JP3518251B2 - 酸化物光触媒薄膜、及びそれを備えた物品 - Google Patents

酸化物光触媒薄膜、及びそれを備えた物品

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、酸化物光触媒薄
膜、及びそれを備えた物品に係わり、特にわずかな光で
有機物を分解する能力に優れるため、各種フィルター,
空調機,掃除機,空気洗浄機,洗濯機,換気扇に適用す
ることが可能な酸化物光触媒薄膜、及びそれを備えた物
品に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、TiO2 光触媒を用いた有機物の
分解及び抗菌防臭材が注目を集めている。これは、例え
ばニューセラミックス(1996)No.2,55に記載されている
ような半導体光触媒の酸化還元反応を用いたもので、基
板上に膜として形成されるのが一般的である。
【0003】成膜法としては、基板上にスパッタリング
のような物理的方法によるものとゾルゲル法のような塗
布法などの化学的な方法によるものとが知られている。
前者は真空装置等を用いて低い温度で成膜が可能であ
る。後者はスピンコート,スプレーなど簡単な装置で基
板上に塗布し、通常数百℃の温度で処理することによっ
て膜を得ることができる。抗菌防臭用の材料であるTi
2 はアナターゼ型の結晶のものが有効であり、機能発
現には結晶化が有効であることが報告されている(Paten
t No.(PCT)WO 94/11092,(PCT)WO95/15816)。
【0004】またTiO2 にV,Fe等を添加して高性
能化したものが報告されている(W.Choi,A.Termin,M.R.H
offmann,J.Phys.Chem.,98,13669-13679(1994))。
【0005】また、特開平8−66635号公報には、TiO
2 膜を形成するための高温焼成時に低下した光活性を回
復するため、Cu,Ag,Fe、Co,Pt,Ni,P
d等の金属を膜中に固定することが開示されている。ま
た、この発明では、従来、触媒の光活性を低下させるア
ルカリ金属,アルカリ土類金属のTiO2 への付着によ
る光活性の低下を回復させる効果があることも記載され
ている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来の技術で用いられ
ていた光触媒性を有する酸化チタン粒子を無機物薄膜中
に分散したものでは、酸化チタンのみから構成される光
触媒膜に比べて、酸化チタンの占有面積が小さい分、性
能が低下するという問題があった。そのため、従来の技
術で述べたように酸化チタン粒子を含む無機薄膜を数百
℃で焼成し、酸化チタンの結晶性を向上させる方法,
V,Fe等を添加して高性能化する方法などがとられて
いた。しかし、前者の方法では、数百℃で焼成する必要
があるため、耐熱温度が300℃以下の有機高分子から
なる基材表面に設けることはできなかった。また、V,
Fe等を添加して高性能化する方法では酸化チタンに
V,Fe等の金属が拡散,固溶していないと性能が発揮
できない。すなわち、酸化チタンの粒子の前処理が必要
なので、製造プロセスが増えるという問題があった。
【0007】本発明の目的は、酸化チタンの触媒活性を
高める成分を添加することで、酸化チタンの結晶性が低
くてもわずかな光量(照度×照射時間)でも十分実用に
耐え得る光触媒活性を呈する酸化チタン粒子分散型の光
触媒膜、及びその膜を有する物品を提供することにあ
る。
【0008】別言すれば、本発明の目的は、高温で焼成
することを不要にでき、また酸化チタン粒子の前処理等
も不要な酸化チタン粒子分散型光触媒膜を提供すること
にある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明の第1の発明の構成は、TiO2 微粒子が無機
物薄膜中に分散している酸化物光触媒薄膜において、前
記無機物薄膜中に、電気陰性度が1.6より小さく、か
つイオン半径が0.2nmより小さい元素であって、原
子価が2以下の金属元素が含有されていることを特徴と
する酸化物光触媒薄膜である。
【0010】無機物薄膜とは、例えば酸化珪素,酸化ジ
ルコニウム,酸化アルミニウム等の金属酸化物を主体と
する膜から構成されるものである。含有される金属元素
は、上記無機物薄膜中に均一に分散されていることが好
ましい。また、金属元素は、無機物薄膜中でイオンの形
態で分散されていることが好ましい。これらの元素は、
硝酸塩,炭酸塩,水酸化物等の塩の形で添加されること
によって、無機物薄膜中でイオンの形で存在させること
ができる。上記におけるイオン半径とは、化学便覧基礎
編II,改訂2版(昭和54年3月20日第4刷,140
7頁)に記載のイオン半径の表に基づいている。また、
電気陰性度は、ポーリングの電気陰性度の表に記載され
た数値に基づいている。
【0011】TiO2 は光触媒としての機能を有してお
り、有機物の分解及び抗菌防臭作用を持つ。その機能は
半導体であるTiO2 が光特に紫外線を照射すると生じ
る電子とホールに起因する。半導体であるTiO2 はバ
ンドギャップ以上のエネルギーを持つ光を照射すると、
電子とホールを生成する。生成した電子とホールはTi
2 表面に吸着した水を分解してHラジカルとOHラジ
カルを生成する。このOHラジカルが有機物と反応する
ことにより、有機物を分解することができる。この様な
機構で光触媒は有機物等を分解しているが、さらに反応
速度を大きくするには以下の二つの手段がある。第1は
一つの活性点の仕事量を多くすることで、第2は活性点
の数を多くすることである。活性点の数を多くするに
は、表面積を大きくすること、すなわちTiO2 を微粒
子化することにより達成できる。また、活性点の仕事量
を多くするためには、TiO2 (アナターゼ)の結晶化
を良くすることと、電子とホールの再結合を防止するこ
とである。以上を満足することにより反応速度を大きく
することができる。しかし、TiO2(アナターゼ)の結
晶化を良くすることと表面積を大きくすることは相反す
ることであり、両立は困難である。すなわち、結晶性を
向上することは粒子径の増加を招き、表面積は低下して
しまう。従って、結晶性を向上させる方向と表面積を大
きくさせる方向との間に、最適域が存在する。その領域
は本発明の多くの実験結果より5〜20nmであること
を見出した。TiO2 微粒子を分散させる場合に無機バ
インダーとして使用する酸化物の種類を変えてもこの粒
子径の範囲で分解速度が大きくなった。
【0012】電子とホールの再結合を防止することによ
り反応速度を向上させるには、電子とホールの分離効率
をあげることにより達成される。TiO2 表面にはTi
欠陥が存在する。この欠陥は電子とホールの再結合点と
なり、反応を阻害する。ここに、イオン半径がTiと同
程度のイオンが添加されると表面のTi欠陥に侵入し、
欠陥が消滅し再結合点が減少する。さらに、正イオンで
存在するため、電子を引き付けホールと分離でき、有機
物の酸化反応を促進することができる。本発明は、この
ような効果を有する添加剤の条件が電気陰性度が1.6
より小さく、イオン半径が0.2nm より小さいものが
有効であることを見出した。電気陰性度が1.6より小
さく、イオン半径が0.2nmより小さい代表的なもの
としてアルカリ金属元素がある。これらの元素は従来の
文献、例えば1996年7月5日(金)に中央大学駿河
台記念館で行われた「光触媒の開発と最新技術」と題す
る講習会でのテキスト第34頁下から5行目〜に、チタ
ン膜にアルカリ成分が拡散することにより触媒活性が低
下することが記載されているように、従来は光活性を低
下させるものとして認識されていた。本発明者らは酸化
チタンの光触媒活性を向上させる方法を鋭意検討した結
果、従来光触媒を低下させるものと認識されていたアル
カリ金属等が、逆に触媒活性を向上させるという新しい
発見に基づいてなされたものである。この場合、添加さ
れる金属元素は、酸化チタン格子中に拡散しているより
は、酸化チタン粒子の周りにある無機物薄膜中に金属イ
オンとして存在する方が高活性を示す。従って、高温で
焼成するよりは、200℃以下の低温で焼成されるか、
または紫外線を照射するのみでまったく焼成しない方
が、高活性の触媒膜が得られる。
【0013】上記構成により、製造時に焼成等をしなく
とも、十分な性能の光活性を呈する光触媒薄膜が製造で
きるため、低コストな光触媒薄膜が提供できる。すなわ
ち、十分な光活性を維持しながら、かつ耐熱性の低い有
機高分子化合物表面にも設けることが可能な光触媒薄膜
が提供できる。
【0014】焼成しないで酸化チタン膜を作製する場合
は、生成した酸化チタン膜は、結晶性が低い。これをX
線回折するとブロードなピークが現れる。このような結
晶性の低い酸化チタン粒子は、光触媒活性が低いが、L
iが添加されることによって、触媒活性を向上させてい
るので、トータルの光触媒性能は、数百度で焼成した酸
化チタン粒子分散型光触媒膜と同等またはそれ以上であ
る。
【0015】第1の発明において、上記金属が、Na,
Li,K,Mg,Ca,Sr,Znの中から選ばれた少
なくとも一種の金属であることが好ましい。特に本発明
者らの実験によれば、Li,Na,Mg,Ca,Znの
順で光活性が高いことを確認している。このことから電
気陰性度が1.6より小さく、イオン半径が0.2nmよ
り小さいものの中でも原子番号の小さい金属元素が有効
であると思われる。
【0016】また、第1の発明においてTiO2 微粒子
の大きさが5〜20nmであることが好ましい。酸化チ
タン粒子の径が大きくなると光触媒薄膜の光透過性が低
下する。また、粒子径が小さい方が触媒粒子の表面積が
大きいため、触媒性能が向上する。しかし、粒子径が小
さすぎても逆に触媒性能が低下することから、望ましい
酸化チタンの粒子径としては5〜20nmが良い。
【0017】第1の発明において金属元素の量が酸化物
光触媒薄膜全体に対して2〜50wt%、より好ましく
は5〜20wt%であることが望ましい。図5にリチウ
ム添加量と触媒活性(一定時間後の有機物の分解率)の
関係を示す。リチウム無添加のものに比べて、リチウム
添加量が2重量%以上になると触媒活性が向上している
ことがわかる。
【0018】何故このような関係となるのかは現在のと
ころ明確には解っていない。特にリチウムの場合、1w
t%の添加で触媒活性が2割ほど低下しているがこの原
因については今後の研究を待たねばならない。
【0019】第1の発明において、無機物薄膜が、Si
2 を主成分とするものであっても良い。無機薄膜をゾ
ルゲル法で作製する場合、金属アルコシキド水溶液を用
いる。珪素のアルコキシドは他の物に比べて価格が安
く、また低温で酸化物が形成されるため、酸化チタンの
粒子を分散させるための無機薄膜として好適である。
【0020】また、酸化物光触媒薄膜中のTiO2/S
iO2比が重量で9〜5であることが好ましい。
【0021】第1の発明において無機物薄膜中に、更に
Pt,Rh,Pd,Ag,Cu,Niの中から選ばれた
少なくとも一種の金属元素が含まれていることが好まし
い。これら元素は、従来の技術においても触媒活性の向
上効果があるものとされていたもので、本発明に適用す
ることが可能である。また、これらの元素は導電性を有
しているため、光触媒薄膜の帯電を防止でき、空気中の
塵埃の付着を抑制することができるという効果も得られ
る。
【0022】第1の発明において、酸化物薄膜中に、更
に電子親和力が1.2 以上の金属元素から構成される酸
化物半導体微粒子が分散していることが好ましい。
【0023】これはキャリア濃度の小さいTiO2 にキ
ャリア濃度の大きな酸化物半導体より、キャリアを注入
することにより達成される。従って、酸化物半導体から
TiO2にキャリアが流れやすいようにする必要がある。酸
化物半導体の電子親和力がTi以下であるとショットキ
ーバリアが形成される。そこで、添加する材料は電子親
和力が1.2eV 以上である必要がある。
【0024】上記において、前記酸化物半導体粒子が分
散している層を、前記TiO2 微粒子が分散している層
とは別に設けられていることが好ましい。特に、表面よ
り数えて第1層にSiO2 中にTiO2 微粒子が分散し
てあり、電気陰性度が1.6より小さく、イオン半径が
0.2nm より小さい元素であって、原子価が2以下の
イオンを添加してある酸化物光触媒薄膜が形成してあっ
て、表面より数えて第2層には、少なくとも電子親和力
が1.2 以上の金属元素から構成される酸化物半導体を
主体とする酸化物微粒子が分散している酸化物薄膜を形
成し、積層構造とすることが好ましい。
【0025】上記酸化物半導体微粒子としてはSn,F
e,Crの中から選ばれた少なくとも一種の酸化物から
なることが好ましい。
【0026】また、上記酸化物半導体微粒子がATO
(アンチモン添加酸化スズ)であることも好ましい。
【0027】ATOなどの導電性微粒子を添加した場合
及び積層した場合は、光触媒の性能を向上すると共に、
帯電防止機能が付与されることによって、有機物の分解
だけでなく、空気中に浮遊している埃などの無機物の付
着を防ぎ、より高性能な防汚機能を提供できる。
【0028】上記した酸化物半導体微粒子の含有量が2
〜50wt%であることが好ましい。
【0029】更に、本発明の目的を達成するために本発
明の第2の発明では、TiO2 微粒子が無機物薄膜中に
分散している酸化物光触媒薄膜において、前記無機物薄
膜中に、電子親和力が1.2 以上の金属元素から構成さ
れる酸化物半導体微粒子が分散していることを特徴とす
る酸化物光触媒薄膜の構成を用いる。
【0030】本発明の第3の発明は、上記した酸化物光
触媒薄膜を基材表面に備えたことを特徴とする物品にあ
る。
【0031】第3の発明では酸化物光触媒薄膜の膜厚が
100〜500nmであることが好ましい。
【0032】更に第3の発明では、酸化物光触媒薄膜
と、前記物品の基材表面との間に、無機物からなるバリ
ア層を設けることもできる。
【0033】バリア層としては、特にAl,Zr,Fe
より選ばれた少なくとも一種の金属元素を含む金属酸化
物の膜であることが好ましい。
【0034】本発明者らはFe,Al,Zrを添加する
とTiO2 の光触媒が失われることを見出した。有機物
を主体とする基板材料を用いた場合、光触媒作用により
基板を自己破壊するという問題がある。そこで、本発明
は基板と光触媒の間にバリア層を形成するが、このバリ
ア層にFe,Al,Zrを添加することで、完全に自己
破壊を抑制することができる。さらに、高性能なバリア
層であるため、膜厚を十分薄くすることが可能となる。
【0035】すなわち、上記物品の基材が、分解開始温
度300℃以下の有機物高分子化合物からなることが好
ましい。
【0036】また、本発明の第4の発明では、有機物高
分子化合物を主体とする基材と、該機材の表面に設けら
れた、無機物からなるバリア層と、該バリア層の表面に
設けられた、有機物の分解反応を触媒する酸化物触媒層
からなる物品との構成が用いられる。
【0037】
【発明の実施の形態】
(実施例1)SiO2 ゾル中にTiO2 微粒子を分散さ
せた溶液を作製した。この溶液を用いてPETフィルム
上にTiO2 膜を形成し、図1のPETフィルムを作製
した。以下にその手順を示した。
【0038】まず、SiO2 ゾルの作製法について説明
する。5gのテトラエトキシシランを100mlの水−
エタノール−プロパノール(3:27:70)混合溶液
中に溶解し、40℃で5時間程度撹伴した。得られた溶
液は室温で2週間放置してSiO2 ゾルとした。
【0039】次にSiO2ゾル中にTiO2微粒子を分散
させた溶液の作製法について説明する。先に作製したS
iO2ゾル中にTiO2微粒子を重量比でTiO2 /Si
2を9として添加した。また、固形分濃度は4wt%
とし、必要量水を加えて調整した。その後5mmφのジル
コニアボールを用いてSiO2 ゾル中にTiO2 微粒子
を分散させるために24hrボールミルで処理し、Si
2 ゾル中にTiO2微粒子を分散させた溶液を作製し
た。
【0040】PETフィルム1に作製したTiO2 微粒
子分散SiO2 ゾルをコートして、120℃で低圧水銀
ランプ(強度:15mW/cm2)を照射しながら5分間処
理してSiO2 膜2中にTiO2 微粒子3が分散したT
iO2 分散SiO2 膜4をコートしたプラスチックフィ
ルムを形成した。PETフィルム上に得られた薄膜は、
膜質及び強度共に良好であり、膜厚は300nmであっ
た。
【0041】酸化チタンは近年、光触媒機能による有機
物の分解活性に優れるとされることより有機物の分解活
性を評価した。なお、活性試験は薄膜に赤紫系の有機色
素をコートして254nmで1mW/cm2 の光を照射し
て行った。分解速度は初期の色素の透過率からの変化量
より求めた。図2にその結果を示した。
【0042】図には比較のためにTiO2 分散SiO2
膜付きの他、膜なしとSiO2 膜の結果も示した。Ti
2 分散SiO2 膜なし及びSiO2 膜ではほとんど色
素量に変化はないが、TiO2 分散SiO2 膜ありの場
合は30分後に45%分解したという結果が得られた。
【0043】この様に、光触媒機能を有したTiO2
散SiO2 膜付きPETフィルムを作製することができ
た。本発明の成膜法は、120℃程度で作製が可能であ
り、パイレックスガラス基板以外にプラスチック材料へ
の応用が可能である。通常のゾルゲル法では、400℃
程度の温度が必要であるためプラスチック製品への応用
が困難であったり、TiO2 の結晶化に10分以上の時
間が必要である。一方、本発明の作製法は低温で成膜が
可能であるため、使用できる基材が豊富で、どの様な表
面にも光触媒を成膜できる。また、数分間という短時間
処理が可能で生産コストの大幅な低下が可能である。
【0044】次に、光触媒の性能向上のために、助触媒
添加を行った。先に作製したSiO2ゾル中にTiO2
粒子を分散させた溶液中に各種硝酸塩を添加して、PE
Tフィルム上に成膜し、色素の分解反応を行った。結果
は表1に示した。
【0045】
【表1】
【0046】Na,Li,K,Mg,Ca,Sr,Zn
添加の光触媒が有効であり、Fe,Alは失活剤となる
ことがわかった。
【0047】図3に電気陰性度に対し助触媒の添加効果
をプロットした結果を示した。電気陰性度は小さいもの
ほど効果があるようだが、特にLi,Na,Mgが有効
であることから、電気陰性度だけでなくイオン半径も重
要であることがわかった。図4には電気陰性度とイオン
半径そして添加効果の関係を示した。このように、電気
陰性度が1.6より小さく、イオン半径が0.2nmより
小さい元素でその価数が2以下のイオンを添加すること
が有効であることがわかった。
【0048】(実施例2)SiO2 ゾル中に粒子径の異
なるTiO2 微粒子を分散させた溶液を数種類作製し
た。なお、TiO2/SiO2比は重量比で9とし、Li
添加量は5wt%とし、実施例1同様な操作でTiO2
分散SiO2 膜をPETフィルム上に形成し、有機色素
を用いて10分後の分解率を調べた。
【0049】
【表2】
【0050】表2に作製した試料の各条件と試験結果を
示した。これらの結果より、分散したTiO2 粒子の大
きさは、8〜10nmが最も有効であることが分かっ
た。このように、粒子径により分解速度が変化してお
り、さらにTiO2/SiO2比を小さくするとTiO2
微粒子の最適粒子径は変化したが、5〜20nmの範囲
であれば分解速度は良好であった。従って、Li添加触
媒のTiO2 粒子径は5〜20nmであれば良いことが
分かった。また、以上の結果はLi以外のNa,K,M
g,Ca,Sr,Znについても同様であった。
【0051】(実施例3)表3にLi添加量,TiO2
/SiO2を変化させた場合の色素分解率及び膜強度に
ついて調べた結果を示した。なお溶液の作製及び成膜法
は実施例1同様に行った。これらの結果より分解率と強
度ともに有効である条件は、Li添加量が0.5〜20
wt%で、TiO2/SiO2が9〜5であることが分か
った。
【0052】
【表3】
【0053】表4にはTiO2/SiO2及び膜厚を変化
させた場合の色素分解率及び膜質について調べた結果を
示した。なお溶液の作製及び成膜法は実施例1同様に行
ったが、膜厚は溶液の固形分濃度を0.5〜8wt%ま
で変化させて調節した。
【0054】結果は膜厚が100〜500nmであれば
TiO2/SiO2比の影響を受けずに分解率,膜質とも
良好であることが分かった。
【0055】以上の結果はLi以外のNa,K,Mg,
Ca,Sr,Znについても同様であった。
【0056】
【表4】
【0057】(実施例4)表5にはTiO2 以外の酸化
物半導体であるATO,ITO,ZnO,Fe23,Cr2
3微粒子を添加した場合の色素分解率を調べた結果を
示した。結果はATO,Fe23,Cr23微粒子添加が有
効であり、添加量はいずれの場合も添加すれば有効であ
り、特に10〜20wt%が最も有効であった。ここ
で、各酸化物の構成元素の電子親和力を見ると以下のよ
うになり、1.2eV 以上の電子親和力を有する構成元
素を用いた酸化物半導体を用いると有効であることが分
かった。
【0058】
【表5】
【0059】 構成元素 Ti Sn In Zn Fe Cr 電子親和力(eV) 1.25 1.2 0.2 −1.2 3.16 3.54 酸化物半導体の電子親和力がTiのそれより小さい場合
は、微粒子の粒子界面にはショットキーバリアが形成さ
れ、添加した酸化物半導体のキャリアがTiO2 中に注
入できず効果が現れない。これに対して酸化物半導体の
電子親和力がTiのそれより大きい場合は、微粒子の粒
子界面にはショットキーバリアが形成され、オーミック
接合となり、容易に酸化物半導体のキャリアがTiO2
中に注入され、有効に機能する。特に有効であったAT
Oは、電子親和力はTiより若干小さいが、その差はほ
とんどないため性能向上が見られた。これは導電性酸化
物であるATOはキャリア濃度が高く、ATOの大量の
キャリアがTiO2 中に注入され、光触媒の活性が向上
した。さらに、このような酸化物半導体添加時において
も、Liの添加効果が大きいということもわかった。
【0060】また、酸化物半導体の持つキャリアを有効
に利用する方法としては、微粒子添加ばかりではなく積
層化によっても可能である。表6にはTiO2/SiO2
膜とATO膜を積層した場合の結果を示した。結果は積
層することが有効で、さらに、Liを両方に添加するこ
とで、更に性能が向上することがわかった。また、多数
回交互に積層することも有効であることが分かった。
【0061】
【表6】
【0062】また、図5には同様の試験方法を用いて第
1層のLi添加量を5wt%以下の範囲でも実施した結
果を示す。この図より、Liの添加量が2wt%以下の
範囲では、Liを添加することによって、Li無添加の
ものの有機物分解率よりも有機物分解率が低下している
ことがわかる。この原因については、現在のところよく
わかっていない。
【0063】(実施例6)SiO2ゾル中に粒子径5n
mのTiO2微粒子を分散させた溶液を作製し、これに
Ag,Pt,Pd,Rh,Ni,Cu,RuO2 微粒子
をそれぞれTiO2に対して2wt%添加した。なお、
TiO2/SiO2比は重量比で9とした。作製したA
g,RuO2 微粒子添加TiO2分散SiO2ゾルを用い
て、実施例1と同様な操作でAg,Pt,Pd,Rh,
Ni,Cu,RuO2 微粒子を添加したTiO2分散S
iO2膜をPETフィルム上に形成し、有機色素の分解
特性を調べた。結果は表7に示したようにAg,Pt,
Pd,Rh,Ni,Cu,RuO2微粒子添加により分
解速度が大きくなっていることが分かった。
【0064】
【表7】
【0065】(実施例7)実施例1で作製したLi添加
光触媒とLi無添加光触媒について、蛍光灯,太陽光,
白熱ランプ,水銀灯を用いて、タバコのヤニ,アセトア
ルデキド,尿素,大腸菌の分解特性を比較した。その結
果表8に示したようにLi添加光触媒はいずれのランプ
を用いても、タバコのヤニ,アセトアルデキド,尿素,
大腸菌の分解特性が、Li無添加光触媒の3〜5倍の効
果があることが分かった。このようにLi添加触媒は、
紫外線ランプばかりでなく、生活環境下で使用するラン
プで十分な効果が得られることが分かった。また、Li
以外のNa,K,Mg,Ca,Sr,Znを添加した場
合の同様の効果が得られた。
【0066】
【表8】
【0067】(実施例8)実施例1で作製したLi添加
TiO2 分散SiO2 膜は、PETフィルム上に直接成
膜すると、光触媒作用により基材のPETフィルムにダ
メージを与えてしまう。そこで、実施例1で作製したL
i添加TiO2 分散SiO2 膜をコートする際、PET
フィルムとの間にSiO2 膜を1層設けたフィルムを作
製した。さらに、SiO2 膜中に光触媒作用を失活させ
る成分となる、Al,Fe,Zrの各硝酸塩を添加した
試料あるいはLi添加TiO2 分散SiO2 膜中にAT
Oを添加した試料を作製し、各種試験を行った。その結
果は表9に示した。
【0068】
【表9】
【0069】結果はLi添加TiO2 分散SiO2 膜と
PETフィルムの間に、バリア層としてSiO2 膜を1
層設けることで長期間使用しても膜剥がれを防ぐことが
できた。さらに、Al,Fe,Zrを添加することで光
触媒活性を完全に失活させることができ、接着強度を維
持できることが分かった。また、ATO添加膜では帯電
防止効果が加味され埃等の付着も抑制でき、有機物の分
解だけでなく、無機物の付着も防ぐことができ、より優
れた防汚効果を有したフィルムを作製できた。
【0070】
【発明の効果】耐熱性のない基材上に高活性な光触媒を
形成し、抗菌,防汚効果の優れた物品を提供することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】プラスチックフィルム上に形成したTiO2
散SiO2 積層膜の構造。
【図2】有機色素の分解試験結果を示す図。
【図3】電気陰性度と分解率の関係を示す図。
【図4】電気陰性度とイオン半径の関係を示す図。
【図5】リチウム添加量と有機物分解率の関係を示す
図。
【符号の説明】
1…PETフィルム,2…SiO2 膜,3…TiO2
粒子、4…TiO2 分散SiO2 膜。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI B01J 23/74 B01J 23/74 M 33/00 33/00 Z (72)発明者 高橋 研 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株式会社 日立製作所 日立研究所内 (56)参考文献 特開 平7−171408(JP,A) 特開 平8−182934(JP,A) 特開 平9−227156(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B01J 21/00 - 38/74

Claims (11)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Al,Zr,Feより選ばれた少なくとも
    一種の金属元素を含む金属酸化物のバリア層上に形成さ
    れた、TiO2 微粒子が無機物薄膜中に分散している酸
    化物光触媒薄膜において、 前記無機物薄膜中に、電気陰性度が1.6より小さく、
    かつイオン半径が0.2nmより小さい元素であって、
    原子価が2以下の金属元素が含有されていることを特徴
    とする酸化物光触媒薄膜。
  2. 【請求項2】請求項1記載の原子価が2以下の金属元素
    が、Na,Li,K,Mg,Ca,Sr,Znの中から
    選ばれた少なくとも一種の金属元素であることを特徴と
    する酸化物光触媒薄膜。
  3. 【請求項3】請求項1記載のTiO2 微粒子の大きさが
    5〜20nmであることを特徴とする酸化物光触媒薄
    膜。
  4. 【請求項4】請求項1記載の原子価が2以下の金属元素
    の量が酸化物光触媒薄膜全体に対して0.5 〜20wt
    %であることを特徴とする酸化物光触媒薄膜。
  5. 【請求項5】請求項1記載の無機物薄膜が、SiO2
    主成分とするものであることを特徴とする酸化物光触媒
    薄膜。
  6. 【請求項6】請求項1記載の酸化物薄膜中に、更にP
    t,Rh,Pd,Ag,Cu,Niの中から選ばれた少
    なくとも一種の金属元素が含まれていることを特徴とす
    る酸化物光触媒薄膜。
  7. 【請求項7】請求項1記載の酸化物薄膜中に、更に電子
    親和力が1.2 以上の金属元素から構成される酸化物半
    導体微粒子が分散していることを特徴とする酸化物光触
    媒薄膜。
  8. 【請求項8】Al,Zr,Feより選ばれた少なくとも
    一種の金属元素を含む金属酸化物のバリア層上に形成さ
    れた、TiO2 微粒子が無機物薄膜中に分散している酸
    化物光触媒薄膜において、 前記無機物薄膜中に、電子親和力が1.2 以上の金属元
    素から構成される酸化物半導体微粒子が分散しているこ
    とを特徴とする酸化物光触媒薄膜。
  9. 【請求項9】請求項1〜8のいずれかに記載の酸化物光
    触媒薄膜を基材表面に備えたことを特徴とする物品。
  10. 【請求項10】有機物高分子化合物を主体とする基材
    と、前記基 材の表面に設けられたAl,Zr,Feより選ば
    れた少なくとも一種の金属元素を含む金属酸化物のバリ
    ア層と、前記 バリア層の表面に設けられた、有機物の分解反応を
    触媒する酸化物触媒層からなる物品。
  11. 【請求項11】Al,Zr,Feより選ばれた少なくと
    も一種の金属元素を含む金属酸化物のバリア層と、 前記バリア層上に形成され、TiO 2 微粒子が無機物薄
    膜中に分散し、前記無機物薄膜中に、電気陰性度が1 .
    より小さく、かつイオン半径が0 . 2nm より小さ
    い元素であって、原子価が2以下の金属元素が含有され
    る酸化物光触媒薄膜と、 を有する物品。
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