以下、図面を参照して本発明に係る実施形態の一例について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェット記録方法を採用したインクジェット記録装置の全体構成を示した概略構成図である。
このインクジェット記録装置100は、描画部116の圧胴(描画ドラム170)に保持された記録媒体Pの記録面にインクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yから複数色の水性紫外線硬化型のインクを打滴して所望のカラー画像を形成する圧胴直描方式のインクジェット記録装置であり、インクの打滴前に記録媒体P上に処理液(インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含む)を付与し、処理液とインク液を反応させて記録媒体P上に画像形成を行う2液反応(凝集)方式が適用されたオンデマンドタイプの画像形成装置である。
すなわち、図1に示すように、インクジェット記録装置100は、主として、給紙部112、処理液付与部114、描画部116、乾燥部118、定着部120、及び排紙部122を備えて構成されている。
給紙部112は、記録媒体Pを処理液付与部114に供給する機構であり、当該給紙部112には、枚葉紙である記録媒体Pが積層されている。給紙部112には、給紙トレイ150が設けられ、この給紙トレイ150から記録媒体Pが一枚ずつ処理液付与部114に給紙されるようになっている。記録媒体Pの浮き上がりを防止するために、給紙トレイ150は外面に吸引孔を設けるとともに、吸引孔から吸引を行う吸引手段を接続してもよい。
また給紙部112内部には、給紙される記録媒体Pの記録面側表面の水分量を測定する紙水分計113(図示せず)が設けられている。紙水分計113により、給紙される記録媒体Pに当初から含まれている水分量が測定され、後述するように定着部120内部に設けられている紙水分計181で測定される、紫外線による定着時の記録媒体Pの同水分量との差が算出される。
本実施形態のインクジェット記録装置100においては、記録媒体Pとして、紙種や大きさ(用紙サイズ)の異なる複数種類の記録媒体Pを使用することができる。給紙部112において各種の記録媒体をそれぞれ区別して集積する複数の用紙トレイ(図示省略)を備え、これら複数の用紙トレイの中から給紙トレイ150に送る用紙を自動で切り換える態様も可能であるし、必要に応じてオペレータが用紙トレイを選択し、若しくは交換する態様も可能である。なお、本例では、記録媒体Pとして、枚葉紙(カット紙)を用いるが、連続用紙(ロール紙)から必要なサイズに切断して給紙する構成も可能である。
処理液付与部114は、記録媒体Pの記録面に処理液を付与する機構である。処理液は、描画部116で付与されるインク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含み、処理液とインクとが接触することによりインクと凝集反応を起こし、インクは色材と溶媒との分離が促進され、インク着弾後の滲みや着弾干渉(合一)あるいは混色が発生せず高品位画像の形成が可能となる。なお、処理液としては、凝集剤の他に必要に応じてさらに他の成分を用いて構成することもできる。インク組成物と共に処理液を用いることで、インクジェット記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い描画性(例えば、細線や微細部分の再現性)に優れた画像が得られる。
図1に示すように、処理液付与部114は、給紙胴152、処理液ドラム154、及び処理液塗布装置156を備えている。処理液ドラム154は、記録媒体Pを保持し、回転搬送させるドラムである。処理液ドラム154は、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)155を備え、この保持手段155の爪と処理液ドラム154の周面の間に記録媒体Pを挟み込むことによって記録媒体Pの先端を保持できるようになっている。処理液ドラム154は、その外周面に吸引孔を設けるとともに、吸引孔から吸引を行う吸引手段を接続してもよい。これにより記録媒体Pを処理液ドラム154の周面に密着保持することができる。
処理液ドラム154の外側には、その周面に対向して処理液塗布装置156が設けられる。記録媒体Pは、処理液塗布装置156によって記録面に処理液が塗布される。
処理液付与部114で処理液が付与された記録媒体Pは、処理液ドラム154から中間搬送部126(第1渡し胴搬送手段)を介して描画部116の描画ドラム170へ受け渡される。
描画部116は、描画ドラム170、及びインクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yを備えている。なお、図1では図示を省略しているが、描画ドラム170に対してインクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yの手前側に記録媒体Pの皺をとるための用紙抑えローラを配置するようにしても良い。
描画ドラム170は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)171を備え、記録媒体の先端部を保持固定するようになっている。また、描画ドラム170は、外周面に複数の吸引孔を有し、負圧によって記録媒体Pを描画ドラム170の外周面に吸着させる。これにより、用紙浮きによるヘッドとの接触が回避され、用紙ジャムが防止される。また、ヘッドとのクリアランス変動による画像ムラが防止される。
このように描画ドラム170に固定された記録媒体Pは、記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面にインクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yから水性紫外線硬化型のインクが打滴される。
インクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yは、それぞれ記録媒体Pにおける画像形成領域の最大幅に対応する長さを有するフルライン型のインクジェット方式の記録ヘッド(インクジェットヘッド)であり、そのインク吐出面には、画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルが複数配列されたノズル列が形成されている。各インクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yは、記録媒体Pの搬送方向(描画ドラム170の回転方向)と直交する方向に延在するように設置されている。
描画ドラム170上に密着保持された記録媒体Pの記録面に向かって各インクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yから、対応する色インクの液滴が吐出されることにより、処理液付与部114で予め記録面に付与された処理液にインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料)が凝集され、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体P上での色材流れなどが防止され、記録媒体Pの記録面に画像が形成されるようになっている。
なお、本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態には限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定されない。
以上のように構成された描画部116により、記録媒体Pに対してシングルパスで描画を行うことができる。これにより、高速記録及び高速出力が可能であり、生産性を高めることができる。
描画部116で画像が形成された記録媒体Pは、描画ドラム170から中間搬送部128(第2渡し胴搬送手段)を介して、乾燥部118の乾燥ドラム176へ受け渡される。
乾燥部118は、色材凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる機構であり、図1に示すように、乾燥ドラム176及び溶媒乾燥装置178を備えている。乾燥ドラム176は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)177を備え、この保持手段177によって記録媒体Pの先端を保持するとともに、ドラム外周表面に吸引孔(図示省略)を有し、負圧により記録媒体Pを乾燥ドラム176に吸着できるようになっている。また乾燥ドラム176の外周面に対向するように、送風手段180(吸着補助手段)と溶媒乾燥装置178が設けられている。
送風手段180は、記録媒体Pの乾燥ドラム176への吸着を補助するためのものであり、記録媒体Pの幅方向の端部側に向かって斜めに風を当てて、保持手段177によってその先端を保持された記録媒体Pが、先端側から後端側に向かって、皺が発生することなく確実に吸着されるようにするものである。
溶媒乾燥装置178は、乾燥ドラム176の外周面に対向する位置に配置され、IRヒータ等とファンの組み合わせを複数配置した熱風乾燥手段182で構成されている。熱風乾燥手段182の各熱風噴出しノズルから記録媒体Pに向けて吹き付けられる熱風の温度と風量を適宜調節することにより、様々な乾燥条件を実現することができる。記録媒体Pは記録面が外側を向くように、乾燥ドラム176の外周面に吸着拘束されて搬送され、この記録面に対して上記IRヒータ及び温風噴出しノズルによる乾燥処理が行われる。
また、乾燥ドラム176は、その外周面に吸引孔を設けるとともに、吸引孔から吸引を行う吸引手段を有している。これにより記録媒体Pを乾燥ドラム176の周面に密着保持することができる。また、負圧吸引を行うことにより、記録媒体Pを乾燥ドラム176に拘束することができるので、記録媒体Pのカックルを防止することができる。
乾燥部118で乾燥処理が行われた記録媒体Pは、乾燥ドラム176から中間搬送部130(第3渡し胴搬送手段)を介して定着部120の定着ドラム184に受け渡される。
定着部120は、定着ドラム184、押圧ローラ188(平滑化手段)、及び紫外線光源190(紫外線照射手段)で構成される。定着ドラム184は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)185を備え、この保持手段185によって記録媒体Pの先端を保持できるようになっている。
定着ドラム184の回転により、記録媒体Pは記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面に対して、押圧ローラ188による平滑化処理が行われた後、紫外線光源190からの紫外線照射による硬化・定着が行われる。
押圧ローラ188は、インクが乾燥された記録媒体Pを加圧することによって記録媒体Pを平滑化するものである。また、紫外線光源190は、記録媒体P上に吐出された水性紫外線硬化型インクによって形成された画像に紫外線を照射して、インクの定着を行うものである。
なお、定着ドラム184の外周面に対向して記録媒体Pに形成された画像の検査を行うインラインセンサを設けてもよい。インラインセンサは、記録媒体Pに定着された画像について、チェックパターンや水分量、表面温度、光沢度などを計測するための計測手段であり、例えばCCDラインセンサを好適に用いることができる。
定着部120に続いて排紙部122が設けられている。排紙部122には、排紙ユニット192が設置される。定着部120の定着ドラム184から排紙ユニット192までの間に、渡し胴194、搬送チェーン196が設けられている。搬送チェーン196は、張架ローラ198に巻き掛けられている。定着ドラム184を通過した記録媒体Pは、渡し胴194を介して、搬送チェーン196に送られ、搬送チェーン196から排紙ユニット192へと受け渡される。
また、図1には示されていないが、本例のインクジェット記録装置100は、上記構成の他、各インクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yにインクを供給するインク貯蔵/装填部、処理液付与部114に対して処理液を供給する手段を備えるとともに、各インクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yのクリーニング(ノズル面のワイピング、パージ、ノズル吸引等)を行うヘッドメンテナンス部や、用紙搬送路上における記録媒体Pの位置を検出する位置検出センサ、装置各部の温度を検出する温度センサなどを備えている。
<水性紫外線硬化型インク>
ここで、本発明において用いられるインク(水性紫外線硬化型インク)について説明する。水性紫外線硬化型インクは、顔料、ポリマー粒子、及び活性エネルギー線により重合する水溶性の重合性化合物を含んでいる。これにより、紫外線を照射することで硬化させることが可能であり、耐擦性に優れ膜強度が高くなっている。
本発明におけるインク組成物は、顔料を含んでおり、必要に応じて、さらに分散剤や界面活性剤、その他の成分を用いて構成することができる。インク組成物は、色材成分として顔料の少なくとも一種を含有する。顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機顔料、無機顔料のいずれであってもよい。顔料は、水に殆ど不溶であるか又は難溶である顔料であることが、インク着色性の点で好ましい。また、顔料は、その表面の少なくとも一部がポリマー分散剤で被覆された水分散性顔料であることが好ましい。
本発明のインク組成物は、分散剤の少なくとも一種を含有することができる。前記顔料の分散剤としては、ポリマー分散剤又は低分子の界面活性剤型分散剤のいずれでもよい。また、ポリマー分散剤は、水溶性の分散剤又は非水溶性の分散剤のいずれでもよい。
ポリマー分散剤の重量平均分子量は、3,000〜100,000が好ましく、より好ましくは、5,000〜50,000であり、さらに好ましくは、5,000〜40,000であり、特に好ましくは、10,000〜40,000である。
ポリマー分散剤の酸価としては、処理液が接触したときの凝集性が良好である観点から、100KOHmg/g以下が好ましい。さらには、酸価は、25〜100KOHmg/gがより好ましく、25〜80KOHmg/gがさらに好ましく、30〜65KOHmg/gが特に好ましい。ポリマー分散剤の酸価が25以上であると、自己分散性の安定性が良好になる。
ポリマー分散剤は、自己分散性と処理液が接触したときの凝集速度の観点から、カルボキシル基を有するポリマーを含むことが好ましく、カルボキシル基を有し、酸価が25〜80KOHmg/gのポリマーを含むことがより好ましい。
本実施形態においては、画像の耐光性や品質などの観点から、顔料と分散剤とを含むことが好ましく、有機顔料とポリマー分散剤とを含むことがより好ましく、さらに有機顔料とカルボキシル基を含むポリマー分散剤とを含むことが特に好ましい。また、顔料は、凝集性の観点からカルボキシル基を有するポリマー分散剤に被覆され、水不溶性であることが好ましい。さらに、凝集性の観点からは、後述の自己分散性ポリマーの粒子の酸価の方が、前記ポリマー分散剤の酸価よりも小さいことが好ましい。
顔料の平均粒子径としては、10〜200nmが好ましく、10〜150nmがより好ましく、10〜100nmがさらに好ましい。平均粒子径は、200nm以下であると色再現性が良好になり、インクジェット法で打滴する際の打滴特性が良好となり、100nm以下であると耐光性が良好になる。また、色材の粒径分布に関しては、特に制限はなく、広い粒径分布又は単分散性の粒径分布のいずれであってもよい。また、単分散性の粒径分布を持つ色材を2種以上混合して使用してもよい。
なお、顔料粒子の平均粒子径及び粒径分布は、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒径を測定することにより求められるものである。
顔料は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。顔料のインク組成物中における含有量としては、画像濃度の観点から、インク組成物に対して、1〜25質量%であることが好ましく、2〜20質量%がより好ましく、5〜20質量%がさらに好ましく、5〜15質量%が特に好ましい。
本発明におけるインク組成物は、ポリマー粒子の少なくとも一種を含有することができる。このポリマー粒子は、後述の処理液又はこれを乾燥させた領域と接触した際に分散不安定価して凝集し、インクを増粘させることによりインク組成物を固定化する機能を有し、インク組成物の記録媒体への定着性及び画像の耐擦過性をより向上させることができる。
凝集剤と反応するために、アニオン性の表面電荷を有するポリマー粒子が用いられ、充分な反応性、吐出安定性が得られる範囲で、広く一般に知られているラテックスが用いられるが、特に自己分散性のポリマー粒子を用いることが好ましい。
本発明におけるインク組成物は、ポリマー粒子として、自己分散性ポリマー粒子の少なくとも一種を含有することが好ましい。この自己分散性ポリマーは、後述の処理液又はこれを乾燥させた領域と接触した際に分散不安定化して凝集しインクを増粘させることによりインク組成物を固定化する機能を有し、インク組成物の記録媒体への定着性及び画像の耐擦過性をより向上させることができる。また、自己分散性ポリマーは、吐出安定性及び前記顔料を含む系の液安定性(特に分散安定性)の観点からも好ましい樹脂粒子である。
自己分散性ポリマーの粒子とは、他の界面活性剤の不存在下に、ポリマー自身が有する官能基(特に酸性基又はその塩)によって、水性媒体中で分散状態となり得る水不溶性ポリマーであって、遊離の乳化剤を含有しない水不溶性ポリマーの粒子を意味する。
本発明における自己分散性ポリマーの酸価としては、処理液が接触したときの凝集性が良好である観点から、50KOHmg/g以下が好ましい。さらには、この酸価は25〜50KOHmg/gがより好ましく、30〜50KOHmg/gがさらに好ましい。自己分散性ポリマーの酸価が25以上であると、自己分散性の安定性が良好になる。
本発明における自己分散性ポリマーの粒子は、自己分散性と処理液が接触したときの凝集速度の観点から、カルボキシル基を有するポリマーを含むことが好ましく、カルボキシル基を有し、酸価が25〜50KOHmg/gのポリマーを含むことがより好ましく、カルボキシル基を有し、酸価が30〜50KOHmg/gのポリマーを含むことがより好ましい。
自己分散性ポリマーの粒子を構成する水不溶性ポリマーの分子量としては、重量平均分子量で3,000〜20万であることが好ましく、5,000〜15万であることがより好ましく、10,000〜10万であることがさらに好ましい。重量平均分子量を3,000以上とすることで水溶性成分量を効果的に抑制することができる。また、重量平均分子量を20万以下とすることで、自己分散安定性を高めることができる。
なお、重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)で測定される。GPCは、HLC−8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgeL SuperHZM−H、TSKgeL SuperHZ4000、TSKgeL SuperHZ2000(東ソー(株)製、4.6mmID×15cm)を3本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いる。また、条件としては、試料濃度を0.35/min.、流速を0.35ml/min.、サンプル注入量を10μl、測定温度を40℃とし、IR検出器を用いて行う。
また、検量線は、東ソー(株)製、「標準試料TSK standard,polystrene」、「F−40」、「F−20」、「F−4」、「F−1」、「A−5000」、「A−2500」、「A−1000」、「n−プロピルベンゼン」の8サンプルから作製する。
自己分散性ポリマーの粒子の平均粒子径は、体積平均粒子径で10nm〜400nmの範囲が好ましく、10〜200nmの範囲がより好ましく、10〜100nmの範囲がさらに好ましい。体積平均粒子径は、10nm以上であると製造適性が向上し、1μm以下であると保存安定性が向上する。
なお、自己分散性ポリマーの粒子の平均粒子径及び粒径分布は、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒径を測定することにより求められるものである。
自己分散性ポリマーの粒子は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。自己分散性ポリマーの粒子のインク組成物中における含有量としては、凝集速度や画像の光沢性などの観点から、インク組成物に対して、1〜30質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。
また、インク組成物中の顔料と自己分散性ポリマーの粒子との含有比率(例えば、水不溶性顔料粒子/自己分散性ポリマーの粒子)としては、画像の耐擦過性などの観点から1/0.5〜1/10であることが好ましく、1/1〜1/4であることがより好ましい。
本発明におけるインク組成物は、活性エネルギー線により重合する水溶性の重合性化合物の少なくとも一種を含有することができる。重合性化合物としては、凝集剤と顔料、ポリマー粒子との反応を妨げない点で、ノニオン性又はカチオン性の重合性化合物が好ましい。また、水溶性とは、水に一定濃度以上溶解できることをいい、水性のインク中に(望ましくは均一に)溶解し得るものであればよい。また、水溶性有機溶剤を添加することにより溶解度が上がってインク中に(望ましくは均一に)溶解するものであってもよい。具体的には、水に対する溶解度が10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。
重合性化合物としては、凝集剤と顔料、ポリマー粒子との反応を妨げない点で、ノニオン性又はカチオン性の重合性化合物が好ましく、水に対する溶解度が10質量%以上(さらには15質量%以上)の重合性化合物が好ましい。
本発明における重合性化合物としては、擦過耐性を高め得る観点から、多官能のモノマーが好ましく、2官能〜6官能のモノマーが好ましく、溶解性と擦過耐性の両立の観点から、2官能〜4官能のモノマーが好ましい。重合性化合物は、1種単独又は2種以上を組み合わせて含有することができる。
重合性化合物のインク組成物中における含有量としては、顔料及び自己分散性ポリマーの粒子の合計の固形分に対して、30〜300質量%が好ましく、50〜200質量%がより好ましい。重合性化合物の含有量は、30質量%以上であると画像強度がより向上して画像の耐擦過性に優れ、300質量%以下であるとパイルハイトの点で有利である。
インク組成物及び処理液の少なくとも一方が、さらに、活性エネルギー線により重合性化合物の重合を開始する開始剤を含む。
本発明におけるインク組成物は、処理液に含有すると共にあるいは含有せずに、活性エネルギー線により重合性化合物の重合を開始する開始剤の少なくとも1種を含有することができる。光重合開始剤は1種単独で又は2種以上を混合して、あるいは増感剤と併用して使用することができる。
開始剤は、活性エネルギー線により重合反応を開始し得る化合物を適宜選択して含有することができ、例えば、放射線もしくは光、又は電子線により活性種(ラジカル、酸、塩基など)を発生する開始剤(例えば、光重合開始剤等)を用いることができる。
開始剤を含有する場合、インク組成物中における開始剤の含有量としては、重合性化合物に対して、1〜40質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。開始剤の含有量は、1質量%以上であると画像の耐擦過性がより向上し、高速記録に有利であり、40質量%以上であると吐出安定性の点で有利である。
本発明におけるインク組成物は、水溶性有機溶媒の少なくとも1種を含有することができる。水溶性有機溶媒は、乾燥防止、湿潤あるいは浸透促進の効果を得ることができる。乾燥防止には、噴射ノズルのインク吐出口においてインクが付着乾燥して凝集体ができ、目詰まりするのを防止する乾燥防止剤として用いられ、乾燥防止や湿潤には、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶媒が好ましい。また、浸透促進には、紙へのインク浸透性を高める浸透促進剤として用いることができる。
乾燥防止剤としては、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶媒であることが好ましい。乾燥防止剤は、1種単独で用いても2種以上併用してもよい。乾燥防止剤の含有量は、インク組成物中に10〜50質量%の範囲とするのが好ましい。
浸透促進剤としては、インク組成物を記録媒体(印刷用紙など)により良く浸透させる目的にとって好適である。浸透促進剤は、1種単独で用いても2種以上併用してもよい。浸透促進剤の含有量は、インク組成物中に5〜30質量%の範囲であるのが好ましい。また、浸透促進剤は、画像の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こさない量の範囲内で使用することが好ましい。
インク組成物は、水を含有するものであるが、水の量には特に制限はない。中でも、水の好ましい含有量は、10〜99質量%であり、より好ましくは、30〜80質量%であり、さらに好ましくは、50〜70質量%である。
本発明におけるインク組成物は、上記成分以外にその他の添加剤を用いて構成することができる。その他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
<各部の詳細>
図2に、本実施形態のインクジェット記録装置100の主要部である処理液付与部114、描画部116、乾燥部118及び定着部120を拡大して示し、本発明に係るインクジェット記録装置についてさらに詳しく説明する。
図2に示すように、処理液ドラム154、中間搬送部126(第1渡し胴搬送手段)、描画ドラム170、中間搬送部128(第2渡し胴搬送手段)、乾燥ドラム176、中間搬送部130(第3渡し胴搬送手段)及び定着ドラム184が、並んで配置され、それぞれのドラムにより記録媒体Pが搬送され、搬送されるうちに処理液付与、描画、乾燥、定着(硬化)が順に行われるようになっている。
各中間搬送部(中間搬送部126、中間搬送部128、中間搬送部130)は、それぞれリブ付きのガイド部材127、129、131を備え、回転軸を挟んで180度対向する方向に延びたアームの先端部の保持爪(図示省略)が記録媒体Pの先端部を把持して回転軸の回りを回転し、記録媒体Pの後端部はフリーの状態で、それぞれガイド部材(127、129、131)に沿って記録媒体Pを記録面の裏面側が凸になるようにして搬送するように構成されている。
なお、中間搬送部126、128、130は、チェーングリッパを用いて、記録媒体Pを掴んで、裏面側を凸にして搬送するように構成してもよい。
本実施形態のインクジェット記録装置100は、記録媒体Pの記録面上に画像を記録するものであり、記録媒体Pとしては、特に制限はないが、一般のオフセット印刷などに用いられる、所謂上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする一般印刷用紙を用いることができる。セルロースを主体とする一般印刷用紙は、水性インクを用いた一般のインクジェット法による画像記録においては比較的インクの吸収、乾燥が遅く、打滴後に色材移動が起こりやすく、画像品質が低下しやすいが、本実施形態のインクジェット記録装置100では、色材移動を抑制して色濃度、色相に優れた高品位の画像記録が可能である。
なお、記録媒体の中でも、一般のオフセット印刷などに用いられる所謂塗工紙が好ましい。塗工紙は、セルロースを主体とした一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものである。塗工紙は、通常の水性インクジェットによる画像形成においては、画像の光沢や擦過耐性など、品質上の問題を生じやすいが、本実施形態のインクジェット記録装置100では、光沢ムラが抑制されて光沢性、耐擦性の良好な画像を得ることができる。特に、原紙と無機顔料を含むコート層とを有する塗工紙を用いるのが好ましく、原紙とカオリン及び/又は重炭酸カルシウムを含むコート層とを有する塗工紙を用いるのがより好ましい。具体的には、アート紙、コート紙、軽量コート紙、又は微塗工紙がより好ましい。
前述したように、処理液付与部114は、記録媒体Pの記録面に処理液を付与するものである。
処理液塗布装置156によって記録面に処理液が塗布される処理液の膜厚は、描画部116のインクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yから打滴されるインクの液滴径より充分に小さいことが望ましい。例えば、インクの打滴量が2pl(ピコリットル)のときには、液滴の平均直径は15.6μmである。このとき、処理液の膜厚が大きい場合には、インクドットが記録媒体Pの表面に接触することなく、処理液内で浮遊する。そこで、インクの打滴量が2plのときに着弾ドット径を30μm以上得るためには、処理液の膜厚を3μm以下にすることが望ましい。
処理液塗布装置156は、主として処理液容器、計量ローラ、塗布ローラによって構成されている(図示せず)。処理液容器には、処理液が貯留されており、この処理液に計量ローラの一部が浸漬される。計量ローラとしては、金属ローラ及び金属ローラ表面にセラミックコーティングを施したローラ周面に一定の線数で規則正しく多数のセルが形成されたアニロックスローラが好適に用いられる。金属ローラの材質としては鉄及びSUS等が用いられる。材質として鉄を用いた場合には、表面の親水性の向上、耐磨耗性の向上及び防錆性を向上させるため、表面にクロム等のメッキを施してもよい。アニロックスローラのセル構造としては、例えば、線数150線以上400線以下、セル深さ20μm以上75μm以下、セル容量30cm3/m2以上60cm3/m2以下のものを好適に用いることができる。計量ローラの直径は、例えば20mm以上100mm以下で形成される。
計量ローラは回動自在に支持されるとともに不図示のモータに連結され、一定の速度で回転駆動される。従って、処理液容器内の処理液を計量ローラの表面に付着させ、この処理液を塗布ローラの表面に転移させることができる。計量ローラの回転方向は塗布ローラと同方向であり、ローラ外周の周速度は塗布ローラと同速、もしくは速度差を設けてもよい。速度差を設ける場合には塗布ローラの周速度に対して計量ローラの周速度を80%以上140%以下が好適に用いられる。塗布ローラと計量ローラとの周速度を調整することにより、計量ローラから塗布ローラへの転移率を調整することが可能であり、記録媒体Pへの塗布膜厚を調整することができる。
計量ローラの表面には、計量用のドクターブレードが当接するように設けられている。ドクターブレードは、計量ローラと塗布ローラとの接触位置に対して、計量ローラの回転方向の上流側に配置され、計量ローラの表面の塗布液を掻き落として計量できるようになっている。これにより、ドクターブレードで計量された塗布液を塗布ローラに供給することができる。
塗布ローラはEPDMやシリコンなどのゴム層を表面に有するゴムローラが好適に用いられる。塗布ローラは回動自在に支持されるとともに不図示のモータに連結され、一定の速度で回転駆動される。塗布ローラの回転方向は処理液ドラム154と同方向であり、ローラ外周の周速度も処理液ドラム154と同速度で回転する。これによって計量ローラから塗布ローラへ転移された処理液が処理液ドラム154上に保持された記録媒体Pに塗布される。
このように、処理液塗布装置156はローラで処理液を塗布するようにしたため、処理液を均一に、かつ塗布量を少なく記録媒体Pに塗布することが可能である。また、処理液塗布装置156は、処理液塗布の搬送胴(処理液ドラム154)を汚さないようにするために、処理液塗布手段のローラを記録媒体毎に接触及び離間させるようになっていることが好ましい。処理液ドラム154は、記録媒体Pの先端を保持する保持爪で記録媒体Pを搬送する。これにより、記録媒体Pの高速搬送が可能であり、また用紙搬送ジャムの発生を低減することができる。
なお、処理液ドラム154の外周に、その周面に対向してIRヒータ及び温風噴出しノズルを設けて、記録媒体Pに塗布された処理液を乾燥するようにしてもよい。IRヒータや温風噴出しノズルを設けた場合には、IRヒータは高温(例えば180℃)に制御され、温風噴出しノズルは高温(例えば70℃)の温風を一定の風量(例えば9m3/分)で記録媒体Pに向けて吹き付けるように構成される。このIRヒータ及び温風噴出しノズルによる加熱によって、処理液の溶媒中の水分が蒸発され、処理液の薄膜層が記録媒体Pの記録面に形成される。このように処理液を薄層化することによって、描画部116で打滴するインクのドットが記録媒体Pの記録面と接触し、必要なドット径が得られるとともに、薄層化した処理液成分と反応して色材凝集が起こり、記録媒体Pの記録面に固定する作用が得られやすい。なお、処理液ドラム154を所定の温度(例えば50℃)に制御するようにしてもよい。
また、処理液は、描画部116で付与されるインク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含んでいる。
凝集剤としては、インク組成物のpHを変化させることができる化合物であっても、多価金属塩であっても、ポリアリルアミン類であってもよい。本実施形態においては、インク組成物の凝集性の観点から、インク組成物のpHを変化させることができる化合物が好ましく、インク組成物のpHを低下させ得る化合物がより好ましい。インク組成物のpHを低下させ得る化合物としては、水溶性の高い酸性物質(リン酸、シュウ酸、マロン酸、クエン酸、もしくはこれらの化合物の誘導体又はこれらの塩など)が好適に挙げられる。
このように、凝集剤としては、水溶性の高い酸性物質が好ましく、凝集性を高め、インク全体を固定化させる点で、有機酸が好ましく、2価以上の有機酸がより好ましい。さらに、2価以上3価以下の酸性物質が特に好ましい。この2価以上の有機酸としては、その第1pKaが3.5以下の有機酸が好ましく、さらに3.0以下の有機酸がより好ましく、具体的には、リン酸、シュウ酸、マロン酸、クエン酸などが好適に挙げられる。
凝集剤で、酸性物質は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これにより、凝集性を高め、インク全体を固定化することができる。インク組成物を凝集させる凝集剤の処理液中における含有量としては、1〜50質量%が好ましく、より好ましくは、3〜45質量%であり、さらに好ましくは、5〜40質量%の範囲である。また、インク組成物のpH(25℃)が8.0以上であって、処理液のpH(25℃)が0.5〜4の範囲が好ましい。これにより、画像濃度、解像度及びインクジェット記録の高速化を図ることができる。
また、処理液には、その他の添加物を分有することができる。この添加物としては、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤などの公知の添加剤が挙げられる。
上述したように本実施形態では、ローラによる塗布方式を適用した構成を例示したが、処理液の付与は、塗布法に限定されず、インクジェット法や浸漬法などの公知の方法を適用して行うことができる。なお、塗布法としては、バーコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター等を用いた公知の塗布方法によって行うことができる。
なお、処理液付与工程は、インク組成物を用いたインク付与工程の前又は後のいずれに設けてもよい。本実施形態においては、処理液付与工程で処理液を付与した後にインク付与工程を設けた態様が好ましい。具体的には、記録媒体P上に、インク組成物を付与する前に、予めインク組成物中の顔料及び/又は自己分散性ポリマーの粒子を凝集させるための処理液を付与しておき、記録媒体P上に付与された処理液に接触するようにインク組成物を付与して画像化する態様が好ましい。これにより、インクジェット記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い画像を得ることができる。
また処理液の付与量としては、インク組成物を凝集可能であれば特に制限はないが、好ましくは、凝集剤の付与量が0.1g/m2以上となる量とすることができる。中でも、凝集剤の付与量が0.2〜0.7g/m2となる量が好ましい。凝集剤は、付与量が0.1g/m2以上であるとインク組成物の種々の使用形態に応じ良好な高速凝集性が保てる。また、凝集剤の付与量が0.7g/m2以下であることは、付与した記録媒体の表面性に悪影響(光沢の変化等)を与えない点で好ましい。
処理液付与部114は、処理液ドラム154の外周面に設けられた保持手段155により記録媒体Pの先端部を保持して搬送しながら、処理液塗布装置156により、処理液を計量しつつ記録媒体Pに処理液を塗布する。
処理液付与部114で処理液が付与された記録媒体Pは、中間搬送部(第1渡し胴搬送手段)126によって次の描画部116へ搬送される。記録媒体Pは、中間搬送部126の保持爪(図示省略)によってその先端部を保持されて、記録面が内側を向き、裏面側がガイド部材127に沿って凸形状となるように搬送される。
また、中間搬送部126は、その内部(回転軸付近)に熱風乾燥手段(図示省略)を有し、搬送中内側を向いている記録媒体Pの記録面(表面)側に熱風を当てて、表面に付与された処理液を乾燥させる。これにより、描画部116において記録媒体Pにインクが打滴されたとき、インク付着時における記録媒体P上での着弾インクの移動が防止される。
描画部116の描画ドラム170は、中間搬送部126によって搬送されてきた記録媒体Pの先端部を、描画ドラム170外周面に設けられた保持手段171により保持するとともに、描画ドラム170外周面に設けられた吸引孔によって記録媒体Pを描画ドラム170外周面に吸着、固定して搬送する。そして、描画ドラム170の外周面に固定された記録媒体Pの、処理液が付与されている表面(記録面)に向けて、インクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yから水性紫外線硬化型のインクが打滴される。
<描画部>
図2に示す描画部116において、描画ドラム170上に密着保持された記録媒体Pの記録面に向かって各インクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yから、対応する色インクの液滴が吐出されることにより、処理液付与部114で予め記録面に付与された処理液にインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料)が凝集され、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体P上での色材流れなどが防止され、記録媒体Pの記録面に画像が形成されるようになっている。
なお、各インクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yから吐出されるインクの液滴量としては、高精細な画像を得る観点で、1〜10pl(ピコリットル)が好ましく、1.5〜6plがより好ましい。また、画像のムラ、連続階調のつながりを改良する観点で、異なる液滴量を組み合わせて吐出することも有効であり、このような場合でも本発明は好適に適用される。
なお、本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態には限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定されない。以上のように構成された描画部116により、記録媒体Pに対してシングルパスで描画を行う。
<乾燥部>
描画部116で画像が形成された記録媒体Pは、描画ドラム170から中間搬送部(第2渡し胴搬送手段)128を介して乾燥部118の乾燥ドラム176へ受け渡される。中間搬送部128は、描画ドラム170から受け取った記録媒体Pを、保持爪(図示せず)によってその先端部を保持して、記録媒体Pの記録面が内側を向き、裏面側がガイド部材129に沿って凸形状となるようにして搬送する。
なお、中間搬送部128は、その内部に不図示の熱風乾燥手段(乾燥手段)を有し、搬送中内側を向いている記録媒体Pの記録面側に熱風を吹き付けて、表面に打滴されたインクを乾燥させる構成とされていてもよい。これにより、インク打滴直後に、インクを乾燥することができるので、インク浸透による記録媒体Pのカックルを低減しやすくなり、乾燥部118における乾燥ドラム176における吸引拘束時の吸着皴の発生を抑止しやすくなる。
乾燥部118は、色材凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる機構であり、乾燥ドラム176、及び乾燥ドラム176の外周面に対向する位置にIRヒータ等とファンの組み合わせを複数配置した熱風乾燥手段182が構成されている。
また、乾燥ドラム176の外周に対向して、複数の熱風乾燥手段182の(乾燥ドラム176の回転方向の)上流側に送風手段180(吸着補助手段)が設けられ、また乾燥部118内部の湿度を調整する調湿手段80および湿度センサ(図示せず)が設けられている。
乾燥ドラム176は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)177を備え、この保持手段177によって記録媒体Pの先端を保持できるようになっている。また、乾燥ドラム176は、その外周面に複数の吸引孔を有し、負圧により記録媒体Pを乾燥ドラム176外周面に吸着し、密着するように拘束して搬送する。このように乾燥ドラム176に拘束された記録媒体Pに対して、熱風乾燥手段182の熱風噴出ノズルから熱風を当てて記録媒体Pを乾燥する。
これにより、カックルの発生が防止される。また、記録媒体Pを乾燥ドラム176外周面に密着させることで、熱風乾燥手段182に記録媒体Pが接触することによるジャムの発生や用紙燃えを防止することができる。
熱風乾燥手段182の熱風噴出しノズルは、所定の温度に制御された温風を一定の風量で記録媒体Pに向けて吹き付けるように構成され、IRヒータは、それぞれ所定の温度に制御される。これらの熱風噴出しノズル及びIRヒータによって、乾燥ドラム176に保持された記録媒体Pの記録面に含まれる水分が蒸発され、乾燥処理が行われる。その際、乾燥部118の乾燥ドラム176は、描画部116の描画ドラム170に対して構造上分離しているので、インクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yにおいて、熱乾燥によるヘッドメニスカス部の乾燥によるインクの不吐出を低減することができる。また、乾燥部118の温度設定に自由度があり、最適な乾燥温度を設定することができる。
なお、蒸発した水分は図示を省略した排出手段によりエアとともに機外に排出することが好ましい。また、回収されたエアを冷却器(ラジエータ)などで冷却して液体として回収してもよい。
また、乾燥ドラム176は、その外周面を所定の温度に制御することが好ましい。記録媒体Pの裏面から加熱を行うことによって乾燥が促進され、定着時における画像破壊を防止することができる。
乾燥ドラム176の表面温度の範囲は、50℃以上が好ましく、より好ましくは60℃以上である。また、上限については、特に限定されるものではないが、乾燥ドラム176の表面に付着したインクをクリーニングするなどのメンテナンス作業の安全性(高温による火傷防止)の観点から75℃以下が好ましい。
また、乾燥ドラム176は、記録媒体Pが搬送される前に所定の温度に加熱しておくことが好ましい。乾燥ドラム176を加熱しておくことで、乾燥を促進させることができるので、画像破壊を防止するとともに、カックルを防止することができる。加熱温度は、上記乾燥ドラム176の表面温度と同じ温度範囲とすることが好ましい。
加熱は、吸引した際の温度低下を防止するため、吸引した状態で所定の温度とすることが好ましい。また、吸引しないで加熱を行う場合は、吸引した際の温度低下を考慮して、所定の温度より高い温度になるように加熱することが好ましい。また、記録媒体Pの記録面が外側を向くように(すなわち、記録媒体Pの記録面が凸側となるように湾曲させた状態で)保持し、回転搬送しながら乾燥することで、記録媒体Pの皺や浮きの発生を防止でき、これらに起因する乾燥ムラを確実に防止することができる。
また、熱風乾燥手段182の上流側に設けられた送風手段180(吸着補助手段)は、乾燥ドラム176への記録媒体Pの吸着を補助するためのものである。送風手段180は、記録媒体P後端側に向かって斜め方向に送風し、記録媒体P幅方向の端部側に向かって斜めに当てるようにし、さらに後端で風力が大きくなるように制御する。これにより、記録媒体P後端での用紙浮きが防止されるとともに、記録媒体Pの吸着皺を取り、均一乾燥と均一吸着を可能とする。このように送風手段180という記録媒体Pに対して非接触な吸着補助手段を用いることで、接触手段を用いて吸着補助を行った場合に、記録媒体Pのまだ乾燥していないインクが接触手段に転写されて画像不良が発生するのを防止することができる。
乾燥ドラム176の吸引力は(開口面積)×(単位面積あたりの圧力)で表すことができる。吸引力は、記録媒体吸着保持領域における吸引孔の占める面積、すなわち、開口率を高くすることで吸引力をより高くすることができる。
また、乾燥ドラム176の外周面に設けられた吸引孔の開口率は、乾燥ドラム176外周面と記録媒体Pとの接触面積に対して、1%以上75%以下であることが好ましい。これは、開口率が1%未満であると、記録後の吸水による記録媒体Pの膨張変形を充分に抑止することができず、また、乾燥ドラム176自体も温まっており記録媒体Pはこれに接することによっても乾燥が促進されるが、開口率が75%を超えると、記録媒体Pの裏面と乾燥ドラム176外周面との接触面積が低下するため、記録媒体Pを吸着保持した状態であっても充分な乾燥性能を得ることができず、カックルも悪化する虞がある。
従って、乾燥ドラム176の外周面における吸引孔の開口率を1%以上75%以下とすることで、カックルの抑制防止及び乾燥性能の向上を図ることができる。
なお、開口率は、吸引孔の径、孔ピッチ、孔の形状及び配置により設定される。孔径は、0.4mm以上、また負圧吸引による記録媒体Pの凹み痕(吸着痕)がつかないように、1.5mm以下に設計することが好ましい。孔ピッチは、乾燥ドラム176外周面の熱変形の防止や剛性確保のため、0.1mm以上5mm以下が好ましい。孔の間隔があまり離れすぎると記録媒体の変形抑止効果が不足し、皺の発生をそれほど抑制できないからである。また、吸引孔の形状は、角(鋭角)形状があると、角部に応力が集中するので、角部を丸めた形状が好ましい。
また、回転搬送体では、吸着圧力による記録媒体Pの変形量は周方向よりも軸方向の方が大きくなる。従って、吸引孔は、周方向を長軸方向、軸方向を短軸方向とした楕円形状又は長穴形状とすることで、記録媒体Pの周方向の変形と軸方向の変形を均等にすることもできる。
また、乾燥ドラム176の外周面に、記録媒体Pの記録面が外側を向くように(すなわち、記録媒体Pの記録面が凸側となるように湾曲させた状態で)保持し、回転搬送しながら乾燥することで、記録媒体Pの皺や浮きの発生を防止でき、これらに起因する乾燥ムラを確実に防止する。
熱風乾燥手段182による乾燥条件を制御することにより湿度調整を行うことも可能だが、本実施形態においては、さらに乾燥部118内部には湿度を調整する調湿手段80が設けられている。調湿手段80は記録媒体Pに含まれる水分量(後述)が所望の範囲内に収まるように、乾燥部118内部の記録媒体Pを乾燥しすぎないように、且つ水分過剰とならないように湿度を調節する。
具体的には、加湿手段と乾燥手段とを適宜組み合わせて調湿手段80とすればよく、加湿手段および乾燥手段としては特に限定されるものではなく、一般的に使用されるスチーム式・ファン式・超音波式などの加湿器を用いることで加湿手段としてもよく、また電熱式ドライヤなどを乾燥手段として用いてもよい。
また乾燥部118後述するように定着部120内部には、紫外線により定着される記録媒体Pの記録面側表面水分量を測定する紙水分計181が設けられている。インク吐出前の記録媒体Pの水分量は、当初から記録媒体Pに含まれていた水分に加えて処理液付与部114で付与された処理液に含まれる水分の合計となる。この上に描画部116でインクジェットヘッド172によりインク滴が吐出され、上記の水分量に加えてインク滴に含まれる水分量が加わることで、乾燥部118に搬送される記録媒体Pの水分量が決定される。紙水分計181で記録媒体Pの記録面側表面水分量を測定し、定着部120における紫外線による定着時にこの値と給紙部112内部に設けられた水分計で測定した記録媒体Pに当初から含まれていた記録面側表面水分量との差が2g/m2以上5g/m2以下となるように乾燥部118内の湿度を調湿手段80で調節する。当該調節は、装置立ち上げ時にテスト画像を印字することにより、或いは、本稼動時に紙水分計を常時チェックし、その結果に基づいて調湿手段80を自動制御することにより行うと好適である。
また、実際に紙水分計181と給紙部112内部に設けられた紙水分計113とで水分量を実測するかわりに、記録媒体Pの種類、処理液付与装置156による記録媒体Pへの処理液付与量、およびインクジェットヘッド172による記録媒体Pへのインク吐出量などの諸条件から、記録媒体Pの表面水分量の差を算出してもよい。
<定着部>
乾燥部118で乾燥処理が行われた記録媒体Pは、乾燥ドラム176から中間搬送部(第3渡し胴搬送手段)130を介して定着部120の定着ドラム184に受け渡される。
定着ドラム184は、中間搬送部130から記録媒体Pを受け取ると、定着ドラム184の外周面に設けられた保持手段185で記録媒体Pの先端部を保持して記録媒体Pを外周面に巻きつけて搬送する。
定着ドラム184の外周面に巻きつけられて搬送される記録媒体Pは、定着ドラム184に対向して配置された押圧ローラ(平滑化手段)188により加圧され、定着ドラム184に押しつけられてカールが矯正され皺が取り除かれる。
押圧ローラ188は、定着ドラム184に対して圧接するように配置されており、定着ドラム184との間でニップローラを構成するようになっている。これにより、記録媒体Pは、押圧ローラ188と定着ドラム184との間に挟まれ、所定のニップ圧(例えば、0.15MPa)でニップされ、平滑化処理が行われる。
また、押圧ローラ188は、加熱ローラであってもよい。例えば、押圧ローラ188を、熱伝導性の良いアルミなどの金属パイプ内にハロゲンランプを組み込んだ加熱ローラとして構成し、この押圧ローラ188で記録媒体Pを加熱するとともに押圧することによって、インクに含まれるラテックスのTg温度(ガラス転移点温度)以上の熱エネルギーが付与され、ラテックス粒子が溶融され、記録媒体Pの画像表面の凹凸がレベリングされ、光沢性が得られる。
乾燥部118内には記録媒体Pの表面温度を測定する放射温度計183が設けられている。放射温度計183は紫外線硬化型インクが吐出された記録媒体Pの表面温度を非接触で測定し、図示しない制御部へ表面温度データとして送る。制御部はデータから表面温度に応じて例えば前述の押圧ローラ188などの温度を制御し、記録媒体Pの表面を最適な温度に温調する。あるいは押圧ローラ188に替えて記録媒体Pの搬送面近傍に別途、IRヒータなどが設けられていてもよい。
次に記録媒体Pは、定着ドラム184に対向して配置された紫外線光源190による紫外線照射を受け硬化・定着が行われる。ここで紫外線光源190を複数用いてもよい。これにより、一つ一つの紫外線光源190の照射強度を低減することにより、照射時間で硬化条件を稼ぐことが可能となり、コストダウン及び紫外線光源190の発熱量低減を図ることができる。また、紫外線光源190の搬送方向上流側には紙水分計181が設けられており、前述したように、このとき記録媒体Pにおいては、当初から含まれていた記録面側表面水分量との差が2g/m2以上5g/m2以下となるようにその水分量が調節されている。
紫外線光源190としては、特に限定されるものではなく、例えば、メタルハライドランプ、水銀ランプ、エキシマレーザー、紫外線レーザー、ブラックライト、冷陰極管、LED、レーザダイオード等が適用可能であり、メタルハライドランプ管、水銀ランプ管もしくはブラックライトなどが好適に用いられる。より好ましくは、発光波長ピークが350〜420nmであり、且つ、記録媒体表面上での最高照度が10〜2000mW/cm2である紫外線を発生する発光ダイオードが好適に用いられる。
紫外線光源190の照射する紫外線のピーク波長は、インク組成物の吸収特性にもよるが、200〜600nmが好ましく、より好ましくは、300〜450nmであり、さらに好ましくは、350〜450nmである。
紫外線光源190の照射エネルギーとしては、2000mJ/cm2以下が好ましく、より好ましくは、10〜2000mJ/cm2であり、さらに好ましくは、800〜2000mJ/cm2である。
また、本発明のインクジェット記録装置では、紫外線は記録媒体の記録面に対して、好ましくは、0.01〜10秒、より好ましくは、0.1〜2秒照射することが適当である。
なお、紫外線照射手段である紫外線光源190を複数個設けてもよい。これにより1つ1つの紫外線光源190の照射強度を低減し、照射時間の合計で硬化条件を稼ぐことが可能となり、コストダウン、紫外線光源190の発熱量低減などの効果が期待できる。
<インク吐出量ごとの最適紫外線強度と記録媒体の水分量の関係>
図4(表1)は、紫外線照射量と、定着工程前の記録媒体Pの水分量とを変化させた場合の定着後のインクについての密着性評価結果である。
ラジカル発生量が相対的に多い、液滴体積の小さい低密度吐出(2.4〜3.0pl)条件においては、記録媒体Pの記録面側表面上の水分量と当初から含まれていた水分量との差が多いほうが酸素重合阻害の影響が小さく、あるいはラジカルのモビリティが大きいと推測されるために、紫外線照射量の少ない領域で効率よく硬化して密着性評価「○」となる。
一方でラジカル発生量が相対的に少なくなる、液滴体積の大きい高密度吐出(4.0〜5.0pl)条件においては、水分量差が少ないほうが、二重結合密度が濃くなっていると推測されるために、紫外線照射量の少ない領域で効率よく硬化して密着性○となる結果を得た。
これらのことから、液滴体積2.4〜5.0plの全域で好適な紫外線照射量800mJ/cm2以上で密着性評価「○」となる水分量差の領域は、2〜5g/cm2である。水分量差が2g/cm2よりも少ない場合、印画部の低密度吐出領域では十分に硬化せず、また水分量差が5g/cm2よりも多い場合、印画部の高密度吐出領域では十分に硬化しないという知見が得られている。実験条件および方法を下記に示す。
・樹脂被覆マゼンタ顔料分散物(M)
ピグメント・ブルー15:3(Chromophthal Jet Magenta DMQ(ピグメント・レッド122、チバ・ジャパン社製))10部と、上記ポリマー分散剤P−1を5部と、メチルエチルケトン42部と、1mol/L NaOH水溶液5.5部と、イオン交換水87.2部とを混合し、ビーズミルにより0.1mmφジルコニアビーズを用いて2〜6時間分散した。
得られた分散物を減圧下、55℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去することにより、顔料濃度が10.2質量%の樹脂被覆マゼンタ顔料の分散物(着色粒子)(M)を得た。
マゼンタインク:
・樹脂被覆マゼンタ顔料の分散物(M) ・・・ 6%(固形分濃度)
・重合開始剤 ・・・ 3%
・NKエステル ・・・ 20%
・オルフィンE1010(日信化学(株)製;界面活性剤・・・ 1%
・尿素(日産化学工業株式会社) ・・・3%
・イオン交換水・・・残量(全量で100質量%となるよう加えた)
処理液:
・マロン酸(立山化成(株)製;酸性化合物) ・・・25.0%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(水溶性有機溶媒)・・・5%
・イオン交換水・・・残量(全量で100質量%となるよう加えた)
記録媒体(塗工紙)として、OKトップコート+(坪量104.7g/m2)を用意して、以下に示すようにして画像を形成し、形成された画像について以下の評価を行った。記録媒体には、全てOKトップコート+を用いた。
インク組成物として、上記マゼンタインク用い、処理液と共にインクセットを構成し、下記に示す方法で、4色シングルパス記録によりライン画像とベタ画像を形成した。まず、図4に示すように、記録媒体の搬送方向(図中の矢印方向)に向かって順次、水性処理液を吐出する処理液付与部12と、付与された水性処理液を乾燥させる処理液乾燥ゾーン13と、各種水性インクを吐出するインク吐出部14と、吐出された水性インクを乾燥させるインク乾燥ゾーン15と、紫外線(UV)を照射可能なUV照射ランプ16Sを備えたUV照射部16とが配設されたインクジェット装置を準備した。
処理液乾燥ゾーン13は記録媒体の記録面側には乾燥風を送って乾燥を行なう送風器(図示せず)を備え、記録媒体の非記録面側には赤外線ヒータ(図示せず)を備えており、処理液付与部で処理液の付与を開始した後900msecが経過するまでに、温度・風量を調節して水性処理液中の水の70質量%以上を蒸発(乾燥)できるように構成されている。
また、インク吐出部14は、搬送方向(矢印方向)にブラックインク吐出用ヘッド30K、シアンインク吐出用ヘッド30C、マゼンタインク吐出用ヘッド30M、及びイエローインク吐出用ヘッド30Yが順次配置されており、各ヘッドは1200dpi/20inch幅フルラインヘッドであり、各色をシングルパスで主走査方向に吐出して記録できるようになっている。
本実験では図3に示すように構成されたインクジェット装置のインク吐出用ヘッドにそれぞれ繋がる貯留タンク(図示せず)に、上記で得たインクを装填して、記録媒体にベタ画像及び1200dpiのライン画像を記録した。
ライン画像は、1200dpiの幅1ドットのライン、幅2ドットのライン、幅4ドットのラインをシングルパスで主走査方向に吐出して記録し、ベタ画像は、記録媒体をA5サイズにカットしたサンプルの全面にインクを吐出してベタ画像とした。尚、記録する際の諸条件は下記の通りである。
1.処理液付与工程
記録媒体の全面に、アニロックスローラ(線数100〜300/インチ)で塗布量が制御されたロールコーターにて付与量が1.4g/m2となるように処理液を塗布した。
2.処理工程
次いで、下記条件にて処理液が塗布された記録媒体について乾燥処理及び浸透処理を施した。
・風速:10m/s
・温度:記録媒体の記録面側の表面温度が60℃となるように、記録媒体の記録面の反対側(背面側)から接触型平面ヒータで加熱した。
3.インク付与工程
その後、処理液が塗布された記録媒体の塗布面に、下記条件にてインク組成物をインクジェット方式で吐出し、ライン画像、ベタ画像をそれぞれ形成した。
・ヘッド:1200dpi/20inch幅のピエゾフルラインヘッドを4色分配置
・吐出液滴量:2.4〜5.0pL
・駆動周波数:30kHz
4.インク乾燥工程
次いで、インク組成物が付与された記録媒体を、記録媒体の記録面側表面の水分量が当初から含まれていた水分量よりもカーフフィッシャー水分量計で測定して1.0〜7.0g/m2多く含まれるようになるように、記録媒体の記録面の反対側(背面側)から熱風乾燥した。
5.UV露光工程
画像乾燥後、UV照射部16において、UV光(アイグラフィックス(株)製 メタルハライドランプ 最大照射波長 365nm)を積算照射量100〜1500mJ/cm2になるように照射して画像を硬化した。
6.硬化感度評価
セロハンテープを上記ベタ画像が形成された評価用サンプルの印画面に貼り付け、ゆっくりと引き剥がした後のセロハンテープの接着面、および印画面を目視により観察し、下記の評価基準にしたがって評価した。
評価基準としては以下の通り。
◎ … 印画面に画像(色材)のはがれが視認できなかった。
○ … 印画面に画像(色材)のはがれがわずかに認められたが実用上問題ない。
△ … 印画面に画像(色材)のはがれが視認でき、実用上問題になるレベル。
× … 印画面に画像(色材)の大きなはがれが視認できた。
<効果>
前述のように、水性紫外線硬化型インクを用いた本実施形態のプロセスにおいて、乾燥部118内で記録媒体Pの水分量差を2g/m2以上、5g/m2以下に調整することで、吐出液量2.4pl〜5.0plの広範囲でインクの膜強度(密着性評価結果)を実用上問題のないレベルに収めることができる。
<まとめ>
以上説明したように、本実施形態においては、記録媒体を給紙する給紙工程と、水性紫外線硬化型インクを前記記録媒体上に吐出する吐出工程と、前記吐出工程後における前記記録媒体の記録面側表面水分量を、前記給紙工程における当該記録媒体の記録面側表面水分量との水分量差が2g/m2以上5g/m2以下となるように調整する調湿工程と、前記水分量差に調整された前記記録媒体上の前記水性紫外線硬化型インクを照射量800mJ/cm2以上の紫外線で硬化させ定着させる定着工程と、を含むインクジェット記録方法としたため、記録媒体の水分量を管理して紫外線硬化型インクを確実に硬化させるインクジェット記録方法とすることができる。
<その他>
以上、本発明の実施例について記述したが、本発明は上記の実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。
例えば上記実施形態では水性紫外線硬化型インクを用いたインクジェット記録方法を例に挙げたが、これに限定せず例えば他の種類の記録方法においても記録媒体の湿度を一定に保つ必要のある構成であれば本発明の実施形態が適用されていてもよい。