JP2009285878A - インクジェット記録装置及びパージ方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】インクジェット記録装置において、ノズルの吐出安定性に優れ、パージおける記録媒体や装置内の汚染を低減する。
【解決手段】記録媒体(14)を搬送する圧胴(216,306)及び渡し胴(3040)と、ポリマー粒子を含有するインクを打滴するインクジェットヘッドと、記録媒体の余白領域に対してインクジェットヘッドのパージを実行するようにインクジェットヘッドの打滴を制御するヘッドドライバと、記録媒体に加熱処理を施す搬送ガイド(150)及び溶媒乾燥ユニット(308)と、インクジェットヘッドのパージによるインクが付着した記録媒体の温度が前記ポリマー粒子の最低造膜温度以上の温度になるように搬送ガイドの加熱処理を制御する溶媒乾燥制御部、及び溶媒乾燥ユニットの加熱処理を制御する熱圧定着制御部と、を備える。
【選択図】図27

Description

本発明はインクジェット記録装置及びパージ方法に係り、特に記録媒体上に液体を吐出するヘッドのメンテナンス技術に関する。
特許文献1には、枚葉印刷機におけるチェーン搬送部や渡し胴(乾燥胴)に加熱手段を設けてニスコーティングを乾燥させる構成が開示されている。
特許文献2には、インクを吐出するインク吐出用ヘッドと、該インクを凝集させる性質を有する反応液吐出ヘッドとを備え、インク吐出用ヘッドのフラッシングを非記録領域で行わせ、反応液用吐出ヘッドのフラッシングを記録領域で行わせる構成が開示されている。
特許文献3には、インク打滴後の記録媒体を加熱して、カールや定着性を改善させる構成が開示されている。
特開2003−237018号公報 特開2005−225115号公報 特開平3−227631公報
特許文献1に開示された構成は、用紙をチェーンや圧胴に設けたグリッパで搬送しながら乾燥するため、ジャミングなどの搬送不良の少ない安定した通紙が可能であるが、インクを枚用紙(記録媒体)に固定する構成は示されておらず、枚用紙の余白にインクをパージすると打滴の重なりで液流れを生じてしまう。また、乾燥不足のインクが付着することで枚用紙や装置を汚染しやすい。更に、渡し胴における乾燥では上流と下流に配置した渡し胴が有効活用されず、装置の大型化やコストアップも生じやすい。また、乾燥量を適切に制御しなければ、用紙の種類(塗工層、坪量など)や温湿度、液体付与量、乾燥温度などの変化に対して安定した乾燥が難しい。
特許文献2に開示された構成は、フラッシング(インクパージ)を非記録領域である用紙外に行うので、パージしたインクが用紙に付着することの防止は可能であるが、パージしたインクの貯蔵や回収が必要であり、特に、高速処理機ではパージしたインクの後処理(貯蔵、回収等)が課題となる。また、高速処理機にはライン型ヘッドが好適であるが、連続処理中にはヘッドを退避させることができないため、特許文献2に開示された構成に対してライン型ヘッドの適用は難しい。
特許文献3に開示された構成は、描画工程の下流に加熱手段を設けることでインクの乾燥を促進することは可能であるが、ラテックス等のポリマー粒子を添加していないインクを加熱乾燥しただけでは十分な固定性を得ることは難しい。また、インクの乾燥を制御しないと、乾燥不足によるインクの定着不足、過剰乾燥によるシワやひび割れなどを生じやすく、用紙の調湿状態や機内外の温湿度変化によっても乾燥のバラつきを生じやすい。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、上記の課題を解決し、ノズルの吐出安定性に優れ、記録媒体や装置内の汚染を低減することができ、液体の乾燥制御にも利用可能な乾燥手段を備えるインクジェット記録装置及びその乾燥技術を用いたパージ方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために本発明に係るインクジェット記録装置は、記録媒体を搬送する搬送手段と、ポリマー粒子を含有するインクを打滴するノズルを具備するインクジェットヘッドと、前記記録媒体の余白領域に対して前記インクジェットヘッドのパージを実行するように前記インクジェットヘッドの打滴を制御する打滴制御手段と、前記記録媒体に加熱処理を施す加熱処理手段と、前記インクジェットヘッドのパージによるインクが付着した記録媒体の表面温度が前記ポリマー粒子の最低造膜温度以上の温度になるように前記加熱処理手段を制御する加熱処理制御手段と、を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、記録媒体の余白領域にパージされたインクを加熱(乾燥)して記録媒体に固定させるので、液流れや裏写り、装置内部の汚染を防止した好ましいパージが可能である。また、パージによるインクの回収も不要である。
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
<インクジェット記録装置の全体構成>
図1は本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の構成図である。図1に示すように、本実施形態のインクジェット記録装置10は、記録媒体14に直接的に画像を形成する直接描画方式の一形態として、圧胴が構成された圧胴直描方式のインクジェット記録装置である。
このインクジェット記録装置10は、記録媒体14を供給する給紙部22と、記録媒体14に対して浸透抑制処理を行う浸透抑制処理部24と、記録媒体14にインク凝集剤などの処理液を付与する処理液付与部26と、記録媒体14に色インクを付与して画像形成を行う印字部28と、色インクの溶媒を乾燥させる溶媒乾燥部30と、画像を堅牢化する熱圧定着部32と、画像が形成された記録媒体14を搬送して排出する排出部34とから主に構成される。
給紙部22には、枚葉紙の形態の記録媒体14を供給する給紙トレイ36が設けられている。給紙トレイ36から粘着ローラ37によって送り出された記録媒体14は、渡し胴38を介して、グリッパ(不図示)で浸透抑制処理部24の圧胴40の周面に給紙される。
本装置は、インクジェットを用いた各種メディアへの良好な画像形成を目的として凝集処理剤を用いている。特に光沢安定ポリマー粒子(Lx)を添加した凝集処理剤を付与乾燥した記録媒体に定着用ポリマー粒子を添加したインクを打滴して画像を形成し、凝集後に加熱して水分を除去しポリマー粒子を溶融して記録媒体に固定する方式が採用されている。
本方式では凝集処理剤やインクの乾燥を添加ポリマー粒子の溶融状態や乾燥温度に配慮して均一に効率良く行うことが望まれる。特許文献1〜5等で提案されている従来の手段では、乾燥風のムラや紙厚、液体付与量などのバラツキで安定化が難しく、乾燥部の出口温度や出口水分量を測定して乾燥補正する系では応答が遅れやすく、枚葉紙のきめ細かな乾燥制御も難しかった。本実施形態のインクジェット記録装置10は、これら課題を解決する乾燥手段を採用している。
(浸透抑制処理部の説明)
浸透抑制処理部24には、圧胴40の回転方向(図1において反時計回り方向)に関して上流側から順に、圧胴40の周面に対向する位置に、液体塗布装置42、用紙押さえ44、及び浸透抑制剤乾燥ユニット46がそれぞれ設けられている。
図2は浸透抑制処理部24の構成図である。図2に示すように、液体塗布装置42は、回転する圧胴40に対して、転造などで外周にらせん溝を形成したスパイラルローラ48を押し当て、該スパイラルローラ48を圧胴40の回転方向と逆方向(同図において反時計回り方向)に所定の一定速度で回転駆動することにより、圧胴40のグリッパ(不図示)に保持されて回転移動する記録媒体14の所望領域に対して選択的に浸透抑制剤を付与する装置である。
なお、圧胴40の周面は弾性層41により覆われており、これにより、圧胴40とスパイラルローラ48の間の位置ずれが緩和され、また、記録媒体14の巻き付けが安定する。圧胴40の周面にある弾性層41を硬度20〜80°の弾性体とすることにより、スパイラルローラ48の接触が安定し塗布が均質化する。更に、圧胴40の周面にある弾性層41の材質をフッ素ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素エラストマー、シリコン系エラストマーのいずれかとすることにより、表面張力(表面エネルギー)が10〜40mN/mに設定でき、撥液性も確保できるので圧胴40の周面のクリーニング性にも優れる。また、用紙の巻付密着性も向上して好ましい。
具体例として、圧胴40を鋳鉄などで効率的に形成し、表面に厚み0.1〜1mmのフッ素ゴム、又はウレタンゴム、シリコーンゴム、又はフッ素エラストマー(信越化学工業株式会社:SIFEL600シリーズなど)の撥液性の弾性層41を付与すること、が考えられる。なお、弾性層41の材質としては、ゴムの表面にPFAなどを被覆したものでもよい。
図3にスパイラルローラ48の拡大図を示す。スパイラルローラ48は、その外周面にダイスの転造やワイヤの巻き付けなどにより、ほぼその回転方向に沿って溝(窪み)が形成された塗布用ローラであり、記録媒体14の被塗布面の幅寸法と同等以上の長さ(幅寸法)を有する。スパイラルローラ48の溝形状、ピッチa、溝深さb等は、塗布すべき液量(塗布後の液膜の厚さ)に応じて適宜選択される。例えば、本実施形態の液体塗布装置42の場合、ピッチa=0.08〜0.2mm、溝深さb=5〜20μmのスパイラルローラが好適である。
図4はスパイラルローラ48の溝形状を表す概要図である。なお、図4では、溝形状の特徴を分かりやすくするため、溝形状や溝のピッチ等を簡略化して示している。図4に示すように溝形状としては、螺旋状(図4(a))の他、独立溝(図4(b))や左右螺旋(図4(c))、多条螺旋(不図示)などが考えられる。特に、独立溝の場合には被塗布媒体の幅方向への液流れが抑制でき、また、左右螺旋の場合には被塗布媒体(記録媒体14)のシワが抑制できる。なお、左右螺旋の場合の変形例として、1つのスパイラルローラ48を、左螺旋状が外周面に形成されたスパイラルローラと右螺旋状が外周面に形成されたスパイラルローラに分割した例も考えられる。
図5は、スパイラルローラ48の外周面の断面形状を表す概要図である。図5に示すように外周面の断面形状としては、S字状曲面(図5(a))の他、山部を平面にした形状(図5(b))又は谷部を平面にした形状(図5(c))、山部と谷部を平面にした形状(図5(d))も考えられる。特に、山部を平面にすれば耐磨耗性が向上し、また、谷部を平面にすれば溝内に多くの液体が入り込んでローラ外周面に多くの液体を付着させることができる。
かかる構成のスパイラルローラ48に対し浸透抑制剤(第1液)を付与する手段として、図2に示した液体塗布装置42は容器50内に液体噴射部52を備える(図2参照)。この液体噴射部52の噴射部材として、噴射角を制御できる一流体フラットスプレーノズル、或いは加圧式二流体フラットスプレーノズルが適用される。具体的には、例えば、オリフィス径0.2〜0.4mm程度で噴射角60〜100°が実現される一流体フラットスプレーや、これと同等サイズの加圧式二流体フラットスプレーが挙げられる。
図2のように、液体噴射部52は、スパイラルローラ48の下方からスキージブレード60の先端付近に向けて浸透抑制剤の噴射を行う。その際、画像形成領域の幅に合わせた付与幅となる噴射角となるように、噴射圧力が制御される。すなわち、液体噴射部52は、塗布液を供給する幅を制御する供給幅制御手段として、スパイラルローラ48の外周面における浸透抑制剤を供給する幅を制御する。
図6に示したように、フラットスプレーノズルは、噴射角αで流体が噴射されるため、液体噴射部52のノズルボディ54の吐出面と吹き付け面56との距離Lによって、噴射範囲58の実質的な噴射幅Wspが規定される。なお、フラットスプレーノズルは、単数で用いる態様に限らず、複数をスパイラルローラ48の幅方向に並べて用いてもよい。この場合は、搬送方向の他、幅方向の除去制御も可能となる。
図7は液体噴射部52の噴射圧と噴射幅の関係を模式的に示した説明図である。図示のように、液体噴射部52のノズルは、少なくとも2種類の噴射幅(幅方向の噴射範囲)の切り替えが可能である。図7では噴射圧力の強弱によって2種類の噴射幅を実現する例を示しているが、記録媒体14の用紙サイズの種類や画像形成範囲の違いに対応して、3種以上の噴射幅を実現する態様も可能である。記録媒体14の情報は、センサ等によって自動的に取得してもよいし、オペレータによって入力されることにより取得してもよい。
フラットスプレーによる液体の噴射パターンは、図8に示すように、幅方向について液量分布が生じる。また、噴射圧力によっても噴射量(流量)が変化する。しかし、本例の場合、有効画像エリアの幅よりも広い範囲が塗布できるよう、スキージブレード60で余分な液体を除去するため、結果的にスパイラルローラ48に対する液体の付与量を安定に保つことができ、塗布幅を制御した均一な塗布が可能である。
本実施例では、螺旋状の溝が形成されたスパイラルローラ48を用いるので、溝部の凹凸により浸透抑制剤の幅方向への液溢れが低減できる。そのため、幅制御性が一層向上し、コート紙の潤滑効果で幅方向非塗布部に対しても接触摩擦の低減が図れる。
このスパイラルローラ48の一部(図2において下側の部分)に液体噴射部52から浸透抑制剤を噴射することで、スパイラルローラ48の溝内に浸透抑制剤が入り込み、ローラ外周面に浸透抑制剤が付着する(塗布液供給工程)。
図2に示すとおり、容器50内には、スパイラルローラ48の外周面から余剰液を掻き落とす手段としてのスキージ部材であるスキージブレード60が立設されている。ここでいう「余剰液」は、スパイラルローラ48の外周面に付着した液体のうち、スパイラルローラ48に形成された溝の外に付着した分である。このスキージブレード60は、その先端部がスパイラルローラ48に接するように配設され、該先端部はスパイラルローラ48の周面を押す方向に付勢されている。当該付勢力はスキージブレード60自体の弾性変形によるものであってもよいし、バネその他の付勢部材(図示せず)を用いて外部から付与するものでもよい。
こうして浸透抑制剤を付与したスパイラルローラ48を回転させながら、スキージブレード60で浸透抑制剤の余剰液を掻き落とすことにより、溝内に保持された液体のみがスキージブレード60を抜けてくる(スキージ工程)。
また、本実施形態では、記録媒体14の搬送方向(以下「媒体搬送方向」という場合がある。)について浸透抑制剤の塗布範囲を制御する観点から、液体塗布装置42において、スパイラルローラ48の回転方向に対して、スキージブレード60の下流側に、ブレード部材であるメインブレード62を配置し、スパイラルローラ48外周面に対し当接離間するように制御する。
メインブレード62をスパイラルローラ48の外周面の一部範囲に当接させることにより、スパイラルローラ48の溝内の浸透抑制剤を含め外周面に塗布された液体を除去することができる(ブレード当接工程)。
メインブレード62によるスパイラルローラ48上からの液体の除去範囲を制御することにより、記録媒体14への浸透抑制剤の塗布範囲(媒体搬送方向についての領域)を制御できる(ブレード当接離間制御工程)。
具体的には、記録媒体14上の非画像形成部に相当する領域に対してメインブレード62をスパイラルローラ48の外周面に当接させ、記録媒体14上の画像形成部に相当する領域に対してメインブレード62をスパイラルローラ48の外周面から離間させる。このように、記録媒体14上の非画像形成部への処理液の塗布は行われず、選択的に画像形成部のみについて処理液を塗布することができる(図9(a)参照)。
図9(a)は記録媒体14の搬送方向について塗布範囲(塗布面積)を制御したものである。図9(b)は記録媒体14の幅方向及び搬送方向について塗布範囲を制御したものである。
記録媒体14は、画像が形成される有効画像部68の領域よりも大きい幅を有し、有効画像部68よりも広い領域(符号70で示す塗布部)に対して浸透抑制剤が塗布される。
図9(c)は、メインブレード62の離接制御のタイミングを表している。図9(d)は、スパイラルローラ48への塗布液(処理液)の付与制御を表している。
図9(d)が示すとおり、スパイラルローラ48自体には塗布液を一定に付与し続けており、(c)に示すメインブレード62の離接制御によって、搬送方向についての塗布範囲が制御される(図9(a)、(b)参照)。
また、記録媒体14の用紙サイズの変更に対応して、液体噴射部152の噴射圧を制御し、幅方向の塗布範囲を変更する。
かかる態様によれば、不要な領域への浸透抑制剤の塗布を抑制でき、枚葉紙など非連続的に用紙を供給する場合でも圧胴40への浸透抑制剤の付着が防止できる。このため、装置の動作が安定し、経時での汚れや腐食などの信頼性も向上する。なお、図2のように、容器50の底部には液体排出口64が形成されており、この液体排出口64は図示せぬ排出弁を介して回収タンクに接続されている。回収された液は塗布用の液として再利用することが可能である。
図10は、液体塗布装置42を構成するスパイラルローラ48の移動機構(当接/離間機構)や回転駆動手段、スキージブレード60、メインブレード62の回転機構などの概要を示す斜視図である。
図10に示すように、スパイラルローラ48の回転駆動手段の一例として、モータ72とタイミングベルト74等の巻き掛け伝動手段との組み合わせによる形態がある。ただし、この構成に限らず、インバータモータによるダイレクト駆動(軸直結)や、各種モータと減速機(ギア等)との組み合わせなどであってもよい。なお、スパイラルローラ48の回動軸には軸受け76が設けられている。
スパイラルローラ48は、プッシュラッチ78などの移動機構(当接/離間機構)によって、前記の図2の上下方向に移動自在に支持されている。そのため、圧胴40に対してスパイラルローラ48を押し当てた状態(図2に示した当接(ニップ)状態)と、記録媒体14からスパイラルローラを離間(退避)させた状態とに切り替える制御を行うことができる。
図10に示すように、メインブレード62は、カムモータ80により偏芯カム82を回転させて回動軸82aを中心にして回転させることができる。これにより、スパイラルローラ48に対し押し当てて当接させた状態と、スパイラルローラ48から離間させた状態とに切り替える制御を行うことができる。
また、図2の破線で示したように、メインブレード62の付勢力を大きくして、スパイラルローラ48を圧胴40から離間させることも考えられる。これにより、待機中などの非塗布時や液体クリーニング停止時におけるスパイラルローラ48と被塗布媒体の間の摩擦を回避でき、また、圧胴40に設けられたグリッパ(不図示)の段差部分とスパイラルローラ48の接触も回避させることができる。なお、スパイラルローラ48を圧胴40から離間させてプッシュラッチ78(図10参照)により固定支持をしておけば、更に装置の信頼性が向上する。
上記構成からなる液体塗布装置42によれば、液体噴射部52によって幅方向の処理液付与幅が制御され、メインブレード62によって、用紙搬送方向(スパイラルローラ48における円周方向)の液体与範囲が制御される。
また、図2で説明した形態に代えて、図11に示すように、メインブレード62の付勢力を切り替え可能とし、スキージブレード60を用いることなくメインブレード62のみ(1枚のブレードのみ)で塗布制御を行う液体塗布装置42´の形態も可能である。
その他、図示しないが、液体噴射部52を備えず、スパイラルローラ48を容器50内に導入された浸透抑制剤に浸すことで、スパイラルローラ48の外周面に浸透抑制剤を付着させてもよい。
また、表面に塗工層が施された記録媒体14、又は、潤滑成分を含む液体が付与された記録媒体14を使用すれば、非塗布部でもスパイラルローラ48と記録媒体14との接触摩擦の低減が図れ、一段と安定で信頼性の高い塗布ができる。
本実施形態で用いる浸透抑制剤としては、表1に記載したLX−1やLX−2などのポリマー粒子を水や溶剤に添加したラテックス溶液が好適に用いられ、調液の一例を後述の『<各液の調整>(1)浸透抑制剤の調整』に示す。
Figure 2009285878
もちろん、浸透抑制剤は、ラテックス溶液に限定されるものではなく、例えば、平板粒子(雲母等)や撥水剤(フッ素コーティング剤)などを適用することも可能である。
浸透抑制剤を塗布する液体塗布装置42(42’)の下流側に配置された用紙押さえ44(図2,図11参照)は、圧胴40の周面に給紙された記録媒体14の両端や後端を押さえながら圧胴40の回転方向に送り出すためのローラである。
浸透抑制剤乾燥ユニット46には、50〜130℃の範囲で温度制御可能なヒータと、5〜50m/sの風速で下流に向かって吹き出すファンが設けられる。塗布胴である圧胴40に保持された記録媒体14は、浸透抑制剤乾燥ユニット46に対向する位置から下流を通過する際、ヒータによって50〜130℃に熱せられた熱風がファンにより記録媒体14に当てられ、記録媒体14を加熱して浸透抑制剤をプレ乾燥する。
浸透抑制処理部24に続いて処理液付与部26が設けられている。浸透抑制処理部24の圧胴40と処理液付与部26の圧胴86との間には、これらに対接するようにして渡し胴84が設けられている。これにより、浸透抑制処理部24の圧胴40に保持された記録媒体14は、浸透抑制処理とプレ乾燥が行われた後に、渡し胴84を介して、グリッパ(図1中不図示、図12の符号91又は92)で処理液付与部26の圧胴86に受け渡される。
(渡し胴の構造)
ここで、渡し胴84の構造例について説明する。
図12は渡し胴84の構造例(第1例)の詳細を示す断面図であり、図13は図12のA−A線に沿う断面図(渡し胴84の中心軸を含む切断面による断面図)である。図12には、先の記録媒体(図12の左側)が渡し胴84から圧胴86に受け渡され、該記録媒体の先端部を圧胴86のグリッパ87が挟持して搬送し、更に、次の記録媒体(図12の右側)が圧胴40から渡し胴84に受け渡され、次の記録媒体の先端部を渡し胴84のグリッパ91が挟持して搬送する状態を図示する。
これらの図面に示したように、渡し胴84の外周部には記録媒体14(以下「用紙」という場合がある。)を挟み込んで(咥えて)保持・搬送するためのグリッパ91、92が2ケ所に対称に配置されている。このグリッパ91、92を備えた渡し胴84の内部には、記録媒体14に向けて乾燥用の熱風を噴射するための熱風噴射部材96が固定設置されている。また、渡し胴84における2カ所のグリッパ支持部101,102以外の渡し胴周面領域には、その熱風を通過させるための開口部104、105が形成されている。
熱風噴射部材96は、渡し胴84と同軸の円筒形状を有し、その周面の一部領域(図12において周面下側の領域)に熱風の吹き出し口となる多数の孔108が形成されている。
当該熱風噴射部材96の内部には加熱手段としてのヒータ110が設置されている。ヒータ110は、渡し胴84の中心部にその軸に沿って延在する形態で配置される。なお、ヒータ110として、例えば、ハロゲンヒータ、赤外線(IR)ヒータを用いることができる。この熱風噴射部材96の軸方向から熱風送風機(図12中不図示、図14参照)によって熱風を導入し、ヒータ110によって温調して熱風噴射部材96の吹き出し口(孔108)から噴射する構成となっている(図13参照)。
すなわち、図13のように、熱風噴射部材96の軸方向端部(図13において右端部)は、熱風発生手段としての送風機(図13中不図示、図14参照)を接続するための熱風供給口114が形成されている。この熱風供給口114を介して熱風噴射部材96内に温風が導入され、当該加熱空気が更にヒータ110によって加熱温調され、熱風噴射部材96の吹き出し口(孔108)から外に向かって放出される。
更に、当該渡し胴84の内側かつ当該熱風噴射部材96の外側には、記録媒体14に噴射される熱風の用紙搬送方向の噴射範囲を規制する噴射規制部材116が配置されている(図12参照)。この噴射規制部材116は、渡し胴84とは独立に設けられている部材であり、渡し胴84と同軸の円筒形状を有し、軸を中心に回動可能に取り付けられている。噴射規制部材116の周面には熱風噴射部材96からの熱風を通過させる通過開口118と、熱風の通過を遮る遮蔽部120とが形成されている。
噴射規制部材116の回転を制御することにより、熱風噴射部材96の吹き出し口(孔108)の形成領域と渡し胴84の開口部104、105に対して噴射規制部材116の通過開口118の位置を相対的に移動させ、用紙搬送方向に関する熱風の噴射範囲を拡縮することができる。
図13における符号122は、噴射規制部材116を回転自在に支持する軸受けである。噴射規制部材116を回転駆動させる手段として、噴射規制部材116の周面の適宜位置(本例では噴射規制部材116の端部周面)にギア124が形成され、噴射規制部材駆動用モータ126と該モータの動力をギア124に伝達する駆動ギア128が設けられている。
同様に、渡し胴84は軸受け132により回転自在に支持されており、渡し胴84を回転駆動させる手段として、渡し胴84の周面にギア134が形成され、これに噛合する渡し胴駆動ギア138と、図示せぬモータが設けられている。なお、動力伝達手段としては、歯車伝動機構に限らず、ベルト伝動機構などであってもよい。
上記構成の渡し胴84と対向する位置には、記録媒体14を静電吸引するとともに、上述した熱風を排出するための開口(排気孔151)が幅方向や搬送方向に沿って多数配置された搬送ガイド150(「吸引手段」に相当)が設けられている(図12参照)。この搬送ガイド150は、記録媒体14の搬送路を構成する所定位置に固定設置されており、当該搬送ガイド150の排気接続口154には、排気ポンプ(図中不図示、図29において符号155)が接続される。
また、搬送ガイド150には、電磁誘導式の加熱手段156が設けられており(図1参照)、当該搬送ガイド150に接触して搬送される記録媒体14は50〜90℃に加熱される。
グリッパ91,92で渡し胴84に受け渡された記録媒体14は搬送ガイド150に静電吸引されながら渡し胴84から噴射される熱風で表面が加熱乾燥される。このとき、記録媒体14(用紙)は間隔をもって搬送されているので、噴射した熱風は用紙の後端と次に搬送される用紙の先端との隙間から搬送ガイド150の開口151を通して排気される。このため、加熱乾燥してもシワやベコなどの不具合を生じにくく排気孔の痕も残りにくく、装置の蒸気汚染も防止できる。
更に、搬送ガイド150から排気した熱風を噴射部に戻したり、熱風発生手段の熱交換機として用いることにより、熱効率が向上し装置の蒸気汚染も防止できる。
図14に、熱風発生手段の構成例を示す。図示のように、熱風発生手段として機能する送風機160は、送風口162の付近にヒータ164が設けられており、この送風口162が管路166を介して熱風噴射部材96(図13参照)の熱風供給口114に接続される。
また、図13で説明した搬送ガイド150の排気接続口154は、図14の排気管路170に接続されている。排気管路170は、送風機160の排気管路172と近接して熱交換部174を構成し、搬送ガイド150から排気した空気の熱を送風機160への吸気の加熱に利用する熱交換を行う。
図12〜図14で説明した構成によれば、渡し胴84のグリッパ91又は92に保持された用紙は搬送ガイド150に静電吸引されているので、記録面(浸透抑制剤が付与された面)が渡し胴84の部材に接触せず、また、加熱乾燥してもシワやベコなどの不具合を生じにくく排気孔の痕も残りにくい。なお、静電吸引に代わり負圧吸引を適用してもよい。
また、搬送ガイド150における用紙間の隙間から熱風を排気する構成に加えて、搬送ガイド150の排気幅を用紙幅より広くした構成により、熱風を幅方向にも速やかに移動可能であり、用紙の乾燥や乾燥風の排出回収が一層安定化する(図13参照)。
搬送ガイド150の吸引量は、吸引孔142の径や数を増すなどして搬送方向の上流ほど強くすることで、用紙後端が搬送ガイドから抜け出した後の乾燥風の排気効率がより向上する。また、幅方向の中央部の吸引量を強くすることにより、用紙吸着性が向上し狭幅紙の吸引ロスも低減する。具体的には、開口の径をφ0.5〜3mm、開口の数をピッチで穴径の2〜5倍の千鳥配置にするのが好ましい。
図16は、搬送ガイド150上における用紙と熱風噴射エリアの関係を模式的に示した平面図である。図16の符号14-1は下流側の用紙であり、符号14-2は次の用紙を示している。また、図中二点鎖線で示した領域(符号180)は、先行する下流側の用紙14-1に対して渡し胴84から噴射される熱風の噴射領域を示している。
(用紙間の隙間について)
搬送される用紙と用紙の隙間は、図16のように、下流側用紙14-1と上流側用紙14-2の双方の少なくとも一部が搬送ガイド150と対向する位置(吸着可能な位置)にあるとき、下流側用紙14−1に熱風噴射部材96から噴射される風量より、用紙と用紙の隙間から排気される風量の方が多くなるように設定されており、下流と上流の用紙14-1、14-2で搬送ガイド150上面が半密閉状態にあっても、グリッパ91又は92で渡し胴84に搬送され湿り空気層を形成した用紙が表面蒸発を行う際の蒸気の滞留を低減し、乾燥を促進して機内の蒸気汚染も防止している。
具体的には、下流側用紙14-1と上流側用紙14-2の双方が搬送ガイド150と対向する位置にある時の噴射規制部材116と渡し胴84の開口104、105とで決まる最大噴射風量より、用紙と用紙の隙間に相当する位置にある搬送ガイド150の開口からの排気風量を多くしてある。特に、図17に示すように、渡し胴84の回転中心を基準にした場合の下流側用紙14-1に対する熱風噴射範囲に相当する噴射角RAより用紙と用紙の隙間に相当する吸引角RBを大きくして吸引量を高める構成が、空気の流れがスムーズになり、乾燥ムラも低減して好適である。噴射角RAは、噴射規制部材116の開口の縁と渡し胴84の開口104の縁で規定される。吸引角RBは下流側用紙14-1の後端と上流側用紙14-2の先端で規定される。
用紙の種類(塗工層、坪量など)や温湿度、浸透抑制剤付与量や後述する処理液付与量などの設定情報、若しくは検出情報を基に噴射規制部材116の回動位置制御し、噴射角RAを調整することにより、乾燥量を調整している。このように熱風噴射範囲の制御が可能なため、強い熱風を最適な時間だけ噴射できるので、乾燥の立ち上がりも速く、ポリマー粒子の溶融状態や成膜欠陥(空隙率)、溶媒の乾燥量や浸透量のバラツキが低減し、画像品質や定着品質の安定化も可能となる。なお、搬送ガイド150に設けた図示せぬ超音波振動式の加振手段も制御すれば、一層応答性に優れた制御も可能で乾燥性が一段と安定する。
また、渡し胴84のグリッパ91,92近傍には赤外線温度計や赤外線水分計などの温度若しくは水分の測定手段としてのセンサ182が設けられており、該センサ182の測定結果に応じて噴射規制部材116が制御される。例えば、センサ182により用紙先端付近の同一箇所の温度若しくは水分の時間変化(好ましくは立ち上がり特性)を測定し、この測定結果に基づいて噴射規制部材116を制御することにより、渡し胴84で乾燥中の用紙に対しても熱風の噴射範囲を補正できるので、用紙ごとの紙厚や吸湿度合い、浸透抑制剤付与量や後述する処理液付与量などのバラツキに対しても安定した乾燥が可能となる。なお、図13の符号184はセンサ182の接点を示している。
図18はセンサ182によるモニタ位置の例を示す図である。ここでは面付け(8ページ)の印刷を例示するが、多面取りの印刷形態には限定されず、1枚の用紙に1ページ分の印刷を行うものであってもよい。
図18の上方向が印刷方向(用紙搬送方向)であり、用紙サイズL×Wのうち、先端部余白M(グリッパ91,92による咥えしろとなる部分)、後端部余白M、左余白M、右余白Mをとった内側が印刷有効領域186である。なお、この印刷有効領域186の全面に浸透抑制剤が付与される。そして、この印刷有効領域の内側に、製品仕上げ寸法α×βとその天地左右に所定量の断ちしろγ、δを確保した画像記録が行われる。
図18において用紙の幅方向の中央付近の斜線で示した部分がセンサ182のモニタ位置である。本実施形態におけるセンサ182は放射温度計である。図17で説明したように、渡し胴84の各グリッパ91,92について同じ場所にセンサ182を配置することにより、当該渡し胴84に記録媒体14が受け渡たされたときから温度を検出できる。温度の時間変化を記録することにより、渡し胴84と搬送ガイド150で記録媒体14の乾燥を始めてからの表面温度の時間変化(立ち上がりカーブ)を取得できる。
図19は取得される表面温度の時間変化の一例を示すグラフである。横軸は乾燥時間、縦軸は表面温度を表す。また、縦軸の「MFT」は、塗布液中に添加されているポリマーの最低造膜温度(Minimum film forming temperature)を示している。
図示のように、搬送ガイド150による加熱と渡し胴84から噴射する乾燥風による加熱で検出直後から温度が急激に上昇し、湿り空気が形成される。その後、蒸発が続くときに、ある平衡状態になり、水分が減ってくるとまた右上がりに上昇する。
浸透抑制剤や後述する処理液の付与量は1〜10μmの液膜厚なのでかかる温度変化が短時間で起こる。図示の位置に放射温度センサを設けることにより、グリッパ91又は92が用紙を咥えたときから、すぐに温度の立ち上がりに入り、この温度変化の勾配を見て噴射規制部材116の回動を制御する。
実線(f1)は本実施形態によって乾燥量を適切に制御した場合のグラフである。破線(f2)は、乾燥が強すぎる場合の比較例である。この場合、水などの溶媒蒸発前に添加ポリマーの成膜が始まるので乾燥不良になりやすい(符号Bの点でポリマーが成膜する)。一方、破線(f3)は、乾燥が弱すぎる場合の比較例である。この場合、符号Cの点でポリマーが成膜するが、水などの溶媒の乾燥に時間がかかりすぎるため、搬送ガイド150の通過時間内で乾燥しきれず、記録媒体14に水などの溶媒が残り、インクによる描画性や定着性が低下するという問題がある。
これら比較例(f2)(f3)における問題が生じないように、本実施形態では、表面温度の時間変化を計測して適切に乾燥量を制御する(f1)。
乾燥量の制御は、熱風の温度、風量、搬送ガイド150による吸引量等の複数のパラメータが考えられる。ここでは、熱風の噴射量と用紙間の隙間からの吸引量のそれぞれの直接的な量的特定に代えて、これらと相関のある熱風の用紙搬送方向の噴射範囲と、用紙間の隙間量の関係について考慮する場合を説明する。
本例の渡し胴84は、2つのグリッパで2枚分の用紙を搬送する構成であるため、取り扱う用紙の最大長さと、渡し胴84の直径の設計によって用紙間の隙間(連続給紙時の最大隙間)が決定される。これに対し、熱風の噴射範囲(図17で説明した噴射角度RB)は、噴射規制部材116の回動位置によって可変制御できる。記録媒体14に対する乾燥風の噴射開始位置(噴射範囲の先端位置)は、グリッパ支持部112の開口によって規定されるため一定である。噴射終了位置(噴射範囲の後端位置)は噴射規制部材116の開口の位置によって調整できる。センサ182による表面温度の測定結果に応じて、噴射規制部材116を回動させることで、乾燥風の噴射範囲の終わり位置を適切に制御できる。用紙搬送方向の噴射範囲(噴射角度)が大きいほど吸引量は大きくなる。
図17において、上流側用紙14-2は、搬送ガイド150による搬送初期の状況であり、搬送ガイド150による加熱及び渡し胴84からの熱風噴射によって用紙表面付近に湿り空気層が形成される段階である。この段階では水などの溶媒蒸発量はまだ少ない。
やがて渡し胴84の回転に伴い搬送ガイド150に沿って用紙が下流へと搬送され、この間に加熱乾燥のプロセスが進行する(図19参照)。図17の下流側用紙14-1の位置付近では、表面から蒸発が多く、蒸気が発生する。
センサ182によって温度や水などの溶媒の時間変化(好ましくは、立ち上がり特性)を測定して噴射規制部材116の回動位置を制御することによって、渡し胴84で乾燥中の用紙に対しても熱風の噴射範囲を補正できる。これにより、用紙ごとの紙厚や吸湿度合い、浸透処理液や後述する処理液の付与量などのバラツキに対しても安定した乾燥が可能となる。
次に、渡し胴の他の構造例(第2例)を説明する。
図20に、渡し胴の構造例(第2例)を示す。図20において、図1で説明した構成と同一又は類似する部材には同一の符号を付し、その説明は省略する。図20の第2例は、図12〜17で説明した第1例の熱風噴射部材96における温風噴射用の開口の機能を渡し胴の本体に形成した開口によって実現する態様である。
すなわち、図20に示すとおり、渡し胴84’は、グリッパ支持部101,102以外の渡し胴外周面に熱風を放射状に噴射するための開口109が幅方向や搬送方向に沿って多数形成されている。そして、渡し胴84’の内部に、噴射範囲を制御する噴射規制部材116が配設される。噴射規制部材116は、渡し胴84’と同軸に配置され、渡し胴84’に対して相対的に回動制御可能であるとともに、渡し胴84’と一緒に回転する。これにより、記録媒体14に対して噴射用の開口109は一定の関係に保たれる。
また、渡し胴84’の外側には、記録媒体14への熱風の噴射開始位置を規制するための遮蔽部材188が配設されている。この遮蔽部材188は、圧胴40と渡し胴84’の間における用紙受け渡し部分の渡し胴84’回転方向上流側には配置されている。圧胴40からグリッパ91又は92に渡された記録媒体14に対して遮蔽部材188の端部188Aを通過した熱風が噴射されることになる。なお、当該遮蔽部材188は、機内の不要部分へ熱風の流出を抑制する機能も果たす。
渡し胴84’と対向して配置される搬送ガイド150の構成は、図12で説明したとおりである。搬送ガイド150の排気幅を用紙幅より広くすれば熱風を幅方向にも速やかに移動可能で用紙の乾燥や乾燥風の排出回収が一層安定化する。搬送ガイド150の吸引量は、開口の径や数を増すなどして搬送方向の上流ほど強くすれば用紙後端が搬送ガイド150から抜けた後の乾燥風の排出効率がより向上し、幅方向の中央部を強くすれば用紙吸着性が向上し狭幅紙の吸引ロスも低減する。
更に、渡し胴84’の周面に形成した噴射開口109の噴射量を開口の径や数を増すなどして用紙の後端や幅方向の中央部ほど噴射量を多くすれば乾燥風の流れが一段とスムーズになり乾燥が更に安定する。
図21にその一例を示す。図21は渡し胴84’における噴射開口109の形成例を模式的に描いた平面展開図である。同図において上側が用紙搬送方向の下流側(用紙先端側)である。図示のように、幅方向の中央部ほど開口径を大きく、また、搬送方向の下流ほど開口径を大きくした開口パターンが好ましい。具体的には、開口の径をφ0.3〜3mm、開口の数をピッチで穴径の2〜5倍の千鳥配置にするのが好ましい。
上記のごとく構成された渡し胴84’によれば、図22に示すように、渡し胴84’の回転中心を基準にした場合の下流側用紙14-1に対する熱風噴射範囲に相当する噴射角RAより用紙と用紙の隙間に相当する吸引角RBを大きくして排気量を高める構成により、空気の流れがスムーズになり、乾燥ムラも低減して好適である。
また、渡し胴84’の内側に設けた噴射規制部材116により、搬送ガイド150の対面など乾燥に不必要な熱風の噴射を防止し、用紙の種類(塗工層、坪量など)や、センサ182によって測定される温湿度、浸透処理液や後述する処理液の付与量などの設定情報や検出情報をもとに乾燥量を調整できる。
このように噴射範囲の制御が可能なので、強い熱風を最適な時間だけ噴射できるので、乾燥の立ち上がりが速く、ポリマー粒子のMFT(最低造膜温度:Minimum film forming temperature)に適した温度に調整できる。このため、溶融状態や成膜欠陥(空隙率)、溶媒の乾燥量や浸透量のバラツキが低減し、画像品質や定着品質の安定化も可能となる。搬送ガイド150に設けた超音波振動式の加振手段(不図示)も制御すれば、一層応答性に優れた制御も可能で乾燥性が一段と安定する。
図20〜22で説明した渡し胴84(または84’)の構成は、図1における他の渡し胴214、304についても適用される。なお、渡し胴84’の図面に形成した噴射開口109の噴射量は、用紙の後端や幅方向の中央部の他、用紙の先端を多くして、用紙後端の搬送ガイド150への吸着性を向上させることで、浮きを低減させるようにしてもよい。
(処理液付与部26の説明)
次に、渡し胴84の後段に配置される処理液付与部26(図1参照)について説明する。
処理液付与部26には、圧胴86の回転方向(図1において反時計回り方向)に関して上流側から順に、圧胴86の周面に対向する位置に、処理液塗布装置(処理液塗布ローラ)202、処理液乾燥ユニット204が設けられている。
処理液塗布装置202は、圧胴86に保持される記録媒体14に対して凝集処理剤などの処理液を塗布するものであり、図2〜図11を用いて説明した浸透抑制処理部24と同様の構成が適用される。図1には処理液塗布装置202を示すものとして塗布ローラを図示した。
また、処理液付与部26において記録媒体14を保持搬送する圧胴86は、記録媒体14の先端部を保持するグリッパ87(図12参照)が外周面に対して段差を有して配置されているため、処理液付与部26のスパイラルローラ48(図2参照)は、当該グリッパ87の部分で対応する圧胴の外周面から離間して段差を回避するように構成されている。なお、図12に示すグリッパ87の配置及びローラの離間構造は、記録媒体を搬送する他の圧胴40,306,326(図1参照)についても適用されている。一方、印字部28の圧胴216については、ヘッド210K、210C、210M、210Yと記録媒体とを近接させる必要があるので、グリッパ87を外周面から突出させないような構造が適用される。
処理液乾燥ユニット204については、上述した浸透抑制処理部24の浸透抑制剤乾燥ユニット46と同様の構成が適用される。処理液乾燥ユニット204には、50〜130℃の範囲で温度制御可能なヒータ(不図示)と、5〜50m/sの風速で下流に向かって吹出すファン(不図示)が設けられる。処理液付与部26の圧胴86に保持された記録媒体14は、処理液乾燥ユニット204に対向する位置から下流を通過する際、ヒータによって50〜130℃に熱せられた熱風がファンにより記録媒体14に当てられ、記録媒体14を加熱して処理液を乾燥する。
本例で用いられる処理液は、後段の印字部28に配置される各インクヘッド210K、210C、210M、210Yから記録媒体14に向かって吐出されるインクに含有される色材を凝集させる作用を有する酸性液が好ましい。具体的には、後述の表2に記載の処理液や、2−ピロリドン−5−カルボン酸、リン酸、コハク酸、クエン酸などの酸を添加した処理液が考えられる。
なお、グリセリンなどの高沸点溶媒や表1に記載したLX−1やLX−2などのポリマー粒子などを少量添加して処理液の浸透を抑制することで、前述の浸透抑制層を不要にするも可能である。そのため、このような浸透抑制効果を有する処理液を液体塗布装置42で塗布することとすれば、処理液付与部26の圧胴86、処理液塗布装置202、及び処理液乾燥ユニット204などが不要となる。
処理液付与部26に続いて印字部28が設けられている。処理液付与部26の圧胴86と印字部28の圧胴216との間には、これらに対接するようにして渡し胴214が設けられている。これにより、処理液付与部26の圧胴86に保持された記録媒体14は、処理液が付与されて凝集処理剤層が形成された後に、渡し胴214を介して、グリッパ(不図示)で印字部28の圧胴216に受け渡される。
なお、渡し胴214の周面に対向する位置に、前記の渡し胴84と同様に、搬送ガイド150が設けられている。そして、渡し胴214から吹き出す50〜130℃の熱風と、50〜90℃に温調した静電吸引式の搬送ガイド150によって描画面を非接触搬送しながら、描画面を40〜60℃の範囲で加熱乾燥し、記録媒体14上に固体状又は半固溶状の凝集処理剤層(処理液が乾燥した薄膜層)を形成する。ここでいう「固体状又は半固溶状の凝集処理剤層」とは、[数1]に定義する含水率が0〜70%の範囲のものを言うものとする。
Figure 2009285878
渡し胴214の構成は、既述した浸透抑制処理部24の渡し胴84、84’と同様の構成であるため、その説明は省略する。
(印字部28の説明)
印字部28には、30〜50℃に温調した圧胴216の回転方向(図1において反時計回り方向)に関して上流側から順に、圧胴216の周面に対向する位置に、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色のインクにそれぞれ対応したインクヘッド210K、210C、210M、210Yが設けられている。
各インクヘッド210K、210C、210M、210Yは、インクジェット方式の記録ヘッド(インクジェットヘッド)が適用される。各インクヘッド210K、210C、210M、210Yは、それぞれ対応する色インクの液滴を圧胴216に真空吸着や静電吸着した状態で保持された記録媒体14に向かって吐出する。
本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示するが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
〔ヘッドの構造〕
次に、各ヘッドの構造について説明する。色別のヘッド210K、210C、210M、210Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号210によってヘッドを示すものとする。なお、先にも述べたが、処理液付与部26に用いられる処理液塗布装置202についてもインクヘッド210と同様の構造を採用してもよい。
図23(a)はインクヘッド210の構造例を示す平面透視図であり、図23(b) はその一部の拡大図である。記録媒体14上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、インクヘッド210におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のインクヘッド210は、図23(a)、(b) に示したように、インク吐出口であるノズル281と、各ノズル281に対応する圧力室282等からなる複数のインク室ユニット(記録素子単位としての液滴吐出素子)283を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(用紙搬送方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
記録媒体14の搬送方向(図23中矢印S)と略直交する方向(図23中矢印M)に画像形成領域の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は図示の例に限定されない。例えば、図23(a)の構成に代えて、図24に示すように、複数のノズル281が2次元に配列された短尺のヘッドモジュール280’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで長尺化することにより、全体として記録媒体14の画像形成領域の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
各ノズル281に対応して設けられている圧力室282は、その平面形状が概略正方形となっており(図23(a)、(b)参照)、対角線上の両隅部の一方にノズル281への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)284が設けられている。なお、圧力室282の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
図25は、インクヘッド210における記録素子単位となる1チャンネル分の液滴吐出素子(1つのノズル281に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図23中のB−B線に沿う断面図)である。
図25に示したように、各圧力室282は供給口284を介して共通流路285と連通されている。共通流路285はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路285を介して各圧力室282に供給される。
圧力室282の一部の面(図25において天面)を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)286には個別電極287を備えたアクチュエータ288が接合されている。個別電極287と共通電極間に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ288が変形して圧力室282の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル281からインクが吐出される。なお、アクチュエータ288には、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電体を用いた圧電素子が好適に用いられる。インク吐出後、アクチュエータ288の変位が元に戻る際に、共通流路285から供給口284を通って新しいインクが圧力室282に再充填される。
入力画像からデジタルハーフトーニング処理によって生成されるドットデータに応じて各ノズル281に対応したアクチュエータ288の駆動を制御することにより、ノズル281からインク滴を吐出させることができる。記録媒体14を一定の速度で副走査方向に搬送しながら、その搬送速度に合わせて各ノズル281のインク吐出タイミングを制御することによって、記録媒体14上に所望の画像を記録することができる。
上述した構造を有するインク室ユニット283を図26に示すごとく主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
すなわち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット283を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影(正射影)されたノズルのピッチPはd×cosθとなり、主走査方向については、各ノズル281が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影される実質的なノズル列の高密度化を実現することが可能になる。
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、記録媒体14の幅方向(搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
特に、図26に示すようなマトリクス状に配置されたノズル281を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。すなわち、ノズル281-11 、281-12 、281-13 、281-14、281-15 、281-16 を1つのブロックとし(他にはノズル281-21 、…、281-26 を1つのブロック、ノズル281-31 、…、281-36 を1つのブロック、…として)、記録媒体14の搬送速度に応じてノズル281-11 、281-12、…、281-16 を順次駆動することで記録媒体14の幅方向に1ラインを印字する。
一方、上述したフルラインヘッドと記録媒体14とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
そして、上述の主走査によって記録される1ライン(或いは帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向といい、上述の副走査を行う方向を副走査方向という。すなわち、本実施形態では、記録媒体14の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。
また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ88の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
(溶媒乾燥部30の説明)
印字部28に続いて溶媒乾燥部30が設けられている。図27には、溶媒乾燥部30の概略構成を図示する。
図27に示すように、印字部28の圧胴216と溶媒乾燥部30の圧胴306との間には、これらに対接するように渡し胴304が設けられている。これにより、印字部28の圧胴216に保持された記録媒体14は、各色インクが付与された後に、渡し胴304を介して溶媒乾燥部30の圧胴306に受け渡される。
渡し胴304の構成は既述した浸透抑制処理部24の渡し胴84(または図の84’)と同様の構成であるため、その説明は省略する。
渡し胴304の周面に対向する位置には、前記の渡し胴84、214と同様に、搬送ガイド150が設けられている。そして、渡し胴304から吹き出す50〜130℃の熱風と、50〜90℃に温調した静電吸引式の搬送ガイド150によって描画面を非接触搬送しながら、描画面を40〜60℃の範囲で加熱し、表面に湿り空気層を形成して、打滴したインクに含まれる水分のうち、主に表面に存在する水を蒸発させる。
また、渡し胴304には、白色LEDや白色ランプなどの可視光源と、フォトダイオードなどの受光素子から構成される反射型光学センサ(不図示)が設けられており、該光学センサより記録媒体14の非画像部に描画したチェックパターンの光学濃度(ここでは反射光量)を読み取り、その読取結果に応じてインク吐出体積や画像データを補正すれば、機内昇温などによりインク吐出体積や処理液付与量などが変化した場合でも、画像濃度の安定化を図ることができる。なお、この光学センサと、図12で説明したセンサ182とを両方備え(例えば、光学センサをセンサ182の近傍位置に配置し)、記録媒体14の非画像部に描画したチェックパターンの光学濃度の他、温度や水分を測定して、リアルタイムで加熱乾燥条件を補正することも可能であり、この場合にはパージインクや画像部の乾燥も安定する。
また、記録媒体14における凝集処理剤の塗布部と非塗布部にインクを打滴して、後述するインラインセンサ(図1の符号348)で前記非塗布部に形成したチェックパターンの他、塗布部のチェックパターンチや白地の光学濃度を測定してインクの凝集度合いを検出することで、塗布ローラの回転数や付勢力を制御して凝集処理剤の付与量を制御している。
なお、チェックパターンを千鳥などのドット分離で形成した場合は、インラインセンサにCCDなどの撮像デバイスを用いることで、光学濃度の測定の他、ドット径を計測して凝集度合いを検出すことも可能であり、一層精度の良い凝集検出が可能となる。
渡し胴304から記録媒体14が受け渡される圧胴306の周面に対向して溶媒乾燥ユニット308が配置される。溶媒乾燥ユニット308には、赤外線照射手段、或いは熱風の噴射手段を用いることができる。溶媒乾燥ユニット308による赤外線の照射や熱風の吹付けにより、圧胴306上の記録媒体14の描画面を40〜80℃に加熱して水分を十分に除去し、乾燥防止や粘度調整用としてインクに含有したグリセリンやジエチレングリコールなどの高沸点溶媒を低粘化する。また、インクに含有したポリマー粒子を溶融成膜すれば、定着性を向上させることも可能である。浸透抑制処理部24で付与された浸透抑制層も処理液付与部26で付与された処理液により、徐々に空隙が形成され高沸点溶媒の記録媒体14への浸透も可能となる。
図27には、溶媒乾燥ユニット308の構成例として、圧胴306の外周面に沿ってIRヒータ310と送風ファン312を交互に配置した態様を図示する。図27に示すように、送風ファン312と圧胴306の外周面との間に加熱制御部材(シャッター)314を備え、送風ファン312から放射される風の風量を制御する態様が好ましい。
図27に示す加熱制御部材314は、送風ファン312と圧胴306の外周面との間をスライド可能に構成され、送風ファン312の放射領域の一部をふさぐことで、記録媒体に放射する風量を低減することができる。なお、図27には、記録媒体搬送方向の最下流側の送風ファン312のみに加熱制御部材314を備えているが、もちろん、他の送風ファン312にも加熱制御部材314を備えてもよい。
IRヒータ310放射熱量は可変可能に構成されており、記録媒体14の表面温度が設定されると、該設定温度に対応してIRヒータ310の放射熱量(または、IRヒータ310のオンオフ)が制御される。
本例に示す溶媒乾燥ユニット308は、IRヒータ310の放射熱量及び送風ファン312の風量を適宜制御することで、予め設定された記録媒体の表面温度に対応する放射熱量の制御が行われる。
(熱圧定着部32の説明)
溶媒乾燥部30に続いて熱圧定着部32が設けられている。溶媒乾燥部30の圧胴306と熱圧定着部32の圧胴326との間には、これらに対接するように渡し胴324が設けられている。これにより、溶媒乾燥部30の圧胴306に保持された記録媒体14は、各色インクの水分が除去され高沸点溶媒が低粘化された後に、渡し胴324を介して熱圧定着部32の圧胴326に受け渡される。
熱圧定着部32には、40〜80℃に温調した圧胴326に対向して、60〜120℃に温調したヒートローラ(定着ローラ)328a,328b,328cが設けられている。ヒートローラ328a,328b,328cはゴムなどの表面にPFAやフッ素系エラストマーなどの撥液材料を被覆したものや、剛材に硬質クロムメッキなどの処理を施したものが望ましい。また、ヒートローラ328a,328b,328cには、離型剤塗布機能付きのクリーニングユニット329が当接されている。離型剤としては一般的な離型用シリコンオイルのほか、用紙浸透性を有する高沸点溶媒としても良く、塗布厚としては30nm〜1μmであることが離型性や光沢度の観点から望ましい。
渡し胴324には、巻取式の不織布などを用いたスタンプ型の部材325が配置され、このスタンプ型の部材325が圧胴306や渡し胴324の搬送中に記録媒体14に浸透しきれなかった高沸点溶媒を吸収する。
なお、渡し胴324の周面に対向する位置に、前記の渡し胴84,214,304と同様に、搬送ガイド150が設けられている。そして、渡し胴324から吹出す50〜70℃の熱風と、50〜70℃に温調した静電吸引式の搬送ガイド150によって描画面を非接触搬送しながら、描画面を40〜60℃の範囲で加熱し、溶媒乾燥ユニット308で高温に加熱した記録媒体14の面内温度分布やポリマー粒子の皮膜を安定にする。
そしてその後、不図示の加熱手段により加熱された圧胴326に受け渡された記録媒体14に対し、ヒートローラ328a,328b,328cにより熱圧することにより、インクに添加したポリマー粒子を十分に成膜することで画像を堅牢化して、記録媒体14に定着させる。
図28は、熱圧定着部32の拡大図であり、ローラ切替型の熱圧定着部32の概要を示している。このローラ切替型の熱圧定着部32によれば、記録媒体14に応じた適切な表面光沢を得ることが可能である。
具体的には、圧胴326の回転方向(図28において反時計回り方向)に関して上流側から順に、圧胴326の周面に対向する位置に、マット仕上げ用のブラスト処理などを施した凹凸面を有するヒートローラ328a、ゴム表面にPFAなどを被覆した平滑面を有するヒートローラ328b、更に、金属表面にPFAなどを被覆した平滑面を有するヒートローラ328cが設けられている。
また、ヒートローラのニップ圧は、ヒートローラ328a,328bが0.5〜1.5MPa、ヒートローラ328cが1〜2MPaに設定されている。
ヒートローラ328a,328b,328cの圧胴326へのニップ(on)、圧胴326からの離間(解除)(off)の組む合わせ例を表2に示す。
Figure 2009285878
表2に示すように、記録媒体14がマットコート紙の場合(組み合わせNo.5)には、ヒートローラ328aのみニップし、ヒートローラ328b,328cは不図示の解除機構により圧胴326から離間させる。この状態で記録媒体14を搬送することで、表面がマット状に仕上がり、熱圧により画像を確実に記録媒体14に定着させることができる。
また、記録媒体14がグロスコート紙の場合(表2の組み合わせNo.2)には、ヒートローラ328cのみニップし、ヒートローラ328a,328bは不図示の解除機構により圧胴326から離間させる。この状態で記録媒体14を搬送することで、表面が光沢状に仕上がり、熱圧により画像を確実に記録媒体14に定着させることができる。
また、記録媒体14がマットコート紙とグロスコート紙の間に位置する場合(表2の組み合わせNo.3)には、ヒートローラ328bのみニップし、ヒートローラ328a,328cは不図示の解除機構により圧胴326から離間させる。この状態で記録媒体14を搬送することで、表面が中間状に仕上がり、熱圧により画像を確実に記録媒体14に定着させることができる。
また、記録媒体14が厚手のグロスコート紙の場合やベタ印字を行う場合(表2の組み合わせNo.4)には、ヒートローラ328b,328cをニップし、ヒートローラ328aは不図示の解除機構により圧胴326から離間させる。
また、装置のメンテナンス時や、記録媒体14の塗布不良や打滴不良、乾燥不良などのエラー処理時(表2の組み合わせNo.1)には、すべてのヒートローラ328a,328b,328cを圧胴326からの離間させておく。
また、その他、特殊仕上げの場合(表2の組み合わせNo.6,7,8)には、各々表2に示すように、ヒートローラ328a,328b,328cの圧胴326へのニップ、圧胴326からの離間を行う。
なお、上流に配置したヒートローラ328aは凹凸面を有するので、溶媒が記録媒体14への浸透途上であってもインクの付着が軽度であり、下流に配置したヒートローラ328bは平滑面を有するが、ヒートローラ328aを通過する間に溶媒浸透が進むので、ヒートローラ328aと同様に、インクの付着を軽減できる。
また、下流に配置したヒートローラ328cは平滑面を有しニップ圧も高いが、ヒートローラ328a,328bを通過する間に溶媒浸透が進むので、ヒートローラ328a,328bと同様に、インクの付着を軽減でき、確実な定着も可能となる。
また、ヒートローラ328a,328b,328cは、複数を組み合わせて用いてもよく、この場合は、記録媒体14の厚みや浸透速度、画像に対応したインク打滴量などに応じて設定することで、一段と安定した光沢性や定着性の確保が可能となる。
(排出部34の説明)
熱圧定着部32に続いて排出部34が設けられている。熱圧定着部32の圧胴326と排出部34の排出トレイ346との間には、これらに対接するように渡し胴344が設けられている。これにより、熱圧定着部32の圧胴326に保持された記録媒体14は、熱圧定着部32で画像が堅牢化された後に、渡し胴344を介して排出トレイ346に受け渡され、機外へ排出される。
渡し胴344は不図示の加熱手段により加熱され、更に高沸点溶媒の浸透促進と記録媒体14のカールの矯正をする。
また、排出部34には、記録媒体14のチェックパターンや水分量、表面温度、光沢度などを計測するためのCCDなどの撮像素子や赤外線温度計、赤外線水分系、光沢計などのインラインセンサ348が配置されている。前述の通り、インラインセンサ348により、パッチの光学濃度やドット径を計測して凝集処理剤の塗布量を制御したり、各色のパターンを測定してカラーレジを補正したり、先後端や幅方向のパターンを測定して倍率補正したり、表面温度から定着温度をリアルタイムで調整し、光沢や濃度、倍率、歪みや位置ずれなどの品質を安定に保っている。
(制御系の説明)
図29は、インクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース470、システムコントローラ472、メモリ474、ROM475、モータドライバ476、ヒータドライバ478、プリント制御部480、画像バッファメモリ482、ヘッドドライバ484、処理液塗布制御部508等を備えている。
通信インターフェース470は、ホストコンピュータ486から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース470にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ486から送出された画像データは通信インターフェース470を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦メモリ474に記憶される。
メモリ474は、通信インターフェース470を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ472を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ474は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ472は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システムコントローラ472は、通信インターフェース470、メモリ474、モータドライバ476、ヒータドライバ478等の各部を制御し、ホストコンピュータ486との間の通信制御、メモリ474の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ488やヒータ489を制御する制御信号を生成する。
ROM475には、システムコントローラ472のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。なお、ROM475は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。メモリ474は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
モータドライバ476は、システムコントローラ472からの指示にしたがってモータ488を駆動するドライバである。図29には、装置内の各部に配置されるモータを代表して符号488で図示されている。モータ488には、図1で説明した各圧胴40,86,216,306,326、渡し胴84,214,304,324,344、用紙押さえ44、ヒートローラ328a,328b,328cなど駆動するモータや、図2のスパイラルローラ48等を移動(圧胴から離間)させる移動機構のモータなどが含まれている。
ヒータドライバ478は、システムコントローラ472からの指示にしたがって、ヒータ489を駆動するドライバである。図29には、インクジェット記録装置10に備えられる複数のヒータを代表して符号489で図示されている。また、ヒータ489には、浸透抑制剤乾燥ユニット46、処理液乾燥ユニット204、溶媒乾燥ユニット308のヒータなどが含まれている。
プリント制御部480は、システムコントローラ472の制御にしたがい、メモリ474内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッドドライバ484に供給する制御部である。プリント制御部480において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいて、ヘッドドライバ484を介してインクヘッド210のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部480には画像バッファメモリ482が備えられており、プリント制御部480における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ482に一時的に格納される。なお、図29において画像バッファメモリ482はプリント制御部480に付随する態様で示されているが、メモリ474と兼用することも可能である。また、プリント制御部480とシステムコントローラ472とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
画像入力から印字出力までの処理の流れを概説すると、印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース470を介して外部から入力され、メモリ474に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの画像データがメモリ474に記憶される。
インクジェット記録装置10では、インク(色材) による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。そのため、メモリ474に蓄えられた元画像(RGB)のデータは、システムコントローラ472を介してプリント制御部480に送られ、該プリント制御部480において閾値マトリクスや誤差拡散法などを用いたハーフトーニング処理によってインク色ごとのドットデータに変換される。
すなわち、プリント制御部480は、入力されたRGB画像データをK,C,M,Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。こうして、プリント制御部480で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ482に蓄えられる。
ヘッドドライバ484は、プリント制御部480から与えられる印字データ(すなわち、画像バッファメモリ482に記憶されたドットデータ)に基づき、インクヘッド210の各ノズル281に対応するアクチュエータ288を駆動するための駆動信号を出力する。ヘッドドライバ484にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
ヘッドドライバ484から出力された駆動信号がヘッド210に加えられることによって、該当するノズル281からインクが吐出される。記録媒体14を所定の速度で搬送しながらインクヘッド210からのインク吐出を制御することにより、記録媒体14上に画像が形成される。
また、システムコントローラ472は、渡し胴84等による熱風乾燥と搬送ガイド150による負圧吸引を制御する手段として機能し、送風機制御部492、渡し胴制御部496、搬送ガイド制御部498の動作を制御する。送風機制御部492は、図14で説明した送風機160とヒータ164の動作を制御する。
渡し胴制御部496は、図12、図13等で説明した噴射規制部材116の駆動機構を制御するとともに、ヒータ110の動作を制御する。搬送ガイド制御部498は、負圧を発生させる負圧吸引ポンプ155及び加熱手段156の動作を制御する。
システムコントローラ472は、センサ182から得られる検出信号(測定情報)の時間変化を計測する時間変化計測演算部500としての機能を担い、その演算結果にしたがって渡し胴制御部496等を制御する。また、システムコントローラ472は、浸透抑制剤塗布制御部502、溶媒乾燥制御部504、熱圧定着制御部506の動作を制御する。
図29の光学センサ183は、先に説明したように記録媒体の非画像部に打滴されたパージによるインク液滴(パージによるインク液滴により形成されたドット)を読み取るものであり、光学センサ183によって読み取られたパージによるインク液滴のデータ(読取データ)はシステムコントローラ472に送られる。システムコントローラ472は、光学センサ183から読取データを取得すると、該読取データに基づいて浸透抑制剤の付与、処理液の付与、インク打滴を制御するように装置各部に指令信号を送出する。
更に、本例のインクジェット記録装置10では、処理液を付与する手段としての処理液塗布装置202と、これを制御する処理液塗布制御部508を備えている。処理液塗布制御部508は、プリント制御部480から与えられる画像データに基づいて処理液塗布装置202を制御する。図2で説明した液体塗布装置42の場合、スパイラルローラ48についてのローラ当接/離間機構駆動手段、スパイラルローラ48の回転駆動手段、メインブレード当接/離間機構駆動手段、液体噴射部52の噴射圧を調整する精密可変レギュレータ等が処理液塗布制御部508により制御される。なお、処理液の塗布にインクジェット方式を適用する場合には、処理液ヘッドのアクチュエータ288(図25参照)に印加される駆動信号を生成するとともに、該駆動信号をアクチュエータ288に印加してアクチュエータ288を駆動する駆動回路を含んで構成される。このように、画像データに応じて処理液を打滴する構成とし、印字部28によってインクが打滴される位置に対して、処理液を選択的に打滴する態様が好ましい態様である。なお、スプレーノズルを用いて一様に付与する態様も可能である。
浸透抑制剤塗布制御部502は、図2で説明した液体塗布装置42の場合、スパイラルローラ48についてのローラ当接/離間機構駆動手段、スパイラルローラ48の回転駆動手段、メインブレード当接/離間機構駆動手段、液体噴射部52の噴射圧を調整する精密可変レギュレータ等が浸透抑制剤塗布制御部502により制御される。
溶媒乾燥制御部540は、システムコントローラ472からの指示にしたがい溶媒乾燥部30における溶媒乾燥ユニット308の動作を制御する。
熱圧定着制御部506は、システムコントローラ472からの指示にしたがい熱圧定着部32におけるスタンプ型の部材854の動作を制御するとともに、ヒートローラ328a〜c、及びクリーニングユニット329の動作を制御する。
また、システムコントローラ472には、排出部34に配置されるインラインセンサ348からチェックパターンや水分量、表面温度、光沢度などの計測結果のデータが入力される。
(インクジェット記録装置10の動作について)
このように構成されたインクジェット記録装置10の作用について説明する。
給紙トレイ36から供給された記録媒体14は、渡し胴38を介して、グリッパ(不図示)で浸透抑制処理部24の圧胴40の周面に給紙される。
なお、記録媒体14は、給紙トレイ36へ送られる前に、40〜50℃にプレヒートされた給紙部(不図示)に予めストックされている。そして、記録媒体14は、給紙トレイ36の給紙面に対向する位置に設けられた粘着ローラ37に接触しながら渡し胴38に供給される。このように、給紙部をプレヒートすることで記録媒体14が加熱乾燥され、記録媒体14を粘着ローラ37に接触させることで紙粉や塵埃などの異物除去が可能になり、浸透抑制剤塗布後の乾燥の高速化や安定化を図ることができる。
記録媒体14は、渡し胴38を介して、浸透抑制処理部24の圧胴40に保持され、液体塗布装置42によって所望領域に対して選択的に浸透抑制剤が付与される。その後、圧胴40に保持された記録媒体14は、用紙押さえ44により案内されつつ圧胴40の回転方向に送り出されながら、浸透抑制剤乾燥ユニット46によって加熱され、浸透抑制剤の溶媒成分(液体成分)が蒸発し、乾燥する。
こうして浸透抑制処理が行われた記録媒体14は、浸透抑制処理部24の圧胴40から渡し胴84を介して、処理液付与部26の圧胴86に受け渡される。渡し胴84では、搬送ガイド150により描画面非接触乾燥で浸透抑制剤を加熱乾燥させる。圧胴86に保持された記録媒体14は、処理液塗布装置202によって処理液が塗布される。その後、圧胴86に保持された記録媒体14は、処理液乾燥ユニット204によって加熱され、処理液の溶媒成分(液体成分)が蒸発し、乾燥する。これにより、記録媒体14上には固体状又は半固溶状の凝集処理剤層が形成される。
処理液が付与されて固体状又は半固溶状の凝集処理剤層が形成された記録媒体14は、処理液付与部26の圧胴86から渡し胴214を介して、印字部28の圧胴216に受け渡される。渡し胴214では、搬送ガイド150による描画面非接触乾燥で浸透抑制層上に酸を残留させる。圧胴216に保持された記録媒体14には、入力画像データに応じて、各インクヘッド210K、210C、210M、210Yからそれぞれ対応する色インクが打滴される。
凝集処理剤層上にインク液滴が着弾すると、飛翔エネルギーと表面エネルギーとのバランスにより、インク液滴と凝集処理剤層との接触面が所定の面積にて着弾する。インク液滴が凝集処理剤上に着弾した直後に凝集反応が始まるが、凝集反応はインク液滴と凝集処理剤層との接触面から始まる。凝集反応は接触面近傍のみで起こり、インク着弾時における所定の接触面積で付着力を得た状態でインク内の色材が凝集されるため、色材移動が抑止される。
このインク液滴に隣接して他のインク液滴が着弾しても先に着弾したインクの色材は既に凝集化しているので後から着弾するインクとの間で色材同士が混合せず、ブリードが抑止される。なお、色材の凝集後には、分離されたインク溶媒が広がり、凝集処理剤が溶解した液体層が記録媒体14上に形成される。
インクが付与された記録媒体14は、印字部28の圧胴216から渡し胴304を介して、溶媒乾燥部30の圧胴306に受け渡される。渡し胴304では、搬送ガイド150により記録媒体14の描画面を非接触で乾燥させる。圧胴306では、溶媒乾燥ユニット308による赤外線の照射や熱風の送風により水分を十分に除去する。
その後記録媒体14は、溶媒乾燥部30の圧胴306から渡し胴324を介して、熱圧定着部32の圧胴326に受け渡される。渡し胴324には、スタンプ型の部材325が配置され、このスタンプ型の部材325が高沸点溶媒を吸収し、処理液や加熱乾燥で増加した浸透抑制層の空隙を通して用紙にも浸透させる。また、渡し胴324では、搬送ガイド150により記録媒体14の描画面を非接触で乾燥させる。そして、不図示の加熱手段により加熱された圧胴326に受け渡された記録媒体14に対し、ヒートローラ328a,328b、328cにより加圧して熱圧することにより、画像を記録媒体14に定着させる。
その後記録媒体14は、熱圧定着部32の圧胴326から渡し胴844を介して、排出部34の排出トレイ346に受け渡され、機外へ排出される。渡し胴344は不図示の加熱手段により加熱され、更に高沸点溶媒の浸透促進と記録媒体14のカールの矯正をする。
(変形例)
図30は本発明の他の実施形態に係るインクジェット記録装置400の構成図である。図30中、図1で説明した構成と同一又は類似する部材には同一の符号を付し、その説明は省略する。図1で説明した溶媒乾燥部30に配置されている圧胴306とその前後の渡し胴304,324の代わりに、図30のようにチェーン412による搬送手段を採用する形態も可能である。
チェーン412は、記録媒体14を咥えるためのグリッパ(不図示)を有している。当該グリッパ付きのチェーン412は、これを駆動するためのスプロケット414,415に巻き掛けられており、チェーン412の搬送路内には、熱風噴射器416が配設されている。チェーン412の搬送面と対向する位置には、記録媒体14の裏面を負圧吸引する負圧吸引ガイド450が配置されている。
この負圧吸引ガイド450は、図12で説明した搬送ガイド150と類似の構成からり、搬送ガイド150と同様の役割を果たす。チェーン412のグリッパで記録媒体14を搬送し、これと対向配置した負圧吸引ガイド450で記録媒体14の吸引しながら、熱風噴射器416から熱風を噴射して乾燥を行う。なお、熱風噴射器416に代えて、又はこれと組み合わせて、図1で説明した溶媒乾燥ユニット308と同様の乾燥ユニットを用いて加熱乾燥してもよい。この場合も、図1で説明した実施形態に係るインクジェット記録装置と同様の効果が得られるほか加熱部の簡素化が図れるため、インクの色数が少ないなど乾燥量が少ない場合に好適である。
<各液の調整>
次に上述した実施形態に係るインクジェット記録装置に用いる各液の調整例について説明する。
(1)浸透抑制剤の調整
[化1]に示す構造の分散安定用樹脂〔Q−1〕10g、酢酸ビニル100g及びアイソパーH(エクソン社商品名)384gの混合溶液を窒素気流下攪拌しながら温度70℃に加温した。
Figure 2009285878
重合開始剤として2,2′−アゾビス(イソバレロニトリル)(略称A.I.V.N.)0.8gを加え、3時間反応した。開始剤を添加して20分後に白濁を生じ、反応温度は88℃まで上昇した。更に、該開始剤を0.5g加え、2時間反応した後、温度を100℃に上げ2時間攪拌し未反応の酢酸ビニルを留去した。冷却後200メッシュのナイロン布を通し、得られた白色分散物は重合率90%で平均粒径0.23μmの単分散性良好なラテックスであった。粒径はCAPA−500(堀場製作所(株)製)で測定した。
上記白色分散物の一部を遠心分離機(回転数1×104 r.p.m.、回転時間60分)にかけて、沈降した樹脂粒子分を補集、乾燥し、該樹脂粒子分の重量平均分子量(Mw)とガラス転移点(Tg)、最低造膜温度(MFT)を測定したところ、Mwは2×105 (ポリスチレン換算GPC値)、Tgは38℃、MFTは28℃であった。
(2)凝集処理剤の調整
(処理液T−1の調整)
下表3の組成にて処理液を調整し、得られた反応液の物性値を測定した結果、粘度4.9mPa・s、表面張力24.3mN/m、pH1.5であった。
Figure 2009285878
これらの凝集処理剤を用いることで、ヘッドの吐出性や記録媒体の濡れに優れた凝集処理剤の付与が可能となる。
(3)インクの調整
(ポリマー分散剤P−1の調製)
攪拌機、冷却管を備えた1000mlの三口フラスコにメチルエチルケトン88gを加え窒素雰囲気下で72℃に加熱し、ここにメチルエチルケトン50gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.85g、ベンジルメタクリレート60g、メタクリル酸10g、メチルメタクリレート30gを溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、更に1時間反応した後メチルエチルケトン2gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.42gを溶解した溶液を加え、78℃に昇温し4時間加熱した。得られた反応溶液は大過剰量のヘキサンに2回再沈殿し、析出した樹脂を乾燥してポリマー分散剤P−1を96g得た。
得られた樹脂の組成は1H−NMRで確認し、GPC(Gel Permeation Chromatography)より求めた重量平均分子量(Mw)は44600であった。更に、JIS規格(JISK0070:1992)記載の方法により、このポリマーの酸価を求めたところ、65.2mgKOH/gであった。
(シアン分散液の調製)
ピグメントブルー15:3(大日精化株式会社製 フタロシアニンブル−A220)を10部と、上記で得られたポリマー分散剤P−1を5部と、メチルエチルケトンを42部と、1mol/L NaOH水溶液を 5.5部と、イオン交換水87.2部とを混合し、ビーズミルで0.1mmΦジルコニアビーズを使い、2〜6時間分散した。
得られた分散物を減圧下55℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去することにより、顔料濃度が10.2質量%のシアン分散液を得た。
上記のようにして、色材としてのシアン分散液を調液した。
上記で得られた色材(シアン分散液)を用いて、下記インク組成(表4)となるようにインクを調液し、調液後5μmフィルターで粗大粒子を除去し、インクC1−1を調整した。得られたインクC1−1の物性値を測定した結果、pH 9.0、表面張力32.9mN/m 粘度3.9mPa・sであった。
Figure 2009285878
同様にして、Magenta、Yellow、Blackのインクも調液した。
(4)添加ポリマー
前述の凝集処理剤やインクには、適宜ポリマー樹脂などの粒子を添加する。凝集処理剤には光沢調整用として、また、インクには画像固定用として粒径1μm以下、最低造膜温度28〜50℃、ガラス転移点40〜80℃の粒子を1〜8%入れるのが好ましい。
Figure 2009285878
(パージの説明)
次に、本例に示すインクジェット記録装置10のパージについて説明する。本実施形態における「パージ」という用語には、画像記録に関連しない予備的な打滴(いわゆる予備吐出)だけでなく、ヘッドのメンテナンスによる打滴動作を利用して余白領域に特定の文字、記号、形状(パターン)等を形成するものを含む概念である。
前記の各インクヘッド210Y、210M、210C、210Kは、記録媒体の最大記録幅が打滴可能なラインヘッドであり(図23(a)参照)、高速かつ高密度の画像記録が可能である。一方、ライン型ヘッドは画像データによっては打滴しないノズルや打滴頻度が低いノズルが発生し、特に、多数枚の同一画像を連続プリントする場合は、特定のノズルについてインクの増粘やノズル詰まりを生じやすいの。したがって、打滴しないノズルや打滴頻度が低いノズルは適宜パージ(ダミー吐出、予備吐出)を実行して、当該非打滴ノズルや低頻度打滴ノズルからインクを排出する。
かかるパージは、用紙ごと(1回の画像記録ごと)に行ってもよいし、用紙数枚ごと(複数回の画像記録ごと)に行ってもよい。また、1回のパージは全ヘッド(KCMYすべてのヘッド)について行ってもよいし、単一ヘッド(KCMYのいずれかのヘッド)について行ってもよく、一定時間以内に実施するのが好ましい。画像データに応じて当該画像記録に使用する全ノズルをパージしてから描画すれば、一段と安定な画像形成が可能となる。
本例に示すパージでは、記録媒体の余白領域(図18のM〜M)に対してパージによるインク液滴を付着させるので、記録媒体がムダにならずに済む。また、パージによるインク液滴の回収が不要であり、連続印刷の中で適宜パージを実行することができる。更に、圧胴216にパージによるインク液滴を付着させる場合のように、パージを実行するたびに圧胴のクリーニングが発生しない。
先に説明したように、印字部28の圧胴216を除いた記録媒体を保持する圧胴40,86,306,326において、記録媒体の先端部を挟持するグリッパ87(図12参照)には段差があるため、浸透抑制処理部24や処理液付与部26のスパイラルローラ48(塗布ローラ)は、グリッパ87の配置位置で圧胴40,86の表面から離間するように構成されている。かかる構造では、スパイラルローラ48が離間している間にスパイラルローラ48の直下を通過する記録媒体の先端部(グリッパ87により挟持されている部分及びその近傍)には浸透抑制剤や処理液は付与されず、当該記録媒体の先端部には浸透抑制剤や処理液が存在しない。
処理液が存在しない記録媒体の先端部の余白領域にパージによるインク液滴が付着しても、当該インクは凝集しない状態で記録媒体上に存在するので、搬送中の傾きや乾燥のための熱風の噴射などで記録媒体上を移動してしまうおそれがある。本例に適用されるインクには、上記表4に示すようにポリマー樹脂を含有しているので、凝集していない液状のインク液滴に対して、図12〜図22で説明した渡し胴304による加熱処理を施し、水などの溶媒を蒸発させ、表面温度を上げることで、パージによるインク液滴を記録媒体に固定可能である。
すなわち、図1に示すヘッド210K、210C、210M、210Yからパージされたインク液滴が記録媒体の先端部の処理液の非付与領域に着弾し、パージによるインク液滴が付着するとともに、印刷有効領域186(図18参照)に所望の画像が形成された記録媒体は、圧胴216の回転とともに搬送され、渡し胴304に受け渡され、渡し胴304に受け渡された記録媒体には、熱風による加熱処理が施されて、パージによるインク液滴(及び、印刷有効領域186に形成された画像)が記録媒体に固定される。
上述した加熱処理では、記録媒体の少なくともパージによるインク液滴の着弾箇所の温度がインクに含有するポリマー粒子(ラテックス)の最低造膜温度(MFT)以上の温度であり、かつ、該ポリマー粒子のガラス転移点(Tg)以上の温度となるようにヒータ110(図12参照)が制御される。
インクに含有するポリマー粒子の最低造膜温度以上の温度に加熱して水分を十分に除去し、乾燥防止や粘度調整用としてインクに含有したグリセリンやジエチレングリコール、トリオキシプロピレングリセリルエーテルなどの高沸点溶媒を低粘度化して記録媒体に浸透させながらポリマー粒子を成膜することで凝集インクの固定性を確保する。
水や高沸点有機溶媒が残っている状態では、ポリマー粒子は最低造膜温度以上に加熱したとしても造膜しにくいため、水を蒸発させるとともに高沸点有機溶媒は記録媒体に浸透させることで、確実にポリマー粒子を造膜させることが可能となる。
更に、記録媒体の先端部にパージしたインク液滴をインクに含有するポリマー粒子の最低造膜温度以上の温度及び該ポリマー粒子のガラス転移点以上の温度に加熱してポリマー粒子を成膜し、かつ、該ポリマー粒子をガラス状態からゴム状態へ遷移させることで、非凝集インクを記録媒体に確実に固定し得る。なお、記録媒体の温度を水の沸点未満の温度にすることで、記録媒体中の水分によるブリスターを防止してインク固定の一層の安定化が可能となる。
ヘッド210K、210C、210M、210Yのうち、複数のヘッドのパージを同一の記録媒体に行う場合には、色間でドットが重ならないように各ヘッドのパージにおけるインク打滴が制御される。即ち、異なるヘッドから同一の打滴点にドットを重ねて打滴しないようにパージにおけるインク打滴が制御されるので、1つの打滴点には単一のドットのみが形成される。
ドットが重なると、同一打滴点におけるインク量が増加するので、重なったドットは移動(液流れ)が発生しやすくなるとともに乾燥効率が低下するおそれもあるが、かかる打滴制御によって液流れが防止され、乾燥効率の低下を回避することができる。具体的には、打滴密度1200dip×1200dip、インク打滴量2.5〜5plの場合、平均液厚で6〜12μm、好ましくは6μm以下に制御している。
また、同一ヘッドのパージにおいても、ドットを重ねないように千鳥配置などの間引き配置(分離配置)することで着弾干渉を緩和する打滴制御も好ましい。即ち、隣接する打滴点にドットを形成する際に、液体状のドットが接触して着弾干渉が発生すると、上述した色間のドットを重ねた場合と同様に、重なったドットにおける厚み(液厚)の不均一状態が生じ、熱風の照射により液流れや乾燥効率の低下が懸念される。
着弾干渉による液厚の不均一性を緩和することで、加熱処理時の熱風による液流れも防止され、かつ、乾燥性が一層向上し、好ましい。上述した打滴制御は、印刷用塗工紙など浸透性の弱い記録媒体を用いる場合には特に有効である。
上述したドットの重なりによる着弾干渉を防止する手法として、対称打滴型マトリクスヘッドを用いて隣接打滴を行う手法が有効である。かかる対称打滴型マトリクスヘッドによれば、間引き打滴を行うことなくベタ画像などの高密度打滴を行った場合にも、着弾干渉が軽減される。なお、対称打滴型マトリクスヘッドの詳細については後述する。
次に、本例のパージによるインク液滴の加熱処理について具体例を挙げて説明する。図31には、記録媒体14の印刷有効領域186(図18参照)に最大打滴量である250%ベタ画像を形成し、先端部の余白領域(M1)にパージを行い、記録媒体全体に対して一様に加熱処理を施した場合の記録媒体表面の温度遷移を示す。
250%ベタ画像の形成例を挙げると、シアンインクを打滴密度1200dip×1200dip、インク打滴量2.5〜5plで100%ベタを形成し、その上にマゼンタインクの100%ベタを同様に形成してから、イエローインクを打滴密度又は打滴量をシアン(マゼンダ)インクの半分にして打滴することで、ブルーの上にブラックが斑点状に存在する250%ベタ画像が形成される。
図31の縦軸(表面温度)は記録媒体の表面温度を表し、横軸(時間(位置))は当該加熱処理開始からの経過時間(記録媒体の位置)を表している。図31では、記録媒体が渡し胴304に受け渡されたタイミングを加熱処理の開始タイミングとしている。
図31中、破線で示す曲線507は白地部分(浸透抑制剤や処理液のみが付与された部分)の温度遷移であり、実線で示す曲線508及び一点破線で示す曲線509はそれぞれパージ部分(例えば、図37(a)の符号550で示すパターン)、ベタ部分(250%のベタ画像)の温度遷移である。また、各部の温度については、赤外線温度計により各部の複数個所について温度測定値を求め、当該測定値の平均値を各部の温度とした。
図31に示すように、パージによるインク液滴が付着した記録媒体が渡し胴304に受け渡されると、当該記録媒体に対する加熱処理が開始される。加熱処理開始時の記録媒体の温度は装置内の環境温度(例えば、25℃)とほぼ同一である。
当該記録媒体が渡し胴304により搬送されると加熱処理が進行し、白地部分(乾燥済みの浸透抑制剤や処理液が付着している部分)、パージ部分、ベタ部分とも温度が上昇する。各部の単位時間あたりの温度変化は、表面に保持している液体量が多い部分ほど小さくなっている。
加熱処理の開始直後は、記録媒体の表面近傍には、記録媒体の表面上の液体から気化した湿り空気層が形成され、更に加熱処理が進行すると、湿り空気層が熱風などで除去された表面蒸発状態となり、渡し胴304の記録媒体搬送路中間位置近傍において、白地部分の温度は最低造膜温度に達する。なお、図31に温度遷移を示すインクに含有するポリマー粒子の最低造膜温度は49℃である。
更に加熱処理が進行し、渡し胴304の記録媒体搬送路の中間位置と終端位置の中間位置近傍において、パージ部分の温度は最低造膜温度以上の温度に達する。
すなわち、渡し胴304により記録媒体が搬送されている期間に表面乾燥が進行し、記録媒体の表面温度のうち少なくともパージ部分(パージによるインク液滴が付着している部分)の温度が最低造膜温度以上の温度になることでパージによるインク液滴の表面にポリマー粒子の膜が成膜され、パージによるインク液滴の記録媒体に対する固定性が確保される。
更に渡し胴304が回転すると、渡し胴304と乾燥胴(圧胴306)との受渡部において、渡し胴304から乾燥胴306へ記録媒体の受け渡しが行われる。
乾燥胴306に保持された記録媒体は、溶媒乾燥ユニット308(図27参照)によって加熱処理が施される。乾燥胴306の加熱処理によって記録媒体の表面温度は更に上昇し、白地部分の温度は、受渡位置の近傍(記録媒体の受け渡し直後)においてポリマー粒子のガラス転移点以上の温度に達し、乾燥胴306の記録媒体搬送路の中間位置近傍において最高温度(水の沸点未満の温度)に達する。なお、図31に温度遷移を示すインクに含有するポリマー粒子のガラス転移点は63℃である。
ベタ部分の温度は、乾燥胴306の記録媒体搬送路の中間位置近傍において最低造膜温度以上の温度に達し、乾燥胴306の記録媒体搬送路の中間位置と乾燥胴306の記録媒体搬送路の終端位置との中間位置近傍において最高温度(水の沸点未満の温度)に達する。
パージ部分の温度は、乾燥胴306の記録媒体搬送路の中間位置近傍において、ガラス転移点以上の温度に達し、乾燥胴306の記録媒体搬送路の中間位置と乾燥胴306の記録媒体搬送路の終端位置との中間位置近傍において最高温度(水の沸点未満の温度)に達する。
すなわち、乾燥胴306による加熱処理期間内において、記録媒体の表面温度はガラス転移点以上の温度となり、水分の記録媒体からの内部蒸発や、浸透抑制剤やインクに含まれる高沸点有機溶媒の浸透が促進され、パージによるインク液滴のポリマー粒子はガラス状態からゴム状態へ変化することによって、パージによるインク液滴(非凝集インク)は記録媒体に完全に固定される。また、ベタ部分の温度は最低造膜温度以上の温度となり、ベタ部分の表面にポリマーの膜が成膜される。
また、乾燥胴306による加熱処理では、各部の温度が水の沸点未満の温度のうちに加熱を停止し、記録媒体表面の各部の最高温度が水の沸点以上の温度になることを回避している。すなわち、乾燥胴306の記録媒体搬送路の中間位置近傍に記録媒体が到達すると(パージ部分の温度がTgを超えたタイミングで)、図27に示すIRヒータ310を停止させる。IRヒータ310を停止してもしばらくの間は余熱によって各部の温度は上昇するが、時間経過とともに各部の温度は下降する。
記録媒体が乾燥胴306と渡し胴324との受渡位置に達すると、乾燥胴306から渡し胴324へ記録媒体の受け渡しが行われる。渡し胴324による記録媒体の搬送中は、渡し胴324の搬送ガイド150の温度にならって記録媒体の表面温度は下降し、渡し胴324と定着胴(圧胴326)との受渡位置に記録媒体が達する位置では、記録媒体の各部の温度は略均一になる。
定着胴326による定着処理では、印刷有効領域186(ベタ部分)に加熱処理が施され、ベタ部分の温度はポリマー粒子のガラス転移点以上の温度まで上昇する。
上記のごとく構成されたインクジェット記録装置10によれば、処理液が付与されていない記録媒体の余白領域に対してパージを実行し、パージによるインク液滴が記録媒体上で重ならないように、パージにおいてインクを打滴するとともに、パージによるインク液滴が付着した記録媒体に対して、インクに含有するポリマー粒子の最低造膜温度以上の温度になるように加熱処理を施し、かつ、該ポリマー粒子のガラス転移点以上の温度になるように加熱処理を施すことで、パージによるインク液滴の表面にポリマー粒子の膜を成膜するとともに、該ポリマー粒子をガラス状からゴム状に変化させて、パージによるインク液滴を記録媒体に固定することが可能となる。したがって、処理液が付与されていない余白部分でも記録媒体上での液流れや裏写り、パージに起因する装置内の汚染が防止される。また、印刷有効領域に形成された画像(インク)の温度を、最低造膜温度以上の温度にすることで、該画像の記録媒体への固定も可能である。更に、稼働中のパージによるインク液滴の回収が不要である。
なお、各種用紙サイズに対応して紙幅を切り換える場合は、ヘッド吐出幅と用紙幅の差分だけにパージしてもよく、特に、印刷物では用紙の両端に余白があるので、パージ受けまでの距離が長く、わずかなパージ飛散を受けた場合でも、画像形成部の汚染は防止でき、圧胴へのパージ量は少ないのでパージ液の処理も容易となる。また、ヘッドのインク充填単位を用紙幅に合わせておき、未使用ノズルのインク充填をしないようにしたり、ノズル面にシート保持部を設けて未使用ノズルに保湿シートを密着させておいてもよい。
(渡し胴の構造の変形例)
次に、渡し胴の構造の変形例について説明する。
図32は、本変形例に適用される渡し胴304の噴射開口109の形成例を模式的に描いた平面展開図である。同図において上側が用紙搬送方向の下流側(用紙先端側)である。図示のように、幅方向の中央部ほど開口径を大きく、また、搬送方向の下流ほど開口径を大きくした開口パターンであり、用紙搬送方向の最下流側の一列について、開口径が同一(最大開口径)となっている。具体的には、開口の径をφ0.3〜3mm、開口の数をピッチで穴径の2〜5倍の千鳥配置にするのが好ましい。
図32に示す配置パターンを有する噴射開口109によれば、噴射開口109の開口径を大きくする、又は、噴射開口109の数を増やすなど噴射開口109の総面積を、用紙の先端ほど(パージによるインク液滴が付着している領域ほど)熱風の噴射量を多くすることで、パージによるインク液滴の乾燥が促進される。
なお、図32に示す開口パターンは、記録媒体の先端部にパージインクを付着させる場合に好適であり、図21に示す開口パターンを適用する場合には、記録媒体の後端部に熱風が集中するので、パージインクは記録媒体の後端部に付着させるとよい。
図33には、図32に示す噴射開口109の配置パターンを渡し胴304に適用した場合の記録媒体表面の温度遷移を示す。なお、図33中、図31と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図33に示すように、一様加熱(図31参照)に比べて、溶媒乾燥部30における用紙全体の加熱量を下げても、用紙先端部の非凝集インク(パージによるインク液滴)をインクに添加されるポリマー粒子の最低造膜温度以上の温度及び該ポリマー粒子のガラス転移点以上の温度にすることが可能となり、印字部28の過剰乾燥によるシワやカール、ヒビ割れなどの不具合が防止でき、用紙の面内における温度差も抑制できるので、インク打滴量に分布のある画像でもカックルなどの用紙変形が低減できる。すなわち、図33のΔtは、図31のΔtと比較するとΔt>Δtとなっているので、上記の効果を得ることができる。
また、印字部28の凝集インクは、該インクに添加されるポリマー粒子の最低造膜温度以上の温度に加熱して成膜しているので、後述する熱圧定着部32のヒートローラで熱圧定着すれば、オフセットなどの不具合を抑制しつつ一段と画像堅牢性や光沢性に優れた画像形成が可能となる。
更にまた、噴射開口109の噴射量を幅方向の中央部ほど多くすることで乾燥風の流れを一段とスムーズにして乾燥を更に安定させることが可能である。
(パージパターンの説明)
次に、本例に適用されるパージによるインク液滴によって形成されるパージパターンについて説明する。先に説明したように、本例に示すパージでは同一打滴点にインクが打滴されないように、パージの打滴が制御される。更に、以下に説明するように、パージによって打滴されるインク液滴を用いて特定のパターンを形成することで、付加情報の付与、各種補正、各種制御を行うことができる。
<パージパターン1>
図34(a)には、本例のパージに適用されるパージパターンとして、ドット抜けのないフォントのアルファベットを用いたパージパターン510を図示する。また、図34(b)には、図34(a)の一部を拡大して図示する。
図34(a),(b)に示すパージパターン510では、符号512(512A,512B,…,512H,…)を付し、矢印線で図示した文字ごとの領域に対応する(該領域インクを打滴することができる)すべてのノズルのパージが実行され、各領域512には文字(A,B,C,…,H,…)が形成されている。更に、各領域512の間には隙間がなく、パージパターン510全体としても、ドット抜けがないパージパターンとなっている。
図34(a),(b)には、アルファベットを用いる態様を例示したが、ドット抜けのないフォントであれば数字や記号、これらの組み合わせなどを適宜適用可能である。また、処理番号、処理条件、連番などの生産管理情報(付加情報)をパージパターンに適用すると、パージと同時に記録媒体ごとの付加情報を付与することができ、効率的である。
図34(a),(b)に示すパージパターン510は、単色(1つのヘッドから打滴されたインク)により形成してもよいし、複数色(複数のヘッドから打滴されたインク)により形成してもよい。また、単色(1つのヘッド)によるパージパターンを色ごと(ヘッドごと)に複数形成してもよい。
<パージパターン2>
図35には、図1に示すヘッド210K、210C、210M、210Yのそれぞれから単色のラインパターン520K,520C、520M,520Yを形成する場合を図示する。
図35では、印刷有効領域186を実線枠で図示し、製版寸法領域を二点破線枠186A、製品仕上がり寸法領域を二点破線枠186Bで図示する。
図35には、ヘッド210K、210C、210Mによる単色ラインパターン520K,520C,520Mを記録媒体14の先端部余白領域(図18のM)に形成し、ヘッド210Yによる単色ラインパターン520Yを記録媒体14の先端部余白領域(図18のM)に形成する場合を示す。なお、各色のラインパターンの配置順は図35に示す配置順に限定されず、適宜変更可能である。また、4色のラインパターン520K,520C、520M,520Yのうち、1色分のみ、2色分のみ、3色分のみのラインパターンのみを形成してもよい。
図35に示すラインパターン520K,520C、520M,520Yは、ヘッド210K、210C、210M、210Yのすべてのノズルからインクを打滴して形成されている。また、ラインパターン520K,520C、520M,520Yの幅は1ドット幅(1200dpiの場合に略35μm)でもよいし、複数ドット幅でもよい。ラインパターン520K,520C、520M,520Yの幅は、1ドット幅から5ドット幅(35μm〜100μm)とするとよい。
図35に示すパージパターンによれば、色間のインク液滴が重なることがなく、液流れが防止される。また、図1に示すインラインセンサ348により当該パージパターンを検出する場合には、ヘッドごとにパージパターンを読み取ることが容易であり、ヘッドの吐出タイミングを制御することで、カラータイミング(色ズレ)調整などの補正も可能となる。更に、モノクロ対応の撮像センサを用いても4色分の検出が可能である。
<パージパターン3>
図36(a)には、画像データに基づいて、不使用ノズルのみに対してパージを実行する場合のパージパターン530K,530C,530M,530Yを図示し、図36(b)には、図36(a)のパージパターンの符号540を付した領域を拡大して図示する。
図36(a),(b)に示すパージパターン530K,530C,530M,530Yを形成するには、まず、パージ直前の画像データに基づいて当該画像データにおいて使用されないノズルが判断され、当該不使用ノズルのパージを実行して形成されている。なお、パージパターン530K,530C,530Mの「パージ直前の画像」は、パージパターン530K,530C,530Mが形成された記録媒体14の前の記録媒体(不図示)に記録された画像であり、パージパターン530Yの「パージ直前の画像」は、パージパターン530Yが形成された記録媒体に記録された画像である。
図36(a),(b)に示すパージパターン530K,530C,530M,530Yの幅は、図35(a),(b)に示すパージパターン520K,520C,520M,520Yと同様に、1ドット幅から5ドット幅(1200dpiの場合に35μm〜100μm)とするとよい。
<パージパターン4>
図37(a)には、水分量を検出する検出装置の検出領域や、温度センサの検出領域に対応する位置にパッチ550を形成し、他の領域にはラインパターン552を形成する場合を図示する。また、図37(b)には、パッチ550を拡大して図示する。
図1に示すインラインセンサ348や図12の線さ182(赤外線水分量計、赤外線温度計)によりパッチ550の水分量や表面温度を計測し、図37(a),(b)に示すパッチ550の水分量や表面温度をモニタして、記録媒体の乾燥処理における乾燥量を制御すると、装置内外の温度変化や湿度変化、用紙のバラつきなどに対して一段と安定したパージインクの固定が可能となり、画像の定着性も安定する。
図37(b)には、ノズルのマトリクス配置に対応した斜めパターンを有するパッチ550を示したが、本例に適用可能なパッチ550のパターンは、図36(b)に示すパターンに限定されず、ドット同士が重ならない(着弾干渉が発生しない)ものであれば、千鳥配置等の間引きパターンでもよいし、後述する対称打滴型マトリクスヘッドによるベタ画像でもよい。
<パージパターン5>
図38(a)には、余白領域にKCMY各色のドット570K,570C,570M,570Yを形成するとともに、同一のノズルを用いて印刷有効領域186にKCMY各色のドット572K,572C,572M,572Yドットを形成するパージパターンを示し、図38(b)には、符号560を付した領域を拡大して図示する。
Yドット570Y,572Yについて説明すると、余白領域に形成されたドット570Y(凝集していないインク液滴によるドット)の直径Dと、印刷有効領域186に形成されたドット572Y(凝集しているインク液滴によるドット)の直径Dを測定し、ドット570Yの直径Dとドット572Yの直径Dの関係を求め、インク吐出量や処理液の塗布厚を制御することが可能である。
また、図38(a),(b)に示すKCMY各色のパターンを形成し、各色のパターンを測定してカラーレジを補正したり、先端部の余白領域と後端部の余白領域の両方にパターンを形成し(図示省略)、先後端や幅方向のパターンを測定して倍率補正している。かかる構成によって、光沢や濃度、倍率、歪みや位置ずれなどの品質を安定に保っている。
<パージパターン6>
図39には、文字を適用したパージパターン580を図示する。図39には、アルファベットをAから順に並べた場合を図示する。なお、パージパターン580に適用可能な文字はアルファベットに限定されず、数字、記号などを適用してもよい。また、パージパターン580を記録媒体ごと(画像ごと)の付加情報(生産管理情報等)としてもよい。
(対称打滴型マトリクスヘッドの説明)
次に、図40〜図46を用いて、本発明のパージ方法に適したヘッドの構造及びインク打滴制御について説明する。以下に説明するヘッドは、特許第3921690号公報に掲載されている「対称打滴型マトリクスヘッド」であって、隣接する打滴点に打滴されたドットの着弾干渉の防止に有効なものである。
図40は、対称打滴型マトリクスヘッド650の構造例を示す平面透視図であり、図41は図40の一部拡大図である。なお、図40〜図46において、図23〜25と同一又は類似する部分の説明は省略する。
図40に示すヘッド650は、インク滴を吐出するノズル651と、各ノズル651に対応する圧力室652等からなる複数のインク室ユニット653を千鳥でマトリックス状に配置させた構造を有し、これにより見かけ上のノズルピッチの高密度化を達成している。
また、ヘッド650は、インクを吐出する複数のノズル651が印字媒体送り方向(副走査方向)と略直交する主走査方向に印字媒体の全幅に対応する長さにわたって配列された1列以上のノズル列を有するフルラインヘッドである。
図40に示すように、ヘッド650に備えられたノズル651(インク室ユニット653)は、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度を有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に配列させた構造になっており、ノズル651-11、651-12、651-13から成るノズル列712と、ノズル651-14、651-15、651-16から成るノズル列714とに分割され、更に、ノズル列712とノズル列714とは主走査方向に位相をずらして配置されている。
すなわち、6個のノズルから成る斜め方向に沿って配列されたノズル列710は副走査方向に各3個のノズルを備えたノズル列712及びノズル列714に2分割され、ノズル列712とノズル列714とは主走査方向に位相をずらして配置されている。なお、ノズル列712、514と主走査方向に配列された他のノズル列も同一構造を有している。
言い換えると、ヘッド650内のノズル651は、ノズル列712と主走査方向に平行な方向に並ぶ多数のノズル列で構成されるノズル群722とノズル列714と主走査方向に平行な方向に並ぶ多数のノズル列で構成されるノズル群724の2つのノズル群によって副走査方向に2分割され、一方のノズル群(例えば、ノズル群722)ともう一方のノズル群(例えば、ノズル群724)とは主走査方向に位相をずらして配置されている。
また、ノズル群722及びノズル群724が有するノズル651を主走査方向に投影した投影ノズル列ではノズル間ピッチが等間隔になるように、各ノズル群の主走査方向の位相が決められている。
なお、本例では、各ノズル群の中で斜め方向に配列された複数のノズルをノズル列と呼んでいる。また、例えば、図40のノズル列710のように、2つのノズル群に属するノズル列が打滴制御上1つのノズル列として機能するものもノズル列と呼ぶ。ノズル列710のノズルを所定の順序で駆動すると1サイクルの打滴(1サイクルの吐出動作)を行うことができる。
「1サイクルの打滴」とは、主走査方向に1列のドット列を形成する最小単位の打滴動作を言い、主走査方向と斜め方向に配列されたノズル列の全ノズルを所定の順序(タイミング)で駆動する態様がある。もちろん、該ノズル列内のノズルのうち一部ノズルが所定のタイミングでオフとなってもよい。
また、ヘッド650は、本流路655A、支流路655Bを含んだ共通流路655などを有するインク供給系を備えている。本流路655Aは千鳥でマトリックス状に配置されたインク室ユニット653を挟むように上下2列設けられ、たとえば主走査方向に沿うように配置されている。なお、図40に示すヘッド650のノズル配置の詳細は後述する。
本流路655Aの左右端部には主供給口(不図示)が形成され、この主供給口を介してインク供給系(不図示)に連結される。図40に示す2本の本流路655Aは、各ノズル列712,714に共通の共通流路655Bに連通され、インク供給系から本流路655A、共通流路655Bを介して各圧力室652へインクが供給されている。
また、図24に示したヘッドと同様に、短尺のヘッドモジュール280’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせて、記録媒体の全幅に対応する長さとしてもよい。
各ノズル651に対応して設けられている圧力室652は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル651と供給口654が設けられている。各圧力室652は供給口654を介して共通流路(支流路)55Bと連通されている。
かかる構造を有する多数のインク室ユニット653を図41に示すごとく、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に配列させた構造になっている。主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット653を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチP0は(d×cosθ)/2となる。
すなわち、主走査方向については、各ノズル651が一定のピッチで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。以下、説明の便宜上、ヘッドの長手方向(主走査方向)に沿って各ノズル651が一定の間隔(ピッチP0)で直線状に配列されているものとして説明する。
ここで、本発明に係るヘッド650の標準的な規格は、従来技術に係るヘッド6500の標準的な規格と同一であり、その一例を挙げると、圧力室652のサイズは700μm ×700μm、アクチュエータ(図25参照)のサイズは500μm×500μm、主走査方向に隣り合うノズルのノズル間ピッチP1(同一タイミングで打滴を行うノズルのノズル間ピッチ)は0.846mm(=30npi)、副走査方向の打滴間隔は1mm、通常用いられるインク粘度は2cP〜3cPである。
なお、用紙の全幅に対応したノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、用紙の幅方向(用紙の搬送方向と直交する方向)に1列のドットによるライン又は複数のドット列から成るラインを印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
特に、図40及び図41に示すようなマトリクスに配置されたノズル651を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。すなわち、ノズル651-11、651-12、651-13、651-14、651-15、651-16を1つのブロックとし(他にはノズル651-21、…、651-26を1つのブロック、ノズル651-31、…、651-36を1つのブロック、…として)、記録媒体の搬送速度に応じてノズル651-11、651-12、…、651-16を順次駆動することで記録媒体の幅方向に1ラインを印字する。
一方、上述したフルラインヘッドと用紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1列のドットによるライン又は複数のドット列から成るラインを繰り返し行うことを副走査と定義する。
<ノズル配置の説明>
次に、ヘッド650のノズル配置について詳述する。
なお、図40及び図41に示したように、ヘッド650内の主走査方向に直交しない斜め方向に複数のノズルが配列された各ノズル列の構成は同一であり、ここでは、各ノズル列を代表してノズル列712,714を用いて説明する。
図42は、本発明に係るヘッド650のノズル配置及び打滴タイミングを説明する図である。
図42に示すように、本発明に係るヘッド650では、図23に示すヘッド210における主走査方向に対して直交しない一定の角度を有する斜めの列方向に6個のノズルを有するノズル列710が、3個のノズルを有する2つのノズル列(ノズル列712及びノズル列714)に分割され、ノズル列712とノズル列714とを主走査方向のノズル間ピッチPの1/2だけ主走査方向にずらして配置されている。
すなわち、ヘッド650は、図23に示すヘッド210における主走査方向に対して所定の傾き角度を有するノズル列を主走査方向に複数並べたノズル群(吐出孔群に相当)が副走査方向に2分割され、このように副走査方向に2分割された各ノズル群722及びノズル群724は主走査方向のノズル間ピッチPの1/2だけ主走査方向に位相をずらして配置されるノズル(ノズル列)を備えている。
言い換えると、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向と所定の角度θをなす列方向に沿ってマトリクス状に配置されたノズル651は、副走査方向にn個のノズル群に分割され、各ノズル群は主走査方向に位相をずらして配置されている。
したがって、ノズル列712及びノズル列714を主走査方向に並ぶように投影すると、該ノズル列712,714を構成するノズル651-11〜651-16は主走査方向に沿って等間隔に並べられる。更に、ノズル651-11とノズル651-12との中間にノズル651-14が配置され、ノズル651-12とノズル651-13との間にノズル651-15が配置され、ノズル651-16はノズル651-13と主走査方向にP/2だけ離れたノズル651-15の反対側に配置される。
ヘッド650は、図42に図示するタイミングt1〜タイミングt3で打滴されたインク滴が記録媒体上で干渉しないように主走査方向のノズル間ピッチP(主走査方向に並ぶように投影された投影ノズル列のノズル間ピッチ)が決められる。
すなわち、主走査方向に連続して形成されるドットのうち、1つおきに配置される2つのドット間距離は、これらの2つのドットが重ならない距離に設定されている。主走査方向のノズル間ピッチPは図23に示したノズル間ピッチよりも大きな値であると言える。
図42において、ノズル651を表す円内に示した数字は打滴タイミング(打滴順)を示し、タイミングt1ではノズル651-11、ノズル651-21、ノズル651-31(図42には不図示)、…、から打滴が行われる。次にタイミングt2ではノズル651-12、…、から打滴が行われる。更に、タイミングt3〜タイミングt6ではノズル651-13、…、ノズル651-16、ノズル651-26、ノズル651-36、…、の打滴が行われ、タイミングt1〜タイミングt6の1サイクルの打滴によって、主走査方向に1ラインのドット列を形成することができる。
ここで、タイミングt1〜t3で行われる打滴では、各タイミングで打滴されたインク滴は記録媒体上で他のインク滴と接触せずに、各打滴によるインク滴が単独でドットを形成する。
一方、タイミングt4〜タイミングt6では、打滴されたインク滴が着弾する際に、主走査方向に隣り合う両側の着弾位置には既にインク滴が打滴され、記録媒体上に先に着弾しているために、両隣のインク滴と接触するように着弾する。
すなわち、タイミングt4で打滴されたインク滴は、タイミングt1及びタイミングt2で打滴されたインク滴の間に着弾し、同様にタイミングt5で打滴されたインク滴はタイミングt2及びタイミングt3で打滴されたインク滴の間に着弾し、タイミングt6で打滴されたインク滴はタイミングt1及びタイミングt3で打滴されたインク滴の間に着弾する。
タイミングt4〜タイミングt6で打滴されたインク滴が先に着弾している両隣のインク滴に引き寄せられるので、タイミングt4〜タイミングt6で打滴されたインク滴は一方向に寄る現象が起こらず、タイミングt4〜タイミングt6で打滴されたインク滴によるドットは対称性を有し、一方向の凝集によって発生するスジむらを低減させることができる。
本明細書では、図42にノズル配置を示すヘッド650において、各ノズル群722,724が有するノズル列(712,714等)の主走査方向に隣接したノズル列同士の境目であり、且つ、副走査方向のノズル間ピッチが他と比べて大きくなるノズル間位置を折り返し位置Aと定義する。
すなわち、図42に示すノズル配置では、ノズル651-11とノズル651-23との間(折り返し位置A−1)、ノズル651-14とノズル651-26との間(折り返し位置A−3)などが折り返し位置Aになる。
これらの折り返し位置Aにおけるインク滴間の着弾時間差(例えば、ノズル651-11から打滴されるインク滴とノズル651-23から打滴されるインク滴との着弾時間の差)は、同一ノズル列内の隣り合うノズル(例えば、ノズル651-11とノズル651-12やノズル651-12とノズル651-13など)から打滴インク滴間の着弾時間差と異なるために、先に着弾しているインク滴の記録媒体上に残存しているインク滴量が異なる。そのために、折り返し位置Aと折り返し位置以外の位置とでは凝集条件が変わるために、折り返し位置Aでは凝集によるスジむらが発生してしまう。
図42において、折り返し位置A-1と折り返し位置A-3との間隔など、ノズル群722内の折り返し位置の間隔(折り返し位置間ピッチ)P2Bは、P2B=0.94mmであり、該折り返し位置に生じる凝集によるスジむらの空間周波数は1.061lp/mm に相当し、比較的視認されやすい空間周波数領域内にある。
ただし、折り返し位置A-3と折り返し位置A-4との間隔など、ノズル群724内の折り返し位置の間隔P2Cもまた、P2C=0.94mmであり、ノズル列712の折り返し位置と同様に空間周波数1.061lp/mmを持つが、図42に示すように、折り返し位置A-1と折り返し位置A-4とは接近しているので、記録画像において視認される空間周波数は略1.061lp/mmとして考えることができる。
これに対して、図43に示すノズル配置では、ノズル群722内の折り返し位置A-1とノズル群724内の折り返し位置A-3との間隔P2 が等間隔になるように、主走査方向に折り返し位置間ピッチの半ピッチ分だけ位相をずらしたノズル配置になっている。
よって、折り返し位置Aの実質的な周期はP2=0.47mmとなり、この周期を持つ折り返し位置の空間周波数は2.13lp/mmとなり、図42に示したノズル配置と比較して、記録画像において濃度むらとして視認されにくい方向にシフトされたノズル配置が可能である。
なお、折り返し位置間ピッチP2は折り返し周期を2.0lp/mm 以上とする態様が好ましく、折り返し周期を3.0lp/mm以上にすると、更に、スジむらの視認性を大幅に低減させることができてより好ましい。
図43に示すような折り返し位置間ピッチP2が等間隔となるノズル配置を有する印字ヘッドでは、副走査方向のノズル群の数nは偶数となる。
<着弾時間差についての説明>
インクの種類や記録媒体の種類(メディア種)によっては、図42及び図43に示した折り返し位置間ピッチP2の最適化に代わり、着弾時間差(打滴時間差)を最適化することで濃度むらの視認性を効果的に低減させることができる。すなわち、隣接するドットを形成するインク滴の着弾時間差が、該ヘッド650の最大着弾時間差よりも小さくなるように、ヘッド650のノズル配置を決めるとよい。
図42に示すノズル配列を有するヘッド650を用いて、主走査方向に連続して1ライン上に並んだドット列を形成する場合、隣り合うドットを形成するインク滴を打滴する2つのノズル間の着弾時間差が最大値δTmax1となるノズルの組み合わせには、タイミングt1で打滴を行うノズル(例えば、ノズル651-11等)と、タイミングt6で打滴を行うノズル(例えば、ノズル651-26等)と、の組み合わせが挙げられる。
この隣接ドットを形成するインク滴を打滴するノズルの組み合わせうち、該ノズル間の着弾時間差が最大値δTmax1となるノズルの組み合わせは、図42に示すノズル配置における着弾時間差が最大値δTmax2となるノズルの組み合わせとなっている。言い換えると、図42に示すノズル配置では、δTmax1=δTmax2の関係を満たし、副走査方向のノズル間距離が最大となるノズルを用いて主走査方向に隣り合うドットを形成する打滴を行うために、他の主走査方向に隣り合うドットを形成する打滴を行うノズルに比べて着弾時間差が大きくなり、記録媒体の種類やインクの種類によっては、この着弾時間差に起因するスジむらが記録画像に生じてしまう恐れがある。
図44(a)、(b)に示すノズル配置では、図42に示したノズル配置に対して着弾時間差が最適化され、隣接ドットを形成するインク滴を打滴するノズルには、着弾時間差が最大値δTmxa2となるノズルの組み合わせと異なるノズルの組み合わせを用いるように、ノズル配置が決められている。
すなわち、図44(a)、(b)に示すノズル配列では、主走査方向に連続して1ライン上に並んだドット列を形成する場合、ヘッド650が有するノズルの着弾時間差がその最大値δTmax2になるノズルの組み合わせは、図42に示すノズル配列と同様に、タイミングt1で打滴を行うノズル (例えば、ノズル651-11等)と、タイミングt6で打滴を行うノズル(例えば、ノズル651-16等)と、の組み合わせが挙げられる。
一方、隣り合うドットを形成するインク滴を打滴する2つのノズル間の着弾時間差が最大値δTmax1となるノズルの組み合わせには、タイミングt2 で打滴を行うノズル(例えば、ノズル651-12 等)と、タイミングt6で打滴を行うノズル(例えば、ノズル651-16等)と、の組み合わせが挙げられる。
よって、図44(a)、(b)に示すノズル配列では、主走査方向に連続して1ライン上に並んだドット列を形成する場合には、隣り合うドットを形成する打滴を行うノズルの隣接最大着弾時間差の最大値δTmax1と、該ヘッド650が有するノズルの最大着弾時間差の最大値δTmax2との関係が、δTmax1<δTmax2を満たしている。
すなわち、ヘッド650内で副走査方向のノズル間距離が最大となる2つのノズル以外のノズルを用いて隣り合うドットを形成するインク滴が打滴されるので、他の主走査方向に隣り合うドットを形成するインク滴を打滴するノズル同士に比べて着弾時間差が大きく異なることがなくなり、極端な着弾時間差に起因する凝集によって生じるスジむらを抑制することが可能となる。
なお、図44(a)に示したノズル配列を有するヘッド650を用いて、主走査方向に連続して1ライン上に並んだドット列を形成する場合、主走査方向に隣り合うドットを形成するインク滴を打滴するノズルの着弾時間差が最小値δTmin1となるノズルの組み合わせには、タイミングt3で打滴を行うノズルとタイミングt4で打滴を行うノズル(例えば、51-23とノズル651-14の組み合わせ等)が挙げられる。
図44(b)に示すように、これらのノズルの副走査方向のノズル間距離は、ヘッド650内のノズルにおける副走査方向のノズル間距離の最小値Ptminと等しい距離に設定されている。
一方、主走査方向に連続して1ライン上に並んだドット列を形成する場合、主走査方向に隣り合うドットを形成するノズルの着弾時間差が最大値δTmax1となるノズル(例えば、ノズル651-23とノズル651-16等)の副走査方向のノズル間ピッチは4×Ptminに設定されている。このとき、着弾時間差の最小値δTmin1と着弾時間差の最大値δTmax1との関係はδTmin1/δTmax1=0.25となっている。
図44(c)に示したノズル配置を有するヘッド650を用いて、主走査方向に連続して1ライン上に並んだドット列を形成する場合、主走査方向に隣り合うドットを形成するノズルの着弾時間差が最小値δTmin1となるノズルの組み合わせには、タイミングt3で打滴を行うノズル(例えば、51-12等)とタイミングt4で打滴を行うノズル(例えば、ノズル651-14等)が挙げられる。
図44(c)に示すように、これらのノズルの副走査方向のノズル間距離は、ヘッド650内のノズルにおける副走査方向のノズル間距離の最小値Ptmin(例えば、ノズル651-11とノズル651-12との副走査方向にノズル間距離)に対して4×Ptminに設定されている。
また、主走査方向に隣り合うドットを形成するノズルの着弾時間差が最大値δTmax1となるノズル(例えば、ノズル651-12とノズル651-16等)の副走査方向のノズル間ピッチは7×Ptminに設定されている。このとき、着弾時間差の最小値δTmin1と着弾時間差の最大値δTmax1との関係はδTmin1/δTmax1=0.57となっている。
図44(b)に示すノズル配置と図44(c) に示すノズル配置との凝集によるスジむらを比較すると、隣り合うドットを形成するインク滴間の着弾時間差の比δTmin1/δTmax1が1に近い(着弾時間差の比のばらつきが少ない)図44(c)に示すノズル配置の方がより良好な傾向を示している。
特に、着弾時間差の比δTmin1/δTmax1が0.5を境界として凝集により生じるスジむらの視認性の傾向が変わることが実験より分かっており、δTmin1/δTmax1≧0.5の条件を満たす態様が好ましい。
すなわち、ノズル群間の副走査方向の距離を最適化することで、隣り合う着弾位置に着弾するインク滴の着弾時間差のばらつきを少なくすることができ、凝集により生じるスジむらの視認性を抑制することができる。
本変形例では、3個のノズルを有するノズル列が主走査方向に沿って複数並べられたノズル群を備えた印字ヘッドを例示したが、ノズル列が有するノズル数は3個に限定されず、1つのノズル列に2個のノズルを備えてもよいし、3個以上のノズルを備えてもよい。また、本例には、同一ノズル配置を有するノズル群を主走査方向にずらして副走査方向に沿って複数配置したが、異なるノズル配置を有する複数のノズル群を副走査方向に沿って並べてもよい。上述した異なるノズル配置には、例えば、各ノズル群が有するノズル列に含まれるノズル数が異なる態様や、各ノズル群の副走査方向のノズル間ピッチが異なる態様などがある。
<対称打滴型マトリクスヘッドの応用例>
次に、上述した対称打滴型マトリクスヘッドを1ノズル列あたり20個のノズルにより構成した場合の応用例について説明する。
図45に示すように、ヘッド650”が有するマトリクス配列されたノズルは副走査方向に4分割され、分割された各ブロック(ノズル群)742,744,746,748はそれぞれ主走査方向に位相をずらして配置されている。
図45に示すヘッド650”は、ノズル651-105とノズル651-121との間、ノズル651-110とノズル651-126の間、ノズル651-115とノズル651-131との間、ノズル651-120とノズル651-136との間の4ヶ所に折り返し位置Aができ、折り返し位置Aにおける空間周波数を一般的なマトリクス配置におけるノズル配列の4倍(高周波)にすることができる。したがって、折り返し位置Aにおける特異性を改善することができ、折り返し位置Aにおけるスジむらの視認性を抑制することができる。
また、図45に示すノズル配置では、図43に示すように、折り返し位置間ピッチP2が均一になるように各ノズル群742,744,746,748をそれぞれ主走査方向にずらして配置されている。
すなわち、ヘッド650”は、上述したノズル群が副走査方向にn個(ただし、nは2以上の整数であり、折り返し位置間ピッチを均等にする態様ではnは2以上の偶数)並べられ、各ノズル群はそれぞれ主走査方向に位相をずらして配置されている。より高解像度の画像を得るためには、n≧4である態様が好ましい。
また、主走査方向のノズル間ピッチP1は主走査方向に隣り合うノズル間ピッチPがn分割された距離に等しくなる。これは、各ノズル群は主走査方向にP/nを単位とするシフト量で割り振られることと等価である。
なお、ヘッド650”内の各ノズル列の配置は同一であり、これらのノズル列を代表して、ノズル651-101〜ノズル651-120の20個のノズルからなるノズル列730を用いて説明することにする。
ノズル列730は、ノズル651-101〜ノズル651-105から成るノズル列732、ノズル651-106〜ノズル651-110から成るノズル列734、ノズル651-111〜ノズル651-115から成るノズル列736、ノズル651-116〜ノズル651-120から成るノズル列738から構成され、ノズル列732はノズル群742に属し、ノズル列734はノズル群744に属し、ノズル列736はノズル群746に属し、ノズル列738はノズル群748に属する。
ノズル651-101〜ノズル651-120を主走査方向に並ぶように投影されたノズル列において、ノズル651-101とノズル651-102との間にノズル651-109が配置されるようにノズル列732とノズル列734とを主走査方向に位相をずらして配置し、また、ノズル651-101とノズル651-109との間にノズル651-115が配置されるようにノズル列734とノズル列736とを主走査方向に位相をずらして配置し、更に、ノズル651-102とノズル651-109との間にノズル651-118が配置されるようにノズル列736とノズル列738とを主走査方向に位相をずらして配置した構造を有している。
すなわち、各ノズル列732,734,736,738が有するノズル651-101 〜ノズル651-120を主走査方向に並ぶように投影した投影ノズル列において、同一ノズル群内の隣り合うノズルの間に、副走査方向に隣り合うノズル群のノズルが位置するように配置されている。例えば、上述した投影ノズル列において、ノズル群742に属するノズル651-101とノズル651-102との間には、ノズル群742と副走査方向に隣り合うノズル群744に属するノズル651-109が位置している。
図45に示したノズル配置では、主走査方向のノズル間ピッチ(同一ノズル群内で主走査方向に並ぶように投影したノズル列の隣接ノズル間ピッチ)P=0.169mm、主走査方向に隣り合うノズルのノズル間ピッチP1 =0.846mm、折り返し位置間ピッチP2=0.21mmとなっている。
図46には、図45に示したノズル配置と打滴タイミングとの関係を示す。
図46に示すように、タイミングt1ではノズル651-101と主走査方向に並べられたノズルから打滴が行われ、タイミングt2ではノズル651-102と主走査方向に並べられたノズルから打滴が行われる。このようにしてタイミングt3〜タイミングt20では、ノズル51-103と主走査方向に並べられたノズルから順にノズル651-120と主走査方向に並べられたノズルまでの打滴が行われる。
ヘッド650及びヘッド650”では、主走査方向と直交しない斜め方向にノズル651を並べたノズル列を副走査方向にn分割(ただし、nは偶数)し、分割されたノズル列を主走査方向に位相をずらして配置するので、該折り返し位置Aに生じるインク滴の着弾干渉の特異性を改善することができる。
また、折り返し位置間ピッチP2がほぼ等間隔になるように各ノズル列を配置すると、折り返し位置Aに生じるスジむらの視認性を改善することができる。更に、各色に対応した印字ヘッドを備えた多色ヘッドでは、各色に対応したヘッド(ノズル群)の折り返し位置に本発明を適用すれは、一層のむら低減を図ることができる。
以上説明したように、本例に示す対称打滴型マトリクスヘッドを用いた隣接打滴では、隣接するドットが連続して打滴されることがなく、液体状のドット同士が接触せずに着弾干渉を防止することができ、パージによるインク液滴を高密度打滴(例えば、ベタ画像)することができる。
本例では、インクに含有する着色剤を凝集(または、不溶化)させる機能を持つ処理液とインクを反応させて画像を形成する装置構成について説明したが、本発明は、処理液を用いずにインクを記録媒体に固定する装置構成にも適用可能である。
以上、本発明のインクジェット記録装置、パージ方法を詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
<付記>
上記に詳述した発明の実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書は少なくとも以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
(発明1):記録媒体を搬送する搬送手段と、ポリマー粒子を含有するインクを打滴するノズルを具備するインクジェットヘッドと、前記記録媒体の余白領域に対して前記インクジェットヘッドのパージを実行するように前記インクジェットヘッドの打滴を制御する打滴制御手段と、前記記録媒体に加熱処理を施す加熱処理手段と、前記インクジェットヘッドのパージによるインクが付着した記録媒体の表面温度が前記ポリマー粒子の最低造膜温度以上の温度になるように前記加熱処理手段を制御する加熱処理制御手段と、を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
本発明によれば、記録媒体の余白領域にパージされたインクを加熱(乾燥)して記録媒体に固定させるので、液流れや裏写り、装置内部の汚染を防止した好ましいパージが可能である。また、パージによるインクの回収も不要である。
本発明における「パージ」には、記録媒体の余白領域への劣化インクの打滴のみならず、記録媒体の余白領域に対してテキストや記号等を形成するための打滴を含んでいる。
本発明における加熱処理手段は、インクジェットヘッドによるインク打滴前の記録媒体に対して乾燥風を噴射するものや、インク打滴後の記録媒体に対して乾燥風を噴射するものなど、非接触によるものが好ましい。
「記録媒体」は、印字媒体、被画像形成媒体、被記録媒体、受像媒体などと呼ばれる場合がある。また、記録媒体は、その媒体に直接描画する場合に限らず、一旦、中間転写体に一次画像を形成した後に、これを転写して用紙等に画像(二次画像)を記録する場合の中間転写体も「記録媒体」の概念に含まれ得る。記録媒体の形態や材質については、特に限定されず、枚葉紙(カット紙)、シール用紙、連続用紙、OHPシート等の樹脂シート、フイルム、布、配線パターン等が形成されるプリント基板、ゴムシート、金属シート、その他材質や形状を問わず、様々な媒体を含む。
記録媒体とインクジェットヘッドを相対的に移動させる搬送手段は、停止した(固定された)ヘッドに対して記録媒体を搬送する態様、停止した記録媒体に対してヘッドを移動させる態様、或いは、ヘッドと記録媒体の両方を移動させる態様の何れをも含む。なお、インクジェットヘッドを用いてカラー画像を形成する場合は、複数色のインク(記録液)の色別にヘッドを配置してもよいし、1つのヘッドから複数色のインクを吐出可能な構成としてもよい。
(発明2):発明1に記載のインクジェット記録装置において、前記加熱処理制御手段は、前記記録媒体におけるパージによるインクが付着した領域の温度が前記ポリマー粒子のガラス転移点温度以上の温度になるように前記加熱処理手段を制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
かかる態様によれば、インクに含有するポリマー粒子がガラス状態からゴム状態に遷移するので、インクの固定がより強固になる。
(発明3):発明1又は2に記載のインクジェット記録装置において、前記加熱処理制御手段は、前記記録媒体の表面温度が水の沸点未満の温度になるように前記加熱処理手段を制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
かかる態様によれば、記録媒体中の水分によるブリスターを防止して、インク固定の安定化が可能となる。
(発明4):発明1乃至3のいずれかに記載のインクジェット記録装置において、前記打滴制御手段は、前記記録媒体の画像形成領域に画像データに基づく画像を形成するように前記インクジェットヘッドの打滴を制御し、前記加熱処理制御手段は、前記記録媒体の画像形成領域の温度が前記ポリマー粒子の最低造膜温度以上の温度になるように前記加熱処理手段を制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
かかる態様によれば、加熱処理によらず画像形成領域のインクの固定が可能となる。
(発明5):発明1乃至4のいずれかに記載のインクジェット記録装置において、前記打滴制御手段は、パージによるインクが記録媒体上で重ならないように前記インクジェットヘッドの打滴を制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
ドットが重ならないように千鳥パターン打滴や間引き打滴する態様が好ましい。
かかる態様によれば、液流れの防止効果や乾燥性が一層向上する。
(発明6):発明1乃至4のいずれかに記載のインクジェット記録装置において、前記インクジェットヘッドは前記記録媒体の前記搬送手段の搬送方向と直交する幅方向の長さに対応する長さにわたって複数のノズルを並べたフルライン型ヘッドであり、複数色のそれぞれに対応する複数の前記インクジェットヘッドを備え、前記打滴制御手段は、前記複数のインクジェットヘッドのパージを実行する際に、前記記録媒体の余白領域における1つの打滴点には1つのヘッドから打滴されたインクのみを付着させるように前記複数のインクジェットヘッドの打滴を制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
かかる態様によれば、ライン型ヘッドを用いた高速印字においても、ドットの重なりを防止して液流れを回避するとともに、乾燥効率が向上する。
(発明7):発明1乃至6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、前記インクジェットヘッドは、前記搬送手段の記録媒体搬送方向と直交する方向に対して所定の角度θ(但し、0°<θ<90°)をなす斜め方向に複数のノズルが並べられたノズル列を前記搬送手段の記録媒体搬送方向と直交する方向に所定の間隔で配置したノズル群を副走査方向にn個(nは2以上の偶数)備え、前記搬送手段の記録媒体搬送方向に隣り合うノズル群では、各ノズル群のノズルを主走査方向に並ぶように投影させた投影ノズル列において、一方のノズル群の前記投影ノズル列内の隣り合うノズルの間に他方のノズル群の前記投影ノズル列のノズルが位置し、前記投影ノズル列内のノズルが均等に配置されるように前記搬送手段の記録媒体搬送方向に隣り合うノズル群を主走査方向に位相を変えて配置するとともに、前記ノズル群が有するノズル列のうち、前記搬送手段の記録媒体搬送方向と直交する方向に隣り合うノズル列同士の境目であるとともに前記搬送手段の記録媒体搬送方向のノズル間ピッチが他のノズル間の副走査方向のノズル間ピッチと比べて大きくなるノズル間位置を折り返し位置とするときに、前記折り返し位置を前記搬送手段の記録媒体搬送方向と直交する方向に並ぶように投影させたときの折り返し位置間ピッチが均等になるように、前記ノズル群を前記搬送手段の記録媒体搬送方向と直交する方向に位相を変えて配置する構造を有する対称打滴型マトリクスヘッドであることを特徴とするインクジェット記録装置。
かかる態様によれば、塗工紙などの弱浸透性媒体を用いる場合にも、着弾干渉によるインクの不均一性が低減化され、インクの乾燥及び固定が安定化する。
(発明8):発明1乃至7のいずれかに記載のインクジェット記録装置において、前記インクと反応して前記インクを凝集又は不溶化させる処理液を前記記録媒体の少なくとも前記画像形成領域に対して付与する処理液付与手段と、前記処理液付与手段による処理液付与を制御する処理液付与制御手段と、を備え、前記処理液付与制御手段は、前記画像形成領域に処理液を付与するとともに、前記余白領域には処理液を付与しないように前記処理液付与手段による処理液付与を制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
かかる態様によれば、画像形成領域のインクは加熱処理によらず記録媒体に固定することができる。一方、パージによるインクは処理液による凝集作用を発揮しないが、加熱処理によって記録媒体に固定される。
(発明9):発明8に記載のインクジェット記録装置において、前記搬送手段は、前記処理液付与手段を含む処理液付与部において、記録媒体の先端部を挟持部材によって挟持して搬送する第1の圧胴を含み、前記処理液付与手段は、ローラ形状を有する塗布部材であり、前記塗布部材が前記挟持部材の段差を回避するように前記塗布部材を前記第1の圧胴から離間させる離間機構を含むことを特徴とするインクジェット記録装置。
かかる態様は、ラインヘッドを用いた枚葉インクジェット印刷機の構成を用いて高速プリントを行う場合にも、記録媒体へのパージが可能である。
(発明10):発明9に記載のインクジェット記録装置において、前記搬送手段は、前記第1の圧胴から受け渡された記録媒体の先端部を挟持部材により挟持して搬送する第1の渡し胴と、前記インクジェットヘッドを含む印字部において、前記第1の渡し胴から受け渡された記録媒体の先端部を挟持部材によって挟持して前記記録媒体を搬送する第2の圧胴と、前記加熱処理手段により加熱処理が施される加熱処理部において、前記第2の圧胴から受け渡された記録媒体の先端部を挟持部材によって挟持して搬送する第2の渡し胴と、前記加熱処理部において、前記第2の前記渡し胴から受け渡された記録媒体の先端部を挟持部材によって挟持して搬送する第3の圧胴と、を含み、前記打滴制御手段は、記録媒体の先端部の余白領域に対して前記インクジェットヘッドのパージによるインクを付着させるように前記インクジェットヘッドの打滴を制御し、加熱処理手段は、前記第2の渡し胴によって前記記録媒体を搬送している間に前記記録媒体の先端部の余白領域を前記画像形成領域よりも強く加熱するとともに、前記第3の圧胴により前記記録媒体を搬送している間に前記記録媒体の全体を加熱することを特徴とするインクジェット記録装置。
かかる態様により、余白領域のパージによるインク(パージ部分)を高速乾燥させることができ、該パージ部分の確実な固定が実現されるとともに、画像形成部の過剰乾燥によるシワやカール、ひび割れなどの不具合の防止が可能である。
本発明は、圧胴印刷機への適合性が良好である。
パージ部分を画像形成領域よりも強く加熱する態様には、画像形成領域よりもパージ部分に対して熱風を強く噴射する態様や、パージ部分のみに熱風を噴射した後に記録媒体全体に均一に熱風を噴射する態様などがある。
(発明11):発明10に記載のインクジェット記録装置において、前記加熱手段は、前記搬送手段によって搬送される前記記録媒体に乾燥風を噴射する乾燥風噴射手段と、前記乾燥風噴射手段と対向し、前記搬送手段による前記記録媒体の搬送中に当該記録媒体の裏面を吸引しつつ、前記乾燥風噴射手段から噴射される乾燥風の少なくとも一部を排気可能な吸引手段と、を備え、前記乾燥風噴射手段及び前記吸引手段は、前記第2の渡し胴に設けられたことを特徴とするインクジェット記録装置。
かかる態様により、記録媒体の搬送と連動した好ましい記録媒体の高速乾燥が実現される。
(発明12):発明1乃至11のいずれかに記載のインクジェット記録装置において、前記打滴制御手段は、前記インクジェットヘッドのパージを実行する際に、パージによって打滴したインクによりドット抜けを生じないパターンを形成することを特徴とするインクジェット記録装置。
かかる態様によれば、パージにより処理番号、処理条件、連番などの生産管理情報や他の付加情報を形成することができ、効率的である。
(発明13):発明1乃至12のいずれかに記載のインクジェット記録装置において、前記記録媒体の前記インクジェットヘッドからパージされたインクが付着した領域の水分量を測定する水分量測定手段、及び前記記録媒体の前記インクジェットヘッドからパージされたインクが付着した領域の温度を測定する温度測定手段の少なくともいずれか一方を備え、前記打滴制御手段は、前記記録媒体の前記水分量測定手段の測定位置又は温度測定手段の測定位置に対して、ドット同士が重ならないパターンを形成することを特徴とするインクジェット記録装置。
かかる態様によれば、記録媒体ごとの厚みや液体の付与量などのバラつきに対して加熱を補正することで、画像部のほかパージ部に対しても安定した乾燥が可能である。
(発明14):発明7乃至12のいずれかに記載のインクジェット記録装置において、前記記録媒体の前記インクジェットヘッドからパージされたインクが付着した領域の水分量を測定する水分量測定手段、及び前記記録媒体の前記インクジェットヘッドからパージされたインクが付着した領域の温度を測定する温度測定手段の少なくともいずれか一方を備え、前記打滴制御手段は、前記記録媒体の前記水分量測定手段の測定位置又は温度測定手段の測定位置に対して、前記対称打滴型マトリクスヘッドを用いた隣接打滴によるベタ画像を形成することを特徴とするインクジェット記録装置。
かかる態様によれば、記録媒体ごとの厚みや液体の付与量などのバラつきに対して加熱を補正することで、安定した乾燥が可能である。
(発明15):記録媒体を搬送する搬送工程と、ポリマー粒子を含有するインクをインクジェットヘッドから打滴する打滴工程と、前記記録媒体の余白領域にインクが付着するように前記インクジェットヘッドのパージを実行するパージ工程と、前記インクジェットヘッドのパージによるインクが付着した記録媒体の温度が前記ポリマー粒子の最低造膜温度以上の温度になるように、前記記録媒体に加熱処理を施す加熱処理工程と、を含むことを特徴とするパージ方法。
本発明において、パージ工程では、パージによるインク(ドット)が重ならないようにインクジェットヘッドの打滴を制御する態様が好ましい。
(発明16):前記パージ工程は、前記記録媒体の先端部の余白領域に対して前記インクジェットヘッドのパージによるインクを付着させ、前記加熱処理工程は、前記記録媒体の先端部の余白領域を前記画像形成領域よりも強く加熱した後に、前記記録媒体の全体を加熱することを特徴とするパージ方法。
かかる態様により、余白領域のパージによるインク(パージ部分)を高速乾燥させることができ、該パージ部分の確実な固定が実現されるとともに、画像形成部の過剰乾燥によるシワやカール、ひび割れなどの不具合の防止が可能である。
本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図 浸透抑制剤塗布部に適用される液体塗布装置の第1例を示す構成図 スパイラルローラの外周面の拡大図 スパイラルローラの外周面に形成される溝形状を表す概要図 スパイラルローラの外周面の断面形状を表す概要図 フラットスプレーノズルの説明図 液体噴射部と噴射幅の関係を模式的に示した説明図 フラットスプレーによる液体の噴射パターンの液量分布を示すグラフ 塗布範囲の制御例を示す説明図 スパイラルローラの移動機構(当接/離間機構)や回転駆動手段、スキージブレード、メインブレードの回転機構などの概要を示す斜視図 液体塗布装置の第2例を示す構成図 渡し胴の第1例の構造を示す断面図 図12のA−A線に沿う断面図 熱風発生手段の構成例を示す図 搬送ガイドにおける用紙吸着面の一例を模式的に描いた平面展開図 搬送ガイド上における用紙と熱風噴射エリアの関係を模式的に示した説明図 渡し胴から噴射される熱風の噴射範囲の説明図 センサによるモニタ位置の例を示す図である。 センサにて測定される記録媒体の表面温度の時間変化を示すグラフ 渡し胴の他の構成例を示す断面図 噴射開口の開口パターンの一例を示す平面展開図 渡し胴から噴射される熱風の噴射範囲の説明図 インクヘッドの構成例を示す平面透視図 ヘッドの他の構成例を示す平面図 図23中のB−B線に沿う断面図 ヘッドのノズル配置例を示す平面図 溶媒乾燥ユニットの拡大図 熱圧定着部の拡大図 インクジェット記録装置のシステム構成を示すブロック図 本発明の他の実施形態に係るインクジェット記録装置の構成図 パージにおける加熱処理の説明図 図25に示す噴射開口の配置パターンの変形例の説明図 図32に示す配置パターンを有する噴射開口を用いた加熱処理の説明図 パージパターンの説明図 パージパターン1の説明図 パージパターン2の説明図 パージパターン3の説明図 パージパターン4の説明図 パージパターン5の説明図 本発明の変形例に係るヘッドの構造例を示す平面透視図 図40に示したヘッドのノズル配置を示す拡大図 図40に示したヘッドのノズル配置と打滴タイミングとの関係を説明する図 図40に示したヘッドのノズル配置の他の態様と打滴タイミングとの関係を説明する図 図43に示したノズル配置の更に他の態様と打滴タイミングとの関係を説明する図 図40に示したヘッドのノズル配置の応用例を示す平面透視図 図45に示したノズル配置を打滴タイミングとの関係を説明する図
符号の説明
10,400…インクジェット記録装置、14…記録媒体、26…処理液塗布部、28…印字部、30…溶媒乾燥部、40,86,216,306,326…圧胴、84,214,304…渡し胴、87…グリッパ、96…熱風噴射部材、116…噴射規制部材、150…搬送ガイド、156…加熱手段、182…センサ、183…撮像センサ、202…処理液塗布装置、210Y,210M,210C,210K…インクヘッド、308…溶媒乾燥ユニット、310…IRヒータ、312…送風ファン、480…プリント制御部、484…ヘッドドライバ、492…送風機制御部、496…渡し胴制御部、508…処理液塗布制御部

Claims (16)

  1. 記録媒体を搬送する搬送手段と、
    ポリマー粒子を含有するインクを打滴するノズルを具備するインクジェットヘッドと、
    前記記録媒体の余白領域に対して前記インクジェットヘッドのパージを実行するように前記インクジェットヘッドの打滴を制御する打滴制御手段と、
    前記記録媒体に加熱処理を施す加熱処理手段と、
    前記インクジェットヘッドのパージによるインクが付着した記録媒体の表面温度が前記ポリマー粒子の最低造膜温度以上の温度になるように前記加熱処理手段を制御する加熱処理制御手段と、
    を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
  2. 請求項1に記載のインクジェット記録装置において、
    前記加熱処理制御手段は、前記記録媒体におけるパージによるインクが付着した領域の温度が前記ポリマー粒子のガラス転移点温度以上の温度になるように前記加熱処理手段を制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
  3. 請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置において、
    前記加熱処理制御手段は、前記記録媒体の表面温度が水の沸点未満の温度になるように前記加熱処理手段を制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、
    前記打滴制御手段は、前記記録媒体の画像形成領域に画像データに基づく画像を形成するように前記インクジェットヘッドの打滴を制御し、
    前記加熱処理制御手段は、前記記録媒体の画像形成領域の温度が前記ポリマー粒子の最低造膜温度以上の温度になるように前記加熱処理手段を制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、
    前記打滴制御手段は、パージによるインクが記録媒体上で重ならないように前記インクジェットヘッドの打滴を制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
  6. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、
    前記インクジェットヘッドは前記記録媒体の前記搬送手段の搬送方向と直交する幅方向の長さに対応する長さにわたって複数のノズルを並べたフルライン型ヘッドであり、複数色のそれぞれに対応する複数の前記インクジェットヘッドを備え、
    前記打滴制御手段は、前記複数のインクジェットヘッドのパージを実行する際に、前記記録媒体の余白領域における1つの打滴点には1つのヘッドから打滴されたインクのみを付着させるように前記複数のインクジェットヘッドの打滴を制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
  7. 請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、
    前記インクジェットヘッドは、前記搬送手段の記録媒体搬送方向と直交する方向に対して所定の角度θ(但し、0°<θ<90°)をなす斜め方向に複数のノズルが並べられたノズル列を前記搬送手段の記録媒体搬送方向と直交する方向に所定の間隔で配置したノズル群を副走査方向にn個(nは2以上の偶数)備え、
    前記搬送手段の記録媒体搬送方向に隣り合うノズル群では、各ノズル群のノズルを主走査方向に並ぶように投影させた投影ノズル列において、一方のノズル群の前記投影ノズル列内の隣り合うノズルの間に他方のノズル群の前記投影ノズル列のノズルが位置し、前記投影ノズル列内のノズルが均等に配置されるように前記搬送手段の記録媒体搬送方向に隣り合うノズル群を主走査方向に位相を変えて配置するとともに、前記ノズル群が有するノズル列のうち、前記搬送手段の記録媒体搬送方向と直交する方向に隣り合うノズル列同士の境目であるとともに前記搬送手段の記録媒体搬送方向のノズル間ピッチが他のノズル間の副走査方向のノズル間ピッチと比べて大きくなるノズル間位置を折り返し位置とするときに、前記折り返し位置を前記搬送手段の記録媒体搬送方向と直交する方向に並ぶように投影させたときの折り返し位置間ピッチが均等になるように、前記ノズル群を前記搬送手段の記録媒体搬送方向と直交する方向に位相を変えて配置する構造を有する対称打滴型マトリクスヘッドであることを特徴とするインクジェット記録装置。
  8. 請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、
    前記インクと反応して前記インクを凝集又は不溶化させる処理液を前記記録媒体の少なくとも前記画像形成領域に対して付与する処理液付与手段と、
    前記処理液付与手段による処理液付与を制御する処理液付与制御手段と、
    を備え、
    前記処理液付与制御手段は、前記画像形成領域に処理液を付与するとともに、前記余白領域には処理液を付与しないように前記処理液付与手段による処理液付与を制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
  9. 請求項8に記載のインクジェット記録装置において、
    前記搬送手段は、前記処理液付与手段を含む処理液付与部において、記録媒体の先端部を挟持部材によって挟持して搬送する第1の圧胴を含み、
    前記処理液付与手段は、ローラ形状を有する塗布部材であり、前記塗布部材が前記挟持部材の段差を回避するように前記塗布部材を前記第1の圧胴から離間させる離間機構を含むことを特徴とするインクジェット記録装置。
  10. 請求項9に記載のインクジェット記録装置において、
    前記搬送手段は、前記第1の圧胴から受け渡された記録媒体の先端部を挟持部材により挟持して搬送する第1の渡し胴と、
    前記インクジェットヘッドを含む印字部において、前記第1の渡し胴から受け渡された記録媒体の先端部を挟持部材によって挟持して前記記録媒体を搬送する第2の圧胴と、
    前記加熱処理手段により加熱処理が施される加熱処理部において、前記第2の圧胴から受け渡された記録媒体の先端部を挟持部材によって挟持して搬送する第2の渡し胴と、
    前記加熱処理部において、前記第2の前記渡し胴から受け渡された記録媒体の先端部を挟持部材によって挟持して搬送する第3の圧胴と、
    を含み、
    前記打滴制御手段は、記録媒体の先端部の余白領域に対して前記インクジェットヘッドのパージによるインクを付着させるように前記インクジェットヘッドの打滴を制御し、
    加熱処理手段は、前記第2の渡し胴によって前記記録媒体を搬送している間に前記記録媒体の先端部の余白領域を前記画像形成領域よりも強く加熱するとともに、前記第3の圧胴により前記記録媒体を搬送している間に前記記録媒体の全体を加熱することを特徴とするインクジェット記録装置。
  11. 請求項10に記載のインクジェット記録装置において、
    前記加熱手段は、前記搬送手段によって搬送される前記記録媒体に乾燥風を噴射する乾燥風噴射手段と、
    前記乾燥風噴射手段と対向し、前記搬送手段による前記記録媒体の搬送中に当該記録媒体の裏面を吸引しつつ、前記乾燥風噴射手段から噴射される乾燥風の少なくとも一部を排気可能な吸引手段と、
    を備え、
    前記乾燥風噴射手段及び前記吸引手段は、前記第2の渡し胴に設けられたことを特徴とするインクジェット記録装置。
  12. 請求項1乃至11のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、
    前記打滴制御手段は、前記インクジェットヘッドのパージを実行する際に、パージによって打滴したインクによりドット抜けを生じないパターンを形成することを特徴とするインクジェット記録装置。
  13. 請求項1乃至12のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、
    前記記録媒体の前記インクジェットヘッドからパージされたインクが付着した領域の水分量を測定する水分量測定手段、及び前記記録媒体の前記インクジェットヘッドにパージによるインクが付着した領域の温度を測定する温度測定手段の少なくともいずれか一方を備え、
    前記打滴制御手段は、前記記録媒体の前記水分量測定手段の測定位置又は温度測定手段の測定位置に対して、ドット同士が重ならないパターンを形成することを特徴とするインクジェット記録装置。
  14. 請求項7乃至12のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、
    前記記録媒体の前記インクジェットヘッドからパージされたインクが付着した領域の水分量を測定する水分量測定手段、及び前記記録媒体の前記インクジェットヘッドにパージによるインクが付着した領域の温度を測定する温度測定手段の少なくともいずれか一方を備え、
    前記打滴制御手段は、前記記録媒体の前記水分量測定手段の測定位置又は温度測定手段の測定位置に対して、前記対称打滴型マトリクスヘッドを用いた隣接打滴によるベタ画像を形成することを特徴とするインクジェット記録装置。
  15. 記録媒体を搬送する搬送工程と、
    ポリマー粒子を含有するインクをインクジェットヘッドから打滴する打滴工程と、
    前記記録媒体の余白領域にインクが付着するように前記インクジェットヘッドのパージを実行するパージ工程と、
    前記インクジェットヘッドのパージによるインクが付着した記録媒体の表面温度が前記ポリマー粒子の最低造膜温度以上の温度になるように、前記記録媒体に加熱処理を施す加熱処理工程と、
    を含むことを特徴とするパージ方法。
  16. 請求項15のパージ方法において、
    前記パージ工程は、前記記録媒体の先端部の余白領域に対して前記インクジェットヘッドのパージによるインクを付着させ、
    前記加熱処理工程は、前記記録媒体の先端部の余白領域を前記画像形成領域よりも強く加熱した後に、前記記録媒体の全体を加熱することを特徴とするパージ方法。
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