JP3765149B2 - パルプ、紙及び塗被紙 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、填料や抄紙薬品の歩留りを改善し、紙の強度を顕著に増加させた紙及び該紙の高速製造方法に関する。
また、本発明は光沢に優れた印刷用塗被紙及び該塗被紙の高速製造方法に関する。さらに耐ブリスター性に優れた印刷用塗被紙及び該塗被紙の高速製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、紙の強度を高める目的で、変性デンプン、ポリアクリルアミド、ポリアミド、ポリアミドーエピクロルヒドリン樹脂、メラミンーホルムアルデヒド樹脂、尿素ーホルムアルデヒド樹脂等が製紙用紙力増強剤としてパルプ繊維に添加され、紙料として用いられている。
しかしながら、これらは、紙力増強効果が低かったり、高価であったり、或いは抄造条件によっては歩留まりが悪く十分な強度の発現効果を紙に付与しない等種々の欠点があり、紙力を増加させる点で十分に満足し得るものではない。
【0003】
紙パルプ技術協会発行の紙パ技協紙、第45巻245〜249頁及び同46巻986〜996頁には、アニオン性ポリアクリルアミドとマンニッヒ変性或いはホフマン変性したカチオン性ポリアクリルアミドを併用する方法、或いはこれらを混合して添加する方法が開示されている。
しかしながら、これらの併用処方或いは混合処方を、アニオン性ポリアクリルアミド或いはカチオン性ポリアクリルアミドをそれぞれ単独で添加する方法と比較してみると、強度の増強効果は若干高いものの満足し得る水準には到達しておらず、その効果は硫酸バンドの添加量の多寡に大きく左右され、又その他に添加併用される薬品助剤によっても、効果の発現が一定しない等の問題点がある。
【0004】
カルボキシメチルセルロース(以下CMCという)やカルボキシエチルセルロース(以下CECという)のセルロース誘導体にも紙の強度を増強する作用があることは古くから知られているが、パルプ繊維を含む紙料に添加して用いる種類の紙力増強剤としては、得られる強度の増強効果が小さく、又硫酸バンドを添加併用しなければ紙に留まらず、効果を発現しない等の問題点があり、紙料に添加して用いる製紙用紙力増強剤としては、現在ほとんど使用されていないのが実状である。
【0005】
一方、抄紙に際しては紙力増強剤の他に紙に撥水性、耐水性、サイズ度等の性能を付与する目的で、ロジンサイズ剤、エマルジョンサイズ剤、アルケニルコハク酸塩、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸等の製紙用サイズ剤等をパルプ繊維スラリーに添加し、紙料として用いている。
これらサイズ剤に関する大きな問題点の一つとして、サイズ剤の歩留まり不良がある。サイズ剤の紙料への定着の機構は、サイズ剤の種類によって異なるが、特に、中性抄紙で用いられるアルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸等は、歩留まりが悪く、不安定であるため、得られる紙のサイズ度が低いとか、一定しない等の問題点を有し、このためサイズ剤の歩留まりや紙の強度を向上させる目的で、カチオン変性デンプン、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂等のように種々のカチオン性の薬品が添加される。
しかしながら、それでも得られる効果が十分でなかったり、薬品が高価であったり、又、他に添加される薬品や填料によっても効果が落ちるとか、品質が安定しない等の問題点を有する。
【0006】
紙の白色度、不透明度或いは印刷適性を向上させる目的で、炭酸カルシウム、酸化チタン、含水シリカ、タルク、クレー、カオリン等の公知の製紙用填料もパルプ繊維スラリーに添加され紙料として用いられる。
これらの填料を用いる際にも、前記サイズ剤の場合と同様、歩留まりの悪いことが大きな問題となっている。填料の歩留まりが低いと、白水の汚れが発生し、ひいては抄紙系内の汚れが発生し、そのため抄紙機の運転を停止して洗浄を繰り返す頻度が増加し、生産効率を著しく損なう上、これに伴う紙の品質低下等の問題点も生ずる。従って、填料の歩留まりを向上させるため、ポリアクリルアミド、ポリアミド、ポリエチレンイミン等の填料歩留まり向上剤を添加して用いるが、これらの薬品を使用しても填料の歩留まり向上効果が低いとか、効果が安定しない或いは使用する薬品が高価であるといった問題点を有する。
【0007】
近年、出版、広告、宣伝等の媒体としての印刷物の重要性が再認識され、その基体となる印刷用塗被紙の需要が増えてきている。その一方で、印刷物のビジュアル化やカラー化のために印刷用塗被紙に対する品質面、特に印刷物の見栄えに関わる光沢の要求も年々高くなってきている。このような紙の需要増に対応するためには、抄紙機の高速化が必須の要件である。
【0008】
抄紙機の高速化には、その抄紙方式、特に抄紙機のワイヤーパートの変革が大いに寄与した。すなわち、従来の長網抄紙機(図1)の長網の後半部の上方にループをなすトップワイヤを配置して、その部分では上下両面で脱水を行うツインワイヤーによる抄紙方式、いわゆるオントップフォーマー型あるいはハイブリッドフォーマー抄紙機(図2)が実用化された。
しかしながら、ハイブリッドフォーマー型抄紙機の場合であっても、高速化に伴い、トップワイヤーより前半、いわゆる初期脱水部分で紙料のジャンピングや乱れが発生し、紙の地合が極めて劣ったものとなる難点があった。
【0009】
そこで考案されたのが、ギャップフォーマー型抄紙機(図3)である。ギャップフォーマー型抄紙機では、トップワイヤーとボトムワイヤーで形成されるギャップ(くさび状の開口部)にインレットよりパルプスラリーが供給され、当初よりパルプスラリーを2枚(上下)のワイヤーで挟んだ状態で脱水、紙層形成が行われる。このため、ハイブリッドフォーマー型抄紙機の場合のように原料の乱れを誘発することなく、均一な紙層形成ができるので、高く評価されている。
【0010】
しかし、このような抄紙機の改良にかかわらず、抄紙機の脱水能力の強化に伴い必然的に紙料中の微細繊維、填料等がワイヤーから抜け落ち、歩留まりが悪化してしまう。これに伴って、紙料懸濁液に添加されるサイズ剤等の製紙用薬品の歩留まりも低くなり、サイズ性を発現しなかったり、あるいは極度のサイズむらを生じる。
従来、紙料の歩留まり向上対策としては、ポリアクリルアミド、ポリアミド、ポリエチレンイミンなどの歩留まり向上剤を紙料懸濁液に添加することが一般的であった。これら歩留まり向上剤の作用は、紙料中の微細繊維、または填料を凝集させることによってワイヤーからの脱離を抑制するものであり、これらの添加により歩留まり向上効果は認められるものの、満足できる効果ではなく、さらにかえって濾水性の悪化、地合の悪化を引き起こすという問題点を有する。また、添加薬品も高価である。
【0011】
上記紙匹には、さらにサイズプレス、あるいはゲートロール工程で、各種澱粉、ポリビニルアルコール等を塗布し、紙の表面強度、サイズ性付与を図るが、ワイヤーパートでのサイズ性が不十分であると、塗布薬品の塗布むらを生じ、最終的にサイズむらのある原紙となってしまう。
係る欠陥を有する原紙に塗工層を設けると、塗工層の浸透ムラが生じ、印刷用塗被紙として十分な印刷光沢が得られず、また、光沢ムラも生じるという問題点を有する。
【0012】
このように、抄紙速度が高速化するに伴って、原紙のサイズ度または地合といった品質が不良となり、印刷用塗被紙に重要な印刷光沢が達成できない、あるいは光沢ムラが生じるという問題点がでてくる。
従来より、印刷用塗被紙の高速抄紙化と高品質化の双方を実現することが求められていたが、印刷用塗被紙の抄造においては、この二つの要求を両立することは困難であるとされてきた。
【0013】
一方、抄紙機の脱水能力が強化された、このような抄紙機で原紙を製造した場合には、原紙中の微細繊維が表層に偏在し、原紙の層間強度が弱くなるという問題点も生じる。これを基紙として印刷用塗被紙を製造した場合には、オフセット印刷等の乾燥工程において、いわゆる「ブリスター」と呼ばれる、塗工層が膨れ上がる印刷不良を起こしやすくなり、重大な欠陥製品となる場合がある。このブリスターは、高温での乾燥工程で、紙中の水分が気化して紙層外に逃げる際に、紙が層間で破壊される現象であり、原紙の透気性と層間強度が重要な要因となる。一般に、この種の問題を解決するために、原紙の調成工程において、カチオン化澱粉、あるいはポリアクリルアミド等の紙力増強剤を添加、あるいは増添して原紙の層間強度を改善する方法が用いられる。しかしながら、このような紙力増強剤の添加量を多くして原紙を抄造した場合、原紙の層間強度は向上するものの、透気性が低下するために、場合によってはブリスターが逆に起こりやすくなる、また、原紙の地合が悪化し、塗被紙とした場合に光沢ムラを生じる、さらに抄造時の濾水性の低下により操業性も悪化するといった問題点があった。
また、紙力増強剤を外添した場合でも、前記のように、原紙表層に微細繊維が局在化するために原紙内部まで紙力増強剤が浸透せず、ブリスターの防止の有効な手段とはならなかった。
一方、パルプの叩解度を上げてパルプの繊維間結合力を高めることによって原紙の層間強度を向上させた場合には、耐ブリスター性は向上するものの、原紙の寸法安定性が悪化し、また、パルプの濾水性の低下により操業性も悪化するという問題点があった。
【0014】
近年、酵素をリグノセルロース材料およびリグノセルロースを加工して得られる繊維に作用してそれらを改質する技術が多数提案されている。例えば、特公平2−20756号公報、特開平1−92490号公報、特公平3−4672号公報、特開平6−166978号公報、特開平6−316899号公報、特開平7−279078号公報、特開平7−331588号公報等に開示されているような、叩解性の改良やパルプ繊維の改質を目的として、叩解前のパルプ繊維にセルラーゼを添加する方法、特開平2−6681号公報、特開平2−229291号公報、特開平3−124891号公報等に開示されているようなワイヤー上での濾水性を改善するため、叩解して薬品を添加後の紙料にセルラーゼやヘミセルラーゼ等の酵素を添加する方法がある。また、特開平2−264087号公報、特開平2−293486号公報、特開平6−101185号公報、特開平6−207390号公報等に開示されているように、漂白前にパルプ繊維をセルラーゼやヘミセルラーゼ等の酵素で処理することにより、漂白性を改善する方法も知られている。特開平8−49187号公報には、パルプを酵素処理することにより、オフセット印刷用塗工紙の耐ブリスター性と折り割れ性が改善されることが開示されている。
【0015】
本発明者等は、耐ブリスター性に優れた塗被紙を高速で製造する方法について、パルプの酵素処理を種々検討したところ、キシラン分解活性を有する酵素でパルプを処理することにより、原紙の寸法安定性が向上することを見いだした。さらに、多段漂白前のパルプをろ紙分解活性を有さずキシラン分解活性を有する酵素で処理し、次いで多段漂白すれば、目的の白色度まで漂白するのに要する漂白薬品を低減できるので、漂白工程でのパルプ繊維の損傷を最小限に抑制することができ、その結果、原紙の寸法安定性が向上することを見いだした。そしてこのような酵素で処理したパルプを原料として用いた原紙は透気性が向上し、耐ブリスター性に有効である反面、層間強度が若干劣るため、最終的に耐ブリスター性が十分に改善されない場合もあった。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の欠点を克服し、優れた紙力増強効果が得られ、しかもサイズ性、耐水性、填料の歩留り等を改善しうるパルプを安価に提供することにある。また本発明は、該パルプを使用して、サイズ性、耐水性、填料の歩留まりを改善した紙及び該紙の高速製造方法を提供する。さらに該紙に塗被層を設けることにより、表面光沢、印刷光沢に優れ、且つ光沢ムラのない印刷用塗被紙を提供する。さらには耐ブリスター性に優れた印刷用塗被紙を提供する。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、かかる背景に鑑み、安価にして且つ簡便に使用でき、優れた紙力増強効果が得られ、しかもサイズ性、耐水性、填料の歩留り等を改善して紙の品質を向上させる方法を見い出すべく鋭意検討を重ねた。この中で、特にCMCやCECといったセルロース誘導体の性質、すなわちpHが中性からアルカリ性の間では水溶性であるが、構造中のカルボキシル基の解離状態によって溶解性が変化し、弱酸性から強酸性領域にかけてゲル化或いは沈殿を生じることに着眼した。そしてそのようなセルロース誘導体の水溶液をパルプ繊維スラリーに添加し、酸を添加してスラリーのpHを酸性にすることでセルロース誘導体の一部或いは全部を酸型に戻したものは、極めて密にパルプ繊維表面に固着すること、そしてそのような紙料を用いて湿式抄紙機で抄紙して得られる紙は強度が顕著に改善されるばかりでなく、抄紙に際しその他の併用される抄紙薬品の歩留まりを顕著に高める効果があることを見出し本発明を完成するに至った。
【0018】
例えば、CMCの場合では、置換度、重合度、或いは溶液の濃度によっても異なるが、溶液のpHが5付近でゲル化し、更にpHが低くなると、沈殿を生ずることは、「セロゲン物語」208頁(第一工業製薬株式会社編)に記載されている通りで、広く認識されている事実である。
本発明者等は、このようなセルロース誘導体、なかでもCMCとCECの塩の性質を熟知し、更にパルプ繊維スラリー中での挙動を詳細に検討した結果、パルプ繊維とCMC及び/又はCECの塩を存在させた状態で前記スラリーのpHを、鉱酸により弱酸性〜強酸性の領域に調整すると、意外なことにCMCやCECのセルロース誘導体は、ゲル化も沈殿もすることなく、スラリー中のパルプ繊維の表面に均一に吸着することを見出したのである。
【0019】
更に、前記CMC及び/又はCECのセルロース誘導体は通常置換度が0.7〜1.2の範囲のものが市販されているが、これらはpH2〜3の範囲のように強酸性領域においては十分にパルプ繊維に吸着するが、弱酸性領域においてはパルプ繊維に吸着され難い傾向があった。
しかしながら、このような強酸性領域におけるパルプ繊維の取扱い或いは処理は実際の使用に際して非常に不便であり、本発明者等はこの問題点を解決すべく更に鋭意検討を重ねた。
その結果、置換度が0.3〜0.6の範囲の低置換度のCMC及び/又はCECの塩は、pHが3.5〜5.5のような弱酸性領域で、パルプ繊維によく吸着して極めて優れた紙の強度の向上と抄紙薬品や填料の歩留まり向上をもたらすことを見出した。
しかも、このような低置換度のCMC及び/又はCECの塩は、従来から用いられているカチオン性の薬品或いは樹脂からなる紙力増強剤或いは紙の湿潤強度増強剤と併用すると、驚くほど紙の強度が向上することも見出し、こうして本発明を完成した。
【0020】
ちなみに、紙の強度は、その紙を構成する繊維の強度と繊維間の結合強度によって構成されることは、紙の製造、研究に携わるものならば誰もが認識しており、更に、パルプ繊維の場合では、この繊維間結合はセルロース分子間に生じる水素結合が主因子であることも周知のことであり、この繊維間結合を強めたり、繊維間結合面積を増大させることが、紙の強度を向上させる要因となり、従来の紙力増強剤は、すべてパルプ繊維と紙力増強剤との間で、水素結合を生じさせることによって、紙力増強効果を発現するものである。
【0021】
本発明者等は、このような知見に基づいて検討を重ねた結果、前記したようにパルプ繊維の存在するスラリーにCMC及び/又はCECの塩を添加し、pHを強酸性〜弱酸性の領域、とりわけ0.3〜0.6の低置換度のものは、弱酸性の領域に調整して酸型に転換し、パルプ繊維表面に吸着させた後、必要に応じてpHを弱酸性、中性、又はアルカリ性に再調整して、抄紙薬品を添加し、必要ならば填料及び/又はカチオン性の薬品或いは樹脂の紙力増強剤や湿潤強度増強剤を併用して、硫酸バンド、ロジンサイズ剤を用いる酸性抄紙法、中性サイズ剤と定着剤による中性抄紙法或いはアルカリ抄紙法等により湿式抄紙機で紙を製造すると、かかる処理を施した紙は、前記した従来の紙力増強剤や湿潤強度増強剤を単独で用いて得られる紙よりはるかに優れた強度の向上効果と顕著な填料や抄紙薬品の歩留まりの向上効果が得られることが判明したのである。
【0022】
また、本発明のパルプを用いれば、ギャップフォーマー型抄紙機のような高速で脱水能力が強化され、紙料の歩留まりが悪い抄紙機でも、紙に効果的にサイズ度を付与できることを見いだした。さらに該紙に塗被層を設けると、均一な塗被層が得られ、光沢に優れた塗被紙が得られることが判明した。
【0023】
さらに本発明の方法によれば、前記の酵素処理による寸法安定性の向上効果を減殺することなく、また、原紙の透気性及び地合の悪化、その他操業条件の悪化を伴うことなく、層間強度が顕著に向上することを見いだした。そして該原紙に塗被層を設けた塗被紙は、耐ブリスター性が顕著に向上することが判明した。
【0024】
即ち、本発明の第一は、パルプ繊維からなるスラリーに、CMC及び/又はCECを添加し、次いで鉱酸を添加してパルプ繊維スラリーのpHを2〜6の範囲に調整し、CMC及び/又はCECを酸型に転換して吸着させたことを特徴とするパルプである。
本発明の第二は、CMC又はCECの置換度が0.3〜0.6であり、かつ鉱酸添加後のpHが3.5〜5.5の範囲であることを特徴とする本発明第一記載のパルプである。
本発明の第三は、前記鉱酸添加後のパルプ繊維スラリーのpHをさらにpH5〜9に調整することを特徴とする本発明第一及び本発明第二記載のパルプである。
本発明の第四は、CMC及び/又はCECの添加率が、絶乾パルプ繊維重量に対して0.01〜5.0重量%であることを特徴とする、本発明第一、本発明第二及び本発明第三記載のパルプである。
本発明の第五は、本発明第一記載のパルプ繊維が、キシラン分解活性を有する酵素で処理され、次いで多段漂白されたパルプを含有することを特徴とする本発明第一、本発明第二、本発明第三及び本発明第四記載のパルプである。
本発明の第六は、本発明第一、本発明第二、本発明第三、本発明第四及び本発明第五記載のパルプを含有することを特徴とする紙である。
本発明の第七は、本発明第一から第六までに記載したパルプ、紙力増強剤を含む抄紙薬品及び必要に応じて填料からなるパルプ繊維スラリーを用いて湿式抄紙機で抄紙する紙の製造方法である。
本発明第八は、本発明第七記載の湿式抄紙機がギャップフォーマー型抄紙機で抄紙したことを特徴とする本発明第七記載の紙の製造方法である。
本発明第九は、本発明第七記載の紙の片面又は両面に塗被層を設けたことを特徴とする塗被紙である。
【発明の実施の形態】
【0025】
本発明で用いられるCMC或いはCECの塩としては、木材パルプ、コットンパルプ、リンターパルプ等を原料とし、モノクロル酢酸、クロロプロピオン酸等を反応させて合成されたセルロース誘導体であり、工業的には、水媒法、溶媒法等の公知の製造方法で得られるものがそのまま用いられる。
【0026】
本発明のために用いられる前記CMC及びCECの塩の置換度(エーテル化度)は、0.3〜1.2の範囲のものである。しかしながら、置換度が0.7〜1.2の範囲の高置換度の塩はpHを2〜3.5未満の強酸性の領域であれば十分パルプ繊維に吸着させることができるが、pH3.5以上の弱酸性の領域においては部分的な吸着しか生じないので、得られる効果がやや不満足となる上、前記したように強酸性領域におけるパルプ繊維の取扱いや処理は、製紙工業ではそのような工程は未晒パルプの漂白工程(例えば、塩素化段)において見られるが、実際の使用に際して不便であることは否めない。
そこで、本発明者等は、この問題を解決するために種々検討した結果、置換度が0.3〜0.6の範囲の比較的低置換度のCMC及び/又はCECの塩は、パルプ繊維の存在下に鉱酸を用いてpHを3.5〜5.5、好ましくは4〜5の範囲の弱酸性の領域に調整すると、この領域においてもパルプ繊維に十分に吸着し、その結果極めて優れた紙の強度向上と抄紙薬品や填料の歩留まり向上効果が得られることを知得したのである。
これに対して、置換度が0.3未満のものは水に不溶であり、置換度が1.2を超えるものはCMC化又はCEC化の際に通常の1回の反応では得られ難く、同じ反応を繰り返し行って初めて得られるので製造コストが極めて高くなるので好ましくないが、本発明の方法により使用できないことはない。
【0027】
本発明に用いられるCMC及びCECの塩は、使用するパルプ繊維の性状や前記したようにCMCやCECの製造方法により様々な重合度のものが製造可能であるが、1%の水溶液の粘度が5〜16、000cps(0.1NーNaCl溶媒、25℃、B型粘度計)、平均重合度が100〜4、500、平均分子量が2万〜100万の範囲のものでる。
本発明に用いられるCMCとCECは、市販品はその殆どがカルボン酸ナトリウム塩或いはカリウム塩であり、正確に記せばCMCの塩はカルボキシメチルセルロースナトリウム或いはカルボキシメチルセルロースカリウムであるが、慣用上、ナトリウムやカリウムの記載は省略し、単にCMC及びCECの塩、さらには単にCMC及びCECとして表示する。
【0028】
本発明では、CMCとCECのナトリム塩、カリウム塩或いはアンモニウム塩が用いられるが、価格が安価で容易に入手できること及び得られる効果が高いことから、CMCのナトリウム塩が好ましい。
又、CMCやCECの塩をパルプスラリーへ添加する際の前記塩の溶液の濃度は、濃度が高すぎると粘性が高く、使用が困難になるため、0.01〜5.0重量%、好ましくは0.1〜3.0重量%の範囲である。
【0029】
CMCやCECの塩を溶かすための溶媒は水であり、本発明においても、CMC或いはCECの塩の水溶液、或いはCMCとCECの塩の混合水溶液として使用するが、CMCやCECの塩が安定して溶解する範囲で、必要に応じて水と相溶性のある溶媒、例えばメタノール、エタノール等を任意の割合で混合してもよいし、更にCMCやCECの塩が安定して溶解する範囲で、必要に応じて他の物質を混合してもよい。
又、CMCとCECの塩を混合して使用する際のそれぞれの割合は、特に限定されず、任意の割合で混合できる。
【0030】
本発明のCMCの塩及び/又はCECの塩の使用量は、それらの塩の置換度、紙の種類、用途、要求される性能等に応じて変えられるが、パルプ繊維の乾燥重量に対して0.01〜5.0重量%、好ましくは0.05〜3.0重量%、更に好ましくは0.05〜1.0重量%である。これらの塩の使用量は多ければ多いほど効果は顕著になるが、使用量が多いと紙に剛度が付与され、しかも高価であるため紙の用途や経済的な理由によりその上限が適宜選択され、決められる。
【0031】
CMCの塩及び/又はCECの塩を水溶液でパルプ繊維スラリーに添加する際のパルプ繊維スラリーの濃度は、濃度が高すぎると攪拌が困難で、混合が不十分となり、逆に濃度が低すぎると、pHを調整するための酸を大量に必要とし不経済であるので、固形分で1〜5重量%、好ましくは2〜4重量%である。
本発明では、前記濃度のパルプ繊維スラリーにCMCの塩及び/又はCECの塩の水溶液を添加し、十分撹拌して混合し、次いで鉱酸を添加し、スラリーのpHを2〜6、好ましくは3.5〜5.5の範囲に調整する。とりわけ、CMC及びCECの置換度が0.3〜0.6の範囲の場合は、前記スラリーのpHは3.5〜5.5、好ましくは4〜5の範囲に調整する。
この場合に、公知のカチオン変性デンプン、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂等のようにカチオン性の薬品或いはカチオン性樹脂の紙力増強剤や湿潤強度増強剤が前記CMCの塩及び/又はCECの塩と併用すると、極めて少ない添加量で優れた乾燥強度或いは湿潤強度の向上効果と抄紙薬品や填料の歩留まり向上効果が得られる。
この場合の添加量はCMCの塩及び/又はCECの塩がパルプ繊維の絶乾重量当り0.05〜0.5重量%、好ましくは0.07〜0.3重量%の範囲であり、前記カチオン性薬品或いは樹脂がパルプ繊維の絶乾重量当り0.05〜0.5重量%、好ましくは0.07〜0.3重量%の範囲から選ばれる。
【0032】
本発明のためのpH調整に用いられる鉱酸は特に限定されず、硫酸、塩酸、硝酸等を挙げることができ、これらの中から適宜選択して用いられる。
前記の範囲にpH調整した後のCMC及びCECは、酸型となっており、パルプ繊維表面に或いはパルプ繊維間に極めて容易に吸着され、その後更にpH調整せずに、或いはアルカリを添加してpHを調整し、抄紙薬品、必要に応じて填料、顔料等の添加物を添加し、紙料として湿式抄紙機に送り、紙とする。
前記パルプ繊維スラリーのpH調整において、pHが6を超える場合、CMCの塩及びCECの塩の酸型への転換が不十分もしくは不可能となり、CMC及びCECのパルプ繊維表面への吸着が殆ど生じないので、その結果得られる紙の強度の発現効果が不十分もしくは得られない。又、pHが2未満では、CMCの塩及びCECの塩の酸型への転換はpHが2に至るところで十分完了しているため、2を超えて低下させる意義がなく、その上パルプ繊維スラリーを取り扱う装置の腐食が問題となるため、特殊な耐酸性の材料を使用せざるを得なくなり、不経済となる。
【0033】
CMCの塩及び/又はCECの塩を含有するパルプ繊維スラリーのpHを前記範囲内に調整すると、CMCの塩及びCECの塩の酸型への解離は瞬時にして完了するので、パルプスラリーとCMCの塩及び/又はCECさらに鉱酸が十分均一に攪拌される条件下では、pHを調整した後の保持時間は0.1秒〜10分間の範囲のように極めて短時間で十分である。実操業条件を考慮すれば抄紙機のミキシングポンプのサクション口で前記パルプスラリーへ鉱酸を添加してpHを2〜6の範囲に調整してもよく、更に紙料の移送中、或いは貯蔵中に調整を行っても良い。
【0034】
なお、填料を含む製紙用薬品の中には、pHが5未満のパルプスラリーに添加すると都合が悪いものがある。
係る場合には、苛性ソーダのようなアルカリを添加してpHを6〜9の範囲、好ましくは6〜8に適宜再調整した後抄紙薬品、必要に応じて填料、顔料及びその他の添加物を添加するのが好ましい。pHが5〜6の範囲であれば、再調整せずに実施することも可能である。
具体的には、主に酸性抄紙で使用されるロジンサイズ剤は、pHが4以下では凝集沈殿を起こす虞れがあり、また、中性抄紙での填料として汎用される炭酸カルシウムは、酸性下では炭酸ガスとカルシウムイオンに分解してしまう。したがって、このような薬品、或いは填料を使用する場合には、必要に応じてパルプスラリーのpHを調整しなければならない。
【0035】
又、アルカリを添加してpHを再調整して中性抄紙或いはアルカリ性抄紙する場合、pHを6.5〜9とするのが好ましいが、9を超えたアルカリ性下にパルプ繊維スラリーを長時間保持すると、せっかくパルプ繊維表面に吸着させたCMCやCECの一部或いは大部分が脱離する虞れがあるため、その場合はpH9以下とするか、pHが9を超えたパルプ繊維スラリーは紙料として迅速に抄紙機へ乗せ抄紙するのが望ましい。
【0036】
前記パルプ繊維スラリーのpHを2〜6の範囲に調整する処理は、晒或いは未晒パルプの貯蔵工程から抄紙工程の間の工程で既存のチェスト、タンク等の容器及び撹拌設備、回流ポンプ、移送ポンプ等による撹拌を利用して行うこともできるが、更に前記の処理を行うための専用の工程を別に設けても良い。
前記パルプ繊維スラリーのpHを2〜6の範囲内に調整すると、前記したようにCMCの塩及び/又はCECの塩はそれぞれ一部或いは全部が酸型に転換され、パルプ繊維表面に極めて容易に吸着され、それによって抄紙後の紙の強度が顕著に向上するのである。即ち、前記のpHが調整された紙料を、pHが5〜6のものはそのままで或いは5未満の場合は、アルカリを添加して再度前記のpHを6を超える範囲に調整して填料及び/又は抄紙薬品を添加した後紙料として用いて、公知の湿式抄紙機により抄紙し、乾燥することにより強度向上の発現と抄紙薬品や填料の歩留まりを顕著に改善しながら紙を製造することができる。
【0037】
本発明の方法を適用するパルプ繊維は特に限定されず、通常用いられている公知の製紙用パルプに適用でき、サルファイトパルプ、クラフトパルプ、ソーダパルプ等のケミカルパルプ、セミケミカルパルプ、メカニカルパルプ等の木材パルプ、或いはこうぞ、みつまた、麻のパルプの非木材パルプいずれでもよく、未晒パルプでも晒パルプでもよい。ただし印刷用塗被紙用原紙においては、良好な地合が求められるため、繊維長の短い広葉樹材が好適に用いられる。
【0038】
キシラン分解活性を有する酵素で処理されたパルプを用いる場合には、公知の蒸解法により得られた未晒しパルプを、洗浄、粗選および精選工程を経て、多段漂白を行う前に酵素で処理する。しかしながら、酵素の至適pH、至適温度を考慮した場合には、未晒しパルプを酸素脱リグニンした後に酵素処理を行うのが好適である。
【0039】
キシラン分解活性を有する酵素でパルプを処理すると、パルプの表面あるいはパルプ繊維中に遍在するキシランが選択的に分解され、パルプはセルロース骨格を保持したまま多孔性となるので、このようなパルプを原紙に用いた場合には、原紙の透気性が向上するため、耐ブリスター性の改善が期待できる。一方、酵素処理によりパルプの主要骨格であるセルロースは殆ど作用を受けないので、原紙の寸法安定性は維持される。
【0040】
前記酵素は、キシラン分解活性として、0.1〜10U/絶乾パルプg、好ましくは0.5〜5U/絶乾パルプgの範囲でパルプに添加する。ここに、1Uとは、酵素をキシランに作用させた場合に、1分間に1μモルのキシロースを生成する酵素量のことをいう。
【0041】
この酵素処理したパルプと酵素処理していないパルプを混合して用いることはもちろん可能だが、その割合が多いほど効果は高いため、酵素処理したパルプの含有量は60〜100重量%の範囲であることが望ましい。
【0042】
本発明に用いられる公知の湿式抄紙機には、円網式抄紙機、短網式抄紙機、長網式抄紙機等の商業規模の抄紙機が目的に応じて適宜選択して用いられる。また、高速に印刷用塗被紙の原紙を抄造する際には、前記したようにギャップフォーマー型抄紙機が適している。
【0043】
本発明においてはCMCの塩及び/又はCECの塩をpHの調整により酸型に転換する前或いは後に、とりわけパルプ繊維とCMC及び/CECからなるスラリーのpHを2〜6の範囲にしたものは、pHが5〜9の範囲において、製紙用サイズ剤と定着剤、製紙用紙力増強剤、填料、顔料、歩留まり向上剤、染料、消泡剤、防腐剤、粘度低下剤等の抄紙薬品を添加して用いられるが、これらの抄紙薬品は前記のpH範囲に影響されないことを確認して目的に応じて適宜選択して用いられる。
【0044】
こうして得られた原紙に、各種サイズプレスあるいはロールコーターで澱粉、あるいはPVA等を用いてサイズ処理することはもちろん可能であるが、製造速度の高速化を考慮した場合には、フィルムメタリングタイプのサイズプレス装置を用いて糊の固形濃度を高くしてサイズプレス処理を行う方法が好適に用いられる。また、ロールコーター、ブレードコーター等で予備塗工を行うことはもちろん可能である。
【0045】
一方本発明の塗被紙において、その塗被組成物の主成分の一つである顔料としては、例えばクレー、カオリン、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、タルク、プラスチックピグメント等の通常の汎用顔料の内の一種以上を任意に選択し配合することができる。
また接着剤としては、例えばスチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタアクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系共重合体ラテックス、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルの重合体または共重合体等のアクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス、あるいはこれらの各種重合体ラテックス、カルボキシル基等の官能基含有単量体で変性したアルカリ部分溶解性あるいはアルカリ非溶解性の重合体ラテックスを用いることができる。
また、合成接着剤と併用する水溶性接着剤としては、例えばカチオン化澱粉、酸化澱粉、熱化学変性澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、冷水可溶澱粉等の澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、オレフィン−無水マレイン酸樹脂等の水溶性接着剤等、任意に選択し使用することができる。
【0046】
これらの顔料、接着剤には、分散剤、耐水化剤、流動性変性化剤、着色剤、蛍光増白剤等の各種添加剤を必要に応じて添加することができる。
塗工層の塗工は、一般の塗被紙の製造に用いられる塗工装置、例えばブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ダイスロッドコーター、グラビアコーター、チャンプレックスコーター、サイズプレスコーター等の塗工装置を設けたオンマシンあるいはオフマシンコーターによって、基紙上に片面か両面に一層あるいは多層に塗工される。その際の塗被組成物の固形分濃度は、一般に45〜70重量%の範囲が好ましい。
また、カレンダー仕上げの方法は、グロスあるいはマットカレンダーとして、例えばスーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトコンパクトカレンダー等の金属またはドラムと弾性ロールよりなる各種カレンダーが、オンマシンまたはオフマシンで任意に選択し使用できる。
【0047】
【発明の作用】
前記したように本発明における紙の強度の顕著な向上は、CMC及び/又はCECの水酸基がパルプ繊維表面或いは繊維間に均一に吸着されて分布し、シート形成時にこれらの繊維間で水素結合を形成することにより発現すると考えられる。鉱酸によるpH調整を行わず、硫酸バンド等の定着剤でCMC及び/又はCECをパルプに定着させた場合には、CMC及び/又はCECが硫酸バンドと反応してゲル状化してしまうため、パルプ繊維表面の分布が均一ではなく、本発明のような優れた紙力増強作用を発現しない。
又、パルプ繊維に均一に分布したCMC及び/又はCEC分子中のカルボキシル基が静電気的相互作用力(クーロン力)により填料や顔料もしくは各種抄紙薬品を吸着し、その結果抄紙薬品の歩留まりが向上するとともに、これらのパルプ繊維上での分布が顕著に改善され、各々の薬品の効果が向上するものと考えられる。
【0048】
印刷用塗被紙の製造においては、このようなCMC及び/又はCECの作用により、地合を損なうことなく優れたサイズ性が原紙に付与されることにより、塗被液が均一に塗布され、ムラ無く光沢に優れた印刷用塗被紙の製造が達成される。また、層間強度が向上することにより耐ブリスター性も向上し、さらにキシラン分解活性を有する酵素で処理したパルプを用いることにより、該原紙の透気性が増し、より一層の耐ブリスター性の優れた印刷用塗被紙の製造が可能となるものと考えられる。
【0049】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、勿論、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、%とあるのはすべて重量%であり、パルプ繊維スラリーへの添加剤の添加量は、絶乾紙料重量に対する重量%で示した。
実施例1
実験用ナイアガラビーターでろ水度を480mlCSF(カナダ標準フリーネス)に調製した広葉樹晒クラフトパルプ100gと水4.9リットルからなる2%濃度のパルプ繊維スラリーに、固形分1%の溶液粘度が1600cps、置換度が0.6のCMCのナトリウム塩(商品名:セロゲン4H、第一工業製薬社製)を濃度が1%の水溶液としてパルプ重量に対し0.2%添加し、スリーワン・モーターにて450rpmの速度で攪拌しながら、1%濃度の希硫酸を添加し、パルプ繊維スラリーのpHを3に調整し、そのまま30秒間攪拌を続けた後、5%濃度の希苛性ソーダ水溶液を添加し、パルプ繊維スラリーのpHを7とした。
このパルプ紙料を用いてTAPPI標準の角型シートマシンで坪量60g/m2の紙を抄いて、室内に24時間放置し乾燥した。
この手抄きシートを20℃の温度、65%相対湿度の部屋で24時間調湿した後、紙の引張り強度と層間強度を下記の試験法で行い、品質の評価を行った。
試験法
(1)引張強度
TAPPI T205に準拠して測定し、裂断長(Km)で示した。
(2)層間強度
TAPPI UM403に準拠して測定した。
(3)CMC溶液の粘度
0.1NーNaClを溶媒とし、25℃においてB型粘度計で測定して得ら れた値である。
【0050】
実施例2
置換度0.6のCMCのナトリウム塩をパルプ重量に対して0.5%としたこと以外は、実施例1と同様にして手抄きシートを作製し、得られた紙を試験して品質を評価した。
【0051】
実施例3
置換度0.6のCECのナトリウム塩(特級試薬)をパルプ重量に対して0.2%としたこと以外は、実施例1と同様にして手抄きシートを作製し、得られた紙を試験して品質を評価した。
【0052】
実施例4
置換度0.6のCECのナトリウム塩をパルプ重量に対して0.5%としたこと以外は、実施例1と同様にして手抄シートを作成し、得られた紙を試験して品質を評価した。
【0053】
実施例5
CMCのナトリウム塩を添加した後のパルプ繊維スラリーのpHを5としたこと以外は、実施例1と同様にして手抄きシートを作製、得られた紙を試験して品質を評価した。
【0054】
実施例6
固形分1%の溶液粘度が1400cps、置換度が0.4のCMCのナトリウム塩(PX01、第一工業製薬社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして手抄きシートを作製し、得られた紙を試験して品質を評価した。
【0055】
実施例7
固形分1%の溶液粘度が1400cps、置換度が0.4のCMCのナトリウム塩(PX01、第一工業製薬社製)を用い、CMCのナトリウム塩を添加した後のパルプ繊維スラリーのpHを5に調整したこと以外は、実施例1と同様にして手抄シートを作製し、得られた紙を試験して品質を評価した。
【0056】
比較例1
実施例1で用いたのと同じパルプ繊維スラリーに市販の両性ポリアクリルアミド系紙力増強剤(商品名:ポリストロン655、荒川化学工業社製)をパルプ重量に対し0.2%添加し、十分混合した。このパルプ紙料を用いて手抄きシートを作製し、品質を評価した。
【0057】
比較例2
両性ポリアクリルアミド系紙力増強剤をパルプ重量に対し0.5%添加したこと以外は、比較例1と同様にして手抄きシートを作製し、得られた紙を試験して品質を評価した。
【0058】
比較例3
実施例1で用いたのと同じパルプ繊維スラリーに固形分1%の溶液粘度が1600cps、置換度が0.6のCMCのナトリウム塩(商品名:セロゲン4H、第一工業製薬社製)を濃度が1%の水溶液としてパルプ重量に対し0.2%添加し、スリーワン・モーターにて450rpmの速度で攪拌し、希硫酸を添加してpHを調整することなくパルプ紙料とし、実施例1と同様にして手抄きシートを作製し、得られた紙を試験して評価した。
【0059】
比較例4
CMCのかわりに置換度0.6のCECを用いたこと以外は比較例3と同様にして手抄シートを作製し、品質を評価した。
実施例1〜7、比較例1〜6で得られた結果を表1に示した。
【0060】
【表1】
【0061】
実施例8
実施例1で用いたと同じパルプスラリーに、固形分1%の溶液粘度が1600cps、置換度が0.6のCMCのナトリウム塩(商品名:セロゲン4H、第一工業製薬社製)を濃度が1%の水溶液としてパルプ重量に対し0.2%添加し、スリーワン・モーターにて450rpmの速度で攪拌しながら、1%濃度の希硫酸を添加し、パルプ繊維スラリーのpHを3に調整し、そのまま30秒間攪拌を続けた後、5%濃度の希苛性ソーダ水溶液を添加し、パルプ繊維スラリーのpHを7とした。さらに硫酸バンドを2%添加して30秒間攪拌したものを紙料として同様に手抄シートを作製し、得られた紙を試験して評価した。なお、パルプスラリーの最終的なpHは4.5であった。
【0062】
実施例9
CMCのかわりに置換度が0.6のCECを用いたこと以外は、実施例8と同様にして紙料を調製し、手抄シートを作製し、得られた紙を試験して評価した。なお、パルプスラリーの最終的なpHは4.5であった。
【0063】
実施例10
固形分1%の溶液粘度が1400cps、置換度が0.4のCMCのナトリウム塩(PX01、第一工業製薬社製)を用いたこと以外は、実施例8と同様にして紙料を調製し、手抄シートを作製し、得られた紙を試験して評価した。なお、パルプスラリーの最終的なpHは4.5であった。
【0064】
比較例5
実施例1で用いたと同じパルプスラリーに、市販の両性ポリアクリルアミド系紙力増強剤(商品名:ポリストロン655、荒川化学工業社製)をパルプ重量に対し0.2%添加し、十分混合した後、さらに硫酸バンドを2%添加して30秒間攪拌したものを紙料として用い、同様に手抄シートを作製し、得られた紙を試験して評価した。なお、パルプスラリーの最終的なpHは4.5であった。
【0065】
比較例6
実施例1で用いたと同じパルプスラリーに、固形分1%の溶液粘度が1600cps、置換度が0.6のCMCのナトリウム塩(商品名:セロゲン4H、第一工業製薬社製)を濃度が1%の水溶液としてパルプ重量に対し0.2%添加し、十分混合した後、さらに硫酸バンドを2%添加して30秒間攪拌したものを紙料として用い、同様に手抄シートを作製し、得られた紙を試験して評価した。なお、パルプスラリーの最終的なpHは4.5であった。
【0066】
比較例7
置換度が0.6のCECを用いたこと以外は、比較例6と同様にして紙料を調製し、手抄シートを作製し、得られた紙を試験して評価した。なお、パルプスラリーの最終的なpHは4.5であった。
【0067】
比較例8
固形分1%の溶液粘度が1400cps、置換度が0.4のCMCのナトリウム塩(PX01、第一工業製薬社製)を用いたこと以外は、比較例6と同様にして紙料を調製し、手抄シートを作製し、得られた紙を試験して評価した。なお、パルプスラリーの最終的なpHは4.5であった。
【0068】
比較例9
実施例1で用いたと同じパルプスラリーに、固形分1%の溶液粘度が1600cps、置換度が0.6のCMCのナトリウム塩(商品名:セロゲン4H、第一工業製薬社製)を濃度が1%の水溶液としてパルプ重量に対し0.2%添加し、スリーワン・モーターにて450rpmの速度で攪拌しながら、pHが3となるまで硫酸バンドを添加した。このまま30秒間攪拌を続けた後、5%濃度の希苛性ソーダ水溶液を添加し、パルプ繊維スラリーのpHを4.5に調整したものを紙料として手抄シートを作製し、得られた紙を試験して評価した。
【0069】
参考例1
比較のため、実施例1で用いたのと同じパルプ繊維スラリーに、製紙用薬品を一切添加せず、これをパルプ紙料として実施例1と同様にし手抄きシートを作製し、得られた紙を試験して評価した。
【0070】
参考例2
実施例1で用いたと同じパルプスラリーに、硫酸バンドを2%添加しただけのものを紙料として手抄シートを作製し、得られた紙を試験して評価した。なお、パルプスラリーの最終的なpHは4.5であった。
実施例8〜10、及び比較例5〜9、及び参考例1〜2で得られた結果を表2に示す。
【0071】
【表2】
【0072】
実施例11
実験用ナイアガラビーターでろ水度を550mlCSF(カナダ標準フリーネス)に調製した針葉樹晒クラフトパルプ55g、同じくろ水度を480mlCSF(カナダ標準フリーネス)に調製した広葉樹晒クラフトパルプ45g及び水4.9リットルからなる2%濃度のパルプ繊維スラリーに、固形分1%の溶液粘度が1400cps、置換度が0.4のCMCのナトリウム塩(PXO1、第一工業製薬社製)を濃度が1%の水溶液としてパルプ重量に対し0.1%添加し、スリーワン・モーターにて450rpmの速度で攪拌しながら、1%濃度の希硫酸を添加し、パルプ繊維スラリーのpHを4に調整し、そのまま30秒間攪拌を続けた後、5%濃度の希苛性ソーダ水溶液を添加し、パルプ繊維スラリーのpHを7とした。
更に、撹拌を続けたまま、このスラリーにパルプ重量に対して製紙用ロジンサイズ剤(商品名:サイズパインE、荒川化学工業社製)0.2%、アニオン性ポリアクリルアミド系紙力増強剤(商品名:ポリストロン194ー7、荒川化学工業社製)0.1%及び硫酸バンド2.0%を、前記の順番に添加し、pHを4.5とし、更に1分間撹拌を続けた後、TAPPI標準の角型シートマシンで坪量60g/m2の手抄きシートを作製し、実施例1と同様にして得られた紙の引張り強度と層間強度を試験し、更にステキヒトサイズ度を試験し、品質を評価した。 尚、紙のステキヒトサイズ度はJIS P 8122に準拠して測定した。
【0073】
比較例10
実施例11で用いたと同じパルプ繊維スラリーに、スリーワン・モーターで攪拌しながらCMCのナトリウム塩を添加することなく、パルプ重量に対して製紙用ロジンサイズ剤(商品名:サイズパインE、荒川化学工業社製)0.2%、アニオン性ポリアクリルアミド系の紙力増強剤(商品名:ポリストロン194ー7、荒川化学工業社製)0.1%及び硫酸バンド(Al2(SO4)3・18H2O)2.0%を、この順番に添加し、1分間攪拌を続けpHを4.5とした後、実施例1と同様にして手抄きシートを作製し、得られた紙を試験し、品質を評価した。
【0074】
比較例11
比較例10における薬品の添加率を、ロジンサイズ剤0.5%、紙力増強剤0.3%、硫酸バンド2.0%として、スラリーの最終pHを4.5としたこと以外は、比較例10と同様にして手抄きシートを作製し、得られた紙を試験し、品質を評価した。
実施例11及び比較例10〜11で得られた結果を表3に示す。
【0075】
【表3】
【0076】
実施例12
実験用ナイアガラビーターでろ水度を450mlCSF(カナダ標準フリーネス)に調製した広葉樹晒クラフトパルプ100gと水4.9リットルからなる2%濃度のパルプ繊維スラリーに、固形分1%の溶液粘度が1400cps、置換度が0.4のCMCのナトリウム塩(PX01、第一工業製薬社製)を濃度が1%の水溶液としてパルプ重量に対し0.1%添加し、スリーワン・モーターにて450rpmの速度で攪拌しながら、1%濃度の希硫酸を添加し、パルプ繊維スラリーのpHを4に調整し、そのまま30秒間攪拌を続けた後、5%濃度の希苛性ソーダ水溶液を添加し、パルプ繊維スラリーのpHを7とした。
更に、撹拌を続けながら、このスラリーに、パルプ重量に対してカチオン化澱粉(商品名:ケートF、ナショナルスターチ社製)0.5%、アルキルケテンダイマーを成分とする中性抄紙用サイズ剤(商品名:サイズパインK903、荒川化学工業社製)0.05%、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂を成分とする紙力増強剤(商品名:WS570、日本PMC社製)0.1%、製紙用填料として軽質炭酸カルシウム10%、硫酸バンド0.2%及びポリアクリルアミドを成分とする製紙用歩留り向上剤(商品名:ハイモロックNR11L、ハイモ社製)0.01%を、この順番に添加し、1分間撹拌を続けた後(最終pHは8.2)、実施例1と同様にして手抄きシートを作製し、得られた紙の引張り強度、ステキヒトサイズ度及びハンター白色度を試験し、品質を評価した。更に、手抄きシートの灰分をJIS P 8128に準拠して測定し、この値を用いて填料の歩留まり(リテンション)を算出した。
尚、紙のハンター白色度はJIS P 8123によった。
【0077】
比較例12
実施例12で用いたのと同じパルプ繊維スラリーにCMCのナトリウム塩を添加しないこと以外は、実施例7と同様にして撹拌しながら抄紙薬品を添加した後、手抄きシートを作製し、品質を評価した。パルプ繊維スラリーの最終pHは8.2であった。
【0078】
比較例13
実施例12で用いたのと同じパルプ繊維スラリーにCMCのナトリウム塩を添加せず、製紙薬品の添加率を、パルプ重量に対してカチオン化デンプン0.7%、アルキルケテンダイマーを成分とする中性抄紙用サイズ剤を0.15%、ポリアミドーエピクロルヒドリン樹脂を成分とする紙力増強剤を0.2%、炭酸カルシウムを10%、硫酸バンドを0.2%、製紙用歩留り向上剤を0.03%としたこと以外は、実施例12と同様にして手抄きシートを作製し、得られた紙の品質を評価した。パルプ繊維スラリーの最終pHは8.2であった。
実施例12及び比較例12〜13で得られた結果を表4に示した。
【0079】
【表4】
【0080】
実施例13
(印刷用塗被紙の製造:紙料の調成)
固形分濃度4%の広葉樹晒しクラフトパルプをダブルディスクリファイナーを用いてカナダ標準ろ水度が500mlとなるように叩解した。叩解後、濃度を2%としたパルプスラリーに、固形分1%の溶液粘度が1600cps、置換度が0.6のCMCのナトリウム塩(商品名:セロゲン4H、第一工業製薬社製)を濃度が1%の水溶液としてパルプ重量に対し0.2%添加し、次いで1%濃度の希硫酸を添加してpHを3に調整した。その後5%濃度の希苛性ソーダ水溶液を添加しパルプスラリーのpHを7とし、内添サイズ剤としてロジンサイズ剤(商品名:サイズパインE、荒川化学社製)0.7%および硫酸バンド2%、および填料としてタルク20%を絶乾パルプ重量当たり添加し紙料とした。
(抄紙)
前記紙料を用いて、ギャップフォーマーを有する抄紙機にて速度1300m/分で抄紙し、さらにオンマシン上のゲートロールサイズプレス装置で、10%濃度の酸化澱粉(商品名:エースA、王子コーンスターチ社製)液を2g/m2塗布、乾燥して坪量55g/m2の印刷用塗被紙用原紙を製造した。
(塗被液の調製)
重質炭酸カルシウム(商品名:FMT−90、ファイマテック社製)25%とカオリン(商品名:アマゾン88、CADAM社製)75%からなる顔料をコーレス分散機を用いて分散し、固形分濃度72%の顔料スラリーを得た。このスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:SN307、住友ダウ社製)を顔料重量当たり固形分で10%、酸化澱粉(商品名:エースA、王子コーンスターチ社製)を固形分で4%、その他助剤を添加分散して固形分濃度58%の塗被液を調製した。
(塗被紙の製造)
前記の印刷用塗被紙用原紙に前記の塗被液を用いて、片面15g/m2となるようにブレードコーターで両面塗工を行った。得られた塗被紙を金属ロール6本とコットンロール6本からなるオフマシンスーパーカレンダーにニップ圧200kg/cmで通紙し、王研式平滑度が表1100秒、裏1120秒のオフセット印刷用塗被紙を製造した。
(品質評価)
以下の試験方法を用い、得られた印刷用塗被紙の品質を評価した。
(1)原紙の地合
原紙の地合を目視により、下の3段階の評価を行った。
◎:非常に良好 ○:良好 △:やや劣る
(2)塗被紙の白紙光沢
JIS−P8142に準拠して測定した。
(3)塗被紙の印刷光沢
RI印刷試験機(明製作所社製)を使用し、オフセット用インキ(Graf−G墨、大日本インキ化学工業社製)0.4ccを用いて塗被紙表面に印刷し、印刷後の表面光沢を目視判定した。また、併せて光沢ムラについても目視判定した。
◎:非常に良好 ○:良好 △:やや劣る
(4)層間強度
TAPPI UM403に準拠して測定した。
(5)耐ブリスター性の測定
RI印刷機(明製作所製)でオフセット輪転印刷用インキ1mlを展開し、塗被紙サンプルの両面に印刷する。印刷したサンプルを加温したシリコーンオイルに漬け、発生するブリスターの様子を目視で観察し、次の評価基準で評価した。
評価基準
◎・・・ブリスターの発生が殆ど見られない。
○・・・極めて軽度のブリスターの発生が見られるが、実用的に問題とならない。
△・・・ブリスターの発生が見られ、実用的に使用できない。
×・・・ひどいブリスターの発生が見られ、実用的に使用できない。
【0081】
実施例14
紙料の調成において、CMCのナトリウム塩の添加量を0.02%とした以外は実施例13と同様にして原紙および印刷用塗被紙を製造し、品質を評価した。
【0082】
実施例15
紙料の調成において、固形分1%溶液の粘度が1400cps、置換度が0.4のCMCのナトリウム塩(PX01、第一工業製薬社製)を用い、CMC添加後のpHを4とした以外は実施例13と同様にして原紙および印刷用塗被紙を製造し、品質を評価した。
【0083】
実施例16
パルプの多段漂白前に、パルプ濃度を10%、pHを8.0に調整し、次いでキシラン分解活性を有する酵素(商品名:パルプザイムHC、ノボノルディスク社製)を2U/絶乾パルプg添加した後、60℃で90分処理した。その後に多段漂白を行い酵素処理晒しクラフトパルプを製造した。
この酵素処理したパルプを用いたこと以外は実施例13と同様にして原紙及び印刷用塗被紙を製造し、品質を評価した。
【0084】
実施例17
紙料の調成において、CMCの添加率が0.02%であること以外は実施例16と同様にして原紙及び印刷用塗被紙を製造し、品質を評価した。
【0085】
比較例14
紙料の調成において、CMCのナトリウム塩を添加せず、かつパルプスラリーのpH調整をしないこと以外は実施例13と同様にして原紙および印刷用塗被紙を製造し、品質を評価した。
【0086】
比較例15
紙料の調成において、パルプスラリーにCMCのナトリウム塩を添加した後に、希硫酸によるpH調整を行わないこと以外は実施例13と同様にして原紙および印刷用塗被紙を製造し、品質を評価した。
【0087】
比較例16
紙料の調成において、実施例1で用いたものと同じパルプスラリーに、ロジンサイズ剤、硫酸バンド、タルクを同様に添加した後、歩留まり向上剤(商品名:ハイモロックNR11L、ハイモ社製)0.02%を添加した以外は実施例13と同様にして原紙および印刷用塗被紙を製造し、品質を評価した。
【0088】
比較例17
比較例16における歩留まり向上剤の添加率を0.2%とした以外は実施例13と同様にして原紙および印刷用塗被紙を製造し、品質を評価した。
【0089】
比較例18
実施例16で用いた酵素処理晒しクラフトパルプを用いたこと以外は、比較例14と同様にして原紙及び印刷用塗被紙を製造し、品質を評価した。
【0090】
比較例19
実施例16で用いた酵素処理晒しクラフトパルプを用い、紙料の調成において、前出のロジンサイズ剤0.7%を添加した後にポリアクリルアミド系紙力増強剤(商品名:ポリストロン194−7、荒川化学社製)を0.2%添加したこと以外は比較例14と同様にして原紙及び印刷用塗被紙を製造し、品質を評価した。
【0091】
参考例3
比較例14と同じ紙料を、長網式抄紙機で抄速800m/分で原紙を抄造し、その他は実施例13と同様にして印刷用塗被紙を製造し、品質を評価した。
実施例13〜17及び比較例14〜19及び参考例3で得られた結果を表5に示した。
【0092】
【表5】
【0093】
表1から明らかな如く、本発明は、いずれもポリアクリルアミドを成分とする市販の紙力増強剤を使用した場合より優れた紙力増強効果を示す(実施例1〜7と比較例1〜2)。また、CMC及び/又はCECを添加した後の鉱酸によるpH調整なしではこのような優れた効果は発現せず(実施例1及び実施例3と比較例3〜4)、また、CMC添加後のpH調整は、より低い方が効果は高い(実施例1と実施例5、及び実施例6と実施例7)。
また、CMCとCECではCMCの方が効果は高く(実施例1〜2と実施例3〜4)、さらにCMCの方が低価格であることも併せて考えれば、実用的にはCMCの方が好ましい。
さらに、CMCの置換度が小さい方が紙力増強効果は大きく(実施例1及び実施例5と実施例6〜7)、CMC添加後のpH調整も軽減できることから、本発明において用いるものとしては、低置換度のCMCが最も好ましい。
【0094】
表2は硫酸バンドを添加した抄紙系での本発明の効果を示している。硫酸バンドはサイズ剤その他の定着剤として汎用されている製紙用薬品の一つであり、この硫酸バンドの添加率により前出酸性抄紙と中性、或いはアルカリ抄紙が区別される。すなわち酸性抄紙では紙料固形分に対しおおよそ1〜3重量%の硫酸バンドが添加され、このため紙料スラリーのpHは4〜5となる。一方の中性、或いはアルカリ抄紙では、硫酸バンドの添加率はおおむね0.5%未満であり、さらに弱アルカリ性を示す炭酸カルシウムが填料として加えられることが多く、このため紙料スラリーのpHは6〜9となる。
硫酸バンド中のアルミニウムイオンがパルプ繊維表面に吸着してサイズ剤その他の定着剤として作用するが、一方、このため繊維間結合を阻害し、一般に硫酸バンドを添加すると紙力は低下する(参考例1と参考例2)。ただし、中性抄紙或いはアルカリ抄紙の場合は、前記したとおり一般的に炭酸カルシウム等の填料が配合され、これら填料も紙力を大幅に低下させるため、硫酸バンドの添加率が多いからといって酸性紙が中性紙より紙力が劣るというわけではない。
このような硫酸バンドが添加される条件下で本発明の効果を比較しても、市販の紙力増強剤より優れた効果を示す(実施例8〜10と比較例5)。また、前段落で記したと同様に、この場合もCECよりCMCの方が効果が高く(実施例8と実施例9)、また、CMCでも置換度の低いものの方が優れた効果を示す(実施例8と実施例10)。
また、CMC及び/又はCEC添加後のpH調整を行わない場合には、たとえ硫酸バンドでパルプスラリーの最終的なpHが酸性域であっても本発明のような高い効果は発現しない(実施例8〜10と比較例6〜8)。さらにこのpH調整は、硫酸等の鉱酸で行わなければ、ほとんど効果は発現しない(実施例8と比較例9)。これは、希硫酸等の鉱酸でpH調整を行った場合には、CMC及び/又はCECがパルプ繊維表面に均一な分布で吸着するのに対し、硫酸バンドでpH調整を行った場合には、パルプには吸着されるものの、CMC及び/又はCECがゲル状となり、パルプ繊維上の分布が悪いためと考えられる。この、硫酸バンドではなく、鉱酸によりpH調整を行うことが本発明の最大の特徴である。
【0095】
表3では、酸性抄紙法において、紙力増強剤の他サイズ剤が添加された場合の、本発明の効果を示している。この表から明らかな如く、本発明は、従来から用いられている紙力増強剤(ポリアクリルアミド)を少量(パルプ重量当り0.1%)併用することにより、前記の酸性抄紙においても極めて優れた引張り強度と層間強度を得ることができ、しかもサイズ剤の歩留まり、及び繊維上の分布が優れるため、極めて高いサイズ度を発現させることができ、必要に応じてサイズ剤の使用量を減少させることができる(実施例12と比較例12〜13)。
【0096】
表4では、填料として炭酸カルシウムが添加され、最終的なパルプスラリーのpHが8付近となる中性抄紙の条件において、紙力増強剤の他、填料、サイズ剤、歩留まり向上剤が添加された場合の、本発明の効果を示している。この表から明らかなように、本発明は中性抄紙法においても填料の歩留まりを顕著に改善して引張り強度とサイズ度を高めることができ、必要に応じて薬品の使用量を減少させ製造コストを低下させることができる(実施例12と比較例12〜13)。填料の歩留まりが高いということは、抄紙系内での汚れの発生が少ないことを示唆しており、このことも本発明の顕著な効果の一つである。
【0097】
また表5から明らかなように、本発明の方法によれば、印刷用塗被紙の原紙を高速に抄造するにあたっての課題であった、光沢性並びに耐ブリスター性に優れた印刷用塗被紙の製造が可能となるが、CMCの添加量が多い方が効果は高く(実施例13と14)、又低置換度のCMCを用いた方がその効果は高い(実施例15)。さらにキシラン分解活性を有する酵素で処理したパルプを使用することにより 、さらに耐ブリスター性に優れた印刷用塗被紙の製造が可能となる(実施例16、17)。
CMCを添加しない場合(比較例14)、或いはCMCを添加してもpH調整を行わなければ(比較例15)、光沢性、ブリスター性とも不満足なものとなり、歩留まり向上剤を添加すると地合が悪化し、また耐ブリスター性も改善されない(比較例16、17)。
【0098】
【発明の効果】
本発明は、紙に優れた強度を付与するのみならず、パルプ繊維スラリーに添加される抄紙薬品、填料の歩留まりを顕著に改善し紙の品質の向上と製造コストの削減を可能にする紙の製造方法を提供するという効果を奏する。
また、印刷用塗被紙の原紙を抄紙するにあたっては、ギャップフォーマーによる高速抄紙でも、地合を損ねることなく歩留まりの向上、また、優れたサイズ性を発現させ、その結果、表面光沢、印刷光沢に優れ、且つ光沢ムラのない極めて優れた印刷用塗被紙が製造できる。さらに層間強度を効果的に向上させることにより耐ブリスター性にも優れた印刷用塗被紙の製造が可能となる。キシラン分解活性を有する酵素で処理したパルプを用いると、原紙の通気性が高くなるため、さらに耐ブリスター性に優れた印刷用塗被紙の製造が可能となる。
【0099】
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の長網抄紙機の概略図である。
【図2】通常のハイブリッドフォーマー型抄紙機の概略図である。
【図3】通常のギャップフォーマー型抄紙機の概略図である。
【符号の説明】
1.ヘッドボックス
2.フォーミングボード
3.サクションフォイル
4.ボトムワイヤ
5.トップワイヤ
6.サクションボックス
Claims (4)
- 叩解された後のパルプ繊維からなるスラリーに、置換度が0.3〜0.6である低置換度のカルボキシメチルセルロースの塩及び/又はカルボキシエチルセルロースの塩の水溶液を添加し、次いで鉱酸を添加してパルプスラリーのpHを2〜6に調整し、該低置換度のカルボキシメチルセルロースの塩及び/又はカルボキシエチルセルロースの塩を酸型に転換してパルプに均一に吸着させたパルプ繊維を含有することを特徴とする塗被紙。
- カルボキシメチルセルロースの塩及び/又はカルボキシエチルセルロースの塩の置換度が0.3〜0.6であり、かつ、pHが3.5〜5.5の範囲であることを特徴とする請求項1記載の塗被紙。
- 前記鉱酸添加後のpHをさらにpH5〜9に調整することを特徴とする請求項1又は2に記載の塗被紙。
- カルボキシメチルセルロース及び/又はカルボキシエチルセルロースの添加率が、絶乾パルプ重量に対して0.01〜5.0重量%であることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載の塗被紙。
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