JP3601532B2 - 光触媒物質、光触媒体およびこれらの製造方法 - Google Patents

光触媒物質、光触媒体およびこれらの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、紫外光のみならず可視光の照射によっても光触媒活性を発現することができる光触媒物質、光触媒体およびこれらの製造方法に関する。
従来より、光触媒作用を発現する材料として、TiO2(二酸化チタン),CdS(硫化カドミニウム),WO3(三酸化タングステン),ZnO(酸化亜鉛)等、数多くのものが知られている。これらの光触媒材料は半導体であり、光を吸収して電子と正孔を生成し、種々の化学反応や殺菌作用を呈する。ここで、現在まで、光触媒として実用化されているものは、酸化チタンのみである。これは、酸化チタンは、毒性がなく、また水や酸に対する安定性の観点から優れているからである。
ところが、この酸化チタン光触媒の動作光は、酸化チタンのバンドギャップ(Eg=3.2eV)の値から、波長λ<380nmの紫外線に限られている。しかし、屋内での使用や触媒活性の向上といった観点から、波長380nm以上の可視光照射によっても触媒活性を発現する材料の開発が強く望まれている。
例えば、特許文献1(特開平9−262482号公報)では、触媒活性の高いアナターゼ型酸化チタンにCr(クロム),V(バナジウム)等の金属元素をイオン注入して材料改質を行うことにより、酸化チタンの光吸収端を長波長側にシフトさせ、可視光での酸化チタン触媒の動作を可能にしている。なお、Cr,V等のドーピングについては、1970年代前半から数多くの報告があるが、これらの報告例では可視光での動作が可能になっても、本来の酸化チタンの性能は大幅に低下してしまう。
特開平9−262482号公報 特開2000−140636号公報
一方、特許文献1は、Cr,V等のドーピングの手法を特別なものとすることで、酸化チタン本来の性能はそのままに可視光における動作を可能としたものである。
このように、上記従来例では、酸化チタンに金属元素をイオン注入するという手法で、酸化チタン光触媒の可視光における動作を可能としている。しかし、金属イオン注入は、高価であるという問題点がある。そこで、その他の方法、すなわち溶液中合成したり、またはスパッタリングのような手法で酸化チタン光触媒を合成したいという要求がある。ところが、このような方法で作製した場合には、可視光での動作が可能とならない。これは、結晶化過程においてドーパントであるCrが凝集してしまったり、あるいはCr2O3等の酸化物を形成してしまうものと考えられている。このように、従来例においては、金属元素を用い酸化チタンを可視光における動作を可能とするためには、金属元素のイオン注入という手段を採用しなければならない。この方法には、高価で大規模な装置が必要となり、製造コストが非常にかかるという問題点がある。また、3価元素をドーピングすることにより、可視光動作の実現をめざした技術がある。しかしこれでは、これらの元素のドーピングの、最適な状態が実現できていないという問題点がある。
なお、本件出願の2つの優先権主張の日より後に公開された特許文献2(特開2000−140636号公報)では、酸化チタンに3価の元素をドーピングする光触媒体の形成方法が開示され、3価の元素として、アルミニウム、ホウ素、窒素のうちいずれか1つを用いることが記載されている。この公報の実施例では、酸化チタンと酸化チタンの窒素ドープ体とを多層に積層した粉末体において、昼色光蛍光灯より光を照射したとき、酸化チタン粉末よりも効率的にアセトアルデヒドを分解できることが示されている。しかし、この公報における3価の元素をドーピングした酸化チタンは単に窒素を無意図的にドーピング、すなわち混入させたに過ぎず、可視光での光触媒活性を最大限に引き出せる構成とはなっていない。また、この公報の昼光色蛍光灯を用いた実施例では昼光色蛍光灯が放射する弱い紫外線の影響が含まれている。このように昼光色蛍光灯を用いる実験方法の場合、触媒体の構造変化に伴い紫外光光触媒活性が向上したにもかかわらず、可視光光触媒活性が向上したものと、誤って解釈されることが問題となる。この酸化チタンの窒素ドープ体の真の可視光光触媒活性は、実施例に示されるほど大きいものとは考えられない。
本発明は、新規な材料を用いることにより、コストのかかるイオン注入等の手法を用いずに酸化チタン光触媒の可視光動作を実現するとともに、より可視光吸収効率の高い光触媒体を提供することを目的とする。
本発明者らは、実験的な検討にとどまらず、第一原理計算を用いた半導体の光学特性の理論的な検討を行った。その結果、本発明の窒素含有酸化チタン半導体は、酸化チタンのバンドギャップ内に新たな準位を形成することがわかった。そして、製法を工夫して該窒素含有酸化チタンを作製することにより、二酸化チタンと比較して、より広い波長域の可視光で強い触媒活性を有する光触媒体の実現に成功した。
本発明に係る光触媒物質は、酸化チタン結晶の酸素サイトの一部を窒素原子で置換したTi−O−N構成を含み、チタン原子と窒素原子との化学結合を有し、可視光領域において光触媒作用を発現する。従って、可視光を動作光として、酸化チタンと同様の光触媒作用を得ることができる。また、窒素は、非常に安定安全な物質であり、これを含有させても実際に使用面において、問題が生じない。
これによって、可視光を吸収して、光触媒機能を発揮する光触媒を得ることができる。このため、太陽光の下、さらには蛍光灯の光を受ける室内においても十分な光触媒機能を発揮することができる。
ここで、従来の酸化チタン光触媒の内部にも、その製造過程や処理過程で窒素元素が混入することは知られている。例えば、特許第2917525号公報には、表面処理の硝酸に由来するニトロ基(−NO2)が存在することが記されており、また特許第2865065号公報には、材料となる酸化チタンゾル分散液の硝酸に由来する窒素が二酸化チタン中に存在することが、EPMA法により観測されたことが記載されている。
しかし、従来の認識においては、これらの窒素はあくまでも混入物であり、この混入窒素による化合物は、光触媒の性能の観点、特に動作光の波長範囲については、悪影響を及ぼすことはあってもなんら新規な効果を生じない。このように、これまで混入窒素がその光触媒体の動作光の波長範囲に新規な効果を生じなかった原因は以下にある。
すなわち、これらの混入窒素原子は光触媒内部で窒素酸化物や有機物等を形成しているだけであり、チタン原子と結合していない。そのために、この混入窒素原子が酸化チタンのバンドギャップ等の半導体としての光学特性に効果を有することはなかった。
これに対し本発明の窒素原子は、酸化チタン結晶の酸素サイトの一部を置換することを特徴とするため、XPSスペクトルが、従来の酸化チタン内に混入した窒素原子の場合とは異なる。
これらのうちで、特に、光触媒物質中にチタン原子と窒素原子の化学的な結合が存在することがより好ましい。その中でも特に、基本となる酸化チタン結晶の酸素サイトの一部を窒素原子で置換した構成を有することがさらに好ましい。
本発明の窒素ドープ光触媒体の特徴は、XPS(X−ray Photoemission Spectroscopy)による、窒素原子の化学的な結合状態の分析から明らかにできる。
また、XPSにおける窒素原子の1s殻の結合エネルギースペクトルにおいて、400eV以下の領域にピークを有することを特徴とする。
より好ましくは、XPSにおける窒素原子の1s殻の結合エネルギースペクトルにおいて、396〜397eV近傍にピークを有することを特徴とする。
その結果、酸化チタンの価電子帯と伝導帯とのバンドギャップの間に酸化チタンの酸素サイトの一部を窒素原子で置換したことによる不純物準位を有することを特徴とする。
また、窒素の含有量X原子数比%が0<X<13であることが好適である。窒素の含有率は、特に限定はされないが、実験によれば、0を超え13%以下が好ましい。このような範囲の窒素の含有により、上述のような好適な光触媒機能を得ることができる。
さらには、窒素が前記のような状態であれば、酸素原子は過剰であっても、不足であってもよい。特に、酸化チタンよりも酸素が少ない状態でかつ窒素が含有された場合においては、より波長の長い可視光域でも光触媒作用を呈する。その組成範囲は、チタン、酸素、窒素の原子数比Y、Z、Xが0.4<Y/(X+Z)<0.6の範囲内にあればよい。
また、これを実現するためのTi−O−Nの結晶相としては、単結晶、多結晶、あるいはアモルファス+多結晶のいずれでもよい。ただし、単結晶、多結晶の方がアモルファスより光触媒機能が大きい傾向にある。
また、上述した光触媒物質の外部表面側に酸化チタン結晶を有することが好適である。この構成により、内部の光触媒物質により可視光を吸収し電子および正孔を発生し、これによって表面の酸化チタン結晶において光触媒作用を発現できる。そこで、従来の酸化チタン光触媒と同様の機能を維持しつつ、可視光を動作光として利用できる。例えば、水の接触角を減少させ、親水性を付与するために、この構成が非常に有利である。
さらには、Ti−O−NのXPSスペクトルにアンモニウム塩由来のスペクトルを有することが好ましい。
また、実際の使用状況においては、表面が主にC軸結晶面方位である場合も、好ましい。
これらの光触媒は、基体として酸化チタン、シリカ、アルミナやこれら複合体である無機酸化物、あるいは窒化チタン、窒化珪素、窒化アルミニウムやこれらの複合窒化物、または複合酸窒化物、フッ素樹脂等の有機物を用い、それらの表面の全面あるいは一部の面上に形成されて使用される場合もある。さらに、光触媒の外部表面側に、窒素を含まない酸化チタンを有することも好適である。
また、Ti−O−Nの最表面に、アルミナ、シリカ、ジルコニア、マグネシア、カルシア、リン酸カルシウム、アモルファスの酸化チタン、フッ素樹脂や、これらに窒素を含有させたもののうちから選ばれた少なくとも一つを坦持させた形態を有することもある。
また、本発明に係る光触媒物質は、下記のような製造方法によって製造することが好適である。
(1)窒酸化チタン、酸化チタン、窒化チタン、金属チタンのうち少なくとも1つをターゲット材料とし、これを窒素ガスを含む雰囲気中でスパッタすることで、基材上に薄膜として形成する。
(2)窒酸化チタン、酸化チタン、窒化チタン、金属チタンのうち少なくとも一つを蒸発材料とし、これを窒素ガスを含む雰囲気中で蒸着、あるいはイオンプレーティングすることで、基材上に薄膜として形成する。
(3)酸化チタンあるいは含水酸化チタンをアンモニアガスを含む雰囲気、あるいは窒素ガスを含む雰囲気、あるいは窒素ガスと水素ガスの混合雰囲気中で熱処理することで、形成する。
(4)チタンアルコキシド溶液を、アンモニアガスを含む雰囲気、窒素ガスを含む雰囲気、あるいは窒素と水素の混合ガス雰囲気で熱処理することで、製造する。
(5)酸化チタンを、窒素原子を含むガスのプラズマ中で処理することで、製造する。
(6)窒酸化チタン、酸化チタン、窒化チタン、金属チタンのうち少なくとも一つを蒸発材料とし、これを窒素ガスを含む雰囲気中で真空中蒸発させ、これを別の真空槽へ差圧により移送することで、基材上に薄膜として形成する。
(7)エマルジョン燃焼法において、エマルジョン中の水相である金属塩水溶液あるいはサスペンジョン中にアンモニア、ヒドラジン等の窒素元素を含むイオンあるいは分子(硝酸イオンは除く)が存在し、かつ反応装置内に導入する酸素量がエマルジョン中に含まれる燃焼成分(油及び界面活性剤)が完全燃焼しかつ水溶液中に含まれる金属イオン(あるいは金属化合物)が大気中で最も安定な酸化物を形成するために必要な酸素量(以後、必要酸素量)以下の雰囲気中でエマルジョンを噴霧燃焼させること、により製造する。
(8)エマルジョン燃焼法において、エマルジョン中の水相である金属塩水溶液あるいはサスペンジョン中にアンモニア、ヒドラジン等の窒素原子を含むイオンあるいは分子(硝酸イオンは除く)が存在するかわりに、アンモニア等の窒素含有ガス(窒素ガスは除く)を含みかつ反応装置内に導入する酸素量が必要酸素量よりも少ない雰囲気中でエマルジョンを噴霧燃焼させること、により製造する。
(9)酸化チタンと窒化チタンを混合し、これを400〜700℃の範囲の温度で熱処理することで、製造する。
(10)窒化チタン、あるいは窒酸化チタンを、酸素、オゾン、水分子、あるいはヒドロキシル基を含む酸化雰囲気中で熱処理あるいはプラズマ処理することで光触媒物質を製造する。
ここで、本発明の光触媒材料の構造においてポイントとなる事項について述べる。
図6は、Mg−Kα、X線を用いたXPS解析による窒素原子の1s殻のスペクトルであるが、この図に示すように、従来の酸化チタン光触媒に含まれる窒素原子と、本発明の光触媒中の窒素原子の化学的な結合状態が異なる。すなわち、前述のように従来の酸化チタン中の窒素原子は酸化物や有機物を形成するのに対し、本発明の光触媒では、窒素原子がTiとの結合を示している。このような本発明の窒素は単なる結晶格子間へのドーピングや粒子間のドーピングではなく、酸化チタン結晶中の酸素と置換した窒素であることを示している。
また、本発明者らは実験と平行して、理論計算においても本発明の光触媒体の検討を行った。具体的には、第一原理計算法の一つである。FLAPW(full−potential linearized−augmented−plane−wave)法によって半導体光触媒の電子状態並びに光学特性を評価した。モデルには、アナターゼ酸化チタンの酸素の一部をアニオンで置換したTiO1.750.25(X=N、B、C、F、P、S)単位格子を用いた。
図7は計算した半導体Ti−O−Xの状態密度(density of state;DOS)である。置換種によって、不純物順位の形成される位置が異なり、またこれら置換種のイオン性と相関があることがわかる。ここで、この図7の各状態密度におけるエネルギー0eVよりマイナス側に立ち上がるのが価電子帯であり、2.5eV近辺からプラス側に立ち上がるのが酸化チタンの伝導帯であり、その間がバンドギャップに相当する。水の還元準位が酸化チタンの伝導帯に近いことから、酸化チタンの伝導帯よりも、価電子帯の状態により、価電子帯の立ち上がりを酸化チタンの伝導帯に近づけ狭バンドギャップ化を図ることが望ましい。
以上より、狭バンドギャップ化並びに不純物準位と酸化チタンのバンドとのスムーズな混成度の観点から、可視光照射によっても、動作が可能な置換種Xとして、特にN(窒素)、S(イオウ)が有効であることがわかった。
図8(a)、図8(b)に、計算により得られた誘電率関数の虚数部(e2xy,e2z)のエネルギーE(eV)依存性を示す。ここで、図8(a)は、酸化チタン結晶におけるxy方向(C軸に垂直方向)についてのもので、図8(b)がz方向(C軸方向)のものである。
この誘電率関数の虚数部は、光学吸収特性の波長依存性に対応する。Ti−O−N、Ti−O−Sのいずれにおいても、吸収端が酸化チタンのそれと比較して低エネルギー側、すなわち長波長側にシフトしている。この結果は、N,Sのいずれか、あるいは双方の置換を酸化チタンに施すことによって、可視光動作化が可能であることを示している。また、図8(a)と図8(b)の差違から、酸化チタン、およびTi−O−X(X=NまたはS)のいずれにおいても光学的な異方性が強いことがわかり、この結果より光触媒活性の結晶面に対する依存性が強いことが分かった。
特に、Ti−O−NがC軸配向を有する場合に、より長波長の可視光を吸収することもわかる。なぜならば、xy方向の吸収端が可視光方向に顕著にシフトしていることから、本発明光触媒体の表面が主にC軸結晶面方位であることが好適であることがわかる。すなわち、表面に直接入射する光は、その伝搬方向に垂直方向(表面に平行な方向)に電場成分を持つため、表面がC軸結晶方位であれば、図8(a)のxy方向の光吸収特性により、効率よく可視光吸収を行うことができるからである。
これらアニオンXの置換による酸化チタンの電子状態の変化は、チタン原子に対する、O,NまたはS間の原子準位の差に主に起因している。従って、上記の計算で用いたモデルのように酸素(O)を他のアニオンXで置換した場合のみならず、その他にも、格子を歪ませる形でアニオンXが結晶格子中に割り込む場合や、結晶粒界にアニオンXが存在する場合、あるいはこれらの組み合わせの場合においても、酸化チタンを基体とする光触媒体中にTi−X結合が存在すれば、本発明のアニオンの置換による効果が得られる。
さて、上述のように酸化チタンの酸素サイトを置換し得るアニオンはいくつかある。酸素サイトを窒素原子で置換した場合、半導体の電子状態が変化し、バンドギャップ内に新たな吸収帯が形成される。一方たとえばAl、Cr等のカチオンで酸素サイトを置換することは電荷のバランスから考えて非現実的である。窒素、フッ素によるチタンサイトの置換も非現実的である。
一方、炭素、ホウ素等の元素は酸素サイトのみならず、チタンサイトの置換も可能である。これらの場合、同じ原子で置換する場合でもどちらのサイトを置換するのかによってそれらの電子状態は全く異なる。
また、シリコンなどの半導体とは異なり、酸化チタンのように2種以上の元素で構成される酸化物半導体の場合、その位置によって近接原子が異なり電子状態も異なる。このため、単に不純物をドーピングすると大まかに述べても、これは現実的には意味をなさない。すなわち、どのサイトを置換するのか、あるいは格子間のどの位置に割り込むか、あるいは粒界に存在するのか、等を述べなければ、その材料を規定することにはならない。
また、従来例ではドーパントのイオン価でひとくくりにドーピング効果の傾向を述べることがあったが、上述のようにドーパントの入り込む位置によって電子状態が全く変わるため、これは意味をなさない。
したがって、本発明の窒素原子の状態について論じる場合、5価や3価というように、価数によってその性能を分類することは無意味である。本発明は、窒素原子の状態として、Ti−O−N中にTi−Nの化学的な結合を有する場合にのみ、可視光吸収を可能にし、かつ光触媒特性を発現することを見出し完成したものである。その中でも特に、窒素原子が酸化チタンの酸素サイトを置換する場合の性能がもっとも高い。
酸化チタン中にTi−N結合が残された場合のN1s殻のXPSピークの位置は、学術文献から予測できる「National Institute of Standards and Technology (NIST)」のデータでは、TiNのピークは396−397eV付近に観察されるとしている。また、「N.C.Sahaら、J. Appl. Phys., 72 (7),pp.3072 (1992)」の論文では、Ti−O−NについてのXPSデータが記載されている。この例における窒素の含有量は、本発明の光触媒材料よりもかなり多いが、Ti−O−NのN1s殻ピークはNISTのTiNと同様に396−397eV付近に観察される。
一方、本発明のTi−O−Nにおいて、酸化チタンの格子間に窒素原子が割り込む形でドープされた場合のXPSピークの位置は報告例がなく不明である。そこで、もっとも精度の高い第一原理計算手法の一つであるFLAPWによりXPSピークの位置を解析した。これにより準定量的な計算結果が得られる。計算には、アナターゼ酸化チタンの24原子モデルを基本として、N置換型(計24原子)、N割り込み型(計25原子)モデルを用いた。その結果を表1に示す。
Figure 0003601532
割り込み型TiO−NのN1s殻XPSピークは、Ti2p3/2ピークから61.38eVだけ低エネルギー側に得られる。一方置換型のそれは63.63eVだけ低エネルギー側に得られる。すなわち、割り込み型のN1s殻ピークは、置換型と比較すると酸素原子との結合が支配的であるため、置換型のN1s殻ピークより2.25eVだけ高エネルギー側に現れるという結果を得た。
一方、本発明のTi−O−N光触媒のXPS実験では、397eV付近のTi−N結合ピークと、さらにそれよりも約3eVだけ高エネルギー側の400eV付近にピークが得られている。したがって、これらの結果から、実験において400eV付近に見られるピークは、酸化チタン格子に割り込んだN原子か、炭素化合物やニトロ基等を形成する不純物窒素(NISTデータによる)であると考えられる。
上述の実験結果並びに理論計算結果から、次のような点が、本発明のTi−O−N可視光動作光触媒において重要な点である。
本発明のTi−O−N可視光動作光触媒は、酸化チタン結晶の酸素サイトの一部を窒素原子で置換すること、または酸化チタン結晶の格子間に窒素原子をドーピングすること、または酸化チタンの結晶粒界に窒素原子をドーピングすることのいずれかまたはこれらの組み合わせにより酸化チタン結晶に窒素原子を含有させた光触媒物質である。このとき、N1s殻のXPSピークは400eV以下にみられる。その中でも特に、窒素原子が酸化チタンのチタン原子とTi−Nの化学的な結合を有している場合が好ましい。さらには、窒素原子が酸化チタンの酸素サイトの一部を置換する状態で存在することがより好ましい。このとき、N1s殻のXPSピークは396−397eV付近にみられる。
また、上記の計算では、アナターゼ型チタンの結晶格子をベースにアニオンドーピングの効果を検討したが、ルチル型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタン、アモルファス酸化チタンへのアニオンドーピングにおいても同様の効果が得られる。
これら可視光動作光触媒性能を示す粉末ならびに薄膜の組成比は、後述の実施例中で述べるが、例えばTi33.964.71.4、Ti34651、Ti31672であった。したがって、NがTi−N結合をした状態が実現されていれば、酸素過剰、酸素欠陥のいずれの場合においても、可視光動作光触媒となる。チタン、酸素、窒素の原子数比Y、Z、Xが0.4<Y/(X+Z)<0.6の範囲内にあればよい。
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
(光触媒体の構成)
「実施形態1」
図1は、実施形態1の構成を示す図であり、SiO2基板10上に、光触媒物質であるTi−O−N膜12が形成されている。このTi−O−N膜12は、酸化チタン結晶の酸素サイトの一部が窒素原子で置換された構造を有している。なお、酸化チタン結晶の格子間に窒素原子がドープされている構造でもよく、両者が混在していてもよい。また、Ti−O−N膜12における各元素の組成比は、例えばTi31672である。従って、Ti−O−N膜12は、基本的に酸化チタンの結晶であり、酸化チタン膜中にNが含有された構成となっている。また、酸化チタン結晶の結晶相は、ルチルでもアナターゼでもよいが、例えばアナターゼ+ルチルである。
図2(a)に、ルチル型酸化チタン結晶、図2(b)にアナターゼ型酸化チタン結晶の結晶単位格子を示す。図において、小さな○がTi、大きな○がOを示している。このOの一部がNに置換されたり、結晶内の空間あるいは酸化チタン結晶粒界にNが入り込み、Ti−O−Nが構成される。
次に、このような光触媒物質の製造法の一例について説明する。この例において、Ti−O−N膜12は、RFマグネトロンスパッタリングによって形成される。
SiO2基板10および酸化チタンターゲットをRFマグネトロンスパッタリング装置の真空チャンバ内にセットする。そして、真空チャンバ内にN2ガスおよび不活性ガス(例えばArガス)を所定量導入し、(N2+Ar)プラズマ中でスパッタリングする。これによってSiO2基板10上にTi−O−N膜12を堆積する。なお、基板10は、セラミックなど各種のものが利用可能である。
スパッタリング中の全ガス圧は、例えば0.52Pa、N2分圧は、0%<N2分圧≦100%の範囲で設定すればよいが、20〜60%程度が好適である。 さらに、スパッタリングによるTi−O−N膜12の成膜後に熱処理(アニール)を行い、結晶化する。例えば、窒素雰囲気中で550℃、2時間程度熱処理することで、結晶化させることができる。すなわち、単に成膜しただけでは、アモルファス中に多結晶が混在するような構造であるが、熱処理を行うことで多結晶化、単結晶化を図ること、さらにはチタンと窒素が化学的な結合を有するようにすることができる。なお、SiO2基板10を加熱しながら、Ti−O−N膜12を形成することで、成膜後の熱処理を省略することもできるが、成膜後アニールと比較して光触媒性能が劣る。
さらに、Ti−O−N膜の窒素原子数比%は、N2分圧20%による成膜では熱処理前6.6%、熱処理後1.4%、窒素分圧100%の成膜では熱処理前12.7%、熱処理後0.5%であった。また、N2分圧40%、60%における成膜では、熱処理後のTi−O−N膜中の窒素原子数比%がそれぞれ1.4%、1.5%であった。
そして、これらのTi−O−N膜のすべてにおいて、光触媒機能が発現した。従って、Ti−O−N膜の窒素含有量は、その原子数比%をX%とした場合、0<X<13とすることが好適であることがわかった。なお、Ti−O−N膜の光触媒機能としては、熱処理後のものが優れており、熱処理後の窒素濃度としては、数%以下、特に2%以下が好ましい。
また、上述の説明では、酸化チタンターゲットを用い、N2を含むArガスのプラズマ中でTi−O−N膜12を成膜したが、TiN(窒化チタン)ターゲット+O2を含むガスのプラズマ中で成膜してもよい。さらに、ターゲットに酸化チタン+TiNを用いることもできる。
さらに、Tiインゴット+(N2+O2)ガス中における真空蒸着によって、Ti−O−N膜12を成膜することもできる。
また、上述の説明では、光触媒物質としてのTi−O−Nを薄膜形状としたが、薄膜のみではなく、微粒子Ti−O−Nをベースにそれを塗布用のバインダ材料、たとえばシリカ、アルミナ、フッ素樹脂やこれらに窒素を含有させたものや、これらの複合化合物に混合させたものや、内部母材がシリカ、アルミナ、フッ素樹脂あるいはこれらに窒素を含有させたもの、あるいはこれらの複合化合物を用い、その外部表面側の全面あるいは一部にTi−O−Nを形成した場合にも適用される。
なお、Ti−O−Nは、上述の製造法をベースとし、各種微粒子作製法、ゾル・ゲル法、化学反応法などにより作製することが可能である。具体例については後述する。
このようにして得られたTi−O−N光触媒物質は、可視光の入射により、光触媒機能を発揮する。すなわち、Ti−O−N光触媒物質は、紫外光のみならず可視光のみの照射によっても、光触媒機能を発現し、親水性の向上(水の接触角の減少)や、有機物分解能が得られる。従って、Ti−O−Nは、単に可視光を動作光にできるだけでなく、その結果として紫外−可視域にわたる光照射による光触媒機能を著しく向上させることができる。特に、有機物分解機能においては酸化チタン光触媒よりも著しく優れている。
「実施形態2」
図3に、実施形態2の構成を示す。図3(a)において、SiO2基板10上にTi−O−N膜12を形成し、その上に酸化チタン膜14を形成している。なお、図2おいては、二層の積層構造としているが、熱処理などの過程で両者の境界は明確ではなくなり、表面に向けてNが徐々に減少していく構成となる。すなわち、表面に近いほどN原子量が少なく、かつ最表面では酸化チタンが露出した傾斜組成のTi−O/Ti−O−N膜が形成される。なお、Ti−O−N膜と、酸化チタン膜の界面をシャープなものに維持してもよい。
また、傾斜組成は、Ti−O−N膜および酸化チタン膜の積層形成後の熱処理に限らず、雰囲気のガス組成を膜の堆積状態に応じて変更してもよい。すなわち、雰囲気のN2分圧を徐々に減少することで、表面側を酸化チタンにすることができる。
このような構成により、基板10に近いTi−O−N領域(Ti−O−N膜12)で可視光を吸収し、電子と正孔が生成される。これらは膜表面の酸化チタン(酸化チタン膜14)に供給される。そこで、表面においては、酸化チタン膜14として光触媒作用を発現する。
これによって、従来例と同様の酸化チタン膜において、可視光を動作光とした光触媒作用を得ることができる。上述のように、Ti−O−N膜とTiO2膜の親水性(接触角θ)を比較すると、TiO2膜の方が勝っているので、可視光を動作光として、TiO2膜による親水性の向上がはかれる。すなわち、本実施形態では、可視光のみの照射により親水性を発現し、かつその性能の保持時間をTiO2膜より向上させることができる。
なお、傾斜組成のTi−O/Ti−O−N光触媒は、図3(b)に示すように、内部にTi−O−N部分22、外側にTiO2部分24を有する粒子状とすることも好適である。このような粒子状の光触媒は、塗料用のバインダー中、たとえば、シリカ、アルミナ、フッ素樹脂やこれらに窒素を含有させたもの、あるいはこれらの複合酸化物に混入させておき、塗料のようにして利用することが好適である。
「実施形態3」
図4(a)、図4(b)に、本発明の実施形態3の構成を示す。この実施形態の光触媒体の内部は酸化チタンTiO2であり、外部の最表面側がTi−O−Nとなっている。またこのときのTi−O−N層は、最表面全体を覆いつくしてもよいし、表面の一部のみに形成してもよい。このような構成は、主として酸化チタン粉末や薄膜を出発材料として、熱処理やプラズマ処理などの後処理により、表面側から窒化処理を行った場合に実現される。
「実施形態4」
図5(a)、図5(b)、図5(c)に、本発明の実施形態4の構成を示す。
本発明のTi−O−N光触媒を有機繊維やプラスチックなどに練り込んで使用する場合、Ti−O−N光触媒と前記有機繊維やプラスチックが直接接触することにより分解されてしまうという問題が生じる。実施形態4は、この問題を解決するために、Ti−O−N光触媒の表面に、より触媒活性の低いセラミックを島状、針状あるいは網目状に坦持させたものである。図5(a)では、セラミックが島状に形成され、図5(b)では、セラミックが網目(河)状に形成され、図5(c)では、針状に形成されている。このように表面に活性の低いセラミックを配置することによって、有機繊維やプラスチックと直接接触する材料をセラミックとして、有機繊維やプラスチックの分解を抑制することができる。
セラミックとしては、アルミナ、シリカ、ジルコニア、マグネシア、カルシア、リン酸カルシウム、アモルファス酸化チタン、フッ素樹脂や、これらに窒素を含有させたもの、あるいはこれらの複合化合物があげられる。
(光触媒体の製造における工夫)
上述の実施形態1〜4に記載した構造の特徴に示した結果から、本発明の光触媒体の製法にも工夫が必要となる。すなわち、窒素原子が負のイオン価を有しやすいような条件を選択する必要がある。
その具体例としては、
1. 還元雰囲気を用いる。
2. 材料を構成するTi,O,N原子を熱、イオンビームやプラズマ照射により分離したのちに窒素含有酸化チタンを再結合、再構成させるため、真空槽内での反応を用いる。
等の点が挙げられる。
本発明の製造方法においては、これらの観点から、可視光領域においても高い光触媒活性を呈する窒素ドープ酸化チタンの製法について記述する。
また、本発明において作製する、窒素ドープ酸化チタンの基本となる結晶構造については、アナターゼ、ルチル、ブルッカイトのいずれでもよい。
なお、具体的な製造方法については、後述する具体例7〜14において説明する。
(光触媒の具体例)
以下に、本発明の可視光動作型光触媒の具体例をあげる。
「具体例1」
この具体例1は、上記実施形態1に対応するTi−O−N膜である。RFマグネトロンスパッタリング装置を使用して、酸化チタンターゲットを(N2+Ar)プラズマ中でスパッタすることによりTi−O−N膜を基板上に形成した。基板はSiO2とした。スパッタリング中の全ガス圧は0.52Paとし、N2分圧を0%〜100%の間で変更した。堆積速度は3〜8nm/minであった。成膜後に、窒素雰囲気中で550℃で2時間熱処理し、Ti−O−N膜を結晶化させた。Ti−O−N膜中の結晶相はアナターゼ+ルチルであり、TiNは観察されなかった。また、40%N2+Ar中でスパッタした膜の熱処理後の組成比をXPS(X線電子分光法)で分析したところ、Ti31672であった。また窒素のN1s殻スペクトルのピークは、397eV付近と400eV付近の双方に観察され、Ti−O−N相中にはTi−N結合が存在することも確認された。
このTi−O−N膜の光学特性を調べるために、吸光度の波長依存性を計測した。その結果を図9に示す。同じ粒径D〜15nmのアナターゼ+ルチルTiO2(Ti−O)膜とTi−O−N膜を比較したところ、Ti−O−N膜は、Ti−Oより長波長の光を吸収できることがわかる。すなわち、波長400nm程度の光もかなり吸収する。このことから、Ti−O−N膜は、可視光を吸収して電子と正孔を生成する半導体である。
このTi−O−N膜の可視光照射のみによる光触媒活性を調べるために、表面における水の接触角θの光照射依存性を測定した。
図10に、N2分圧を0%〜100%の間で変化させて作製し、550℃で熱処理したTi−O−N膜に対し、Xeランプを1時間照射したときの膜表面の水の接触角θを示す(図におけるシンボルは□である)。純粋な酸化チタン(N2分圧0%)の場合には、波長200nm以上の紫外線による光触媒作用によって、接触角θ<10°の親水性が発現する。一方、N2を存在させて作製したTi−O−N膜のθは、Nの影響によりスパッタ時のN2分圧の増大とともに大きくなっている。これらのθ値は、それぞれの組成のTi−O−N膜の持つ本質的な最適なθの値である。
一方、これらTi−O−N膜に対し、可視光成分のみ(波長λ>400nm)を1時間照射したときの特性の図におけるシンボルは○で示す。ここでは、照射光のうち400nm以下の紫外線領域を光学フィルタによりカットした。これより、N2分圧20−60%中で作製した膜の特性は、可視光照射のみによっても、ほぼ最適値にまで低下している。一方、純粋な酸化チタン膜では、可視光のみの照射では、θがかなり大きくなっている。Ti−O−N膜は可視光照射で光触媒作用が生じる材料である。
「具体例2」
具体例1では、Ti−O−N膜表面の接触角が可視光のみの照射により小さくなることから、可視光のみの照射でも動作する光触媒であることを明らかにした。しかし、この膜の接触角θを、ミラー、窓等の親水性を利用した応用の観点に着目し、接触角の絶対値のみを比較すると、本発明のTi−O−N膜は酸化チタン膜より劣る。そこで、この具体例2では、上記実施形態2に対応するTi−O−N膜と酸化チタン膜の積層型の膜構成を有する光触媒を作製した。
具体例2の構成は、図3(a)に示すとおりであり、SiO2基板上10に、Ti−O−N膜12を2200Å、酸化チタン膜14を1000Åの順で堆積し、酸素雰囲気中で550℃、90分の熱処理を行って形成した。このプロセスにより、膜の表面に近いほどN原子量が少なく、かつ最表面では酸化チタンが露出した傾斜組成のTi−O/Ti−O−N膜が形成される。XPSにより窒素原子の分布を膜の深さ方向へ50Å毎に見たところ、最表面から50Åの深さまでは窒素原子は全く存在せず、それより深いところでは、深さとともに窒素原子数比が上昇することがわかった。基板のSiが観察されはじめる直前での窒素原子数比は2.9%であった。また、100Åよりも深いところでの窒素のN1s殻スペクトルのピークは、397eVと400eVの双方に観察さた。
図11に、水の接触角θの測定例を示す。400nm以上の可視光域照射では、酸化チタン膜における接触角の低下は見られない。一方、傾斜組成のTi−O/Ti−O−N膜の場合には、400nm以上の可視光の照射によっても接触角が低下し、酸化チタン膜の接触角θよりも小さな値となる。また、この効果は長時間維持される。すなわち、Xeランプ照射で一旦酸化チタン膜と同等の小さな接触角θを示した後は、蛍光灯下の机上で7日放置した場合にも、蛍光灯の可視光成分により光触媒作用が維持される。酸化チタン膜のような水接触角の大きな劣化はみられない。
なお、本具体例2は、総膜厚が1600Åおよび2500Åの場合にも同等な特性を有することを確認しており、また傾斜組成ではなくシャープな界面を形成し、組成を段階的に変化させた場合においても同様な効果を示す。
また、本具体例2は、紫外および可視光を吸収するため、親水性の発現のみでなく、酸化チタンと同様に、殺菌や、ダイオキシン、窒素酸化物などの有害物質の分解などの機能も有している。そして、これら機能も、酸化チタン膜よりも高効率に実現する。
「具体例3」
この具体例3では、前記具体例1、2の膜の表面における有機物の分解性能の比較例を示す。図12に、各触媒膜の表面に塗布した有機物の、光照射による分解量を示す。比較のため、ゾル・ゲル法により作製された、同等の膜厚の酸化チタン光触媒膜の市販品の結果もあわせて示す。光源は、Xeランプであり、照射波長域はシャープカットフィルタで調節し、さらに試料の温度上昇を防ぐために熱線吸収フィルタを用いた。照射光量は、紫外光域のみの値で約13mW/cm2である。
波長λ>400nmの可視光のみを照射した場合、具体例1、2のTi−O−N膜の有機物分解性能が優れており、とくに傾斜組成膜の性能は、酸化チタン膜の4倍であり、著しく優れていることがわかる。さらには、λ>200nmの紫外光−可視光照射では、具体例1のTi−O−N膜の有機物分解性能は、酸化チタン膜に比べて非常に大きい。N2分圧40%で作製したTi−O−N膜の有機物分解性能は、酸化チタン膜(N2分圧0%)のそれに比べ、4倍以上になっている。これより、本発明のTi−O−N膜は、光触媒作用のうちの有機物分解性能について、非常に優れた能力を有していることがわかる。
さらには、40%N2−Ar中で作製したスパッタ膜では、夏の晴天時と同等の5mW/cm2照射においても、市販品酸化チタン膜と比較してλ>400nmの可視光照射において4倍、λ>200nmの光照射において8倍の分解性能を有するという結果を得ている。
「具体例4」
具体例4では、酸化チタン粉末を初期材料として窒化処理をした具体例について述べる。市販のルチル型酸化チタン粉末(石原産業、TTO−55(N))をアンモニアとアルゴンの混合ガス中で600℃、3時間処理したものを用いた。光触媒性能は、可視光を10時間照射後のλ=670nmにおけるメチレンブルー水溶液の吸光度の変化で評価した。光源には、10W蛍光管(松下電工、FL10N)の周囲に紫外線カットフィルタ(富士フィルム、SC42)を取り付けたものを用い、ほぼλ≧400nmの可視光照射とした。紫外線強度は、0.0μW/cm2であった(トプコン製の光強度計、UVR−2及びUD−36使用)。また光触媒の計測時には、光触媒がないときのメチレンブルーの光分解、ならびに暗所での吸着、あるいは光吸着による吸光度変化の影響を除去した。
XPSによるN1s殻のスペクトルは、Mg−Kα、X線を用いて分析した。図13(a)、図13(b)、図13(c)の横軸はそれぞれ、397eV付近にピークが見られる、Ti−N結合したNの組成比、400eV付近にピークを持つN組成比、そして光触媒粉末中の全N組成比中のうち、Ti−N結合したNの割合である。図13(a)、図13(c)をみると、Ti−N結合したNが増大すると、可視光照射下での触媒性能が向上する。その一方で、図13(b)のTi−N結合していないNは、可視光照射下での触媒性能に効果がない。この図13(b)の窒素は、前述のように、主に有機化合物やニトロ基を形成する窒素原子と考えられる。これらの結果から、Ti−O−N中に、397eV付近にピークが観察されるTi−N結合した状態のNを形成することが、光触媒の可視光動作化に必要であることがわかる。
同様な効果は、アナターゼ型酸化チタン(石原産業、ST−01)を初期材料に用いた場合でも得られた。さらには、アモルファス酸化チタン粉末を用いて同様な処理を施した場合においても、同様な効果が得られた。この場合、アナターゼやルチルの結晶粉末を初期材料として用いる場合よりも、N原子の状態を制御しやすいという効果もある。
また、室温より高い温度で窒素原子を含むプラズマ中で酸化チタン粉末を処理した場合でも、同様の効果が得られる。室温でプラズマ処理した場合は光触媒性能が劣る。
「具体例5」
具体例4で、酸化チタン粉末を後処理することにより本発明の光触媒体を実現できることを述べた。しかし粒径の大きな酸化チタン粒子、あるいは酸化チタンの厚い膜を後で窒化する場合、処理条件によっては触媒体の内部は酸化チタンで、外部の最表面側がTiO−Nとなる場合もある。
市販の酸化チタン粉末(石原産業、ST−01)にコロイダルシリカと添加剤を混ぜることにより簡易なコーティング液を作製した。これをガラス基板状に塗布し乾燥させた後、大気中で150℃、30分間の熱処理をした。SEM(走査型電子顕微鏡)により断面観察したところ、膜厚は約500nmであった。その後、この膜をアンモニアガス75sccm、アルゴンガス100sccmの流中において、550℃で30分間熱処理した。この処理により、やや白色がかった透明膜は、黄色の透明膜となった。これをX線回折により構造解析し、かつXPSにより深さ方向分析したところ、膜表面はTi−O−NとSi−O−N、ガラス基板に近いところは酸化チタンと酸化珪素であり、窒素組成比は、膜の最表面から内部にわたって減少していく傾斜組成を有する。この膜の光触媒特性を評価した。膜の光透過特性を400−750nmの波長範囲で測定した後、膜を500μMメチレンブルー水溶液に15分間浸し、暗所で乾燥させた。再び光透過特性を測定した後、10W蛍光管(松下電工、FL10N)の周囲に紫外線カットフィルタ(富士フィルム、SC42)を取り付けた可視光を18時間照射した。再度光透過特性を測定することにより求めた18時間照射後のメチレンブルー(MB)分解率は、酸化チタンコーティング膜の場合8%に対し、傾斜組成Ti−O−N膜は46%であった。
粉末でも同様の実験を行った。平均一次粒子径が0.118μmのアナターゼ酸化チタン粉末(古河機械金属、FA−55W)を、アンモニアガス400sccm、アルゴンガス200sccmのガス流中において、550℃で30分間熱処理した。この処理により、白色であった粉末は、やや黄色がかった粉末となった。このように粒径の大きな粒子を後処理により部分窒化すると、図4(a)のように粒子内部は窒素を含有しない酸化チタン、最表面側はTi−O−Nとなっており、またその窒素組成比は、粒子の径方向に連続的に変化している。この粉末を用いて、メチレンブルー水溶液の可視光による分解特性を測定した。試験管に入れた約5ccの10μMメチレンブルー水溶液中に、約0.05gの酸化チタン粉末、ならびにTi−O−N粉末をいれた物をそれぞれ用意し、撹拌しながら可視光照射を行った。光源には、10W蛍光管(松下電工、FL10N)の周囲に紫外線カットフィルタ(富士フィルム、SC42)を取り付けたものを用い、ほぼλ≧400nmの可視光とした。光源との距離は1cmとした。紫外線強度は、0.0μW/cm2であった(トプコン製の光強度計、UVR−2及びUD−36使用)。72時間照射後、酸化チタン粉末を入れた溶液はわずかに脱色しただけであったが、Ti−O−N粉末を入れた溶液はほぼ無色透明に脱色された。
なお、本具体例の処理によって形成されるTiO−N相は、処理条件に応じて、粒子の最表面全体を覆い尽くす場合もあれば、表面の一部のみに形成される場合もある。
「具体例6」
本発明のTi−O−N光触媒を有機繊維やプラスチックなどに練り込んで使用する場合、Ti−O−N光触媒と前記有機繊維やプラスチックが直接接触することにより分解されてしまうという問題が生じる。そこでこの問題を解決するために、Ti−O−N光触媒の表面に、より触媒活性の低いセラミックを坦持させるのが有効であることがわかった。ただし、この場合、Ti−O−Nの表面全体をセラミックで覆ってしまうと、光触媒反応により酸化、あるいは還元させるべき物質とTi−O−Nの直接接触が妨げられるため、光触媒効果が低下してしまう。したがって、坦持されるセラミックは、図5(a)、図5(b)、図5(c)に示すように島状、針状あるいは網目状に坦持させる。
その作成例を以下に述べる。まず、金属アルコキシドの加水分解法を用いる場合について述べる。メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等アルコールを添加してあるベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ケロシンまたはヘキサン等の石油留分などの疎水性有機溶媒中に、水を表面に吸着させたTi−O−N粒子を分散させ、アルミニウム、珪素、ジルコニウム、マグネシウム、カルシウム、チタンなどの金属アルコキシドを溶解した疎水性有機溶媒を加え、該粒子表面で金属アルコキシドの局部的な加水分解を起こさせる。この後、必要に応じて乾燥、焼成することにより、表面に、Ti−O−Nよりも光触媒活性の低いセラミックスを島状、針状あるいは網目状に形成できる。
それ以外の方法としては、Ti−O−N粉末、薄膜、あるいは基材にTi−O−Nをコーティングしたものに、スパッタ、真空蒸着、イオンプレーティング、CVDなどの方法により、アルミニウム、珪素、ジルコニウム、マグネシウム、カルシウム、チタンなどの酸化物、あるいはこれらに窒素を含有させたものを島状、針状あるいは網目状に坦持させることができる。
また、上記アルコキシドの加水分解法やスパッタ、真空蒸着、イオンプレーティング、CVD法で、酸化チタン表面にアルミニウム、珪素、ジルコニウム、マグネシウム、カルシウム、チタンなどの酸化物セラミックやフッ素樹脂を島状、針状あるいは網目状に坦持させ、その後、アンモニアガスや窒素ガスを含む雰囲気下で熱処理、あるいはプラズマ処理を行うことにより、Ti−O−Nの表面に、より活性の低い窒素含有セラミックを島状、針状あるいは網目状に形成することができる。
こうして得られた光触媒粒子は、チタニア粒子の表面に光触媒として、活性の低いセラミックスが島状、針状あるいは網目状に付着している。このため、有機繊維やプラスチックなどに練り込んで使用する場合、有機繊維やプラスチックと接触している部分が活性の低いセラミックスになる。そこで、繊維やプラスチックス自身の分解を生じることなく、悪臭やNOxなどの空気中の有害物質あるいは水中に溶解している有機溶剤や農薬などの環境を汚染している有機化合物を吸着し、紫外光のみならず波長500nm程度までの可視光照射によっても、連続的に分解除去することができる。
(製造方法の具体例)
以下の具体例では、本発明の光触媒についての各種製造方法の具体例について述べる。
「具体例7」
本具体例では、スパッタリングにより、石英基板上にTi−O−N薄膜光触媒薄膜を作成する光触媒体の製造例を示す。
石英基板および酸化チタンターゲットをスパッタリング装置の真空チャンバ内にセットする。そして、真空チャンバ内に窒素ガスおよび不活性ガス(例えばArガス、Neガス)を所定量導入し、この混合ガスプラズマ中でスパッタリングする。これによって、石英基板上にTi−O−N膜を膜厚10μm以下の厚さで堆積する。
スパッタリングガスを導入する前の到達真空度は、2×10-5Pa(1.5× 10-7Torr)である。到達真空度は、真空中で本発明の光触媒を作製する上で重要な要素である。9×10-5Pa、4×10-4Paの背圧での成膜を行い可視光動作性能を比較したが、到達真空度が悪いほど、Ti−N結合量は減少し、可視光活性は低下する。
スパッタリング中の全ガス圧は、例えば0.52Pa、窒素分圧は、0%<N2分圧≦100%の範囲で設定すればよいが、20〜60%程度が好適である。さらに、スパッタリングによるTi−O−N膜12の成膜後に熱処理(アニール)を行い、結晶化する。例えば、窒素雰囲気中で550℃、2時間程度熱処理することで、結晶化させることができる。すなわち、単に成膜しただけでは、アモルファス中に多結晶が混在するような構造であるが、熱処理を行うことで多結晶化、単結晶化を図ることができる。なお、石英基板を400〜900℃の範囲内の温度で加熱しながらTi−O−N膜を形成することで、成膜後の熱処理を省略することもできるが、成膜後アニールと比較して性能が劣る。
上記の方法でTi−O−N膜を形成することで、窒素原子Nは、酸化チタン結晶の酸素サイトの一部を置換したTi−O−N光触媒膜を形成することができる。
さらに、Ti−O−N膜の窒素原子数比%は、窒素ガス分圧20%による成膜では熱処理前6.6%、熱処理後1.4%、窒素分圧100%の成膜では熱処理前12.7%、熱処理後0.5%であった。また、窒素ガス分圧40%、60%における成膜では、熱処理後のTi−O−N膜中の窒素原子数比%がそれぞれ1.4%、1.5%であった。
ここで、本実施形態の方法で製造したTi−O−N光触媒を構成する窒素原子の状態を、従来の酸化チタン粉末と比較して説明する。X線回折による測定では、アナターゼ型酸化チタンとルチル型酸化チタンの回折線が観察されたが、窒化チタン(TiNやTi2N)結晶に由来する回折線は観察されなかった。また、前述の図6に示すMg−Kα、X線を用いたXPS(X−ray Photoemission Spectroscopy)による窒素Nの1s殻の測定結果から窒素原子の化学的な結合状態を判断したところ、本実施形態のTi−O−N中の窒素原子は、396〜397eV付近に、Ti−N結合に由来するピークを示す。これにより窒素原子が酸化チタンの酸素原子を置換していることがわかる。
上記のように、本発明のTi−O−N光触媒のX線回折とXPSの二つの測定結果から、アナターゼ+ルチル結晶構造を有するTi−O−N中にTiとN原子の間の化学的結合が存在する。
一般に光触媒用の酸化チタンとして市販されている粉末や膜中にも、製造過程で窒素原子が混入する場合があるが、図6に示すようにこれらの窒素原子のピークは400eV付近に現れる。すなわち、従来の酸化チタンに混入する窒素原子は有機化合物やニトロ基を形成しているため、Ti−N結合は観察されない。このように、製造過程に混入したり後処理で表面修飾される酸化チタンに存在する窒素とは、化学的な性質が異なる。
また、この具体例7における膜厚が160nmのTi33.964.71.4について触媒活性を測定した結果を図14(b)に○印で示す。この測定は、光触媒チェッカー(真空理工(株)製)の光源を図14(a)に示すようなスペクトルを持つ、波長λ≧410nmの可視光源に代えて、メチレンブルーの分解速度を光の透過率から測定することで行った。
本実施形態のスパッタ法の場合、同じ方法で製造したアナターゼ型酸化チタン(図14(b)に黒の菱形で示す)と比較して、波長λ≧410nmでの触媒活性が著しく向上していることがわかる。
また、実験によれば、窒素ガス分圧20%、40%、60%、100%で製造したTi−O−N膜のすべてにおいて、光触媒機能が発現した。たとえば、Ti32662の組成比の膜でも同様な光触媒活性を示した。従って、Ti−O−N膜の窒素含有量は、その原子数比%をX%とした場合、0<X<13とすることが好適であることがわかった。なお、Ti−O−N膜の光触媒機能としては、熱処理後のものが優れており、熱処理後の窒素濃度としては、5%以下、がより好ましい。
なお、この試料最表面においてXPSで観察されるアンモニウム塩の効果について述べる。図6の具体例では、397eV付近に、Ti−N結合に由来するピークが観察される。このような本発明の可視光動作型光触媒において、402eV付近にピークがある場合とない場合を比較すると、ある場合の方がより活性が高い。このピークはアンモニウム塩に由来するピークと考えられ、従来技術のニトロ基(−NO2)由来のピークとは明らかに結合エネルギーが異なる。
上述の説明では、酸化チタンターゲットを用いて、窒素ガスを含むアルゴンガスのプラズマ中でTi−O−N膜を成膜したが、窒化チタンターゲットを酸素を含むガスのプラズマ中で成膜してもよい。さらに、ターゲットに酸化チタンと窒化チタンの2つを用いたり、酸化チタンと窒化チタンの混合物ターゲットを用いることもできる。
なお、基板は、本実施形態以外にもガラス、セラミック、金属、活性炭等の有機物、シリカ、アルミナ、フッ素樹脂等の材料の板材や、ハニカム構造の多孔体など各種のものが利用可能である。
「具体例8」
酸化チタン(III)(Ti23)を、ガラス基板上に電子ビーム蒸着により蒸着する。この時、窒素ガスを、総圧力が0.0266Pa(0.2mTorr)となるように真空チャンバに導入する。製造した膜を、500℃の100%窒素ガス雰囲気中で2時間熱処理することにより、アナターゼ+ルチル構造のTi−O−N膜が製造する。この膜のXPS分析の結果、TiとN原子間の結合が確認され、またX線回折結果からはTiNあるいはTi2N結晶が見られないことから、窒素原子が、酸化チタン結晶の酸素サイトの一部を置換すること、または酸化チタン結晶の格子間にドーピングされること、または酸化チタンの結晶粒界にドーピングされることのいずれかまたはこれらの組み合わせを有するTi−O−N光触媒を形成したと判断できる。
なお、蒸着材料は、本実施形態の酸化チタン(III)に限らず、組成比の異なる酸化チタンや金属チタンでもよい。また基板は、本実施形態以外にもガラス、セラミック、金属、活性炭等の有機物、シリカ等の材料の板材や、ハニカム構造の多孔体など各種のものが利用可能である。
また、蒸着時の雰囲気であるが、窒素ガスと酸素ガスの混合雰囲気でもよい。ただし、この場合には、酸素ガス分圧が高いほど膜中に窒素原子が入りにくくなり、膜中の窒素組成比が低くなるので、熱処理時にアンモニアガスを用いると熱処理効果が高くなる。この時の処理温度は400℃から700℃の温度範囲にあればよい。これを超える温度における処理では窒化チタンが形成されるので好ましくない。また、蒸着時に真空雰囲気内でプラズマ状態をつくり、蒸着粒子をイオン化、励起粒子として活性化するイオンプレーティング法やアークイオンプレーティング法、電子ビーム励起プラズマを用いれば、基材との密着性の高いTi−O−N光触媒膜が形成できる。また、その他にもクラスターイオンビーム法によっても条件を選択することにより製造できる。
さらには、酸素雰囲気中で成膜することにより酸化チタン膜を形成し、この膜をアンモニアガスを含む雰囲気、あるいは窒素と水素の両方を含む雰囲気で、400℃から700℃の温度範囲で熱処理することによってもTi−O−N光触媒が得られる。
「具体例9」
本具体例では、アルコキシドを用いたゾルゲル法での製造例を示す。チタニアゾルは、超微粒子の酸化チタンを水に懸濁させたり、アルコールと四塩化チタンや金属チタンとの反応などによって得られるチタンのアルコキシドを加水分解したりすることによって調製される。その際、モノエタノールアミンやジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルジアミノエタノール、ジイソプロパノールアミンなどのアルコールアミン類やジエチレングリコールなどのグリコール類を添加すると均一で透明なチタニアゾルが得られる。
これらのチタニアゾルを、滴下法、塗布法、スプレー法などによってコーティングし、アンモニアあるいは窒素を含む雰囲気で熱処理することによって、紫外光のみならず可視光照射によっても光触媒活性を呈するTi−O−N光触媒膜を製造することができる。処理温度は、300℃から800℃の範囲が好ましい。より好ましくは、450℃から700℃の温度範囲がよい。
「具体例10」
本実施形態では、ガス中処理によりTi−O−Nを坦体の表面にコーティングする方法を示す。チタン酸化物粒子を分散懸濁させた溶液中に、ハニカム構造体を30分浸すことにより、構造体の表面に上記チタン酸化物分散溶液をコーティングする。これをアンモニアガス、あるいは窒素を含む雰囲気中で550℃において熱処理を行うことにより、溶液分は蒸発し、その結果ハニカム構造体の表面にTi−O−Nが形成される。熱処理温度は450℃以上700℃以下の範囲内であればよい。
また、この場合、反応ガスにはアンモニアガスとアルゴンガス等の不活性ガスの混合ガスを用いると、窒化チタンを形成することなく本発明のTi−O−N相を形成するための条件範囲が広くなり、製造の再現性が向上する。またガスの取り扱いも容易となり都合がよい。また、アンモニアガス、あるいは窒素を含む雰囲気中で熱処理する前に、予備熱処理をすることにより、ハニカム構造体と光触媒粒子との密着性が向上する。
図15に、上記ハニカム構造体にコーティングするのと同様に、(窒素+アルゴン)混合ガス流中で熱処理することによりガラス板上に製造した膜状Ti−O−Nの光透過スペクトルを示す。処理時間が30分、60分と長くなるのに伴って可視光透過率が減少していることから、アンモニア雰囲気中での熱処理により可視光吸収性能が向上していると判断できる。
図16は、これらの膜のXPSによる分析結果である。396〜397eV付近に、Ti−N結合に由来するピークが観察される。X線回折においては窒化チタン(TiN)結晶に由来する回折線は観察されないことから、本実施形態の処理により、酸化チタン結晶の酸素サイトの一部を窒素原子で置換することにより酸化チタン結晶に窒素を含有させた光触媒体が形成されていることがわかる。
また、XPSにより分析した組成比は、いずれの処理条件の場合においてもTi34651であった。
ここで、ハニカム構造体の表面にTi−O−Nをコーティングするためのゾルは、通常チタニア膜を形成するのに使われるチタンアルコキシドでもよい。塩化チタン、有機チタン化合物などの溶液でもよい。また、チタンイソプロポキシドのエタノール溶液中に、塩酸とエタノールを溶解させた水溶液を混合する。この混合溶液を、40〜50℃の温度で撹拌すると、ゾルが形成されるが、これを用いてもよい。
また、ハニカム構造体の代わりにグラスファイバー、ゼオライト、FSM多孔体、活性炭、繊維等を用いて、Ti−O−N光触媒を形成してもよい。
「具体例11」
本実施形態では、超微粒子光触媒Ti−O−N膜の作製例を示す。製造した装置は、図17に示す装置であり、超微粒子生成室10、差動排気室12、膜形成室14からなり、超微粒子生成室10は差動排気室12と管16により接続され、差動排気室12と膜形成室14が弁20を有する管18によって連結されている。また、超微粒子生成室10、差動排気室12、膜形成室14には、真空ポンプ22がそれぞれ弁を介し接続されている。さらに、超微粒子生成室10には、抵抗加熱可能なコンポジットECポート24が設けられており、またヘリウムガスおよび窒素+酸素混合ガスが導入できるようになっている。また、膜形成室14には、成膜台26が設けられている。
まず、超微粒子生成室10、差動排気室12、膜形成室14ともに10-4Pa(10-6Torr)程度の真空にする。その後、超微粒子生成室10にHeガスを13.3kPa(100Torr)になるまで導入する。それから超微粒子生成室10内の窒素ガス噴出孔を通して、所定の流量の窒素+酸素混合ガスを流し始める。その後、コンポジットECボート24に通電し、ボート24上の金属チタンが所定の蒸発温度になるようにコントロールする。蒸発したTiは窒素ならびに酸素と反応して、Ti−O−Nを形成する。この時の反応ガスの流量比は窒素:酸素=99.99:0.01から90:10である。
反応生成した粒子を成膜する際には、差動排気室12から膜形成室14に流れる弁20を開け、Ti−O−N粒子の混入したガスを、Heガス200ml/minの流量で超微粒子生成室10に流す。膜形成室14では、ガラス、セラミック、金属、活性炭等の有機物、シリカ等の材料の板材や、ハニカム構造の多孔体を成膜台26に載せておき、この成膜台26を所定の速度で動かすことにより、超微粒子を混入させたガスを吹きつけ、超微粒子膜を順次形成させていく。
なお、この手法では、蒸発材として金属チタンを用いたが、蒸発材に窒化チタンや酸化チタンを用いてもよい。
またその他に本発明の光触媒を微粒子化する方法として、金属蒸気合成法、流動油状真空蒸発法等の物理的手法が、またコロイド法、アルコキシド法などの液相での化学的な方法、あるいは有機金属化合物の熱分解法、チタン塩化物、酸化物・含水酸化物や酸窒化物、窒化物の、アンモニアあるいは窒素を含むガス中での還元法のような気相中での化学的な方法によっても製造できる。
「具体例12」
本具体例では、エマルション燃焼法を用いた、大きな比表面積のTi−O−N光触媒粉末の製造方法を示す。本発明の製造方法は、チタン、あるいはチタンと窒素原子の両方を含む物質、あるいはチタンを含む物質と窒素原子を含む物質の両方を可燃性液体中に懸濁させたサスペンション、または上記物質を溶解した溶液を、可燃性液体中に乳濁させたエマルションのうちの一方または双方を噴霧するとともに該サスペンションまたはエマルションを窒素雰囲気、アンモニアガス雰囲気のいずれはあるいはこれらの組み合わせで加熱するものである。
金属そのもの、あるいは金属塩等が挙げられる。従って、チタンの塩化物、錯塩等が挙げられる。すなわち、チタン原子を含み上記サスペンションまたはエマルションを作製できるものであれば、その形状のいかんによらず原料として用いることができる。また、チタンアルコキシドを用いてもよい。
また、サスペンションの調製は、チタン、あるいはチタンと窒素原子の両方を含む物質、あるいはチタンを含む物質と窒素原子を含む物質の両方をそのまま可燃性液体中に懸濁させる。エマルションの調製は、チタン、あるいはチタンと窒素原子の両方を含む物質、あるいはチタンを含む物質と窒素原子を含む物質の両方を溶媒中に溶解させた溶液を可燃性液体中に乳濁させる。従って、必ずしも溶媒に溶解しない物質でも可燃性液体中に懸濁させることにより、光触媒粉末の製造原料として用いることができる。
なお、サスペンションの場合、可燃性液体中に懸濁させる物質の形状としては、粒子状等、どのようなものでもよいが、微細なものほど微細な粉末が得られる。また、エマルションの場合、チタン、あるいはチタンと窒素原子の両方を含む物質、あるいはチタンを含む物質と窒素原子を含む物質の両方を溶解させる溶媒としては、水が望ましい。
可燃性液体は、サスペンションまたはエマルションの媒体となるものであり、灯油、ケロシン、ガソリン等が挙げられ、それらのうちの1種または2種以上で使用する。
サスペンションまたはエマルションの作製時、液体状態で混合するため、該サスペンションまたはエマルションは均質なものとなる。この均質性により、窒酸化物の製造の際、サスペンションまたはエマルションの噴霧および加熱時に温度分布が生じないため、組成の均一性が損なわれない。
なお、チタン、あるいはチタンと窒素原子の両方を含む物質、あるいはチタンを含む物質と窒素原子を含む物質の両方を溶解した溶液を可燃性液体中に乳濁させる場合、乳化剤の添加、あるいはホモミキサ等による攪拌を行うのがよい。乳化剤としては、金属イオンを含まないものが望ましく、特にノニオン系界面活性剤を用いるのが望ましい。
また、エマルションを作製する際、適切な乳化剤を用いることにより、径がほぼ均一な球が分散した懸濁液が得られる。この分散球の径の均一性が得られる光触媒粉末の粒径に反映される。分散球の径が均一なエマルションを作製することは容易であり、従って、粒径の均一な酸化物粉末を製造することは容易である。また、噴霧粒子の凝集もないためより粒径の均一な酸化物粉末が得られる。
サスペンションまたはエマルションを噴霧する方法としては、圧縮空気を用いる噴霧器に、定量ポンプによりサスペンションまたはエマルションを供給し、噴霧する方法等が挙げられる。噴霧量は多いほど生産効率がよいが、燃焼温度が高くなりすぎるために、噴霧に上限が存在することがある。
本実施形態では、サスペンションまたはエマルションを噴霧するとともに該サスペンションまたはエマルションを窒素雰囲気、アンモニアガス雰囲気のいずれかあるいはこれらの組み合わせで加熱する。これにより、サスペンションまたはエマルション中の可燃性液体を燃焼させる。
加熱方法としては、噴霧液滴をバーナ等により加熱する、あるいは噴霧液滴を火炎または高温に加熱した部分を通過させる方法等がある。加熱する際の雰囲気としては、窒素雰囲気、アンモニアガス雰囲気のいずれはあるいはこれらの組み合わせが必要である。
製造した光触媒粉末は、飛散しないように捕集する。このようにして、粉末を製造する。本発明では、従来のような仮焼、粉砕工程がないため、不純物の混入がなく、少ない工程で行える。
本実施形態の方法では、初期材料としてTi源としてはTiCl4、N源としてはNH4Clを用いたときに、Ti−O−N光触媒中のN組成比が4.5%であり、その後大気雰囲気中で500℃熱処理した後に2.1%となった。また、大気雰囲気中で800℃熱処理したときには1.4%となった。前者2つの結晶相はアナターゼ、後者はルチルであったが、いずれも可視光領域において光触媒活性を示した。
また、初期材料として、Ti源としてはTiCl4、N源として、液中にNH4 +イオンを含ませるかわりに、アンモニアガスを導入しつつ製造した場合においてもTi−O−N光触媒中のN組成比0.9%の光触媒体が得られた。
「具体例13」
本発明の光触媒を実現する方法として、窒化チタン、あるいは酸窒化チタンを酸化する方法も有効である。ここでは、窒化チタン粉末を酸素雰囲気中で酸化する具体例について述べる。
窒化チタン粉末(高純度科学製、平均一次粒子径33nm)を、石英管中におき、酸素雰囲気中で400℃、90分熱処理した。この処理により、粉末は黄色の焼結体を形成した。これを乳鉢で粉砕することにより黄色の微粉末が作製された。この粉末について、X線回折分析を行ったところ、ルチル型酸化チタンの強い(110),(101),(200),(111),(210),(211),(220)回折線と、非常に弱いTiN(200)回折線が観察された。(110)回折線の半値幅から見積もったルチル酸化チタンの平均一次粒子径は42nmであった。またXPSによって、粉末中にTi−Nの化学的結合が存在することも明らかとなった。
この粉末の拡散反射スペクトルを図18に示す。図中の符号111で示す曲線が本具体例の光触媒粉末の反射スペクトル、符号112で示す曲線が平均一次粒子径19nmのルチル型酸化チタンの反射スペクトルである。この結果から、本具体例のTiO−Nは、通常のルチル型酸化チタンよりも光吸収端が長波長側にシフトしており、可視光を吸収する。
この粉末を用いて、メチレンブルー水溶液の可視光照射による分解を行った。約5ccの10μMメチレンブルー水溶液中に、約0.05gの粉末をいれ、撹拌しながら可視光照射を行った。光源には、10W蛍光管(松下電工、FL10N)の周囲に紫外線カットフィルタ(富士フィルム、SC42)を取り付けたものを用い、ほぼλ≧400nmの可視光とした。光源との距離は1cmとした。紫外線強度は、0.0μW/cm2であった(トプコン製の光強度計、UVR−2及びUD−36使用)。48時間照射後、溶液はほぼ無色透明に脱色された。
このように、初めからTi−N結合を有する材料を用いれば、容易にTiO−N光触媒が形成できる。また、処理条件を選ぶことにより、粉末内部にTi−O−N、最表面に酸化チタンの構造を有する光触媒体を形成できる。
この方法では、550℃で処理した場合においても、同様にルチル型可視光触媒粉末が得られた。この方法に限らず、処理雰囲気としては酸化雰囲気であれば、酸素ガス、オゾン、水分子、ヒドロキシル基を含む雰囲気等どのような雰囲気でもよく、熱処理に限らず、プラズマ処理によっても同様の効果が得られる。また、酸化雰囲気中でのエマルジョン燃焼法によっても同様に本発明の光触媒体が作製できる。これらの方法においても、処理条件を選ぶことにより、粉末内部にTi−O−N、最表面に酸化チタンの構造を有する光触媒体を形成できる。
(光触媒の性能)
上記具体例に示した光触媒体を膜構造にした場合の、図14(a)に示す波長λ≧410nmの可視光照射におけるメチレンブルーの分解性能を図14(b)に示す。測定したサンプルは、薄膜形状にしやすい実施形態の実験結果を示した。具体的には、図中○で示したのが既に説明した具体例7のスパッタリングにより作成したTi−O−N膜、□(白抜きの四角)で示したのが具体例8の蒸着膜、黒塗りの四角で示したのが具体例8のイオンプレーティング膜、△(白抜きの三角)で示したのが具体例10の酸化チタンのアンモニア処理膜、についての実験結果である。また、比較例として、酸化チタン膜の特性も図に◆(黒塗りの菱形)で示した。これらの結果から、本発明の光触媒体、ならびに製造方法は、紫外光のみならず可視光の照射によっても高い活性を呈する光触媒の実現に有効であることが明らかである。
さらに、実施形態1の光触媒薄膜を白色蛍光灯の下で評価した場合の結果を図19に示す。輝度2000cd/m2の蛍光管から15mm離れた位置から光を照射した。本発明の光触媒は、蛍光灯下でも光触媒活性が高い。白色蛍光灯は太陽光と比較して紫外線の含有量がきわめて低い。従って、従来の酸化チタン光触媒では、一般の室内住環境下では、光触媒性能を発揮できなかった。これに対し、本発明の光触媒は室内環境下においても十分に効果を発揮することがわかる。
(その他)
なお、本発明のTi−O−Nの結晶系であるが、材料内部に窒化チタンTiN結晶を形成することは好ましくない。本発明にかかわるTi−O−NではN原子は、上述したように、酸化チタン結晶の格子間に窒素原子をドーピングすること、または酸化チタンの結晶粒界に窒素原子をドーピングすること、より好ましくは酸化チタン結晶の酸素サイトの一部を窒素原子で置換すること、のいずれかまたはこれらの組み合わせによるため、X線回折法による解析では酸化チタンの回折線のみが現れる。一般に従来技術の酸化チタン光触媒では、アナターゼ型の活性が高いため望ましいとされているが、本発明のTi−O−N光触媒では、その基本結晶としてアナターゼ、ルチル、ブルッカイトのいずれの結晶系でもよい。
また、上記実施形態における製法では、Ti−O−N光触媒を例に挙げて説明を行ったが、これらの製法はTi−O−Nに限られるわけではなく、Ti−O−NにさらにS,B,C,P,Cl,As,Se,Br,Sb,Te,Iのうち少なくとも一つをドーピングした材料系にもこの製法は適用される。
なお本発明の光触媒は、還元触媒としても使用できる。また、ある物質を原料にして他の物質を合成する触媒としての使用も可能である。
本発明による光触媒は、可視光により動作する。このため、可視光が照射される状況下に置かれる各種材料の表面に形成することなどにより、防曇や有機物除去などが行える。
実施形態1の構成を示す図である。 酸化チタン結晶相を示す図である。 実施形態2の構成を示す図である。 実施形態3を示す図である。 実施形態4を示す図である。 実施形態の光触媒物質における窒素原子の1s殻の結合エネルギースペクトル(XPSスペクトル)を示す図である。 酸素サイトの一部をXで置換したTi−O−Xの状態密度を示す図である。 誘電率関数の虚数部のエネルギー依存性を示す図である。 光触媒の吸光度の波長依存性を示す図である。 膜表面での水の接触角を示す図である。 積層型光触媒の特性を示す図である。 光触媒上の有機物の分解性能の比較を示す図である。 具体例4の可視光触媒性能と窒素原子の結合状態との関係を示す図である。 可視光光源のスペクトルおよび実施形態の光触媒機能を示す図である。 具体例10における光触媒物質の光吸収スペクトルを示す図である。 具体例10の光触媒物質における窒素原子の1s殻の結合エネルギースペクトル(XPSスペクトル)を示す図である。 具体例13における超微粒子膜生成装置の構成を示す図である。 具体例16の光反射スペクトルである。 実施形態1の光触媒物質の蛍光灯の下での光触媒機能を示す図である。
符号の説明
10 SiO2基板、12 Ti−O−N膜、14 TiO2膜。

Claims (19)

  1. 酸化チタン結晶の酸素サイトの一部を窒素原子で置換したTi−O−N構成を含み、チタン原子と窒素原子との化学結合を有する可視光領域において光触媒作用を発現する光触媒物質。
  2. 請求項1に記載の光触媒物質であって、
    PS測定によるN1s殻結合エネルギースペクトル図において、400eV以下の領域に少なくとも一つのピークを有る光触媒物質。
  3. 請求項1に記載の光触媒物質であって、
    PS測定によってN1s殻結合エネルギースペクトル図において、396eV以上398eV以下の領域に少なくとも一つのピークを有る光触媒物質。
  4. 酸化チタン結晶格子中に窒素を含有し、酸化チタンの価電子帯と伝導帯とのバンドギャップの間に酸化チタンの酸素サイトの一部を窒素原子で置換したことによる不純物準位を有し、可視光領域において光触媒作用を発現する光触媒物質。
  5. 請求項1〜のいずれか1つに記載の光触媒物質であって、窒素の含有原子数比Xが0<X<13%である光触媒物質。
  6. 請求項1〜のいずれか1つに記載の光触媒物質であって、チタン、酸素、窒素の原子数比Y、Z、Xが0.4<Y/(X+Z)<0.6の範囲内にある光触媒物質。
  7. 請求項1〜のいずれか1つに記載の光触媒物質であって、XPSスペクトルにアンモニウム塩由来のスペクトルを有する光触媒物質。
  8. 請求項1〜のいずれか1つに記載の光触媒物質を含む光触媒膜であって、表面がC軸結晶面方位である光触媒膜。
  9. 請求項1〜7のいずれか1つに記載の光触媒物質を含む光触媒膜であって、外部表面側に窒素を含まない酸化チタンを有する光触媒膜。
  10. 請求項1〜のいずれか1つに記載の光触媒物質の外部表面側に、窒素を含まない酸化チタンを有する光触媒体。
  11. 請求項1〜7のいずれか1つに記載の光触媒物質を外部表面側の全面又は一部に有する光触媒体。
  12. 請求項1〜のいずれか1つに記載の光触媒物質を外部表面側の全面又は一部に有する光触媒体であって、内部に酸化チタン、シリカ、アルミナ、フッ素樹脂、又はこれらに窒素を含有させたもののうち少なくとも一つを有する光触媒体。
  13. 請求項1〜のいずれか1つに記載の光触媒物質の表面に、前記光触媒物質より光触媒活性の低いセラミックを島状、針状又は網目状に担持した光触媒体。
  14. 請求項13に記載の光触媒体であって、前記光触媒物質より光触媒活性の低いセラミックが、アルミナ、シリカ、ジルコニア、マグネシア、カルシア、リン酸カルシウム、アモルファスの酸化チタン、フッ素樹脂のうちから選ばれた少なくとも一つである光触媒体。
  15. 請求項13に記載の光触媒体であって、前記光触媒物質より光触媒活性の低いセラミックが、アルミナ、シリカ、ジルコニア、マグネシア、カルシア、リン酸カルシウム、アモルファスの酸化チタン、フッ素樹脂のうちから選ばれた少なくとも一つに窒素を含有させたものである光触媒体。
  16. 窒酸化チタン、酸化チタン、金属チタンのうち少なくとも一つをターゲット材料とし、これを窒素を含む雰囲気でスパッタし、形成されたTi−O−N構成の光触媒物質を、窒素ガスを含む雰囲気中で熱処理をして結晶化させることにより、酸化チタン結晶中にチタン原子と窒素原子との化学結合を含み、可視光領域において光触媒作用を発現する光触媒体を形成する光触媒体の形成方法。
  17. 窒酸化チタン、酸化チタン、金属チタンのうち少なくとも一つをターゲット材料とし、これを窒素を含む雰囲気でスパッタしてTi−O−N構成の光触媒物質を形成し、当該光触媒物質表面を無ドープの酸化チタンで覆った後に、熱処理をして結晶化させることにより酸化チタン結晶中にチタン原子と窒素原子との化学結合を含み、可視光領域において光触媒作用を発現する光触媒物質の薄膜を基材上に形成する、酸化チタン結晶に窒素を含有させたTi−O−N構成を有し、可視光領域において光触媒作用を発現する光触媒体の形成方法。
  18. エマルジョン燃焼法において、エマルジョン中の水相である金属塩水溶液あるいはサスペンジョン中に窒素元素を含むイオンあるいは分子であって硝酸イオンは除くものが存在し、かつ反応装置内に導入する酸素量がエマルジョン中に含まれる油及び界面活性剤を含む燃焼成分が完全に燃焼しかつ水溶液中に含まれる金属イオンあるいは金属化合物が大気中で最も安定な酸化物を形成するために必要な酸素量以下の雰囲気中でエマルジョンを噴霧燃焼させ、酸化チタン結晶に窒素を含有させたTi−O−N構成を有し、可視光領域において光触媒作用を発現する光触媒物質の製造方法。
  19. エマルジョン燃焼法において、エマルジョン中の水相である金属塩水溶液あるいはサスペンジョン中に窒素原子を含むイオンあるいは分子であって硝酸イオンは除くものが存在するかわりに、窒素含有ガスであって窒素ガスは除くガスを含みかつ反応装置内に導入する酸素量が必要酸素量よりも少ない雰囲気中でエマルジョンを噴霧燃焼させ、酸化チタン結晶に窒素を含有させたTi−O−N構成を有し、可視光領域において光触媒作用を発現する光触媒物質の製造方法。
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