JPWO2017199737A1 - 培養細胞の回収方法および培養細胞分散液 - Google Patents

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Abstract

培養終了した単一培養容器中の培養細胞分散液から培養された細胞を沈降させる沈降工程を備える、培養細胞の回収方法であって、培養細胞分散液は、培養された細胞と、基礎培地成分と、平均直径2.0nm以上100nm以下のセルロースナノファイバーと、を含み、培養細胞分散液中の培養された細胞の総数が5.0×107個以上であり、培養細胞分散液中のセルロースナノファイバーの含有量が培養細胞分散液の0.010質量%以上1.0質量%以下であり、かつ、培養された細胞からなるスフェロイドの直径の分布が0.10以上3.0未満である、培養細胞の回収方法、および培養細胞分散液が提供される。

Description

本発明は、培養細胞の回収方法および培養細胞分散液に関する。
細胞を培養する際の足場材料として、セルロースナノファイバー等のナノファイバーを用いることが知られている。
例えば、特許文献1には、間葉系幹細胞をセルロースナノファイバー等の天然物由来の多糖類が分散されてなる細胞培養液の中に液中を漂うように分散させることにより、培養液を凍結させることなく、培養条件下で間葉系幹細胞の分化を抑制し、そして望みの一定期間、初期状態を維持し保存することができること、および、セルロースナノファイバー等のナノファイバーの形態にある多糖類といった天然物由来の多糖類を用いることにより、一般的な細胞回収方法により、培養液からの間葉系幹細胞の回収が可能であり、間葉系幹細胞の再利用が可能となることが記載されている([0011])。
また、特許文献2には、ヒドロゲルまたは膜の形態の植物由来の機械的に崩壊させたセルロースナノファイバーおよび/またはその誘導体を含む細胞培養または細胞送達組成物が記載され、さらに、細胞を提供する工程、細胞をこの細胞培養または細胞送達組成物と接触させ、マトリックスを形成する工程、およびそのマトリックス内で三次元または二次元の配置で細胞を培養する工程を含む細胞を培養する方法、ならびに、細胞培養培地および細胞を含む材料を提供する工程、細胞培養材料を分解酵素と接触させる工程、細胞および細胞凝集体を沈降させるために材料を遠心する工程、およびデカンテーションによりセルロースナノファイバーを除去する工程を含む、細胞培養材料から植物ベースのセルロースナノファイバーおよび/またはその培養体を除去する方法が記載されている(特許請求の範囲)。
国際公開第2015/111734号 特表2013−541956号公報
従来の培養細胞の回収方法では、浮遊培養した細胞を遠沈処理にかけ、沈降させた細胞を回収していた(特許文献1、特許文献2)。
しかし、遠沈処理時に細胞にかかる遠心加速度によって細胞が潰されてダメージを受けるため、細胞増殖率および細胞沈降率を両立できないことが問題となっていた。
また、遠沈処理を行うために、培養により得られた細胞分散液を希釈する必要があるなど、煩雑な操作を要する工程が増加することによって、培養コストが上昇する等の不利益があった。
そこで、本発明は、培養した細胞が回収時に受けるダメージを抑制して、細胞増殖率および細胞沈降率を両立することができ、しかも、煩雑な回収操作を簡略化することができる培養細胞の回収方法、および、この回収方法に用いる培養細胞分散液を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、培養を終了した培養細胞分散液中のセルロースナノファイバー含有量、細胞数、およびスフェロイドの直径分布をいずれも所定の範囲にすると、培養した細胞が回収時に受けるダメージを抑制して、細胞の増殖率および回収率を両立することができ、しかも、煩雑な回収操作を簡略化することができることを知得し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は次の[1]〜[10]を提供する。
[1]培養終了した単一培養容器中の培養細胞分散液から培養された細胞を沈降させる沈降工程を備える、培養細胞の回収方法であって、
上記培養細胞分散液は、上記培養された細胞と、基礎培地成分と、平均直径2.0nm以上100nm以下のセルロースナノファイバーと、を含み、
上記培養細胞分散液中の上記培養された細胞の総数が5.0×10個以上であり、
上記培養細胞分散液中の上記セルロースナノファイバーの含有量が上記培養細胞分散液の0.010質量%以上1.0質量%以下であり、かつ、
上記培養された細胞からなるスフェロイドの直径の分布が0.10以上3.0未満である、培養細胞の回収方法。
ここで、スフェロイドの直径の分布Ddistは、20個のスフェロイドの直径を測定して求めたスフェロイドの直径の最大値Dmax、最小値Dminおよび算術平均値Davgから、下記式(1)によって求めた割合である。
dist=(Dmax−Dmin)/Davg (1)
[2]上記スフェロイドの平均直径が50μm以上800μm以下である、上記[1]に記載の培養細胞の回収方法。
[3]上記沈降工程の前に、さらに、
種細胞として細胞を播種する播種工程と、
上記種細胞から細胞を浮遊培養する培養工程と、
を備え、
上記播種工程において、播種された細胞と、基礎培地成分と、平均直径2.0nm以上100nm以下のセルロースナノファイバーと、を含む播種細胞分散液の細胞数分布が1.0%以上50%以下である、上記[1]または[2]に記載の培養細胞の回収方法。
ここで、細胞数分布Ndist(%)は、上記播種細胞分散液から10箇所サンプリングして測定した播種細胞分散液1mLあたりの細胞数の最大値Nmax(個)、最小値Nmin(個)および算術平均値Navg(個)から、下記式(2)によって求めたパーセンテージである。
dist(%)={(Nmax−Nmin)/Navg}×100(%) (2)
[4]上記沈降工程の前に、さらに、
種細胞として細胞を播種する播種工程と、
上記種細胞から細胞を浮遊培養する培養工程と、
を備え、
上記培養工程において、浮遊培養される細胞と、基礎培地成分と、平均直径2.0nm以上100nm以下のセルロースナノファイバーとを含む浮遊細胞分散液に0.1℃以上3.0℃以下の温度分布を付与する、上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の培養細胞の回収方法。
ここで、温度数分布Tdiff(℃)は、浮遊細胞分散液の液温の最高値Tmax(℃)および最低値Tmin(℃)から、下記式(3)によって求めた温度差である。
diff(℃)=Tmax−Tmin(℃) (3)
[5]上記セルロースナノファイバーがカルボキシ基を0.60mmol/g以上2.0mmol/g以下含む、上記[1]〜[4]のいずれか1つに記載の培養細胞の回収方法。
[6]上記細胞が幹細胞である、上記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の培養細胞の回収方法。
[7]培養された細胞と、基礎培地成分と、平均直径2.0nm以上100nm以下のセルロースナノファイバーと、を含む培養細胞分散液であって、
上記培養細胞分散液中の上記細胞の総数が5.0×10個以上であり、
上記培養細胞分散液中の上記セルロースナノファイバーの含有量が上記培養細胞分散液の0.010質量%以上1.0質量%以下であり、かつ、
上記細胞からなるスフェロイドの直径の分布が0.10以上3.0未満である、培養細胞分散液。
ここで、上記スフェロイドの直径の分布は、20個のスフェロイドの直径を測定して求めたスフェロイドの直径の最大値Dmax、最小値Dminおよび算術平均値Davgから、下記式(1)によって求めた値Ddistである。
dist=(Dmax−Dmin)/Davg (1)
[8]上記スフェロイドの平均直径が50μm以上800μm以下である、上記[7]に記載の細胞分散液。
[9]上記セルロースナノファイバーがカルボキシ基を0.60mmol/g以上2.0mmol/g以下含む、上記[7]または[8]に記載の細胞分散液。
[10]上記細胞が幹細胞である、上記[7]〜[9]のいずれか1つに記載の細胞分散液。
本発明によれば、培養した細胞が回収時に受けるダメージを抑制して、細胞増殖率および細胞沈降率を両立することができ、しかも、煩雑な回収操作を簡略化することができる培養細胞の回収方法、および、この回収方法に用いる培養細胞分散液を提供することができる。
まず、本発明の従来技術に対する有利な点および作用効果を奏するメカニズムを説明する。
従来の培養細胞の回収方法では、浮遊培養により得られた細胞分散液を遠沈処理にかけて培養した細胞を沈降させ、細胞を回収していた。そのため、遠沈処理を行う従来の培養細胞の回収方法では、遠沈処理の際に細胞にかかる遠心加速度によるダメージが大きく、遠沈処理の前後における細胞の死亡率が高かった。
これに対して、本発明の培養細胞の回収方法では、浮遊培養時に細胞に浮力を与えていたセルロースナノファイバーのネットワークを、軽い衝撃等を与えるだけで崩壊せしめ、培養された細胞(細胞塊(スフェロイド)を含む。)を沈降させることができるので、遠沈処理によらず細胞を沈降させることができ、培養した細胞が回収時に受けるダメージを抑制するとともに、煩雑な回収操作を簡略化することができる。
従来の培養細胞の回収方法では、培養中の細胞分散液を撹拌することにより、培養された細胞が沈降することを防止し、浮遊培養を維持していた。
これに対して、本発明の培養細胞の回収方法では、浮遊培養時にセルロースナノファイバーのネットワークが細胞に浮力を与えるため、培養中の細胞分散液を撹拌することなく、浮遊培養を維持することができる。
また、スフェロイドの直径が所定の分布を持つことにより、スフェロイドの中心部まで細胞増殖に必要な酸素および栄養分が十分に届き、細胞増殖率の向上に有利な直径が小さなスフェロイドと、セルロースナノファイバーのネットワークに衝突して、これを崩壊せしめ、細胞沈降率の向上に有利な直径が大きなスフェロイドと、の両方を単一の培養容器中の形成することができ、細胞増殖率および細胞沈降率を向上させることができる。
以下では、セルロースナノファイバーをCNF(cellulose nanofiber)という場合がある。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される範囲は、その範囲に「〜」の前後に記載された両端を含む範囲を意味する。例えば、「a〜b」(ここで、aおよびbはある数値(実数)を表し、かつ、a<bであるとする。)という範囲には、aおよびbを含む。
[培養細胞の回収方法]
以下、本発明の培養細胞の回収方法を詳細に説明する。
本発明の培養細胞の回収方法は、培養終了した単一培養容器中の培養細胞分散液から培養された細胞を沈降させる沈降工程を備える、培養細胞の回収方法である。
また、本発明の培養細胞の回収方法においては、培養細胞分散液は、培養された細胞と、基礎培地成分と、平均直径2.0nm以上100nm以下のセルロースナノファイバーと、を含む。
さらに、本発明の培養細胞の回収方法においては、培養細胞分散液中の培養された細胞の総数が5.0×10個以上であり、培養細胞分散液中のセルロースナノファイバーの含有量が培養細胞分散液の0.010質量%以上1.0質量%以下であり、かつ培養された細胞からなるスフェロイドの直径の分布が0.10以上3.0未満である。
〈沈降工程〉
沈降工程を詳細に説明する。
沈降工程では、培養終了した単一培養容器中の培養細胞分散液から、培養された細胞を沈降させる。
《培養終了した単一培養容器》
培養終了した単一培養容器とは、細胞の培養が終了した状態の培養容器であって、培養終了時から内容物に意図的な改変が加えられていない培養容器をいう。具体的には、培養終了時から内容物が変更されていない単一の培養容器をいい、培養が終了した複数の培養容器の内容物を混合した培養容器をいうものではない。
本発明の培養細胞の回収方法では、培養終了した単一の培養容器をそのまま沈降処理に適用する。
培養終了した単一培養容器を用いることによって、培養終了時のスフェロイドの直径の分布およびセルロースナノファイバーのネットワークが壊されることがないので、簡単な沈降操作で細胞を沈降させることができ、高い細胞沈降率を達成することができる。
《培養細胞分散液》
培養細胞分散液は、培養された細胞と、基礎培地成分と、平均直径2.0nm以上100nm以下のセルロースナノファイバーと、を含む。
(培養された細胞)
培養細胞分散液に含まれる培養された細胞とは、上記培養容器中で培養された細胞である。
培養細胞分散液に含まれる培養された細胞の総数は5.0×10個以上であれば特に限定されないが、好ましくは5.0×10個以上5.0×1012個以下であり、より好ましくは5.0×10個以上5.0×1012個以下である。
細胞の総数が5.0×10個未満では、所定のスフェロイドの直径の分布を達成し難く、僅かな衝撃等によってCNFのネットワークに培養した細胞が十分に沈降するだけの欠陥を生じさせることができず、良好な細胞沈降率を達成することができない。また、細胞の総数が5.0×1012個以下であると、細胞に十分な酸素を供給することができ、細胞増殖率がより向上する。
培養細胞分散液中の細胞の総数を5.0×10個以上とするには、浮遊培養持に細胞分散液の内部まで酸素を拡散させることが望ましい。酸素の拡散は細胞分散液中の拡散が律速のため、細胞分散液に温度勾配を形成させ、僅かな対流を起こし酸素拡散を行うことが好ましい。細胞分散液を撹拌すると、CNFのネットワークが崩れ、浮遊培養中に細胞が沈降してしまい、細胞に十分な酸素が供給されず、細胞増殖率が低下する。
このため、培養工程において、浮遊細胞分散液(培養工程において、浮遊培養している細胞および培養液からなる細胞分散液をいう。)に温度分布を付与することが好ましい。
なお、浮遊細胞分散液に温度分布を付与することについては、培養工程の説明において詳細を記載する。
細胞は、特に限定されず、種々の細胞を含み得る。
細胞の由来は、特に限定されないが、好ましくは動物細胞であり、より好ましくはヒト細胞である。
細胞の種類は、特に限定されないが、好ましくは幹細胞であり、より好ましくは胚性幹細胞(以下「ES細胞」という場合がある。:ES,embryonic stem)、体性幹細胞、および人工多能性幹細胞(以下「iPS細胞」という場合がある。:iPS,induced pluripotent stem)からなる群から選択される少なくとも1つである。
細胞の由来および種類は、特に限定されないが、好ましくはヒト幹細胞であり、より好ましくはヒト胚性幹細胞(ヒトES細胞)、ヒト体性幹細胞、およびヒト人工多能性細胞(iPS細胞)からなる群から選択される少なくとも1つである。
幹細胞は未分化のため、スフェロイドを形成し易く、細胞増殖率と細胞沈降率とを両立しやすいからである。
体性幹細胞としては、例えば、造血幹細胞、臍帯血幹細胞、衛星細胞、腸管幹細胞、毛包幹細胞、間葉系幹細胞、神経幹細胞、内皮幹細胞、嗅粘膜幹細胞、神経冠幹細胞、および精巣細胞などが挙げられ、好ましくは間葉系幹細胞である。
また、ヒト体性幹細胞としては、例えば、ヒト造血幹細胞、ヒト臍帯血幹細胞、ヒト衛星細胞、ヒト腸管幹細胞、ヒト毛包幹細胞、ヒト間葉系幹細胞、ヒト神経幹細胞、ヒト内皮幹細胞、ヒト嗅粘膜幹細胞、ヒト神経冠幹細胞、およびヒト精巣細胞などが挙げられ、好ましくはヒト間葉系幹細胞である。
いろいろな型の細胞分化可能で、治療に活用され得る間葉系幹細胞は、通常、生体から採取し、選別し、そして純化したものを陥る。本発明の回収方法において使用できる間葉系幹細胞としては、患者から直接採取される臨床用の初代ヒト間葉系幹細胞ばかりでなく、試験研究用に用い得る細胞バンクより入手できる間葉系幹細胞、および不死化された間葉系幹細胞株も挙げられる。
当業者であれば既知のとおり、これらの間葉系幹細胞は、臨床上の適用の観点から捉えると、自家ソース由来、異種異系ソース由来、または異種間ソース由来のいずれの細胞であってもよい。また、採取源は、ドナー骨髄、組織生検、胚性ソース、または出生後ソースなどのいずれの採取源であってもよい。具体的には、腸骨稜の骨髄、大腿頸骨、脊椎、肋骨、もしくはその他の骨髄腔由来、または胚性卵黄嚢、胎盤、臍帯、骨膜、胎児または青年期の皮膚、および血液を含む組織生検由来などの採取源が挙げられる。
iPS細胞としては、例えば、国際公開第2015/037535号、特許第5590646号公報、国際公開第2011/043405号、国際公開第2013/077423号、または国際公開第2014/136581号([0050]〜[0061])に記載されたiPS細胞を使用することができる。
なお、沈降工程における「培養された細胞」、後述する播種工程における「播種された細胞」および種細胞としての「細胞」、ならびに後述する培養工程における「浮遊培養される細胞」および種細胞から浮遊培養する「細胞」は、いずれも、上記した細胞であってよい。
培養細胞分散液中の培養された細胞からなるスフェロイドの直径の分布は0.10以上3.0未満である、
スフェロイドの直径の分布は、0.10以上3.0未満であれば特に限定されないが、好ましくは0.20以上2.1以下であり、より好ましくは0.30以上1.0以下である。
スフェロイドの直径の分布が0.10未満では僅かな衝撃等によってはCNFのネットワークを破壊できず細胞沈降率が低下する。また、スフェロイドの直径の分布が3.0以上では培養中にネットワークが破壊され浮遊培養できず細胞増殖率が低下する。なお、培養終了した単一培養容器中とは、細胞の培養を終了した後に複数の培養容器からの培養細胞分散液を混合したものではなく、培養終了時の単一の培養容器内の培養細胞分散液を意味する。
直径が大きなスフェロイドと、直径が小さなスフェロイドとの両方が存在する(スフェロイド径分布を付与)ことで、高い細胞増殖率および高い細胞沈降率を両立できる。
直径が大きなスフェロイドが存在すると、CNFのネットワークを壊し易く、細胞沈降率が向上する。僅かな振動で直径が大きなスフェロイドが動き、CNFのネットワークを破壊するためである。
一方、直径が大きなスフェロイドは内部に酸素が浸透し難く、細胞増殖率が低下し易い上、CNFのネットワークは数か所破壊されれば連鎖的に崩壊するため、直径が大きなスフェロイドは少量あればよい。
直径が小さなスフェロイドは、細胞沈降率を向上させ難いが、細胞増殖率を高くすることができるため、これも存在させることが必要である。スフェロイドの表面積が大きく、培養液から酸素等を取り込み易いためである。
したがって、本発明では、直径が大きなスフェロイドと、直径が小さなスフェロイドとが両方存在し、スフェロイドの直径の分布が所定範囲内となることが必要である。
また、スフェロイドの平均直径は、特に限定されないが、好ましくは50μm以上800μm以下であり、より好ましくは100μm以上700μm以下であり、さらに好ましくは150μm以上600μm以下である。
スフェロイドの平均直径がこの範囲内であると、直径の大きなスフェロイド(「大スフェロイド」という場合がある。)の中心部の細胞に十分な栄養および酸素が供給され、細胞増殖率が向上するとともに、大スフェロイドがCNFのハイドロゲルネットワークを容易に破壊することができ、細胞沈降率が向上する。
また、スフェロイドの平均直径を調節する方法は、特に限定されないが、例えば、CNFのカルボキシ基含有量を調整することによって調節することができる。CNF表面のカルボキシ基により、細胞が集合し易く、大スフェロイドを形成し易いためである。すなわち、CNFのカルボキシ基含有量が少ないとスフェロイドの平均直径は小さくなり、カルボキシ基含有量が多いとスフェロイドの平均直径は大きくなる。
なお、スフェロイドの直径およびその分布は、以下の方法により求めたものである。
培養液に細胞を播種した後、温度 37℃、湿度 95%RH、二酸化炭素濃度 5体積%で5日間培養する。培養により得られた細胞分散液を2mLサンプリングし、これを直径20mmの培養ウェルに注入する。ウェルの中央部を、光学顕微鏡を用いて、倍率200倍で観察し、スフェロイドの直径を任意に20点計測する。直径の計測は、20点のスフェロイドのそれぞれについて長辺および短辺を測定し、これらの算術平均値を各スフェロイドの直径D、D、D・・・D20とする。こうして測定したスフェロイドの直径から、下記式によって20点のスフェロイドの直径の算術平均値Davgおよびスフェロイドの直径の分布Ddistを算出する。
avg=(D+D+D+・・・+D20)/20
dist=(Dmax−Dmin)/Davg
ただし、Dmaxはスフェロイドの直径の最大値であり、Dminはスフェロイドの直径の最小値である。
直径の大きなスフェロイド(以下「大スフェロイド」という場合がある。)は、例えば、播種工程において、播種細胞分散液(播種工程において、播種した細胞および培養液からなる細胞分散液をいう。)に細胞数分布を付与すること、および/または、培養工程において、浮遊細胞分散液(培養工程において、浮遊培養している細胞および培養液からなる細胞分散液をいう。)中のCNFの含有量を所定範囲内として細胞に接着性を付与することによって、形成することができる。
なお、播種細胞分散液に細胞数分布を付与することについては、播種工程に関する説明を行う際に説明する。
直径の小さなスフェロイド(以下「小スフェロイド」という場合がある。)は、例えば、浮遊培養工程において、浮遊細胞分散液に温度分布を付与して、大スフェロイドを解体することによって、形成することができる。
なお、浮遊細胞分散液に温度分布を付与することについては、培養工程に関する説明を行う際に説明する。
大スフェロイドおよび小スフェロイドの形成によって、所定のスフェロイドの直径の分布を容易に達成することができる。
5.0×10個以上といった大量の細胞を、セルロースナノファイバーを含む培養液中で培養すると、上記したスフェロイドの直径の分布が発現し易い。
大スフェロイドの解体による小スフェロイドの形成は、確率的に発生するため、母集団、すなわち、細胞総数が大きいほど発生し易い。スフェロイドどうしの衝突によるものではないため、細胞総数を増加させることが好ましい。
細胞総数を増加させ、大量培養をするには、浮遊培養時に浮遊細胞分散液に温度分布を付与することが好ましい。温度分布の付与については後述する。
本発明では、複数の培養容器からの、スフェロイドの平均直径が大きな培養細胞分散液とスフェロイドの平均直径が小さな培養細胞分散液とを混合することによって、単一の培養容器内の培養細胞分散液中のスフェロイドの直径の分布を所定の範囲内としても、優れた細胞沈降率を得ることはできない。培養終了した単一培養基内の培養細胞分散液中のスフェロイドの直径の分布を所定の範囲内とすることによってはじめて、本発明は上記効果を奏する。すなわち、スフェロイドの直径の分布が、培養終了時に上記範囲内となっていることが、本発明の作用効果を奏するために肝要である。
別々の培養容器で培養して得られた、スフェロイドの平均直径が大きな培養細胞分散液とスフェロイドの平均直径が小さな培養細胞分散液とを混合しても、優れた細胞沈降率、すなわち高い回収率、を得られない理由は次の通り説明できる。
培養初期からスフェロイドの直径の分布を上記範囲内とすると、直径の大きなスフェロイドおよび直径の小さなスフェロイドが容器内で均一に分布し、培養終了後、軽衝撃等を与えてハイドロゲルのネットワークを崩す際、均一に壊れるため、培養した細胞を沈降させ易く、細胞沈降率が向上する。
一方、培養終了後に複数の培養細胞分散液を混合すると、直径の大きなスフェロイドおよび直径の小さなスフェロイドが不均一に分散され、ネットワークが均一に壊れず、ハイドロゲルの塊が残るため、培養した細胞を沈降させ難く、細胞沈降率が低下する。
(基礎培地成分)
培養細胞分散液に含まれる基礎培地成分とは、細胞を培養するために必要な栄養成分を意味する。細胞の培養中に栄養成分が消費されるため、培養開始時と培養終了時とでは、基礎培地成分の含有量は、通常、相違する。
培養開始時の基礎培地成分は、細胞の種類によって適宜選択することができるが、ヒト細胞を培養するための基礎培地成分を含む培地としては、例えば、イーグル最小必須培地(EMEM(Eagle's minimal essential medium)と称する場合がある。)および/またはその変法培地などが挙げられる。EMEMの変法培地として、例えば、ダルベッコ・フォークト変法イーグル最小必須培地(DMEM(Dulbecco's modified Eagle medium))が挙げられる。また、基礎培地成分を含む培地としては、これらの最小必須培地にビタミン、アミノ酸、およびグルコース等の成分を添加したものも含まれる。
(セルロースナノファイバー)
培養細胞分散液に含まれるセルロースナノファイバーは、平均直径2.0nm以上100nm以下のセルロースナノファイバー(以下、CNF(cellulose nanofiber)という場合がある。)である。
CNFの平均直径は、2.0nm以上100nm以下であれば特に限定されないが、好ましくは3.0nm〜50nm、より好ましくは4.0〜20nmである。
CNFの平均直径が2.0nm未満では、CNFのネットワーク構造が弱くなり過ぎ、後述する培養工程において、培養中の細胞の浮遊性が低下し、細胞増殖率が低下する。
これは、細胞を浮遊培養できなくなることによって、細胞の増殖に必要な酸素および栄養が十分に供給されず、細胞の増殖が抑制されるからである。
CNFの平均直径が100nm超では、ネットワーク構造が強くなりすぎ、沈降工程において、僅かな衝撃等によってスフェロイドを沈降させ難く、細胞沈降率が低下する。
これは、僅かな衝撃等がトリガーとなって、直径が大きなスフェロイドがCNFのネットワークに衝突し、CNFのネットワークを破壊して、浮力を失わせ、細胞を沈降させるためである。
CNFの平均直径は、その製造条件を調整することによって、調節することができる。
例えば、機械解砕でCNFを製造する場合、解砕機の圧力を高くするほど、または解砕機の処理回数(パス回数)を多くするほど、CNFの平均直径を小さくすることができる。すなわち、CNFの平均直径を細くすることができる。解砕機の圧力を低くするほど、または解砕機の処理回数(パス回数)を少なくするほど、CNFの平均直径を大きくすることができる。すなわち、CNFの平均直径を太くすることができる。
また、例えば、化学解砕でCNFを製造する場合、化学修飾(例えば、酸化(特許第4998981号公報を参照)、カルボキシメチル化(例えば、国際公開第2015/107995号を参照)、またはリン酸エステル化(例えば、国際公開第2014/185505号を参照)など)の後に機械解砕し、解砕機の圧力および/または処理回数を調整することによって、CNFの平均直径を調節することができる。機械解砕でCNFを製造する場合と同様、解砕機の圧力を高くするほど、または解砕機の処理回数(パス回数)を多くするほど、CNFの平均直径を小さくすることができ、解砕機の圧力を低くするほど、または解砕機の処理回数(パス回数)を少なくするほど、CNFの平均直径を大きくすることができる。
なお、CNFの平均直径は、以下の方法(特許第5544053号明細書を参照)により求めたものである。
CNF濃度が0.001質量%となるように希釈したCNF水分散液を調製する。このCNF分散液をマイカ製試料台に薄く延ばし、50℃で加熱乾燥させて観察用試料を作成する。観察用試料をAFM(Atomic Force Microscope;原子間力顕微鏡)を用いて観察し、観察した形状像の断面高さを10点計測する。10点の計測値の算術平均値をCNFの平均直径とする。
CNFの平均繊維長は、特に限定されないが、好ましくは0.20μm以上2.0μm以下であり、より好ましくは0.30μm以上1.5μm以下であり、さらに好ましくは0.40μm以上1.0μm以下である。
この範囲内であると、CNFのネットワークを崩すことがさらに容易となるため、細胞沈降率細胞をさらに向上させることができる。
なお、CNFの平均繊維長は、特表2013−541956号公報に記載された方法に従って測定することができる。
CNFの平均繊維長は、その製造条件を調整することによって、調節することができる。
例えば、機械解砕でCNFを製造する場合、解砕処理時のCNF分散液の温度を上げるほど平均繊維長を短くすることができ、CNF分散液の温度を下げるほど平均繊維長を長くすることができる。
また、例えば、化学解砕でCNFを製造する場合、化学修飾(例えば、酸化(特許第4998981号公報を参照)、カルボキシメチル化(例えば、国際公開第2015/107995号を参照)、またはリン酸エステル化(例えば、国際公開第2014/185505号を参照)など)の際の処理温度を上げるほど平均繊維長を短くすることができ、処理温度を下げるほど平均繊維長を長くすることができる。
CNFの含有量は、培養細胞分散液の0.010質量%以上1.0質量%以下であり、好ましくは0.020質量%以上0.50質量%以下、より好ましくは0.030質量%以上0.10質量%以下である。
CNFの含有量を培養細胞分散液の0.010質量%以上1.0質量%以下の範囲内とすることで、僅かな衝撃等でネットワークに欠陥を発生させ易く、浮力が低下し、細胞沈降率を向上することができる。液培養細胞分散液中のCNFの含有量が0.10質量%未満では、CNFが培養した細胞に十分な浮力を与えるネットワークを形成することができず、良好な細胞増殖率を達成することができない。また、培養細胞分散液中のCNFの含有量が1.0質量%超では、僅かな衝撃等によってCNFのネットワークに培養した細胞が十分に沈降するだけの欠陥を生じさせることができず、良好な細胞沈降率を達成することができない。
なお、本発明において「良好な細胞沈降率」または「細胞沈降率が良好である」とは、培養終了後、培養細胞分散液(沈降工程における、培養された細胞と培養液からなる分散液をいう。)に僅かな衝撃を与えるだけで細胞(スフェロイドを含む。)が沈降することをいう。
CNFは、カルボキシ基を含有することが好ましい。
CNFのカルボキシ基含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.60mmol/g以上2.0mmol/g以下であり、より好ましくは0.70mmol/g以上1.9mmol/g以下であり、さらに好ましくは0.90mmol以上1.8mmol/g以下である。
CNFのカルボキシ基含有量がこの範囲内であると、CNFの細胞への吸着力が適度なものとなることにより、細胞相互の凝集を促進するため、直径の大きなスフェロイド(「大スフェロイド」という場合がある。)の形成をし易くし、かつ、温度勾配によって大スフェロイドをバラし易くなることにより、直径の小さなスフェロイド(「小スフェロイド」という場合がある。)の形成をし易くするため、スフェロイドの直径の分布を所定範囲内とすることがより容易となる。
CNFにカルボキシ基を導入する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、TEMPO(2,2,6,6−tetramethyl−1−pyperizine−N−oxyl;2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシル)酸化による方法(例えば、国際公開2010/116826号、または国際公開第2009/084566号等を参照)、およびカルボキシメチル化する方法(例えば、国際公開第2014/088072号、または特許第4055914号公報等を参照)などが挙げられる。酸化処理の際の反応時間、反応温度および/もしくは酸化剤の量、ならびに/またはカルボキシメチル化処理の際の反応時間、反応温度および/もしくはカルボキシメチル化剤の量等を調整することにより、カルボキシ基導入量を調整することができる。
なお、CNFのカルボキシ基含有量は、以下の方法(特許第5351586号明細書を参照)により求めたものである。
CNFの0.5質量%スラリーを60mL調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とする。このスラリーに0.05M水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定する。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム水溶液量A(mL)から、下記式により算出する。
カルボキシ基含有量(mmol/g)=A(mL)×0.05(mol/L)/CNF質量(g)
《沈降操作》
沈降工程は、培養容器に僅かな衝撃等を加える沈降操作を含んでもよい。
ここで、「僅かな衝撃等」は特に限定されないが、例えば、培養容器を僅かな高さ(例えば「数mmの高さ」をいう。)から落とす、または、培養容器を軽く叩く、等の行為による衝撃等が挙げられる。
より具体的には、僅かな衝撃等として、以下に例示される。ただし、弱い機械的な刺激であればよく、以下に例示されるものに限定されない。
・衝撃
培養細胞分散液に僅かな衝撃を与えることによって、培養した細胞を沈降させることができる。培養細胞分散液が入った培養容器に衝撃を与えてもよいし(容器衝撃法)、培養細胞分散液に球等を投げ入れて衝撃を与えてもよい(投入衝撃法)。容器衝撃法は、例えば、培養細胞分散液の入った培養容器を所定の高さから落とすことによって実施される。投入衝撃法は、例えば、錘を所定の高さから培養細胞分散液に投げ入れることで実施される。衝撃の強度は「ガル(Gal)」で表され、1.0ガル=1.0cm/s=1.0×10−2m/sである。本発明の培養細胞の回収方法においては、好ましくは8.0ガル以下、より好ましくは0.20ガル以上5.0ガル以下、さらに好ましくは0.40ガル以上3.0ガル以下、の衝撃を培養細胞分散液に与えることにより、CNFのネットワークが破壊され、培養した細胞を沈降させることができる。
培養した細胞を沈降させた後は、例えば、デカンテーション、デカントアスピレーション、またはアスピレーションなど、従来公知の手段によって、沈降上清である培養液を除去することができる。
・振動
培養細胞分散液に軽く振動を与えることによって、培養した細胞を沈降させることができる。これは、たとえば容器を振ることで達成できる。振動の大きさは「デシベル(dB)」で表される。本発明の培養細胞の回収方法においては、好ましくは70dB以下、より好ましくは30dB以上65dB以下、さらに好ましくは40dB以上60dB以下、の振動を培養細胞培養液に与えることにより、CNFのネットワークが破壊され、培養した細胞を沈降させることができる。
・撹拌
培養細胞分散液に軽く回転を与えることによって、培養した細胞を沈降させることができる。培養細胞分散液が入った培養容器ごと回転させてもよいし、培養細胞分散液に撹拌羽および/またはマクネティックスターラーを入れて撹拌してもよい。撹拌の強度は「回毎分(rpm;revolution per minute)で表される。本発明の培養細胞の回収方法においては、好ましくは200rpm以下、より好ましくは10rpm以上150rpm以下、さらに好ましくは20rpm以上100rpm以下、の撹拌を培養細胞分散液に与えることにより、CNFのネットワークが破壊され、培養した細胞を沈降させることができる。なお、培養細胞分散液が入った培養容器ごと回転させる場合、従来の培養細胞の回収方法において行われていた遠沈処理も培養した細胞を含む培養液が入った容器を回転する点が共通するが、通常の細胞沈降には1000rpm(335×g)以上と、本発明の回転数の5倍以上の回転数が必要である。そのため、細胞に高い加速度をかけることとなり、培養した細胞が死亡し易い。
〈培養工程〉
本発明の培養細胞の回収方法は、沈降工程を行う前に、培養工程を実施してもよい。
培養方法は、特に限定されないが、例えば、国際公開第2015/111734号([0032]〜[0033])、または国際公開第2014/136581号([0063]〜[0095])に記載された浮遊培養の方法を用いる事ができる。
(温度分布)
培養工程においては、浮遊細胞分散液(培養工程において、浮遊培養している細胞および培養液からなる細胞分散液をいう。)に温度分布を付与してもよい。
浮遊培養時に付与する温度分布は、特に限定されないが、好ましくは0.1℃以上3.0℃以下、より好ましくは0.2℃以上2.0℃以下、さらに好ましくは0.3℃以上1.0℃以下である。
温度分布がこの範囲内であると、細胞分散液中に適度な温度勾配が規制され、浮遊培養時の細胞分散液に弱い撹拌効果を付与することとなり、大スフェロイドの解体による小スフェロイドの形成が促進され、所定のスフェロイドの直径の分布を達成することができる。
また、撹拌効果により浮遊培養持の細胞分散液中の酸素拡散がより向上するとともに、CNFのネットワーク形成に影響を与えず、細胞の浮遊培養に支障がないことから、細胞増殖率がより向上する。結果として、細胞増殖率および細胞回収率をともに向上させることができる。
このような温度分布を浮遊細胞分散液に付与する方法は、特に限定されないが、例えば、浮遊細胞分散液が入った培養容器を恒温槽にいれ、かつ培養容器の下にホットプレートを敷き、両者に温度差を設けることで達成できる。
ここで、温度分布は、以下の方法により求めたものである。
温度数分布Tdiff(℃)は、浮遊培養中の細胞分散液の液温の最高値Tmax(℃)および最低値Tmin(℃)から、下記式(3)によって求めた温度差である。
diff(℃)=Tmax−Tmin(℃) (3)
〈播種工程〉
本発明の培養細胞の回収方法は、培養工程を行う前に、播種工程を実施してもよい。
播種工程は、種細胞として細胞を播種する工程である。
培養液に細胞を播種する方法は、特に限定されないが、例えば、細胞を培養液に分散して調製した懸濁液を培養液に注入する方法が挙げられる。
(細胞数分布)
播種細胞分散液(播種工程において、播種した細胞および培養液からなる細胞分散液をいう。)に、細胞数分布を付与してもよい。
播種細胞分散液に細胞数分布を付与することによって、大スフェロイドの形成を促し、浮遊培養終了時に所定のスフェロイドの直径の分布を達成することが容易になる。
播種細胞分散液に付与する細胞数分布は、特に限定されないが、好ましくは1.0%以上50%以下、より好ましくは2.0%以上40%以下、さらに好ましくは3.0%以上30%以下である。
この範囲内であると、浮遊培養時の細胞分散液中に大スフェロイドを形成することができ、所定のスフェロイドの直径の分布を達成することができる。その結果として、細胞増殖率および細胞回収率をともに向上させることができる。
ここで、細胞数分布は、以下の方法により求めたものである。
培養液に細胞を播種した直後に細胞分散液を2mLサンプリングし、これを直径20mmの培養ウェルに注入する。ウェルの中央部を、光学顕微鏡を用いて、倍率200倍で10視野観察し、細胞分散液1mLあたりの細胞数を計測する。最初に選択した10視野の細胞数の算術平均値を計算し、1番目のサンプルの平均値N(個/mL)とする。さらにサンプリングから10回繰り返し、N、N、・・・、N10を求める。N〜N10から、下記式によって10回のサンプリングによる細胞数の算術平均値Navg(個/mL)および細胞数分布Ndist(%)を求める。
avg(個/mL)=(N+N+N+・・・+N10)/10 (個/mL)
dist(%)=(Nmax−Nmin)/Navg×100 (%)
ただし、NmaxはN〜N10の最大値であり、NminはN〜N10の最小値である。
細胞数分布を付与する方法は、特に限定されないが、好ましくは培養液に細胞を播種する際に、時間間隔を変動させて培養液に注入(または、滴下)する方法が挙げられる。
注入時間間隔の変動は、特に限定されないが、好ましくは0.10以上10以下、より好ましくは0.20以上8.0以下、さらに好ましくは0.30以上〜5.0以下である。
注入時間間隔の変動がこの範囲内であると、所定のスフェロイドの直径の分布を達成しやすい。
ここで、入時間間隔の変動は、下記式によって求めた値である。
注入時間間隔の変動=(注入する時間の間隔の最大値と最小値の差)/全時間間隔の平均値
細胞播種時に細胞数分布を付与することにより、培養時の細胞分散液中に細胞濃度の高いところ(播種時に時間間隔が短かったところ)と細胞濃度の低いところ(播種時に時間間隔が長かったところ)が形成される。すなわち、培養細胞分散液に細胞数分布が形成される。細胞数分布の高いところで細胞が集まり易く、大スフェロイドを形成し易い。
このとき、CNFがカルボキシ基を有することで細胞と相互作用し易く(細胞を凝集させスフェロイドの形成を促し)、上記の効果をさらに促進する。
〈培養液調製工程〉
本発明の培養細胞の回収方法は、播種工程を行う前に、培養液調製工程を実施してもよい。
培養液調製工程は、細胞を培養するための培養液を調製する工程である。
本発明において、培養液調製工程は、セルロースナノファイバーの調製と、培養液の調製とを含み得る。
セルロースナノファイバーとして既製品を使用する場合は、セルロースナノファイバーの調製を省略することができる。
《セルロースナノファイバーの調製》
(TEMPO(2,2,6,6−tetramethyl−1−pyperizine−N−oxyl;2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシル)化CNFの調製方法)
TEMPO化CNFの調製方法は、特に限定されないが、例えば、特開2009−263853号公報([0015]〜[0030])に記載された方法に従って、セルロース系材料を酸化剤(次亜塩素酸ナトリウム)存在下でTEMPO(2,2,6,6−tetramethyl−1−pyperizine−N−oxyl;2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシル)触媒酸化処理を行って酸化処理されたセルロース系原料を、超高圧ホモジナイザーを用いて湿式微粒化処理して解繊することにより、TEMPO化セルロースナノファイバーを調製することができる。
(CM(carboxymethyl;カルボキシメチル)化CNFの調製方法)
CM化CNFの調製方法は、特に限定されないが、例えば、国際公開第2015/107995号([0056])に記載された方法に従って、アルカリ触媒存在下で、CM化剤であるモノクロロ酢酸を用いてCM化処理されたセルロース系原料を、高圧ホモジナイザーを用いて湿式微粒化処理して解繊することにより、CM化セルロースナノファイバーを調製することができる。
その他、特開2015−227517、特開2015−134873、特開2015−4032、特開2014−193580、特開2013−185122、特許3642147、特許4055914、国際公開第13/137140、国際公開第2015/107995、国際公開第2015/50117、国際公開第2014/181560、国際公開第2014/181260、国際公開第2014/088072、国際公開第2014/087767等に記載されたCM化CNFの調製方法を使用できる。
(リン酸処理CNF)
リン酸基をCNFに導入することにより、より好ましくはリン酸エステル化することにより、調製することができる。
例えば、国際公開第2014/185505、特開2016−37031、国際公開第2016/002689、国際公開第2016/002688号に記載された方法を使用することができる。
(機械解砕CNFの調製方法)
機械解砕CNFの調製方法は、特に限定されないが、例えば、国際公開第2015/111734号([0039])に記載された方法に従って、セルロース系原料を、高圧ホモジナイザーを用いて湿式微粒化処理して解繊することにより、機械解砕CNFを調製することができる。
CNFの由来は特に限定されず、パルプ由来のCNF、バクテリアセルロース(BC;bacterial cellulose)由来のCNF、およびエレクトロスピニングによるナノファイバーのいずれも使用することができるが、特に好ましくはパルプ由来のCNFである。これは、繊維強度が強く、継代でスフェロイドが細分化し難いからである。
《培養液の調製》
(CNF無添加培養液の調製)
使用する細胞に適した基礎培地を、従来公知の方法によって、調製することができる。
例えば、国際公開第2015/111734号([0029]〜[0031])に記載された培地、または国際公開第2014/136581号([0062])に記載された培地を使用してもよい。
(CNFの添加)
基礎培地にCNFを添加することにより、培養液を調製する。
CNFを基礎培地に添加する際、急激な撹拌を行うことで、ハイドロゲルのネットワークを乱し(欠陥を形成させ)崩し易くし、沈降工程における細胞沈降を促すことができる。
具体的には、CNFを基礎培地に添加する際、マグネティックスターラー等で撹拌することが好ましく、さらには、添加後、高回転のホモジナイザーで撹拌することが好ましい。
回転数は、特に限定されないが、好ましくは1000rpm〜10万rpmであり、より好ましくは3000rpm〜5万rpmであり、さらに好ましくは6000rpm〜2万rpmである。
撹拌時間は、特に限定されないが、好ましくは10秒以上30分以下であり、より好ましくは20秒以上15分以下であり、さらに好ましくは30秒以上10分以下である。
回転数および時間がともにこの範囲内であると、細胞増殖率および細胞沈降率がともに向上しやすい。
培養液の量は、特に限定されないが、好ましくは200mL以上であり、より好ましくは500mL以上1000L以下であり、さらに好ましくは1000mL以上500L以下である。培養液の体積がこの範囲内であると、浮遊培養工程において、浮遊細胞分散液中に酸素を十分に供給することができるため、大量の細胞を培養でき、その結果、効率的に培養細胞の回収をすることが容易となる。
[培養細胞分散液]
本発明は、また、上記した本発明の培養細胞の回収方法に用いる培養細胞分散液を提供する。
この培養細胞分散液は、既に述べたとおりである。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定して解釈されるものではない。
[実施例1〜4、比較例1および2]
以下に説明する比較例1、実施例1〜4、および比較例2は、播種時の播種細胞濃度がスフェロイドの直径の分布に与える影響を比較した例である。
なお、実施例1〜4および比較例2は、播種時の播種細胞濃度を比較例1から変更した上、さらに、播種工程において細胞を播種する際に注入時間変動を付与し、かつ、培養工程において浮遊細胞分散液(培養工程における、浮遊培養中の細胞および培養液からなる細胞分散液をいう。)に温度分布を付与した例である。
〈比較例1〉
《培養液調製工程》
(セルロースナノファイバーの調製)
特開2009−263853号公報([0015]〜[0030])に記載された方法に従って、セルロース系材料を酸化剤(次亜塩素酸ナトリウム)存在下でTEMPO(2,2,6,6-tetramethyl-1-pyperizine-N-oxyl;2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシル)触媒酸化処理を行って酸化処理されたセルロース系原料を、超高圧ホモジナイザーを用いて湿式微粒化処理して解繊することにより、TEMPO化セルロースナノファイバー(TEMPO化CNF1」という場合がある。)を調製した。
調製したTEMPO化CNF1の平均直径およびカルボキシ基導入量を以下の方法に従って測定したところ、平均直径は5.0nmであり、カルボキシ基導入量は1.9mmol/gであった。
・平均直径の測定方法
セルロースナノファイバーの濃度が0.001質量%となるように希釈したセルロースナノファイバー水分散液(以下「CNF水分散液」という場合がある。)を調製した。このCNF水分散液をマイカ製試料台に薄く延ばし、50℃で加熱乾燥して観察用試料を作成し、原子間力顕微鏡(AFM:atomic force microscope)を用いて観察した形状像の断面高さを10点計測し、平均直径を算出した。
・カルボキシ基導入量の測定方法
セルロースナノファイバーの0.5質量%スラリーを60mL調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が穏やかな弱酸の中和段階において消費された0.05M水酸化ナトリウム水溶液の量(a)から、下記式を用いて算出した。
カルボキシ基導入量(mmol/g)=a(mL)×0.05/セルロースナノファイバー質量(g)
(培養液の調製)
調製したTEMPO化CNF1を純水と混合して0.3質量%水分散液(以下「CNF分散液」という場合がある。)を得た。このCNF分散液を、121℃で15分間オートクレーブ滅菌し、滅菌後、室温まで冷却した。
粉末培地(ダルベッコ変法イーグル培地2,日水製薬(株)製)に加水し、30分程マグネティックスターラーで撹拌してダルベッコ変法イーグル培地2溶液(以下「DMEM2溶液」という場合がある。)を調製した。DMEM2溶液を、121℃で15分間オートクレーブ滅菌し、滅菌後、室温まで冷却した。
オートクレーブ滅菌後、室温まで冷却したDMEM2溶液に、滅菌したCNF分散液を、表1記載の濃度になるように無菌条件下で滴下した。滴下後、CNF分散液を添加したDMEM2溶液を、ホモミキサーを用いて、10000rpmで5分間撹拌処理し、CNF添加DMEM2溶液を得た。
このCNF添加DMEM2溶液を室温まで冷却した後に、ろ過滅菌したL−グルタミン溶液(L−グルタミン溶液(×100),和光純薬工業(株)製;200mmol/L)を終濃度2mMとなるように添加し、さらに滅菌した10質量%炭酸水素ナトリウム水溶液を1mL加え、アミノ酸添加DMEM2溶液を得た。このアミノ酸添加DMEM2溶液の少量を採取し、pH試験紙を使用して溶液のpHがpH7.0〜8.0の範囲内であることを確認した。少量を採取して残ったアミノ酸添加DMEM2溶液に、使用前に10体積%となるようにFBS(fetal bovine serum;ウシ胎児血清)を加え、細胞の培養に使用する培養液を得た。
培養容器として、親水化処理したポリスチレン製培養容器(浮遊細胞培養用フラスコ MS−21800,住友ベークライト社製;培養面積225cm;容量800mL)を準備した。なお、培養容器は、培養液を注入した際の培養液の高さが4.0〜5.0cmとなる培養面積(底面積)を有するものを選定した。
準備した培養容器に、調製した培養液を表1に示す量、無菌的に注入した。
《播種工程》
培養液を注入した培養容器に、ヒト間葉系幹細胞(hMSC(human mesenchymal stem cells),Lonza社製;カタログ番号 PT−2501)(以下「ヒト間葉系幹細胞PT−2501」という場合がある。)を種細胞として播種した(培養容器内の培養液に種細胞を播種したものを、以下「播種細胞分散液」という場合がある。)。具体的には、ヒト間葉系幹細胞PT−2501を培養液に分散して調製した懸濁液(以下「PT−2501懸濁液」という。)を培養液に注入した。
この結果、下記細胞数分布の算出方法従って算出した細胞数分布は表1に示すとおりであった。
・細胞数分布の算出方法
細胞を播種した直後に2mLサンプリングし、これを直径20mmの培養ウェルに注入し、光学顕微鏡を用いて倍率200倍で10視野観察し、細胞数を計測して、このサンプリングにおける細胞数の平均値(算術平均値)を算出した。サンプリングから平均値の算出までを10回繰返し、サンプリングごとの細胞数の平均値N、N、N、・・・、N10を算出した。これらの細胞数の平均値から、下記式によって細胞数分布を算出した。
細胞数分布(%)={(Nmax−Nmin)/Navg}×100(%)
ただし、NmaxおよびNminは、それぞれ、NからN10までの最大値および最小値を表し、NavgはNからN10までの算術平均値を表す。
《培養工程》
細胞を播種した培養容器を、温度37℃に設定したインキュベーター(Heracall VIOS COインキュベーター,サーモフィッシャー株式会社製)の中に入れ、細胞の培養を開始した(培養工程における、浮遊培養中の細胞および培養液からなる細胞分散液を「浮遊細胞分散液」という。)。
培養条件は、二酸化炭素濃度5.0体積%、および湿度95%RHとした。
培養開始から1日後、培養容器に接着した細胞を取り除くため、培養容器中の浮遊細胞分散液を新しいアズノール滅菌容器(アズノール滅菌シャーレ GD90−15,アズワン社製)に移し、さらに4日間、培養を継続して、スフェロイドを形成した。
《沈降工程》
培養細胞分散液(沈降工程における、培養終了した培養容器中の培養された細胞および培養液からなる細胞分散液をいう。)中の総細胞数、スフェロイドの平均直径および直径の分布、細胞増殖率、細胞沈降率、ならびに細胞死亡率を以下に記載する方法に従って求めた。
その結果、表1に示すとおり、細胞増殖率4.5倍であり、細胞沈降率65%であり、細胞死亡率3.0%であった。
・細胞総数の算出方法
培養細胞分散液を2mLサンプリングし、トリプシン処理によってスフェロイドを形成している細胞をばらばらにした後、光学顕微鏡を用いて、培養細胞分散液1mLあたりの細胞数を計測し、これに培養細胞分散液量をかけて培養細胞分散液中の細胞総数を算出した。
・スフェロイドの平均直径および直径の分布の算出方法
培養細胞分散液を2mLサンプリングし、これを直径20mmの培養ウェルに注入した。培養ウェルの中央部を、光学顕微鏡を用いて、倍率200倍で観察し、スフェロイドの直径を任意に20点計測した。直径の計測は、20点のスフェロイドのそれぞれについて長辺および短辺を測定し、これらの算術平均値を各スフェロイドの直径D、D、D・・・D20とした。こうして測定したスフェロイドの直径から、下記式によって20点のスフェロイドの直径の算術平均値Davgおよびスフェロイドの直径の分布Ddistを算出した。
avg=(D+D+D+・・・+D20)/20
dist=(Dmax−Dmin)/Davg
ただし、DmaxおよびDminは、それぞれ、スフェロイドの直径の最大値および最小値である。
・細胞増殖率の算出方法
培養細胞分散液中の細胞総数をN個、播種した細胞数をNf個として、細胞増殖率を下記式により算出した。
細胞増殖率=N/Nf (倍)
細胞増殖率は高いほどよく、特に7.3倍以上であることが望ましい。
・細胞沈降率の算出方法
1)沈降操作前の全スフェロイド数(N)の計測:
培養細胞分散液を2mLサンプリングし、これを37℃に保った直径20mmのポリスチレン製培養ウェルに注入した。培養ウェルの中央部を、光学顕微鏡を用いて、倍率200倍で10視野観察し、各視野についてスフェロイド数を測定した。この平均値をNとした。これを10個の培養ウェルの培養液に対して繰返し実施し、N、N、・・・、N10を求めた。N〜N10の平均値から培養細胞分散液1mLあたりのスフェロイド数N(個/mL)を算出した。なお、直径50μm以上の細胞塊をスフェロイドとして扱った。
2)沈降操作後の浮遊(非沈降性)スフェロイド数(n)の計測:
上記培養ウェルに沈降処理を行った後、ウェル中の培養液の上澄みを静かに採取した。採取した上澄みを、同様に顕微鏡を用いて倍率200倍で10視野観察し、各視野について浮遊しているスフェロイド数を測定した。この平均値をn1とした。これを10個の培養ウェルの培養液に対して繰り返し測定し、n、n、・・・、n10を求めた。n〜n10の平均値から上澄み1mLあたりの浮遊スフェロイド数n(個/mL)を算出した。なお、直径50μm以上の細胞塊をスフェロイドとして扱った。
3)細胞沈降率の算出:
下記式により細胞沈降率(%)を算出した。
細胞沈降率(%)={(N−n)/N}×100 (%)
細胞沈降率は高いほどよく、特に70%以上であることが望ましい。
・細胞死亡率の算出方法
沈降操作前の細胞について、特表2013−541956号公報([0082])に記載の方法に従って、生細胞と死細胞とを染め分け、沈降操作前の細胞生存率Xa(%)を算出した。
次に、沈降操作後の細胞について、同様にして、沈降操作後の細胞生存率Xb(%)を算出した。
沈降操作による細胞死亡率を下記式により算出した。
細胞死亡率(%)=Xa(%)−Xb(%)
細胞死亡率は低いほどよく、特に5.0%以下であることが望ましい。
〈実施例1〉
《培養液調製工程》
比較例1と同様にして培養液を調製した。
《播種工程》
ヒト間葉系幹細胞PT−2501を培養液に分散して調製した懸濁液(以下「PT−2501懸濁液」という。)を、播種細胞分散液中の細胞濃度(播種時細胞濃度)が表1に示す値となるように培養液に注入した点、および、この際、PT−2501懸濁液の培養液への注入は、30回に分けて行い、注入時間間隔を変更しながら、注入時間変動が表1に示す値となるように、かつ、平均注入時間間隔が5.0秒となるように行った点を除いて、比較例1と同様にして細胞を播種した。
なお、注入時間変動は、下記式によって算出した。
注入時間変動=(注入時間間隔の最大値(秒)−注入時間間隔の最小値(秒))/平均注入時間間隔(秒)
《培養工程》
細胞を播種した培養容器をプレートヒーター(プレートヒーターMPHK型,株式会社ミスミ製;サイズ150×150mm)上に設置し、プレートヒーターごと、温度37℃に設定したインキュベーター(Heracall VIOS COインキュベーター,サーモフィッシャー株式会社製)の中に入れ、細胞の培養を開始した(培養工程における、浮遊培養中の細胞および培養液からなる細胞分散液を「浮遊細胞分散液」という。)点、プレートヒーターの出力を調整することによって、浮遊細胞分散液の上面および底部との間に表1の「温度分布(℃)」の欄に記載した温度差(浮遊細胞分散液の上面および底部に設置した熱電対で測定した温度の差をいう。)を設けた点、および、培養容器中の浮遊細胞分散液を新しいアズノール滅菌容器(アズノール滅菌シャーレ GD90−15,アズワン株式会社製)に移した後、さらに4日間培養を継続した際に、表1の「温度分布(℃)」の欄に記載した温度差を設けた点を除いて、比較例1と同様にして、細胞の培養を行ってスフェロイドを形成した。
《沈降工程》
比較例1と同様にして沈降操作を行った。
その結果、表1に示すとおり、細胞増殖率9.2倍であり、細胞沈降率75%であり、細胞死亡率4.0%であった。
〈実施例2〉
播種工程において、播種時細胞濃度を表1に示す濃度とした点を除いて、実施例1と同様にして、培養液調製工程、播種工程、培養工程、および沈降工程を行った。
その結果、表1に示すとおり、細胞増殖率9.3倍であり、細胞沈降率80%であり、細胞死亡率3.0%であった。
〈実施例3〉
播種工程において、播種時細胞濃度を表1に示す濃度とした点を除いて、実施例1と同様にして、培養液調製工程、播種工程、培養工程、および沈降工程を行った。
その結果、表1に示すとおり、細胞増殖率9.5倍であり、細胞沈降率96%であり、細胞死亡率2.0%であった。
〈実施例4〉
播種工程において、播種時細胞濃度を表1に示す濃度とした点を除いて、実施例1と同様にして、培養液調製工程、播種工程、培養工程、および沈降工程を行った。
その結果、表1に示すとおり、細胞増殖率8.6倍であり、細胞沈降率95%であり、細胞死亡率3.0%であった。
〈比較例2〉
播種工程において、播種時細胞濃度を表1に示す濃度とした点を除いて、実施例1と同様にして、培養液調製工程、播種工程、培養工程、および沈降工程を行った。
その結果、表1に示すとおり、細胞増殖率7.2倍であり、細胞沈降率95%であり、細胞死亡率4.0%であった。
〈比較例1、実施例1〜4、および比較例2の結果の解説〉
実施例1〜4では、播種工程において播種時細胞濃度を変えることにより、培養終了した培養容器中の培養細胞分散液中のスフェロイドの直径の分布を変化させ、細胞増殖率および細胞沈降率に影響を与えた。
実施例1〜4のスフェロイドの直径の分布は0.10以上3.0未満の範囲内であり、高い細胞増殖率(8.6倍以上)、および、高い細胞沈降率(75%以上)を示した。
また、実施例2〜4のスフェロイドの直径の分布は0.20以上2.1以下の範囲内であり、高い細胞増殖率(8.6倍以上)、および、より高い細胞沈降率(80%以上)を示した。
さらに、実施例3のスフェロイドの直径の分布は0.30以上1.0以下の範囲内であり、より高い細胞増殖率(9.5倍)、および、さらに高い細胞沈降率(96%)を示した。
比較例1は、スフェロイドの直径の分布が本発明の規定する範囲を下回った例である。
スフェロイドの平均直径が750μmであり、直径の分布が0であったことから、直径がより大きなスフェロイドが形成されておらず、僅かな衝撃によってセルロースナノファイバーのネットワークを大規模に破壊することができず、細胞沈降率が低い結果となったと考えられる。
また、比較例1は、スフェロイドの中心部まで細胞増殖に必要な酸素および栄養が十分に届く、直径がより小さなスフェロイドが形成されておらず、細胞増殖率が低い結果となった。
比較例2は、スフェロイドの直径の分布が本発明の規定する範囲を超えた例である。
スフェロイドの平均直径が770μmであり、直径の分布が3.0であったことから、直径が大きなスフェロイドが形成された割合が大きく、培養中にセルロースナノファイバーのネットワークが破壊されてしまって浮遊培養できず、細胞増殖率が低い結果となった。
Figure 2017199737
[実施例5〜9]
実施例5〜9について、以下に説明する。
実施例5〜9は、セルロースナノファイバーの添加量が細胞増殖率および細胞沈降率に与える影響を比較する例である。
〈実施例5〉
《培養液調製工程》
(セルロースナノファイバーの調製)
表2に示す平均直径およびカルボキシ基含有量となるように酸化剤の使用量および超高圧ホモジナイザーの圧力を調整した点を除いて、実施例1と同様にしてTEMPO化セルロースナノファイバー(以下「TEMPO化CNF2」という場合がある。)を調製した。
(培養液の調製)
TEMPO化CNF1に代えて、調製したTEMPO化CNF2を表2に示す添加量で使用した点を除いて、実施例1と同様にして培養液を調製した。
調製した培養液を表2に示す量、培養容器に注入して、以降の工程に用いた。
《播種工程》
ヒト間葉系幹細胞PT−2501に代えて、ヒト胚性幹細胞H9(WiCell Research Institute, Inc., Madison, WI, USA)を使用して、表2に示す細胞濃度および注入時間変動になるように培養液に注入した点を除いて、実施例1と同様にして細胞を播種した。これにより、播種細胞分散液(播種工程における、播種した細胞および培養液からなる細胞分散液をいう。)に、表2に示す細胞数分布を付与した。
《培養工程》
プレートヒーターの出力を調整することによって、浮遊細胞分散液(培養工程における、浮遊培養中の細胞および培養液からなる細胞分散液をいう。)に、表2に示す温度分布を付与した点を除いて、実施例1と同様にして細胞を浮遊培養した。
《沈降工程》
(細胞、スフェロイド)
培養が終了した培養容器内の培養細胞分散液(沈降工程における、培養された細胞および培養液からなる細胞分散液をいう。)中の細胞の総数、スフェロイドの平均直径、およびスフェロイドの直径の分布は、表2に示すとおりであった。
(沈降操作)
培養細胞分散液の入った培養容器を左右に振ることで、培養容器中の培養細胞分散液に表2に示す強度の振動を与えた。
(結果)
表2に示すとおり、細胞増殖率8.1倍であり、細胞沈降率91%であり、細胞死亡率3.0%であった。
〈実施例6〉
培養液調製工程において、TEMPO化CNF2の添加量を表2に示す添加量とした点を除いて、実施例5と同様にして、培養液調製工程、播種工程、培養工程、および沈降工程を行った。
その結果、表2に示すとおり、細胞増殖率8.8倍であり、細胞沈降率92%であり、細胞死亡率4.0%であった。
〈実施例7〉
培養液調製工程において、TEMPO化CNF2の添加量を表2に示す添加量とした点を除いて、実施例5と同様にして、培養液調製工程、播種工程、培養工程、および沈降工程を行った。
その結果、表2に示すとおり、細胞増殖率9.5倍であり、細胞沈降率95%であり、細胞死亡率2.0%であった。
〈実施例8〉
培養液調製工程において、TEMPO化CNF2の添加量を表2に示す添加量とした点を除いて、実施例5と同様にして、培養液調製工程、播種工程、培養工程、および沈降工程を行った。
その結果、表2に示すとおり、細胞増殖率9.4倍であり、細胞沈降率85%であり、細胞死亡率3.0%であった。
〈実施例9〉
培養液調製工程において、TEMPO化CNF2の添加量を表2に示す添加量とした点を除いて、実施例5と同様にして、培養液調製工程、播種工程、培養工程、および沈降工程を行った。
その結果、表2に示すとおり、細胞増殖率9.5倍であり、細胞沈降率74%であり、細胞死亡率4.0%であった。
〈実施例5〜9の結果の解説〉
実施例5〜9では、培養液中のセルロースナノファイバーの含有量を変えることにより、細胞増殖率および細胞沈降率に影響を与えた。
また、実施例5〜9のセルロースナノファイバーの含有量は培養細胞分散液の0.010質量%以上1.0質量%以下の範囲内であり、高い細胞増殖率(8.1倍以上)、および、高い細胞沈降率(74%以上)を示した。
さらに、実施例6〜8のセルロースナノファイバーの含有量は培養細胞分散液の0.020質量%以上0.50質量%以下の範囲内であり、より高い細胞増殖率(8.8倍以上)、および、より高い細胞沈降率(85%以上)を示した。
実施例7のセルロースナノファイバーの含有量は培養細胞分散液の0.03質量%以上0.10質量%以下の範囲内であり、さらに高い細胞増殖率(9.5倍)、および、さらに高い細胞沈降率(95%)を示した。
セルロースナノファイバーの含有量が、培養細胞分散液の0.010質量%以上1.0質量%以下の範囲内であると、高い細胞増殖率、および、高い細胞沈降率を得ることができ、培養細胞分散液の0.020質量%以上0.50質量%以下の範囲内であると、より高い細胞増殖率、および、より高い細胞沈降率を得ることができ、培養細胞分散液の0.03質量%以上0.10質量%以下の範囲内であると、さらに高い細胞増殖率、および、さらに高い細胞沈降率を得ることができる。
Figure 2017199737
[実施例10〜14]
実施例10〜14について、以下に説明する。
実施例10〜14は、培養液に細胞を播種する際の注入(滴下)間隔に変動を付与し、播種細胞分散液(播種工程における、播種した細胞および培養液からなる細胞分散液をいう。)に付与する細胞数分布がスフェロイドの直径の分布に与える影響を比較する例である。
〈実施例10〉
《培養液調製工程》
(セルロースナノファイバーの調製)
国際公開第2015/107995号([0056])に記載された方法に従って、アルカリ触媒存在下で、CM化剤であるモノクロロ酢酸を用いてCM化処理されたセルロース系原料を、高圧ホモジナイザーを用いて湿式微粒化処理して解繊することにより、CM化セルロースナノファイバー(以下「CM化CNF1」という場合がある。)を調製した。調製したCM化CNF1の平均直径およびカルボキシ基導入量は、表3に示すとおりであった。
(培養液の調製)
TEMPO化CNF1に代えて、調製したCM化CNF1を表3に示す添加量で使用した点を除いて、実施例1と同様にして培養液を調製した。
調製した培養液を表3に示す量、培養容器に注入して、以降の工程に用いた。
《播種工程》
ヒト間葉系幹細胞PT−2501に代えて、ヒトiPS細胞IMR90−1(WiCell Research Institute, Inc., Madison, WI, USA)、を使用して、表3に示す細胞濃度および注入時間変動になるように培養液に注入した点を除いて、実施例1と同様にして細胞を播種した。これにより、播種細胞分散液(播種工程における、播種した細胞および培養液からなる細胞分散液をいう。)に、表3に示す細胞数分布を付与した。
《培養工程》
プレートヒーターの出力を調整することによって、浮遊細胞分散液(培養工程における、浮遊培養中の細胞および培養液からなる細胞分散液をいう。)に、表3に示す温度分布を付与した点を除いて、実施例1と同様にして細胞を浮遊培養した。
《沈降工程》
(細胞、スフェロイド)
培養が終了した培養容器内の培養細胞分散液(沈降工程における、培養された細胞および培養液からなる細胞分散液をいう。)中の細胞の総数、スフェロイドの平均直径、およびスフェロイドの直径の分布は、表3に示すとおりであった。
(沈降操作)
培養細胞分散液に撹拌子を入れ、マグネティックスターラーを用いて撹拌子を表3記載の回転数で5分間撹拌した。
(結果)
表3に示すとおり、細胞増殖率9.0倍であり、細胞沈降率73%であり、細胞死亡率4.0%であった。
〈実施例11〉
播種工程において、表3に示す細胞数分布を付与した点を除いて、実施例10と同様にして、培養液調製工程、播種工程、培養工程、および沈降工程を行った。
その結果、表3に示すとおり、細胞増殖率9.2倍であり、細胞沈降率83%であり、細胞死亡率5.0%であった。
〈実施例12〉
播種工程において、表3に示す細胞数分布を付与した点を除いて、実施例10と同様にして、培養液調製工程、播種工程、培養工程、および沈降工程を行った。
その結果、表3に示すとおり、細胞増殖率9.2倍であり、細胞沈降率93%であり、細胞死亡率2.0%であった。
〈実施例13〉
播種工程において、表3に示す細胞数分布を付与した点を除いて、実施例10と同様にして、培養液調製工程、播種工程、培養工程、および沈降工程を行った。
その結果、表3に示すとおり、細胞増殖率8.6倍であり、細胞沈降率95%であり、細胞死亡率3.0%であった。
〈実施例14〉
播種工程において、表3に示す細胞数分布を付与した点を除いて、実施例10と同様にして、培養液調製工程、播種工程、培養工程、および沈降工程を行った。
その結果、表3に示すとおり、細胞増殖率8.1倍であり、細胞沈降率94%であり、細胞死亡率4.0%であった。
〈実施例10〜14の結果の解説〉
実施例10〜14では、播種工程において注入時時間変動を付与することにより、培養終了した培養容器中の培養細胞分散液中のスフェロイドの直径の分布を変化させ、細胞増殖率および細胞沈降率に影響を与えた。
0.10〜10の注入時間変動を付与した実施例10〜14は、細胞総数が8.1×10個〜9.0×10個で、スフェロイドの直径の分布は0.10〜2.9であり、高い細胞増殖率(8.6倍以上)、および、高い細胞沈降率(73%以上)を示した。
0.20〜8.0の注入時間変動を付与した実施例11および12は、細胞総数が8.6×10個〜9.2×10個で、スフェロイドの直径の分布は0.20〜2.1であり、より高い細胞増殖率(9.2倍)、および、より高い細胞沈降率(83%以上)を示した。
1.0の注入時間変動を付与した実施例12は、細胞総数が9.2×10個で、スフェロイドの直径の分布は0.80であり、高い細胞増殖率(9.2倍)、および、より高い細胞沈降率(93%)を示した。
以上より、注入時間変動が小さいほどスフェロイドの直径の分布が小さくなり、注入時間変動が大きいほどスフェロイドの直径の径分布が大きくなることがわかる。
Figure 2017199737
[実施例15〜19]
実施例15〜19について、以下に説明する。
実施例15〜19は、浮遊細胞分散液(培養工程における、浮遊培養中の細胞および培養液からなる細胞分散液をいう。)に付与する温度分布が細胞増殖率に与える影響を比較する例である。
〈実施例15〉
《培養液調製工程》
(セルロースナノファイバーの調製)
表4に示す平均直径およびカルボキシ基含有量となるように酸化剤の使用量および超高圧ホモジナイザーの圧力を調整した点を除いて、実施例1と同様にしてTEMPO化セルロースナノファイバー(以下「TEMPO化CNF3」という場合がある。)を調製した。
(培養液の調製)
TEMPO化CNF1に代えて、調製したTEMPO化CNF3を表4に示す添加量で使用した点を除いて、実施例1と同様にして培養液を調製した。
調製した培養液を表4に示す量、培養容器に注入して、以降の工程に用いた。
《播種工程》
ヒト間葉系幹細胞PT−2501に代えて、ヒトES細胞KhES−1(京都大学再生医療科学研究所附属幹細胞医学研究センター)を使用して、表4に示す細胞濃度および注入時間変動になるように培養液に注入した点を除いて、実施例1と同様にして細胞を播種した。これにより、播種細胞分散液(播種工程における、播種した細胞および培養液からなる細胞分散液をいう。)に、表4に示す細胞数分布を付与した。
《培養工程》
プレートヒーターの出力を調整することによって、浮遊細胞分散液(培養工程における、浮遊培養中の細胞および培養液からなる細胞分散液をいう。)に、表4に示す温度分布を付与した点を除いて、実施例1と同様にして細胞を浮遊培養した。
《沈降工程》
(細胞、スフェロイド)
培養が終了した培養容器内の培養細胞分散液(沈降工程における、培養された細胞および培養液からなる細胞分散液をいう。)中の細胞の総数、スフェロイドの平均直径、およびスフェロイドの直径の分布は、表4に示すとおりであった。
(沈降操作)
培養細胞分散液の入った培養容器を持ち上げ、これを机上に落とすことで、培養容器中の培養細胞分散液に表4に示す強度の衝撃を与えた。
(結果)
表4に示すとおり、細胞増殖率8.1倍であり、細胞沈降率91%であり、細胞死亡率3.0%であった。
〈実施例16〉
培養工程において、表4に示す温度分布を付与した点を除いて、実施例15と同様にして、培養液調製工程、播種工程、培養工程、および沈降工程を行った。
その結果、表4に示すとおり、細胞増殖率9.0倍であり、細胞沈降率93%であり、細胞死亡率4.0%であった。
〈実施例17〉
培養工程において、表4に示す温度分布を付与した点を除いて、実施例15と同様にして、培養液調製工程、播種工程、培養工程、および沈降工程を行った。
その結果、表4に示すとおり、細胞増殖率9.5倍であり、細胞沈降率95%であり、細胞死亡率2.0%であった。
〈実施例18〉
培養工程において、表4に示す温度分布を付与した点を除いて、実施例15と同様にして、培養液調製工程、播種工程、培養工程、および沈降工程を行った。
その結果、表4に示すとおり、細胞増殖率9.1倍であり、細胞沈降率93%であり、細胞死亡率3.0%であった。
〈実施例19〉
培養工程において、表4に示す温度分布を付与した点を除いて、実施例15と同様にして、培養液調製工程、播種工程、培養工程、および沈降工程を行った。
その結果、表4に示すとおり、細胞増殖率8.0倍であり、細胞沈降率90%であり、細胞死亡率4.0%であった。
〈実施例15〜19の結果の解説〉
実施例15〜19では、培養工程において浮遊細胞培養液に付与する温度分布を変えることにより、培養終了した培養容器中の培養細胞分散液中のスフェロイドの直径の分布を変化させ、細胞増殖率および細胞沈降率に影響を与えた。
0.1℃以上3.0℃以下の温度分布を付与した実施例15〜19は、細胞総数が8.1×1011個〜9.2×1011個であり、スフェロイドの直径の分布は0.10以上2.9以下の範囲内であり、高い細胞増殖率(8.0倍以上)、および、高い細胞沈降率(90%以上)を示した。
0.2℃以上2℃以下の温度分布を付与した実施例16〜18は、細胞総数が8.6×1011個〜9.2×1011個であり、スフェロイドの直径の分布は0.20以上1.8以下の範囲内であり、より高い細胞増殖率(9.0倍以上)、および、より高い細胞沈降率(93%以上)を示した。
0.3.0℃以上1℃以下の温度分布を付与した実施例17は、細胞総数が9.2×1011個であり、スフェロイドの直径の分布が0.50であり、さらに高い細胞増殖率(9.5倍以上)、および、さらに高い細胞沈降率(95%以上)を示した。
以上より、浮遊細胞分散液に0.1℃以上3.0℃以下の温度分布を付与することにより、細胞総数が多い状況でも高い増殖率を確保することができることがわかった。
Figure 2017199737
[実施例20〜22]
実施例20〜22について、以下に説明する。
実施例20〜22は、セルロースナノファイバーのカルボキシ基含有量の相違および化学修飾方法の相違がスフェロイドの平均直径およびスフェロイドの直径の分布に与える効果を比較する例である。
〈実施例20〉
《培養液調製工程》
(セルロースナノファイバーの調製)
表5に示す平均直径およびカルボキシ基含有量となるように酸化剤の使用量および超高圧ホモジナイザーの圧力を調整した点を除いて、実施例1と同様にしてTEMPO化セルロースナノファイバー(以下「TEMPO化CNF4」という場合がある。)を調製した。
(培養液の調製)
TEMPO化CNF1に代えて、調製したTEMPO化CNF4を表5に示す添加量で使用した点を除いて、実施例1と同様にして培養液を調製した。
調製した培養液を表5に示す量、培養容器に注入して、以降の工程に用いた。
《播種工程》
ヒト間葉系幹細胞PT−2501に代えて、ヒト胚性幹細胞H9(WiCell Research Institute, Inc., Madison, WI, USA)を使用して、表5に示す細胞濃度および注入時間変動になるように培養液に注入した点を除いて、実施例1と同様にして細胞を播種した。これにより、播種細胞分散液(播種工程における、播種した細胞および培養液からなる細胞分散液をいう。)に、表5に示す細胞数分布を付与した。
《培養工程》
プレートヒーターの出力を調整することによって、浮遊細胞分散液(培養工程における、浮遊培養中の細胞および培養液からなる細胞分散液をいう。)に、表5に示す温度分布を付与した点を除いて、実施例1と同様にして細胞を浮遊培養した。
《沈降工程》
(細胞、スフェロイド)
培養が終了した培養容器内の培養細胞分散液(沈降工程における、培養された細胞および培養液からなる細胞分散液をいう。)中の細胞の総数、スフェロイドの平均直径、およびスフェロイドの直径の分布は、表5に示すとおりであった。
(沈降操作)
培養細胞分散液の入った培養容器を持ち上げ、これを机上に落とすことで、培養容器中の培養細胞分散液に表5に示す強度の衝撃を与えた。
(結果)
表5に示すとおり、細胞増殖率9.6倍であり、細胞沈降率98%であり、細胞死亡率1.0%であった。
〈実施例21〉
表5に示す平均直径およびカルボキシ基含有量となるようにCM化剤の使用量および高圧ホモジナイザーの圧力を調整した点を除いて、実施例10と同様にしてCM化セルロースナノファイバー(以下「CM化CNF2」という場合がある。)を調製した。
培養液調製工程において、TEMPO化CNF4に代えて、調製したCM化CNF2を表5に示す添加量で使用して培養液を調製した点を除いて、実施例20と同様にして、播種工程、培養工程、および沈降工程を行った。
その結果、表5に示すとおり、細胞増殖率9.2倍であり、細胞沈降率95%であり、細胞死亡率3.0%であった。
〈実施例22〉
国際公開第2015/111734号([0039])に記載された方法に従って、セルロース系原料を、高圧ホモジナイザーを用いて湿式微粒化処理して解繊することにより、機械解砕セルロースナノファイバー(以下「機械解砕CNF1」という場合がある。)を調製した。調製した機械解砕CNF1の平均直径およびカルボキシ基導入量は、表5に示すとおりであった。機械解砕CNF1は酸化処理等のカルボキシ基導入処理を行っていないことから、カルボキシ基導入量は0mmol/gである。
培養液調製工程において、TEMPO化CNF4に代えて、調製した機械解砕CNF1を表5に示す添加量で使用して培養液を調製した点を除いて、実施例20と同様にして、播種工程、培養工程、および沈降工程を行った。
その結果、表5に示すとおり、細胞増殖率8.4倍であり、細胞沈降率84%であり、細胞死亡率5.0%であった。
〈実施例20〜22の結果の解説〉
セルロースナノファイバーがカルボキシ基を含有する実施例20および21と、セルロースナノファイバーがカルボキシ基を含有しない実施例22とを対比すると、実施例20および実施例21の方が、実施例22よりも、細胞増殖率および細胞沈降率が高く、細胞死亡率が低かった。すなわち、実施例20および実施例21の方が、実施例23よりも優れた効果を示した。
TEMPO化セルロースナノファイバーを使用した実施例20とCM化セルロースナノファイバーを使用した実施例21とを対比すると、実施例20の方が、実施例21よりも、細胞増殖率および細胞沈降率が高く、細胞死亡率が低かった。すなわち、実施例20方が、実施例21よりも優れた効果を示した。
また、スフェロイドの平均直径は、実施例20および21では350μmであったのに対し、実施例22では50μmであった。
これは、セルロースナノファイバーがカルボキシ基を含有することにより、セルロースナノファイバーと細胞とが相互作用しやすくなり、細胞を凝集させて直径の大きなスフェロイドの形成を促進したことによると考えられる。
また、スフェロイドの直径の分布は、実施例20では0.70であったが、実施例21では0.50であった。セルロースナノファイバーのカルボキシ基含有量が同じであっても、スフェロイドの直径の分布に相違が認められた。
さらに、細胞増殖率、細胞沈降率および細胞死亡率をみると、スフェロイドの直径の分布が大きい順に、優れた結果を示している。
以上より、セルロースナノファイバーとしては、TEMPO化CNFが最も優れ、CM化CNFがその次に優れ、機械解砕CNFがさらにその次に優れると考えられる。
Figure 2017199737
[実施例23、比較例3および4]
実施例23、比較例3および4について、以下に説明する。
実施例23、比較例3および4は、セルロースナノファイバーとゲランガムとの効果を比較した例である。
〈実施例23〉
《培養液調製工程》
(セルロースナノファイバーの調製)
表6に示す平均直径およびカルボキシ基含有量となるように酸化剤の使用量および超高圧ホモジナイザーの圧力を調整した点を除いて、実施例1と同様にしてTEMPO化セルロースナノファイバー(以下「TEMPO化CNF5」という場合がある。)を調製した。
また、TEMPO化CNF5の平均繊維長を特表2013−541956号公報に記載された方法に従って測定したところ、0.50μmであった。
なお、セルロースナノファイバーの平均繊維長の測定は、具体的には、以下に記載する方法によって行った。
セルロースナノファイバーの分散液を、セルロースナノファイバー濃度が0.001質量%となるようにDMSO(dimethyl sulfoxide;ジメチルスルホキシド)により希釈し、セルロースナノファイバーを分散させた。これを予め濃硫酸を用いて表面を親水化処理したシリコンウェハー上へキャストし、110℃にて1時間乾燥させて試料とした。得られた試料を、走査型電子顕微鏡(JSM−7400F,日本電子株式会社製)を用いて倍率2,000倍で観察し、標本数150〜200本のセルロースナノファイバーについて、各々の繊維長を測定し、その算術平均値を平均繊維長とした。
(培養液の調製)
TEMPO化CNF1に代えて、調製したTEMPO化CNF5を表6に示す添加量で使用した点を除いて、実施例1と同様にして培養液を調製した。
調製した培養液を表6に示す量、培養容器に注入して、以降の工程に用いた。
《播種工程》
ヒト間葉系幹細胞PT−2501に代えて、ヒト胚性幹細胞H9(WiCell Research Institute, Inc., Madison, WI, USA)を使用して、表6に示す細胞濃度および注入時間変動になるように培養液に注入した点を除いて、実施例1と同様にして細胞を播種した。これにより、播種細胞分散液(播種工程における、播種した細胞および培養液からなる細胞分散液をいう。)に、表6に示す細胞数分布を付与した。
《培養工程》
プレートヒーターの出力を調整することによって、浮遊細胞分散液(培養工程における、浮遊培養中の細胞および培養液からなる細胞分散液をいう。)に、表6に示す温度分布を付与した点を除いて、実施例1と同様にして細胞を浮遊培養した。
《沈降工程》
(細胞、スフェロイド)
培養が終了した培養容器内の培養細胞分散液(沈降工程における、培養された細胞および培養液からなる細胞分散液をいう。)中の細胞の総数、スフェロイドの平均直径、およびスフェロイドの直径の分布は、表6に示すとおりであった。
(沈降操作)
培養細胞分散液の入った培養容器を持ち上げ、これを机上に落とすことで、培養容器中の培養細胞分散液に表6に示す強度の衝撃を与えた。
(結果)
表6に示すとおり、細胞増殖率9.5倍であり、細胞沈降率90%であり、細胞死亡率4.0%であった。
〈比較例3〉
《培養液調製工程》
セルロースナノファイバーに代えてゲランガム(脱アシル化ジェランガム KELCOGEL CG−LA,三晶株式会社製)を表6に示す添加量で使用した点を除いて、実施例23と同様にして培養液を調製した。
調製した培養液を表6に示す量、培養容器に注入して、以降の工程に用いた。
また、実施例23と同様に、ゲランガムの平均繊維長を特表2013−541956号公報に記載された方法に従って測定したところ、5.0μmであった。
《播種工程》
実施例23と同様にして細胞を播種した。これにより、播種細胞分散液(播種工程における、播種した細胞および培養液からなる細胞分散液をいう。)に、表6に示す細胞数分布を付与した。
《培養工程》
実施例23と同様にして細胞を浮遊培養した。
《沈降工程》
(細胞、スフェロイド)
培養が終了した培養容器内の培養細胞分散液(沈降工程における、培養された細胞および培養液からなる細胞分散液をいう。)中の細胞の総数、スフェロイドの平均直径、およびスフェロイドの直径の分布は、表6に示すとおりであった。
(沈降操作)
実施例23と同様にして、培養容器中の培養細胞分散液に表6に示す強度の衝撃を与えた。
(結果)
表6に示すとおり、細胞増殖率8.9倍であり、細胞沈降率35%であり、細胞死亡率11%であった。
〈比較例4〉
《培養液調製工程》
ゲランガム(脱アシル化ジェランガム KELCOGEL CG−LA,三晶株式会社製)を、水中衝突型超高圧ホモジナイザー(スターバースト,スギノマシン株式会社製)を用いて、圧力12MPaで5回処理することにより、平均繊維長0.5μmのゲランガムを調製した。
調製したゲランガムを表6に示す添加量で使用した点を除いて、実施例23と同様にして培養液を調製した。
調製した培養液を表6に示す量、培養容器に注入して、以降の工程に用いた。
《播種工程》
実施例23と同様にして細胞を播種した。これにより、播種細胞分散液(播種工程における、播種した細胞および培養液からなる細胞分散液をいう。)に、表6に示す細胞数分布を付与した。
《培養工程》
実施例23と同様にして細胞を浮遊培養した。
《沈降工程》
(細胞、スフェロイド)
培養が終了した培養容器内の培養細胞分散液(沈降工程における、培養された細胞および培養液からなる細胞分散液をいう。)中の細胞の総数、スフェロイドの平均直径、およびスフェロイドの直径の分布は、表6に示すとおりであった。
(沈降操作)
実施例23と同様にして、培養容器中の培養細胞分散液に表6に示す強度の軽衝撃を与えた。
(結果)
表6に示すとおり、細胞増殖率8.9倍であり、細胞沈降率35%であり、細胞死亡率11%であった。
〈実施例23、比較例3および4の結果の解説〉
CNFを用いた実施例23が9.5倍という高い細胞沈降率および90%という高い細胞沈降率を達成することができたのに対し、CNFの代わりにゲランガムを用いた比較例3および4は、いずれも、8.9倍という高い細胞増殖率を達成したものの、35%という低い細胞沈降率しか達成できなかった。
この原因のひとつとしては、ゲランガムは架橋構造を形成するため、繊維の絡み合いが強く、ハイドロゲルが崩れ難いということが考えられる。
なお、ゲランガムの繊維長は比較例3と比較例4との間で異なるが、細胞沈降率に差異はなかった。
Figure 2017199737
[実施例24、比較例5および6]
実施例24、比較例5および6は、沈降操作の違いによる細胞死亡率を比較した例である。
〈実施例24〉
《培養液調製工程》
(セルロースナノファイバーの調製)
表5に示す平均直径およびカルボキシ基含有量となるように酸化剤の使用量および超高圧ホモジナイザーの圧力を調整した点を除いて、実施例1と同様にしてTEMPO化セルロースナノファイバー(以下「TEMPO化CNF6」という場合がある。)を調製した。
(培養液の調製)
TEMPO化CNF1に代えて、調製したTEMPO化CNF6を表7に示す添加量で使用した点を除いて、実施例1と同様にして培養液を調製した。
調製した培養液を表7に示す量、培養容器に注入して、以降の工程に用いた。
《播種工程》
表7に示す細胞濃度および注入時間変動になるように培養液に注入した点を除いて、実施例1と同様にして細胞を播種した。これにより、播種細胞分散液(播種工程における、播種した細胞および培養液からなる細胞分散液をいう。)に、表7に示す細胞数分布を付与した。
《培養工程》
浮遊細胞分散液(培養工程における、浮遊培養中の細胞および培養液からなる細胞分散液をいう。)に、実施例1と同様、表7に示す温度分布を付与して、細胞を浮遊培養した。
《沈降工程》
(細胞、スフェロイド)
培養が終了した培養容器内の培養細胞分散液(沈降工程における、培養された細胞および培養液からなる細胞分散液をいう。)中の細胞の総数、スフェロイドの平均直径、およびスフェロイドの直径の分布は、表7に示すとおりであった。
(沈降操作)
培養細胞分散液に撹拌子を入れ、マグネティックスターラーを用いて撹拌子を表7記載の回転数で5分間撹拌した。
(結果)
表7に示すとおり、細胞増殖率9.3倍であり、細胞沈降率93%であり、細胞死亡率3.0%であった。
〈比較例5〉
培養液調製工程において、培養容器に注入した培養液量を表7に示す量とした点、播種工程において、播種時細胞濃度を表7に示す濃度とした点、および、沈降工程において、沈降操作を表7に示す強度の遠沈処理により行った点を除いて、実施例24と同様にして培養液調製工程、播種工程、培養工程、および沈降工程を行った。
その結果、表7に示すとおり、細胞増殖率4.7倍であり、細胞沈降率68%であり、細胞死亡率25%であった。
〈比較例6〉
培養液調製工程において、培養容器に注入した培養液量を表7に示す量とした点、および、播種工程において、播種時細胞濃度を表7に示す濃度とした点を除いて、実施例24と同様にして培養液調製工程、播種工程、培養工程、および沈降工程を行った。
なお、比較例5とは、沈降操作を実施例24と同様の軽撹拌により行った点のみが異なる。
その結果、表7に示すとおり、細胞増殖率4.7倍であり、細胞沈降率68%であり、細胞死亡率12%であった。
〈実施例24、比較例5および6の解説〉
実施例24は軽衝撃で細胞を沈降させた例であり、比較例5および比較例6は遠沈処理により沈降させた例である。
実施例24は3.0%という低い細胞死亡率を達成していた。
一方、比較例5および比較例6は、それぞれ、25%および12%という高い細胞死亡率を示したが、遠沈操作を実施例24と同様の軽撹拌(60rpm)により行った比較例6は、沈降操作を遠沈(335×g)により行った比較例5と比べて、1/2以下の細胞死亡率を示した。
比較例5と比較例6との間の細胞死亡率の相違は、沈降操作の相違によるものであり、軽撹拌により細胞を沈降させると、遠沈により細胞を沈降させる場合に比べて、細胞に与えるダメージが小さく、細胞死亡率が大幅に改善することを示唆する。
Figure 2017199737

Claims (10)

  1. 培養終了した単一培養容器中の培養細胞分散液から培養された細胞を沈降させる沈降工程を備える、培養細胞の回収方法であって、
    前記培養細胞分散液は、前記培養された細胞と、基礎培地成分と、平均直径2.0nm以上100nm以下のセルロースナノファイバーと、を含み、
    前記培養細胞分散液中の前記培養された細胞の総数が5.0×10個以上であり、
    前記培養細胞分散液中の前記セルロースナノファイバーの含有量が前記培養細胞分散液の0.010質量%以上1.0質量%以下であり、かつ、
    前記培養された細胞からなるスフェロイドの直径の分布が0.10以上3.0未満である、培養細胞の回収方法。
    ここで、スフェロイドの直径の分布Ddistは、20個のスフェロイドの直径を測定して求めたスフェロイドの直径の最大値Dmax、最小値Dminおよび算術平均値Davgから、下記式(1)によって求めた割合である。
    dist=(Dmax−Dmin)/Davg (1)
  2. 前記スフェロイドの平均直径が50μm以上800μm以下である、請求項1に記載の培養細胞の回収方法。
  3. 前記沈降工程の前に、さらに、
    種細胞として細胞を播種する播種工程と、
    前記種細胞から細胞を浮遊培養する培養工程と、
    を備え、
    前記播種工程において、播種された細胞と、基礎培地成分と、平均直径2.0nm以上100nm以下のセルロースナノファイバーと、を含む播種細胞分散液の細胞数分布が1.0%以上50%以下である、請求項1または2に記載の培養細胞の回収方法。
    ここで、細胞数分布Ndist(%)は、前記播種細胞分散液から10箇所サンプリングして測定した播種細胞分散液1mLあたりの細胞数の最大値Nmax(個)、最小値Nmin(個)および算術平均値Navg(個)から、下記式(2)によって求めたパーセンテージである。
    dist(%)={(Nmax−Nmin)/Navg}×100(%) (2)
  4. 前記沈降工程の前に、さらに、
    種細胞として細胞を播種する播種工程と、
    前記種細胞から細胞を浮遊培養する培養工程と、
    を備え、
    前記培養工程において、浮遊培養される細胞と、基礎培地成分と、平均直径2.0nm以上100nm以下のセルロースナノファイバーとを含む浮遊細胞分散液に0.1℃以上3.0℃以下の温度分布を付与する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の培養細胞の回収方法。
    ここで、温度数分布Tdiff(℃)は、浮遊細胞分散液の液温の最高値Tmax(℃)および最低値Tmin(℃)から、下記式(3)によって求めた温度差である。
    diff(℃)=Tmax−Tmin(℃) (3)
  5. 前記セルロースナノファイバーがカルボキシ基を0.60mmol/g以上2.0mmol/g以下含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の培養細胞の回収方法。
  6. 前記細胞が幹細胞である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の培養細胞の回収方法。
  7. 培養された細胞と、基礎培地成分と、平均直径2.0nm以上100nm以下のセルロースナノファイバーと、を含む培養細胞分散液であって、
    前記培養細胞分散液中の前記細胞の総数が5.0×10個以上であり、
    前記培養細胞分散液中の前記セルロースナノファイバーの含有量が前記培養細胞分散液の0.010質量%以上1.0質量%以下であり、かつ、
    前記細胞からなるスフェロイドの直径の分布が0.10以上3.0未満である、培養細胞分散液。
    ここで、前記スフェロイドの直径の分布は、20個のスフェロイドの直径を測定して求めたスフェロイドの直径の最大値Dmax、最小値Dminおよび算術平均値Davgから、下記式(1)によって求めた値Ddistである。
    dist=(Dmax−Dmin)/Davg (1)
  8. 前記スフェロイドの平均直径が50μm以上800μm以下である、請求項7に記載の培養細胞分散液。
  9. 前記セルロースナノファイバーがカルボキシ基を0.60mmol/g以上2.0mmol/g以下含む、請求項7または8に記載の培養細胞分散液。
  10. 前記細胞が幹細胞である、請求項7〜9のいずれか1項に記載の培養細胞分散液。
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