以下、添付図面に従って本発明に係るインクジェット記録装置の好ましい実施の形態について詳説する。
[装置全体構成]
図1は、本発明に係るインクジェット記録装置の一実施形態を示す全体構成図である。
同図に示すインクジェット記録装置10は、シート状の記録媒体(たとえば、汎用印刷紙)にインクジェット方式で印字するインクジェット記録装置であり、主として、記録媒体14を供給する給紙部22と、記録媒体14に対して浸透抑制処理を行う浸透抑制処理部24と、記録媒体14にインク凝集剤などの処理液を付与する処理液付与部26と、記録媒体14に色インクを付与して画像形成を行う印字部28と、印字後の記録媒体を乾燥させる溶媒乾燥部30と、画像を堅牢化する熱圧定着部32と、画像が形成された記録媒体14を搬送して排出する排出部34とで構成される。
<給紙部>
給紙部22には、枚葉紙の形態の記録媒体14を供給する給紙トレイ36が設けられている。記録媒体14は、粘着ローラ37によって給紙トレイ36から繰り出され、浸透抑制処理部24に給紙される。
<浸透抑制処理部>
浸透抑制処理部24は、記録媒体14に対して浸透抑制処理を行う。
給紙トレイ36と浸透抑制処理部24の圧胴40との間には渡し胴38が設けられており、給紙トレイ36から給紙された記録媒体14は、この渡し胴38を介して、浸透抑制処理部24の圧胴40に受け渡される。圧胴40には、図示しないグリッパが設けられており、このグリッパに把持されて、記録媒体14は圧胴40と共に回転移動する。
浸透抑制処理部24の圧胴40の周囲には、圧胴40の回転方向(図1において反時計回り方向)の上流側から順に液体塗布装置42、用紙押さえ44、浸透抑制剤乾燥ユニット46が配置されている。
液体塗布装置42は、圧胴40に保持されて回転移動する記録媒体14の所望領域に選択的に浸透抑制剤を付与する。
用紙押さえ44は、圧胴40の周面に給紙された記録媒体14の両端や後端を押さえながら、記録媒体14を圧胴40の回転方向に送り出す。
浸透抑制剤乾燥ユニット46は、ヒータとファンとを備えてなり、圧胴40に保持されて回転移動する記録媒体14に熱風を吹き付けて、浸透抑制剤をプレ乾燥する。
<処理液付与部>
処理液付与部26は、記録媒体14にインク凝集剤などの処理液を付与する。
浸透抑制処理部24の圧胴40と処理液付与部26の圧胴86との間には渡し胴84が設けられており、浸透抑制処理部24で浸透抑制処理が行われた記録媒体14は、この渡し胴84を介して処理液付与部26の圧胴86に受け渡される。
ここで、まず、渡し胴84の構成について説明する。渡し胴84は、ドラム状に形成されており、その周面の2カ所(対称位置)に図示しないグリッパが取り付けられている。記録媒体14は、このグリッパに把持されて搬送される。また、この渡し胴84の内部には、図示しないヒータ(たとえば、ハロゲンヒータ、赤外線ヒータ等)が取り付けられており、渡し胴84によって搬送される記録媒体14は、このヒータから放射される熱によって所定温度(50〜90℃)に加熱されながら搬送される。
渡し胴84は、以上のように構成される。浸透抑制処理部24の圧胴40から渡し胴84に受け渡された記録媒体14は、グリッパにより用紙先端部が保持されて搬送され、その搬送過程で渡し胴84に内蔵されたヒータの輻射熱で画像記録面が加熱乾燥される。そして、処理液付与部26の圧胴86に受け渡される。
処理液付与部26の圧胴86は、ドラム状に形成されており、その周面の2カ所(対称位置)に図示しないグリッパが取り付けられている。記録媒体14は、このグリッパに把持されて搬送される。
この圧胴86の周囲には、圧胴86の回転方向(図1において反時計回り方向)の上流側から順に処理液ヘッド202、処理液乾燥ユニット204が設けられている。
処理液ヘッド202は、圧胴86に保持される記録媒体14に対して処理液を打滴するものであり、印字部28に配置される各インクヘッドと同様の構成が適用される。ただし、処理液(凝集処理剤)の粘度や表面張力、pH(水素イオン濃度)などに応じて、ノズルの形状や表面処理、駆動波形などが調整される。
処理液乾燥ユニット204については、上述した浸透抑制処理部24の浸透抑制剤乾燥ユニット46と同様の構成が適用される。すなわち、ヒータとファンとを備えて構成され、圧胴86に保持されて移動する記録媒体14に熱風を吹き付けて処理液をプレ乾燥する。
なお、本実施の形態のインクジェット記録装置10で用いられる凝集処理剤などの処理液は、後段の印刷部28で用いられるインクに含有される色材を凝集させる作用を有する酸性液が好ましい。具体的には、2−ピロリドン−5−カルボン酸、リン酸、コハク酸、クエン酸などの酸を添加した処理液が考えられる。
なお、グリセリンなどの高沸点溶媒やポリマー粒子などを少量添加して処理液の浸透を抑制することで浸透抑制層を不要にするも可能である。このような浸透抑制効果を有する処理液を液体塗布装置42で塗布する場合は、処理液付与部26の圧胴86、処理液ヘッド202、及び処理液乾燥ユニット204などが不要になる。
<印字部>
印字部28は、記録媒体14に色インクを付与して画像形成を行う。
処理液付与部26の圧胴86と印字部28の圧胴216との間には渡し胴214が設けられており、処理液付与部26で印字面に凝集処理剤層が形成された記録媒体14は、この渡し胴214を介して印字部28の圧胴216に受け渡される。圧胴216には、図示しないグリッパが設けられており、このグリッパに把持されて、記録媒体14は圧胴216と共に回転移動する。
渡し胴214の構成は、上述した浸透抑制処理部24の渡し胴84の構成と同じである。すなわち、ヒータを内蔵し、周面に設けられたグリッパで記録媒体14を把持して、記録媒体14を搬送する。記録媒体14は、この搬送過程で渡し胴214から放射される熱で加熱される。
印字部28の圧胴216の周囲には、圧胴216の回転方向(図1において反時計回り方向)の上流側から順にブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色のインクにそれぞれ対応したインクヘッド210K、210C、210M、210Yが設けられている。
各インクヘッド210K、210C、210M、210Yは、インクジェット方式の記録ヘッド(インクジェットヘッド)が適用される。各インクヘッド210K、210C、210M、210Yは、それぞれ対応する色インクの液滴を圧胴216に負圧吸着や静電吸着した状態で保持された記録媒体14に向かって吐出する。
本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示するが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。たとえば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
ここで、各ヘッドの構造について説明する。色別のヘッド210K、210C、210M、210Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号210によってヘッドを示すものとする。なお、処理液付与部26に用いられる処理液ヘッド202についてもインクヘッド210と同様の構造が採用される。
図2(a)は、インクヘッド210の構造例を示す平面透視図であり、図2(b) は、その一部の拡大図である。
記録媒体14上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、インクヘッド210におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のインクヘッド210は、図2(a)、(b) に示したように、インク吐出口であるノズル281と、各ノズル281に対応する圧力室282等からなる複数のインク室ユニット(記録素子単位としての液滴吐出素子)283を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(用紙搬送方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
記録媒体14の搬送方向(図2中矢印S)と略直交する方向(図2中矢印M)に画像形成領域の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は図示の例に限定されない。たとえば、図2(a) の構成に代えて、図3に示すように、複数のノズル281が2次元に配列された短尺のヘッドモジュール280’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで長尺化することにより、全体として記録媒体14の画像形成領域の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
各ノズル281に対応して設けられている圧力室282は、その平面形状が概略正方形となっており(図2(a)、(b) 参照)、対角線上の両隅部の一方にノズル281への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)284が設けられている。なお、圧力室282の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
図4は、インクヘッド210における記録素子単位となる1チャンネル分の液滴吐出素子(1つのノズル281に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図2中のB−B線に沿う断面図)である。
図4に示すように、各圧力室282は供給口284を介して共通流路285と連通されている。共通流路285はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路285を介して各圧力室282に供給される。
圧力室282の一部の面(図4において天面)を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)286には、個別電極287を備えたアクチュエータ288が接合されている。個別電極287と共通電極間に駆動電圧を印加することにより、アクチュエータ288が変形して、圧力室282の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル281からインクが吐出される。インク吐出後、アクチュエータ288の変位が元に戻る際、共通流路285から供給口284を通って新しいインクが圧力室282に再充填される。
なお、アクチュエータ288には、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電体を用いた圧電素子が好適に用いられる。
入力画像からデジタルハーフトーニング処理によって生成されるドットデータに応じて各ノズル281に対応したアクチュエータ288の駆動を制御することにより、ノズル281からインク滴を吐出させることができる。記録媒体14を一定の速度で副走査方向に搬送しながら、その搬送速度に合わせて各ノズル281のインク吐出タイミングを制御することにより、記録媒体14上に所望の画像を記録することができる。
上述した構造を有するインク室ユニット283を図5に示すように、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
すなわち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット283を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影(正射影)されたノズルのピッチPNはd×cosθとなり、主走査方向については、各ノズル281が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影される実質的なノズル列の高密度化を実現することが可能になる。
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、記録媒体14の幅方向(搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
特に、図5に示すようなマトリクス状に配置されたノズル281を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。すなわち、ノズル281-11 、281-12 、281-13 、281-14 、281-15 、281-16 を1つのブロックとし(他にはノズル281-21 、…、281-26 を1つのブロック、ノズル281-31 、…、281-36 を1つのブロック、…として)、記録媒体14の搬送速度に応じてノズル281-11 、281-12 、…、281-16 を順次駆動することで記録媒体14の幅方向に1ラインを印字する。
一方、上述したフルラインヘッドと記録媒体14とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
そして、上述の主走査によって記録される1ライン(或いは帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向といい、上述の副走査を行う方向を副走査方向という。すなわち、本実施形態では、記録媒体14の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。
また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ88の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
<溶媒乾燥部>
溶媒乾燥部30は、印字後の記録媒体14を乾燥させる。
印字部28の圧胴216と溶媒乾燥部30の圧胴306との間には、渡し胴304が設けられており、印字部28で各色インクが付与された記録媒体14は、この渡し胴304を介して溶媒乾燥部30の圧胴306に受け渡される。圧胴306には、図示しないグリッパが設けられており、このグリッパに把持されて、記録媒体14は圧胴306と共に回転移動する。
渡し胴304の構成は、上述した浸透抑制処理部24の渡し胴84の構成と同じである。すなわち、ヒータを内蔵し、周面に設けられたグリッパで記録媒体14を把持して、記録媒体14を搬送する。記録媒体14は、この搬送過程で渡し胴304から放射される熱で加熱される。
なお、この溶媒乾燥部30の具体的な構成については、のちに詳述するが、圧胴306による記録媒体14の搬送経路上には、チャンバ308が設置されている。このチャンバ308は、圧胴306とほぼ同じ幅を有する矩形の箱状に形成されており、圧胴306と対向する面に吹出口が形成されている。この吹出口は、圧胴306の周面(搬送面)に近接して設けられており、圧胴306の周面の一部を囲うようにして設けられている。
チャンバ308の内部には、図示しないヒータ、及び、そのヒータで加熱された空気を吹出口に向けて送風するファンユニットが設けられている。圧胴306は、このチャンバ308の吹出口から吹き出される熱風によって加熱される。そして、この加熱された圧胴306の上に載置されて搬送されることにより、記録媒体14は加熱され、印字部28で形成された画像中のインクに含まれる水分が除去される。また、その搬送過程でチャンバ308の吹出口を通過することにより、熱風が吹き付けられ、乾燥が促進される。
ここで、このチャンバ308には、図示しない排気口が設けられており、この排気口を介してチャンバ内の空気を給排気できるように構成されている。この排気口には、図示しないダンパが設けられており、このダンパによって開閉可能に設けられている。
チャンバ308は、この排気口を閉じた状態でファンユニットを稼働させると、内部で空気が循環する。したがって、この状態でヒータを稼働させれば、少ない熱量で空気を加熱することができ、効率よく圧胴306を加熱することができる。
一方、印字中もチャンバ内部で空気を循環させながら送風させていると、チャンバ内部の湿度が上昇し、乾燥効率が低下する。
そこで、本実施の形態のインクジェット記録装置10では、装置起動時は、排気口を閉じ、チャンバ内部で空気を循環させて、圧胴306を効率よく加熱し、印字開始後は、排気口を開くことにより、内部の湿度上昇を防いで、効率よく記録媒体14を乾燥させる。
なお、この溶媒乾燥部30の構成及び作用については、のちに詳述する。
<熱圧定着部>
熱圧定着部32は、画像を堅牢化する。
溶媒乾燥部30の圧胴306と熱圧定着部32の圧胴326との間には、渡し胴324が設けられており、溶媒乾燥部30でインクの水分が除去された記録媒体14は、この渡し胴324を介して熱圧定着部32の圧胴326に受け渡される。圧胴326には、図示しないグリッパが設けられており、このグリッパに把持されて、記録媒体14は圧胴326と共に回転移動する。
熱圧定着部32には、所定温度(たとえば、40〜80℃)に温調した圧胴326に対向して、所定温度(たとえば、60〜120℃)に温調したヒートローラ(定着ローラ)328a、328b、328cが設けられている。
ヒートローラ328a、328b、328cは、ゴムなどの表面にPFAやフッ素系エラストマーなどの撥液材料を被覆したものや、剛材に硬質クロムメッキなどの処理を施したものが望ましい。また、ヒートローラ328a、328b、328cには、離型剤塗布機能付きのクリーニングユニット329が当接されている。離型剤としては、一般的な離型用シリコンオイルのほか、用紙浸透性を有する高沸点溶媒としても良く、塗布厚としては30nm〜1μmであることが離型性や光沢度の観点から望ましい。
渡し胴324には、巻取式の不織布などを用いたスタンプ型の部材325が配置され、このスタンプ型の部材325が圧胴306や渡し胴324の搬送中に記録媒体14に浸透しきれなかった高沸点溶媒を吸収する。
なお、渡し胴324の構成は、上述した浸透抑制処理部24の渡し胴84の構成と同じである。すなわち、ヒータを内蔵し、周面に設けられたグリッパで記録媒体14を把持して、記録媒体14を搬送する。記録媒体14は、この搬送過程で渡し胴324から放射される熱で加熱される。
渡し胴324を介して圧胴326に受け渡された記録媒体14は、ヒートローラ328a、328b、328cに熱圧されることにより、インクに添加されたラテックス粒子が成膜され、これにより、表面に形成された画像が堅牢化され、記録媒体14に定着する。
<排出部>
排出部34は、画像が形成された記録媒体14を搬送して排出する。
熱圧定着部32の圧胴326と排出部34の排出トレイ346との間には、渡し胴344が設けられており、熱圧定着部32で画像が堅牢化された記録媒体14は、この渡し胴344を介して排出トレイ346に受け渡され、機外へ排出される。
渡し胴344は、不図示の加熱手段により加熱され、さらに高沸点溶媒の浸透促進と記録媒体14のカールの矯正をする。
また、排出部34には、記録媒体14のチェックパターンや水分量、表面温度、光沢度などを計測するためのCCDなどの撮像素子や赤外線温度計、赤外線水分計、光沢計などのインラインセンサ348が配置されている。前述の通り、インラインセンサ348により、パッチの光学濃度やドット径を計測して凝集処理剤の塗布量を制御したり、各色のパターンを測定してカラーレジを補正したり、先後端や幅方向のパターンを測定して倍率補正したり、表面温度から定着温度をリアルタイムで調整し、光沢や濃度、倍率、画像歪みや位置ずれなどの品質を安定に保っている。
<制御系>
図6は、本実施の形態のインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。
インクジェット記録装置10は、通信インターフェース470、システムコントローラ472、メモリ474、ROM475、モータドライバ476、ヒータドライバ478、プリント制御部480、画像バッファメモリ482、ヘッドドライバ484等を備えている。
通信インターフェース470は、ホストコンピュータ486から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース470には、USB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ486から送出された画像データは通信インターフェース470を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦メモリ474に記憶される。
メモリ474は、通信インターフェース470を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ472を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ474は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ472は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システムコントローラ472は、通信インターフェース470、メモリ474、モータドライバ476、ヒータドライバ478等の各部を制御し、ホストコンピュータ486との間の通信制御、メモリ474の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ488やヒータ489を制御する制御信号を生成する。
ROM475には、システムコントローラ472のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。なお、ROM475は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。メモリ474は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
モータドライバ476は、システムコントローラ472からの指示にしたがってモータ488を駆動するドライバである。図6には、装置内の各部に配置されるモータを代表して符号488で図示されている。モータ488には、図1で説明した各圧胴40、86、216、306、326、渡し胴84、214、304、324、344、用紙押さえ44、ヒートローラ328a、328b、328cなど駆動するモータが含まれている。
ヒータドライバ478は、システムコントローラ472からの指示にしたがって、ヒータ489を駆動するドライバである。図5には、インクジェット記録装置10に備えられる複数のヒータを代表して符号489で図示されている。また、ヒータ489には、浸透抑制剤乾燥ユニット46、処理液乾燥ユニット204のヒータなどが含まれている。
プリント制御部480は、システムコントローラ472の制御にしたがい、メモリ474内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッドドライバ484に供給する制御部である。プリント制御部480において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいて、ヘッドドライバ484を介してインクヘッド210のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部480には画像バッファメモリ482が備えられており、プリント制御部480における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ482に一時的に格納される。なお、図28において画像バッファメモリ482はプリント制御部480に付随する態様で示されているが、メモリ474と兼用することも可能である。また、プリント制御部480とシステムコントローラ472とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
画像入力から印字出力までの処理の流れを概説すると、印字すべき画像のデータは、通信インターフェース470を介して外部から入力され、メモリ474に蓄えられる。この段階では、たとえば、RGBの画像データがメモリ474に記憶される。
インクジェット記録装置10では、インク(色材) による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。そのため、メモリ474に蓄えられた元画像(RGB)のデータは、システムコントローラ472を介してプリント制御部480に送られ、該プリント制御部480において閾値マトリクスや誤差拡散法などを用いたハーフトーニング処理によってインク色ごとのドットデータに変換される。
すなわち、プリント制御部480は、入力されたRGB画像データをK、C、M、Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。こうして、プリント制御部480で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ482に蓄えられる。
ヘッドドライバ484は、プリント制御部480から与えられる印字データ(すなわち、画像バッファメモリ482に記憶されたドットデータ)に基づき、インクヘッド210の各ノズル281に対応するアクチュエータ288を駆動するための駆動信号を出力する。ヘッドドライバ484にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
ヘッドドライバ484から出力された駆動信号がヘッド210に加えられることによって、該当するノズル281からインクが吐出される。記録媒体14を所定の速度で搬送しながらインクヘッド210からのインク吐出を制御することにより、記録媒体14上に画像が形成される。
システムコントローラ472は、浸透抑制剤塗布制御部502、溶媒乾燥制御部504、熱圧定着制御部506の動作を制御する。
さらに、本例のインクジェット記録装置10では、処理液を付与する手段としての処理液ヘッド202と、これを駆動するヘッドドライバ508を備えている。ヘッドドライバ508は、プリント制御部480から与えられる画像データに基づいて処理液ヘッド202のアクチュエータ288に印加される駆動信号を生成するとともに、該駆動信号をアクチュエータ288に印加してアクチュエータ288を駆動する駆動回路を含んで構成される。このように、画像データに応じて処理液を打滴する構成とし、印字部28によってインクが打滴される位置に対して、処理液を選択的に打滴する態様が好ましい態様であるが、スプレーノズルを用いて一様に付与する態様も可能である。
浸透抑制剤塗布制御部502は、液体塗布装置42の場合、スパイラルローラ48についてのローラ当接/離間機構駆動手段、スパイラルローラ48の回転駆動手段、メインブレード当接/離間機構駆動手段、液体噴射部52の噴射圧を調整する精密可変レギュレータ等が浸透抑制剤塗布制御部502により制御される。
溶媒乾燥制御部504は、システムコントローラ472からの指示に従い溶媒乾燥部30の動作を制御する。すなわち、溶媒乾燥部30に備えられたファンユニット、ヒータ、ダンパの駆動を制御する。
熱圧定着制御部506は、システムコントローラ472からの指示に従い熱圧定着部32におけるスタンプ型の部材854の動作を制御するとともに、ヒートローラ328a〜c、及びクリーニングユニット329の動作を制御する。
また、システムコントローラ472には、排出部34に配置されるインラインセンサ348からチェックパターンや水分量、表面温度、光沢度などの計測結果のデータが入力される。
<印字動作>
給紙トレイ36から供給された記録媒体14は、渡し胴38を介して、グリッパ(不図示)で浸透抑制処理部24の圧胴40の周面に給紙される。
なお、記録媒体14は、給紙トレイ36へ送られる前に、40〜50℃にプレヒートされた給紙部(不図示)に予めストックされている。そして、記録媒体14は、給紙トレイ36の給紙面に対向する位置に設けられた粘着ローラ37に接触しながら渡し胴38に供給される。このように、給紙部をプレヒートすることで記録媒体14が加熱乾燥され、記録媒体14を粘着ローラ37に接触させることで紙粉や塵埃などの異物除去が可能になり、浸透抑制剤塗布後の乾燥の高速化や安定化を図ることができる。
記録媒体14は、渡し胴38を介して、浸透抑制処理部24の圧胴40に保持され、液体塗布装置42によって所望領域に対して選択的に浸透抑制剤が付与される。その後、圧胴40に保持された記録媒体14は、用紙押さえ44により案内されつつ圧胴40の回転方向に送り出されながら、浸透抑制剤乾燥ユニット46によって加熱され、浸透抑制剤の溶媒成分(液体成分)が蒸発し、乾燥する。
こうして浸透抑制処理が行われた記録媒体14は、浸透抑制処理部24の圧胴40から渡し胴84を介して、処理液付与部26の圧胴86に受け渡される。圧胴86に保持された記録媒体14は、処理液ヘッド202によって処理液が打滴される。その後、圧胴86に保持された記録媒体14は、処理液乾燥ユニット204によって加熱され、処理液の溶媒成分(液体成分)が蒸発し、乾燥する。これにより、記録媒体14上には固体状又は半固溶状の凝集処理剤層が形成される。
処理液が付与されて固体状又は半固溶状の凝集処理剤層が形成された記録媒体14は、処理液付与部26の圧胴86から渡し胴214を介して、印字部28の圧胴216に受け渡される。圧胴216に保持された記録媒体14には、入力画像データに応じて、各インクヘッド210K、210C、210M、210Yからそれぞれ対応する色インクが打滴される。
凝集処理剤層上にインク液滴が着弾すると、飛翔エネルギーと表面エネルギーとのバランスにより、インク液滴と凝集処理剤層との接触面が所定の面積にて着弾する。インク液滴が凝集処理剤上に着弾した直後に凝集反応が始まるが、凝集反応はインク液滴と凝集処理剤層との接触面から始まる。凝集反応は接触面近傍のみで起こり、インク着弾時における所定の接触面積で付着力を得た状態でインク内の色材が凝集されるため、色材移動が抑止される。
このインク液滴に隣接して他のインク液滴が着弾しても先に着弾したインクの色材は既に凝集化しているので後から着弾するインクとの間で色材同士が混合せず、ブリードが抑止される。なお、色材の凝集後には、分離されたインク溶媒が広がり、凝集処理剤が溶解した液体層が記録媒体14上に形成される。
インクが付与された記録媒体14は、印字部28の圧胴216から渡し胴304を介して、溶媒乾燥部30の圧胴306に受け渡される。
ここで、この溶媒乾燥部30の圧胴306は、チャンバ308から吹き出される熱風で加熱されており、この圧胴306に受け渡された記録媒体14は、加熱された圧胴306の表面(搬送面)に接触することにより、瞬時に加熱される。この記録媒体14の温度が当たった状態のままチャンバ308を通過することで、さらに熱風が吹き付けられ、印字部28で形成された画像中のインクに含まれる水分が吹き飛ばされる。これにより、水分が十分に除去される。
この後、記録媒体14は、溶媒乾燥部30の圧胴306から渡し胴324を介して、熱圧定着部32の圧胴326に受け渡される。渡し胴324には、スタンプ型の部材325が配置され、このスタンプ型の部材325が高沸点溶媒を吸収し、処理液や加熱乾燥で増加した浸透抑制層の空隙を通して用紙にも浸透させる。そして、不図示の加熱手段により加熱された圧胴326に受け渡された記録媒体14に対し、ヒートローラ328a、328b、328cにより加圧して熱圧することにより、画像を記録媒体14に定着させる。
その後記録媒体14は、熱圧定着部32の圧胴326から渡し胴844を介して、排出部34の排出トレイ346に受け渡され、機外へ排出される。渡し胴344は不図示の加熱手段により加熱され、さらに高沸点溶媒の浸透促進と記録媒体14のカールの矯正をする。
<溶媒乾燥部の構成(1)>
図7は、溶媒乾燥部30の第1の実施の形態の概略構成図である。
上記のように、印字部28の圧胴216と溶媒乾燥部30の圧胴306との間には、渡し胴304が設けられており、印字部28で各色インクが付与された記録媒体14は、この渡し胴304を介して溶媒乾燥部30の圧胴306に受け渡される。
溶媒乾燥部30の圧胴306には、図示しないグリッパが設けられており、このグリッパに把持されて、記録媒体14は圧胴306と共に回転移動し、所定の搬送経路を搬送される。
この圧胴306による記録媒体14の搬送経路上には、チャンバ308が設置されている。チャンバ308は、図8に示すように、圧胴306とほぼ同じ幅を有する矩形の箱状に形成されており、圧胴306と対向する面に吹出口310が形成されている。この吹出口310は、圧胴306の周面(搬送面)に近接して設けられており、圧胴306の周面の一部を囲うようにして設けられている。
チャンバ308の内部には、図7に示すように、吹出口310に面してファンユニット312が設けられている。
ファンユニット312は、圧胴306の軸方向に沿って複数のファンを並列配置して構成されており、チャンバ内の空気を吹出口310に向けて送風する。このファンユニット312の上方には、ヒータ314が設置されており、このヒータ314を稼働させることにより、ヒータ314で加熱された空気が吹出口310から圧胴306の表面(搬送面)に吹き付けられる。
ヒータ314は、たとえば、赤外線ヒータ、ハロゲンヒータ等で構成され、圧胴306とほぼ同じ幅をもって形成される。これにより、圧胴306の幅方向にわたってほぼ均一に加熱することができる。
チャンバ308には、その天井面の一部に排気口316が設けられている。この排気口316には、排気口ダンパ318が設けられており、排気口316は、この排気口ダンパ318によって開閉される。
チャンバ308は、この排気口316を閉じた状態でファンユニット312を稼働させると、内部で空気が循環する。したがって、この状態でヒータ314を稼働させれば、少ない熱量で空気を加熱することができ、効率よく圧胴306を加熱することができる。
一方、印字中もチャンバ内で空気を循環させながら送風させていると、記録媒体14から除去した水分でチャンバ内の湿度が上昇し、乾燥効率が低下する。
そこで、本実施の形態のインクジェット記録装置10では、装置起動時は、排気口316を閉じ、チャンバ内部で空気を循環させて、圧胴306を効率よく加熱し、印字開始後は、排気口316を開くことにより、内部の湿度上昇を防いで、効率よく記録媒体14を乾燥させる。
なお、この排気口ダンパ318による排気口316の開閉制御、及び、ヒータ314とファンユニット312の駆動制御は、システムコントローラ472により行われ、システムコントローラ472は、所定の制御プログラムに基づき、排気口316の開閉制御、及び、ヒータ314とファンユニット312の駆動制御を行う。
図9は、溶媒乾燥部30の駆動制御の処理手順を示すフローチャートである。
装置が起動されると、まず、システムコントローラ472は、排気口ダンパ318を駆動し、排気口316を閉じる(ステップS10)。
次に、圧胴306を回転駆動する(ステップS11)。この際、圧胴306は、印字時に設定される回転速度よりも遅い速度に設定されて回転駆動される。
次に、ヒータ314を駆動する(ステップS12)。この際、ヒータ314は、印字時に設定される加熱温度よりも高い温度に設定されて駆動される。ここでは、フルパワーで駆動される。
次に、ファンユニット312を駆動する(ステップS13)。これにより、ヒータ314で加熱された空気が吹出口310から圧胴306の表面(搬送面)に吹き付けられる。圧胴306は、このチャンバ308の吹出口310を介して表面に吹き付けられる熱風によって加熱される。
ここで、チャンバ308は、その吹出口310と圧胴306との間に若干の隙間があるが、排気口316が閉じられているため、その内部は、ほぼ密閉された状態にある。このため、ファンユニット312を駆動して送風すると、チャンバ308内の空気は、チャンバ308内で循環する。これにより、圧胴306に吹き付ける風を効率よく加熱することができ、電力消費を抑えることができる。また、これにより、圧胴306を目標温度まで加熱する時間を短縮することができ、装置の起動時間を短くすることができる。
なお、上記のように、圧胴306は、印字時に設定される回転速度よりも遅い速度で回転駆動される。これにより、外部への放熱を抑えることができ、より効率よく圧胴306を加熱することができる。
また、上記のように、フルパワーでヒータ314を駆動することにより、さらに効率よく圧胴306を加熱することができる。
このように装置起動時は、チャンバ308の排気口316を閉じ、チャンバ308内で熱風を循環させて、圧胴306を加熱する。
この後、システムコントローラ472は、印字が開始されたか否かを判定し(ステップS14)、開始されたと判定すると、排気口ダンパ318を駆動して、排気口316を開ける(ステップS15)。以後、印字時の溶媒乾燥制御を実施する。
排気口316を開くことにより、チャンバ308内の空気は、一部が排気口316から排気され、一部が内部で還流する。これにより、チャンバ内部の湿度上昇を防げ、印字後の記録媒体14を効率よく乾燥させることができる。すなわち、印字中は、記録媒体14から蒸発した水分が、チャンバ308内に混入するため、排気口316を閉じて、チャンバ308内を密閉していると、チャンバ308内の湿度が上昇して、乾燥機能が低下するが、排気口316を開けることにより、チャンバ308内に新鮮な空気を取り入れることができ、チャンバ308内の湿度上昇を防ぐことができる。これにより、効率よく記録媒体14を乾燥させることができる。
なお、記録媒体14の乾燥メカニズムは、次のとおりである。すなわち、印字部28で印字された記録媒体14は、渡し胴304を介して圧胴306に受け渡される(載置される)ことにより、その印字面と逆側の面が圧胴306の表面(搬送面)に接触する。上記のように、圧胴306は、チャンバ308から吹き付けられる熱風で加熱されているので、圧胴306の表面に接触した記録媒体14は、瞬時に昇温される。これにより、インク中の水分が除去される。圧胴306に受け渡された記録媒体14は、さらに圧胴306によって搬送されることにより、チャンバ308の吹出口310を通過する。そして、このチャンバ308の吹出口310を通過する際、印字面に熱風が吹き付けられ、乾燥が促進される。
このように、記録媒体14は、加熱された圧胴306に印字面と反対側の面が接触させられるとともに、印字面に熱風が吹き付けられて、乾燥される。
なお、印字中、圧胴306は、順次印字処理されて搬送される記録媒体14と記録媒体14との隙間で加熱されるとともに、記録媒体14を通して間接的に加熱される。この際、圧胴306は、起動時に既に所定温度まで加熱されているので、チャンバ308からの熱風送風だけで十分に一定の温度を維持することができる。
なお、記録媒体14ごとの品質を維持するためには、圧胴306の温度をコントロールすることが好ましい。この場合、圧胴306に表面(搬送面)の温度を検出する温度センサを設置し、該温度センサの出力に基づいて、圧胴308の搬送面の温度が一定になるように、又は、一定の温度範囲内に収まるように、ヒータ314の駆動を制御することが好ましい。
また、圧胴306は、その予備加熱の時間を短縮するため、熱容量の小さい形状、たとえば、中空の円筒形状に形成することが好ましい。
また、圧胴306は、記録媒体14の密着性を高めるため、記録媒体14の吸着保持機構を備えることが好ましい。すなわち、表面に複数の吸引穴を形成し、該吸引穴から内部にエアを吸引して、表面に記録媒体14を吸着保持する機構を備えるようにする。これにより、圧胴306の表面に記録媒体14が密着し、さらに効率よく記録媒体14を加熱することができる。
以上説明したように、本実施の形態の溶媒乾燥部30によれば、開閉自在な排気口316を有するチャンバ308を用いて圧胴306に熱風を送風する構成とし、装置起動時は、排気口316を閉じて、熱風をチャンバ内部で循環させることにより、圧胴306を短時間で効率よく加熱することができる。また、印字中は排気口316を開けて送風することにより、チャンバ内部の湿度上昇を防いで、効率よく記録媒体14を乾燥させることができる。
また、チャンバ308からの送風で圧胴306を加熱することができるため、圧胴306の加熱手段を別途設ける必要がない。これにより、少ない部品点数で構成することができるとともに、無駄な電力消費も抑えることができる。
なお、本実施の形態のインクジェット記録装置10では、印字部28で記録媒体14を搬送する圧胴216と、溶媒乾燥部30で記録媒体14を搬送する圧胴306とが分離され、互いに独立して記録媒体14を搬送するように構成されているが、同じ搬送手段で搬送する構成とすることもできる。たとえば、ベルトコンベアで記録媒体を搬送する構成とし、そのベルトコンベアの搬送経路上に印字部28のインクヘッド210K、210C、210M、210Y、及び、溶媒乾燥部30のチャンバ308を設置する構成とすることもできる。
ただし、本実施の形態のインクジェット記録装置10のように、印字部28の搬送手段(圧胴216)と、溶媒乾燥部30の搬送手段(圧胴306)とを分離し、互いに独立して記録媒体14を搬送する構成とすることにより、溶媒乾燥部30で発生する熱が、印字部28に悪影響(たとえば、インクヘッドの目詰まり等)を及ぼすのを防止することができる。したがって、印字部の搬送手段と溶媒乾燥部の搬送手段とは、互いに独立して構成することが好ましい。
また、本実施の形態では、印字開始とともに排気口316を開く構成としているが、印字初期の段階では、排気口316を閉じた状態でもチャンバ内部の湿度は、それほど上昇することはない。したがって、印字初期の段階は排気口316を閉じたままにし、印字開始から所定時間経過したのち、排気口316を開く構成としてもよい。これにより、省電力で効率よく記録媒体14を乾燥させることができる。
なお、より正確に排気口316の開閉を制御する場合には、水分の蒸発量を印字量から推測し、印字量が所定量に達した段階で排気口316を開くようにしてもよい。印字量は、たとえば、印字枚数やインクの吐出量から算出する。
また、チャンバ内に湿度計を設置し、この湿度計の出力に基づいて、排気口316の開閉を制御するようにしてもよい。
また、上記の例では、搬送面に対して垂直に熱風を吹き付ける構成としているが、図10に示すように、ファンユニット312を傾けて設置し、搬送面に対して斜めから熱風を吹き付けるように構成してもよい。これにより、チャンバ内で空気をより循環させやすくすることができる。この場合、同図に示すように、ファンユニット312とほぼ対称位置(ファンユニット312から吹き出されて圧胴306に当たった熱風が反射する位置)に排気口316を設けることが好ましい。これにより、印字時にチャンバ内の空気を効率よく給排気することができる。
なお、圧胴306に吹き付ける熱風の温度は、たとえば、チャンバ308内にチャンバ308内の温度を検出する温度センサを設置し、この温度センサの出力に基づいて、ヒータ314の駆動を制御することにより調整する。
<溶媒乾燥部の構成(2)>
図11は、溶媒乾燥部の第2の実施の形態の要部の概略構成図である。
本実施の形態の溶媒乾燥部30Aは、チャンバ308の排気口316に排気ファン400が取り付けられている点で上述した第1の実施の形態の溶媒乾燥部30と相違している。この排気ファン400は、チャンバ308内の空気を排気口316に向けて送風する。
排気ファン400の駆動は、システムコントローラ472によって制御され、システムコントローラ472は、排気ファン400を印字中だけ稼働させる。すなわち、排気ファン400は、排気口316の開閉に連動して動作させる(排気口316の開で排気ファン400をONし、排気口316の閉で排気ファン400をOFFする。)。
このように、排気口316に排気ファン400を設置し、印字中(排気口316が開いている間)、排気ファン400を稼働させることにより、チャンバ308内に新鮮な空気を取り込むことができ、より効率よく記録媒体14を乾燥させることができる。
<溶媒乾燥部の構成(3)>
図12は、溶媒乾燥部の第3の実施の形態の要部の概略構成図である。
本実施の形態の溶媒乾燥部30Bは、チャンバ308に給気口402が設けられている点で上述した第2の実施の形態の溶媒乾燥部30Bと相違している。
給気口402は、チャンバ308への外気の取り込み口であり、給気口ダンパ404によって開閉される。
また、給気口402には、給気ファン406が設けられており、この給気ファン406によって、外気が給気口402からチャンバ308の内部に取り込まれる。
給気ファン406と給気口ダンパ404の駆動は、システムコントローラ472によって制御され、システムコントローラ472は、印字中だけ給気口402を開き、給気ファン406を作動させる。すなわち、給気口402は、排気口316とともに開閉し、給気ファン406は、排気口316の開閉に連動して動作させる(排気口316の開で給気口402を開、給気ファン406をONし、排気口316の閉で給気口402を閉、給気ファン406をOFFする。)。
このように、チャンバ308に給気口402を設け、印字中(排気口316が開いている間)に開くことにより、印字中、チャンバ308内に新鮮な空気を取り込むことができ、さらに効率よく記録媒体14を乾燥させることができる。
なお、上記の例では、給気口402に給気ファン406を取り付けているが、給気口402には、給気口ダンパのみ取り付ける構成としてもよい。この場合も給気口402を介して印字中に新鮮な空気を取り込むことができる。
<溶媒乾燥部の構成(4)>
図13は、溶媒乾燥部の第4の実施の形態の要部の概略構成図である。
本実施の形態の溶媒乾燥部30Cは、主として、チャンバ308に循環用の循環ダクト410が取り付けられている点で上述した第2の実施の形態の溶媒乾燥部30Bと相違している。
循環ダクト410の一端は、排気口316に連結されており、他端は、チャンバ308内に引き込まれている。本例の場合、ヒータ314の上方に引き込まれている。したがって、この循環ダクト410を通った空気は、ヒータ314の上方に吹き出される。
循環ダクト410の途中には、通気口412が設けられており、通気口412には、通気口412を開閉するための通気口ダンパ414が設けられている。チャンバ308は、この通気口412を開くことにより、外気の取り入れが可能になる。一方、この通気口412を閉じることにより、内部がほぼ密閉される(吹出口310と圧胴306との隙間を除く)。
通気口ダンバ414の駆動は、システムコントローラ472によって制御され、システムコントローラ472は、印字中だけ通気口412を開く。
なお、本例の場合、循環ダクト410に設けられた通気口412を介してチャンバ308内の空気の給排気を行うため、排気口316には、排気口ダンパ318は取り付けられていない。
以上のように構成された溶媒乾燥部30Cによれば、循環ダクト410に設けられた通気口412を開けて送風することにより、より効率よく新鮮な外気を取り込むことができる。これにより、印字中におけるチャンバ内の湿度上昇を防止でき、より効率よく記録媒体14を乾燥させることができる。
なお、上記の例では、排気ファンを設置しない構成としているが、図14に示すように、循環ダクト410内に排気ファン400を設ける構成としてもよい。これにより、排気効率を向上させることができ、チャンバ内の湿度上昇を効果的に防止することができる。
<溶媒乾燥部の構成(5)>
図15は、溶媒乾燥部の第5の実施の形態の要部の概略構成図である。
本実施の形態の溶媒乾燥部30Dは、チャンバ308の吹出口310にフラップ420が取り付けられており、吹出口310と圧胴306との間に生じる隙間を塞ぐことができるようされている。
フラップ420は、板状の弾性体で構成されており、圧胴306を挟んで吹出口310の両側の縁部に沿って取り付けられている。フラップ420は、その基端部が、吹出口310の縁部に回動自在に支持されて取り付けられており、図示しないフラップ駆動機構に駆動されて揺動する(たとえば、回動軸をモータで回転駆動させて揺動、あるいは、リンクによりシリンダで駆動して揺動させる。)。そして、水平な開放位置(図15の破線の位置)と、垂直な遮蔽位置(図15の実線の位置)との間を移動する。
水平な開放位置では、チャンバ308の下面と平行な状態となり、圧胴306との間に所定の隙間(圧胴306によって搬送される記録媒体14が接触しない程度の隙間)が形成される。
一方、垂直な遮蔽位置では、チャンバ308の下面から突出し、その先端部が圧胴306の表面(搬送面)に接触する。これにより、圧胴306と吹出口310との間に生じる隙間が閉じられる。
システムコントローラ472は、図示しないフラップ駆動機構の駆動を制御して、フラップ420の位置を制御する。この際、システムコントローラ472は、起動時は、フラップ420を開放位置に位置させ、印字時は、フラップ420を遮蔽位置に位置させる。すなわち、このフラップ420も排気口316の開閉に連動させて動作させ、排気口316を閉じているときは、フラップ420を遮蔽位置に位置させ、排気口316が開いているときは、フラップ420を開放位置に位置させる。
このように、起動時にフラップ420を遮蔽位置に位置させて、チャンバ308を密閉することにより、循環効率が高まり、起動時により効率よく圧胴306を加熱することができる。
なお、本例では、フラップ420を揺動させて、吹出口310の隙間を塞ぐ構成としているが、この他、フラップを420を上下させて、吹出口310の隙間を塞ぐ構成としてもよい。
<溶媒乾燥部のその他の構成>
上記一連の実施の形態では、溶媒乾燥部において、記録媒体14を圧胴で搬送する構成としているが、記録媒体14を搬送する手段は、これに限定されるものではない。たとえば、図16に示すように、コンベア430で搬送する構成とすることもできる。
このコンベア430は、無端状のベルト432を一対のプーリ434に巻きかけて構成されており、一方のプーリ434に連結された図示しないモータに駆動されて回転する。記録媒体14は、このコンベア430のベルト432に設けられた図示しないグリッパに把持されて搬送される。
10…インクジェット記録装置、14…記録媒体、24…浸透抑制処理部、26…処理液塗布部、28…印字部、30…溶媒乾燥部、32…熱圧定着部、34…排出部、304…渡し胴、306…圧胴、308…チャンバ、310…吹出口、312…ファンユニット、314…ヒータ、316…排気口、318…排気口ダンパ、400…排気ファン、402…給気口、404…給気口ダンパ、406…給気ファン、410…循環ダクト、412…通気口、414…通気口ダンバ、420…フラップ、472…システムコントローラ