JP3141802B2 - 親水性部材、及び親水性維持方法 - Google Patents

親水性部材、及び親水性維持方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【０００１】
【発明の属する技術分野】本発明は、チタン合金、金属
チタン等のチタン含有基材の表面を高度の親水性になす
親水性部材、かつ親水性を維持するための方法に関す
る。
【０００２】
【従来の技術】チタン合金、金属チタン等のチタン含有
基材は、航空機、電極、ゴルフクラブのヘッド等に使用
される。航空機は、大気中に浮遊する煤塵、とりわけ最
近はカ−ボンブラック等の燃焼生成物を多量に含む都市
煤塵より薄黒い汚れが付着する。航空機は、機体が大き
いため、その汚れを落とすための清掃作業は時間とコス
トがかかる。また高所作業を伴うため危険である。電極
では、電極反応の進行に伴い、生成した気体が電極表面
に気泡として付着すると、電極反応の進行速度が低下す
る。ゴルフクラブのヘッドでは、水滴が不均一に付着す
ると飛距離に影響を与える。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】上記課題は、いずれも
表面を親水性にすることにより解決すると考えられる。
すなわち、航空機の機体表面を親水性にすれば、カ−ボ
ンブラック等の疎水性物質からなる都市煤塵が降雨や水
洗により容易に落せるようになる。また電極表面を親水
性にすれば、表面が気泡より水に濡れやすくなるので、
電極表面に気泡が付着しにくくなる。さらにゴルフクラ
ブのヘッド表面を親水性にすれば、降雨等による付着水
が水滴を形成せずに、一様に水膜化され、水滴付着によ
る飛距離低下を防止できると考えられる。周知のよう
に、従来用いられている表面の親水化方法は、表面にポ
リエチレングリコ−ルのような親水性化合物或いは他の
界面活性剤を表面に塗布することである。しかし、この
種の防曇性被膜はあくまで一時的なもので、水洗や接触
によって容易に取除かれ、早期に効果を失うという難点
がある。本発明では、上記事情に鑑み、チタン含有基材
表面を長期にわたり高度の親水性に維持できるような表
面の親水化方法及び表面の親水維持方法を提供すること
を目的とする。
【０００４】
【課題を解決するための手段】本発明は、光触媒を含有
する表面層を形成した部材において、光触媒を光励起す
ると、部材の表面が高度に親水化されるという発見に基
づく。この現象は以下に示す機構により進行すると考え
られる。すなわち、光触媒の価電子帯上端と伝導帯下端
とのエネルギ−ギャップ以上のエネルギ−を有する光が
光触媒に照射されると、光触媒の価電子帯中の電子が励
起されて伝導電子と正孔が生成し、そのいずれかまたは
双方の作用により、おそらく表面に極性が付与され、水
や水酸基等の極性成分が集められる。そして伝導電子と
正孔のいずれかまたは双方と、上記極性成分との協調的
な作用により、表面と前記表面に化学的に吸着した汚染
物質との化学結合を切断すると共に、表面に化学吸着水
が吸着し、さらに物理吸着水層がその上に形成されるの
である。その結果部材表面は親水性を呈するようにな
る。また、一旦部材表面が高度に親水化されたならば、
部材を暗所に保持しても、表面の親水性はある程度の期
間持続する。
【０００５】本発明では、チタン含有基材を５００℃以
上１１００℃以下で酸素を含む雰囲気中で焼成して結晶
性酸化チタンを生成させる工程により作製することを特
徴とする親水性部材を提供する。チタン含有基材を５０
０℃以上の酸素を含む雰囲気中で焼成することにより、
酸素との反応により基材表面が酸化されると共に、酸化
反応により生成したチタン酸化物が結晶化されて、光触
媒性を示すアナタ−ゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタ
ン等の結晶性酸化チタンが生成する。結晶性酸化チタン
は、４２０ｎｍ以下の波長の紫外線を含む光を照射する
と、その照射に応じて光励起され、それにより基材表面
は親水性を呈するようになる。
【０００６】
【発明の実施の形態】本発明における結晶性酸化チタン
とは、アナタ−ゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン等
をいう。アナタ−ゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン
共に光触媒性を有し、アナタ−ゼ型酸化チタンでは３９
０ｎｍ以下の波長の紫外線を含む光を、ルチル型酸化チ
タンでは４２０ｎｍ以下の波長の紫外線を含む光を、照
射することにより、価電子帯中の電子の励起（光励起）
が生じて、伝導電子と正孔を生成する。その結果、上記
機構に基づき基材表面は親水化されるのである。ここで
光触媒の光励起に用いる光源としては、太陽光、一般室
内照明、白熱電灯、メタルハライドランプ、水銀ラン
プ、キセノンランプ、殺菌灯、蛍光灯等が好適に利用で
きる。光触媒の光励起により、基材表面が高度に親水化
されるためには、励起光の照度は、０．００１ｍＷ／ｃ
ｍ2以上あればよいが、０．０１ｍＷ／ｃｍ2以上だと好
ましく、０．１ｍＷ／ｃｍ2以上だとより好ましい。
【０００７】本発明におけるチタン含有基材とは、チタ
ン金属、チタン合金、窒化チタン、炭化チタン等のチタ
ン化合物を含む基材をいう。
【０００８】酸素を含む雰囲気とは、例えば、空気中、
酸素中、大気中を含む。
【０００９】親水性とは、表面に水を滴下したときにな
じみやすい性質をいい、一般に水濡れ角が９０゜未満の
状態をいう。本発明における高度の親水性とは、表面に
水を滴下したときに非常になじみやすい性質をいい、よ
り具体的には平滑表面における水濡れ角が３０゜以下程
度になる状態をいう。
【００１０】
【実施例】
実施例１．（金属チタン蒸着膜） ソ−ダライムガラス表面に、スパッタリング法により、
金属チタン膜を形成後、大気中で５００℃で焼成して試
料を得た。得られた試料表面には、金属チタンが酸化さ
れ、さらに結晶化されて生成したアナタ−ゼ型酸化チタ
ンの結晶が観察された。焼成直後より、試料表面に中心
波長３６０ｎｍ、照度０．５ｍＷ／ｃｍ2のＢＬＢラン
プを照射し続けて、水との接触角の時間的変化を測定し
た。水との接触角は接触角測定器（協和界面科学、ＣＡ
−Ｘ１５０）により、水滴滴下後３０秒後の値で測定し
た。結果を図１に示す。図より水との接触角は３゜未満
を維持し、実施試料では、紫外線の照射により親水性が
維持できることが確認された。
【００１１】実施例２．（大気酸化法、ルチル） 金属チタン板表面を１１００℃程度で大気中でガスバ−
ナ−で熱処理して試料を得た。熱処理により金属チタン
が酸化され、さらに結晶化されて生成したルチル型酸化
チタンの結晶が観察された。この試料を数か月放置後、
試料表面に、中心波長３６０ｎｍ、照度０．５ｍＷ／ｃ
ｍ2のＢＬＢランプを照射し続けて、水との接触角の時
間的変化を測定した。結果を図２に示す。図より２時間
以上の照射で水との接触角２０゜未満まで親水化され、
その後紫外線を照射し続けることにより親水性が維持で
きることが確認された。
【００１２】実施例３．（陽極酸化法） 金属チタン板表面に陽極酸化法にて無定型酸化チタンを
形成した後、５００℃で熱処理して試料を得た。熱処理
により無定型酸化チタンが結晶化されて生成したアナタ
−ゼ型酸化チタンの結晶が観察された。この試料を数か
月放置後、試料表面に、中心波長３６０ｎｍ、照度０．
５ｍＷ／ｃｍ2のＢＬＢランプを照射し続けて、水との
接触角の時間的変化を測定した。結果を図３に示す。図
より２時間の照射で水との接触角２０゜、４時間の照射
で水との接触角１０゜まで親水化され、陽極酸化法を用
いた場合でも親水化できることが確認された。
【００１３】実施例４．（大気酸化法、アナタ−ゼ） 金属チタン板を電気炉中、大気雰囲気で、６５０℃、７
００℃、７５０℃、８００℃で熱処理して試料を得た。
熱処理により金属チタンが酸化され、さらに結晶化され
て生成したアナタ−ゼ型酸化チタンの結晶が観察され
た。この試料を１週間暗所に放置後、試料表面に、中心
波長３６０ｎｍ、照度０．５ｍＷ／ｃｍ2のＢＬＢラン
プを２４時間照射し、照射後の水との接触角を測定し
た。結果を図４に示す。図よりいずれの温度で熱処理し
た試料においても、２０゜未満まで親水化された。
【００１４】
【発明の効果】本発明によれば、チタン含有基材表面を
長期にわたり高度の親水性に維持できるような親水性部
材及び表面の親水維持方法を提供することが可能とな
る。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に係る実施試料の親水維持性を示す図。
【図２】本発明に係る実施試料の親水化の様子、及び親
水維持性を示す図。
【図３】本発明に係る実施試料の親水化の様子を示す
図。
【図４】本発明に係る実施試料の親水化の様子を示す
図。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項１】 チタン含有基材を、酸素を含む雰囲気中
    で５００℃以上１１００℃以下で焼成して結晶性酸化チ
    タンを生成させる工程により作製することを特徴とする
    親水性部材。
  2. 【請求項２】 請求項１に記載の親水性部材に４２０ｎ
    ｍ以下の波長の紫外線を含む光を照射して、前記結晶性
    酸化チタンを光励起させる工程に応じ、親水性を維持す
    る方法。
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