JP2020165037A - ミクロフィブリレイテッドセルロースを含有する紙または板紙 - Google Patents

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寛之 奥村
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義弘 青木
真也 大根田
Shinya Oneda
真也 大根田
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Abstract

【課題】高強度な紙または板紙を提供することを課題とする。【解決手段】 紙または板紙に関し、更に詳細には、本発明の紙または板紙は、ミクロフィブリレイテッドセルロース(MFC)および紙力増強剤を含有することを特徴とする。ここで、前記紙力増強剤は、パルプ100重量%に対して、0.01重量%以上3.0重量%以下含まれていることが好ましい。【選択図】 なし

Description

本発明は、紙または板紙に関し、更に詳細には、ミクロフィブリレイテッドセルロースおよび紙力増強剤を含有する紙または板紙に関する。
一般に、紙や板紙は印刷や各種加工等を経てユーザーの手元に届けられるが、その過程で紙や板紙には強度が求められることが多い。近年では、紙力向上効果を目的としてセルロースナノファイバーを添加することも検討されている(特許文献1)。
特開2009−263849号公報
特許文献1に記載の技術は、比較的強度が出やすい上質系パルプを使用した紙にセルロースナノファイバーのみを添加することで紙力を向上させる技術であった。一方で、特に古紙パルプを多く使用した紙または板紙は、上質系のパルプを使用した紙と比較して、強度が出にくく、更に高い強度向上効果が求められている。 本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、紙力が高められた紙または板紙を提供することを課題とする。
上記課題は、下記(1)〜(9)の構成の本発明の紙または板紙により達成される。
(1)少なくとも原紙層を有する紙または板紙であって、ミクロフィブリレイテッドセルロース(MFC)および紙力増強剤を含有する紙または板紙。
(2)前記紙力増強剤が、パルプ100重量%に対し、0.01重量%以上3.0重量%以下含まれている(1)に記載の紙または板紙。
(3)前記原料中のパルプ(固形分)およびミクロフィブリレイテッドセルロース(固形分)の総量におけるミクロフィブリレイテッドセルロースの含有量が0重量%以上(0を含まず)20重量%以下であることを特徴とする(1)または(2)のいずれかに記載の紙または板紙。
(4)前記原紙層がミクロフィブリレイテッドセルロースおよび紙力増強剤を含有する(1)〜(3)のいずれかに記載の紙または板紙。
(5)原紙層及び塗工層を有する紙または板紙であって、原紙層または塗工層のいずれか一方がミクロフィブリレイテッドセルロースを含有し、
前記ミクロフィブリレイテッドセルロースを含有する層に隣接して紙力増強剤を含有する層を有する(1)〜(3)のいずれかに記載の紙または板紙。
(6)前記パルプの20重量%以上が古紙パルプであることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の紙または板紙。
(7)前記紙力増強剤が、尿素ホルムアルデヒド系樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂、ポリビニルアミン系樹脂、カチオン化デンプン、カチオン性ポリアクリルアミド系樹脂、両性ポリアクリルアミド系樹脂のいずれかを含むことを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の紙または板紙。
(8)前記原料であるパルプの濾水度(CSF)が150ml以上700ml以下であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の紙または板紙。
(9)紙厚が500μm未満であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の紙または板紙。
本発明の紙または板紙においては、上記したように所定量のミクロフィブリレイテッドセルロース、更には紙力増強剤を含有させたことにより高強度の紙または板紙を提供することができる。
これは、添加した紙力増強剤が介在することで、ミクロフィブリレイテッドセルロースがパルプに強固に付着し、繊維間結合を強めたためと推測される。
以下、本発明の実施形態による紙または板紙について説明する。
なお、特に断りが無い限り「〜」は以上以下を示す。
1.ミクロフィブリレイテッドセルロースを含有する紙または板紙
本発明の紙または板紙は特定量のミクロフィブリレイテッドセルロース(以下「MFC」ともいう)および紙力増強剤を含む。本発明において紙とは、パルプを原料とするスラリーを抄紙ワイヤーで脱水することで得られるシートであって、一般的に抄紙ワイヤーの上にパルプスラリーを載せた後に、脱水工程、乾燥工程を経て得られるものである。また、抄紙機で抄造された紙は、一定の速度で移動するワイヤーでスラリーを抄紙するため、流れ方向(MD方向)の繊維配向を有する。また、板紙は、一般に紙の中でも特に厚いものを指すが、本発明においては、例えば、段ボール原紙、中芯、ライナー、板紙原紙、白板紙、チップボール、黄ボール、紙器原紙、キャリアテープ等の多層紙を「板紙」といい、単層紙を「紙」という。本発明の紙または板紙は少なくとも1つの紙層にミクロフィブリレイテッドセルロースおよび紙力増強剤をそれぞれ含有する。
(1)紙力増強剤
本発明の紙または板紙は、少なくとも紙力増強剤を含有し、紙力増強剤としては、尿素ホルムアルデヒド系樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂、ポリビニルアミン系樹脂、カチオン化デンプン、カチオン性ポリアクリルアミド系樹脂、両性のポリアクリルアミド系樹脂があげられる。本発明において、紙力増強剤を添加することで優れた強度が発現する理由は明らかではないが、パルプ(特に古紙パルプ)の繊維同士がMFCの有する反応性の高い官能基を介して結合した後で、パルプ(特に古紙パルプ)繊維同士の結合に寄与していないMFC中のカルボキシル基同士が、紙力増強剤を介して化学的に結合するためと推測される。また、紙力増強剤は、ポリアクリルアミド系の樹脂を用いることが好ましく、前記ポリアクリルアミド系の樹脂は、第一級または第二級のアミンを有することが好ましく、更に好ましくは第一級のアミンである。紙力増強剤は、紙中のパルプ100重量%に対し、0.01重量%以上3.0重量%以下含まれていることが好ましく、特に、0.1重量%以上2.5重量%以下含まれていることがより好ましく、更に好ましくは0.3重量%以上2.0重量%以下である。
(2)ミクロフィブリレイテッドセルロース(MFC)
本発明の紙または板紙は、少なくともミクロフィブリレイテッドセルロース(MFC)を含有し、紙または板紙のパルプ(固形分)およびMFC(固形分)の総量におけるMFCの含有量(固形分)が0重量%(0を含まず)以上20重量%以下、0.001重量%以上10重量%以下、さらに0.01重量%以上5重量%以下、特に0.1重量%以上4重量%以下であることが重要である。
本発明の紙または板紙は、MFCを含有していないと、十分な強度を発現しない。一方、20重量%を超えると、抄紙時の脱水性が大きく低下し、さらにパルプスラリーの粘度の上昇に伴いパルプスラリーの流動性が低下するため紙または板紙の製造が困難となる。特に、MFCの含有量を0.001重量%以上10重量%以下とすることは、紙または板紙の強度、パルプスラリーの脱水性、流動性の観点から好ましい。
本発明のミクロフィブリレイテッドセルロースは、セルロース原料を、必要に応じ化学変性処理した後で、解繊処理することにより得られる微細繊維である。ミクロフィブリレイテッドセルロースの平均繊維径は、通常500nm以上である。平均繊維長は好ましくは5μm以上、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは100μm以上である、上限は特に限定されないが2000μm以下が好ましく、更に好ましくは1700μm以下である。平均繊維径および平均繊維長は、ABB社製ファイバーテスターやバルメット株式会社製フラクショネーターを用いて測定することができる。
ミクロフィブリレイテッドセルロースの平均アスペクト比は、通常100以下であり、好ましくは80以下である。平均アスペクト比は、下記の式により算出することができる:
アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径
(2−1)セルロース原料
ミクロフィブリレイテッドセルロースの原料であるセルロース原料の由来は、特に限定されないが、例えば、植物(例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ、古紙等)、動物(例えばホヤ類)、藻類、微生物(例えば酢酸菌(アセトバクター))、微生物産生物等が挙げられる。本発明で用いるセルロース原料は、これらのいずれかであってもよいし2種類以上の組み合わせであってもよいが、好ましくは植物または微生物由来のセルロース原料(例えば、セルロース繊維)であり、より好ましくは植物由来のセルロース原料(例えば、セルロース繊維)であり、更に好ましくは広葉樹系または針葉樹径の木質系セルロース原料である。
セルロース原料の数平均繊維径は特に制限されないが、一般的なパルプである針葉樹クラフトパルプの場合は30〜60μm程度、広葉樹クラフトパルプの場合は10〜30μm程度である。その他のパルプの場合、一般的な精製を経たものは50μm程度である。例えばチップ等の数cm大のものを精製したものである場合、リファイナー、ビーター等の離解機で機械的処理を行い、50μm程度に調整することが好ましい。
(2−2)変性
セルロース原料は、グルコース単位あたり3つのヒドロキシル基を有しており、各種の化学変性処理を行うことが可能である。本発明では、これらに対して変性を行ってもよく、また行わなくてもよいが、化学変性処理を行った方が、紙または板紙に含有させた際に十分な補強性を発揮し得るため好ましい。その理由は、セルロース原料の変性により繊維の微細化が十分に進み、均一な繊維長および繊維径が得られるためである。また、補強性を発揮するのに有効な繊維長および繊維径を持つ繊維数が十分に確保できるためである。
セルロース原料を変性するための変性方法は特に制限されないが、例えば、酸化、エーテル化、リン酸化、エステル化、シランカップリング、フッ素化、カチオン化などの化学変性が挙げられる。中でも、酸化(カルボキシル化)、エーテル化、カチオン化、エステル化が好ましく、以下ではこれらの詳細な方法について説明する。
(2−2−1) 酸化
酸化によりセルロース原料を変性する場合、得られる酸化セルロースまたはミクロフィブリレイテッドセルロースの絶乾重量に対するカルボキシル基の量は、好ましくは0.5mmol/g以上、より好ましくは0.8mmol/g以上、更に好ましくは1.0mmol/g以上である。上限は、好ましくは3.0mmol/g以下、より好ましくは2.5mmol/g以下、更に好ましくは2.0mmol/g以下である。従って、0.5mmol/g〜3.0mmol/gが好ましく、0.8mmol/g〜2.5mmol/gがより好ましく、1.0mmol/g〜2.0mmol/gが更に好ましい。
酸化の方法は特に限定されないが、1つの例としては、N−オキシル化合物、および、臭化物、ヨウ化物若しくはこれらの混合物からなる群より選択される物質の存在下で酸化剤を用いて水中でセルロース原料を酸化する方法が挙げられる。この方法によれば、セルロース表面のグルコピラノース環のC6位の一級水酸基が選択的に酸化され、アルデヒド基、カルボキシル基、およびカルボキシレート基からなる群より選ばれる基が生じる。反応時のセルロース原料の濃度は特に限定されないが、5重量%以下が好ましい。
N−オキシル化合物とは、ニトロキシラジカルを発生しうる化合物をいう。ニトロキシルラジカルとしては例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル(TEMPO)が挙げられる。N−オキシル化合物としては、目的の酸化反応を促進する化合物であれば、いずれの化合物も使用できる。
N−オキシル化合物の使用量は、原料となるセルロースを酸化できる触媒量であれば特に制限されない。例えば、絶乾1gのセルロースに対して、0.01mmol以上が好ましく、0.02mmol以上がより好ましい。上限は、10mmol以下が好ましく、1mmol以下がより好ましく、0.5mmol以下が更に好ましい。従って、N−オキシル化合物の使用量は絶乾1gのセルロースに対して、0.01〜10mmolが好ましく、0.01〜1mmolがより好ましく、0.02〜0.5mmolがさらに好ましい。
臭化物とは臭素を含む化合物であり、例えば、水中で解離してイオン化可能な臭化アルカリ金属、例えば臭化ナトリウム等が挙げられる。また、ヨウ化物とはヨウ素を含む化合物であり、例えば、ヨウ化アルカリ金属が挙げられる。臭化物またはヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択すればよい。臭化物およびヨウ化物の合計量は絶乾1gのセルロースに対して、0.1mmol以上が好ましく、0.5mmol以上がより好ましい。上限は、100mmol以下が好ましく、10mmol以下がより好ましく、5mmol以下が更に好ましい。従って、臭化物およびヨウ化物の合計量は絶乾1gのセルロースに対して、0.1〜100mmolが好ましく、0.1〜10mmolがより好ましく、0.5〜5mmolがさらに好ましい。
酸化剤は、特に限定されないが例えば、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸、それらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物などが挙げられる。中でも、安価で環境負荷が少ないことから、次亜ハロゲン酸またはその塩が好ましく、次亜塩素酸またはその塩がより好ましく、次亜塩素酸ナトリウムが更に好ましい。酸化剤の使用量は、絶乾1gのセルロースに対して、0.5mmol以上が好ましく、1mmol以上がより好ましく、3mmol以上が更に好ましい。上限は、500mmol以下が好ましく、50mmol以下がより好ましく、25mmol以下が更に好ましい。従って、酸化剤の使用量は絶乾1gのセルロースに対して、0.5〜500mmolが好ましく、0.5〜50mmolがより好ましく、1〜25mmolがさらに好ましく、3〜10mmolが最も好ましい。N−オキシル化合物を用いる場合、酸化剤の使用量はN−オキシル化合物1molに対して1mol以上が好ましい。上限は、40molが好ましい。従って、酸化剤の使用量はN−オキシル化合物1molに対して1〜40molが好ましい。
酸化反応時のpH、温度等の条件は特に限定されず、一般に、比較的温和な条件であっても酸化反応は効率よく進行する。反応温度は4℃以上が好ましく、15℃以上がより好ましい。上限は40℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましい。従って、温度は4〜40℃が好ましく、15〜30℃程度、すなわち室温であってもよい。反応液のpHは、8以上が好ましく、10以上がより好ましい。上限は、12以下が好ましく、11以下がより好ましい。従って、反応液のpHは、好ましくは8〜12、より好ましくは10〜11程度である。通常、酸化反応の進行に伴ってセルロース中にカルボキシル基が生成するため、反応液のpHは低下する傾向にある。そのため、酸化反応を効率よく進行させるためには、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性溶液を添加して、反応液のpHを上記の範囲に維持することが好ましい。酸化の際の反応媒体は、取扱い性の容易さや、副反応が生じにくいこと等の理由から、水が好ましい。
酸化における反応時間は、酸化の進行の程度に従って適宜設定することができ、通常は0.5時間以上である。上限は通常は6時間以下、好ましくは4時間以下である。従って、酸化における反応時間は通常0.5〜6時間、例えば0.5〜4時間程度である。
酸化は、2段階以上の反応に分けて実施してもよい。例えば、1段目の反応終了後に濾別して得られた酸化セルロースを、再度、同一または異なる反応条件で酸化させることにより、1段目の反応で副生する食塩による反応阻害を受けることなく、効率よく酸化させることができる。
カルボキシル化(酸化)方法の別の例として、オゾン処理により酸化する方法が挙げられる。この酸化反応により、セルロースを構成するグルコピラノース環の少なくとも2位および6位の水酸基が酸化されると共に、セルロース鎖の分解が起こる。オゾン処理は通常、オゾンを含む気体とセルロース原料とを接触させることにより行われる。気体中のオゾン濃度は、50g/m3以上であることが好ましい。上限は、250g/m3以下であることが好ましく、220g/m3以下であることがより好ましい。従って、気体中のオゾン濃度は、50〜250g/m3であることが好ましく、50〜220g/m3であることがより好ましい。オゾン添加量は、セルロース原料の固形分100重量%に対し、0.1量部以上であることが好ましく、5重量%以上であることがより好ましい。上限は、通常30重量%以下である。従って、オゾン添加量は、セルロース原料の固形分100重量%に対し、0.1〜30重量%であることが好ましく、5〜30重量%であることがより好ましい。オゾン処理温度は、通常0℃以上であり、好ましくは20℃以上である。上限は通常50℃以下である。従って、オゾン処理温度は、0〜50℃であることが好ましく、20〜50℃であることがより好ましい。オゾン処理時間は、通常は1分以上であり、好ましくは30分以上である。上限は通常360分以下である。従って、オゾン処理時間は、通常は1〜360分程度であり、30〜360分程度が好ましい。オゾン処理の条件が上述の範囲内であると、セルロースが過度に酸化および分解されることを防ぐことができ、酸化セルロースの収率が良好となる。
オゾン処理後に得られる結果物に対しさらに、酸化剤を用いて追酸化処理を行ってもよい。追酸化処理に用いる酸化剤は、特に限定されないが例えば、二酸化塩素、亜塩素酸ナトリウム等の塩素系化合物;酸素、過酸化水素、過硫酸、過酢酸などが挙げられる。対酸化処理の方法としては例えば、これらの酸化剤を水またはアルコール等の極性有機溶媒中に溶解して酸化剤溶液を作成し、酸化剤溶液中にセルロース原料を浸漬させる方法が挙げられる。
酸化ミクロフィブリレイテッドセルロースに含まれるカルボキシル基、カルボキシレート基、アルデヒド基の量は、酸化剤の添加量、反応時間等の酸化条件をコントロールすることで調整することができる。
カルボキシル基量の測定方法の一例を以下に説明する。酸化セルロースの0.5重量%スラリー(水分散液)60mlを調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定する。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出することができる:
カルボキシル基量〔mmol/g酸化セルロースまたはミクロフィブリレイテッドセルロース〕=a〔ml〕×0.05/酸化セルロース重量〔g〕。
(2−2−2) エーテル化
エーテル化としては、カルボキシメチル(エーテル)化、メチル(エーテル)化、エチル(エーテル)化、シアノエチル(エーテル)化、ヒドロキシエチル(エーテル)化、ヒドロキシプロピル(エーテル)化、エチルヒドロキシエチル(エーテル)化、ヒドロキシプロピルメチル(エーテル)化などが挙げられる。この中から一例としてカルボキシメチル化の方法を以下に説明する。
カルボキシメチル化によりセルロース原料を変性する場合、得られるカルボキシメチル化セルロースまたはミクロフィブリレイテッドセルロース中の無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度は、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.10以上であることがさらに好ましい。上限は、0.50以下が好ましく、0.40以下がより好ましく、0.35以下が更に好ましい。従って、カルボキシメチル基置換度は、0.01〜0.50が好ましく、0.05〜0.40がより好ましく、0.10〜0.30が更に好ましい。
カルボキシメチル化の方法は特に限定されないが例えば、発底原料としてのセルロース原料をマーセル化し、その後エーテル化する方法が挙げられる。カルボキシメチル化反応の際は通用溶媒を用いる。溶媒としては例えば、水、アルコール(例えば低級アルコール)およびこれらの混合溶媒が挙げられる。低級アルコールとしては例えば、メタノール、エタノール、N−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N−ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノールが挙げられる。混合溶媒における低級アルコールの混合割合は、通常は60重量%以上または95重量%以下であり、60〜95重量%であることが好ましい。溶媒の量は、セルロース原料に対し通常は3重量倍である。上限は特に限定されないが20重量倍である。従って、溶媒の量は3〜20重量倍であることが好ましい。
マーセル化は通常、発底原料とマーセル化剤を混合して行う。マーセル化剤としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属が挙げられる。マーセル化剤の使用量は、発底原料の無水グルコース残基当たり0.5倍モル以上が好ましく、1.0モル以上がより好ましく、1.5倍モル以上であることがさらに好ましい。上限は、通常20倍モル以下であり、10倍モル以下が好ましく、5倍モル以下がより好ましい、従って、0.5〜20倍モルが好ましく、1.0〜10倍モルがより好ましく、1.5〜5倍モルがさらに好ましい。
マーセル化の反応温度は、通常0℃以上であり、好ましくは10℃以上である。上限は通常70℃以下、好ましくは60℃以下である。従って、反応温度は、通常0〜70℃、好ましくは10〜60℃である。反応時間は、通常15分以上、好ましくは30分以上である。上限は、通常8時間以下、好ましくは7時間以下である。従って、通常は15分〜8時間、好ましくは30分〜7時間である。
エーテル化反応は通常、カルボキシメチル化剤をマーセル化後に反応系に追加して行う。カルボキシメチル化剤としては例えば、モノクロロ酢酸ナトリウムが挙げられる。カルボキシメチル化剤の添加量は、セルロース原料のグルコース残基当たり通常は0.05倍モル以上が好ましく、0.5倍モル以上がより好ましく、0.8倍モル以上であることがさらに好ましい。上限は、通常10.0倍モル以下であり、5モル以下が好ましく、3倍モル以下がより好ましい、従って、好ましくは0.05〜10.0倍モルであり、より好ましくは0.5〜5であり、更に好ましくは0.8〜3倍モルである。反応温度は通常30℃以上、好ましくは40℃以上であり、上限は通常90℃以下、好ましくは80℃以下である。従って反応温度は通常30〜90℃、好ましくは40〜80℃である。反応時間は、通常30分以上であり、好ましくは1時間以上である。上限は、通常は10時間以下、好ましくは4時間以下である。従って反応時間は、通常は30分〜10時間であり、好ましくは1時間〜4時間である。カルボキシメチル化反応の間必要に応じて、反応液を撹拌してもよい。
カルボキシメチル化ミクロフィブリレイテッドセルロースのグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度の測定は例えば、次の方法によって行えばよい。すなわち、1)カルボキシメチル化セルロース(絶乾)約2.0gを精秤して、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。2)硝酸メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液100mLを加え、3時間振とうして、カルボキシメチルセルロース塩(カルボキシメチル化セルロース)を水素型カルボキシメチル化セルロースにする。3)水素型カルボキシメチル化セルロース(絶乾)を1.5〜2.0g精秤し、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。4)80%メタノール15mLで水素型カルボキシメチル化セルロースを湿潤し、0.1NのNaOHを100mL加え、室温で3時間振とうする。5)指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1NのH2SO4で過剰のNaOHを逆滴定する。6)カルボキシメチル置換度(DS)を、次式によって算出する:
A=[(100×F’−(0.1NのH2SO4)(mL)×F)×0.1]/(水素型カルボキシメチル化セルロースの絶乾質量(g))
DS=0.162×A/(1−0.058×A)
A:水素型カルボキシメチル化セルロースの1gの中和に要する1NのNaOH量(mL)
F’:0.1NのH2SO4のファクター
F:0.1NのNaOHのファクター
(2−2−3) カチオン化
カチオン化によりセルロース原料を変性する場合、得られるカチオン化ミクロフィブリレイテッドセルロースは、アンモニウム、ホスホニウム、スルホニウム等のカチオン、または該カチオンを有する基を分子中に含んでいればよい。カチオン化ミクロフィブリレイテッドセルロースは、アンモニウムを有する基を含むことが好ましく、四級アンモニウムを有する基を含むことがより好ましい。
カチオン化の方法は特に限定されないが例えば、セルロース原料にカチオン化剤と触媒を水および/またはアルコールの存在下で反応させる方法が挙げられる。カチオン化剤としては例えば、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウムハイドライト(例:3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムハイドライト)またはこれらのハロヒドリン型などが挙げられ、これらのいずれかを用いることで、四級アンモニウムを含む基を有するカチオン化セルロースを得ることができる。触媒としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水酸化アルカリ金属が挙げられる。アルコールとしては例えば、炭素数1〜4のアルコールが挙げられる。カチオン化剤の量は、好ましくはセルロース原料100重量%に対して5重量%以上であり、より好ましくは10重量%以上である。上限は通常800重量%以下であり、好ましくは500重量%以下である。触媒の量は、好ましくはセルロース繊維100重量%に対して0.5重量%以上であり、より好ましくは1重量%以上である。上限は通常7重量%以下であり、好ましくは3重量%以下である。アルコールの量は、好ましくはセルロース繊維100重量%に対して50重量%以上であり、より好ましくは100重量%以上である。上限は通常50000重量%以下であり、好ましくは500重量%以下である。
カチオン化の際の反応温度は通常10℃以上、好ましくは30℃以上であり、上限は通常90℃以下、好ましくは80℃以下である。反応時間は、通常10分以上であり、好ましくは30分以上である。上限は、通常は10時間以下、好ましくは5時間以下である。カチオン化反応の間必要に応じて、反応液を撹拌してもよい。
カチオン化セルロースのグルコース単位当たりのカチオン置換度は、カチオン化剤の添加量、水および/またはアルコールの組成比率のコントロールによって調整することができる。カチオン置換度とは、セルロースを構成する単位構造(グルコピラノース環)あたりの導入された置換基の個数を示す。言い換えると、カチオン置換度は、「導入された置換基のモル数をグルコピラノース環の水酸基の総モル数で割った値」として定義される。純粋セルロースは単位構造(グルコピラノース環)あたり3個の置換可能な水酸基を有しているため、カチオン置換度の理論最大値は3(最小値は0)である。
カチオン化ミクロフィブリレイテッドセルロースのグルコース単位当たりのカチオン置換度は、0.01以上が好ましく、0.02以上がより好ましく、0.03以上が更に好ましい。上限は、0.40以下が好ましく、0.30以下がより好ましく、0.20以下が更に好ましい。従って、0.01〜0.40であることが好ましく、0.02〜0.30がより好ましく、0.03〜0.20が更に好ましい。セルロースにカチオン置換基を導入することで、セルロース同士が電気的に反発する。このため、カチオン置換基を導入したセルロースは容易にナノ解繊することができる。グルコース単位当たりのカチオン置換度が0.01以上であることにより、十分にナノ解繊することができる。一方、グルコース単位当たりのカチオン置換度が0.40以下であることにより、膨潤または溶解を抑制することができ、これにより繊維形態を維持することができ、ナノファイバーとして得られない事態を防止することができる。
グルコース単位当たりのカチオン置換度の測定方法の一例を以下に説明する。試料(カチオン化セルロース)を乾燥させた後に、全窒素分析計TN−10(三菱化学)で窒素含有量を測定し、次式によりカチオン化度を算出する。ここでいうカチオン置換度とは、無水グルコース単位1モル当たりの置換基のモル数の平均値である。
カチオン置換度=(162×N)/(1−151.6×N)
N:窒素含有量
(2−2−4) エステル化
エステル化の方法は、 特に限定されないが例えば、セルロース系原料に対し化合物Aを反応させる方法が挙げられる。化合物Aについては以下説明する。セルロース系原料に対し化合物Aを反応させる方法としては例えば、セルロース系原料に化合物Aの粉末または水溶液を混合する方法、セルロース系原料のスラリーに化合物Aの水溶液を添加する方法等が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高まり、且つエステル化効率が高くなることから、セルロース系原料またはそのスラリーに化合物Aの水溶液を混合する方法が好ましい。
化合物Aとしては例えば、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ポリホスホン酸、これらのエステル等が挙げられる。化合物Aは、塩の形態でもよい。上記の中でも、低コストであり、扱いやすく、またパルプ繊維のセルロースにリン酸基を導入して、解繊効率の向上が図れるなどの理由から、リン酸系化合物が好ましい。リン酸系化合物は、リン酸基を有する化合物であればよく、例えば、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸カリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、メタリン酸アンモニウム等が挙げられる。用いられるリン酸系化合物は、1種、あるいは2種以上の組み合わせでもよい。これらのうち、リン酸基導入の効率が高く、下記解繊工程で解繊しやすく、かつ工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩が好ましく、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムがより好ましい。また、反応の均一性が高まり、且つリン酸基導入の効率が高くなることから、エステル化においてはリン酸系化合物の水溶液を用いることが好ましい。リン酸系化合物の水溶液のpHは、リン酸基導入の効率が高くなることから、7以下が好ましく、パルプ繊維の加水分解を抑える観点から、pH3〜7がより好ましい。
エステル化の方法としては例えば、以下の方法が挙げられる。セルロース系原料の懸濁液(例えば、固形分濃度0.1〜10重量%)に化合物Aを撹拌しながら添加し、セルロースにリン酸基を導入する。セルロース系原料を100重量部とした際に、化合物Aがリン酸系化合物の場合、化合物Aの添加量はリン元素量として、0.2重量部以上が好ましく、1重量部以上がより好ましい。これにより、微細繊維状セルロースの収率をより向上させることができる。上限は、500重量部以下が好ましく、400重量部以下がより好ましい。これにより、化合物Aの使用量に見合った収率を効率よく得ることができる。従って、0.2〜500重量部が好ましく、1〜400重量部がより好ましい。
セルロース系原料に対し化合物Aを反応させる際、さらに化合物Bを反応系に加えてもよい。化合物Bを反応系に加える方法としては例えば、セルロース系原料のスラリー、化合物Aの水溶液、またはセルロース系原料と化合物Aのスラリーに、添加する方法が挙げられる。
化合物Bは特に限定されないが、塩基性を示すことが好ましく、塩基性を示す窒素含有化合物がより好ましい。「塩基性を示す」とは通常、フェノールフタレイン指示薬の存在下で化合物Bの水溶液が桃〜赤色を呈すること、または/および化合物Bの水溶液のpHが7より大きいことを意味する。塩基性を示す窒素含有化合物は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、アミノ基を有する化合物が好ましい。例えば、尿素、メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。この中でも低コストで扱いやすい点で、尿素が好ましい。化合物Bの添加量は、2〜1000重量部が好ましく、100〜700重量部がより好ましい。反応温度は0〜95℃が好ましく、30〜90℃がより好ましい。反応時間は特に限定されないが、通常1〜600分程度であり、30〜480分が好ましい。エステル化反応の条件がこれらのいずれかの範囲内であると、セルロースが過度にエステル化されて溶解しやすくなることを防ぐことができ、リン酸エステル化セルロースの収率を向上させることができる。
セルロース系原料に化合物Aを反応させた後、通常はエステル化セルロース懸濁液が得られる。エステル化セルロース懸濁液は必要に応じて脱水される。脱水後には加熱処理を行うことが好ましい。これにより、セルロース系原料の加水分解を抑えることができる。加熱温度は、100〜170℃が好ましく、加熱処理の際に水が含まれている間は130℃以下(更に好ましくは110℃以下)で加熱し、水を除いた後100〜170℃で加熱処理することがより好ましい。
リン酸エステル化セルロースにおいては、セルロース系原料にリン酸基置換基が導入されており、セルロース同士が電気的に反発する。そのため、リン酸エステル化セルロースは容易にナノ解繊することができる。リン酸エステル化セルロースのグルコース単位当たりのリン酸基置換度は0.001以上が好ましい。これにより、十分な解繊(例えばナノ解繊)が実施できる。上限は、0.40が好ましい。これにより、リン酸エステル化セルロースの膨潤または溶解を防止し、ナノファイバーが得られない事態を防止することができる。従って、0.001〜0.40であることが好ましい。リン酸エステル化セルロースは、煮沸後冷水で洗浄する等の洗浄処理がなされることが好ましい。これにより解繊を効率よく行うことができる。
(2−3)解繊または叩解
セルロース原料を弱く解繊または叩解することで、微細化またはフィブリル化する。本発明において、解繊または叩解には、解繊、叩解、分散、混錬を含む。解繊または叩解処理は、セルロース原料に変性処理を施す前に行ってもよいし、後に行ってもよい。また、解繊または叩解は、一度に行ってもよいし、複数回行ってもよい。複数回の場合それぞれの解繊または叩解の時期はいつでもよい。
解繊または叩解に用いる装置は特に限定されないが、例えば、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などのタイプの装置が挙げられる。好ましくは、高圧または超高圧ホモジナイザー、リファイナー、ビーター、PFIミル、ニーダー、ディスパーザー、トップファイナーなど回転軸を中心にして金属または刃物とパルプ繊維を作用させるもの、あるいはパルプ繊維同士の摩擦によるものを使用することができる。
(その他)
本発明において、必要に応じて、MFCに樹脂、ゴム、サイズ剤、撥水剤、染料、蛍光染料、紙力増強剤、印刷適性向上剤、防腐剤などの各種助剤を添加することが可能である。また、所望の効果を阻害しない範囲で、コーヒー滓、茶殻等の廃棄物のファイバーを添加することができる。
(3)紙または板紙の製造方法
本発明のMFC含有紙または板紙は、MFCおよび紙力増強剤を含有しており、MFCと紙力増強剤は紙に外添しても内添してもよいが、製造過程または製造後のいずれかの段階でMFCと紙力増強剤が同一層内に存在するように添加することが好ましい。例えば、内添の場合は、パルプスラリー(紙料)にMFC及び紙力増強剤を混合し、当該試料を用いて抄紙する方法で製造してもよく、パルプスラリーにMFCまたは紙力増強剤のいずれか一方の添加剤を混合、抄紙し原紙を得た後に、残りの添加剤(MFCまたは紙力増強剤)を含有する塗工液を塗布し、残りの添加剤を原紙に浸透させることで同一の層に含有させる方法で製造してもよい。
MFCと紙力増強剤を紙または板紙に添加する場合、MFCと紙力増強剤の添加順は特に限定されず、パルプスラリーにMFCを添加してから紙力増強剤を添加してもよく、紙力増強剤を添加してからMFCを添加してもよいが、MFCを添加してから紙力増強剤を添加することが好ましい。抄紙には長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網式抄紙機等の公知の抄紙機を用いることができ、その抄紙条件も限定されないが、湿潤強度や表面平滑性、密度調整の観点から湿紙をプレスする工程を有することが好ましい。抄紙時のpHは、酸性、中性、アルカリ性のいずれでもよい。また、外添に使用する塗工液の塗布には、サイズプレス、ゲートロールコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、スプレーコーターなどの塗工機を用いることができ、その塗工条件も限定されない。
紙または板紙の原料として使用されるパルプは特に限定されるものではなく、化学パルプ(針葉樹の晒クラフトパルプ(NBKP)または未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹の晒クラフトパルプ(LBKP)または未晒クラフトパルプ(LUKP)等)、機械パルプ(グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等)、古紙パルプなどの一般的に抄紙原料として使用されるパルプを、単独または任意の割合で混合して使用することができる。古紙パルプとしては、新聞古紙、段ボール古紙、上質古紙、雑誌古紙、未印刷古紙、廃棄機密文書等の紙類等に由来するものが挙げられる。古紙パルプは、未脱墨古紙パルプであってもよいし、脱墨古紙パルプであってもよい。また、古紙パルプの配合率は、パルプ100重量%に対して、20重量%以上であることが好ましく、より好ましくは50重量%以上である。古紙パルプは一般的に、新聞や雑誌などのすでに様々な薬品を含有する原料を、界面活性剤など薬品処理して得られるため、系内にアニオン性やカチオン性の様々な不純物を含有しており、パルプ繊維表面にもそれらの不純物が付着しているものと考えらえる。そのため、それらのパルプ繊維表面に付着している不純物と、ミクロフィブリレイテッドセルロース間の相互作用で紙力向上効果が得られ、そこにさらに紙力増強剤を添加することで、不純物、ミクロフィブリレイテッドセルロース、紙力増強剤間でより強固なネットワークを形成するものと考えられる。
本発明の紙または板紙は填料を含有してもよい。填料としては、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、合成樹脂填料、古紙由来の持ち込み填料等の公知の填料が挙げられる。中でも、環境面や紙の保存性、裏抜け、白色度等の観点から、炭酸カルシウムを使用して、紙面がpH6〜9となるように中性抄紙することが望ましい。
さらに、本発明の紙または板紙は、必要に応じて、内添サイズ剤、アニオン性、ノニオン性、カチオン性もしくは両性の歩留り向上剤、濾水性向上剤、本発明の紙力増強剤以外のその他の紙力増強剤、染料、蛍光染料、嵩高剤等で例示される各種の抄紙用内添助剤を使用することができる。内添サイズ剤の具体例としては、アルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系、スチレン−アクリル系、高級脂肪酸系、石油樹脂系サイズ剤、ロジン系サイズ剤等が挙げられる。また、歩留向上剤、濾水性向上剤、その他の紙力増強剤の具体例としては、アルミニウム等の多価金属化合物(具体的には、硫酸バンド、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、塩基性アルミニウム化合物等)、カチオン化澱粉などの各種澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース誘導体等が挙げられる。また、前述のとおり、公知の方法により、本発明の紙または板紙の上に、クリア塗工層または顔料塗工層を設けることで、高強度なクリア塗工紙または顔料塗工紙を得ることができる。
本発明において、パルプの濾水度(カナダ標準濾水度CSF)は150ml以上700ml以下であることが好ましく、200ml以上500ml以下であることがより好ましい。150ml未満であると脱水性の低下などの問題が発生する場合がある。一方、700mlを超えると十分な強度が発現しないなどの問題が発生する場合がある。なお、本発明において、濾水度の異なる数種類のパルプを使用した場合の濾水度は、それぞれのパルプの質量比率にそれぞれのパルプの濾水度を掛け合わせた値の総和をパルプ濾水度とする。
(4)紙または板紙
(4−1)紙質
本発明の紙または板紙の坪量は特に限定されるものではないが、20g/m以上900g/m以下であることが好ましく、10g/m以上280g/m以下がより好ましい。多層の紙層をもつ板紙の場合は、一層が上記範囲でもよく、全層の合計が上記範囲でもよい。
本発明の紙または板紙の厚さは特に限定されるものではないが、500μm未満であることが好ましい。500μm以上であると、抄紙機での脱水、乾燥効率が低下する恐れがあり、また得られた紙が剛直になるため、紙製品の良さであるしなやかさが十分に得られなくなってしまう恐れがある。
本発明の紙または板紙の密度は、0.2〜1.2g/cmである。本発明の紙または板紙は、後述の通り、印刷、紙器、包装、家庭紙などの用途で使用される紙または板紙であるため、比較的軽量であることが求められる。そのため、比重の高い原料を多量に使用せずに、上記の密度範囲の紙または板紙とすることが好ましい。
(4−2)用途
本発明の紙または板紙の用途は限定されず、例えば、オフセット印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、湿式または乾式電子写真印刷等の各種印刷用紙、感圧紙、感熱紙等の各種情報用紙、新聞用紙、包装用紙、はがき用紙、ライナーや中芯原紙などの段ボール原紙、板紙原紙、白板紙、家庭紙等に使用できる。また、本発明の紙または板紙を原紙として、更にバインダーや顔料を含有する塗工層を設けてもよい。
(評価方法)
カナダ標準濾水度(csf:ml):JIS P 8121−2:2012に従った。
比破裂強さ:JIS P 8131:2009に準拠して測定し、比較例1の値に対する増加率によって比破裂強さの向上効果を以下の通り評価した。
×:5%以下 向上効果が弱い
△:5%超15%以下 向上効果がややある
〇:15%超30%以下 向上効果がある
◎:30%超 向上効果が高い
ショートスパン比圧縮強さ:JIS P 8156:2012に準拠して測定し、比較例1の値に対する増加率によってショートスパン比圧縮強さの向上効果を以下の通り評価した。
×:0.5%未満 向上効果が弱い
△:0.5%以上10%以下 向上効果がややある
〇:10%超15%以下 向上効果がある
◎:15%超 向上効果が高い
[カルボキシメチル化パルプ(CM化パルプ)の製造]
パルプを混ぜることができる撹拌機に、パルプ(NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)、日本製紙製)を乾燥質量で200g、水酸化ナトリウムを乾燥質量で111g(発底原料の無水グルコース残基当たり2.25倍モル)加え、パルプ固形分が20%(w/v)になるように水を加えた。その後、30℃で30分攪拌した後にモノクロロ酢酸ナトリウムを216g(有効成分換算、パルプのグルコース残基当たり1.5倍モル)添加した。30分撹拌した後に、70℃まで昇温し1時間撹拌した。その後、反応物を取り出して中和、洗浄して、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度0.25のカルボキシメチル化したパルプを得た。
[酸化パルプ(酸化パルプ)の製造]
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)5.00g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)39mg(絶乾1gのセルロースに対し0.05mmol)と臭化ナトリウム514mg(絶乾1gのセルロースに対し1.0mmol)を溶解した水溶液500mlに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を次亜塩素酸ナトリウムが5.5mmol/gになるように添加し、室温にて酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。
反応後の混合物をガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水洗することで酸化されたパルプ(カルボキシル化セルロース)を得た。この時のパルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシル基量は1.6mmol/gであった。
[MFCの製造]
前述のCM化パルプ及び酸化パルプを、叩解処理しCM化MFC(平均繊維長0.53mm、平均繊維径14.4μm、アスペクト比36.9、CSF67ml)及び酸化MFC(平均繊維長0.75mm、平均繊維径15.8μm、アスペクト比47.6、CSF10ml)を得た。
(実施例1)CM化MFC含有シートの製造
段ボール古紙をパルパーにより溶解して再生古紙パルプスラリーを得た。その後、異物除去装置により、再生古紙パルプスラリーからゴミ等の異物を除去した。当該スラリーにそれぞれパルプ及びMFCの総量(固形分)100重量%に対し、硫酸バンド0.3重量%(固形分)、CM化MFC2.0重量%、紙力増強剤(ポリアクリルアミド、一級アミン系)0.15重量%を順次添加し、パルプスラリーを調製した。当該MFC含有パルプの濾水度(c.s.f)は350mLであった。当該スラリーを濃度調整した後抄紙ワイヤー上で抄紙し、プレス、乾燥処理を行い、坪量 95g/m、紙厚160μmとなるように手抄きシートを調製した。当該シートについて評価した結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1のCM化MFCの添加量を4.0重量%とした以外は実施例1と同様に手抄きシートを調整した。
(実施例3)
実施例2のCM化MFCを酸化MFCにした以外は実施例2と同様に手すきシートを調整した。
(比較例1)
実施例1のCM化MFCを添加しない以外は実施例1と同様に手すきシートを調整した。
Figure 2020165037
上記結果より、CM化MFC、酸化MFCのいずれのMFCを使用した場合でも(実施例1〜3)、紙力増強剤のみを添加した比較例1の紙と比較して、比破裂強さ、ショートスパン比圧縮強さが上昇しており、強度向上効果が確認された。特にCM化MFCにおいてより高い効果を得られた。

Claims (9)

  1. 少なくとも原紙層を有する紙または板紙であって、ミクロフィブリレイテッドセルロース(MFC)および紙力増強剤を含有する紙または板紙。
  2. 前記紙力増強剤が、パルプ100重量%に対し、0.01重量%以上3.0重量%以下含まれている請求項1に記載の紙または板紙。
  3. 前記原料中のパルプ(固形分)およびミクロフィブリレイテッドセルロース(固形分)の総量におけるミクロフィブリレイテッドセルロースの含有量が0重量%以上(0を含まず)20重量%以下であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の紙または板紙。
  4. 前記原紙層がミクロフィブリレイテッドセルロースおよび紙力増強剤を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の紙または板紙。
  5. 原紙層及び塗工層を有する紙または板紙であって、原紙層または塗工層のいずれか一方がミクロフィブリレイテッドセルロースを含有し、
    前記ミクロフィブリレイテッドセルロースを含有する層に隣接して紙力増強剤を含有する層を有する請求項1〜3のいずれかに記載の紙または板紙。
  6. 前記パルプの20重量%以上が古紙パルプであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の紙または板紙。
  7. 前記紙力増強剤が、尿素ホルムアルデヒド系樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂、ポリビニルアミン系樹脂、カチオン化デンプン、カチオン性ポリアクリルアミド系樹脂、両性ポリアクリルアミド系樹脂のいずれかを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の紙または板紙。
  8. 前記原料であるパルプの濾水度(CSF)が150ml以上700ml以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の紙または板紙。
  9. 紙厚が500μm未満であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の紙または板紙。
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