JP2022115529A - バリア性を有する紙容器及びその製造方法 - Google Patents

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Yoshito HISATOMI
佑典 田中
Sukenori Tanaka
慶 荒木
Kei Araki
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Abstract

【課題】紙容器が有する生分解性を損なうことなく、優れたバリア性及びラミネート強度を有する紙容器及びその製造方法を提供する。【解決手段】紙製基材の少なくとも一方の面に、少なくとも樹脂層及びバリア層が形成された多層構造を有する紙容器であって、前記バリア層が、セルロースナノクリスタル及び多価カチオン樹脂を含有する混合物から成り、前記積層構造における各層間の界面剥離強度が2N以上であり、前記紙容器内面側には紙基材が露出しておらず、50%RH、23℃における酸素透過度が5.0cc/m2・day・atm以下であることを特徴とする。【選択図】図3

Description

本発明は、バリア性を有する紙容器及びその製造方法に関するものであり、より詳細には、紙容器が有する生分解性を損なうことなく、優れたバリア性及びラミネート強度を具備した紙容器及びその製造方法に関する。
紙容器は、再生可能な天然資源由来材料から成ることから、環境に優しい容器として広く普及している。しかしながら、紙製基材のみでは耐水性やガスバリア性に劣ることから、耐湿性樹脂や、ガスバリア性層を積層した積層体から容器を成形している。
例えば、紙製基材にアルミニウム等の金属箔を貼り合わせることや、エチレンビニルアルコール共重合体等のガスバリア性樹脂を積層すること、或いはガスバリア性のポリマーコーティングを塗布すること等によりガスバリア性を付与することが行われている。
しかしながら、金属箔を有する紙容器は電子レンジ加熱に対応できないという問題がある。またエチレンビニルアルコール共重合体或いはガスバリア性ポリマーから成る層は、紙製基材との密着性の問題や、石油由来材料であるため天然資源由来材料である紙製品の優れた特性を損なうおそれもある。また、無機蒸着層を形成することによりガスバリア性を付与することも行われているが、紙製基材はその表面に無数の凹凸が存在するため無機蒸着層に欠陥が生じやすいことから、ガスバリア性が低下するおそれがある。
このような問題を解決するために、紙製基材上に天然資源由来材料であるセルロースナノファイバーを含有するコーティング層を形成し、バリア性を付与することが提案されている。
例えば、下記特許文献1には、複数の層が積層されてなる積層体において、紙からなる基材と、該基材の少なくとも片面に積層されて、無機層状化合物を含まず、繊維径10μm以下のセルロース微細繊維と水溶性高分子とを含む厚さ0.01μm以上、10μm以下の繊維層と、該繊維層上に厚さ0.01μm以上、10μm以下の疎水性樹脂層、該疎水性樹脂層上に、さらに金属又は金属酸化物よりなる蒸着層を設け、当該蒸着層上に更に樹脂層を備えた積層体であり、当該積層体の酸素透過度が0.001から10(ml/m・day)の間、かつ、水蒸気透過度が3.0以下(ml/m・day)であることを特徴とする積層体が記載されている。
また下記特許文献2には、紙基材と、前記紙基材の一方の面に形成され、水を主成分とする媒体に溶融又は分散可能なセルロースナノファイバーから成るバリア材を含有するバリア層と、前記バリア層上に形成された接合強化層と、前記接合強化層上に形成された樹脂層と、を備える、紙バリア積層体であって、前記バリア材が天然セルロースを微細化して得られるセルロースナノファイバーであることが記載されている。
特許第6318490号公報 特開2018-69676号公報
上記特許文献1に記載された積層体においては、ナノサイズのセルロース微細繊維が含有されていることにより、紙基材の平滑性が向上され、緻密で孔や欠陥のない層が形成されて優れたバリア性が発現可能であることが記載されているが、積層体のラミネート強度が高々1.5N程度であり、この積層体を用いて紙容器に成形すると、成形負荷により蒸着層とバリア層の間で層間剥離が生じるおそれがある。また蒸着層を備えていることから屈曲耐性に劣り、容器成形の際に折り曲げ処理に付されると蒸着層が割れて劣化し、容器のバリア性が低下するおそれがある。
また上記特許文献2に記載された紙バリア積層体は、バリア層上にアンカーコート層等の接合強化層を設けることによってバリア層と樹脂層の間の密着性を向上させることにより層間剥離を防止しているが、バリア層がセルロースナノファイバーから成るためガスバリア性の点で十分満足するものではなかった。またセルロースナノファイバーは耐熱性や屈曲耐性に劣ることから、容器に成形の際に、ヒートシール等の加熱処理や折り曲げ処理に付されることにより劣化し、バリア性が低下するおそれがある。
更に上記特許文献に記載された容器は、用いる積層体に端面処理が施されていないことから、積層体端縁に露出した紙製基材から酸素が透過したり、或いは内容物の水分が含浸するなど、バリア性が低下するおそれもある。
従って本発明の目的は、紙容器が有する生分解性を損なうことなく、優れたバリア性及びラミネート強度を有する紙容器及びその製造方法を提供することである。
本発明によれば、紙製基材の少なくとも一方の面に、少なくとも樹脂層及びバリア層が形成された多層構造を有する紙容器であって、前記バリア層が、セルロースナノクリスタル及び多価カチオン樹脂を含有する混合物から成り、前記積層構造における各層間の界面剥離強度が2N以上であり、前記紙容器内面側には紙基材が露出しておらず、50%RH、23℃における酸素透過度が5cc/m・day・atm以下であることを特徴とする紙容器が提供される。
尚、本明細書における紙容器の酸素透過度は、紙容器内部が空の状態、すなわち紙容器内部に水等が充填されていない状態における50%RH23℃における酸素透過度である。
本発明の紙容器においては、
(1)前記セルロースナノクリスタルが、アニオン性官能基を含有すること、
(2)前記セルロースナノクリスタルが、アニオン性官能基を0.01~4.0mmol/gの量で含有すること、
(3)前記アニオン性官能基が、硫酸分解由来の硫酸基及び/又はスルホ基を少なくとも含有すること、
(4)前記多価カチオン樹脂が、ポリエチレンイミンであること、
(5)前記バリア層が、層状無機化合物、水酸基含有高分子、反応性架橋剤、及び金属塩の少なくとも1種を含むこと、
(6)前記樹脂層が、水酸基及び/又はカルボキシル基含有樹脂から成ること、
(7)前記水酸基及び/又はカルボキシル基含有樹脂が、ポリエステル樹脂、多糖類、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸の何れかであること、
(8)前記多層構造が、容器外面側から、前記紙製基材、前記樹脂層、前記バリア層、接着層、疎水性熱可塑性樹脂層の順で形成されていること、
(9)前記紙容器が、胴部及び底部から成るカップ型容器であり、該胴部のオーバーラップ部における前記積層体端面に紙製基材の露出がないこと、
が好適である。
本発明によればまた、樹脂フィルムの上に、多価カチオン樹脂含有溶液を塗工・乾燥して、多価カチオン樹脂から成る層を形成し、該多価カチオン樹脂から成る層上に、セルロースナノクリスタル含有分散液を塗工・乾燥して、セルロースナノクリスタル及び多価カチオン樹脂を含有するバリア層が前記樹脂フィルム上に形成された積層フィルムを作成する工程、該積層フィルムの樹脂フィルム側に紙製基材、バリア層側に疎水性熱可塑性樹脂フィルムが位置するようにこれらを積層して積層体を作成する工程、該積層体の少なくとも容器内面側となる紙製基材が露出した端部に端面処理を行う工程、該端面処理が施された積層体を用いて容器を成形する工程、とから成ることを特徴とする紙容器の製造方法が提供される。
本発明の紙容器の製造方法においては、
(1)前記端面処理がスカイブヘミング処理であること、
(2)前記樹脂フィルムが、水酸基及び/又はカルボキシル基含有樹脂から成ること、
が好適である。
本発明の紙容器においてバリア層を構成するセルロースナノクリスタルと多価カチオン樹脂の混合物は、セルロースナノクリスタル間の緻密な自己組織化構造を維持しながら、セルロースナノクリスタル間に多価カチオン樹脂が自然拡散して介在した状態になっている。すなわち、セルロースナノクリスタルは、セルロース繊維同士の荷電反発により自己組織化構造を形成し、この自己組織化構造が透過ガスの透過経路の障壁になることから、優れたガスバリア性を発現できるものであるが、本発明の紙容器のバリア層は、この自己組織化構造が多価カチオン樹脂によって更に強化されていることから、セルロースナノクリスタルだけで発現されるガスバリア性よりも優れたガスバリア性を発現することができる。具体的には、23℃50%RHにおける酸素透過度が5cc/m・day・atm以下の優れたバリア性を有する紙容器を提供することができる。
またバリア層中に多価カチオン樹脂が存在することによって、バリア層の基材となる樹脂層や紙容器に耐水性を付与するために形成される疎水性樹脂から成る層と、バリア層との界面における密着強度が向上することから、積層体のラミネート強度が2N以上となり、界面破壊に起因する層間剥離が生じることが有効に防止されている。
更に上記バリア層は、セルロースナノファイバーから成る従来のバリア層に比して耐熱性及び屈曲耐性に優れており、紙容器を成形する際のヒートシール処理や折り曲げ処理に付された場合にも劣化することがなく、積層体が有する優れたバリア性を紙容器においても維持することができる。
また本発明の紙容器においては、積層体に端面処理が施されていることにより、紙製基材が表面に露出することがなく、バリア性を損なうことが有効に防止されている。
すなわち、後述する実施例の結果から明らかなように、前述した特許文献2のようにカルボキシル基含有セルロースナノファイバーから成るバリア層を有する紙容器においては、積層体の端面処理の有無にかかわらずバリア性が得られていないと共に、界面剥離強度も1.5N以下と劣っている(比較例2及び3)。またセルロースナノクリスタルと多価カチオン樹脂から成る混合物から成るバリア層を有する紙容器であっても、積層体の端面処理が施されていない場合には、バリア性が損なわれている(比較例4)。
これに対して、本発明の紙容器においては、23℃50%RHにおける酸素透過度が5cc/m・day・atm以下の優れたバリア性を有すると共に、界面剥離強度が2N以上であり、層間剥離が有効に防止されていることが明らかである(実施例1~6)。
本発明の紙製基材に形成されるバリア層の一例のTOF-SIMSよる成分分析の結果を示す図である。 セルロースナノクリスタルとセルロースナノファイバーの耐熱性を比較するための、重量変化(Tg%)を示す図である。 本発明の紙容器の一例を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は(A)のX部分の拡大断面図、(C)は(A)のY部分の拡大断面図、(D)は(A)のZ部分の拡大断面図である。 積層体の端面処理を説明するための図であり、(A)は積層体の断面図、(B)はスカイブ処理後の拡大断面図、(C)はヘミング処理後の拡大断面図である。 本発明の紙容器の一例の成形を説明するための図であり、(A)は胴部材、(B)は底部材をそれぞれ示す。
(紙容器)
本発明の紙容器は、紙製基材の少なくとも一方の面に、少なくとも樹脂層及びバリア層が形成された積層体から成り、前記バリア層が、セルロースナノクリスタル及び多価カチオン樹脂を含有する混合物から成ることが第一の重要な特徴であり、また前記紙容器内面側には紙基材が露出していないことが第二の重要な特徴である。これにより前述した通り、積層体の各層間の界面剥離強度が2N以上であり、50%RH、23℃における酸素透過度が5cc/m・day・atm以下の優れたガスバリア性を発現することが可能となる。
本発明の紙容器のバリア層は、前述したとおり、セルロースナノクリスタルと多価カチオン樹脂から成る混合物から成る層であるが、かかる層は、セルロースナノクリスタルと多価カチオン樹脂を予め混合した混合液から成形することはできず、後述するように、多価カチオン樹脂から成る層上にセルロースナノクリスタルを含有する層を形成することによって、ガスバリア性及び樹脂層への密着性を発現可能な混合状態を有するバリア層として形成できる。すなわち、本発明の紙容器におけるバリア層の混合状態を定性的或いは定量的に表現することは困難であるが、セルロースナノクリスタルが有する自己組織化構造が維持された状態で多価カチオン樹脂及びセルロースナノクリスタルが混合されることによって初めて形成されるものである。
このことは、本発明のバリア層について、TOF-SIMSによる成分分析した結果を示す図1からも明らかである。すなわち、ポリエステル基材上に、多価カチオン樹脂含有溶液から成る層を形成し、この層上にセルロースナノクリスタル含有分散液から成る層を形成した場合でも、バリア層の最表面側からポリエステル基材側に至るまで、多価カチオン樹脂(ポリエチレンイミン)に由来するフラグメントイオンを表すC(m/z56)が存在し、しかもバリア層の最表面からポリエステル基材側に向かって多価カチオン樹脂(ポリエチレンイミン)に由来する窒素のフラグメントイオンのピーク強度がほぼ一定割合で出現し、ポリエステル基材(PET)に由来するフラグメントイオンを表すC(m/z104)のピーク強度が出現するポリエステル基材との界面付近においては多価カチオン樹脂(ポリエチレンイミン)に由来する窒素のフラグメントイオンの強度がやや高くなる特徴を示す。それぞれ別々に形成されたナノセルロース分散液から形成された層及び多価カチオン樹脂溶液から形成された層が、撹拌等の混合操作を経なくとも、一体となって混合層を形成していることが理解される。
また本発明の紙製基材におけるバリア層を構成するセルロースナノクリスタルは、バイオマスで多糖由来の構造を持つことから生分解性を有している。セルロースナノクリスタルが有するセルロース主鎖は水との加水分解反応やセルラーゼ等の酵素や微生物等によって生分解され、最終的に水や二酸化炭素になる。それらは植物や樹木などのバイオマスが利用し、さらにはバイオマス材からセルロースナノクリスタルの原料となるパルプ等が作られるといった循環サイクルが形成される。一方、容器のバリア性発現の為に使われるエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)等のバリアフィルムは一般的に生分解性を有しておらずまた石油化石を原料としている。このことから、セルロースナノクリスタルを主体的に有する混合層から成るバリア層は、生分解性やバイオマス由来材の観点で材料の持続性や環境側面から優れている。
更にセルロースナノクリスタルは、耐熱性に優れるという特徴を有しているため、後述する紙容器の成形工程における押出ラミネート工程や、ヒートシール工程等の200℃を超える温度で加熱処理された場合にも熱劣化によるバリア性能の低下のおそれがなく、優れたガスバリア性を有する紙容器を提供することが可能となる。
このことは後述する実施例で使用したセルロースナノクリスタル及び比較例で使用したセルロースナノファイバーのそれぞれについて、10℃/分の昇温速度で加熱した際の温度と重量変化(Tg%)の結果を示す図2から明らかである。すなわち、アニオン性官能基を有するセルロースナノファイバーは180℃を超えると重量減少が開始する一方、アニオン性官能基を有するセルロースナノクリスタルは250℃付近まで重量減少せず、アニオン性官能基を有するセルロースナノクリスタルは耐熱性に優れていることがわかる。
本発明の紙容器におけるバリア層は更に、屈曲耐性にも優れているという特徴を有しているため、紙容器の成形に際して、後述する図3に示すように、胴部材と底部材の接合や、フランジ加工(カール加工)のために積層体を屈曲させる場合にも、バリア層の損傷がなく優れたバリア性能を維持できる。
本発明のバリア層が屈曲耐性に優れていることは次の実験結果からも明らかである。すなわち、PETフィルム上に多価カチオン樹脂及びアニオン性官能基を有するセルロースナノクリスタルを含有する混合層を形成した積層フィルムと、PETフィルム上にアニオン性官能基を有するセルロースナノファイバー層を形成した積層フィルムについて、金属棒で折り曲げ方向へ180°に屈曲させ、約460N/mで加重した後、平面状に戻すという屈曲処理を与えた後の23℃50%RH条件下での酸素透過度(cc/m・day・atm)を測定し、屈曲処理に対する酸素透過度の変化を算出した。
この実験結果によれば、多価カチオン樹脂及びアニオン性官能基を有するセルロースナノクリスタルを含有する混合層が形成された積層フィルムは屈曲処理を加えていない場合の酸素透過度に比べて前記屈曲処理によって酸素透過度が4倍上昇したのに対し、アニオン性官能基を有するセルロースナノファイバー層が形成された積層フィルムでは 屈曲処理を加えていない場合の酸素透過度に比べて前記屈曲処理によって酸素透過度が10倍上昇しており、多価カチオン樹脂及びアニオン性官能基を有するセルロースナノクリスタルを含有する混合層が、アニオン性官能基を有するセルロースナノファイバー層が形成された積層フィルムに比べて屈曲耐性が高いことがわかる。
更にバリア層を形成するセルロースナノクリスタルは、分子内又は分子間に多数の水素結合を有することから、凝集エネルギー密度が大きいと共に、自己組織化構造の形成に寄与可能なアニオン性官能基を含有することから、バリア層を形成するために調製されるセルロースナノクリスタル分散液中でセルロースナノクリスタルが、自己配列によりネマティック液晶及び/又はキラルネマティック液晶を形成する。かかる液晶性自己配列は維持されながら乾燥処理による固形化が行われることから、塗膜中に十分な自己組織化構造を形成することが可能であり、セルロースナノクリスタルはセルロースナノファイバーに比べて繊維長が短く微小で緻密な自己組織化構造形成が示唆されることからも、優れたガスバリア性を発現することが可能となる。
[多層構造]
本発明の紙容器は、上述したように、紙製基材の少なくとも一方の面に、少なくとも樹脂層及びバリア層が形成された多層構造を有しており、これに限定されないが、容器外面側から順に、疎水性熱可塑性樹脂層/紙製基材/樹脂層/バリア層/接着層/疎水性熱可塑性樹脂層、或いは疎水性熱可塑性樹脂層/接着層/樹脂層/バリア層/接着層/疎水性熱可塑性樹脂層であることが好適である。
[紙製基材]
本発明の紙容器を構成する紙製基材としては、容器形状及び所望の剛性等に応じて任意の紙を使用することができる。例えば、上質紙、模造紙、アート紙、コート紙、純白ロール紙、クラフト紙、耐水性を高めたラベル用紙、コップ原紙、カード紙、アイボリー紙、マニラボールなどの板紙、ミルクカートン原紙、カップ原紙、合成紙、クレイコート紙、耐水紙、耐酸紙等の公知の紙を使用することができる。
紙製基材の厚みは、50~450μmの範囲にあることが好ましく、図3に示すようなカップ型容器を成形する場合には、150~400μmの範囲にあることが好ましい。また紙製基材の坪量は、100~400g/m、特に150~350g/mの範囲にあることが好ましい。
[樹脂層]
樹脂層は、セルロースナノクリスタル及び多価カチオン樹脂を含有する混合層(バリア層)を形成する際に基材となる樹脂フィルム等から成る層である。
樹脂層を形成し得る樹脂としては、低-、中-或いは高-密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン-共重合体、アイオノマー、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のオレフィン系共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリエチレンナフタレート等の芳香族ポリエステル;ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル;ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、メタキシリレンアジパミド等のポリアミド;ポリスチレン、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリル共重合体(ABS樹脂)等のスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等の塩化ビニル系共重合体;ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート・エチルアクリレート共重合体等のアクリル系共重合体;ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂、アセチルセルロース、セルロースアセチルプロピオーネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂、セロファン、澱粉、パラミロン等の多糖類、カゼインプラスティック、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸等を例示できる。
中でも水酸基及び/又はカルボキシル基を含有する樹脂が好適であり、特にポリエステル樹脂、多糖類、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸を好適に使用できる。樹脂層が水酸基及び/又はカルボキシル基を含有する樹脂から成ることにより、バリア層と樹脂層との界面剥離強度を向上させることが可能となり、層間剥離の発生を有効に防止することが可能となる。
樹脂層の厚みは、積層体の形状や用途等によって一概に規定できないが、フィルムの場合で5~50μmの範囲にあることが好適である。
[バリア層]
本発明の紙容器において、バリア層は、前述した通り、セルロースナノクリスタルと多価カチオン樹脂を含有する混合物から成る。
<セルロースナノクリスタル>
バリア層を構成するセルロースナノクリスタルは、パルプなどのセルロース繊維を硫酸や塩酸で酸加水分解処理することにより得られる、ロッド状のセルロース結晶繊維であるが、本発明においては、セルロース繊維を硫酸処理することにより得られた、硫酸基及び/又はスルホ基を含有するセルロースナノクリスタルであることが好適である。このセルロースナノクリスタルは、硫酸基及び/又はスルホ基等の自己組織化構造の形成に寄与可能なアニオン性官能基を0.01~4.0mmol/gの範囲で含有することが好適である。尚、硫酸基は硫酸エステル基を含む概念である。
またセルロースナノクリスタルは、上述した硫酸基及び/又はスルホ基を有するセルロースナノクリスタルが更に親水化処理に付され、硫酸基及び/又はスルホ基量を調整、或いは、カルボキシル基、リン酸基等のアニオン性官能基をセルロースの6位等の水酸基に導入し、硫酸基、スルホ基、カルボキシル基、リン酸基等のアニオン性官能基の総量が0.17mmol/gより多く且つ4.0mmol/g以下、特に0.17~2.0mmol/gの範囲に調整されたアニオン性官能基含有セルロースナノクリスタルが特に好適である。尚、セルロースナノクリスタルの親水化処理については後述する。
またセルロースナノクリスタルは、繊維径が50nm以下、特に2~50nmの範囲にあり、繊維長が100~500nmの範囲にあり、アスペクト比が5~50の範囲にあり、結晶化度が60%以上、特に70%以上であるものを好適に用いることができる。
[多価カチオン樹脂]
バリア層を構成する多価カチオン樹脂としては、水溶性あるいは水性分散性の多価カチオン性官能基を含有する樹脂である。
このような多価カチオン樹脂としては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリアミンポリアミドエピクロロヒドリン、ポリアミンエピクロロヒドリン等の水溶性アミンポリマー、ポリアクリルアミド、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム塩)、ジシアンジアミドホルマリン、ポリ(メタ)アクリレート、カチオン化澱粉、カチオン化ガム、ゼラチン、キチン、キトサン等を挙げることができるが、中でも水溶性アミンポリマー、特にポリエチレンイミンを好適に使用することができる。
バリア層は、上記セルロースナノクリスタル及び多価カチオン樹脂以外に、層状無機化合物、水酸基含有高分子、反応性架橋剤及び金属塩の少なくとも1種を含むことが好適である。すなわち、層状無機化合物は、膨潤性及び劈開性を有することから、セルロースナノクリスタルが無機層状化合物の層間を広げるように入り込んで複合化し、層状無機化合物により得られる透過ガスの迂回効果と、セルロースナノクリスタルによる架橋構造とが相俟って、高湿度条件下でも優れたガスバリア性を発現することが可能になる。水酸基含有高分子は、セルロースナノクリスタルと共に緻密な架橋構造を形成することができ、得られる塗膜のガスバリア性が顕著に向上される。
層状無機化合物としては、天然又は合成したもの、親水性又は疎水性を示し、溶媒により膨潤して劈開性を示す従来公知のものを使用でき、これに限定されないが、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、モンモリロナイト、ヘクトライト、マイカ、テトラシリックマイカ、ナトリウムテニオライト、白雲母、マーガライト、タルク、バーミキュライト、金雲母、ザンソフィライト、緑泥石等を例示することができ、合成マイカ(親水性膨潤性)を好適に使用することができる。
水酸基含有高分子としては、ポリビニルアルコール、酢酸ビニルアルコール共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、カルボキシルメチルセルロース、澱粉等を例示できるが、ポリビニルアルコールを好適に使用することができる。
反応性架橋剤としては、セルロースナノクリスタルがアニオン性官能基を含有することから、酸性条件下でも凝集することなく安定して分散可能であるため、反応効率の良い多価カルボン酸を使用することができる。多価カルボン酸としては、クエン酸、シュウ酸、マロン酸等のアルキルジカルボン酸、テレフタル酸、マレイン酸等の芳香族ジカルボン酸、或いはこれらの無水物等を例示することができ、特に無水クエン酸を好適に使用することができる。
またバリア層には、後述する積層体の調製で述べるように、多価カルボン酸から成る架橋剤と共に使用される酸触媒や、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、耐水化剤、金属塩、コロイダルシリカ、アルミナゾル、酸化チタン等、公知の添加剤が配合されていてもよい。
[その他の層]
本発明の紙容器においては、前述した紙製基材、樹脂層、バリア層の他、必要により他の層を形成することができる。
例えば、バリア層及び紙製基材の上に、耐水性を向上させるための疎水性熱可塑性樹脂からなる層や、ヒートシール性樹脂層、発泡樹脂層等、従来公知の層を必要により形成できる。
耐水性を付与可能な疎水性熱可塑性樹脂としては、上述した樹脂層に使用し得る樹脂として例示した、オレフィン系共重合体、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリアミド、スチレン系共重合体、塩化ビニル系共重合体、アクリル系共重合体、ポリカーボネート等を使用できるが、特に耐水性とヒートシール性の観点からオレフィン系共重合体、ポリエステル樹脂を好適に使用することができる。また各層には必要に応じて印刷層を設けることができる。
[容器の形態]
本発明の紙容器は、前述したとおり、紙製基材の少なくとも一方の面に、少なくとも樹脂層及バリア層が形成された積層体から成る限り、種々の形態をとることができ、これに限定されないが、カップ型容器、トレイ型容器、カートン型容器等、従来より紙容器として公知の形態をとることができる。
本発明の紙容器においては、上述したバリア層を備えた多層構造を有すると共に、容器内面側に紙基材が露出していないことが重要である。
例えば、図3は本発明の紙容器の一例であるカップ型容器を示す図である。図3(A)に示すカップ型容器10は、紙製基材2、樹脂層3、バリア層4、疎水性熱可塑性樹脂層5a,5bの多層構造を有する積層体1(後述する図4(A)参照)から成る胴部材11及び底部材12から成る。
図3(A)に示すカップ型容器10のX部分であるフランジ成形部13は、図3(B)に示すように、胴部開口端縁6に端面処理が施されていない場合でも胴部開口端縁6は巻締られてカール部7の内部に位置して、容器の表面に露出することはない。同様に図3(A)に示すカップ型容器10のY部分である胴部材11と底部材12の接着部14も、図3(C)に示すように、底部材12の端縁8は胴部材11によって被覆されていることから、容器表面に露出することはない。また図3(A)に示すカップ型容器10のZ部分である胴部材11の貼り合わせ部15は、図3(D)にその水平方向断面として示すように、容器内側(図面上方)に位置する胴部材11の端縁が端面処理(スカイブヘミング処理)されていることにより紙基材の露出が有効に防止されている。
(紙容器の製造方法)
本発明の紙容器の製造方法は、樹脂フィルムの上に、多価カチオン樹脂含有溶液を塗工・乾燥して、多価カチオン樹脂から成る層を形成し、該多価カチオン樹脂から成る層上に、セルロースナノクリスタル含有分散液を塗工・乾燥して、セルロースナノクリスタル及び多価カチオン樹脂を含有するバリア層が前記樹脂フィルム上に形成された積層フィルムを作成する工程、該積層フィルムの水酸基及び又はカルボキシル基含有樹脂から成るフィルム側に紙製基材、バリア層側に疎水性熱可塑性樹脂フィルムが位置するようにこれらを積層して積層体を作成する工程、該積層体の少なくとも容器内面側となる紙製基材が露出した端部に端面処理を行う工程、該端面処理が施された積層体を用いて容器を成形する工程、とから成ることが好適である。
[積層フィルムの作成工程]
本発明の紙容器において、バリア層を、樹脂層となる基材フィルム上に形成し、積層フィルムを作成する。基材フィルムと樹脂層は前述したとおりであり、水酸基及び/又はカルボキシル基含有樹脂を好適に使用できる。
すなわち、上記基材フィルム上に、多価カチオン樹脂含有溶液を塗工・乾燥し、多価カチオン樹脂から成る層を形成する工程、該多価カチオン樹脂から成る層上に、セルロースナノクリスタル含有コーティング液を塗工・乾燥することにより、多価カチオン樹脂及びセルロースナノクリスタルが特有の混合状態で混合された混合物から成るバリア層が基材フィルム上に形成された積層フィルムを製造できる。
尚、樹脂層を構成する樹脂の種類によっては、紙製基材にバリア層の基材フィルムとなる樹脂を押出コート法等により先に積層し、この樹脂層形成紙製基材の樹脂層上にバリア層を形成し、紙製基材/樹脂層/バリア層から成る積層フィルムを作成してもよい。
<多価カチオン樹脂含有溶液の塗工・乾燥>
多価カチオン樹脂含有溶液は、多価カチオン樹脂を固形分基準で0.01~30質量%、特に0.1~10質量%の量で含有する溶液であることが好ましい。上記範囲よりも多価カチオン樹脂の量が少ない場合には、上記範囲にある場合に比して、ガスバリア性及び界面剥離強度の向上を図ることができず、一方上記範囲よりも多価カチオン樹脂の量が多くてもガスバリア性及び界面剥離強度の更なる向上は得られず経済性に劣ると共に、塗工性や製膜性にも劣るおそれがある。
また多価カチオン樹脂含有溶液に用いる溶媒としては、水、メタノール,エタノール,イソプロパノール等のアルコール、2-ブタノン、アセトン等のケトン、トルエン等の芳香族系溶剤、及びこれらと水との混合溶媒であってもよい。
また多価カチオン樹脂含有溶液には、必要に応じて、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、耐水化剤、粘土鉱物、架橋剤、金属塩、コロイダルシリカ、アルミナゾル、酸化チタン等、公知の添加剤を配合することができる。セルロースナノクリスタルのアニオン性官能基間においてイオン結合させバリア性等を補強する目的で、多価カチオン樹脂含有溶液に炭酸カルシウムを配合することが好ましい。
多価カチオン樹脂含有溶液は、セルロースナノクリスタル含有コーティング液から形成される層中のセルロースナノクリスタル量(固形分)を基準に、多価カチオン樹脂含有溶液の濃度によって塗工量が決定される。すなわち、セルロースナノクリスタル(固形分)を1m当たり1.0gの量で含有する場合に、多価カチオン樹脂(固形分)が1m当たり0.01~2.0gの量で含有されるように、塗工することが好ましい。上記範囲よりも多価カチオン樹脂の量が少ない場合には、上記範囲にある場合に比して、ポリエステル樹脂などの疎水性の基材フィルムに対する界面剥離強度の向上を図ることができず、その一方、上記範囲よりも多価カチオン樹脂の量が多い場合には、上記範囲にある場合に比して、成形体のガスバリア性の向上が得られないおそれがある。
塗布方法としては、これに限定されないが、例えばスプレー塗装、浸漬、或いはバーコーター、ロールコーター、グラビアコーター等により塗布することが可能である。また塗膜の乾燥方法としては、温度5~200℃で0.1秒~24時間の条件で乾燥することが好ましい。また乾燥処理は、オーブン乾燥、赤外線加熱、高周波加熱、熱風乾燥等により行うことができるが、自然乾燥であってもよい。
<セルロースナノクリスタル含有分散液の調製・塗工・乾燥>
セルロースナノクリスタル含有分散液は、セルロースナノクリスタル分散液と、前述した層状無機化合物、水酸基含有高分子、反応性架橋剤等を必要により含有する分散液である。
セルロースナノクリスタル分散液は、セルロース原料を硫酸処理することにより得られた、硫酸基及び/又はスルホ基含有セルロースナノクリスタルは、必ずしも親水化処理する必要はないが、必要に応じて親水化処理することができる。親水化処理したセルロースナノクリスタル分散液は、親水化処理工程の後、遠心分離工程、及び濾過分離工程に付することにより得られた分散液であり、親水化処理の前または後の工程において固形化のための噴霧乾燥(スプレードライ)工程等を経ていないことが好適である。
上述した親水化処理としては、ネバードライ処理、又はネバードライ処理と、水溶性カルボジイミド、硫酸、三酸化硫黄-ピリジン錯体、リン酸-尿素、TEMPO触媒、酸化剤の何れかを用いた処理とを組み合わせて行う。カルボジイミド、硫酸、三酸化硫黄-ピリジン錯体の何れかを用いた処理により、セルロースナノクリスタルの硫酸基及び/又はスルホ基量が調整されると共に、セルロースナノクリスタルが更に短繊維化される。またリン酸-尿素又はTEMPO触媒、酸化剤の何れかを用いた処理により、リン酸基又はカルボキシル基のアニオン性官能基が導入されて、セルロースナノクリスタルの総アニオン性官能基量が上記範囲に調整される。
尚、親水化処理は、アニオン性官能基の総量が上記範囲となる限り、いずれか一つの処理を行えばよいが、同一の処理を複数回、或いは他の処理と組み合わせて複数回行ってもよい。
《親水化処理》
≪ネバードライ処理による親水化処理≫
セルロースナノクリスタルは、スプレードライ、加熱、減圧などによる乾燥処理を行ってパウダー等の固形化を経るが、乾燥処理による固形化の際にセルロースナノクリスタルに含有するアニオン性官能基の一部が脱離して親水性が低下する。すなわち、アニオン性官能基を含有するセルロースナノクリスタルについてパウダー等の固形化を経ないネバードライ処理は親水化処理として挙げられる。アニオン性官能基は、硫酸基及び/又はスルホ基、リン酸基、カルボキシル基などが挙げられる。
≪カルボジイミドを用いた親水化処理≫
カルボジイミドを用いた処理においては、ジメチルホルムアミド等の溶媒中でセルロースナノクリスタルとカルボジイミドを撹拌し、これに硫酸を添加した後、0~80℃の温度で5~300分反応させて硫酸エステルとする。カルボジイミド及び硫酸は、セルロースナノクリスタル1g(固形分)に対して5~30mmol及び5~30mmolの量で使用することが好ましい。
次いで水酸化ナトリウム等のアルカリ性化合物を添加して、セルロースナノクリスタルに導入されたスルホ基をH型からNa型に変換することが、収率を向上する上で好ましい。その後、透析膜等を用いた濾過処理に付して不純物等を除去することにより、硫酸基及び/又はスルホ基変性セルロースナノクリスタルが調製される。
カルボジイミドとしては、分子内にカルボジイミド基(-N=C=N-)を有する水溶性化合物である1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド等を例示できる。また有機溶媒に溶解するジシクロヘキシルカルボジイミド等を使用することもできる。
≪硫酸を用いた親水化処理≫
本発明で使用するセルロースナノクリスタルは、セルロース繊維を硫酸で加水分解処理して成るものであるが、このセルロースナノクリスタルを更に硫酸を用いて親水化処理する。硫酸は、セルロースナノクリスタル1g(固形分)に対して40~60質量%で使用することが好ましい。40~60℃の温度で5~300分反応させ、その後、透析膜等を用いた濾過処理に付して不純物等を除去することにより、硫酸基及び/又はスルホ基変性セルロースナノクリスタルが調製される。
≪三酸化硫黄-ピリジン錯体を用いた親水化処理≫
三酸化硫黄-ピリジン錯体を用いた処理においては、ジメチルスルホキシド中でセルロースナノクリスタルと三酸化硫黄-ピリジン錯体を、0~60℃の温度で5~240分反応させることにより、セルロースグルコースユニットの6位の水酸基に硫酸基及び/又はスルホ基を導入する。
三酸化硫黄-ピリジン錯体は、セルロースナノクリスタル1g(固形分)に対して0.5~4gの質量で配合することが好ましい。
反応後、水酸化ナトリウム等のアルカリ性化合物を添加して、セルロースナノクリスタルに導入された硫酸基及び/又はスルホ基をH型からNa型に変換することが、収率を向上する上で好ましい。その後、ジメチルホルムアミド又はイソプロピルアルコールを添加して、遠心分離等によって洗浄した後、透析膜等を用いた濾過処理によって不純物等を除去し、得られた濃縮液を水に分散させることにより、硫酸基及び/又はスルホ基変性セルロースナノクリスタルが調製される。
≪リン酸-尿素を用いた親水化処理≫
リン酸-尿素を用いた親水化処理は、リン酸-尿素を用いてリン酸基を導入する従来公知の処理と同様に行うことができる。具体的には、尿素含有化合物の存在下で、セルロースナノクリスタルとリン酸基含有化合物を、135~180℃の温度で5~120分反応させることによって、セルロースグルコースユニットの水酸基にリン酸基を導入する。
リン酸基含有化合物としては、リン酸、リン酸のリチウム塩、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩等を例示できる。中でもリン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸等を好適に単独または混合して使用できる。リン酸基含有化合物は、セルロースナノクリスタル10g(固形分)に対して10~100mmolの量で添加することが好ましい。
また尿素含有化合物としては、尿素、チオ尿素、ビュウレット、フェニル尿素、ベンジル尿素、ジメチル尿素などを例示できる。中でも尿素を好適に使用できる。尿素含有化合物は、セルロースナノクリスタル10g(固形分)に対して150~200mmolの量で使用することが好ましい。
≪TEMPO触媒を用いた親水化処理≫
TEMPO触媒(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル)を用いた親水化処理は、TEMPO触媒を用いた従来公知の酸化方法と同様に行うことができる。具体的には、硫酸基及び/又はスルホ基を有するセルロースナノクリスタルを、TEMPO触媒(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン 1-オキシル)を介した水系、常温、常圧の条件下で、セルロースグルコースユニットの6位の水酸基をカルボキシル基に酸化する親水化反応を生じさせる。
TEMPO触媒としては、上記2,2,6,6-テトラメチルピペリジン 1-オキシルの他、4-アセトアミドーTEMPO、4-カルボキシーTEMPO、4-フォスフォノキシーTEMPO等のTEMPOの誘導体を用いることもできる。
TEMPO触媒の使用量は、セルロースナノクリスタル(固形分)1gに対して0.01~100mmol、好ましくは0.01~5mmolの量である。
また親水化処理時には、TEMPO触媒と共に、酸化剤、臭化物又はヨウ化物等の共酸化剤を併用することが好適である。
酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸又はそれらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物等公知の酸化剤を例示することができ、特に次亜塩素酸ナトリウムや次亜臭素酸ナトリウムを好適に使用できる。酸化剤は、セルロースナノクリスタル(固形分)1gに対して0.5~500mmol、好ましくは5~50mmolの量である。酸化剤を添加して一定時間が経過した後、更に酸化剤を加えることで追酸化処理することもできる。
また共酸化剤としては、臭化ナトリウム等の臭化アルカリ金属、ヨウ化ナトリウム等のヨウ化物アルカリ金属を好適に使用できる。共酸化剤は、セルロースナノクリスタル(固形分)1gに対して0.1~100mmol、好ましくは0.5~5mmolの量である。
また反応液は、水やアルコール溶媒を反応媒体とすることが好ましい。
親水化処理の反応温度は1~50℃、特に10~50℃の範囲であり、室温であってもよい。また反応時間は1~360分、特に60~240分であることが好ましい。
反応の進行に伴い、セルロース中にカルボキシル基が生成するため、スラリーのpHの低下が認められるが、酸化反応を効率よく進行させるため、水酸化ナトリウム等のpH調整剤を用いてpH9~12の範囲に維持することが望ましい。
《洗浄・解繊処理》
必要により親水化され、硫酸基及び/又はスルホ基等のアニオン官能性基の量が調整されたセルロースナノクリスタルを水洗、或いは水を加えながら遠心分離することによって、親水化処理に用いた酸や触媒等を洗浄する。
次いで、解繊処理を行うことが好ましいが、セルロースナノクリスタルは繊維長が短いことから必ずしも解繊処理を行わなくてもよい。
尚、微細化装置として超高圧ホモジナイザー、ミキサー、グラインダー等を用い、水等を分散媒として解繊処理を行うことにより、解繊と同時に分散液の調製を行ってもよい。
《分散処理》
必要により親水化処理、或いは必要により解繊処理に付されたセルロースナノクリスタルは、固形化(パウダー状になるように噴霧乾燥)されることなく、分散処理に付される。固形化されていないことにより再分散の必要がなく、生産性及び経済性に優れている。また固形化されていないことにより、前述した緻密な自己組織化構造を形成することが可能となり、優れたガスバリア性を発現することが可能になる。
分散処理は超音波分散機、ホモジナイザー、ミキサー等の分散機を好適に使用することができ、また、攪拌棒、攪拌石等による攪拌方法を用いても良い。
分散液の分散媒は、水だけでもよいが、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、2-ブタノン、アセトン等のケトン、トルエン等の芳香族系溶剤と水との混合溶媒であってもよい。
セルロースナノクリスタル分散液は、セルロースナノクリスタル(固形分)が0.1~90質量%の範囲で含有されていることが好適であり、固形分2質量%の水分散で、粘度が5.5~40mPa・s(回転式粘度計、温度30℃、スピンドル回転速度100rpm)、ゼータ電位が-50~-55mVの範囲にあり、取扱い性、塗工性に優れている。また固形分2質量%の水分散で、可視光線透過率が45%T以上と透明性に優れている。
セルロースナノクリスタル分散液と共に、前述した通り、層状無機化合物、水酸基含有高分子、反応性架橋剤等を含有することにより、高湿度条件下においても優れたガスバリア性を発現することができる。
層状無機化合物は、セルロースナノクリスタル(固形分)100質量部に対して0.1~50質量部の量で配合されていることが好ましい。
水酸基含有高分子は、セルロースナノクリスタル(固形分)100質量部に対して0.1~50質量部の量で配合されていることが好ましい。
反応性架橋剤である多価カルボン酸は、セルロースナノクリスタル(固形分)100質量部に対して0.1~50質量部の量で配合されていることが好ましい。
また前述した通り、多価カルボン酸から成る架橋剤と共に酸触媒を含有することが好ましく、酸触媒は、セルロースナノクリスタル100質量部(固形分)に対して0.01~10質量部の範囲で配合されていることが好ましい。
またセルロースナノクリスタル含有分散液には、必要に応じて、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、耐水化剤、金属塩、コロイダルシリカ、アルミナゾル、酸化チタン、微粒子、pH調整剤、抗菌剤、抗ウィルス剤、防腐剤等、公知の添加剤を配合することができる。
このようにして調製されたセルロースナノクリスタル含有分散液は、セルロースナノクリスタル(固形分)が1m当たり0.1~3.0gとなるように塗工することが好ましい。
セルロースナノクリスタル含有分散液の塗布方法及び乾燥方法は、多価カチオン含有溶液の塗布方法及び乾燥方法と同様に行うことができるが、温度5~200℃で0.1秒~24時間の条件で乾燥することが好ましい。
[積層体の作成工程]
次いで、基材フィルム(樹脂層)上にバリア層が形成された積層フィルムの基材フィルム側に紙製基材、バリア層側に疎水性熱可塑性樹脂フィルムが位置するようにこれらを積層して積層体を作成する。
積層方法は、従来公知の方法により行うことができ、例えば紙製基材、積層フィルム、疎水性熱可塑性樹脂フィルムを、同時或いは別々にドライラミネーションにより接着剤を介して積層することができる。尚、バリア層の耐熱性の観点からは、ドライラミネーションによる積層が好適であるが、用いる疎水性熱可塑性樹脂の種類や押出成形の温度等によっては、先に紙製基材と積層フィルムを接着剤を用いて積層した後、バリア層側に疎水性熱可塑性樹脂を押出コートすることもできる。
また先に紙製基材に樹脂層を予め形成し、この樹脂層にバリア層を形成した積層フィルムの場合には、バリア層側に疎水性熱可塑性樹脂から成る層を上記と同様にして積層することができる。
また、疎水性熱可塑性樹脂フィルム及びバリア層を前記方法で形成した積層フィルムの基材フィルム側に接着層を押出しながら紙製基材に積層することもできる。
バリア層と疎水性熱可塑性樹脂の積層に使用することができる接着剤としては、例えば、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエーテル系接着剤、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤等、従来公知の接着剤を例示することができ、特にイソシアネート基末端ウレタン樹脂或いは水酸基末端ウレタン樹脂から成るウレタン系接着剤を好適に使用できる。また接着剤の接着強度を高める為に40℃以上の温度で一定時間以上静置させるエージング処理を必要に応じて行うことが好ましい。
[端面処理]
本発明の紙容器においては、容器内面側に紙製基材が露出していないことが重要であることから、積層体の端面処理が行われていることが好ましい。
このような端面処理としては、エッジプロテクトテープによる端縁の被覆処理、保護コート面を端面に施す被覆処理、スカイブヘミング処理等、従来公知の方法により行うことができるが、スカイブヘミング処理によることが好適である。
図4は、本発明に用いる積層体の端面処理(スカイブヘミング処理)を説明するための図である。
図4(A)に示すように、この紙容器を成形するために使用する積層体1は、紙製基材2、基材フィルム(樹脂層)3上に形成されたバリア層4、積層フィルムの内外面に形成された疎水性熱可塑性樹脂フィルム5a,5bから成っている。
前述した通り、カップ型容器を作成する場合は胴部材の貼り合わせ部分の容器内面側端縁となる位置に端面処理が必要であり、後述する図5(A)に示す胴部材11の軸方向端縁11a,11bの少なくとも容器内面側となる端縁(図では右側端縁11a)に端面処理(スカイブヘミング処理)を行う。
図4(A)に示す積層体1においては、疎水性熱可塑性樹脂フィルム5a側を切削ミーリング方式や切削ベルナイフ方式等により、図4(B)に示すように積層体の厚みの約半分をスカイブ(切削)して削除部9を設ける。次に、スカイブした残りの半分を削除部9が内側になるようにヘミング(折り返し)し、図4(C)に示すように紙製基材2が端面に露出しないように、バリア層4、基材フィルム3及び疎水性熱可塑性樹脂層5bによって端面を保護する。
このような端面処理を行うことにより、内容物の水分や油分等が紙製基材2の端面から侵入することが有効に防止され、紙製基材2の強度が低下することがなく、且つバリア層がガス透過性の高い紙製基材を覆って露出させないため、バリア層により確保された紙容器のガスバリア性能を低下させることがない。
端面処理は、少なくとも容器内面側となる端縁で施されていることが必要であるが、これに限定されず、容器外面側となる端縁に行うことももちろんできる。
[紙容器の成形]
本発明の紙容器は、前述した積層体を用い、容器内側となる側に紙製基材が露出しないように端面処理を行うことを除けば、容器の形態に応じた従来公知の方法により成形することができる。
図3~図5を参照して、カップ型容器の成形方法の一例を説明する。まず、図4(A)に示す積層体1から、図5に示すような胴部材11と円板状の底部材12を作成する。尚、胴部材11の容器軸方向端縁11a,11bを重ね合わせた際に容器内側なる側の端縁には前述した端面処理が施されている(図3(D)及び図4)。
胴部材11の容器軸方向端縁11a,11bの接合は、図4(A)に示す積層体のように、積層体の両表面の層5a,5bが同種の疎水性熱可塑性樹脂から成る場合には、熱圧着(ヒートシール)により接合することができる。またヒートシール性がない場合には、接着剤を用いて接合することもできる。軸方向側端縁11a,11bが接合された胴部材11は底部から飲み口側に向かってテーパー状に広がる筒状に成形される。
また底部材12は、円板状の外周部を外側に折り曲げて立ち上り部16が形成されている。
底部材12の立ち上がり部16の外周面と筒状の胴部材11の底部側端縁の内周面を熱風等により加熱してから、底部材12の立ち上がり部16を胴部材11の底部側端縁の一端を折り返した折返部17で包み込んで底部材12と胴部材11を熱圧着させる。このとき、胴部材11の折返部17の長さは、底部材12の立ち上がり部16の高さの長さと同程度に形成されており、底部と胴部が全周にわたって接着される(図3(C))。
更に胴部材11の飲み口側端縁は、金型によってテーパー状に広がる筒状の胴部材を外方に折り曲げて、内側に巻き込みカール部7を成形することにより(図3(B))、本発明の紙容器の一例であるカップ型容器が成形できる。。
以下に本発明の実施例を説明する。なお、以下の実施例は本発明の一例であり、本発明はこれらの実施例には限定されない。各項目の測定方法は、次の通りである。
<TOF-SIMSによる成分分析>
多価カチオン樹脂及びセルロースナノクリスタルを含有する混合物から成るバリア層を1cm角に切り出し、バリア層面側を上部にして試料台に固定した。TOF-SIMS分析装置(アルバック・ファイ製、TRIFT V)においてArガスクラスターイオン(Ar )をエッジングイオンとしながら一次イオン(Bi 2+)を照射した。一次イオンの加速電圧を30KV、測定極性を正イオンにして分析を行った。図1に結果を示す。
<アニオン性官能基量>
アニオン性官能基含有セルロースナノクリスタル(以下、「CNC」ということがある)の分散液を秤量し、イオン交換水を加えて100mlに調製した。このアニオン性官能基含有CNC分散液に陽イオン交換樹脂を0.1g加えて攪拌処理した。その後ろ過を行い陽イオン交換樹脂とアニオン性官能基含有CNC分散液を分離した。陽イオン交換後の分散液に対して電位差自動滴定装置(京都電子社製)を用いて0.05M水酸化ナトリウム溶液を滴下し、アニオン性官能基含有CNCの分散液が示す電気伝導度の変化を計測した。得られた伝導度曲線からアニオン性官能基の中和の為に消費された水酸化ナトリウム滴定量を求め、下記式(1)を用いてアニオン性官能基量(mmol/g)を算出した。
アニオン性官能基量(mmol/g)=アニオン性官能基の中和の為に消費した水酸化ナトリウム滴定量(ml)×前記水酸化ナトリウム濃度(mmol/ml)÷アニオン性官能基含有CNCの固形質量(g)・・・(1)
<複屈折>
実施例1~6のセルロースナノクリスタル含有分散液について偏光検査装置において偏光板を用いた鋭敏色法による偏光観察を行い、ネマティック液晶及び/又はキラルネマティック液晶屈折像に由来する複屈折の発現を確認した。
<容器の酸素透過度測定>
容器内に窒素を充填して酸素を除去し、紙容器内部に水を充填しない状態で紙容器のフランジ部をアルミ材でシールし、23℃50%RHの環境下で1ヶ月間保存した後の容器内部の酸素濃度を測定した。下記式(2)で計算することで、容器の酸素透過度(cc/m・day・atm)を測定した。
容器の酸素透過度(cc/m・day・atm)=((保存期間後の酸素濃度(%)-保存期間前の酸素濃度(%))/100×内容量(cc))÷(容器の表面積(m)×保存期間(day)×0.209)・・・(2)
酸素透過度が10(cc/m・day・atm)を超える場合をバリア性なしと評価した。
<容器積層体の界面剥離強度>
容器を構成している積層体について幅15mm×長さ100mmの短冊状に切り抜いて試験片を作製し、最も界面剥離強度が低い層間において引張試験を行った。試験片は引張り速度20mm/minで180°剥離を行い、界面剥離強度(N/15mm)を得た。試験は23℃・50%RHの環境下で行った。
<実施例1>
<水に分散したセルロースナノクリスタル分散液の調製>
パルプを64質量%の硫酸で分解処理及び精製処理したものを乾燥処理した。得られたアニオン性官能基含有セルロースナノクリスタルにイオン交換水を加えてミキサーで分散処理することで、水に分散したアニオン性官能基含有セルロースナノクリスタル分散液を得た。前記アニオン性官能基含有セルロースナノクリスタルのアニオン性官能基量は0.17mmol/gであった。
<水/アルコールに分散したセルロースナノクリスタル含有分散液の調製>
前記セルロースナノクリスタル分散液についてポリビニルアルコール(完全ケン化型)、合成マイカ(親水性膨潤性雲母)、無水クエン酸、硫酸、を添加して攪拌を行い、さらにpHが7になるまでNHを加えて攪拌し、所定量の2-プロパノールを加えて攪拌することで、アニオン性官能基含有セルロースナノクリスタルの固形量が1.5質量部であり、アニオン性官能基含有セルロースナノクリスタル100質量部に対してポリビニルアルコール(完全ケン化型)、合成マイカ(親水性膨潤性雲母)、無水クエン酸、硫酸がそれぞれ30質量部、30質量部、10質量部、2質量部であり、水/アルコールの混合割合において水90質量部に対して2-プロパノールが10質量部である、水/アルコールに分散したセルロースナノクリスタル含有分散液を調製した。また前記前記分散液はネマティック液晶及び/又はキラルネマティック液晶屈折像に由来する複屈折を確認した。
<水/アルコールに分散した多価カチオン樹脂分散液の調製>
多価カチオン樹脂であるポリエチレンイミン(以下、「PEI」ということがある)について水とエタノールを加えて希釈分散し、更に炭酸カルシウムを加えて分散し、ポリエチレンイミンと炭酸カルシウムが0.5質量部及び1.5質量部の多価カチオン樹脂分散液を調製した。
<接着剤溶液の調製>
50質量%の溶剤含有イソシアネート基末端ウレタン樹脂(主剤)50g及び75質量%の溶剤含有水酸基末端ウレタン樹脂(硬化剤)5gについて秤量し、酢酸エチルを53g加えて希釈分散し、接着剤溶液を調製した。
<多価カチオン樹脂及びセルロースナノクリスタル含有混合層形成PETフィルムの調製>
マルチコーターを用いてコロナ処理された2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」ということがある)フィルム(12μm)基材上にグラビアコーティングによって前記多価カチオン樹脂分散液をWET膜厚5g/mで塗布し、熱風乾燥により100℃で乾燥して固形化した。さらに前記PEI層上に、マルチコーターを用いてグラビアコーティングによって前記セルロースナノクリスタル含有分散液を塗工量がWET膜厚60g/mで塗工し、熱風乾燥により150℃で乾燥して固形化し、PETフィルム上に多価カチオン樹脂及びセルロースナノクリスタルを含有する混合層(バリア層)が形成されて成る積層フィルムを調製した。
<積層体の調製>
コロナ処理されたポリエチレン(以下、「PE」ということがある)フィルム(50um)について、マルチコーターを用いてコロナ処理された面側に前記接着剤溶液をグラビアコーティングにてWET膜厚15g/mで塗布して熱風乾燥(50℃)により乾燥固形化し、さらに接着剤が固形化された面に、前記PETフィルム上に多価カチオン樹脂及びセルロースナノクリスタルを含有する混合層(バリア層)が形成された積層フィルムの混合層(バリア層)が形成された面を積層してローラーを通して圧着させ、PETフィルム/バリア層/接着層/PEフィルムの層構成の多層フィルムを調製した。
前記多層フィルムについてマルチコーターを用いて多価カチオン樹脂及びセルロースナノクリスタルを含有する混合層(バリア層)が形成されていないPETフィルム面に前記接着溶液をグラビアコーティングにてWET膜厚15g/mで塗布しながら熱風乾燥により50℃で乾燥固形化し、更にPEを23umの厚みで押出ラミした紙製基材(坪量250g/m)の紙基材面と前記接着剤が固形化された面を積層してローラーを通して圧着させ、多価カチオン樹脂及びセルロースナノクリスタルを含有する混合層(バリア層)が形成されて成る積層体(PE層/紙製基材/接着層/PETフィルム/バリア層/接着層/PEフィルム)を調製した。前記積層体は50℃の環境下で1日静置した。
<底部材及び胴部材の調製、及び胴部材の端面処理>
前記積層体を抜き型で打ち抜いて底部材および胴部材を作製した。さらに胴部材については、容器の接合部のバリア性を確保するために、図4(A)~(C)に示すようにして、胴部材の片面について端面処理(スカイブヘミング処理)を行った。
<容器作製>
紙コップ成形機を用いて、端面処理を行った前記胴部材及び底部材を送り出して胴部及び底部を貼り合わせ、更にフランジ加工を行い、紙容器内面側に紙層が露出していない、セルロースナノクリスタル及び多価カチオン樹脂を含有する混合物から成るバリア層を有する紙容器を作製した。紙容器の層構成は内面側からPE層、接着層、バリア層、PET層、接着層、紙層、PE層になっている。また実施例1の容器は紙コップ形態であり、容量は250mLである。
<実施例2>
アニオン性官能基含有セルロースナノクリスタル含有分散液のアニオン性官能基含有セルロースナノクリスタルの固形量を1質量部に変更した以外は実施例1と同様の方法で調製し、セルロースナノクリスタル及び多価カチオン樹脂を含有する混合物から成る紙容器を作製した。なお、実施例2で使用したセルロースナノクリスタル含有分散液についてネマティック液晶及び/又はキラルネマティック液晶屈折像に由来する複屈折を確認した。
<実施例3>
アニオン性官能基含有セルロースナノクリスタルの固形量が1質量部であり、アニオン性官能基含有セルロースナノクリスタル100質量部に対して合成マイカを10質量部に変更した以外は実施例1と同様の方法で調整し、セルロースナノクリスタル及び多価カチオン樹脂を含有する混合物から成る紙容器を作製した。なお、実施例3で使用したセルロースナノクリスタル含有分散液についてネマティック液晶及び/又はキラルネマティック液晶屈折像に由来する複屈折を確認した。
<実施例4>
アニオン性官能基含有セルロースナノクリスタルの固形量が1質量部であり、アニオン性官能基含有セルロースナノクリスタル100質量部に対して合成マイカを配合しない以外は実施例1と同様の方法で調製し、セルロースナノクリスタル及び多価カチオン樹脂を含有する混合物(バリア層を有する紙容器を作製した。なお実施例4で使用したセルロースナノクリスタル含有分散液についてネマティック液晶及び/又はキラルネマティック液晶屈折像に由来する複屈折を確認した。
<実施例5>
実施例1と同様の前記セルロースナノクリスタル含有分散液を塗工量がWET膜厚15g/mで塗工し熱風乾燥により150℃で乾燥して固形化させる塗工処理を2回行うことで、PETフィルム上に多価カチオン樹脂及びセルロースナノクリスタルを含有する混合層(バリア層)が形成されて成る積層フィルムを調製した以外は実施例1と同様に行い、セルロースナノクリスタル及び多価カチオン樹脂を含有する混合物(バリア層)を有する紙容器を作製した。なお、実施例5で使用したセルロースナノクリスタル含有分散液についてネマティック液晶及び/又はキラルネマティック液晶屈折像に由来する複屈折を確認した。
<実施例6>
<水に分散したセルロースナノクリスタル分散液の調製>
パルプを64質量%の硫酸で分解処理及び精製処理した後にネバードライ処理による親水化処理を行い、得られたアニオン性官能基含有セルロースナノクリスタルからアニオン性官能基含有セルロースナノクリスタル含有分散液を調製した事以外は実施例3と同様に行い、セルロースナノクリスタル及び多価カチオン樹脂を含有する混合物(バリア層)を有する紙容器を作製した。前記アニオン性官能基含有セルロースナノクリスタルのアニオン性官能基量は0.22mmol/gであった。なお、実施例5で使用したセルロースナノクリスタル含有分散液はについてネマティック液晶及び/又はキラルネマティック液晶屈折像に由来する複屈折を確認した。
<比較例1>
PET基材に多価カチオン樹脂であるポリエチレンイミン(PEI)及びセルロースナノクリスタル含有塗布液を塗布せずに積層体を調製した以外は実施例1と同様に行い、紙容器を作製した。
<比較例2>
<水に分散したセルロースナノファイバー分散液の調製>
針葉樹クラフトパルプ10g(固形量)に対しTEMPO触媒(Sigma Aldrich社製)0.8mmolと臭化ナトリウム12.1mmolを添加し、イオン交換水を加えて1Lにメスアップし、均一に分散するまで攪拌した。反応系にセルロース1g当たり15mmolの次亜塩素酸ナトリウムを添加し、酸化反応を開始した。反応中は0.5N水酸化ナトリム水溶液でpH10.0から10.5に系内のpHを保持し、30℃で4時間酸化反応を行った。酸化したセルロースはイオン交換水を加えながら高速冷却遠心分離機(16500rpm,10分)を用いて中性になるまで十分洗浄を行った。洗浄したセルロースに水を加えてミキサー(7011JBB,大阪ケミカル株式会社製)で解繊処理し、1質量%のセルロースナノファイバー分散液を得た。
<セルロースナノファイバー層形成PETフィルムの調製>
マルチコーターを用いてコロナ処理された2軸延伸PETフィルム(12μm)基材上にバーコーティングによって前記セルロースナノファイバー分散液をWET膜厚60g/mで塗布し、熱風乾燥により150℃で乾燥して固形化し、PETフィルム上にセルロースナノファイバー層が形成されて成る積層フィルムを調製した。
<積層体、底部材及び胴部材の調製、及び胴部材の端面処理、紙容器作製>
前記PETフィルム上にセルロースナノファイバー層が形成されて成る積層フィルムを用いた以外は実施例1と同様の調製を行い、セルロースナノファイバー層を含有する紙容器を作製した。
<比較例3>
胴部材の端面処理を行わなかった以外は比較例2と同様の調製を行い、セルロースナノファイバー層を含有する紙容器を作製した。
<比較例4>
胴部材の端面処理を行わなかった以外は実施例1と同様の調製を行い、セルロースナノクリスタル及び多価カチオン樹脂を含有する混合物(バリア層)を有する紙容器を作製した。
Figure 2022115529000002
Figure 2022115529000003

Claims (13)

  1. 紙製基材の少なくとも一方の面に、少なくとも樹脂層及びバリア層が形成された多層構造を有する紙容器であって、前記バリア層が、セルロースナノクリスタル及び多価カチオン樹脂を含有する混合物から成り、前記積層構造における各層間の界面剥離強度が2N以上であり、前記紙容器内面側には紙基材が露出しておらず、50%RH、23℃における酸素透過度が5.0cc/m・day・atm以下であることを特徴とする紙容器。
  2. 前記セルロースナノクリスタルが、アニオン性官能基を含有する請求項1記載の紙容器。
  3. 前記セルロースナノクリスタルが、アニオン性官能基を0.01~4.0mmol/gの量で含有する請求項1又は2記載の紙容器。
  4. 前記アニオン性官能基が、硫酸分解由来の硫酸基及び/又はスルホ基を少なくとも含有する請求項2又は3記載の紙容器。
  5. 前記多価カチオン樹脂が、ポリエチレンイミンである請求項1~4の何れかに記載の紙容器。
  6. 前記バリア層が、層状無機化合物、水酸基含有高分子、反応性架橋剤、及び金属塩の少なくとも1種を含む請求項1~5の何れかに記載の紙容器。
  7. 前記樹脂層が、水酸基及び/又はカルボキシル基含有樹脂から成る請求項1~6の何れかに記載の紙容器。
  8. 前記水酸基及び/又はカルボキシル基含有樹脂が、ポリエステル樹脂、多糖類、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸の何れかである請求項7記載の紙容器。
  9. 前記紙製基材の容器内面側に、該紙製基材側から前記樹脂層、前記バリア層、接着層、疎水性熱可塑性樹脂層が形成されている請求項1~8の何れかに記載の紙容器。
  10. 前記紙容器が、胴部及び底部から成るカップ型容器であり、該胴部のオーバーラップ部における前記積層体端面に紙製基材の露出がない請求項1~9の何れかに記載の紙容器。
  11. 樹脂フィルムの上に、多価カチオン樹脂含有溶液を塗工・乾燥して、多価カチオン樹脂から成る層を形成し、該多価カチオン樹脂から成る層上に、セルロースナノクリスタル含有分散液を塗工・乾燥して、セルロースナノクリスタル及び多価カチオン樹脂を含有するバリア層が前記樹脂フィルム上に形成された積層フィルムを作成する工程、該積層フィルムの樹脂フィルム側に紙製基材、バリア層側に疎水性熱可塑性樹脂フィルムが位置するようにこれらを積層して積層体を作成する工程、該積層体の少なくとも容器内面側となる紙製基材が露出した端部に端面処理を行う工程、該端面処理が施された積層体を用いて容器を成形する工程、とから成ることを特徴とする紙容器の製造方法。
  12. 前記端面処理がスカイブヘミング処理である請求項11記載の紙容器の製造方法。
  13. 前記樹脂フィルムが、水酸基及び/又はカルボキシル基含有樹脂である請求項11又は12記載の紙容器の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2024056939A1 (en) * 2022-09-13 2024-03-21 Upm-Kymmene Corporation Multilayer product and method for producing the same

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