JP6326721B2 - ガスバリア性包装材およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ガスバリア性包装材およびその製造方法に関する。
現在、食品、医薬品、エレクロトニクス部品等を保護するガスバリア性包装材として、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)等のPVA系樹脂を用いたガスバリア性フィルムや、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)系樹脂を用いたガスバリア性フィルムが多用されている。これらのガスバリア性フィルムは、ガラス、金属、セラミックス等を用いたガスバリア材と比較して、加工性に優れる、軽量である等の点で優れている。
しかし、PVA系樹脂を用いたガスバリア性フィルムは湿度依存性が大きく、湿度の上昇に従い、吸湿・膨潤等によってガスバリア性が大幅に低下する問題がある。
PVDC系樹脂を用いたガスバリア性フィルムは、酸素透過度に対する湿度依存性はほとんどないものの、分子構造中に塩素原子を含むことから、焼却によるダイオキシン発生のおそれがあり、環境への影響が懸念されている。
また、PVA系樹脂やPVDC系樹脂は、化石資源由来の材料をもとに製造されており、環境への負荷が避けられない。
一方、近年、化石資源の枯渇問題の解決を目指して、持続的に利用可能な環境調和型材料であるバイオマスを用いた機能性材料の開発が盛んに行われている。その中でも木材の主成分であるセルロースは、地球上に最も大量に蓄積された天然高分子材料であることから、資源循環型社会の中核を担う物質として期待が寄せられている。
木材中では、数十本以上のセルロース分子が束になって高結晶性でナノメートルオーダーの繊維径をもつ微細繊維(ミクロフィブリル)を形成しており、さらに多数の微細繊維が互いに水素結合してセルロース繊維を形成し、植物の支持体となっている。
このように安定な構造を有することから、木材に含まれる天然のセルロース繊維は、特殊な溶媒以外には不溶であり、成形性にも乏しく、機能性材料としては扱いにくい面があった。そこで、木材中のセルロース繊維を、繊維径がナノメートルオーダーになるまで微細化(ナノファイバー化)して利用しようとする試みが活発に行われている。
木材中のセルロース繊維をナノファイバー化する手法の1つとして、セルロース繊維を、比較的安定なN−オキシル化合物である2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシラジカル(TEMPO)を触媒として用いて酸化(TEMPO酸化)する手法が報告されている(例えば特許文献1)。TEMPO酸化反応は、水系、常温、常圧で進行する環境調和型の化学改質が可能で、例えば木材パルプに適用した場合、結晶構造内部には反応が進行せず、結晶表面のセルロース分子鎖が持つ−CHOHのみを選択的に酸化しカルボキシ基へと変換することができる。結晶表面に導入されたカルボキシ基間には静電的な反発力が働くため、TEMPO酸化後の木材パルプを水中に分散させた状態で軽微な機械処理を施すと、セルロース繊維が微細繊維単位まで微細化されたセルロースシングルナノファイバー(以下CSNFと称する)の水分散液を得ることができる。このようにして得られるCSNFは、短軸径が4nm前後と微細で、長軸径500nm〜数μmに及ぶ高アスペクト比を有している。
このCSNFの水分散液を基材に塗布乾燥することによってCSNFが積層した膜(CSNF積層膜)を形成できる。該CSNF積層膜は透明性が高く、例えば透明基材上にCSNF積層膜を設けた積層体は透明性が高い。また、該CSNF積層膜は、高結晶性のCSNFが緻密に集積した構造を有しており、膜内部の空隙サイズが非常に小さいことから高い酸素バリア性を示すことが報告されている(非特許文献1)。
前記の特性から、CSNF等のセルロースナノファイバーを用いたカーボンニュートラルなガスバリア材の研究については既に多くの報告がある。
しかし、セルロースナノファイバーを用いたガスバリア材の実用化に向けては、PVA系樹脂を用いたガスバリア性フィルムの場合と同様に、高湿度条件下において、吸湿・膨潤等によってガスバリア性が低下する問題がある。
このような問題に対し、例えば特許文献2では、特定のセルロース繊維を含むガスバリア用材料からなる層を基材に設けたガスバリア性複合成形体に、さらに防湿層を積層することが提案されている(段落[0056]等)。特許文献3では、特定のセルロース繊維とPVAとを含む水性分散液で膜状のガスバリア性成形体を形成することせることが提案されている。特許文献4では、特定のセルロース繊維と、反応性官能基を有する架橋剤(グリオキサール等)を含むガスバリア用材料を用いて、架橋構造が形成されたセルロース繊維層を形成することが提案されている。
しかし、セルロースナノファイバーを用いたガスバリア材の高湿度下におけるガスバリア性は、未だ実用レベルには達していないのが現状である。
例えば特許文献2に記載の方法では、ガスバリア用材料からなる層自体の耐湿性は低く、防湿層の防湿効果により該層の吸湿速度は遅くなるものの、吸湿自体を完全に抑制できるわけではないため、最終的に酸素バリア性は低下してしまう。
特許文献3、4に記載の方法では、湿度の影響をある程度抑えることができるものの、その効果には未だ改善の余地がある。
一方、セルロースナノファイバーを含む層を基材上に設けた場合、該層と基材との密着性が低く、容易に剥離することが、包装材として適用する上での実用上の問題の1つとなっている。
このような問題に対し、特許文献5には、基材上に、カルボキシ基を有するセルロースナノファイバーを含む分散液を塗布して積層体を形成し、該積層体に荷電粒子線を照射するセルロースナノファイバー積層体の製造方法が開示されている。
しかし該方法では、層と層との間の界面剥離は改善されるものの、実施例にて提示されている積層体の酸素バリア性は、実用上充分なものとはいえず、未だ改善の余地がある。
特開2008−1728号公報 特開2009−57552号公報 特開2012−41489号公報 特開2010−168572号公報 特開2011−212569号公報
Hayaka Fukuzumi, et al. Biomacromolecules,2009,10(1),162−165
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、高湿度条件下でも良好なガスバリア性を有し、実用性の高いガスバリア性包装材およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題の解決のため鋭意検討を重ねたところ、セルロースナノファイバーと無機層状化合物とを含む層を形成し、該層に放射線照射処理を行うことによって、高湿度条件下におけるガスバリア性が改善することを見出した。また、層状化合物の添加は、通常、膜凝集力の著しい低下を引き起こすが、放射線照射処理により、層状化合物を添加しても実用に耐え得る膜凝集力が得られることを見出した。
本発明は、上記知見に基づくものであり、以下の態様を有する。
[1] 基材と、前記基材の少なくとも一方の面に積層したガスバリア層と、を有し、
前記ガスバリア層が、セルロースナノファイバーと無機層状化合物とからなる層(I)に放射線を照射して、前記セルロースナノファイバーを分子間で架橋させたものであり、
前記セルロースナノファイバーの数平均短軸径が1nm以上100nm以下であり、前記セルロースナノファイバーの数平均長軸径が100nm以上であり且つ前記数平均短軸径の50倍以上であることを特徴とするガスバリア性包装材。
[2] 前記層(I)への放射線の照射線量が1kGy以上10MGy未満である[1]に記載のガスバリア性包装材。
[3] 前記放射線が電子線である[1]または[2]に記載のガスバリア性包装材。
[4] 前記層(I)中の、前記セルロースナノファイバーに対する前記無機層状化合物の割合が0.01質量%以上20質量%以下である[1]〜[3]のいずれかに記載のガスバリア性包装材。
[5] 前記セルロースナノファイバーが、N−オキシル化合物を用いた酸化反応によって導入されたカルボキシ基を有する[1]〜[4]のいずれかに記載のガスバリア性包装材。
[6] 前記カルボキシ基の含有量が、前記セルロースナノファイバー1g当たり0.1mmol以上5.0mmol以下である[5]に記載のガスバリア性包装材。
[7] ヒートシール可能な熱可塑性樹脂層をさらに有する[1]〜[6]のいずれかに記載のガスバリア性包装材。
[8] 基材と、前記基材の少なくとも一方の面に積層したガスバリア層と、を有するガスバリア性包装材を製造する方法であって、
基材の少なくとも一方の面に、セルロースナノファイバーと無機層状化合物とを含有する分散液を塗布して層(I)を形成する工程と、
前記層(I)に対して放射線を照射して、前記セルロースナノファイバーを分子間で架橋させてガスバリア層とする工程と、を備え、
前記層(I)への放射線の照射線量が400kGy以上5MGy未満であり、
前記セルロースナノファイバーの数平均短軸径が1nm以上100nm以下であり、前記セルロースナノファイバーの数平均長軸径が100nm以上であり且つ前記数平均短軸径の50倍以上であるガスバリア性包装材の製造方法。
[9] 前記層(I)が、セルロースナノファイバーと無機層状化合物とからなる[8]に記載のガスバリア性包装材の製造方法。
本発明によれば、高湿度条件下でも良好なガスバリア性を有し、実用性の高いガスバリア性包装材およびその製造方法を提供できる。
上記課題を解決する本発明は以下の態様を有する。
放射線の照射による層(I)の構造の変化(セルロースナノファイバー間の架橋構造の形成)について説明する模式図である。 放射線の照射による層(I)の構造の変化(層の内部構造の変化)について説明する模式図である。
本発明のガスバリア性包装材は、基材と、前記基材の少なくとも一方の面に積層したガスバリア層と、を有する。
<ガスバリア層>
本発明のガスバリア性包装材は有するガスバリア層は、セルロースナノファイバーと無機層状化合物とを含有する層(I)に放射線を照射してなるものである。
以下、セルロースナノファイバーを「CNF」ともいう。
本発明において、「ナノファイバー」とは、数平均短軸径(平均繊維径)がナノメートルオーダー(1nm以上1μm未満)の繊維を示す。
本発明において、層(I)に含まれるCNFの数平均短軸径は、1nm以上100nm以下が好ましく、2nm以上50nm以下がより好ましく、4nm以上20nm以下が特に好ましい。数平均短軸径が1nm以上であると、高結晶性の微細化セルロース繊維構造をとることが出来、形成されるガスバリア層のガスバリア性が良好である。数平均短軸径が100nm以下であると、高い透明性を有するガスバリア層を形成できる。
CNFの数平均長軸径(平均繊維長)は、100nm以上であり且つ前記数平均短軸径の50倍以上であることが好ましい。これにより、ガスバリア層を形成を形成する際に、繊維同士が充分に絡み合い、充分な膜凝集力が得られる。
CNFの数平均長軸径は、200nm以上であり且つ前記数平均短軸径の100倍以上であることがより好ましい。
CNFの数平均長軸径の上限は、膜凝集力の点では特に限定されないが、製造し易さ等の点では、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。
CNFの数平均短軸径は、透過型電子顕微鏡観察および原子間力顕微鏡観察により100本の繊維(CNF)の短軸径(最小径)を測定し、その平均値として求められる。CNFの数平均長軸径は、透過型電子顕微鏡観察および原子間力顕微鏡観察により100本の繊維(CNF)の長軸径(最大径)を測定し、その平均値として求められる。
前記CNFは、N−オキシル化合物を用いた酸化反応により導入されたカルボキシ基を有することが好ましい。
TEMPOをはじめとするN−オキシル化合物を用いた酸化反応では、結晶表面のセルロース分子鎖が持つグルコピラノース単位の第6位の−CHOHが高い選択性で酸化され、アルデヒド基を経てカルボキシ基に変換される。
このように結晶表面に導入されたカルボキシ基を有するCNF間には静電的な反発力が働くため、水性媒体中で再凝集しにくく、分散安定性が良好である。
N−オキシル化合物を用いた酸化反応については後で詳しく説明する。
前記CNF中の前記カルボキシ基の含有量は、前記CNF1g当たり0.1mmol以上5.0mmol以下の範囲内であることが好ましく、0.5mmol以上2.0mmol以下であることがより好ましい。カルボキシ基量が0.1mmol/g以上であると、分散安定性が良好である。5.0mmol/g以下であると、CNFの結晶構造が充分に保持され、ガスバリア性および膜凝集力が良好である。
無機層状化合物としては、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイト、スチーブンサイト、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、白雲母、マーガライト、タルク、バーミキュライト、金雲母、ザンソフィライト、緑泥石等が挙げられる。
これらの無機層状化合物は市販品を用いることができる。市販品としては、スメクタイト系の粘土鉱物に属するサポナイト構造を有するスメクトンSA(クニミネ工業社製)、ソジウム型のモンモリロナイトであるクニピア−F(クニミネ工業社製)、合成マイカソマシフME−100(コープケミカル社製)、合成マイカPDM-5B(トピー工業社製)、精製された天然ベントナイトであるベンゲル(豊順洋行製)等が挙げられる。
無機層状化合物には有機化合物が複合化されていてもよい。有機化合物が複合化された無機層状化合物としては、例えば、長鎖アルキル基を有する第4級アンモニウムイオンがイオン交換によって層間にインターカレートされた無機層状化合物が挙げられる。このような無機層状化合物の市販品としては、ベントン27、ベントン38(エレメンティススペシャリティーズ社製)等が挙げられる。
層(I)に含まれる無機層状化合物は1種でも2種以上でもよい。
層(I)中の無機層状化合物の含有量は特に限定されないが、前記CNFの含有量を100質量%としたときに、該CNFに対する無機層状化合物の割合が、0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以上10質量%以下であることが特に好ましい。
CNFに対する無機層状化合物の割合が0.01質量%以上であると、形成されるガスバリア層のガスバリア性、特に高湿度条件下での酸素バリア性が良好である。20質量%以下であると、ガスバリア層が充分な膜凝集力を有し、ガスバリア性包装材の層間密着性が良好である。また、無機層状化合物が充分に薄片化され、ガスバリア層の透明性が良好となる。
層(I)中、CNFと無機層状化合物との合計量は、層(I)の総質量に対し、50質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。該合計量が50質量%以上であると、形成されるガスバリア層のガスバリア性、膜凝集力、バイオマス化度等が良好である。
該合計量の上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。
層(I)は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、CNFおよび無機層状化合物以外の他の成分をさらに含有してもよい。
該他の成分としては、例えばCNFの水性分散液の調製時にpH調整に用いられた成分を含有してもよい。CNFの水性分散液の調製方法は後で詳しく説明する。
また、該他の成分として、各種添加剤を含有してもよい。添加剤としては、当該ガスバリア層形成材料の用途等に応じて、公知の添加剤のなかから適宜選択できる。具体的には、アルコキシシラン等の有機金属化合物またはその加水分解物、無機層状化合物、無機針状鉱物、レベリング剤、消泡剤、水溶性高分子、合成高分子、無機系粒子、有機系粒子、潤滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、安定剤、磁性粉、配向促進剤、可塑剤、架橋剤等が挙げられる。
層(I)は、例えば、基材の少なくとも一方の面に、CNFと無機層状化合物とを含有する分散液(以下、層(I)形成用塗布液ともいう。)を塗布することにより形成できる。
該層(I)形成用塗布液を塗布すると、CNFおよび無機層状化合物が基材上に堆積する。その後、乾燥により分散液の分散媒が除去されることで、CNFおよび無機層状化合物が緻密に積層した層(I)が形成される。
層(I)形成用塗布液については後で詳しく説明する。
層(I)形成用塗布液の塗布は、公知の塗布方法を用いて実施できる。例えば、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーター、スピンコーター等のコーターを用いて塗布できる。
層(I)形成用塗布液の乾燥は、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射など、公知の乾燥方法を用いて実施できる。乾燥条件としては、特に限定しないが、乾燥温度としては20℃以上200℃以下が好ましく、30℃以上150℃以下がより好ましい。20℃以下では水性媒体の除去に時間がかかりすぎてしまい、200℃以上ではCNFが熱分解し黄変してしまうおそれがある。
層(I)形成用塗布液の塗布量、塗布回数等によって、形成される層(I)の厚み、ひいてはガスバリア層の厚みを調整できる。
形成された層(I)に放射線を照射すると、層(I)の構造が変化してガスバリア層となる。具体的には、層(I)を構成するCNF同士が架橋する。
放射線照射による層(I)の構造の変化について、添付の図1〜2を用いて説明する。
まず、CNFに放射線が照射されると、図1に示すように、CNFの繊維表面で、CNFを構成するセルロース分子の原子間の結合が切断されてラジカルが生成する。ラジカルは反応性が高く、瞬時に再結合して共有結合を形成する。隣接するCNFの表面に生じたラジカル同士の再結合により、CNF同士が架橋する。
放射線としては、ラジカルを生成させ得る限り特に限定されないが、電子線もしくはガンマー線が好ましく、改質効果に優れることから、電子線がより好ましい。
電子線の照射方法として、カーテン型、スキャン型、プラズマ放電型等、いずれも適用可能である。電子線の加速電圧としては1keVから10MeVが適用可能である。
放射線を照射する環境中に酸素が存在すると共有結合の生成が阻害されるため、酸素が存在しない環境で放射線を照射することが好ましい。例えば放射線照射中は、窒素パージなどを行い、酸素濃度が500ppm以下となるように保つことが好ましい。
放射線の照射線量としては、1kGy以上10Gy未満が好ましく、10kGy以上8Gy未満がより好ましく、50kGy以上5Gy未満が特に好ましい。
照射線量が1kGy以上であると、充分な量の共有結合が生成し、ガスバリア性の改善効果、膨潤抑制効果が充分に得られる。10Gy未満であると、放射線による基材やCNFの損傷を抑制できる。
ガスバリア層の厚みは、所望のガスバリア性に応じて適宜設定でき特に限定されないが、0.1〜5μmが好ましく、0.2〜3μmがより好ましい。該厚みが0.1μm以上であると、ガスバリア層を設けることによるガスバリア性の向上効果が充分に得られ、5μm以下であると、透明性および生産性が良好である。
ガスバリア層は、基材の片面のみに設けてもよく、両面に設けてもよい。
<基材>
基材としては、特に制限は無く、公知の種々のシート状の基材を用いることができ、例えばプラスチックフィルム、ガラス板、セルロース系基材、等が挙げられる。
プラスチックフィルムを構成するプラスチック材料としては、例えば、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル系(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、セルロース系(トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロファン等)、ポリアミド系(6−ナイロン、6,6−ナイロン等)、アクリル系(ポリメチルメタクリレート等)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、エチレンビニルアルコール等の有機高分子化合物が挙げられる。また、前述の有機高分子化合物の中から、少なくとも1種以上の成分を持つ、或いは共重合成分に持つ、或いはそれらの化学修飾体を成分に有する有機高分子材料も可能である。また、ポリ乳酸、バイオポリオレフィンなど植物から化学合成されるバイオプラスチック、ヒドロキシアルカノエートなど微生物が生産するプラスチック等を用いることも可能である。
セルロース系基材は、セルロース系材料から構成される基材であり、セルロース系材料としては、紙、セロハン、アセチル化セルロース、セルロース誘導体、微細化セルロース繊維等が挙げられる。
環境等への配慮から基材にも環境負荷の少ないものが求められる場合、基材としては、上記のうち、植物から化学合成されるバイオプラスチックを含む基材、微生物が生産するプラスチックを含む基材、セルロース系基材等が好ましい。
基材は、可塑剤、酸化防止剤、難燃剤、充填剤、帯電防止剤、結晶化促進剤、発泡剤、光沢剤、濡れ性改良剤等の添加剤を含有してもよい。
基材は、コロナ放電、プラズマ処理、酸化処理等の表面処理が施されていてもよい。
基材の厚さは、当該ガスバリア性包装材の用途等に応じて適宜設定でき特に限定されないが、通常、1〜100μm程度である。
<ヒートシール可能な熱可塑性樹脂層>
本発明のガスバリア性包装材は、前記基材および前記ガスバリア層に加えて、ヒートシール可能な熱可塑性樹脂層(以下、ヒートシール層ともいう。)をさらに有することが好ましい。
ヒートシール層は、袋状包装体などを形成する際に密封層として設けられるものである。ヒートシール層を有する場合、該ガスバリア性包装材を袋状包装体などの形状に容易に加工でき、包装材料としての有用性が高まる。
ヒートシール層としては、公知のものを用いることができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体またはそれらの金属架橋物等の樹脂の1種からなるフィルムが用いられる。
ヒートシール層の厚さは、目的に応じて決められるが、一般的には15〜200μmの範囲である。
<他の層>
本発明のガスバリア性包装材は、必要に応じて、前記基材、前記ガスバリア層および前記ヒートシール層以外の他の層をさらに有してもよい。ただしヒートシール層を有する場合、該ヒートシール層は、当該ガスバリア性包装材の少なくとも一方の最外層に配置される。
本発明のガスバリア性包装材が有してもよい他の層としては、たとえば、前記ガスバリア層または基材とヒートシール層との間に設けられる中間フィルム層、印刷層等が挙げられる。また、各層をドライラミネート法やウェットラミネート法で積層する場合には、該積層のための接着層(ラミネート用接着剤層)を有してもよい。また、ヒートシール層を溶融押し出し法で積層する場合には、該積層のためのプライマー層やアンカーコート層などを有してもよい。
中間フィルム層は、ボイルおよびレトルト殺菌時の破袋強度を高めるために設けられる。中間フィルム層を構成するフィルムとしては、機械強度及び熱安定性の面から、二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリプロレンフィルムの内から選ばれる少なくとも1種が好ましい。フィルムの厚さは、材質や要求品質等に応じて決められるが、通常、10〜30μmの範囲内である。
印刷層は、包装袋などとして実用的に用いるために形成される。
印刷層は、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系、塩化ビニル系等の従来から用いられているインキバインダー樹脂に各種顔料、体質顔料及び可塑剤、乾燥剤、安定剤等の添加剤などが添加されてなるインキにより構成される層であり、文字、絵柄等が形成された様態となっている。
ラミネート用接着剤層として用いられる接着剤としては、積層される各層の材質に応じてアクリル系、ポリエステル系、エチレン−酢酸ビニル系、ウレタン系、塩化ビニル−酢酸ビニル系、塩素化ポリプロピレン系などの公知の接着剤を用いることができる。
本発明のガスバリア性包装材の層構成は、当該ガスバリア性包装材の用途等を考慮して適宜設定できる。
本発明のガスバリア性包装材の好ましい層構成例(a)〜(c)を以下に示す。ただし本発明のガスバリア性包装材はこれらの層構成例に限定されるものではない。
(a)基材/ガスバリア層/ラミネート用接着剤層/ヒートシール層。
(b)基材/ガスバリア層/印刷層/ラミネート用接着剤層/ヒートシール層。
(c)基材/ガスバリア層/ラミネート用接着剤層/中間フィルム層/ラミネート用接着剤層/ヒートシール層。
<ガスバリア性包装材の製造方法>
本発明のガスバリア性包装材は、基材の少なくとも一方の面にガスバリア層を形成し、必要に応じて、ヒートシール層および他の層を、所望の層構成となるように積層することにより製造できる。
ガスバリア層は、例えば上述したように、基材の少なくとも一方の面に、層(I)形成用塗布液(CNFと無機層状化合物とを含有する分散液)を塗布して層(I)を形成し、該層(I)に対して放射線を照射することにより形成できる。
ヒートシール層の積層方法としては、ヒートシール層を形成するフィルムを、ラミネート用接着剤層を形成するための接着剤(2液硬化型ウレタン樹脂など)を用いて貼り合わせるドライラミネート法等を用いることが一般的であるが、これに限定されず、公知の方法により積層することができる。
中間フィルム層の積層方法としては、ラミネート用接着剤層を形成するための接着剤(2液硬化型ウレタン樹脂など)を用いて貼り合わせるドライラミネート法を用いることができる。
印刷層は、グラビア印刷、フレキソ印刷等の公知の印刷法により形成できる。
ヒートシール層または中間フィルム層の積層時に、ラミネート用接着剤層を形成するための接着剤の塗布方法としては、公知の塗布法を用いることができる。例えば、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーター等を用いて塗布できる。接着剤の塗布量としては、1〜10g/mが好ましい。
<層(I)形成用塗布液>
層(I)形成用塗布液は、CNFと無機層状化合物とを含有する分散液である。
層(I)形成用塗布液中のCNFの含有量は特に限定されないが、通常、層(I)形成用塗布液の総質量に対し、0.01質量%以上5質量%以下が好ましい。0.01質量%未満であると、成形体形成用組成物としては溶媒過多となってしまい、ガスバリア層をある程度の厚みまで厚くするのに手間がかかる。5質量%を超えると、CNF同士の絡み合いで粘度が上昇し、均一な攪拌が難しくなる。
層(I)形成用塗布液中の無機層状化合物の含有量は、層(I)中のCNFに対する無機層状化合物の所望の割合に応じて設定される。
層(I)形成用塗布液は、CNFおよび無機層状化合物以外に、前述した他の成分をさらに含有してもよい。
層(I)形成用塗布液において、CNFおよび無機層状化合物を分散させる分散媒としては、通常、水性媒体が用いられる。
水性媒体としては、水、または水と有機溶剤との混合液が挙げられる。該有機溶剤としては、水に溶解あるいは均一に混合し、かつCNFおよび無機層状化合物の分散性を損なわないものであれば特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等が挙げられ、アルコールが好ましい。
水性媒体としては、水が特に好ましい。
層(I)形成用塗布液の調製方法は、特に限定されないが、例えば、CNFの分散液に無機層状化合物(および必要に応じて他の成分)を添加する方法が挙げられる。
無機層状化合物は、粉末状のものを直接添加してもよく、分散液の状態で添加してもよい。分散の均一性の点で、分散液の状態で添加することが好ましい。
無機層状化合物の分散液の作製方法は特に限定しないが、例えば無機層状化合物を、所定の濃度となるように分散媒中に添加し、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、ボールミル、ロールミル、カッターミル、遊星ミル、ジェットミル、アトライター、グラインダー、ジューサーミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、ナノジナイザー、水中対向衝突などを用いた湿式粉砕を行う方法が挙げられる。
CNFの分散液は、市販のものを用いてもよく、公知の製造方法を利用して製造したものを用いてもよい。
以下、木材系天然セルロースから、N−オキシル化合物を用いた酸化反応により導入されたカルボキシ基を有するCNFの分散液を調製する方法の一例を説明する。
この例の調製方法は、木材系天然セルロースを、N−オキシル化合物を用いて酸化して酸化セルロースを得る工程(酸化工程)と、該酸化セルロースを水性媒体中で微細化してCNF分散液を調製する工程(微細化工程)とを含む。
(酸化工程)
木材系天然セルロースとしては、特に限定されず、針葉樹パルプや広葉樹パルプ、古紙パルプ、など、一般的にセルロースナノファイバーの製造に用いられるものを用いることができる。精製および微細化のしやすさから、針葉樹パルプが好ましい。
N−オキシル化合物としては、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシラジカル)、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−エトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、等が挙げられる。その中でも、TEMPOが好ましい。
N−オキシル化合物の使用量は、触媒としての量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して0.01〜5.0質量%程度である。
N−オキシル化合物を用いた酸化方法としては、木材系天然セルロースを水中に分散させ、N−オキシル化合物の共存下で酸化処理する方法が挙げられる。
このとき、N−オキシル化合物とともに、共酸化剤を併用することが好ましい。この場合、反応系内において、N−オキシル化合物が順次共酸化剤により酸化されてオキソアンモニウム塩が生成し、該オキソアンモニウム塩によりセルロースが酸化される。かかる酸化処理によれば、温和な条件でも酸化反応が円滑に進行し、カルボキシ基の導入効率が向上する。酸化処理を温和な条件で行うと、セルロースの結晶構造を維持しやすい。
前記共酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸や過ハロゲン酸、またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、窒素酸化物、過酸化物など、酸化反応を推進することが可能であれば、いずれの酸化剤も用いることができる。入手の容易さや反応性から、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
前記共酸化剤の使用量は、酸化反応を促進することができる量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して1〜200質量%程度である。
前記N−オキシル化合物および共酸化剤とともに、臭化物およびヨウ化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物をさらに併用してもよい。これにより、酸化反応を円滑に進行させることができ、カルボキシ基の導入効率を改善することができる。
該化合物としては、臭化ナトリウムまたは臭化リチウムが好ましく、コストや安定性から、臭化ナトリウムがより好ましい。
該化合物の使用量は、酸化反応を促進することができる量でよく、特に限定されない。
通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して1〜50質量%程度である。
前記酸化反応の反応温度は、4〜50℃が好ましく、10〜40℃がより好ましい。4℃以下であると、試薬の反応性が低下し反応時間が長くなってしまう。50℃以上であると副反応が促進して試料が低分子化し、成形体を形成した際の材料特性を損なってしまう。
前記酸化処理の反応時間は、反応温度、所望のカルボキシ基量等を考慮して適宜設定でき、特に限定されないが、通常、1〜5時間程度である。
前記酸化反応時の反応系のpHは、9〜11が好ましい。該pHは、20℃におけるpHである。pHが9以上であると反応を効率よく進めることができる。pHが11を超えると副反応が進行し、試料の分解が促進されてしまうおそれがある。
前記酸化処理においては、酸化が進行するにつれて、カルボキシ基が生成することにより系内のpHが低下してしまう。酸化処理中、反応系のpHを9〜11に保つことが好ましい。反応系のpHを9〜11に保つ方法としては、pHの低下に応じてアルカリ水溶液を添加する方法が挙げられる。アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム水溶液などの有機アルカリなどが挙げられる。コストなどの面から水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
前記N−オキシル化合物による酸化反応は、反応系にアルコールを添加することにより停止させることができる。このとき、反応系のpHは前記の範囲内に保つことが好ましい。
添加するアルコールとしては、反応をすばやく終了させるためメタノール、エタノール、プロパノールなどの低分子量のアルコールが好ましく、反応により生成される副産物の安全性などから、エタノールが特に好ましい。
酸化処理後の反応液は、そのまま微細化工程に供してもよいが、N−オキシル化合物等の触媒、不純物等を除去するために、反応液に含まれる酸化セルロースを回収し、洗浄液で洗浄することが好ましい。
酸化セルロースの回収は、ガラスフィルターや20μm孔径のナイロンメッシュを用いたろ過等の公知の方法により実施できる。
酸化セルロースの洗浄に用いる洗浄液としては蒸留水が好ましい。
(微細化工程)
酸化セルロースを微細化する方法としてはまず、酸化セルロースに水性媒体を加えて懸濁させる。
水性媒体としては、前記と同様のものが挙げられ、水が特に好ましい。
必要に応じて、酸化セルロースや生成するCNFの分散性を上げるために、懸濁液のpH調整を行ってもよい。pH調整に用いられるアルカリ水溶液としては、前記酸化工程の説明で挙げたアルカリ水溶液と同様のものが挙げられる。
続いて該懸濁液に物理的解繊処理を施して、酸化セルロースを微細化する。
物理的解繊処理としては、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、ボールミル、ロールミル、カッターミル、遊星ミル、ジェットミル、アトライター、グラインダー、ジューサーミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、ナノジナイザー、水中対向衝突などの機械的処理が挙げられる。
このような物理的解繊処理を行うことで、懸濁液中の酸化セルロースが微細化され、繊維表面にカルボキシ基を有するCNFの分散液を得ることができる。このときの物理的解繊処理の時間や回数により、得られるCNF分散液に含まれるCNFの数平均短軸径および数平均長軸径を調整できる。
上記のようにして、カルボキシ基が導入されたCNFの分散液が得られる。
得られた分散液は、そのまま、または希釈、濃縮等を行って、層(I)形成用塗布液の調製に用いることができる。また、該分散液中に含まれるCNFを回収し、これを分散媒に分散させたものを層(I)形成用塗布液の調製に用いてもよい。
なお、本発明において用いられるCNFは、上記の方法により得られるものに限定されない。
たとえば上記方法で原料として用いるセルロースの種類は木材系天然セルロースに限定されず、例えばコットンリンター、竹、麻、バガス、ケナフ、バクテリアセルロース、ホヤセルロース、バロニアセルロースといった非木材系天然セルロースを用いてもよい。材料調達の容易さおよび安定供給の面から、木材系天然セルロースが好ましい。
CNFは、前述のN−オキシル化合物による酸化処理および物理的解繊処理の組み合わせにより得られるものに限定されず、該酸化処理、希酸加水分解処理等による化学処理、物理的解繊処理、酵素処理等の公知の方法のいずれか1種を単独で用いて得られたものでも、2種以上を組み合わせて得られたものでもよい。また、バクテリアセルロースも、アルデヒド基が導入されるCNFとして用いることが出来る。積層体を形成した時の透明性を考慮すると、各種セルロース系材料を、前述のN−オキシル化合物による酸化処理および物理的解繊処理の組み合わせにより微細化したCNFを用いることが好ましい。
<作用・効果>
本発明のガスバリア性包装材は、前記ガスバリア層を有することから、基材単独の場合に比べて、優れたガスバリア性を有する。該ガスバリア性は、低湿度条件下はもちろん、高湿度条件下でも良好である。
すなわち、CNFおよび無機層状化合物を含有する層(I)は、多数のCNFが緻密に積層したCNF積層膜中に無機層状化合物が分散した構造を有する。そこに放射線を照射すると、上述したように、CNF間の架橋が進行する。その結果、放射線照射後の層(I)(ガスバリア層)においては、CNF間の架橋構造と、その中に分散配置された無機層状化合物が、ガス透過における迷路効果を発揮し、放射線照射前に比べて、ガスバリア性が大幅に向上する。また、CNF同士が架橋していることによって、吸湿による膜の膨潤が抑制されており、そのため、高湿度条件下でもガスバリア性が低下しにくい。
また、該ガスバリア層は、膜凝集力も良好である。無機層状化合物の添加は通常、膜凝集力の低下を伴うが、CNF同士を架橋させることで、CNF同士を架橋させない場合に比べて、ガスバリア性が高まる。そのため、CNF同士を架橋させない場合に比べて、目的とする酸素バリア性を達成するために必要な無機層状化合物の配合量が少なくなり、無機層状化合物の配合量の増加に伴う膜凝集力の低下を抑制することができる。
ガスバリア層の膜凝集力が良好であることから、ガスバリア性包装材の層間密着性(例えば基材とガスバリア層と基材との間の密着性、ガスバリア層を介して積層した基材とヒートシール層との間の密着性等)も良好であり、実用上有用である。
また、無機層状化合物の配合量を削減できるため、更なる膜凝集力の向上が期待できる他、ガスバリア層自体のバイオマス化度を上昇させることも可能になり、温暖化ガスの排出量低減の観点からも優れた特徴を有する、よりカーボンニュートラルな新規ガスバリア包装材とすることができる。
本発明のガスバリア性包装材は、各種物品を包装する包装材として用いられる。特に、ガスバリア性を有することから、酸素ガス、水蒸気、その他各種ガスによって変質や腐敗、劣化等が生じるおそれのある物品、例えば食品、医薬品、エレクトロニクス部品等、の包装に用いられる包装材料として有用である。具体的には、相対湿度70%、30℃の条件下で15cc(cm/m・day・Pa)以下、より好ましくは10cc(cm/m・day・Pa)以下の酸素バリア性があれば、食品用包装材料として実用化の可能性があり、本発明におけるガスバリア性包装材は該条件を十分に満たしている。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明の技術範囲はこれらの実施形態に限定されるものではない。
以下の各例において、「%」は、特に断りのない限り、質量%(w/w%)を示す。
[実施例1〜16
(木材セルロースのTEMPO酸化)
針葉樹クラフトパルプ70gを蒸留水3500gに懸濁し、蒸留水350gにTEMPOを0.7g、臭化ナトリウムを7g溶解させた溶液を加え、20℃まで冷却した。ここに2mol/L、密度1.15g/mLの次亜塩素酸ナトリウム水溶液450gを滴下により添加し、酸化反応を開始した。系内の温度は常に20℃に保ち、反応中のpHの低下は0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加することでpH10に保ち続けた。セルロースの質量に対して、水酸化ナトリウムが3.00mmol/gになった時点で、過剰量のエタノールを添加し反応を停止させた。その後、ガラスフィルターを用いて蒸留水によるろ過洗浄を繰り返し、酸化パルプを得た。
(酸化パルプのカルボキシ基量測定)
上記TEMPO酸化で得た酸化パルプを固形分重量で0.1g量りとり、1%濃度で水に分散させ、塩酸を加えてpHを2.5とした。その後0.5N水酸化ナトリウム水溶液を用いた電導度滴定法により、酸化パルプ1g当たりのカルボキシ基量(mmol/g)を求めた。結果は1.6mmol/gであった。
(酸化パルプの解繊処理)
前記TEMPO酸化で得た酸化パルプ1gを99gの蒸留水に分散させ、ジューサーミキサーで30分間微細化処理し、CNF濃度1%のCNF水分散液を得た。
該CNF水分散液に含まれるCNFの数平均短軸径は4nm、数平均長軸径は1110nmであった。
(無機層状化合物の分散処理および添加)
無機層状化合物としては、合成マイカソマシフME−100(コープケミカル社製)または合成マイカPDM-5B(トピー工業社製)を用いた。
各種無機層状化合物を固形分濃度5%で水中に浸漬し、ジューサーミキサーで30分間攪拌処理して水中に分散させた。得られた該無機層状化合物分散液を、表1に記載の組成に従い、前記CNF水分散液に対し攪拌しながら添加して、CNFおよび無機層状化合物を含む層(I)形成用塗布液を調製した。
(ガスバリア性包装材の作製と評価)
前記層(I)形成用塗布液を、膜厚25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にバーコーター#100を用いて塗布し、120℃で30分乾燥して層(I)を形成した。層(I)形成用塗布液の塗布量は、層(I)の膜厚(乾燥後)が約1μmになる量とした。形成された層(I)の膜厚は、反射分光式膜厚計(FE−3000、大塚電子)により確認した。
次に、基材上に形成された層(I)に対し、大型基盤対応電子線照射装置(型式LB4008、(株)アイ・エレクトロンビーム)を用いて、表1に示す照射線量での電子線照射処理を行ってガスバリア層を形成した。照射線量は、表2に従い、ビーム電流値とラインスピードにより制御した。また、加速電圧は120keVに固定した。
次に、形成されたガスバリア層の上に、ラミネート用接着剤層を介してヒートシール層をドライラミネーション法により貼り合わせ、50℃、4日間養生した。これにより、基材(PETフィルム)/ガスバリア層/ラミネート用接着剤層/ヒートシール層の層構成のガスバリア性包装材を得た。
ヒートシール層としては、厚さが70μmの未延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(RXC22、三井化学東セロ社製)を使用し、ラミネート用接着剤層を形成する接着剤としては、二液硬化型ポリウレタン系ラミネート用接着剤(A525/A52、三井化学ポリウレタン社製)を使用した。接着剤は、グラビアコート法により、乾燥後の塗布量が3.0g/mとなるようにガスバリア層上に塗布した。
実施例1〜16で得られたガスバリア性包装材は、透明な外観を有していた。
これらのガスバリア性包装材について、下記の評価を行った。結果は表1に併記した。
<酸素透過度(等圧法)の測定>
ガスバリア性包装材の酸素透過度(cm/m・day・Pa)を、酸素透過度測定装置MOCON−OXTRAN(モダンコントロール社製)を用いて、30℃・70%RH雰囲気下で測定した。
<膜密着強度の測定>
ガスバリア性包装材を幅15mm×長さ10cmの短冊状に切り抜き試験片とした。該試験片について、JIS−K−7127に準拠して、引張り速度300mm/minでT字剥離を行い、基材(PETフィルム)とヒートシール層(CPPフィルム)との間の密着強度(N/15mm)を測定した。試験環境は25℃・70%RHとした。
該密着強度が大きいほど、ガスバリア層の膜凝集力が大きいことを示す。
[比較例1]
層(I)形成用塗布液として、実施例1〜16の(酸化パルプの解繊処理)で得られたCNF濃度1%のCNF水分散液をそのまま使用し、層(I)に対する電子線照射処理を行わなかった以外は実施例1〜16と同様の方法にてガスバリア性包装材を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例2]
層(I)形成用塗布液として、実施例1〜16の(酸化パルプの解繊処理)で得られたCNF濃度1%のCNF水分散液をそのまま使用し、層(I)に対する電子線照射処理の照射線量を800kGyとした以外は実施例1〜16と同様の方法にてガスバリア性包装材を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例3]
層(I)形成用塗布液として、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMC−Na)の1%水溶液を使用し、層(I)に対する電子線照射処理の照射線量を800kGyとした以外は実施例1〜16と同様の方法にてガスバリア性包装材を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例4]
層(I)に対する電子線照射処理を行わなかった以外は実施例5〜8と同様の方法にてガスバリア性包装材を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例5]
層(I)に対する電子線照射処理を行わなかった以外は実施例13〜16と同様の方法にてガスバリア性包装材を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 0006326721
Figure 0006326721
酸素透過度測定の結果において、実施例1〜16と比較例1,2を対比すると、CNFのみを含むガスバリア層であっても電子線照射処理によってある程度酸素バリア性が改善するが、その効果は充分ではなく、実施例1〜16のように無機層状化合物を添加することにより、ガスバリア包装材として実用的な酸素バリア性を高湿度下において発揮することがわかった。
また、同じ無機層状化合物を同じ量配合した実施例5〜8と比較例4を対比すると、電子線照射処理によって高湿度下での酸素バリア性が著しく向上していることが確認された。実施例13〜16と比較例5の対比においても同様の傾向が確認された。これは電子線照射処理により生じたラジカルを介してCNF同士が共有結合し、架橋構造を形成したためである。
また、密着強度測定の結果において、実施例5〜8と比較例4、または実施例13〜16と比較例5を対比すると、電子線照射処理を併用することによって、酸素バリア性だけでなく、膜凝集力も大幅に改善することが確認された。
また、実施例1〜4と比較例4を対比すると、無機層状化合物の添加量を5%とした実施例1〜4は、比較例4の半分の無機層状化合物の添加量で、比較例4と同等以上の酸素透過度を達成でき、しかも比較例4より大幅に密着強度が高かった。実施例9〜12と比較例5の対比においても同様の傾向が確認された。このことから、電子線照射処理を併用することで、層状化合物の添加量を削減し、酸素透過度と密着強度とを両立させることが可能になることが示された。
CNFの代わりにCMC−Naを用いた比較例3においては、電子線照射による密着強度の上昇は確認されたが、酸素透過度の改善は見られなかった。これはCMC−NaがCNFのような高結晶性を有していないためではないかと考えられる。
本発明により、低環境負荷プロセスにより作製された、カーボンニュートラルで実用性の高いガスバリア材の提供が可能となる。

Claims (9)

  1. 基材と、前記基材の少なくとも一方の面に積層したガスバリア層と、を有し、
    前記ガスバリア層が、セルロースナノファイバーと無機層状化合物とからなる層(I)に放射線を照射して、前記セルロースナノファイバーを分子間で架橋させたものであり、
    前記セルロースナノファイバーの数平均短軸径が1nm以上100nm以下であり、前記セルロースナノファイバーの数平均長軸径が100nm以上であり且つ前記数平均短軸径の50倍以上であることを特徴とするガスバリア性包装材。
  2. 前記層(I)への放射線の照射線量が1kGy以上10Gy未満である請求項1に記載のガスバリア性包装材。
  3. 前記放射線が電子線である請求項1または2に記載のガスバリア性包装材。
  4. 前記層(I)中の、前記セルロースナノファイバーに対する前記無機層状化合物の割合が0.01質量%以上20質量%以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載のガスバリア性包装材。
  5. 前記セルロースナノファイバーが、N−オキシル化合物を用いた酸化反応によって導入されたカルボキシ基を有する請求項1〜のいずれか一項に記載のガスバリア性包装材。
  6. 前記カルボキシ基の含有量が、前記セルロースナノファイバー1g当たり0.1mmol以上5.0mmol以下である請求項に記載のガスバリア性包装材。
  7. ヒートシール可能な熱可塑性樹脂層をさらに有する請求項1〜のいずれか一項に記載のガスバリア性包装材。
  8. 基材と、前記基材の少なくとも一方の面に積層したガスバリア層と、を有するガスバリア性包装材を製造する方法であって、
    基材の少なくとも一方の面に、セルロースナノファイバーと無機層状化合物とを含有する分散液を塗布して層(I)を形成する工程と、
    前記層(I)に対して放射線を照射して、前記セルロースナノファイバーを分子間で架橋させてガスバリア層とする工程と、を備え、
    前記層(I)への放射線の照射線量が400kGy以上5Gy未満であり、
    前記セルロースナノファイバーの数平均短軸径が1nm以上100nm以下であり、前記セルロースナノファイバーの数平均長軸径が100nm以上であり且つ前記数平均短軸径の50倍以上であるガスバリア性包装材の製造方法。
  9. 前記層(I)が、セルロースナノファイバーと無機層状化合物とからなる請求項に記載のガスバリア性包装材の製造方法。
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