JP6981698B1 - セメント組成物及びその硬化体 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、セルロースナノファイバー及びポリビニルアルコールを用いて軽量化を図るとともに変形しやすい弾性的特性を発現するセメント組成物及びその硬化体を提供することを目的とするものである。【解決手段】本発明に係るセメント組成物は、セメントに対する配合割合が0.1質量%〜5質量%であるセルロースナノファイバーと、セメントに対する配合割合が100質量%〜400質量%であるポリビニルアルコールとを少なくとも含有し、さらに、セメントに対する配合割合が2質量%〜20質量%である鉱物粒を含有するようにしてもよい。【選択図】図1

Description

本発明は、土木、建築分野における構造物に好適の特性を備えたモルタル、コンクリート等のセメント組成物及びその硬化体に関する。
モルタル又はコンクリート等のセメント組成物は、土木、建築分野において主に構造材として用いられており、構造材として必要となる力学特性に対応して十分な強度を有することが求められている。こうした強度を実現するために、様々な原材料を添加したコンクリートが提案されている。
例えば、特許文献1では、セメントと、10質量%以上の配合割合のフライアッシュと、植物繊維とを含み、圧縮強度が10N/mm2以上、曲げ強度が4.0N/mm2以上、かつ保水量が0.16g/cm3以上であるモルタルまたはコンクリート組成物が記載されている。また、特許文献2では、ポリエステル系樹脂中でセルロースを微細化して得られたセルロースナノファイバー含有のマスターバッチ、無水マレイン酸共重合樹脂、及び水を含有するセメント用混和剤の製造方法が記載されている。また、特許文献3では、ひび割れの発生が抑制され、耐久性に優れる硬化体を得ることができるセメント組成物であって、セメントと、セルロースナノファイバーと、水とを含有し、セメントに対する水の質量比が0.4以下であるセメント組成物が記載されている。
特開2014−125420号公報 特開2015−155357号公報 特開2019−131452号公報
近年頻発する地震災害等に対応して高層ビル等の建築物の耐震化が求められており、耐震化を高めるための強度特性を備えた材料開発が進められている。上述した特許文献1から3に記載されているように、セルロースナノファイバーを添加したコンクリート材の開発が行われているが、耐震化といった観点からみると十分な特性を備えたものは得られていないのが現状である。耐震化以外にも様々な用途に対応した特性を備えたコンクリート材が求められている。
そこで、本発明では、セルロースナノファイバー及びポリビニルアルコールを用いて軽量化を図るとともに変形しやすい弾性的特性を発現するセメント組成物及びその硬化体を提供することを目的とするものである。
本発明に係るセメント組成物は、普通ポルトランドセメントからなるセメントと、セメントに対する配合割合が0.1質量%〜5.0質量%であるセルロースナノファイバーと、セメントに対する配合割合が100質量%〜400質量%であるポリビニルアルコールとを少なくとも含有する。さらに、セメントに対する配合割合が2質量%〜20質量%である硼珪酸塩鉱物からなる鉱物粒を含有する。さらに、金属製補強体を内蔵する。
本発明に係る硬化体は、上記のセメント組成物を型枠に打ち込んだ後JIS A 1132に準じて大気養生(15℃±2℃)又は水中養生(20℃±2℃)により得られた硬化体であって、圧縮強度試験(JIS A 1108)による圧縮歪曲線から得られた勾配値であるヤング率が1.0×101〜1.0×103N/mm2である。さらに、圧縮強度試験による変形後の圧縮方向の変形回復率が50%以上である。
本発明は、セルロースナノファイバー及びポリビニルアルコールを少なくとも含有することで、軽量化とともに変形しやすい弾性的特性を発現するようになり、従来のものでは発現されていない特性を備えたセメント組成物及び硬化体を得ることができる。
実施例及び比較例における試験結果を示す表である。 補強体を示す模式図である。
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨が明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
本発明に係るセメント組成物は、セメントと、セメントに対する配合割合が0.1質量%〜5質量%であるセルロースナノファイバーと、セメントに対する配合割合が100質量%〜400質量%であるポリビニルアルコールとを少なくとも含有している。そのため、セメント組成物から作製される硬化体は、軽量化が可能になるとともに変形しやすい弾性的特性を備えることが可能となる。また、セメント組成物は、セメントに対する配合割合が2質量%〜20質量%である鉱物粒をさらに含有することが好ましい。
以下、本発明に係る実施形態について詳述する。まず、使用原料について説明する。
セメントは、普通ポルトランドセメントが好ましく、圧縮強度、引張強度及び流動性の観点から、鉱物組成がC3S(エーライト)45質量%〜55質量%、C2S(ビーライト)15質量%〜25質量%、C3A(アルミネート相)5質量%〜10質量%、C4AF(フェライト相)8質量%〜10質量%であることが好ましい。メッシュ状の立体構造体といった補強材を内蔵する場合には、補強材の内部に容易に充填するための流動性を確保するためには、凝結を促進するC3Aの成分量を抑えた組成とすることがさらに好ましい。
セルロースナノファイバー(以下「CNF」と略称する)は、セルロース分子が直鎖状に配列した極細の繊維材料で、木材から得られた木材繊維又は植物繊維を化学的・機械的処理によりナノサイズ(10-9m)まで細かく解きほぐしたバイオマス素材である。
CNFは、水中に分散して三次元網目構造を形成することが知られており、高強度、高弾性率、低線膨張係数、高透明、ガスバリア性といった多くの優れた特性を備えている。また、軽量化、生産・廃棄での環境負荷の低減といった点でもメリットを有しており、様々な分野での応用に関して研究開発が進められている。
CNFのセメントに対する配合割合は、0.1質量%〜5.0質量%であることが好ましく、0.1質量%より小さくなるとCNFの特性が十分発現されないといったデメリットがあり、5.0質量%より大きい場合には高強度化の点でデメリットになる。
CNFを製造する場合、木材チップ等の使用原料をパルプ化した後、機械処理法、TEMPO酸化法、ウォータージェット法といった公知の処理を行うことでさらに細かくして、スラリー状又は粉末状に形成して用いられる。水中対向衝突法(ACC法)により微細化したものは、原料由来の特徴の違いが生じるようになり、例えば、針葉樹を原料とするパルプを用いたものが高強度化を図ることができるため好ましい。また、TEMPO酸化処理を行う場合には、繊維幅が均一なナノファイバーが得られることから、高強度化の点で好ましい。
ポリビニルアルコール(以下「PVA」と略称する)は、ポリ酢酸ビニルのけん化物で、親水性が強く、温水にも可溶といった特性を備えている。用途に合わせて多種類のPVAが開発されているが、本発明では、一部けん化型のものが好ましい。
PVAのセメントに対する配合割合は、100質量%〜400質量%であることが好ましく、100質量%より小さくなると変形しやすい弾性的特性が発現しにくくなり、400質量%より大きい場合には、膨潤作用が顕著になるため、寸法安定性が低下する。
鉱物粒としては、粒径1mm〜4mmのものが好ましく、成分として硼珪酸塩鉱物(SiO2、Na2O及びB23が主成分)を含有するものが好ましい。こうした粒径範囲のものをCNFと併用することで、高強度化を発現するようになる。また、成分としてSiO2を含有することで、フライアッシュに類似した作用効果を得ることができる。
鉱物粒のセメントに対する配合割合は、2質量%〜20質量%であることが好ましく、2質量%より小さくなると強度低下といったデメリットがあり、20質量%より大きい場合には、アルカリシリカ反応によるひび割れの発生といった問題がある。
コンクリートに用いる骨材としては、公知の粗骨材材を用いることができる。骨材のサイズは、5mmのふるい目を通過しないものが85%以上となるサイズのものを用いるとよい。また、メッシュ状の立体構造体からなる補強材を使用する場合には、メッシュを通過可能なサイズであることが好ましい。
セメントに練り混ぜる水及び養生水は、上水道水を用いることができ、5質量%〜15質量%を添加することが好ましい。
コンクリート用の混和剤としては、減水剤が挙げられる。減水剤としては、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、アミノスルホン酸系、ポリカルボン酸系の減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤が挙げられる。高性能減水剤は、使用量を増加することにより減水性が向上するが、使用量を増加しても過剰な空気連行性や異常な凝結の遅延性が少ないため、単位水量を大幅に減少することができ、高強度コンクリートの製造に好ましい。減水剤は、コンクリートの粘性を低減する観点から0.3質量%〜1.0質量%を添加することが好ましい。
補強材を用いる場合には、メッシュ状で立体形状の金属製補強体を用いることができる。こうした金属製補強体は、金属製の線材をメッシュ状に製織したシート体を立体形状に形成して、金属製の線材を互いに固定されることなくメッシュ状に交差させて構成された立体構造体とすることができる。金属製補強体は、耐久性の向上を図るためステンレス等の錆びにくい金属材料を用いることが好ましい。また、金属製補強体は、円筒体に成形して用いることが好ましい。図2は、補強体の一例を示す模式図である。図2(a)は、補強体として単円筒体が内蔵されている例を示しており、図2(b)は、2つの径の異なる円筒体が同心円状に配置されて内蔵されている例を示している。
上述した金属製補強体は、モルタル又はコンクリート内に埋設された状態では、モルタル又はコンクリートの引張強度を向上させるように作用する。また、補強体を構成する線材は互いに固定されていないため、線材の線長方向及び線幅方向にずれるように動くことが可能となっている。そのため、後述するヤング率を低下させて、変形しやすい弾性的特性の向上を図ることができる。
また、モルタル又はコンクリートの脆性破壊の際に、局部破壊に対応して補強体が線材自体の変形とともに線材をずらせながら変形し破壊の拡大を抑止するように作用するようになり、モルタル又はコンクリートの脆性破壊に対する粘り強さを高めて高靱性を実現することができる。
CNF及びPVAを少なくとも含有するセメント組成物を成形する場合には、セメント、水、CNF及びPVAを所定の割合でミキサーに投入し、必要に応じて、鉱物粒、減水剤等の混和剤及び骨材を所定の配合割合で添加し、ミキサー内で撹拌して練り混ぜ合せる。撹拌時間は、5分〜10分に設定するとよい。金属製補強体を用いる場合には、メッシュ状の補強体の内部にスムーズに充填可能な流動性を確保することが好ましい。そして、練り混ぜ合せたセメント組成物を型枠内に打ち込む。打ち込み後24時間放置し、その後脱型して、強度試験材齢までJIS A1132に準拠し大気養生(15℃±2℃)を行う。こうしてモルタル又はコンクリートの硬化体を得る。
CNF及びPVAを少なくとも含有するセメント組成物から作製された硬化体は、圧縮強度試験(JIS A 1108)による圧縮強度試験で算出された圧縮歪曲線において、載荷開始から載荷荷重が10〜30kNまでは、荷重の作用に対して内部に抵抗力(応力)が生じ、変形する変位(歪度)が直線的に増加する弾性挙動を示すようになる。
この直線の傾き(勾配)はヤング率として定義されていることから、弾性的特性の発現の指標とした。硬化体の圧縮歪曲線から得られた勾配値であるヤング率は1.0×101〜1.0×103N/mm2で、従来のものより変形しやすい特性を発現している。
また、圧縮強度試験では、圧縮変形量の上限値まで変形しても破壊することはなく、載荷荷重を解除した直後には弾性体のように変形を回復するようになる。圧縮変形後の硬化体の変形回復特性は、圧縮方向の歪み量について変形直後の値(A)及び所定時間(5分〜10分)経過後の値(a)から以下の式より算出される変形回復率R(%)を指標とすることができる。
R=[(A−a)/A]×100
硬化体の変形回復率は、50%以上であり、早期の変形回復を示すことから、弾性的な特性を備えている。
<特性試験について>
特性試験として、以下の試験を行った。
○圧縮強度試験(JIS A 1108)
養生直後の供試体(直径10cm高さ20cmの円柱体)に対して、アムスラー式圧縮試験機(株式会社テクノエナミ製;型式 圧縮試験機アムスラー式1000kN)を用いて圧縮強度試験を行った。そして、圧縮強度試験により得られた圧縮歪曲線の勾配値からヤング率を算出した。また、圧縮方向である供試体の高さについて圧縮前、圧縮解除直後及び圧縮解除後5分経過後の長さをそれぞれ測定し、変形回復率を算出した。
<使用原料について>
コンクリート組成物の原料として以下のものを準備した。
○普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製)
(密度3.16g/cm3、比表面積3330cm2/g)
(鉱物組成;C3S56%、C2S18%、C3A9%、C4AF9%)
〇セルロースナノファイバー(CNF)
CNF1(中越パルプ工業株式会社製nanoforest−S)
ACC法により製造。繊維幅20nm以下、CNF濃度2%
〇ポリビニルアルコール(PVA)
PVA1(富士フイルム和光純薬株式会社製ポリビニルアルコールPVA500;重合度約500)
PVA2(富士フイルム和光純薬株式会社製ポリビニルアルコールPVA1500;重合度約1500)
〇ポリ塩化ビニル(PVC);比較例3で使用
PVC1(JIS K6771に準じた丸棒(市販品);直径10mm、密度1.25g/cm3
〇鉱物粒(チエ社製ブラジル産ショールトルマリン、粒径1〜4mm、密度3.18g/cm3程度)
販売用の説明資料によれば、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、マンガン、アルミニウム等の珪酸類を含む硼珪酸塩鉱物粒である、と説明されている。
○細骨材(中日本砂利株式会社製)
(最大骨材寸法2mm、表乾密度2.63g/cm3
○粗骨材(三谷セキサン株式会社製)
(最大骨材寸法10mm、表乾密度2.70g/cm3
<混和剤について>
混和剤として以下のものを使用した。
○高性能減水剤(BASFジャパン株式会社製;マスターグレニウムSP8HU)
<補強体について>
ステンレスメッシュ(日本精線株式会社製一般金網用ステンレス鋼線;ステンレス線の引張強度645N/mm2、密度7.93g/cm3)を用い、線径1.0〜1.5mmで網目の目開き15mmのクリンプ織タイプを使用した。補強体は、ステンレスメッシュを所定サイズの円筒体に形成して単円筒又は同心円状の組み合せで用いた。
<混練水及び養生水について>
上水道水(越前市水道局;硬度23mg/リットル)を用いた。
[実施例1]
セメント組成物として、CNF、PVA及び鉱物粒含有コンクリート組成物を以下の原料を使用して作製した。
<使用原料の配合について>
使用原料として、以下の単位量で準備した。
セメント;154kg/m3
水;31kg/m3
CNF1;154kg/m3
(CNF量;3.08kg/m3、セメント比;2.0質量%)
PVA1;154kg/m3(セメント比;100質量%)
PVA2;154kg/m3(セメント比;100質量%)
鉱物粒;15kg/m3(セメント比;9.7質量%)
粗骨材;386kg/m3
混和剤;2.16kg/m3
<供試体の作製について>
原料の練り混ぜ作業には、強制撹拌式ミキサー(株式会社関西機器製作所;容量50リットル)を使用した。ミキサーを駆動させて、セメント、水、CNF1、PVA1、鉱物粒、混和剤を投入したのち約5分撹拌して練り混ぜた。
排出された混練物は、コンクリート供試体型枠(株式会社マルイ製ソノモールド)に空気が混入しないように脱泡して打ち込み、JIS A 1132に準じて、圧縮試験用円柱供試体(直径10cm、高さ20cm)を作製した。脱型後、二次養生(大気養生)までの間、乾燥防止のため市販のポリシートで供試体全体を密封するように被覆した。供試体の密度は、1.44g/cm3であった。
<供試体の養生について>
コンクリートを型枠に打ち込んだ後JIS A 1132に準じて大気養生(15℃±2℃)を行った。養生直後の供試体に対し、圧縮強度試験を行い、圧縮歪曲線の勾配値からヤング率を算出した。また、圧縮前、圧縮解除直後及び圧縮解除後5分経過後の高さの変化に基づいて変形回復率を算出した。算出結果を図1に示す。
[実施例2]
実施例1と同様の混練物を用い、補強体として、直径60mmの単円筒体(線径1.5mm及び目開き15mmのクリンプ織を使用)を用いてコンクリート組成物を作製した。
<供試体の作製について>
得られた混練物は、補強体を中心に配置したコンクリート供試体型枠(株式会社マルイ製ソノモールド)に空気が混入しないように脱泡して打ち込み、JIS A 1132に準じて、補強体を内蔵する圧縮試験用円柱供試体(直径10cm、高さ20cm)を作製した。脱型後、二次養生(大気養生)までの間、乾燥防止のため市販のポリシートで供試体全体を密封するように被覆した。供試体の密度は、1.76g/cm3であった。
<供試体の養生について>
実施例1と同様の養生を行った後、実施例1と同様の圧縮強度試験を行い、ヤング率及び変形回復率を算出した。算出結果を図1に示す。
[実施例3]
セメント組成物として、CNF、PVA及び鉱物粒含有コンクリート組成物を以下の原料を使用して作製した。
<使用原料の配合について>
使用原料として、以下の単位量で準備した。
セメント;154kg/m3
水;31kg/m3
CNF1;154kg/m3
(CNF量;3.08kg/m3、セメント比;2.0質量%)
PVA2;308kg/m3(セメント比;200質量%)
鉱物粒;15kg/m3(セメント比;9.7質量%)
粗骨材;386kg/m3
混和剤;2.16kg/m3
<供試体の作製について>
実施例1と同様に混練作業を行って供試体を作製した。供試体の密度は、1.31g/cm3であった。
<供試体の養生について>
実施例1と同様に養生を行い、養生直後の供試体に対し、圧縮強度試験を行った。圧縮歪曲線の勾配値からヤング率を算出した。また、圧縮前、圧縮解除直後及び圧縮解除後5分経過後の高さの変化に基づいて変形回復率を算出した。算出結果を図1に示す。
[実施例4]
実施例3と同様の混練物を用い、補強体として、直径60mmの単円筒体(線径1.5mm及び目開き15mmのクリンプ織を使用)を用いてコンクリート組成物を作製した。
<供試体の作製について>
得られた混練物は、実施例2と同様に処理して補強体を内蔵する供試体を作製した。供試体の密度は、1.84g/cm3であった。
<供試体の養生について>
実施例1と同様の養生を行った後、実施例1と同様の圧縮強度試験を行い、ヤング率及び変形回復率を算出した。算出結果を図1に示す。
[実施例5]
CNF、PVA及び鉱物粒含有モルタル組成物を以下の原料を使用して作製した。
<使用原料の配合について>
使用原料として、以下の単位量で準備した。
セメント;457kg/m3
水;69kg/m3
CNF1;228kg/m3
(CNF量;4.56kg/m3、セメント比;1.0質量%)
PVA1;228kg/m3(セメント比;50質量%)
PVA2;457kg/m3(セメント比;100質量%)
鉱物粒;69kg/m3(セメント比;15.1質量%)
混和剤;4.57kg/m3
<供試体の作製について>
原料の練り混ぜ作業には、実施例1と同様のミキサー使用し、原料を投入したのち約5分撹拌して練り混ぜた。得られた混練物は、実施例1と同様に、コンクリート供試体型枠を用いて圧縮試験用円柱供試体(直径10cm、高さ20cm)を作製した。脱型後、二次養生(大気養生)までの間、乾燥防止のため市販のポリシートで供試体全体を密封するように被覆した。供試体の密度は、1.27g/cm3であった。
<供試体の養生について>
モルタルを型枠に打ち込んだ後JIS A 1132に準じて大気養生(15℃±2℃)を行った。養生直後の供試体に対し、圧縮強度試験を行い、ヤング率及び変形回復率を算出した。算出結果を図1に示す。
[実施例6]
CNF、PVA及び鉱物粒含有モルタル組成物を以下の原料を使用して作製した。
<使用原料の配合について>
使用原料として、以下の単位量で準備した。
セメント;387kg/m3
水;58kg/m3
CNF1;194kg/m3
(CNF量;3.88kg/m3、セメント比;1.0質量%)
PVA1;194kg/m3(セメント比;50質量%)
PVA2;581kg/m3(セメント比;150質量%)
鉱物粒;58kg/m3(セメント比;15.0質量%)
混和剤;3.87kg/m3
<供試体の作製について>
原料の練り混ぜ作業には、実施例1と同様のミキサー使用し、原料を投入したのち約5分撹拌して練り混ぜた。得られた混練物は、実施例1と同様に、コンクリート供試体型枠を用いて圧縮試験用円柱供試体(直径10cm、高さ20cm)を作製した。脱型後、二次養生(大気養生)までの間、乾燥防止のため市販のポリシートで供試体全体を密封するように被覆した。供試体の密度は、1.21g/cm3であった。
<供試体の養生について>
モルタルを型枠に打ち込んだ後JIS A 1132に準じて大気養生(15℃±2℃)を行った。養生直後の供試体に対し、圧縮強度試験を行い、ヤング率及び変形回復率を算出した。算出結果を図1に示す。
[実施例7]
CNF、PVA及び鉱物粒含有モルタル組成物を以下の原料を使用して作製した。
<使用原料の配合について>
使用原料として、以下の単位量で準備した。
セメント;252kg/m3
水;38kg/m3
CNF1;126kg/m3
(CNF量;2.52kg/m3、セメント比;1.0質量%)
PVA1;126kg/m3(セメント比;50質量%)
PVA2;252kg/m3(セメント比;100質量%)
鉱物粒;20kg/m3(セメント比;7.9質量%)
混和剤;1.26kg/m3
<供試体の作製について>
原料の練り混ぜ作業には、実施例1と同様のミキサー使用し、原料を投入したのち約5分撹拌して練り混ぜた。得られた混練物は、実施例1と同様に、コンクリート供試体型枠を用いて圧縮試験用円柱供試体(直径10cm、高さ20cm)を作製した。脱型後、二次養生(大気養生)までの間、乾燥防止のため市販のポリシートで供試体全体を密封するように被覆した。供試体の密度は、1.53g/cm3であった。
<供試体の養生について>
モルタルを型枠に打ち込んだ後JIS A 1132に準じて大気養生(15℃±2℃)を行った。養生直後の供試体に対し、圧縮強度試験を行い、ヤング率及び変形回復率を算出した。算出結果を図1に示す。
[実施例8]
CNF、PVA及び鉱物粒含有モルタル組成物を以下の原料を使用して作製した。
<使用原料の配合について>
使用原料として、以下の単位量で準備した。
セメント;332kg/m3
水;50kg/m3
CNF1;166kg/m3
(CNF量;3.32kg/m3、セメント比;1.0質量%)
PVA1;332kg/m3(セメント比;100質量%)
鉱物粒;50kg/m3(セメント比;15.1質量%)
混和剤;3.65kg/m3
<供試体の作製について>
原料の練り混ぜ作業には、実施例1と同様のミキサー使用し、原料を投入したのち約5分撹拌して練り混ぜた。得られた混練物は、実施例1と同様に、コンクリート供試体型枠を用いて圧縮試験用円柱供試体(直径10cm、高さ20cm)を作製した。脱型後、二次養生(大気養生)までの間、乾燥防止のため市販のポリシートで供試体全体を密封するように被覆した。供試体の密度は、1.32g/cm3であった。
<供試体の養生について>
モルタルを型枠に打ち込んだ後JIS A 1132に準じて大気養生(15℃±2℃)を行った。養生直後の供試体に対し、圧縮強度試験を行い、ヤング率及び変形回復率を算出した。算出結果を図1に示す。
[実施例9]
CNF、PVA及び鉱物粒含有モルタル組成物を以下の原料を使用して作製した。
<使用原料の配合について>
使用原料として、以下の単位量で準備した。
セメント;332kg/m3
水;50kg/m3
CNF1;166kg/m3
(CNF量;3.32kg/m3、セメント比;1.0質量%)
PVA2;332kg/m3(セメント比;100質量%)
鉱物粒;50kg/m3(セメント比;15.1質量%)
混和剤;3.65kg/m3
<供試体の作製について>
原料の練り混ぜ作業には、実施例1と同様のミキサー使用し、原料を投入したのち約5分撹拌して練り混ぜた。得られた混練物は、実施例1と同様に、コンクリート供試体型枠を用いて圧縮試験用円柱供試体(直径10cm、高さ20cm)を作製した。脱型後、二次養生(大気養生)までの間、乾燥防止のため市販のポリシートで供試体全体を密封するように被覆した。供試体の密度は、1.36g/cm3であった。
<供試体の養生について>
モルタルを型枠に打ち込んだ後JIS A 1132に準じて大気養生(15℃±2℃)を行った。養生直後の供試体に対し、圧縮強度試験を行い、ヤング率及び変形回復率を算出した。算出結果を図1に示す。
[実施例10]
CNF及びPVA含有モルタル組成物を以下の原料を使用して作製した。
<使用原料の配合について>
使用原料として、以下の単位量で準備した。
セメント;409kg/m3
水;155kg/m3
CNF1;204kg/m3
(CNF量;4.08kg/m3、セメント比;1.0質量%)
PVA2;409kg/m3(セメント比;100質量%)
細骨材;503kg/m3
混和剤;3.27kg/m3
<供試体の作製について>
原料の練り混ぜ作業には、実施例1と同様のミキサー使用し、原料を投入したのち約5分撹拌して練り混ぜた。得られた混練物は、実施例1と同様に、コンクリート供試体型枠を用いて圧縮試験用円柱供試体(直径10cm、高さ20cm)を作製した。脱型後、二次養生(水中養生)までの間、乾燥防止のため市販のポリシートで供試体全体を密封するように被覆した。供試体の密度は、1.66g/cm3であった。
<供試体の養生について>
モルタルを型枠に打ち込んだ後JIS A 1132に準じて水中養生(20℃±2℃)を行った。養生直後の供試体に対し、圧縮強度試験を行い、ヤング率及び変形回復率を算出した。算出結果を図1に示す。
[実施例11]
CNF、PVA及び鉱物粒含有モルタル組成物を以下の原料を使用して作製した。
<使用原料の配合について>
使用原料として、以下の単位量で準備した。
セメント;332kg/m3
水;50kg/m3
CNF1;166kg/m3
(CNF量;3.32kg/m3、セメント比;1.0質量%)
PVA2;332kg/m3(セメント比;100質量%)
鉱物粒;50kg/m3(セメント比;15.1質量%)
混和剤;3.65kg/m3
<供試体の作製について>
原料の練り混ぜ作業には、実施例1と同様のミキサー使用し、原料を投入したのち約5分撹拌して練り混ぜた。得られた混練物は、実施例1と同様に、コンクリート供試体型枠を用いて圧縮試験用円柱供試体(直径10cm、高さ20cm)を作製した。脱型後、二次養生(水中養生)までの間、乾燥防止のため市販のポリシートで供試体全体を密封するように被覆した。供試体の密度は、1.57g/cm3であった。
<供試体の養生について>
モルタルを型枠に打ち込んだ後JIS A 1132に準じて水中養生(20℃±2℃)を行った。養生直後の供試体に対し、圧縮強度試験を行い、ヤング率及び変形回復率を算出した。算出結果を図1に示す。
[比較例1]
CNF含有モルタル組成物を以下の原料を使用して作製した。
<使用原料の配合について>
使用原料として、以下の単位量で準備した。
セメント;1693kg/m3
水;179kg/m3
CNF1;403kg/m3
(CNF量;8.06kg/m3、セメント比;0.47質量%)
鉱物粒;40kg/m3(セメント比;2.44質量%)
混和剤;14.39kg/m3
<供試体の作製について>
原料の練り混ぜ作業には、実施例1と同様のミキサー使用し、原料を投入したのち約5分撹拌して練り混ぜた。得られた混練物は、実施例1と同様に、コンクリート供試体型枠を用いて圧縮試験用円柱供試体(直径10cm、高さ20cm)を作製した。脱型後、二次養生(水中養生)までの間、乾燥防止のため市販のポリシートで供試体全体を密封するように被覆した。供試体の密度は、1.63g/cm3であった。
<供試体の養生について>
モルタルを型枠に打ち込んだ後JIS A 1132に準じて水中養生(20℃±2℃)を行った。養生直後の供試体に対し、圧縮強度試験を行い、ヤング率を算出した。圧縮強度試験では、供試体が圧縮により破壊されたので、変形回復率は算出できなかった。算出結果を図1に示す。
[比較例2]
コンクリート組成物を以下の原料を使用して作製した。
<使用原料の配合について>
使用原料として、以下の単位量で準備した。
セメント;975kg/m3
水;195kg/m3
粗骨材;663kg/m3
細骨材;644kg/m3
混和剤;16.57kg/m3
補強体;直径60mmの単円筒体(線径1.5mm及び目開き15mmのクリンプ織を使用)
<供試体の作製について>
原料の練り混ぜ作業には、実施例1と同様のミキサー使用し、原料を投入したのち約5分撹拌して練り混ぜた。得られた混練物は、実施例1と同様に、コンクリート供試体型枠を用いて圧縮試験用円柱供試体(直径10cm、高さ20cm)を作製した。脱型後、二次養生(水中養生)までの間、乾燥防止のため市販のポリシートで供試体全体を密封するように被覆した。供試体の密度は、2.50g/cm3であった。
<供試体の養生について>
コンクリートを型枠に打ち込んだ後JIS A 1132に準じて水中養生(20℃±2℃)を行った。養生直後の供試体に対し、圧縮強度試験を行い、ヤング率を算出した。圧縮強度試験では、供試体が圧縮により破壊されたので、変形回復率は算出できなかった。算出結果を図1に示す。
[比較例3]
PVC丸棒を内蔵するコンクリート組成物を以下の原料を使用して作製した。
<使用原料の配合について>
使用原料として、以下の単位量で準備した。
セメント;777kg/m3
水;259kg/m3
細骨材;1257kg/m3
鉱物粒;40kg/m3(セメント比;5.15質量%)
混和剤;7.38kg/m3
補強体;直径10mm及び60mmの単円筒体(線径1.5mm及び目開き15mmのクリンプ織を使用)を組み合せた同心円筒体を用い、中心にPVC1を単円筒体に挿入して配置した。
<供試体の作製について>
原料の練り混ぜ作業には、強制撹拌式ミキサー(株式会社関西機器製作所;容量50リットル)を使用した。ミキサーを駆動させて、セメント、水、粗骨材、CNF1、PVA1、鉱物粒、混和剤を投入したのち約5分撹拌して練り混ぜた。
排出された混練物は、補強体を中心に配置したコンクリート供試体型枠(株式会社マルイ製ソノモールド)に空気が混入しないように脱泡して打ち込み、JIS A 1132に準じて、圧縮試験用円柱供試体(直径10cm、高さ20cm)を作製した。脱型後、二次養生(水中養生)までの間、乾燥防止のため市販のポリシートで供試体全体を密封するように被覆した。供試体の密度は、2.44g/cm3であった。
<供試体の養生について>
モルタルを型枠に打ち込んだ後JIS A 1132に準じて水中養生(20℃±2℃)を行った。養生直後の供試体に対し、圧縮強度試験を行い、ヤング率を算出した。圧縮強度試験では、供試体が圧縮により破壊されたので、変形回復率は算出できなかった。算出結果を図1に示す。
以上説明した各実施例の試験結果をみると、密度が1.21g/cm3〜1.84g/cm3となっており、従来の硬化体に比べて軽量化されていることが確認された。
また、ヤング率は、17〜60N/mm2となっており、比較例よりも大きく低下している。実施例1から4のヤング率をみると、補強体を内蔵した場合にヤング率の低下が確認でき、変形しやすくなっていることがわかる。したがって、実施例2及び4に示す補強体を内蔵するコンクリート硬化体は、軽量で変形しやすく早期の変形回復を示す一種のゴム弾性体のような特性を備えている。
また、変形回復率については、比較例では圧縮変形により破壊されたのに対し、各実施例では50%以上回復しており、変形しやすく弾性的特性を発現していることが確認された。また、圧縮試験において圧縮解除してから5分経過後に高い変形回復を示しており、早期回復の程度からみても弾性的特性が明確に確認された。
PVAの配合割合を大きくする方が変形回復率を高めるように作用する傾向がみられ、実施例6にみられるように、PVA1よりもPVA2の配合割合を大きくした方が変形回復率が大きくなることが確認された。したがって、実施例6に示すモルタル硬化体は、軽量で変形しやすく早期の変形回復を示す一種のゴム弾性体のような特性を備えている。
本発明に係るセメント組成物は、軽量で変形しやすい弾性的特性を備える硬化体を作製することができ、こうした特性を生かして免震ゴム等の耐震材の代替資材、防波堤等の土木建築資材などに活用することが期待される。

Claims (5)

  1. 普通ポルトランドセメントからなるセメントと、セメントに対する配合割合が0.1質量%〜5.0質量%であるセルロースナノファイバーと、セメントに対する配合割合が100質量%〜400質量%であるポリビニルアルコールとを少なくとも含有するセメント組成物。
  2. セメントに対する配合割合が2質量%〜20質量%である硼珪酸塩鉱物からなる鉱物粒を含有する請求項1に記載のセメント組成物。
  3. 金属製補強体を内蔵する請求項1又は2に記載のセメント組成物。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載のセメント組成物を型枠に打ち込んだ後JIS A 1132に準じて大気養生(15℃±2℃)又は水中養生(20℃±2℃)を行った直後の供試体の圧縮強度試験(JIS A 1108)による圧縮歪曲線から得られた勾配値であるヤング率が1.0×101〜1.0×103N/mm2である硬化体。
  5. 圧縮強度試験による変形後の圧縮方向の変形回復率が50%以上である請求項4に記載の硬化体。
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