JP2023104056A - セルロースナノクリスタル含有樹脂組成物及びこの樹脂組成物から成る層を備えた積層紙 - Google Patents

セルロースナノクリスタル含有樹脂組成物及びこの樹脂組成物から成る層を備えた積層紙 Download PDF

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Hideaki Nagahama
慎一郎 前田
Shinichiro Maeda
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Makoto Asano
祥人 久富
Yoshito HISATOMI
佑典 田中
Sukenori Tanaka
慶 荒木
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Abstract

【課題】バリア性及び耐水性に優れていると共に、加工負荷耐性にも優れた被覆層を形成可能なセルロースナノクリスタル及びアイオノマー樹脂含有樹脂組成物及びこの樹脂層を備えた積層紙、並びにこの積層紙から成る紙製容器を提供することである。【解決手段】エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂含有水性分散液、及びセルロースナノクリスタル含有水性分散液を含有して成る樹脂組成物であって、パルスNMR測定における緩和時間T2(S)が17msec未満であり、T2(L)が75msec未満であることを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、セルロースナノクリスタル含有樹脂組成物に関するものであり、より詳細には、バリア性及び耐水性に優れていると共に、加工負荷耐性にも優れた被覆層を形成可能なセルロースナノクリスタル及びアイオノマー樹脂含有樹脂組成物及びこの樹脂層を備えた積層紙、並びにこの積層紙から成る紙製容器に関する。
紙容器は、再生可能な天然資源由来材料から成ることから、環境に優しい容器として広く普及している。しかしながら、紙製基材のみでは耐水性やガスバリア性に劣ることから、耐湿性樹脂や、ガスバリア性層を積層した積層体から容器を成形している。
例えば、紙製基材にアルミニウム等の金属箔を貼り合わせることや、エチレンビニルアルコール共重合体等のガスバリア性樹脂を積層すること、或いはガスバリア性のポリマーコーティングを塗布すること等によりガスバリア性を付与することが行われている。
しかしながら、金属箔を有する紙容器は電子レンジ加熱に対応できないという問題がある。またエチレンビニルアルコール共重合体或いはガスバリア性ポリマーから成る層は、紙製基材との密着性の問題や、石油由来材料であるため天然資源由来材料である紙製品の優れた特性を損なうおそれもある。また、無機蒸着層を形成することによりガスバリア性を付与することも行われているが、紙製基材はその表面に無数の凹凸が存在するため無機蒸着層に欠陥が生じやすいことから、ガスバリア性が低下するおそれがある。
このような問題を解決するために、紙製基材上に天然資源由来材料であるセルロースナノファイバーを含有するコーティング層を形成し、バリア性を付与することが提案されている。
例えば、下記特許文献1には、複数の層が積層されてなる積層体において、紙からなる基材と、該基材の少なくとも片面に積層されて、無機層状化合物を含まず、繊維径10μm以下のセルロース微細繊維と水溶性高分子とを含む厚さ0.01μm以上、10μm以下の繊維層と、該繊維層上に厚さ0.01μm以上、10μm以下の疎水性樹脂層、該疎水性樹脂層上に、さらに金属又は金属酸化物よりなる蒸着層を設け、当該蒸着層上に更に樹脂層を備えた積層体であり、当該積層体の酸素透過度が0.001から10(ml/m・day)の間、かつ、水蒸気透過度が3.0以下(ml/m・day)であることを特徴とする積層体が記載されている。
上記特許文献1に記載された積層体においては、ナノサイズのセルロース微細繊維が含有されていることにより、紙製基材の平滑性が向上され、緻密で孔や欠陥のない層が形成されて優れたバリア性が発現可能であることが記載されているが、積層体のラミネート強度が高々1.5N程度であり、この積層体を用いて紙容器に成形すると、成形負荷により蒸着層とバリア層の間で層間剥離が生じるおそれがある。また蒸着層を備えていることから屈曲耐性に劣り、容器成形の際に折り曲げ処理に付されると蒸着層が割れて劣化し、容器のバリア性が低下するおそれがある。
またセルロース繊維の分散性を向上させた樹脂組成物として、セルロース繊維を含むディスパージョン(A)と、エチレンおよび不飽和カルボン酸を共重合成分として含むエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアミノ化合物中和物(B1)および前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー樹脂(B2)から選択される少なくとも一種を含むディスパージョン(B)と、を含み、水性分散体である樹脂組成物が提案されている(特許文献2)。上記樹脂組成物は、アイオノマー樹脂を用いることにより、セルロース繊維の分散性を高め、得られる塗膜は機械的強度、耐水性、透明性等に優れていることが記載されている。
特許第6318490号公報 特許第5931648号公報
しかしながら上記特許文献2記載の樹脂組成物は、それ自体で成形体を構成することを目的とするものであり、かかる樹脂組成物を紙製基材に適用して被覆層とした場合に、セルロース繊維により得られる作用効果については何等認識されていない。本発明者等は、上記特許文献2の樹脂組成物から成る被覆層を紙製基材に積層した積層紙を作成し、これを用いて底部と胴部を有するカップ型容器の成形を試みたが、底部の成形に際して、積層紙の折り曲げ加工や底絞り加工における成形負荷に被覆層が追従することができず、屈曲部分においてピンホールが発生し、水漏れや強度低下の原因となってしまうことが分かった。
従って本発明の目的は、バリア性及び耐水性に優れていると共に、加工負荷耐性にも優れた被覆層を形成可能なセルロースナノクリスタル及びアイオノマー樹脂含有樹脂組成物及びこの樹脂層を備えた積層紙、並びにこの積層紙から成る紙製容器を提供することである。
本発明によれば、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂含有水性分散液、及びセルロースナノクリスタル含有水性分散液を含有して成り、パルスNMR測定における緩和時間T(S)が17msec未満であり、T(L)が75msec未満であることを特徴とする樹脂組成物が提供される。
本発明の樹脂組成物においては、
(1)前記セルロースナノクリスタル(固形分)の含有量が0.1~20質量%であること、
(2)前記セルロースナノクリスタルが、アニオン性官能基を0.01~4.0mmol/gの量で含有すること、
(3)前記アニオン性官能基が、硫酸処理に由来する硫酸基及び/又はスルホ基を少なくとも含有すること、
(4)前記セルロースナノクリスタル含有水性分散液の分散媒が、水又は水と他のプロトン性極性溶媒の混合溶媒であること、
(5)前記エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂(固形分)の含有量が26.6~33.2質量%であること、
が好適である。
本発明によればまた、紙製基材の少なくとも一方の面に、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂及びセルロースナノクリスタルを含有する樹脂組成物から成る層が形成されていることを特徴とする積層紙が提供される。
本発明の積層紙においては、
(1)前記樹脂組成物から成る層を、バーコビッチ型圧子で500nm荷重した後に除荷したときの弾性率が600~750MPaであり、弾性回復率が70%以上であること、
(2)前記セルロースナノクリスタルが、アニオン性官能基を0.01~4.0mmol/gの量で含有すること、
(3)前記アニオン性官能基が、硫酸処理に由来する硫酸基及び/又はスルホ基を少なくとも含有すること、
(4)前記樹脂組成物が、前記エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂及び前記セルロースナノクリスタルを、99.7:0.3~60:40(質量比)で含有すること、
が好適である。
本発明によれば更に、胴部及び底部から成る紙製容器であって、少なくとも前記底部の内面側に、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂及びセルロースナノクリスタルを含有する樹脂組成物から成る層が形成されていることを特徴とする紙製容器が提供される。
本発明の紙製容器においては、
(1)前記樹脂組成物から成る層を、バーコビッチ型圧子で500nm荷重した後に除荷したときの弾性率が600~750MPaであり、弾性回復率が70%以上であること、
(2)前記セルロースナノクリスタルがアニオン性官能基を0.01~4.0mmol/gの量で含有し、該アニオン性官能基が硫酸処理に由来する硫酸基及び/又はスルホ基を少なくとも含有すること、
(3)前記樹脂組成物が、前記エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂及び前記セルロースナノクリスタルを、99.7:0.3~60:40(質量比)で含有すること、
が好適である。
本発明の樹脂組成物において、樹脂組成物のパルスNMR測定における緩和時間T(S)が17msec未満であり、T(L)が75msec未満であることは、セルロースナノクリスタルは樹脂組成物中でエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂(以下、単に「アイオノマー樹脂」ということがある)の運動性にはほぼ作用せずに溶媒成分の運動性を拘束する作用を示すことを示唆し、アイオノマー樹脂と溶媒の界面が保持されてアイオノマー樹脂は均質的に存在し且つセルロースナノクリスタルは均一に溶媒中に微分散した状態で存在するため、この樹脂組成物から成る被覆層を有する積層紙においては、成形時の荷重変形に対する応力集中が分散され、塑性変形量が低く弾性率が高いことから、高い変形回復率を有している。そのため、例えばカップ型容器の成形における底絞り加工等による成形負荷が付与された場合でも成形時の荷重変形に対する応力集中が減少し、塑性変形量が低く弾性変形率が高いことから、高い変形回復率を有しており、ピンホールの発生を有効に防止できるという優れた加工負荷耐性を有している。
このことは、後述する実施例の結果からかも明らかである。すなわち、セルロース繊維を含有しないアイオノマー樹脂含有水性分散液から成る樹脂組成物のパルスNMR測定による緩和時間T(S)は14msecであり且つT(L)が75msecであり、この樹脂組成物から成る被覆層とする積層紙についてのピンホールのスクリーニング評価、ストログラフを用いたピンホール評価及びこの積層紙から底絞り成形された底部におけるピンホール評価の3つの試験で、ピンホールが発生し不良と評価されている(比較例1)。
これに対して、アイオノマー樹脂含有水性分散液とセルロースナノクリスタル含有水性分散液を含有する本発明の樹脂組成物においては、パルスNMR測定における緩和時間T(S)が17msec未満であり且つT(L)が75msec未満であり、上記の何れのピンホール評価においてもピンホールの発生が有効に抑制され、良好と評価されている(実施例1~3)。
また前述した特許文献2の樹脂組成物のようにアイオノマー樹脂含有水性分散液とセルロースナノファイバー含有水性分散液を含有する樹脂組成物においては、パルスNMR測定における緩和時間T(S)は17msec以上であり且つT(L)が75msec以上であることから、セルロースナノファイバーはアイオノマー樹脂と溶媒の両方の分子運動性の拘束を和らげる作用があり、アイオノマー樹脂と溶媒の界面が広がり、アイオノマー樹脂が広域に広がっている部分と狭域の部分が混在し、アイオノマー樹脂は不均質に存在すると共に、セルロースナノファイバーは局在凝集化した状態で存在するため、成形時の荷重変形に対する応力集中が局所的に起こり、この樹脂組成物から成る被覆層を有する積層紙においては塑性変形量が高く弾性変形する割合が高いことから、低い変形回復率を有している。そのため、例えばカップ型容器の成形における底絞り加工等による成形負荷が付与された場合、成形時の荷重変形に対する応力集中が局所的に起こり、塑性変形量が高く弾性変形する割合が高いことから、低い変形回復率を有していることから、いずれのピンホール評価においてもピンホールが発生し不良と評価されている(比較例2及び3)。
また本発明で用いるセルロースナノクリスタルは、セルロース繊維同士の荷電反発により自己組織化構造を形成し、この自己組織化構造が透過ガスの透過経路の障壁になることから、優れたガスバリア性を発現できる。またセルロースナノクリスタルは耐熱性にも優れており、後述する紙容器の成形工程における押出ラミネート工程や、ヒートシール工程で加熱処理された場合にも熱劣化によるバリア性能の低下のおそれがなく、優れたガスバリア性を有する紙容器を提供することが可能となる。
更にアイオノマー樹脂を含有することにより、被覆層として優れた耐水性やヒートシール性を紙製基材に付与することが可能となる。
実施例1及び比較例2の樹脂組成物のクライオ走査型電子顕微鏡写真であり、(A)が実施例1、(B)が比較例2である。 ナノインデンテーション測定を説明するための図である。 ナノインデンテーション測定により得られる荷重―変位曲線を示すである。 本発明の紙製容器の一例を説明するための図である。 実施例3、比較例1及び2により得られた積層紙のナノインデンテーション測定結果を示す図である。 実施例1、比較例1~3により得られた積層紙のピンホール発生頻度のスクリーニング試験の結果を示す図である。 実施例2,比較例1及び2により得られた積層紙を底絞りして形成した底部におけるピンホールテストの結果を示す図である。
(樹脂組成物)
本発明の樹脂組成物は、パルスNMR測定における緩和時間T(S)が17msec未満、特に13~14msecの範囲にあり、且つ及びT(L)が75msec未満、特に50~68msecの範囲にあることが重要な特徴であり、これにより、アイオノマー樹脂が均質的に存在すると共に、セルロースナノクリスタルは微分散した状態となり、紙製基材上に被覆層として形成された際に、高い弾性率及び変形回復力を有することから、成形加工に追従することが可能となり、ピンホールの発生を有効に抑制することが可能となる。
パルスNMRはパルス磁場を照射した後の緩和時間を測定することで分子の運動性に依存する緩和時間曲線を得ることができる。すなわち、本発明の樹脂組成物において、パルスNMR測定における緩和時間Tの曲線を解析することによって緩和時間が短い成分T(S)と緩和時間が長い成分T(L)の2成分に分離することが可能であり、T(S)は、緩和時間の短い成分の緩和時間、すなわち分子運動性が低い成分の緩和時間を示し、緩和時間が短いほど樹脂への拘束効果があることを意味し、一方緩和時間T(L)は、緩和時間の長い成分の緩和時間、すなわち分子運動性が高い成分の緩和時間を示し、緩和時間が短いほど溶媒への拘束効果があることを意味している。ここでは具体的な結果を示さないが、溶媒のみの緩和時間Tは緩和時間が長い成分T(L)の1成分のみが解析されることからも、上記が正しいことを示唆している。
前述した通り、セルロースナノクリスタルを含有しないアイオノマー樹脂含有水性分散液のみから成る樹脂組成物(比較例1)に、セルロースナノクリスタル含有水性分散液を含有して成る本発明の樹脂組成物(実施例1~3)においては、比較例1の樹脂組成物のパルスNMR測定における緩和時間T(S)及びT(L)を基準とすると、緩和時間T(S)はほぼ保持されており、一方T(L)が短くなる傾向がある。このことは、セルロースナノクリスタルが、アイオノマー樹脂と溶媒の拘束を保持しながら、溶媒の運動性のみを拘束する方向に作用していることを意味し、これによりアイオノマー樹脂は、樹脂組成物中で均質的であると共に、セルロースナノクリスタルは微分散する傾向がある。
これに対して、比較例1の樹脂組成物に、セルロースナノファイバー含有水性分散液を含有している比較例2及び3においては、緩和時間T(S)及びT(L)共に、比較例1よりも増加する傾向がある。このことはセルロースナノファイバーが、アイオノマー樹脂と溶媒の拘束を解除し、その界面を広げると共に、アイオノマー樹脂と溶媒の運動性を拘束しない方向に作用していることを意味し、これによりアイオノマー樹脂は樹脂組成物中で局在的に不均質になりやすく、セルロースナノファイバーは凝集して局在化しやすくなる。そのためセルロースナノファイバーを含有する樹脂組成物においては、成形負荷により塑性変形する割合が多くなる結果、変形回復率が低くなると考えられる。
セルロースナノクリスタルを含有する本発明の樹脂組成物(実施例1)と、セルロースナノファイバーを含有する樹脂組成物(比較例2)の上述した相違は、これらの樹脂組成物のクライオ型電子顕微鏡写真(SEM写真)を示す図1からも明らかである。すなわち、実施例1の樹脂組成物のSEM写真を示す図1(A)では、セルロースナノクリスタルはアイオノマー樹脂の運動性には作用せずに溶媒成分の運動性を拘束する作用があり、アイオノマー樹脂と溶媒との界面が保持され、アイオノマー樹脂がほぼ均一に分布しており、樹脂組成物が均質的な状態であることがわかる。またセルロースナノクリスタルは凝集することなく、微分散している。これに対して比較例2の樹脂組成物のSEM写真を示す図1(B)では、セルロースナノファイバーはアイオノマー樹脂と溶媒の両方の分子運動性の拘束を和らげる作用があり、アイオノマー樹脂と溶媒の界面を広げ、アイオノマー樹脂が広域に広がっている部分と狭域の部分が混在し、樹脂組成物が不均質な状態であることがわかる。またセルロースナノファイバーは凝集して存在し、樹脂組成物中で局在化していることがわかる。
また上述したように、本発明の樹脂組成物においては、セルロースナノクリスタルが含有されていることにより、アイオノマー樹脂含有水性分散液のパルスNMR測定による緩和時間を基準とすると、緩和時間T(S)の値はほぼ保持され、T(L)の値が短くなる傾向があり、アイオノマー樹脂含有水性分散液の緩和時間を基準にすれば、樹脂組成物の緩和時間T(S)は±1msec程度であることが好適であり、緩和時間T(L)は7~25msec程度減少していることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、セルロースナノクリスタル(固形分)を0.1~20質量%、特に0.5~5質量%の量で含有していることが好適であり、またアイオノマー樹脂(固形分)を26.6~33.2質量%、特に28~33.1質量%の量で含有していることが好適である。セルロースナノクリスタルの量が上記範囲よりも少ない場合には、加工負荷耐性及びバリア性等のセルロースナノクリスタルを配合することにより得られる効果が上記範囲にある場合に比して充分得られないおそれがあり、一方上記範囲よりもアイオノマー樹脂が少ない場合には、耐水性やヒートシール性等のアイオノマー樹脂により得られる効果が上記範囲にある場合に比して充分得られないおそれがある。
また一部のセルロースナノファイバーはフィブリル繊維であるが、セルロースナノクリスタルは孤立分散した繊維であり、またセルロースナノクリスタルはセルロースナノファイバーに比して繊維長が短くアスペクト比が小さいため、セルロースナノクリスタルの樹脂組成物を含有しても増粘作用を抑制しながら均一に分散処理することが可能であり、これらの結果からセルロースナノクリスタルを用いることで樹脂組成物のセルロースナノクリスタルの含有量の上限はセルロースナノファイバーを用いることに比べて高くすることができるというメリットも有する。
[アイオノマー樹脂含有水性分散液]
本発明の樹脂組成物において、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂は、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のカルボキシル基の一部又は全部が金属イオンで中和されているものであり、アイオノマー樹脂の含有により樹脂組成物に耐水性やヒートシール性を付与することが可能となる。
エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体は、エチレン含有量が26.6~33.2質量%、特に28~33.1質量%の量であることが好適である。上記範囲よりもエチレン含有量が少ない場合には、上記範囲にある場合に比して耐水性、機械的強度、ヒートシール性等が低下するおそれがあり、一方上記範囲よりもエチレン含有量が多い場合には、上記範囲にある場合に比して塗膜が硬くなり加工負荷耐性が低下するおそれがある。
アクリル酸又はメタクリル酸はそれぞれ1種単独で用いてもよいし、組み合わせて用いることもできる。上記エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体は、エチレンと(メタ)アクリル酸の二元共重合体のみならず、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステルが共重合された多元共重合体であってもよい。
上記アイオノマー樹脂を構成する金属イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属イオン;マグネシウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、マンガンイオン、鉛イオン、銅イオン、チタンイオン、鉄イオン、アルミニウムイオン、ジルコニウムイオン等の多価金属イオン等を例示できる。これら金属イオンは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に用いるアイオノマー樹脂は、上記金属イオンの中でも、ナトリウムイオン、亜鉛イオン、マグネシウムイオンであることが好適である。
本発明の樹脂組成物においては、アイオノマー樹脂は、1種類を単独で用いてもよいが、2種以上を組み合わせで用いることもできる。
また上記アイオノマー樹脂は金属イオンの他にアンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、1,3-ジメチルアミノシクロヘキサンなどのアミノ化合物を含むものであってもよい。
アイオノマー樹脂含有水性分散液は、従来公知の方法により調製されたものを使用することができ、分散媒としては、水だけでもよいが、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、2-ブタノン、アセトン等のケトン、トルエンなどの芳香族系溶剤と水との混合溶媒であってもよい。後述するセルロースナノクリスタル含有水性分散液で使用する分散媒と同じ分散媒を用いることが好適である。
アイオノマー樹脂含有水性分散液は、アイオノマー樹脂(固形分)を26.6~33.2質量%の量で含有することが好適であり、また粘度(B型粘度計、温度25℃、6回転)が400mPa・sec以下の範囲にあることが好適であり、これにより塗工性、取扱い性に優れている。
[セルロースナノクリスタル含有水性分散液]
セルロースナノクリスタルは、パルプなどのセルロース繊維を硫酸や塩酸で酸加水分解処理することにより得られる、ロッド状のセルロース結晶繊維であるが、本発明においては、セルロース繊維を硫酸処理することにより得られた、硫酸基及び/又はスルホ基を含有するセルロースナノクリスタルであることが好適である。このセルロースナノクリスタルは、硫酸基及び/又はスルホ基等の自己組織化構造の形成に寄与可能なアニオン性官能基を0.01~4.0mmol/gの範囲で含有することが好適である。尚、硫酸基は硫酸エステル基を含む概念である。
またセルロースナノクリスタルは、上述した硫酸基及び/又はスルホ基を有するセルロースナノクリスタルが更に親水化処理に付され、硫酸基及び/又はスルホ基量を調整、或いは、カルボキシル基、リン酸基等のアニオン性官能基をセルロースの6位等の水酸基に導入し、硫酸基、スルホ基、カルボキシル基、リン酸基等のアニオン性官能基の総量が0.17mmol/gより多く且つ4.0mmol/g以下、特に0.17~2.0mmol/gの範囲に調整されたアニオン性官能基含有セルロースナノクリスタルを用いることもできる。尚、セルロースナノクリスタルの親水化処理については後述する。
アニオン官能基含有セルロースナノクリスタルは、分散液中で良好な分散性を有し、自己配列によりネマティック液晶及び/又はキラルネマティック液晶を形成し、かかる液晶性自己配列は維持されながら乾燥処理による固形化が行われることから、塗膜中に十分な自己組織化構造を形成することが可能であり、優れたガスバリア性を発現することが可能である。後述する実施例における分散液においても、上記ネマティック液晶及び/又はキラルネマティック液晶の存在に起因する複屈折が示されている。
またセルロースナノクリスタルは、繊維径が50nm以下、特に2~50nmの範囲にあり、繊維長が100~500nmの範囲にあり、アスペクト比が5~50の範囲にあり、結晶化度が60%以上、特に70%以上であるものを好適に用いることができる。
セルロースナノクリスタル含有水性分散液においては、セルロース原料を硫酸処理することにより得られた、硫酸基及び/又はスルホ基含有セルロースナノクリスタルは、必ずしも親水化処理する必要はないが、必要に応じて親水化処理することができる。親水化処理したセルロースナノクリスタル水性分散液は、親水化処理工程の後、遠心分離工程、及び濾過分離工程に付することにより得られた分散液であり、親水化処理の前または後の工程において固形化のための噴霧乾燥(スプレードライ)工程等を経ていないことが好適であるが、噴霧乾燥などで固形化したセルロースナノクリスタルを水やアルコールなどの溶媒に再分散処理して用いることもできる。
<親水化処理>
上述した親水化処理としては、ネバードライ処理、又はネバードライ処理と、水溶性カルボジイミド、硫酸、三酸化硫黄-ピリジン錯体、リン酸-尿素、TEMPO触媒、酸化剤の何れかを用いた処理とを組み合わせて行う。カルボジイミド、硫酸、三酸化硫黄-ピリジン錯体の何れかを用いた処理により、セルロースナノクリスタルの硫酸基及び/又はスルホ基量が調整されると共に、セルロースナノクリスタルが更に短繊維化される。またリン酸-尿素又はTEMPO触媒、酸化剤の何れかを用いた処理により、リン酸基又はカルボキシル基のアニオン性官能基が導入されて、セルロースナノクリスタルの総アニオン性官能基量が上記範囲に調整される。
尚、親水化処理は、アニオン性官能基の総量が上記範囲となる限り、いずれか一つの処理を行えばよいが、同一の処理を複数回、或いは他の処理と組み合わせて複数回行ってもよい。
≪ネバードライ処理による親水化処理≫
セルロースナノクリスタルは、一般にスプレードライ、加熱、減圧などによる乾燥処理を行ってパウダー等の固形化を経るが、乾燥処理による固形化の際にセルロースナノクリスタルに含有するアニオン性官能基の一部が脱離して親水性が低下する。すなわち、アニオン性官能基を含有するセルロースナノクリスタルについてパウダー等の固形化を経ないネバードライ処理は親水化処理として挙げられる。
≪カルボジイミドを用いた親水化処理≫
カルボジイミドを用いた処理においては、ジメチルホルムアミド等の溶媒中でセルロースナノクリスタルとカルボジイミドを撹拌し、これに硫酸を添加した後、0~80℃の温度で5~300分反応させて硫酸エステルとする。カルボジイミド及び硫酸は、セルロースナノクリスタル1g(固形分)に対して5~30mmol及び5~30mmolの量で使用することが好ましい。
次いで水酸化ナトリウム等のアルカリ性化合物を添加して、セルロースナノクリスタルに導入されたスルホ基をH型からNa型に変換することが、収率を向上する上で好ましい。その後、透析膜等を用いた濾過処理に付して不純物等を除去することにより、硫酸基及び/又はスルホ基変性セルロースナノクリスタルが調製される。
カルボジイミドとしては、分子内にカルボジイミド基(-N=C=N-)を有する水溶性化合物である1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド等を例示できる。また有機溶媒に溶解するジシクロヘキシルカルボジイミド等を使用することもできる。
≪硫酸を用いた親水化処理≫
本発明で使用するセルロースナノクリスタルは、セルロース繊維を硫酸で加水分解処理して成るものであるが、このセルロースナノクリスタルを更に硫酸を用いて親水化処理する。硫酸は、セルロースナノクリスタル1g(固形分)に対して40~60質量%で使用することが好ましい。40~60℃の温度で5~300分反応させ、その後、透析膜等を用いた濾過処理に付して不純物等を除去することにより、硫酸基及び/又はスルホ基変性セルロースナノクリスタルが調製される。
≪三酸化硫黄-ピリジン錯体を用いた親水化処理≫
三酸化硫黄-ピリジン錯体を用いた処理においては、ジメチルスルホキシド中でセルロースナノクリスタルと三酸化硫黄-ピリジン錯体を、0~60℃の温度で5~240分反応させることにより、セルロースグルコースユニットの6位の水酸基に硫酸基及び/又はスルホ基を導入する。
三酸化硫黄-ピリジン錯体は、セルロースナノクリスタル1g(固形分)に対して0.5~4gの質量で配合することが好ましい。
反応後、水酸化ナトリウム等のアルカリ性化合物を添加して、セルロースナノクリスタルに導入された硫酸基及び/又はスルホ基をH型からNa型に変換することが、収率を向上する上で好ましい。その後、ジメチルホルムアミド又はイソプロピルアルコールを添加して、遠心分離等によって洗浄した後、透析膜等を用いた濾過処理によって不純物等を除去し、得られた濃縮液を水に分散させることにより、硫酸基及び/又はスルホ基変性セルロースナノクリスタルが調製される。
≪リン酸-尿素を用いた親水化処理≫
リン酸-尿素を用いた親水化処理は、リン酸-尿素を用いてリン酸基を導入する従来公知の処理と同様に行うことができる。具体的には、尿素含有化合物の存在下で、セルロースナノクリスタルとリン酸基含有化合物を、135~180℃の温度で5~120分反応させることによって、セルロースグルコースユニットの水酸基にリン酸基を導入する。
リン酸基含有化合物としては、リン酸、リン酸のリチウム塩、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩等を例示できる。中でもリン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸等を好適に単独または混合して使用できる。リン酸基含有化合物は、セルロースナノクリスタル10g(固形分)に対して10~100mmolの量で添加することが好ましい。
また尿素含有化合物としては、尿素、チオ尿素、ビュウレット、フェニル尿素、ベンジル尿素、ジメチル尿素などを例示できる。中でも尿素を好適に使用できる。尿素含有化合物は、セルロースナノクリスタル10g(固形分)に対して150~200mmolの量で使用することが好ましい。
≪TEMPO触媒を用いた親水化処理≫
TEMPO触媒(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル)を用いた親水化処理は、TEMPO触媒を用いた従来公知の酸化方法と同様に行うことができる。具体的には、硫酸基及び/又はスルホ基を有するセルロースナノクリスタルを、TEMPO触媒(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン 1-オキシル)を介した水系、常温、常圧の条件下で、セルロースグルコースユニットの6位の水酸基をカルボキシル基に酸化する親水化反応を生じさせる。
TEMPO触媒としては、上記2,2,6,6-テトラメチルピペリジン 1-オキシルの他、4-アセトアミドーTEMPO、4-カルボキシーTEMPO、4-フォスフォノキシーTEMPO等のTEMPOの誘導体を用いることもできる。
TEMPO触媒の使用量は、セルロースナノクリスタル(固形分)1gに対して0.01~100mmol、好ましくは0.01~5mmolの量である。
また親水化処理時には、TEMPO触媒と共に、酸化剤、臭化物又はヨウ化物等の共酸化剤を併用することが好適である。
酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸又はそれらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物等公知の酸化剤を例示することができ、特に次亜塩素酸ナトリウムや次亜臭素酸ナトリウムを好適に使用できる。酸化剤は、セルロースナノクリスタル(固形分)1gに対して0.5~500mmol、好ましくは5~50mmolの量である。酸化剤を添加して一定時間が経過した後、更に酸化剤を加えることで追酸化処理することもできる。
また共酸化剤としては、臭化ナトリウム等の臭化アルカリ金属、ヨウ化ナトリウム等のヨウ化物アルカリ金属を好適に使用できる。共酸化剤は、セルロースナノクリスタル(固形分)1gに対して0.1~100mmol、好ましくは0.5~5mmolの量である。
また反応液は、水やアルコール溶媒を反応媒体とすることが好ましい。
親水化処理の反応温度は1~50℃、特に10~50℃の範囲であり、室温であってもよい。また反応時間は1~360分、特に60~240分であることが好ましい。
反応の進行に伴い、セルロース中にカルボキシル基が生成するため、スラリーのpHの低下が認められるが、酸化反応を効率よく進行させるため、水酸化ナトリウム等のpH調整剤を用いてpH9~12の範囲に維持することが望ましい。
<洗浄・解繊処理>
必要により親水化され、硫酸基及び/又はスルホ基等のアニオン官能性基の量が調整されたセルロースナノクリスタルを水洗、或いは水を加えながら遠心分離することによって、親水化処理に用いた酸や触媒等を洗浄する。
次いで、解繊処理を行うことが好ましいが、セルロースナノクリスタルは繊維長が短いことから必ずしも解繊処理を行わなくてもよい。
尚、微細化装置として超高圧ホモジナイザー、ミキサー、グラインダー等を用い、水等を分散媒として解繊処理を行うことにより、解繊と同時に分散液の調製を行ってもよい。
<分散処理>
必要により親水化処理、或いは必要により解繊処理に付されたセルロースナノクリスタルは、固形化(パウダー状になるように噴霧乾燥)されることなく、分散処理に付される。固形化されていないことにより再分散の必要がなく、生産性及び経済性に優れている。また固形化されていないことにより、前述した緻密な自己組織化構造を形成することが可能となり、優れたガスバリア性を発現することが可能になる。
分散処理は超音波分散機、ホモジナイザー、ミキサー等の分散機を好適に使用することができ、また、攪拌棒、攪拌石等による攪拌方法を用いても良い。
水性分散液の分散媒は、アイオノマー樹脂含有水性分散液と同様に水だけでもよいが、水と他のプロトン性極性溶媒との混合溶媒であることが分散性の観点から好適である。このようなプロトン性極性溶媒(プロトン供与性を持つ極性溶媒)としては、これに限定されないが、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ギ酸、ニトロメタン等を例示できる。中でもエタノールを好適に使用することができる。
セルロースナノクリスタル含有水性分散液は、セルロースナノクリスタル(固形分)が0.1~90質量%の範囲で含有されていることが好適であり、固形分2質量%の水分散で、粘度が5.5~40mPa・sec(回転式粘度計、温度30℃、スピンドル回転速度100rpm)、ゼータ電位が-50~-55mVの範囲にあり、取扱い性、塗工性に優れている。また固形分2質量%の水分散で、可視光線透過率が45%T以上と透明性に優れている。
[樹脂組成物の調製]
本発明の樹脂組成物においては、上述したアイオノマー樹脂含有水性分散液及びセルロースナノクリスタル含有水性分散液を、アイオノマー樹脂及びセルロースナノクリスタルの固形分割合(質量比)が、99.7:0.3~60:40、特に99:1~70:30となるように混合することが好適である。これにより、前述した量でセルロースナノクリスタル及びアイオノマー樹脂を含有する樹脂組成物を調製することが可能となる。
また樹脂組成物には、上記アイオノマー樹脂含有水性分液及びセルロースナノクリスタル含有水性分散液と共に、層状無機化合物、水酸基含有高分子、反応性架橋剤等を含有することもでき、これにより、高湿度条件下においても優れたガスバリア性を発現することができる。
すなわち、層状無機化合物は、膨潤性及び劈開性を有することから、セルロースナノクリスタルが無機層状化合物の層間を広げるように入り込んで複合化し、層状無機化合物により得られる透過ガスの迂回効果と、セルロースナノクリスタルによる架橋構造とが相俟って、高湿度条件下でも優れたガスバリア性を発現することが可能になる。水酸基含有高分子は、セルロースナノクリスタルと共に緻密な架橋構造を形成することができ、得られる塗膜のガスバリア性が顕著に向上される。
層状無機化合物としては、天然又は合成したもの、親水性又は疎水性を示し、溶媒により膨潤して劈開性を示す従来公知のものを使用でき、これに限定されないが、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、モンモリロナイト、ヘクトライト、マイカ、テトラシリックマイカ、ナトリウムテニオライト、白雲母、マーガライト、タルク、バーミキュライト、金雲母、ザンソフィライト、緑泥石等を例示することができ、合成マイカ(親水性膨潤性)を好適に使用することができる。
水酸基含有高分子としては、ポリビニルアルコール、酢酸ビニルアルコール共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、カルボキシルメチルセルロース、澱粉等を例示できるが、ポリビニルアルコールを好適に使用することができる。
反応性架橋剤としては、セルロースナノクリスタルがアニオン性官能基を含有することから、酸性条件下でも凝集することなく安定して分散可能であるため、反応効率の良い多価カルボン酸を使用することができる。多価カルボン酸としては、クエン酸、シュウ酸、マロン酸等のアルキルジカルボン酸、テレフタル酸、マレイン酸等の芳香族ジカルボン酸、或いはこれらの無水物等を例示することができ、特に無水クエン酸を好適に使用することができる。
層状無機化合物は、セルロースナノクリスタル(固形分)100質量部に対して0.1~50質量部の量で配合されていることが好ましい。
水酸基含有高分子は、セルロースナノクリスタル(固形分)100質量部に対して0.1~50質量部の量で配合されていることが好ましい。
反応性架橋剤である多価カルボン酸は、セルロースナノクリスタル(固形分)100質量部に対して0.1~50質量部の量で配合されていることが好ましい。
また多価カルボン酸から成る架橋剤と共に酸触媒を含有することが好ましく、酸触媒は、セルロースナノクリスタル100質量部(固形分)に対して0.01~10質量部の範囲で配合されていることが好ましい。
更に本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、耐水化剤、金属塩、コロイダルシリカ、アルミナゾル、酸化チタン、微粒子、pH調整剤、抗菌剤、抗ウィルス剤、防腐剤等、公知の添加剤を配合することができる。
また、必要に応じて、ポリエチレンイミン、ポリウレタン等のカチオン性樹脂からなるアンカー層上に本発明の樹脂組成物を形成してもよく、アンカー層と本発明の樹脂組成物は混合層を形成することもできる。
(積層紙)
本発明の積層紙は、紙製基材の少なくとも一方の表面に、上述した樹脂組成物から成る被覆層が形成されていることが重要な特徴であり、優れた耐水性、ヒートシール性及び加工負荷耐性を有している。本発明の樹脂組成物を用いることにより、積層紙や後述する紙製容器において従来は用いられていた樹脂フィルムを用いずに耐水性、ヒートシール性を発現させることができる。
また本発明の紙製基材において被覆層に含有されるセルロースナノクリスタルは、バイオマスで多糖由来の構造を持つことから生分解性を有している。セルロースナノクリスタルが有するセルロース主鎖は水との加水分解反応やセルラーゼ等の酵素や微生物等によって生分解され、最終的に水や二酸化炭素になる。それらは植物や樹木などのバイオマスが利用し、さらにはバイオマス材からセルロースナノクリスタルの原料となるパルプ等が作られるといった循環サイクルが形成されていることから、本発明においては、紙製基材の優れた生分解性と相俟って、生分解性やバイオマス由来材の観点で材料の持続性や環境側面からも優れている。
更にセルロースナノクリスタルは、アニオン性官能基を有するセルロースナノファイバーに比べて耐熱性に優れるという特徴を有しているため、積層紙や後述する紙製容器の成形工程における押出ラミネート工程や、ヒートシール工程等の200℃を超える温度で加熱処理された場合にも樹脂組成物の熱劣化のおそれがなく、ピンホールの発生を抑制することで優れた耐水性、ヒートシール性、バリア性及び加工負荷耐性を有する紙製容器を提供することが可能となる。
更にセルロースナノクリスタルは、セルロースナノフィバーに比べて繊維長が短く微分散に優れるという特徴を有するため、積層紙や後述する紙製容器は更に、屈曲耐性にも優れているという特徴を有している。そのため、紙製容器の成形に際して、後述する図4に示すように、胴部材と底部材の接合や、フランジ加工(カール加工)のために積層紙を屈曲させる場合にも、樹脂組成物の損傷がなく、優れた耐水性、ヒートシール性及び加工負荷耐性を有する紙製容器を提供することが可能になる。
紙製基材としては、積層紙の用途や所望の剛性等に応じて任意の紙を使用することができる。例えば、上質紙、模造紙、アート紙、コート紙、純白ロール紙、クラフト紙、耐水性を高めたラベル用紙、コップ原紙、カード紙、アイボリー紙、マニラボールなどの板紙、ミルクカートン原紙、カップ原紙、合成紙、クレイコート紙、耐水紙、耐酸紙等の公知の紙を使用することができる。
紙製基材の厚みは、50~450μmの範囲にあることが好ましく、図4に示すようなカップ型容器を成形する場合には、150~400μmの範囲にあることが好ましい。また紙製基材の坪量は、100~400g/m、特に150~350g/mの範囲にあることが好ましい。
本発明の積層紙において、上記樹脂組成物から成る被覆層の厚みは、特に限定されないが、上記紙製基材に固形分(セルロースナノクリスタル及びアイオノマー樹脂)が1m当たり0.1~50g、特に1~20gとなるように塗工されていることが好適である。
また被覆層は、前述した通り、アイオノマー樹脂とセルロースナノクリスタルが、質量比で99.7:0.3~60:40、特に99:1~70:30となるように含有されていることが好適である。
本発明の積層紙は、紙製基材の少なくとも一方の表面に、耐水性、ヒートシール性及び加工負荷耐性に優れた上述した樹脂組成物から成る被覆層が形成されているので、特に他の層を形成しなくても容器等の成形に十分対応できるものであるが、オレフィン系樹脂等の疎水性熱可塑性樹脂から成る層、澱粉系樹脂やポリビニルアルコール系樹脂等の親水性樹脂から成る層、接着層、或いはバリア層等、他の層を有していてももちろんよい。
本発明の積層紙においては、紙製基材上に形成された被覆層に対して、バーコビッチ型圧子を用いたナノインデンテーション測定により求めた、弾性率が600~750MPa、特に600~685MPaの範囲にあり、変形回復率が70%、特に70.4%以上であることが好適である。これにより、本発明の積層紙は、過酷な加工に付された場合にも、荷重変形に対して応力集中することなく、塑性変形する割合が低いことから、成形負荷に対して高い耐性を有している。
尚、本発明の積層紙における被覆層の弾性率及び変形回復率は以下のようにして求めることができる。すなわち、図2に示すように、積層紙の被覆層に対してバーコビッチ型圧子を500nm垂直に押しこみ、最大荷重(Pmax)時における最大変位(hmax)、接触深さ(hc)、接触投影面積(圧子と試料が接触する面積)(A)を測定し、次いで除荷したときの塑性変形量(hf)を測定して、図3に示す荷重-変位曲線を作成する。この荷重-変位曲線から被覆層の接触剛性(S=dP/dh)を求め、弾性率を下記式(1)、変形回復率を下記式(2)からそれぞれ求める。
弾性率(MPa)=(π1/2/2)×(S/A1/2) ・・・(1)
変形回復率(%)={(hmax-hf)/hmax}×100 ・・・(2)
本発明の積層紙において、紙製基材への樹脂組成物の塗布方法及び乾燥方法は、従来公知の方法により行うことができ、これに限定されないが、例えばスプレー塗装、浸漬、或いはバーコーター、ロールコーター、グラビアコーター等により塗布することが可能である。また塗膜の乾燥方法としては、温度100~150℃で10秒~1時間の条件で乾燥することが好ましい。また乾燥処理は、オーブン乾燥、赤外線加熱、高周波加熱、熱風乾燥等により行うことができるが、自然乾燥であってもよい。
(紙製容器)
本発明の紙製容器は、胴部と底部から成り、少なくとも底部の内面側に、前述した樹脂組成物から成る層が形成されている容器であることが重要な特徴である。すなわち、本発明の樹脂組成物から成る被覆層は、前述した通り、底絞り成形のような被覆層に成形負荷を与える加工を行っても、ピンホールの発生が有効に防止されていることから、ピンホールが発生しやすい底部内面に少なくとも形成されていることが必須である。またこの被覆層は耐水性及びヒートシール性にも優れているので、底部内面のみならず、胴部内面、或いは底部及び胴部の外面にも形成されていてももちろんよい。
図4は本発明の紙製容器の一例を説明するための図であり、(A)は用いた積層紙の断面構造を示す図であり、(B)は胴部材及び底部材をそれぞれ示す図であり、(C)は(B)の部材を組み立てた紙製容器の斜視図であり、(D)は(C)のX部分における底部材及び胴部材の接合部分を拡大して示す断面図である。
図4(A)に示す通り、容器成形に用いた積層紙1は、紙製基材2の一方の表面に本発明の樹脂組成物から成る被覆層3が形成され、他方の表面に疎水性熱可塑性樹脂から成る被覆層4が形成されている。図4(B)に示す通り、円板状の積層紙1を、底面11の上面及び立ち上がり部12の外面に本発明の樹脂組成物から成る被覆層3が形成されるように、底絞り成形して、底面11と底面11の周縁から下方に延びる立ち上がり部12を形成する。胴部材20は、軸方向端縁21a,21bを重ね合わせた際に本発明の樹脂組成物から成る被覆層3が容器内側となる面に形成されている。また軸方向端縁21a,21bが接合された胴部材20は底部から飲み口側に向かってテーパー状に広がる筒状に成形される(図4(C)が完成図)。
図4(C)のX部分を拡大して示す図4(D)に示す通り、底部材10の立ち上がり部12の外周面と筒状の胴部材20の底部側端縁の内周面は、いずれも本発明の樹脂組成物から成る被覆層3から成るので、両者はヒートシール性を有しており、熱風等の加熱により接着する。
また積層紙1の被覆層4を本発明の樹脂組成物から成る被覆層3とヒートシール性を有する樹脂から形成することにより、図4(D)に示すように、底部材10の立ち上がり部12を胴部材20の底部側端縁の一端を折り返した折返部22で包み込んで底部材10と胴部材20を熱圧着させることができる。このとき、胴部材20の折返部22の長さは、底部材10の立ち上がり部12の高さの長さと同程度に形成されており、底部と胴部が全周にわたって接着される。
本発明の紙製容器においては、耐水性に優れた樹脂組成物から成る被覆層を有することから必ずしも必要ではないが、前述した積層紙を、容器内側となる側に紙製基材が露出しないように端面処理を行うことが好適である。
このような端面処理としては、エッジプロテクトテープによる端縁の被覆処理、保護コート面を端面に施す被覆処理、スカイブヘミング処理等、従来公知の方法により行うことができるが、スカイブヘミング処理によることが好適である。
本発明の紙製容器は、前述したとおり、紙製基材の少なくとも底部の内面側に、本発明の樹脂被覆層から成る被覆層が形成されている限り、種々の形態をとることができ、これに限定されないが、カップ型容器、トレイ型容器、カートン型容器等、従来より紙容器として公知の形態をとることができる。
本発明の紙製容器は、紙製基材の少なくとも底部内面側、或いは更に胴部内面側に、ガスバリア性樹脂組成物から成る被覆層上に本発明の樹脂組成物を形成することもでき、ガスバリア性樹脂組成物の特性に応じたガスバリア性を発現することが可能となる。
以下に本発明の実施例を説明する。なお、以下の実施例は本発明の一例であり、本発明はこれらの実施例には限定されない。各項目の測定方法は、次の通りである。
<アニオン性官能基量>
アニオン性官能基含有セルロースナノクリスタル(以下、「CNC」ということがある)の分散液を秤量し、イオン交換水を加えて100mlに調整した。このアニオン性官能基含有CNC分散液に陽イオン交換樹脂を0.1g加えて攪拌処理した。その後ろ過を行い陽イオン交換樹脂とアニオン性官能基含有CNC分散液を分離した。陽イオン交換後の分散液に対して電位差自動滴定装置(京都電子社製)を用いて0.05M水酸化ナトリウム溶液を滴下し、アニオン性官能基含有CNCの分散液が示す電気伝導度の変化を計測した。得られた伝導度曲線からアニオン性官能基の中和の為に消費された水酸化ナトリウム滴定量を求め、下記式(1)を用いてアニオン性官能基量(mmol/g)を算出した。
アニオン性官能基量(mmol/g)=アニオン性官能基の中和の為に消費した水酸化ナトリウム滴定量(ml)×前記水酸化ナトリウム濃度(mmol/ml)÷アニオン性官能基含有CNCの固形質量(g)・・・(1)
<クライオSEM測定>
試料を分取して凍結破断し、冷却状態を維持したまま破断面をFIBによって断面処理し、昇華させた後の断面の形態についてFIB-SEM観察を行った。分析装置及び測定条件は以下に示す。
装置:FEI,Helios NanoLab 600,Helios G4 UX
加速電圧:FIB 30kv、SEM1~2kv
観察像:反射電子像
FIB加工温度:-160℃(設定値)
観察温度:-80℃(設定値)
<パルスNMR測定>
ガラス製の試験管に試料を約1mL充填後、CPMG法を用いて30℃における試料の自由誘導減衰(M(t))を下記条件で測定解析し、各成分の緩和時間を求めた。
装置:Bruker社 TD-NMR(the minispec mq20)
測定法:CPMG法
観測核種:
90°パルス幅:2.1μm
積算回数:32回
測定温度:30℃(装置温度が設定温度に達してから15分後にサンプル内部温度が測定温度になるように装置温度を調整し、測定を開始した)
繰り返し時間:2sec
解析方法:下記式を用いて解析ソフト(TDNMR-A)によりフィッティングした。緩和時間が短い成分の緩和時間を表すT(S)及び緩和時間が長い成分の緩和時間を表すT(L)を求めた。
M(t)=α・exp(-(1/Wa)(t/Tα))+β・exp(-(1/Wa)(t/Tβ))
α:成分(α)のプロトン比率(%)
α:成分(α)のT緩和時間(msec)
β:成分(β)のプロトン比率(%)
β:成分(β)のT緩和時間(msec)
t:観測時間(msec)
Wa:形状係数(1<Wa<2)
<ナノインデンテーション測定>
試料を1cm角に切り出し、固定用樹脂にてスライドガラスに貼り付けたものをナノインデンテーション測定用試料として以下の条件で測定を行い、弾性率(MPa)及び変形回復率(%)を求めた。3回測定し各測定値を平均値で求めた。また測定した箇所は表面に紙の繊維露出が少ない箇所を選んで測定した。
ナノインデンター:Hysitron inc.,Triboindenter
使用圧子:Berkovich(三角錐型)
測定方法:単一押し込み
温度:室温
押し込み深さ:500nm
押し込み速度:100nm/sec
変形回復率(%)=(最大変位(nm)―塑性変形量(nm))/最大変位(nm)×100
<スクリーニング試験によるピンホールテスト>
積層紙を360度に折り返し処理を行い、平面状に戻してからヨード液を屈曲部分に塗布し、着色された部位をピンホールの発生部位と評価した。ピンホールの発生部位が1箇所以下であった場合を良好、2箇所以上確認された場合を不良と評価した。
<紙コップ成形機によるピンホールテスト>
紙コップ成形機を用いて積層紙を成形し、ヨード液を屈曲部分に塗布し、着色された部位をピンホールの発生部位とした。ピンホール発生率は以下の計算式で数値を出し、2未満を良好、2以上を不良とし評価した。
ピンホール発生率=ピンホールの発生部位数/テスト回数
<ストログラフによるピンホールテスト>
積層紙をMD方向15mm×CD方向220mmにカットしてストログラフにセットし、チャック間距離180mm、引張速度20m/minの条件で5%伸び率の変位量まで引張った。その後、積層紙の表面にヨード液を塗布し、着色された部位をピンホールの発生部位とし、ピンホールの発生部位が0箇所であった場合を良好、1箇所以上確認された場合を不良として評価した。
<実施例1>
<水に分散したセルロースナノクリスタル分散液の調製>
パルプを64質量%の硫酸で分解処理及び精製処理したものを乾燥処理した。得られたアニオン性官能基含有セルロースナノクリスタルにイオン交換水を加えてミキサーで分散処理することで、アニオン性官能基含有セルロースナノクリスタル分散液を得た。前記アニオン性官能基含有セルロースナノクリスタルのアニオン性官能基量は0.17mmol/gであった。また前記分散液はネマティック液晶及び/又はキラルネマティック液晶屈折像に由来する複屈折を確認することができた。
<樹脂組成物の調製>
エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体アイオノマー樹脂(固形分含有量=35質量%)の水分散液にイソプロパノール(5質量%)を添加し、更に、前記セルロースナノクリスタル含有分散液(固形分含有量=0.5質量%)を添加して分散処理(ミキサー)を行い、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂及びセルロースナノクリスタルを含有する樹脂組成物を得た。
<積層紙の調製>
紙製基材(坪量200g/m)の片面に、前記樹脂組成物を用いてバーコーターによって数回塗布し、130℃において50秒以上乾燥し、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂及びセルロースナノクリスタルを含有する樹脂組成物から成る層(厚み10μm)が形成された積層紙を調製した。
<底部材及び胴部材の調製>
前記積層体を抜き型で打ち抜いて底部材および胴部材を作製した。
<紙製容器の調製>
紙コップ成形機を用いて、前記胴部材及び底部材を送り出して胴部及び底部を貼り合わせ、更にフランジ加工を行い、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂及びセルロースナノクリスタルを含有する樹脂組成物から成る層が形成されていることを特徴とする紙製容器を調製した。
<実施例2>
前記セルロースナノクリスタル含有分散液(固形分含有量=1.0質量%)を添加した以外は実施例1と同様に処理を行い、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂及びセルロースナノクリスタルを含有する樹脂組成物、積層紙、紙製容器を調製した。
<実施例3>
前記セルロースナノクリスタル含有分散液(固形分含有量=5質量%)を添加した以外は実施例1と同様に処理を行い、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂及びセルロースナノクリスタルを含有する樹脂組成物、積層紙、紙製容器を調製した。
<比較例1>
前記セルロースナノクリスタル含有分散液を添加しなかった以外は実施例1と同様に処理を行い、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂を含有する樹脂組成物、積層紙、紙製容器を調製した。
<比較例2>
パルプを超高圧ホモジナイザーで解繊処理して調製したセルロースナノファイバー分散液(固形分含有量=1質量%)を添加した以外は実施例1と同様に処理を行い、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂及びセルロースナノファイバーを含有する樹脂組成物、積層紙、紙製容器を調製した。
<比較例3>
針葉樹クラフトパルプ10g(固形量)に対しTEMPO触媒(Sigma Aldrich社製)0.8mmolと臭化ナトリウム12.1mmolを添加し、イオン交換水を加えて1Lにメスアップし、均一に分散するまで攪拌した。反応系にセルロース1g当たり15mmolの次亜塩素酸ナトリウムを添加し、酸化反応を開始した。反応中は0.5N水酸化ナトリム水溶液でpH10.0から10.5に系内のpHを保持し、30℃で4時間酸化反応を行った。酸化したセルロースはイオン交換水を加えながら高速冷却遠心分離機(16500rpm,10分)を用いて中性になるまで十分洗浄を行った。洗浄したセルロースに水を加えてミキサー(7011JBB,大阪ケミカル株式会社製)で解繊処理し、1質量%のセルロースナノファイバー分散液を得た。
前記セルロースナノファイバー分散液(固形分含有量=0.3質量%)を添加した以外は比較例2と同様に処理を行い、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂及びセルロースナノファイバーを含有する樹脂組成物、積層紙、紙製容器を調製した。
本発明の樹脂組成物は、優れた耐水性、ヒートシール性、バリア性及び加工負荷耐性を有する塗膜を形成可能であることから、紙製基材の被覆層として好適に使用することができる。またこの紙製基材から成形される紙製容器は、ピンホールの発生が有効に抑制され、優れた耐水性を有することから紙コップなどの飲料用の紙製容器として好適に使用することができる。

Claims (15)

  1. エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂含有水性分散液、及びセルロースナノクリスタル含有水性分散液を含有して成り、パルスNMR測定における緩和時間T(S)が17msec未満であり、T(L)が75msec未満であることを特徴とする樹脂組成物。
  2. 前記セルロースナノクリスタル(固形分)の含有量が0.1~20質量%である請求項1記載の樹脂組成物。
  3. 前記セルロースナノクリスタルが、アニオン性官能基を0.01~4.0mmol/gの量で含有する請求項1又は2記載の樹脂組成物。
  4. 前記アニオン性官能基が、硫酸処理に由来する硫酸基及び/又はスルホ基を少なくとも含有する請求項3記載の樹脂組成物。
  5. 前記セルロースナノクリスタル含有水性分散液の分散媒が、水又は水と他のプロトン性極性溶媒の混合溶媒である請求項1~4の何れかに記載の樹脂組成物。
  6. 前記エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂(固形分)の含有量が26.6~33.2質量%である請求項1~5の何れかに記載の樹脂組成物。
  7. 紙製基材の少なくとも一方の面に、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂及びセルロースナノクリスタルを含有する樹脂組成物から成る層が形成されていることを特徴とする積層紙。
  8. 前記樹脂組成物から成る層を、バーコビッチ型圧子で500nm荷重した後に除荷したときの弾性率が600~750MPaであり、弾性回復率が70%以上である請求項7記載の積層紙。
  9. 前記セルロースナノクリスタルが、アニオン性官能基を0.01~4.0mmol/gの量で含有する請求項7又は8記載の積層紙。
  10. 前記アニオン性官能基が、硫酸処理に由来する硫酸基及び/又はスルホ基を少なくとも含有する請求項9記載の積層紙。
  11. 前記樹脂組成物が、前記エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂及び前記セルロースナノクリスタルを、99.7:0.3~60:40(質量比)で含有する請求項7~10の何れかに記載の積層紙。
  12. 胴部及び底部から成る紙製容器であって、少なくとも前記底部の内面側に、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂及びセルロースナノクリスタルを含有する樹脂組成物から成る層が形成されていることを特徴とする紙製容器。
  13. 前記樹脂組成物から成る層を、バーコビッチ型圧子で500nm荷重した後に除荷したときの弾性率が600~750MPaであり、弾性回復率が70%以上である請求項12記載の紙製容器。
  14. 前記セルロースナノクリスタルがアニオン性官能基を0.01~4.0mmol/gの量で含有し、該アニオン性官能基が硫酸処理に由来する硫酸基及び/又はスルホ基を少なくとも含有する請求項12又は13記載の紙製容器。
  15. 前記樹脂組成物が、前記エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマー樹脂及び前記セルロースナノクリスタルを、99.7:0.3~60:40(質量比)で含有する請求項12~14の何れかに記載の紙製容器。
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