以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
《インクジェット記録装置の全体構成》
図1は本発明に係るインクジェット記録装置の一実施形態を示す全体構成図である。
このインクジェット記録装置10は、枚葉の用紙Pに水性インク(水及び水に可溶な溶媒に染料、顔料などの色材を溶解又は分散させたインク)を用いてインクジェット方式で印刷する装置であり、用紙Pを給紙する給紙部20と、用紙Pの表面(印刷面)に所定の処理液を塗布する処理液塗布部30と、用紙Pの印刷面にシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、クロ(K)の各色のインク滴をインクジェットヘッドで打滴して、カラー画像を描画する画像記録部40と、用紙Pに打滴されたインク滴を乾燥させるインク乾燥部50と、用紙Pに記録された画像を定着させる定着部60と、用紙Pを回収する回収部70とを備えて構成される。
処理液塗布部30、画像記録部40、インク乾燥部50、定着部60の各部には、それぞれ用紙Pの搬送手段として、搬送ドラム31、41、51、61が備えられる。用紙Pは、この搬送ドラム31、41、51、61によって、処理液塗布部30、画像記録部40、インク乾燥部50、定着部60の各部を搬送される。
各搬送ドラム31、41、51、61は、円筒状に形成され、用紙幅に対応して形成される。各搬送ドラム31、41、51、61は、図示しないモータに駆動されて回転する(図1において、反時計回りに回転する。)。用紙Pは、各搬送ドラム31、41、51、61の外周面に巻き付けられて搬送される。
各搬送ドラム31、41、51、61の周面には、グリッパが備えられる。用紙Pは、このグリッパに先端部を把持されて搬送される。本例では、各搬送ドラム31、41、51、61の周面の2箇所にグリッパGが設置される。グリッパGは、180°間隔で設置される。これにより、1回の回転で2枚の用紙を搬送することができる。
また、各搬送ドラム31、41、51、61には、外周面上に巻き付けられた用紙Pを吸着保持する吸着保持機構が備えられる。本例では、空気圧(負圧)を用いて、用紙Pを外周面上に吸着保持する。このため、各搬送ドラム31、41、51、61の外周面には、多数の吸引穴が形成される。用紙Pは、この吸引穴から裏面を吸引されて、各搬送ドラム31、41、51、61の外周面上に吸着保持される。吸着保持機構は、静電気を利用した方式(いわゆる静電吸着方式)を採用することもできる。
処理液塗布部30と画像記録部40の間、画像記録部40とインク乾燥部50の間、インク乾燥部50と定着部60の間には、それぞれ渡し胴(回転搬送手段)80、90、100が配置される。用紙Pは、この渡し胴80、90、100によって、各部の間を搬送される。
各渡し胴80、90、100は、円筒状の枠体で構成され、用紙幅に対応して形成される。各渡し胴80、90、100は、図示しないモータに駆動されて回転する(図1において、時計回りに回転する。)。
各渡し胴80、90、100の周面には、グリッパGが備えられる。用紙Pは、このグリッパGに先端部を把持されて搬送される。本例では、各渡し胴80、90、100の外周部2箇所にグリッパGが設置される。グリッパGは、180°間隔で設置される。これにより、1回の回転で2枚の用紙を搬送することができる。
各渡し胴80、90、100の下部には、用紙Pの搬送経路に沿って円弧状のガイド板82、92、102が配設される。渡し胴80、90、100によって搬送される用紙Pは、このガイド板82、92、102に裏面(印刷面の反対側の面)をガイドされながら搬送される。
また、各渡し胴80、90、100の内部には、渡し胴80によって搬送される用紙Pに向けて熱風を吹き出すドライヤ84、94、104が設置される(本例では、用紙Pの搬送経路に沿って3台設置している。)。各渡し胴80、90、100によって搬送される用紙Pは、その搬送過程でドライヤ84、94、104から吹き出された熱風が印刷面に吹き当てられる。これにより、各渡し胴80、90、100による搬送過程で用紙Pを乾燥処理することができる。
なお、ドライヤ84、94、104は、熱風を吹き出して加熱する構成に代えて、赤外線ヒータ等から熱を放射して加熱する構成とすることもできる(いわゆる輻射による加熱)。
給紙部20から給紙された用紙Pは、搬送ドラム31→渡し胴80→搬送ドラム41→渡し胴90→搬送ドラム51→渡し胴100→搬送ドラム61の順で搬送され、最後に回収部70で回収される。この給紙部20から回収部70で回収されるまでの間に用紙Pは所要の処理が施されて、印刷面に画像が記録される。
以下、本実施の形態のインクジェット記録装置10の各部の構成について詳説する。
〈給紙部〉
給紙部20は、枚葉の用紙Pを1枚ずつ周期的に給紙する。この給紙部20は、主として、給紙装置21と、給紙トレイ22と、渡し胴23とで構成される。
給紙装置21は、図示しないマガジンにスタックされた用紙Pを上側から順に1枚ずつ給紙トレイ22に給紙する。
給紙トレイ22は、給紙装置21から給紙された用紙Pを渡し胴23に向けて送り出す。
渡し胴23は、給紙トレイ22から送り出された用紙Pを受け取り、回転して、処理液塗布部30の搬送ドラム31に受け渡す。
用紙Pは、特に限定されないが、一般のオフセット印刷などで使用される汎用の印刷用紙(いわゆる上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする用紙)を用いることができる。本例では塗工紙が用いられる。塗工紙は、一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものである。具体的には、アート紙、コート紙、軽量コート紙、微塗工紙などが好適に用いられる。
汎用の印刷用紙は、インクジェット方式で印刷すると、滲み等が発生し、画像の品位が損なわれる。そこで、このような不具合を防止するために、本実施の形態のインクジェット記録装置10では、次の処理液塗布部30において、用紙Pの印刷面に所定の処理液を塗布する。
〈処理液塗布部〉
処理液塗布部30は、用紙Pの印刷面に所定の処理液を塗布する。この処理液塗布部30は、主として、用紙Pを搬送する搬送ドラム(以下、「処理液塗布ドラム」という。)31と、その処理液塗布ドラム31によって搬送される用紙Pの印刷面に所定の処理液を塗布する塗布装置32とで構成される。
処理液塗布ドラム31は、給紙部20の渡し胴23から用紙Pを受け取り(グリッパGで用紙Pの先端を把持して受け取る。)、回転して用紙Pを所定の搬送経路に沿って搬送する。
塗布装置32は、処理液塗布ドラム31によって搬送される用紙Pの印刷面に所定の処理液をローラ塗布する。すなわち、周面に処理液が付与された塗布ローラを処理液塗布ドラム31によって搬送される用紙Pの印刷面に押圧当接させて、用紙Pの印刷面に処理液を塗布する。処理液は、一定の厚さで塗布される。
塗布装置32で塗布する処理液は、インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含む液体で構成される。
凝集剤としては、インク組成物のpHを変化させることができる化合物であっても、多価金属塩であっても、ポリアリルアミン類であってもよい。
pHを低下させ得る化合物としては、水溶性の高い酸性物質(リン酸、シュウ酸、マロン酸、クエン酸、若しくは、これらの化合物の誘導体、又は、これらの塩等)が好適に挙げられる。酸性物質は、1種単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。これにより、凝集性を高め、インク全体を固定化することができる。
また、インク組成物のpH(25℃)は、8.0以上であって、処理液のpH(25℃)は、0.5〜4の範囲が好ましい。これにより、画像濃度、解像度及びインクジェット記録の高速化を図ることができる。
また、処理液には、添加剤を含有することができる。たとえば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤を含有することができる。
このような処理液を用紙Pの印刷面に事前に塗布して印刷することにより、フェザリングやブリーディング等の発生を防止でき、一般の印刷用紙を使用しても、高品位な印刷を行うことが可能になる。
以上の構成の処理液塗布部30において、用紙Pは、処理液塗布ドラム31に保持されて、所定の搬送経路を搬送される。そして、その搬送過程で塗布装置32によって印刷面に処理液が塗布される。
印刷面に処理液が塗布された用紙Pは、その後、所定位置で処理液塗布ドラム31から渡し胴80に受け渡される。そして、渡し胴80によって所定の搬送経路を搬送されて、画像記録部40の搬送ドラム41に受け渡される。
ここで、上記のように、渡し胴80には、その内部にドライヤ84が設置されており、ガイド板82に向けて熱風が吹き出されている。用紙Pは、この渡し胴80によって処理液塗布部30から画像記録部40に搬送される過程で印刷面に熱風が吹き当てられて、印刷面に塗布された処理液が乾燥される(処理液中の溶媒成分が蒸発除去される。)。
〈画像記録部〉
画像記録部40は、用紙Pの印刷面にC、M、Y、Kの各色のインク滴を打滴して、用紙Pの印刷面にカラー画像を描画する。この画像記録部40は、主として、用紙Pを搬送する搬送ドラム(以下、「画像記録ドラム」という。)41と、用紙Pの印刷面を押圧して、用紙Pの裏面を画像記録ドラム41の周面に密着させる押圧ローラ42と、用紙Pの浮きを検出する用紙浮き検出センサ43と、用紙PにC、M、Y、Kの各色のインク滴を吐出して、画像を描画するインクジェットヘッド44C、44M、44Y、44Kと、押圧ローラ42の直前の位置で用紙Pの表面(印刷面)を吸引して、用紙Pにバックテンションを付与するバックテンション付与装置300とを備えて構成される。
画像記録ドラム41は、渡し胴80から用紙Pを受け取り(グリッパGで用紙Pの先端を把持して受け取る。)、回転して用紙Pを所定の搬送経路に沿って搬送する。
押圧ローラ42は、画像記録ドラム41の幅とほぼ同じ幅を有するゴムローラ(少なくとも外周部がゴム(弾性体)で構成されるローラ)で構成され、画像記録ドラム41の用紙受取位置(渡し胴80から用紙Pを受け取る位置)の近傍に配置される。渡し胴80から画像記録ドラム41に受け渡された用紙Pは、この押圧ローラ42によって表面を押圧されることにより、裏面が画像記録ドラム41の外周面に密着される。
ここで、この押圧ローラ42は、その外形形状が、いわゆるクラウン形状に形成される。すなわち、外径が中央から両端に向かって小さくなる形状に形成される。このような形状の押圧ローラ42で用紙Pの表面を押圧することにより、用紙Pを幅方向に伸ばしながら、用紙を押圧することができる。そして、バックテンション付与装置300によって用紙Pにバックテンションを付与しながら、この押圧ローラ42で用紙Pを押圧することにより、用紙Pの隅々までシワや浮きを発生させることなく、用紙Pを画像記録ドラム41の周面に巻き付けることができる。この点については、のちに詳述する。
用紙浮き検出センサ43は、押圧ローラ42を通過した用紙Pの浮きを検出する(画像記録ドラム41の外周面からの一定以上の浮きを検出する。)。この用紙浮き検出センサ43は、レーザ光を投光するレーザ投光器43Aと、そのレーザ光を受光するレーザ受光器43Bとで構成される。
レーザ投光器43Aは、画像記録ドラム41の一端から他端に向けて画像記録ドラム41の軸と平行なレーザ光を画像記録ドラム41の外周面から所定高さの位置(浮きの許容範囲の上限の高さの位置)に投光する。
レーザ受光器43Bは、画像記録ドラム41による用紙Pの走行経路を挟んでレーザ投光器43Aと対向して配置され、レーザ投光器43Aから投光されたレーザ光を受光する。
画像記録ドラム41によって搬送される用紙Pに許容値以上の浮きが生じていると、レーザ投光器43Aから投光されたレーザ光が用紙Pに遮光される。この結果、レーザ受光器43Bで受光されるレーザ光の受光量が低下する。用紙浮き検出センサ43は、このレーザ受光器43Bで受光されるレーザ光の受光量を検出して、用紙Pの浮きを検出する。すなわち、レーザ受光器43Bで受光されたレーザ光の受光量と閾値とを比較して、閾値以下の場合に浮き(許容値以上の浮き)が発生したと判定する。
許容値以上の浮きが検出されると、画像記録ドラム41の回転が停止され、用紙Pの搬送が停止される。
なお、用紙浮き検出センサ43は、レーザ投光器43Aから投光するレーザ光の高さ(画像記録ドラム41の外周面からの高さ)を調整することができるように構成される。これにより、浮きの許容範囲を任意に設定することができる。
4台のインクジェットヘッド44C、44M、44Y、44Kは、用紙浮き検出センサ43の後段に配され、用紙Pの搬送方向に沿って一定の間隔で配置される。このインクジェットヘッド44C、44M、44Y、44Kは、用紙幅に対応したラインヘッドで構成され、その下面(画像記録ドラム41の外周面と対向する面)にノズル面が形成される。ノズル面には、用紙Pの搬送方向と直交する方向に一定のピッチでノズルが配置される(ノズル列)。各インクジェットヘッド44C、44M、44Y、44Kは、このノズルから画像記録ドラム41に向けてインク滴を吐出する。
本実施の形態のインクジェット記録装置10で使用するインクは、水性紫外線硬化型インクであり、顔料、ポリマー粒子及び活性エネルギー線により重合する水溶性の重合性化合物を含有する。水性紫外線硬化型インクは、紫外線を照射することで硬化可能であり、耐察性に優れ膜強度が高いという性質を有する。
顔料は、その表面の少なくとも一部がポリマー分散剤で被覆された水分散性顔料が用いられる。
ポリマー分散剤は、酸価が25〜1000(KOHmg/g)のポリマー分散剤が用いられる。自己分散性の安定性が良好、かつ、処理液が接触したときの凝集性が良好になる。
ポリマー粒子は、酸価が20〜50(KOHmg/g)の自己分散性ポリマー粒子が用いられる。自己分散性の安定性が良好、かつ、処理液が接触したときの凝集性が良好になる。
重合性化合物としては、凝集剤と顔料、ポリマー粒子との反応を妨げない点でノニオン性又はカチオン性の重合性化合物が好ましく、水に対する溶解度が10質量%以上(更には15質量%以上)の重合性化合物を用いることが好ましい。
また、インクは、活性エネルギー線により重合性化合物の重合を開始する開始剤を含有する。開始剤は、活性エネルギー線により重合反応を開始し得る化合物を適宜選択して含有することができ、たとえば、放射線若しくは光又は電子線により活性種(ラジカル、酸、塩基など)を発生する開始剤(たとえば、光重合開始剤等)を用いることができる。なお、開始剤は処理液に含有させることもでき、インクと処理液の少なくとも一方に含有させればよい。
また、インクは水を50〜70質量%含有する。また、インクには添加剤を含有することができる。たとえば、水溶性有機溶媒や乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤を含有することができる。
バックテンション付与装置300は、画像記録ドラム41によって搬送される用紙Pが、押圧ローラ42によって押圧される直前の位置(画像記録ドラム41と押圧ローラ42との間に進入する直前の位置)で用紙Pの上面を吸引して、用紙Pにバックテンションを付与する。このバックテンション付与装置300は、用紙ガイド310によって用紙Pの上面を吸引して、用紙Pにバックテンションを付与する。用紙ガイド310は、用紙Pの上面が摺接されるガイド面を備え、そのガイド面に形成された吸引穴から用紙Pの上面を吸引する。
このバックテンション付与装置300によって、押圧ローラ42に押圧される直前の用紙Pにバックテンションを付与することにより、用紙Pに生じている変形(歪み)を伸ばしながら、用紙Pを押圧ローラ42と画像記録ドラム41との間に進入させることができる。そして、このバックテンション付与装置300によって用紙Pにバックテンションを付与しながら、クラウン形状に形成された押圧ローラ42で用紙Pを押圧することにより、用紙Pをピンと張った状態で押圧することができるようになり、用紙Pの隅々までシワや浮きを発生させることなく、用紙Pを画像記録ドラム41の周面に巻き付けることができる。なお、この点については、バックテンション付与装置300の具体的な構成とともに、のちに詳細に説明する。
以上の構成の画像記録部40において、用紙Pは、画像記録ドラム41によって所定の搬送経路を搬送される。渡し胴80から画像記録ドラム41に受け渡された用紙Pは、バックテンション付与装置300によってバックテンションが付与されながら押圧ローラ42でニップされて、画像記録ドラム41の外周面に密着される。次いで、用紙浮き検出センサ43によって、浮きの有無が検出され、その後、各インクジェットヘッド44C、44M、44Y、44KからC、M、Y、Kの各色のインク滴が印刷面に打滴されて、印刷面にカラー画像が描画される。
なお、用紙Pの浮きが検出された場合は、搬送が停止される。これにより、浮いた用紙Pが、インクジェットヘッド44C、44M、44Y、44Kのノズル面に接触するのを防止できる。
上記のように、本例のインクジェット記録装置10では、各色ともに水性インクが使用される。このような水性インクを用いた場合であっても、上記のように、用紙Pには処理液が塗布されているので、一般の印刷用紙を用いた場合であっても、高品位な印刷を行うことができる。
画像が描画された用紙Pは、渡し胴90に受け渡される。そして、渡し胴90によって所定の搬送経路を搬送されて、インク乾燥部50の搬送ドラム51に受け渡される。
ここで、上記のように、渡し胴90には、その内部にドライヤ94が設置されており、ガイド板92に向けて熱風が吹き出されている。インクの乾燥処理は、後段のインク乾燥部50で行われるが、用紙Pは、この渡し胴90による搬送時にも乾燥処理が施される。
なお、図示されていないが、この画像記録部40には、インクジェットヘッド44C、44M、44Y、44Kのメンテナンスを行うメンテナンス部が備えられており、インクジェットヘッド44C、44M、44Y、44Kは、必要に応じてメンテナンス部に移動して、所要のメンテナンスができるように構成されている。
〈インク乾燥部〉
インク乾燥部50は、画像記録後の用紙Pに残存する液体成分を乾燥させる。このインク乾燥部50は、主として、用紙Pを搬送する搬送ドラム(以下、「インク乾燥ドラム」という。)51と、インク乾燥ドラム51によって搬送される用紙Pに対して乾燥処理を施すインク乾燥装置52とで構成される。
インク乾燥ドラム51は、渡し胴90から用紙Pを受け取り(グリッパGで用紙Pの先端を把持して受け取る。)、回転して用紙Pを所定の搬送経路に沿って搬送する。
インク乾燥装置52は、たとえば、ドライヤで構成され(本例では用紙Pの搬送経路に沿って配設された3台のドライヤで構成)、インク乾燥ドラム51によって搬送される用紙Pに向けて熱風(たとえば、80℃)を吹き付ける。
以上の構成のインク乾燥部50において、用紙Pは、インク乾燥ドラム51によって所定の搬送経路を搬送される。そして、その搬送過程で印刷面にインク乾燥装置52から熱風が吹き付けられて、印刷面に付与されたインクが乾燥される(溶媒成分が蒸発除去される。)。
インク乾燥装置52を通過した用紙Pは、その後、所定位置でインク乾燥ドラム51から渡し胴100に受け渡される。そして、渡し胴100によって所定の搬送経路を搬送されて、定着部60の搬送ドラム61に受け渡される。
なお、上記のように、渡し胴100には、その内部にドライヤ104が設置されており、ガイド板102に向けて熱風が吹き出されている。したがって、用紙Pは、この渡し胴100での搬送時にも乾燥処理が施される。
〈定着部〉
定着部60は、用紙Pを加熱加圧して、印刷面に画像記録された画像を定着させる。この定着部60は、主として、用紙Pを搬送する搬送ドラム(以下、「定着ドラム」という。)61と、用紙Pの印刷面に紫外線を当てる紫外線照射光源62と、印刷後の用紙Pの温度、湿度等を検出するとともに、印刷された画像を撮像するインラインセンサ64とで構成される。
定着ドラム61は、渡し胴100から用紙Pを受け取り(グリッパGで用紙Pの先端を把持して受け取る。)、回転して用紙Pを所定の搬送経路に沿って搬送する。
紫外線照射光源62は、定着ドラム61によって搬送される用紙Pの印刷面に紫外線を照射して、処理液とインクとの凝集体を固化させる。
インラインセンサ64は、温度計、湿度計、CCDラインセンサ等を備え、定着ドラム61によって搬送される用紙Pの温度、湿度等を検出するとともに、用紙Pに印刷された画像を読み取る。このインラインセンサ64の検出結果に基づいて、装置の異常やヘッドの吐出不良等がチェックされる。
以上の構成の定着部60において、用紙Pは、定着ドラム61によって所定の搬送経路を搬送される。そして、その搬送過程で紫外線照射光源62から印刷面に紫外線が照射され、処理液とインクとの凝集体が固化される。
定着処理が施された用紙Pは、この後、所定位置で定着ドラム61から回収部70へと受け渡される。
〈回収部〉
回収部70は、一連の印刷処理が行われた用紙Pをスタッカ71に積み重ねて回収する。この回収部70は、主として、用紙Pを回収するスタッカ71と、定着部60で定着処理された用紙Pを定着ドラム61から受け取り、所定の搬送経路を搬送して、スタッカ71に排紙する排紙コンベア72とで構成される。
定着部60で定着処理された用紙Pは、定着ドラム61から排紙コンベア72に受け渡され、その排紙コンベア72によってスタッカ71まで搬送されて、スタッカ71内に回収される。
《制御系》
図2は、本実施の形態のインクジェット記録装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。
同図に示すように、インクジェット記録装置10は、システムコントローラ200、通信部201、画像メモリ202、搬送制御部203、給紙制御部204、処理液塗布制御部205、画像記録制御部206、インク乾燥制御部207、定着制御部208、回収制御部209、操作部210、表示部211等を備えている。
システムコントローラ200は、インクジェット記録装置10の各部を統括制御する制御手段として機能するとともに、各種演算処理を行う演算手段として機能する。このシステムコントローラ200は、CPU、ROM、RAM等を備えており、所定の制御プログラムに従って動作する。ROMには、このシステムコントローラ200が、実行する制御プログラムや制御に必要な各種データが格納されている。
通信部201は、所要の通信インターフェースを備え、その通信インターフェースと接続されたホストコンピュータとの間でデータの送受信を行う。
画像メモリ202は、画像データを含む各種データの一時記憶手段として機能し、システムコントローラ200を通じてデータの読み書きが行われる。通信部201を介してホストコンピュータから取り込まれた画像データは、この画像メモリ202に格納される。
搬送制御部203は、処理液塗布部30、画像記録部40、インク乾燥部50、定着部60の各部における用紙Pの搬送手段である搬送ドラム31、41、51、61と、渡し胴80、90、100の駆動を制御する。
すなわち、各搬送ドラム31、41、51、61を駆動するモータの駆動を制御するとともに、各搬送ドラム31、41、51、61に備えられた、グリッパGの開閉を制御する。
同様に各渡し胴80、90、100を駆動するモータの駆動を制御するとともに、各渡し胴80、90、100に備えられた、グリッパGの開閉を制御する。
また、各搬送ドラム31、41、51、61には、用紙Pを周面に吸着保持する機構が備えられているので、その吸着保持機構の駆動を制御する(本実施の形態では、用紙Pを真空吸着するので、負圧発生手段としての真空ポンプの駆動を制御する。)。
また、各渡し胴80、90、100には、ドライヤ84、94、104が備えられているので、その駆動(加熱量と送風量)を制御する。
この搬送ドラム31、41、51、61と、渡し胴80、90、100の駆動は、システムコントローラ200からの指令に応じて制御される。
給紙制御部204は、システムコントローラ200からの指令に応じて給紙部20を構成する各部(給紙装置21、渡し胴23等)の駆動を制御する。
処理液塗布制御部205は、システムコントローラ200からの指令に応じて処理液塗布部30を構成する各部(塗布装置32等)の駆動を制御する。
画像記録制御部206は、システムコントローラ200からの指令に応じて画像記録部40を構成する各部(押圧ローラ42、用紙浮き検出センサ43、インクジェットヘッド44C、44M、44Y、44K、バックテンション付与装置300等)の駆動を制御する。
インク乾燥制御部207は、システムコントローラ200からの指令に応じてインク乾燥部50を構成する各部(インク乾燥装置52等)の駆動を制御する。
定着制御部208は、システムコントローラ200からの指令に応じて定着部60を構成する各部(紫外線照射光源62、インラインセンサ64等)の駆動を制御する。
回収制御部209は、システムコントローラ200からの指令に応じて回収部70を構成する各部(排紙コンベア72等)の駆動を制御する。
操作部210は、所要の操作手段(たとえば、操作ボタンやキーボード、タッチパネル等)を備えており、その操作手段から入力された操作情報をシステムコントローラ200に出力する。システムコントローラ200は、この操作部210から入力された操作情報に応じて各種処理を実行する。
表示部211は、所要の表示装置(たとえば、LCDパネル等)を備えており、システムコントローラ200からの指令に応じて所要の情報を表示装置に表示させる。
上記のように、用紙に記録する画像データは、ホストコンピュータから通信部201を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、画像メモリ202に格納される。システムコントローラ200は、この画像メモリ202に格納された画像データに所要の信号処理を施してドットデータを生成し、生成したドットデータに従って画像記録部40の各インクジェットヘッドの駆動を制御することにより、その画像データが表す画像を用紙に記録する。
ドットデータは、一般に画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って生成される。色変換処理は、sRGBなどで表現された画像データ(たとえば、RGB8ビットの画像データ)をインクジェット記録装置10で使用するインクの各色のインク量データに変換する処理である(本例では、C、M、Y、Kの各色のインク量データに変換する。)。ハーフトーン処理は、色変換処理により生成された各色のインク量データに対して誤差拡散等の処理で各色のドットデータに変換する処理である。
システムコントローラ200は、画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って各色のドットデータを生成する。そして、生成した各色のドットデータに従って、対応するインクジェットヘッドの駆動を制御することにより、画像データが表す画像を用紙に記録する。
《印刷動作》
次に、上記のインクジェット記録装置10による印刷動作について概説する。
システムコントローラ200から給紙装置21に給紙指令が出力されると、給紙装置21から給紙トレイ22に用紙Pが給紙される。給紙トレイ22に給紙された用紙Pは、渡し胴23を介して処理液塗布部30の処理液塗布ドラム31に受け渡される。
処理液塗布ドラム31に受け渡された用紙Pは、処理液塗布ドラム31によって所定の搬送経路を搬送され、その搬送過程で塗布装置32によって印刷面に処理液が塗布される。
処理液が塗布された用紙Pは、処理液塗布ドラム31から渡し胴80に受け渡される。そして、その渡し胴80によって所定の搬送経路を搬送されて、画像記録部40の画像記録ドラム41に受け渡される。用紙Pは、その渡し胴80による搬送過程で渡し胴80の内部に設置されたドライヤ84から印刷面に熱気が吹き付けられ、印刷面に塗布された処理液が乾燥される。
渡し胴80から画像記録ドラム41に受け渡された用紙Pは、まず、押圧ローラ42にニップされて、裏面が画像記録ドラム41の外周面に密着される。
押圧ローラ42を通過した用紙Pは、その後、用紙浮き検出センサ43によって浮きの有無が検出される。ここで、用紙Pの浮きが検出されると、搬送が停止される。一方、浮きが検出されない場合は、そのままインクジェットヘッド44C、44M、44Y、44Kに向けて搬送される。そして、各インクジェットヘッド44C、44M、44Y、44Kの下を通過する際、各インクジェットヘッド44C、44M、44Y、44KからC、M、Y、Kの各色のインク滴が吐出されて、印刷面にカラー画像が描画される。
画像が描画された用紙Pは、画像記録ドラム41から渡し胴90に受け渡される。そして、その渡し胴90によって所定の搬送経路を搬送されて、インク乾燥部50のインク乾燥ドラム51に受け渡される。用紙Pは、その渡し胴90による搬送過程で渡し胴90の内部に設置されたドライヤ94から印刷面に熱気が吹き付けられて、印刷面に付与されたインクが乾燥される。
インク乾燥ドラム51に受け渡された用紙Pは、インク乾燥ドラム51によって所定の搬送経路を搬送される。そして、その搬送過程でインク乾燥装置52から熱風が印刷面に吹き付けられて、印刷面に残存する液体成分が乾燥される。
乾燥処理された用紙Pは、インク乾燥ドラム51から渡し胴100に受け渡される。そして、その渡し胴100によって所定の搬送経路を搬送されて、定着部60の定着ドラム61に受け渡される。用紙Pは、その渡し胴100による搬送過程で渡し胴100の内部に設置されたドライヤ104から印刷面に熱気が吹き付けられ、印刷面に付与されたインクが、更に乾燥される。
定着ドラム61に受け渡された用紙Pは、定着ドラム61によって所定の搬送経路を搬送される。そして、その搬送過程で印刷面に紫外線が照射され、描画された画像が用紙Pに定着される。用紙Pは、この後、定着ドラム61から回収部70の排紙コンベア72に受け渡され、排紙コンベア72によってスタッカ71まで搬送されて、スタッカ71内に排紙される。
以上のように、本例のインクジェット記録装置10では、用紙Pをドラム搬送し、その搬送過程で用紙Pに対し、処理液の塗布、乾燥、インク滴の打滴、乾燥、定着の各処理を施して、用紙Pに所定の画像を記録する。
《画像記録部における用紙搬送機構の詳細》
図3は、画像記録部の用紙搬送機構の概略構成を示す側面図である。また、図4は、画像記録部の用紙搬送機構の概略構成を示す斜視図である。
上記のように、画像記録部40は、用紙Pを搬送する画像記録ドラム41と、その画像記録ドラム41に搬送される用紙Pをニップして、画像記録ドラム41の周面に密着させる押圧ローラ42と、画像記録ドラム41によって搬送される用紙Pの浮きを検出する用紙浮き検出センサ43と、画像記録ドラム41によって搬送される用紙Pにインク滴を吐出するインクジェットヘッド44C、44M、44Y、44Kと、押圧ローラ42の直前の位置で用紙Pの表面(印刷面)を吸引して、用紙Pにバックテンションを付与するバックテンション付与装置300とを備えて構成される。
画像記録ドラム41は、渡し胴80によって搬送される用紙Pを所定の受取位置Aで受け取り、軸回りに回転して、用紙Pを円弧状の搬送経路に沿って搬送する。この際、用紙Pを外周面上に吸着保持して搬送する。すなわち、画像記録ドラム41の周面には、多数の吸引穴が一定のパターンで形成されており、この吸引穴を介して内部から空気を吸引することにより、外周面上に巻き掛けられた用紙Pを吸着保持する。
なお、本実施の形態の画像記録ドラム41では、吸着の作動範囲が限定されており、所定の吸着開始位置Bから吸着終了位置Cの範囲でのみ吸着が作動する。ここで、吸着開始位置Bは、受取位置Aから一定距離離れた位置(一定角度回転した位置)に設定され、吸着終了位置Cは渡し胴90に用紙Pを受け渡す位置に設定される。したがって、用紙Pは、受取位置Aから一定距離搬送された後、吸着が開始される。
押圧ローラ42は、図4に示すように、用紙Pの搬送方向に対してインクジェットヘッドの上流位置に配置される。本例では吸着開始位置Bに配置される。
この押圧ローラ42は、画像記録ドラム41の幅とほぼ同じ幅を有するゴムローラ(ここでは、金属製の芯材(軸部)の周囲をゴムで被覆したローラ)で構成され、図5に示すように、外径が中央から両端に向かって小さくなるような形状(特に、外形が円弧を成すように小さくなる形状)で形成される。いわゆるクラウン形状に形成される。
押圧ローラ42は、画像記録ドラム41と平行に配置(用紙Pの搬送方向と直交して配置)され、その軸部の両端を図示しない軸受に軸支されて回転自在に支持される。軸受は、図示しない付勢機構(たとえば、バネ)によって、画像記録ドラム41に向けて所定の付勢力で付勢される。これにより、押圧ローラ42が画像記録ドラム41の外周面に所定の押圧力で押圧当接される。また、これにより、画像記録ドラム41が回転すると、その画像記録ドラム41の回転に連動して回転する(いわゆる連れ回り)。
受取位置で画像記録ドラム41に受け渡された用紙Pは、吸着開始位置Bまで搬送されると、押圧ローラ42にニップされて、画像記録ドラム41の外周面に密着される。また、これと同時に吸引が開始される。
用紙浮き検出センサ43は、押圧ローラ42を通過した用紙Pの浮きを検出する。したがって、用紙浮き検出センサ43は、押圧ローラ42の後段(画像記録ドラム41による用紙Pの搬送方向の下流側)に設置される。
図4に示すように、この用紙浮き検出センサ43は、レーザ光を投光するレーザ投光器43Aと、そのレーザ光を受光するレーザ受光器43Bとで構成される。
レーザ投光器43Aは、画像記録ドラム41の幅方向の一端から他端に向けて画像記録ドラム41の軸と平行なレーザ光を画像記録ドラム41の外周面から所定高さの位置(浮きの許容範囲の上限の高さの位置)に投光する。
レーザ受光器43Bは、画像記録ドラム41による用紙Pの走行経路を挟んでレーザ投光器43Aと対向して配置され、レーザ投光器43Aから投光されたレーザ光を受光する。レーザ受光器43Bは、受光したレーザ光の受光量を検出し、その検出結果をシステムコントローラ200に出力する。
システムコントローラ200は、得られた受光量の情報に基づいて、用紙Pの浮きを検出する。すなわち、用紙Pに許容値以上の浮きが生じると、レーザ投光器43Aから投光されるレーザ光が用紙Pに遮られる。この結果、レーザ受光器43Bで受光されるレーザ光の受光量が低下する。システムコントローラ200は、このレーザ受光器43Bで受光されるレーザ光の受光量と閾値とを比較し、受光量が閾値以下になった場合に浮き(許容値以上の浮き)が発生したと判定して、これを検出する。これにより、用紙Pの浮きを検出することができる。
システムコントローラ200は、許容値以上の浮きを検出すると、画像記録ドラム41の回転を停止し、用紙Pの搬送を停止する。これにより、浮いた用紙Pが、インクジェットヘッドのノズル面に接触するのを防止することができる。
なお、用紙浮き検出センサ43は、レーザ投光器43Aとレーザ受光器43Bで投光・受光するレーザ光の高さ(画像記録ドラム41の外周面からの高さ)を調整可能に構成される。これにより、用紙Pの厚さ等に応じて、浮きの許容範囲を任意に設定することができる。
投光・受光するレーザ光の高さの調整は、たとえば、レーザ投光器43Aとレーザ受光器43Bの設置高さを変えることにより行われる。この他、レーザ投光器43Aとレーザ受光器43Bの前に角度調整可能な透明平行平板(たとえば、硝子平行平板)を設置し、屈折を利用して、投光・受光するレーザ光の高さの調整を調整することもできる(透明平行平板をレーザ光に対して直交して配置すれば、レーザ光は直進するが、傾けて設置することにより、入射時と出射時に屈折して、高さの調整を行うことができる。)。
また、レーザ投光器43Aとレーザ受光器43Bの前段にアパーチャを設置することにより、不要な光を排除でき、より高精度な検出を行うことができる。
バックテンション付与装置300は、図3に示すように、画像記録ドラム41によって搬送される用紙Pが、押圧ローラ42によって押圧される直前の位置(画像記録ドラム41と押圧ローラ42との間に進入する直前の位置)で用紙Pの上面を吸引して、用紙Pにバックテンションを付与する。
バックテンション付与装置300は、主として、用紙ガイド310と、真空ポンプ312とで構成される。
用紙ガイド310は、用紙Pの搬送方向と平行な断面が台形状をした中空のボックス形状(末広がりのボックス状)に形成され、用紙幅に対応して形成される。したがって、その幅(用紙Pの搬送方向と直交する方向の幅)は、画像記録ドラム41の幅とほぼ同じに形成される。
用紙ガイド310の画像記録ドラム側の面(下面)は、用紙Pの表面(印刷面)を吸引するとともに、用紙Pの走行をガイド面316とされ、平坦に形成される。
用紙ガイド310は、押圧ローラ42に近接して設置されるとともに、ガイド面316が、押圧ローラ42の設置点(押圧ローラ42と画像記録ドラム41の外周面とが接する点(本例では吸着開始位置B))における画像記録ドラム41の接線Tに沿うように配置される(ガイド面316の延長線上に押圧ローラ42の設置点が位置するように配置される。)。
図6は、用紙ガイドの下面図(ガイド面の平面図)である。同図に示すように、ガイド面316には、吸引穴318が形成される。吸引穴318は、スリット状に形成され、用紙Pの搬送方向と直交する方向に形成される(押圧ローラ42の軸と平行に形成される。)。吸引穴318は、中空状に形成された用紙ガイドの内部(中空部)と連通される。
吸引穴318の本数は、特に限定されない。ガイド面316の前後方向(用紙Pの搬送方向)の長さ等に応じて適宜設定される。本例では、用紙Pの搬送方向の前後に2本の吸引穴318が形成されている。
用紙ガイド310の上面(ガイド面316と反対側の面)には、中央部に吸引口320が形成される。吸引口320は、中空状に形成された用紙ガイド310の内部(中空部)と連通される。この吸引口320から空気を吸引することにより、ガイド面316に形成された吸引穴318から空気が吸引される。
また、用紙ガイド310の上面には、真空防止穴322が形成される。真空防止穴322は、用紙ガイド310の内部の圧を逃がして、過剰な吸引力が作用するのを防止する。真空防止穴322は、このように過剰な吸引力が作用するのを防止するためのものであるため、その設置位置、大きさ、設置数は、当該目的が適う範囲で適宜調整される。
真空ポンプ312は、吸引配管314を介して用紙ガイド310の吸引口320と接続される。この真空ポンプ312を駆動することにより、用紙ガイド310の内部(中空部)が吸引され、ガイド面316に形成された吸引穴318からエアが吸引される。真空ポンプ312の駆動は、画像記録制御部206を介してシステムコントローラ200に制御される。
バックテンション付与装置300は、以上のように構成される。
《画像記録部における用紙搬送機構の作用》
上記のように、用紙Pは、渡し胴80から画像記録ドラム41に受け渡される。画像記録ドラム41は、所定の受取位置Aで渡し胴80から用紙Pを受け取る。
用紙Pの受け取りは、グリッパGで用紙Pの先端を把持することにより行われる。この用紙Pの受け取りは、回転しながら行われる。
先端がグリッパGで把持された用紙Pは、画像記録ドラム41の回転によって搬送される。そして、押圧ローラ42の設置位置で押圧ローラ42によって表面(印刷面)が押圧され、画像記録ドラム41の外周面に密着される。
ここで、本例のインクジェット記録装置10には、押圧ローラ42の手前(用紙Pの搬送方向の上流側)に用紙ガイド310が設置されている。
用紙ガイド310のガイド面316は、画像記録ドラム41の外周から離間して設置されているが、ガイド面316に形成された吸引穴318からは、インクジェット記録装置10の稼動と同時に空気が吸引される(真空ポンプ312が駆動される。)。この結果、画像記録ドラム41によって搬送される用紙Pは、押圧ローラ42に押圧される直前の位置で表面(印刷面)が吸引穴318に吸引され、表面がガイド面316に吸着される。これにより、押圧ローラ42と画像記録ドラム41との間に進入してゆく用紙Pにバックテンションが付与される。そして、このバックテンションが付与されることにより、用紙Pが搬送方向に伸ばされて、用紙Pに生じている変形(歪み)が取り除かれる。
すなわち、図7(a)に示すように、バックテンションが付与されていないと、用紙Pは、変形が残ったまま押圧ローラ42と画像記録ドラム41との間に進入する。一方、図7(b)に示すように、バックテンションを付与することにより、用紙Pは、搬送方向に伸ばされて、変形(歪み)が取り除かれながら、押圧ローラ42と画像記録ドラム41との間に用紙Pが進入する。
用紙ガイド310によってバックテンションが付与された状態で押圧ローラ42と画像記録ドラム41との間に進入した用紙Pは、押圧ローラ42によって表面が押圧され、画像記録ドラム41の外周面に密着する。
ここで、本実施の形態の押圧ローラ42は、外径が中央から両端に向かって小さくなるような形状(いわゆるクラウン形状)で形成されているため、用紙Pを幅方向(搬送方向と直交する方向)に伸ばしながら、用紙を押圧することができる。図8は、そのメカニズムを説明する図である。いわゆるクラウン形状で形成された押圧ローラ42で用紙Pを押圧すると、用紙Pは、同図(a)に示すように、中央部から先に押圧ローラ42に接触するようになる。このため、同図(b)に示すように、用紙Pは、中央部から外側に向かって順に押圧される(搬送方向に直交する断面で見た場合、中央部から外側に向かって順に押圧される。すなわち、図8(b)において、符号1→2→3の順番で押圧される。)。この結果、用紙Pは、幅方向の両側に向かって伸ばされながら押圧される(幅方向の両側に向かってしごかれる。)。これにより、用紙Pの変形(歪み)を幅方向に伸ばしながら、画像記録ドラム41の表面に押し付けることができる。
上記のように、用紙Pは、バックテンションが付与されながら、押圧ローラ42と画像記録ドラム41との間に進入する。そして、このバックテンションの作用によって、用紙Pは、搬送方向に伸ばされながら、押圧ローラ42と画像記録ドラム41との間に進入する。そして、更に押圧ローラ42によって幅方向に伸ばされながら、画像記録ドラム41の周面に押し付ける。このように、バックテンションによる作用と押圧ローラ42による作用の相乗効果で用紙Pの隅々までシワや浮きを発生させることになく、用紙Pを画像記録ドラム41の周面に巻き付けることができる。特に、用紙後端の幅方向の両端部においてもシワや浮きを発生させることになく、用紙Pを画像記録ドラム41の周面に密着させることができる。
画像記録ドラム41は、押圧ローラ42の設置点から吸引が作動するので、用紙Pは、押圧ローラ42による押圧と同時に裏面が、画像記録ドラム41の外周面に形成された吸引穴から吸引され、画像記録ドラム41の外周面上に吸着保持される。
用紙Pは、その後、用紙浮き検出センサ43を通過することによって、浮きの有無が検出された後、インクジェットヘッド44C、44M、44Y、44Kの設置部を通過して、その表面に画像が記録される。
以上説明したように、本実施の形態の用紙搬送機構によれば、用紙Pにバックテンションを付与するとともに、いわゆるクラウン形状で形成された押圧ローラ42で用紙Pを押圧して、用紙Pを画像記録ドラム41の周面に密着させる。これにより、バックテンションによる作用と、いわゆるクラウン形状で形成された押圧ローラ42による作用との相乗効果で用紙Pの隅々までシワや浮きを発生させることになく、用紙Pを画像記録ドラム41の周面に巻き付けることができる。そして、これにより、用紙Pを安定して搬送することができ、高品質な画像を安定して記録することができる。
また、本実施の形態では、ガイド面316が押圧ローラ42の設置点における画像記録ドラム41の接線Tに沿うように配置されるので、用紙Pをスムーズに押圧ローラ42と画像記録ドラム41との間に進入させることができる。
更に、本実施の形態の用紙搬送機構では、用紙Pの表面を吸引する構成であるため、たとえば、印刷処理対象の用紙Pの裏面に既に画像が記録されている場合であっても、その画像を傷つけることなく搬送することができる。
なお、押圧ローラ42は、用紙Pの幅方向の全域に接触させて、用紙Pを押圧するように設定することが好ましい。このため、押圧ローラ42は、用紙Pの幅方向の全域に接触させることができる条件(押圧力(ニップ力))で用紙Pに押圧される。また、用紙Pの幅方向の全域に接触させることができる条件(ゴムの弾性変形量、外径差等)で形成される。これにより、より確実にシワや浮きの発生を防止することができる。
なお、押圧ローラ42は、その外径差を大きくすることにより、用紙Pを幅方向に引っ張る力(幅方向のテンション)を大きくすることができる。
この場合、中央部の外径をa、両端部の外径をbとしたとき(図5参照)、ゴムの弾性変形量を考慮して、0≦a−b≦4tの条件(tは用紙の厚さ)を満たすように形成することが望ましい。
また、押圧ローラ42の周面は、段差がなく滑らかであり、所定の曲率を持つように形成(円弧状に形成)されることが好ましい。これにより、より確実にシワや浮きの発生を防止することができる。
上記のように、押圧ローラ42は、その外径差を変えることにより、用紙Pを幅方向に引っ張る力を調整することができる。したがって、用紙Pの種類等に応じて、その形状や押圧力を調整することが好ましい。この場合、あらかじめ形状(外径差)の異なる押圧ローラを複数揃えておき、適宜交換できるようにすることが好ましい。また、押圧力の調整機構(たとえば、付勢力を調整可能な付勢機構など)を設けて、押圧力を調整できるようにすることが好ましい。
《押圧ローラの他の形態》
図9は、押圧ローラの他の形態を示す平面図である。
同図に示すように、本実施の形態の押圧ローラ42は、幅方向の全域が同じ径で形成され(円柱状)、周面に中央から外側に向かって螺旋状の溝42Aが形成される。
ここで、溝42Aは、押圧ローラ42の幅方向の中心に対して左右対称に形成される(幅方向の中心を通る直線Lに対して左右対称に形成される(直線Lは押圧ローラ42の回転軸に対して直交する直線)。)。
また、溝42Aは、押圧ローラ42の回転方向に対して、内側に向かうように形成される。すなわち、押圧ローラ42の回転方向の上流側から下流側に向かって、押圧ローラ42の幅方向の中央に向かうように形成される(上流側の溝の位置よりも下流側の溝の位置の方が、押圧ローラ42の幅方向の中央に近い位置に位置するように形成される。)。
このように形成される押圧ローラ42は、画像記録ドラム上の用紙Pに押し付けられると、用紙Pの走行に伴って回転(連れ回り)する。図10は、用紙Pに対する溝42Aの相対的な移動軌跡を示す図(用紙Pの上を通過するときの溝42Aの移動軌跡を示す図)である。同図に示すように、溝42Aは、用紙Pに対して、幅方向の中央部から外側後方に向かって移動する。そして、この溝42Aが、用紙Pに対して、幅方向の中央部から外側後方に向かって移動することにより、用紙Pを中央部から外側後方に向かって、しごく作用を生じさせることができ(溝42Aのエッジ部分で用紙Pが、しごかれる)、用紙Pに生じている変形(歪み)を幅方向に逃がすことができる。すなわち、上述したクラウン形状の押圧ローラと同様の効果を奏することができる。
なお、押圧ローラ42は、その周面に形成する螺旋状の溝42Aの傾斜角度α(螺旋状の溝42Aが押圧ローラ42の回転軸と平行な直線と成す角度)を調整することにより、用紙Pを幅方向に、しごく力を調整することができる。すなわち、この傾斜角度αを調整することによって、除去するシワの大きさ等を調整することができる。
したがって、あらかじめ傾斜角度αが異なる押圧ローラ42を複数揃えておき、適宜交換できるようにすることが好ましい。
なお、溝42Aの深さt、幅wは特に限定されないが、所定の押圧力で用紙Pの全面をニップできるように形成することが好ましく、深さは2mm以下、幅は10mm以下とすることが好ましい。
《用紙ガイドの他の形態》
〈ガイド面の他の形態〉
上記実施の形態では、用紙ガイド310のガイド面316の形状を平坦としているが、ガイド面316の形状は、これに限定されるものではない。以下、用紙ガイド310のガイド面316の他の態様について説明する。
図11は、用紙ガイドのガイド面の他の態様を示す図である。
同図(a)は、ガイド面316の前後方向(用紙Pの搬送方向と平行な方向)の断面の形状を画像記録ドラム41に向けて凸となる円弧状としたものである。
また、同図(b)は、ガイド面316の前後方向(用紙Pの搬送方向と平行な方向)の断面の形状を画像記録ドラム41に対して凹となる円弧状としたものである。
このように、用紙Pの搬送方向と平行な方向の断面の形状を円弧状にすることにより、用紙Pの接触面積を増やすことができる。これにより、吸着保持力を増すことができるとともに、安定した用紙Pのガイドを行うことができる。
なお、同図に示す例では、吸引穴318をガイド面316の前後方向の中央にのみ形成しているが、前後方向に沿って複数箇所に形成することもできる。これにより、より接触面積を増やすことができる。
また、円弧の曲率については、用紙ガイド310の設置位置等を考慮して設定し、用紙Pを押圧ローラ42と画像記録ドラム41との間にガイドしやすいように設定することが好ましい。
図12は、用紙ガイドのガイド面の更に他の態様を示す図である。
同図に示すように、このガイド面316は、前後方向(用紙Pの搬送方向と平行な方向)の断面の形状を波形とし、その谷部に吸引穴318を形成したものである。
このように形成することにより、用紙Pが谷部に向かって引っ張られるように撓むため、吸着保持力をより高めることができる。
この場合、谷部に形成する吸引穴318は、スリット状でもよいし、丸穴又は長穴として、谷部に沿って一定ピッチで形成するようにしてもよい。
図13は、用紙ガイドのガイド面の更に他の態様を示す図である。
同図(a)は、ガイド面316の幅方向(用紙Pの搬送方向と直交する方向)の断面の形状を画像記録ドラム41に向けて凸となる円弧状としたものである。
また、同図(b)は、ガイド面316の幅方向(用紙Pの搬送方向と直交する方向)の断面の形状を画像記録ドラム41に対して凹となる円弧状としたものである。
このように、用紙Pの搬送方向と直交する方向の断面の形状を円弧状にすることにより、平坦な形状の場合と比べて、用紙Pが反る方向に倣うため、用紙Pの弛みを防止することができる。これにより、押圧ローラ42による押圧時に発生するシワの発生をより効果的に防止することができる。また、図13(a)のように、画像記録ドラム41に向けて凸となる円弧状とすることにより、用紙Pの中央から両端方向に順に画像記録ドラム41に密着させることができ、より効果的にシワの発生を防止することができる。
なお、用紙Pの搬送方向と直交する方向の断面の形状を円弧状にしつつ、用紙Pの搬送方向と平行な方向の断面の形状を円弧状又は波形とすることもできる。これにより、双方の効果を得ることができる。
ガイド面316の形状は、使用する用紙Pの種類、紙厚等に応じて、適宜最適なものを選択することが好ましい。
〈吸引穴の他の形態〉
上記実施の形態では、ガイド面316に形成する吸引穴318の形状をスリット状とし、用紙Pの搬送方向と直交するように形成している。このような形状の吸引穴318は、用紙Pを幅方向に連続的に吸着することができ、高い保持力を得ることができる。
吸引穴318の形状は、種々の態様を採用することができ、使用する用紙Pの種類、紙厚等に応じて、適宜最適なものを選択することが好ましい。以下、このガイド面316に形成される吸引穴318の他の態様について説明する。
図14は、ガイド面に形成する吸引穴の他の態様を示す図である。
同図(a)は、ガイド面316の幅方向(用紙Pの搬送方向と直交する方向)に沿って一定の間隔で吸引穴318を複数形成したものである。これにより、用紙Pの変形を抑えて、用紙Pをスムーズにガイドすることができる。
なお、この場合、各吸引穴318の形状は、特に限定されない。同図に示す例では、各吸引穴318の形状を用紙の搬送方向と平行な方向に延びる長穴形状としている。これにより、用紙の変形を抑えつつ、保持力を高めることができる。なお、長穴形状には、同図に示すように、両端が円弧状に形成された形状の他、楕円形状、長方形状等(いわゆる、縦幅と横幅が異なる穴形状)が含まれる。
図14(b)は、ガイド面316の幅方向に沿って一定ピッチで複数吸引穴318を形成するとともに、各吸引穴318の形状を長穴形状とし、かつ、各吸引穴318を用紙Pの搬送方向の上流側の端部が下流側の端部よりもガイド面316の中心側に位置するように、用紙Pの搬送方向に対して傾斜して形成したものである。この場合、同図に示すように、ガイド面316の幅方向の中心に対して、各吸引穴318が左右対称に形成され、用紙Pの搬送方向に沿って末広がりに形成される。
このように吸引穴318を形成することにより、用紙Pがガイド面316を摺動する際、用紙Pの中央から幅方向の両端に向けてシワを延ばすことができる。これにより、より効果的にシワの発生を防止できる。
図14(c)は、図14(b)と同様に、ガイド面316の幅方向に沿って一定ピッチで複数吸引穴318を形成するとともに、各吸引穴318の形状を長穴形状とし、かつ、各吸引穴318を用紙Pの搬送方向の上流側の端部が下流側の端部よりもガイド面316の中心側に位置するように、用紙Pの搬送方向に対して傾斜して形成したものである。ただし、本例では、ガイド面316の中心から離れた位置に形成される吸引穴318ほど傾斜角度が大きくなるようにしている。
吸引穴318をこのように形成することにより、用紙Pの中心から幅方向の両端に向かって徐々にシワを延ばすことができ、シワを伸ばす効果をより高めることができる。
図14(d)は、スリット状の吸引穴318をガイド面316の幅方向の中心に対して、左右対称に配置し、かつ、各吸引穴318を用紙Pの搬送方向の上流側の端部が下流側の端部よりもガイド面316の中心側に位置するように、用紙Pの搬送方向に対して傾斜して形成したものである。この場合、同図に示すように、吸引穴318は、用紙Pの搬送方向に沿って末広がりに形成される。
吸引穴318をこのように形成した場合も用紙Pの中心から幅方向の両端に向かって徐々にシワを延ばすことができ、効果的にシワの発生を防止することができる。
図14(e)は、ガイド面316の幅方向に沿って一定ピッチで複数吸引穴318を形成するとともに、各吸引穴318の形状を長穴形状とし、かつ、各吸引穴318を用紙Pの搬送方向に対して傾斜して形成したものである。
このように吸引穴318を形成することにより、用紙Pがガイド面316を摺動する際、用紙Pの幅方向の一方から他方に向けてシワを延ばすことができる。
図14(f)は、スリット状の吸引穴318をガイド面316の対角線に沿って形成したものである(スリット状の吸引穴318を用紙Pの搬送方向に対して傾斜して形成したものである。
このように吸引穴318を形成することにより、用紙Pがガイド面316を摺動する際、用紙Pの幅方向の一方から他方に向けてシワを延ばすことができる。また、用紙Pを幅方向に連続的に吸着することができ、高い保持力を得ることができる。
図14(g)は、図14(f)と同様に、スリット状の吸引穴318をガイド面316の対角線に沿って形成するとともに、これと平行な吸引穴318を複数本形成したものである。
このように吸引穴318を形成することにより、用紙Pがガイド面316を摺動する際、用紙Pの幅方向の一方から他方に向けてシワを延ばすことができるとともに、保持力をより高めることができる。
図15は、ガイド面に形成する吸引穴の更に他の態様を示す図である。
図14に示す態様では、吸引穴318の形状を長穴形状又はスリット状としているが、吸引穴の形状は、これに限定されるものではない。
図15(a)は、丸穴形状の吸引穴318をガイド面316の幅方向(用紙Pの搬送方向と直交する方向)に沿って一定の間隔で複数形成したものである。吸引穴318を丸穴形状とすることにより、加工を容易にすることができる。
図15(b)は、丸穴形状の吸引穴318をガイド面316に複数形成したものである。これにより、吸着面積を増大でき、保持力を更に高めることができる。
図15(c)は、吸引穴318をガイド面316の幅方向に沿って一定の間隔で複数形成するとともに、各吸引穴318の形状をガイド面316の幅方向に沿って延びる長穴形状としたものである。これにより、保持力を高めつつ、用紙Pの変形を抑えることができる。
なお、吸引穴318を長穴形状とする場合は、図16に示すように、多数の小径の丸穴318aを集合させて、全体として長穴形状に形成することもできる(全体としての外形が長穴形状とされる。)。これにより、高い保持力を得つつ、用紙Pの変形を抑えることができる。また、加工も容易に行うことができる。
上記の例では、説明の便宜上、ガイド面316を平坦に形成しているが、ガイド面316の形状は、これに限定されるものではない。他の態様のガイド面316に吸引穴318を形成する場合も同様に、上述した種々の態様の吸引穴318を形成することができる。
《用紙ガイドの設置方法の他の形態》
図17(a)に示すように、上記実施の形態では、ガイド面316が押圧ローラ42の設置点における画像記録ドラム41の接線Tに沿うように用紙ガイド310を配置している(ガイド面316の延長線上に押圧ローラ42の設置点が位置するように、用紙ガイド310を配置している。)。このように用紙ガイド310を配置することにより、用紙Pを押圧ローラ42と画像記録ドラム41との間に進入しやすくすることができ、シワの防止効果をより高めることができる。
一方、図17(b)及び(c)に示すように、用紙ガイド310を通過した用紙Pが押圧ローラ42に巻き付くように、用紙ガイド310を設置することにより、用紙Pが押圧ローラ42に沿って走行する面積が増加し、押圧ローラ42でシワを延ばす効果を高めることができる。
この場合、同図に示すように、押圧ローラ42の設置点における画像記録ドラム41の接線Tに対してガイド面316を傾けて設置(ガイド面316で吸引する方向を接線Tに対して傾けて設置)することができ、これにより、用紙ガイド310を通過した用紙Pが押圧ローラ42に巻き付くように吸引することができる。
特に、図17(c)に示すように、接線Tに対してガイド面316をマイナス(−)方向に傾けて設置(ガイド面316で吸引する方向を押圧ローラ42の設置点と反対方向に向けて設置)することにより、バックテンションの力を増大させることができる。
このように、用紙ガイド310は、その設置位置を調整することにより、バックテンションの掛け方、押圧ローラ42と画像記録ドラム41との間への用紙Pの進入のさせ方等を調整することができる。したがって、用紙ガイド310は、使用する用紙Pの種類や紙厚等に応じて、適宜最適な状態に設置することが好ましい。また、用紙Pの種類や紙厚等に応じて、吸引のさせ方を変えられるように、設置位置を調整できるようにしてもよい。たとえば、画像記録ドラム41の軸と平行な軸を中心に首振り自在に支持し、ガイド面316の向き(吸引方向)を変えられるようにしてもよい。これにより、吸引のさせ方を調整することができる。また、更に画像記録ドラム41の外周面からの高さ位置(画像記録ドラム41の外周面とガイド面316との間に形成されるギャップ)を調整できるようにしてもよい。
また、用紙ガイド310は、可能な限りガイド面316を画像記録ドラム41の外周面に近づけて設置することが好ましい。これにより、安定して用紙Pを吸引することができる。
《用紙ガイドの他の形態》
用紙ガイド310は、用紙Pとの接触面積が大きいほど強い保持力を得ることができる。したがって、そのガイド面316の用紙搬送方向の長さ(前後方向の長さ)は、長い程よい。この長さは設置スペース等を考慮して設定され、最大の効果が得られる長さに設定される。
また、用紙Pの搬送方向と直交する方向の長さは、用紙幅とほぼ同じ幅に設定することが好ましい。したがって、画像記録ドラム41の幅とほぼ同じ幅で形成することが好ましい。
ただし、設置スペースや使用する用紙Pの種類などによっては、図18(a)に示すように、用紙Pの中央部のみを吸引するように構成することもできる。
また、図18(b)に示すように、一対の用紙ガイド310を用いて、用紙Pの幅方向の両端部を吸引するように構成することもできる。
更に、複数台の用紙ガイド310を用紙Pの搬送方向と直交する方向に並列して配置する構成とすることもできる。この場合、1台の真空ポンプを用いて各用紙ガイド310を吸引する構成とすることもできるが、各用紙ガイド310に個別に真空ポンプを設置し、個別に吸引できるようにすることもできる。これにより、用紙Pのサイズに応じて、吸引する幅を切り替えることができる。なお、1台の真空ポンプを用いた場合であっても、たとえば、各用紙ガイド310と真空ポンプとを接続する吸引配管にバルブを設置することにより(個別に吸引をON/OFFできるように構成する。)、同様の効果を得ることができる。
また、用紙ガイド310は、図19に示すように、ローラ状に形成することもできる。
同図に示す用紙ガイド310は、内筒330と外筒332とからなる二重管構造で構成され、画像記録ドラム41とほぼ同じ幅で形成される。
内筒330は、円筒状に形成される。内筒330は、両端を図示しないブラケットに支持されて、固定して設置される。
外筒332は、円筒状に形成される。外筒332は、図示しないベアリングを介して、内筒330の外周部を回転自在に設けられる。
内筒330の周面には、一定の角度範囲で開口部334が形成される。一方、外筒332の外周部には、多数の吸引穴318が形成される。
内筒330の一方端には、図示しない吸引口が形成される。吸引口は、吸引配管を介して真空ポンプに接続される。
真空ポンプを駆動すると、内筒330の内部の空気が吸引される。これにより、外筒332に形成された吸引穴318から空気が吸引される。そして、この吸引穴318から空気が吸引されることにより、画像記録ドラム41によって搬送される用紙Pの表面が吸引される。
用紙Pは、吸引穴318から吸引されることにより、外筒332の外周面に密着する。外筒332は、回転自在に設けられているため、用紙Pの走行とともに回転(連れ回り)する。
このように、用紙ガイド310をローラ状に形成し、用紙Pとともに連れ回りする構成とすることにより、用紙Pの表面が擦れるのを防止することができる。
なお、本例では、外筒332を内筒330の外周に回転自在に支持し、用紙Pとともに連れ回りする構成としているが、モータ等の回転駆動手段で駆動して、用紙Pと同じ速度で回転させる構成としてもよい。
また、外筒332をモータ等の回転駆動手段で駆動して、用紙Pの搬送方向と逆方向に回転させる構成としてもよい。これにより、バックテンションの力を増大させることができる。
《吸引方法》
バックテンション付与装置300は、インクジェット記録装置10の作動中、常に作動し、用紙ガイド310から常に一定の吸引力で空気を吸引する構成とすることもできるが、用紙Pの搬送に合わせて吸引力を制御することが好ましい。
たとえば、用紙Pの先端部では、強い吸引力で吸引し、その後、吸引力を弱めるようにする。用紙Pは、一度吸着できれば、その状態を保持することができるが、初期の吸着力が弱いと、吸着できないおそれがある。そこで、用紙Pの先端部では、強い吸引力で吸引し、その後、吸引力を弱めるようにする。これにより、適切に用紙Pを吸引することができる。
この他、用紙Pの後端に向かって徐々に吸引力を弱めるようにすることもできる。
《その他の実施の形態》
上記実施の形態では、画像記録ドラム41の用紙搬送機構に本発明を適用した場合を例に説明したが、他の用紙搬送機構にも本発明を適用することができる。たとえば、処理液塗布部30の用紙搬送機構にも適用することができる。この場合、塗布装置32(塗布ローラ)の直前位置にバックテンション付与装置を設置する。これにより、塗布ローラによって押圧される用紙Pにシワが発生するのを防止することができる。
また、用紙ガイド310は、用紙Pの搬送方向に沿って複数台配置する構成とすることもできる。