JP2001247812A - 水系塗料組成物 - Google Patents

水系塗料組成物

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JP2001247812A
JP2001247812A JP2000056887A JP2000056887A JP2001247812A JP 2001247812 A JP2001247812 A JP 2001247812A JP 2000056887 A JP2000056887 A JP 2000056887A JP 2000056887 A JP2000056887 A JP 2000056887A JP 2001247812 A JP2001247812 A JP 2001247812A
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coating composition
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Hirobumi Ono
博文 小野
Yuji Matsue
雄二 松江
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Asahi Kasei Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 分散安定性が良好であり、適度な流動性と粘
度を有した水系塗料組成物を提供する。 【解決手段】 水または水を主成分とした水性媒体に溶
解もしくは分散した合成樹脂塗料と、平均重合度(D
P)が100以下で、セルロースI型結晶成分の分率が
0.1以下で、セルロースII型結晶成分の分率が 0.
4以下であり、かつ平均粒径が5μm以下であるセルロ
ースとからなる水系塗料組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水系塗料組成物に
関し、更に詳しくは、微細セルロース系素材を含有する
水系塗料組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】ラッカー型塗料は、乾燥性、耐溶剤性、
光沢などが優れていることにより、広範に使用されて
いる。しかしながら、従来のラッカー型塗料は、トルエ
ン、酢酸エチル、メチルエチルケトンなどの有機溶媒を
溶剤として用いるため、塗装作業中に大気中に拡散し
て、人体への安全性が損なわれるとともに、火災、爆発
の危険性もはらむという問題があった。
【0003】これらの危険性のため、ラッカー型塗料に
代わる水性塗料の研究がなされてきた。一般に水性塗料
には、塗膜の光沢、機械的強度に加え、配合、貯蔵時に
凝集分離しない分散安定性と、刷毛などで塗装する場
合、塗る時は延び、塗り終わると刷毛の後を残さず、か
つ垂れを起こさない流動性および適度な粘度とが必要と
される。しかしながら、水性塗料には、塗料の粘度の低
下、貯蔵時の分散安定性の低下、塗装時の塗料の垂れと
いう問題が発生した。そのため流動性制御剤として、従
来一般にはヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプ
ロピルメチルセルロースが用いられてきたが、顔料の分
散性などに問題があった。
【0004】これらの問題を解決するため、特開昭56
−72059号公報にはエーテル化度0.2以上のスル
ホエチルセルロースナトリウム塩を流動性制御剤として
用いた例が開示されている。また、特開昭62−143
979号公報には、カルボキシメチルヒドロキシエチル
セルロースを含有する水性樹脂組成物が開示されてい
る。しかしながら、チキソトロピ−性が不足し、塗装時
の塗料の垂れの問題が残っていた。
【0005】また、特開昭55−80474号公報に
は、叩解度がC.S.F.500cc以下の叩解セルロ
ース繊維を添加してなる水性塗装剤開示されている。し
かし、上記公報に記載の塗装剤は、塗装面に立体模様を
与えることが目的であり、塗料とは異る。また、用いら
れるセルロースは叩解セルロースであり、繊維がフィブ
リル化したもので、1粒子の粒径も大きいものである。
さらに、叩解セルロースの特性上、繊維がフィブリル化
しているため異る粒子のフィブリル間で交絡が起こり、
吹き付け塗装を行う場合ノズルの詰りを発生したり、塗
装面の表面平滑性が失われるという問題も起りやすい。
【0006】出願人らは、さきに積算体積50%の粒径
が0.3〜6μmであり、かつ、3μm以下の粒子の積
算体積割合が25%以上の微粒化セルロース系素材とフ
ィルム形成能を有する樹脂よりなることを特徴とする水
性樹脂塗料組成物を提案した(特開平5−163445
号公報)。しかしながら、垂直面等の塗装作業時に、場
合によって必要なチキソトロピー性が不足する場合があ
ること、透明コーティング用途には使用できないこと、
コーティング面がざらつき、光沢が不足するなど、なお
改善が望まれている。また、自動車用上塗り塗装分野に
おいては、メタリック塗装での鱗片状粒子の配向コント
ロールが可能な水性塗料が望まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、分散安定性
が良好であり、適度な流動性と粘度とを有する水性塗料
である水系塗料組成物を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、WO99
/28350において、微粒化された低結晶性のセルロ
ースを分散媒体中に高度に分散させ、透明性の高い分散
体を得る技術を確立した。このセルロースを水性塗料に
適用することにより、従来問題となっていた分散安定性
が良好であり、スプレー、刷毛等での塗布作業時、チキ
ソトロピー性により粘度が低下して塗布面を適度に展開
することが可能であり、塗布後粘度が上昇して塗布後の
垂れ・流れ落ちがなく、アルミニウム、マイカ、酸化
鉄、ガラスフレーク等の鱗片状無機質顔料の配向性を向
上させることができ、且つ塗料の色調に悪影響をおよぼ
さないという特徴を有した水性塗料となることを見出
し、本発明を完成した。
【0009】すなわち、本発明は、 1. 水または水を主成分とした水性媒体に溶解もしく
は分散した合成樹脂塗料と、平均重合度(DP)が10
0以下で、セルロースI型結晶成分の分率が0.1以下
でセルロースII型結晶成分の分率が0.4以下であり、
かつ平均粒径が5μm以下であるセルロースとを含有す
ることを特徴とする水系塗料組成物、 2. 顔料を含有することを特徴とする1記載の水系塗
料組成物、 3.自動車上塗り塗装用塗料である1または2記載の水
系塗料組成物、である。
【0010】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の
水系塗料組成物は、平均重合度(DP)が100以下
で、セルロースI型結晶成分の分率が0.1以下でセル
ロースII型結晶成分の分率が0.4以下であり、かつ平
均粒径が5μm以下であるセルロースを含有することが
必要である。本発明で用いるセルロースは、後述する製
造方法で得られる分散媒体に分散したセルロース分散
体、特に水分散体として供給することが好ましい。該セ
ルロース分散体は、好適な場合には、水溶性高分子水溶
液に匹敵するほどの透明性を持ち、セルロースが高度に
分散媒体に分散した状態となし得るものである。
【0011】本発明の組成物において必須成分として使
用するセルロースの平均重合度(DP)、セルロースI
及びセルロースII型結晶成分の分率(χIおよび
χII)、平均粒子径は、下記手順で算出した。セルロー
スI型結晶成分の分率(χI)は、セルロース分散体を
乾燥して得られた乾燥セルロース試料を粉状に粉砕し錠
剤に成形し、線源CuKαで反射法で得た広角X線回折
図において、セルロースI型結晶の(110)面ピーク
に帰属される2θ=15.0゜における絶対ピーク強度
0と、この面間隔におけるベースラインからのピーク
強度h1から、下記(1)式によって求められる値を用
いた。同様に、セルロースII型結晶成分の分率(χII
は、乾燥セルロース試料を粉状に粉砕し錠剤に成形し、
線源CuKαで反射法で得た広角X線回折図において、
セルロースII型結晶の(110)面ピークに帰属される
2θ=12.6゜における絶対ピーク強度h0*とこの
面間隔におけるベースラインからのピーク強度h1*か
ら、下記(2)式によって求められる値を用いた。 χI=h1/h0 (1) χII=h1*/h0* (2) 図1に、χIおよびχIIを求める模式図を示す。なお、
セルロース試料は、減圧乾燥法等の手段で乾燥して、乾
燥セルロース試料とした。
【0012】本発明で規定する平均重合度(DP)は、
上述の乾燥セルロース試料をカドキセンに溶解した希薄
セルロース溶液の比粘度をウベローデ型粘度計で測定し
(25℃)、その極限粘度数[η]から下記粘度式(3)
および換算式(4)により算出した値を採用した。 [η]=3.85×10-2×MW0.76 (3) DP=MW/162 (4) 本発明において構成するセルロースの平均粒子径は、レ
ーザ回折式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製、レ
ーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920;下限
検出値は0.02μm)で測定して求められる平均粒子
径である。分散媒体中の粒子間の会合を可能な限り切断
した状態で粒子径を測定するために、次の工程で試料を
調製した。セルロース濃度が約0.5重量%になるよう
に水分散体を水で希釈した後、回転速度15000rp
m以上の能力を持つブレンダーで10分間混合処理を行
い均一な分散液を作る。次いでこの分散液に超音波処理
を30分間施して得られた水分散試料を粒度分布測定装
置のセルに供給し、再び超音波処理(3分間)を行った
後、粒径分布を測定した。
【0013】上述したように、本発明では、平均重合度
(DP)が100以下であり、セルロースI型結晶成分
の分率が 0.1以下で、セルロースII型結晶成分の分
率が0.4以下であって、かつ構成するセルロースの平
均粒径が5μm以下である低重合度、低結晶性のセルロ
ースを用いることに特徴がある。本発明においてセルロ
ース分散体中のセルロースは、平均重合度(DP)が1
00以下であり、好ましくは50以下である。DPが1
00を超えると、分散媒体に高度に分散したセルロース
分散体を得ることが難しい。本発明のセルロースは、水
に不溶なセルロースの分散体であり、DPは20以上で
ある。また、本発明のセルロースは、セルロースI型結
晶成分量(χI)が0.1以下、好ましくは0.06以
下であり、セルロースII型結晶成分量(χII)が0.4
以下、好ましくは0.3以下の低結晶性であることが必
要である。
【0014】本発明のセルロースの結晶成分の分率は
(χc、即ちχIとχIIとの和)は殆ど零に近い値にまで
することができる。χIが0.1を超える又はχII
0.4を超えるセルロースは、結晶性の向上に伴い表面
における水素結合フリーの水酸基密度が減少するため、
これを用いて調製した水系塗料組成物中ではセルロース
間相互作用力が低下し、水系塗料組成物中の顔料等の固
形成分の分散状態をコントロールする能力が極端に下が
り、良好な分散状態の水性塗料を得ることができない。
さらに、本発明は、セルロース分散体において構成する
セルロースの平均粒子径が、上記測定法で5μm以下、
好ましくは2.5μm以下、更に好ましくは1μm以下で
ある。平均粒子径の下限は、本発明が規定する測定法の
検出下限値に近い0.02μm程度にすることができ
る。5μmを超えると、セルロースの表面積が小さくな
り、得られた水系塗料組成物の分散安定性および流動性
が充分でない。
【0015】本発明で言うセルロースの平均粒子径と
は、実質的に本発明で原料として用いるセルロースと分
散媒体のみからなる分散体において、分散媒体中で等方
的に会合して分散しているセルロースの微小ゲル体を、
本発明の平均粒子径の測定法に準じて、超音波等の手段
で可能な限り微細に分散化させた時のセルロースが持つ
「広がり(直径)」の大きさを意味する。こうした取り
扱いが必要なことは、本発明のセルロースが分散媒体中
で存在する形態と、既存の微結晶セルロース(MCC)
や微小フィブリル化セルロース(MFC)等のセルロー
ス微粒子が懸濁液中で存在する形態とは明らかに異なる
ことを示している。
【0016】本発明のセルロースは分散媒体中で、既存
の微細化セルロース、例えばMCCやMFC等とは異な
り、光学顕微鏡による観察では粒子が明確には確認でき
ないほどに、高度に分散した構造を有する。更に、本発
明のセルロースは分散媒体中で、直径約0.01μm
(10nm)の球状粒子が数珠状に連結した繊維状の構
造を有している。本発明の水系塗料組成物中に含まれる
セルロースは、このような微細な構造体が無数に交絡し
て網目状構造体を構成していて、ある有限の大きさで会
合してミクロゲルとして存在していると推定される。
【0017】このような本発明のセルロースは、分散媒
体中で極めて会合性が高く、会合状態の切断度合いによ
って「広がり」の大きさが変化する。例えば、本発明の
セルロースの分散体中の平均粒子径は、長時間静置した
ままの試料を、超音波処理を施さずに測定した場合には
数百μm程度に測定されることもあるのに対し、同じ分
散体を本発明で規定する平均粒子径測定法で測定すれ
ば、平均粒子径は5μm以下に測定される。このこと
は、粒径の小さなセルロースが、分散体中で極めて高度
に会合している証左である。MCCやMFCの分散液で
は、通常、例示したような極端な平均粒子径の変化は観
察されない。
【0018】本発明の水系塗料組成物は、塗料に配合す
る顔料等の固形物が適度な分散状態を保ち、かつこの状
態が安定であり、温度環境の変化に対しても粘度や顔料
等の固形物の分散状態を安定に保持するという特徴を有
する。これは、本発明で用いるセルロースが顔料等の固
形物の沈降防止剤として優れていることによるもので、
塗料の貯蔵時において、セルロースが本来持っている凝
集性によって、顔料等の固形物を高濃度で含有した適度
な凝集構造(ただし柔らかな凝集)が形成され、これが
安定であることによるものと推定される。
【0019】また、本発明で用いるセルロースは、流動
性制御剤としても極めて優れている。このことから、本
発明の水系塗料組成物は、塗布作業時、チキソトロピー
性により粘度が低下して塗布面を適度に展開することが
可能であり、塗布後粘度が上昇して塗布後の垂れ・流れ
落ちがない。さらに、メタリック塗装においては、光沢
感を出す目的で配合するアルミニウム、マイカ、酸化
鉄、ガラスフレーク等の鱗片状無機質顔料の塗装後の配
向性が向上し、きらきらした光沢感を著しく向上させる
ことができる。また、セルロースの粒子が小さいために
塗布面のざらつきがない。該セルロースは透明であるた
め、塗料の色調に悪影響をおよぼさない。
【0020】これは、本発明で用いているセルロースが
分散体中で、極めて微小な粒子サイズと柔軟な粒子形態
(繊維状)を有するため極めて高い表面積を有するこ
と、さらに低結晶性であるため粒子表面の水素結合フリ
ーの水酸基密度が高く、多種な表面あるいは分散物(顔
料など)に対し極めて高い親和性を有することが、上述
した水系塗料組成物の安定性等の優れた特性に大きく寄
与していると推定される。
【0021】本発明でいう水または水を主成分とした水
性媒体に溶解もしくは分散した合成樹脂塗料とは、エマ
ルジョン系塗料、水溶性樹脂系塗料等をいう。本発明で
使用する合成樹脂塗料としては、水性アクリル系樹脂塗
料、水性アクリル系エマルション塗料、水性反応硬化型
アクリル系樹脂塗料、水性アクリルウレタン系塗料、水
性アクリルウレタン系エマルション塗料、水性ウレタン
系塗料、水性ウレタン系エマルション塗料、水性反応硬
化型アクリルウレタン系塗料、水性塩化ビニル系樹脂塗
料、水性塩化ビニル系エマルション塗料、水性酢酸ビニ
ル系樹脂塗料、水性酢酸ビニル系エマルション塗料、水
性エポキシ系樹脂塗料、水性アルキッド系樹脂塗料、水
性ポリアミド系樹脂塗料、水性セルロース系樹脂塗料、
水性焼付アクリル塗料、水性焼付アルキド塗料等の一般
に用いられているものがあげられる。
【0022】本発明でいう水を主成分とした水性媒体と
は水を30重量%以上、好ましくは50重量%以上含有
した溶媒である。水を主成分とした水性媒体に用いられ
る水溶性の有機溶媒としては、メタノール、エタノー
ル、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類
や、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類や、テ
トラヒドロフラン等のエーテル類や、酢酸メチル、酢酸
エチル、酢酸プロピル等のエステル類や、エチレングリ
コールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノ
メチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテ
ルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテ
ル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレ
ングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレ
ングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレン
グリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモ
ノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモ
ノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエ
ーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエ
ーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プ
ロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール
エーテル類等が挙げられ、上記水溶性の有機溶媒の一種
または二種以上を用いることができる。
【0023】また、上記水溶性の有機溶剤と相溶性の良
い有機溶媒であれば、水溶性でなくとも併用できる。例
えば、ペンタノール、ヘキサノール、メチルイソブチル
ケトン、酢酸ブチル等が用いられる。本発明における水
系塗料組成物中のセルロースの量は、水系塗料組成物全
体に対してのセルロース固形分として、0.01重量%
以上、5重量%以下である。0.01重量%未満では、
本発明の効果が得られない。また5重量%を超えると、
水系塗料組成物の粘度が上がりすぎ、取り扱いが難しく
なる。好ましくは、0.5重量%以上、2重量%以下で
ある。
【0024】本発明の水系塗料組成物には、相溶化剤、
密着性付与剤、増粘剤等として、他の水溶性樹脂を併用
することができる。他の水溶性の樹脂としては、水性塗
料、水性バインダー等に通常使用されるものであり、マ
レイン酸−スチレンコポリマー、マレイン酸−アクリル
酸エステル系コポリマー、マレイン酸−メタクリル酸エ
ステルコポリマー、フマル酸スチレンコポリマー、フマ
ル酸−アクリル酸エステル系コポリマー、フマル酸−メ
タクリル酸エステル系コポリマー、(メタ)アクリル酸
−スチレン系コポリマー、(メタ)アクリル酸−(メ
タ)アクリル酸エステル系コポリマー、ポリウレタン樹
脂、ポリアミド樹脂、シェラック、カゼイン、ポリビニ
ルアルコール、およびヒドロキシエチルセルロース、ヒ
ドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロ
ース等のセルロースエーテル類の1種または2種以上の
組み合わせが例としてあげられる。
【0025】また、本発明の水系塗料組成物には顔料を
添加することができる。顔料の具体例として、二酸化チ
タン、亜鉛華、カーボンブラック、べんがら、カドミウ
ムレッド、モリブデンレッド、黄鉛、カドミウムイエロ
ー、クロムエロ−、チタンイエロー、酸化クロム、コバ
ルトグリーン、群青、紺青、コバルトブル ー、プルシ
アンブル−、コバルトブル−、コバルトバイオレット、
アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イ
ソインドリン顔料、ジオキサジン顔料、スレン系顔料、
ペリレン顔料、チオインジゴ顔料、りん片状のアルミニ
ウム、雲母、金属酸化物で表面被覆した雲母、雲母状酸
化鉄、銀メッキガラスフレーク、チタンコートグラファ
イト、金属チタンフレーク、フタロシアニンフレークな
どが挙げられる。これらから選ばれた単独で、もしくは
2種以上併用することができる。
【0026】本発明で用いるセルロースは、顔料を有す
る水系塗料組成物において、前述したように顔料の沈降
防止剤としての優れた効果を発現することができる。特
にアルミニウム、マイカ、酸化鉄、ガラスフレーク等の
鱗片状無機質顔料の場合には、塗装後の配向性が向上
し、きらきらした金属光沢感を著しく向上させることが
できることから好ましく用いられる。本発明の水系塗料
組成物には、更に必要に応じて、フィラー、流動性調整
剤、消泡剤、難燃剤、酸化防止剤、防腐剤およびその他
の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で添加しても
かまわない。上記の添加剤は一般的に塗料用として使用
するものを挙げることができる。
【0027】本発明の水系塗料組成物における必須成分
であるセルロ−スは、まずセルロース分散体として調製
する。好ましい製造例を述べれば、セルロースを50重
量%以上溶解させる能力のある鉱酸(例えば硫酸水溶
液)にセルロースを溶解させて、かかる溶液を水中に再
沈させて得られるセルロース凝集体の酸分散液を加温
し、50〜100℃の温度範囲で加水分解処理を施す。
反応時間は温度によって異なるが、約5分〜180分の
範囲であることが好ましい。この工程により得られた分
散液を濾過、水洗を繰り返すことにより精製する。この
間に希薄なアンモニア水のようなアルカリ水溶液などに
より中和を行ってもかまわない。但し、その際にも中和
後さらに水洗し、中和によって生じる中和塩を洗い流す
のが好ましい。こうして得られたpHの値が2以上、好
ましくは4以上のゲル状物をそのまま、あるいはエタノ
ールなどの有機溶媒と混合あるいは置換した後、微細化
処理を施すことによりセルロースの水分散体あるいは水
性媒体への分散体を調製する。
【0028】この際の微細化処理としては超高圧ホモジ
ナイザーやビーズミルあるいは超音波処理などの適用が
有効である。最後の微細化処理は必要に応じて数回行っ
てもかまわない。この際の原料セルロースとしては木材
パルプや綿等の天然セルロースが好適に使用できるが再
生セルロースであってもかまわない。本発明の水系塗料
組成物は、上記製法で得たセルロースの分散体と合成樹
脂塗料および各種添加剤を水または水性媒体中に投入し
分散処理を行って製造する。分散処理は通常の攪拌機に
よる分散処理のほかにホモジナイザー、超音波分散機、
ビーズミル、遊星ボールミル、超高圧ホモジナイザー、
振動ミル等を用いることができる。
【0029】本発明の水性塗料である水系塗料組成物の
塗工方法は刷毛、バーコーター、ロールコーター、ある
いはスプレー等により基材上に塗工できる。基材として
は、使用する合成樹脂塗料の用途に応じた基材が用いら
れる。例えば金属、木、樹脂、ガラス、セメント、アス
ファルト、土等が挙げられる。以上のごとく、本発明に
より、建築、建材、構造物、船舶、新車、自動車補修、
電気、金属、プラスチック、機械、鉄道、航空機、木
工、家庭用、路面表示、皮革用途等に有用である水性塗
料において、分散安定性が良好であり、流動性と適度な
粘度を有した水性塗料である水系塗料組成物を提供する
ことが可能となる。特に電着塗料、水性中塗り塗料、水
性メタリックベースコート、水性トップコート等の自動
車上塗り塗装用塗料として好ましく用いられる。
【0030】
【発明の実施の形態】以下、実施例によりさらに本発明
を説明する。 <セルロース分散体の調製>木材パルプを65重量%硫
酸へパルプ含率4重量%となるように−5℃で溶解さ
せ、このセルロース/硫酸溶液1に対し重量比で2.7
相当の水中へ、セルロース/硫酸溶液を強撹拌下で注
ぎ、セルロースを析出させた。得られたフレーク状のセ
ルロース分散液を80℃で40分間加水分解した後、濾
過、水洗してペースト状のセルロースの水分散体を得
た。得られたゲル状物中のセルロース濃度は6.0重量
%であった。次いでこのゲル状物をイオン交換水で希釈
してセルロース濃度4.0重量%とした後、ブレンダー
で15,000rpmの回転速度で5分間混合した。次
いでこの希釈液を超高圧ホモジナイザー(Microf
luidizer M−110EH型,みづほ工業
(株)製)にて操作圧力175MPaで4回処理して透
明性の高いゲル状のセルロース分散体を得た。前述の方
法で評価したセルロースの平均粒子径は0.24μm、
セルロース粒子のセルロースI型結晶成分およびセルロ
ースII型成分の分率は、それぞれ、0.03および0.
16であった。このセルロース微粒子の透明な水分散体
をJ1とする。
【0031】<水性塗料としての評価試験> ・粘度、チキソトロピー指数(T.I.) 被試験サンプルを200mlビーカーに180g秤り取
り、20℃の恒温室に1時間以上放置した後、B型粘度
計を用い、2rpmおよび20rpmで粘度を測定し
た。チキソトロピー指数(T.I.)は下記式により求
めた。 チキソトロピー指数(T.I.)= 2rpmの粘度/
20rpmの粘度 ・安定性 35mmφのガラス製サンプル瓶に、被試験サンプルを
50g秤り取る。このサンプルを20℃の恒温室に5日
間放置しその離水量を評価した。離水量は、懸濁層と離
水層の境と離水層の上部液面との距離(mm)で表わし
た。 ・垂れ性 水平のガラス板にプラスチック製のスポイドで、調製し
た被試験サンプルをガラス板上2cmよりゆっくり垂ら
し、5秒後にその板を60°傾けて1分間放置し、スポ
イトで垂らした被試験サンプルの中心から、垂れたその
最下部までの距離(mm)を測定した。測定を25回繰
り返し、その平均値を垂れ性(mm)とした。ガラス板
は、薄層クロマト用の板を用い、台所用合成洗剤で洗浄
後水洗いし、十分乾燥させて使用した。 ・塗装面の表面状態 表面の平滑な厚さが2mm、大きさが15cm×15c
mの鉄板を垂直に立てて固定した。巾5cm刷毛に被試
験サンプルをつけ塗装を1回行い、5秒後水平に戻し8
時間放置して完全に乾燥させた。その表面を手で触り、
塗料が垂れてまたは刷毛の跡が残りそのまま乾燥した事
によりできた凹凸と、添加物の粒径のためまたは顔料等
との相溶性が悪い為発生するざらつきを調べた。凸凹が
あり、ざらつきがあった場合×、凸凹や、ざらつきがわ
ずかに認められる場合△、凸凹やざらつきがなく良好な
場合○とした。
【0032】
【実施例1】水性アクリルエマルション塗料(関西ペイ
ント(株)製、ビニデラックス300、固形分40重量
%)200gに、セルロース水分散体J1(添加後の水
系塗料組成物全体に対してセルロース固形分として1重
量%)を67g加え、ワーリングブレンダー10000
回転で5分間撹拌を行い、水系塗料組成物を調製した。
該水系塗料組成物を調製後、上記方法に従い評価試験を
実施した。評価結果を表1に示した。
【0033】
【実施例2】合成樹脂塗料として、水性アルキッド系樹
脂(大日本インキ化学工業(株)製WATERSOL
CD−520)(固形分40重量%の水溶液)500g
と顔料(酸化チタン、タイペークR820)50gと水
231gとからなる水性アルキッド塗料781gを調製
した(調製後固形分32重量%)。調製した水性アルキ
ッド塗料200gに、セルロース水分散体J1(添加後
の水系塗料組成物全体に対してセルロース固形分として
1重量%)を67g加え、ワーリングブレンダー100
00回転で5分間撹拌を行い、水系塗料組成物を調製し
た。該水系塗料組成物を調製後、前記方法に従い評価試
験を実施した。評価結果を表1に示した。
【0034】
【実施例3】水性ウレタン塗料(関西ペイント(株)
製、アクアレタン)200gに、セルロース水分散体J
1(添加後の水系塗料組成物全体に対してセルロース固
形分として1重量%)を67g加え、ワーリングブレン
ダー10000回転で5分間撹拌を行い、水系塗料組成
物を調製した。該水系塗料組成物を調製後、前記方法に
従い評価試験を実施した。結果を表1に示した。
【0035】
【比較例1】水性アクリルエマルション塗料(関西ペイ
ント(株)製、ビニデラックス300、固形分40重量
%)200gに、水64gを加え、撹拌を行い、塗料組
成物を調製した。該塗料組成物を調製後、前記方法に従
い評価試験を実施した。結果を表1に示した。
【0036】
【比較例2】水性アクリルエマルション塗料(関西ペイ
ント(株)製、ビニデラックス300、固形分40重量
%)200gに、旭化成工業(株)製セオラスクリーム
FP−03(平均粒子径3μmの結晶セルロース10重
量%水ペースト)27g(添加後の塗料組成物全体に対
してセルロース固形分として1重量%)を加え、ワーリ
ングブレンダー10000回転で5分間撹拌を行い、塗
料組成物を調製した。該塗料組成物を調製後、前記方法
に従い評価試験を実施した。結果を表1に示した。
【0037】
【比較例3】合成樹脂塗料として、水性アルキッド系樹
脂(大日本インキ化学工業(株)製WATERSOL
CD−520)(固形分40重量%の水溶液)と顔料
(酸化チタン、タイペークR820)50gと水231
gとからなる水性アルキッド塗料781gを調製した
(調製後固形分32重量%)。塗料組成物を調製後、前
記方法に従い評価試験を実施した。結果を表1に示し
た。
【0038】
【比較例4】水性ウレタン塗料(関西ペイント(株)
製、アクアレタン)を前記方法に従い評価試験を実施し
た。結果を表1に示した。
【0039】
【表1】
【0040】
【発明の効果】顔料等の固形分の分散安定性に優れ、適
度な流動性と粘度を有する水系塗料組成物を提供するこ
とが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】広角X線回折図におけるセルロースI型結晶成
分の分率χIおよびII型結晶成分の分率χIIの求め方の
説明図である。
フロントページの続き Fターム(参考) 4J038 BA021 HA026 HA066 HA146 HA486 HA536 HA546 JB16 KA08 MA02 MA09 MA10 MA14 MA15 NA24 NA26 PA18 PB02 PB05 PB07 PB09 PC02 PC03 PC04 PC06 PC08 PC09

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水または水を主成分とした水性媒体に溶
    解もしくは分散した合成樹脂塗料と、平均重合度(D
    P)が100以下で、セルロースI型結晶成分の分率が
    0.1以下でセルロースII型結晶成分の分率が0.4以
    下であり、かつ平均粒径が5μm以下であるセルロース
    とを含有することを特徴とする水系塗料組成物。
  2. 【請求項2】 顔料を含有することを特徴とする請求項
    1記載の水系塗料組成物。
  3. 【請求項3】 自動車上塗り塗装用塗料である請求項1
    または2記載の水系塗料組成物。
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