JP2009067910A - 水性塗料用添加剤及び、水性塗料組成物 - Google Patents

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Yuji Hayashi
裕司 林
Yukio Yamawaki
幸男 山脇
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Abstract

【課題】水性塗料に優れた塗工性、保存安定性、防食性などを付与できる水性塗料用添加剤及び、該添加物を用いた水性塗料組成物の提供。
【解決手段】長さ(長径)が0.5μm〜1mm、幅(短径)が2nm〜60μm、長さと幅の比(長径/短径)が20〜400の微細繊維状セルロース又は該微細繊維状セルロースと水溶性高分子とからなる微細繊維状セルロース複合体を含み、チクソコトピックファクター(TF値)が4.0以上、25℃と80℃の粘度変化率が50%以下である水性塗料用添加剤。
【選択図】なし

Description

本発明は、長さ(長径)が0.5μm〜1mm、幅(短径)が2nm〜60μm、長さと幅の比(長径/短径)が20〜400の微細繊維状セルロースを含有する水性塗料用添加剤及び、該添加剤を含む水性塗料組成物に関する。
これまで、水性塗料用のレオロジーコントロールであって、天然系のものとしてはカルボキシルメチルセルロースやヒドロキシルエチルセルロースなどの水溶性高分子が用いられてきた。しかし、これらは、粘度の温度変化率が高く、高温保存時での成分の分離や、焼付け時のタレなどの問題があった。そのため、粘度の温度変化率が低く、チクソトロピー性を付与でき、しかも環境に優しい天然形の水性塗料用添加剤が求められていた。
粘度の温度変化率が低く、チクソトロピー性が出来る、天然系の素材としてはセルロースが知られている。セルロースを水性塗料の添加剤として使用する例は、特許文献1、特許文献2、特許文献3など多数知られている。
特許文献1では水性塗料において平均粒子径が300ミクロン以下の球状セルロースを高含量配合した塗料用配合剤が記載されている。しかし、該文献ではセルロースが球状、すなわち、その長さと幅の比は1に近く、全く形状の違うものである。そして、該セルロースは、TF値は4未満であり、低せん断、高せん断に関わらず塗料の粘度を上昇させずに、流動性を改善することを目的に利用されている。一方、本発明は長さと幅の比を大きくすることにより、低せん断力での粘度を上げて貯蔵安定性や塗工性を向上することを目的としており、その構成、目的は全く違うものである。
特許文献2では、セルロース複合体を含有する電着塗料に関して報告している。該文献で用いているセルロース複合体も、その長さと幅の比はおよそ10程度であり、電着塗料のように低粘度でかつチクソトロピー性をそれほど必要としない場合には使用可能であるが、それ以外の水性塗料組成物まで考えた場合、効率的に粘性を与えることは出来ず、同じ濃度で比較した場合の粘度は本発明の1/15程度であった。本発明ではセルロースを細く長く加工し、長さと幅の比を20以上にすることにより、低添加量で高粘度を発現し、より構造粘性を与えられる点に大きな進歩がある。
特許文献3では、平均重合度が100以下のセルロースを含有する水系塗料組成物についての記載がある。しかし、該セルロースも、その長さと幅の比はおよそ10以下であり、同じ濃度で比較した場合、およそ1/10程度の粘度である。すなわち、本発明は該特許よりも低添加量で、同等の粘度を与えることが出来る点で大きく優れている。
また、微細繊維状セルロースを利用した例としては、特許文献4、5が報告されている。該文献では微細繊維状セルロースを多糖類との複合体として食品等の増粘剤として利用している。しかし、該文献には塗料としての使用例、塗料に利用した場合の効果についての記載はなく、塗料組成物においては、樹脂、溶剤、顔料の間での親和性が塗料の粘度などに大きく影響を及ぼすため、微細繊維状セルロースを水性塗料組成物に使用できるかは未知数であり、水性塗料用添加剤として使用するというのは完全な新規の事柄である。
また、チクソコトピックファクター(TF値)が4.0以上、25℃と80℃の粘度変化率が50%以下の微細繊維状セルロースを水性塗料用添加物とすることにより、優れた塗工性、保存安定性、防食性があり、かつ、耐タレ限界膜厚が20μm以上の水性塗料組成物を得られることは、今までのセルロース系添加剤よりも優れており、当業者にとって容易に推定できるものではなかった。
以上のように、ある特有の形状、性質を持った微細繊維状セルロース及び/又はその複合体を水性塗料用添加剤として使用すること、及び、該添加物と水又は水を主成分とした水性媒体に溶解及び/又は分散した合成樹脂、顔料からなる水性塗料組成物は報告されていない。
特開平3−162465号公報 特開2006−111699号公報 特開2001−247812号公報 特開2004−283135号公報 特開2006−290972号公報
本発明は、水性塗料に優れた塗工性、保存安定性、防食性などを付与できる水性塗料用添加剤及び、該添加物を用いた水性塗料組成物の提供を目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、ある特定の形状、性質を持った微細繊維状セルロース及び/又はその複合体を、水性塗料用添加剤として用いることにより、優れた塗工性、保存安定性、防食性などを付与できることを見出し、本発明を成すに至った。
すなわち本発明は下記の通りである。
(1)長さ(長径)が0.5μm〜1mm、幅(短径)が2nm〜60μm、長さと幅の比(長径/短径)が20〜400の微細繊維状セルロースを含み、チクソコトピックファクター(TF値)が4.0以上、25℃と80℃の粘度変化率が50%以下である水性塗料用添加剤。
(2)長さ(長径)が0.5μm〜1mm、幅(短径)が2nm〜60μm、長さと幅の比(長径/短径)が20〜400の微細繊維状セルロースと水溶性高分子とからなる微細繊維状セルロース複合体を含み、チクソコトピックファクター(TF値)が4.0以上、25℃と80℃の粘度変化率が50%以下である水性塗料用添加剤。
(3)(1)又は(2)に記載の水性塗料用添加剤、水又は水を主成分とした水性媒体に溶解及び/又は分散した合成樹脂と、顔料を含み、耐タレ限界膜厚が20μm以上である水性塗料組成物。
本発明により、水性塗料に優れた塗工性、保存安定性、防食性などを付与できる水性塗料用添加剤及び、該添加物を用いた水性塗料組成物が提供できる。
以下に本発明の内容を詳細に説明する。
本発明の微細繊維状セルロースは、植物細胞壁を起源としたセルロース性物質を湿式で粉砕し、短繊維化し、高圧ホモジザイザーを用いて、長さ(長径)が0.5μm〜1mm、より好ましくは0.7μm〜800μm、更に好ましくは1μm〜500μm、最も好ましくは1μm〜100μm、幅(短径)が2nm〜60μm、好ましくは3nm〜50μm、更に好ましくは4nm〜40μm、最も好ましくは5nm〜100nm、長さと幅の比(長径/短径)が20〜400、好ましくは20〜380、更に好ましくは20〜350にまで高度に微細化したセルロース性物質である。このようにセルロース性物質を高度に微細繊維状とすることで、分子同士の絡まりや網目構造が強固となり通常の結晶性セルロースよりも低濃度で高粘度を示し、効率的にチクソトロピーが発現する。加えてザラツキ、ベトツキ感の弱いといった微細繊維状セルロース特有の性質が発現する。
本発明の微細繊維状セルロース複合体は、前記、微細繊維状セルロースと水溶性高分子を配合して得られるものであり、その製造法の例としては、特開2004−41119号公報がある。
本発明で使用される水溶性高分子として、具体的にはアラビアガム、アラビノガラクタン、アルギン酸およびその塩、カードラン、ガッティーガム、カラギーナン、カラヤガム、寒天、キサンタンガム、グアーガム、酵素分解グアーガム、クインスシードガム、ジェランガム、ゼラチン、タマリンド種子ガム、難消化性デキストリン、トラガントガム、ファーセルラン、プルラン、ペクチン、ポリデキストロース、ガラクトマンナン、ローカストビーンガム、水溶性大豆多糖類、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの金属塩、メチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウムなどから選ばれた1種または2種以上の物質が使用される。中でもカルボキシルメチルセルロース・ナトリウムが好ましい。
また、本発明では、微細繊維状セルロースと水溶性高分子に更に水溶性物質を加えて微細繊維状セルロース複合体としても良い。本発明で使用される水溶性物質は、冷水への溶解性が高く粘性をも殆どもたらさず、常温で固体の物質であり、例えば、デキストリン類、水溶性糖類(ブドウ糖、果糖、蔗糖、乳糖、異性化等、キシロース、トレハロース、ラフィノース、カップリングシュガー、パラチノース、ソルボース、還元澱粉糖化飴、マルトース、ラクツロース、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、セロオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖等)、糖アルコール類(キシリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール等)より選ばれた1種または2種以上の物質である。
本発明の水性塗料用添加物の水性塗料組成物への添加量は微細繊維状セルロース含量として0.01〜3質量%が好ましい。より好ましくは0.05〜2質量%、さらに好ましくは0.1〜1質量%である。微細繊維状セルロースの含有量が0.01質量%未満の場合は、十分な粘度、保存安定性付与、チキソトロピー性の付与が出来ない可能性がある。微細繊維状セルロース含量が3質量%を超える場合、粘度が高くなり過ぎるために塗膜性や塗工性、伸びなどが悪化する場合がある。
一方、セルロース複合体と樹脂及び顔料からなる水性塗料組成物も、その用途や塗料の種類によっては、十分に使用可能である。しかし、前述のように通常のセルロース複合体よりも、本発明の微細繊維状セルロース及び/又は複合体は、構造粘性が強く、セルロース複合体では成し得ないチクソトロピー性の付与や塗工性改良、より良い保存安定性などを与え得る。このようにセルロース複合体と微細繊維状セルロース及び/又は複合体は性質が違うため、両者を併用することは、更に保存安定性を付与できるために好ましい。ここでいうセルロース複合体とは、一般に商業的に入手可能なもので良く、例えば、セオラスRC−591、セオラスRC−N591AF、セオラスRC−N81、セオラスRC−N30、セオラスSC−900(旭化成ケミカルズ(株)社製、全て商標)などが挙げられる。
本発明の水性塗料用添加剤を用いた水性塗料組成物は、顔料などの沈降・凝集防止、塗工性の向上、タレ防止などの効果が期待できる。水性塗料組成物としては、建築用塗料、自動車用塗料(上塗り、中塗り、ベースコートが好ましい。)プラスチック用塗料、電着塗料、重防錆用塗料などが挙げられる。
また、本発明の水性塗料組成物は、水性インク組成物を含む。水性インク組成物としては、ボールペンインク、万年筆インク、蛍光ペンインクなどが挙げられる。
本発明の水性塗料用添加剤を用いた水性塗料組成物は、水又は水を主成分とした水性媒体に溶解及び/又は分散した合成樹脂を含んでいることが好ましい。合成樹脂としては、例えば水性アクリル系樹脂、水性反応硬化型アクリル系樹脂、水性ウレタン樹脂、水性アクリルウレタン樹脂、水性塩化ビニル系樹脂、水性酢酸ビニル系樹脂、水性エポキシ系樹脂、水性アルキッド系樹脂、水性ポリアミド系樹脂、水性セルロース系樹脂等の一般に用いられているものが使用できる。また、合成樹脂として合成重合体エマルションを用いることが出来る。
前記、合成樹脂を構成する単量体としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、2−クロル−1、3−ブタジエンなどの脂肪族共役ジエン、スチレン、α─メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのメタクリル酸アルキルエステル類、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸アルキルエステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、また酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ウレタン、エチレンなどが挙げられる。さらにその他共重合可能な単量体として、必要に応じ、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシル、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、アクリルアミド、スチレンスルホン酸ソーダおよびイタコン酸、フマール酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのエチレン系不飽和カルボン酸が使用される。
合成重合体エマルジョンの例としては、スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス、ポリスチレン系重合体ラテックス、ポリブタジェン系重合体ラテックス、アクリロニトリル−ブタジェン系共重合体ラテックス、ポリウレタン系重合体ラテックス、ポリメチルメタクリレート系重合体ラテックス、メチルメタクリレート−ブタジェン系共重合体ラテックス、ポリアクリレート系重合体ラテックス、塩化ビニル系重合体ラテックス、酢酸ビニル系重合体エマルジョン、酢酸ビニル−エチレン系共重合体エマルジョン、ポリエチレンエマルジョン、カルボキシ変性スチレンブタジエン共重合樹脂エマルジョン、アクリル樹脂エマルジョンなどが挙げられる。
本発明の水性塗料用添加剤を用いた水性塗料組成物は、顔料を0.01〜70質量%含んでいることが好ましい。より好ましくは0.05〜60質量%である。顔料としては、具体的にはクロム酸亜鉛、亜鉛丹、リン酸亜鉛等の防錆塗料、酸化チタン、超微粒子酸化チタン、鉛白、塩基性硫酸鉛、塩基性ケイ酸鉛、亜鉛華、硫化亜鉛、三酸化アンチモン、カルシウム複合物等の白色顔料、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナホワイト、シリカ、ケイソウ土、カオリン、タルク、有機ベントナイト、ホワイトカーボン等の体質顔料、カーボンブラック、黄鉛、モリブデン赤、ベンガラ、黄色酸化鉄、酸化チタン、鉄黒、黄土、シェナ、アンバー、緑土、マルスバイオレット、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、カドミボンレッド、カドミボンイエロー、群青、紺青等の着色顔料を使用できる。特に平均粒径100nm以下の超微粒子は、塗膜や筆記部位に透明性を付与できるため、好ましい。
本発明の水性塗料用添加剤を用いた水性塗料組成物がインク組成物である場合に用いる顔料も、その顔料の形状は、板状、球状、鱗片状など特に限定されず、使用できる。例えば、エポカラー、ラジアントカラー、シンロイヒカラー、Keiko −color などの蛍光顔料、ラブコロールカラー、アートパールカラー、RyuDye −w カラーなどの有機顔料、酸化チタン、ベンガラ、黒酸化鉄、チタンブラックなどの無機顔料の少なくとも1 種(各単独又はこれらの2 種以上の混合物、以下同様)が挙げられる。具体的に用いることができる顔料としては、市販のSW −10 シリーズ(シンロイヒ社製、平均粒径1 μm )、NKW −2100E シリーズ(日本蛍光社製、平均粒径0 .4 μm )、NKW −6200E シリーズ(日本蛍光社製、平均粒径0 .4 μm )、エポカラー(日本触媒社製、平均粒径2 〜3 μm )、Ryudye −w カラーシリーズ(大日本インキ社製、平均粒径0 .5 〜1 μm )などが挙げられる。また、インク組成物に対しては、顔料は0.5〜20質量%、より好ましくは5〜10質量%含むことが好ましい。
その他にも必要に応じて、湿潤剤、顔料分散剤、乳化剤、増粘剤、沈降防止剤、皮張り防止剤、たれ防止剤、平坦化剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、硬化促進剤、界面活性剤、耐光性向上剤、保存性向上剤、充填剤、消泡剤、可塑剤、乾燥剤、防腐剤、香料、パール剤、ラメ剤、薬剤等の添加剤を含むことができる。
本発明の水を主成分とした水性媒体とは水を30質量%以上、好ましくは50質量%以上含有した溶媒である。水のみでも構わないので、該上限は100質量%である。水以外の成分としては、アルコール類やケトン類、エーテル類などの水溶性の有機溶媒が好ましいが、それらに限らず様々な有機溶媒を含むことができる。例えば炭化水素類、アルコール類、多価アルコール類、多価アルコール類の誘導体、ケトン類、エステル類、カーボネート類から選ばれる1種または2種以上の組み合わせからなる溶剤が挙げられる。
炭化水素類としては、キシレン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ミネラルスピリット、テレビン油、ソルベンナフサ等が挙げられる。
アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、n−ノニルアルコール、n−デカノール、n−ウンデカノールまたは、これらの異性体、シクロペンタノール、シクロヘキサノール等が挙げられる。好ましくは、アルキル炭素数が1〜6個を有するアルコール類である。
多価アルコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
多価アルコールの誘導体類としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸セロソルブ等が挙げられる。
ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
エステル類としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、乳酸エステル、酪酸エステル、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、及び、ε−カプロラクトン、ε−カプロラクタム等の環状エステル類が挙げられる。
エーテル類としては、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。
カーボネート類としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート等が挙げられる。
本発明の水性塗料用添加剤のチクソコトピックファクター(TF値)は4以上が好ましい。より好ましくは、4.5以上、最も好ましくは5以上である。TF値が4以下では、水性塗料組成物に添加した場合の低せん断時における十分な粘度を与えられず、タレやフクレが生じる可能性がある。上限値に特に制限はなく高い方が好ましいが、通常は10以下である。ここで言うTF値とは回転型B型粘度計を用い、水性塗料用添加剤を、主成分である微細繊維状セルロース及び/又はその複合体が0.5質量%となるように脱イオン水へ分散した液の25℃で3時間静置後の6回転と60回転シェア−における該温度での粘度を測定し、6回転値/60回転値から求めたものである。また、効率良く水性塗料組成物に粘性を与えるためには、該微細繊維状セルロース及び/又はその複合体の0.25質量%、25℃での純水粘度は0.05Pa・s以上であることが好ましい。より好ましくは0.08Pa・s以上、最も好ましくは0.1Pa・s以上である。上限に特に制限はないが、実質的に得られるものは0.2Pa・s以下である。
また、本発明の水性塗料用添加剤は25℃と80℃の粘度変化率が50%以下であることが好ましい。より好ましくは30%以下である。25℃と80℃での粘度変化率が50%よりも大きいと、高温下での貯蔵での分離や、焼付け等の際にムラやタレなどが生じる可能性が高くなるために好ましくない。下限は温度による粘度変化が全くない0%以上である。
更に本発明の水性塗料添加剤を含む水性塗料組成物は耐タレ限界膜厚が20μm以上であることが好ましい。より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは40μm以上である。耐タレ限界膜厚は、被塗物を円周方向に8面まわし、エアレス塗装ガンをレシプロケーターに固定、ガン運行速度を変化させて求めた。20μm未満では、塗工性が非常に悪く、厚塗りに使用が難しくなるため好ましくない。その場合は本発明の水性塗料用添加剤の添加量を増やすなどの方法をとることにより、通常は20μm以上とすることが出来る。また、上限に特に制限はないが、一般的な方法で塗装可能なのは2mm以下である。
本発明の水性塗料用添加剤を含む水性塗料組成物の塗工方法は刷毛、バーコーター、ロールコーター、あるいはスプレー、電着、焼付、筆記等により基材上に塗工又は付着できる。基材としては、使用する合成樹脂塗料の用途に応じた基材が用いられる。例えば紙、金属、木、樹脂、ガラス、セメント、アスファルト、土等が挙げられ、建築、建材、構造物、船舶、自動車、自動車補修、電気、金属、プラスチック、機械、鉄道、航空機、木工、家庭用、路面表示、皮革用途、文房具用途等に水性塗料組成物として用いることが出来る。特に建築用水性塗料、自動車用水性塗料、船舶鋼板用水性塗料、缶用水性塗料、PCM用塗料、電着塗料、焼付塗料、上塗り塗料、有機表面処理剤として好ましく用いられる。
実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、これらによって本発明は何ら制限されるものではない。なお、測定及び評価は以下の通りに行った。
<原料(セルロース性物質)の平均重合度>
ASTM Designation: D 1795−90「Standerd Test Method for Intrinsic Viscosity of Cellulose」に準じて行う。
<原料(セルロース)のα−セルロース含有量>
JIS P8101−1976(「溶解パルプ試験法」5.5 α−セルロース)に準じて行う。
<セルロース繊維(粒子)の形状(長径、短径、長径/短径比)>
セルロース繊維(粒子)のサイズの範囲が広いので、一種類の顕微鏡で全てを観察することは不可能である。そこで、繊維(粒子)の大きさに応じて光学顕微鏡、走査型顕微鏡(中分解能SEM、高分解能SEM)を適宜選択し、観察・測定する。光学顕微鏡を使用する場合は、適当な濃度に調整したサンプル水分散液をスライドガラスにのせ、さらにカバーグラスをのせて観察に供する。また、中分解能SEM(JSM−5510LV、日本電子株式会社製)を使用する場合は、サンプル水分分散液を試料台にのせ、風乾した後、Pt−Pdを約3nm蒸着して観察に供する。
高分解能SEM(S−5000、株式会社日立サイエンスシステムズ製)を使用する場合は、サンプル水分散液を試料台にのせ、風乾した後、Pt−Pdを約1.5nm蒸着して観察に供する。
セルロース繊維(粒子)の長径、短径、長径/短径比は撮影した写真から15本(個)以上を選択し、測定した。繊維はほぼまっすぐから、髪の毛のようにカーブしているものがあったが、糸くずのように丸まっていることはなかった。短径(太さ)は、繊維1本の中でもバラツキはあったが、平均的な値を採用した。高分解能SEMは短径が数nm〜200nm程度の繊維の観察時に使用したが、一本の繊維が長すぎて、一つの視野に収まらなかった。そのため、視野を移動しつつ写真撮影を繰り返し、その後、写真を合成して解析した。
<損失正接(=損失弾性率/貯蔵弾性率)>
(1)0.5%の水分散液となるようにサンプルと水を量り取り、エースホモジナイザー(日本精機株式会社製、AM−T型)で、15000rpmで15分間分散する。
(2)25℃の雰囲気中に3時間静置する。
(3)動的粘弾性測定装置にサンプル液を入れてから5分間静置後、下記の条件で測定し、周波数10rad/sにおける損失正接(tanδ)を求める。
装置 :ARES(100FRTN1型)
(Rheometric Scientific,Inc.製)
ジオメトリー:Double Wall Couette
温度 :25℃
歪み :10%
周波数 :1→100rad/s(約170秒かけて上昇させる)
<0.25%粘度>
(1)固形分濃度が0.25%の水分散液となるようにサンプルと水を量り取り、エクセルオートホモジナイザー(日本精機株式会社製、ED−7型)で、15000rpmで15分間分散する。
(2)25℃の雰囲気中に3時間静置する。
(3)よく攪拌した後、回転粘度計(株式会社トキメック製、B形粘時計、BL形)をセットし、攪拌終了30秒後にローターの回転を開始し、それから30秒後の指示値より粘度を算出する。なお、ローター回転数は60rpmとし、ローターは粘度によって適宜変更する。
<「水中で安定に懸濁する成分」の含有量>
(1)セルロース濃度が0.1%の水分散液となるようにサンプルと水を量り取り、エクセルオートホモジナイザー(日本精機株式会社製、ED−7型)で、15000rpmで15分間分散する。
(2)サンプル液20gを遠沈管に入れ、遠心分離機にて1000Gで5分間遠心分離する。
(3)上層の液体部分を取り除き、沈降成分の重量(a)を測定する。
(4)次いで、沈降成分を絶乾し、固形分の重量(b)を測定する。
(5)下記の式を用いて「水中で安定に懸濁する成分」の含有量(c)を算出する。
c=5000×(k1+k2) [%]
サンプルが水溶性高分子(および親水性物質)を含まない場合は、k1およびk2は下記の式を用いて算出して使用する。
k1=0.02−b
k2={k1×(a−b)}/(19.98−a+b)
また、サンプルが水溶性高分子(および親水性物質)を含む場合は、k1およびk2は下記の式を用いて使用する。
k1=0.02−b+s2
k2=k1×w2/w1
セルロース/水溶性高分子(親水性物質)=f/d [配合比率]
w1=19.98−a+b−0.02×d/f
w2=a−b
s2=0.02×d×w2/{f×(w1+W2)}
「水中で安定に懸濁する成分」の含有量が非常に多い場合は、沈降成分の重量が小さな値となるので、上記の方法では測定精度が低くなってしまう。その場合は(3)以降の手順を以下のようにして行う。
(3’)上層の液体部分を取得し、重量(a’)を測定する。
(4’)次いで、上層部分を絶乾し、固形分の重量(b’)を測定する。
(5’)下記の式を用いて「水中で安定に懸濁する成分」の含有量(c)を算出する。
c=5000×(k1+k2) [%]
サンプルが水溶性高分子(および親水性物質)を含まない場合は、k1およびk2は下記の式を用いて算出して使用する。
k1=b’
k2=k1×(19.98−a’+b’)/(a’−b’)
また、サンプルが親水性高分子(および親水性物質)を含む場合、k1およびk2は下記の式を用いて算出して使用する。
k1=b’−s2×w1/w2
k2=k1×w2/w1
セルロース/親水性物質(水溶性物質)=f/d [配合比率]
w1=a’―b’
w2=19.98−a’+b’―0.02×d/f
s2=0.02×d×w2/{f×(w1+w2)}
もし、(3’)の操作で上層の液体部分と沈降成分の境界が明瞭ではなく分離が難しい場合は全体の上部1/3量(約7g)を取得し、以降は(4’)、(5’)に従って操作する。
<微細繊維状セルロース及びその複合体の結晶化度>
JIS K 0131−1996(「X線回折分析通則」)に規定されるX線解析装置で得られたX線回折図の回折強度値から、Segal法により算出したもので次式によって定義される。
結晶化度(%)={(Ic−Ia)/Ic}×100
ここで、Ic:X線回折図の回折角2θ=22.5度での回折強度、Ia:同じく回折角2θ=18.5度付近のベースライン強度(極小値強度)である。
<塗料組成物の評価方法>
(貯蔵安定性)
試作サンプル50gをガラス製サンプル瓶に秤り取り、このサンプルを25℃、50℃の恒温室に7日間放置し、その離水率(%)を評価した。離水率はサンプル全量の上部液面から底面までの距離(mm)に対する懸濁層の上部液面から底面までの距離(mm)の割合を示したものである。
○:離水率 5%未満 △:離水率 5%以上10%未満 ×:10%以上
(塗工性)
水性塗料組成物を刷毛を用いて、みがき鋼板に塗装した場合の、均一性、タレを官能評価した。
○:良好である △:ムラが出来る、伸びがわるい ×:完全にかすれる
(防錆性)
水性塗料組成物を撹拌させた浴槽中で、リン亜鉛処理を施しクロスカットした鋼板の塗膜にJISZ2371に準拠し塩水噴霧試験を1000時間行い、錆の発生の程度を確認した。
○:良好である。 △:やや良好である。 ×:劣る。
(防食性)
試作した塗料をみがき鋼板に隙間100μmのフィルムアプリケーターで塗布し、20℃、65%RHの雰囲気で10日間乾燥して各試験塗板を作成した。この試験塗板を塗面上にカッターでクロスカットキズを入れてJIS―Z―2371(orJIS―K5600 )の塩水噴霧試験に192時間(1000hr)放置し、錆の発生状況を観察した。
○:錆の発生なし △:部分的に錆が発生 ×:全面的に錆が発生
(耐候性試験)
JIS K5600に準じて、耐候性を1000時間実施した。試験後には、下記の評価試験を行った。
A)鉛筆硬度試験
JIS K5600に準じて、塗膜面に鉛筆を押し当てて、塗膜の硬度を調査した。
○:試験前と比較して、硬度に変化が認められない。
△:試験前と比較して、硬度に1ランクの変化が認められる。
×:試験前と比較して、硬度に2ランク以上の変化が認められる。
*1ランクとは例えば硬度がHから2Hに変化することである。
B)付着力試験
ASTM D−3359に準じて、塗膜に碁盤目を入れ粘着テープを密着させ直ぐ剥がしたときの付着力を調査した。
○:剥離が認められない。
△:部分的に剥離が認められる。
×:全面的に剥離が認められる。
また、水性塗料組成物がインキ組成物である場合の評価は次のように行った。
〔経時安定性の評価方法〕
得られた各インキを蓋付き透明容器(30ml)に収容して、50℃の恒温槽に保管して2週間放置後、静かに容器を取り出して、下記評価基準により経時安定性を評価した。
(評価基準)
◎:沈降分離が見られず、初期と変化が見られない。
○:若干沈降分離が見られるが、初期とほとんど変化が見られない。
△:沈降分離により上澄が確認されるが、嵩高い沈降となっている。
×:沈降分離により完全に上澄が確認でき、完全に沈降している。
〔粘度経時安定性の評価方法〕
上記経時安定性の評価方法に用いた試料を室温(25℃)下に3時間以上放置して室温(25℃)まで冷却し、B型粘度計を用いて25℃における60rpmの粘度を測定し、下記評価基準で評価した。なお、初期インキ粘度も同様(25℃、60rpm)にして測定したものである。
(評価基準)
◎:初期からの粘度変化が±2 %未満
○:初期からの粘度変化が±2 %以上〜5 %未満
△:初期からの粘度変化が±5 %以上〜10 %未満
×:初期からの粘度変化が±10 %以上
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に例示する。
[製造例1]
<微細繊維状セルロースAの調製>
市販バガスパルプ(平均重合度=1320、α−セルロース含有量=77質量%)を、6×16mm角の矩形に裁断した。次いでバガスパルプ濃度が3質量%となるように、それぞれの水を量り取り、家庭用ミキサーで5分間攪拌した。この水分散液を砥石回転型粉砕機(「セレンディピター」MKCA−6−3型、グラインダー:MKE6−46、グラインダー回転数1800rpm)で3回処理した。得られた水分散液の沈降体積は100%であった。
次いで得られた水分散液を水で希釈して2質量%にし、高圧ホモジナイザー(「マイクロフルイダイザー」M−140K型、処理圧力110MPa)で6パスし、微細繊維状セルロースAの水分散液を得た。結晶化度は73%以上であった。0.25%の粘度は0.12Pa・s、TF値は4.1であった。光学顕微鏡および中分解能SEMで観察したところ、長径が10〜500μm、短径が1〜25μm、長径/短径比が20〜190の微細繊維状セルロースが観察された。損失正接は0.32であった。「水中で安定に懸濁する成分」は99質量%であった。この微細繊維状セルロースAの25℃と80℃での粘度変化率は26%であった。
<微細繊維状セルロース複合体Aの調製>
前記操作で得た微細繊維状セルロースAの水分散液に、固形分で微細繊維状セルロース:カルボキシメチルセルロース・ナトリウム:デキストリン=70:18:12(質量部)となるように、カルボキシメチルセルロース・ナトリウムとデキストリンを添加し、攪拌型ホモジナイザーで、15分間攪拌・混合した。これをドラムドライヤーにて乾燥し、スクレーパーで掻き取り、得られたものをカッターミル(不二パウダル株式会社製「フラッシュミル」)で、目開き2mmの篩をほぼ全通する程度に粉砕し微細繊維状セルロース複合体Aを得た。
微細繊維状セルロース複合体Aの結晶化度は66%以上、0.25%の粘度は0.14Pa・s、TF値は5.3、損失正接は0.38、「水中で安定に懸濁する成分」は98質量%であった。「水中で安定に懸濁する成分」を高分解能SEMで観察したところ、長径が1〜17μm、短径が10〜350nm、長径/短径比が20〜250のきわめて微細な繊維状セルロースが観察された。この微細繊維状セルロース複合体Aの25℃と80℃での粘度変化率は31%であった。
[製造例2]
<微細繊維状セルロースBの調製>
市販麦わらパルプ(平均重合度=930、α−セルロース含有量=68質量%)を、6×12mm角の矩形に裁断し、麦わらパルプが4質量%となるように水を加え、家庭用ミキサーで5分間撹拌した。これを高速回転型ホモジナイザー(ヤマト科学、「ULTRA−DISPERSER」)で1時間分散した。この水分散液を砥石回転型粉砕機(グラインダー回転数:1800rpm)で処理した。処理回数は2回で、グラインダークリアランスを60μm→40μmと変えて処理した。次いで得られた水分散液を水で希釈して2質量%にし、高圧ホモジナイザー(処理圧力:175MPa)で8パスし、微細繊維状セルロースBのスラリーを得た。結晶化度は74%以上であった。TF値は4.6、0.25%粘度は0.06Pa・s、損失正接は0.43であった。「水中で安定に懸濁する成分」の含有量は89質量%だった。それを高分解能SEMで観察したところ、長径が1〜20μm、短径が6〜300nm、長径/短径比が30〜350のきわめて微細な繊維状のセルロースが観察された。この微細繊維状セルロースBの25℃と80℃での粘度変化率は24%であった。
<微細繊維状セルロース複合体Bの調製>
前記操作で得られた微細繊維状セルロースBに、微細な繊維状のセルロースとカルボキシメチルセルロースナトリウムが、固形分として85:15の質量比となるように、カルボキシメチルセルロースナトリウムを添加し、攪拌型ホモジナイザーで、15分間撹拌・混合した。次いでドラムドライヤーにて乾燥し、スクレーパーで掻き取った。これをカッターミル(不二パウダル株式会社製)で、目開き1mmの篩をほぼ全通する程度に粉砕し、微細繊維状セルロース複合体Bを得た。
微細繊維状セルロース複合体Bの結晶化度は68%以上、TF値は6.8、損失正接は0.51、0.25%の粘度は0.09Pa・s、であり、「水中で安定に懸濁する成分」の含有量は75質量%だった。それを高分解能SEMで観察したところ、長径が1〜20μm、短径が10〜300nm、長径/短径比が30〜350のきわめて微細な繊維状のセルロースが観察された。この微細繊維状セルロース複合体Bの25℃と80℃での粘度変化率は25%であった。
製造例1、2で得られた微細繊維状セルロースおよびその複合体を用いて水性塗料組成物を作製し、評価を実施した。
<水性塗料組成物の調整>
[実施例1〜4;比較例1]
下記の配合組成で、実施例1、2では微細繊維状セルロースA(TF値;4.1、粘度変化率は26%)、その複合体A(TF値;5.3、粘度変化率は31%)をそれぞれ0.3質量%、実施例3、4では微細繊維状セルロースB(TF値;4.6、粘度変化率は24%)、その複合体B(TF値;6.8、粘度変化率は25%)をそれぞれ0.3質量%、比較例1ではカルボキシルメチルセルロースナトリウムを0.3質量%含む水性塗料組成物を調製した。
実施例1〜4の水性塗料組成物の耐タレ限界膜厚は、それぞれ30μm、60μm、20μm、50μmであった。一方、比較例1で用いた、カルボキシルメチルセルロースナトリウムのTF値は2.9、25℃と80℃の粘度変化率は69%であり、水性塗料組成物の耐タレ限界膜厚は40μmであった。さらに、該水性塗料組成物を調製後、上記の方法に従い、評価試験を実施した。評価結果を表1に示した。
水性アクリル樹脂液(合成樹脂) 100質量部(固形分45%)
リン酸亜鉛(防錆顔料) 8質量部
カーボンブラック(着色顔料) 2質量部
硫酸バリウム (体質顔料) 20質量部
Figure 2009067910
実施例1〜4は本発明の水性塗料用添加剤を含む水性塗料組成物であるため、塗工性や貯蔵安定性などに優れているのに対し、比較例1は微細繊維状セルロース又は微細繊維状セルロース複合体を含んでおらず、添加剤の粘度の温度変化率が悪いために、水性塗料組成物の粘度の温度変化率も悪く、塗膜評価でも、いずれも実施例に比べて劣っていた。
[実施例5;比較例2]
下記の組成で水性塗料組成物を作製し、評価した。比較例2では微細繊維状セルロース複合体Aをヒドロキシエチルセルロースに置き換えて、他は同様の水性塗料組成物を作製し、評価した。その結果を表2に示す。実施例5の水性塗料組成物の耐タレ限界膜厚は30μmに対し、比較例2では15μmであった。
酸化チタン(着色顔料) 65質量部
タルク(体質顔料) 65質量部
酢酸ビニルエマルション(合成樹脂;固形分50%) 100質量部
B.B.P(可塑剤) 2質量部
セロソルブアセテート(造膜助剤) 1質量部
エチレングリコール(凍結防止剤) 1質量部
微細繊維状セルロース複合体A 3質量部
Figure 2009067910
実施例5に比べ、比較例2は本発明の水性塗料用添加剤である微細繊維状セルロース複合体Aを含まないため貯蔵安定性が特に悪化した。
[実施例6]
下記配合成分を下記方法により製造して水性塗料組成物(インキ組成物)を得た。
顔料:ピンク色樹脂粒子の水分散液 8質量%
〔SW−17(シンロイヒ社製)、平均粒径1μm、固形分量42 %〕
造膜性樹脂:アクリロニトリル・ブタジエン共重合体の水分散液 60質量%
〔Nipol LX517A (日本ゼオン社製)、固形分量40%〕
尿素: 18重量%
増粘剤:微細繊維状セルロース複合体A 0.1質量%
水(精製水) 13.9質量%
上記配合成分をタンク内に撹拌しながら順次添加し、均一になるまで、混合撹拌した後に1μmのバグフィルターで濾過することによりインキを製造した。
[実施例7]
下記配合成分を下記方法により製造して水性塗料組成物(インキ組成物)を得た。
顔料:橙色樹脂粒子の水分散液 4質量%
〔SW−14(シンロイヒ社製、平均粒径1 μm 、固形分量42 %)
造膜性樹脂(スチレンブタジエン共重合樹脂の水分散体) 60質量%
〔Nipol LX438C (日本ゼオン社製)、固形分量45 %〕
増粘剤(微細繊維状セルロースB) 0.2質量%
尿素 15質量%
水(精製水) 20.8質量%
上記配合成分を、タンク内に撹拌しながら順次添加し、均一になるまで、混合撹拌した後、1μmのバグフィルターで濾過することによりインキを製造した。
[比較例3]
実施例7の微細繊維状セルロース複合体Aを精製水に置き換えて、他は同じ処方で水性塗料組成物を作成した。
以上により得られた水性塗料組成物を前述の方法で評価した。その結果を表3に示す。
Figure 2009067910
実施例6、7は、比較例3に比べて、経時安定性、粘度経時安定性ともに優れていた。これは本発明の添加剤が高いTF値、粘度の温度変化が低い優れた性質であり、該添加物を用いることによりインク組成物に同様の性質を付与できるためである。
本発明の水性塗料添加剤及びそれを用いた水性塗料組成物は自動車用塗料や建材用塗料、更にはボールペンのインク等に好適に利用できる。

Claims (3)

  1. 長さ(長径)が0.5μm〜1mm、幅(短径)が2nm〜60μm、長さと幅の比(長径/短径)が20〜400の微細繊維状セルロースを含み、チクソコトピックファクター(TF値)が4.0以上、25℃と80℃の粘度変化率が50%以下である水性塗料用添加剤。
  2. 長さ(長径)が0.5μm〜1mm、幅(短径)が2nm〜60μm、長さと幅の比(長径/短径)が20〜400の微細繊維状セルロースと水溶性高分子とからなる微細繊維状セルロース複合体を含み、チクソコトピックファクター(TF値)が4.0以上、25℃と80℃の粘度変化率が50%以下である水性塗料用添加剤。
  3. 請求項1又は2に記載の水性塗料用添加剤、水又は水を主成分とした水性媒体に溶解及び/又は分散した合成樹脂と、顔料を含み、耐タレ限界膜厚が20μm以上である水性塗料組成物。
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