JP6414284B2 - ガスバリア層形成用の塗工液、ガスバリア性積層体及び包装材料 - Google Patents
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従来、ガスバリア性材料としては温度や湿度の影響が少ないアルミニウムやポリ塩化ビニリデンが用いられてきた。しかしながら、これらを焼却処分する際には、アルミニウムにおいては焼却残渣が排気口や炉内部で詰まり焼却効率を下げてしまう問題、ポリ塩化ビニリデンにおいてはダイオキシンが発生してしまう等の問題が生じてしまうため、環境負荷の少ない材料への代替が求められている。例えば、特許文献1にあるように、同じ化石資源から作られる材料であっても、アルミニウムや塩素を含まないポリビニルアルコールやエチレンビニルアルコール共重合体への一部代替が進められているが、さらに、将来的には、石油由来材料からバイオマス材料への代替が期待されている。
さらに、セルロースナノファイバーに無機層状化合物を添加すると、相溶性が悪く製膜の強度の低下や、基材との密着性が低下してしまう問題がある。そこで上記の方法で耐湿化を達成すると共に膜自体の強度を高め、密着性を向上させる方法が求められる。
また、上記のガスバリア層形成用の塗工液において、前記水溶性高分子は、エチレン組成が3mol%以上、60mol%以下のエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂であることを特徴としてもよい。
また、上記のガスバリア性積層体において、前記基材と前記ガスバリア層との間に形成されたアンカー層をさらに備え、前記基材は、ポリエチレンテレフタラートフィルムであり、前記アンカー層は、ポリエチレン系エマルジョンのアンカー剤を含んでいることを特徴としてもよい。
本発明のさらに別の態様に係る包装材料は、上記のガスバリア性積層体と、前記ガスバリア性積層体で形成された塗工膜を有する面上に接着層を介して取り付けられたヒートシール可能な熱可塑性樹脂層と、を備えることを特徴とする。
また、上記の包装材料において、前記接着層は、二液硬化型ポリウレタン系接着剤であり、前記熱可塑性樹脂層は、無延伸ポリプロピレンフィルムであることを特徴としてもよい。
本発明のさらに別の態様に係る包装材料は、上記のガスバリア性積層体と、前記ガスバリア性積層体で形成された塗工膜を有する面上に第一の接着層を介して取り付けられた中間フィルム層と、前記中間フィルム層上に第二の接着層を介して取り付けられたヒートシール可能な熱可塑性樹脂層と、を備えることを特徴とする。
また、水溶性高分子を添加することによって、セルロースナノファイバーと無機層状化合物の相溶性も向上し、膜強度が強く、基材との密着が改善された複合化膜を作成することができる。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明の実施形態に係るガスバリア層形成用の塗工液は、セルロースナノファイバーと水溶性高分子、無機層状化合物から構成される。
本発明の実施形態に係る塗工液に含まれるセルロースナノファイバーとしては、その繊維幅が、3nm以上50nm以下、長さ数μmのものを用いることができる。繊維幅が前記範囲内であると、透明、且つ強度の高い膜を得ることができる。特に、繊維幅が3nm以上10nm以下の範囲内が好適であり、繊維同士の絡み合いがより緻密となるため、ガスバリア性や強度などの性能に優れた膜を得ることができる。
また、繊維の絡み合いが密であるかどうかは、例えば、SEM(S−4800、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いた表面観察や、キャストフィルムの比重を測定することで判断することができる。キャストフィルムの比重の測定については、デジタル比重計(AND−DMA−220、安藤計器製工所製)を用いて測定することができ、サンプルであるキャストフィルムは、セルロースナノファイバー水分散液をポリスチレン製の角型ケース内に所定量流し込み50℃、24時間加熱乾燥することにより作製することができる。
原料の天然セルロースは、針葉樹や広葉樹などから得られる各種木材パルプ、又はケナフ、バガス、ワラ、竹、綿、海藻などから得られる非木材パルプ、ホヤから得られるセルロース、微生物が生産するセルロース等を用いることができる。また、結晶構造については、セルロースI型のものが好ましい。
酸化反応の温度条件は、5℃以上70℃以下の範囲内であれば良いが、反応温度が高くなると副反応が生じやすくなることを考慮し50℃以下が好ましい。
また、分散方法としては、例えば、ミキサー、高速ホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、グラインダー磨砕、凍結粉砕、メディアミル、ボールミルの何れか或いはこれらを組み合わせて用いることができる。
次に、本発明の実施形態に係るガスバリア層形成用の塗工液の製造方法について説明する。塗工液の調液方法としては、解繊したセルロース分散液(即ち、セルロースナノファイバー分散液)にアルコールを加え、水・アルコール混合溶媒としたものに水溶性高分子、無機層状化合物の分散液を添加し攪拌する方法をとることができる。また、水溶性高分子、無機層状化合物の分散液もアルコールを添加した後に混合することができる。アルコールを加えることで固形分濃度を向上させることができ、製膜性が向上する場合がある。
また、前述の分散手段を用いることにより、無機層状化合物の薄片化が進行すると共に微細化される。この処理を行うことで粗大な粒子を細かくすることが可能である。粗大粒子が存在する場合、膜表面から無機粗大粒子が突き出し、接着剤が均一に塗工できないことから密着性が低下する場合がある。
本発明の実施形態では、上記の塗工液を基材の少なくとも一方の面上に塗布し乾燥することによって、基材の少なくとも一方の面にガスバリア層を形成する。ガスバリア層の形成方法としては、公知の塗布法を用いることができ、例えば、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーター等を用いることができる。以上の塗布方法を用いて、基材の少なくとも一方の面に塗布する。乾燥方法としては、自然乾燥、送風乾燥、熱風乾燥、UV乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等を用いることができる。
さらに、ガスバリア層上には、必要に応じて中間フィルム層、ヒートシール可能な熱可塑性樹脂層(ヒートシール層)、印刷層などを積層し、包装材料とすることができる。また、各層をドライラミネート法やウェットラミネート法で積層するための接着層(ラミネート用接着剤層)や、ヒートシール層を溶融押出し法で積層する場合のプライマー層やアンカーコート層などを積層しても良い。
以下、本発明の実施形態に係るガスバリア性積層体を包装材料として用いる場合の構成例(a)〜(c)を示す。しかし、本発明の実施形態に係るガスバリア性積層体はこれに限定されるものではない。
(a)基材/ガスバリア層/ラミネート用接着剤層/ヒートシール層
(b)基材/ガスバリア層/印刷層/ラミネート用接着剤層/ヒートシール層
(c)基材/ガスバリア層/ラミネート用接着剤層/中間フィルム層/ラミネート用接着剤層/ヒートシール層
図1は、本発明の実施形態に係るガスバリア性積層体10の構成例を示す断面図である。
図1に示すように、このガスバリア性積層体10は、基材1と、基材1の少なくとも一方の面(一例として、上面)上に形成されたアンカー層5と、アンカー層5上に形成されたガスバリア層2と、ガスバリア層2上に形成された接着層3と、接着層3上に形成されたヒートシール層4とを有する。ここで、ガスバリア層2は、上述したように、セルロースナノファイバーと水溶性高分子、無機層状化合物から構成される塗工液を、基材1の一方の面上に塗布することにより形成された層である。ガスバリア層2は、酸素や水蒸気などの気体の透過を遮断する機能(即ち、ガスバリア性)を有する。また、アンカー層5は、塗工液の塗布性と塗布後の安定性を高めるための下引き層である。
本発明の実施形態によれば、セルロース系材料を利用することで、環境負荷の少ないガスバリア性の塗工液を提供することができる。また、セルロースナノファイバーと無機層状化合物、水溶性高分子から成る塗工液を用いることで、高湿度環境下においても優れたガスバリア性を示し、さらに、劣化因子となる水蒸気などの浸入・浸透を抑制することが可能なガスバリア層2を作成することができる。
また、水溶性高分子を添加することによって、セルロースナノファイバーと無機層状化合物の相溶性も向上し、膜強度が強く、基材との密着が改善されたガスバリア層2を形成することができる。
漂白クラフトパルプ10gを水500ml中で一晩静置し、パルプを膨潤させた。これを20℃に温度調整し、TEMPO 0.1gと臭化ナトリウム 1gを添加し、パルプの懸濁液とした。さらに、攪拌しながらセルロース質量当たり10mmol/gの次亜塩素酸ナトリウムを添加した。この際、約1Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加してパルプ懸濁液のpHを約10.5に保持した。その後240分間酸化反応を行い、十分に水洗しパルプを得た。得られたパルプをイオン交換水で固形分濃度1.3%に調整し、高速回転ミキサーを用いて約60分間攪拌し、透明なセルロースナノファイバーの分散液を得た。さらにこのセルロースナノファイバーの分散液にイソプロピルアルコールを加えて固形分濃度を1%とした。
市販品のEVOH(ソアノールD2908B、ソアノールDC3212B、ソアノールA4412B、日本合成社製)50gをビーカーに量りとり、純水475g、イソプロピルアルコール475gを加えた。これを100℃に加熱し、溶解させ5%溶液を得た。この5%溶液を水:イソプロピルアルコール=1:1の溶液を用いて希釈し、1%とした後に使用した。
[無機層状化合物の分散方法1]
市販品の合成マイカ、PDM−5B(トピー工業社製)を水に分散させ1%分散液として用いた。
セルロースナノファイバーの1%分散液をビーカーに100g量り取る。分散液を攪拌しながら加熱して80℃とした。これに上記各種のEVOHの1%溶液を80℃に加熱した後に50g添加してセルロース/EVOH=100/50となるように混合する。10分程度加熱攪拌した後に温度を維持したまま合成マイカの1%溶液を10g添加してセルロース/合成マイカ/EVOH=100/10/50として十分攪拌する。ソアノールD2908を使用したものを塗工液(1)、DC3212Bを使用したものを塗工液(2)、A4412Bを使用したものを塗工液(3)とした。
セルロースナノファイバーの1%分散液をビーカーに100g量り取る。分散液を攪拌しながら加熱して60℃とした。これに上記各種のEVOHの1%溶液を60℃に加熱した後に50g添加してセルロース/EVOH=100/50となるように混合する。10分程度加熱攪拌した後に温度を維持したまま合成マイカの1%溶液を10g添加してセルロース/合成マイカ/EVOH=100/10/50として十分攪拌する。上記と同様に塗工液(4)〜(6)とした。
セルロースナノファイバーの1%分散液をビーカーに100g量り取る。この分散液を攪拌しながら合成マイカの1%分散液を10g添加する。さらにこの混合液を80℃に加熱し10分程度攪拌した。これを塗工液(7)とした。
[塗工液の調製方法4]
セルロースナノファイバーの1%分散液をビーカーに100g量り取る。この分散液を攪拌しながら合成マイカの1%分散液を10g添加する。さらにこの混合液を80℃に加熱し10分程度攪拌した。さらにこの混合液にPVA124の水溶液1%を50g添加して攪拌した。これを塗工液(8)とした。
[実施例1〜6におけるガスバリア性フィルムの作製]
厚さ25μmポリエチレンテレフタラートフィルム(ポリエステルフィルム E5102、東洋紡社製)基材上に、ポリエチレン系エマルジョンのアンカー剤(TD−4010、ユニチカ社製)をグラビアコート法により、乾燥後の塗布量が0.3g/m2となるように塗工した。続いてこのアンカー層上に塗工液の調製方法1、2に示した配合比、調液手法で作製した塗工液(1)〜(6)を、バーコート法により乾燥膜厚1.0μmになるように塗布後、乾燥させガスバリア層を形成し、ガスバリア性フィルムを作製した。
さらに、作製したガスバリア性フィルム(1)〜(6)を包装材料として用いるために、ガスバリア層側に、ラミネート用接着剤層を介してヒートシール層をドライラミネーション法により貼り合わせ、50℃、4日間養生して、包装材料用ガスバリア性フィルムを作製した。ヒートシール層としては、厚さが70μmのCPP(RXC22、三井化学東セロ社製)を使用し、ラミネート用接着剤層を形成する接着剤としては、二液硬化型ポリウレタン系ラミネート用接着剤(A525/A52、三井化学社製)を使用した。接着剤は、グラビアコート法により、乾燥後の塗布量が3.0g/m2となるようにガスバリア層上に塗布した。
[比較例1〜2におけるガスバリア性フィルムの作製]
厚さ25μmポリエチレンテレフタラートフィルム(ポリエステルフィルム E5102、東洋紡社製)基材上に、ポリエチレン系エマルジョンのアンカー剤(TD−4010、ユニチカ社製)をグラビアコート法により、乾燥後の塗布量が0.3g/m2となるように塗工した。続いて塗工液の調製方法に示した配合比、調液手法で作製した塗工液(7)、(8)を、バーコート法により乾燥膜厚1.0μmになるように塗布後、乾燥させガスバリア層を形成し、ガスバリア性フィルムを作製した。
さらに、作製したガスバリア性フィルム(7)、(8)を包装材料として用いるために、ガスバリア層側に、ラミネート用接着剤層を介してヒートシール層をドライラミネーション法により貼り合わせ、50℃、4日間養生して、包装材料用ガスバリア性フィルムを作製した。ヒートシール層としては、厚さが70μmのCPP(RXC22、三井化学東セロ社製)を使用し、ラミネート用接着剤層を形成する接着剤としては、二液硬化型ポリウレタン系ラミネート用接着剤(A525/A52、三井化学ポリウレタン社製)を使用した。接着剤は、グラビアコート法により、乾燥後の塗布量が3.0g/m2となるようにガスバリア層上に塗布した。得られたガスバリア性フィルムの性能は、下記の方法に従って評価した。
酸素透過度測定装置MOCON(OX−TRAN2/21、モダンコントロール社製)を用いて、30℃、40%RH及び70%RHの雰囲気下で測定をおこなった。ガスバリア性フィルムの酸素透過度を測定した結果を表に示す。
[水蒸気透過度の測定]
40℃、90%RH雰囲気下での水蒸気透過度(g/m2・day)を、水蒸気過度測定装置PERMATRAN W−3/33 MG(モダンコントロール社製)を用いて測定した。得られた包装材料用ガスバリア性フィルムのラミネート強度は以下の方法に従って評価した。
各3層積層体を、幅15mm×長さ10cmの短冊状に切り抜き、試験片とした。該試験片について、JIS−K−7127に準拠して、引張り速度300mm/minでT字剥離を行って、基材とPPフィルムの間の密着強度(N/15mm)を測定した。
2 ガスバリア層
3 接着層
4 ヒートシール層(熱可塑性樹脂層の一例)
5 アンカー層
10 ガスバリア性積層体
Claims (8)
- セルロースナノファイバーを液体中に分散させたセルロースナノファイバー分散液と、水溶性高分子と、無機層状化合物とを含み、
前記液体は、水とアルコールとを含み、前記水と前記アルコールとの質量比(水の質量比/アルコールの質量比)が30/70〜95/5の範囲内であり、
前記水溶性高分子は、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂であり、
前記無機層状化合物は、合成マイカであり、
前記セルロースナノファイバー(A)と、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂(B)との重量比((A)/(B))は、50/50〜95/5の範囲内であることを特徴とするガスバリア層形成用の塗工液。 - 前記アルコールは、イソプロピルアルコールであり、
前記水と前記イソプロピルアルコールとの質量比(水の質量比/イソプロピルアルコールの質量比)が30/70〜50/50の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア層形成用の塗工液。 - 前記水溶性高分子は、エチレン組成が3mol%以上、60mol%以下のエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガスバリア層形成用の塗工液。
- 基材と、
前記基材の少なくとも一方の面に形成されたガスバリア層とを備え、
前記ガスバリア層は、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の塗工液を前記少なくとも一方の面に塗布し乾燥することにより形成されることを特徴とするガスバリア性積層体。 - 前記基材と前記ガスバリア層との間に形成されたアンカー層をさらに備え、
前記基材は、ポリエチレンテレフタラートフィルムであり、
前記アンカー層は、ポリエチレン系エマルジョンのアンカー剤を含んでいることを特徴とする請求項4に記載のガスバリア性積層体。 - 請求項5に記載のガスバリア性積層体と、
前記ガスバリア性積層体で形成された塗工膜を有する面上に接着層を介して取り付けられたヒートシール可能な熱可塑性樹脂層と、を備えることを特徴とする包装材料。 - 前記接着層は、二液硬化型ポリウレタン系接着剤であり、
前記熱可塑性樹脂層は、無延伸ポリプロピレンフィルムであることを特徴とする請求項6に記載の包装材料。 - 請求項5に記載のガスバリア性積層体と、
前記ガスバリア性積層体で形成された塗工膜を有する面上に第一の接着層を介して取り付けられた中間フィルム層と、
前記中間フィルム層上に第二の接着層を介して取り付けられたヒートシール可能な熱可塑性樹脂層と、を備えることを特徴とする包装材料。
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