次に、本発明を実施するための形態を説明する。
なお、本形態は、本発明を実施するための形態の一例である。本発明の範囲を本形態の範囲に限定する趣旨ではない。また、添付図面は、本形態の理解を助けるためのものである。添付図面の寸法等は、必ずしも正確であるとは限らず、重要な部分を相対的に大きく描く等していることもある。さらに、本明細書において、「%」、あるいは「部」とは、特に断りのない限り、それぞれ「質量%」、「質量部」を意味する。
ティシュペーパー製品の製造設備に関する特開2015−16355号公報(前記特許文献1)の内容や、セルロースナノファイバーについて付言する特開2009−263848号公報、特開2010−242286号公報、特許5544053号公報等の内容、多層紙の製造方法に関する特開2012−197544号公報の内容は、本発明の趣旨に反しない範囲で、本明細書に記載されたものとする。
(ティシュペーパー及びその製造方法)
本形態のティシュペーパーは、2プライ(2層)のティシュペーパーであり、2枚のシートが積層されてなる。また、この2枚のシートの一方、好ましくは両方には、セルロースナノファイバー及び粉体が付与されている。シートにセルロースナノファイバーが付与されていると、シートを構成するパルプ繊維間にセルロースナノファイバーが詰まった状態になる。したがって、ティシュペーパー(シート)の表面性、特に滑らかさが向上する。また、セルロースナノファイバーは保湿性に優れるため、シートにセルロースナノファイバーが付与されていると、ティシュペーパー(シート)の表面性、特にしっとり感が向上する。つまり、シートにセルロースナノファイバーが付与されていると、ティシュペーパー(シート)の滑らかさやしっとり感等の表面性が向上する。結果、保湿系薬液を使用する必要がなくなる。一方、シートに粉体が付与されていると、当該粉体の機能に応じてティシュペーパー(シート)の品質が向上する。
なお、本形態のティシュペーパーは、2プライであるが、1プライとすることや3プライ以上の複数プライとすることもできる。
本形態のティシュペーパーの製造方法においては、図20に示すように、まず、原反ロールRから連続シート(二次連続シート)S3を繰り出す(繰出し工程80)。本形態の繰出し工程80には原反ロールRが2つ備わっており、連続シートS3が同時に2か所から繰り出される。ただし、繰出し工程80に、原反ロールRが1つのみ備わる形態とすることや、3つ以上の複数備わる形態とすることもできる。
繰出し工程80の前段には、図示しないプライ工程を設けることができる。このプライ工程においては、1プライ(1層)の連続シートを積層して2プライ(2層)の積層シートにする。この積層シートを巻き取ることで原反ロールRが得られる。この場合、積層シートを構成する2枚の連続シートをそれぞれ一次連続シートと、原反ロールRから繰り出される連続シートを二次連続シートS3と、それぞれ言うことができる。
本形態の積層シートは2プライであり、2プライのティシュペーパーの原料素材となる。ただし、積層シートを1プライとして1プライのティシュペーパーを得ることや、積層シートを3プライ以上の複数プライとして3プライ以上の複数プライのティシュペーパーを得ることもできる。
原反ロールRから繰り出した連続シートS3には、セルロースナノファイバー水溶液を霧状にして散布、つまり噴霧する(第一散布工程90)。セルロースナノファイバーは原料パルプに添加すること、つまり抄紙段階で付与することも考えられる。しかるに、本形態のように、セルロースナノファイバーをセルロースナノファイバー水溶液の状態とし、このセルロースナノファイバー水溶液を乾燥している連続シートS3に霧状にして散布する方が好ましい。この形態によると、セルロースナノファイバーがシートの表面に集中するようになり、表面性向上効果が発現し易くなる。
セルロースナノファイバー水溶液は、連続シートS3の片面のみに散布することもできるが、両面に散布する方が好ましい。
連続シートS3の両面にセルロースナノファイバー水溶液を散布する場合は、図11に示すように、まず、前段ロールA上に保持された連続シートS3の一方外面に対してセルロースナノファイバー水溶液を噴霧手段81によって散布(付与)する。次に、連続シートS3を他方外面が外側となるように後段ロールBへ受け渡す。そして、この状態で後段ロールB上に保持された連続シートS3の他方外面に対してセルロースナノファイバー水溶液を噴霧手段82によって散布(付与)する。
なお、前段ロールAから後段ロールBへ他方外面が外側となるように連続シートS3を受け渡す方法としては、後述する折畳み機構部例1にて説明するベッドロール71からラップロール73へ裁断シートS4を受け渡す方法を採用することができる。また、各ロールに設けられたバキューム孔を介しての吸引・排気・停止の制御技術、あるいは各ロールに設けられたメカニカルなシートの把持・開放技術を取り入れることができる。
セルロースナノファイバー水溶液を噴霧(霧状にして散布)する方法は、セルロースナノファイバー水溶液を連続シートS3に直接付与する方法であり、非接触式付与方法である。これは、フレキソ印刷、グラビア印刷、ロール塗布などのようなロール等の接触体にセルロースナノファイバー水溶液一度付与し、セルロースナノファイバー水溶液が付与された接触体を連続シートS3の表面に接触させることでセルロースナノファイバー水溶液を付与する方法(接触式付与)と区別される。
セルロースナノファイバー水溶液を噴霧する方法としては、例えばインクジェット印刷、好ましくはノズル式噴霧、より好ましくはローターダンプニング噴霧が存在する。インクジェット印刷は、付与(散布)量や付与面積、付与パターン等の管理精度が高くムラが発生し難いとの利点を有する。また、ノズル式噴霧は、インクジェット印刷の利点に加えて、設備設置コストを抑えることができる、設備設置面積を小面積にすることができるとの利点を有する。さらに、ローターダンプニング噴霧は、以上の利点に加えて、セルロースナノファイバーが水溶液中において均一に分散した状態が維持されるため、噴霧の均一性に優れるとの利点を有する。
なお、連続シートS3の両外面にセルロースナノファイバー水溶液を散布する場合、一方外面及び他方外面の散布方式は必ずしも同一である必要はない。前段ロールAにてスプレー式噴霧、後段ロールBにてインクジェット印刷を採用することなどもできる。ただし、両散布ともにノズル式噴霧、特にローターダンプニング噴霧によるのが好ましい。
(インクジェット印刷)
ここで噴霧手段81,82として、インクジェット印刷機を用いる場合の例を説明する。なお、インクジェット印刷機としては、既知のものも使用することができる。
図12及び図13に示すように、本形態のインクジェット印刷機130は、セルロースナノファイバー水溶液Lの入っているタンク(図示せず)が供給路131を介してインクジェットヘッド132に接続された構造とされ、前記タンクから供給ポンプ(図示せず)によりインクジェットヘッド132にセルロースナノファイバー水溶液Lが供給される。
インクジェットヘッド132の被付与材である連続シートS3と対向する部分には、連続シートS3の幅分に少なくとも対応する形で、複数のノズル孔134を直線的に並んで設けているノズル板133が配置されている。
ノズル孔134から連続シートS3までの間隔は、例えば1〜10mm、好ましくは1〜3mmとする。インクジェット印刷では、各ノズル孔134から噴射される液滴が極少量であるため周辺気流の環境を受けやすいが、間隔を1〜10mm、好ましくは1〜3mmとすれば、その影響は格段に小さい。なお、一般的なフルカラープリンターの紙とノズルの間隔は、1〜1.5mmである。
人の目は輝度の差異やグラディエーションの表現に敏感であるため、4〜6色の減色混合による十分な色彩表現を得るのにはドット位置の精度は数μm以内を求められている。これに対し、セルロースナノファイバー水溶液の散布では、ドット位置の精度は100μm以内で十分均一な品質が得られる。
インクジェットヘッド132内には、噴射ユニット135が各ノズル孔134に対応して複数配置され、各噴射ユニット135は、ノズル孔134から射出するためのセルロースナノファイバー水溶液Lを一時的に貯める流体室136と、この流体室136を挟んでノズル板133と対向する部分に配置された振動板とを有し、振動板に当接して流体室136外に配置され、かつピエゾ素子等により形成される圧電素子(図示せず)を有している。圧電素子には、配線を介して制御装置138が接続されていて、この制御装置138から所定の間隔で圧電素子に電圧が付与される。
タンクからインクジェットヘッド132に供給されたセルロースナノファイバー水溶液Lは、各ノズル孔134に対応して存在する流体室136内に送り込まれるようになっていて、必要に応じて制御装置138が圧電素子に電圧を加えることで、各ノズル孔134から一斉にセルロースナノファイバー水溶液Lが噴射されることになり、これに伴い、連続シートS3の一方の面における幅分全体に亘ってセルロースナノファイバー水溶液Lが散布されことになる。
インクジェットヘッド132内には圧空が送気されるように構成され、噴射ユニット135から噴射された液滴がノズル孔134から圧空にのって連続シートS3に向かうように構成され、紙粉がノズル孔134に詰まるのを防止するように構成されている。
以上では、インクジェットの形式として、オンデマンド方式でピエゾ素子を採用した構造を説明したが、サーマルジェット型を採用しても良い。また、オンデマンド方式の替りに連続して噴射可能なコンティニュアス方式の噴射装置を採用しても良い。
ただし、好ましいのは、電子制御によるオンデマンド方式であり、これによって幅方向、流れ方向における散布量変更が容易となる。
インクジェット印刷を採用してセルロースナノファイバー水溶液Lを散布する場合のより好ましい条件は、ノズル孔134からのインク液滴の粒子速度は5〜20m/秒、1つのインク液滴の容量は5〜50pl/個である。
インク液滴は、流れ方向、幅方向にそれぞれ20〜200μm間隔で散布するのが望ましい。これにより散布量が増減しても実質的に均一な散布が可能である。幅方向のノズル間隔は128〜1080dpi(5〜42ライン/mm、128dpi×1段〜360dpi×3段式)とする。
一例を示せば、加工速度が分速250mの場合、インク液滴の粒子速度10m/秒、1つのインク液滴容量10pl/個、幅方向のノズル間隔1080dpiとして、インクジェット噴射頻度は5×104ドット/秒/ラインである。
(ノズル式噴霧)
次に、噴霧手段81,82として、ノズル式噴霧装置を用いる場合の例を、図14〜16を参照しながら説明する。
ノズル式噴霧装置としては、特に好ましくは、後述するローターダンプニング噴霧装置である。
ノズル式噴霧装置は、ノズルユニットやローターダンプニングユニット等を有する噴霧ユニットを、その噴霧口が連続シートS3に対して対面するようにして、複数を連続シートS3の幅方向に並列し、各ユニットからセルロースナノファイバー水溶液Lをいっせいに噴霧することで連続シートS3にセルロースナノファイバー水溶液Lを散布するものである。
ノズル式噴霧装置における噴霧用ノズルの型式としては、例えば、環状に噴霧する空円錐型ノズル、円形状に噴霧する充円錐型ノズル、正方形状に噴霧する充角錐型、充矩型ノズル、扇型ノズル等が挙げられ、セルロースナノファイバー水溶液Lが連続シートS3の幅方向に対して均一に噴霧されるように、ノズル径、ノズル数、ノズル配列パターン、ノズル配置数、あるいは噴霧距離、噴霧圧力、噴霧角度等を適宜選択して使用することができる。
ノズル式噴霧装置において霧化(霧状に)する方法については、一流体方式、または二流体方式の2種類の方式を選択して使用することができる。このうち一流体方式は、噴霧するセルロースナノファイバー水溶液Lに対して圧搾空気を用いて直接圧力をかけてノズルから霧滴噴射する、又は噴出口付近のノズル側面に開けた微細な穴からノズル内に空気を吸引して霧滴噴射する方式である。また、二流体方式は、ノズル内部で圧搾空気を噴霧する液体と混合、微粒化する内部混合型、ノズル外部で圧搾空気を噴霧する液体と混合、微粒化する外部混合型、微霧化した霧滴粒子を相互に衝突させて、霧滴粒子をさらに均質化・微粒子化する衝突型等の方式が挙げられる。好ましい、ノズル式噴霧装置は、二流体方式である。
二流体方式のノズルユニット例は図14に示すとおりであり、これを参照しながらさらに説明する。
このノズルユニット110は、中心にセルロースナノファイバー水溶液Lの通路110Aが、その周囲にエアー通路110Bが形成され、セルロースナノファイバー水溶液Lの通路110A先端から噴出されたセルロースナノファイバー水溶液Lを、エアー通路110Bから吐出されたエアーにより微霧化するものであり、ほぼ円錐形状にセルロースナノファイバー水溶液Lを噴霧するようにしたものである。110Cは外部の保護ケーシングであり、紙粉などからノズルを保護すると共に、必要によりパージエアー通路110Dを通すエアーによりノズルの清掃を行なうことができるようにしたものである。
ノズル式噴霧によるセルロースナノファイバー水溶液Lの散布では、噴霧したセルロースナノファイバー水溶液Lの跳ね返りや、連続シートS3の表面に随伴する空気などによって液滴が押し流され、液滴が連続シートS3の表面に付着しにくくなることがあるため、例えば、ノズル式噴霧であれば図15に示すように、ノズルユニット110の周囲から、ケーシング110Eに形成したエアー供給路110Fから噴出させるエアー110Gにより、ノズルユニット110から噴霧したセルロースナノファイバー水溶液Lを取り囲むようにしてセルロースナノファイバー水溶液Lが連続シートS3に散布されるようにすることができる。
(ローターダンプニング噴霧)
次に、噴霧手段81,82として、ノズル式噴霧装置のなかでも特に好適なローターダンプニング噴霧装置について説明する。
本形態のローターダンプニング噴霧装置においては、図16及び図17の装置例140で示すように、複数のローターダンプニングユニット141が連続シートS3の幅方向に並列されている。
各ローダーダンプニングユニット141は、噴射部142を有する流体室143が高速に回転され、流体室143内にセルロースナノファイバー水溶液Lを送り出して、遠心力によって流体室143内のセルロースナノファイバー水溶液Lを噴射部142から放出させて微霧滴化する。流体室143の回転数変更によって霧滴粒子径の制御を行い、流体室143への送液量変更によって噴霧液量(散布量)の制御を行なう。ローターダンプニング噴霧は、少ない量の噴霧液量を霧滴の飛散を抑えつつ、連続シートS3の表面に均一に散布することができ、かつ噴霧速度や霧の粒子径等の調整が容易である利点がある。また、本形態のように、セルロースナノファイバー水溶液Lが噴霧の対象である場合は、噴霧する瞬間においてセルロースナノファイバーが水溶液中において均一に分散した状態になっているため、セルロースナノファイバーの均一な散布に極めて資する。なお、セルロースナノファイバーは、保湿系薬液中の各種薬液と異なり、水に溶けず、分散性が大きな問題となり得るため、以上の利点は重要である。
図示例のローターダンプニングユニット141には、噴霧口144の開閉を行うシャッター145が設けられており、シャッター145の開閉により噴霧の有無の制御をすることが可能となっている。
ローターダンプニングユニット141を、連続シートS3の流れ方向に直交するように複数並べ、走行する連続シートS3に対して垂直に設置する場合、噴射孔の間隔は、好ましくは50〜150mmである。
セルロースナノファイバー水溶液Lを連続シートS3の表面に均一に噴霧するためには、霧化されたセルロースナノファイバー水溶液Lの霧滴粒子径はできる限り微小であることが好ましい。しかしながら、霧滴が細かくなりすぎると噴霧した空気の跳ね返りや連続シートS3の表面に随伴する空気などによって霧滴が押し流され、霧滴が連続シートS3の表面に付着しにくくなる。このため、噴霧方式においては噴霧距離、噴霧圧力、噴霧角度、噴霧速度を、二流体方式の場合には、噴霧用のセルロースナノファイバー水溶液Lと圧搾空気の混合比、セルロースナノファイバー水溶液Lの濃度や粘度等を適宜調節し、散布条件に適した粒子径に調節するのが好ましく、更に噴霧時に随伴空気の影響が大きい場合は、随伴空気を除去するための吸引装置や邪魔板(整流板)、上述のフード等の設置、噴霧ノズル先端に高電圧を加えて霧滴粒子を帯電させて、連続シートS3への霧適の付着性を向上させる荷電電極(静電噴霧方式)などを追加するのが好ましい。
霧滴粒子の質量平均粒径は、20〜150μmであることが好ましい。保湿系薬液と異なり、セルロースナノファイバー水溶液中にはセルロースナノファイバーという細長状の水に溶解しない有形物が分散しているため、霧滴粒子の質量平均粒径を上記範囲とするのが好適である。
連続シートS3の表面に散布されずにミストとして浮遊している霧滴粒子は、吸引・回収して再度噴霧することができる。
本明細書において、セルロースナノファイバー(以下、CNFという)とは、パルプ繊維を解繊して得られる微細なセルロース繊維をいい、一般的に繊維幅がナノサイズ(1nm以 上、1000nm以下)のセルロース微細繊維を含むセルロース繊維をいうが、平均繊維幅は、100nm以下の繊維が好ましい。平均繊維幅の算出は、例えば、一定数の数平均、メジアン、モード径(最頻値)などを用いる。
CNFの製造に使用可能なパルプ繊維としては、広葉樹パルプ(LBKP)、針葉樹パルプ(NBKP)等の化学パルプ、晒サーモメカニカルパルプ(BTMP)、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)等の機械パルプ、茶古紙、クラフト封筒盲紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙、更紙古紙等から製造される古紙パルプ、古紙パルプを脱墨処理した脱墨パルプ(DIP)などが挙げられる。これらは、本発明の効果を損なわない限り、単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。さらに、上記パルプ繊維に対してカルボキシメチル化等の化学的処理を施したものを用いても良い。
CNFの製造方法としては、高圧ホモジナイザー法、マイクロフリュイダイザー法、グラインダー磨砕法、ビーズミル凍結粉砕法、超音波解繊法等の機械的手法が挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。また、ナノファイパー化は、TEMP酸化処理、リン酸エステル化処理酸処理等の併用により促進される。
ここで使用したCNFは、NBKP100%のCNFである。またCNFの平均繊維幅(メジアン径)が49nmのCNFを使用した。このCNFは、NBKPをリファイナー処理して粗解繊した後、高圧ホモジナイザーを用いて、4回処理して解繊することにより得られたものである。
ここで、CNFの繊維幅(平均繊維幅)の測定方法について説明する。
まず、固形分濃度0.01〜0.1質量%のセルロースナノファイパーの水分散液100mlをテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターでろ過し、エタノール100mlで1回、t−ブタノール20mlで3回溶媒置換する。
次に、凍結乾燥し、オスミウムコーティングして試料とする。この試料について、構成する繊維の幅に応じて5000倍、10000倍又は30000倍のいずれかの倍率(本実施例では、30000倍の倍率)で電子顕微鏡SEM画像による観察を行う。具体的には、観察画像に二本の対角線を引き、対角線の交点を通過する直線を任意に三本引く。さらに、この三本の直線と交錯する合計100本の繊維の棒を目視で計測する。そして、計測値の中位径(メジアン径)を平均繊維径とする。なお、計測値の中位径に限らず、例えば、数平均径や、モード径(最頻径)を平均繊維径としてもよい。
本明細書において、セルロースナノファイバー水溶液とは、セルロースナノファイバーが水に分散されてなるものを意味する。セルロースナノファイバー水溶液の濃度の調整は、2.0%(質量/容量)のセルロースナノファイバー水溶液を、まず2倍に希釈して1.0%(質量/容量)セルロースナノファイバー水溶液とした後、さらに所望の濃度に希釈する。セルロースナノファイバー水溶液の濃度は、例えば0.1〜0.25%(質量/容量)、好ましくは0.15〜0.25%(質量/容量)、より好ましくは0.2〜0.25%(質量/容量)である。セルロースナノファイバー水溶液の濃度が0.1%(質量/容量)を下回ると、噴霧量(散布量)を増やす場合は連続シートS3の強度が低下するおそれがあり、噴霧量を増やさない場合は連続シートS3の表面性が十分に向上しないおそれがある。他方、セルロースナノファイバー水溶液の濃度が0.25%(質量/容量)を上回ると、セルロースナノファイバーがシート表面に対して均一に付与されず(例えば、一部において過多となる。)、連続シートS3の表面性が均一に向上しないおそれがある。
セルロースナノファイバー水溶液のB型粘度(60rpm、20℃)は、濃度0.2%(質量/容量)の場合において、例えば、300cps以下、好ましくは200cps以下、より好ましくは50cps以下である。このようにセルロースナノファイバー水溶液のB型粘度を低く抑えることで、連続シートS3の表面にセルロースナノファイバーが均一に散布され、連続シートS3の表面性が均一に向上するようになる。
セルロースナノファイバー水溶液の噴霧量(散布量)は、後述する第二散布工程150において散布する粉体がセルロースナノファイバー以外の場合は、濃度0.2%(質量/容量)の場合において、連続シート(S3)100質量部に対して(100質量部当たりに)、例えば10〜25質量部、好ましくは15〜25質量部、より好ましくは20〜25質量部である。セルロースナノファイバー水溶液の噴霧量が10質量部を下回ると、連続シートS3の表面性が十分に向上しないおそれがある。他方、セルロースナノファイバー水溶液の噴霧量が25質量部を上回ると、散布される水分の量も増加することになるため、かえって連続シートS3の表面性が低下し、また、嵩高さが低下するおそれがある。なお、第二散布工程150において散布する粉体がセルロースナノファイバーの場合については、後述する。
セルロースナノファイバー水溶液には、必要により、機能性薬剤として、例えば、柔軟剤、界面活性剤、無機又は有機の微粒子粉体、油性成分等を添加することができる。
柔軟剤や界面活性剤は、ティシュペーパーに柔軟性を与えたり表面を滑らかにしたりする効果がある。界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤等を用いることができる。
無機又は有機の微粒子粉体は、連続シートS3の表面を滑らかな肌触りとする。油性成分は、滑性を高める働きがある。
油性成分としては、例えば、流動パラフィン、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコールを用いることができる。
機能性薬剤としては、例えば、香料、各種天然エキス等のエモリエント剤、ビタミン類、配合成分を安定させる乳化剤、消泡剤、防黴剤、有機酸等の消臭剤等を適宜配合して用いることができる。これらに加えて、例えば、ビタミンC、ビタミンE等の抗酸化剤を用いてもよい。
連続シートS3にセルロースナノファイバー水溶液を散布したら(第一散布工程90)、次に、連続シートS3に粉体を散布する(第二散布工程150)。この散布は、回転する散布ロール151に粉体を付着し、当該粉体を散布ロール151から剥離して散布ロール151の下方を通過する連続シートS3に散布することで行う。以下、図21を参照しつつ、より詳細に説明する。
本形態の第二散布工程150には、粉体散布装置150Xが備わる。この粉体散布装置150Xには、粉体貯留槽154と、散布ロール151と、ドクターブレード155と、一対の仕切りロール152と、3本のコロナ放電線156と、帯電体153とが備わる。
粉体貯留槽154は、内部に粉体を貯留し、下端部は開口する。図示はしないが、粉体貯留槽154には、粉体自動供給装置等によって粉体供給槽から粉体が供給される。
散布ロール151は、粉体貯留槽154の下端開口部分に水平に配置されている。散布ロール151の上側部分は粉体貯留槽154の内部に、下側部分は粉体貯留槽154の外部に位置している。
本形態の散布ロール151は、下側周面が連続シートS3の移動方向と同じとなるように(に沿うように)回転している。散布ロール151の回転速度は、例えば、粉体の散布量や、連続シートS3の移動(搬送)速度等に応じて適宜変化させることができる。
ドクターブレード155は、粉体貯留槽154の下端部に配置されている。ドクターブレード155は、下側が狭まるV字状に配置されている。これにより、ドクターブレード155によって粉体貯留槽154の下端部が絞り込まれた状態になっている。
ドクターブレード155の先端は、散布ロール151の周面に当接している。これにより、ドクターブレード155が、粉体貯留槽154と散布ロール151との間の間隙を塞いだ状態になっている。
一対の仕切りロール152の一方(紙面左側)は、散布ロール151の下方、かつ上流側に位置する。また、一対の仕切りロール152の他方(紙面右側)は、散布ロール151の下方、かつ下流側に位置する。なお、上流側及び下流側は、連続シートS3の移動方向を基準とする。
一対の仕切りロール152は、連続シートS3に散布する粉体が拡散するのを防止する機能を有する。したがって、仕切りロール152は連続シートS3に近付けて配置するのが好ましく、離間距離を、例えば5mm以下とするとよい。
ただし、本工程(第二散布工程)150における粉体の散布は第一散布工程90におけるセルロースナノファイバー水溶液の散布に続くものであり、連続シートS3の表面が湿っている可能性がある。したがって、仕切りロール152を連続シートS3に接触させるのは好ましくなく、離間距離を、例えば2mm以上とするのが好ましい。なお、仕切りロール152が連続シートS3と接触し、仕切りロール152の表面が湿ってしまうと、粉体が仕切りロール152の表面に固着してしまうおそれがある。
なお、上流側の仕切りロール152と連続シートS3との間の間隙においては、連続シートS3の移動に伴って空気が下流側へ流れるため、粉体が拡散するおそれがなく、仕切りロール152を連続シートS3に近付ける必要がないようにも思える。しかるに、上記間隙が広いと、上記間隙から流入する空気によって散布ロール151から連続シートS3に散布される粉体が煽られてしまう。したがって、上流側においても、上記間隙が狭い方が好ましい。
仕切りロール152は粉体が拡散するのを防止する機能を有するが、当該仕切りロール152自体に粉体が付着するという問題も有している。しかるに、本形態においては、仕切りロール152に付着した粉体がコロナ放電線156によって剥離するように構成されている。したがって、仕切りロール152への粉体の付着が進み、粉体が塊となって連続シートS3の上に落ちる(いわゆるボタ落ち)おそれがない。
仕切りロール152の回転速度は、散布ロール151の回転速度よりも高速にするのが好ましい。仕切りロール152を高速回転することで、仕切りロール152の周面に粉体が付着し難くなる。また、コロナ放電によっていったん仕切りロール152から剥離した粉体が、当該仕切りロール152に再付着するおそれがなくなる。
本形態において、上流側(紙面左側)の仕切りロール152は、上側周面が連続シートS3の移動方向と同じとなるように回転している。また、下流側(紙面左側)の仕切りロール152は、上側周面が連続シートS3の移動方向の反対方向となるように回転している。したがって、散布ロール151と一対の仕切りロール152との間の間隙においては、空気が内方(散布ロール151、一対の仕切りロール152、及び連続シートS3によって囲まれる内空間側)へ移動し、粉体が外方へ拡散(前記内空間から流出)するおそれがない。
なお、下流側の仕切りロール152と散布ロール151との間の間隙に関して、当該散布ロール151は空気を外方へ拡散してしまう方向へ回転している。しかるに、散布ロール151に対向する仕切りロール152は高速回転しているのに対し、散布ロール151自体は低速回転であるため、上記間隙部分の空気は全体として内方へ移動する。
3本のコロナ放電線156は、それぞれ散布ロール151、一対の仕切りロール152の下方に、各ロール151,152の周面に近接するように配置されている。コロナ放電線156は、それぞれ近接するロール151,152とで放電スプレーヤを構成する。コロナ放電線156は、それぞれ高電圧が印加されると近接するロール151,152に付着する粉体を剥離させる。各ロール151,152から剥離した粉体は、重力等によって連続シートS3に散布される。
帯電体153は、散布ロール151の連続シートS3を挟んだ反対側に備えられている。散布ロール151から剥離した粉体は、この帯電体153によって連続シートS3に向かって引き寄せられる。したがって、散布ロール151から剥離した粉体が拡散し難くなる。
以上の粉体散布装置150Xにおいては、まず、粉体貯留槽154内において散布ロール151の周面に付着した粉体が、散布ロール151の回転に伴って下方へ、つまり粉体貯留槽154外へ移動する。この際、散布ロール151の周面に付着する粉体は、ドクターブレード155によって所定の層厚とされる。
散布ロール151の回転に伴って下方へ移動した粉体は、コロナ放電線156によって散布ロール151の周面から剥離させられる。散布ロール151の周面から剥離した粉体は、重力、本形態においてはこれとともに帯電体153による引寄せによって、散布ロール151の下方を移動する連続シートS3の上側表面に散布される。
第二散布工程150において散布する粉体としては、例えば、セルロースナノファイバー、ナイロンパウダー、シルクパウダー等の天然繊維や合成繊維から得られる素材、タルク、カオリン等の鉱物を粉砕する等して得られる素材、小麦粉等の植物性素材などを例示することができる。
粉体の散布量は、連続シート(S3)1m2当たり、例えば0.01〜1.5g/m2、好ましくは0.1〜1.0m2、より好ましくは0.8〜1.0m2である。粉体の散布量が0.01g/m2を下回ると、表面改質効果等の粉体を散布することによる効果が十分に発現しないおそれがある。他方、粉体の散布量が1.5g/m2を上回ると、粉体がティシュペーパー(連続シートS3)の表面から脱落したり、使用者にざらざらした触感を与えたりするおそれがある。
なお、本発明の粉体の平均粒子径に関しては、好ましくは8〜20μm、特に好ましくは8〜16μmである。この平均粒子径は、レーザー回析・散乱法によるものである。このレーザー回析・散乱法による測定は、例えば、島津製作所SALD−2000Jを用いて測定可能である。
連続シートS3に粉体を散布したら(第二散布工程150)、次に、粉体が散布された連続シートS3をプレスする(プレス工程86)。連続シートS3をプレスすることによって、粉体が連続シートS3の繊維間に押し込まれ、連続シートS3表面の平滑性が向上する。また、このプレスによって、粉体が連続シートS3表面から脱落するおそれがなくなる。
連続シートS3をプレスする方法としては、例えば、図示例のように、一対のプレスロール間に連続シートS3を通す方法を採用することができる。
一対のプレスロールは、金属ロールであっても、ウレタンゴム等の弾性材を被覆したソフトロールであってもよい。ただし、プレスロール表面への粉体の付着防止という観点からは、ソフトロールを採用する方が好ましい。
連続シートS3をプレスしたら(プレス工程86)、次に、プレスした連続シートS3を折畳み工程(部)85に送る。この折畳み工程85においては、連続シートS3を裁断して裁断シートとし(裁断工程)、更に折り畳み、重層してティシュペーパー束とする。この折畳み工程85の詳細については、後述するティシュペーパー製品の製造方法・製造設備を説明する際に、折畳み部85として詳しく説明する。
セルロースナノファイバー等を付与した裁断シートS3の坪量は、1プライ当たり、例えば10〜20g/m2、好ましくは15〜19g/m2、より好ましくは17〜19g/m2である。裁断シートS3の坪量が10g/m2を下回ると、保湿系薬液の使用を避けたとしてもティシュペーパー(シート)の強度が劣るものとなり、ティシュペーパー使用時の破れや鼻かみ時の裏抜け等が生じるおそれがある。他方、裁断シートS3の坪量が20g/m2を上回ると、ティシュペーパー(シート)のこしが強くなり過ぎて、柔らかさの点で劣るものとなるおそれがある。
本明細書においては、坪量は、JIS P 8124(2011)に準拠して測定した値を意味する。
セルロースナノファイバー等を付与した裁断シートS3(複数プライ、本形態では2プライ)の複数プライでの紙厚は、例えば130〜200μm、好ましくは140〜190μm、より好ましくは150〜170μmである。裁断シートS3の紙厚が130μmを下回ると、保湿系薬液の塗布を避けたとしても強度が劣るものとなり、ティシュペーパー使用時の破れや鼻かみ時の裏抜け等が生じるおそれがある。他方、裁断シートS3の紙厚が200μmを上回ると、ティシュペーパーのこしが強くなり過ぎ、柔らかさの点で劣るものとなるおそれがある。
本明細書においては、紙厚は、JIS P 8111(1998)に準拠して測定した値を意味する。より詳細には、JIS P 8111(1998)の条件下で、ダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて測定する。具体的には、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせ、次いで、プランジャーを上げて試料を試験台の上におき、プランジャーをゆっくりと下ろしそのときのゲージを読み取る。このとき、プランジャーをのせるだけとする。プランジャーの端子は金属製で直径10mmの平面が紙平面に対し垂直に当たるようにし、この紙厚測定時の荷重は70gfである。紙厚は、測定を10回行って得られる平均値とする。
(ティシュペーパー製品及びその製造方法・設備)
次に、ティシュペーパー製品、及びその製造方法・設備について説明する。
図1〜3に、本形態のティシュペーパー製品Xを例示する。ティシュペーパー製品Xは、ティシュペーパー束10が収納箱2に収納されてなる。ティシュペーパー束10は、複数組のティシュペーパー1が折り畳まれ重層されてなる。ティシュペーパー1は、前述した裁断シートであり、本形態においては、2プライ(層)のクレープ紙からなる。
収納箱2は、直六面体形状の箱体である。収納箱2は、カートン箱とも呼ばれる。収納箱2は、ティシュペーパー製品Xの製品外観をなす。
収納箱2の上面2Uには、取出口25又は取出口形成部21が形成されている。使用時においては、取出口25からティシュペーパー1を取り出すと、隣接して積層されている下層のティシュペーパー1の一部が、取出口25から露出する。
収納箱2は、取出口形成部21を有する紙箱20と、取出口形成部21によって囲まれた部位(範囲)21aを紙箱20の内側から覆う樹脂製フィルム22とを有する。
紙箱20は、収納箱2の外郭をなす紙製の箱体である。紙箱20の大きさ、形状、展開形状等は、既知の紙箱と同様とすることができる。
図示例の紙箱20は、一対の平行な長手縁20L,20Lと、これら20L,20Lよりも短い一対の平行な短手縁20S,20Sとで構成される長方形の上面2Uを有する直六面体形状である。
紙箱20は、上面2U、底面(図示せず)、上面2U及び底面を連接する一対の側面2S、上面の長手方向両側縁に連接された上面側端面片23U、底面の長手方向両側縁に連接された底面側端面片23B、及び一対の側面2Sの長手方向両側縁にそれぞれ連接された側面端面片23Sを有する。紙箱20を組上げるにあたっては、側面端面片23Sを箱内面側に折り返し、これに重ねて底面側端面片23B及び上面側端面片23Uを折り曲げ、各片(面)の当接部分をホットメルト接着剤等によって接着する。
紙箱20は、ティシュペーパー束10より若干大きく、ティシュペーパー束10の外形よりも1〜20mm大きい内形とするのが好ましい。具体的には、紙箱20の長手縁を110〜320mm、短手縁を70〜200mm、高さを40〜150mmとするのが好ましい。
紙箱20の素材としては、例えば、バージンパルプ、古紙パルプ等の各種のパルプを主原料とする既知の紙素材を採用することができる。ただし、紙箱20の素材は、好ましくは坪量250〜500g/m2のコートボール紙、より好ましくは坪量350〜400g/m2のコートボール紙である。
図示はしないが、紙箱20の外面には、例えば、花柄、螺旋模様、波模様、ドット模様、亀甲模様、星模様、十字模様、幾何学模様等の模様、文字、図形、絵、記号、これらの組合せによる模様等を付与することができる。これらの模様等は、グラビア印刷等の既知の印刷方法によって付与することができる。
取出口形成部21は、環状のミシン目線からなる(本形態においては、取出口形成部21のことを環状ミシン目線21ともいう。)。この環状ミシン目線21は、既知の方法及びカットタイ比で形成することができる。
取出口形成部21によって囲まれた部位(範囲)21aの具体的形状は、特に限定されない。ただし、部位21aは、図1及び図2に示すように、上面2Uの長手方向に沿う方向を長辺とする略楕円形状又は矩形であるのが好ましい。この形状は、ティシュペーパー1の取出し性や利便性に優れる、既存の製造ラインで製造可能である等の利点を有する。
樹脂製フィルム22は、取出口形成部21によって囲まれた部位(範囲)21aよりも大きい(広い)。樹脂製フィルム22は、例えば、矩形や楕円形である。樹脂製フィルム22は、紙箱20の上面2Uの内面側において、特に取出口形成部21によって囲まれた部位(範囲)21aの切り剥がしに影響がないように、取出口形成部21の外側(外方)で接着されている。
樹脂性フィルム22の素材としては、例えば、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、好ましくはポリエチレンフィルムを使用することができる。
樹脂製フィルム22の厚みは、好ましくは10〜200μmである。厚みが10μm未満であると強度が不足し、ティシュペーパー1の取出し時において裂け、あるいは破断するおそれがある。他方、厚みが200μmを超えると、取り出し難くなるおそれがあり、またコスト高になる。
樹脂製フィルム22には、スリット24が形成されている。このスリット24は、環状ミシン目線21によって囲まれる範囲内に位置している。したがって、図2に示すように、環状ミシン目線21に沿って当該ミシン目線21によって囲まれる部位21aを切り剥がすと、紙箱20の上面2Uに取出口25が形成されるとともに、当該取出口25を介して樹脂製フィルム22及びスリット24が露出する。
紙箱20(収納箱2)に束として収納されているティシュペーパー1は、スリット24を介して取出口25から一枚ずつ取り出すことができる。また、スリット24は、取出口25から露出するティシュペーパー1の一部を支持し、もって当該ティシュペーパー1が紙箱20の内部に落ち込むのを防止する。
図3に示すように、ティシュペーパー束10においては、方形のティシュペーパー1が二つ折りされ、その折返し片の縁1eが上下に隣接するティシュペーパー1の折返し内面に位置するように互い違いに重なり合わされ積層されている。
本形態においては、最上位に位置するティシュペーパー1の折返し片を上方に引き上げると、その直下において隣接する他のティシュペーパー1の折返し片が、摩擦により上方に引きずられて持ち上がる。これにより、当該他のティシュペーパー1の折返し片が、スリット24を介して紙箱20外に露出する。
ティシュペーパー束10を構成するティシュペーパー1の積層組数は、例えば、120〜240組である。
(一次原反ロールの製造)
ティシュペーパー製品Xを製造するにあたっては、図4に示すように、まず、抄紙設備X1によって、一次原反ロール(いわゆるジャンボロール)JRを製造する。以下、具体的に説明する。
抄紙設備X1においては、まず、パルプスラリーに適宜の薬品を添加して予め調整した紙料をヘッドボックス31からワイヤーパート32のワイヤ32W上に供給して湿紙Wを形成する(フォーミング工程)。
次に、この湿紙Wをプレスパート33のフェルト33Fに移送し、対をなす脱水ロール34,35によって挟持して脱水する(脱水工程)。
次に、脱水された湿紙Wをヤンキードライヤー36の表面に付着させて乾燥させ、更にドクターブレード37によって掻き剥がしてクレープを有する乾燥原紙(一次連続シート)S1とする(乾燥工程)。
そして、この乾燥原紙S1を、ワインディングドラム39を有する巻取り手段38によって、乾燥原紙S1の裏面が一次原反ロールJRの軸側に対向するようして(巻取り内面となるようにして)巻き取り、一次原反ロールJRとする(一次原反ロール巻取り工程)。
一次原反ロールJRは、例えば、直径が1000〜5000mm、長さ(幅)が1500〜9200mm、巻き長さが5000〜80000mである。
図示はしないが、一次原反ロール巻取り工程の前段にカレンダー工程を設け、ドクターブレード37によって掻き剥がした乾燥原紙S1の表裏面の平滑化処理をしてもよい。
なお、乾燥原紙S1の表面とは、ヤンキードライヤー36のシリンダと接していた側の面である。また、乾燥原紙S1の裏面とは、ヤンキードライヤー36のシリンダと接していた側の面の反対側の面である。カレンダー工程の有無にもよるが、一般には鏡面のヤンキードライヤーに接していた表面の方が滑らかで表面性に優れる。
一次連続シート(乾燥原紙)S1は、後に2枚積層されてティシュペーパー1に加工されるものであり、1プライ当たりのティシュペーパー1のセルロースナノファイバー付与(散布)前の坪量と同等の坪量となる。したがって、一次連続シートS1の坪量は、例えば10〜25g/m2、好ましくは12〜20g/m2、より好ましくは13〜16g/m2である。坪量が10g/m2未満であると、柔らかさの点においては好ましいが、適正な強度を確保することができなくなるおそれがある。他方、坪量が25g/m2を超えると、硬くなりすぎて、肌触りが悪化する。
一次連続シートS1の紙厚は、1プライ当たりのティシュペーパー1のセルロースナノファイバー付与前の紙厚と同等となる。したがって、一次連続シートS1の紙厚は、例えば80〜250μm、好ましくは100〜200μm、より好ましくは130〜180μmである。
一次連続シートS1のクレープ率は、例えば10〜30%、好ましくは12〜25%、より好ましくは13〜20%である。クレープ率が10%を下回ると、後段での加工時に断紙し易くなり、また、伸びの少ないこしのないティシュペーパー1となるおそれがある。他方、クレープ率が30%を上回ると、後段での加工時にシートの張力コントロールが難しく断紙し易くなり、また、皺が発生して見栄えの悪いティシュペーパー1となるおそれがある。皺の発生は、ティシュペーパー1の折り畳みを困難ならしめることにつながる。
本明細書において、クレープ率は、次式で算出した値である。
クレープ率=((抄紙時のドライヤーの周速−リール周速)/抄紙時のドライヤーの周速)×100
一次連続シートS1は、乾燥引張強度(乾燥紙力)の縦方向が、2プライで例えば200〜700cN/25mm、好ましくは250〜600cN/25mm、より好ましくは300〜600cN/25mmである。他方、横方向が、2プライで例えば100〜300cN/25mm、好ましくは130〜270cN/25mm、より好ましくは150〜250cN/25mmである。乾燥引張強度が低過ぎると、製造時及び使用時の断紙や伸び等のトラブルが発生し易くなる。他方、高過ぎると、使用時にごわごわした肌触りとなる。
本明細書において、乾燥引張強度は、JIS P 8113:2006に準拠して測定した値である。
一次連続シートS1の乾燥紙力は公知の方法によって調整することができる。具体的には、例えば、乾燥紙力増強剤を紙料あるいは湿紙に内添する、紙料のフリーネスを低下させる、例えば30〜40ml低下させる、原料パルプのNBKP配合率を増加、例えば50%以上にする等の既知の手法を適宜組み合わせる方法によることができる。
乾燥紙力剤としては、例えば、澱粉、ポリアクリルアミド、CMC(カルボキシメチルセルロース)、CMCの塩であるカルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース亜鉛等を用いることができる。
乾燥紙力剤を内添する場合、その添加量はパルプスラリーに対する質量比で0.5〜1.0kg/tとすることができる。
湿潤紙力剤としては、例えば、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、尿素樹脂、酸コロイド・メラミン樹脂、熱架橋性付与PAM等を用いることができる。
湿潤紙力剤を内添する場合、その添加量はパルプスラリーに対する質量比で5〜20kg/tとすることができる。
一次原反ロールJR(一次連続シートS1)の原料となる紙料は、繊維原料としてのパルプを主原料とするスラリー(パルプスラリー)に適宜の薬品を添加したものである。
原料パルプは特に限定されず、この種のティシュペーパーに用いられる適宜の原料パルプを選択して使用することができる。具体例としては、例えば、木材パルプ、非木材パルプ、合成パルプ、古紙パルプ等から、より具体的には、砕木パルプ(GP)、ストーングランドウッドパルプ(SGP)、リファイナーグランドウッドパルプ(RGP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ブリーチドケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)等の機械パルプ(MP)、化学的機械パルプ(CGP)、半化学的パルプ(SCP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等のクラフトパルプ(KP)、ソーダパルプ(AP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)等の化学的パルプ(CP)、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)等を原料とする合成パルプ、脱墨パルプ(DIP)、ウエストパルプ(WP)等の古紙パルプ、かすパルプ(TP)、木綿、アマ、麻、黄麻、マニラ麻、ラミー等を原料とするぼろパルプ、わらパルプ、エスパルトパルプ、バガスパルプ、竹パルプ、ケナフパルプ等の茎稈パルプ、靭皮パルプ等の補助パルプ等から、一種又は数種を適宜選択して使用することができる。
ただし、原料パルプとしては、バージンパルプであるNBKPとLBKPとを配合したものがより好ましい。NBKPやLBKPはセルロースナノファイバーとの相性がよく、付与(特に噴霧)後に折畳み工程が続く本形態の製造方法に適する。また、NBKPやLBKPの配合は、得られるティシュペーパー1の風合いの点でも望ましい。
NBKP及びLBKPの配合割合は、好ましくはNBKP:LBKP=20:80〜80:20、より好ましくはNBKP:LBKP=30:70〜60:40である。
本明細書において、NBKP及びLBKPの配合割合は、JIS P 8129:1998に準拠して測定する。
なお、必要により、古紙パルプを配合することもできるが、古紙パルプの配合量はティシュペーパー1が硬くならない範囲に抑えるのが好ましい。
紙料に添加する薬品例としては、例えば、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、柔軟剤、剥離剤、接着剤、苛性ソーダ等のpH調整剤、粘剤、消泡剤、防腐剤、スライムコントロール剤、染料等を例示することができる。
(二次原反ロールの製造)
抄紙設備X1で製造された一次原反ロールJRは、図5に示す二次原反ロールの製造設備X2(以下「プライマシンX2」ともいう。)に移送し、プライ加工(一次連続シートS1の積層加工)を行う。
プライマシンX2は、一次原反ロールJRを2つセット可能である。各一次原反ロールJR,JRから繰り出した一次連続シートS11,S12は、重ね合わせ部(工程)51に送り(供給し)、その連続方向に沿って積層して積層連続シートS2とする。
図示例では、各一次原反ロールJR,JRから繰り出される一次連続シートS11,S12の表面が、それぞれ積層連続シートS2の表面となるよう重ね合わせ部51に送られている。
本明細書において、積層連続シートS2の「表面」とは積層外面を意味する。一次連続シートS11,S12の裏面がそれぞれ積層連続シートS2の表面となるよう構成しても、一次連続シートS11,S12のどちらか一方の裏面が積層連続シートS2の一方表面となり、他方の表面が積層連続シートS2の他方表面となるよう構成してもよい。ただし、一次連続シートS11,S12の表面は、乾燥時にヤンキードライヤー36の表面に接しており、裏面と比較して毛羽立ちが少なく滑らかで肌触りが良い。したがって、一次連続シートS11,S12の表面が積層連続シートS2の両外面を構成するようにするのが望ましい。
プライマシンX2には、重ね合わせ部51の後段に、積層連続シートS2を巻き取って前述した二次原反ロールRとするための巻取り手段56が設けられている。この巻取り手段56は、積層連続シートS2を巻取り手段56に案内しつつ巻き取るための一対のワインディングドラム56A,56Aを有している。これら2つのワインディングドラム56A,56Aが二次原反ロールRの外周面に接して積層連続シートS2を案内しつつ巻き取りを補助する。
プライマシンX2には、巻取り手段56の前段に、スリット手段55が設けられている。このスリット手段55によって積層連続シートS2を連続方向にスリットして、後段のロータリー式インターフォルダX3の加工幅に合わせて適宜の幅とし、その後に巻き取ることで、二次原反ロールRの幅が適宜調整される。具体的には、例えば、積層連続シートS2の連続方向側縁部をカットするようにスリットして、ロータリー式インターフォルダX3で加工するティシュースリット幅の複数倍に40〜100mmのトリム幅を加えた幅に調整することができる。
ロータリー式インターフォルダX3では、オンラインでナイフロールの後でトリム工程することができるので、必ずしも二次原反ロールRの製造過程でスリットを行なう必要はない。むしろ一次原反ロールJRの幅と実質的に同幅の二次原反ロールRを製造し、そのままロータリー式インターフォルダX3の原反ロール支持部80にセットすると、操作、設備が簡易となるので望ましい。一次原反ロールJRの幅が過度に大きい場合など、ロータリー式インターフォルダX3の二次原反ロール支持部80との関係で必要となる場合にのみスリット工程を設ければよい。
二次原反ロールRの幅は、ロータリー式インターフォルダX3を構成するロール幅、すなわち処理可能な幅に応じて適宜の幅とすることができる。一般的には、ティシュペーパー1の幅(150〜250mm)と生産性などから800〜4600mmである。
プライマシンX3において、加工速度は、例えば350〜1100m/分、好ましくは700〜1050m/分、より好ましくは900〜1000m/分である。加工速度が350m/分を下回ると、生産性が不十分になるおそれがある。他方、加工速度が1100m/分を上回ると、安定的に生産するのが困難となるおそれがある。
プライマシンX3においては、重ね合わせ部51から巻取り手段56までの間にカレンダー部52を1つ以上設けて積層連続シートS2をカレンダー加工することができる。
カレンダー部52におけるカレンダーの種別は、特に限定されない。ただし、一次連続シートS11,S12の表面の平滑性向上と紙厚の調整という観点からは、ソフトカレンダー又はチルドカレンダーとすることが好ましい。ソフトカレンダーとは、ウレタンゴム等の弾性材を被覆したロールを用いたカレンダーであり、チルドカレンダーとは金属ロールからなるカレンダーのことである。
カレンダー部52の数は、適宜変更することができる。複数設置すれば加工速度が速くとも十分に平滑化することができるという利点を有する。他方、1つであるとスペースが狭くとも設置可能であるという利点を有する。
2つ以上のカレンダー部52を設置する場合、例えば、水平方向、上下方向、斜め方向等に並設することができる。また、これらの設置方向を組み合わせて配置することもできる。水平方向に並設すると、抱き角度が小さくなるため加工速度を高速とすることができる。上下方向に並設すると、設置スペースを小さくすることができる。
本明細書において、抱き角度とは、ロールの軸中心から見てシート(一次連続シートS11,S12)が接している間(軸と直行する断面の円弧の一部)の角度を意味する。
カレンダー部52におけるカレンダー種別、ニップ線圧、ニップ数なども制御要因として抄紙を行うようにし、また、これらの制御要因を、求めるティシュペーパーの品質、例えば、紙厚や表面性によって適宜変更することが好ましい。
(ロータリー式インターフォルダ)
プライマシンX2にて製造された二次原反ロールRは、図6に示すように、ロータリー式インターフォルダX3の原反ロール支持部80に回動自在に取り付ける。以下、一次連続シートS11,S12が積層された積層連続シートS2を巻取った二次原反ロールRから、二次連続シートS3を繰り出し、この二次連続シートS3を加工する場合を例に説明する。なお、図6においては、2つの二次原反ロールRの一方のみを示し、他方は省略している。
ロータリー式インターフォルダX3においては、原反ロール支持部80に取り付けられた二次原反ロールRから二次連続シートS3を繰り出し(巻き出し)、前述したようにセルロースナノファイバー水溶液の散布(第一散布工程90)、粉体の散布(第二散布工程150)、及びプレス加工(プレス工程86)を行う。そして、その後に、折畳み機構部85にて二次連続シートS3の裁断、折畳みを行ない、ティシュペーパー束10を形成する。
なお、セルロースナノファイバー水溶液の散布(90,150)は、折畳み機構部85にて行うこともでき、この形態によると設備が小型化する。しかるに、本形態においては、得られるティシュペーパー1の品質をより向上するという観点や、設備を簡易化するという観点から、セルロースナノファイバー水溶液の散布(90,150)を、折畳み機構部85の前段で行う。
本形態のロータリー式インターフォルダX3は、高速運転に適するものである。
なお、高速とは、少なくとも150m/分以上の速度で二次連続シートS3が搬送される場合を意味する。ただし、ティシュペーパー製品の生産性と本形態の効果との関係で定めれば、好ましくは250m/分以上、より好ましくは280m/分以上である。二次連続シートS3の搬送速度を150m/分以上とすると、生産性の面でのアドバンテージがある。もっとも、二次連続シートS3の搬送速度が300m/分を超えると、セルロースナノファイバー水溶液の散布等(90,150)や、二次連続シートS3の折畳み等を安定して行うのが難しくなる。
ここで、本形態において好適に採用することができる高速化に適するロータリー式インターフォルダX3の折畳み機構部例を説明する。
(折畳み機構部例1)
ロータリー式インターフォルダX3の折畳み機構部例1を、図7及び図8に示した。
この折畳み機構部例1は、ベッドロール71、ナイフロール72、ラップロール73、フォールディングロール75、プレッシャーロール76の各ロールを一対具備し、さらに好ましくはテールロール74を具備する。なお、図7及び図8において、フォールディングロール75以外のロールについては、一方のみを示し、他方は省略している。
折畳み機構部例1において、各ロールはサーボモータによって駆動する。各ロールの回転速度、周速等は、二次連続シートS3の張力等に合わせて電子制御によって調整する。この調整によってロール間での二次連続シートS3の受け渡しのタイミングを一定に保つことができる。
ベッドロール71は、二次連続シートS3をロール表面に保持しつつ搬送し、後段のロールへと受け渡す。二次連続シートS3を保持している間、ベッドロール71は、二次連続シートS3の先端部を爪等で把持し、あるいは図示例のようにバキューム孔712を介して自身の中心方向に吸引している。
ナイフロール72は、表面にカッター刃72Cを具備する。ナイフロール72は、ベッドロール71と対をなして回転する。ナイフロール72は、そのカッター刃72Cを適当間隔でベッドロール71上を搬送されてくる二次連続シートS3に接触させて、二次連続シートS3をシート幅方向に裁断する(裁断工程)。この裁断によって、ベッドロール71上を搬送されてきた二次連続シートS3は、上流の二次連続シートS3から切り離される。
二次連続シートS3の上記裁断間隔は、ティシュペーパー製品の幅(長さ)に一致する。
裁断された裁断シートS4は、ベッドロール71上に保持されつつ搬送され、両外面同士が入れ替えられて後段のラップロール73に受け渡される。この受け渡しは、例えば、裁断シートS4がラップロール73に近接した時にベッドロール71のバキュームを停止し、ラップロール73において自身の内部方向への吸引を開始する技術等によって実現することができる。もちろん、ロータリー式インターフォルダX3で採用可能なロールからロールへの既知の受け渡し技術も採用できる。
プレッシャーロール76は、二次連続シートS3のカット時に、ベッドロール71とともにベッドロール71上に保持される二次連続シートS3の先端部を挟持するものである。このプレッシャーロール76の存在によって、ベッドロール71における吸引能力を上げつつ二次連続シートS3をカットしても二次連続シートS3がばたつかず、当該二次連続シートS3が順次前端から後端にむかってベッドロール71上に吸引され確実に保持される。また、プレッシャーロール76とベッドロール71とによって二次連続シートS3の先端部が挟持された状態でナイフロール72によるカット(裁断)が行なわれることになるため、カット時に二次連続シートS3が後方に引っ張られるのが防止され、しかも張力変動が効果的に吸収され、カット時における二次連続シートS3のばたつきも防止される。
ラップロール73は、ベッドロール71から受け渡された裁断された裁断シートS4を表面に保持しつつ搬送する。ラップロール73は、裁断シートS4の回転方向前縁部を、ラップロール73より減速して回転する対応するフォールディングロール75に移行させる。この移行(受け渡し)においては、所定位置において裁断シートS4の回転方向前縁部のバキュームの停止、裁断シートS4に対する気体の噴射、裁断シートS4の機械的な把持機構の備付け等の既知の技術が採用される。
図示例のラップロール73は、裁断シートS4の回転方向前縁部、回転方向後縁部、これらの間の2点以上を保持するようにバキューム孔710,710が形成されており、裁断シートS4を確実にラップロール73上の保持することが可能となっている。
図示はしないが、ロータリー式インターフォルダX3のロールにおけるバキューム孔は、周知のとおりロールの軸心方向に沿って、その表面に点在的に配置される。したがって、回転方向前端部、回転方向後端部、これらの間の2点以上を保持するようにバキューム孔が形成されているとは、裁断シートS4の回転方向前端部、回転方向後端部、これらの間の2点以上を保持する各位置に、ロールの軸心方向に沿ってバキューム孔が複数配されていることを意味する。この孔の数は、設計事項である。
必要に応じて具備されるテールロール74は、ラップロール73に近設され、ラップロール73及び後段のフォールディングロール75より小径である。テールロール74には、ラップロール73から、回転方向前縁部がフォールディングロール75に移行された裁断シートS4の回転方向後縁部(テール)が移行され、裁断シートS4の回転方向後縁部を自身の表面に保持する。保持機構は、前述したベッドロール71等と同様である。
ラップロール73及びフォールディングロール75の回転速度の差と、裁断シートS4の回転方向前縁部をフォールディングロール75に移行した後、回転方向後縁部(テール)をテールロール74に移行させることとによって、裁断シートS4にたるみ部(バブルともいう。)Stを一次的に形成する。
ラップロール73からフォールディングロール75への裁断シートS4の回転方向先端側部分の移行は、先の裁断シートS4の回転方向後縁部がラップロール73からたるみ部を形成しつつテールロール74上に移行されている際に行なわれる。
裁断シートS4の回転方向後縁部がテールロール74からフォールディングロール75に移行される際には、その部位(移行部)には後の裁断シートS4の回転方向前縁部が存在している。したがって、テールロール74からフォールディングロール75に完全に裁断シートS4が移行されると、フォールディングロール75上では、先の裁断シートS4の回転方向後縁部の下方(フォールディングロール75側)に、後の裁断シートS4の回転方向前縁部が位置して重なり合った(ラップした)状態となる。
フォールディングロール75は、一部が重なりあった裁断シートS4(シート群)を折り畳むものである。一対のフォールディングロール75は互いに近接され、同様に対となるフォールディングロール75上を移行してくる一部が重なりあいつつ送られてくるシート群(S4)と自身のシート群(S4)とを重ね合わせ、その重ね合わせ部で各シートの縁部を相互に押し合う(引き合う)ようにしてシート群(S4)を折り畳む。
以上のように、本形態のロータリー式インターフォルダX3は、二次連続シートS3を裁断するナイフロール72及びベッドロール71とラップロール73とが分離されていることで、ラップロール73におけるバキューム能力を向上させることができ、更に各ロールをサーボによって個別に速度管理することで高速化が達成されている。
その上、ラップロール73、フォールディングロール75、及びテールロール74によりたるみ部Stを一時的に形成することで、先の裁断シートS4の一部と後の裁断シートS4の一部とを重ね合わせるようにしつつ移行させ、かかる一部が重ね合わされたシート群(S4)をフォールディングロール75で折り畳むようにすることで、きわめて高速な操業が可能とされている。
(折畳み機構部例2)
高速化に適するロータリー式インターフォルダX3の折畳み機構部例2を、図9に示した。この折畳み機構部例2は、ベッドロール71、ナイフロール72、第1プルロール78A、第2プルロール78B、遅延ロール79A、ニップロール79B、ラップロール73A、カウントロール73Bを各1つ有し、更に一対のフォールディングロール75,75を有する。必要に応じて適宜の抑えロール75Fを有する。
折畳み機構部例2は、初段に、二次連続シートS3を受ける第1プルロール78A及び第2プルロール78Bを有する。二次連続シートS3は、第1プルロール78A及び第2プルロール78Bによってニップされつつ、これらのロール78A,78B間を通過する。ロール78A,78B間を通過した二次連続シートS3は、第2プルロール78B及びベッドロール71間にニップされつつ、ベッドロール71上に供給される。
ベッドロール71及びナイフロール72の関係は、前述した折畳み機構部例1と同様である。しかしながら、折畳み機構部例1とは異なり、ベッドロール71及びナイフロール72による二次連続シートS3のカット(裁断)時に、二次連続シートS3の後方(原反ロールR側)が第2プルロール78Aとベッドロール71とのニップ、更に第1プルロール78Aと第2プルロール78Bとのニップにより保持される。これにより、カット時に二次連続シートS3が前方へ引っ張られるのが防止されるとともに、張力変動を効果的に吸収することができ、カット時における二次連続シートS3のばたつきが防止される。
ナイフロール72によってカットされた裁断シートS4は、ベッドロール71の吸引機構により保持されつつ搬送され、更にベッドロール71によって後段のロールへと搬送される。
折畳み機構部例2におけるベッドロール71の直近後段のロールは、ベッドロール71より遅い速度で回転する遅延ロール79Aである。
折畳み機構部例2においては、ベッドロール71と遅延ロール79Aとのニップ位置よりもベッドロール71の進行方向側で所定間隔離れた位置に、ニップロール79Bが存在する。ニップロール79Bと遅延ロール79Aとによって裁断シートS4を挟持可能に位置構成されている。ベッドロール71から遅延ロール79Aにシートを受け渡す際には、まず裁断シートS4の回転方向前縁部がベッドロール71から遅延ロール79Aに受け渡され、回転方向後縁部は一旦ニップロール79Bに受け渡された後、順次遅延ロール79Aに受け渡されるように構成されている。
上記回転方向後縁部がベッドロール71からニップロール79B経由で遅延ロール79Aに受け渡される際、その位置には、後続の裁断シートS4の回転方向前縁部が既にベッドロール71から遅延ロール79Aに受け渡されて存在している。したがって、遅延ロール79A上において、先の裁断シートS4の回転方向後縁部の下方に、後の裁断シートS4の回転方向前縁部が位置して重なり合った(ラップされた)状態になる。
遅延ロール79Aの後段には、ラップされた裁断シートS4が搬送されるラップロール73Aが存在し、重ね合わされた裁断シートS4を進行させ、カウントロール73Bとともに後段のフォールディングロール75,75へと移送する。図示例においては、ラップロール73Aとフォールディングロール75,75との途中に一対の抑えロール75Fが位置し、裁断シートS4がこれらのロール75F間を通過するように構成されている。
フォールディングロール75,75は、同様の構成のものが近接して一対(2つ)配され、一部重ね合わされた裁断シート群(S4)は、当該近接部分に上方から移送される。
本形態のフォールディングロール75,75は、各ロール75,75に裁断シートS4を保持するグリップ機構(摘み機構)とタッカー機構とを具備するシート保持機構を有する。一部重ね合わされて送られてくる裁断シートS4のシート前縁部及びシート後縁部を上記近接部分において一枚おきに、対となるフォールディングロール75,75が交互にシート保持機構により保持し開放しつつ下方に移送する。この各ロール75,75の裁断シートS4の搬送と所定位置におけるシート縁部の挟持・開放により、フォールディングロール75,75間の下方にティシュペーパー束10Cが形成される。
折畳み機構部例2においては、遅延ロール79Aとニップロール79Bとベッドロール71とによる裁断シートS4の一部重ね合わせにより、高速化が達成できる。また、折畳み機構部例1と同様に、カットと折り畳み、裁断シートS4の重ね合わせが別工程となるため、裁断シートS4のばたつきが防止されるとともに、確実に裁断シートS4をロール表面に保持することができる。
折畳み機構部例2においても、各ロールはサーボ機構により制御し、ラップロール73A、ベッドロール71における吸引力をも強くすることができる。また、各ロールにおけるバキューム孔の位置についても、折畳み機構部例1と同様に、適宜裁断シートS4の前端部分、後端部分、それらの中間部分に設けることができるし、望ましい。以上の折畳み機構部例2もロータリー式インターフォルダの高速化を達成ならしめる。
(折畳み機構部例3)
高速化に適するロータリー式インターフォルダX3の折畳み機構部例3を、図10に示した。
折畳み機構部例3は、折畳み機構部例1と同様に、別々の二次連続シートS3を互に折り畳むように構成される。本形態においては、各ロール群が左右一対あるので共通する点については一方のみについて説明する。なお、図10においては、フォールディングロール75以外のロールについては一方のみを示している。
折畳み機構部例3においては、二次連続シートS3が、第1プルロール78Aに搬送され、更に第2プルロール78Bへと引き込まれ、更に第2プルロール78Bからナイフロール72に受け渡される。
ナイフロール72では、二次連続シートS3がバキュームによって吸引保持され、更に両外面が入れ替わり後段の移送ロール71Aに受け渡される。
ナイフロール72には、適宜の間隔でカッター刃72Cが設けられている。移送ロール71Aには、カッター刃72Cに対応する位置に、カッター刃72Cを受ける受け機構71aが設けられている。ナイフロール72から移送ロール71Aへの二次連続シートS3の受渡し時に、カッター刃72Cによって二次連続シートS3が切断(裁断)される。
ナイフロール72から移送ロール71Aへの受渡しは、バキュームの吸引差により行われる。
移送ロール71Aには、裁断シートS4の回転方向前縁部を保持する溝部が設けられており、裁断シートS4の回転方向前縁部は、この溝部に位置されて確実に保持される。
二次連続シートS3の裁断は、ナイフロール72のカッター刃72Cが受け機構71aに入り込むようにして行われる。これにより、裁断シートS4の裁断と保持が行われる。
折畳み機構部例3では、ナイフロール72に設けられた複数のカッター刃72C間に溝部72aが形成されているとともに、移送ロール71Aに突起部71cが形成されており、溝部72aに突起部71cが入り込むことで裁断シートS4に折筋を形成するように構成されている。
次に、裁断シートS4は、移送ロール71Aから両外面が入れ替わりフォールディングロール75へと移送される。この移送は、バキュームによって行われる。移送ロール71Aからフォールディングロールへ75への裁断シートS4の移送については、移送ロール71Aの溝71aに位置されている裁断シートS4の縁部がタッカー機構及びバキュームによってフォールディングロール75に移送される。
フォールディングロール75は周縁に溝部75aを有し、そこにグリップ機構(摘み機構)が形成されている。移送ロール71Aの突起部71cは、フォールディングロール75の溝部75aに入り込むようにロールの大きさや位置関係が形成されている。これにより、移送ロール71Aの突起部71c上に位置するシート部位(ナイフロール72の溝部72aとで折り筋が形成されている部分)がフォールディングロール75の溝部75aに入り込み、そのときにグリップ機構によって当該部位が保持される。
フォールディングロール75は、溝部75aに入り込んだ部位(シート部位)を保持しつつ回転し、所定位置でシート縁部の解放と当該シート部位の解放を行う。この所定位置は、対となるフォールディングロール75との関係で定まる。例えば、対となるフォールディングロール75との最近接位置においてグリップ機構を解放する。そのとき、対となるフォールディングロール75は、シート縁部の解放を行う。このような対となるフォールディングロール75の近接位置における折り部(筋)と縁部との解放を交互に行うことで、対となるフォールディングロール75との近接位置の下方にティシュペーパー束10Cが形成される。
折畳み機構部例3では、折り筋の形成及びシート縁部の把持・開放、折畳みと二次連続シートS3の裁断との非連続性、フォールディングロール75、移送ロール71Aにおける吸引能力の強化の達成により高速化が可能である。また、折畳み機構部例3においても、各ロールはサーボ機構によりその周速を調整する。さらに、各ロールにおけるバキューム孔の位置については、折畳み機構部例1と同様に、適宜シートの前端部分、後端部分、それらの中間部分に設ける。なお、サーボ機構、加工速度等の他の点については、折畳み機構部例1,2と同様である。
以上、高速化に適するロータリー式インターフォルダX3の折畳み機構部例を述べたが、本形態のロータリー式インターフォルダX3は、以上の例に限定されない。本発明の範囲内において可能な限り、上記各例の構成を相互に入れ替える変更をすることができる。
(コンタクトエンボスの付与)
本形態のティシュペーパー製品Xの製造方法においては、シート同士の剥離をし難くするコンタクトエンボス加工を施すことができる。
このコンタクトエンボスは、図示はしないが、ロータリー式インターフォルダの適宜の位置、例えば、ナイフロール72のカット(裁断)の直前においてエンボス凸部を有するエンボスロールと対をなすゴムロール等のエンボス受けロールとを設けて付与することができる。
このコンタクトエンボスにおける具体的なエンボスパターンは特に限定されない。例えば、点状、正方形、長方形、円形、楕円形等の形状の単位エンボス群からなるエンボスを、適宜連続シートの幅方向(カット後はこれに対応する方向)に線状に配置すればよい。
単位エンボス群の配列としては等間隔が考えられるが、千鳥状にするなど、等間隔としなくとも良く、また、コンタクトエンボスは1列に配置してもよいし、2列以上の複数列配置することも考えられる。なお、コンタクトエンボスは、かかるエンボスロールによる機械的に圧力を加えて接合する他に、超音波等の他の手段により接合してもよい。
(裁断工程)
二次原反ロールRの幅、あるいは幅方向縁部がトリムされた二次連続シートS3の幅のセルロースナノファイバー水溶液Lが付与された長尺ティシュペーパー束10Cは、適宜の裁断工程(図示せず)を経てティシュペーパー製品Xの幅に裁断(切断)されてティシュペーパー束10とされる。
(収納工程)
ティシュペーパー束10の収納箱2への収納例について説明する。なお、ティシュペーパー束10の収納箱2への収納方法は、この例に限定されず既知の方法を採用することができる。
裁断工程によって裁断されて形成されたティシュペーパー束10は、図18に示すように、ロータリー式インターフォルダX3の後段の収納設備において収納箱2に収納される。
具体的には、収納箱2の上面2U、底面及びこれらを連接する側面2Sと、各面の長手方向両側縁に連接された底面側端面片23B、側面端面片23S、上面側端面片23Uとを有する収納箱2を、底面側端面片23B、側面端面片23S、上面側端面片23Uが開いた状態、すなわち端面が開口された状態の半完成の状態に組立てるとともに、その開口部に対面するようにインターフォルダX3から送られてくるティシュペーパー束10の裁断面を付き合わせる。
そして付き合わせたならば、ティシュペーパー束10をプッシュロッド等によって収納箱2内へ押し込む。ティシュペーパー束10が収納箱2内に押し込まれたら、側面端面片23Sを箱内面側に折り返した後、これに重ねて上面側端面片23Uと底面側端面片23Bとを折り曲げ、各片の当接部分をホットメルト接着材等により接着する。この接着によって本形態のティシュペーパー製品Xの製造は完了する。
なお、本形態にかかるロータリー式インターフォルダX3により製造したティシュペーパー束10を構成するティシュペーパー1の紙の方向は、図示のとおり、ティシュペーパー1の折畳み部の延在方向に沿って横方向(CD方向)となり、ティシュペーパーの折畳み部の延在方向と直交する方向に沿って縦方向(MD方向)となる。したがって、本形態のティシュペーパー製品Xにおいては、図2に示すように、ティシュペーパー1を収納箱2から引き出す際には、その引き出し方向がティシュペーパーの縦方向(MD方向)と沿うようになっている。
次に、本発明の実施例を説明する。
シートに、セルロースナノファイバーを散布した場合や、保湿系薬液を散布した場合、何も散布しない場合を比較する試験を行った。各種条件は、表1に示すとおりとした。表1には本試験における結果も示した。なお、表中のCNF水溶液は、前述した第一散布工程において散布される。また、粉体は前述した第二散布工程において散布される。さらに、表1中の官能評価(結果)は、最も優れる場合を「7」、最も劣る場合を「1」として、7段階で評価したものである。また、表1中のベタつき感(ローション感)は、シートを使用した際にベタつき感(ローション感)を感じる場合を×、ベタつき感(ローション感)を感じない場合を〇とした。
実施例1〜3はシートに第一散布工程でセルロースナノファイバー(CNF)水溶液を散布し、第二散布工程でナイロンパウダー粉体を散布した場合である。比較例1は前述のような散布を行っていないシートである。比較例2,3は保湿系薬液を散布した場合である。
(考察)
表1から明らかなとおり、シートに第一散布工程でセルロースナノファイバー(CNF)水溶液を散布し、第二散布工程でナイロンパウダー粉体を散布した場合(実施例1〜3)は、シートの滑らかさが保湿系薬液を散布した場合(比較例2,3)と同程度にまで高まった。
また、以上の実施例1〜3の場合は、シートのしっとり感という点でも、保湿系薬液を散布しない場合(比較例1)よりも高まることが分かった。
さらに、保湿系薬液を散布した場合(比較例2,3)は、シートの強度やしっかり感が低下した。このことから、保湿系薬液を散布した場合は、使用時の破れや鼻かみ時の裏抜け等が生じるおそれがあることが分かる。他方、セルロースナノファイバー水溶液を散布した場合(実施例)は、かかる状態にはならなかった。このことから、セルロースナノファイバー水溶液を散布した場合は、使用性にも優れたシートが得られると言える。