JP2019177586A - バリア紙 - Google Patents

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椎名 徳之
Tokuyuki Shiina
徳之 椎名
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Abstract

【課題】紙基材およびセルロースナノファイバーを含むバリア層と、更にバリア層の上に水溶性高分子からなるコート層を形成する事により樹脂、特にポリオレフィンとの密着性を向上し、成型性、容器適性に優れるバリア紙を提供する。【解決手段】紙基材1と、紙基材1上に形成された少なくともセルロースナノファイバーを含むバリア層2と、その上に水溶性高分子からなるコート層3が形成されているバリア紙10。また、コート層3がポリエチレンイミン系、有機チタン系またはポリブタジエン系の少なくともいずれか1種である。【選択図】図1

Description

本発明は、食品包装に使用するバリア紙に関する。
食品をはじめとする包装材料は、内容物を保護するために、酸素等の気体を遮断するガスバリア性が求められる。
このようなバリア材料としては、アルミニウム箔やポリ塩化ビニリデン(PVDC)のほか、蒸着フィルムが用いられてきた。しかしながら、アルミニウム箔は焼却残渣の問題があり、また、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)は焼却時にダイオキシンが発生するという問題があった。さらにアルミ蒸着フィルムやシリカ蒸着フィルムは高いバリア性を有し、燃焼時も焼却残渣は少ないものの、比較的価格が高いため包材コストが上がってしまう傾向があった。このように焼却残渣や有害物質の発生が無いアルミニウム箔やポリ塩化ビニリデンを用いない、より低コストな材料としては、ポリビニルアルコールやエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)が用いられる事があった(特許文献1参照)。
一方、近年、天然木材由来の材料としてセルロースナノファイバーを用いたバリア材料開発が進められている。セルロースナノファイバーの特徴としては、天然木材由来のため生分解性を有している事、また、様々な樹脂、コーティング材料の機能性を高める事が報告されている(特許文献2、3参照)。このセルロースナノファイバーは、例えば、水系溶剤下常温常圧で2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシラジカル(TEMPO)触媒酸化反応によって、結晶構造、結晶化度、結晶サイズをほとんど変化させることなくTEMPO酸化セルロースを造ることができる。これを解繊処理して得られるセルロースナノファイバー(特許文献4参照)等が知られている。このセルロースナノファイバーから調整されたコート剤を基材上に塗布することにより、バリア性を有する材料が得られる。
特開平7−164591号公報 特開2010−125814号公報 特開2017−210595号公報 特開2008−308802号公報
セルロースナノファイバーを含むバリア層は、水酸基等の極性基を多く含むため、その上に積層される樹脂によっては、例えばポリオレフィン系樹脂などの極性が低い樹脂との相互作用が小さく密着性が低くなる傾向がある。密着性が低いと、その後の容器成型工程において、層間剥がれに伴う、漏れや成型不良の原因となる。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、紙基材およびセルロースナノファイバーを含むバリア層と、更にバリア層の上に水溶性高分子からなるコート層を形成する事により樹脂、特にポリオレフィンとの密着性を向上し、成型性、容器適性に優れるバリア紙を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、紙基材と、前記紙基材上に形成されたバリア層にセルロースナノファイバーが含まれている事を特徴とするバリア紙。
また、前記バリア層上に、水溶性高分子からなるコート層が形成され、該コート層がポリエチレンイミン系、有機チタン系またはポリブタジエン系の少なくともいずれか1種を含む事を特徴とするバリア紙。
更に、前期水溶性高分子からなるコート層の塗布量が0.5g/m以上10.0g/m以下であることを特徴とするバリア紙。
また、紙基材上に、少なくともセルロースナノファイバーを含むバリア層を形成する工程と、バリア層上に水溶性高分子として、ポリエチレンイミン系、有機チタン系またはポリブタジエン系の少なくとも1種類を含むコート層を形成する工程からなる事を特徴とするバリア紙の製造方法。
本発明によれば、セルロースナノファイバーを含むバリア層を有し、且つ、そのバリア層上に形成される水溶性高分子からなるコート層が、ポリエチレンイミン系、有機チタン系またはポリブタジエン系の少なくともいずれか1種を含み、該コート層の塗工量が0.5g/m以上10.0g/m以下であるコート層が形成されることにより、コート層の上に形成される樹脂層との密着強度に優れるバリア紙を提供することができる。また、該コート層の塗工量がこの範囲であれば、コート面がタックフリーとなるため、オフラインでも、コート層の上にオレフィン系の樹脂を押出しラミネートする事ができる。
本発明の実施形態に係るバリア紙を模式的に示す断面図である。
以下、図面を参照して本発明を適用した実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の実施形態の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の積層体の寸法関係とは異なる場合がある。
[バリア紙]
図1は、本発明の実施形態に係るバリア紙を模式的に示す断面図である。
本実施形態に係るバリア紙10は、図1に示すように、紙基材1と、紙基材1上、すなわち、紙基材1の一方の面に形成されたセルロースナノファイバーを含むバリア層2と、バリア層2の上に水溶性高分子からなるコート層3を有する。
紙基材1は、特に限定されず、用途に応じて、印刷用紙や包装用紙から適宜選択することができる。紙基材1としては、例えば、グラシン紙、パーチメント紙、上級印刷用紙、中級印刷用紙、下級印刷用紙、薄葉印刷紙、色上質紙、アート紙、コート紙、クラフト紙、段ボール原紙、コートボール、アイボリー紙、カード紙、カップ原紙等が挙げられる。
紙基材1は、坪量が400g/m以下であることが好ましく、更に坪量が320g/m以上400g/m以下であることがさらに好ましい。
紙基材1の坪量が400g/m以下であれば、ラミネート加工や成型加工も可能で成型容器としての強度も十分維持できる。
また、紙基材1の坪量が320g/m以下であれば、さまざまなサイズの成型容器に適用が可能で、且つ強度も十分維持する事が出来る。
バリア層2の厚みは、特に限定されないが、乾燥膜厚で0.2μm以上30μm以下であることが好ましい。バリア層2の厚みが0.2μm以上であれば、バリア層2に抄きムラに伴う紙の地合いを十分に埋める事が出来、且つ十分な強度が得られる。バリア層2の厚みが30μm以下であれば、屈曲に伴うクラック発生を抑える事が出来る。
バリア層2を構成するセルロースナノファイバーとしては、天然セルロースが用いられる。天然セルロースとしては、例えば、針葉樹や広葉樹等から得られる各種木材パルプ、ケナフ、バガス、ワラ、竹、綿、海藻等から得られる非木材パルプ、微生物が生産するセルロース等が挙げられる。
セルロースナノファイバーの繊維幅は、1nm以上150nm以下であることが好ましく、15nm以上100nm以下であることがより好ましい。
セルロースナノファイバーの繊維幅が上記の範囲内であれば、繊維間が緻密な構造となるため、ガスバリア性に優れる。また、セルロースナノファイバーの繊維幅が15nm以上100nm以下の範囲内であれば、セルロースナノファイバー間がより密となりさらなるバリア性を有するバリア層2が形成できる。
このようなセルロースナノファイバーの繊維径の測定方法としては、原子間力顕微鏡(AFM)や走査型電子顕微鏡(SEM)等の装置を用いて、任意の多数のセルロースナノファイバーの形状の観察を行って繊維径を測定し、その測定値を平均する方法や、粒度分布計等の装置を用いて、セルロースナノファイバーを含む塗液の粒径測定の結果から計測する方法が用いられる。
また、セルロースナノファイバーとしては、必要に応じて化学処理したものを用いることもできる。
化学処理方法としては、特に限定されないが、例えば、セルロースのC6位の水酸基がカルボキシル化されたセルロースナノファイバーを作製するためには、TEMPO触媒を用い、pHを調整しながら酸化剤を用いて、セルロースナノファイバーを酸化処理することによりカルボキシル化処理、アルカリ処理、オゾン処理、アニオン変性する方法が挙げられる。
バリア層2の厚みは、特に限定されないが、乾燥膜厚で0.2μm以上30μm以下であることが好ましい。バリア層2の厚みが0.2μm以上であれば、バリア層2に抄きムラに伴う紙の地合いを十分に埋める事が出来、且つ十分な強度が得られる。バリア層2の厚みが30μm以下であれば、屈曲に伴うクラック発生を抑える事が出来る。
バリア層2におけるセルロースナノファイバーの含有量は50質量%以上であることが好ましい。セルロースナノファイバーの含有量が50質量%以上であると、バリア層2として良好なバリア性が発現する。
セルロースナノファイバーの塗膜内の状態については、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM、商品名:S−4800、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いた表面観察で確認する事が出来る。
セルロースナノファイバーを含むバリア層2は、繊維間に生じる間隙の数や大きさが小さいほど、セルロースナノファイバーの絡み合いが密になることで、バリア層2内への水蒸気や汚れ等の劣化因子の浸入・浸透を抑制し、屈曲等によるバリア層2のガスバリア性の低下を抑制することができる。
本実施形態に係るバリア紙10では、バリア層2に含まれるセルロースナノファイバー間に存在する間隙を充填することのできる材料として、バリア層2に、セルロースと相性のよい、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、デンプン、ペクチン、アルギン酸等を含む事で、バリア層2は、水蒸気や汚れ等の劣化因子の浸入・浸透を抑制し、その結果、屈曲等によるガスバリア性の低下が小さくなる。
次にバリア層2の上に形成される水溶性高分子からなるコート層3は、少なくともポリエチレンイミン系、有機チタン系、ポリブチレン系を1種以上含めば、例えば、水溶性アクリルポリマー、水溶性ウレタンポリマー等の水溶性高分子を含んでも良い。
これらの水溶性高分子は、成膜性、透明性、柔軟性等に優れ、且つ、下部に位置するバリア層との相性もよいため、密着性に関しては問題ない。
更に、塗布量を0.5g/m以上10.0g/m以下、更には0.5g/m以上、8.0g/m以下が望ましい。この範囲であれば、べたつきの無いタックフリーな塗膜を形成するため、コート層3を形成後、一旦巻き取った後、オフラインでオレフィン系樹脂などの押出しラミネーション加工を行う事が出来る。
本実施形態に係るバリア紙10によれば、以下のような効果が得られる。すなわち、バリア層2に含まれるセルロースナノファイバーを含む事により、ガスの進入を抑制することができるバリア紙10を提供することができる。また、バリア層2の上に水溶性高分子として、ポリエチレンイミン系、有機チタン系またはポリブタジエン系の少なくともいずれか1種を含み、該コート層の塗工量が0.5g/m以上10.0g/m以下であるコート層が形成されることにより、コート層上部に形成される樹脂層との密着性が向上し、密着強度に優れるバリア紙を提供することができる。
[バリア紙の製造方法]
図1を参照して、本実施形態に係るバリア紙10の製造方法について説明する。
始めに、セルロースナノファイバーを微細化(解繊)する(セルロースナノファイバーの微細化工程)。
セルロースナノファイバーの微細化方法としては、特に限定されず、例えば、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、グラインダー磨砕、凍結粉砕、メディアミル等の分散装置を用いた解繊処理が挙げられる。
また、解繊処理を行う前工程として、セルロースナノファイバーに上述の化学処理を施してもよい。解繊処理や化学処理の処理度を任意に制御することにより、所望の繊維形状や粒子径を有するセルロースナノファイバーを得ることができる。
また、セルロースナノファイバーの微細化処理とともに、上述のセルロースナノファイバーの化学処理を行ってもよい。
このとき、セルロースナノファイバーの分散液に、上述の化学処理に用いられる化合物を添加し、その分散液を用いて、セルロースナノファイバーの微細化処理と化学処理を行う。
[バリア塗工液の調製工程]
次にセルロースナノファイバーの微細化工程で得られた、微細化されたセルロースナノファイバーを用いる場合、予めそのセルロースナノファイバーを水に分散させて、セルロースナノファイバーを含む分散液を調製する。
このバリア塗工液の調製工程では、バリア塗工液のpHを調整することが好ましい。バリア塗工液のpHは、3以上7以下であることが好ましい。バリア塗工液のpHが3以上であれば、バリア塗工液中でセルロースナノファイバーが凝集することを防止できる。バリア塗工液のpHが7以下であれば、セルロースナノファイバーに含まれる水酸基やカルボキシ基が解離することを防止できる。
このバリア塗工液の調製工程では、セルロースナノファイバーを含む分散液と、前期のポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、デンプン、ペクチン、アルギン酸等を含む水溶液とを混合して、バリア塗工液を調製することが好ましい。
セルロースナノファイバーを含む分散液と、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、デンプン、ペクチン、アルギン酸等を含む水溶液とを混合する場合、上述の通り、セルロースナノファイバー(A)と、上記物質(B)との質量比((A)/(B))が、50/50〜99/1であることが好ましい。
[バリア塗膜の形成工程]
次に、上述のバリア塗工液の調製工程で得られたバリア塗工液を、紙基材1の一方の面に塗布して、紙基材1の一方の面にそのバリア塗工液からなるバリア塗膜を形成する。
紙基材1の一方の面に、バリア塗工液を塗布する方法としては、特に限定されず、公知の塗工方法を用いることができる。塗工方法としては、例えば、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーター等の塗工装置を用いた方法が挙げられる。
[バリア層の形成工程]
次に、上述のバリア塗工液の調製工程で得られた塗膜を乾燥して、バリア層2を形成する。これにより、紙基材1と、紙基材1の一方の面に形成されたセルロースナノファイバーを含むバリア層2を形成する。
紙基材1の一方の面に塗工した塗膜の乾燥方法としては、自然乾燥、送風乾燥、熱風乾燥、UV乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等が挙げられる。
乾燥温度は、100℃〜160℃であることが好ましい。乾燥温度が100℃以上であれば、バリア層2の強度、セルロースナノファイバー同士、またはセルロースナノファイバーと紙基材1の一方の面の間で密着性が向上する。また、塗膜内の水分が抜けるため、セルロース同士の水素結合が増えて、バリア層2の凝集力が高くなり、耐屈曲性が向上する。一方、乾燥温度が160℃以下であれば、バリア層2が熱により劣化して変色することを防止できる。
[水溶性高分子からなるコート層の形成構成]
水溶性高分子からなるコート層3は、該コート層3が少なくともポリエチレンイミン系、もしくは有機チタン系、もしくはポリブタジエン系のいずれか1種を含む。その他、塗膜強度を上げるために、水溶性アクリルポリマー、水溶性ウレタンポリマー等の水溶性高分子を含んでも良い。溶剤としては、水を主成分として補助溶剤としてメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤も用いることができる。
この液を塗布する方法としては、バリア塗膜の塗布方法と同様、公知の塗工方法を用いることができる。塗工方法としては、例えば、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーター等の塗工装置を用いた方法が挙げられる。これら塗工後、乾燥工程により水溶性高分子からなるコート層3を形成する。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
[セルロースナノファイバーを含む分散液の調製方法]
漂白クラフトパルプ10gを膨潤させ漂白クラフトパルプを含む水を20℃に温度調整、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペジニルオキシラジカル0.1gと、臭化ナトリウム1gとを添加し、パルプ懸濁液を調製し、さらに、パルプ懸濁液を攪拌しながら、ここにセルロース質量当たり10mmol/gの次亜塩素酸ナトリウムを添加した。
このとき、パルプ懸濁液に約1Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加して、パルプ懸濁液のpHを約10.5に保持した。
240分間酸化反応を行った後、パルプ懸濁液をろ過し、回収物を十分に水洗して、パルプを得た。
得られたパルプにイオン交換水を加えて、固形分濃度が1質量%となるように調整し、高速回転ミキサーを用いて約60分間攪拌し、透明なセルロースナノファイバーを含む分散液1を得た。
[評価1]
分散液に含まれるセルロースナノファイバーの平均繊維径を、以下に示す方法で測定した。
セルロースナノファイバーの平均繊維径の測定は、上述のセルロースナノファイバーを含む分散液を、レーザー回折式粒度分布測定装置(商品名:SALD−7500nano、島津製作所社製)を用いて測定した。
その結果、セルロースナノファイバーの平均繊維径は3.14nmであった。
[評価2]
分散液に含まれるセルロースナノファイバーのカルボキシ基量を、以下に示す方法で測定した。
絶乾質量換算で先の0.2gの湿潤酸化セルロースをビーカーに量りとり、蒸留水を加えて60gとした。0.1mol/LのNaCl水溶液を0.5mL加え、0.5mol/Lの塩酸でpHを3とした後、0.5mol/LのNaOH水溶液を滴下して伝導度測定を行った。伝導度測定はpHが11程度になるまで続けた。
弱酸の中和段階に相当する部分がカルボキシ基量となるため、得られた伝導度曲線からNaOHの添加量を読み取ると、カルボキシ基量は1.6mmol/gであった。
[ポリビニルアルコール水溶液の調製方法]
市販のポリビニルアルコール(商品名:PVA−124、クラレ社製)5gをビーカーに量りとり、純水を加えて500gとした。これを100℃に加熱しながら攪拌し、純水にポリビニルアルコールを溶解させて、ポリビニルアルコールの1質量%水溶液を調製した。
[バリア塗工液の調製方法]
前期セルロールナノファイバーを含む分散液とポリビニルアルコール水溶液を重量比で50:50の混合液を作製し、調整液とした。バリア塗工液のpHは4.1に調整した。
[実施例のバリア紙の作製]
耐酸紙(カップ原紙、坪量300g/m2、日本製紙社製)基材上に、上述のように調製したバリア塗工液をバーコート法により塗工して、乾燥後の厚みが1.0μmとなるように塗膜を形成した後、その塗膜を150℃にて10分間乾燥させて、耐酸紙基材上にバリア層が形成されたバリア紙を得た。
続いて、バリア層の上に水溶性高分子からなるコート層を形成するためポリエチレンイミン(商品名:エポミンP-1000、日本触媒製)を溶剤としてメタノールを用い3%水溶液を調整し、バリア層の上に塗工した。塗布量は乾燥重量で0.8g/m2であった。表面はタックフリーでべとつきは無かったため、一旦、ロールとして巻取りを作製した。
続いて、オフラインで押し出しラミネーション法により、コート層の上面にヒートシール層を貼り合わせた。
ヒートシール層の材料としては、日本ポリエチレン社製のポリエチレンLC600Aを用いた。
[比較例のバリア紙の作製]
耐酸紙(カップ原紙、坪量300g/m、日本製紙社製)基材上に、上述のように調製したバリア塗工液をバーコート法により塗工して、乾燥後の厚みが1.0μmとなるように塗膜を形成した後、その塗膜を150℃にて10分間乾燥させて、耐酸紙基材上にバリア層が形成されたバリア紙を得た。その後、一旦、ロールとして巻取りを作製した。
続いて、オフラインで押し出しラミネーション法により、コート層の上面にヒートシール層を貼り合わせた。
ヒートシール層の材料としては、日本ポリエチレン社製のポリエチレンLC600Aを用いた。
[評価3]
実施例と比較例で得られたバリア紙の性能を、下記の方法に従って評価した。
[密着強度の測定]
実施例と比較例のバリア紙を、JIS−K−7127に準拠して、引張り速度300mm/minでT字剥離にて、紙基材とヒートシール層の間の密着強度(N/15mm)を測定した。
結果を表1に示す。
[酸素透過度(等圧法)の測定]
実施例と比較例で得られたバリア紙について、水に浸漬する前後の酸素透過度(cc/m2・day)を、下記の方法に従って測定した。
酸素透過度測定装置MOCON(商品名:OX−TRAN2/21、モダンコントロール社製)を用いて、25℃、40%RHの雰囲気下におけるバリア紙の酸素透過度を測定した。
結果を表1に示す。
Figure 2019177586
表1の結果から、実施例によるバリア層を有するバリア紙は、酸素バリア性を有しつつ密着性も改善されることが分かった。
一方、比較例の水溶性高分子からなるコート層が無いバリア紙は、ヒートシール層の界面で密着性が無く剥離していることが分かった。
以上の結果より、バリア層の上に水溶性高分子からなるコート層を形成する事によりバリア層とヒートシール層の密着性が向上することが分かった。従って、本発明によるバリア紙を用いると紙カップなどの包装容器とした場合、十分な強度を持ち、実用に耐え得ることが分かった。
本発明のバリア紙は、ガスバリア性および耐屈曲性に優れているため、食品やトイレタリー製品、薬品、医療品、電子部材などの容器や包材などの様々な分野へ応用することができる。
1 紙基材
2 バリア層
3 コート層
10 バリア紙

Claims (4)

  1. 紙基材と、前記紙基材上に形成されたバリア層にセルロースナノファイバーが含まれている事を特徴とするバリア紙。
  2. 前記バリア層上に、水溶性高分子からなるコート層が形成され、該コート層がポリエチレンイミン系、有機チタン系またはポリブタジエン系の少なくともいずれか1種を含む事を特徴とする、請求項1に記載のバリア紙。
  3. 前期水溶性高分子からなるコート層の塗布量が0.5g/m以上10.0g/m以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のバリア紙。
  4. 紙基材上に、少なくともセルロースナノファイバーを含むバリア層を形成する工程と、バリア層上に水溶性高分子として、ポリエチレンイミン系、有機チタン系またはポリブタジエン系の少なくとも1種類を含むコート層を形成する工程からなる事を特徴とするバリア紙の製造方法。
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