以下、添付図面に従って、本発明に係る記録媒体搬送装置および記録媒体搬送方法の好ましい実施の形態について説明する。なお、以下の実施例においては、記録媒体搬送装置の一例として、インクジェット記録装置について説明するが、本発明はこれに限定されず、記録媒体を曲面搬送する装置であれば用いることができる。また、曲面搬送もドラム搬送に限定されず、ベルト搬送などにも用いることができる。
[インクジェット記録装置の全体構成]
まず、本発明の記録媒体搬送装置および記録媒体搬送方法が適用されるインクジェット記録装置の全体構成を説明する。
図1は、本実施の形態のインクジェット記録装置1を模式的に示す構成図である。同図に示すインクジェット記録装置1は記録媒体22の記録面に画像を形成する装置であり、主として給紙部10、処理液付与部12、描画部14、乾燥部16、露光硬化部18及び排出部20で構成される。給紙部10には記録媒体22(枚葉紙)が積層されており、この記録媒体22が給紙部10から処理液付与部12に送られ、処理液付与部12で記録面に処理液が付与された後、描画部14で記録面に色インクが付与される。インクが付与された記録媒体22は、乾燥部16で水分を乾燥後、露光硬化部18で画像が堅牢化された後、排出部20によって搬送される。
各部の間には中間搬送部(渡し胴)24、26、28が設けられ、この中間搬送部24、26、28によって記録媒体22の受け渡しが行われる。すなわち、処理液付与部12と描画部14との間には、第1の中間搬送部24が設けられ、この第1の中間搬送部24によって処理液付与部12から描画部14への記録媒体22の受け渡しが行われる。同様に、描画部14と乾燥部16との間には、第2の中間搬送部26が設けられ、この第2の中間搬送部26によって描画部14から乾燥部16への記録媒体22の受け渡しが行われる。さらに、乾燥部16と露光硬化部18との間には、第3の中間搬送部28が設けられ、この第3の中間搬送部28によって乾燥部16から露光硬化部18への記録媒体22の受け渡しが行われる。
以下、インクジェット記録装置1の各部(給紙部10、処理液付与部12、描画部14、乾燥部16、露光硬化部18、排出部20、第1〜第3の中間搬送部24、26、28)について説明する。
(給紙部)
給紙部10は、記録媒体22を描画部14に供給する機構である。給紙部10には、給紙トレイ50が設けられ、この給紙トレイ50から記録媒体22が一枚ずつ処理液付与部12に給紙される。
(処理液付与部)
処理液付与部12は、記録媒体22の記録面に処理液を付与する機構である。処理液は、描画部14で付与されるインク中の色材(顔料)を凝集または析出させる色材凝集剤を含んでおり、この処理液とインクとが接触することによって、インクは色材と溶媒との分離が促進される。なお、処理液のより詳細な説明については後述する。
図1に示すように、処理液付与部12は、渡し胴52、処理液ドラム54、処理液塗布装置56、IRヒータ58及び温風吹出ノズル60を備えている。渡し胴52は、給紙部10の給紙トレイ50と処理液ドラム54の間に配置され、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパーなど)を備え、この保持手段によって記録媒体22の先端を保持しながら回転駆動される。給紙部10から給紙された記録媒体22は、この渡し胴52によって受け取られ、処理液ドラム54に受け渡される。
処理液ドラム54は、記録媒体22を保持して回転搬送させるドラムであり、回転駆動される。また、処理液ドラム54は、その外周面に爪形状の保持手段55を備え、この保持手段55によって記録媒体22の先端を保持できるようになっている。記録媒体22は、保持手段55によって先端が保持された状態で、処理液ドラム54を回転させることによって回転搬送される。処理液ドラム54の外側には、その周面に対向して処理液塗布装置(塗布装置に相当)56、IRヒータ58及び温風吹出ノズル60が設けられる。処理液塗布装置56、IRヒータ58及び温風吹出ノズル60は、処理液ドラム54の回転方向(図1において反時計回り方向)に上流側から順に配設されており、記録媒体22は、まず処理液塗布装置56によって記録面に処理液が塗布される。処理液の膜厚は、描画部14のインクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yから打滴されるインクの液滴径より十分に小さいことが望ましい。例えば、インクの打滴量が2plのときには、液滴の平均直径は15.6μmである。このとき、処理液の膜厚が大きい場合には、インクドットが記録媒体22の表面に接触することなく、処理液内で浮遊する。そこで、インクの打滴量が2plのときに着弾ドット径を30μm以上得るためには、処理液の膜厚を3μm以下にすることが望ましい。
処理液塗布装置56で処理液が塗布された記録媒体22は、IRヒータ58、温風吹出ノズル60の位置に搬送される。IRヒータ58は高温(たとえば180℃)に制御され、温風吹出ノズル60は高温(たとえば70℃)の温風を一定の風量(たとえば9m3/分)で記録媒体22に向けて吹き付けるように構成される。このIRヒータ58と温風吹出ノズル60による加熱によって、処理液の溶媒中の水分が蒸発され、処理液の薄膜層が記録面に形成される。このように処理液を薄層化することによって、描画部14で打滴するインクのドットが記録媒体22の記録面と接触し、必要なドット径が得られるとともに、薄層化した処理液成分と反応して色材凝集が起こり、記録媒体22の記録面に固定する作用が得られやすい。なお、処理液ドラム54を所定の温度(たとえば50℃)に制御するようにしてもよい。
(描画部)
図1に示すように、描画部14は、描画ドラム70と、この描画ドラム70の外周面に対向する位置に近接配置されたインクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yで構成される。インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yはそれぞれ、マゼンダ(M)、黒(K)、シアン(C)、イエロー(Y)の4色のインクに対応しており、描画ドラム70の回転方向に上流側から順に配置される。
描画ドラム70は、その外周面に記録媒体22を保持し、回転搬送させるドラムであり、回転駆動される。また、描画ドラム70は、その外周面に爪形状の保持手段71を備え、この保持手段71によって記録媒体22の先端を保持できるようになっている。記録媒体22は、保持手段71によって先端が保持された状態で、描画ドラム70を回転させることによって回転搬送される。その際、記録媒体22の記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面にインクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yからインクが付与される。
インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yはそれぞれ、記録媒体22における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有するフルライン型のインクジェット方式の記録ヘッド(インクジェットヘッド)であり、そのインク吐出面には、画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルが複数配列されたノズル列が形成されている。各インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yは、記録媒体22の搬送方向(描画ドラム70の回転方向)と直交する方向に延在するように固定設置される。
各インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yには、対応する色インクのカセットが取り付けられる。各インクの液滴が、各インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yから、描画ドラム70の外周面に保持された記録媒体22の記録面に向かって吐出される。これにより、処理液付与部12で予め記録面に付与された処理液にインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料)が凝集され、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体22上での色材流れなどが防止され、記録媒体22の記録面に画像が形成される。その際、描画部14の描画ドラム70は、処理液付与部12の処理液ドラム54に対して構造上分離しているので、インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yに処理液が付着することがなく、インクの不吐出要因を低減することができる。
なお、インクと処理液の反応の一例として、処理液に酸を含有させpHダウンにより顔料分散を破壊し凝集するメカニズムを用い、色材滲み、各色インク間の混色、インク滴の着弾時の液合一による打滴干渉を回避することが考えられる。
また、各インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yの打滴タイミングは、描画ドラム70に配置された回転速度を検出するエンコーダに同期させる。これにより、高精度に着弾位置を決定することができる。また、予め描画ドラム70のフレなどによる速度変動を学習し、エンコーダ91で得られた打滴タイミングを補正して、描画ドラム70のフレ、回転軸の精度、描画ドラム70の外周面の速度に依存せずに打滴ムラを低減させることができる。
さらに、各インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yのノズル面の清掃、増粘インク排出などのメンテナンス動作は、ヘッドユニットを描画ドラム70から退避させて実施するとよい。
また、本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
(乾燥部)
≪第1実施形態≫
乾燥部16は、色材凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる工程であり、乾燥ドラム76と、この乾燥ドラム76の外周面に対向する位置に配置された第1のIRヒータ78、温風噴出しノズル80、第2のIRヒータ82、および、記録媒体22を乾燥ドラム76に密着させる非接触式記録媒体抑え手段としての送風ノズル83で構成される。第1のIRヒータ78は、温風噴出しノズル80に対して、乾燥ドラム76の回転方向(図1において反時計回り方向)の上流側に設けられ、第2のIRヒータ82は温風噴出しノズル80の下流側に設けられる。また、送風ノズル83は、記録媒体22と乾燥ドラム76とを密着させるため、乾燥部16の最上流側、第1のIRヒータ78の上流側に設けられる。
乾燥ドラム76は、その外周面に記録媒体22を保持して回転搬送させるドラムであり、モータドライバ(図示せず)によってその回転が駆動制御される。記録媒体22は、保持手段77によって先端が保持された状態で、乾燥ドラム76を回転させることによって回転搬送される。その際、記録媒体22の記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面に対してIRヒータ78、温風噴出しノズル80による乾燥処理が行われる。
温風噴出しノズル80は、所定の温度(たとえば50℃〜70℃)に制御された温風を一定の風量(12m3/分)で記録媒体22に向けて吹き付けるように構成され、IRヒータ78はそれぞれ所定の温度(たとえば180℃)に制御される。これらの温風噴出しノズル80、IRヒータ78によって、乾燥ドラム76に保持された記録媒体22の印字面に含まれる水分が蒸発され、乾燥処理が行われる。その際、乾燥部16の乾燥ドラム76は、描画部14の描画ドラム70に対して構造上分離しているので、インクジェットヘッド72M,72K,72C,72Yにおいて、熱乾燥によるヘッドメニスカス部の乾燥によるインクの不吐出を低減することができる。また、乾燥部16の温度設定に自由度があり、最適な乾燥温度を設定することができる。
なお、蒸発した水分は不図示の排出手段によりエアとともに機外に排出するとよい。また、回収されたエアを冷却器(ラジエータ)などで冷却して、液体として回収してもよい。
乾燥ドラム76は、その外周面に吸着穴を設けるとともに、吸着穴から吸引を行う吸着手段を有している。これにより記録媒体22を乾燥ドラム76の周面に密着保持することができる。また、負圧吸引を行うことにより、記録媒体を搬送体に拘束することができるので、記録媒体のカックルを防止することができる。
また、乾燥ドラム76は、その外周面を所定の温度に制御することが好ましい。記録媒体22の裏面から加熱を行うことによって乾燥が促進され、定着時における画像破壊を防止することができる。乾燥ドラム76の表面温度の範囲は、50℃以上が好ましく、より好ましくは60℃以上である。また、上限については、特に限定されるものではないが、乾燥ドラム76の表面に付着したインクをクリーニングするなどのメンテナンス作業の安全性(高温による火傷防止)の観点から75℃以下が好ましい。
搬送体の吸着力は、(開口面積)×(単位面積あたりの圧力)で表すことができる。吸着力は、記録媒体吸着保持領域における吸着穴の占める面積、即ち、開口率を高くすることで、吸着力をより高くすることができる。
吸着穴の開口率は、搬送体と記録媒体の接触面積に対して、1%以上75%以下とすることが好ましく、より好ましくは10%以上50%以下である。開口率を上記範囲とすることにより、カックルの抑制防止と乾燥性能の向上を実現することができる。この開口率が1%未満であると、記録後の吸水による記録媒体の膨張変形を充分に抑止することができない。また、75%を越えると、記録媒体裏面と搬送体表面の接触面積が低下するため、吸着保持状態であっても充分な乾燥性能を得ることができない。また、乾燥が促進されなくなるため、カックルも悪化する傾向にある。
開口率は、吸着孔の径、孔ピッチ、孔の形状・配置により制御することができる。孔径は、開口率を確保し吸着力をUPさせるために0.4mm以上とすることが好ましく、負圧吸引による記録媒体の凹み痕(吸着痕)がつかないように、1.5mm以下に設計することが好ましい。また、孔ピッチは、搬送体表面部の熱変形の防止や剛性確保のため、0.1mm以上とすることが好ましく、孔の間が離れすぎると記録媒体変形抑止効果が不足するため、吸着時に皺が発生するので、この皺を防止するため10mm以下に設計することが好ましい。
吸着穴の形状は、角(鋭角)形状があると、角部に応力が集中するので、角部を丸めた形状とすることが好ましい。また、回転搬送体では、吸着圧力による記録媒体の変形量は周方向よりも軸方向のほうが大きくなる。したがって、吸着穴は、周方向を長軸方向、軸方向を短軸方向とした楕円形状又は長穴形状とすることで、記録媒体の周方向の変形と軸方向の変形を均等にすることもできる。
本発明においては、記録媒体22を乾燥ドラム76に安定して密着保持させるために、非接触式記録媒体抑え手段として送風ノズル83を設ける。非接触式記録媒体抑え手段としては図1に示す送風ノズル83である送風手段などを用いることができる。また送風手段としては、他にブロア、ファンなどの従来周知の送風手段を用いることができる。非接触式記録媒体抑え手段を用いることにより、記録媒体の弛みや浮きを矯正した状態で乾燥ドラム76に密着させることができ、均一に吸着を行うことができる。
本発明においては、記録媒体の剛性により送風ノズル83による押圧位置と吸着手段による吸着開始位置の制御を行う。記録媒体の剛性が小さいほど、吸着開始位置を押圧位置に対して、搬送方向下流側に設定することが好ましい。非接触式記録媒体抑え手段により記録媒体22を押圧し、シワを充分に抑止してから吸着することで、記録媒体22に発生するシワの抑制することができる。また、記録媒体の剛性が高い場合は、吸着開始位置を押圧位置に対して、搬送方向上流側、または、押圧位置と同じ位置とすることが好ましい。記録媒体の剛性が高い場合は、記録媒体22が乾燥ドラム76に対して、浮くことがなく、密着して搬送できるかが問題となる。送風ノズル83で押圧し、吸着手段により吸着を行うことで、記録媒体22が浮くことなく、乾燥ドラム76に密着させることができる。吸着開始位置を、送風ノズル83による押圧位置と同じ、あるいは上流側とすることで、送風ノズル83による押圧で記録媒体22と乾燥ドラム76(吸着面)との距離を縮めておくことができ、吸着手段で吸着を行うことができる。逆に、吸着開始位置を押圧位置の下流側とすると、記録媒体22が乾燥ドラム76の曲面に沿わないため、記録媒体22が乾燥ドラム76から浮いてしまい、閉塞されない吸着穴が多くなることがある。この場合、吸引力が低下し、送風位置通過後に、記録媒体22の後端が再び跳ね上がってしまう懸念がある。なお、吸着は、記録媒体22が吸着開始位置を通過した時点で、吸着面全面の吸着を開始することで行う。
図2に、第1実施形態に示す記録媒体搬送装置(乾燥部)の拡大図を示す。図中乾燥ドラム76の外周上の矢印で示した範囲で吸着開始位置となるようにすることが好ましい。また、押圧位置と吸着開始位置の位置関係については、ドラムの径や記録媒体のサイズにより制御を行うことが好ましい。記録媒体の剛性が低い場合、記録媒体のサイズが大きい程、搬送方向の下流側で吸着を開始することで、記録媒体の後半領域での非接触式記録媒体抑え手段による記録媒体のシワの抑止が不十分のまま吸着されることを防止することができる。
押圧位置に対する吸着開始位置の制御は、非接触式記録媒体抑え手段の位置が固定されている場合は、乾燥ドラム76の吸着手段による吸着を開始するタイミングを制御することができる。また、吸着タイミングが固定である場合は、送風ノズル83を搬送方向に移動可能となるように設置することで制御可能である。
非接触式記録媒体抑え手段により、記録媒体の押圧を開始するタイミングは、記録媒体先端が押圧位置を通過するタイミングと同時、または、それより前に行うことが好ましい。また、終了のタイミングは、記録媒体後端部が押圧位置を通過した後に行うことが好ましい。
非接触式記録媒体抑え手段の押圧力(風力)は、記録媒体の剛性により制御することが好ましい。押圧力を制御することで、強風による画像ダメージを回避することができる。また、記録媒体の位置により、非接触式記録媒体抑え手段の押圧力(風力)を調節することもできる。例えば、記録媒体の搬送方向の後端にいくに従い、押圧力(風力)を大きくする、または、記録媒体の後端通過時のみ押圧(送風)を実施し、それ以外は、送風を実施しない領域を設ける間欠送風を行うこともできる。特に、剛性が高い記録媒体を用い、下記に示すように送風手段による風向きを記録媒体の搬送方向の下流から上流に向けて行う場合は、シワの発生をあまり考慮する必要が無く、また、風により記録媒体22を乾燥ドラム76の搬送体面に倣わせることができるので、記録媒体の後端通過時に送風を行い乾燥ドラム76に密着させることで、安定して搬送を行うことができる。また、このように、送風手段の風力を調整することにより、送風範囲の領域を最小化、最適化を行うことができる。
送風手段による風速は、5〜200[m/s]の範囲であることが好ましい。風速が5[m/s]より小さいと、シワの抑止効果が不足し、200[m/s]より大きいと、画像部分のインク付与量が多く、かつ、未乾燥状態である場合、画像が送風でダメージを受ける懸念がある。乾燥状態にある画像に対しては、特に制限なく送風することができる。風速の測定は、送風手段の風の出口部(エアノズルの噴出口など)から記録媒体表面との間隔だけ離した距離で風速V[m/s]を測定する。風速計としては、例えば、カノマックス社製アネモマスター6004を用いることができる。
送風手段で必要な風量(エア流量)については、記録媒体の幅や厚みにより異なるが、例えば、菊半サイズの記録媒体に対しては、0.1〜2[m3/min]の範囲であることが好ましい。風量は風速の測定値から以下の計算式により計算して求める。風速(風量)は、圧縮空気であれば、レギュレータで圧力を調整したり、ブロアであれば、ブロア入力電源に制御により調整することができる。
Q=V×A×60 [m3/min]
Q:風量[m3/min]、V:風速[m/s]、A:送風する面積[m2]
非接触式抑え手段は、例えば、図3に示す送風ノズル83(1個あたりのノズル幅:50mm)を記録媒体幅方向に連結して送風を実施することができるが、所望の風速(風量)が得られるものであれば、部材の形状、素材は特に限定されず用いることができる。ただし、素材に関しては、非接触式記録媒体抑え手段を乾燥手段近傍に備える場合、あるいは、下記に記載したように、乾燥手段と兼用する場合は、耐熱素材であることが好ましい。
図3(b)は、ノズルの開口部83aの形状を示した図である。図3(b)は、開口部83aを微細な丸穴(ノズル径:1.2mm)を複数個配置した図であるが、形状、大きさは特に限定されず、より広域に吹き付けるために、開口部83aのノズル径を大きくすることもできるし、形状も丸形状に限らず、矩形でも良い。
個々のノズルにより風速(風量)分布を変更することもできる。例えば、画像部は、風速を強くし、浮き抑え、非画像部は、風速を弱くすることができる。また、記録媒体のサイズが異なる場合は、記録媒体の幅方向の長さに対応する部分のみで、送風を実施することができる。搬送体側面部の記録媒体が通過しない領域に風を供給することで、記録媒体の裏面に風が回りこみ、記録媒体が浮いたり、バタついたりすることを防止することができる。
図4は、個々のノズル83の向き、配列を示す平面図である。風は、記録媒体22に向って噴出されている。図4(a)は、回転させていない通常のノズルの配置である。個々のノズル83は、回転可能とすることができ、例えば、図4(b)に示すように、記録媒体の中央から両端部、または、図4(c)に示すように、一方の端部から他方の端部に傾けるように、回転させることができる。図4(b)、図4(c)に示す配置とすることで、シワを記録媒体の幅方向端部に散らすことができる、あるいは、幅方向端部に逃がすことができる。
また、個々のノズルは、記録媒体幅方向に対して、同列に配置されている必要は無く、図4(d)に記録媒体の中央から両端部の方向に、あるいは、図4(e)に示すように、一方の端部から他方の端部の方向に順番に風が吹く配置とすることができる。このような配置とすることで、よりシワを記録媒体の幅方向端部に散らす、あるいは、幅方向端部に逃がす効果を向上させることができる。
図4(a)から図4(e)は、複数のノズル83の態様で説明したが、図4(f)に示すように、開口部の長さを記録媒体22の幅方向と同じ長さとしたノズル83を用いることもできる。1個のノズルを用いることで、風速(風量)を均一化し、例えば、シワが局所的に集中することを避けることができる。
図2に示すように、送風ノズル83による風の風向きは記録媒体22の搬送方向先端側から後端側に向って斜め方向に向って吹くように配置することが好ましい。これにより、記録媒体22を乾燥ドラム72に倣わせて風による押さえ効果を向上させることができる。送風方向は、風の送風方向と風が記録媒体22(乾燥ドラム76)に接触する点の法線とのなす角θが0°以上75°以下とすることが好ましい。傾きが上記範囲を超えると、抑え効果が不足するため好ましくない。
また、送風ノズル83を角度θが調整できる構成とすることも可能である。例えば、記録媒体の剛性が低い場合は、紙を搬送体表面に沿わせることを重視して、角度θを大きくし、剛性が高い場合は、記録媒体を搬送体表面に密着させることを重視して、角度θを小さくすることができる。また、下記に示すように、非接触式記録媒体抑え手段が、複数の送風ノズル83などからなる場合は、それぞれの送風ノズル83で、角度θを制御する構成とすることができる。
また、非接触式記録媒体抑え手段が乾燥手段を兼ねても良い。非接触式記録媒体抑え手段として、ヒータを内蔵し、エアノズルから熱風を記録媒体に向けて噴きつける乾燥ファンを用いることで、乾燥を行うことができる。乾燥条件は、乾燥ファンが搬送方向に複数列配列した乾燥ユニットで、1列目の乾燥ファンの風量をアップしたり、エアノズルの開口部を絞ることにより風速を上げたり、噴射角度を搬送方向の上流側に傾けることにより、行うことができる。
吸着は、搬送方向下流側(記録媒体先端側)から段階的に吸着を実施することも可能である。例えば、図5に示すように、吸着領域を複数に分割し(図5では領域A、B、C、Dの4分割)各領域での吸引のON/OFF、旧引力の制御をすることができる、図5においては、送風位置を通過した領域A、Bで吸着を開始しており、領域C、Dでは吸着を開始していない状態である。段階的に吸着を行うことで、非接触式記録媒体抑え手段を通過して、シワや浮きが矯正された直後の領域を、時間をおかずに吸着することが可能になるので、より確実、均一に吸着を行うことができる。また、全吸着領域の吸着が一括でしかできず、記録媒体のサイズが大きい場合は、記録媒体の先端部では、非接触式記録媒体抑え手段による矯正後から時間が経ってしまい、再び、シワや浮きが発生する、記録媒体の後端部では、シワや浮きが矯正されずに搬送体に吸着されてしまうという懸念がある。しかし、段階的に吸着を行うことで、より好ましい状態で搬送体に吸着を行うことができ、安定して搬送を行うことができる。
送風手段から送風される風は、加熱されていることが好ましい。加熱した風を送風することにより、記録媒体22の乾燥を速めることができるので、記録媒体の剛性が低い場合に、記録媒体22に発生するカックルを抑制することができる。
送風手段は、記録媒体22の幅方向に複数区域に分割されており、画像データに応じて、各区域の押圧力(風力)が制御可能とすることが好ましい。同様に、吸引手段も記録媒体22の幅方向に複数区域に分割されていることが好ましい。画像データに応じて、送風手段による押圧力、吸引手段による吸引力を、制御することにより、打滴量の多い箇所でのシワ抑止効果を向上させることができる。また、送風手段、吸引手段の各々は、記録媒体22の幅方向の中央部分の区域で、押圧力、吸引力を強くすることが好ましい。シワは、記録媒体22の中央部で発生しやすいため、記録媒体22の幅方向の中央部で、押圧力、吸引力を高くすることで、中央部分のシワを抑止することができるので、記録媒体全体のシワを防止することができる。
吸着手段は上述したように、記録媒体の搬送方向で制御を可能とし、送風手段、吸着手段も記録媒体の幅方向で制御可能とすることにより、組み合わせることで、画像データに最適な制御をすることができる。
≪第2実施形態≫
図6は、第2実施形態にかかる記録媒体搬送装置の概略図である。第2実施形態にかかる記録媒体搬送装置は、送風ノズル(非接触式記録媒体抑え手段)283が、乾燥ドラム76の前に連結している中間搬送部(渡し胴)30の内部に設けられている点が、第1実施形態と異なっている。
送風ノズル283を中間搬送部30内に設けることで、インクジェット記録装置1全体を省スペース化することができる。また、中間搬送部30内部に非接触式記録媒体抑え手段を設けることで、薄紙の場合は、乾燥ドラム76に受け渡される手前のより上流で押圧することができるので、乾燥ドラム76のより上流側で吸着を開始することができる。したがって、乾燥ドラム76では、裏面からの加熱効率を向上させることができる。また、描画ドラム70で行った場合は、記録媒体後端のバタツキの影響を少なくすることができる。
図7は第2実施形態にかかる記録媒体搬送装置の変形例を示す概略図である。図7は、中間搬送部で搬送されている記録媒体をガイドする渡し胴ガイド31が設けられている点が異なっている。渡し胴ガイド31を設けることにより、吸着を一括で行ったとしても、送風手段により押圧される前の記録媒体が乾燥ドラム76に吸着されることを防ぐことができる。また、搬送によって吸着面との距離が近くなった部分から順次、吸着を行うことができるので、皺の発生を抑制することができる。本実施形態は、剛性の低い記録媒体に特に効果的に用いることができる。
なお、渡し胴ガイド31は、中間搬送部30により記録媒体22を搬送する場合に設置することができるので、第1実施形態のような乾燥ドラム76の外周面に送風ノズル83を設けた場合にも用いることができる。
なお、送風手段による風の押圧力(風力)、送風方向については、第1実施形態と同様の方法により行うことができる。
≪第3実施形態≫
図8は、第3実施形態にかかる記録媒体搬送装置の概略図である。第3実施形態にかかる記録媒体搬送装置は、非接触式記録媒体抑え手段が、第1の中間搬送部24内部に設けられた第1の非接触式記録媒体抑え手段283と、乾燥ドラム76の外周面に設けられた第2の非接触式記録媒体抑え手段83とからなる点が、第1実施形態、第2実施形態と異なっている。
第3実施形態に示すように、送風ノズル(第1の非接触式記録媒体抑え手段)283、送風ノズル(第2の非接触式記録媒体抑え手段)83と非接触式記録媒体抑え手段を2箇所に設けることで、より確実に記録媒体22を乾燥ドラム76に密着させることができ、安定して搬送することができる。
第3実施形態に係る記録媒体搬送装置も、送風ノズルによる風の押圧力(風力)、送風方向については、第1実施形態、第2実施形態と同様の方法で行うことができる。
また、第3実施形態において、送風位置とは、第2の非接触式記録媒体抑え手段83により記録媒体22が押圧される位置である。
なお、記録媒体搬送装置の一例としてインクジェット記録装置の乾燥部を例にして説明を行ったが、本発明はこれに限定されず、記録媒体をシワや浮きなく、曲面搬送体に吸着させる必要がある場合に、本発明を適用することができる。例えば、インクジェット記録装置の他の構成、描画ドラムでの記録媒体のシワや浮き防止による通紙成改善や、露光硬化ドラムでの記録媒体の浮き防止による、ヒートローラ定着ニップ時のシワ抑止に適用することができる。特に、乾燥部においては、記録媒体に描画部14で画像が形成されており、ローラによる押圧手段を用いることができないため、本発明の非接触式記録媒体抑え手段による押圧が特に効果的である。
≪第4実施形態≫
図9は、第4実施形態にかかる記録媒体搬送装置の概略図である。第4実施形態にかかる記録媒体搬送装置は、乾燥ドラム76に設けられた吸着手段とは別に、送風ノズル83の上流側に非接触の補助吸引手段81が備えられている点が他の実施形態と異なっている。補助吸引手段81は、記録媒体22の裏面側(乾燥ドラム76側)から吸引するように配置されている。補助吸引手段81を設置することで、乾燥ドラム76に、より確実に巻きつけ密着させることができる。
なお、第4実施形態については、剛性の低い記録媒体に適用すると、送風位置未通過の記録媒体後端部が吸着され、シワや浮きが生じる可能性があるので、特に、剛性の高い記録媒体に用いることが好ましい。
(露光硬化部)
露光硬化部18は、UVランプ88及びインラインセンサ90で構成される。UVランプ88及びインラインセンサ90は、露光硬化ドラム84の周面に対向する位置に配置され、露光硬化ドラム84の回転方向の上流側から順に配置される。
露光硬化ドラム84は、その外周面に記録媒体22を保持して回転搬送させるドラムであり、回転駆動される。また、露光硬化ドラム84は、その外周面に爪形状の保持手段85を備え、この保持手段85によって記録媒体22の先端を保持できるようになっている。記録媒体22は、保持手段85によって先端が保持された状態で露光硬化ドラム84を回転させることによって、回転搬送される。その際、記録媒体22の記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面に対して、UVランプ88による露光硬化処理と、インラインセンサ90による検査が行われる。
UVランプ88は乾燥されたインクにUV光を照射することにより、インク中に含まれる活性光線硬化樹脂が硬化し、インクを皮膜化させる。UVランプ88としては、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、ブラックライト、冷陰極管、UV−LED等の種々の紫外線光源を用いることができる。
UVランプ88の照射する紫外線のピーク波長は、インク組成物の吸収特性にもよるが、200〜600nmが好ましく、より好ましくは、300〜450nmであり、さらに好ましくは、350〜450nmである。
紫外線光源88の照射エネルギーとしては、2000mJ/cm2以下が好ましく、より好ましくは、10〜2000mJ/cm2であり、さらに好ましくは、20〜1000mJ/cm2であり、特に好ましくは、50〜800mJ/cm2である。
また、本発明のインクジェット記録装置では、紫外線は記録媒体の記録面に対して、好ましくは、0.01〜10秒、より好ましくは、0.1〜2秒照射することが適当である。
また、露光硬化ドラム84を所定の温度に制御してもよい。これにより、インクの硬化感度を向上させ、低照射強度で好適にインクを硬化し、皮膜化させることができる。
一方、インラインセンサ90は、記録媒体22に定着された画像について、チェックパターンや水分量、表面温度、光沢度などを計測するための計測手段であり、CCDラインセンサなどが適用される。
(排出部)
図1に示すように、露光硬化部18に続いて排出部20が設けられている。排出部20は、排出トレイ92を備えており、この排出トレイ92と露光硬化部18の露光硬化ドラム84との間に、これらに対接するように渡し胴94、搬送ベルト96、張架ローラ98が設けられている。記録媒体22は、渡し胴94により搬送ベルト96に送られ、排出トレイ92に排出される。
(中間搬送部)
次に、第1の中間搬送部24の構造について説明する。なお、第2の中間搬送部26、第3の中間搬送部28は、第1の中間搬送部24と同様の構成であり、その説明を省略する。
第1の中間搬送部24は、中間搬送部30を有する。中間搬送体30は、前段のドラムから記録媒体22を受け取り、回転搬送させた後、後段のドラムに受け渡すためのドラムであり、回転自在に取り付けられている。また、中間搬送体30は、不図示のモータによって回転するようになっている。
中間搬送体30の外周面には、爪形状の保持手段が90°間隔で設けられている。保持手段は、円軌跡を描きながら回転するようになっており、この保持手段の動作によって記録媒体22の先端が保持される。したがって、保持手段で記録媒体22の先端を保持した状態で中間搬送体30を回転させることによって、記録媒体22を回転搬送させることができる。なお、中間搬送体30の表面に複数の送風口を設け、この送風口からエアを吹き出すことによって、記録媒体の記録面を非接触で搬送するとよい。
第1の中間搬送部24によって搬送された記録媒体22は、後段のドラム(すなわち、描画ドラム70)に受け渡される。その際、中間搬送部24の保持手段と描画部14の保持手段を同期させることによって、記録媒体22の受け渡しが行われる。受け渡された記録媒体22は、描画ドラム70によって保持されて回転搬送される。
(制御系の説明)
図10は、インクジェット記録装置1のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置1は、通信インターフェース120、システムコントローラ122、プリント制御部124、処理液付与制御部126、第1中間搬送制御部128、ヘッドドライバ130、第2中間搬送制御部132、乾燥制御部134、第3中間搬送制御部136、露光硬化制御部138、インラインセンサ90、エンコーダ91、モータドライバ142、メモリ144、ヒータドライバ146、画像バッファメモリ148、吸引制御部149、送風制御部162等を備えている。
通信インターフェース120は、ホストコンピュータ150から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース120にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ150から送出された画像データは通信インターフェース120を介してインクジェット記録装置1に取り込まれ、一旦メモリ144に記憶される。
システムコントローラ122は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置1の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。即ち、システムコントローラ122は、通信インターフェース120、処理液付与制御部126、第1中間搬送制御部128、ヘッドドライバ130、第2中間搬送制御部132、乾燥制御部134、第3中間搬送制御部136、露光硬化制御部138、メモリ144、モータドライバ142、ヒータドライバ146、吸引制御部149、送風制御部162等の各部を制御し、ホストコンピュータ150との間の通信制御、メモリ144の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ152やヒータ154を制御する制御信号を生成する。
メモリ144は、通信インターフェース120を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ122を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ144は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
ROM145には、システムコントローラ122のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。なお、ROM145は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。メモリ144は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
モータドライバ142は、システムコントローラ122からの指示にしたがってモータ152を駆動するドライバである。図10には、装置内の各部に配置されるモータを代表して符号152で図示されている。例えば、図10に示すモータ152には、図1の渡し胴52、処理液ドラム54、描画ドラム70、乾燥ドラム76、露光硬化ドラム84、渡し胴94などの回転を駆動するモータ、描画ドラム70の吸引孔から負圧吸引するためのポンプ75の駆動モータ、インクジェットヘッド72C,72M,72Y,72Kのヘッドユニットの退避機構のモータ、などが含まれている。
ヒータドライバ146は、システムコントローラ122からの指示にしたがって、ヒータ154を駆動するドライバである。図10には、インクジェット記録装置1に備えられる複数のヒータを代表して符号154で図示されている。例えば、図10に示すヒータ154には、給紙部10において記録媒体22を予め適温に加熱しておくための不図示のプレヒータ、などが含まれている。
プリント制御部124は、システムコントローラ122の制御にしたがい、メモリ144内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッドドライバ130に供給する制御部である。プリント制御部124において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいて、ヘッドドライバ130を介してインクヘッド100のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部124には画像バッファメモリ148が備えられており、プリント制御部124における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ148に一時的に格納される。なお、図10において画像バッファメモリ148はプリント制御部124に付随する態様で示されているが、メモリ144と兼用することも可能である。また、プリント制御部124とシステムコントローラ122とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
画像入力から印字出力までの処理の流れを概説すると、印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース120を介して外部から入力され、メモリ144に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの画像データがメモリ144に記憶される。
インクジェット記録装置1では、インク(色材) による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。そのため、メモリ144に蓄えられた元画像(RGB)のデータは、システムコントローラ122を介してプリント制御部124に送られ、該プリント制御部124において閾値マトリクスや誤差拡散法などを用いたハーフトーニング処理によってインク色ごとのドットデータに変換される。
即ち、プリント制御部124は、入力されたRGB画像データをK,C,M,Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。こうして、プリント制御部124で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ148に蓄えられる。
ヘッドドライバ130は、プリント制御部124から与えられる印字データ(即ち、画像バッファメモリ148に記憶されたドットデータ)に基づき、インクヘッド100の各ノズル102に対応するアクチュエータ116を駆動するための駆動信号を出力する。ヘッドドライバ130にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
ヘッドドライバ130から出力された駆動信号がインクヘッド100に加えられることによって、該当するノズル102からインクが吐出される。記録媒体22を所定の速度で搬送しながらインクヘッド100からのインク吐出を制御することにより、記録媒体22上に画像が形成される。
また、システムコントローラ122は、処理液付与制御部126、第1中間搬送制御部128、第2中間搬送制御部132、乾燥制御部134、第3中間搬送制御部136、露光硬化制御部138、吸引制御部149、送風制御部162を制御する。
処理液付与制御部126は、システムコントローラ122からの指示にしたがい、処理液付与部12の処理液塗布装置56の動作を制御する。
第1中間搬送制御部128は、システムコントローラ122からの指示にしたがい、第1の中間搬送部24の中間搬送体30の動作を制御する。具体的には、中間搬送体30において、中間搬送体30自体の回転駆動、中間搬送体30に備わる保持手段の回動などを制御する。第2中間搬送制御部132、第3中間搬送制御部136も第1中間搬送制御部128と同様の制御を行う。
吸引制御部149および送風制御部162は、システムコントローラ122の制御にしたがって、画像形成された記録媒体22を乾燥ドラム76に密着させて搬送するため乾燥ドラム76内に設けられた吸引手段、送風手段83の制御を行う。吸引手段、送風手段83は、記録媒体22の剛性により、吸引手段による吸引開始位置、送風手段83による送風位置が制御される。記録媒体22の種類による剛性に対応する吸引開始位置および送風位置をROM145に記録させておき、使用する記録媒体22の種類をパソコン(不図示)により直接入力することで、制御を行うこともできる。吸引制御部149による吸引開始位置の制御は、記録媒体が吸引開始位置を通過した際に、ポンプ75を作動させることで制御を行うことができる。
また、メモリ144内の画像データまたはプリント制御部124で生成した印字データ(ドットデータ)に基づいて、吸着手段による吸引力、送風手段による押圧力(風力)を制御する。また、記録媒体の幅方向における吸引力、押圧力(風力)の制御を行う。
[インク組成物]
本発明におけるインク組成物は、顔料を含んでなり、必要に応じて、更に分散剤や界面活性剤、その他の成分を用いて構成することができる。
(顔料)
本発明におけるインク組成物は、色材成分として顔料の少なくとも一種を含有する。顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機顔料、無機顔料のいずれであってもよい。顔料は、水に殆ど不溶であるか又は難溶である顔料であることが、インク着色性の点で好ましい。
(分散剤)
本発明のインク組成物は、分散剤の少なくとも1種を含有することができる。前記顔料の分散剤としては、ポリマー分散剤、又は低分子の界面活性剤型分散剤のいずれでもよい。また、ポリマー分散剤は、水溶性の分散剤、又は非水溶性の分散剤のいずれでもよい。
ポリマー分散剤の重量平均分子量は、3,000〜100,000が好ましく、より好ましくは5,000〜50,000であり、更に好ましくは5,000〜40,000であり、特に好ましくは10,000〜40,000である。
ポリマー分散剤の酸価としては、処理液が接触したときの凝集性が良好である観点から、100以下mgKOH/g以下が好ましい。更には、該酸価は、25〜100mgKOH/gがより好ましく、25〜80が更に好ましく、30〜65が特に好ましい。ポリマー分散剤の酸価が25以上であると、自己分散性の安定性が良好になる。
ポリマー分散剤は、自己分散性と処理液が接触したときの凝集速度の観点から、カルボキシル基を有するポリマーを含むことが好ましく、カルボキシル基を有し、酸価が25〜80mgKOH/gのポリマーを含むことがより好ましい。
本発明においては、画像の耐光性や品質などの観点から、顔料と分散剤と含むことが好ましく、有機顔料とポリマー分散剤とを含むことがより好ましく、有機顔料とカルボキシル基を含むポリマー分散剤とを含むことが特に好ましい。また、顔料は、凝集性の観点から、カルボキシル基を有するポリマー分散剤に被覆され、水不溶性であることが好ましい。さらに、凝集性の観点からは、後述の自己分散性ポリマーの粒子の酸価の方が、前記ポリマー分散剤の酸価よりも小さいことが好ましい。
顔料の平均粒子径としては、10〜200nmが好ましく、10〜150nmがより好ましく、10〜100nmがさらに好ましい。平均粒子径は、200nm以下であると色再現性が良好になり、インクジェット法で打滴する際の打滴特性が良好になり、10nm以上であると耐光性が良好になる。また、色材の粒径分布に関しては、特に制限はなく、広い粒径分布又は単分散性の粒径分布のいずれであってもよい。また、単分散性の粒径分布を持つ色材を2種以上混合して使用してもよい。
なお、顔料粒子の平均粒子径及び粒径分布は、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒径を測定することにより求められるものである。
顔料は、1種単独で又は2種以上を組合わせて使用してもよい。
顔料のインク組成物中における含有量としては、画像濃度の観点から、インク組成物に対して、1〜25質量%であることが好ましく、2〜20質量%がより好ましく、5〜20質量%がさらに好ましく、5〜15質量%が特に好ましい。
(ポリマー粒子)
本発明におけるインク組成物は、ポリマー粒子の少なくとも一種を含有することができる。このポリマー粒子は、後述の処理液又はこれを乾燥させた領域と接触した際に分散不安定化して凝集しインクを増粘させることによりインク組成物を固定化する機能を有し、インク組成物の記録媒体への定着性及び画像の耐擦過性をより向上させることができる。
凝集剤と反応するために、アニオン性の表面電荷を有するポリマー粒子が用いられ、充分な反応性、吐出安定性が得られる範囲で、広く一般に知られているラテックスが用いられるが、特に自己分散性のポリマー粒子を用いることが好ましい。
<自己分散性ポリマー粒子>
本発明におけるインク組成物は、ポリマー粒子として、自己分散性ポリマー粒子の少なくとも一種を含有することが好ましい。この自己分散性ポリマーは、後述の処理液又はこれを乾燥させた領域と接触した際に分散不安定化して凝集しインクを増粘させることによりインク組成物を固定化する機能を有し、インク組成物の記録媒体への定着性及び画像の耐擦過性をより向上させることができる。また、自己分散性ポリマーは、吐出安定性及び前記顔料を含む系の液安定性(特に分散安定性)の観点からも好ましい樹脂粒子である。
自己分散性ポリマーの粒子とは、他の界面活性剤の不存在下に、ポリマー自身が有する官能基(特に酸性基又はその塩)によって、水性媒体中で分散状態となり得る水不溶性ポリマーであって、遊離の乳化剤を含有しない水不溶性ポリマーの粒子を意味する。
本発明における自己分散性ポリマーの酸価としては、処理液が接触したときの凝集性が良好である観点から、50以下KOHmg/g以下が好ましい。更には、該酸価は、25〜50KOHmg/gがより好ましく、30〜50が更に好ましい。自己分散性ポリマーの酸価が25以上であると、自己分散性の安定性が良好になる。
本発明における自己分散性ポリマーの粒子は、自己分散性と処理液が接触したときの凝集速度の観点から、カルボキシル基を有するポリマーを含むことが好ましく、カルボキシル基を有し、酸価が25〜50KOHmg/gのポリマーを含むことがより好ましく、カルボキシル基を有し、酸価が30〜50KOHmg/gのポリマーを含むことがより好ましい。
自己分散性ポリマーの粒子を構成する水不溶性ポリマーの分子量としては、重量平均分子量で3000〜20万であることが好ましく、5000〜15万であることがより好ましく、10000〜10万であることが更に好ましい。重量平均分子量を3000以上とすることで水溶性成分量を効果的に抑制することができる。また、重量平均分子量を20万以下とすることで、自己分散安定性を高めることができる。
なお、重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)で測定される。GPCは、HLC−8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgeL SuperHZM−H、TSKgeL SuperHZ4000、TSKgeL SuperHZ2000(東ソー(株)製、4.6mmID×15cm)を3本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いる。また、条件としては、試料濃度を0.35/min、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μl、測定温度を40℃とし、IR検出器を用いて行なう。また、検量線は、東ソー(株)製「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F−40」、「F−20」、「F−4」、「F−1」、「A−5000」、「A−2500」、「A−1000」、「n−プロピルベンゼン」の8サンプルから作製する。
自己分散性ポリマーの粒子の平均粒子径は、体積平均粒子径で10nm〜400nmの範囲が好ましく、10〜200nmの範囲がより好ましく、10〜100nmの範囲が更に好ましい。体積平均粒子径は、10nm以上であると製造適性が向上し、1μm以下であると保存安定性が向上する。
なお、自己分散性ポリマーの粒子の平均粒子径及び粒径分布は、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒径を測定することにより求められるものである。
自己分散性ポリマーの粒子は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。自己分散性ポリマーの粒子のインク組成物中における含有量としては、凝集速度や画像の光沢性などの観点から、インク組成物に対して、1〜30質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。
また、インク組成物中の顔料と自己分散性ポリマーの粒子との含有比率(例えば、水不溶性顔料粒子/自己分散性ポリマーの粒子)としては、画像の耐擦過性などの観点から、1/0.5〜1/10であることが好ましく、1/1〜1/4であることがより好ましい。
(重合性化合物)
本発明におけるインク組成物は、活性エネルギー線により重合する水溶性の重合性化合物の少なくとも一種を含有することができる。
水溶性とは、水に一定濃度以上溶解できることをいい、水性のインク中に(望ましくは均一に)溶解し得るものであればよい。また、後述する水溶性有機溶剤を添加することにより溶解度が上がってインク中に(望ましくは均一に)溶解するものであってもよい。具体的には、水に対する溶解度が10質量%以上であることが好ましく、15質量以上であることがより好ましい。
重合性化合物としては、凝集剤と顔料、ポリマー粒子との反応を妨げない点で、ノニオン性又はカチオン性の重合性化合物が好ましく、水に対する溶解度が10質量%以上(更には15質量%以上)の重合性化合物が好ましい。
本発明における重合性化合物としては、擦過耐性を高め得る観点から、多官能のモノマーが好ましく、2官能〜6官能のモノマーが好ましく、溶解性と擦過耐性の両立の観点から、2官能〜4官能のモノマーが好ましい。
重合性化合物は、1種単独又は2種以上を組み合わせて含有することができる。
重合性化合物のインク組成物中における含有量としては、顔料及び自己分散性ポリマーの粒子の合計の固形分に対して、30〜300質量%が好ましく、50〜200質量%がより好ましい。重合性化合物の含有量は、30質量%以上であると画像強度がより向上して画像の耐擦過性に優れ、300質量%以下であるとパイルハイトの点で有利である。
(開始剤)
本発明におけるインク組成物は、後述の処理液に含有すると共にあるいは含有せずに、活性エネルギー線により前記重合性化合物の重合を開始する開始剤の少なくとも1種を含有することができる。光重合開始剤は、1種単独で又は2種以上を混合して、あるいは増感剤と併用して使用することができる。
開始剤は、活性エネルギー線により重合反応を開始し得る化合物を適宜選択して含有することができ、例えば、放射線もしくは光、又は電子線により活性種(ラジカル、酸、塩基など)を発生する開始剤(例えば、光重合開始剤等)を用いることができる。
開始剤を含有する場合、インク組成物中における開始剤の含有量としては、重合性化合物に対して、1〜40質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。開始剤の含有量は、1質量%以上であると画像の耐擦過性がより向上し、高速記録に有利であり、40質量%以下であると吐出安定性の点で有利である。
(水溶性有機溶剤)
本発明におけるインク組成物は、水溶性有機溶媒の少なくとも1種を含有することができる。水溶性有機溶媒は、乾燥防止、湿潤あるいは浸透促進の効果を得ることができる。乾燥防止には、噴射ノズルのインク吐出口においてインクが付着乾燥して凝集体ができ、目詰まりするのを防止する乾燥防止剤として用いられ、乾燥防止や湿潤には、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶媒が好ましい。また、浸透促進には、紙へのインク浸透性を高める浸透促進剤として用いることができる。
乾燥防止剤としては、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶媒であることが好ましい。
乾燥防止剤は、1種単独で用いても2種以上併用してもよい。乾燥防止剤の含有量は、インク組成物中に10〜50質量%の範囲とするのが好ましい。
浸透促進剤としては、インク組成物を記録媒体(印刷用紙など)により良く浸透させる目的で好適である。浸透促進剤は、1種単独で用いても2種以上併用してもよい。浸透促進剤の含有量は、インク組成物中に5〜30質量%の範囲であるのが好ましい。また、浸透促進剤は、画像の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こさない量の範囲内で使用することが好ましい。
(水)
インク組成物は、水を含有するものであるが、水の量には特に制限はない。中でも、水の好ましい含有量は、10〜99質量%であり、より好ましくは30〜80質量%であり、更に好ましくは50〜70質量%である。
(その他の添加剤)
本発明におけるインク組成物は、上記成分以外にその他の添加剤を用いて構成することができる。その他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
[処理液]
処理液は、既述のインク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を少なくとも含み、必要に応じて、さらに他の成分を用いて構成することができる。インク組成物と共に処理液を用いることで、インクジェット記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い描画性(例えば細線や微細部分の再現性)に優れた画像が得られる。
凝集剤としては、インク組成物のpHを変化させることができる化合物であっても、多価金属塩であっても、ポリアリルアミン類であってもよい。本発明においては、インク組成物の凝集性の観点から、インク組成物のpHを変化させることができる化合物が好ましく、インク組成物のpHを低下させ得る化合物がより好ましい。
中でも、本発明における凝集剤としては、水溶性の高い酸性物質が好ましく、凝集性を高め、インク全体を固定化させる点で、有機酸が好ましく、2価以上の有機酸がより好ましく、2価以上3価以下の酸性物質が特に好ましい。前記2価以上の有機酸としては、その第1pKaが3.5以下の有機酸が好ましく、より好ましくは3.0以下の有機酸である。具体的には、例えば、リン酸、シュウ酸、マロン酸、クエン酸などが好適に挙げられる。
凝集剤は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
インク組成物を凝集させる凝集剤の処理液中における含有量としては、1〜50質量%が好ましく、より好ましくは3〜45質量%であり、更に好ましくは5〜40質量%の範囲である。
処理液は、本発明の効果を損なわない範囲内で、更にその他の成分として他の添加剤を含有することができる。他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
<記録媒体>
本発明のインクジェット記録方法は、記録媒体に上に画像を記録するものである。
記録媒体には、特に制限はないが、一般のオフセット印刷などに用いられる、いわゆる上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする一般印刷用紙を用いることができる。セルロースを主体とする一般印刷用紙は、水性インクを用いた一般のインクジェット法による画像記録においては比較的インクの吸収、乾燥が遅く、打滴後に色材移動が起こりやすく、画像品質が低下しやすいが、本発明のインクジェット記録方法によると、色材移動を抑制して色濃度、色相に優れた高品位の画像の記録が可能である。
記録媒体の中でも、一般のオフセット印刷などに用いられるいわゆる塗工紙が好ましい。塗工紙は、セルロースを主体とした一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものである。塗工紙は、通常の水性インクジェットによる画像形成においては、画像の光沢や擦過耐性など、品質上の問題を生じやすいが、本発明のインクジェット記録方法では、光沢ムラが抑制されて光沢性、耐擦性の良好な画像を得ることができる。特に、原紙と無機顔料を含むコート層とを有する塗工紙を用いるのが好ましく、原紙とカオリン及び/又は重炭酸カルシウムを含むコート層とを有する塗工紙を用いるのがより好ましい。具体的には、アート紙、コート紙、軽量コート紙、又は微塗工紙がより好ましい。
本発明においては、記録媒体の剛性により搬送体の吸着と送風位置の制御を行っている。記録媒体の剛性は例えば、坪量で判断することができ、坪量が127.9gsm以下の記録媒体は、吸着開始位置を送風位置よりも搬送方向下流側で吸着を行うことが好ましい。また、坪量が230gsmより高い記録媒体は、吸着開始位置を送風位置よりも搬送方向上流側または送風位置と同位置で行うことが好ましい。なお、坪量はあくまでも目安であり、記録媒体のサイズ、形成された画像により適宜変更することができる。
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[試験例1]
インクジェットで印字した菊半裁サイズ(636×469mm)の紙を圧胴搬送で吸着したときの吸着状態を以下の基準で評価を行った。なお、吸着は、紙の先端が搬送体表面の所定の位置に到達したときに、吸着面全体が吸着状態となるように開始した。また、送風手段は、図2に示すように、吸着胴の外周に設置した。
<評価基準>
○:紙全体が均一に吸着されている。
△:紙が浮いて吸着されることがある。
×:紙が浮いて吸着される頻度が高い。
薄紙において、送風位置よりも搬送方向の上流側で吸着を行うと、紙のバタつきや弛みが十分矯正されないまま吸着されていた。また、厚紙において、送風位置よりも後ろすぎて吸着を行うと、送風手段により付着した紙が、紙の剛性により戻ってしまうため、紙の後端が吸着しきれなかった。
[試験例2]
送風手段を渡し胴の内部に設置し、送風位置を紙が吸着胴に接する前とした(図6)以外は、試験例1と同様の方法により行った。結果を表2に示す。試験例2においても、試験例1と同様の結果であった。
[試験例3]
送風手段を、2箇所(吸着胴の外周および渡し胴の内部)に設けた(図8)以外は、同様の方法により試験を行った。なお、試験例3において送風位置とは、圧胴の外周面に設けられた第二の送風手段の位置である。結果を表3に示す。試験例1、2と同様に、記録媒体が薄紙の場合は、吸着開始位置が上流側であると、紙のバタつきや弛みが矯正されずに吸着されてしまい、厚紙の場合は、吸着位置が下流側であると、紙の後端が吸着しきれなかった。
[試験例4]
送風手段を吸着胴の外周に設け、補助吸引手段を吸着胴の外周の記録媒体を渡し胴から受け渡す位置より上流側に設けた(図9)以外は、同様の方法により試験を行った。結果を表4に示す。補助吸引手段を設けることで、試験例3と同様の結果が得られたことより、補助吸引手段は渡し胴内部の送風手段と同等の効果があることが確認できた。
[試験例5]
試験例3で用いた装置(送風手段を2箇所)に、さらに、試験例4と同じ位置に補助吸引手段を設けた装置を用いて、同様の方法により試験を行った。結果を表5に示す。送風手段、補助吸引手段により吸着胴に記録媒体を近づけておくことで、剛性の高い記録媒体を用い、吸着位置を遅くしても、良好に搬送することができる。