JP6428172B2 - 耐水紙およびそれを用いた紙容器、並びに製造方法 - Google Patents

耐水紙およびそれを用いた紙容器、並びに製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、飲料、食料品などの包装材、その他産業資材として用いられる耐水性紙に関する。特に、熱水や温水にさらされる条件下において優れた耐水性を有する耐水紙に関するものである。
紙には、インクの裏移りや滲み防止、オフセット印刷の湿し水、飲料・食品用ラベル、壁紙等、目的や用途に応じて耐水性が必要となる。紙に耐水性を付与する方法としては、従来より様々な加工が知られている。一つは、紙の抄紙工程において紙料に薬剤を添加(内添)する方法がある。この方法において使用される薬剤としては、ロジン系、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸無水物、パラフィンワックスやマイクロクリスタリンワックスなどのワックスエマルジョン系が挙げられる。これらの内添薬剤を抄紙工程中において使用して行う耐水化加工は、薬剤の紙中への歩留まりが低いため薬剤のロスが多く、また耐水化の効果も限定的である。
紙に耐水性を付与する他の加工方法として、抄紙後の紙に薬剤を塗布・含浸(外添)させる方法がある。この方法においては、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミドポリ尿素−ホルムアルデヒド樹脂、グリオキサールなどの耐水化剤を塗工し、架橋反応により耐水化する方法があるが、使用する薬剤によってはホルムアルデヒドが発生し作業環境面、安全面で問題がある。
さらに別の加工方法として、紙表面にポリエチレンなどのプラスチックフィルムをラミネートする方法がある。この方法によれば、紙表面からの浸水は完全に抑えることができるが、紙の端部(断面)からの浸水は抑制することができないため、紙自体の耐水性が不十分だと、端部から浸水により印刷部に滲みが発生したり、ラミネートしたプラスチックフィルムが剥離するといった問題がある。
一方、近年、環境問題への関心の高まりから、天然由来の環境配慮型バイオマス材料として紙が注目され、特に、飲料や食品容器の分野において、石油由来のプラスチックフィルムからの置き換えが進んでいる。従来プラスチックフィルムを用いていた用途での紙材料への置き換えにおいては、様々な課題もある。例えば、食品を殺菌し賞味期限を延ばすために行われる加圧加熱処理(レトルト処理)があるが、温水、熱水にさらされることから高い耐水性かつ加熱による変色が少ないことが求められる。レトルト処理に対応する紙容器として、例えば、特許文献1には、最外層、パルプ層からなる紙基材層、介在樹脂層、バリア層および/または耐ピンホール性層からなる中間層、および、最内層を順次積層した積層体であって、印刷層が、当該最外層の表面、または、最外層の内面、または、紙基材層の表面のいずれかに少なくとも一層設けられた積層体が提案されている。これによれば、印刷層が保護層となり、レトルト処理後の紙の変色を防止することができるとしているが、レトルト処理による紙の変色は、熱によって紙を構成するセルロース繊維自体の化学構造が変化することが主な要因であり、保護層の形成のみで抑制することは困難である。また、紙基材については、規定の水分給水量の範囲であれば紙の変色や変形、強度低下を抑えられるとしているが、従来の耐水化技術では耐水性が不十分であり改善の余地がある。
特開2004−17984
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、飲料、食料品などの包装材、その他産業資材として用いられる紙に関する。特に、熱水や温水にさらされる条件下において優れた耐水性を有し、かつ変色が少ない耐水紙、およびそれを用いた紙容器を提供するものである。
上記課題を解決するために、本発明に係る第1の発明は、カルボキシ基を有するセルロース繊維と、多価金属化合物とを含む耐水紙であって、
前記セルロース繊維と前記多価金属化合物に由来する多価金属イオンとがイオン架橋し、
前記セルロース繊維1g中の前記カルボキシ基及びアルデヒド基のそれぞれの含有量が、前者は0.5mmol以上5.0mmol以下、後者は0.1mmol以下の範囲であることを特徴とする耐水紙である。
また、第2の発明は、イオン架橋前の前記カルボキシ基が酸型であることを特徴とする請求項1に記載の耐水紙である。
また、第3の発明は、前記カルボキシ基を有するセルロース繊維の数平均重合度が、200以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の耐水紙である。
また、第の発明は、前記多価金属化合物が2価の金属化合物であることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の耐水紙である。
また、第の発明は、前記2価の金属化合物が酸化亜鉛であることを特徴とする請求項に記載の耐水紙である。
また、第の発明は、前記カルボキシ基を有するセルロース繊維がポリカルボン酸系重合体を含むことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の耐水紙である。
また、第の発明は、請求項1からのいずれか一項に記載の耐水紙を用いたことを特徴とする紙容器である。
また、第の発明は、パルプモールド法により成形されたことを特徴とする請求項に記載の紙容器である。
また、第の発明は、カルボキシ基を有するセルロース繊維と、多価金属化合物とを含む耐水紙の製造方法であって、
カルボキシ基を有するセルロース繊維を用いて抄紙した後、前記多価金属化合物を含む塗液を塗布または含浸させて、
前記多価金属化合物に由来する多価金属イオンと前記カルボキシ基とをイオン架橋させる工程からなることを特徴とする耐水紙の製造方法である。
また、第1の発明は、前記イオン架橋させる工程において、高温熱水処理する工程を含むことを特徴とする請求項に記載の耐水紙の製造方法である。
また、第1の発明は、カルボキシ基を有するセルロース繊維と、多価金属化合物とを含む耐水紙を用いた紙容器の製造方法であって、
前記セルロース繊維をパルプモールド法により成型した後、該成形体に前記多価金属化合物を塗布または含浸させ、
前記多価金属化合物に由来する多価金属イオンと前記カルボキシ基とをイオン架橋させる工程からなることを特徴とする紙容器の製造方法である。
また、第1の発明は、前記イオン架橋させる工程において、高温熱水処理する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の紙容器の製造方法である。
本発明に係る第1の発明によれば、カルボキシ基を有するセルロース繊維と、多価金属化合物とを含む耐水紙であって、前記セルロース繊維と前記多価金属化合物に由来する多価金属イオンとがイオン架橋することにより、セルロース繊維が絡み合い、セルロース繊維単体に比べて高い耐水性を得ることができる。
また、前記セルロース繊維1g中の前記カルボキシ基の含有量が0.5mmol以上5.0mmol以下の範囲であることにより、イオン架橋が形成し易くセルロース繊維の絡み合いが増し機械強度が向上する。また、同時に前記セルロース繊維1g中のアルデヒド基の含有量が0.1mmol以下の範囲であることにより、適正な着色を得ることができる。
また、第2の発明によれば、イオン架橋前の前記カルボキシ基が酸型であること、すなわち、カルボキシ基がH+以外の対イオンと塩を形成していないため、前記多価金属化合物に由来する多価金属イオンとのイオン架橋を形成し易い。またセルロース繊維がミクロフィブリルまで分散した状態となり、それにより前記多価金属化合物の浸入を促進することができる。
また、第3の発明によれば、前記カルボキシ基を有するセルロース繊維の数平均重合度が、200以上であることにより、抄紙した際に適正な機械強度、耐熱性、成膜性などが得られる。
また、第4の発明によれば、触媒としてN−オキシル化合物を用い、pH4からpH7の水系反応溶液系中で酸化反応を行うことにより、他の触媒を用いた酸化反応に比べて、選択的に6位の水酸基を酸化して前記カルボキシ基を導入することができる。これにより、他の酸化反応に比べてセルロースの結晶性を損なうことがなく、機械的強度や耐食性に優れた紙を提供することができる。
また、第5、6の発明によれば、前記多価金属化合物が2価の金属化合物、特に酸化亜鉛であることにより、効率的に安定してイオン架橋を形成することができる。
以上、説明したように本発明によれば、耐水性に優れ、高温熱水処理後も変色が少ない耐水紙およびそれを用いた紙容器、並びに製造方法を提供することができる。
以下、本発明の詳細について実施形態に基づいて説明する。
本発明の耐水紙は、カルボキシ基を有するセルロース繊維(A)と多価金属化合物(B
)を含むものであり、前記(A)が前記(B)に由来する多価金属イオンによりイオン架橋していることを特徴とする。
(カルボキシ基を有するセルロース繊維)
本発明に用いるカルボキシ基を有するセルロース繊維(以下、酸化セルロースということがある)は以下のような調製方法により得ることができる。カルボキシ基を有するセルロース繊維は、酸化処理により、セルロース分子中のグルコピラノース環の少なくとも一部にカルボキシ基が導入されたものである。
セルロース原料としては、セルロースを含むものであれば特に限定されず、セルロースIの結晶構造を有する天然由来のセルロースを用いることができる。たとえば各種木材パルプ、非木材パルプ、古紙パルプを使用でき、特に製紙用パルプを好適に用いることができる。
セルロースの酸化処理としては、一般的に知られている水酸基からアルデヒド基を経てカルボキシ基へと酸化する方法から適宜選択することができるが、触媒として2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(TEMPO)等のN−オキシル化合物を用いた酸化処理(TEMPO酸化処理)が好適である。TEMPO酸化処理を行うと、結晶表面のセルロース分子の水酸基をもつ3つの炭素のうち、C6位の−CHOHを選択的に酸化することができ、アルデヒド基を経てカルボキシ基まで変換することができる。TEMPO酸化処理によれば、カルボキシ基を、酸化処理の程度に応じて均一かつ効率よく導入できる。また、TEMPO酸化処理は、他の酸化処理に比べて、セルロースの結晶性を損ないにくい。そのため、TEMPO酸化処理により得られる酸化セルロースのミクロフィブリルは、天然のセルロースが有する高い結晶構造(I型結晶構造)を保持しており、機械的強度に優れる。
中でも、4−アセトアミドTEMPOを触媒とし、弱酸性から中性条件下、好ましくはpH4〜7で、酸化剤として亜塩素酸ナトリウムを含む水系溶液中で行われるTEMPO酸化法が、生成する酸化セルロースの物性、試薬の入手しやすさ、コスト、反応の安定性の点から好適である。pH4〜7の水系反応溶液としては、例えば、酢酸緩衝溶液、りん酸緩衝溶液を用いることができる。TEMPO酸化法では、従来、次亜塩素酸ナトリウムなどの次亜ハロゲン酸またはその塩を酸化剤として用いる手法が広く知られているが、次亜ハロゲン酸またはその塩を用いると、酸化反応の中間体として、セルロース分子中にアルデヒド基が残存してしまうため、加熱時に着色の原因となる。これに対し、亜塩素酸またはその塩は、アルデヒド基を酸化する酸化剤であるため、生成したアルデヒド基は速やかにカルボキシ基へと変換され、セルロース分子中に残存しない。このため、レトルト処理後にも、加熱による着色を抑えることができる。セルロース中に残存するアルデヒド基量が0.1mmol以下であることが望ましい。
従来より用いられている次亜ハロゲン酸またはその塩を用いるTEMPO酸化法においても、水素化ホウ素ナトリウムによる追還元処理、または亜塩素酸ナトリウムを用いた追酸化処理を施し、アルデヒド基を減少させることによって、着色を抑制することが可能であるが、工程の簡便性の点で上記の酸化方法が優れる。
また、従来用いられているTEMPO酸化法においては、pH10程度のアルカリ条件下で反応を行うためアルデヒド基に起因する脱離反応が頻発し、セルロースの分子量が著しく低下することが知られていた。本発明の実施の形態においては、アルデヒド基の残存が少なく、pH4〜7の弱酸性〜中性の条件で行うことで、セルロースの分子量低下を抑えることができる。酸化セルロースの分子量が大きいと、セルロース繊維の絡み合いが増し、紙の機械的強度が向上する。
本発明のカルボキシ基を有するセルロースは、高分子量、例えば、重合度(DP)が200以上であることが望ましい。前記重合度未満になると、機械的強度、耐熱性、成膜性が低くなる。上記酸化方法によれば高分子量の酸化セルロースを得ることが可能である。
TEMPO酸化に用いる試薬類は市販のものを容易に入手可能である。反応温度は0〜60℃が好適であり、3〜72時間程度で後述するイオン架橋に十分な量のカルボキシ基を導入できる。なお、反応速度を高めるため、次亜ハロゲン酸またはその塩を添加してもよい。ただし、添加量が多すぎるとアルデヒド基が生成しやすくなるため、添加量は触媒に対し1.1当量程度に抑えることが好ましい。
セルロースに導入するカルボキシ基量(セルロースナノファイバー1g中に含まれるカルボキシ基のモル量)は、0.5〜5mmol/gが好ましく、0.8〜2.5mmol/gがより好ましく、1.0〜2.0mmol/gがさらに好ましい。カルボキシ基量が上記範囲の下限値未満であると、イオン架橋密度が低くなり、耐水性が不十分となる。また、カルボキシ基量が上記範囲の上限値を超えると、酸化反応中にセルロースの結晶性の低下や低分子量化が進み、紙の強度が低くなる。カルボキシ基量は酸化の際の反応条件(温度、時間、試薬量)により制御できる。カルボキシ基の導入量は、電導度滴定法など公知の方法により測定することができる。
反応は、反応液内にエタノール等のアルコールを添加することにより停止させることができる。酸化処理後、反応液に酸を添加して中和処理を行う。上記、酸化処理後の反応液中に含まれるカルボキシ基を有するセルロースはカルボキシ基が塩型となっているが、中和処理を行うことにより酸型とすることができる。カルボキシ基が酸型であるとは、セルロースが有するカルボキシ基が、H以外の対イオンと塩を形成していない(−COOH、または−COOである)ことを示す。
カルボキシ基が酸型であると、多価金属イオンによるイオン架橋が進行しやすい。通常、TEMPO酸化は酸化剤等に含まれるナトリウムイオンの存在下で行われ、セルロースが有するカルボキシ基の多くはナトリウムイオンと塩を形成している。ナトリウムイオンから亜鉛イオンへ直接のイオン交換はほとんど進行しないため、カルボキシ基が塩型のままであるとセルロース繊維同士が多価金属イオンでイオン架橋した構造を得ることはできないため、カルボキシ基を酸型としておく必要がある。酸型とする工程は、酸化反応後に任意に設定することが可能であるが、回収時に酸型とすることで、酸化セルロースの膨潤が抑えられ回収および後述の洗浄操作が容易になり、かつ収率も向上する。中和に用いる酸としては、酸化セルロース中の塩型のカルボキシ基を酸型とし得るものであればよく、たとえば塩酸、硫酸等が挙げられるが安全性や入手のしやすさから塩酸が好ましい。
反応後の酸化セルロースは、ろ過等により反応液より回収できる。酸化セルロースは反応液中の触媒、不純物を除去するために洗浄処理を行うことが好ましい。洗浄処理は、たとえば、ろ過により酸化セルロースを回収した後、水等の洗浄液で洗浄し、ろ別を繰り返すことにより実施できる。洗浄液としては、水系のものが好ましく用いられ、たとえば水、塩酸等が挙げられる。
このようにして得られたカルボキシ基を有するセルロースを用いて、公知の方法に従い紙を製造する。まず、カルボキシ基を有するセルロースをもとに紙料を調成する。紙料の調成においては、本発明の効果を阻害しない範囲で、サイズ剤、サイズ定着剤、填料など公知の薬品を配合することが可能である。続いて、ワイヤーパート、プレスパート、ドライパートなどからなる抄紙工程により紙を製造することができる。紙の坪量は、用途に応じて適宜設定することができる。
(多価金属化合物)
上記により製造した紙に対し、多価金属化合物(B)を含む液を塗布または含浸させることにより、カルボキシ基を有するセルロース(A)と多価金属化合物(B)を含む紙を調製する。塗布方法としては、バーコート、スプレーコート、ディップコート、ロールコート、ダイコート等、公知の方式を用いて行うことができる。塗布量は、紙中のカルボキシ基が十分に反応する量があれば良く、塗布液の濃度、塗布方式、コスト等を考慮し任意に設定できる。
多価金属化合物とは、金属イオンの価数が2以上の多価金属の化合物である。多価金属としては、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属;チタン、ジルコニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛などの遷移金属;アルミニウム等が挙げられる。
多価金属化合物としては、例えば多価金属の単体、酸化物、水酸化物、炭酸塩、有機酸塩(例えば、酢酸塩)もしくは無機酸塩、多価金属酸化物のアンモニウム錯体もしくは2〜4級アミン錯体、またはそれらの炭酸塩もしくは有機酸塩が挙げられる。これらの多価金属化合物は単独で、または少なくとも2種類の多価金属化合物を混合して用いることができる。多価金属化合物としては、架橋のしやすさ、製造性の観点から、亜鉛化合物、カルシウム化合物、マグネシウム化合物等の2価の金属化合物が好ましく、扱いやすさやコストの点から、酸化亜鉛が特に好ましい。
多価金属化合物を含む液においては、多価金属化合物の粒子が液体媒体に分散していてもよく、多価金属化合物が液体媒体に溶解していてもよい。生産性の観点から、多価金属化合物の粒子が液体媒体に分散していることが好ましい。多価金属化合物の粒子の平均粒子径は特に限定されないが、均一性、浸透性、着色の観点から、5μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましく、0.1μm以下であることが特に好ましい。
多価金属化合物を含む液には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、多価金属化合物以外の他の成分をさらに含有してもよい。例えば、粒子の分散性を高めるため、分散剤などが挙げられる。
多価金属化合物を含む液を塗布または含浸させた後、液体媒体を適宜乾燥させ、架橋前耐水紙を得る。乾燥させる方法としては、熱風乾燥、IR乾燥など公知の手法を用いることができる。乾燥条件としては、特に限定しないが、乾燥温度としては20℃以上200℃以下が好ましく、40℃以上200℃以下がより好ましい。40℃以下では液体媒体の除去に時間がかかりすぎてしまい、200℃以上では、紙に含まれるセルロースが熱分解し黄変してしまうおそれがある。この段階では、カルボキシ基同士はイオン架橋しておらず、紙は容易に成型加工可能である。
この架橋前耐水紙には、(A)、(B)のに加えて、ポリカルボン酸系重合体、および/または酸型のセルロースナノファイバーをさらに含んでもよい。これらは、イオン架橋点となるカルボキシ基を有するポリマー、または微細繊維であり、これにより、イオン架橋密度が増し、耐水性や紙の強度をさらに向上させることができる。ポリカルボン酸系重合体および酸型のナノファイバーは、架橋前耐水紙上に塗布し紙の表面近傍に配置することで、特に効果的に形成することができる。
ポリカルボン酸系重合体は、分子内にカルボキシ基を2個以上有する重合体である。ポリカルボン酸系重合体としては、カルボキシ基を少なくとも1個含有する構成単位を2個
以上有する重合体が好ましい。ポリカルボン酸系重合体としては、たとえば、分子内にエチレン性二重結合を有する不飽和カルボン酸の重合体;前記不飽和カルボン酸と他の単量体との共重合体;アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ペクチン等の分子内にカルボキシ基を有する酸性多糖類等が挙げられる。
前記不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。前記不飽和カルボン酸と共重合可能な不飽和単量体としては、分子内にエチレン性二重結合を有するものが好ましく、たとえばオレフィン類(エチレン、プロピレン等)、飽和カルボン酸ビニルエステル類(酢酸ビニル等)、不飽和カルボン酸アルキルエステル類(アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アルキルイタコネート等)、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。
不飽和カルボン酸の重合体は、単独重合体でもよく、2種以上の不飽和カルボン酸を重合した共重合体でもよい。不飽和カルボン酸と他の単量体との共重合体に用いられる不飽和カルボン酸、他の単量体はそれぞれ1種でも2種以上でもよい。
ポリカルボン酸系重合体としては、塗工性、透明性等の点から、不飽和カルボン酸の重合体が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸およびイタコン酸から選ばれる単量体の単独重合体および共重合体から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、アクリル酸およびメタクリル酸から選ばれる単量体の単独重合体および共重合体から選ばれる少なくとも1種が特に好ましい。
ポリカルボン酸系重合体の(多価金属イオンによりイオン架橋していない状態での)重量平均分子量は、2,000〜10,000,000の範囲内であることが好ましく、5,000〜1,000,000の範囲内であることがより好ましい。重量平均分子量が2,000以上であると、架橋前耐水紙の成型性や耐水性が良好である。重量平均分子量が10,000,000以下であると、原料の粘度が充分に低く扱いやすい。なお、上記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求められるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
酸型のセルロースナノファイバーとは、酸型のカルボキシ基を有するセルロースがミクロフィブリル単位にまで分散した分散体のことである。酸型のセルロースナノファイバーは、例えば、以下のような方法により調製できる。
まず、TEMPO酸化セルロースをアルカリ条件下で分散処理することで塩型のセルロースナノファイバーを調製する。続いて、塩型のセルロースナノファイバーのpHを3以下に調整する。pH調整用の酸性水溶液としては特に限定しないが、扱いやすさの点から塩酸が好ましい。酸型への変換と同時に、NaCl等の塩が発生する。該塩が発生すると、カルボキシ基同士の静電反発効果が遮蔽され、分散液中で酸型セルロースナノファイバーが凝集・ゲル化してしまい、そのままでは塗液として用いることができない。したがって、ゲル化した酸型セルロースナノファイバーを再分散させるために、対イオンをHに交換した後、さらに、ゲル化した酸型セルロースナノファイバーを洗浄する工程(ゲル洗浄工程)を経る必要がある。
ゲル洗浄工程では、まず、ゲル化した酸型セルロースナノファイバーを希酸により洗浄して塩を除去したのち、蒸留水により洗浄して過剰な酸性分を除去し、さらに軽微な解繊処理を施す。これにより、均一に分散し酸型セルロースナノファイバー分散液を得ることができる。ゲル洗浄を行う際の洗浄液として初めから蒸留水を用いてしまうと急激にpHが上昇し、酸型が塩型へと再変換されてしまうおそれがある。ゲル洗浄の方法としては、
遠心分離、ナイロンメッシュ処理、透析処理などが挙げられる。
解繊処理方法としては、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、ボールミル、ロールミル、カッターミル、遊星ミル、ジェットミル、アトライター、グラインダー、ジューサーミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、ナノジナイザー、水中対向衝突などを用いることができる。
こうして得られた酸型セルロースナノファイバー分散液は、良好な塗工性を有しており、そのまま塗液として用いることができる。
(イオン架橋)
本発明の耐水紙においては、前記カルボキシ基を有するセルロースが、多価金属イオンによりイオン架橋している。すなわち、紙を構成するセルロース繊維が有するカルボキシ基と、紙中に塗布または含浸された多価金属化合物または多価金属イオンとが反応し、カルボキシ基の対イオン(H)と多価金属イオンとがイオン交換する。1つの多価金属イオンが複数のカルボキシ基の対イオンとなることで、複数のセルロース繊維が多価金属イオンを介して架橋(イオン架橋)した状態となる。このように、紙中でイオン架橋していることで、レトルト処理といった高い耐水性を有する用途においても耐水紙として機能する。また、架橋構造をとることにより紙の剛性が増し、薄い紙で安定的に形状を保持することも可能である。
カルボキシ基を有するセルロース(A)と多価金属化合物(B)は、相対湿度20%以上の雰囲気下に置くことによりイオン架橋できる。(A)を用いて製造した紙に多価金属化合物(B)を塗布または含浸させた紙を相対湿度20%以上の雰囲気下に置く方法としては、例えば、架橋前駆体に対し、レトルト処理、ボイル処理、調湿処理のうちの少なくとも1種の処理を施す方法が挙げられる。
レトルト処理は、一般に食品等を保存するために、カビ、酵母、細菌などの微生物を加圧殺菌する処理である。レトルト装置は、加熱蒸気を利用する蒸気式、加圧過熱水を利用する熱水式等がある。前駆積層体のレトルト処理条件としては、105〜140℃、0.15〜0.3MPaで、10〜120分の条件が好ましい。
ボイル処理は、食品等を保存するため湿熱殺菌する処理である。ボイル処理は、通常、熱水槽を用いて行うが、一定温度の熱水槽の中に浸漬し、一定時間後に取り出すバッチ式と、熱水槽の中をトンネル式に通して殺菌する連続式がある。前駆積層体のボイル処理条件としては、60〜100℃、大気圧下で、10〜120分の条件が好ましい。
調湿処理は、前駆積層体を、10〜99℃、大気圧下、相対湿度20〜99%の雰囲気下に置くことである。調湿時間は、温度と湿度によってその最適な範囲が異なり、低温低湿度であるほど長時間の調湿を必要とし、高温高湿度であるほど短時間で処理を終えることができる。例えば、30℃で相対湿度70%の条件下では10時間以上、40℃で相対湿度90%の条件下では3時間以上、60℃で相対湿度90%の条件下では30分以上の調湿処理を行えば、充分にイオン架橋を進行させることができる。
多価金属イオンによるイオン架橋をより効率的に促進する観点から、架橋前耐水紙を高温熱水処理する工程を含むことが好ましい。本発明において「高温熱水処理」とは、75℃以上(好ましくは80〜140℃)の水(水蒸気であってもよい。)に接触させる処理を意味する。高温熱水処理としては、レトルト処理、ボイル処理等が挙げられる。架橋前耐水紙に施す高温熱水処理は1種のみでも2種以上の組み合わせでもよい。
カルボキシ基を有するセルロースが多価金属イオンによりイオン架橋しているかどうかは、赤外分光法により酸型カルボキシ基由来の1720cm−1付近の吸収ピークが多価金属型カルボキシ基由来の1600cm−1付近へとシフトすることにより、定性的に確認できる。
(紙容器)
本発明の耐水紙は、必要に応じて、紙以外の層を積層することができる。本発明の耐水紙が積層できる層としては、たとえば、ヒートシール可能な熱可塑性樹脂層(以下、ヒートシール層ともいう。)、耐水紙とヒートシール層との間に設けられる中間フィルム層、印刷層等が挙げられる。また、各層をドライラミネート法やウェットラミネート法で積層する場合には、該積層のための接着層(ラミネート用接着剤層)を有してもよい。また、ヒートシール層を溶融押し出し法で積層する場合には、該積層のためのプライマー層やアンカーコート層などを有してもよい。
ヒートシール層は、袋状パッケージ体、スタンディングパウチ体などを形成する際に密封層として設けられるものである。ヒートシール層を有する場合、該ヒートシール層は、当該包装材の少なくとも一方の最外層に配置される。ヒートシール層を最外層に有することで、該積層体を袋状包装体などの形状に容易に加工でき、包装材料としての有用性が高まる。
ヒートシール層としては、公知のものを用いることができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体またはそれらの金属架橋物等の樹脂の1種からなるフィルムが用いられる。
ヒートシール層の厚さは、目的に応じて決められるが、一般的には15〜200μmの範囲である。ヒートシール層の積層方法としては、ヒートシール層を形成するフィルムを、ラミネート用接着剤層を形成するための接着剤(2液硬化型ウレタン樹脂など)を用いて貼り合わせるドライラミネート法等を用いることが一般的であるが、これに限定されず、公知の方法により積層することができる。
本発明の耐水紙においては、例えば、架橋前耐水紙に対しヒートシール層を積層した後、製袋、内容物充填を行い、最後に架橋反応と内容物の殺菌を兼ねてレトルト処理を行うことができる。製袋や内容物の充填といった、容器に対し成型性、柔軟性が要求される工程においては架橋前の紙が好適であり、レトルト処理時には耐水性紙として機能し、レトルト処理後、運搬、陳列といった容器の剛性が求められる段階においては、架橋後の剛性を有する紙容器として扱うことが可能となる。本発明の耐水紙を用いることにより、各工程で要求される特性を満たす、包装材料、紙容器の提供が可能となる。
本発明の耐水紙を用いた紙容器としては、スタンディングパウチ、カップ容器、プレス式成型法による紙容器、カルボキシ基を有するセルロースを原料としたパルプモールド法による成型容器などが挙げられる。
以下、本発明の詳細について実施例を用いて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の各例において、「%」は、特に断りのない限り、質量%(w/w%)を示す。
[製造例1]
セルロース(針葉樹クラフトパルプ)36g(絶乾質量換算)をpH4.8の酢酸ナトリウム緩衝液1400gに加え撹拌し、膨潤させた後ミキサーにより解繊した。ここに緩衝液1200gと、4−アセトアミドTEMPOを3.6gと亜塩素酸ナトリウム30gを加え撹拌し、0.16mol/l濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液63gを添加し、50℃で48時間酸化反応を行った。その後、エタノール20gを添加し、反応を停止した。続いて反応溶液に0.5NのHClを滴下しpHを2まで低下させた。ナイロンメッシュを用いてこの溶液をろ過し、固形分をさらに水で4回洗浄し、反応試薬や副生成物を除去し、固形分濃度4%の酸型のカルボキシ基を有するセルロースを得た。
(カルボキシ基量の測定)
電導度滴定法により導入されたカルボキシ基量を測定した。
絶乾質量換算で0.2gの湿潤酸化セルロースをビーカーに量りとり蒸留水を加えて75gとした。0.1MのNaCl水溶液を0.5ml加え、0.5Mの塩酸でpHを2.5とした後0.5MのNaOH水溶液を滴下して電導度測定を行った。弱酸の中和段階に相当する部分がカルボキシ基量となるので、得られた電導度曲線からNaOH水溶液の添加量を読み取り、カルボキシ基量を算出した。算出したカルボキシ基量は1.65mmol/gであった。
(アルデヒド基量の測定)
TEMPO酸化パルプを再度、亜塩素酸ナトリウムにより酸化処理する(追酸化)ことで、アルデヒド基をカルボキシ基へと変換し、反応前後でのカルボキシ基量を比較することによりアルデヒド基量を算出した。反応後のカルボキシ基の増分がアルデヒド基量となる。絶乾質量換算で2g湿潤酸化セルロースに0.5Mの酢酸20mlと蒸留水57mlと亜塩素酸ナトリウム1.8gを加えpH4に調整し室温で48時間反応させた。この後、上記と同様の手法でカルボキシ基量を測定し、再酸化前のカルボキシ基量との差を算出した。追酸化後のカルボキシ基量は1.68mmol/gであり、アルデヒド基量は0.03mmol/gと算出された。
(分子量の測定)
酸化セルロースの分子量は銅エチレンジアミン溶液を溶媒とし、粘度法により測定した。測定の結果、重合度は380であった。
[製造例2]
セルロース(針葉樹クラフトパルプ)30g(絶乾重量換算)を水600gに浸漬し、ミキサーにて分散させた。分散後のパルプスラリーにあらかじめ水200gに溶解させたTEMPOを0.3g、NaBrを3g添加し、更に水で希釈し全体を1400mlとした。系内を20℃に保ち、セルロース1gに対し10mmolになるよう次亜塩素酸ナトリウム水溶液を計りとり滴下した。滴下開始からpHは低下を始めるが、0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を随時滴下し、系のpHを10に保った。4時間後、0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液の滴下量が2.8mmol/gになったところでエタノールを20g添加し、反応を停止した。反応系に0.5NのHClを添加し、pH2まで低下させた。ナイロンメッシュを用いてこの溶液をろ過し、固形分をさらに水で4回洗浄し、反応試薬や副生成物を除去し、固形分濃度5%の酸型のカルボキシ基を有するセルロースを得た。
(カルボキシ基量の測定)
製造例1と同様の方法でカルボキシ基量を測定したところ、1.66mmol/gであった。
(アルデヒド基量の測定)
製造例1と同様の方法でアルデヒド基量を測定したところ、0.3mmol/gであっ
た。
(分子量の測定)
製造例1と同様の方法で重合度を測定したところ、250であった。
[実施例1]
(カルボキシ基を有するセルロースからなる紙の製造)
製造例1で製造したカルボキシ基を有するセルロースを、標準型手漉き角型抄紙機を用いて抄紙し、脱水プレス(3.43×10Pa)を5分間行い、ヤンキードライヤー(表面温度=約120℃)で乾燥させ坪量250gの紙(A1)を製造した。
(多価金属化合物を含む液)
続いて蒸留水67.0gに、酸化亜鉛超微粒子(堺化学工業株式会社製、FINEX50、平均一次粒子径20nm)を30.0g、分散剤としてポリアクリル酸ナトリウム(東亞合成株式会社製、アロンT−50:固形分濃度40%)を3.0g加えて、高速攪拌機(プライミクス株式会社製、T.K.フィルミックス)を用いて充分に分散させて、100.0gの酸化亜鉛超微粒子水分散液を得た。
この酸化亜鉛超微粒子水分散液25.0gに、蒸留水55.1gと、ポリエステル樹脂水性分散体(ユニチカ株式会社製、エリーテル KT−8803:固形分濃度30%、ポリエステル樹脂の数平均分子量は13,000、Tgは65℃、酸価は7mgKOH/g)4.1gと、水分散性イソシアネート化合物(Henkel製、Liofol HardenerUR5889−21:固形分濃度100%)0.45gとを加えて攪拌した後、IPA(イソプロピルアルコール)を10.3g加えて攪拌し、多価金属化合物を含む液(B1)を調製した。
(架橋前耐水紙)
上記により製造した紙(A1)を多価金属化合物を含む液(B1)に10秒間浸漬し、多価金属化合物を含浸させた。脱水用フェルトにはさんで水分を除去し、50℃にて乾燥させ、架橋前耐水紙(C1)を作製した。
(ヒートシール層のラミネート)
架橋前耐水紙に対し、ドライラミネート用接着剤を介しヒートシール層を両面に積層した。ヒートシール層としては、厚さが70μmの未延伸プロピレン(CPP)フィルム(RXC22、三井化学東セロ社製)を使用し、ラミネート用接着剤層を形成する接着剤としては、二液硬化型ポリウレタン系ラミネート用接着剤(A525/A52、三井化学ポリウレタン社製)を使用した。接着剤は、バーコート法により、乾燥後の塗布量が3.0g/mとなるように塗布した。ラミネート後、積層体は50℃にて4日間養生した。
(多価金属イオンによりセルロース繊維同士をイオン架橋させる工程)
ヒートシール層を積層した前記架橋前耐水紙を、熱水貯湯式レトルト殺菌装置(日阪製作所製)を用いて、120℃、処理槽圧力2kgで30分間レトルト処理した。これにより、多価金属イオンによりセルロース繊維同士のイオン架橋を形成させヒートシール層を有する耐水紙を作製した。
[実施例2]
実施例1の耐水紙に対し、酸型のセルロースナノフィバー分散液を、塗布量1g/m(片面)となるよう、バーコーターを用いて両面に塗布した。塗布後、60℃オーブンにて乾燥させた後、実施例1と同様に多価金属化合物の含浸、ヒートシール層ラミネート、レトルト処理を行い、ヒートシール層を有する耐水紙を作製した。
[比較例1]
多価金属化合物を含む液(B1)に浸漬しなかったこと以外は実施例1同様の方法にて、ヒートシール層を有する耐水紙を作製した。
[比較例2]
製造例2のカルボキシ基を有するセルロースを用いたこと以外は実施例1と同様の方法にて、ヒートシール層を有する耐水紙を作製した。
[比較例3]
製造例1のカルボキシ基を有するセルロースの水分散スラリ−に、市販の湿潤紙力剤であるポリアミド−エピクロルヒドリン樹脂のN.V.=1.0wt%水溶液を対絶乾パルプ重量比でN.V.=1.0wt%混合し5分間攪拌定着後、実施例1と同様に標準型手漉き角型抄紙機を用いて抄紙し、脱水プレス(3.43×105Pa)を5分間行い、ヤンキードライヤー(表面温度=約120℃)で乾燥させ坪量250gの紙を製造した。実施例1と同様に、両面にドライラミネート用接着剤を介しヒートシール層を両面に積層し、レトルト処理を行い耐水紙を作製した。
<評価>
各実施例および比較例で得られたヒートシール層を有する耐水紙について、下記の評価を行った。結果を表1に示す。
<吸水率>
耐水紙を50×50mmの形状に裁断し、蒸留水へ10分間浸水させ、浸水前の重量と浸水後の重量差により、吸水率(含水重量率)を算出した。
なお、吸水率(%)=[(浸水後の重量(g)―浸水前の重量(g))/浸水前の重量(g)]×100である。
<変色>
色彩色差計(コニカミノルタ製、CR−200)を用い、光源設定D65、Lab表色系でレトルト処理前後の対水紙積層体の色差△Eを測定した。
<強度>
レトルト処理後、自然乾燥させ調湿(20°C−65%RH、24時間)し、30mm×50mmの試験片を作製し、定速圧縮試験による座屈時の荷重をオートグラフ(島津製作所社製 島津オートグラフAG−500A)を用いて測定した。
Figure 0006428172
表1より、本発明耐水紙は、市販の耐水化剤を用いた耐水紙よりも高い耐水性を有することが分かった。また、レトルト処理後の変色も小さく、紙の強度も向上することが分かった。特に、酸型のセルロースナノファイバーを塗布した実施例2では、低い吸水率を示した。これは、緻密なイオン架橋構造による効果の他、平滑化の効果もあり、ラミネート樹脂との密着性が向上したためと考えられる。
本発明の耐水紙を用いることで、レトルト処理等の熱水、温水処理下でも使用可能な紙製容器を提供することができる。

Claims (12)

  1. カルボキシ基を有するセルロース繊維と、多価金属化合物とを含む耐水紙であって、
    前記セルロース繊維と前記多価金属化合物に由来する多価金属イオンとがイオン架橋し、
    前記セルロース繊維1g中の前記カルボキシ基及びアルデヒド基のそれぞれの含有量が、前者は0.5mmol以上5.0mmol以下、後者は0.1mmol以下の範囲であることを特徴とする耐水紙。
  2. イオン架橋前の前記カルボキシ基が酸型であることを特徴とする請求項1に記載の耐水紙。
  3. 前記カルボキシ基を有するセルロース繊維の数平均重合度が、200以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の耐水紙。
  4. 前記多価金属化合物が2価の金属化合物であることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の耐水紙。
  5. 前記2価の金属化合物が酸化亜鉛であることを特徴とする請求項に記載の耐水紙。
  6. 前記カルボキシ基を有するセルロース繊維がポリカルボン酸系重合体を含むことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の耐水紙。
  7. 請求項1からのいずれか一項に記載の耐水紙を用いたことを特徴とする紙容器。
  8. パルプモールド法により成形されたことを特徴とする請求項に記載の紙容器。
  9. カルボキシ基を有するセルロース繊維と、多価金属化合物とを含む耐水紙の製造方法であって、
    カルボキシ基を有するセルロース繊維を用いて抄紙した後、前記多価金属化合物を含む塗液を塗布または含浸させて、
    前記多価金属化合物に由来する多価金属イオンと前記カルボキシ基とをイオン架橋させる工程からなることを特徴とする耐水紙の製造方法。
  10. 前記イオン架橋させる工程において、高温熱水処理する工程を含むことを特徴とする請求項に記載の耐水紙の製造方法。
  11. カルボキシ基を有するセルロース繊維と、多価金属化合物とを含む耐水紙を用いた紙容器の製造方法であって、
    前記セルロース繊維をパルプモールド法により成型した後、該成形体に前記多価金属化合物を塗布または含浸させ、
    前記多価金属化合物に由来する多価金属イオンと前記カルボキシ基とをイオン架橋させる工程からなることを特徴とする紙容器の製造方法。
  12. 前記イオン架橋させる工程において、高温熱水処理する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の紙容器の製造方法。
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