以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔装置の全体構成〕
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置(画像形成装置)100の概略構成を示す全体構成図である。図1に示すインクジェット記録装置100は、記録媒体114の片面のみに印刷可能な片面機である。このインクジェット記録装置100は、記録媒体114を供給する給紙部102と、記録媒体114に対して浸透抑制処理を行う浸透抑制処理部104と、記録媒体114に処理液を付与する処理液付与部106と、記録媒体114に色インクを付与して画像形成を行う印字部108と、記録媒体114に透明UVインクを付与する透明UVインク付与部110と、画像が形成された記録媒体114を搬送して排出する排紙部112とから主に構成される。
給紙部102には、記録媒体114を積載する給紙台120が設けられている。給紙台120の前方(図1において左側)にはフィーダボード122が接続されており、給紙台120に積載された記録媒体114は1番上から順に1枚ずつフィーダボード122に送り出される。フィーダボード122に送り出された記録媒体114は、図1における時計回り方向に回転可能に構成された渡し胴124aを介して、浸透抑制処理部104の圧胴126aの表面(周面)に給紙される。
浸透抑制処理部104には、圧胴126aの回転方向(記録媒体114の搬送方向;図1において反時計回り方向)に関して上流側から順に、圧胴126aの表面(周面)に対向する位置に、用紙予熱ユニット128、浸透抑制剤ヘッド130、及び浸透抑制剤乾燥ユニット132がそれぞれ設けられている。
用紙予熱ユニット128及び浸透抑制剤乾燥ユニット132には、それぞれ所定の範囲で温度制御可能なヒータが設けられる。圧胴126aに保持された記録媒体114は、用紙予熱ユニット128や浸透抑制剤乾燥ユニット132に対向する位置を通過する際に、これらユニットのヒータによって加熱される。
浸透抑制剤ヘッド130は、圧胴126aに保持される記録媒体114に対して浸透抑制剤を打滴するものであり、後述する印字部108の各インクヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bと同一構成が適用される。
本例では、記録媒体114の表面に対して浸透抑制処理を行う手段として、インクジェットヘッドを適用したが、浸透抑制処理を行う手段については特に本例に限定されるものではない。例えば、スプレー方式、塗布方式などの各種方式を適用することも可能である。
本例では、浸透抑制剤として、熱可塑性樹脂ラテックス溶液が好適に用いられる。もちろん、浸透抑制剤は、熱可塑性樹脂ラテックス溶液に限定されるものではなく、例えば、平板粒子(雲母等)や撥水剤(フッ素コーティング剤)などを適用することも可能である。
浸透抑制処理部104の後段(記録媒体114の搬送方向下流側)には、処理液付与部106が設けられている。浸透抑制処理部104の圧胴126aと処理液付与部106の圧胴126bとの間には、これらに対接するようにして渡し胴124bが設けられている。かかる構造により、浸透抑制処理部104の圧胴126aに保持された記録媒体114は、浸透抑制処理が行われた後に、図1における時計回り方向に回転可能に構成された渡し胴124bを介して処理液付与部106の圧胴126bに受け渡される。
処理液付与部106には、圧胴126bの回転方向(図1において反時計回り方向)に関して上流側から順に、圧胴126bの表面に対向する位置に、用紙予熱ユニット134、処理液ヘッド136、及び処理液乾燥ユニット138がそれぞれ設けられている。
処理液付与部106の各部(用紙予熱ユニット134、処理液ヘッド136、及び処理液乾燥ユニット138)については、上述した浸透抑制処理部104の用紙予熱ユニット128、浸透抑制剤ヘッド130、及び浸透抑制剤乾燥ユニット132とそれぞれ同様の構成が適用されるため、ここでは説明を省略する。もちろん、浸透抑制処理部104と異なる構成を適用することも可能である。
本例で用いられる処理液は、処理液付与部106の後段に設けられる印字部108が具備する各インクヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bから記録媒体114に向かって吐出されるインクに含有される色材を凝集させる作用を有する酸性液である。
処理液乾燥ユニット138のヒータの加熱温度は、圧胴126bの回転方向上流側に配置される処理液ヘッド136の吐出動作によって記録媒体114の表面に付与された処理液を乾燥させて、記録媒体114上に固体状又は半固溶状の凝集処理剤層(処理液が乾燥した薄膜層)が形成されるような温度に設定される。
ここでいう「固体状又は半固溶状の凝集処理剤層」とは、以下に定義する含水率が0〜70%の範囲のものを言うものとする。
本例の如く、記録媒体114上に処理液が付与される前に、用紙予熱ユニット134のヒータによって記録媒体114を予備加熱する態様が好ましい。この場合、処理液の乾燥に要する加熱エネルギーを低く抑えることが可能となり、省エネルギー化を図ることができる。
処理液付与部106の後段には印字部108が設けられている。処理液付与部106の圧胴126bと印字部108の圧胴126cとの間には、これらに対接するようにして、図1の時計回り方向に回転可能に構成された渡し胴124cが設けられている。かかる構造によって、処理液付与部106の圧胴126bに保持された記録媒体114は、処理液が付与されて固体状又は半固溶状の凝集処理剤層が形成された後に、渡し胴124cを介して印字部108の圧胴126cに受け渡される。
印字部108には、圧胴126cの回転方向(図1において反時計回り方向)に関して上流側から順に、圧胴126cの表面に対向する位置に、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(黒)、R(赤)、G(緑)、B(青)の7色のインクにそれぞれ対応したインクヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bと、溶媒乾燥ユニット142a、142bがそれぞれ設けられている。
各インクヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bは、上述した浸透抑制剤ヘッド130や処理液ヘッド136と同様に、インクジェット方式の記録ヘッド(インクジェットヘッド)が適用される。即ち、各インクヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bは、それぞれ対応する色インクの液滴を圧胴126cに保持された記録媒体114に向かって吐出する。
各インクヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bは、それぞれ圧胴126cに保持される記録媒体114における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有し、そのインク吐出面には画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズル(図1中不図示、図2に符号161で図示)が複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている。各インクヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bが圧胴126cの回転方向(記録媒体114の搬送方向)と直交する方向に延在するように固定設置される。
記録媒体114の画像形成領域の全幅をカバーするノズル列を有するフルラインヘッドがインク色毎に設けられる構成によれば、記録媒体114の搬送方向(副走査方向)について、記録媒体114と各インクヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bを相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち1回の副走査で)、記録媒体114の画像形成領域に1次画像を記録することができる。これにより、記録媒体114の搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシリアル(シャトル)型ヘッドが適用される場合に比べて高速印字が可能であり、プリント生産性を向上させることができる。
また、本例では、CMYKRGBの7色の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよいし、除いてもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクヘッドを追加する構成や、CMYKの4色構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
溶媒乾燥ユニット142a、142bは、上述した用紙予熱ユニット128、134や浸透抑制剤乾燥ユニット132、処理液乾燥ユニット138と同様に、所定の範囲で温度制御可能なヒータを含んで構成される。後述するように、記録媒体114上に形成された固体状又は半固溶状の凝集処理剤層上にインク液滴が打滴されると、記録媒体114上にはインク凝集体(色材凝集体)が形成されるとともに、色材と分離されたインク溶媒が広がり、凝集処理剤が溶解した液体層が形成される。このようにして記録媒体114上に残った溶媒成分(液体成分)は、記録媒体114のカールだけでなく、画像劣化を招く要因となる。そこで、本例では、各インクヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bからそれぞれ対応する色インクが記録媒体114上に打滴された後、溶媒乾燥ユニット142a、142bのヒータによって加熱を行い、溶媒成分を蒸発させ、乾燥を行っている。
印字部108の後段には透明UVインク付与部110が設けられている。印字部108の圧胴126cと透明UVインク付与部110の圧胴126dとの間には、これらに対接するように、図1における時計回り方向に回転可能に構成された渡し胴124dが設けられている。これにより、印字部108の圧胴126cに保持された記録媒体114は、各色インクが付与された後に、渡し胴124dを介して透明UVインク付与部110の圧胴126dに受け渡される。
透明UVインク付与部110には、圧胴126dの回転方向(図1において反時計回り方向)に関して上流側から順に、圧胴126dの表面に対向する位置に、印字部108による印字結果を読み取る印字検出部144、透明UVインクヘッド146、第1のUVランプ148a、148bがそれぞれ設けられている。
印字検出部144は、印字部108の印字結果(各インクヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bの打滴結果)を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ等)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良や、打滴画像のムラ(濃度ムラ)をチェックする手段として機能する。
透明UVインクヘッド146は、印字部108の各インクヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bと同一構成が適用され、各インクヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bによって記録媒体114上に打滴された色インクに重なるように透明UVインクを打滴する。もちろん、印字部108の各インクヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bと異なる構成を適用することも可能である。
第1のUVランプ148a、148bは、記録媒体114に透明UVインクが打滴された後、当該記録媒体114が第1のUVランプ148に対向する位置を通過する際に、記録媒体114上の透明UVインクにUV光(紫外光)を照射して、透明UVインクを硬化させる。
本例では、後述するプリント制御部182(図5参照)によって、UV光照射後の透明UVインクの層厚が5μm以下(好ましくは3μm以下、より好ましくは1〜3μm)となるように、透明UVインクヘッド146のノズルから吐出される液滴量(透明UVインクの打滴量)の制御が行われる。なお、図1において、「UV光照射後の透明UVインクの層厚」とは、後述する第2のUVランプ156によってUV光が照射された後の透明UVインクの層厚とする。即ち、複数のUVランプが設けられる場合は、記録媒体搬送方向に関して最下流側のUVランプによってUV光照射が行われた後の透明UVインクの層厚とする。
透明UVインク付与部110の後段には排紙部112が設けられている。排紙部112には、透明UVインクが打滴された記録媒体114を受ける排紙胴150と、該記録媒体114を積載する排紙台152と、排紙胴150に設けられたスプロケットと排紙台152の上方に設けられたスプロケットとの間に掛け渡され、複数の排紙用グリッパーを備えた排紙用チェーン154とが設けられている。
また、これらのスプロケットの間には、第2のUVランプ156が排紙用チェーン154の内側に設けられている。第2のUVランプ156は、透明UVインク付与部110の圧胴126dから排紙胴150に受け渡された記録媒体114が排紙用チェーン154によって排紙台152に搬送されるまでの間に、記録媒体114上の透明UVインクにUV光(紫外光)を照射して、透明UVインクを硬化させる。
図1には、浸透抑制処理部104及び処理液付与部106を備える3液系のインクジェット記録装置100を例示したが、これらの処理ブロックは使用されるインクの性能に応じて適宜変更及び省略することができる。
〔印字部の構成〕
次に、印字部108に配置されるインクヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bの構造について詳説する。なお、インクヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号160によってインクヘッド(以下、単に「ヘッド」と称することもある。)を示す。
図2(a)はヘッド160の構造例を示す平面透視図であり、図2(b)はその一部の拡大図であり、図2(c)はヘッド160の他の構造例を示す平面透視図である。また、図3はインク室ユニットの立体的構成を示す断面図(図2(a)、(b)中の3−3線に沿う断面図)である。
記録媒体114上に形成されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド160におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド160は、図2(a)、(b)に示すように、インク滴の吐出孔であるノズル161と、各ノズル161に対応する圧力室162等からなる複数のインク室ユニット163を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(記録媒体の搬送方向(副走査方向)と直交する主走査方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
記録媒体114の搬送方向と略直交する方向に、記録媒体114の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図2(a)の構成に代えて、図2(c)に示すように、複数のノズル161が2次元に配列された短尺のヘッドブロック160’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録媒体114の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。また、図示は省略するが、短尺のヘッドを一列に並べてラインヘッドを構成してもよい。
各ノズル161に対応して設けられている圧力室162は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル161と供給口164が設けられている。図3に示すように、各圧力室162は供給口164を介して共通流路165と連通されている。共通流路165はインク供給源たるインク供給タンク(図3中不図示、図4に符号170で図示)と連通しており、該インク供給タンクから供給されるインクは共通流路165を介して各圧力室162に分配供給される。
図3に示すように、圧力室162の天面を構成し共通電極と兼用される振動板166には個別電極167を備えた圧電素子168が接合されており、個別電極167に駆動電圧を印加することによって圧電素子168が変形してノズル161からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路165から供給口164を通って新しいインクが圧力室162に供給される。
本例では、ヘッド160に設けられたノズル161から吐出させるインクの吐出力発生手段として圧電素子168を適用したが、圧力室162内にヒータを備え、ヒータの加熱による膜沸騰の圧力を利用してインクを吐出させるサーマル方式を適用することも可能である。
かかる構造を有するインク室ユニット163を図2(b)に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズル配置が実現されている。
即ち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット163を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなり、主走査方向については、各ノズル161が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
なお、本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されず、副走査方向に1列のノズル列を有する配置構造など、様々なノズル配置構造を適用できる。
また、本発明の適用範囲はライン型ヘッドによる印字方式に限定されず、記録媒体の幅方向(主走査方向)の長さに満たない短尺のヘッドを記録媒体の幅方向に走査させて当該幅方向の印字を行い、1回の幅方向の印字が終わると記録媒体の幅方向と直交する方向(副走査方向)に所定量だけ移動させて、次の印字領域の記録媒体の幅方向の印字を行い、この動作を繰り返して記録媒体の印字領域の全面にわたって印字を行うシリアル方式を適用してもよい。
〔インク供給系の構成〕
図4はインクジェット記録装置100におけるインク供給系の構成を示した概要図である。インク供給タンク170はヘッド160にインクを供給する基タンクである。インク供給タンク170の形態には、インク残量が少なくなった場合に不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。
図4に示すように、インク供給タンク170とヘッド160の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ171が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
なお、図4には示さないが、ヘッド160の近傍又はヘッド160と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
また、インクジェット記録装置100には、ノズル161の乾燥防止又はノズル161近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ172と、ヘッド160のインク吐出面の清掃手段としてクリーニングブレード173が設けられている。キャップ172は、不図示の移動機構によってヘッド160に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置からヘッド160下方のメンテナンス位置に移動される。
キャップ172は、図示せぬ昇降機構によってヘッド160に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ172を所定の上昇位置まで上昇させ、ヘッド160に密着させることにより、ノズル面をキャップ172で覆う。
印字中又は待機中において、特定のノズル161の使用頻度が低くなり、ある時間以上インクが吐出されない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してインク粘度が高くなってしまう。このような状態になると、圧電素子168(図3参照)が動作してもノズル161からインクを吐出できなくなってしまう。
このような状態になる前に(圧電素子168の動作により吐出が可能な粘度の範囲内で)圧電素子168を動作させ、その劣化インク(粘度が上昇したノズル近傍のインク)を排出すべくキャップ172(インク受け)に向かって予備吐出(パージ、空吐出、つば吐き、ダミー吐出)が行われる。
また、ヘッド160内(圧力室162内;図3参照)のインクに気泡が混入した場合、圧電素子168が動作してもノズルからインクを吐出させることができなくなる。このような場合にはヘッド160にキャップ172を当て、吸引ポンプ174で圧力室162内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク175へ送液する。
この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。なお、吸引動作は圧力室162内のインク全体に対して行われるので、インク消費量が大きくなる。したがって、インクの粘度上昇が小さい場合には予備吐出を行う態様が好ましい。
なお、ヘッド160を圧胴126a〜126dの直上の画像形成位置から所定のメンテナンス位置に移動させた後に、ヘッド160のメンテナンスを実行するように構成されている。
〔システム制御系の説明〕
図5は、インクジェット記録装置100のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置100は、通信インターフェース176、システムコントローラ177、メモリ178、モータドライバ179、ヒータドライバ180、定着処理制御部181、プリント制御部182、画像バッファメモリ183、ヘッドドライバ184、ポンプドライバ195、メンテナンス処理制御部197等を備えている。
通信インターフェース176は、ホストコンピュータ186から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース176にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ186から送出された画像データは通信インターフェース176を介してインクジェット記録装置100に取り込まれ、一旦メモリ178に記憶される。
メモリ178は、通信インターフェース176を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ177を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ178は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ177は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置100の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。即ち、システムコントローラ177は、通信インターフェース176、メモリ178、モータドライバ179、ヒータドライバ180等の各部を制御し、ホストコンピュータ186との間の通信制御、メモリ178の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ188やヒータ189、ポンプ196を制御する制御信号を生成する。
メモリ178には、システムコントローラ177のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。なお、メモリ178は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。メモリ178は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
プログラム格納部190には各種制御プログラムが格納されており、システムコントローラ177の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。プログラム格納部190はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記録媒体のうち、複数の記録媒体を備えてもよい。なお、プログラム格納部190は動作パラメータ等の記憶手段(不図示)と兼用してもよい。
モータドライバ179は、システムコントローラ177からの指示にしたがってモータ188を駆動するドライバである。図5には、装置内の各部に配置されるモータ(アクチュエータ)を代表して符号188で図示されている。例えば、図5に示すモータ188には、図1の圧胴126a〜126dや渡し胴124a〜124d(図7の搬送ドラム300)、排紙胴150を駆動するモータなどが含まれている。
ヒータドライバ180は、システムコントローラ177からの指示にしたがって、ヒータ189を駆動するドライバである。図5には、インクジェット記録装置100に備えられる複数のヒータを代表して符号189で図示されている。例えば、図5に示すヒータ189には、図1に示す用紙予熱ユニット128、134や浸透抑制剤乾燥ユニット132、処理液乾燥ユニット138、溶媒乾燥ユニット142a、142bのヒータなどが含まれている。
図5の定着処理部110は、図1では透明UVインク付与部110として図示されている。即ち、図1では、図5の定着処理部110の一態様として、画像の表面に透明UVインク層を形成する態様を例示した。なお、定着処理部110は、透明UVインクの層を形成する態様に限定されず、ヒータ等の加熱手段により画像形成後の記録媒体を加熱する態様や、加圧ローラ等の加圧手段によって記録媒体に形成された画像を加圧する態様、ヒータを内蔵した加圧ローラによる加熱及び加圧を併用する態様などを適用してもよい。
定着処理制御部181は、図1の第1のUVランプ148a、148bのUV光照射量やUV光照射タイミングを制御するUV光照射制御部として機能する。記録媒体114の種類や透明UVインクの種類ごとに、各UVランプ148a、148b、156の最適な照射時間や照射間隔、照射強度が予め求められ、データテーブル化されて所定のメモリ(例えば、メモリ178)に記憶され、定着処理制御部181は記録媒体114の情報や使用インクの情報を取得すると、当該メモリを参照して各UVランプ148a、148b、156の照射時間や照射間隔、照射強度を適宜制御する。
各UVランプ148a、148b、156の照射時間や照射間隔、照射強度を制御することによって、画像の光沢感(表面形状)を制御することができ、異なる光沢感の画像を実現することができる。例えば、第1のUVランプ148a、148bで記録媒体114との界面付近の透明UVインクを高粘度化して記録媒体114への透明UVインクの浸透を抑制しつつ、第2のUVランプ156によって透明UVインクの内部から表面まで硬化させることができる。各UVランプ148a、148b、156の照射時間や照射間隔、照射強度を制御するのに代えて(或いは、これらの制御とともに)、記録媒体114が搬送される速度を制御するようにしてもよいし、各UVランプ148a、148b、156の位置を変化させるようにしてもよい。また、第1のUVランプ148a、148bと第2のUVランプ156の間に乾燥ユニットを追加して、透明UVインクの打滴が行われた後、第1のUVランプ148a、148bによって記録媒体114への透明UVインクの浸透を抑制しつつ、乾燥ユニットによって透明UVインク中の溶媒を除去してから、第2のUVランプ156によって透明UVインクを硬化させるようにしてもよい。
なお、定着処理制御部181は、定着処理部110の構成によって制御対象が適宜決められる。
ポンプドライバ195は、ポンプ196のオンオフ及び発生圧力等の制御を行う。図5のポンプ196には、図4の吸引ポンプ174や後述する図16の真空ポンプ520、コンプレッサー522などが装置内の各部に設けられたポンプ類が含まれている。
例えば、図1に示す装置構成において、所定の処理を終えた記録媒体114が印字部108の圧胴126cに供給されると、圧胴126cの真空流路と接続された真空ポンプ520を動作させて、記録媒体114の種類やサイズ、曲げ剛性に応じた真空(負圧)を発生させる。
即ち、システムコントローラ177が記録媒体114の種類の情報を取得すると、当該記録媒体114の情報が図5のポンプドライバ195に送られる。ポンプドライバ195は、当該記録媒体114の情報に応じて吸着圧力を設定し、その設定に従って図16の真空ポンプ520のオンオフ及び発生圧力を制御する。
薄紙等の標準の曲げ剛性よりも曲げ剛性の低い記録媒体114を用いる場合には、標準よりも吸着圧力を低く設定し、厚紙等の標準の曲げ剛性よりも曲げ剛性の高い記録媒体114を用いる場合には、標準よりも吸着圧力を高く設定する。また、記録媒体114の厚みに応じて、標準厚みよりも厚い記録媒体114を用いる場合には、標準よりも吸着圧力を高く設定し、標準厚みよりも薄い記録媒体114を用いる場合には、標準よりも吸着圧力を低く設定する。なお、記録媒体114の種類(厚み、曲げ剛性)と吸着圧力を対応付けしてデータテーブル化しておき、所定のメモリ(例えば、図5のメモリ178)に記憶しておくとよい。
なお、図1に示す装置構成では、圧胴126a〜126dや渡し胴124a〜124dのそれぞれに真空ポンプを備えてもよいし、制御弁などの切換手段を真空流路の途中に設け、1つの真空ポンプを選択的に切り換えて、複数の圧胴126及び複数の渡し胴124に対応してもよい。
メンテナンス処理制御部197は、システムコントローラ177から送られる制御信号に基づいて、ヘッド160や圧胴126a〜126dなどの装置各部のメンテナンスを実行するメンテナンス処理部198を制御する機能ブロックである。
図5では、メンテナンス処理部198を1つの機能ブロックとして図示したが、ヘッド160のメンテナンス処理部、圧胴126a〜126dのメンテナンス処理部のように、メンテナンス処理部198はメンテナンスの対象ごとに別々に構成される。また、メンテナンス処理制御部197は、メンテナンス処理部ごとに設けられる。図5のメンテナンス処理部198には、モータ188やポンプ196などが含まれる。
プリント制御部182は、システムコントローラ177の制御に従い、メモリ178内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッドドライバ184に供給する制御部である。プリント制御部182において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいて、ヘッドドライバ184を介してヘッド160の吐出液滴量(打滴量)や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。なお、図5には、インクジェット記録装置100に備えられる複数のヘッド(インクジェットヘッド)を代表して符号160で図示されている。例えば、図5に示すヘッド160には、図1の浸透抑制剤ヘッド130、処理液ヘッド136、インクヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140B、透明UVインクヘッド146が含まれている。
また、プリント制御部182には画像バッファメモリ183が備えられており、プリント制御部182における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ183に一時的に格納される。また、プリント制御部182とシステムコントローラ177とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ184は、プリント制御部182から与えられる画像データ(ドットデータ)に基づいてヘッド160の圧電素子168に印加される駆動信号を生成するとともに、該駆動信号を圧電素子168に印加して圧電素子168を駆動する駆動回路を含んで構成される。なお、図5に示すヘッドドライバ184には、ヘッド160の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
印字検出部144は、図1で説明したように、ラインセンサを含むブロックであり、記録媒体114に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部182に提供する。
プリント制御部182は、必要に応じて印字検出部144から得られる情報に基づいてヘッド160に対する各種補正を行う。また、印字検出部144を用いて画像のムラを測定し、記録媒体114の凹みによるムラが発生している場合には、システムコントローラ177からポンプドライバ195に制御信号を送り、真空ポンプ(図16の符合520)の流量を減らすように制御する態様も好ましい。
なお、図1の渡し胴124aの前段に印字検出部144と同様の構成(記録媒体検出用センサ)を設けて、当該記録媒体検出用センサを用いて記録媒体114の厚みや表面性を読み取り、その情報に基づいて記録媒体114の種類を判断する態様も好ましい。
センサ185は、装置内の各部に設けられる各種センサ類を示している。センサ185には、温度センサ、位置検出センサ、圧力センサ等が含まれている。センサ185の出力信号はシステムコントローラ177に送られ、システムコントローラ177は該出力信号に基づいて装置各部に対して制御信号を送り、装置各部の制御が行われる。
例えば、圧胴126a〜126dの受渡位置(図15に符合500,506で図示)の近傍にセンサを備え、該センサの検出信号に基づいて、圧胴126a〜126dに記録媒体が存在しているか否かを判断する。
このように構成されたインクジェット記録装置100の画像形成方法について説明する。
給紙部102の給紙台120からフィーダボード122に記録媒体114が送り出される。記録媒体114は、渡し胴124aを介して、浸透抑制処理部104の圧胴126aに保持され、用紙予熱ユニット128によって予備加熱され、浸透抑制剤ヘッド130によって浸透抑制剤が打滴される。その後、圧胴126aに保持された記録媒体114は、浸透抑制剤乾燥ユニット132によって加熱され、浸透抑制剤の溶媒成分(液体成分)が蒸発し、乾燥する。
こうして浸透抑制処理が行われた記録媒体114は、浸透抑制処理部104の圧胴126aから渡し胴124bを介して、処理液付与部106の圧胴126bに受け渡される。圧胴126bに保持された記録媒体114は、用紙予熱ユニット134によって予備加熱され、処理液ヘッド136によって処理液が打滴される。その後、圧胴126bに保持された記録媒体114は、処理液乾燥ユニット138によって加熱され、処理液の溶媒成分(液体成分)が蒸発し、乾燥する。これにより、記録媒体114上には固体状又は半固溶状の凝集処理剤層が形成される。
処理液が付与されて固体状又は半固溶状の凝集処理剤層が形成された記録媒体114は、処理液付与部106の圧胴126bから渡し胴124cを介して、印字部108の圧胴126cに受け渡される。圧胴126bに保持された記録媒体114には、入力画像データに応じて、各インクヘッド140C、140M、140Y、140K、140R、140G、140Bからそれぞれ対応する色インクが打滴される。
凝集処理剤層上にインク液滴が着弾すると、飛翔エネルギーと表面エネルギーとのバランスにより、インク液滴と凝集処理剤層との接触面が所定の面積にて着弾する。インク液滴が凝集処理剤上に着弾した直後に凝集反応が始まるが、凝集反応はインク液滴と凝集処理剤層との接触面から始まる。凝集反応は接触面近傍のみで起こり、インク着弾時における所定の接触面積で付着力を得た状態でインク内の色材が凝集されるため、色材移動が抑止される。
このインク液滴に隣接して他のインク液滴が着弾しても先に着弾したインクの色材は既に凝集化しているので後から着弾するインクとの間で色材同士が混合せず、ブリードが抑止される。なお、色材の凝集後には、分離されたインク溶媒が広がり、凝集処理剤が溶解した液体層が記録媒体114上に形成される。
そして、圧胴126cに保持された記録媒体114は溶媒乾燥ユニット142a、142bによって加熱され、記録媒体114上でインク凝集体と分離した溶媒成分(液体成分)は蒸発し、乾燥する。この結果、記録媒体114のカールが防止されるとともに、溶媒成分に起因する画像品質の劣化を抑えることができる。
印字部108によって色インクが付与された記録媒体114は、印字部108の圧胴126cから渡し胴124dを介して、透明UVインク付与部110の圧胴126dに受け渡される。圧胴126dに保持された記録媒体114は、印字検出部144によって印字部108の印字結果が読み取られた後、透明UVインクヘッド146から記録媒体114上の色インクに重なるように透明UVインクが打滴される。
続いて、圧胴126dに保持された記録媒体114は、第1のUVランプ148a、148bに対向する位置を通過する際、第1のUVランプ148a、148bによってUV光が記録媒体114上の透明UVインクに対して照射される。これにより、記録媒体114上の透明UVインクは、記録媒体114との界面が高粘度化され、記録媒体114への透明UVインクの浸透が抑制される。
更に、その後、記録媒体114が圧胴126dから排紙胴150に受け渡され、排紙用チェーン154によって排紙台152まで搬送されるときに第2のUVランプ156に対向する位置を通過する際、第2のUVランプ156によってUV光が記録媒体114上の透明UVインクに対して照射される。これにより、記録媒体114上の透明UVインクは表面から内部まで硬化した状態となる。
透明UVインク付与部110において、記録媒体114上に透明UVインクが付与される際、図5に示したプリント制御部182によって、UV光照射後の透明UVインクの層厚が5μm以下(好ましくは3μm以下、より好ましくは1〜3μm)となるように、透明UVインクヘッド146の打滴量が制御される。従って、第1のUVランプ148a、148b及び第2のUVランプ156によるUV光照射によって、記録媒体114上の色インクを覆うように透明UVインクから成る薄膜層(透明UVコート層)が形成され、オフセット印刷と同様の光沢感の画像が記録媒体114上に実現される。
このようにして画像形成が行われた記録媒体114は、排紙用チェーン154によって排紙台152の上方に搬送され、排紙台152上に積載される。
図6には、図1のインクジェット記録装置100を両面機(インクジェット記録装置200)に適用した場合の構成図である。なお、図6中、図1と共通又は類似する部材には同一の番号を付して、その説明を省略する。
図6に示すインクジェット記録装置200は、記録媒体114の両面に印刷可能な両面機である。このインクジェット記録装置200は、記録媒体114の搬送方向(図6の右から左へ向かう方向)の上流側から順に、給紙部102と、第1の浸透抑制処理部104Aと、第1の処理液付与部106Aと、第1の印字部108Aと、第1の透明UVインク付与部110Aと、記録媒体114の記録面(画像形成面)の反転を行う反転部202と、第2の浸透抑制処理部104Bと、第2の処理液付与部106Bと、第2の印字部108Bと、第2の透明UVインク付与部110Bと、排紙部112とを備えている。つまり、反転部202の前後に、図1に示すインクジェット記録装置100の浸透抑制処理部104、処理液付与部106、印字部108、及び透明UVインク付与部110をそれぞれ配置した構成に相当するものである。
本例のインクジェット記録装置200では、まず、図1に示すインクジェット記録装置100と同様にして、給紙部102から給紙された記録媒体114の一方の面に対して、第1の浸透抑制処理部104A、第1の処理液付与部106A、第1の印字部108A、及び第1の透明UVインク付与部110Aによって、浸透抑制処理、処理液の打滴、色インクの打滴、透明UVインクの打滴などが順次行われる。
このようにして記録媒体114の一方の面に画像が形成された後、第1の透明UVインク付与部110Aの圧胴126dから渡し胴206を介して、記録媒体114が反転胴204に受け渡される際、記録媒体114の反転が行われる。なお、記録媒体114の反転機構は公知のものを適用すればよいため具体的な説明については省略する。また、反転胴204の表面に対向する位置には、第2のUVランプ156が設けられており、第1の透明UVインク付与部110Aの第1のUVランプ148a、148bとともに、記録媒体114上に付与された透明UVインクを硬化させる役割を果たしている。
反転後の記録媒体114は、反転胴204から渡し胴208を介して、第2の浸透抑制処理部104Bの圧胴126aに受け渡される。そして、記録媒体114の他方の面に対して、第2の浸透抑制処理部104B、第2の処理液付与部106B、第2の印字部108B、及び第2の透明UVインク付与部110Bによって、浸透抑制処理、処理液の打滴、色インクの打滴、透明UVインクの打滴などが順次行われる。
このようにして記録媒体114の両面に画像が形成された後、記録媒体114は、排紙用チェーン154によって排紙台152の上方に搬送され、排紙台152上に積載される。
〔圧胴(搬送ドラム)の構造の説明〕
次に、記録媒体114の保持搬送手段として機能する、圧胴126a〜126dの構造について詳説する。なお、図1に図示する圧胴126a〜126dは共通の構造を有しているので、以降、圧胴126a〜126dを総称して搬送ドラム300として説明する。
図7は、本発明の実施形態に係る搬送ドラム300の斜視図である。同図に示すように、搬送ドラム300は、円筒(ドラム)形状を有し、回転軸302が長手方向の両端部において軸受304で支持され、回転軸302を回転させることで、外周面306に保持された記録媒体(不図示)は所定の方向に搬送される。
搬送ドラム300の外周面306には複数の凹部が設けられるとともに、各凹部には記録媒体の先端部を保持固定する端部保持部が設けられている。図7には、搬送ドラム300の回転軸をはさんで対称となる位置に2つの凹部308,310が設けられる態様を例示する。なお、図1に示す印字部108の圧胴126cのように、外周面を3等分する位置に(各凹部のなす角度が120°となる位置に)、3つの凹部を備える態様も可能である。図1に示す態様では、渡し胴124a〜124dの2ヶ所に記録媒体114の先端部を保持する機構を備えるとともに、上流側の圧胴から下流側の圧胴へ記録媒体114を受け渡す受け渡し構造を備え、渡し胴124a〜124dが1周すると、圧胴126a,126b,126dは1/2周、圧胴126cは1/3周して記録媒体114を順次受け渡すように構成されている。
凹部308(310)には、搬送ドラム300の長手方向に沿って記録媒体の先端部が固定される端部固定面312を有する用紙先端ガイド314が設けられ、更に、用紙先端ガイド314の端部固定面312との間に記録媒体の先端部を挟みこんで挟持する複数のグリッパー316が搬送ドラム300の長手方向に沿って所定間隔(図7の例では等間隔)に設けられている。
記録媒体を渡し胴124から圧胴126に受け渡す際に、グリッパー316を開いて記録媒体の先端部をグリッパー316と端部固定面312との間に導き、グリッパー316を閉じると記録媒体の先端部は用紙先端ガイド314に挟持される。
〔圧胴(搬送ドラム)の真空流路の説明〕
次に、搬送ドラム300の真空流路について詳述する。図7に示す搬送ドラム300の外周面306のうち、記録媒体を保持する記録媒体保持領域414(ドットハッチで図示した領域)には、吸着穴が所定の配置パターンで複数設けられている。更に、搬送ドラム300の軸方向の略中央部は、周方向の全周にわたって吸着穴が設けられていない非開口部416となっている。なお、図7において個々の吸着穴の図示は省略し、図8に符号450を付して個々の吸着穴を図示する。
吸着穴は、搬送ドラム300内部の吸着管路(図8、図9に詳細を図示)と連通し、該吸着管路は搬送ドラム300内部の真空管路(不図示)と連通し、さらに、該真空管路は搬送ドラム300の側面部に設けられる連結部320、吸引ホース322、マニホールド324の側面に設けられる連結部326、流路切換構造(図7中不図示、図16に符号530で図示)と連通し、ポンプ(図7中不図示、図16に符号520で図示)及びコンプレッサー(図7中不図示、図16に符号522で図示)と接続されている。
図7に示す4本の吸引ホース322(連結部320,326)は、本体部356の外周面356Aに設けられる4本のドラム吸着溝426(図7には1本のみ図示)のそれぞれに対応している。
記録媒体を記録媒体保持領域414に保持した状態で該真空ポンプを動作させ、上述した搬送ドラム300内の真空流路、吸着管路を介して外周面306の吸着穴に真空(負圧)を発生させることで、記録媒体保持領域414に該記録媒体を真空吸着することができる。
一方、真空ポンプとコンプレッサーの接続を切り換えて、記録媒体保持領域414に記録媒体を置かない状態でコンプレッサーを動作させて圧縮空気を供給すると、上述した搬送ドラム300の真空流路、吸着管路を介して外周面306の吸着穴から圧縮空気(エア)が排出され、吸着管路内及び吸着穴の内部に進入したインクミストや紙粉などがエアとともに排出される。図7には、真空ポンプ及びコンプレッサーと真空流路との接続を選択的に切り換える切換構造体(図16に符合530で詳細を図示)が配設される位置を破線で図示する。
また、図7に示すように、搬送ドラム300は、多数の吸着穴が設けられている吸着シート420と、各吸着穴と連通する複数の吸着溝422(開口を有する流路形成部)が所定の配列パターンに従って設けられている中間シート424と、を含み、更に、各吸着溝422に設けられる絞り部(図7中不図示、図8に符号434で図示)と連通するドラム吸着溝426を備えた本体部356を含んで構成されている。
更にまた、本体部356に設けられたドラム吸着溝426の端部には、本体部356の内部に設けられる不図示の真空流路を介して吸引ホース322と連通するドラム吸着穴428(吸着管路)が設けられている。
搬送ドラム300は、本体部356のドラム吸着溝426と中間シート424の絞り部の位置合わせがされ、本体部356の外周面に中間シート424を巻きつけて密着させて固定するとともに、吸着シート420に設けられる吸着穴が中間シート424のいずれかの吸着溝422と連通するように、中間シート424の吸着溝422と吸着シート420の吸着穴の位置合わせがされ、中間シート424の上に吸着シート420を巻きつけて密着させて固定した構造を有している。
吸着シート420に設けられる吸着穴の配置パターンは、中間シート424の吸着溝422のパターンに対応していることが好ましい。なお、吸着穴のうち、吸着溝422と連通しないものがあってもよい。
図8及び図9には、吸着穴450と、吸着溝422及びドラム吸着溝426、ドラム吸着穴428(吸着管路)と、の配置関係を図示する。図8は搬送ドラムの外周面側から見た平面図であり、図9は図8の9−9線に沿う断面図である。ただし、図9は理解を容易にするため、深さ方向に拡大している。
図8に示すように、吸着溝422の幅(図8における上下方向の長さ)は、複数の吸着穴に対応する長さを有し、図8には、吸着溝422の幅が吸着穴450の直径(長軸方向の長さ)の略4倍となる態様を示す。
また、ドラム吸着溝426の幅(図8における左右方向の長さ)は、絞り部434の長さ(図8における左右方向の長さ)よりも短くなっており、図8には、ドラム吸着溝426の幅が絞り部434の長さの略1/2となる態様を示す。更に、絞り部434は、ドラム吸着溝426を超える位置に達する長さ(図8におけるドラム吸着溝426の左側に突出した部分がある構造)を有している。
図8に示すように、絞り部434の幅(図8における上下方向の長さ)は吸着溝422の幅(図8における左右方向の長さ)よりも狭くなっており、また、図9示すように、絞り部434及び吸着溝422の深さは略同一となっている。即ち、絞り部434の断面積は、吸着溝422の断面積よりも小さくなっており、このような絞り部434の構造によって吸着溝422に流れる流量が制限される。
なお、図9に示すように、吸着シート420の厚みは中間シート424の厚みよりも厚くなっており、図9には吸着シート420の厚みに対する中間シート424の厚みが略1/2となる態様を図示する。
次に、図10を用いて本体部356の構造について詳説する。図10中図7と同一又は類似する部分には共通の符合を付し、その説明は省略する。
本体部356の外周面356Aには、軸方向(周方向(記録媒体114の搬送方向)と直交する方向)の略中央部に、本体部356の周方向に沿って、本体部356の全周に対応するドラム吸着溝426が設けられている。
図10には、本体部356の半周分(分割領域)に対して2本ドラム吸着溝426A,426Bを備える態様(本体部356の全周では、4本のドラム吸着溝426を備える態様)を例示したが、本体部356の半周分を1本のドラム吸着溝でカバーしてもよいし、3本以上のドラム吸着溝で本体部356の半周分をカバーしてもよい。必要な吸着圧力や真空ポンプの容量によっては本体部356の半周分を1本のドラム吸着溝でカバーすることも可能である。しかし、本体部356の半周分を1本のドラム吸着溝でカバーすると、ドラム吸着溝に接続される中間シート424の吸着溝422(図7,図8参照)の数が多くなってしまい、効率が悪くなるので、少なくとも2本のドラム吸着溝によって本体部356の半周分をカバーする構造が好ましい。
各ドラム吸着溝426A,426Bの一方の端部にはドラム吸着穴428A,428Bが設けられ、ドラム吸着溝426A,426Bは、それぞれドラム吸着穴428A、428Bを介して本体部356の内部に設けられた真空流路と連通されている。
本体部356の外周面356Aには、中間シート424や吸着シート420を固定する際に、中間シート424や吸着シート420に設けられた折り返し構造(L字曲げ構造)を挟み込む挟持構造432が設けられるとともに、各分割領域の挟持構造432の反対側の端部には、吸着シート420の折り返し構造(L字曲げ構造)を挟み込んだ状態で吸着シート420に周方向に沿ってテンションをかける引張機構433が設けられている。
本体部356の挟持構造432及び引張機構433は、図7に示す吸着シート420及び中間シート424を密着させて固定できる構造であればよく、詳細構造の図示は省略する。
なお、本例に示す搬送ドラム300は、吸着シート420及び中間シート424を周方向に2枚並べて、搬送ドラム300の全周に所定の吸着管路を構成しているので、上述した挟持構造432と引張機構433は、周方向の対向する位置の2ヶ所に設けられている。
次に、中間シート424の構造について詳述する。図11は中間シート424の斜視図である。同図に示すように、中間シート424には、搬送ドラム300(図7参照)の軸方向(記録媒体の搬送方向と直交する方向)に沿い、搬送ドラム300の軸方向の略中央部から両端部に向かう吸着溝422が搬送ドラム300の周方向(記録媒体の搬送方向)に沿う方向に等間隔に複数配置されている。
また、中間シート424の周方向の一方の端部は、本体部356の挟持構造432に挟み込む折り返し構造(L字曲げ構造)となっており、該折り返し構造を挟持構造432に挟み込むことで、本体部356と中間シート424の位置合わせがなされ、中間シート424の一方の端部が固定される。
更に、中間シート424の周方向の他方の端部はストレート構造となっているので、本体部356に中間シート424を密着させる際に、本体部356の曲率に合わせることが容易である。
吸着溝422の中間シート424の中央部側の端部には、他の部分よりも溝幅が1/4以下に絞られた構造(しぼり構造)を有し、中間シート424を貫通する絞り部434が形成されている。絞り部434(図8,図9参照)は、図10に示すドラム吸着溝426A,426Bと連通する構造となっており、かつ、吸着シート420の非開口部416(図7参照)によって開口部分がふさがれて、直接的に大気開放されない構造になっている。
絞り部434の溝幅は、0.2mm以上3.0mm以下が好ましく、1.0mm以上2.0mm以下であることがより好ましい。また、絞り部434の軸方向の長さは2.0mm以上10.0mm以下であることが好ましい。
また、吸着溝422はできるだけ密に配置することが好ましく、所定サイズの記録媒体に対応する吸着溝が50mm以下のピッチで配置される態様が好ましい。
中間シート424に設けられる吸着溝422は、使用される記録媒体114のサイズに応じた長さを有しており、複数のサイズの記録媒体に対応するために、異なる長さの吸着溝422が設けられている。例えば、吸着溝422の配置パターンとして、少なくとも5種類のサイズの記録媒体114に対応するために、4種類の異なる長さを持つ吸着溝422を所定のパターン(使用するサイズの記録媒体114に対応するパターン)で並べた態様が考えられる。
対応可能な記録媒体のサイズとしては、A4切(312mm×440mm)、四六4切(394mm×545mm)、A半裁(440mm×625mm)、菊半(469mm×636mm)、EU半裁(520mm×720mm)などが挙げられる。
A4切サイズの記録媒体を使用する場合には、該当する領域に合わせて記録媒体114が配置され、当該領域内に配置される吸着溝422に発生する負圧が主として記録媒体114の吸着に作用し、当該領域内に配置される吸着溝422の絞り部434と反対側の端部やその近傍、当該領域40の外側に配置される吸着溝422は大気開放となる。
しかし、大気開放となった吸着溝422の絞り部434が作用して、引かれる真空圧力(エアの流量)を制限し、大気開放となった吸着溝422には圧力損失が発生して吸着圧力の抜けが妨げられる。したがって、記録媒体114を吸着している吸着溝422の必要な吸着圧力を確保することができる。
A4切、四六4切、A半裁、菊半、EU半裁のサイズ以外のサイズの記録媒体114を使用する場合には、中間シート424の吸着溝422の開口形状(配置パターン)を変えることで対応可能である。即ち、他のサイズの記録媒体114に対応した吸着溝422の配置パターンが異なる中間シート424を準備しておき、中間シート424を交換することで様々なサイズの記録媒体114に対応することが可能となる。言い換えると、搬送ドラム300を交換することなく中間シート424の交換で仕向地対応が可能となる。
また、異なる長さを有する吸着溝422が隣り合うように、吸着溝422の配置パターンを構成することで、中間シート424全体として剛性のバラつきが抑制され、記録媒体114の部分的な変形が防止される。なお、記録媒体114の後端部のコーナーは最も浮き上がりやすいため、記録媒体114の端部のぎりぎりの位置まで各吸着溝422を設けることが好ましい。
中間シート424は薄ければ薄いほど少ない負圧で高い吸着力を得ることが可能であるが、中間シート424が薄いと、紙粉、ゴミ、間違って打滴されたインクなどの異物等による詰まりが起こりやすくなる。このような条件を考慮すると、中間シート424の厚みは0.05mm〜0.5mm程度が好ましい。
次に、吸着シート420について詳述する。
図12は吸着シート420の斜視図である。同図に示すように、吸着シート420の記録媒体保持領域414には多数の吸着穴(図8参照)が所定の配置パターンに従って設けられている。また、吸着シート420の搬送ドラム300の軸方向の略中央部は、吸着穴が設けられていない非開口部416となっている。更に、吸着シート420の搬送ドラム300の周方向の両端は、本体部356(図10参照)に固定するための折り返し構造(L字曲げ構造)となっている。
吸着シート420は、中間シート424の絞り部434(図11参照)に対応する部分を非開口部416として吸着穴を設けないことで、絞り部434の圧力損失を制限する(圧力損失を絞る)機能を確保している。また、吸着シート420の非開口部416以外の部分に多数の吸着穴を設けることで、対応用紙サイズによって吸着穴のパターンを変更する必要がなく、同じ形状の吸着シートパターンにすることができる。
即ち、使用する記録媒体114のサイズによって開放となる吸着穴(及び吸着溝422、図11参照)が存在したとしても、絞り部434が作用して吸着圧力の抜けを制限することができるので、記録媒体114の吸着に寄与しない吸着穴をふさがなくてもよく、大小さまざまなサイズの記録媒体114に対して吸着穴のパターンを変更する必要がない。
吸着シート420は、吸着圧力によって凹まない厚みが必要であり、かつ、本体部356に巻きつけて本体部356(中間シート424)に密着させるためには薄いことが好ましい。例えば、ステンレスを用いる吸着シート420の厚みは0.1mm〜0.5mmとすることが好ましく、ステンレスを用いる場合の吸着シート420のより好ましい厚みは0.3mm程度である。ステンレス以外の材料を用いる場合には、使用する材料の剛性及び柔軟性を考慮して、適宜厚みを決めるとよい。
なお、多数の吸着穴450を高密度に配置するためには、吸着穴450を千鳥配置するとよい。もちろん、吸着穴450の配置には千鳥配置以外の配置パターンを適用してもよい。
記録媒体114を本体部356に固定した状態では、吸着圧力による記録媒体114の変形量は周方向よりも軸方向のほうが大きくなる。したがって、吸着穴450は、周方向を長軸方向、軸方向を短軸方向としただ円形状又は長穴形状とすることで、記録媒体114の周方向の変形と軸方向の変形が均等になり、好ましい。
長穴形状を有する吸着穴450の長軸の長さxと短軸の長さyの比率(y/x)は0.5以上1.0以下であることが好ましく、より好ましい長軸の長さxと短軸の長さyの比率は、0.7以上0.9以下である。
また、吸着シート420の開口率を高めるために、開口形状(吸着穴の形状)を六角形などの多角形形状にする態様も好ましい。即ち、吸着力は、(開口面積)×(単位面積あたりの圧力)で表すことができるので、開口率を高くすることで、吸着力をより高くすることが可能となる。しかし、開口面積をあまり大きくし過ぎると、吸着シート420の凹みや記録媒体114の凹みが問題となるので、隣り合う吸着穴の間の土手の部分を残した構造とし、吸着シート420の剛性を確保することが好ましい。
かかる条件を考慮すると、吸着穴の形状は、対角線(最も長い対角線)の長さdが1mm程度の六角形が好ましいといえる。更に、吸着穴に角(鋭角)形状があると、角部に応力が集中してしまうので、角部を丸めた形状とすることが好ましい。
なお、記録媒体114に記録面側(搬送ドラム300と反対側)からエアを吹き付けて、記録媒体114の固定を補助する態様も好ましい。
次に、図12に示す吸着シート420及び図11に示す中間シート424の固定方法について説明する。
先ず、中間シート424の上に吸着シート420を重ねて本体部356(図10参照)に巻きつける。吸着シート420及び中間シート424に位置合わせ用のマーク、形状を設けておくことで、容易に、かつ、正確に2枚のシートの位置を合わせることが可能となる。
次に、吸着シート420の一方の折り曲げ構造及び中間シート424の折り曲げ構造を本体部356の挟持構造432に挿入し、固定する。吸着シート420の折り曲げ構造と、中間シート424の折り曲げ構造に切り欠きを設けておき、挟持構造432に該切り欠きと嵌合する凸部を設けておくことで、吸着シート420の一方の折り曲げ構造及び中間シート424の折り曲げ構造を本体部356の挟持構造432に挿入したときの、吸着シート420、中間シート424及び本体部356の位置合わせを容易、かつ、正確に行うことができる。
吸着シート420の他方の折り曲げ構造を本体部356の引張機構433に取り付けるとともに、引張機構433によって周方向に沿ってテンションをかける。中間シート424の折り曲げ構造が設けられていない側の端部は、吸着シート420と本体部356の間にはさんで密着させる。
このようにして、本体部356の外周面356Aの曲面に沿って、吸着シート420及び中間シート424を密着させた状態で固定することができる。
本例では、2枚のシート(吸着シート420及び中間シート424)を組み合わせて、真空流路の一部を形成する態様を例示したが、吸着シート420及び中間シート424を共通化した1枚のシートに吸着穴450、吸着溝422及び絞り部434を形成してもよい。例えば、1枚のシートの一方の面に吸着穴の加工を行い、他方の面に吸着溝422及び絞り部434の加工を行うことで、吸着シート420及び中間シート424を1枚のシートで実現することも可能である。
〔記録媒体先端部の保持構造の説明〕
次に、図7に概略構成を図示した記録媒体の先端部保持構造について詳説する。図13には、搬送ドラム300を側面側から見たときの、凹部308の近傍を拡大して図示する。同図に示すように、記録媒体の先端部を挟持するグリッパー316は、略L字形状を有し、先端部の爪形状316Aを用いて記録媒体の先端部を固定する。
グリッパー316のストレート部(垂直部分)316Bはグリッパーベース330に支持され、更に、グリッパーベース330は、シャフトブラケット332に回転可能に支持される開閉シャフト334に連結されている。開閉シャフト334は、開閉アーム336を介してカムフォロア338と連結される。
グリッパー316は、上述した構成の伝達機構を介して、不図示のカムの駆動に応じて端部固定面312と接触及び離間(開閉動作)をするように構成されている。
図14は、搬送ドラム300の外周面と用紙先端ガイド314との接点(境界位置)350(1点破線で図示)の近傍を拡大して図示した図である。
図14に示すように、用紙先端ガイド314は、搬送ドラム300の凹部308(310)の内壁面308Aに接触して設けられ、搬送ドラム300の外周面306に巻きつけられた吸着シート420及び中間シート424を本体部356との間に挟みこむ構造体としても機能している。
用紙先端ガイド314は、記録媒体を挟持したグリッパー316の上面が、搬送ドラム300の外周面306に記録媒体を保持したときの記録媒体の画像形成面よりも突出しない位置に設けられている。
即ち、搬送ドラム300の外周面の半径をRdとし、記録媒体の厚みをtとすると、記録媒体を保持した状態のグリッパー316は、搬送ドラム300の回転軸(図7参照)から半径(Rd+t)の円周の内側に位置し、境界位置350よりも所定の距離だけ内側に位置している。
また、搬送ドラム300の外周面306と用紙先端ガイド314の境界位置350と、記録媒体の先端部の固定保持位置と、の間には、曲率半径R1の端部固定面312(曲面)が設けられている。
なお、境界位置350とグリッパー316の先端部の距離は、グリッパー316全体が記録媒体の内側に位置する条件から適宜求められる。
用紙先端ガイド314の端部固定面312の曲率半径R1は、搬送ドラム300の外周面の半径Rd未満であり(R1<Rd)、かつ、端部固定面312の境界位置350における接線方向が搬送ドラム300の外周面306の境界位置350における接線方向と略同一方向である。なお、ここでいう「接線方向が略同一」とは、2つの接線方向の角度差が5°未満の場合を含む概念である。
図14に示すように、搬送ドラム300と用紙先端ガイド314の境界位置350において、搬送ドラム300及び用紙先端ガイド314には、面取り加工(1mm〜数mm程度のR加工やC加工等、図14には、用紙先端ガイド314はR2mmで面取り加工され、搬送ドラム300はR1mmで面取り加工されている)が施されている。この面取り加工は、用紙先端ガイド314(端部固定面312)の形状とは関連することなく、適宜なされている。
上述した記録媒体114の固定保持構造は、記録媒体114の厚みが0.04mm〜0.2mmのときに、浮き量Δtを1mm以下とすることができる。換言すると、搬送ドラム300の外周面306よりも内側で記録媒体114の先端部を保持する場合の記録媒体114の浮き量Δtが1mm以下となるように、用紙先端ガイド314の端部固定面312の曲率半径R1が決められている。
なお、端部固定面312を曲面部と平面部から構成し、平面部において記録媒体の先端部を挟持する態様も好ましい。かかる態様では、曲率半径R1を有する曲面部は、搬送ドラム300の外周面306側(記録媒体の先端部を挟持する場合には記録媒体搬送方向上流側)に設けられ、平面部は凹部308(310)の内部側(記録媒体の先端部を挟持する場合には記録媒体搬送方向下流側)に設けられる。また、平面部の傾きは、曲面部と平面部との境界位置の接線方向と略同一である。かかる構造によれば、記録媒体とグリッパーが面接触となり、記録媒体の保持力をより大きくすることができ、記録媒体保持の信頼性が向上する。
図13及び図14に示す搬送ドラム300及び用紙先端ガイド314の具体的な寸法例を挙げると、搬送ドラム300の半径Rdは225mm、端部固定面312の曲率半径R1は75mmである。なお、搬送ドラム300の半径Rdが150mm<Rd<1000mmの場合には、端部固定面312の曲率半径R1は50mm<R1<200mm(但し、Rd>R1)である。
用紙先端ガイド314の端部固定面312を複数の曲面から構成してもよい。即ち、端部固定面312を、曲率半径R1の曲面と、曲率半径R2の曲面を含んで構成し、搬送ドラム300の外周面306の半径Rdと、曲率半径R1と、曲率半径R2、との関係が、Rd>R1>R2とする態様も好ましい。なお、曲率半径R1と、曲率半径R2と、の関係を、R2>R1としてもよい。また、端部固定面312の一部である先端保持部を平面部とし、該平面部で記録媒体114の先端部を挟持してもよい。
かかる構成の数値例を挙げると、Rd=225mm、R1=100mm、R2=75mmである。
また、搬送ドラム300の外周面306と用紙先端ガイド314との間に隙間を設けてもよい。この隙間に仮想的な外周面が存在するとして、搬送ドラム300の外周面306の半径Rdと、該隙間の仮想外周面の曲率半径R11と、端部固定面312の曲率半径R12と、の関係は、Rd>R11≧R12となり、かつ、搬送ドラム300の外周面306と該隙間の境界位置における搬送ドラム300の外周面306の接線方向と、該隙間の仮想外周面の接線方向が略同一であり、該隙間と用紙先端ガイド314の境界位置における隙間の仮想外周面の接線方向と用紙先端ガイド314の端部固定面312の接線方向が略同一とすればよい。
〔記録媒体搬送の説明〕
次に、図15を用いて、上述した真空吸着搬送構造を有する搬送ドラム300における記録媒体の搬送について詳説する。
図15は、搬送ドラム300及びその周辺を図示した模式図であり、図1の印字部108に対応している。なお、図1では7色のインクに対応して色ごとに個別のヘッドを備える態様を例示したが、図15では、図の簡略化のために4色のインク(例えば、CMYK)に対応して色ごとに個別のヘッドを備えるものとした。また、図1の圧胴126cには3ヶ所の記録媒体の端部保持部(凹部)が設けられる構造となっているが(図1には不図示)、図15では、図7〜図14により説明した搬送ドラム300の構造を有するものとして説明する。
図15に示す搬送ドラム300(圧胴126c)は、前段側の渡し胴124cに保持された記録媒体(図15中不図示、図1参照)が所定の受渡位置(供給位置)500で受け渡され、該記録媒体の先端部を端部保持部で保持するとともに、外周面306に記録媒体を固定保持した状態で、記録媒体を所定の搬送方向(図15中反時計回り方向)に搬送する。
記録媒体の受渡位置500では、渡し胴124cの記録媒体を保持する機構が開放され、所定のガイド部材によって記録媒体の先端部が搬送ドラム300の凹部308(310)に導かれ、凹部308内の端部保持部により記録媒体の先端部が保持される。
記録媒体の受渡位置500の搬送方向下流側の直近には、用紙押さえローラ502が設けられ、用紙押さえローラ502によって記録媒体を搬送ドラム300の外周面306に押圧し、記録媒体は搬送ドラム300の外周面306に密着させる。なお、用紙押さえローラ502と併用して、又はこれに代わり記録媒体にエアを吹き付けて、搬送ドラム300の外周面306に記録媒体を密着させてもよい。図15には、エア発生部504Aと噴射ノズル504Bを有するエア吹き付け部材504を図示する。
このようにして、記録媒体を搬送ドラム300の外周面306に密着させた後に、先に説明した真空吸着によって、記録媒体は搬送ドラム300の外周面306(記録媒体保持領域414、図7参照)に吸着固定され、搬送ドラム300の外周面306から浮き上がりのない状態で、インクヘッド140C,140M,140Y,140Kの直下の印字領域に送られる。
インクヘッド140C,140M,140Y,140Kのそれぞれから吐出されたカラーインクによって記録媒体上に所望の画像が形成されると、記録媒体は渡し胴124dとの受渡位置(排出位置)506に送られる。
受渡位置506では、記録媒体の真空吸着がオフになるとともに、記録媒体先端部の固定保持が解除され、所定のガイドを介して記録媒体が渡し胴124dに受け渡される。
〔圧胴(搬送ドラム)メンテナンスの説明(第1実施形態)〕
次に、搬送ドラム300のメンテナンスについて説明する。上述したように、受渡位置506において記録媒体を渡し胴124dへ受け渡した後に、搬送ドラム300は更に回転し、記録媒体保持領域(図7参照)が受渡位置506の後段側に配置されたクリーニングローラ514の位置に達すると、クリーニングローラ514を用いて記録媒体保持領域のクリーニングが行われる。
クリーニングローラ514は、搬送ドラム300の回転に応じて従動回転するように構成され、所定の圧力で搬送ドラム300の外周面306に押圧されている。更に搬送ドラム300が回転し、記録媒体保持領域が吹き出し領域510に達すると、不図示の真空流路に圧縮空気が供給され、外周面306の吸着穴(図8参照)から外部へのエアの吹き出しが行われる。
本例に示す、搬送ドラム300は、1回転する間に吸着シート(図7参照)を吸引する吸い込み領域512と、吸着シートに圧縮空気を供給する吹き出し領域510が設けられ、印刷中に吸着シートに付着した(中間シートに入り込んだ)紙粉やインクミスト、塵埃等は、吹き出し領域510(記録媒体が外周面306に保持されていない角度領域)で排出される。
本例に示す吸着管路は、印字中に発生した紙粉、インクミスト、塵埃等の異物が吸着溝(図9参照)や吸着溝と連通する絞り部(図9参照)に入り込み、詰まりが発生すると、記録媒体の真空吸着性能が著しく低下してしまうので、吸着溝の内部や絞り部の内部に異物が詰まらない状態を保つことで、記録媒体の固定の信頼性を向上させることができる。
本例では、記録媒体を真空吸着するための真空流路及び吸着管路と、搬送ドラム300のメンテナンスのための圧縮空気の流路を兼用しているので、該流路と真空ポンプ及びコンプレッサーの間に切換構造が設けられている。該切換構造によって該流路には真空ポンプとコンプレッサーを選択的に接続することが可能となる。
切換構造の詳細は次に説明するが、例えば、図15の破線で図示した部分に図16に図示する切換構造体530を備える態様が一例として挙げられる。
図16には、真空ポンプ(ポンプ)520とコンプレッサー522の切換構造の一例を図示する。図16に実線で図示する切換構造体530は、軸受304の支持部材(不図示)に固定され、ホース532を介して真空ポンプ520に接続される第1の流路534及び、ホース536を介してコンプレッサー522に接続される第2の流路538が、周囲部に沿って回転軸302をはさんで対称位置に設けられている。
第1の流路534は搬送ドラム300の吸い込み領域512に対応する位置に設けられ、かつ、第2の流路538は搬送ドラム300の吹き出し領域510に対応する位置に設けられている。また、吸引ホース322の連結部326(ともに破線で図示)は第1の流路534及び第2の流路538と接続可能であり、第1の流路534及び第2の流路538と接続されていないときは密閉状態となる構造を有している。
図16には、第1の流路534の記録媒体搬送方向上流側端部(図16の右端部)に連結部326Aが接続され、第1の流路534の略中央部に連結部326Bが接続され、かつ、第2の流路の略中央部に連結部326Cが接続され、連結部326Dは第1の流路534及び第2の流路538の何れにも連結されていない状態を図示する。
図16に示す状態では、連結部326A及び吸引ホース322Aに連通する真空流路と、連結部326B及び吸引ホース322Bと連通する真空流路は真空ポンプ520と接続され、当該真空流路と連通する吸着穴には吸引圧力が発生する。
一方、連結部326C及び吸引ホース322Cと連通する真空流路はコンプレッサー522と接続され、当該真空流路と連通する吸引穴からエアが排出される。なお、連結部326D及び吸引ホース322Dと連通する真空流路には、真空ポンプ520及びコンプレッサー522の何れも接続されないので、当該真空流路と連通する吸着穴は吸引及び排出の何れも行われない。
図16に図示した状態から、搬送ドラム300が反時計回りに回転し、連結部326Cと第2の流路538との接続が解除されると、連結部326C及び吸引ホース322Cと連通する真空流路はコンプレッサー522との接続が解除され、当該真空流路と連通する吸着穴のエア排出がオフになる。
更に搬送ドラム300が反時計回りに回動して連結部326Dが第2の流路538を接続されると、連結部326D及び吸引ホース322Dと連通する真空流路には、真空ポンプ520コンプレッサー522が接続され、当該真空流路と連通する吸引穴からエアが排出される。
同様に、搬送ドラム300の回転に応じて連結部326Bと第1の流路534との接続が解除されると、連結部326B及び吸引ホース322Bと連通する真空流路と真空ポンプ520との接続が解除され、当該真空流路と連通する吸着穴の吸引はオフになる。
このようにして、搬送ドラム300の回転に応じて吸い込み領域512に達した記録媒体保持領域では、当該記録媒体保持領域の吸着穴は吸着管路及び真空流路、切換構造体530を介して真空ポンプ520と接続され、記録媒体が真空吸着される。一方、吹き出し領域510に達した記録媒体保持領域では、吸着穴はコンプレッサー522と接続され、エアの排出が行われる。
即ち、搬送ドラムの1回転の中に記録媒体を真空吸着する吸い込み領域512と、エアの排出を行う吹き出し領域510を設けることで、画像形成が終わるたびに記録媒体保持領域のメンテナンス(クリーニング)が行われ、生産効率を落とすことがない。
なお、記録媒体の有無を検出するセンサを備え、記録媒体が該搬送ドラムに供給されていない状態では、真空ポンプ520をオフするとように制御すると、吸引によって搬送ドラム300の周辺に浮遊する紙粉等の吸着穴への進入が防止される。
また、記録媒体が搬送ドラム300に供給されていない状態では、クリーニングローラ514を搬送ドラム300から離間させるようにクリーニングローラ514の位置を変更するとよい。
図16には、真空ポンプ520とコンプレッサー522とを別々の装置として図示したが、両者の機能を1つの装置で実現するコンビネーションポンプを用いることも可能である。また、本例では、真空ポンプ520とコンプレッサー522との接続切換をメカ機構によって実現する態様を例示したが、他の切換方式を適用可能である。例えば、搬送ドラム300内部の真空流路と真空ポンプ520との接続部分及び、該真空流路とコンプレッサー522との接続部分のそれぞれに制御弁を設け、該真空流路と真空ポンプ520及びコンプレッサー522との接続を制御弁により切り換える態様が挙げられる。
〔搬送ドラムのメンテナンスの説明(第2実施形態)〕
次に、本発明に係るインクジェット記録装置における、搬送ドラム300のメンテナンスの他の実施形態(第2実施形態)について説明する。
第2実施形態に示す搬送ドラム300のメンテナンス制御では、印刷時(画像形成モード)では記録媒体の真空吸着を行い、非印刷時(メンテナンスモード)では、搬送ドラム300のメンテナンスが行われる。即ち、搬送ドラム300から真空ポンプ520との間の流路をコンプレッサーと選択的に接続できるように構成し、印刷時には吸着シート(図7,図9参照)を吸引し、非印刷時には吸着シートに圧縮空気を供給するように真空ポンプ520とコンプレッサー522との切り換えが行われる。
複数枚の連続画像形成を実行する場合には、印刷中には図15に示す吸い込み領域512及び吹き出し領域510の両方で(搬送ドラム300の全領域で)記録媒体の吸引を行い、一方、印刷を停止して搬送ドラム300のメンテナンスを行う場合には、吹き出し領域510及び吸い込み領域512の両方で吹き出しを行う。なお、印刷中には吹き出し領域510における吸引を停止してもよい。
図17には、メンテナンスモードにおける制御の流れを示すフローチャートを図示する。
画像形成モードからメンテナンスモードに移行し、メンテナンスシーケンスが開始されると(ステップS10)、図15に示すインクヘッド140C,140M,140Y,140Kは所定の退避位置に退避され(図17のステップS12)、記録媒体の有無が確認される(ステップS14)。
ステップS14において、記録媒体が図15に示す搬送ドラム300の外周面306に保持されている場合には(No判定)、当該記録媒体を搬送ドラム300から排出し(図17のステップS16)、搬送ドラム300を所定の停止位置で停止され(ステップS18)、ステップS20に進む。
一方、ステップS14において、記録媒体が搬送ドラム300の外周面306に保持されていない場合には(YES判定)、ステップS20に進み、図16の真空ポンプ520とコンプレッサー522の切り換えが行われ、コンプレッサー522の動作が開始される(図17ステップS22)。
ステップS22において、コンプレッサー522が動作を開始すると、動作開始からの時間が監視され(ステップS24)、コンプレッサー522の動作開始から所定時間が経過するまでは(NO判定)、動作開始からの時間監視が継続される。
一方、ステップS24において、コンプレッサー522の動作開始から所定時間が経過したと判断されると(YES判定)、コンプレッサー522と真空ポンプ520の切り換えが行われるとともに、所定の終了処理が行われ、当該メンテナンスシーケンス(メンテナンスモード)が終了する(ステップS26)。
ステップS26において、メンテナンスシーケンスが終了すると、インクヘッド140C,140M,140Y,140Kを所定の画像形成時の配置位置に移動させて、画像形成モード移行する。
なお、コンプレッサーの動作前に、図15に示すクリーニングローラ514により、搬送ドラム300の外周面306をクリーニングしてもよい。
上述した搬送ドラム300のメンテナンスシーケンスは、ヘッドなどの装置各部のメンテナンスを実行する際(例えば、電源オン時やリセット時に行われるイニシャライズ実行時や、装置稼働中の定期メンテナンス実行時)に行われる。また、搬送ドラム300のメンテナンスを単独で実行してもよい。
例えば、連続印刷時に所定の印刷枚数を超えた場合に、一旦印刷を停止して搬送ドラム300のメンテナンスを行ってもよいし、記録媒体の吸着圧力を検出して、所定の吸着圧力を下回った場合に、印刷を中止して搬送ドラム300のメンテナンスを行ってもよい。
上述した第2実施形態によれば、搬送ドラム300の外周面306(表面)を真空吸着するモードと、搬送ドラム300の表面から圧縮空気を排出するモードと、を有し、各モードを選択的に切換可能に構成することで、吸着穴450や吸着溝422、絞り部434、ドラム吸着溝426(図8,図9参照)、ドラム吸着穴428(図9参照)を含む吸着管路に進入した異物を除去することができ、所定の記録媒体保持能力が維持される。
上述した第2実施形態では、先に説明した第1実施形態に適用される真空流路の分割構造や切換構造(切換構造体530)を適用する必要はなく、搬送ドラム300の吸着穴450や吸着溝422、絞り部434、ドラム吸着溝426、ドラム吸着穴428を含む吸着管路は、共通の真空流路を介して真空ポンプ520及びコンプレッサー522に接続される。
以上説明した第1実施形態及び第2実施形態では、印字部108の圧胴126cに対して本発明を適用したが、もちろん、印字部108の圧胴126c以外の他の圧胴126a,126b,126dに本発明を適用してもよい。
〔他の装置構成例〕
上述したインクジェット記録装置100、200は、インクジェット方式だけでなく、レーザ記録等の他の方式にも適用可能である。レーザ記録方式や電子写真方式などにおいても、記録媒体の紙粉やトナーなどが吸着管路に進入することが考えられるので、これらの異物を適宜除去し、所定の記録媒体の保持能力を保持することが好ましい。
以上、本発明に係る画像形成装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
100,200…インクジェット記録装置、140C,140M,140Y,140K,140R,140G,140B,160…ヘッド、114…記録媒体、126a〜126d,300…搬送ドラム(圧胴)、306…外周面、412…記録媒体保持領域、422…吸着溝、426…ドラム吸着溝、428…ドラム吸着穴、434…絞り部、530…切換構造体、550…真空ポンプ、552…コンプレッサー