JP5118369B2 - 印刷用塗工紙及びその製造方法 - Google Patents
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紙の低密度化(嵩高化)の方法の一つとして,製紙用パルプに関する検討があげられる。
一般的に製紙用パルプには木材パルプが使用されるが、低密度化を行うためには、化学薬品により木材繊維中の補強材料であるリグニンを抽出した化学パルプよりも、グラインダーで木材を磨り潰す砕木パルプやリファイナーで木材を精砕するリファイナーメカニカルパルプ、又はサーモメカニカルパルプのような機械パルプの方が繊維は剛直で効果的である。
また、嵩高な原紙を使用した場合、繊維間強度が弱くなり、オフセット輪転印刷時においてインキを乾燥させた場合、ブリスターという表面に膨れが発生する問題があった。
この問題を解決するために、例えば
低密度で、ラフニング、耐ブリスター性を良好にするために、特定の方法で処理した広葉樹機械パルプを原紙に用いる印刷用塗工紙が開示されている(特許文献1参照)。しかしながら、効果が十分でなく、特に低塗工量において問題になる場合があった。
以上のように、従来の手法では、低い密度と、ラフニングやブリスターを抑え、印刷面感が良好な印刷品質を両立させた印刷用塗工紙を得ることは非常に困難であった。
また、印刷用塗工紙の生産効率の良い製造方法を提供することにある。
また、広葉樹機械パルプを含有した原紙に、顔料と接着剤を含有する塗工液の粘度がせん断速度1.0×104(1/秒) において10〜50mPa・sの範囲である塗工液を用いて、スプレー塗工方式で塗工することにより、ラフニングやブリスターを抑えることができ、印刷面感が良好な印刷品質で、低密度な印刷用塗工紙を得る製造方法を見いだし本発明を完成した。
また、本発明の製造方法では、非接触方式ながら、高速塗工に対応でき、生産効率の向上が図ることが可能となった。
本発明において、上述するような効果を発揮させるための、好ましい塗工量としては、片面あたり3.0〜12.0g/m2であり、より好ましくは5.0〜10.0g/m2である。3.0g/m2より少ない場合は、原紙の被覆が十分ではなく印刷物の面感が劣り好ましくない。12.0g/m2より多い場合は、紙の重量が重くなり、密度が高くなる傾向にある。
また、生産速度の範囲は、1000m/min以上であり、より好ましくは1200m/分以上、さらに好ましくは1500m/min以上である。1000m/min以上で塗工することにより、スプレー塗工時に、紙と塗料が衝突した際、紙の高速移動する力により塗料中にカオリンを含有する場合、カオリン顔料が紙の表面に沿って配向しやすくなり、平滑性及び白紙光沢度、印刷面感、ラフニング抑制が向上する。
スプレーノズルから塗料を噴射する際の、好ましい加圧条件は50〜130barである。スプレーノズルは50〜70mm間隔で設置することが好ましく、そのときノズルの先端と紙の表面との好ましい距離90〜110mmである。この範囲を外れると、未塗工部分が発生する傾向にあり、また、隣り合うノズルの塗料が干渉しあう等の不具合が発生し易く、良好な塗工面を得られにくく、印刷面感やラフリングに劣る傾向にある。
本発明の塗工液には、助剤として分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、染料、蛍光染料等の通常使用される各種助剤を使用することができる。
10mPa・sより低い場合は、紙と塗工液が接触し、乾燥ゾーンに入る前に、塗料が原紙内に浸透してしまうため、十分な原紙被覆性が得られにくく好ましくない。また、50mPa・sより高い場合は、塗工液が紙に衝突した後に紙表面に対して十分に拡がらず、塗工ムラ等が発生して白紙面感、印刷後面感に劣る傾向にあり好ましくない。
本発明の塗工原紙に使用される機械パルプとは、広葉樹を原料とする機械パルプで、リファイナーグランドウッドパルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、アルカリ過酸化水素メカニカルパルプ(APMP)又はアルカリ過酸化水素サーモメカニカルパルプ(APTMP)等が挙げられ、本発明では、嵩高、高不透明度、高白色度が得られる点から、CTMP、APMP、APTMPを使用することが好ましく、特にAPMP、APTMPを使用することが好ましい。
a)広葉樹の木材チップを少なくとも4:1の圧縮比以上で圧縮し、圧解放時にキレート剤を含浸させる工程:
b)前記含浸チップを5分以上、温度10℃〜80℃で保持する工程:
c)前記含浸チップをさらに少なくとも4:1の圧縮比以上で圧縮し、解放時にアルカリ性薬液を含浸させる工程:
d)前記含浸チップを約10分〜1時間、温度10℃〜80℃で保持する工程:
e)前記処理チップをさらにアルカリ過酸化物を含浸させて、加圧もしくは大気圧リファイニング装置に通してチップを解繊し、木材パルプを製造する工程:
f)前記製造パルプを温度50℃以上で5分間以上保持する工程:
g)前記製造パルプを濃度5%以下に希釈し、洗浄してから、再度15%以上に濃縮する工程:
h)前記製造パルプを加圧もしくは大気圧でリファイニングを行い、所望の濾水度を有するパルプを得る工程:
i)必要に応じて得られたパルプが、酸化剤或いは還元剤を用いて一段以上で漂白される工程を経て製造される。
前記のe)工程において、漂白及び柔軟化がなされた木材チップには、一次リファイニング直前にキレート剤を含むアルカリ過酸化物が添加され、加圧もしくは大気圧リファイニング装置にてパルプ繊維に解繊される。リファイニングは一般の解繊装置で十分であり、好ましくはシングルディスクリファイナー、コニカルディスクリファイナー、ダブルディスクリファイナー、ツインディスクリファイナー等で解繊される。
上記製造工程を経て製造された機械パルプは、高白色度、高不透明度で、強度が強いものである。特にルンケル比4.0以上で容積重450kg/m3以上の高容積重材から製造した機械パルプは、繊維内腔(ルーメン)がつぶれにくく剛直であるため、このパルプ繊維が配合されたシートは、嵩高構造を維持し、密度が低くすることができる。使用する樹種としては、ユーカリ属が好ましく、より好ましくはユーカリグロビュラス、ユーカリグランディス等である。
また、使用する広葉樹機械パルプのシート密度が0.45g/cm3以下が好ましく、より好ましくは0.35g/cm3以下である。
なお、本発明においては機械パルプの効果をより発揮させるために、上記嵩高な機械パルプを全パルプ中の5〜95重量%が好ましく、より好ましくは、5〜50重量%である。
原紙については、スプレーコーターにて塗工する前にサイズプレス、ゲートロールコーター、ビルブレード等を用いて、澱粉、ポリビニルアルコール等を予備塗工した原紙等も使用可能である。
また、スプレー塗工方式は塗工原紙の輪郭に沿った塗工層を形成する塗工方式であるため、塗工前の原紙の平滑度が重要であり、塗工原紙のPPSラフネスが6.0μm以下であることが好ましい。
本発明においては、原紙上に2層以上の塗工層を設けることも出来る。この場合、スプレー塗工方式で設ける塗工層は最も内側の塗工層である。中間塗工層は、ブレード塗工方式、スプレー塗工方式、カーテン塗工方式又はフィルムトランスファー塗工方式等を利用することができる。
原紙に設ける総塗工量としては、特に限定されるものではないが、片面当たりの総塗工量は3〜15g/m2であり、好ましくは3〜12g/m2、さらに好ましくは、5〜10g/m2である。
湿潤塗工層を乾燥させる手法としては、例えば、蒸気加熱ヒーター、ガスヒーター、赤外線ヒーター、電気ヒーター、熱風加熱ヒーター、マイクロウェーブ、シリンダードライヤー等の通常の方法が用いられる。
以上のように塗工乾燥された塗工紙は、カレンダ処理を施さないまま、もしくはスーパーカレンダー、高温ソフトニップカレンダー等で平滑化処理を行うことができる。
本発明においては、特にカレンダー線圧が200〜300kN/mの条件においてもラフニングが抑制され、印刷面感に優れる効果が顕著である。
なお、特に断らない限り、実施例、比較例中の部及び%は、それぞれ重量部、重量%を示す。なお、塗工液及び得られた印刷用塗工紙について以下に示す様な評価法に基づいて試験を行った。
(1)塗料粘度: 本発明において、粘度測定には「ウルトラハイシェア粘度計 ACAV-A2」(ACA system社、フィンランド)を使用した。測定装置に低シェアレート測定用キャピラリーユニットを取付け、温度30℃で測定可能な圧力条件下(40 bar以下)において粘度を数点測定、その結果得られるせん断速度と粘度の曲線からせん断速度1.0×104 1/sにおける粘度を読み取った。
(2)密度:JIS P 8118に基づいて測定した。
(3) ラフニング:ファイバーライジングテスター(商品名:FIBR01000、Fibro system社製)を用いて、ヒートセット後の繊維毛羽立ち数を測定した。この装置は水を試料表面に塗布(水滴量8.0μl)して、150℃で乾燥させた後、試料を折り曲げた時の表面状態をCCDカメラにより画像解析を行うものである。
(4)白紙光沢度:JIS P 8142に基づいて測定した。
(5)印刷光沢度:ローランド平判印刷機(4色)にて、平判印刷用インキ(東洋インキ製 ハイユニティM)を用いて印刷速度8000枚/分で印刷し、得られた印刷物(4色ベタ印刷部)の表面をJIS P 8142に基づいて測定した。
(6)白紙面感:塗工紙の白紙面感を目視にて評価した。
◎:極めて良好、○:良好、△:若干劣る、×:劣る
(7)印刷物面感:ローランド平判印刷機(4色)にて、平判印刷用インキ(東洋インキ製 ハイユニティM)を用いて印刷速度8000枚/分で印刷し、得られた印刷物の面感を目視にて評価した。
◎:極めて良好、○:良好、△:若干劣る、×:劣る
(8)耐ブリスター性:RI-II型印刷機(明製作所製)を用い、東洋インキ製(TKマーク617)を使用し、インキ量0.8cc一定で両面印刷して一昼夜調湿した後、この試験片を温度140℃に設定した恒温オイルバスに浸し、ブリスター(塗工紙表面のふくれ)の発生状況を目視評定した。
[実施例1]
広葉樹のCTMP
(ケミサーモメカニカル)法薬液として亜硫酸ソーダを広葉樹パルプ(ユーカリグロビュラス、容積重557kg/m3、ルンケル比4.7)の木材チップ絶乾重量当たり2.0%添加し、室温、減圧下で30分間含浸させた。薬液浸透後チップを取り出し、原料濃度40%となるように調整した。次に加圧リファイナーを用いて、一次リファイニングを行った。その後、パルプ濃度20%で常圧リファイナーによって二次リファイニングを行った。また、二次リファイニング後の濾水度はカナダ標準フリーネス(CSF)で100mlに調整した。
塗工原紙は、填料として軽質炭酸カルシウムを原紙坪量あたり7%含有し、上記で得られた広葉樹パルプをパルプ重量当たり30%、クラフトパルプ(濾水度410ml)70%含有する坪量64g/m2、密度0.55g/cm3の原紙を用いた。
顔料としてブラジル産カオリン(CADAM社製、アマゾンプラス)100部からなる顔料に、分散剤としてポリアクリル酸ソーダ0.1部を配合、分散し、濃度70%のカオリンスラリーを調製した。このカオリンスラリー50部(固形分)に、重質炭酸カルシウムスラリー(ファイマテック社製 FMT−97)50部(固形分)を添加し、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス(ガラス転移点温度−2℃、ゲル含量85%)12部、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉(ペンフォード社製 PG295)4部、蛍光染料(ランクセス社製 ブランコファUWリキッド)滑剤 0.4部(サンノプコ社製 C−104HS)を加え、さらに水を加えて固形分濃度64%の塗工液1を得た。
上記の原紙に、前述の塗工液1を片面当たりの塗工量が9g/m2になるように、1500m/分の塗工速度でエアレススプレーコーター(塗工条件:スプレー加圧条件:90bar、ノズル間隔:60mm 、ノズルと紙面との距離:100mm)を用いて両面塗工を行い、塗工紙水分が5%となるように乾燥した。
乾燥後、金属ロール温度150℃、弾性ロールショアD硬度92、通紙速度1200m/分、線圧200kN/m、4ニップの条件でソフトニップカレンダー処理を行い、目的とするオフセット印刷用塗工紙を得た。
[実施例2]
[実施例3]
[実施例4]
〈嵩高パルプの製造〉
APMP(アルカリ過酸化水素メカニカルパルプ)法によるパルプの製造。
木材チップにDTPAを木材チップ絶乾量当たり0.2%となるように含浸させた後、水酸化ナトリウム1.5%、過酸化水素2.0%、ケイ酸ソーダ3.0%、硫酸マグネシウム0.1%、DTPA0.2%となるように薬液を添加し、薬液含浸時と一次リファイニング直前に木材チップに分割して浸透させた。そのチップを温度60℃で30分間保持した後、ラボ用常圧リファイナーを用いて一次リファイニングを行った。得られたパルプはそのまま約60℃で30分間保持して残存薬品の反応を進行させた後、パルプ濃度を4%まで希釈してpHを4〜8に調整し、洗浄を行った。洗浄したパルプは再度、濃度20%まで濃縮し、ラボ用常圧リファイナーによって二次リファイニングを行った。また、二次リファイニング後の濾水度はカナダ標準フリーネス(CSF)で100mlに調整した。
[比較例1]
[比較例2]
[比較例3]
[比較例4]
[比較例5]
ニングが抑えられ、印刷面感、耐ブリスター性に優れており、ブレード塗工方式を採用した比較例1では、密度、ラフニング、印刷面感、耐ブリスター性に劣る。同じくブレード塗工方式を採用した比較例2では、印刷面感は、本発明並みのものの、比較例1と同じく密度、ラフニング、耐ブリスター性に劣っていた。GRC塗工方式を採用した比較例3では、ラフニング、印刷面感、耐ブリスター性ともに劣っていた。
一方、本発明と同じくスプレーによる塗工法及び塗工量を採用するが、原料を古紙由来のパルプを使用した比較例4では、ラフニング、白色光沢度、印刷面感及び耐ブリスター性は本発明並みであるが、密度が大幅に高くなっており、嵩高については劣っていた。塗工量の少ない比較例5では、ラフニング、印刷面感に劣っていた。
また、該印刷用塗工紙が、広葉樹機械パルプを含有した原紙に、塗工液をスプレー塗工方式で塗工し、塗工液の粘度がせん断速度1.0×104(1/秒) において10〜50mPa・sの範囲である印刷用塗工紙の製造方法により得られることが確認できた。
Claims (3)
- 原紙に顔料と接着剤を含有する塗工液を塗工する印刷用塗工紙の製造方法において、ルンケル比4.0以上で容積重450kg/m3以上の広葉樹機械パルプを含有した原紙に、塗工液をスプレー塗工方式でノズル圧50〜130barの塗工条件で、塗工層が3〜15g/m2となるように塗工し、塗工液の粘度がせん断速度1.0×104(1/秒) において10〜50mPa・sの範囲であることを特徴とする印刷用塗工紙の製造方法。
- スプレー塗工条件が、ノズル間隔50〜70mm、ノズル先端と紙の表面の距離90〜110mmである請求項1に記載の印刷用塗工紙の製造方法。
- 請求項1又は2に記載の方法により製造された、原紙がルンケル比4.0以上で容積重450kg/m3以上の広葉樹機械パルプを含有し、ラフニングが15本/m以下であることを特徴とする印刷用塗工紙。
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