以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
《インクジェット記録装置の全体構成》
図1は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の一実施形態を示す全体構成図である。
このインクジェット記録装置100は、用紙(枚葉紙)Pに水性インク(水及び水に可溶な溶媒に染料、顔料などの色材を溶解又は分散させたインク)を用いてインクジェット方式で画像を記録する枚葉式のインクジェットプリンタであり、主として、記録媒体である用紙Pの表面(画像記録面、以下単に記録面という)に所定の処理液を付与する処理液付与部110と、処理液付与部110で処理液が付与された用紙Pの乾燥処理を行う処理液乾燥処理部120と、処理液乾燥処理部120で乾燥処理が施された用紙Pの記録面に水性インクを用いてインクジェット方式で画像を記録する画像記録部130と、画像記録部130で画像が記録された用紙Pの乾燥処理を行うインク乾燥処理部140と、を備えて構成される。
〈処理液付与部〉
処理液付与部110は、用紙Pの記録面に所定の処理液を付与する処理液付与手段である。この処理液付与部110は、主として、用紙Pを搬送する処理液付与ドラム112と、処理液付与ドラム112によって搬送される用紙Pの記録面に所定の処理液を付与する処理液付与ユニット114と、を備えて構成される。
処理液付与ドラム112は、円筒状に形成され、図示しないモータに駆動されて回転する。処理液付与ドラム112は、図示しないグリッパによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けながら、用紙Pを搬送する。
処理液付与ユニット114は、処理液付与ドラム112によって搬送される用紙Pの記録面に処理液をローラ塗布する。この処理液付与ユニット114は、用紙Pに処理液を塗布する塗布ローラ、処理液が貯留される処理液槽、処理液槽に貯留された処理液を汲み上げて、塗布ローラに供給する汲み上げローラ等から構成される。塗布ローラは、用紙Pの幅に対応して設けられ、用紙Pに押圧当接されて、その周面に付与された処理液を用紙Pに塗布する。これにより、処理液付与ドラム112によって搬送される用紙Pの記録面には、処理液が一様に付与される。
なお、本例では、ローラ塗布により用紙Pの記録面に処理液を一様に付与しているが、処理液を一様に付与する方法はこれに限定されるものではない。例えば、インクジェットヘッドを用いて付与する構成やスプレーにより一様に付与する構成を採用することもできる。
また、処理液は、記録面の全面ではなく、用紙Pの記録面の少なくとも記録領域に一様に付与していればよい。記録領域とは、後述する画像記録部において画像を記録することができる領域を指す。
この処理液は、後段の画像記録部130で用紙Pの記録面に打滴する水性インク中の色材を凝集させる機能を有している。このような処理液を用紙Pの記録面に塗布して水性インクを打滴することにより、汎用の印刷用紙を用いた場合であっても、着弾干渉等を起こすことなく、高品位な印刷を行うことができる。
〈処理液乾燥処理部〉
処理液乾燥処理部120は、記録面に処理液が一様に付与された用紙Pを乾燥処理する予備乾燥手段(予備乾燥装置)である。この処理液乾燥処理部120は、主として、用紙Pを搬送する処理液乾燥処理ドラム122と、用紙搬送ガイド124と、処理液乾燥処理ドラム122によって搬送される用紙Pを乾燥させる処理液乾燥処理ユニット126と、を備えて構成される。
処理液乾燥処理ドラム122は、円筒状に組んだ枠体で構成され、図示しないモータに駆動されて回転する。処理液乾燥処理ドラム122は、図示しないグリッパによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを搬送する。
用紙搬送ガイド124は、処理液乾燥処理ドラム122による用紙Pの搬送経路に沿って配設され、用紙Pの搬送をガイドする。
処理液乾燥処理ユニット126は、処理液乾燥処理ドラム122の内側に設置され、処理液乾燥処理ドラム122によって搬送される用紙Pの記録面に向けて熱風を吹き当てて乾燥処理する。
図2は、処理液乾燥処理ユニット126を上部から(処理液乾燥処理ドラム122の中心から)見た模式図である。処理液乾燥処理ユニット126は、用紙Pの記録面に対向するように、複数のファン200がマトリクス状に配置されている。図2に示した例では、搬送方向に3行、搬送方向に直交する方向に8列の、計24個のファン200を備えている。なお、ファン200の配置の行数、列数は特に限定されるものではない。
これら24個のファン200の上部には、図示しないヒータ(空気加熱装置)が設けられている。ファン200は、その回転により、ヒータによって加熱された空気を、処理液乾燥処理ドラム122によって搬送される用紙Pに対して送風する。即ち、処理液乾燥処理ユニット126は、各ファン200を個別に制御することにより、用紙Pの各領域に対して、局部的に熱風を吹き当てることが可能となっている。
処理液乾燥処理部120は、以上のように構成される。処理液付与部110の処理液付与ドラム112から受け渡された用紙Pは、処理液乾燥処理ドラム122で受け取られる。処理液乾燥処理ドラム122は、用紙Pの先端をグリッパで把持して回転することにより、用紙Pを搬送する。この際、処理液乾燥処理ドラム122は、用紙Pの記録面を内側に向けて搬送する。用紙Pは、処理液乾燥処理ドラム122によって搬送される過程で、処理液乾燥処理ドラム122の内側に設置された処理液乾燥処理ユニット126の各ファン200から熱風が記録面に吹き当てられて、乾燥処理される。これにより、用紙Pの記録面にインク凝集層が形成される。
〈画像記録部〉
画像記録部130は、用紙Pの記録面にC、M、Y、Kの各色のインク(水性インク)の液滴を打滴して、用紙Pの記録面にカラー画像を描画する画像記録手段である。この画像記録部130は、主として、用紙Pを搬送する画像記録ドラム132と、画像記録ドラム132によって搬送される用紙PにC、M、Y、Kの各色のインク滴を吐出するインクジェットヘッド134C、134M、134Y、134Kと、を備えて構成される。
画像記録ドラム132は、円筒状に形成され、図示しないモータに駆動されて回転する。画像記録ドラム132は、図示しないグリッパによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けながら、用紙Pを搬送する。また、画像記録ドラム132は、その周面に図示しない多数の吸引穴が所定のパターンで形成されている。画像記録ドラム132の周面に巻き掛けられた用紙Pは、この吸引穴から吸引されることにより、画像記録ドラム132の周面に吸着保持されながら搬送される。これにより、高い平滑性をもって用紙Pを搬送することができる。
なお、この吸引穴からの吸引は一定の範囲でのみ作用し、少なくともインクジェットヘッド134C、134M、134Y、134Kによるインクの打滴位置では、用紙Pが画像記録ドラム132の周面に吸着保持されるように、吸着領域が設定される。
なお、用紙Pを画像記録ドラム132の周面に吸着保持させる機構は、上記の負圧による吸着方法に限らず、静電吸着による方法を採用することもできる。
各インクジェットヘッド134C、134M、134Y、134Kは、画像記録ドラム132による用紙Pの搬送経路に沿って一定の間隔をもって配置される。このインクジェットヘッド134C、134M、134Y、134Kは、用紙幅に対応したラインヘッドで構成される。各インクジェットヘッド134C、134M、134Y、134Kは、画像記録ドラム132による用紙Pの搬送方向に対して直交して配置されるとともに、そのノズル面が画像記録ドラム132の周面に対向するように配置される。各インクジェットヘッド134C、134M、134Y、134Kは、ノズル面に形成されたノズル列から、画像記録ドラム132に向けてインクの液滴を吐出することにより、画像記録ドラム132によって搬送される用紙Pに画像を記録する。
画像記録部130は、以上のように構成される。処理液乾燥処理部120の処理液乾燥処理ドラム122から受け渡された用紙Pは、画像記録ドラム132で受け取られる。画像記録ドラム132は、用紙Pの先端をグリッパで把持して回転することにより、用紙Pを搬送する。画像記録ドラム132に受け渡された用紙Pは、画像記録ドラム132の吸着穴から吸引されて、画像記録ドラム132の外周面上に吸着保持される。用紙Pは、この状態で搬送されて、各インクジェットヘッド134C、134M、134Y、134Kを通過する。そして、その通過時に各インクジェットヘッド134C、134M、134Y、134KからC、M、Y、Kの各色のインクの液滴が表面に打滴されて、表面にカラー画像が描画される。用紙Pの表面にはインク凝集層が形成されているので、フェザリングやブリーディング等を起こすことなく、高品位な画像を記録することができる。
この後、用紙Pは、吸着が解除された後、インク乾燥処理部140へと受け渡される。
〈インク乾燥処理部〉
インク乾燥処理部140は、画像記録後の用紙Pを乾燥処理し、用紙Pの表面に残存する水分を除去する。インク乾燥処理部140は、主として、画像が記録された用紙Pを搬送する搬送ベルト142と、搬送ベルト142によって搬送される用紙Pを乾燥処理するインク乾燥処理ユニット144と、を備えて構成される。
搬送ベルト142は、無端状の構造を有しており、図示しない1対のローラ間に巻き掛けられている。用紙Pは搬送ベルト142に載置され、搬送ベルト142はローラが回転することにより用紙Pを搬送する。
インク乾燥処理ユニット144は、搬送ベルト142によって搬送される用紙Pの記録面に向けて熱風を吹き当てて乾燥処理する。インク乾燥処理ユニット144は、インク乾燥処理ユニット144の処理能力や用紙Pの搬送速度(=印刷速度)等に応じて複数配置してもよい。すなわち、画像記録部130から受け取った用紙Pが搬送ベルト142によって搬送されている間に乾燥させることができるように配置される。
インク乾燥処理部140は、以上のように構成される。画像記録部130の画像記録ドラム132から受け渡された用紙Pは、搬送ベルト142で受け取られる。搬送ベルト142は、載置された用紙Pを搬送する。用紙Pは、インク乾燥処理ユニット144によって乾燥処理が施される。すなわち、記録面に熱風が吹き当てられて、乾燥処理が施される。
《制御系》
図3は、本実施の形態のインクジェット記録装置100の制御系の概略構成を示すブロック図である。
同図に示すように、インクジェット記録装置100は、システムコントローラ160、通信部162、画像メモリ164、搬送制御部166、処理液付与制御部168、処理液乾燥制御部170、画像記録制御部172、インク乾燥制御部174、操作部176、表示部178等が備えられている。
システムコントローラ160は、インクジェット記録装置100の各部を統括制御する制御手段として機能するとともに、各種演算処理を行う演算手段として機能する。このシステムコントローラ160は、CPU、ROM、RAM等を備えており、所定の制御プログラムに従って動作する。ROMには、このシステムコントローラ160が実行する制御プログラムや制御に必要な各種データが格納されている。
通信部162は、所要の通信インターフェースを備え、その通信インターフェースと接続されたホストコンピュータ180との間でデータの送受信を行う。
画像メモリ164は、画像データを含む各種データの一時記憶手段として機能し、システムコントローラ160を通じてデータの読み書きが行われる。通信部162を介してホストコンピュータから取り込まれた画像データは、この画像メモリ164に格納される。
搬送制御部166は、インクジェット記録装置100における用紙Pの搬送系を制御する。すなわち、処理液付与部110における処理液付与ドラム112、処理液乾燥処理部120における処理液乾燥処理ドラム122、画像記録部130における画像記録ドラム132、インク乾燥処理部140の搬送ベルト142の駆動を制御する。
搬送制御部166は、システムコントローラ160からの指令に応じて、搬送系を制御し、処理液付与部110からインク乾燥処理部140まで滞りなく用紙Pが搬送されるように制御する。
処理液付与制御部168は、システムコントローラ160からの指令に応じて処理液付与部110を制御する。具体的には、処理液付与ドラム112によって搬送される用紙Pに適切に処理液が塗布されるように、処理液付与ユニット114の駆動を制御する。
処理液乾燥制御部170は、システムコントローラ160からの指令に応じて処理液乾燥処理部120を制御する。具体的には、処理液乾燥処理ドラム122によって搬送される用紙Pが適切に乾燥処理されるように、処理液乾燥処理ユニット126の駆動を制御する。
画像記録制御部172は、システムコントローラ160からの指令に応じて画像記録部130を制御する。具体的には、画像記録ドラム132によって搬送される用紙Pに所定の画像が記録されるように、インクジェットヘッド134C、134M、134Y、134Kの駆動を制御する。
インク乾燥制御部174は、システムコントローラ160からの指令に応じてインク乾燥処理部140を制御する。具体的には、搬送ベルト142によって搬送される用紙Pに適切に熱風が送風されるように、インク乾燥処理ユニット144の駆動を制御する。
操作部176は、所要の操作手段(例えば、操作ボタンやキーボード、タッチパネル等)を備え、その操作手段から入力された操作情報をシステムコントローラ160に出力する。システムコントローラ160は、この操作部176から入力された操作情報に応じて各種処理を実行する。
表示部178は、所要の表示装置(たとえば、LCDパネル等)を備え、システムコントローラ160からの指令に応じて所要の情報を表示装置に表示させる。
上記のように、用紙Pに記録する画像データは、ホストコンピュータから通信部162を介してインクジェット記録装置100に取り込まれる。取り込まれた画像データは、画像メモリ164に格納される。
システムコントローラ160は、この画像メモリ164に格納された画像データに所要の信号処理を施してドットデータを生成する。そして、生成したドットデータに従って画像記録部130の各インクジェットヘッド134C、134M、134Y、134Kの駆動を制御し、その画像データが表す画像を用紙に記録する。
ドットデータは、一般に画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って生成される。色変換処理は、sRGBなどで表現された画像データ(たとえば、RGB8ビットの画像データ)をインクジェット記録装置100で使用するインクの各色のインク量データに変換する処理である(本例では、C、M、Y、Kの各色のインク量データに変換する。)。ハーフトーン処理は、色変換処理により生成された各色のインク量データに対して誤差拡散等の処理で各色のドットデータに変換する処理である。
システムコントローラ160は、画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って各色のドットデータを生成する。そして、生成した各色のドットデータに従って、対応するインクジェットヘッドの駆動を制御することにより、画像データが表す画像を用紙に記録する。
《第1の実施形態》
以上のように構成されたインクジェット記録装置100による第1の実施形態について説明する。本実施形態においては、システムコントローラ160において用紙Pに記録する画像データから用紙Pに付与されるインクの水分量の分布を算出し、インク付与後の用紙Pの記録領域の水分量の分布を平滑化するための処理液の水分量の分布を算出し、この算出した処理液の水分量の分布となるように処理液乾燥処理部120において乾燥処理を行う。
まず、用紙Pの記録面の局部的な処理液の乾燥制御について説明する。
図4は、処理液乾燥処理ドラム122により搬送される用紙Pと、この用紙Pの処理液を乾燥させる処理液乾燥処理ユニット126とを示す図である。前述したように、処理液乾燥処理ユニット126は、搬送方向に3行、搬送方向に直交する方向に8列の、計24個のファン200を備えている。ここでは、各ファン200の位置を、搬送方向にA行、B行、C行、搬送方向に直交する方向に1列、2列、・・・、8列、として特定する。
処理液付与部110において処理液が記録面の全面に一様に付与された用紙Pは、処理液乾燥処理ドラム122により、24個のファン200に対向する位置に搬送される。本実施形態では、用紙Pの記録面について、各ファン200に対向する領域毎に、搬送方向にA行、B行、C行、搬送方向に直交する方向に1列、2列、・・・、8列、の24箇所の領域として仮想的に分割し、この24箇所に分割した領域を単位領域として乾燥処理を行う。
まず、システムコントローラ160は、通信部162を介してホストコンピュータから用紙Pに記録する画像データを取得し、画像メモリ164に格納する。
次に、システムコントローラ160は、画像メモリ164に格納された画像データに基づいて、用紙Pの記録領域におけるインクの付与量(水分量)の分布を算出する。すなわち、システムコントローラ160は、インク分布算出手段として機能する。
本実施形態では、単位領域毎のインクの水分量を算出し、単位領域毎の分布を算出する。この算出処理は、公知の方法により行うことができる。なお、ここでは、用紙PのA行2列の領域、A行7列の領域、B行5列の領域、の3つの領域に対してインクが付与され、その他の領域にはインクが付与されないものとする。
さらに、システムコントローラ160は、画像記録部130でのインク付与後における用紙Pのインクの水分量と処理液の水分量の和の分布を平滑化するための、処理液の水分量の分布を算出する。具体的には、単位領域毎に、処理液乾燥処理後の処理液の水分量とインク付与後におけるインクの水分量との和が一定の範囲R内に収まるための処理液の水分量の分布を算出する。
ここでは、用紙PのA行2列の領域、A行7列の領域、B行5列の領域、の3つの領域の処理液の水分量が他の領域の水分量よりも少ない分布を算出する。このように、システムコントローラ160は、処理液分布算出手段として機能する。
したがって、処理液乾燥制御部170は、システムコントローラ160からの指令により、用紙PのA行2列の領域、A行7列の領域、B行5列の領域、の3つの領域の処理液の水分量を減少させるように各ファン200を制御する。すなわち、処理液乾燥制御部170は、予備乾燥制御手段として機能する。
具体的には、用紙Pが処理液乾燥処理ユニット126に対向する位置を通過する際に、A行2列、A行7列、B行5列、の3つのファン200を高速に回転させることで、これらのファン200に対向する用紙PのA行2列の領域、A行7列の領域、B行5列の領域、の3つの領域の処理液の乾燥を他の領域よりも促進させる。その他のファン200については、低速に回転、又は停止させておく。
その結果、用紙Pの単位領域のうち、A行2列の領域、A行7列の領域、B行5列の領域について、処理液の水分量を他の領域よりも減少させることができる。このように、処理液乾燥制御部170は、用紙Pの記録面に対して処理液の乾燥を局部的に(選択的に)制御することで、処理液の水分量に分布を持たせることができる。
次に、このような処理液乾燥処理の制御を行い、用紙Pに、図21(a)に示した画像データに対応する画像を記録する場合の水分量の分布について説明する。図5(a)は、処理液付与部110によって記録面に処理液が付与された用紙Pの断面模式図と、用紙Pの各領域の表面温度及び水分量の分布を示すグラフである。処理液付与部110では、ローラ塗布により処理液が用紙Pの記録面に一様に付与されるため、用紙Pの水分量の分布は各領域において一定である。
システムコントローラ160は、図21(a)に示した画像データに基づいて、用紙Pのインクの水分量の分布を算出する(インク分布算出工程)。例えば、単位領域毎のインクの水分量を算出すればよい。
次に、システムコントローラ160は、画像記録部130でのインク付与後における用紙Pのインクの水分量と処理液の水分量の和の分布を平滑化するための、処理液の水分量の分布を算出する(処理液分布算出工程)。この場合、インクが付与される領域の水分量が他の領域の水分量よりも少ない分布を算出する。
そして、図4を用いて説明したように、インクが付与される領域について、処理液の乾燥をより促進するように、処理液乾燥制御部170は、システムコントローラ160からの指令により、処理液乾燥処理ユニット126の各ファン200を制御する。
図5(b)は、処理液乾燥処理部120によって乾燥処理された用紙Pの断面模式図と、用紙Pの各領域の水分量の分布を示すグラフである。同図に示すように、処理液乾燥制御部170による各ファン200の制御により、インクが付与される領域の表面温度が上昇する。また、この温度の上昇に伴い、当該領域の水分量はそれ以外の領域よりも減少する。
その後、画像記録部130により、用紙Pの記録面にインクが付与される。図5(c)は、インクが付与された用紙Pの断面模式図と、用紙Pの各領域の水分量の分布を示すグラフである。同図に示すように、インクが付与された領域は、水分量が増加している。しかし、図5(b)に示したように、インクが付与される領域の処理液の水分量は、それ以外の領域よりも事前に減少させてある。したがって、インクが付与された領域とインクが付与されていない領域において、水分量が平滑化されており、水分量が最大の領域と最小の領域の水分量の差は、一定の範囲に収められている。
最後に、インク乾燥処理部140により、用紙Pの全面が一様に乾燥処理される。図5(d)は、乾燥処理された用紙Pの断面模式図と、用紙Pの各領域の水分量の分布を示すグラフである。同図に示すように、インクが付与された領域とインクが付与されていない領域の水分量の差が予め一定の範囲に収められているため、乾燥処理後の用紙Pの表面温度分布も平滑化されたものとなっている。
図5(e)は、乾燥後の用紙Pの記録面を示す模式図である。同図に示すように、水分量の違いや過乾燥が発生していないため、図21(d)において発生していた定着しわやカックルは、発生しない。
このように、システムコントローラ160において用紙Pに記録する画像データから用紙Pに付与されるインクの水分量の分布を算出し、インク付与後におけるインク及び処理液の水分量の分布が平滑化されるように処理液乾燥処理部120において乾燥処理を行い、処理液の水分量の分布を制御することで、処理液を記録媒体の記録領域の全面に一様に付与した場合であっても、画像記録後の乾燥によるしわやカックルの発生を防止することができる。
なお、ここではインクが付与される領域とインクが付与されない領域についての処理液乾燥処理について説明したが、実際に記録される画像では、インクの付与量は領域毎に様々な値となる。このような場合には、インクの付与量に応じて各ファン200の送風量を制御すればよい。
すなわち、インクの付与量が多量の領域に対しては、対向するファン200の風量を強くすることで乾燥強度を高くし、インクの付与量が少量の領域に対しては、対向するファン200の風量を弱くすることで乾燥強度を低くし、インクが付与されない領域に対しては、対向するファン200を停止することで乾燥強度をさらに低くする等の制御を行うことで、インクの付与量に応じた処理液の乾燥処理が可能である。さらに細かい乾燥処理制御を行うために、ファン200の風量調整は、無段階に行えるように構成することが好ましい。
図6は、画像濃度がそれぞれ異なる、すなわち付与されるインクの水分量がそれぞれi1、i2、i3(i1<i2<i3)である用紙Pの単位領域a、単位領域b、単位領域cの、各工程における水分量の変化を示す図であり、横軸はインクジェット記録装置100における各工程を、縦軸は用紙Pの各領域における水分量を示している。
同図に示すように、まず処理液付与部110による処理液付与工程においては、用紙Pの全面に一様に処理液が付与されるため、領域a〜cの水分量は同様に上昇する。
次に、処理液乾燥処理部120よる処理液乾燥工程(予備乾燥工程)では、付与されるインクの水分量が最も少ない領域aでは弱く、次に少ない領域bでは強く、最も多い領域cではさらに強く乾燥処理が施される。即ち、それぞれの領域に対向するファン200の風量を、領域a<領域b<領域cとなるように制御する。その結果、図6に示すように、処理液乾燥工程終了時の各領域の水分量は、領域a>領域b>領域cとなる。
次に、画像記録部130による画像記録工程において、領域a、領域b、領域cに対してそれぞれi1、i2、i3の水分量を含むインクが付与される。このとき、領域a、領域b、領域cのうち、水分量が最大の領域(領域b、領域c)と最小の領域(領域a)の水分量の差は、一定の範囲R内に収まっている。
最後に、インク乾燥処理部140によるインク乾燥工程において、用紙Pの全面が一様に乾燥処理される。乾燥工程前の領域a、領域b、領域cの水分量が、所定の範囲Rに収まっているため、水分量が最大の領域に応じて乾燥を行っても、過乾燥が発生せず、定着しわやカックルの発生を抑制することができる。
《第1の実施形態の変形例》
第1の実施形態の処理液乾燥処理ユニット126は、複数のファン200がマトリクス状に配置されていたが、一列に配置する態様も可能である。
図7(a)は、処理液乾燥処理ドラム122により搬送される用紙Pと、処理液乾燥処理ユニット126´を上部から見た模式図である。処理液乾燥処理ユニット126´は、用紙Pの記録面に対向するように、8個のファン200が搬送方向に1列に配置されている。
この処理液乾燥処理ユニット126´によって、用紙Pの記録面に一様に付与された処理液を選択的に乾燥処理する方法について説明する。
図7(a)に示すように、処理液付与部110において処理液が記録面の全面に一様に付与された用紙Pは、処理液乾燥処理ユニット126´に対向する位置に搬送される。ここでは、用紙PのA行2列の領域、A行7列の領域、B行5列の領域、の3つの領域に対して特に乾燥処理を促進させるものとする。
まず、処理液乾燥制御部170は、用紙PのA行の領域が各ファン200に対向する位置に到達したときに、左から2番目のファン200、及び左から7列目のファン200を高速に回転させる。また、その他のファン200については、低速に回転、又は停止させておく。これにより、用紙PのA行2列の領域、及びA行7列の領域に対して特に乾燥処理を促進させることができる。
次に、処理液乾燥制御部170は、用紙PのB行の領域が各ファン200に対向する位置に到達したときに、左から5番目のファン200を高速に回転させ、その他のファン200については、低速に回転、又は停止させる。これにより、用紙PのB行5列の領域に対して特に乾燥処理を促進させることができる。
最後に、処理液乾燥制御部170は、用紙PのC行の領域が各ファン200に対向する位置に到達したときに、全てのファン200については、低速に回転、又は停止させる。
このように制御することにより、用紙Pの領域のうち、A行2列の領域、A行7列の領域、B行5列の領域について、処理液の水分量を他の領域よりも減少させることができる。即ち、処理液乾燥制御部170は、処理液乾燥処理ユニット126´によって用紙Pの記録面を単位領域毎に局部的に処理液を乾燥させることができる。
これまでは、用紙Pの記録面の処理液を乾燥させるために、用紙Pの記録面に熱風を送風するファン200を用いたが、処理液を乾燥させる手段はこれに限定されない。
例えば、図7(b)に示した処理液乾燥処理ユニット210のように、用紙Pの記録面にレーザ光を照射して処理液を乾燥させる複数のレーザ照射部212を用いてもよい。
図7(b)のように、レーザ照射部212を一列に配置した場合には、図7(a)を用いて説明した制御と同様に制御することで、用紙Pの記録面の単位領域毎に選択的に処理液を乾燥させることができる。また、レーザ照射部212をマトリクス状に配置する態様も可能である。この場合は、図4を用いて説明した制御と同様に制御すればよい。
なお、本変形例では、用紙Pの分割領域の搬送方向の長さは、適宜決めることができる。ファン200の搬送方向における送風領域長さや、レーザ照射部212の搬送方向における照射領域長さよりも大きければよい。
《第2の実施形態》
図8は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の一実施形態を示す全体構成図である。本実施形態における処理液乾燥処理部120は、図1に示した処理液乾燥処理ユニット126に代えて、処理液乾燥処理ユニット128を備えている。処理液乾燥処理ユニット128は、図8に示すように、用紙搬送ガイド124の表面に配置されている。
図9は、処理液乾燥処理ドラム122により搬送される用紙Pと、用紙搬送ガイド124に埋め込まれた処理液乾燥処理ユニット128を処理液乾燥処理ドラム122側から見た模式図である。処理液乾燥処理ユニット128は、用紙Pの背面(記録面の裏面)に対向するように、複数のラバーヒータ220がマトリクス状に配置されている。図9に示した例では、搬送方向に3行、搬送方向に直交する方向に8列の、計24個のラバーヒータ220を備えている。なお、ラバーヒータ220の配置の行数、列数は特に限定されるものではない。
このように、ラバーヒータ220は、用紙Pの背面から用紙Pに接触して、用紙Pの24箇所の領域を局所的に加熱可能に構成されている。なお、熱伝導性の高い部材で構成された用紙搬送ガイド124にラバーヒータ220を内蔵し、用紙搬送ガイド124と用紙Pの接触面をラバーヒータ220が加熱することで、用紙Pを加熱するように構成してもよい。
次に、処理液乾燥処理ユニット128を用いた場合の、局所的な処理液の乾燥処理制御について説明する。
まず、システムコントローラ160は、画像メモリ164に格納された画像データに基づいて、用紙Pの記録領域におけるインクの付与量(水分量)の分布を算出する。本実施形態では、単位領域毎のインクの水分量を算出し、単位領域毎の分布を算出する。これまでと同様に、用紙PのA行2列の領域、A行7列の領域、B行5列の領域、の3つの領域に対してインクが付与され、その他の領域にはインクが付与されないものとする。
次に、システムコントローラ160は、画像記録部130でのインク付与後における用紙Pのインクの水分量と処理液の水分量の和の分布を平滑化するための、処理液の水分量の分布を算出する。これまでと同様に、用紙PのA行2列の領域、A行7列の領域、B行5列の領域、の3つの領域の処理液の水分量が他の領域よりも少ない分布を算出する。
処理液乾燥制御部170は、システムコントローラ160からの指令により、用紙Pが処理液乾燥処理ユニット128に対向する位置を通過する際に、A行2列、A行7列、B行5列、の3つのラバーヒータ220の温度を高くし、その他のラバーヒータ220の温度を低くする。これにより、これらのラバーヒータ220に対向する用紙PのA行2列の領域、A行7列の領域、B行5列の領域、の3つの領域が他の領域よりも高熱に加熱される。したがって、この3つの領域は、他の領域よりも処理液の乾燥が促進される。
このように、処理液乾燥処理ユニット128を用いて、インクの付与量の多い領域における処理液の乾燥を他の領域よりも促進させることで、処理液の水分量に分布を持たせることができる。
なお、ラバーヒータ220は、図7を用いて説明したように、一列に配置する態様も可能である。
また、処理液乾燥処理ドラム122を処理液付与ドラム112や画像記録ドラム132と同様の、用紙Pを周面に巻き掛けながら用紙Pを搬送するように構成するとともに、この処理液乾燥処理ドラムに図9に示す処理液乾燥処理ユニット128を配置する態様も可能である。この場合、処理液乾燥処理ドラム122を1回の回転で2枚の用紙Pが搬送できるように構成した場合には、図9に示す処理液乾燥処理ユニット128を2箇所に配置すればよい。
さらに、ファン200、レーザ照射部212、ラバーヒータ220を組み合わせて、用紙Pを局所的に加熱する構成としてもよい。
《第3の実施形態》
図10は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の一実施形態を示す全体構成図である。本実施形態におけるインクジェット記録装置100は、処理液乾燥処理部120及び画像記録部130が、一体となって構成されている。
図11は、プラテン(図11では不図示、図10の符号250)により搬送される用紙Pと、処理液乾燥処理部120及び画像記録部130とを上部から見た模式図である。同図に示すように、処理液乾燥処理部120及び画像記録部130は、処理液乾燥処理ユニット230、インクジェットヘッド240C、240M、240Y、240K、これらを搭載したキャリッジ260、及びキャリッジ260の搬送方向と直交する方向への移動をガイドするガイド部材262を備えている。
キャリッジ260は、図示しない駆動手段により、ガイド部材262に沿って自在に移動可能に構成されている。
処理液乾燥処理ユニット230は、インクジェットヘッド240C、240M、240Y、240Kよりも用紙Pの搬送方向上流側に配置されている。処理液乾燥処理ユニット230は、レーザ照射部232を有しており、レーザ照射部232から用紙Pの記録面にレーザ光を照射して、用紙Pの記録面に付与された処理液を乾燥させる。
インクジェットヘッド240C、240M、240Y、240Kは、プラテン250によって搬送される用紙PにC、M、Y、Kの各色のインク滴を吐出して、用紙Pの記録面に画像を形成する。
次に、処理液乾燥処理ユニット230を用いた場合の、局部的な処理液の乾燥処理制御について説明する。
まず、システムコントローラ160は、画像メモリ164に格納された画像データに基づいて、用紙Pの記録領域におけるインクの付与量(水分量)の分布を算出する。本実施形態では、単位領域毎のインクの水分量を算出し、単位領域毎の分布を算出する。これまでと同様に、用紙PのA行2列の領域、A行7列の領域、B行5列の領域、の3つの領域に対してインクが付与され、その他の領域にはインクが付与されないものとする。
処理液付与部110で処理液が付与された用紙Pは、プラテン250に受け渡され、プラテン250により搬送方向に搬送される。
ここで、システムコントローラ160は、画像記録部130でのインク付与後における用紙Pのインクの水分量と処理液の水分量の和の分布を平滑化するための、処理液の水分量の分布を算出する。すなわち、用紙PのA行2列の領域、A行7列の領域、B行5列の領域、の3つの領域の処理液の水分量が他の領域よりも少ない分布を算出する。
処理液乾燥制御部170は、システムコントローラ160からの指令により、用紙PのA行の領域が処理液乾燥処理ユニット230に対向する位置を通過する際に、キャリッジ260を用紙Pの搬送方向に直交する方向に移動させながら、レーザ照射部232から用紙PのA行2列の領域及びA行7列の領域に対してレーザ光を照射させる。A行のその他の領域に対しては、レーザ光を弱く照射、又は照射を停止する。
さらに用紙Pがプラテン250により搬送されると、用紙PのA行の領域がインクジェットヘッド240C、240M、240Y、240Kに対向する位置に到達するとともに、用紙PのB行の領域が処理液乾燥処理ユニット230に対向する位置に到達する。
画像記録制御部172及び処理液乾燥制御部170は、システムコントローラ160からの指令により、キャリッジ260を用紙Pの搬送方向に直交する方向に移動させながら、インクジェットヘッド240C、240M、240Y、240Kにより用紙PのA行2列の領域及びA行7列の領域にインクを付与させるとともに、レーザ照射部232により用紙PのB行5列の領域に対してレーザ光を照射させる。B行のその他の領域に対しては、レーザ光を弱く照射、又は照射を停止する。
さらに用紙Pがプラテン250により搬送されると、用紙PのB行の領域がインクジェットヘッド240C、240M、240Y、240Kに対向する位置に到達するとともに、用紙PのC行の領域が処理液乾燥処理ユニット230に対向する位置に到達する。
画像記録制御部172は、システムコントローラ160からの指令により、キャリッジ260を用紙Pの搬送方向に直交する方向に移動させながら、インクジェットヘッド240C、240M、240Y、240Kにより用紙PのB行5列の領域にインクを付与させる。また、処理液乾燥制御部170は、システムコントローラ160からの指令により、用紙PのC行の領域に対しては、レーザ光を弱く照射、又は照射を停止する。
さらに用紙Pがプラテン250により搬送されると、用紙PのC行の領域がインクジェットヘッド240C、240M、240Y、240Kに対向する位置に到達する。
画像記録制御部172は、システムコントローラ160からの指令により、キャリッジ260を用紙Pの搬送方向に直交する方向に移動させるが、用紙PのC行の領域にはインクを付与させない。
このように、処理液乾燥処理ユニット230を用いて、インクの水分量の分布に応じた乾燥制御を行うことができ、処理液の水分量に分布を持たせることができる。
なお、図12(a)に示すように、用紙Pに画像Cを記録する場合には、画像Cの境界(縁)部分にカックルが発生しやすく、定着しわとなる。これを防止するためには、図12(b)に示すように、インクの付与量が多い部分を強く乾燥し、インクの付与量が少ない方向へ向かって徐々に乾燥を弱くするように乾燥勾配を持たせればよい。これにより、画像Cの境界部分における変形を防止することができる。
また、インク乾燥処理部140において、インクの付与量の多い領域に集中的に加熱処理を行うと、境界部分においてしわが発生する可能性がある。これを防止するためには、処理液乾燥処理部120において、当該インク量の多い領域よりも一回り広い範囲を加熱することで乾燥勾配を持たせればよい。これにより、境界部分における変形を防止することができる。
例えば、図13(a)に示すように、インク乾燥処理部140が、6行×5列の30領域に分割して乾燥可能に構成されており、A行1列、C行5列、E行5列、の3つの領域においてインクの付与量が多い場合には、この3つの領域に対して強く加熱する必要がある。
この場合には、処理液乾燥処理部120において、図13(b)に示すように、予め上記の3つの領域を含むA行1列、B行3列、C行3列、の領域に対して乾燥処理を行えばよい。
このように処理液乾燥処理を行うことにより、境界部分における変形を防止することができる。
《第4の実施形態》
本実施の形態では、処理液を付与する前の用紙Pに対し、局所冷却を行う。
図14は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の一実施形態を示す全体構成図である。図1に示すインクジェット記録装置100とは、用紙冷却部150を備えたところが異なる。本実施形態では、この用紙冷却部150と、処理液乾燥処理部120とで、予備乾燥手段(予備乾燥装置)を構成する。
用紙冷却部150は、処理液付与部110の前段に設けられており、処理液が付与される前の用紙Pに対して、局部的な冷却を行う。用紙冷却部150は、用紙Pを搬送する搬送ベルト152と、搬送ベルト152によって搬送される用紙Pに対して局部冷却を行う局部冷却処理ユニット154と、を備えて構成される。
搬送ベルト152は、用紙Pを載置して搬送する搬送手段であり、インク乾燥処理部140の搬送ベルト142と同様に構成されている。なお、用紙Pを載置して搬送するものであれば、搬送ドラム等の他の搬送手段を用いてもよい。
局部冷却処理ユニット154は、搬送ベルト152の上部に設置され、下方に向けて送風可能に構成されている。局部冷却処理ユニット154は、搬送ベルト152によって搬送される用紙Pの記録面に向けて冷風を吹き当てることで、用紙Pの局部冷却を行う。局部冷却処理ユニット154によって局部冷却された用紙Pは、搬送ベルト142によって、処理液付与部110の処理液付与ドラム112に受け渡される。
図15は、本実施の形態のインクジェット記録装置100の制御系の概略構成を示すブロック図である。図3に示すブロック図とは、用紙冷却部150及び用紙冷却制御部175を備えたところが異なる。また、用紙冷却部150の搬送ベルト152は、搬送制御部166により制御される。
用紙冷却制御部175は、システムコントローラ160からの指令に応じて用紙冷却部150を制御する。具体的には、搬送ベルト152によって搬送される用紙Pが適切に局部冷却されるように、局部冷却処理ユニット154の駆動を制御する。
図16は、搬送ベルト152により搬送される用紙Pと、局部冷却処理ユニット154を上部から見た模式図である。局部冷却処理ユニット154は、用紙Pの記録面に対向するように、複数のファン300がマトリクス状に配置されている。図16に示した例では、搬送方向に3行、搬送方向に直交する方向に8列の、計24個のファン200を備えている。なお、ファン200の配置の行数、列数は特に限定されるものではない。ここでは、各ファン300の位置を、搬送方向にA行、B行、C行、搬送方向に直交する方向に1列、2列、・・・、8列、として特定する。
これら24個のファン300の上部には、図示しないクーラ(空気冷却装置)が設けられている。ファン300は、その回転により、クーラによって冷却された空気を、搬送ベルト152によって搬送される用紙Pに対して送風する。即ち、局部冷却処理ユニット154は、各ファン300を個別に制御することにより、用紙Pの各領域に対して、局部的に冷風を吹き当てることが可能となっている。
用紙Pは、搬送ベルト152により、24個のファン300に対向する位置に搬送される。本実施形態では、用紙Pの記録面について、各ファン300に対向する領域毎に、搬送方向にA行、B行、C行、搬送方向に直交する方向に1列、2列、・・・、8列、の24箇所の領域として仮想的に分割し、この24箇所に分割した領域を単位領域として冷却処理を行う。
次に、このように構成されたインクジェット記録装置100の処理液の局部的な乾燥処理について説明する。
まず、システムコントローラ160は、通信部162を介してホストコンピュータから用紙Pに記録する画像データを取得し、画像メモリ164に格納する。
次に、システムコントローラ160は、画像メモリ164に格納された画像データに基づいて、用紙Pの記録領域におけるインクの付与量(水分量)の分布を算出する。本実施形態では、単位領域毎のインクの水分量を算出し、単位領域毎の分布を算出する。ここでは、用紙PのA行2列の領域、A行7列の領域、B行5列の領域、の3つの領域に対してインクが付与され、その他の領域にはインクが付与されないものとする。
さらに、システムコントローラ160は、画像記録部130でのインク付与後における用紙Pのインクの水分量と処理液の水分量の和の分布を平滑化するための、処理液の水分量の分布を算出する。この場合、用紙PのA行2列の領域、A行7列の領域、B行5列の領域、の3つの領域の処理液の水分量が他の領域よりも少ない分布を算出する。
用紙冷却部150に受け渡された用紙Pは、搬送ベルト152により局部冷却処理ユニット154に対向する位置に搬送される。用紙冷却制御部175は、システムコントローラ160からの指令により、用紙PのA行2列の領域、A行7列の領域、B行5列の領域、の3つの領域以外の領域を局部冷却させるように各ファン300を制御する。すなわち、用紙Pが局部冷却処理ユニット154に対向する位置を通過する際に、A行1列、3〜6列、8列、B行1〜4列、6〜8列、C行1〜8列の21個のファン300を高速に回転させることで、これらのファン300に対向する用紙PのA行1列、3〜6列、8列、B行1〜4列、6〜8列、C行1〜8列の21個の領域を局部的に冷却する。その他のファン300については、低速に回転、又は停止させておく。
局部冷却処理ユニット154によって局部冷却された用紙Pは、処理液付与部110に搬送され、記録面の全面に処理液が一様に付与される。
次に、用紙Pは、処理液乾燥処理部120に受け渡され、処理液乾燥処理ドラム122により、処理液乾燥処理ユニット126の24個のファン200に対向する位置に搬送される。
処理液乾燥制御部170は、システムコントローラ160からの指令により、用紙Pの全領域について一様に処理液を減少させるように、各ファン200を制御する。すなわち、全てのファン200を同様の回転量とする。
A行2列の領域、A行7列の領域、B行5列の領域、の3つの領域以外の領域が局部冷却されているため、この3つの表面温度が上昇する。また、この温度の上昇に伴い、当該領域の水分量はそれ以外の領域よりも減少する。
その結果、用紙Pの単位領域のうち、A行2列の領域、A行7列の領域、B行5列の領域について、処理液の水分量を他の領域よりも減少させることができる。このように、用紙冷却部150と処理液乾燥制御部170により、用紙Pの記録面に対して処理液の乾燥を局部的に制御することで、処理液の水分量に分布を持たせることができる。
なお、システムコントローラ160は、処理液乾燥制御部170を用いて、用紙PのA行2列の領域、A行7列の領域、B行5列の領域、の3つの領域の処理液の水分量を減少させるように各ファン200を制御させてもよい。すなわち、用紙Pが処理液乾燥処理ユニット126に対向する位置を通過する際に、A行2列、A行7列、B行5列、の3つのファン200を高速に回転させてもよい。これにより、これらのファン200に対向する用紙PのA行2列の領域、A行7列の領域、B行5列の領域、の3つの領域の処理液の乾燥をさらに促進させることができる。
次に、このような処理液乾燥処理の制御を行い、用紙Pに、図21(a)に示した画像データに対応する画像を記録する場合の水分量の分布について説明する。
最初に、システムコントローラ160は、図21(a)に示した画像データに基づいて、用紙Pのインクの水分量の分布を算出する。例えば、単位領域毎のインクの水分量を算出すればよい。
次に、システムコントローラ160は、画像記録部130でのインク付与後における用紙Pのインクの水分量と処理液の水分量の和の分布を平滑化するための、処理液の水分量の分布を算出する。ここでは、インクが付与される領域の水分量が他の領域の水分量よりも少ない分布を算出する。
次に、図16を用いて説明したように、インクが付与される領域以外の領域について、用紙冷却部150は、システムコントローラ160からの指令により、局部冷却処理ユニット154の各ファン300を制御する。
図17(a)は、用紙冷却部150によって局部冷却された用紙Pの断面模式図と、用紙Pの各領域の表面温度及び水分量の分布を示すグラフである。用紙冷却部150においては、用紙Pの水分量の分布は一定であり、局部冷却された領域の表面温度が低下している。
その後、用紙Pは、処理液付与部11によって記録面に一様に処理液が付与される。図17(b)は、このときの用紙Pの断面模式図と、用紙Pの各領域の表面温度及び水分量の分布を示すグラフである。処理液付与部110では、ローラ塗布により処理液が用紙Pの記録面に一様に付与されるため、用紙Pの水分量の分布は各領域において一定である。また、表面温度は、用紙冷却部150において局部冷却された領域において低下している。
次に、用紙Pは、処理液乾燥処理部120によって全面が一様に乾燥処理される。図17(c)は、このときの用紙Pの断面模式図と、用紙Pの各領域の表面温度及び水分量の分布を示すグラフである。同図に示すように、インクが付与されない領域の表面温度が局部冷却されているため、インクが付与される領域の表面温度が相対的に上昇する。また、この温度の上昇に伴い、インクが付与される領域の水分量は、インクが付与されない領域よりも減少する。
その後、画像記録部130により、用紙Pの記録面にインクが付与される。図17(d)は、インクが付与された用紙Pの断面模式図と、用紙Pの各領域の水分量の分布を示すグラフである。同図に示すように、インクが付与された領域は、水分量が増加している。しかし、図17(c)に示したように、インクが付与される領域の処理液の水分量は、それ以外の領域よりも事前に減少させてある。したがって、インクが付与された領域とインクが付与されていない領域において、水分量が平滑化されており、水分量が最大の領域と最小の領域の水分量の差は、一定の範囲に収められている。
最後に、インク乾燥処理部140により、用紙Pの全面が一様に乾燥処理される。図17(e)は、乾燥処理された用紙Pの断面模式図と、用紙Pの各領域の表面温度及び水分量の分布を示すグラフである。同図に示すように、インクが付与された領域とインクが付与されていない領域の水分量の差が予め一定の範囲に収められているため、乾燥処理後の用紙Pの表面温度分布も平滑化されたものとなっている。
図17(f)は、乾燥後の用紙Pの記録面を示す模式図である。同図に示すように、水分量の違いや過乾燥が発生していないため、図21(d)において発生していた定着しわやカックルは、発生しない。
このように、システムコントローラ160において用紙Pに記録する画像データから用紙Pに付与されるインクの水分量の分布を算出し、インク付与後におけるインク及び処理液の水分量の分布が平滑化されるように用紙冷却部150において局部冷却を行い、その後処理液乾燥処理部120において乾燥処理を行うことで、処理液の水分量の分布を制御でき、処理液を記録媒体の記録領域の全面に一様に付与した場合であっても、画像記録後の乾燥によるしわやカックルの発生を防止することができる。
なお、前述のように、処理液乾燥処理部120においてインクが付与される領域を局所的に加熱し、乾燥を促進させてもよい。このように処理液の乾燥処理を行うことで、さらに用紙Pの表面温度を均一とすることができ、カックルやしわの発生を抑制するマージンが増すことになる。
なお、ここではインクが付与される領域とインクが付与されない領域についての局所冷却処理について説明したが、実際に記録される画像では、インクの付与量は領域毎に様々な値となる。このような場合には、インクの付与量に応じて各ファン300の送風量を制御すればよい。
すなわち、インクの付与量が少量の領域に対しては、対向するファン300の風量を強くすることで冷却温度を低くし、インクの付与量が多量の領域に対しては、対向するファン300の風量を弱くすることで冷却温度を高くし、インクが付与されない領域に対しては、対向するファン300を停止することで冷却を行わない等の制御を行うことで、インクの付与量に応じた処理液の乾燥処理が可能である。さらに細かい局部冷却制御を行うために、ファン300の風量調整は、無段階に行えるように構成することが好ましい。
また、ファン300は、図7を用いて説明した処理液乾燥処理と同様に、一列に配置する態様も可能である。
《第5の実施形態》
用紙Pを部分冷却する手段は、冷風を送風するファン300に限定されない。例えば、図18に示す局部冷却処理ユニット310のように、用紙Pの記録面に冷風を吹き付けるノズル322が多数配置されたノズルユニット320を用いてもよい。
図18は、搬送ベルト152により搬送される用紙Pと、搬送ベルト152の上部に、用紙Pと対向するように配置された局部冷却処理ユニット310とを上部から見た模式図である。局部冷却処理ユニット310は、用紙Pの記録面について、搬送方向に直交する方向に1列、2列、3列、として仮想的に分割した場合に、1〜3列目の全領域を冷却可能なノズルユニット320a、3列目の領域を冷却可能なノズルユニット320b、1列目の領域を冷却可能なノズルユニット320c、2列目の領域を冷却可能なノズルユニット320dを備えている。
この局部冷却処理ユニット310を用いて、図17に示すように用紙PのA行1列の領域及びB行2列の領域を局部冷却する場合には、用紙PのA行1列の領域がノズルユニット320cに対向する位置に搬送されたときにノズルユニット320cのノズルから冷風を吹き付け、用紙PのB行2列の領域がノズルユニット320dに対向する位置に搬送されたときにノズルユニット320dのノズルから冷風を吹き付ければよい。
《第6の実施形態》
図19は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の一実施形態を示す全体構成図である。本実施形態における用紙冷却部150は、図14に示した搬送ベルト152に代えて搬送ドラム330を、局部冷却処理ユニット154に代えて局部冷却処理ユニット332を備えている。局部冷却処理ユニット332は、図14に示すように、搬送ドラム330の内部に配置されている。
図20は、搬送ドラム330により搬送される用紙Pと、その搬送ドラム330に内蔵された局部冷却処理ユニット332とを示す模式図であり、局部冷却処理ユニット332は搬送ドラム330の表面(搬送面)を透視した状態を示している。
金属管340は、水を循環させることで搬送ドラム330の表面を冷却する、前記単位領域毎の水分量の分布を平滑化するための該単位領域毎の前記処理液の水分量を算出水冷手段(熱交換ユニット)であり、金属管340の一方から水が注入され、他方から水が流出するように構成されている。金属管340を循環する液体は、水以外の液体であってもよい。局部冷却処理ユニット332は、用紙Pの背面(記録面の裏面)に対向するように、金属管340が搬送方向に直行する方向に複数配置されている。図20に示した例では、搬送方向に直交する方向に4つの金属管340を備えている。なお、金属管340の配置は特に限定されるものではない。
このように、金属管340は、用紙Pと接触する搬送ドラム330を局部的に冷却することで、用紙Pの背面から、用紙Pの4箇所の領域を局所的に冷却可能に構成されている。
なお、局部冷却処理ユニット332は、搬送ドラムを冷却するのではなく、用紙Pを載置して搬送するプラテンを冷却するように構成してもよい。
さらに、ファン300、ノズルユニット320、金属管340を組み合わせて、用紙Pを局所的に冷却する構成としてもよい。
本発明の技術的範囲は、上記実施形態に記載の範囲には限定されない。各実施形態における構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各実施形態間で適宜組み合わせることができる。
本明細書中でシステムコントローラ160が行っている処理は、ホストコンピュータ180において行い、通信部162を介してインクジェット記録装置100に入力する態様も可能である。