JP6948941B2 - セルロースナノファイバーを含有する紙または板紙 - Google Patents

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Description

本発明はセルロースナノファイバーを含有する紙または板紙に関する。
一般に、紙や板紙は印刷や各種加工等を経てユーザーの手元に届けられるが、その過程で紙や板紙には強度が求められることが多い。強度を向上させた紙として、機械パルプを含有する上質紙(特許文献1)や、紙力向上剤を添加した紙などが知られている。また、近年では、紙力向上剤の効果を補強するためにセルロースナノファイバーを添加することも検討されている(特許文献2)。しかし、特許文献1に記載の技術は機械パルプを多く含有するため紙の地合いが悪化しやすい等の問題があった。また、特許文献2に記載の技術は比較的強度が出やすい上質系パルプを使用した紙での検討である。一方で、古紙を多く使用した紙または板紙についての強度向上、ならびに地合いの向上が求められており、特許文献3には古紙を多く使用した紙にセルロースナノファイバーを添加することが開示されている。
特開2005−336678号公報 特開2016−166444号公報 特開2011−74528号公報
特許文献3には、古紙パルプにセルロースナノファイバーを0.01〜0.1重量%添加することによって紙の地合を向上したことが開示されているが、セルロースナノファイバーは高価であり、古紙パルプを用いることのコストメリットが得られにくい。かかる事情を鑑み、本発明はより低コストで古紙パルプを含む高強度の紙または板紙を提供することを課題とする。
発明者らは、セルロースナノファイバーを含有させることで前記課題を解決した。すなわち、前記課題は以下の本発明によって解決される。
[1]古紙パルプを20重量%以上含有し、
少なくとも1つの紙層が、当該紙層のパルプに対して0を超え3重量ppm未満のセルロースナノファイバーを含有する、紙または板紙。
[2]前記セルロースナノファイバーがカルボキシル化セルロースナノファイバーである、[1]に記載の紙または板紙。
[3]前記セルロースナノファイバーが、N−オキシル化合物を用いた酸化により得られたカルボキシル化セルロースナノファイバーである、[1]または[2]に記載の紙または板紙。
[4]前記古紙パルプが、未脱墨古紙パルプ、脱墨古紙パルプ、およびこれらの組合せからなる群から選択される、[1]〜[3]のいずれかに記載の紙または板紙。
[5]前記古紙パルプが雑誌古紙パルプである、[1]〜[4]のいずれかに記載の紙または板紙。
[6]前記[1]〜[5]のいずれかに記載の紙または板紙の製造方法であって、
古紙パルプおよびセルロースナノファイバーを含有するパルプスラリーを抄紙する工程を含む、紙または板紙の製造方法。
本発明により、より低コストで、古紙パルプを含む高強度の紙または板紙を提供できる。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において「X〜Y」はその端値であるXおよびYを含む。
1.セルロースナノファイバー含有紙または板紙
本発明の紙または板紙は特定量の古紙パルプおよびセルロースナノファイバー(以下「CNF」ともいう)を含む。板紙とは、一般に紙の中でも特に厚いものを指すが、本発明においては、例えば、ライナーや中芯原紙などの段ボール原紙、板紙原紙、白板紙、チップボール、黄ボール、キャリアテープ、紙器原紙等の多層紙を「板紙」といい、単層紙を「紙」という。本発明の紙または板紙は少なくとも1つの紙層にセルロースナノファイバーを含有する。
(1)紙層
単層紙である紙はパルプを主原料とした1つの紙層を備え、多層紙である板紙はパルプを主原料とした複数の紙層を備える。板紙における紙層は2層以上が好ましく、例えば2層の場合は「表層」「裏層」、3層の場合は「表層」「中層」「裏層」、4層の場合は「表層」「表下層」「裏下層」「裏層」、5層の場合は「表層」「表下層」「中層」「裏下層」「裏層」から構成される。5層以上の場合は、「表層」「表下層」「中層」「裏下層」「裏層」のいずれの層を複数層としてもよいが、中層を複数層とすることが好ましい。前記各層の処方は全て同一でもよく、全て異なっていてもよいが、前記紙層のいずれか2層以上を同一の処方としてもよい。
原料パルプとして古紙パルプを用いる。古紙パルプの原料としては、新聞古紙、段ボール古紙、上質古紙、雑誌古紙、未印刷古紙、廃棄機密文書等の紙類等に由来するものが挙げられる。古紙パルプは、未脱墨古紙パルプであってもよいし、脱墨古紙パルプであってもよい。これらの中でも、紙力向上効果をより高いレベルで発現できるという観点から未脱墨の古紙パルプが好ましく、未脱墨の雑誌古紙パルプがより好ましい。それ以外のパルプは特に限定されず、広葉樹由来のパルプ、針葉樹由来のパルプ、非木材パルプ、古紙パルプなどが挙げられる。本発明の紙または板紙は、全パルプ中(絶乾)に古紙パルプを20重量%以上含有する。古紙パルプの存在する紙層は限定されず、すべての紙層に存在してもよいし、特定の紙層に存在してもよい。古紙パルプ含有量の下限は40重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがより好まく、更に好ましくは90重量%以上である。上限は限定されず、100重量%でもよいが、98重量%以下であることがより好ましい。
(2)セルロースナノファイバー(CNF)
CNFの含有量は紙層中のパルプ(絶乾)に対し0を超え3重量ppm未満である。本発明においてCNFはパルプとは異なる。紙層がCNFを含有することで、古紙パルプを含む紙または板紙の強度を向上できる。この観点から、CNF含有量の下限は0.1重量ppm以上であることが好ましく、0.5重量ppm以上であることがより好ましい。上限は2.5重量ppm以下であることが好ましく、1.5重量ppm以下であることがより好ましい。発明者らは古紙パルプを20重量%以上含有するパルプスラリーに極微量のCNFを添加することで、パルプスラリーの物性を大きく変化させることなく高い紙力向上効果が得られることを見出した。
CNFとは、セルロース系原料を解繊することにより得られる平均繊維径2〜200nm、平均繊維長0.1〜5μm程度のセルロースのシングルミクロフィブリルである。本発明で用いるCNFの平均繊維径は4〜100nm程度であることが好ましく、平均繊維長は0.2〜1μm程度が好ましい。CNFの平均繊維径および平均繊維長は、原紙間力顕微鏡(AFM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、各繊維を観察した結果から得られる繊維径および繊維長を平均することによって得られる。
本発明で用いるCNFとしては、セルロース系原料を化学変性した後に解繊して製造したCNFを用いてもよいし、化学変性を行わずに機械解繊のみで製造したCNFを用いてもよい。化学変性は限定されず、例えば、酸化、エーテル化、リン酸化、エステル化、シランカップリング、フッ素化、カチオン化などが挙げられる。中でも、酸化(カルボキシル化)またはエーテル化(カルボキシメチル化)が好ましい。以下、カルボキシル化とカルボキシメチル化を例にして化学変性について説明する。
1)原料セルロース
セルロース系原料は特に限定されず、各種木材由来のクラフトパルプまたはサルファイトパルプ、それらを高圧ホモジナイザーやミル等で粉砕した粉末セルロース、あるいはそれらを酸加水分解などの化学処理により精製した微結晶セルロース粉末などを使用できる。また、ケナフ、麻、イネ、バガス、竹等の植物を使用することもできる。この中でも、漂白済みクラフトパルプ、漂白済みサルファイトパルプ、粉末セルロース、微結晶セルロース粉末が好ましく、粉末セルロース、微結晶セルロース粉末がより好ましい。
粉末セルロースとは、木材パルプの非結晶部分を酸加水分解処理で除去した後、粉砕および篩い分けすることで得られる微結晶性セルロースからなる棒軸状粒子である。粉末セルロースにおけるセルロースの重合度は好ましくは100〜500程度であり、X線回折法による粉末セルロースの結晶化度は好ましくは70〜90%であり、レーザー回折式粒度分布測定装置による体積平均粒子径は好ましくは100μm以下であり、より好ましくは50μm以下である。体積平均粒子径が100μm以下であると、流動性に優れるセルロースナノファイバー分散液を得ることができる。本発明で用いる粉末セルロースとしては、例えば、精選パルプを酸加水分解した後に得られる未分解残渣を精製および乾燥し、粉砕および篩い分けするといった方法により製造される棒軸状である一定の粒径分布を有する結晶性セルロース粉末を用いてもよいし、KCフロック(日本製紙ケミカル社製)、セオラスTM(旭化成ケミカルズ社製)、アビセル(FMC社製)などの市販品を用いてもよい。
2)酸化(カルボキシル化)
酸化は、(1)N−オキシル化合物、および(2)臭化物、ヨウ化物またはそれらの混合物の存在下で、酸化剤を用いて実施できる。セルロース系原料を酸化する際に用いるN−オキシル化合物としては、目的の酸化反応を促進する化合物であれば、いずれの化合物も使用できる。例えば、本発明で使用されるN−オキシル化合物としては、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシラジカル(以下、「TEMPO」ともいう)、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシラジカル(以下、「4−ヒドロキシTEMPO」ともいう)を発生する化合物が好ましい。また、TEMPOまたは4−ヒドロキシTEMPOから得られる誘導体も用いることができ、特に、4−ヒドロキシTEMPOの誘導体が最も好ましい。4−ヒドロキシTEMPO誘導体としては、4−ヒドロキシTEMPOの水酸基を、炭素数4以下の直鎖または分岐状炭素鎖を有するアルコールでエーテル化して得られる誘導体、あるいはカルボン酸またはスルホン酸でエステル化して得られる誘導体が好ましい。4−ヒドロキシTEMPOをエーテル化する際には、炭素数が4以下のアルコールを用いれば、アルコール中の飽和、不飽和結合の有無にかかわらず、得られる誘導体が水溶性となり、酸化触媒として良好に機能する4−ヒドロキシTEMPO誘導体を得ることができる。さらに、アザアダマンタン型ニトロキシラジカルも短時間で均一なCNFを製造できるため好ましい。
セルロース系原料を酸化する際に用いるTEMPOや4−ヒドロキシTEMPO誘導体などのN−オキシル化合物の量は、セルロース系原料をナノファイバー化できる触媒量であれば特に制限されない。例えば、絶乾1gのセルロース系原料に対して、0.01〜10mmol、好ましくは0.05〜5mmol程度である。
セルロース系原料の酸化に用いる臭化物またはヨウ化物としては、水中で解離してイオン化可能な化合物、例えば臭化アルカリ金属やヨウ化アルカリ金属などを使用することができる。臭化物またはヨウ化物の使用量は酸化反応を促進できる範囲で選択できる。例えば、絶乾1gのセルロース系原料に対して0.1〜100mmol、好ましくは0.1〜10mmol、さらに好ましくは0.5〜5mmol程度である。
セルロース系原料の酸化に用いる酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物など、目的の酸化反応を推進し得る酸化剤であれば、いずれの酸化剤も使用できる。中でも、生産コストの観点から、現在工業プロセスにおいて最も汎用されている安価で環境負荷の少ない次亜塩素酸ナトリウムが特に好ましい。酸化剤の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択できる。例えば、絶乾1gのセルロース系原料に対して、0.5〜500mmol、好ましくは0.5〜50mmol、さらに好ましくは2.5〜25mmol程度である。
本発明におけるセルロース系原料の酸化は、上記のとおり、(1)4−ヒドロキシTEMPO誘導体などのN−オキシル化合物と、(2)臭化物、ヨウ化物およびこれらの混合物からなる群から選択される化合物の存在下で、次亜塩素酸ナトリウムなどの酸化剤を用いて、水中で実施することが好ましい。この方法は、温和な条件であってもセルロース系原料の酸化反応を円滑に効率良く進行させることができるため、反応温度は15〜30℃程度の室温であってもよい。反応の進行に伴ってセルロース中にカルボキシル基が生成するため、反応液のpHの低下が認められるが、酸化反応を効率良く進行させるためには水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性溶液を添加して反応液のpHを9〜12、好ましくは10〜11程度に維持することが望ましい。
酸化セルロースのカルボキシル基量は、セルロース絶乾1gに対して、0.5mmol/g以上が好ましく、0.9mmol/g以上がより好ましく、1.2mmol/g以上であることがさらに好ましい。上限としては、2.2mmol以下程度であり、好ましくは2.0mmol以下であり、1.8mmol以下であることがより好ましい。当該カルボキシル基量は、セルロースの0.5重量%スラリーを60mL調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出することができる。
カルボキシル基量(mmol/gパルプ)=a(mL)×0.05/セルロース重量(g)
3)エーテル化(カルボキシメチル化)
エーテル化は、発底原料としてのセルロース原料をマーセル化し、その後エーテル化することで実施できる。当該反応には通常、溶媒が使用される。溶媒としては例えば、水、アルコール(例えば低級アルコール)およびこれらの混合溶媒が挙げられる。低級アルコールとしては例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノールが挙げられる。混合溶媒における低級アルコールの混合割合は、通常は60重量%以上または95重量%以下であり、60〜95重量%であることが好ましい。溶媒の量は、セルロース原料に対し通常は3重量倍である。当該量の上限は特に限定されないが20重量倍である。従って、溶媒の量は3〜20重量倍であることが好ましい。
マーセル化は通常、発底原料とマーセル化剤を混合して行う。マーセル化剤としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属が挙げられる。マーセル化剤の使用量は、発底原料の無水グルコース残基当たり0.5倍モル以上が好ましく、1.0モル以上がより好ましく、1.5倍モル以上であることがさらに好ましい。当該量の上限は、通常20倍モル以下であり、10倍モル以下が好ましく、5倍モル以下がより好ましい、従って、マーセル化剤の使用量は0.5〜20倍モルが好ましく、1.0〜10倍モルがより好ましく、1.5〜5倍モルがさらに好ましい。
マーセル化の反応温度は、通常0℃以上であり、好ましくは10℃以上であり、上限は通常70℃以下、好ましくは60℃以下である。従って、反応温度は通常0〜70℃、好ましくは10〜60℃である。反応時間は、通常15分以上、好ましくは30分以上である。当該時間の上限は、通常8時間以下、好ましくは7時間以下である。従って、反応時間は、通常は15分〜8時間、好ましくは30分〜7時間である。
エーテル化反応は通常、カルボキシメチル化剤をマーセル化後に反応系に追加して行う。カルボキシメチル化剤としては例えば、モノクロロ酢酸ナトリウムが挙げられる。カルボキシメチル化剤の添加量は、セルロース原料のグルコース残基当たり通常は0.05倍モル以上が好ましく、0.5倍モル以上がより好ましく、0.8倍モル以上であることがさらに好ましい。当該量の上限は、通常10.0倍モル以下であり、5モル以下が好ましく、3倍モル以下がより好ましい、従って、当該量は好ましくは0.05〜10.0倍モルであり、より好ましくは0.5〜5倍モルであり、さらに好ましくは0.8〜3倍モルである。反応温度は通常30℃以上、好ましくは40℃以上であり、上限は通常90℃以下、好ましくは80℃以下である。従って反応温度は通常30〜90℃、好ましくは40〜80℃である。反応時間は、通常30分以上であり、好ましくは1時間以上であり、その上限は、通常は10時間以下、好ましくは4時間以下である。従って反応時間は、通常は30分〜10時間であり、好ましくは1時間〜4時間である。カルボキシメチル化反応の間必要に応じて、反応液を撹拌してもよい。
カルボキシメチル化セルロース中の無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度は、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.10以上であることがさらに好ましい。当該置換度の上限は、0.50以下が好ましく、0.40以下がより好ましく、0.35以下がさらに好ましい。従って、カルボキシメチル基置換度は、0.01〜0.50が好ましく、0.05〜0.40がより好ましく、0.10〜0.30がさらに好ましい。
カルボキシメチル化セルロースのグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度の測定は例えば、次の方法による。すなわち、1)カルボキシメチル化セルロース(絶乾)約2.0gを精秤して、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。2)硝酸メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液100mLを加え、3時間振とうして、カルボキシメチルセルロース塩(カルボキシメチル化セルロース)を水素型カルボキシメチル化セルロースにする。3)水素型カルボキシメチル化セルロース(絶乾)を1.5〜2.0g精秤し、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。4)80%メタノール15mLで水素型カルボキシメチル化セルロースを湿潤し、0.1NのNaOHを100mL加え、室温で3時間振とうする。5)指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1NのHSOで過剰のNaOHを逆滴定する。6)カルボキシメチル置換度(DS)を、次式によって算出する:
A=[(100×F’−(0.1NのHSO)(mL)×F)×0.1]/(水素型カルボキシメチル化セルロースの絶乾重量(g))
DS=0.162×A/(1−0.058×A)
A:水素型カルボキシメチル化セルロースの1gの中和に要する1NのNaOH量(mL)
F:0.1NのHSOのファクター
F’:0.1NのNaOHのファクター
4)解繊
このようにして化学変性されたセルロース系原料を、湿式微粒化処理して解繊することにより、CNFを製造できる。湿式微粒化処理としては、例えば、高速せん断ミキサーや高圧ホモジナイザー等の混合、撹拌、乳化、分散装置を必要に応じて単独もしくは2種類以上組合せて用いることができる。特に、100MPa以上、好ましくは120MPa以上、さらに好ましくは140MPa以上の圧力を印加できる超高圧ホモジナイザーを用いて湿式微粒化処理を行なうとCNFを効率よく製造できる。
CNFのカルボキシル基量は、原料である酸化セルロースのカルボキシ基量と同じである。またCNFのカルボキシメチル置換度も、原料であるカルボキシメチル化セルロースのカルボキシメチル置換度と同じである。
5)CNFを混合したパルプ
CNFを混合したパルプの濾水度(c.s.f)は限定されないが、0〜600mLであることが好ましい。当該パルプを板紙に用いる場合、濾水度(c.s.f)の下限は50mL以上であることが好ましい。当該パルプを紙(板紙以外)に用いる場合、濾水度(c.s.f)の上限は500mL以下であることが好ましい。パルプ濾水度が低すぎると、抄紙時の水切れが悪く、抄速が上がらない、得られる紙の地合いが悪化する等の問題が生じる可能性があるため、パルプ濾水度は100mL以上であることがより好ましい。
(3)特性
本発明のCNF含有紙の坪量は10〜500g/mであることが好ましく、20〜260g/mであることがより好ましい。また、紙厚は10〜1000μmであることが好ましい。また、本発明のCNF含有板紙の坪量は90〜1600g/mであることが好ましく、150〜900g/mであることがより好ましい。また、多層紙の各層の紙厚の合計は、100〜1700μm程度であることが好ましく、150〜1000μmであることが好ましい。
本発明のCNF含有紙または板紙は地合に優れる。地合とは、紙の中における繊維の分布の均一性である。地合は光透過光変動法により測定できる。光透過光変動法は、サンプルの透過光量の面内分布を測定する方法である。具体的に地合は、1)サンプルに光を照射し、その透過光により得られた像を得て、2)その画像をいくつかのセルに分割して各セルのグレーレベルを測定し、4)グレーレベルの標準偏差を算出し、5)標準偏差から求めた地合指数により評価されることが好ましい。地合指数とは、地合の良さを表すパラメータであり、その値が低いほど地合が良好であることを示す。紙の場合は、抄紙された紙から地合いを測定することができ、板紙の場合は多層紙の各層を分割した後地合いを測定することができる。CNFを多く含有する紙または板紙は、脱水不良、パルプのフロック化などにより地合いが悪化する傾向があるが、本発明の紙または板紙はCNFの添加量が少なく地合いを悪化させることなく、CNFの紙力向上効果を得ることができる。
本発明のCNF含有紙または板紙は、添加するCNFの量が微量であるにもかかわらず優れた強度を有する。この理由は限定されないが、古紙パルプに含まれる微細繊維がCNFによって多く紙中に残留し、繊維間結合が強固になることに起因すると推察される。
本発明のCNF含有紙または板紙には、公知の方法によって、クリア塗工層または顔料塗工層を設けてもよい。
2.CNF含有紙または板紙の製造方法
本発明のCNF含有紙または板紙は、パルプスラリー(紙料)にCNFを混合し、当該試料を用いて抄紙することで製造できる。抄紙には長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網式抄紙機等の公知の抄紙機を用いることができ、その抄紙条件も限定されない。本発明では全パルプ中20重量%以上の古紙パルプを必須として用いるが、これ以外に化学パルプ(針葉樹の晒クラフトパルプ(NBKP)または未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹の晒クラフトパルプ(LBKP)または未晒クラフトパルプ(LUKP)等)、機械パルプ(グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等)を、単独または任意の割合で混合して使用してもよい。本発明の紙または板紙は、古紙パルプとCNFを同一の層に含有させることが好ましく、板紙の場合は、いずれかの紙層が前記古紙パルプとCNFを含有していることが好ましい。抄紙時のpHは、酸性、中性、アルカリ性のいずれでもよい。当該パルプスラリーは抄紙時の歩留りが高い。この理由は限定されないが、前述のとおりCNFによって古紙パルプ中の微細繊維が多く紙中にとどめられるためと推察される。
CNF含有紙または板紙は填料を含有してもよい。填料としては、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、合成樹脂填料、古紙由来の持ち込み填料等の公知の填料が挙げられる。中でも、環境面や紙の保存性等の観点から、炭酸カルシウムを使用して、紙面がpH6〜9となるように中性抄紙することが望ましい。
さらに、CNF含有紙または板紙は、必要に応じて、硫酸バンド、サイズ剤、紙力増強剤、歩留まり向上剤、濾水性向上剤、着色剤、染料、消泡剤、嵩高剤等を含有してもよい。また、前述のとおり、公知の方法により、CNF含有紙または板紙の上に、クリア塗工層または顔料塗工層を設けることもできる。
3.用途
本発明のCNF含有紙または板紙の用途は限定されず、例えば、オフセット印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、湿式又は乾式電子写真印刷等の各種印刷用紙、感熱紙、感圧紙等の各種情報用紙、新聞用紙、包装用紙、はがき用紙、ライナーや中芯原紙等の段ボール原紙、板紙原紙、白板紙、家庭紙等に使用できる。
[実施例1]
(1)CNFの製造
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%:日本製紙株式会社製)5.00g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社製)39mg(絶乾1gのセルロースに対し0.05mmol)と臭化ナトリウム514mg(絶乾1gのセルロースに対し1.0mmol)を溶解した水溶液500mLに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を次亜塩素酸ナトリウムが5.5mmol/gになるように添加し、室温にて酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応混合物をガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水洗して酸化パルプ(カルボキシル化セルロース)を得た。パルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシル基量は1.6mmol/gであった。これを水で0.55%(w/v)に調整し、超高圧ホモジナイザー(20℃、150Mpa)で3回処理して、酸化セルロースナノファイバーの水分散液を得た。酸化セルロースナノファイバーの平均繊維径は3nm、アスペクト比は250であった。
(2)CNF含有紙の製造
新聞古紙由来の脱墨古紙パルプ(日本製紙株式会社製)をスリーワン・モーターにて500rpmの速度で撹拌し、パルプ100重量%に対し、1.5重量%(固形分)の硫酸バンド、0.025重量%のポリエチレンイミン、CNF、紙力剤として0.6重量%のポリアクリルアミド、0.2重量%サイズ剤を順次添加し、パルプスラリーを調製した。CNFの添加量は古紙パルプ絶乾重量に対して、1ppmとした。当該CNF含有パルプの濾水度(c.s.f)は210mLであった。当該スラリーを濃度調整した後、手すきシートを作成した。坪量は33.8g/mであった。当該紙について評価した。結果を表1に示す。
[比較例1]
CNFを添加しない以外は実施例1と同様にして紙を製造し、評価した。結果を表1に示す。
[実施例2]
新聞古紙由来の脱墨古紙パルプの代わりに、雑誌古紙由来の未脱墨古紙パルプ(日本製紙株式会社製、c.s.f.360mL)を用いた以外は実施例1と同様にして紙を製造し評価した。
[比較例2]
CNFを添加しない以外は実施例2と同様にして紙を製造し、評価した。結果を表1に示す。
[比較例3および4]
新聞古紙由来の脱墨古紙パルプの代わりに、LBKP(日本製紙株式会社製、c.s.f.420mL)を用いた以外は実施例1および比較例1と同様にして紙を製造し評価した。
[評価方法]
(1)坪量:JIS P 8124に準じて測定した。
(2)紙厚:JIS P 8118に準じて測定した。
(3)密度:JIS P 8118に準じて坪量と紙厚から求めた。
(4)灰分:JIS P 8251:2003に準じて測定した。
(5)PPSラフネス(ソフト1M):ISO8791に準じて測定したPPS表面粗さ。
(6)引張強度:JIS P8113に準じて測定した。
(7)裂断長:JIS P81113:1998に準じて測定した。
(8)引張こわさ:Lorentzen&Wettre社製 引張強度測定機sEO62/064を用いて測定した。
Figure 0006948941
本発明のCNF含有紙は、従来の紙に比べて、優れた強度およびこわさを有する。

Claims (6)

  1. 古紙パルプを20重量%以上含有し、
    少なくとも1つの紙層が、当該紙層のパルプに対して0を超え3重量ppm未満のセルロースナノファイバーを含有する、紙または板紙。
  2. 前記セルロースナノファイバーがカルボキシル化セルロースナノファイバーである、請求項1に記載の紙または板紙。
  3. 前記セルロースナノファイバーが、N−オキシル化合物を用いた酸化により得られたカルボキシル化セルロースナノファイバーである、請求項1または2に記載の紙または板紙。
  4. 前記古紙パルプが、未脱墨古紙パルプ、脱墨古紙パルプ、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の紙または板紙。
  5. 前記古紙パルプが雑誌古紙パルプである、請求項1〜4のいずれかに記載の紙または板紙。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の紙または板紙の製造方法であって、
    古紙パルプおよびセルロースナノファイバーを含有するパルプスラリーを抄紙する工程を含む、紙または板紙の製造方法。
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