JP3740736B2 - 熱交換器及び熱交換器の運転方法 - Google Patents

熱交換器及び熱交換器の運転方法 Download PDF

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Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は冷暖房用の空調機等に組み込まれる熱交換器に関する。
【０００２】
【従来の技術】
一般的な熱交換器の構造は、冷媒や熱媒が流れるパイプに、熱伝導率の高いアルミ板成のフィンを多数枚取付け、熱交換の効率を高めるようにしている。そして、フィンの枚数が多ければそれだけ効率は高くなるのであるが、フィンとフィンとの間隔が狭くなり、フィン間に毛細管現象によって水滴が保持され、この水滴がフィンの間を流れる空気の抵抗となり、却って熱交換の効率が低下することになる。
【０００３】
そこで、特開昭５９−１８５９９６号公報、実開昭６２−１１８９９１号公報、実開昭６３−１９０７９０号公報及び実開平４−１７２９３号公報に、フィンの表面に親水性の被膜（表面層）を形成した熱交換器が提案されている。
具体的には、特開昭５９−１８５９９６号公報には、予め親水性被膜を形成したアルミ板を金型で成形するにあたり、親水性被膜中のコロイダルシリカの含有量、被膜厚さ、及びこれらの積を所定の範囲にすることで、前記金型の摩耗を減少させることが開示されている。
実開昭６２−１１８９９１号公報には、アルミニウム製のフィンの表面に樹脂とフッ素系界面活性剤からなる層を形成することで、親水性と防食性を向上させることが開示されている。
実開昭６３−１９０７９０号公報には、切断処理によってアルミの母材が露出しているフィンの端縁部に、撥水・防食処理を行うことで、端縁部からの腐食を防止することが開示されている。
更に実開平４−１７２９３号公報には、フィンの表面に親水性被膜とともにゼオライトを焼き付け、フィンの抗菌・抗カビ性を長期に亘り維持することが開示されている。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
上述したいずれの先行技術にあっても、親水性被膜を形成した当初にあっては、十分な親水性を発揮し、熱交換効率も高いのであるが、経時的に被膜の親水性が低下し、熱交換効率が低下してくる。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく本発明に係る熱交換器は、熱媒体が流通するパイプにフィンが取り付けられ、このフィンの表面には表面層が形成されていて、前記表面層は、シリコーン樹脂中に光半導体粒子が分散しており、前記表面層の少なくとも表面部は、シリコーン樹脂のケイ素原子に結合した有機基が、光半導体粒子を励起し得る波長の光による光励起に応じて水酸基に置換され、前記表面層は親水性を発揮する構成とした。ここで、シリコーン樹脂中に分散せしめる光半導体粒子としては酸化チタンが好ましい。
【０００６】
また、本発明に係る熱交換器の運転方法は、光半導体粒子を含む表面層を表面に形成したフィンを備えた熱交換器を運転するにあたり、連続的若しくは間欠的に前記光半導体粒子を励起し得る波長の光（紫外線）を前記表面層に照射するようにした。ここで、シリコーン樹脂は２００℃程度で硬化することができるため、アルミニウムが軟化することなく適している。さらに、未架橋のオルガノ基が存在するため、曲げなどの加工性をよくすることができる。
【０００７】
表面層がＳi−Ｏ結合を有するシリコーン樹脂からなる場合に、上記のように、紫外線等をフィンの表面層に照射すると、照射する前は図１（ａ）に示すように、Ｓi原子にアルキル基（Ｒ）が結合しているため、表面層は疎水性を示すが、表面層に紫外線を照射すると、図１（ｂ）に示すように、まずＴiＯ2の光触媒効果によってアルキル基（Ｒ）が分解され水酸基（ＯＨ）に換わり疎水性が低下する。さらにＴiＯ2の光半導体親水化作用により物理吸着水が結合し、その吸着水が増加することによって表面の親水性が増し、超親水性の表面が実現されると考えられている。そのうえ水酸基に置換されたシリコーン樹脂は、水を蓄える性質がある。そのため遮光の状態でも親水性を長期にわたり維持することができる。
【０００８】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、図２は本発明に係る熱交換器の斜視図、図３は同熱交換器の要部拡大断面図であり、熱交換器は内部を熱媒体が流れるパイプ１に多数枚のフィン２…を対向して取付けている。
【０００９】
フィン２はアルミニウム平板からなり、その表面には表面層３が形成されている。表面層３はＳi−Ｏ結合を有するシリコーン樹脂をマトリクスとして内部に光半導体粒子としてＴiＯ2粒子が分散している。
【００１０】
上記の表面層３に紫外線ランプや蛍光灯等の光源４から、ＴiＯ2を励起し得る波長の光（紫外線）を照射することで、前記したように、表面層３は親水性を発揮するようになる。そうすることで、親水性の汚れや疎水性の汚れのいずれに対しても、水をかけるだけで汚れを浮き上がらせて流し去ることができ、清浄な表面を回復させることができる。
尚、紫外線の照射は連続して行ってもよいが、適当な間隔、例えば１０日間に数時間行うだけでも親水性を維持することができた。
【００１１】
次に、上記の熱交換器の製造手順を以下の（実施例１）及び（実施例２）で説明する。尚、（実施例１）では、先にフィンの表面に表面層を形成した後に、パイプにフィンを取付けるプレーコート法を、（実施例２）ではパイプにフィンを取付けた後にフィンの表面に表面層を形成するポストコート法を説明する。
【００１２】
（実施例１）
アナターゼ型酸化チタンゾル（日産化学社製 ＴＡ−１５）とメチルトリメトキシシランを重量比で５０：５０で攪拌・混合した後、混合液を純度９９．５％、厚さ１２０μｍの焼鈍したアルミ板の両面に、片面当りの塗布量が２ｇ／ｍ2となるようにロールコートし、２００℃で２０分保持して硬化させた。
次いで、以上によって両面に表面層が形成されたアルミ板を切断或いはプレス加工することで所定形状とし、これをパイプに取付けて熱交換器を組み立てた後、０．６ｍＷ／ｃｍ2のＢＬＢランプを７２時間照射した。
このように、光照射を最終工程に入れると、光照射する前に残っているアルキル基が塗布物に柔軟性を与えるため、切断、プレス等の加工に耐えることができる。
【００１３】
（実施例２）
厚さ１２０μｍの焼鈍したアルミ板を切断或いはプレス加工することで所定形状とし、これをパイプに取付けて熱交換器とする。
次いで、上記の熱交換器を、アナターゼ型酸化チタンゾル（日産化学社製 ＴＡ−１５）とメチルトリメトキシシランを重量比で５０：５０で攪拌・混合した混合液中に浸漬しアルミ板の両面及びパイプの外表面に塗布する。この後、２００℃で２０分保持して表面層を硬化させ、その後０．６ｍＷ／ｃｍ2のＢＬＢランプを７２時間照射した。
【００１４】
（比較例）
デユラクロンＲＥ−１６５０（三菱レイヨン：熱硬化性アクリル樹脂）１００重量部とフタロシアニンブルー４重量部とメガファックＦ−１４２Ｄ（大日本インキ化学工業：パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物）１０重量部との混合物を、エチレン−セロソルブアセテート混合溶媒（１：１）３００重量部に溶解・分散させた後、純度９９．５％、厚さ１２０μｍの焼鈍したアルミ板の両面に片面当りの塗布量が２ｇ／ｍ2となるようにロールコートした。
これを、切断或いはプレス加工することで所定形状とし、パイプに取付けて熱交換器を作製した。
【００１５】
以上の実施例１，２及び比較例で得られた熱交換器のフィンの表面層について親水性試験をおこなった。
試験方法は、０．１ｍＷ／ｃｍ2のＢＬＢランプ照射下で、「表面層形成直後」、「表面層形成後２５℃の室内で１０００時間放置後」及び「表面層形成後流水（水道水）に１０００時間接触させ水分を除去した後」の各場合の塗膜の接触角を測定した。測定結果を以下の（表１）に示す。
【００１６】
【表１】
Figure 0003740736
【００１７】
また、上記の３つの試料を３週間保管しながら、１週間毎に接触角を測定した。測定結果を以下の（表２）に示す。
【００１８】
【表２】
Figure 0003740736
【００１９】
【発明の効果】
以上に説明した如く本発明に係る熱交換器は、熱媒体が流通するパイプに取り付けられるフィンの表面に親水性表面層を形成し、この親水性表面層中に光半導体粒子とシリコーン樹脂をを含ませたので、少なくとも３週間にわたって親水性を維持できる。更に、紫外線を連続的または３週間以内の適当な間隔で照射することで、フィンの表面層は従来よりも高い親水性を長期に亘り維持できる。
したがって、空調機等に本発明に係る熱交換器とともに紫外線ランプ等の光源を組み込むことで、親水性を維持する効果は高まり、熱交換器のフィン表面に半永久的に親水性を付与することができ、水滴によってフィン間の空気の流通を妨げることがなくなり、熱交換効率を大幅に向上せしめることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】（ａ）は疎水性表面の概念図、（ｂ）は親水性表面の概念図
【図２】本発明に係る熱交換器の斜視図
【図３】同熱交換器の要部拡大断面図
【符号の説明】
１…パイプ、２…フィン、３…表面層、４…光源。

Claims (2)

  1. 熱媒体が流通するパイプにフィンが取り付けられ、このフィンの表面には表面層が形成されていて、前記表面層は、シリコーン樹脂中に光半導体粒子が分散しており、前記表面層の少なくとも表面部は、シリコーン樹脂のケイ素原子に結合した有機基が、光半導体粒子を励起し得る波長の光による光励起に応じて水酸基に置換され、前記表面層は親水性を発揮することを特徴とする熱交換器。
  2. 請求項１に記載の熱交換器において、前記フィンはアルミニウムからなることを特徴とする熱交換器。
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