以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。まず、本発明で用いられるインク及び処理液について説明する。
〔インク〕
本発明で用いられるインクは、溶媒不溶性材料として、色材(着色剤)である顔料やポリマー微粒子などを含有する水性顔料インクが用いられる。
溶媒不溶性材料の濃度は、吐出に適切な粘度20mPa・s以下を考慮して1wt%以上20wt%以下であることが好ましい。より好ましくは画像の光学濃度を得るために4wt%以上の顔料濃度である。インクの表面張力は、吐出安定性を考慮して20mN/m以上40mN/mであることが好ましい。
インクに使用される色材は、顔料あるいは染料と顔料とを混合して用いることができる。処理液との接触時における凝集性の観点から、インク中で分散状態にある顔料の方がより効果的に凝集するため好ましい。顔料の中でも、分散剤により分散されている顔料、自己分散顔料、樹脂により顔料表面を被覆された顔料(マイクロカプセル顔料)、及び高分子グラフト顔料が特に好ましい。また、顔料凝集性の観点から、解離度の小さいカルボキシル基によって修飾されている形態がより好ましい。
マイクロカプセル顔料の樹脂は、限定されるものではないが、水に対して自己分散能又は溶解能を有し、かつアニオン性基(酸性)を有する高分子の化合物であるのが好ましい。この樹脂は、通常、数平均分子量が1,000〜100,000範囲程度のものが好ましく、3、000〜50、000範囲程度のものが特に好ましい。また、この樹脂は有機溶剤に溶解して溶液となるものが好ましい。樹脂の数平均分子量がこの範囲であることにより、顔料における被覆膜として、又はインク組成物における塗膜としての機能を十分に発揮することができる。
前記樹脂は、自己分散能あるいは溶解するものであっても、又はその機能が何らかの手段によって付加されたものであってもよい。例えば、有機アミンやアルカリ金属を用いて中和することにより、カルボキシル基、スルホン酸基、またはホスホン酸基等のアニオン性基を導入されてなる樹脂であってもよい。また、同種または異種の一又は二以上のアニオン性基が導入された樹脂であってもよい。本発明にあっては、塩基をもって中和されて、カルボキシル基が導入された樹脂が好ましくは用いられる。
本発明に用いる顔料としては、特に限定はされないが、具体例としては、オレンジまたはイエロー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等が挙げられる。レッドまたはマゼンタ用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
グリーンまたはシアン用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
また、ブラック用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。
本発明に係る着色インク液には、処理液と反応する成分として、着色剤を含まないポリマー微粒子を添加することが好ましい。ポリマー微粒子は、処理液との反応によりインクの増粘作用、凝集作用を強め、画像品位の向上させることができる。特に、アニオン性のポリマー微粒子をインクに含有せしめることにより、安全性の高いインクが得られる。
処理液と反応して、増粘・凝集作用を起こすポリマー微粒子をインクに用いることにより、画像の品位を高めることができると同時に、ポリマー微粒子の種類によっては、ポリマー微粒子が記録媒体で皮膜を形成し、画像の耐擦性、耐水性をも向上させる効果を有する。
ポリマーインクでの分散方法はエマルジョンに限定するものではなく、溶解していても、コロイダルディスパージョン状態で存在していてもよい。
ポリマー微粒子は、乳化剤を用いてポリマー微粒子を分散させたものであっても、また、乳化剤を用いないで分散させたものであってもよい。乳化剤としては、通常、低分子量の界面活性剤が用いられているが、高分子量の界面活性剤を乳化剤として用いることもできる。外殻がアクリル酸、メタクリル酸などにより構成されたカプセル型のポリマー微粒子(粒子の中心部と外縁部で組成を異にしたコア・シェルタイプのポリマー微粒子)を用いることも好ましい。
分散手法として、低分子量の界面活性剤を用いていないポリマー微粒子は、高分子量の界面活性剤を用いたポリマー微粒子、乳化剤を使用しないポリマー微粒子を含めてソープフリーラテックスと呼ばれている。例えば上記に記述した、スルホン酸基、カルボン酸基等の水に可溶な基を有するポリマー(可溶化基がグラフト結合しているポリマー、可溶化基を持つ単量体と不溶性の部分を持つ単量体とから得られるブロックポリマー)を乳化剤として用いたポリマー微粒子もこれに含まれる。
本発明では、特にこのソープフリーラテックスを用いることが好ましく、ソープフリーラテックスは従来の乳化剤を用いて重合したポリマー微粒子にくらべ、乳化剤がポリマー微粒子の反応凝集や造膜を阻害したり、遊離した乳化剤がポリマー微粒子の造膜後に表面に移動し、顔料とポリマー微粒子の混合した凝集体と記録媒体との接着性を低下させる懸念がない。
インクにポリマー微粒子として添加する樹脂成分としては、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂などが挙げられる。
ポリマー微粒子への高速凝集性付与の観点から、解離度の小さいカルボン酸基を有するものがより好ましい。カルボン酸基はpH変化によって影響を受けやすいので、分散状態が変化しやすく、凝集性が高い。
ポリマー微粒子のpH変化に対する分散状態の変化は、アクリル酸エステルなどのカルボン酸基を有する、ポリマー微粒子中の構成成分の含有割合によって調整することができ、分散剤として用いるアニオン性の界面活性剤によっても調整可能である。
ポリマー微粒子の樹脂成分は、親水性部分と疎水性部分とを併せ持つ重合体であるのが好ましい。疎水性部分を有することで、ポリマー微粒子の内側に疎水部分が配向し、外側に親水部分が効率よく外側に配向され、液体のpH変化に対する分散状態の変化がより大きくなる効果があり、凝集がより効率よく行われる。
市販のポリマー微粒子の例としては、ジョンクリル537、7640(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、ジョンソンポリマー株式会社製)、マイクロジェルE−1002、E−5002(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、日本ペイント株式会社製)、ボンコート4001(アクリル系樹脂エマルジョン、大日本インキ化学工業株式会社製)、ボンコート5454(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、大日本インキ化学工業株式会社製)、SAE−1014(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、日本ゼオン株式会社製)、ジュリマーET−410、FC−30(アクリル系樹脂エマルジョン、日本純薬株式会社製)、アロンHD−5、A−104(アクリル系樹脂エマルジョン、東亞合成株式会社製)、サイビノールSK−200(アクリル系樹脂エマルジョン、サイデン化学株式会社製)、ザイクセンL(アクリル系樹脂エマルジョン、住友精化株式会社製)などが挙げられるが、これに限定するものではない。
顔料に対するポリマー微粒子添加量の重量比率は2:1から1:10が好ましい、より好ましくは1:1から1:3である。顔料に対するポリマー微粒子添加量の重量比率は2:1より少ないと、樹脂の融着による凝集体の凝集力が効果的に向上しない。また、添加量が1:10より多くてもインクの粘度が高くなりすぎ、吐出性などが悪化する。
インクに添加するポリマー微粒子の分子量は融着したときの付着力を鑑みて、5,000以上が好ましい。5,000未満だと、凝集したときのインク凝集体の内部凝集力向上や記録媒体に画像の定着性に効果が不足し、また画質改善効果が不足する。
ポリマー微粒子の体積平均粒子径は、10nm〜1μmの範囲が好ましく、10〜500nmの範囲がより好ましく、20〜200nmの範囲が更に好ましく、50〜200nmの範囲が特に好ましい。10nm以下では、凝集しても画質の改善効果、転写性の向上に効果があまり期待できない。1μm以上では、インクのヘッドからの吐出性や保存安定性が悪化するおそれがある。また、ポリマー粒子の体積平均粒子径分布に関しては、特に制限は無く、広い体積平均粒子径分布を持つもの、又は単分散の体積平均粒子径分布を持つもの、いずれでもよい。
また、ポリマー微粒子を、インク内に2種以上混合して含有させて使用してもよい。
本発明のインクに添加するpH調整剤としては中和剤として、有機塩基、無機アルカリ塩基を用いることができる。pH調整剤はインクジェット用インクの保存安定性を向上させる目的で、該インクジェット用インクがpH6〜10となるように添加するのが好ましい。
本発明のインクは、乾燥によってインクジェットヘッドのノズルが詰まるのを防止する目的から、水溶性有機溶媒を含有することが好ましい。このような水溶性有機溶媒には、湿潤剤及び浸透剤が含まれる。
水溶性有機溶媒としては、処理液の場合と同様に、例えば、多価アルコール類、多価アルコール類誘導体、含窒素溶媒、アルコール類、含硫黄溶媒等が挙げられる。具体例としては、多価アルコール類では、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等が挙げられる。多価アルコール誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。含窒素溶媒としては、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等が、アルコール類としてはエタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類が、含硫黄溶媒としては、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルフォラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。その他、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等を用いることもできる。
本発明のインクには、界面活性剤を含有することができる。
界面活性剤の例としては、炭化水素系では脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好ましい。
更に、特開昭59−157636号の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも使うことができる。また、特開2003−322926号、特開2004−325707号、特開2004−309806号の各公報に記載されているようなフッ素(フッ化アルキル系)系、シリコーン系の界面活性剤も用いることができる。これら表面張力調整剤は消泡剤としても使用することができ、フッ素系、シリコーン系化合物やEDTAに代表されるキレート剤等も使用することができる。
表面張力を下げて固体状又は半固溶状の凝集処理剤層上でのぬれ性を高め、拡がり率を増加させることができる。
本発明のインクの表面張力は、10〜50mN/mであることが好ましく、浸透性記録媒体への浸透性、液滴の微液滴化、及び吐出性の両立の観点からは、15〜45mN/mであることが更に好ましい。
本発明のインクの粘度は、1.0〜20.0cPであることが好ましい。
その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、等も添加することができる。
〔処理液〕
本発明に係る処理液(凝集処理液)として、インクのpHを変化させることにより、インクに含有される顔料およびポリマー微粒子を凝集させ、凝集物を生じさせるような処理液が好ましい。
処理液の成分として、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ビリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等の中から選ばれることが好ましい。
また、本発明に係る処理液の好ましい例として、多価金属塩あるいはポリアリルアミンを添加した処理液を挙げることができる。これらの化合物は、1種類で使用されてもよく、2種類以上併用されてもよい。
本発明に係る処理液はインクとのpH凝集性能の観点からpHは1〜6であることが好ましく、pHは2〜5であることがより好ましく、pHは3〜5であることが特に好ましい。
本発明に係る処理液の中における、インクの顔料およびポリマー微粒子を凝集させる成分の添加量としては、液体の全重量に対し、0.01重量%以上20重量%以下であることが好ましい。0.01重量%以下の場合は処理液とインクが接触時に、濃度拡散が十分に進まずpH変化による凝集作用が十分に発生しないことがある。また20重量%以上であると、インクジェットヘッドからの吐出性が悪化することがある。
本発明に係る処理液は、乾燥によってインクジェットヘッドのノズルが詰まるのを防止する目的から、水、その他添加剤溶性有機溶媒を含有することが好ましい。このような水、その他添加剤溶性有機溶媒には、湿潤剤及び浸透剤が含まれる。
これらの溶媒は、水,その他添加剤と共に単独若しくは複数を混合して用いることができる。
水、その他添加剤溶性有機溶媒の含有量は処理液の全重量に対し、60重量%以下であることが好ましい。60重量%以上よりも多い場合は処理液の粘度が増加し、インクジェットヘッドからの吐出性が悪化することがある。
処理液には、定着性および耐擦性を向上させるため、樹脂成分をさらに含有してもよい。樹脂成分は、処理液をインクジェット方式によって打滴する場合ヘッドからの吐出性を損なわないもの、保存安定性があるものであればよく、水溶性樹脂や樹脂エマルジョンなどを自由に用いることができる。
樹脂成分としては、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、ビニル系、スチレン系等が考えられる。定着性向上といった機能を充分に発現させるには、比較的高分子のポリマーを高濃度1重量%〜20重量%に添加することが必要である。しかし、上記材料を液体に溶解させて添加しようとすると高粘度化し、吐出性が低下する。適切な材料を高濃度に添加し、かつ粘度上昇を抑えるには、ラテックスとして添加する手段が有効である。ラテックス材料としては、アクリル酸アルキル共重合体、カルボキシ変性SBR(スチレン−ブタジエンラテックス)、SIR(スチレン−イソプレン)ラテックス、MBR(メタクリル酸メチル−ブタジエンラテックス)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンラテックス)、等が考えられる。ラテックスのガラス転移点Tgはプロセス上、定着時に影響の強い値で、常温保存時の安定性と加熱後の転写性を両立するために、50℃以上120℃以下であることが好ましい。さらに最低造膜温度MFTはプロセス上、定着時に影響の強い値で、低温で充分な定着を得る為に100℃以下、さらに好ましくは50℃以下である。
インクと逆極性のポリマー微粒子を処理液に含ませ、インク中の顔料及びポリマー微粒子と凝集させることによってさらに凝集性を高めてもよい。
また、インクに含まれるポリマー微粒子成分に対応した硬化剤を処理液に含有し、二液が接触後、インク成分中の樹脂エマルジョンが凝集するとともに架橋又は重合するようにして、凝集性を高めてもよい。
本発明に係る処理液は、界面活性剤を含有することができる。
界面活性剤の例としては、炭化水素系では脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好ましい。
更に、特開昭59−157636号の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも使うことができる。また、特開2003−322926号、特開2004−325707号、特開2004−309806号の各公報に記載されているようなフッ素(フッ化アルキル系)系、シリコーン系の界面活性剤も用いることができる。これら表面張力調整剤は消泡剤としても使用することができ、フッ素系、シリコーン系化合物やEDTAに代表されるキレート剤等も使用することができる。
表面張力を下げて記録媒体上でのぬれ性を高めるのに効果がある。また、インクを先立って打滴する場合においてもインク上でのぬれ性を高め、二液の接触面積の増加により効果的に凝集作用がすすむ。
本発明に係る処理液の表面張力は、10〜50mN/mであることが好ましく、浸透性記録媒体への浸透性、液滴の微液滴化、及び吐出性の両立の観点からは、15〜45mN/mであることが更に好ましい。
本発明に係る処理液の粘度は、1.0〜20.0cPであることが好ましい。
その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線、吸収剤、等も添加することができる。
〔記録媒体〕
本発明で用いられる記録媒体は特に限定されるものではないが、インク溶媒の浸透が遅い印刷用コート紙に対して特に好ましい結果を得る事ができる。
コート紙に好適に使用可能な支持体(原紙)としては、例えば、LBKP、NBKP等の化学パルプ;GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGP等の機械パルプ;DIP等の古紙パルプなどの木材パルプと、顔料とを主成分とし、バインダー、さらにサイズ剤、定着剤、歩留まり向上剤、カチオン化剤、紙力増強剤等の各種添加剤を1種以上混合し、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等の各種装置を使用して製造される原紙、さらに澱粉、ポリビニルアルコール等を用いてなるサイズプレスやアンカーコート層を設けた原紙、あるいはこれらのサイズプレスやアンカーコート層の上にコート層を設けてなるアート紙、コート紙、キャストコート紙等の塗工紙などが挙げられる。
支持体の坪量は、通常、40〜300g/m2程度であるが、特に制限されるものではない。本発明で用いられるコート紙は、上記のような支持体上に、コート層を塗設する。コート層は顔料およびバインダーを主成分とする塗被組成物から構成されるものであり、支持体上に少なくとも1層塗設される。
前記顔料としては、白色顔料を好適に使用することができる。このような白色顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、水酸化マグネシウム等の無機顔料;スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機顔料が挙げられる。
前記バインダーとしては、例えば、酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉等の澱粉誘導体;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体;カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、ポリビニルアルコールまたはその誘導体;
各種鹸化度のポリビニルアルコール又はそのシラノール変性物、カルボキシル化物、カチオン化物等の各種誘導体;ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系共重合体
ラテックス;アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体等のアクリル系重合体ラテックス;エチレン酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス;或はこれら各種重合体のカルボキシ基等の官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックス;メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化性合成樹脂等の水性接着剤;ポリメチルメタクリレート等のアクリル;酸エステル;メタクリル酸エステルの重合体又は共重合体樹脂;ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂等の合成樹脂系接着剤等を挙げることができる。
コート層の顔料とバインダーとの配合割合は、顔料100重量部に対し、バインダーが3〜70重量部、好ましくは5〜50重量部である。顔料100重量部に対するバインダーの配合割合が3重量部未満であると、そのような塗被組成物からなるインク受理層の塗膜強度が不足することがある。一方、この配合割合が70重量部を超えると、高沸点溶媒の吸収が極端に遅くなる。
更に、コート層には、例えば、染料定着剤、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、螢光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤などの各種添加剤を適宜配合することができる。
インク受理層の塗工量は、要求される光沢、インク吸収性、支持体の種類等により異なるので一概には言えないが、通常は1g/m2 以上である。また、インク受理層はある一定の塗工量を2度に分けて塗設してもよい。このように2度に分けて塗設すると、同塗工量を1度に塗設する場合に比較して光沢が向上する。
コート層の塗設は、例えば、各種ブレードコータ、ロールコータ、エアーナイフコータ、バーコータ、ロッドブレードコータ、カーテンコータ、ショートドウェルコータ、サイズプレス等の各種装置をオンマシン或いはオフマシンで使用して行なうことができる。また、コート層の塗設後に、たとえばマシンカレンダー、TGカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダー装置を使用してインク受理層の平坦化仕上げを行なってもよい。
尚、コート層の層数は、必要に応じて適宜に決定することができる。
コート紙としてはアート紙、上質コート紙、中質コート紙、上質軽量コート紙、中質軽量コート紙、微塗工印刷用紙があり、コート層の塗設量はアート紙で両面40g/m2前後、上質コート紙、中質コート紙で両面20g/m2前後、上質軽量コート紙、中質軽量コート紙では両面15g/m2前後であり、微塗工印刷用紙は両面12g/m2以下である。アート紙の例としては特菱アートなどが挙げられ、上質コート紙としてはユーライト、アート紙としては特菱アート(三菱製紙社製)、サテン金藤(王子製紙社製)、等が挙げられ、コート紙としてはOKトップコート(王子製紙社性)、オーロラコート(日本製紙社製)、リサイクルコートT−6(日本製紙社製)が挙げられ、軽量コートとしてはユーライト(日本製紙社製)、ニューVマット(三菱製紙社製)、ニューエイジ(王子製紙社製)、リサイクルマットT−6(日本製紙社製)、ピズム(日本製紙社製)が挙げられる。微塗工印刷用紙としてはオーロラL(日本製紙社製)、キンマリHi−L(北越製紙社製)などが挙げられる。更に、キャストコート紙としてはSA金藤プラス(王子製紙社製)、ハイマッキンレーアート(五條製紙社製)等が挙げられる。
〔画像形成装置〕
まず、本発明に係る画像形成方法の基本的なプロセスについて、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る画像形成装置の一実施形態を模式的に示した概略構成図である。
図1に示す画像形成装置(インクジェット記録装置)10は、主として、記録媒体12の搬送方向(副走査方向)の上流側から順に、処理液付与部14、処理液乾燥部16、インク打滴部18、インク乾燥部20、及び定着部22を備えて構成される。
記録媒体12は、ローラ24、26間に掛け渡された無端状の搬送ベルト28に保持され、図1の左から右へと搬送される。記録媒体の搬送方式は、図1に示すようなベルト方式に限定されるものではなく、例えばドラム状部材の表面(周面)に記録媒体を密着させて搬送する方式など各種方式を適用することが可能である。
処理液付与部14は、副走査方向下流側に配置されるインク打滴部18によってインク液滴の打滴が行われる前に、記録媒体12上に処理液を付与する。処理液付与部14で処理液を付与することによって、記録媒体12の全面に処理液が約2.5g/m2で付与される。処理液を付与する方式は特に限定されるものではなく、例えば、塗布ローラなどによる塗布方式、スプレー方式、インクジェット記録方式、その他各種方式を適用することができる。これらの中でも、インクジェット記録方式の記録ヘッド(インクジェットヘッド)を用いて処理液(液滴)を打滴する態様が好ましく、インクが打滴される位置に処理液を選択的に付与することができ、乾燥時間の短縮や加熱エネルギーの削減が可能となる。また、ローラなどの塗設装置によって塗設する態様も可能である。この場合には、処理液を薄層で塗設することもでき、乾燥時間の短縮や加熱エネルギーの削減が可能となる。
処理液乾燥部16は、処理液付与部14の副走査方向下流側に配置され、記録媒体12上に付与された処理液を加熱乾燥させる。このとき、下流側でインクを打滴した際に、記録媒体12の各層で所定の凝集剤分布になるように乾燥条件を制御する。具体的には、インクを打滴する際の記録媒体12の表面の凝集剤の実効pHが1.67以上7.00以下(凝集剤量で表現すると0.000g/m2以上0.100g/m2以下)であり、且つ、コート層内の凝集剤量の実効pHが0.10以上1.70以下(凝集剤量で0.100g/m2以上2.000g/m2以下)の状態になるように、処理液を乾燥させている。
インク打滴部18は、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各色インクに対応するインクジェット方式の記録ヘッド(以下、「インク吐出ヘッド」という。)18C、18M、18Y、18Kを備え、入力画像データに応じて各インク吐出ヘッド18C、18M、18Y、18Kの各ノズルからそれぞれ対応する色インクの液滴を打滴する。本例では、各ノズルから吐出されるインク液滴の吐出体積(打滴量)は2ngであり、主走査方向(記録媒体12の搬送方向に直交する方向)及び副走査方向(記録媒体12の搬送方向)の記録密度(打滴密度)はいずれも1200dpiである。また、本例では、後述するように、記録媒体12の表面とコート層が所定の状態になった際にインクを打滴するようになっている。
インク乾燥部20は、インク打滴部18の副走査方向下流側に配置され、記録媒体12上のインク層を加熱乾燥させる。インクの乾燥方式は特に限定されるものではないが、処理液乾燥部16と同様に、記録媒体12上のインク層に熱風を吹き付ける方式(熱風乾燥方式)が好ましい。また、前記熱風乾燥方式と併用して、又は単独で、記録媒体12の裏面(画像形成面と反対側の面)側にヒータ(例えば平板加熱ヒータ)32を設け、記録媒体12の裏面側から加熱する方式(裏面加熱方式)も好適である。本例では、ヒータ32を用いて記録媒体12の裏面側を60℃に加熱しながら、熱風乾燥機(ブロア)から70℃の熱風を記録媒体12の表面側に2秒間吹き付けて、記録媒体12上のインク層の乾燥を行う。
定着部22は、定着ローラを記録媒体12上のインク層に当接させ、インクを加熱加圧することによってインク中の自己分散性ポリマー微粒子を溶着し、記録媒体12上に形成された画像を定着させる。これにより、画像の耐擦性を向上させることができ、好ましい画像品質を得ることができる。加熱ローラの加熱温度は、処理液又はインクに含有されるポリマー微粒子のガラス転移点温度などに応じて設定することが好ましい。また、複数の加熱ローラを設けて、記録媒体12上に形成された画像を段階的に定着させるようにしてもよい。
次に本発明の特徴部分について説明する。本発明のインク打滴部18は、記録媒体12の表面とコート層が所定の状態になった際にインクを打滴するようになっている。具体的には、記録媒体12の表面上の凝集剤の実効pHが1.67以上7.00以下で、且つ、記録媒体12のコート層内の凝集剤の実効pHが0.10以上1.70以下の状態のときにインクを打滴するように制御される。凝集剤の実効pHを凝集剤の量に置き換えて表現すると、表面上の凝集剤の量が0.000g/m2以上0.100g/m2以下であり、且つ、コート層内の凝集剤の量が0.100g/m2以上2.000g/m2以下になった状態でインクを付与するように制御される。
また、より好ましい態様としては、記録媒体12の原紙中の凝集剤の実効pHが1.40以上7.00以下の状態のときにインクを打滴するように制御される。これを凝集剤の量に置き換えて表現すると、記録媒体12の原紙中の凝集剤の量が0.000g/m2以上0.210g/m2以下の状態のときにインクを打滴するように制御される。
制御の方法としては、処理液乾燥部16での乾燥条件や、インク打滴部18でインクを打滴するタイミングを制御する方法などが選択される。なお、凝集剤の実効pHや量が上記の範囲になる乾燥条件や打滴タイミングは、予め試験等によって求めておくことができる。その試験の際、凝集剤の測定には、液体クロマトグラフィー法を用いることができ、各凝集剤の量(実効pH)は以下のようにして求めることができる。たとえば、記録媒体12の表面上の凝集剤の量は、記録媒体12に付与された凝集剤の全量Xを測定し、さらに、水を含浸させた不織布によって記録媒体12の表面の凝集剤を拭き取り、残った記録媒体12に含まれる凝集剤の量Zを測定する。そして、(X−Z)を算出することによって記録媒体12の表面上の凝集剤の量が求められる。また、記録媒体12のコート層内の凝集剤の量は、記録媒体12のコート層を片刃カミソリで切削除去し、残された原紙に含まれる凝集剤の量Yを測定した後、(Z−Y)を算出することによって求められる。なお、記録媒体12の原紙に含まれる凝集剤の量は、Yとなる。
実効pHは、各層に存在する凝集剤の量を、1次色インク量相当の水溶媒に溶解し、その液pHを求め、インク凝集に作用する各層の実効pHとする。
次に上記の如く構成された画像形成装置10の作用について図2〜図4に基づいて説明する。なお、図2〜図4において、(A)はインクを打滴する際の記録媒体12の状態を模式的に示しており、(B)はインクを打滴した後、隣接するノズルからインクを打滴する際の記録媒体12の状態を模式的に示している。また、図2〜図4において、符号12Aは原紙、符号12Bはコート層、符号12Cはインク(液体)、符号12Dはインクの凝集物を意味している。さらに、図2〜図4において、符号12E及び「○」は凝集剤を意味し、凝集剤の浸透度合いを示している。
図3(A)は凝集剤12Eが記録媒体12に十分に浸透してない状態を示しており、具体的には、記録媒体12の表面の凝集剤12Eの実効pHが1.7未満(凝集剤量では0.100g/m2超)であり、コート層12B内の凝集剤12Eの実効pHが0.10未満(凝集剤量では2.000g/m2超)である状態を示している。
この場合、記録媒体12の表面には、過多の凝集剤12Eが存在している。したがって、この状態でインク12Cを打滴すると、記録媒体12の表面の多量の凝集剤12Eと反応するため、図3(B)に示すように、インクドットが十分に広がる前に凝集反応が進行し、凝集物12Dのドット径が小さくなる。これは、インクドットの拡がりが飛翔エネルギーによる着弾時の衝撃力で行われ、その速度は数μsec〜数十μsecという時間で行われるのに対して、記録媒体12の表面上の凝集反応は、凝集剤12Eとインク12Cの溶解によってμsecオーダーという極めて短い時間で行われるため、インク12Cが広がる前にインク12Cが凝集するからと考えられる。
また、記録媒体12上の凝集剤12Eが過多の状態でインク12Cを打滴すると、記録媒体12の表面に凝集剤12Eが析出するため、用紙光沢に変化が生じて画質が低下する。さらに、凝集剤12Eが過多の状態でインク12Cを打滴すると、画像膜と記録媒体12の界面に凝集剤12Eによる離型層が形成され、画像膜の記録媒体12への密着性が低下する。
図4(A)は、凝集剤12Eが記録媒体12に浸透し過ぎた状態を示しており、記録媒体12の表面の凝集剤12Eの実効pHが7.00超(凝集剤量では0.000g/m2未満)であり、コート層12B内の凝集剤12Eの実効pHが1.70超(凝集剤量では0.100g/m2未満)である状態を示している。
この場合、凝集剤12Eは記録媒体12の原紙12A内に多く存在し、記録媒体12の表面及びコート層12B内には凝集剤12Eが不足している。この状態でインク12Cを打滴すると、インク12Cの溶媒が記録媒体12の原紙12Aに浸透することによって、凝集剤12Eが拡散移動し、凝集反応が達成される。しかし、原紙12Aに達したインク12Cの溶媒が原紙12A内に急速に濡れ広がるため、凝集剤12Eの供給効率が低くなり、凝集反応は数十〜数百msecオーダーで行われることになる。これに対して、隣接するノズルから打滴されるインク12Cは、(ノズル配列と描画搬送速度によって異なるが)4msec程度である。したがって、図4(B)に示すように、隣接するノズルからインク12Cが打滴される際は、インク12Cの凝集反応が十分に行われていないので、着弾干渉が発生してしまう。
一方、図2(A)は、本発明におけるインク打滴時の状態を示しており、記録媒体12の表面の凝集剤12Eの実効pHは1.67以上7.00以下(凝集剤量で0.000g/m2以上0.100g/m2以下)であり、且つ、コート層12B内の凝集剤12Eの実効pHが0.10以上1.70以下(凝集剤量で0.100g/m2以上2.000g/m2以下)である状態を示している。
この場合、インク12Cの溶媒が主に記録媒体12のコート層12Bに浸透しており、凝集剤(またはプロトン)12Eはコート層12Bに多量に存在している。したがって、この状態でインク12Cを打滴すると、図2(B)に示すようにコート層12B内の凝集剤12Eが拡散移動して凝集反応が発生する。その際、凝集反応は、msecオーダーで発生する。したがって、凝集反応よりもインクドットの広がりの方が速いため、ドットが広がりつつ緩やかに凝集反応が進行し、ドットの拡がりを確保でき、ドットの縮径化を防止できる。また、隣接ノズルからインク12Cが打滴される前に凝集反応が完了しているので、着弾干渉を抑えることができ、画像の鮮鋭性を良好に得ることができる。
このように本実施の形態によれば、記録媒体12の表面の凝集剤12Eの実効pHが1.67以上7.00以下であり、且つ、コート層12B内の凝集剤12Eの実効pHが0.10以上1.70以下のときにインク12Cを打滴するようにしたので、ドットの拡がりを確保でき、且つ、画像の鮮鋭性を高めることができる。
また、本実施の形態では、記録媒体12の原紙12A中の凝集剤12Eの実効pHが1.40以上7.00以下の状態(凝集剤量では0.000g/m2以上0.210g/m2以下の状態)でインク12Cを打滴している。原紙12A中の凝集剤12Eの実効pHが1.40未満になると、経時変化によって黄変が発生する(原紙中のリグニンの変色と推定される)ので、本実施の形態では、黄変の発生を防止することができる。
〔評価実験〕
次に、本発明に関する評価実験について説明する。
本評価実験で用いた処理液及びインクの組成を以下に示す。
<処理液>
・マロン酸 10質量部
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル 20質量部
・界面活性剤1 1質量部
・イオン交換水 残部
なお、上記の界面活性剤1は次の化学式で表される。
<インク>
・顔料1 4質量部
・分散剤ポリマー1 2質量部
・樹脂エマルジョン 8質量部
・グリセリン 15質量部
・界面活性剤2 1質量部
・イオン交換水 残部
なお、上記各成分の詳細は以下のとおりである。
顔料1:Cromophtal jet Magenta DMQ(PR-122)
(チバ・スペシャリティーケミカルズ社)
分散剤ポリマー1:
メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸メチル/メタクリル酸
60/30/10(質量比)
樹脂エマルジョン1:
メタクリル酸メチル/アクリル酸フェノキシエチル/アクリル酸
60/35/5(質量比) MFT=35℃
界面活性剤2:オルフィンE1010(日信化学工業製)
樹脂エマルジョン2:
メタクリル酸メチル/アクリル酸フェノキシエチル/アクリル酸
66/29/5(質量比) MFT=50℃
界面活性剤2:オルフィンE1010(日信化学工業製)
<実験条件>
実験パラメータとして、凝集剤種、凝集剤濃度、処理液塗布量、処理液付与から乾燥までの時間を制御して、凝集剤の存在分布と諸性能の関係を考察した。
用紙:三菱製紙製 特菱アート 坪量104.7g/m2
処理液付与量:インクジェットヘッドにて所定の付与量で付与
処理液付与から乾燥までの時間:1秒〜5秒(用紙搬送速度を制御)
処理液乾燥:40℃の裏面ヒータおよび70℃の温風で1秒間乾燥
インク打滴:吐出体積2pLにて用紙にドットおよび全面ベタ画像を打滴
インク乾燥:60℃の裏面加熱および70℃の熱風にて2秒間乾燥
インク定着:表面ローラと裏面ローラで記録媒体をニップして熱定着
表面ローラ(直径40mmの金属ローラに1mmのシリコンゴムで被覆したもの)
裏面ローラ(金属ローラ)
表面ローラ80℃・裏面ローラ60℃・NIP圧1.2Mpa・NIP時間20ms
<凝集剤分布の測定>
用紙内の凝集剤量の測定には、ガスクロマトグラフィー法を用いた。装置としては(株)島津製作所製ガスクロマトグラフGC-2014、抽出器としては(株)島津製作所製水素炎イオン化検出器FID-2014を用いた。
凝集剤の分布測定には、以下の方法を用いた。
1.用紙に付与された凝集剤の全量Xを測定する。
2.用紙のコート層を片刃カミソリ(フェザー安全剃刀株式会社製)を用いて切削除去し、残された原紙に含まれる凝集剤量Yを測定する。
3.水を含浸させた不織布を用いて用紙表面の凝集剤を拭き取り、残った用紙に含まれる凝集剤量Zを測定する。
4.記録媒体の表面上の凝集剤量を(X−Z)により算出し、コート層中の凝集剤量を(Z−Y)により算出し、原紙中の凝集剤量をYとする。
<実効pH測定方法>
各層に存在する凝集剤量を、1次色インク量相当の水溶媒に溶解した際の液pHを、インク凝集に作用する、各層の実効pHと定義する。本実施例では各色1200dpiにて2ngのドットで記録を行なうため、1次色インク量相当の溶媒は4.5g/m2と計算される。pHの測定は、電気伝導率pHメーター WM-50EG(東亜ディーケーケー株式会社製)にて測定を行なった。本実施例で用いた凝集剤の水溶液濃度とpHの関係は図5に示すようになった。
<品質評価方法>
・ドット径
ドット径の測定は光学顕微鏡を用い、王子計測機器製ドットアナライザーにてドット径の計測を行った。ドット径は、白地無くベタ画像を形成する観点から、あまり小さいドット径は好ましくなく、ドット径には一定の拡がりが求められる。ドット径が小さいと、ベタ画像を形成するのにインク打滴量を上げる必要が有り、用紙カールや乾燥、定着性など他の性能に悪影響が大きい。また、必要以上にドット径が大きいと、画像の鮮鋭性が損なわれるため好ましくない。以上の観点から、1200dpi(ドットピッチ21.2μm)での描画を想定して、ドット径に対して以下の判定を行った。
○:29μm〜38μm (好ましいドット径)
△:27μm〜29μm (ドット径不足気味だが許容範囲)
×:27μm以下 (ドット径不足)
×:38μm以上 (ドット径過大)
・画像解像性
凝集反応が不足するとドット同士の干渉が発生し、画像の解像性が低下する。画像解像性の指標として、ベタ画像の中のドットを部分的に抜いた画像を描画し、目視にて以下のように評価を行なった。
○:dotの白抜けを再現できる
△:2dot×2dotの白抜けを再現できるが1dotの白抜けを再現できない。
×:2dot×2dotの白抜けを再現できない。
・紙の光沢度変化
処理液が付与された用紙表面の60度光沢度を測定し、紙そのものの値との差分で光沢度変化を評価した。測定には光沢度計(堀場製作所製IG−320)を用いた。ここで、評価用紙の光沢度は45であった。
○:光沢度変化5未満 光沢度変化が実質的に視認されない
△:光沢度変化5〜10 光沢度変化が多少視認されるが許容されるレベル
×:光沢度変化10以上 光沢度変化が大きく好ましくない
・乾燥時間の評価
乾燥時間は、印刷後にスタックされた用紙がブロッキングを生じない最小の乾燥時間によって定義した。ブロッキングは以下のように評価した。インクを10.0g/m2描画したベタ画像を印刷し、印刷直後に画像の上に無地の用紙を重ね、2枚のアクリル板で挟んで上から10kGの重石で押さえる。1時間放置後、アクリル板を取り除き、重ね合わせたサンプルを手で剥がしながら、接着の程度を確認する。(用紙はA4。23℃50RHの環境)。インクの転写や用紙の接着無く用紙を剥がせた場合には、ブロッキングなしとした。インクの転写が起こるか、用紙が剥がせなくなる場合は、ブロッキング発生とした。
・密着性の評価
印刷後に標準環境(23℃、50%RH)にて1日調湿されたベタ画像に対し、30mm程度にカットしたセロハンテープ(ニチバン株式会社製)を空気が入らないように画像面に貼り付け、セロハンテープは3秒程度の時間で鉛直上向きにゆっくりと剥がした。剥がした面の面状変化とセロハンテープに色移りを目視観察し、以下の判定を行なった。
○:剥離なし、または紙の層内で剥離すること
△:テープに着色するがインク面状に変化なし
×:インク面状に変化有り、又はインク層と紙間で剥離
・紙の黄変
処理液が付与された用紙表面を60℃/60%RH環境で10日間調湿し、ステータスAにて光学濃度を測定し、イエロー濃度の差(ΔY)を測定した。光学濃度測定にはエックスライト社製Xrite938を用いた。
○:ΔY 3以下
△:ΔY 3〜5
×:ΔY 5以上
<評価>
図6は上記の試験結果を示す表図であり、図7は記録媒体12の表面の凝集剤量とドット径との関係を示している。
これらの図に示すように、記録媒体12の表面上の凝集剤量が増加して所定値を超えると、ドット径が急激に小さくなったり、光沢低下が発生しやすくなったり、密着性が低下したりするという結果が得られた。そして、そのしきい値は0.100g/m2以下であり、その際の凝集剤の実効pHは、1.67以上7.00以下であることが分かった。
また、図6から分かるように、記録媒体12のコート層内の凝集剤の実効pHが0.10以上1.70以下(凝集剤量では0.100g/m2以上2.000g/m2以下)の範囲を外れると、着弾干渉が発生したり、乾燥時間が長く必要になったりするという結果になった。
さらに、記録媒体12の原紙中の凝集剤の実効pHが1.40以上7.00以下(凝集剤量では0.000g/m2以上0.210g/m2以下)の範囲を外れると、記録媒体が黄変するという結果が得られた。
〔他の実施形態〕
図8は、本発明に係る画像形成装置の他の実施形態を示した概略構成図である。
図8に示す画像形成装置(インクジェット記録装置)100は、インク及び処理液(凝集処理液)を用いて、記録媒体114上に画像形成を行う2液凝集方式が適用された記録装置である。この画像形成装置100は、主として、記録媒体114を供給する給紙部102と、記録媒体114に処理液を付与する処理液付与部104と、記録媒体114に色インクを打滴するインク打滴部(印字部)106と、記録媒体114上の溶媒成分(液体成分)を除去する溶媒除去部108と、記録媒体114上に形成された画像を定着させる定着部110と、画像が形成された記録媒体114を搬送して排出する排紙部112とを備えて構成される。
給紙部102には、記録媒体114を積載する給紙台120が設けられている。給紙台120の前方(図1において左側)にはフィーダボード122が接続されており、給紙台120に積載された記録媒体114は1番上から順に1枚ずつフィーダボード122に送り出される。フィーダボード122に送り出された記録媒体114は、渡し胴124aを介して処理液付与部104の圧胴(処理液ドラム)126aに受け渡される。
図示は省略するが、圧胴126aの表面(周面)には、記録媒体114の先端を保持する保持爪(グリッパ)と吸引口が形成されており、渡し胴124aから圧胴126aに受け渡された記録媒体114は、保持爪によって先端を保持されながら圧胴126aの表面に密着した状態(即ち、圧胴126a上に巻きつけられた状態)で圧胴126aの回転方向(図1において反時計回り方向)に搬送される。後述する他の圧胴126b〜126dについても同様な構成が適用される。
処理液付与部104には、圧胴126aの回転方向(図8において反時計回り方向)の上流側から順に、圧胴126aの表面に対向する位置に、用紙予熱ユニット128、処理液吐出ヘッド130、及び処理液乾燥ユニット132がそれぞれ設けられている。
用紙予熱ユニット128及び処理液乾燥ユニット132には、それぞれ所定の範囲で温度や風量を制御可能な熱風乾燥機が設けられる。圧胴126aに保持された記録媒体114が、用紙予熱ユニット128や処理液乾燥ユニット132に対向する位置を通過する際、熱風乾燥機によって加熱された空気(熱風)が記録媒体114上の処理液に吹き付けられる構成となっている。
処理液吐出ヘッド130は、圧胴126aに保持される記録媒体114に対して処理液を打滴するものであり、後述するインク打滴部106の各インク吐出ヘッド136C、136M、136Y、136K、136R、136G、136Bと同一構成が適用される。
本例では、記録媒体114の表面に対して処理液を付与する手段として、インクジェットヘッドを適用したが、これに限定されず、例えば、スプレー方式、塗布方式などの各種方式を適用することも可能である。
本例で用いられる処理液は、後段のインク打滴部106に配置される各インク吐出ヘッド136C、136M、136Y、136K、136R、136G、136Bから記録媒体114に向かって吐出されるインクに含有される色材を凝集させる作用を有する酸性液である。
処理液乾燥ユニット132には、所定の範囲で温度や風量を制御可能な熱風乾燥機が設けられており、圧胴126aに保持された記録媒体114が処理液乾燥ユニット132の熱風乾燥機に対向する位置を通過する際、熱風乾燥機によって加熱された空気(熱風)が記録媒体114上の処理液に吹き付けられる構成となっている。本例では、80℃の熱風によって処理液の乾燥が行われる。
熱風乾燥機の温度や風量は、圧胴126aの回転方向上流側に配置される処理液吐出ヘッド130により記録媒体114上に付与された処理液を乾燥させて、記録媒体114の表面上に固体状又は半固溶状の凝集処理剤層(処理液が乾燥した薄膜層)が形成されるような値に設定される。
本例の如く、記録媒体114上に処理液が付与される前に、用紙予熱ユニット128によって記録媒体114を予備加熱する態様が好ましい。この場合、処理液の乾燥に要する加熱エネルギーを低く抑えることが可能となり、省エネルギー化を図ることができる。
処理液付与部104に続いてインク打滴部106が設けられている。処理液付与部104の圧胴(処理液ドラム)126aとインク打滴部(描画ドラム)106の圧胴126bとの間には、これらに対接するようにして渡し胴124bが設けられている。これにより、処理液付与部104の圧胴126aに保持された記録媒体114は、処理液が付与されて処理液層(好ましくは固体状又は半固溶状の凝集処理剤層)が形成された後に、渡し胴124aを介してインク打滴部106の圧胴126bに受け渡される。
インク打滴部106には、圧胴126bの回転方向(図8において反時計回り方向)の上流側から順に、圧胴126bの表面に対向する位置に、CMYKRGBの7色のインクにそれぞれ対応したインク吐出ヘッド136C、136M、136Y、136K、136R、136G、136Bが並んで設けられている。
各インク吐出ヘッド136C、136M、136Y、136K、136R、136G、136Bは、上述した処理液吐出ヘッド130と同様に、インクジェット方式の記録ヘッド(インクジェットヘッド)が適用される。即ち、各インク吐出ヘッド136C、136M、136Y、136K、136R、136G、136Bは、それぞれ対応する色インクの液滴を圧胴126bに保持された記録媒体114に向かって吐出する。
インク貯蔵/装填部(不図示)は、各インク吐出ヘッド136C、136M、136Y、136K、136R、136G、136Bにそれぞれ供給するインクを各々貯蔵するインクタンクを含んで構成される。各インクタンクは所要の流路を介してそれぞれ対応するヘッドと連通されており、各インク吐出ヘッドに対してそれぞれ対応するインクを供給する。インク貯蔵/装填部は、タンク内の液体残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
インク貯蔵/装填部の各インクタンクから各インク吐出ヘッド136C、136M、136Y、136K、136R、136G、136Bにインクが供給され、画像信号に応じて各136C、136M、136Y、136K、136R、136G、136Bから記録媒体114に対してそれぞれ対応する色インクが打滴される。
各インク吐出ヘッド136C、136M、136Y、136K、136R、136G、136Bは、それぞれ圧胴126bに保持される記録媒体114における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有し、そのインク吐出面には画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズル(図8中不図示、図9に符号161で図示)が複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている。各インク吐出ヘッド136C、136M、136Y、136K、136R、136G、136Bが圧胴126bの回転方向(記録媒体114の搬送方向)と直交する方向に延在するように固定設置される。
記録媒体114の画像形成領域の全幅をカバーするノズル列を有するフルラインヘッドがインク色毎に設けられる構成によれば、記録媒体114の搬送方向(副走査方向)について、記録媒体114と各インク吐出ヘッド136C、136M、136Y、136K、136R、136G、136Bを相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち1回の副走査で)、記録媒体114の画像形成領域に1次画像を記録することができる。これにより、記録媒体114の搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシリアル(シャトル)型ヘッドが適用される場合に比べて高速印字が可能であり、プリント生産性を向上させることができる。
本例の画像形成装置100は、最大菊半サイズの記録媒体(記録用紙)までの記録が可能であり、圧胴(描画ドラム)126bとして、記録媒体幅720mmに対応した直径810mmのドラムが用いられる。インク打滴時のドラム回転周速度は、530mm/secである。また、各インク吐出ヘッド136C、136M、136Y、136K、136R、136G、136Bのインク吐出体積は2plであり、記録密度は主走査方向(記録媒体114の幅方向)及び副走査方向(記録媒体114の搬送方向)ともに1200dpiである。
また、本例では、CMYKRGBの7色の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
インク打滴部106に続いて溶媒除去部108が設けられている。インク打滴部106の圧胴(描画ドラム)126bと溶媒除去部108の圧胴(溶媒除去ドラム)126cとの間には、これらに対接するように渡し胴124cが設けられている。これにより、インク打滴部106の圧胴126bに保持された記録媒体114は、各色インクが付与された後に、渡し胴124cを介して溶媒除去部108の圧胴126cに受け渡される。
溶媒除去部108には、圧胴126cの回転方向(図8において反時計回り方向)の上流側から順に、圧胴126cの表面に対向する位置にインク乾燥ユニット138、溶媒除去ローラ140が並んで設けられている。
インク乾燥ユニット138は、上述した用紙予熱ユニット128や処理液乾燥ユニット132と同様に、所定の範囲で温度や風量を制御可能な熱風乾燥機を含んで構成される。インク乾燥ユニット138の熱風乾燥機によって所定の温度(例えば70℃)に加熱された熱風を記録媒体114の表面に吹き付けることにより、記録媒体114上のインク層の溶媒成分(主に水分)を蒸発させる。これにより、記録媒体114に浸透する水分量を抑えることができ、記録媒体114のカールを防止することができる。
溶媒除去ローラ140は、図1に示した定着部22の溶媒除去ローラと同一構成が適用される。即ち、溶媒除去ローラ140は、表面が多孔質体で構成されたローラ状部材であり、記録媒体114上のインク層に溶媒除去ローラ140を接触させることによって、記録媒体114上に残存する残留溶媒(主に高沸点溶媒)を除去する。これにより、高沸点溶媒に起因するインク層(即ち、インク画像)のべたつきを抑え、記録媒体114のブロッキングを防止することができる。また、溶媒除去ローラ140による残留溶媒(主に高沸点溶媒)の除去が行われる前に、記録媒体114上のインク層の溶媒成分(主に水分)を蒸発させておくことによって、処理液との反応によって形成されるインク凝集体(色材凝集体)の凝集力が向上し、溶媒除去ローラ140への色材付着を防止することができる。
溶媒除去部108に続いて定着部110が設けられている。溶媒除去部108の圧胴(溶媒除去ドラム)126cと定着部110の圧胴(定着ドラム)126dとの間には、これらに対接するように渡し胴124dが設けられている。これにより、溶媒除去部108の圧胴126cに保持された記録媒体114は、各色インクが付与された後に、渡し胴124dを介して定着部110の圧胴126dに受け渡される。
定着部110には、圧胴126dの回転方向(図8において反時計回り方向)の上流側から順に、圧胴126cの表面に対向する位置に、インク打滴部106による印字結果を読み取る印字検出部144、加熱ローラ148a、148bがそれぞれ設けられている。
印字検出部144は、インク打滴部106の印字結果(各インク吐出ヘッド136C、136M、136Y、136K、136R、136G、136Bの打滴結果)を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ等)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
加熱ローラ148a、148bは、所定の範囲(例えば100℃〜180℃)で温度制御可能なローラであり、加熱ローラ148と圧胴126dとの間に挟みこまれた記録媒体114を加熱加圧しながら、記録媒体114上に形成された画像を定着させる。
本例では、加熱ローラ148a、148bの加熱温度は110℃、圧胴126dの表面温度は60℃に設定される。また、加熱ローラ148a、148bのニップ圧力は1MPaである。加熱ローラ148a、148bの加熱温度は、処理液又はインクに含有されるポリマー微粒子のガラス転移点温度などに応じて設定することが好ましい。
定着部110に続いて排紙部112が設けられている。排紙部112には、画像が定着された記録媒体114を受ける排紙胴150と、該記録媒体114を積載する排紙台152と、排紙胴150に設けられたスプロケットと排紙台152の上方に設けられたスプロケットとの間に掛け渡され、複数の排紙用グリッパを備えた排紙用チェーン154とが設けられている。
次に、インク打滴部106に配置されるインク吐出ヘッド136C、136M、136Y、136K、136R、136G、136Bの構造について詳説する。なお、インク吐出ヘッド136C、136M、136Y、136K、136R、136G、136Bの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号160によってインク吐出ヘッド(以下、単に「ヘッド」と称することもある。)を示すものとする。
図9(a)はヘッド160の構造例を示す平面透視図であり、図9(b)はその一部の拡大図であり、図9(c)はヘッド160の他の構造例を示す平面透視図である。また、図10はインク室ユニットの立体的構成を示す断面図(図9(a)、(b)中のX−X線に沿う断面図)である。
記録媒体114上に形成されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド160におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド160は、図9(a)、(b)に示すように、インク滴の吐出孔であるノズル161と、各ノズル161に対応する圧力室162等からなる複数のインク室ユニット163を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(記録媒体搬送方向と直交する主走査方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
記録媒体114の搬送方向と略直交する方向に記録媒体114の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図9(a)の構成に代えて、図9(c)に示すように、複数のノズル161が2次元に配列された短尺のヘッドブロック160’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録媒体114の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。また、図示は省略するが、短尺のヘッドを一列に並べてラインヘッドを構成してもよい。
各ノズル161に対応して設けられている圧力室162は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル161と供給口164が設けられている。各圧力室162は供給口164を介して共通流路165と連通されている。共通流路165はインク供給源たるインク供給タンク(不図示)と連通しており、該インク供給タンクから供給されるインクは共通流路165を介して各圧力室162に分配供給される。
圧力室162の天面を構成し共通電極と兼用される振動板166には個別電極167を備えた圧電素子168が接合されており、個別電極167に駆動電圧を印加することによって圧電素子168が変形してノズル161からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路165から供給口164を通って新しいインクが圧力室162に供給される。
本例では、ヘッド160に設けられたノズル161から吐出させるインクの吐出力発生手段として圧電素子168を適用したが、圧力室162内にヒータを備え、ヒータの加熱による膜沸騰の圧力を利用してインクを吐出させるサーマル方式を適用することも可能である。
かかる構造を有するインク室ユニット163を図9(b)に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
即ち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット163を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなり、主走査方向については、各ノズル161が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
なお、本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されず、副走査方向に
1列のノズル列を有する配置構造など、様々なノズル配置構造を適用できる。
また、本発明の適用範囲はライン型ヘッドによる印字方式に限定されず、記録媒体114の幅方向(主走査方向)の長さに満たない短尺のヘッドを記録媒体114の幅方向に走査させて当該幅方向の印字を行い、1回の幅方向の印字が終わると記録媒体114の幅方向と直交する方向(副走査方向)に所定量だけ移動させて、次の印字領域の記録媒体114の幅方向の印字を行い、この動作を繰り返して記録媒体114の印字領域の全面にわたって印字を行うシリアル方式を適用してもよい。
図11は、画像形成装置100のシステム構成を示す要部ブロック図である。画像形成装置100は、通信インターフェース170、システムコントローラ172、メモリ174、モータドライバ176、ヒータドライバ178、プリント制御部180、画像バッファメモリ182、ヘッドドライバ184等を備えている。
通信インターフェース170は、ホストコンピュータ186から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース170にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ186から送出された画像データは通信インターフェース170を介して画像形成装置100に取り込まれ、一旦メモリ174に記憶される。
メモリ174は、通信インターフェース170を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ172を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ174は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ172は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従って画像形成装置100の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。即ち、システムコントローラ172は、通信インターフェース170、メモリ174、モータドライバ176、ヒータドライバ178等の各部を制御し、ホストコンピュータ186との間の通信制御、メモリ174の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ188やヒータ189を制御する制御信号を生成する。
メモリ174には、システムコントローラ172のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。なお、メモリ174は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。メモリ174は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
プログラム格納部190には各種制御プログラムが格納されており、システムコントローラ172の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。プログラム格納部190はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記録媒体のうち、複数の記録媒体を備えてもよい。なお、プログラム格納部190は動作パラメータ等の記録手段(不図示)と兼用してもよい。
モータドライバ176は、システムコントローラ172からの指示にしたがってモータ188を駆動するドライバである。図11には、装置内の各部に配置されるモータ(アクチュエータ)を代表して符号188で図示されている。例えば、図11に示すモータ188には、図8の圧胴126a〜126dや渡し胴124a〜124d、排紙胴150を駆動するモータなどが含まれている。
ヒータドライバ178は、システムコントローラ172からの指示にしたがって、ヒータ189を駆動するドライバである。図11には、画像形成装置100に備えられる複数のヒータを代表して符号189で図示されている。例えば、図11に示すヒータ189には、図8に示す用紙予熱ユニット128、処理液乾燥ユニット132、インク乾燥ユニット138の熱風乾燥機に内蔵されるヒータなどが含まれている。特に本実施の形態では、処理液乾燥ユニット132における乾燥条件を制御することによって、インク打滴時における記録媒体の各層の凝集剤分布を制御している。
溶媒除去制御部179は、システムコントローラ172からの指示にしたがって、溶媒除去ローラ140のニップ圧(加圧力)やニップ時間(加圧時間)などを制御する。記録媒体114の種類やインクの種類ごとに、溶媒除去ローラ140の最適なニップ圧、ニップ時間などが予め求められ、データテーブル化されて所定のメモリ(例えば、メモリ174)に記憶され、記録媒体114の情報や使用インクの情報を取得すると、当該メモリを参照して溶媒除去ローラ140のニップ圧、ニップ時間などが制御される。
プリント制御部180は、システムコントローラ172の制御に従い、メモリ174内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッドドライバ184に供給する制御部である。プリント制御部180において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいて、ヘッドドライバ184を介してヘッド192の吐出液滴量(打滴量)や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。なお、図11には、画像形成装置100に備えられる複数のヘッド(インクジェットヘッド)を代表して符号192で図示されており、これは図8に示すヘッド192には、図8の処理液吐出ヘッド130、インク吐出ヘッド136C、136M、136Y、136K、136R、136G、136Bなどを含んでいる。特に本実施の形態では、インク吐出ヘッド136C、136M、136Y、136K、136R、136G、136Bからインクを吐出するタイミングを制御することによって、インク打滴時における記録媒体の各層の凝集剤分布を制御している。
また、プリント制御部180には画像バッファメモリ182が備えられており、プリント制御部180における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ182に一時的に格納される。また、プリント制御部180とシステムコントローラ172とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ184は、プリント制御部180から与えられる画像データに基づいてヘッド192の圧電素子168に印加される駆動信号を生成するとともに、該駆動信号を圧電素子168に印加して圧電素子168を駆動する駆動回路を含んで構成される。なお、図11に示すヘッドドライバ184には、ヘッド192の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
印字検出部144は、図8で説明したように、ラインセンサを含むブロックであり、記録媒体114に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部180に提供する。プリント制御部180は、必要に応じて印字検出部144から得られる情報に基づいてヘッド192に対する各種補正を行う。
次に、本実施形態の画像形成装置100の作用について説明する。
まず、給紙部102の給紙台120からフィーダボード122に記録媒体114が送り出されると、その記録媒体114は、渡し胴124aを介して、処理液付与部104の圧胴126aに保持され、用紙予熱ユニット128によって予備加熱され、処理液吐出ヘッド130によって処理液が打滴される。続いて、処理液乾燥ユニット132による加熱乾燥が行われ、記録媒体114上に形成された処理液層の溶媒成分(主に水分)が蒸発する。このとき、下流側でインクを打滴した際に、記録媒体12の各層で所定の凝集剤分布になるように乾燥条件を制御する。具体的には、インクを打滴する際の記録媒体12の表面の凝集剤の実効pHが1.67以上7.00以下(凝集剤量では0.000g/m2以上0.100g/m2以下)であり、且つ、コート層内の凝集剤量の実効pHが0.10以上1.70以下(凝集剤量では0.100g/m2以上2.000g/m2以下)である状態になるように、処理液を乾燥させている。
記録媒体114上に処理液層(好ましくは固体状又は半固溶状の凝集処理剤層)が形成された後、処理液付与部104の圧胴126aに保持された記録媒体114は、渡し胴124bを介して、インク打滴部106の圧胴126bに受け渡される。そして、圧胴126bに保持された記録媒体114には、入力画像データに応じて、各インク吐出ヘッド136C、136M、136Y、136K、136R、136G、136Bからそれぞれ対応する色インクが打滴される。
インクを打滴した際、記録媒体12の表面の凝集剤の実効pHが1.67以上7.00以下(凝集剤量では0.000g/m2以上0.100g/m2以下)であり、且つ、コート層内の凝集剤の実効pHが0.10以上1.70以下(凝集剤量では0.100g/m2以上2.000g/m2以下)になるように制御されている。このような状態でインクを打滴することによって、ドットの拡がりを確保でき、且つ、画像の鮮鋭性を高めることができる。
記録媒体114上にインクが打滴された後、インク打滴部106の圧胴126bに保持された記録媒体114は、渡し胴124cを介して、溶媒除去部108の圧胴126cに受け渡される。そして、圧胴126cに保持された記録媒体114がインク乾燥ユニット138に対向する位置を通過する際、インク乾燥ユニット138による加熱乾燥によって記録媒体114上のインク層の溶媒成分(主に水分)が蒸発する。更に、記録媒体114上に残存する残留溶媒(特に高沸点溶媒)は溶媒除去ローラ140によって吸収除去される。これにより、記録媒体114に浸透する水分量を抑えることができるのでカールの発生を抑制することができるとともに、記録媒体114上から高沸点溶媒が除去されるので記録媒体114のブロッキングも防止することができる。
こうして記録媒体114上のインク層から溶媒成分が除去された後、圧胴126cに保持された記録媒体114は、渡し胴124dを介して、定着部110の圧胴126dに受け渡される。そして、圧胴126dに保持された記録媒体114は、印字検出部144によってインク打滴部106の印字結果が読み取られた後、加熱ローラ148a、148bによる加熱加圧によって記録媒体114上に形成された画像の定着が行われる。
画像が定着された記録媒体114は、圧胴126dから排紙胴150に受け渡され、排紙用チェーン154によって排紙台152の上方に搬送され、排紙台152上に積載される。
以上、本発明の画像形成方法及び画像形成装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
12…記録媒体、14…処理液付与部、16…処理液乾燥部、18…インク打滴部、20…インク乾燥部、22…接触溶媒除去部、56…溶媒除去ローラ、100…画像形成装置、102…給紙部、104…処理液付与部、106…インク打滴部、108…溶媒除去部、110…定着部、112…排紙部、114…記録媒体、130…処理液吐出ヘッド、132…処理液乾燥ユニット、136…インク吐出ヘッド、138…インク乾燥ユニット、140…溶媒除去ローラ、160…ヘッド、161…ノズル、162…圧力室、168…圧電素子、179…溶媒除去制御部、180…プリント制御部