JP6070015B2 - ガスバリア層形成用塗工液の製造方法、ガスバリア性積層体の製造方法、包装材料の製造方法及びガスバリア層形成用塗工液 - Google Patents

ガスバリア層形成用塗工液の製造方法、ガスバリア性積層体の製造方法、包装材料の製造方法及びガスバリア層形成用塗工液 Download PDF

Info

Publication number
JP6070015B2
JP6070015B2 JP2012212881A JP2012212881A JP6070015B2 JP 6070015 B2 JP6070015 B2 JP 6070015B2 JP 2012212881 A JP2012212881 A JP 2012212881A JP 2012212881 A JP2012212881 A JP 2012212881A JP 6070015 B2 JP6070015 B2 JP 6070015B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
gas barrier
sizing agent
barrier layer
inorganic layered
water
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2012212881A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014065837A (ja
Inventor
宏祐 清水
宏祐 清水
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toppan Inc
Original Assignee
Toppan Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toppan Inc filed Critical Toppan Inc
Priority to JP2012212881A priority Critical patent/JP6070015B2/ja
Publication of JP2014065837A publication Critical patent/JP2014065837A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6070015B2 publication Critical patent/JP6070015B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Polysaccharides And Polysaccharide Derivatives (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)
  • Paints Or Removers (AREA)
  • Wrappers (AREA)

Description

本発明は、酸素等の影響により劣化を受け易い、食品、飲料、薬品、医薬品、電子部品等の精密金属部品の包装材料、ボイル、レトルト殺菌等の高温熱水条件下での処理(加熱殺菌)を必要とするガスバリア性積層体(例えばフィルムないしシート状)を形成するに適したガスバリア層形成用塗工液、ガスバリア性積層体及び包装材料に関する。より詳細には、天然資源であるセルロース系材料を有効活用したガスバリア層形成用塗工液、すなわちセルロース繊維から成る層に、サイズ剤を複合化することで、塗工後の膜が耐湿性に優れ、且つ高湿度環境下においても高い膜強度を示すガスバリア層形成用塗工液、ガスバリア性積層体及び包装材料に関する。
食品や医薬品をはじめとする包装材料分野では、内容物を保護するために、包装材料を透過する酸素や水蒸気などの気体を遮断するガスバリア性が求められる。
従来、ガスバリア性材料としては温度や湿度の影響が少ないアルミニウムやポリ塩化ビニリデンが用いられてきた。しかしながら、これらを焼却処分する際には、アルミニウムにおいては焼却残渣が排気口や炉内部で詰まり焼却効率を下げてしまう問題、ポリ塩化ビニリデンにおいてはダイオキシンが発生してしまう等の問題が生じてしまうため、環境負荷の少ない材料への代替が求められている。例えば、特許文献1にあるように、同じ化石資源からつくられる材料であっても、アルミニウムや塩素を含まないポリビニルアルコールやエチレンビニルアルコール共重合体への一部代替が進められているが、さらに、将来的には、石油由来材料からバイオマス材料への代替が期待されている。
そこで、新たなガスバリア材料としてセルロース系材料が注目されている。地球上で生産されるバイオマス材料の約半分を占めるセルロースは、生分解性を有することに加え、強度、弾性率、寸法安定性、耐熱性、結晶性などの物理特性にも優れているため、機能性材料への応用が期待されている。特に、特許文献2及び3にあるように、2,2,6,6―テトラメチル―1―ピペリジン―N―オキシラジカル(以下TEMPOという。)触媒による酸化反応から得られるセルロースを分散処理して得られるセルロースナノファイバーは、前記セルロース系材料の性質に加え、透明性、乾燥条件下におけるガスバリア性に優れた膜を形成することが知られている。また、特許文献4では、セルロースナノファイバー層の他に防湿層を一層設けたガスバリア性フィルムが報告されている。さらに特許文献5では、水溶性高分子を添加することで屈曲性に優れ、且つ高湿度環境下においても高いガスバリア性を示す積層体が報告されている。
特開平7―164591号公報 特開2008―308802号公報 特開2008―1728号公報 特開2009―57552号公報 特願2010―69573号公報
しかしながら、セルロースナノファイバーから成る膜は、高湿度条件下ではセルロースの吸湿・膨潤により、膜強度などの性能が低下してしまう問題がある。また特許文献5に記載の水溶性高分子を添加したガスバリア性フィルムでは吸湿・膨潤の影響はある程度抑えられるものの十分な効果は得られていないため、上記問題を解決するためにはセルロースナノファイバー膜自体をさらに耐湿化する方法が求められる。
そこで、本発明では、セルロースナノファイバーから成る膜を耐湿化することにより、セルロース膜の優れたガスバリア性を高湿度下でも維持し、劣化因子となる水蒸気などの膜内へ浸入・浸透を抑制し、膜強度の湿度劣化が小さく密着性の高いガスバリア性フィルムを製造することが可能なガスバリア層形成用塗工液、ガスバリア性積層体及び包装材料を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、酸化処理(S1)と、解繊処理(S2)とを施されたセルロースナノファイバー分散液に、水溶性高分子と、無機層状化合物と、サイズ剤とを、添加した(S3)ことを特徴とするガスバリア層形成用塗工液の製造方法である。(図3参照)
また、請求項に記載の発明は、前記水溶性高分子の水溶液に前記無機層状化合物を混合して攪拌する工程(S10)と、前記混合して攪拌された前記水溶液を前記セルロースナノファイバー分散液に添加する工程(S20)と、前記水溶液を添加された前記セルロースナノファイバー分散液に前記サイズ剤を添加する工程(S30)と、を有することを特徴とするガスバリア層形成用塗工液の製造方法である。(図4参照)
また、請求項に記載の発明は、前記水溶性高分子の水溶液に前記無機層状化合物を混合して攪拌する工程(S10)の後、前記混合して攪拌された前記水溶液を加熱する工程(S15)を有することを特徴とするガスバリア層形成用塗工液の製造方法である。(図5参照)
また、請求項に記載の発明は、前記セルロースナノファイバー分散液に前記サイズ剤を添加して混合液を生成する工程(S41)と、前記水溶性高分子と前記無機層状化合物とを混合して混合液を生成する工程(S42)と、前記セルロースナノファイバー分散液と前記サイズ剤との混合液に、前記水溶性高分子と前記無機層状化合物との混合液を添加する工程(S43)とを有することを特徴とするガスバリア層形成用塗工液の製造方法である。(図6参照)
また、請求項に記載の発明は、請求項1から5のいずれか1項に記載のガスバリア層形成用塗工液の製造方法により製造されたガスバリア層形成用塗工液を、基材(1)の少なくとも一方の面に塗工したガスバリア性積層体の製造方法である。(図1、図2参照)
また、請求項に記載の発明は、請求項に記載のガスバリア性積層体に、接着剤層(3)を介してヒートシール可能な熱可塑性樹脂層を積層して成ることを特徴とする包装材料の製造方法である。(図2参照)
本発明は、セルロース系材料を利用することで、環境負荷の少ないガスバリア層形成用塗工液、ガスバリア性積層体及び包装材料を提供することができる。また、セルロース繊維と無機層状化合物、水溶性高分子、サイズ剤から成る複合化膜が形成されることにより、高湿度環境下においても劣化因子となる水蒸気などの浸入・浸透を抑制するとともに膜強度を維持しつつ、さらに優れたガスバリア性を備えた塗工膜を実現できる。その塗工膜を実現するガスバリア層形成用塗工液、ガスバリア性積層体及び包装材料を得ることができる。
また、サイズ剤を添加することによってセルロースナノファイバーへの水の吸着・膨潤を抑制するとともに、繊維同士の絡み合いを維持することで高湿度下においても膜強度が強く、基材との密着が改善された複合化膜を実現できる。その複合化膜を実現するガスバリア層形成用塗工液、ガスバリア性積層体及び包装材料を得ることができる。
本発明の実施形態に係るガスバリア層形成用塗工液の製造方法の基本的な手順をフローチャートに示す図である。 本発明の実施形態に係るガスバリア層形成用塗工液の製造方法の手順をフローチャートに示す図である。 本発明の実施形態に係るガスバリア層形成用塗工液の製造方法の好ましい手順をフローチャートに示す図である。 本発明の実施形態に係るガスバリア層形成用塗工液の製造方法の他の手順をフローチャートに示す図である。 本発明に係るガスバリア性積層体及び包装材料の一態様である防汚フィルムの構成を示す断面模式図である。 本発明の実施形態に係るガスバリア性積層体及び包装材料の他の態様である防汚フィルムの構成を示す断面模式図である。
以下、図1〜図4を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1〜図4は、本発明の実施形態に係るガスバリア層形成用塗工液の製造方法の手順をフローチャートに示す図である。図1に示すように、本実施形態に係るガスバリア層形成用塗工液の基本的な製造方法は、酸化処理S1と、解繊処理S2とを施されたセルロースナノファイバー分散液に、水溶性高分子と、無機層状化合物と、サイズ剤とを、添加するS3という方法である。
また、図2に示すように、本実施形態に係るガスバリア層形成用塗工液の製造方法は、水溶性高分子の水溶液に無機層状化合物を混合して攪拌する工程S10と、混合して攪拌された水溶液をセルロースナノファイバー分散液に添加する工程S20と、水溶液を添加されたセルロースナノファイバー分散液にサイズ剤を添加する工程S30とを有する。
また、図3に示すように、本実施形態に係るガスバリア層形成用塗工液の好ましい製造方法は、水溶性高分子の水溶液に無機層状化合物を混合して攪拌する工程S10の後、混合して攪拌された水溶液を加熱する工程S15を有する。
また、図4に示すように、本実施形態に係るガスバリア層形成用塗工液の他の製造方法は、セルロースナノファイバー分散液にサイズ剤を添加して混合液を生成する工程S41と、水溶性高分子と無機層状化合物とを混合して混合液を生成する工程S42と、セルロースナノファイバー分散液とサイズ剤との混合液に、水溶性高分子と無機層状化合物との混合液を添加する工程S43とを有する。
このように、本実施形態に係るガスバリア層形成用塗工液は、セルロースナノファイバーと水溶性高分子、無機層状化合物、サイズ剤から構成されている。
また、本実施形態に係るガスバリア層形成用塗工液の製造方法により製造されたガスバリア層形成用塗工液を、基材の少なくとも一方の面に塗工してガスバリア性積層体を形成する。
本実施形態の塗工液に含まれるセルロースナノファイバーとして、その繊維幅が、3nm以上50nm以下、長さ数μmのものが適しており、その範囲内であれば、透明、且つ強度の高い膜を得ることができる。特に、その繊維幅は、3nm以上10nm以下の範囲が好適であり、繊維同士の絡み合いがより緻密となるため、ガスバリア性や強度などの性能に優れた膜を得ることができる。
ここで、セルロースナノファイバーの繊維幅測定は、0.001重量%セルロース繊維水分散液をマイカ基板上に1滴落とし、乾燥させたものをサンプルとして用いることができる。測定方法は、例えば、表面形状をAFM(ナノスコープ、日本ビーコ社製)により観察し、マイカ基材と繊維の高低差を繊維幅とみなして計測を行う。
また、繊維の絡み合いが密であるかどうかは、例えば、SEM(S―4800、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いた表面観察や、キャストフィルムの比重を測定することで判断することができる。キャストフィルムの比重の測定については、デジタル比重計(AND―DMA―220、安藤計器製工所製)を用いて測定することができる。また、サンプルであるキャストフィルムは、セルロースナノファイバー水分散液を、ポリスチレン製の角型ケース内に所定量だけ流し込み、50℃で24時間加熱乾燥することにより製造する。
セルロースナノファイバーを含む膜については、表面観察によれば、繊維間に生じる隙間の数や大きさが小さいほど、また、比重の測定によれば、比重が高くなるほど、繊維幅が小さく、繊維の絡み合いが密な膜が得られる。従って、さらに繊維間の隙間をなくしていくことにより、膜内への水蒸気などの劣化因子の浸入・浸透を防ぎ、高湿度下におけるガスバリア性低下を抑制することができる。
そこで、本実施形態では、膜中のセルロースナノファイバー間に存在する隙間を充填することのできる材料として、ガスバリア層に、セルロースと相性の良い水溶性高分子が含まれることが好ましい。セルロースナノファイバーと水溶性高分子を混合して製造した複合化膜は、水蒸気や汚れなど劣化因子の浸入・浸透を抑制し、その結果、高湿度環境下においても優れたガスバリア性を示す膜となる。
中でも、合成高分子類からは、ポリビニルアルコールを用いることが特に好ましい。造膜性、透明性、柔軟性などに優れるポリビニルアルコールは、セルロース繊維との相性も良いため、容易に繊維間、繊維―無機層状化合物間の隙間を充填し、強度と密着性を併せ持つ膜をつくることができる。一般に、ポリビニルアルコール(PVA)は、ポリ酢酸ビニルをけん化して得られるものであるが、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分けん化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全けん化PVAまでを含む。
水溶性高分子としてポリビニルアルコールを用いる場合、セルロース繊維(A)と、ポリビニルアルコール(B)との重量比((A)/(B))は、50/50〜95/5の範囲内であることが特に好ましい。ポリビニルアルコールのうち、部分けん化PVAを添加する場合、この範囲から外れて、ポリビニルアルコールの重量がセルロース繊維の重量に比べて多くなると、プラスチック材料を用いた基材に対する濡れ性は向上するも、コーティング剤が泡立ちやすい液となるため、好ましくない。一方、ポリビニルアルコールのうち、完全けん化PVAを添加する場合、この範囲から外れて、ポリビニルアルコールの重量がセルロース繊維の重量に比べて多くなると、泡立ちの少ない液となるがプラスチック材料を用いた基材に対する濡れ性が低下し、ハジキ等の原因となるため、好ましくない。
本実施形態のセルロース繊維は、以下の方法により、セルロース繊維分散体として得ることができる。まず、水または水/アルコール中にて、天然セルロース原料に、酸化触媒であるN―オキシル化合物と酸化剤を作用させることで、セルロースのミクロフィブリル表面を酸化処理する(S1)。次に、不純物を除去した後、水または水/アルコール混合液中にて分散処理を施すことで、セルロースナノファイバーの分散体として得ることができる。
原料の天然セルロースは、針葉樹や広葉樹などから得られる各種木材パルプ、またはケナフ、バガス、ワラ、竹、綿、海藻などから得られる非木材パルプ、ホヤから得られるセルロース、微生物が生産するセルロース等を用いることができる。また、結晶構造については、セルロースI型のものが好ましい。
酸化触媒としては、N―オキシル化合物、共酸化剤及び酸化剤を含む溶液または懸濁液を使用する。N―オキシル化合物は、TEMPOや、4―アセトアミド―TEMPO、4―カルボキシ―TEMPO、4―フォスフォノオキシ―TEMPOなどのTEMPO誘導体を用いることができる。共酸化剤は、臭化物またはヨウ化物が好ましく、例えば、臭化アルカリ金属やヨウ化アルカリ金属を挙げることができ、特に、反応性の良い臭化ナトリウムが好ましい。酸化剤は、ハロゲン、次亜ハロゲン酸やその塩、亜ハロゲン酸やその塩、過酸化水素などを用いることができるが、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
原料セルロース及び酸化触媒を含む反応液のpHは、酸化反応を効率良く進行させる点からpH9以上pH12以下の範囲であることが好ましい。
酸化反応の温度条件は、5℃以上70℃以下の範囲内であれば良いが、反応温度が高くなると副反応が生じやすくなることを考慮し50℃以下が好ましい。
酸化処理(S1)を施したセルロースは、ミクロフィブリル表面にカルボキシル基が導入され、さらに、該カルボキシル基同士の静電反発による浸透圧効果が、ナノオーダーのミクロフィブリルを独立(分散)しやすくする。特に、分散媒として水を用いた場合、最も安定な分散状態を有する。ただし、乾燥条件、液物性の改良・制御など種々の目的に応じて、アルコール類(エタノール、メタノール、イソプロパノール、tert―ブタノール)を始め、エーテル類、ケトン類を含んでもよい。
また、分散方法としては、例えば、ミキサー、高速ホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、グラインダー磨砕、凍結粉砕、メディアミル、ボールミルの何れか或いはこれらを組み合わせて用いることができる。
本実施形態の塗工液には、無機層状化合物が含まれている。無機層状化合物としては、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイト、スチーブンサイト、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、白雲母、マーガライト、タルク、バーミキュライト、金雲母、ザンソフィライト、緑泥石などを用いることができる。市販品としては、スメクタイト系の粘土鉱物に属するサポナイト構造を有するスメクトンSA(クニミネ工業社製)、ソジウム型のモンモリロナイトであるクニピア―F(クニミネ工業社製)、合成マイカPDM―5B(トピー工業社製)、精製された天然ベントナイトであるベンゲル(豊順洋行製)等を用いることができる。また、層状鉱物に対して有機化合物を複合化したものであってもよい。例えば、長鎖アルキル基を有する第4級アンモニウムイオンをイオン交換によって層間にインターカレートした複合体が挙げられる。市販品としては、ベントン27、ベントン38(エレメンティススペシャリティーズ社製)等があげられる。
また、本実施形態の塗工液に含まれるセルロースナノファイバー及び無機層状化合物の重量比(セルロース繊維の重量/無機層状化合物の重量)は、99/1〜25/75の範囲であることが好ましい。無機層状化合物の配合量が少ないとガスバリア性を十分に得ることができず、多すぎると無機層状化合物の薄片化が不十分となるため膜のガスバリア性、膜強度、密着性に加え透明性も劣ってしまうため好ましくない。特にセルロースナノファイバーと無機層状化合物の相溶性が悪い場合、無機層状化合物の配合量が多いと膜強度が極端に低くなる傾向がある。
さらに本実施形態の塗工液には、サイズ剤が含まれている。サイズ剤としては、一般的に紙への適度疎水性付与、液体の浸透を制御のために使用されているものを用いることができる。具体的にはエマルジョンサイズ剤として、酸性ロジンサイズ剤、弱酸性ロジンサイズ剤、中性ロジンサイズ剤、アルキルケテンダイマー(AKD)サイズ剤、アルケニル無水琥珀酸(ASA)サイズ剤等が挙げられる。また溶液型のサイズ剤としては、疎水性基と親水性基を併せ持つ合成高分子が用いられ、疎水性基としてはスチレン、オレフィン、アクリル酸エステル等が挙げられ、親水性基としてはアクリル酸、マレイン酸等が挙げられる。これ等の疎水性基と親水性基とを併せ持つ合成高分子をサイズ剤として使用することができる。
また、本実施形態の塗工液に含まれるセルロースナノファイバー及びサイズ剤の重量比(セルロース繊維の重量/サイズ剤の重量)は、99.99/0.01〜80/20の範囲であることが好ましい。工程S30におけるサイズ剤の添加量が少ないと耐湿性が十分に得ることができず、多すぎるとセルロースナノファイバーの繊維同士の絡み合いが疎になるために膜強度が弱くなるため好ましくない。
さらに、本実施形態の塗工液にはサイズ剤をセルロースナノファイバーへ吸着し易くするために硫酸アルミ等、カチオン性を有するイオンを添加することができる。セルロースナノファイバー表面のマイナス電荷にカチオン性イオンが吸着することでアニオン系のサイズ剤を固定し易くなる。これによってアニオン性のサイズ剤を使用する場合は繊維表面の耐湿性を向上させることができる。
本実施形態の塗工液に含まれるサイズ剤がエマルジョン型の場合は塗工後に乾燥させることでエマルジョンが溶融し、耐湿化することができる。この際の乾燥温度は40℃以上140℃以下が好ましい。乾燥温度が40℃以下であると十分にエマルジョンが溶融することができず、繊維表面の耐湿化が十分に進行しない。また、140℃以上で乾燥させた場合、サイズ剤の疎水基の配向性が失われ、十分な耐湿性が得られない。
本実施形態の塗工液に含まれるサイズ剤で溶液型の場合は、スチレンなどのかさ高い骨格を持つサイズ剤を使用した場合、添加量が多くなると繊維同士の隙間が大きくなりバリア性が悪化する傾向がある。また、疎水基が大きい場合は隙間この隙間がより大きくなるため、繊維同士の水素結合を阻害してラミネート強度が低下する。疎水基として使用される合成高分子の骨格は小さいものほどバリア性・ラミネート強度に影響を与えにくくなるので好ましい。
さらに、サイズ剤に使用される原料樹脂の硬さもラミネート強度に影響を及ぼす。Tgが高く、硬い樹脂を使用した場合、塗工後に得られる膜が脆くなり、強度不足となる場合がある。
本実施形態のサイズ剤は水で希釈して使用することができる。サイズ剤をスターラーで攪拌しながら純水を添加することで5%以下にして使用することが好ましい。5%以上で使用すると粘度が高過ぎて均一に分散しにくい、塗工しにくいなどの問題が生じる。
また、サイズ剤の添加(S30)をする場合、サイズ剤と無機層状化合物またはセルロース繊維が電気的に凝集物を発生させることがある。その場合、セルロース分散液・無機層状化合物・水溶性高分子の分散液やサイズ剤の水溶液の濃度を希釈することで凝集物の発生を抑えることができる。
次に、ガスバリア層形成用塗工液の製造方法について説明する。ガスバリア層形成用塗工液の製造方法としては、解繊した(S2)セルロース分散液に無機層状化合物の分散液、水溶性高分子水溶液、サイズ剤を添加し(S3)、攪拌する方法がある。
また、無機層状化合物は、水溶液に含まれるセルロース繊維の解繊処理(S2)の際に添加することもできる。セルロース繊維の解繊処理(S2)と無機層状化合物の剥離を同時処理する工程を含むことができ、分散処理の方法としては、ミキサー処理、ブレンダー処理、超音波ホモジナイザー処理、高圧ホモジナイザー処理、ボールミル処理から選ばれる1または2つ以上を用いることができる。この場合、水溶性高分子は解繊処理(S2)の前後のいずれでも添加(S3)することができる。
前述の分散処理の方法を用いることにより、水溶液中でセルロース繊維の解繊及び無機層状化合物の薄片化を同時処理することができる。ただし、予めセルロース繊維、無機層状化合物を各自分散させた水溶液を混合しても、各材料が均一に混合されず、本実施形態のように透明性、ガスバリア性に優れた膜を得ることはできない場合がある。
また、前述の分散処理の方法を用いることにより、無機層状化合物の薄片化が進行すると共に微細化される。この分散処理を行うことで粗大な粒子を細かくすることが可能である。ただし、粗大粒子が存在する場合、膜表面から無機粗大粒子が突き出し、接着剤が均一に塗工できないことから密着性が低下する場合がある。
さらに、セルロース分散液、サイズ剤、無機層状化合物、或いはセルロース分散液、水溶性高分子、サイズ剤、無機層状化合物を混合し、その混合液を加熱する手法も用いることができる。
上記の手法を用いることで熱エネルギーにより分散液中の無機層状化合物を剥離することができる。加熱温度、時間は40℃以上100℃以下で10分以上20時間以下の加熱時間であれば良いが、層状化合物が割れてしまい、バリア性が低下することを考慮し、40℃以上90℃以下、10分以上5時間以下が好ましい。また、無機層状化合物の剥離を行う際に超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーを用いると無機層状化合物が粉砕され、バリア性が悪化する場合もある。
セルロース分散液とサイズ剤の混合液(S41)に、水溶性高分子と無機層状化合物の混合液を添加する(S42)手法も用いることができる。セルロースの分散液にサイズ剤を加えることで(S41)、サイズ剤が繊維に吸着し易くなり、効率的に耐湿化することができる。また、無機層状化合物と水溶性高分子を先に混合した場合(S10)、バリア性の良好な膜が得られる。これは効率よく無機層状化合物の層間に水溶性高分子が入り込むことで層間を広げ、より複雑な構造を持つ膜を作ることができるためである。
また、上記の水溶性高分子と無機層状化合物を混合して攪拌した(S10)混合液を、加熱することもできる(S15)。これにより無機層状化合物が剥離し、より高いバリア性を得ることができる。加熱温度および時間は40℃以上100℃以下で10分以上20時間以下の加熱時間であれば良い。しかし、S15の加熱工程で熱を加え過ぎると、層状化合物が割れてしまい、バリア性が低下することを考慮し、S15の加熱工程は、40℃以上90℃以下、10分以上5時間以下に設定することが好ましい。また、S10の混合・攪拌工程において、S15の加熱工程を省略する代わりに、10分以上20時間以下の攪拌を行うだけでも一定の効果が得られる。ただし、このS10の混合・攪拌工程の処理を行うことにより、無機層状化合物の表面積が広がるため、水溶性高分子が十分に添加されていない場合は、セルロースナノファイバーと無機層状化合物の隙間を埋めることができなくなり膜強度や密着性が悪くなることがある。
また、無機層状化合物の層間に存在する陽イオンを置換する方法も可能である。アンモニア、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウムなどのイオンを含む溶液と接触すると、層間陽イオンと液中の陽イオンは瞬間的に交換反応を起こすため陽イオン置換をすることができる。S3,S10,S42に示す無機層状化合物を添加する工程において、この陽イオン置換を実行することにより、無機層状化合物の層間を開き、より高いバリア性を得ることができる。このS3,S10,S42に示す無機層状化合物を添加する工程は、無機層状化合物の分散液の状態で行うことができるが、セルロース分散液に添加した後と、PVA溶液に添加後との、いずれの工程でも行うことができる。
他にも無機層状化合物を凍結粉砕する。乾燥させた後、乳鉢で粉砕するなどの手法を実行してから系内に添加する手法も実行することができる。これ等の手法を実行することで無機層状化合物を細かくし、緻密な構造を形成することができるため、バリア性を向上することができる。
このように塗工液に含まれる材料の分散状態は、膜化した際の透明性やガスバリア性、膜強度、密着性に多大な影響を及ぼす。特に、分散が不十分・不均一である場合、膜の透明性やガスバリア性、膜強度、密着性が著しく低下してしまう。この不具合に対し、膜中の無機層状化合物の層間に水溶性高分子が入り込むことにより、バリア性が向上し、また、無機層状化合物とセルロースナノファイバーの間の隙間を水溶性高分子が埋めることにより、膜強度が向上する。また、分散が不十分・不均一である場合、膜表面の平滑性が失われてしまう等の問題も生じる。この不具合に対し、無機層状化合物を微細化して分散させることにより、平滑性が保たれ、密着性の高い膜を作ることができる。
また、塗工液には、機能性付与のために、さらに添加剤を加えても良い。例えば、レベリング剤、消泡剤、合成高分子、無機系粒子、有機系粒子、潤滑剤、紫外線吸収剤、染料、顔料或いは安定剤などを用いることができ、これらはガスバリア性を損なわない範囲内でコーティング液に添加することができ、用途に応じてフィルム特性を改良することもできる。
本実施形態に係るガスバリア層形成用塗工液の製造方法により製造されたガスバリア層形成用塗工液を、基材の少なくとも一方の面に塗工してガスバリア性積層体を形成する。すなわち、ガスバリア層の形成方法として、ガスバリア層形成用塗工液を公知の塗布法を用いることができる。例えば、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーター等を用いることができる。以上の塗布方法を用いて、ガスバリア層形成用塗工液を基材の少なくとも一方の面に塗布する。乾燥方法としては、自然乾燥、送風乾燥、熱風乾燥、UV乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等を用いることができる。
以下、図5及び図6を参照して本発明に係るガスバリア性積層体及び包装材料の実施態様について説明する。
図5は、本発明に係るガスバリア性積層体及び包装材料の一態様である防汚フィルムの構成を示す断面模式図である。図5に示す防汚フィルムは、基材1の少なくとも一方の面の上層に、ガスバリア層2が形成され、ガスバリア層2の上層に、(ラミネート用)接着剤層3が形成され、接着剤層3の上層に、ヒートシール層(熱可塑性樹脂層、加熱接着層)4が形成されている。
図6は、本発明に係るガスバリア性積層体及び包装材料の他の態様である防汚フィルムの構成を示す断面模式図である。図6に示す防汚フィルムは、基材1の少なくとも一方の面の上層にアンカー層5が形成され、アンカー層5の上層に、ガスバリア層2が形成され、ガスバリア層2の上層に、接着剤層3が形成され、接着剤層3の上層に、ヒートシール層4が形成されている。
また、膜の強度や密着性を向上させるため、ガスバリア層2を形成した後に、さらにUV照射やEB照射処理を施すことも可能である。
さらに、ガスバリア層2上には、必要に応じて中間フィルム層、ヒートシール(加熱接着)可能な熱可塑性樹脂層(ヒートシール層、加熱接着層)4、印刷層などを積層し、包装材料とすることができる。また、各層をドライラミネート法やウェットラミネート法で積層するための(ラミネート用)接着剤層3や、ヒートシール層4を溶融押出し法で積層する場合のプライマー層やアンカーコート層5などを積層しても良い。
以下、本実施形態のガスバリア性積層体を包装材料として用いる場合の構成例(a)〜(c)を示す。しかし、本実施形態のガスバリア性積層体はこれに限定されるものではない。ガスバリア性を確保する基本的な構成例(a)は、図5に示したとおりである。また、層の中間に印刷層が介在する構成例(b)や、中間フィルム層が介在する構成例(b)は、図示しないまでも、包装材料としての装飾性や強度を付加するものである。
(a)基材1/ガスバリア層2/(ラミネート用)接着剤層3/ヒートシール層4(図5参照)
(b)基材1/ガスバリア層2/印刷層/(ラミネート用)接着剤層3/ヒートシール層4
(c)基材1/ガスバリア層2/(ラミネート用)接着剤層3/中間フィルム層/(ラミネート用)接着剤層3/ヒートシール層4
中間フィルム層は、ボイル及びレトルト殺菌時の破袋強度を高めるために設けられるもので、一般的に機械強度及び熱安定性の面から二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリプロレンフィルムの内から選ばれることが多い。厚さは、材質や要求品質等に応じて決められるが、一般的には10〜30μmの範囲である。形成方法としては2液硬化型ウレタン系樹脂等の接着剤を用いて貼り合わせるドライラミネート法により積層することができる。また、紙などのガス透過性の良い基材1を用いる場合は、澱粉系の水溶性接着剤や酢酸ビニルエマルジョンのような水性接着剤を用いたウェットラミネーション法により積層できる。
また、ヒートシール層4は、袋状包装体などを形成する際に密封層として設けられるものである。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン―酢酸ビニル共重合体、エチレン―メタクリル酸共重合体、エチレン―メタクリル酸エステル共重合体、エチレン―アクリル酸共重合体、エチレン―アクリル酸エステル共重合体またはそれらの金属架橋物等の樹脂の1種からなるフィルムが用いられる。ヒートシール層4の厚さは、目的に応じて決められるが、一般的には15〜200μmの範囲である。形成方法としては、ヒートシール層4を形成するフィルムを2液硬化型ウレタン樹脂などの接着剤を用いて貼り合わせるドライラミネート法等を用いることが一般的であるがいずれも公知の方法により積層することができる。
また、(ラミネート用)接着剤層3として用いられる接着剤としては、積層される各層の材質に応じてアクリル系、ポリエステル系、エチレン―酢酸ビニル系、ウレタン系、塩化ビニル―酢酸ビニル系、塩素化ポリプロピレン系などの公知の接着剤を用いることができる。接着剤層3を形成するための接着剤の塗布方法としては、公知の塗布法を用いることができ、例えば、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーター等を用いることができる。接着剤の塗布量としては、1〜10g/mが好ましい。
また、印刷層は、包装袋などとして実用的に用いるために形成されるものであり、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系、塩化ビニル系等の従来から用いられているインキバインダー樹脂に各種顔料、体質顔料及び可塑剤、乾燥剤、安定剤等の添加剤などが添加されてなるインキにより構成される層であり、文字、絵柄等が形成されている。
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
以下に示すセルロース繊維、水溶性高分子、層状鉱物の各材料を、表に示した配合比で混合し、コーティング液を製造した。
[セルロース繊維の製造方法]
漂白クラフトパルプ10gを水500ml中で一晩静置し、パルプを膨潤させた。これを20℃に温度調整し、TEMPO 0.1gと臭化ナトリウム 1gを添加し、パルプの懸濁液とした。さらに、攪拌しながらセルロース重量当たり10mmol/gの次亜塩素酸ナトリウムを添加した。この際、約1Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加してパルプ懸濁液のpHを約10.5に保持した。その後240分間酸化反応を行い、十分に水洗しパルプを得た。得られたパルプをイオン交換水で固形分濃度1%に調整し、高速回転ミキサーを用いて約60分間攪拌し、透明なセルロース繊維の分散液を得た。
[ポリビニルアルコールの製造方法]
市販品のPVA(PVA―124、クラレ社製)5gをビーカーに量りとり、純水500gを加えた。これを100℃に加熱し、溶解させ1%溶液として用いた。
[無機層状化合物の分散方法]
市販品の合成マイカ、PDM―5B(トピー工業社製)を水に分散させ1%分散液として用いた。
[塗工液の製造方法]
PVAの1%溶液を60gビーカーに量り取り、攪拌しながら合成マイカの1%分散液を12g添加してPVA/合成マイカ=50/10の混合液を製造する。セルロースナノファイバー分散液100gを攪拌しながらこの混合液を60g添加してセルロース/合成マイカ/PVA=100/10/50とし、十分攪拌する。この混合液を塗工液(1)とする。さらに、ここで得られた塗工液に1%に希釈したAKDサイズ剤(AD1614)、アルケニル琥珀酸サイズ剤(AS1523)をそれぞれセルロースに対して0.1、1.0、5.0、%外添し、セルロース/合成マイカ/PVA/サイズ剤=100/10/50/0.1―5.0として十分に攪拌する。これらの塗工液を塗工液(2)〜(7)とする。また同様にスチレン―アクリル酸サイズ剤(SS2526)、オレフィン―マレイン酸サイズ剤(SS2550)、アクリレートサイズ剤(SS2569)をそれぞれセルロースに対して0.01、0.1、0.5、1.0、5.0、10、20%外添し、セルロース/合成マイカ/PVA/サイズ剤=100/10/50/0.01―20として十分に攪拌する。これらの塗工液を塗工液(8)〜(28)とする。(サイズ剤は全て星光PMC社製)
[塗工液の製造方法2]
セルロースナノファイバー分散液100gを攪拌しながら合成マイカ1%分散液を10g添加してセルロース/合成マイカ=100/10の塗工液(29)を製造する。
<実施例1〜27>
[実施例1〜27におけるガスバリア性フィルムの製造]
厚さ25μmポリエチレンテレフタラートフィルム(ポリエステルフィルム E5102、東洋紡社製)基材1上に、塗工液の製造方法に示した配合比、調液手法で製造した塗工液(2)〜(28)を、バーコート法により乾燥膜厚1.0μmになるように塗布後、乾燥させガスバリア層2を形成し、ガスバリア性フィルムを製造した。
[実施例1〜27における包装材料用ガスバリア性フィルムの製造]
さらに、製造した塗工液(2)〜(28)を塗工し、包装材料として用いるために、ガスバリア層2側に、接着剤層3を介してヒートシール層4をドライラミネーション法により貼り合わせ、50℃、4日間養生して、包装材料用ガスバリア性フィルムを製造した。ヒートシール層4としては、厚さが70μmのCPP(RXC22、三井化学東セロ社製)を使用し、接着剤層3を形成する接着剤としては、二液硬化型ポリウレタン系ラミネート用接着剤(A525/A52、三井化学ポリウレタン社製)を使用した。接着剤は、グラビアコート法により、乾燥後の塗布量が3.0g/mとなるようにガスバリア層2上に塗布した。
<比較例1〜2>
[比較例1〜2におけるガスバリア性フィルムの製造]
厚さ25μmポリエチレンテレフタラートフィルム(ポリエステルフィルム E5102、東洋紡社製)基材1上に、塗工液の製造方法に示した配合比、調液手法で製造した塗工液(1)、(29)をバーコート法により乾燥膜厚1.0μmになるように塗布後、乾燥させガスバリア層2を形成し、ガスバリア性フィルムを製造した。
[比較例1〜2における包装材料用ガスバリア性フィルムの製造]
さらに、製造した塗工液(1)、(29)を塗工し、包装材料として用いるために、ガスバリア層2側に、接着剤層3を介してヒートシール層4をドライラミネーション法により貼り合わせ、50℃、4日間養生して、包装材料用ガスバリア性フィルムを製造した。ヒートシール層4としては、厚さが70μmのCPP(RXC22、三井化学東セロ社製)を使用し、接着剤層3を形成する接着剤としては、二液硬化型ポリウレタン系ラミネート用接着剤(A525/A52、三井化学ポリウレタン社製)を使用した。接着剤は、グラビアコート法により、乾燥後の塗布量が3.0g/mとなるようにガスバリア層2上に塗布した。
得られたガスバリア性フィルムの性能は、下記の方法に従って評価した。
[酸素透過度(等圧法)(cm/m・day・Pa)]
酸素透過度測定装置MOCON(OX―TRAN2/21、モダンコントロール社製)を用いて、30℃、40%RH及び70%RHの雰囲気下で測定をおこなった。ガスバリア性フィルムの酸素透過度を測定した結果を表に示す。
[水蒸気透過度の測定]
40℃、90%RH雰囲気下での水蒸気透過度(g/m・day)を、水蒸気過度測定装置PERMATRAN W―3/33 MG(モダンコントロール社製)を用いて測定した。
得られた包装材料用ガスバリア性フィルムのラミネート強度は以下の方法に従って評価した。
[密着強度の測定]
各3層積層体を、幅15mm×長さ10cmの短冊状に切り抜き、試験片とした。該試験片について、JIS―K―7127に準拠して、引張り速度300mm/minでT字剥離を行って、基材1とPPフィルムの間の密着強度(N/15mm)を測定した。また試験環境は25℃70%RHとした。
Figure 0006070015
表1に示すように、実施例7―27の溶液型のサイズ剤を添加したサンプルでは高湿度下でのラミネート強度が大幅に改善されていることがわかる。これはサイズ剤の添加(S30)によって繊維表面が耐湿化され、吸湿・膨潤しにくくなったためと考えられる。
また実施例1〜6に示すエマルジョン型のサイズ剤を使用した場合、ラミネート強度の向上は見られない。これは繊維間の隙間が狭く、加熱してもサイズ剤が溶融・拡散しにくいため繊維上に十分広がることができなかったためと考えられる。
以上のように、天然材料をサイズ剤によって耐湿化することにより、湿度劣化の少ないガスバリア積層体及び包装材料を提供できる。
本実施形態によれば、セルロース系材料を利用することで、環境負荷の少ないガスバリア層形成用塗工液の製造方法、ガスバリア性積層体及び包装材料を提供することができる。また、セルロース繊維と無機層状化合物、水溶性高分子、サイズ剤から成る複合化膜が形成されることにより、高湿度環境下においても劣化因子となる水蒸気などの浸入・浸透を抑制するとともに膜強度を維持しつつ、さらに優れたガスバリア性を備えた塗工膜を実現できる。そして、その塗工膜を実現するガスバリア層形成用塗工液の製造方法、ガスバリア性積層体及び包装材料を得ることができる。また、サイズ剤を添加することによってセルロースナノファイバーへの水の吸着・膨潤を抑制するとともに、繊維同士の絡み合いを維持することで高湿度下においても膜強度が強く、基材との密着が改善された複合化膜を実現できる。さらに、その複合化膜を実現するガスバリア層形成用塗工液の製造方法、ガスバリア性積層体及び包装材料を得ることができる。
1 基材
2 ガスバリア層
3 接着剤層
4 ヒートシール層(熱可塑性樹脂層、加熱接着層)
5 アンカー層

Claims (7)

  1. 酸化処理と、解繊処理とを施されたセルロースナノファイバー分散液に、
    水溶性高分子と、無機層状化合物と、サイズ剤とを、添加し、
    前記サイズ剤は、酸性ロジンサイズ剤、弱酸性ロジンサイズ剤、中性ロジンサイズ剤、アルキルケテンダイマー(AKD)サイズ剤、又はアルケニル無水琥珀酸(ASA)サイズ剤からなるエマルジョンサイズ剤であることを特徴とするガスバリア層形成用塗工液の製造方法。
  2. 前記水溶性高分子の水溶液に前記無機層状化合物を混合して攪拌する工程と、
    前記混合して攪拌された前記水溶液を前記セルロースナノファイバー分散液に添加する工程と、
    前記水溶液を添加された前記セルロースナノファイバー分散液に前記サイズ剤を添加する工程と、を有することを特徴とする請求項1に記載のガスバリア層形成用塗工液の製造方法。
  3. 前記水溶性高分子の水溶液に前記無機層状化合物を混合して攪拌する工程の後、
    前記混合して攪拌された前記水溶液を加熱する工程を有することを特徴とする請求項1又は請求項に記載のガスバリア層形成用塗工液の製造方法。
  4. 前記セルロースナノファイバー分散液に前記サイズ剤を添加して混合液を生成する工程と、
    前記水溶性高分子と前記無機層状化合物とを混合して混合液を生成する工程と、
    前記セルロースナノファイバー分散液と前記サイズ剤との混合液に、前記水溶性高分子と前記無機層状化合物との混合液を添加する工程とを有することを特徴とする請求項1に記載のガスバリア層形成用塗工液の製造方法。
  5. 請求項1からのいずれか1項に記載のガスバリア層形成用塗工液の製造方法により製造されたガスバリア層形成用塗工液を、基材の少なくとも一方の面に塗工したガスバリア性積層体の製造方法。
  6. 請求項に記載の方法で製造されたガスバリア性積層体に、接着剤層を介してヒートシール可能な熱可塑性樹脂層を積層することを特徴とする包装材料の製造方法。
  7. ガスバリア層形成用の塗工液であって、
    セルロースナノファイバーと、水溶性高分子と、無機層状化合物と、サイズ剤とを含有し、
    前記サイズ剤は、酸性ロジンサイズ剤、弱酸性ロジンサイズ剤、中性ロジンサイズ剤、アルキルケテンダイマー(AKD)サイズ剤、又はアルケニル無水琥珀酸(ASA)サイズ剤からなるエマルジョンサイズ剤であることを特徴とするガスバリア層形成用塗工液。
JP2012212881A 2012-09-26 2012-09-26 ガスバリア層形成用塗工液の製造方法、ガスバリア性積層体の製造方法、包装材料の製造方法及びガスバリア層形成用塗工液 Active JP6070015B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012212881A JP6070015B2 (ja) 2012-09-26 2012-09-26 ガスバリア層形成用塗工液の製造方法、ガスバリア性積層体の製造方法、包装材料の製造方法及びガスバリア層形成用塗工液

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012212881A JP6070015B2 (ja) 2012-09-26 2012-09-26 ガスバリア層形成用塗工液の製造方法、ガスバリア性積層体の製造方法、包装材料の製造方法及びガスバリア層形成用塗工液

Related Child Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016222557A Division JP6210146B2 (ja) 2016-11-15 2016-11-15 ガスバリア層形成用塗工液の製造方法、ガスバリア性積層体及び包装材料

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014065837A JP2014065837A (ja) 2014-04-17
JP6070015B2 true JP6070015B2 (ja) 2017-02-01

Family

ID=50742541

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012212881A Active JP6070015B2 (ja) 2012-09-26 2012-09-26 ガスバリア層形成用塗工液の製造方法、ガスバリア性積層体の製造方法、包装材料の製造方法及びガスバリア層形成用塗工液

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6070015B2 (ja)

Families Citing this family (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN106457798A (zh) * 2014-04-22 2017-02-22 王子控股株式会社 复合体及其制造方法
WO2017047632A1 (ja) * 2015-09-18 2017-03-23 王子ホールディングス株式会社 積層体
JP6641912B2 (ja) * 2015-11-16 2020-02-05 王子ホールディングス株式会社 積層体及び積層体の製造方法
TWI712495B (zh) * 2015-09-18 2020-12-11 日商王子控股股份有限公司 積層體
JP6620567B2 (ja) * 2016-01-20 2019-12-18 王子ホールディングス株式会社 積層体及び積層体の製造方法
JP6701807B2 (ja) * 2015-09-18 2020-05-27 王子ホールディングス株式会社 積層体
JP6610347B2 (ja) * 2016-03-10 2019-11-27 王子ホールディングス株式会社 ヒートシールシートおよびプレススルー包装体
JP6352507B1 (ja) * 2017-07-27 2018-07-04 第一工業製薬株式会社 水素ガスバリア膜用組成物及びこれを用いた水素ガスバリア膜

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3374625B2 (ja) * 1995-11-30 2003-02-10 東レ株式会社 ガスバリアフィルム
JP2005213275A (ja) * 2004-01-27 2005-08-11 Toyobo Co Ltd コーティング剤
JP2007216593A (ja) * 2006-02-20 2007-08-30 Oji Paper Co Ltd ガスバリア性積層体
JP2012149114A (ja) * 2011-01-17 2012-08-09 Toppan Printing Co Ltd 膜形成用組成物およびシートならびに包装材料

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014065837A (ja) 2014-04-17

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6070015B2 (ja) ガスバリア層形成用塗工液の製造方法、ガスバリア性積層体の製造方法、包装材料の製造方法及びガスバリア層形成用塗工液
JP6520973B2 (ja) 膜形成用組成物、積層体、膜、シート基材、包装材、膜形成用組成物の製造方法
JP5772814B2 (ja) ガスバリア性積層体および包装材料
JP6268746B2 (ja) ガスバリア層形成用の塗工液及びその製造方法、ガスバリア性積層体及び包装材料
JP2015024537A (ja) 防湿フィルム及び包装材料用防湿フィルム
JP6210146B2 (ja) ガスバリア層形成用塗工液の製造方法、ガスバリア性積層体及び包装材料
KR101800474B1 (ko) 막 형성용 조성물 및 시트
JP6236859B2 (ja) ガスバリア層形成用の塗工液の製造方法
JP2012149114A (ja) 膜形成用組成物およびシートならびに包装材料
JP6331262B2 (ja) ガスバリア性積層体およびその製造方法
JP6175753B2 (ja) 積層体およびその製造方法
JP6326721B2 (ja) ガスバリア性包装材およびその製造方法
JP2014196400A (ja) ガスバリア層形成材料およびその製造方法、ガスバリア性積層体
JP7382929B2 (ja) バリア特性のある包装材料
JP6414284B2 (ja) ガスバリア層形成用の塗工液、ガスバリア性積層体及び包装材料
JP5640698B2 (ja) 積層体およびその製造方法
JP2017193627A (ja) 湿度応答性透湿シートおよびその製造方法
JP2013202909A (ja) 積層体及びその製造方法並びにガスバリア材

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150820

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20160511

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160517

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160714

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160927

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20161115

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20161206

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20161219

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6070015

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250