JP2009263853A - オフセット印刷用塗工紙 - Google Patents

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Abstract

【課題】白紙光沢度、印刷光沢度が高く、白紙の微小な光沢度ムラが少ない、優れた印刷適性を有するオフセット印刷用塗工紙を提供する。
【解決手段】原紙上に顔料及び接着剤を含有する塗工層を有する印刷用塗工紙において、セルロースナノファイバーを表面に塗布した原紙に、少なくとも1層以上の塗工層を設ける。セルロースナノファイバーの原紙表面への塗布量は、0.01〜10g/m2が好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、優れた印刷適性を備えたオフセット印刷用塗工紙に関するものである。
塗工紙は、光沢塗工紙と艶消し塗工紙に大別される。光沢塗工紙は、従来高級印刷に用いられてきたアート紙、スーパーアート紙、A2コート紙などであり、白紙光沢も印刷光沢も高いグロス調のものを指す。艶消し塗工紙は白紙光沢によりダル調、マット調がある。マット調は、白紙面の光沢が低くフラットで落ち着いた感じの印刷仕上がりで、ダル調は、グロス調とマット調の中間のものである。グロス調塗工紙、ダル調塗工紙、マット調塗工紙いずれにおいても、近年、印刷物のビジュアル化、高級化志向に伴い、印刷適性の優れた紙が求められている。また、グロス調の光沢塗工紙においては、白紙光沢度、印刷光沢度が高い方がより価値があるため、高光沢度であることが重要である。
従来の技術では、塗工紙の白紙光沢度を向上させるために、塗工層に微粒な顔料を高い割合で配合していたが、微粒な顔料を用いると、顔料の比表面積が増加し、必要とされるバインダーの量が増加することから、塗工紙の表面強度が低下する傾向にあった。また、表面強度の向上を図るため、塗料にラテックスやスターチ等の接着剤成分を高い割合で配合すると、表面強度は向上するが、光沢度は低下する傾向にあった。このように、白紙光沢度と表面強度は相反するものであり、十分な表面強度を維持しつつ白紙光沢度を向上させることは難しかった。
近年の技術の進歩により、ポリスチレンを主体とする有機合成顔料の周囲をスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスで被覆したバインダーピグメントを塗料に配合することにより、白紙光沢度と表面強度の両者を同時に向上させることが可能となった。しかし、バインダーピグメントを塗料に配合すると、塗料の粘着性が高まるため、カレンダー処理を行う際に塗工層がカレンダーに付着し、カレンダーロールの汚れのトラブルの原因となっていた。カレンダーロール汚れを防止する対策として、ガラス転移温度25〜50℃のラテックスと特定の澱粉を配合した塗料を塗工し、特定条件で乾燥する方法や、平均粒子径が50〜115nmで連続異組成型のスチレン-ブタジエン共重合体ラテックスを顔料100重量部に対して8〜20重量部配合する方法(特許文献1)が提案されているが、一般的に顔料として使用されるクレー、炭酸カルシウム等と比較するとバインダーピグメントは非常に高価であり、汎用塗工紙への適用は難しかった。
また、印刷適性を向上させる手法として、平滑性を付与する手法が考えられるが、一般的な方法である高線圧でスーパーカレンダー処理した場合、塗工層表面は平滑になるが、塗工紙密度が高くなるという問題があった。また、従来のスーパーカレンダーに代わり、高温ソフトニップカレンダーによる方法が多数提案されており、仕上げ速度の高速化とともに、印刷光沢度、不透明度および剛度等が相対的に向上されることが報告されているが、この手法を用いて印刷用塗工紙を得た場合においても、塗工紙の密度が高くなるという問題は十分には解決されていなかった。
以上のとおり、十分な表面強度や印刷適性を有し、かつ顔料の塗工量が比較的少ないような場合であっても高い光沢度を有する印刷用塗工紙を得ることは困難であった。
特開2005−54336号公報
以上のような状況に鑑み、本発明の課題は、白紙光沢度、印刷光沢度が高く、白紙の微小な光沢度ムラが少なく、優れた印刷適性を有する印刷用塗工紙を提供することである。
原紙上に顔料及び接着剤を含有する塗工層を有するオフセット印刷用塗工紙において、セルロースナノファイバーを表面に塗布した原紙に、少なくとも1層以上の塗工層を設けることにより、白紙光沢度、印刷光沢度が高く、白紙の微小な光沢度ムラが少なく、優れた印刷適性を有する印刷用塗工紙が得られることを見出した。本発明において、セルロースナノファイバーは、原紙に0.01g/m2以上の量で塗布することが好ましい。
本発明により、特に低塗工量であっても白紙光沢度及び印刷光沢度が高く、白紙の微小な光沢度ムラが少なく、優れた印刷適性を有するオフセット印刷用塗工紙を得ることができる。
本発明においては、セルロースナノファイバーを表面に塗布した原紙に、顔料と接着剤を主成分とする塗工液を塗工して塗工層を設けることにより、白紙光沢度及び印刷光沢度が高く、白紙の微小な光沢度ムラが少なく、優れた印刷適性を有するオフセット印刷用塗工紙を得る。
本発明の印刷用塗工紙の白紙光沢度、印刷光沢度が優れる理由は以下のように考えられる。本発明では、原紙表面にセルロースナノファイバーを塗布することにより、原紙の透気抵抗度を顕著に向上させることができ、それにより、塗工液が原紙へ浸透しにくくなるため、塗工紙の平滑性が向上し、塗工紙の白紙光沢度及び印刷光沢度が高くなるものと思われる。
(セルロースナノファイバー)
本発明で原紙の表面に塗布されるセルロースナノファイバーは、セルロース系原料を解繊することにより得られる幅0.5〜20nm、好ましくは2〜5nm、長さ0.5〜15μm、好ましくは1〜5μm程度のセルロースシングルミクロフィブリルである。本発明のセルロースナノファイバーは、水に分散させると透明な液体となり、特に本発明では、濃度2%(w/v)の水分散液におけるB型粘度(60rpm、20℃)が10〜2000mPa・s、好ましくは500〜2000mPa・sであるセルロースナノファイバーを用いると、適度な粘調性を有することから、所望の濃度に調整するだけで塗料として好適に使用できるので、好ましい。なお、セルロースナノファイバーの水分散液のB型粘度は、公知の手法により測定することができ、例えば、東機産業社のVISCOMETER TV-10粘度計を用いて測定することができる。また、セルロースナノファイバーの幅及び長さは、透過型電子顕微鏡を用いて測定することができる。
本発明に用いられるセルロースナノファイバーは、例えば、セルロース系原料を、(1)N−オキシル化合物、及び(2)臭化物、ヨウ化物又はそれらの混合物の存在下で、酸化剤を用いて酸化し、さらに該酸化されたセルロースを湿式微粒化処理して解繊し、ナノファイバー化することによって製造することができる。
本発明のセルロースナノファイバーの原料となるセルロース系原料は、特に限定されるものではなく、各種木材由来のクラフトパルプ又はサルファイトパルプ、それらを高圧ホモジナイザーやミル等で粉砕した粉末状セルロース、あるいはそれらを酸加水分解などの化学処理により精製した微結晶セルロース粉末などを使用できる。また、ケナフ、麻、イネ、バガス、竹等の植物を使用することもできる。このうち、漂白済みクラフトパルプ、漂白済みサルファイトパルプ、粉末状セルロース、微結晶セルロース粉末が好ましく、粉末状セルロース、微結晶セルロース粉末がより好ましい。
粉末状セルロースとは、木材パルプの非結晶部分を酸加水分解処理で除去した後、粉砕・篩い分けすることで得られる微結晶性セルロースからなる棒軸状粒子である。粉末状セルロースにおけるセルロースの重合度は好ましくは100〜500程度であり、X線回折法による粉末セルロースの結晶化度は好ましくは70〜90%であり、レーザー回折式粒度分布測定装置による体積平均粒子径は好ましくは100μm以下であり、より好ましくは50μm以下である。体積平均粒子径が、100μm以下であると、流動性に優れるセルロースナノファイバー分散液を得ることができるので好ましい。本発明で用いる粉末状セルロースとしては、例えば、精選パルプを酸加水分解した後に得られる未分解残渣を精製・乾燥し、粉砕・篩い分けするといった方法により製造される棒軸状である一定の粒径分布を有する結晶性セルロース粉末を用いてもよいし、KCフロックR(日本製紙ケミカル社製)、セオラスR(旭化成ケミカルズ社製)、アビセルR(FMC社製)などの市販品を用いてもよい。
セルロース系原料を酸化する際に用いるN−オキシル化合物としては、目的の酸化反応を促進する化合物であれば、いずれの化合物も使用することができる。例えば、下記一般式(式1)で示される物質が挙げられる。
Figure 2009263853
(式1中、R1〜R4は同一又は異なる炭素数1〜4程度のアルキル基を示す。)
式1で表される化合物のうち、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシラジカル(以下TEMPOと称する)、及び4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシラジカル(以下、4−ヒドロキシTEMPOと称する)を発生する化合物が好ましい。また、TEMPO又は4−ヒドロキシTEMPOから得られる誘導体も好ましく用いることができ、特に、4−ヒドロキシTEMPOの誘導体を最も好ましく用いることができる。4−ヒドロキシTEMPO誘導体としては、4−ヒドロキシTEMPOの水酸基を、炭素数4以下の直鎖或いは分岐状炭素鎖を有するアルコールでエーテル化して得られる誘導体か、あるいは、カルボン酸又はスルホン酸でエステル化して得られる誘導体が好ましい。4−ヒドロキシTEMPOをエーテル化する際には、炭素数が4以下のアルコールを用いれば、アルコール中の飽和、不飽和結合の有無に関わらず、得られる誘導体が水溶性となり、酸化触媒として良好に機能する4−ヒドロキシTEMPO誘導体を得ることができる。
4−ヒドロキシTEMPO誘導体としては、例えば、以下の式2〜式4の化合物が挙げられる。
Figure 2009263853
Figure 2009263853
Figure 2009263853
(式2〜4中、Rは炭素数4以下の直鎖又は分岐状炭素鎖である。)
さらに、下記式5で表されるN−オキシル化合物のラジカル、すなわち、アザアダマンタン型ニトロキシラジカルも、短時間で、均一なセルロースナノファイバーを製造できるため、特に好ましい。
Figure 2009263853
(式5中、R5及びR6は、同一又は異なる水素又はC1〜C6の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基を示す。)
セルロース系原料を酸化する際に用いるTEMPOや4−ヒドロキシTEMPO誘導体などのN−オキシル化合物の量は、セルロース系原料をナノファイバー化できる触媒量であれば特に制限されない。例えば、絶乾1gのセルロース系原料に対して、0.01〜10mmol、好ましくは0.01〜1mmol、さらに好ましくは0.05〜5mmol程度である。
セルロース系原料の酸化の際に用いる臭化物またはヨウ化物としては、水中で解離してイオン化可能な化合物、例えば、臭化アルカリ金属やヨウ化アルカリ金属などを使用することができる。臭化物またはヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択できる。例えば、絶乾1gのセルロース系原料に対して、0.1〜100mmol、好ましくは0.1〜10mmol、さらに好ましくは0.5〜5mmol程度である。
セルロース系原料の酸化の際に用いる酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物など、目的の酸化反応を推進し得る酸化剤であれば、いずれの酸化剤も使用できる。中でも、生産コストの観点から、現在工業プロセスにおいて最も汎用されている安価で環境負荷の少ない次亜塩素酸ナトリウムが特に好適である。酸化剤の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択できる。例えば、絶乾1gのセルロース系原料に対して、0.5〜500mmol、好ましくは0.5〜50mmol、さらに好ましくは2.5〜25mmol程度である。
セルロース系原料の酸化は、上記のとおり、(1)4−ヒドロキシTEMPO誘導体などのN−オキシル化合物と、(2)臭化物、ヨウ化物及びこれら混合物からなる群から選択される化合物の存在下で、次亜塩素酸ナトリウムなどの酸化剤を用いて、水中で、セルロース系原料を酸化することを特徴とする。この方法は、温和な条件であってもセルロース系原料の酸化反応を円滑に効率良く進行させることができるという特色があるため、反応温度は15〜30℃程度の室温であってもよい。なお、反応の進行に伴ってセルロース中にカルボキシル基が生成するため、反応液のpHの低下が認められる。酸化反応を効率良く進行させるためには、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性溶液を添加することにより、反応液のpHを9〜12、好ましくは10〜11程度に維持することが望ましい。
上記のように、(1)N−オキシル化合物、及び(2)臭化物、ヨウ化物、又はこれらの混合物の存在下で、酸化剤を用いて得られた酸化処理されたセルロース系原料を、湿式微粒化処理して解繊することにより、セルロースナノファイバーを製造することができる。湿式微粒化処理としては、例えば、高速せん断ミキサーや高圧ホモジナイザーなどの混合・攪拌、乳化・分散装置を必要に応じて単独もしくは2種類以上組合せて用いることができる。特に、100MPa以上、好ましくは120MPa以上、さらに好ましくは140MPa以上の圧力を可能とする超高圧ホモジナイザーを用いて湿式微粒化処理を行なうと、比較的低粘度のセルロースナノファイバーを効率よく製造することができるので好ましい。
本発明に用いられるセルロースナノファイバーとしては、絶乾1gのセルロースナノファイバーにおけるカルボキシル基量として、0.6mmol/g以上、好ましくは0.9mmol/g以上、さらに好ましくは1.2mmol/g以上であるものが望ましい。セルロースナノファイバーのカルボキシル基量は、上記の酸化反応の条件を適宜変更することにより、調節することができる。また、セルロースナノファイバーのカルボキシル基量は、セルロースナノファイバーの0.5重量%スラリーを60ml調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出することができる。
カルボキシル基量[mmol/gパルプ]= a[ml]× 0.05/セルロースナノファイバー重量[g]
(原紙)
本発明に用いられる原紙は、特に限定されず、通常のパルプ、填料等が配合されたものを用いることができる。本発明において原紙に配合されるパルプの種類等は特に限定されない。例えば、化学パルプ(広葉樹の晒クラフトパルプ(以下、LBKPとする)または未晒クラフトパルプ(以下、LUKPとする)、針葉樹の晒クラフトパルプ(以下、NBKPとする)または未晒クラフトパルプ(以下、NUKPとする)等)、機械パルプ(グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等)、再生パルプ(脱墨パルプ(DIP)等)を単独または任意の割合で混合して使用することができる。また、原紙に配合される填料としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物、カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン、クレー、シリカ、タルク、水和珪酸、無定型シリケート、ホワイトカーボン、酸化チタンなどの無機填料や、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン系樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂などの合成樹脂等の有機填料を単独でまたは任意の割合で混合して使用することができる。填料の使用量は、パルプ重量当たり5〜18重量%以上が好ましい。
本発明に用いられる原紙は、さらに必要に応じて、硫酸バンド、サイズ剤、紙力増強剤、歩留向上剤、濾水性向上剤、着色顔料、染料、消泡剤、蛍光増白剤、pH調整剤などを含有してもよい。
原紙の抄紙方法については特に限定されるものではなく、トップワイヤー等を含む長網マシン、ギャップフォーマーマシン、丸網マシン、二者を併用したマシン、ヤンキードライヤーマシン等を用いて、酸性抄紙、中性抄紙、又はアルカリ性抄紙方式で抄紙した原紙のいずれであってもよく、新聞古紙から得られる回収古紙パルプを含む中質原紙も使用できる。
原紙の坪量は特に限定されず、一般の塗工紙用原紙に用いられる30〜400g/m2程度の坪量の原紙を適宜用いることができ、好ましくは坪量30〜200g/m2程度の原紙を用いることができる。原紙の密度についても特に限定されず、0.3〜1.0g/cm3程度、好ましくは0.4〜0.9g/cm3程度である。
(原紙へのセルロースナノファイバーの塗布)
本発明においては、原紙表面にセルロースナノファイバーを塗布することが重要である。原紙へのセルロースナノファイバーの塗布による効果をより向上させるには、セルロースナノファイバーの塗布量が、0.01g/m2以上である必要があり、好ましくは0.1g/m2以上、特に好ましくは0.5g/m2以上である。塗布量の上限は、塗布液の粘度と塗工機の設備能力を考慮すれば、10g/m2程度である。したがって、本発明のセルロースナノファイバーを含有する塗布液の好ましい塗布量は、セルロースナノファイバーの量として、0.01〜10g/m2であり、好ましくは0.1〜10g/m2であり、より好ましくは0.5〜10g/m2である。セルロースナノファイバーをこのような範囲の塗布量で原紙に塗布することにより、高い光沢度と印刷品質とを有する塗工紙を得ることができる。
セルロースナノファイバーを含有する塗布液は、セルロースナノファイバー分散液を水で希釈し、好ましい粘度にすることにより調製することができる。
上記のように調製されたセルロースナノファイバーを含有する塗布液を原紙に塗布する方法としては、2ロールサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレス、ゲートロールコータ、ブレードコータ、ロッドメタリングコータ、スプレーコータ、カーテンコータ等の塗工機によって塗布する方法や、含浸する方法を挙げることができる。特に、ゲートロールコータ、ロッドメタリングサイズプレス、2ロールサイズプレスを用いると、塗工紙の印刷光沢度をより向上させ、光沢度ムラをより低減させることができるから、好ましい。
(オフセット印刷用塗工紙)
本発明では、上記のように原紙にセルロースナノファイバーを塗布した塗工原紙に、顔料及び接着剤を含有する塗工液を塗工して、オフセット印刷用塗工紙を得る。塗工液の塗工方法としては、ブレードコータ、バーコータ、ロールコータ、エアナイフコータ、リバースロールコータ、カーテンコータ、2ロールサイズプレス、ゲートロールコータ、ロッドメタリングサイズプレス、スプレーコータ等を用いることができ、一層もしくは二層以上を原紙上に片面あるいは両面塗工することができる。塗工液の塗工量は、所望の特性に応じて決定されるが、本発明の場合は片面当たり固形分で好ましくは1〜40g/m2、より好ましくは5〜35g/m2、更に好ましくは10〜30g/m2の塗工量とすると、高い光沢度と印刷品質を得ることができるのでよい。
本発明の顔料及び接着剤を含有する塗工層に用いられる顔料としては、発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、単一又は2種類以上の顔料を使用することができ、例えば、カオリン、クレー、デラミネーテッドクレー、エンジニアードカオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料、プラスチックピグメントなどの有機顔料などが挙げられる。
本発明の塗工層に用いられる接着剤としては、発明の目的を損なわない範囲で、単一又は2種類以上の接着剤を使用することができ、例えば、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合体、あるいはポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成接着剤;カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白などの蛋白質類;酸化澱粉、陽性澱粉、尿素燐酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などのエーテル化澱粉、デキストリン等の澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体などの通常用いられている塗工紙用接着剤の1種類以上を適宜選択して使用することができる。使用される接着剤の総量は、印刷適性、塗工適性の点から、顔料100重量部に対して5〜50重量部、より好ましくは10〜30重量部程度の範囲が好ましい。
本発明の塗工液には、必要に応じて、分散剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤等の通常使用される各種助剤を添加しても良い。
湿潤塗工層を乾燥させる方法としては、特に制限はなく、例えば蒸気過熱シリンダ、加熱熱風エアドライヤ、ガスヒータードライヤ、電気ヒータードライヤ、赤外線ヒータードライヤ等各種の方法を単独もしくは併用して用ることができる。
このようにして得られたオフセット印刷用塗工紙は、必要に応じて、スーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトカレンダー、ホットソフトカレンダー等のカレンダー処理を行ってもよい。本発明においては、カレンダー処理を行わなくても良好な被覆性を得ることができ、白紙光沢度、印刷光沢度などが高い、良好な印刷適性を有する印刷用塗工紙を得ることができる。
本発明の印刷用塗工紙は、オフセット印刷に特に好適に用いることができる。
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、勿論これらの例に限定されるものではない。尚、特に断らない限り、例中の部および%はそれぞれ重量部および重量%を示す。尚、塗工液および得られた印刷用塗工紙について以下に示すような評価法に基づいて試験を行った。
〈評価方法〉
(1)白紙光沢度:JIS P 8142に基づいて測定した。
(2)印刷光沢度:ローランドオフセット平判印刷機(4色)に平判印刷用インキ(東洋インキ製造株式会社製ハイユニティーネオM)を用いて、A3サイズの版で印刷速度8000枚/時間で印刷し、得られた印刷物(4色ベタ印刷部)の表面をJIS P 8142に基づいて測定した。
(3)平滑度:JAPAN TAPPI No.5「空気マイクロメーター型試験器による紙及び板紙の平滑度・透気度試験方法」に基づいて測定した。
(4)インキ着肉性:ローランドオフセット平判印刷機(4色)を用いて、A3サイズの版を用いて印刷速度8000枚/時間で印刷し、得られた印刷物(藍単色ベタ印刷部)のインキ着肉性を4段階で目視評価した。
◎:極めて良好、○:良好、△:やや劣る、×:劣る
(5)光沢度ムラ:白紙表面の微小な光沢むらを10人のモニターにより、目視で評価した。
◎:極めて良好、○:良好、△:やや劣る、×:劣る。
(セルロースナノファイバーの製造)
粉末セルロース(日本製紙ケミカル(株)製、粒径24μm)15kg(絶乾)を、TEMPO(Sigma Aldrich社)78g(0.5mol)と臭化ナトリウム755g(7mol)を溶解した水溶液500Lに加え、粉末セルロースが均一に分散するまで攪拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素5%)50Lを添加した後、0.5N塩酸水溶液でpHを10.3に調整し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHは低下するが、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。2時間反応させた後、遠心操作(6000rpm、30分、20℃)で酸化した粉末セルロースを分離し、十分に水洗することで酸化粉末セルロースを得た。酸化粉末セルロースの2%(w/v)スラリーをミキサーにより12,000rpmで15分間処理し、さらに粉末セルローススラリーを超高圧ホモジナイザーにより140MPaの圧力で5回処理したところ、透明なゲル状分散液であるセルロースナノファイバー分散液が得られた。
[実施例1]
製紙用パルプとして化学パルプを100部、填料として軽質炭酸カルシウムを10部含有する原紙(坪量56g/m2、密度0.7g/cm3)表面に、上記のセルロースナノファイバーの製造法により得られた幅3nm、長さ3μm程度のセルロースシングルミクロフィブリルであり、カルボキシル基量が1.2mmol/gで、濃度2%(w/v)の水分散液におけるB型粘度(60rpm、20℃)が1000mPa・sであるセルロースナノファイバーを、2ロールサイズプレスで塗工速度100m/minで、セルロースナノファイバーの両面合計の塗布量が0.5g/m2となるように塗布して塗工原紙を得た。この塗工原紙に、顔料として重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製FMT−90)50部及びカオリン(KaMin社製ジャパングロス)50部、接着剤としてスチレン−ブタジエン共重合型ラテックス10部及びヒドロキシエチルエーテル化澱粉5部から成る塗工液を、片面当たりの塗工量が固形分で12g/m2になるように、ブレード式塗工機で両面に1層ずつ塗工し、紙水分が5%になるように乾燥し、塗工紙を得た。このようにして得られた塗工紙を、スーパーカレンダーにて、線圧100kg/cm、カレンダーニップ数2ニップの条件でカレンダー処理し、印刷用塗工紙を得た。
[実施例2]
セルロースナノファイバーの塗布量を、0.01g/m2に変更した以外は実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
[実施例3]
セルロースナノファイバーの塗布量を、10g/m2に変更した以外は実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
[比較例1]
セルロースナノファイバーを原紙に塗布しなかった以外は実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
[比較例2]
セルロースナノファイバーの代わりに、酸化澱粉(日本コーンスターチ社製SK−20)を塗布した以外は実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
[比較例3]
セルロースナノファイバーの代わりに、カルボキシメチルセルロース(日本製紙ケミカル社製サンローズA10SHG)を塗布した以外は実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
[実施例4]
2ロールサイズプレスでセルロースナノファイバーを塗布するかわりに、ゲートロールコータで塗布した以外は実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
[実施例5]
2ロールサイズプレスでセルロースナノファイバーを塗布するかわりに、ロッドメタリングサイズプレスで塗布した以外は実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
[実施例6]
セルロースナノファイバーが塗布された塗工原紙に、1層目の塗工として、顔料として重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製FMT−90)100部、接着剤としてスチレン−ブタジエン共重合型ラテックス2部及びヒドロキシエチルエーテル化澱粉8部からなる塗工液を片面当たりの塗工量が固形分で6g/m2になるように塗工・乾燥し、その上に2層目の塗工として、顔料として重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製FMT−90)50部及びカオリン(KaMin社製ジャパングロス)50部、接着剤としてスチレン−ブタジエン共重合型ラテックス10部及びヒドロキシエチルエーテル化澱粉5部から成る塗工液を、片面当たりの塗工量が固形分で6g/m2となるように塗工・乾燥し、両面2層ずつの塗工を行った以外は実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
[実施例7]
セルロースナノファイバーの塗布量を、0.001g/m2に変更した以外は実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
[実施例8]
セルロースナノファイバーとして、下記の方法で製造された、濃度2%(w/v)の水分散液におけるB型粘度(60rpm、20℃)が3000mPa・sであるセルロースナノファイバーを用いた以外は実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
針葉樹チップを蒸解、漂白して製造された針葉樹晒クラフトパルプ15kg(絶乾)を、TEMPO(Sigma Aldrich社)78g(0.5mol)と臭化ナトリウム755g(7mol)を溶解した水溶液500Lに加え、パルプが均一に分散するまで攪拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素5%)50Lを添加した後、0.5N塩酸水溶液でpHを10.3に調整し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHは低下するが、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。2時間反応させた後、遠心操作(6000rpm、30分、20℃)で酸化したパルプを分離し、十分に水洗することで酸化パルプを得た。酸化パルプの2%(w/v)スラリーをミキサーにより12,000rpmで15分間処理し、得られたパルプスラリーを超高圧ホモジナイザーにより140MPaの圧力で10回処理し、透明なゲル状分散液であるセルロースナノファイバー分散液を得た。
[実施例9]
塗工液の片面当たりの塗工量を、6g/m2に変更した以外は実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
[比較例4]
塗工原紙として、セルロースナノファイバー塗布していない原紙を用いた以外は実施例9と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
以上の結果を表1に示す。
Figure 2009263853
表1より、原紙表面にセルロースナノファイバーを塗布した実施例1〜8の印刷用塗工紙は、比較例1〜3の塗工紙に比べて、白紙光沢度、印刷光沢度が高く、白紙の微小な光沢度ムラが少なく、インキ着肉性が良好であることがわかる。また、塗工層の塗工量が少ない実施例9においても、同じ塗工量の比較例4に比べて、白紙光沢度、印刷光沢度が高く、白紙の微小な光沢度ムラが少なく、インキ着肉性に優れることがわかる。また、本発明の効果は、塗工層を複数層設けた場合にも得られることが実施例6からわかる。

Claims (4)

  1. 原紙上に顔料及び接着剤を含有する塗工層を有する印刷用塗工紙において、セルロースナノファイバーを表面に塗布した原紙に、少なくとも1層以上の塗工層を設けることを特徴とする、オフセット印刷用塗工紙。
  2. セルロースナノファイバーの塗布量が0.01〜10g/m2であることを特徴とする、請求項1に記載のオフセット印刷用塗工紙。
  3. セルロースナノファイバーが、幅0.5〜20nm、長さ0.5〜15μmのセルロースシングルミクロフィブリルであり、カルボキシル基量が0.6mmol/g以上であり、濃度2%(w/v)の水分散液におけるB型粘度(60rpm、20℃)が10〜2000mPa・sであることを特徴とする、請求項1ないし2に記載のオフセット印刷用塗工紙。
  4. セルロースナノファイバーが、
    (1)N−オキシル化合物、及び
    (2)臭化物、ヨウ化物及びこれらの混合物からなる群から選択される化合物
    の存在下で、セルロース系原料を酸化剤を用いて酸化して酸化されたセルロースを調製し、
    該酸化されたセルロースを湿式微粒化処理してナノファイバー化させたものであることを特徴とする、請求項1〜3に記載のオフセット印刷用塗工紙。
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