)、SIR(スチレン−イソプレン)ラテックス、MBR(メタクリル酸メチル−ブタジエンラテックス)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンラテックス)、等が考えられる。ラテックスのガラス転移点Tgはプロセス上、定着時に影響の強い値で、常温保存時の安定性と加熱後の転写性を両立するために、50℃以上120℃以下であることが好ましい。さらに最低造膜温度MFTはプロセス上、定着時に影響の強い値で、低温で充分な定着を得る為に100℃以下、さらに好ましくは50℃以下である。
インクと逆極性のポリマー微粒子を処理液に含ませ、インク中の顔料及びポリマー微粒子と凝集させることによってさらに凝集性を高めてもよい。
また、インクに含まれるポリマー微粒子成分に対応した硬化剤を処理液に含有し、二液が接触後、インク成分中の樹脂エマルジョンが凝集するとともに架橋又は重合するようにして、凝集性を高めてもよい。
本発明に係る処理液は、界面活性剤を含有することができる。
界面活性剤の例としては、炭化水素系では脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好ましい。
更に、特開昭59−157636号の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも使うことができる。また、特開2003−322926号、特開2004−325707号、特開2004−309806号の各公報に記載されているようなフッ素(フッ化アルキル系)系、シリコーン系の界面活性剤も用いることができる。これら表面張力調整剤は消泡剤としても使用することができ、フッ素系、シリコーン系化合物やEDTAに代表されるキレート剤等も使用することができる。
表面張力を下げて記録媒体上でのぬれ性を高めるのに効果がある。また、インクを先立って打滴する場合においてもインク上でのぬれ性を高め、二液の接触面積の増加により効果的に凝集作用がすすむ。
本発明に係る処理液の表面張力は、10〜50mN/mであることが好ましく、浸透性記録媒体への浸透性、液滴の微液滴化、及び吐出性の両立の観点からは、15〜45mN/mであることが更に好ましい。
本発明に係る処理液の粘度は、1.0〜20.0cPであることが好ましい。
その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線、吸収剤、等も添加することができる。
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明に係る画像形成装置の一実施形態(第1の実施形態)としてインクジェット記録装置の概略を示す全体構成図である。
図1に示すインクジェット記録装置100は、インク及び処理液(凝集処理液)を用いて、枚葉紙からなる記録媒体114上に画像形成を行う2液凝集方式が適用された記録装置である。本例では、記録媒体114として、特菱アート紙(アート紙)を用いているが、特にこれに限定されるものではなく、各種媒体への適用が可能である。
インクジェット記録装置100は、主として、記録媒体114を供給する給紙部102と、記録媒体114に対して浸透抑制剤を付与する浸透抑制層形成部104と、記録媒体114に処理液を付与する処理液付与部106と、記録媒体114に色インクを打滴するインク打滴部(印字部)108と、色インクが打滴された記録媒体114の乾燥を行う乾燥部110と、記録媒体114上に形成された画像を定着させる定着部112と、画像が形成された記録媒体114を搬送して排出する排紙部113とを備えて構成される。
図示は省略するが、記録媒体114の搬送機構を構成する各圧胴126A〜126E、及びこれらに隣接して設けられる各渡し胴124A〜124Eには、それぞれ、記録媒体114の先端を保持する保持爪(グリッパ)が1又は複数形成されており、圧胴及び渡し胴の各保持爪間で記録媒体114の受け渡しが行われる。保持爪の構成については公知のものを適用すればよいため、ここでは説明を省略する。
給紙部102には、記録媒体114を積載する給紙台120が設けられている。給紙台120の前方(図1において左側)にはフィーダボード122が接続されており、給紙台120に積載された記録媒体114は1番上から順に1枚ずつフィーダボード122に送り出される。フィーダボード122に送り出された記録媒体114は、渡し胴124Aを介して浸透抑制層形成部104の圧胴126Aに受け渡される。
浸透抑制層形成部104は、処理液及びインクに含まれる水及び親水的な有機溶剤の記録媒体114への浸透を抑制する浸透抑制剤を付与する。浸透抑制剤としては、溶液中に樹脂をエマルジョンの形で分散、もしくは樹脂を溶解させたものを用いる。溶媒としては、有機溶剤または水を用いる。有機溶剤としては、メチルエチルケトン、石油類、等が好適に用いられる。記録用紙の温度T1を樹脂の最低造膜温度Tf1より高くしておく。Tf1とT1との差はおよそ10〜20℃が好ましい。これにより、樹脂が記録媒体114に付着後、即座に良好な膜を形成し、後から記録媒体114に付与されるインク及び処理液の溶媒の記録媒体114内部への浸透を良好に抑制することができる。記録媒体114の温度の調整は、圧胴126A内部にヒータ等の発熱体を設置するという方法や、記録媒体114の表面(上面)から熱風を当てる方法、赤外線ヒータ等を用いた加熱等があり、これらを組み合わせても良い。
記録媒体114のカールが発生しにくい場合は、浸透抑制層形成部104を省略することも可能である。例えば、記録媒体114の種類に応じて浸透抑制剤の付与量(浸透抑制剤を付与しない場合を含む)を制御するようにしてもよい。
浸透抑制層形成部104には、圧胴126Aの回転方向(図1において反時計回り方向)の上流側から順に、圧胴126Aの表面に対向する位置に、用紙予熱ユニット128、浸透抑制剤吐出ヘッド130、及び浸透抑制剤乾燥ユニット132がそれぞれ設けられている。
用紙予熱ユニット128及び浸透抑制剤乾燥ユニット132には、それぞれ所定の範囲で温度や風量を制御可能な熱風乾燥機が設けられる。圧胴126Aに保持された記録媒体114が、用紙予熱ユニット128や浸透抑制剤乾燥ユニット132に対向する位置を通過する際、熱風乾燥機によって加熱された空気(熱風)が記録媒体114上に吹き付けられる構成となっている。
浸透抑制剤吐出ヘッド130は、圧胴126Aに保持される記録媒体114に対して浸透抑制剤を打滴するものであり、後述するインク打滴部108の各インク吐出ヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bと同一構成が適用される。
本例では、記録媒体114の表面に対して浸透抑制剤を付与する手段として、インクジェットヘッドを適用したが、これに限定されず、例えば、スプレー方式、塗布方式などの各種方式を適用することも可能である。これらの中でも、本例のようにインクジェット方式により浸透抑制剤を付与する態様が好ましく、各インク吐出ヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bによる各色インクの打滴位置及びその周辺のみに選択的に浸透抑制剤を付与することができる。
浸透抑制層形成部104に続いて処理液付与部106が設けられている。浸透抑制層形成部104の圧胴126Aと処理液付与部106の圧胴126Bとの間には、これらに対接するようにして渡し胴124Bが設けられており、圧胴126Aに保持された記録媒体114は、浸透抑制剤が付与された後、渡し胴124Bを介して圧胴126Bに受け渡される。
処理液付与部106には、圧胴126Bの回転方向(図1において反時計回り方向)の上流側から順に、圧胴126Bの表面に対向する位置に、用紙予熱ユニット134、処理液吐出ヘッド136、及び処理液乾燥ユニット138がそれぞれ設けられている。
処理液付与部106の各部(用紙予熱ユニット134、処理液吐出ヘッド136、及び処理液乾燥ユニット138)については、上述した浸透抑制層形成部104の用紙予熱ユニット128、浸透抑制剤吐出ヘッド130、及び浸透抑制剤乾燥ユニット132とそれぞれ同様の構成が適用されるため、ここでは説明を省略する。もちろん、浸透抑制層形成部104と異なる構成を適用することも可能である。
本例では、圧胴126Bの直径は540mmであり、記録媒体114の全面に対して処理液が厚み5μmで付与される。
本例で用いられる処理液は、後段のインク打滴部108に配置される各インク吐出ヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bから記録媒体114に向かって吐出されるインクに含有される色材を凝集させる作用を有する酸性液である。
処理液乾燥ユニット138には、所定の範囲で温度や風量を制御可能な熱風乾燥機が設けられており、圧胴126Bに保持された記録媒体114が処理液乾燥ユニット138の熱風乾燥機に対向する位置を通過する際、熱風乾燥機によって加熱された空気(熱風)が記録媒体114上の処理液に吹き付けられる構成となっている。
熱風乾燥機の温度や風量は、圧胴126Bの回転方向上流側に配置される処理液吐出ヘッド136により記録媒体114上に付与された処理液を乾燥させて、記録媒体114の表面上に固体状又は半固溶状の凝集処理剤層(処理液が乾燥した薄膜層)が形成されるような値に設定される。本例では、70℃の熱風にて1秒間の乾燥が行われる。
本明細書において、「固体状または半固溶状の凝集処理剤(凝集処理剤層)」とは、以下に定義する凝集処理剤(凝集処理剤層)の含溶媒率が0〜70%の範囲のものを指す。
また、「凝集処理剤」は、固体状又は半固溶状のものだけでなく、それ以外の液体状のものも含む広い概念で用いるものとし、特に、含溶媒率を70%以上として液体状にした凝集処理剤を「凝集処理液」と称する。
凝集処理剤の含溶媒率の算出方法としては、所定の大きさ(例えば100mm×100mm)の用紙を切り出し、処理液付与後の総重量(用紙+乾燥前処理液)と処理液乾燥後の総重量(用紙+乾燥後処理液)をそれぞれ測定し、これらの差分から乾燥による溶媒減少量(溶媒蒸発量)を求める。また、乾燥前の処理液中に含まれる溶媒量は、処理液の調製処方から求められる計算値を用いればよい。これらの計算結果から含溶媒率を得ることができる。
図2(a)に示すように、記録媒体114の表面上に処理液の液体層(処理液層)156が存在した状態でインク液滴158が打滴されると、処理液層156中にインク色材(インクドット)159が浮遊して移動してしまい、画像品質の劣化を招く要因となる。そこで、図1に示すインクジェット記録装置100では、色材移動(ドット浮遊)による画像劣化を防止するために、記録媒体114上にインク液滴を打滴する前に、記録媒体114上の処理液を乾燥させて、記録媒体114上に固体状又は半固溶状の凝集処理剤層156’を形成する(図2(b)参照)。
ここで、記録媒体114上の処理液(凝集処理剤層)の含溶媒率を変化させたときの色材移動についての評価結果を表1に示す。
表1に示すように、処理液の乾燥を行わなかった場合(実験1)、色材移動による画像劣化が発生する。
これに対し、処理液の乾燥を行った場合(実験2〜5)において、処理液の含溶媒率が70%以下となるまで処理液を乾燥させたときには色材移動が目立たなくなり、更に50%以下まで処理液を乾燥させると目視による色材移動の確認ができないほど良好なレベルとなり、画像劣化の防止に有効であることが確認された。
このように記録媒体114上の処理液の含溶媒率が70%以下(好ましくは50%以下)となるまで乾燥を行って、記録媒体114上に固体状又は半固溶状の凝集処理剤層を形成することにより、色材移動による画像劣化を防止することができる。
本例の如く、記録媒体114上に処理液が付与される前に、用紙予熱ユニット134によって記録媒体114を予備加熱する態様が好ましい。この場合、処理液の乾燥に要する加熱エネルギーを低く抑えることが可能となり、省エネルギー化を図ることができる。
処理液付与部106に続いてインク打滴部108が設けられている。処理液付与部106の圧胴126Bとインク打滴部108の圧胴126Cとの間には、これらに対接するようにして渡し胴124Cが設けられており、圧胴126Bに保持された記録媒体114は、処理液が付与されて固体状又は半固溶状の凝集処理剤層が形成された後に、渡し胴124Cを介して圧胴126Cに受け渡される。このとき、渡し胴124Cで記録媒体114上の処理液層(凝集処理剤層)を追加乾燥(例えば60℃で加熱)する態様も好ましい。
インク打滴部108には、圧胴126Cの回転方向(図1において反時計回り方向)の上流側から順に、圧胴126Cの表面に対向する位置に、CMYKRGBの7色のインクにそれぞれ対応したインク吐出ヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bが並んで設けられている。
各インク吐出ヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bは、上述した浸透抑制剤吐出ヘッド130や処理液吐出ヘッド136と同様に、インクジェット方式の記録ヘッド(インクジェットヘッド)が適用される。即ち、各インク吐出ヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bは、それぞれ対応する色インクの液滴を圧胴126Cに保持された記録媒体114に向かって吐出する。
インク貯蔵/装填部(不図示)は、各インク吐出ヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bにそれぞれ供給するインクを各々貯蔵するインクタンクを含んで構成される。各インクタンクは所要の流路を介してそれぞれ対応するヘッドと連通されており、各インク吐出ヘッドに対してそれぞれ対応するインクを供給する。インク貯蔵/装填部は、タンク内の液体残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
インク貯蔵/装填部の各インクタンクから各インク吐出ヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bにインクが供給され、画像信号に応じて各140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bから記録媒体114に対してそれぞれ対応する色インクが打滴される。
各インク吐出ヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bは、それぞれ圧胴126Cに保持される記録媒体114における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有し、そのインク吐出面には画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズル(図1中不図示、図3に符号161で図示)が複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている。各インク吐出ヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bが圧胴126Cの回転方向(記録媒体114の搬送方向)と直交する方向に延在するように固定設置される。
記録媒体114の画像形成領域の全幅をカバーするノズル列を有するフルラインヘッドがインク色毎に設けられる構成によれば、記録媒体114の搬送方向(副走査方向)について、記録媒体114と各インク吐出ヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bを相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち1回の副走査で)、記録媒体114の画像形成領域に1次画像を記録することができる。これにより、記録媒体114の搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシリアル(シャトル)型ヘッドが適用される場合に比べて高速印字が可能であり、プリント生産性を向上させることができる。
本例のインクジェット記録装置100は、最大菊半サイズの記録媒体(記録用紙)までの記録が可能であり、圧胴126Cとして、記録媒体幅720mmに対応した直径810mmのドラムが用いられる。インク打滴時のドラム回転周速度は、530mm/secである。また、各インク吐出ヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bのインク吐出体積は2plであり、記録密度は主走査方向(記録媒体114の幅方向)及び副走査方向(記録媒体114の搬送方向)ともに1200dpiである。
また、本例では、CMYKRGBの7色の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
インク打滴部108に続いて乾燥部110が設けられている。インク打滴部108の圧胴126Cと乾燥部110の圧胴126Dとの間には、これらに対接するように渡し胴124Dが設けられており、圧胴126Cに保持された記録媒体114は、各色インクが付与された後に、渡し胴124Dを介して圧胴126Dに受け渡される。
本発明の特徴的部分である乾燥部110の具体的な構成については後で詳説するが、乾燥部110には、圧胴126Dの回転方向(図1において反時計回り方向)の上流側から順に、圧胴126Dの表面に対向する位置に、第1〜第4の送風ファン142A、142B、142C、142Dが設けられる。また、圧胴126Dを挟んで各送風ファン142A、142B、142C、142Dの反対側には、圧胴126Dの表面を加熱するためのIRヒータ144が設けられる。
記録媒体114の表面上に形成された固体状又は半固溶状の凝集処理剤層上にインク液滴が打滴されると、記録媒体114上にはインク凝集体(色材凝集体)が形成されるとともに、色材と分離されたインク溶媒が広がり、凝集処理剤が溶解した液体層が形成される。このようにして記録媒体114上に残った溶媒成分(液体成分)は、記録媒体114のカールだけでなく、画像劣化を招く要因となる。そこで、本例では、各インク吐出ヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bからそれぞれ対応する色インクが記録媒体114上に打滴された後、IRヒータ144で圧胴126Dの表面を加熱しつつ、各送風ファン142A、142B、142C、142Dから記録媒体114の表面(画像形成面)に風を吹き付けることにより、溶媒成分を蒸発させ、記録媒体114の乾燥を行っている。
乾燥部110に続いて定着部112が設けられている。乾燥部110の圧胴126Dと定着部112の圧胴126Eとの間には、これらに対接するように渡し胴124Eが設けられており、圧胴126Dに保持された記録媒体114は、各送風ファン142A、142B、142C、142Dによって乾燥が行われた後に、渡し胴124Eを介して圧胴126Eに受け渡される。
定着部112には、圧胴126Eの回転方向(図1において反時計回り方向)の上流側から順に、圧胴126Eの表面に対向する位置に、インク打滴部108による印字結果を読み取る印字検出部146、加熱ローラ148A、148Bがそれぞれ設けられている。
印字検出部146は、インク打滴部108の印字結果(各インク吐出ヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bの打滴結果)を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ等)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
加熱ローラ148A、148Bは、所定の範囲(例えば100℃〜180℃)で温度制御可能なローラであり、加熱ローラ148A、148Bと圧胴126Eとの間に挟みこまれた記録媒体114を加熱加圧しながら、記録媒体114上に形成された画像を定着させる。
本例では、加熱ローラ148A、148Bの加熱温度は110℃、圧胴126Eの表面温度は60℃に設定される。また、加熱ローラ148A、148Bのニップ圧力は1MPaである。加熱ローラ148A、148Bの加熱温度は、処理液又はインクに含有されるポリマー微粒子のガラス転移点温度などに応じて設定することが好ましい。
定着部112に続いて排紙部113が設けられている。排紙部113には、画像が定着された記録媒体114を受ける排紙胴150と、該記録媒体114を積載する排紙台152と、排紙胴150に設けられたスプロケットと排紙台152の上方に設けられたスプロケットとの間に掛け渡され、複数の排紙用グリッパを備えた排紙用チェーン154とが設けられている。
次に、インク打滴部108に配置されるインク吐出ヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bの構造について詳説する。なお、インク吐出ヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号160によってインク吐出ヘッド(以下、単に「ヘッド」と称することもある。)を示すものとする。
図3(a)はヘッド160の構造例を示す平面透視図であり、図3(b)はその一部の拡大図であり、図3(c)はヘッド160の他の構造例を示す平面透視図である。また、図4はインク室ユニットの立体的構成を示す断面図(図3(a)、(b)中のIV−IV線に沿う断面図)である。
記録媒体114上に形成されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド160におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド160は、図3(a)、(b)に示すように、インク滴の吐出孔であるノズル161と、各ノズル161に対応する圧力室162等からなる複数のインク室ユニット163を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(記録媒体搬送方向と直交する主走査方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
記録媒体114の搬送方向と略直交する方向に記録媒体114の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図3(a)の構成に代えて、図3(c)に示すように、複数のノズル161が2次元に配列された短尺のヘッドブロック160’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録媒体114の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。また、図示は省略するが、短尺のヘッドを一列に並べてラインヘッドを構成してもよい。
各ノズル161に対応して設けられている圧力室162は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル161と供給口164が設けられている。各圧力室162は供給口164を介して共通流路165と連通されている。共通流路165はインク供給源たるインク供給タンク(不図示)と連通しており、該インク供給タンクから供給されるインクは共通流路165を介して各圧力室162に分配供給される。
圧力室162の天面を構成し共通電極と兼用される振動板166には個別電極167を備えた圧電素子168が接合されており、個別電極167に駆動電圧を印加することによって圧電素子168が変形してノズル161からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路165から供給口164を通って新しいインクが圧力室162に供給される。
本例では、ヘッド160に設けられたノズル161から吐出させるインクの吐出力発生手段として圧電素子168を適用したが、圧力室162内にヒータを備え、ヒータの加熱による膜沸騰の圧力を利用してインクを吐出させるサーマル方式を適用することも可能である。
かかる構造を有するインク室ユニット163を図3(b)に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
即ち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット163を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなり、主走査方向については、各ノズル161が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
なお、本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されず、副走査方向に1列のノズル列を有する配置構造など、様々なノズル配置構造を適用できる。
また、本発明の適用範囲はライン型ヘッドによる印字方式に限定されず、記録媒体114の幅方向(主走査方向)の長さに満たない短尺のヘッドを記録媒体114の幅方向に走査させて当該幅方向の印字を行い、1回の幅方向の印字が終わると記録媒体114の幅方向と直交する方向(副走査方向)に所定量だけ移動させて、次の印字領域の記録媒体114の幅方向の印字を行い、この動作を繰り返して記録媒体114の印字領域の全面にわたって印字を行うシリアル方式を適用してもよい。
図5は、インクジェット記録装置100のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置100は、通信インターフェース170、システムコントローラ172、メモリ174、モータドライバ176、ヒータドライバ178、プリント制御部180、画像バッファメモリ182、ヘッドドライバ184等を備えている。
通信インターフェース170は、ホストコンピュータ186から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース170にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ186から送出された画像データは通信インターフェース170を介してインクジェット記録装置100に取り込まれ、一旦メモリ174に記憶される。
メモリ174は、通信インターフェース170を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ172を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ174は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ172は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置100の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。即ち、システムコントローラ172は、通信インターフェース170、メモリ174、モータドライバ176、ヒータドライバ178等の各部を制御し、ホストコンピュータ186との間の通信制御、メモリ174の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ188やヒータ189を制御する制御信号を生成する。
メモリ174には、システムコントローラ172のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。なお、メモリ174は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。メモリ174は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
プログラム格納部190には各種制御プログラムが格納されており、システムコントローラ172の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。プログラム格納部190はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記録媒体のうち、複数の記録媒体を備えてもよい。なお、プログラム格納部190は動作パラメータ等の記録手段(不図示)と兼用してもよい。
モータドライバ176は、システムコントローラ172からの指示にしたがってモータ188を駆動するドライバである。図5には、装置内の各部に配置されるモータ(アクチュエータ)を代表して符号188で図示されている。例えば、図5に示すモータ188には、図1の圧胴126A〜126Eや渡し胴124A〜124E、排紙胴150を駆動するモータなどが含まれている。
ヒータドライバ178は、システムコントローラ172からの指示にしたがって、ヒータ189を駆動するドライバである。図5には、インクジェット記録装置100に備えられる複数のヒータを代表して符号189で図示されている。例えば、図5に示すヒータ189には、図1に示す用紙予熱ユニット128、134、浸透抑制剤乾燥ユニット132、処理液乾燥ユニット138、溶媒乾燥ユニット142a、142bに内蔵されるヒータ、IRヒータ144などが含まれている。
乾燥制御部179は、システムコントローラ172からの指示にしたがって、乾燥部110の各送風ファン142(142A〜142D)の風量を制御する。具体的には、各送風ファン142の回転速度や動作時間(又は動作間隔)などを制御することによって風量を調節している。後述するように、排気用ファンを有する排気口が設けられる態様の場合には、排気用ファンの回転速度や動作時間(又は動作間隔)なども制御するようにしてもよい。また、記録媒体の種類やインクの種類ごとに、各ファンの最適な回転速度などを予め求め、データテーブル化して所定のメモリ(例えば、メモリ174)に記憶しておき、記録媒体114の情報や使用インクの情報を取得すると、当該メモリを参照して各ファンの回転速度などを制御するようにしてもよい。
プリント制御部180は、システムコントローラ172の制御に従い、メモリ174内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッドドライバ184に供給する制御部である。プリント制御部180において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいて、ヘッドドライバ184を介してヘッド192の吐出液滴量(打滴量)や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。なお、図5には、インクジェット記録装置100に備えられる複数のヘッド(インクジェットヘッド)を代表して符号192で図示されている。例えば、図5に示すヘッド192には、図1の浸透抑制剤吐出ヘッド130、処理液吐出ヘッド136、インク吐出ヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bが含まれている。
また、プリント制御部180には画像バッファメモリ182が備えられており、プリント制御部180における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ182に一時的に格納される。また、プリント制御部180とシステムコントローラ172とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ184は、プリント制御部180から与えられる画像データに基づいてヘッド192の圧電素子168に印加される駆動信号を生成するとともに、該駆動信号を圧電素子168に印加して圧電素子168を駆動する駆動回路を含んで構成される。なお、図5に示すヘッドドライバ184には、ヘッド192の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
印字検出部144は、図1で説明したように、ラインセンサを含むブロックであり、記録媒体114に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部180に提供する。プリント制御部180は、必要に応じて印字検出部144から得られる情報に基づいてヘッド192に対する各種補正を行う。
次に、本発明の特徴的部分である乾燥部110の構成について詳説する。
図6及び図7は、図1に示したインクジェット記録装置100の乾燥部周辺部を示した要部構成図及びその斜視図である。なお、説明の便宜上、図6及び図7では一部を簡略的に表示している(図8〜15も同様)。
図6に示すように、乾燥部110には、圧胴(以下、「乾燥胴」という。)126Dの回転方向(図1において反時計回り方向)の上流側から順に、乾燥胴126Dの表面に対向する位置に、第1〜第4の送風ファン142A、142B、142C、142D(本発明の「送風手段」にそれぞれ相当)が設けられるとともに、圧胴126Dを挟んで各送風ファン142A〜142Dの反対側には、圧胴126Dの表面を加熱するためのIRヒータ144が設けられている。
各送風ファン142A〜142Dは、これらの各送風方向S1〜S4が、それぞれ対応する記録媒体114上の送風位置P1〜P4における法線方向N1〜N4(乾燥胴126Dの中心Cと各送風位置を結ぶ直線方向)よりも記録媒体搬送方向(乾燥胴126Dの回転方向)下流側に斜めに傾いた状態となるように配置されている。したがって、各送風ファン142A〜142Dから乾燥胴126Dの保持爪200によって先端が保持された記録媒体114に対し、記録媒体搬送方向下流側から上流側に向かって送風が行われるので、記録媒体114の後端部がめくれることなく、記録媒体114は乾燥胴126Dの表面に密着する。この結果、記録媒体114のめくれによる搬送不良(ジャム)を防止しつつ、記録媒体114の乾燥を行うことができる。
ここで、記録媒体114上の各送風位置P1〜P4における法線方向N1〜N4に対する各送風ファン142A〜142Dの送風方向S1〜S4の傾斜角度(以下、「送風角度」という。)をそれぞれα1〜α4と定義する。このとき、図6に示すように、乾燥胴126D上の送風位置における法線方向よりも送風ファンが記録媒体搬送方向下流側に斜めに傾いて配置されたときの送風角度を正の値で表し、その反対側(記録媒体搬送方向上流側)に傾いて配置されたときの送風角度を負の値で表す。
本実施形態においては、各送風ファン142A〜142Dの送風角度α1〜α4はいずれも同じ角度(例えば20°)に設定されているが、本発明は特にこれに限定されるものではなく、各送風角度α1〜α4の一部が異なっていてもよいし、全てが異なっていてもよい。また、後述する実施形態のように、各送風ファン142A〜142Dの送風角度α1〜α4が記録媒体搬送方向上流側から下流側になるにつれて徐々に大きくなる態様もある(即ち、α1<α2<α3<α4)。
また、本発明の実施に際しては、記録媒体搬送方向に沿って少なくとも2個の送風ファンが設けられていればよく、例えば、記録媒体搬送方向に沿って3個の送風ファンが設けられていてもよい。
各送風ファン142A〜142Dが所定温度(好ましくは40〜100℃、より好ましくは60〜80℃)に加熱された温風(例えば70℃の温風)を記録媒体114に対して送風する態様が好ましい。記録媒体114の乾燥を短時間で行うことができ、記録速度の高速化を図ることができる。
乾燥胴126Dの軸方向(記録媒体搬送方向に直交する方向(記録媒体幅方向);図6において紙面表裏方向)には、図7に示すように、同一の送風角度に設定された送風ファンが複数設けられている。例えば、同一の送風角度α1に設定された第1の送風ファン142A-1、・・・、142A-6が乾燥胴126Dの軸方向に沿って設けられている。他の送風ファン142B〜142Cについても同様である。乾燥胴126Dの軸方向に沿って設けられる送風ファンの個数は特に限定されるものではないが、記録媒体114の最大幅に対応するように複数の送風ファンが設けられている態様が好ましく、記録媒体幅方向における乾燥ムラを低減することができる。
図6に示すように、IRヒータ144は、乾燥胴126Dの表面に対向する位置、具体的には、乾燥胴126Dを挟んで各送風142A〜142Dとは反対側の位置に設けられており、乾燥胴126Dの表面(記録媒体保持面)を所定温度に加熱(昇温)する温調手段として機能する。このIRヒータ144は50〜80℃の範囲で温調可能であり、例えば、乾燥胴126Dの表面が70℃に温調される。乾燥胴126Dの表面を温調する手段として、IRヒータ以外の非接触式の温調手段を適用してもよいし、また、ロールヒータなどの接触式の温調手段を適用することも可能である。
次に、本実施形態のインクジェット記録装置100の作用について説明する。
まず、給紙部102の給紙台120からフィーダボード122に記録媒体114が送り出されると、その記録媒体114は、渡し胴124Aを介して、浸透抑制層形成部104の圧胴126Aに保持され、用紙予熱ユニット128によって予備加熱され、浸透抑制剤吐出ヘッド130によって浸透抑制剤が打滴される。その後、圧胴126Aに保持された記録媒体114は、浸透抑制剤乾燥ユニット132によって加熱され、浸透抑制剤の溶媒成分(液体成分)が蒸発し、乾燥する。
こうして表面に浸透抑制層が形成された記録媒体114は、浸透抑制層形成部104の圧胴126Aから渡し胴124Bを介して、処理液付与部106の圧胴126Bに受け渡される。圧胴126Bに保持された記録媒体114は、用紙予熱ユニット134によって予備加熱され、処理液吐出ヘッド136によって処理液が打滴される。その後、圧胴126Bに保持された記録媒体114は、処理液乾燥ユニット138によって加熱され、処理液の溶媒成分(液体成分)が蒸発し、乾燥する。これにより、記録媒体114上には固体状又は半固溶状の凝集処理剤層が形成される。
このようにして記録媒体114の表面上に固体状又は半固溶状の凝集処理剤層が形成された後、処理液付与部106の圧胴126Bに保持された記録媒体114は、処理液付与部106の圧胴126Bから渡し胴124Cを介して、インク打滴部108の圧胴126Cに受け渡される。圧胴126Cに保持された記録媒体114には、入力画像データに応じて、各インク吐出ヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bからそれぞれ対応する色インクが打滴される。
各インク吐出ヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bから打滴されたインク液滴は、記録媒体114上に形成された固体又は半固溶状の凝集処理剤層の表面に着弾する。このとき、飛翔エネルギーと表面エネルギーとのバランスにより、インク液滴と凝集処理剤層との接触面が所定の面積にて着弾する。インク液滴が凝集処理剤層上に着弾した直後に凝集反応が始まるが、凝集反応はインク液滴と凝集処理剤層との接触面から始まる。凝集反応は接触面近傍のみで起こり、インク着弾時における所定の接触面積で付着力を得た状態でインク内の色材が凝集されるため、色材移動が抑止される。
このインク液滴に隣接して他のインク液滴が着弾しても先に着弾したインクの色材は既に凝集化しているので後から着弾するインクとの間で色材同士が混合せず、ブリードが抑止される。なお、色材の凝集後には、分離されたインク溶媒が広がり、凝集処理剤が溶解した液体層が記録媒体114上に形成される。
インク打滴部108によって色インクが付与された記録媒体114は、インク打滴部108の圧胴126Cから渡し胴124Dを介して、乾燥部110の乾燥胴126Dに受け渡される。乾燥胴126Dに保持された記録媒体114には、各送風ファン142A〜142Dから風が吹き付けられ、記録媒体114上でインク凝集体と分離した溶媒成分(液体成分)は蒸発する。このようにして、記録媒体114の乾燥が行われる。この結果、記録媒体114のカールが防止されるとともに、溶媒成分に起因する画像品質の劣化を抑えることができる。
更に詳しく説明すると、乾燥胴126Dの保持爪200によって先端が保持された記録媒体114には、各送風ファン142A〜142Dによって記録媒体搬送方向下流側から上流側に向かって送風が行われるので、記録媒体114の後端部がめくれることなく、円弧状(ドラム状)の乾燥胴126Dの表面に記録媒体114が確実に密着する。このとき、乾燥胴126Dの表面はIRヒータ144によって所定温度に温調されているので、乾燥胴126Dの表面に密着した記録媒体114は、乾燥胴126の表面温度と略同一温度に加熱される。したがって、記録媒体114のめくれによる搬送不良(ジャム)を防止しつつ、記録媒体114から液体成分(溶媒成分)を素早く除去することができ、乾燥ムラが生じることなく、記録媒体114の乾燥を短時間で効率的に行うことができる。
なお、記録媒体114の乾燥ムラが発生するのは、乾燥胴126Dが高温に温調されている場合において、乾燥胴126Dに対する記録媒体114の密着性が不十分な場合に顕著となる。これに対し、本実施形態によれば、各送風ファン142A〜142Dによって記録媒体搬送方向の下流側から上流側に向かって送風が行われるので、乾燥胴126Dに対する記録媒体114の密着性が高く、記録媒体114の乾燥ムラを確実に防止することができる。
乾燥部110によって乾燥が行われた記録媒体114は、乾燥部110の圧胴126Dから渡し胴124Eを介して、定着部112の圧胴126Eに受け渡される。圧胴126Eに保持された記録媒体114は、印字検出部144によってインク打滴部108の印字結果が読み取られた後、加熱ローラ148A、148Bによる加熱加圧によって記録媒体114上に形成された画像の定着が行われる。
このようにして画像が定着された記録媒体114は、圧胴126Eから排紙胴150に受け渡され、排紙用チェーン154によって排紙台152の上方に搬送され、排紙台152上に積載される。
このように本実施形態によれば、記録媒体114にインク液滴が打滴された後、乾燥胴126Dの保持爪200によって先端が保持されながら搬送される記録媒体114に対して、記録媒体搬送方向に沿って設けた各送風ファン142A〜142Dによって記録媒体搬送方向下流側から上流側に向かって送風が行われるので、記録媒体114の後端部がめくれることなく、乾燥胴126Dに対する記録媒体114の密着性を高くすることができる。この結果、記録媒体114のめくれによる搬送不良(ジャム)を防止しつつ、記録媒体の乾燥を行うことができる。
また、上述したように、各送風ファン142A〜142Dによる送風によって、乾燥胴126Dに対する記録媒体114の密着性が高まるので、温調手段であるIRヒータ144によって乾燥胴126Dの表面を所定温度に温調しておくことにより、記録媒体114を乾燥胴126Dの表面と略同一温度に均一加熱することができ、乾燥ムラが生じることなく記録媒体114の乾燥を効率的に促進させることが可能となる。
なお、本発明の効果は、本実施形態のように円筒状(ドラム状)の搬送部材が用いられる場合に顕著に発揮され、更に、剛性が高い記録媒体(厚紙など)が用いられる場合により顕著に発揮される。平板状の搬送部材(例えば、ベルト状部材など)が用いられる場合に比べて、円筒状の搬送部材が用いられる場には、記録媒体のめくれが発生しやすいためである。また、記録媒体の剛性が高いほど、その平面性を保とうとして円弧状の搬送部材の表面から浮き上がった状態になりやすいためである。したがって、本発明は、円筒状の搬送部材が用いられ、更に、剛性の大きい記録媒体が用いられる場合に、記録媒体のめくれをより効果的に防止することができる。
なお、本実施形態で用いた浸透抑制剤、処理液、及びインクの作製例を以下に示す。
<浸透抑制剤>
下記構造の分散安定用樹脂〔Q−1〕10g、酢酸ビニル100g、及びアイソパーH(エクソン社商品名)384gの混合溶液を窒素気流下で攪拌しながら温度70℃に加温した。重合開始剤として、2,2′−アゾビス(イソバレロニトリル)(略称A.I.V.N.)0.8gを加え、3時間反応した。開始剤を添加して20分後に白濁を生じ、反応温度は88℃まで上昇した。更に、該開始剤を0.5g加え、2時間反応した後、温度を100℃に上げ、2時間攪拌し、未反応の酢酸ビニルを留去した。冷却後200メッシュのナイロン布を通し、得られた白色分散物は重合率90%で平均粒径0.23μmの単分散性良好なラテックスであった。粒径はCAPA−500(堀場製作所(株)製)で測定した。
上記白色分散物の一部を遠心分離機(回転数1×104 r.p.m.、回転時間60分)にかけて、沈降した樹脂粒子分を補集、乾燥し、該樹脂粒子分の重量平均分子量(Mw)とガラス転移点(Tg)、最低造膜温度(MFT)を測定したところ、Mwは2×105(ポリスチレン換算GPC値)、Tgは38℃、MFTは28℃であった。
このようにして作製した浸透抑制剤溶液を記録用紙上に、付与した。付与時にはドラムにより記録用紙を加熱し、付与後には熱風を送風してアイソパーHを蒸発させた。
<処理液>
処理液は、以下の材料を混合して作製した。
・クエン酸(和光純薬製) 16.7%
・ジエチレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬製) 20.0%
・Zony1 FSN−100(デュポン社製) 1.0%
・イオン交換水 62.3%
このように調製された処理液の物性値を測定したところ、粘度4.9mPa・s、表面張力24.3mN/m、pH1.5であった。
<インク>
(ポリマー分散剤P−1の調整)
攪拌機、冷却管を備えた1000mlの三口フラスコにメチルエチルケトン88gを加え、窒素雰囲気下で72℃に加熱し、ここにメチルエチルケトン50gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.85g、ベンジルメタクリレート60g、メタクリル酸10g、メチルメタクリレート30gを溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間反応した後、メチルエチルケトン2gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.42gを溶解した溶液を加え、78℃に昇温し4時間加熱した。得られた反応溶液は大過剰量のヘキサンに2回再沈殿し、析出した樹脂を乾燥してポリマー分散剤P−1を96g得た。
得られた樹脂の組成は1H−NMRで確認し、GPCより求めた重量平均分子量(Mw)は44600であった。さらに、JIS規格(JISK0070:1992)記載の方法により、このポリマーの酸価を求めたところ、65.2mgKOH/gであった。
(シアン分散液の調製)
ピグメントブルー15:3(大日精化株式会社製 フタロシアニンブルーA220)を10部と、上記で得られたポリマー分散剤P−1を5部と、メチルエチルケトンを42部と、1mol/L NaOH水溶液を 5.5部と、イオン交換水87.2部とを混合し、ビーズミルで0.1mmΦジルコニアビーズを使い、2〜6時間分散した。
得られた分散物を減圧下55℃でメチルエチルケトンを除去し、さらに一部の水を除去することにより、顔料濃度が10.2質量%のシアン分散液を得た。
上記のようにして、色材としてのシアン分散液を調液した。
上記で得られた色材(シアン分散液)を用いて、下記インク組成となるように各成分を混合して、インク1を作製した。
(インクの組成)
シアン顔料(ピグメントブルー15:3) 4%
ポリマー分散剤(上記P−1) 2%
トリオキシプロピレングリセリエーテル 15%
(サンニックスGP250(三洋化成工業(株))
オルフィンE1010(日信化学製、界面活性剤) 1%
イオン交換水 78%
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。以下、第1の実施形態と共通する部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的な部分を中心に説明する。
第1の実施形態においては、各送風ファン142A〜142Dの各送風角度α1〜α4は、いずれも同一角度に設定されている。しかしながら、図6に示したように、各送風ファン142A〜142Dがインク吐出ヘッド160(140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140B)のノズル面(吐出面)と略同一の高さに配置されていると、インク吐出ヘッド160への風や熱の漏れによる影響によって、インク吐出ヘッド160の打滴位置のばらつきやノズル目詰まりなどの吐出不良が発生し、この結果、画像品質の劣化が生じることが懸念される。
また、第1の実施形態のようにインク吐出ヘッド160がラインヘッドである場合には、特に風や熱による影響を考慮する必要がある。記録媒体の幅方向に往復走査しながら記録を行うシリアル型(シャトル型)ヘッドに比べて、ラインヘッドは記録媒体の幅方向に固定された状態で記録を行うため、ヘッド付近の空気が拡散されず、風や熱の影響を受けやすいためである。したがって、ラインヘッドが用いられる場合には、ラインヘッド側への風や熱の流出を抑えることが望ましい。
図8は、第2の実施形態に係るインクジェット記録装置の乾燥部周辺部を示した要部構成図である。図8中、図6〜図7と共通する部分については同一番号を付している。
第2の実施形態は、図8に示すように、乾燥胴126Dの表面に対向する位置に、記録媒体搬送方向上流側から順に、第1〜第4の送風ファン142A〜142Dが設けられている点で第1の実施形態と共通するが、各送風ファン142A〜142Dの送風角度α1〜α4が互いに異なり、具体的には、記録媒体搬送方向上流側から下流側になるにつれて徐々に大きくなっている(即ち、α1<α2<α3<α4)。本例では、α1=20°、α2=30°、α3=40°、α4=50°であるが、もちろん、これに限定されるものではない。
第2の実施形態によれば、記録媒体搬送方向上流側の送風ファンの送風角度を小さくすることで、インク吐出ヘッド160側への風や熱の流出を抑えつつ、記録媒体搬送方向下流側の送風ファンの送風角度を大きくすることで、乾燥胴126Dに対する記録媒体114の密着性を確保することができ、記録媒体114のめくれによる搬送不良を防止することができる。
また、各送風ファン142A〜142Dの送風角度α1〜α4を録媒体搬送方向上流側から下流側になるにつれて徐々に大きくすることによって、各送風ファン142A〜142Dから吹き付けられた風が記録媒体114に反射して進行する方向を狭い範囲に集約することも可能となる。したがって、その集約される位置に排気口を設けることで排気効率を良くすることができ、乾燥部110の周辺部への風や熱の流出を防止することができる。
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。以下、第1及び第2の実施形態と共通する部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的な部分を中心に説明する。
図9は、第3の実施形態に係るインクジェット記録装置の乾燥部周辺部を示した要部構成図である。図9中、図6〜図8と共通する部分については同一番号を付している。
第3の実施形態は、図9に示すように、乾燥胴126Dの表面に対向する位置に、記録媒体搬送方向上流側から順に、第1〜第3の送風ファン142A〜142Cが設けられている点で第1及び第2の実施形態と共通するが、これら送風ファン142A〜142Cよりも記録媒体搬送方向上流側に、インク吐出ヘッド160側に風や熱が流出するのを防ぐための送風ファン202(本発明の「他の送風手段」に相当)が設けられている点で異なる。
送風ファン202の送風方向をS0、送風ファン202による記録媒体114上の送風位置をP0、送風位置P0における法線方向をN0、法線方向N0に対する送風方向S0の傾斜角度(送風角度)をα0とするとき、送風ファン202は、その送風角度α0が0°となるように配置されている。即ち、送風ファン202の送風方向S0は、それに対応する記録媒体114上の送風位置P0における法線方向N0と一致している。
第3の実施形態によれば、上記のように配置された送風ファン202によって、記録媒体搬送方向下流側の各送風ファン142A〜142Cから送風された風や熱をインク吐出ヘッド160とは反対側に押し戻す作用を得ることができるので、インク吐出ヘッド160側への風や熱の流出を防ぐことができる。
また、各送風ファン142A〜142Cの送風角度α1〜α3は、第2の実施形態と同様に、記録媒体搬送方向上流側から下流側になるにつれて徐々に大きくなるように構成されているので(即ち、α1<α2<α3)、第1の送風ファン142Aの送風角度α1が0°であっても、各送風ファン142A〜142Cによって、記録媒体114のめくれによる搬送不良を防止しつつ、記録媒体114の乾燥を行うことができる。
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。以下、第1〜第3の実施形態と共通する部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的な部分を中心に説明する。
図10は、第4の実施形態に係るインクジェット記録装置の乾燥部周辺部を示した要部構成図である。図10中、図6〜図9と共通する部分については同一番号を付している。
第4の実施形態は、図10に示すように、第1〜第3の送風ファン142A〜142Cよりも記録媒体搬送方向上流側に、インク吐出ヘッド160側に風や熱が流出するのを防ぐための送風ファン202が設けられている点で第3の実施形態と共通するが、送風ファン202の送風角度α0が負の値である点で異なる。
第4の実施形態によれば、第3の実施形態と同様に、送風ファン202によって、記録媒体搬送方向下流側の各送風ファン142A〜142Cから送風された風や熱をインク吐出ヘッド160とは反対側に押し戻すことができるので、インク吐出ヘッド160側への風や熱の流出を防ぐことができる。
但し、送風ファン202の送風角度α0の絶対値が大きすぎると(即ち、送風ファン202の送風方向S0を送風位置P0における法線方向N0よりも記録媒体搬送方向上流側に大きく傾けすぎると)、送風ファン202からの送風によって記録媒体114の後端部のめくれが発生することが懸念される。このため、送風ファン202の送風角度α0は、−20°以上0°以下(より好ましくは−10°以上0°以下、特に好ましくは−5°以上0°以下)であることが好ましい。この範囲であれば、送風ファン202による記録媒体114に対する影響は小さく、しかも、送風ファン202よりも記録媒体搬送方向下流側に配置される各送風ファン142A〜142Cによって、記録媒体114の後端部のめくれを確実に防止することができるので、搬送不良が起こることはない。
〔第5の実施形態〕
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。以下、第1〜第4の実施形態と共通する部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的な部分を中心に説明する。
図11は、第4の実施形態に係るインクジェット記録装置の乾燥部周辺部を示した要部構成図(乾燥胴周辺の拡大図)である。図11中、図6〜図10と共通する部分については同一番号を付している。
第5の実施形態は、乾燥胴126Dの表面に対向する位置に、記録媒体搬送方向上流側から順に、第1〜第4の送風ファン142A〜142Dが設けられ、各送風ファン142A〜142Dの送風角度α1〜α4が記録媒体搬送方向上流側から下流側になるにつれて徐々に大きくなる点で第2の実施形態と共通するが、図11(a)に示すように、各送風ファン142A〜142Dから吹き付けられた風が記録媒体114に反射して所定範囲に集約されるように各送風ファン142A〜142Dの送風角度α1〜α4が調節され、その集約位置に排気口204が設けられている点で異なる。排気口204には、1又は複数の排気ファンが設けられ、乾燥部110周辺の風や熱が装置外部に強制的に排出される。
図11(b)は、本実施形態の更に好ましい態様を示しており、各送風ファン142A〜142Dから吹き付けられた空気が記録媒体114に反射して排気口204の中央部に集約されるように構成されている。
第5の実施形態によれば、各送風ファン142A〜142Dから吹き付けられた風が記録媒体114に反射して排気口204(好ましくは中央部)に集約されるので、乾燥部110周辺の風や熱を装置外部に排出することができる。この結果、インク吐出ヘッド160側への風や熱の流出を抑えることができる。
〔第6の実施形態〕
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。以下、第1〜第5の実施形態と共通する部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的な部分を中心に説明する。
図12及び図13は、第6の実施形態に係るインクジェット記録装置の乾燥部周辺部を示した要部構成図及びその斜視図である。図12及び図13中、図6〜図11と共通する部材については同一番号を付している。
第6の実施形態は、図12及び図13に示すように、乾燥胴126Dの表面に対向する位置に、記録媒体搬送方向上流側から順に、第1〜第4の送風ファン142A〜142Dが設けられ、各送風ファン142A〜142Dの送風角度α1〜α4が記録媒体搬送方向上流側から下流側になるにつれて徐々に大きくなる点で第2の実施形態と共通するが、乾燥胴126Dとインク打滴部108の圧胴(以下、「IJ胴」という。)126Cとの間に遮風板206が設けられている点で異なる。
即ち、本実施形態においては、各送風ファン142A〜142Dとインク吐出ヘッド160との間に遮風板206が設けられており、各送風ファン142A〜142Dから記録媒体114に吹き付けられた風が、記録媒体114で反射してインク吐出ヘッド160側に向かったとしても遮風板206によって遮られる。このため、インク吐出ヘッド160側への風や熱の流出を防止することができる。
更に、本実施形態においては、遮風板206に当たった風を装置外部に排気できるように、遮風板206上部に排気口204が遮風板206に沿った位置に設けられている。図13に示すように、排気口204には複数の排気ファン208が設けられており、遮風板206に当たった風のみならず、乾燥部110内の風や熱を装置外部に強制的に排気することができる。
また、インク吐出ヘッド160側への風や熱の流出を確実に防止する観点から、遮風板206の先端部(図12の下端部)が、図12の破線で示されるように、記録媒体搬送方向の最上流側に配置される第1の送風ファン142Aに対応する送風位置P1の接線tよりも下側まで延出されている態様が好ましい。更に、遮風板206に当たった風がその上部に設けられる排気口204に向かうように、遮風板206の先端部(図12の下端部)が乾燥胴126D側に折り返されている態様が好ましい。乾燥胴126D、渡し胴124D、及びIJ胴126Cに遮風板206が接触することなく(即ち、非接触状態で)、インク吐出ヘッド160側への風や熱の流出を確実に防止することができる。
図12に示した例では、第1及び第2の送風ファン142A、142Bから吹き付けられた風は記録媒体114で反射して遮風板206に当たって排気口204に流れるように構成され、第3及び第4の排気ファン142C、142Dから吹き付けられた風は記録媒体114で反射して排気口204(好ましくは中央部)に集約されるように構成される。
このように第6の実施形態によれば、乾燥胴126DとIJ胴126Cとの間(即ち、各送風ファン142A〜142Dとインク吐出ヘッド160との間)に遮風板206が設けられ、各送風ファン142A〜142Dから吹き付けられた風が記録媒体114で反射しても遮風板206で遮られるので、インク吐出ヘッド160側への風や熱の流出による吐出不良を防止することができる。また、遮風板206の上部に排気口204が設けられるので、遮風板206で遮られた風や熱を装置外部に効率良く排気することができる。
〔第7の実施形態〕
次に、本発明の第7の実施形態について説明する。以下、第1〜第6の実施形態と共通する部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的な部分を中心に説明する。
図14は、第7の実施形態に係るインクジェット記録装置の乾燥部周辺部を示した要部構成図及びその斜視図である。図14中、図6〜図13と共通する部材については同一番号を付している。
第7の実施形態は、図14に示すように、乾燥胴126DとIJ胴126Cとの間に遮風板206が設けられている点で第6の実施形態と共通するが、乾燥胴126Dを挟んで各送風ファン142A〜142Dの反対側にIRヒータが設けられておらず、その代わりに、各送風ファン142A〜142Dの間にそれぞれIRヒータ210A〜210Cが設けられている点で異なる。
各IRヒータ210A〜210Cは、記録媒体114が搬送されていないときに乾燥胴126Dの表面を所定の温度(例えば50℃)に温調する。各IRヒータ210A〜210Cによる温調は、不図示の乾燥胴温調制御部で行われる。乾燥胴126Dを温調するタイミングとしては、例えば、装置使用開始時に行う。また、乾燥胴126Dの表面温度を検出する手段を設け、装置使用中に乾燥胴126Dの表面温度を常時一定間隔で検出しながら、乾燥胴126Dの表面温度が閾値を下回った場合には、各IRヒータ210A〜210Cによる温調を行うようにしてもよい。このように、乾燥胴126Dの表面温度に応じて、各IRヒータ210A〜210Cをオン/オフ制御する態様が好ましく、省エネルギー化を図ることができる。また、IRヒータ210A〜210Cを動作させるタイミングとしては、乾燥胴126Dに記録媒体114が搬送されていないときに限らず、例えば、記録媒体114の溶媒乾燥を促進させる観点から記録媒体114の搬送中にIRヒータ210A〜210Cを動作させる態様もあり得る。
〔第8の実施形態〕
次に、本発明の第8の実施形態について説明する。以下、第1〜第7の実施形態と共通する部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的な部分を中心に説明する。
第8の実施形態は、乾燥胴126Dの表面に対向する位置に、記録媒体搬送方向上流側から順に、第1〜第4の送風ファン142A〜142Dが設けられ、各送風ファン142A〜142Dの送風角度α1〜α4が記録媒体搬送方向上流側から下流側になるにつれて徐々に大きくなる点で第2の実施形態と共通するが(図8参照)、各送風ファン142A〜142Dの風量が制御される点で異なる。
即ち、本実施形態においては、各送風ファン142A〜142Dの風量を制御する乾燥制御部179(図5参照)によって、記録媒体搬送方向上流側から下流側になるにつれて送風ファンの風量が徐々に小さくなるように制御を行う。
各送風ファン142A〜142Dの風量をそれぞれX1、X2、X3、X4[m3/分](これらの総風量をX[m3/分]とする。)とし、例えば、通常時(未制御時)における各送風ファン142A〜142Dの風量をX1=X2=X3=X4=3、X=12とするとき、各送風ファン142A〜142Dの風量がX1=4.5、X2=3.5、X3=2.5、X4=1.5、X=12となるように制御する。このように、記録媒体搬送方向上流側から下流側になるにつれて送風ファンの風量が徐々に小さくなるように制御することにより、インク吐出ヘッド160側への風や熱の流出を防止する効果を向上させることができる。
また、記録媒体114の厚さを検出する記録媒体検出手段を設け、記録媒体114の厚さに応じて、各送風ファン142A〜142Dの風量を制御する態様も好ましい。例えば、通常時(未制御時)における各送風ファン142A〜142Dの風量を上述した値とするとき、記録媒体114の厚さが大きい場合には、各送風ファン142A〜142Dの風量がX1=X2=X3=X4=6、X=24(好ましくは、X1=9、X2=7、X3=5、X4=3、X=24)となるように制御する。このように、記録媒体114の厚さに応じて、各送風ファン142A〜142Dの風量を制御することにより、剛性の高い記録媒体114が用いられる場合でも、記録媒体114の厚さ(即ち、剛性)に左右されることなく、乾燥胴126Dに対する記録媒体114を密着性を高めることができ、記録媒体114の後端部のめくれによる搬送不良を防止することができる。
なお、上述した各実施形態(第1〜第8の実施形態)では、記録媒体の搬送部材として、円筒状部材(ドラム状部材)が用いられているが、これに限定されず、例えば、ベルト状部材を用いて記録媒体の搬送を行う方式にも本発明は適用可能である。
図15は、ベルト状部材を用いて記録媒体の搬送を行う方式に本発明を適用した場合の一例を示した構成図である。図15に示すように、ベルト状部材212によって記録媒体114が記録媒体搬送方向(図15の右から左に向かう方向)に搬送される場合、インク吐出ヘッド160より記録媒体搬送方向下流側には、第1〜第4の送風ファン142A〜142Dが、これらの送風角度α1〜α4が記録媒体搬送方向上流側から下流側になるにつれて徐々に大きくなるように配置される(例えば、α1=20°、α2=30°、α3=40°、α4=50°)。即ち、上述した第2の実施形態と同様な構成が適用され、各送風ファン142A〜142Dによって記録媒体搬送方向下流側から上流側に向かってベルト状部材212上の記録媒体114に風が吹き付けられるので、記録媒体114のめくれによる搬送不良を防止しつつ、記録媒体114の乾燥を行うことができる。
以上、本発明の画像形成装置及び画像形成方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
100…インクジェット記録装置、102…給紙部、104…浸透抑制層形成部、106…処理液付与部、108…インク打滴部、110…乾燥部、112…定着部、113…排紙部、114…記録媒体、126D…乾燥胴、130…浸透抑制剤塗出ヘッド、136…処理液吐出ヘッド、138…処理液乾燥ユニット、140…インク吐出ヘッド、142A〜142D…送風ファン、144…IRヒータ、148…加熱ローラ、160…ヘッド、161…ノズル、162…圧力室、168…圧電素子、179…乾燥制御部、180…プリント制御部、202…送風ファン、204…排気口、206…遮風板、208…排気ファン、210A〜210C…IRヒータ