JP3913965B2 - ヒトインターロイキン−6受容体に対するキメラ抗体 - Google Patents

ヒトインターロイキン−6受容体に対するキメラ抗体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヒトインターロイキン−6受容体(IL−6R)に対するマウスモノクローナル抗体の可変領域(V領域)、ヒトIL−6Rに対するヒト/マウスキメラ抗体、ヒトライト鎖(L鎖)V領域及びヒトヘビー鎖(H鎖)V領域の相補性決定領域(CDR)がヒトIL−6Rに対するマウスモノクローナル抗体のCDRにより置き換えられている再構成(reshaped)ヒト抗体の使用に関する。本発明はさらに、上記の抗体又はその部分をコードするDNAを提供する。本発明はさらに、前記DNAを含んで成るベクター、特に発現ベクター、並びに該ベクターにより形質転換された宿主に関する。本発明はさらに、ヒトIL−6Rに対するキメラ抗体の製造方法、及びヒトIL−6Rに対する再構成ヒト抗体の製造方法を提供する。
【0002】
【従来の技術】
インターロイキン−6(IL−6)は一連の細胞により生産される多機能サイトカインである。このものは免疫応答、急性期反応及び造血を調節し、そして宿主防御機構において中心的役割を演ずる。このものは広範な組織に作用して、標的細胞の性質に応じて成長誘導効果、成長阻害効果及び分化誘導効果を発揮する。IL−6に対する特異的レセプター(IL−6R)は、IL−6の多機能性に従ってリンパ系細胞及び非リンパ系細胞上で発現される。IL−6遺伝子の異常発現が種々の疾患、特に自己免疫疾患、メサンジウム細胞増殖性糸球体腎炎、及び形質細胞腫/骨髄腫の発病に関与することが示唆されている(Hiranoら、Immunol.Today,11,443−449,1990の総説を参照のこと)。ヒト骨髄腫細胞はIL−6を生産しそしてIL−6Rを発現することが観察される。実験において、IL−6に対する抗体が骨髄腫細胞の試験管内での増殖を阻害し、そしてそれ故にヒト骨髄腫の発癌においてオートクリン調節ループが機能していることが示された(Kawanoら、Nature,332,83,1988)。
【0003】
IL−6Rは種々の動物細胞の表面に存在し、そしてIL−6に特異的に結合し、そして細胞表面上のIL−6R分子の数が報告されている(Tagaら、J.Exp.Med.196,967,1987)。さらに、ヒトIL−6RをコードするcDNAがクローン化され、そしてIL−6Rの一次構造が報告されている(Yamasakiら、Science,241,825,1988)。
マウスのモノクローナル抗体はヒトにおいて高度に免疫原性(「抗原性」という場合もある)があり、そしてこの理由のため、ヒトにおけるそれらの療法的価値は制限される。ヒトにおけるマウス抗体の半減期は比較的短い。さらに、ヒト抗マウス抗体は、予定された効果を妨害するのみならず、患者における不都合なアレルギー応答の危険をもたらす免疫応答を惹起することなくして頻回投与することはできない。
【0004】
これらの問題を解決するため、ヒト型化(humanized)抗体の製造方法が開発された。マウス抗体は2つの方法でヒト型化することができる。より簡単な方法は、可変領域がもとのマウスモノクローナル抗体に由来しそして定常領域が適当なヒト抗体に由来するキメラ抗体を作製する方法である。得られるキメラ抗体はもとのマウス抗体の完全な可変領域を含有し、そしてもとのマウス抗体と同一の特異性をもって抗原に結合することを期待することができる。さらに、キメラ抗体ではヒト以外に由来する蛋白質配列の比率が実質的に減少しており、そしてそれ故にもとのマウス抗体に比べて免疫原性が低いと予想される。キメラ抗体は抗原によく結合しそして免疫原性が低いが、マウス可変領域に対する免疫応答がなお生ずる可能性がある(LoBuglioら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,4220−4224,1989)。
【0005】
マウス抗体をヒト型化するための第二の方法は一層複雑であるが、しかしマウス抗体の潜在的な免疫原性をさらに大幅に低下させるものである。この方法においては、マウス抗体の可変領域からの相補性決定領域(complementarity determining region;CDR)をヒト可変領域に移植して「再構成」(reshaped)ヒト可変領域を作製する。次に、これらの再構成ヒト可変領域をヒト定常領域に連結する。最終的に再構成されたヒト型化抗体のヒト以外の蛋白質配列に由来する部分はCDRと極く一部のフレームワーク(FR)のみである。CDRは超可変蛋白質配列により構成されている。これらは種特異的配列を示さない。これらの理由のため、マウスCDRを担持する再構成ヒト抗体はもはやヒトCDRを含有する天然ヒト抗体より強い免疫原性を有しないはずである。
【0006】
前記のごとく、再構成ヒト抗体は療法目的のために有用であると予想されるが、ヒトIL−6Rに対する再構成ヒト抗体は知られていない。さらに、再構成ヒト抗体の製造方法であって任意の特定の抗体に普遍的に適用し得る方法は存在しない。従って、特定の抗原に対する十分に活性な再構成ヒト抗体を作製するためには種々の工夫が必要である。ヒトIL−6Rに対するマウスモノクローナル抗体、すなわちPM1およびMT18は作製されており(特願平2−189420)、そして本発明者らはヒトIL−6Rに対するマウスモノクローナル抗体AUK12−20、AUK64−7及びAUK146−15を調製しているが、本発明者らはヒトIL−6Rに対する再構成ヒト抗体の作製を示唆する文献を知らない。
さらに、ヒト骨髄腫細胞株が移植されたヌードマウスに、ヒトIL−6Rに対するマウスモノクローナル抗体が注射された時腫瘍の増殖が顕著に阻害されることを、本発明者らは見出した。このことは、骨髄腫の治療のための療法剤として抗ヒトIL−6R抗体が有用であることを示唆している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明はヒトIL−6Rに対する、免疫原性の低い抗体を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
従って、本発明はヒトIL−6Rに対する再構成ヒト抗体を提供する。本発明はまた、該再構成ヒト抗体の作製の過程で有用なヒト/マウスキメラ抗体を提供する。本発明はさらに、再構成ヒト抗体の部分、並びに再構成ヒト抗体及びその部分並びにキメラ抗体の製造のための発現系を提供する。
さらに具体的には、本発明は、ヒトIL−6Rに対するマウスモノクローナル抗体のL鎖V領域;並びにヒトIL−6Rに対するマウスモノクローナル抗体のH鎖V領域を提供する。
【0009】
本発明はさらに、
(1)ヒトL鎖C領域、及びヒトIL−6Rに対するマウスモノクローナル抗体のL鎖V領域を含んで成るL鎖;並びに
(2)ヒトH鎖C領域、及びヒトIL−6Rに対するマウスモノクローナル抗体のH鎖V領域を含んで成るH鎖;
を含んで成る、ヒトIL−6Rに対するキメラ抗体を提供する。
【0010】
本発明はさらに、ヒトIL−6Rに対するマウスモノクローナル抗体のL鎖V領域のCDR;並びにヒトIL−6Rに対するマウスモノクローナル抗体のH鎖V領域のCDRを提供する。
本発明はさらに、
(1)ヒトL鎖V領域のフレームワーク領域(FR)、及び
(2)ヒトIL−6Rに対するマウスモノクローナル抗体のL鎖V領域のCDR、
を含んで成る、ヒトIL−6Rに対する抗体の再構成ヒトL鎖V領域;並びに
(1)ヒトH鎖V領域のFR、及び
(2)ヒトIL−6Rに対するマウスモノクローナル抗体のH鎖V領域のCDR、
を含んで成る、ヒトIL−6Rに対する抗体の再構成ヒトH鎖V領域を提供する。
【0011】
本発明はさらに、
(1)ヒトL鎖C領域、並びに
(2)ヒトFR、及びヒトIL−6Rに対するマウスモノクローナル抗体のCDRを含んで成るL鎖V領域、
を含んで成る、ヒトIL−6Rに対する抗体の再構成ヒトL鎖;並びに
(1)ヒトH鎖C領域、並びに
(2)ヒトFR、及びヒトIL−6Rに対するマウスモノクローナル抗体のCDRを含んで成るH鎖V領域、
を含んで成る、ヒトIL−6Rに対する抗体の再構成ヒトH鎖を提供する。
【0012】
本発明はさらにまた、
(A)(1)ヒトL鎖C領域、並びに
(2)ヒトL鎖FR、及びヒトIL−6Rに対するマウスモノクローナル抗体のL鎖CDRを含んで成るL鎖;並びに
(B)(1)ヒトH鎖C領域、並びに
(2)ヒトH鎖FR、及びヒトIL−6Rに対するマウスモノクローナル抗体のH鎖CDRを含んで成るH鎖;
を含んで成る、ヒトIL−6Rに対する再構成ヒト抗体を提供する。
【0013】
本発明はまた、前記種々の抗体構成ポリペプチド、又はその部分をコードするDNAに関する。
本発明はまた、上記DNAを含んで成るベクター、例えば発現ベクターに関する。
本発明はさらに、上記ベクターにより形質転換された宿主を提供する。
本発明はさらにまた、ヒトIL−6Rに対するキメラ抗体の製造方法、及びヒトIL−6Rに対する再構成ヒト抗体の製造方法を提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】
マウスV領域をコードするDNAのクローニング
さらに詳しくは、ヒトIL−6Rに対するマウスモノクローナル抗体のV領域をコードするDNAをクローン化するためには、遺伝子源として、ヒトIL−6Rに対するモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマを作製することが必要である。この様なハイブリドーマとして、特願平2−189420号明細書にはモノクローナル抗体PM1を生産するマウスハイブリドーマPM1及び該抗体の性質が記載されている。本明細書の参考例2にハイブリドーマPM1の作製方法を記載する。本発明者らは、それぞれがヒトIL−6Rに対するマウスモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマAUK12−20、AUK64−7及びAUK146−15を作製している。これらのハイブリドーマの作製方法は本明細書の参考例3に記載されている。
【0015】
マウスモノクローナル抗体の可変領域をコードする目的のDNAをクローン化するためハイブリドーマ細胞を破壊し、そしてChirgwinら、Biochemistry 18,5294,1977に記載されている常法により全RNAを得る。次に、この全RNAを用いて、J.W.Larrickら、Biotechnology,,934,1989に記載されている方法を用いて一本鎖cDNAを合成する。
【0016】
次に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いて前記cDNAの有意義な部分の特異的増幅を行う。マウスモノクローナル抗体のカッパ(κ)型L鎖V領域の増幅のため、配列番号:1〜11に示す11種のオリゴヌクレオチドプライマー(Mouse Kappa Variable;MKV)及び配列番号:12に示すオリゴヌクレオチドプライマー(Mouse Kappa Constant;MKC)をそれぞれ5′−末端プライマー及び3′−末端プライマーとして使用する。
【0017】
前記MKVプライマーはマウスカッパ型L鎖リーダー配列をコードするDNA配列とハイブリダイズし、そして前記MKCプライマーはマウスカッパ型L鎖C領域をコードするDNA配列とハイブリダイズする。マウスモノクローナル抗体のH鎖V領域の増幅のため、配列番号:13〜22に示す10種のオリゴヌクレオチドプライマー(Mouse Heavy Variable;MHV)及び配列番号:23に示すオリゴヌクレオチドプライマー(Mouse HeavyConstant;MHC)をそれぞれ5′−末端プライマー及び3′−末端プライマーとして使用する。
【0018】
なお、5′−末端プライマーはその5′−末端近傍に制限酵素SalI切断部位を提供する配列GTCGACを含有し、そして3′−末端プライマーはその5′−末端近傍に制限酵素Xmal切断部位を提供するヌクレオチド配列CCCGGGを含有する。これらの制限酵素切断部位は可変領域をコードする目的のDNA断片をクローニングベクターにサブクローニングするために用いられる。
【0019】
次に増幅生成物を制限酵素SalI及びXmaIで切断させて、マウスモノクローナル抗体の目的とする可変領域をコードするDNA断片を得る。他方、プラスミドpUC19のごとき適当なクローニングベクターを同じ制限酵素SalI及びXmaIにより切断させ、このpUC19に前記DNA断片を連結することにより、マウスモノクローナル抗体の目的とする可変領域をコードするDNA断片を含むプラスミドを得る。
クローン化されたDNAの配列決定は任意の常法に従って行うことができる。
目的とするDNAのクローン化及びその配列決定を実施例1〜3に具体的に記載する。
【0020】
相補性決定領域(CDR)
本発明はさらに、本発明の各V領域の超可変又は相補性決定領域(CDR)を提供する。L鎖及びH鎖の各対のV領域は抗原結合部位を形成する。L鎖及びH鎖上のこの領域は同様の全般的構造を有しそして各領域は配列の比較的保存された4個のフレームワーク領域を含み、それらは3個の超可変領域又はCDRにより連結されている(Kabat,E.A.ら、「Sequences of Proteins ofImmunological Interest」,USDept.Health and Human Services 1983)。
【0021】
前記4個のフレームワーク領域(FR)の多くの部分はβ−シート構造をとり、CDRはループを形成する。CDRはある場合にはβ−シート構造の一部分を形成することもある。CDRはFRによって非常に近い位置に保持され、そして他の領域のCDRと共に抗原結合部位の形成に寄与する。本発明は、ヒト型化抗体の素材として有用なこれらのCDR、及びそれをコードするDNAをも提供する。これらのCDR領域は、V領域の既知アミノ酸配列と照合することによって、Kabat,E.A.ら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」の経験則から見出すことができ、実施例4において具体的に説明する。
【0022】
キメラ抗体の作製
ヒトIL−6Rに対する抗体の再構成ヒトV領域を設計するに先立って、使用するCDRが実際に抗原結合領域を形成することを確かめる必要がある。この目的のため、キメラ抗体を作製した。さらに実施例1及び2に記載される4種類のモノクローナル抗体のクローン化されたDNAのヌクレオチド配列から推定されるマウス抗ヒトIL−6R抗体のアミノ酸配列を相互に、及び既知のマウス及びヒトの抗体のV領域と比較した。4種類のモノクローナル抗体のそれぞれについて、1セットの典型的な機能的マウスL及びH鎖V領域がクローニングされた。しかしながら、4種類すべてのマウス抗ヒトIL−6R抗体は比較的異なるV領域を有していた。4種類の抗体は相互に単に微小な相違ではなかった。クローン化されたマウスV領域を用いて4種類のキメラ抗ヒトIL−6R抗体を作製した。
【0023】
キメラ抗体を作製するための基本的な方法は、PCR−クローン化cDNAに見られるようなマウスリーダー配列及びV領域配列を、哺乳類細胞発現ベクター中にすでに存在するヒトC領域をコードする配列に連結することを含んで成る。前記4種類のモノクローナル抗体の内、モノクローナル抗体AUK12−20からのキメラ抗体の作製を実施例5に記載する。
【0024】
モノクローナル抗体PM−1からのキメラ抗体の作製を実施例6に記載する。マウスPM−1κL鎖リーダー領域及びV領域をコードするcDNAを、ヒトL鎖C領域をコードするヒトゲノムDNAを含有する発現ベクターにPCR法を用いてクローン化した。マウスPM−1抗体(単に「PM−1抗体」又は「PM」という場合もある)のH鎖リーダー及びV領域をコードするcDNAを、ヒトγ−1C領域をコードするゲノムDNAを含有する発現ベクターにPCR法を用いてサブクローン化した。
【0025】
特に設計されたPCRプライマーを用いて、マウスPM−1抗体のV領域をコードするcDNAをそれらの5′−及び3′−末端において適当な塩基配列を導入して(1)それらが発現ベクターに容易に挿入されるように、且つ(2)それらが該発現ベクター中で適切に機能するようにした。次に、これらのプライマーを用いてPCRにより増幅して得たマウスPM−1抗体のV領域を、所望のヒトC領域をすでに含有するHCMV発現ベクター(図1)に挿入した。これらのベクターは、種々の哺乳類細胞系における遺伝子操作された抗体の一過性(transient)発現又は安定な発現のために適当である。
【0026】
マウスPM−1抗体中に存在するV領域と同じV領域を有するキメラPM−1 抗体(バージョンa)の作製に加えて、キメラPM−1抗体の第二のバージョン(バージョンb)を作製した。キメラPM−1抗体(バージョンb)においては、L鎖V領域中の位置107のアミノ酸がアスパラギンからリジンに変えられている。マウスPM−1抗体からのL鎖V領域と他のマウスL鎖V領域との比較において、位置107におけるアルギニンの存在は異常であることが注目された。
【0027】
マウスκL鎖V領域においては、位置107の最も典型的アミノ酸はリジンである。マウスPM−1抗体のL鎖V領域中の位置107に非典型的なアミノ酸であるアルギニンを有することの重要性を評価するため、位置107を典型的なアミノ酸であるリジンに変えた。この変更は、PCR−変異誘発法(M.Kammanら、Nucl.Acids Res.(1987)17:5404)を用いてL鎖V領域をコードするDNA配列中に必要な変更を行うことにより達成された。
【0028】
キメラPM−1抗体バージョン(a)はヒトIL−6Rに結合する活性を示した。キメラPM−1抗体バージョン(b)もバージョン(a)と同様にヒトIL−6Rに結合する。同様に、他の2種類のモノクローナル抗体AUK64−7及びAUK146−15からキメラ抗体を作製した。4種類すべてのキメラ抗体はヒトIL−6Rによく結合し、機能的測定において、正しいマウスV領域がクローン化されそして配列が決定されていたことが示された。
【0029】
4種類のマウス抗ヒトIL−6R抗体から、ヒトIL−6Rに対する再構成ヒト抗体の設計及び作製のための第一の候補としてマウスPM−1抗体を選択した。マウスPM−1抗体の選択は主として、ヌードマウスに移植されたヒト骨髄腫細胞に対するマウス抗ヒトIL−6R抗体及びキメラ抗体の効果を研究して得られた結果に基く。4種類のマウス抗ヒトIL−6R抗体の内、PM−1抗体が最も強い抗腫瘍細胞活性を示した。又、キメラPM−1抗体はキメラAUK12−20抗体よりも強い抗腫瘍活性を示した。
【0030】
マウスモノクローナル抗体PM−1のV領域と既知のマウス及びヒトの抗体のV領域との比較
マウスモノクローナル抗体のCDRがヒトモノクローナル抗体に移植されている再構成ヒト抗体を作製するためには、マウスモノクローナル抗体のFRとヒトモノクローナル抗体のFRとの間に高い相同性が存在することが望ましい。従って、マウスPM−1抗体のL鎖及びH鎖のV領域を、OWL(or Leeds)database of protein sequencesに見出されるすべての既知マウス及びヒトのV領域と比較した。
【0031】
マウス抗体のV領域に関しては、PM−1抗体のL鎖V領域はマウス抗体musigkcko(Chen,H.T.ら、J.Biol.Chem.(1987)262:13579−13583)のL鎖V領域と最も類似しており、93.5%の同一性(identity)が存在した。PM−1抗体のH鎖V領域はマウス抗体musigvhr2(F.J.Grantら、Nucl.Acids Res.(1987)15:5496)のH鎖V領域に最も類似しており、84.0%の同一性が存在した。マウスPM−1抗体のV領域は既知マウスV領域に高比率の同一性を示し、マウスPM−1抗体のV領域が典型的なマウスV領域であることが示される。このことはさらに、クローン化されたDNA配列が正しいという間接的な証明を与える。一般に、H鎖V領域間に比べてL鎖V領域間の方がより高い比率の同一性が存在する。これはおそらく、H鎖V領域に比べてL鎖V領域において一般的に観察されるより少ない量の多様性のためであろう。
【0032】
ヒト抗体のV領域に関しては、マウスPM−1抗体のL鎖V領域は、REIとも称されるヒト抗体klhure(W.Palmら、Physiol.Chem.(1975)356:167−191)のL鎖V領域に最も類似しており、72.2%の同一性が存在する。PM−1抗体のH鎖V領域は、ヒト抗体humighvap (VAP)(H.W.Schroederら、Science (1987) 238:791−793)に最も類似しており、71.8%の同一性が存在する。マウスPM−1抗体からの再構成抗体をいかに設計するかを考えるためにヒトV領域との比較が最も重要である。ヒトV領域への同一性の比率はマウスV領域への同一性の比率より低い。これはマウスPM−1抗体のV領域がマウスV領域に類似しており、そしてヒトV領域には類似していないことの間接的証明である。この証明にまた、ヒト患者における免疫原性の問題を解決するためにマウスPM−1のV領域をヒト型化する(humanize)ことが最善であることを示す。
【0033】
マウスPM−1抗体のV領域をさらに、E.A. Kabatら、(1987)Sequences ofProteins of Immunological Interest, Forth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, U.S. Government Printing Officeにより定義される、ヒトV領域の異なるサブグループについてのコンセンサス配列と比較した。V領域のFR間で比較を行った。その結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
Figure 0003913965
【0035】
マウスPM−1抗体のL鎖V領域のFRはヒトL鎖V領域のサブグループI(HSGI)のコンセンサス配列からのFRに最も類似しており、70.1%の同一性が存在する。マウスPM−1のH鎖V領域のFRはヒトH鎖V領域のサブグループII(HSGII)のコンセンサス配列からのFRに最も類似しており、52.9%の同一性が存在する。これらの結果は、既知のヒト抗体との比較から得られた結果を支持している。ヒトREI中のL鎖V領域はヒトL鎖V領域のサブグループIに属し、そしてヒトVAP中のH鎖V領域はヒトH鎖V領域のサブグループIIに属する。
【0036】
ヒト抗体中のV領域とのこれらの比較から、再構成ヒトPM−1抗体のV領域の設計の基礎となるヒトV領域を選択することが可能である。再構成ヒトPM−1抗体L鎖V領域の設計のためにはサブグループI(HSGI)に属するヒトL鎖V領域を使用し、そして再構成ヒトPM−1抗体H鎖V領域の設計のためにはサブグループII(HSGII)に属するヒト抗体H鎖V領域を用いるのが最善であろう。
【0037】
再構成ヒトPM−1抗体V領域の設計
再構成ヒトPM−1抗体V領域の設計における第一段階は、設計の基礎となるヒト抗体V領域を選択することであった。マウスPM−1抗体L鎖V領域中のFRは、サブグループIに属するヒト抗体L鎖V領域中のFRに最も類似していた(表1)。前記のごとく、マウスPM−1抗体のL鎖V領域と既知ヒト抗体L鎖V領域との比較において、それはヒトL鎖V領域のサブグループIの1構成員であるヒトL鎖V領域REIに最も類似していた。従って、再構成ヒトPM−1抗体L鎖V領域の設計においてREIからのFRを使用した。また、再構成ヒトPM−1抗体L鎖V領域の作製のための出発材料としてREIのFRを使用した。
【0038】
REIに基くこれらのヒトFR中には、もとのヒトREIに比べて5個の相違が存在する(kabatら、1987、によれば位置39,71,104,105及び107;表2を参照のこと)。FR4中の3個の変化(位置104,105及び107)は他のヒトκL鎖からのJ領域に基いており、そしてそれ故にヒトからの逸脱を成すものではない(L.Riechmannら、Nature(1988)322:21−25)。位置39及び71における2個の変化はラットCAMPATH−1抗体のL鎖V領域のFR中に存在するアミノ酸にもどる変化であった(Riechmannら、1988)。
【0039】
再構成ヒトPM−1抗体L鎖V領域の2つのバージョンを設計した。第一のバージョン(バージョン「a」)においては、ヒトFRは再構成ヒトCAMPATH−1H抗体中に存在するREIに基くFR(Riechmannら、1988)と同一であり、そしてマウスCDRはマウスPM−1抗体のL鎖V領域中のCDRと同じであった。第二のバージョン(バージョン「b」)はバージョン「a」に基き、ヒトFR3中の位置71におけるアミノ酸1個のみを異にする。C.Chothiaら、J.Mol.Biol.(1987)196:901−917により定義されるように、残基71はL鎖V領域のCDR1の標準的(canonical)構造の部分である。この位置のアミノ酸はL鎖V領域のCDR1ループの構造に直接影響すると予想され、そしてそれ故に抗体結合に大きく影響するであろう。
【0040】
マウスPM−1抗体のL鎖V領域において、位置71はチロシンである。再構成ヒトPM−1抗体のL鎖V領域のバージョン「a」の設計に使用した修飾されたREIのFRにおいては位置71はフェニルアラニンであった。再構成ヒトPM−1抗体L鎖V領域のバージョン「b」においては、位置71のフェニルアラニンがマウスPM−1抗体L鎖V領域中に見出されるようにチロシンに変えられている。表2は、マウスPM−1抗体のL鎖V領域、再構成ヒトCAMPATH−1H抗体中での使用のために修飾されたREIのFR(Riechmannら、1988)及び再構成ヒトPM−1抗体のL鎖V領域の2種類のバージョンの、それぞれのアミノ酸配列を示す。
【0041】
【表2】
Figure 0003913965
【0042】
注:REIのFRは再構成ヒトCAMPATH−1H抗体中に見出されるものである(Riechmannら、1988)。REIのFR中の5個の下線を付したアミノ酸はヒトREIのアミノ酸配列(Plamら、1975;0.Eppら、Biochemistry(1975)14:4943−4952)から異なるアミノ酸である。マウスPM−1抗体のH鎖V領域中のFRはサブグループIIに属するヒトH鎖V領域に最も類似している(表1)。前記のごとく、マウスPM−1抗体のH鎖V領域と既知のヒトH鎖V領域との比較において、これはヒトH鎖V領域のサブグループIIの1構成員であるヒトH鎖V領域VAPに最も類似していた。ヒトH鎖V領域のサブグループIIの他の構成員であるヒトH鎖V領域NEWを、再構成ヒトPM−1抗体のH鎖V領域の作製のための出発材料として、及び再構成ヒトPM−1抗体のH鎖V領域の設計のための基礎として用いた。
【0043】
再構成ヒトPM−1抗体H鎖V領域の6種類のバージョンを設計した。6種類のバージョンのすべてにおいて、ヒトFRは再構成D1.3中に存在するNEWFRに基いており、そしてマウスCDRはマウスPM−1抗体H鎖V領域中のCDRと同じである。ヒトFR中の7個のアミノ酸残基(位置1,27,28,29,30,48及び71;表3参照)は抗原結合に不都合な影響を与える可能性を有するものと同定されている。マウスPM−1抗体のV領域のモデルにおいて、H鎖V領域中の残基1はCDRループの近くに位置する表面残基である。
【0044】
残基27,28,29、及び30は、C.Chothiaら、Nature(1989)34:877−882により推定されるようにH鎖V領域のCDR1の標準的(canonical)構造の部分であり、そして/又はH鎖V領域の第一構造ループの部分を構成することがマウスPM−1抗体V領域のモデルにおいて観察される(Chothiaら、1987)。残基48はマウスPM−1抗体のV領域のモデルにおいて埋った(buried)残基として観察された。埋った(buried)残基の変化はV領域及びその抗原結合部位の全体構造を破壊する可能性がある。残基71は、Chothiaら(1989)により予想されるようにH鎖V領域のCDR2の標準(canonical)構造の部分である。再構成ヒトPM−1抗体の6種類のバージョンはヒトNEWのFR中のこれら7つの位置のアミノ酸の変化の異る組合わせを含む(表3を参照のこと)。
【0045】
【表3】
Figure 0003913965
【0046】
注:NEWのFRには再構成ヒトCAMPATH−1H抗体の第一バージョン(Riechmannら、1988)中に見出されるものである。
【0047】
再構成ヒトPM−1抗体V領域をコードするDNAの作製
再構成ヒトPM−1抗体L鎖及びH鎖V領域のそれぞれの第一バージョンをコードするDNAを新規なPCR利用法を用いて作製した。要約すれば、適当なヒトFRをすでに含有する再構成ヒトV領域をコードするプラスミドをPCRプライマーを用いて修飾し、ヒトV領域中に存在するCDRをマウスPM−1抗体からのCDRにより置換した。再構成ヒトPM−1抗体L鎖V領域をコードするDNAの作製のための出発材料は、再構成ヒトD1.3L鎖V領域をコードするDNAを含有するプラスミドDNAであった。この再構成ヒトD1.3L鎖V領域はヒトL鎖V領域REI中に存在するFRに基いて作製された。再構成ヒトPM−1抗体H鎖V領域をコードするDNAの作製のための出発材料は再構成ヒトD1.3H鎖V領域をコードするDNAであった。この再構成ヒトD1.3抗体H鎖V領域をコードするDNAはヒトH鎖V領域NEW(W.Verhoeyenら、Science(1988)239:1534−1536)のFRをコードするDNAに基いて作製された。
【0048】
所望のヒトFRをコードするDNAを含有する出発プラスミドDNAを選択した後、マウスD1.3CDRに代るマウスPM−1抗体CDRの置換を可能にするようにPCRプライマーを設計しそして合成した。各再構成ヒトPM−1抗体V領域につき、3種類のプライマーはマウスPM−1抗体CDRをコードするDNA配列を含有し、そして2種類のプライマーは再構成ヒトV領域をコードする全体DNA配列を挟むように設計されている。一連のPCR反応における5種類のPCRプライマーの使用が、出発再構成ヒトV領域中に存在するヒトFRをコードするDNA及びマウスPM−1抗体V領域中に存在するCDRをコードするDNAから成るPCR生成物をもたらした(実施例7、並びに図7及び図8を参照のこと)。PCR生成物をクローン化し、そして配列決定して、再構成ヒトPM−1抗体L鎖及びH鎖V領域のバージョン「a」の全体DNA配列が正しいアミノ酸配列をコードしていることを確認した。再構成ヒトPM−1抗体L鎖V領域バージョン「a」の配列を配列番号55に示す。
【0049】
再構成ヒトPM−1抗体V領域の他のバージョンをコードするDNAは、公表されているPCR−変異誘発法(Kammanら、1989)にわずかな変更を加えた方法を用いて作製した。再構成ヒトPM−1抗体V領域の設計に関して記載したように、再構成ヒトPM−1抗体L鎖V領域の1つの追加のバージョン(バージョン「b」)をコードするDNAを作製し、そして再構成ヒトPM−1抗体H鎖V領域の5種類の追加のバージョン(バージョン「b」,「c」,「d」,「e」、及び「f」をコードするDNAを作製した。これらの追加のバージョンは、第一バージョンからの一連の微細な変化を含む。アミノ酸配列のこれらの微細な変化はPCR変異誘発を用いてDNA配列の微細な変更を行うことにより達成された。DNA配列に必要な変化を導入するPCRプライマーが設計された。一連のPCR反応に続き、PCR生成物をクローン化し、そして配列決定してDNA配列中の変化が計画通りに起っていることを確認した。再構成ヒトPM−1抗体H鎖V領域バージョン「f」の配列を配列番号54に示す。
【0050】
再構成ヒトPM−1抗体V領域の種々のバージョンのDNA配列を確認した後、再構成ヒトPM−1抗体V領域をコードするDNAを、ヒトC領域をコードするDNAをすでに含有する哺乳類細胞発現ベクターにサブクローニングした。すなわち、再構成ヒトPM−1抗体L鎖V領域をコードするDNAをヒトL鎖C領域をコードするDNA配列に連結し、再構成ヒトPM−1抗体H鎖V領域をコードするDNAをヒトγ−1C領域をコードするDNA配列に連結した。再構成ヒトPM−1抗体のより高いレベルの発現を達成するため、図1に示すようなHCMV発現ベクターを修飾して、HCMVプロモーター・エンハンサー領域をヒトエロンゲーションファクター(human elongation factor;HEF−1α)プロモーター・エンハンサーにより置き換えた(図15を参照のこと)。
【0051】
次に再構成ヒトL鎖V領域バージョン(a)と、H鎖V領域バージョン(a)〜(f)のすべての組合せをヒトIL−6Rへの結合について試験し、そしてその結果、実施例11に詳細に記載するように、L鎖バージョン(a)とH鎖バージョン(f)とを含んで成る再構成ヒト抗体がキメラPM−1抗体(a)と同じレベルでIL−6Rに結合する能力を示した。
【0052】
発現のレベルを改良するための、再構成ヒトPM−1抗体V領域をコードするDNAの変更
COS細胞中で生産される再構成ヒトPM−1抗体の発現レベルの検討において、再構成ヒトH鎖の発現が常に、再構成ヒトL鎖又はキメラL鎖もしくはH鎖の発現レベルに比べて約10分の1であることが明らかになった。低レベルの発現を生じさせる問題点は再構成ヒトH鎖V領域にあるようであった。低レベルの発現が低レベルの転写の結果であるか否かを特定するため、再構成ヒトPM−1抗体L鎖及びH鎖を発現する各ベクターにより同時形質転換されたCOS細胞からRNAを調製した。マウスPM−1抗体V領域をコードするDNAのPCRクローニングについて記載したようにして一本鎖cDNAを合成した。再構成ヒトL鎖又はH鎖V領域をコードするDNA配列の両端を挟むように設計されたPCRプライマーを用いて、再構成ヒトL鎖V領域又は再構成H鎖V領域に対応する前記一本鎖cDNAからPCR生成物を生成せしめた。
【0053】
再構成ヒトL鎖V領域をコードするDNAについて、2種類のPCR生成物が存在し、一方は予想通り408bpの長さを有し、他方はより短い299bpのPCR生成物であった。正しいサイズのPCR生成物はPCR生成物の全生成量の約90%を占め、そして短いPCR生成物は全生成量の約10%を占めた。再構成ヒトH鎖V領域についてもやはり2種類のPCR生成物が存在し、一方は予想通り444bpの長さを有し、そして他方は370bpの長さの短いPCR生成物であった。しかしながらこの場合、正しくない短い方のPCR生成物がPCR生成物の全生成量の大部分、すなわち約90%を占めた。正しいサイズのPCR生成物はPCR生成物の全生成量の約10%に過ぎなかった。これらの結果は、再構成ヒトV領域をコードするRNAの幾らかが欠失を含むことを示した。
【0054】
どの配列が除去されたかを決定するため、短い方のPCR生成物をクローニングし、そして配列決定した。DNA配列から、L鎖及びH鎖V領域のいずれについてもDNAの特定の部分が欠けていることが明らかになった。除去された配列を挟むDNA配列の検討により、これらの配列はスプライスドナー−アクセプター配列のコンセンサス配列(Breathnach.Rら、Ann.Rev.Biochem.(1981)50:349−383)に相当することが明らかとなった。再構成ヒトH鎖の低い発現レベルは、再構成ヒトH鎖V領域の設計が、どちらかと言えば効果的なスプライスドナー−アクセプター部位を不注意に形成させたためであると説明された。さらに、再構成ヒトL鎖V領域の設計はどちらかと言えば非効果的なスプライスドナー−アクセプター部位を不注意に形成させたようであった。これらのスプライスドナー−アクセプター部位を除去するため、ヒトPM−1抗体L鎖及びH鎖V領域のそれぞれバージョン「a」及び「f」をコードするDNA配列のわずかな変更を前記のPCR−変異誘発法を用いて行った。
【0055】
低下した発現レベルの原因は、再構成ヒトL鎖及びH鎖V領域(配列番号:54及び55)の両者のリーダー配列をコードするDNA中のイントロンの存在であると考えられた。これらのイントロンはもともと、再構成ヒトD1.3抗体のV領域(Verhoeyenら、1988)をコードするDNAの作製において使用されたマウスμH鎖リーダー配列(M.S.Neubergerら、Nature(1985)314:268−270)をコードするDNAに由来する。再構成ヒトD1.3抗体をコードするDNAは、マウス免疫グロブリンプロモーターを用いる哺乳類細胞ベクターにおいて発現されたためマウスリーダーイントロンの存在が重要であった。
【0056】
リーダーイントロンは免疫グロブリンプロモーターからの発現のためには重要であるが、しかしHCMVのごときウィルスプロモーターからの発現のためには重要でない(M.S.Neubergerら、Nucl.Acids Res.(1988)16:6713−6724)配列を含有している。再構成ヒトPM−1抗体L鎖及びH鎖をコードするDNAが免疫グロブリンプロモーター以外のプロモーターを用いるベクターにおいて発現される場合、リーダー配列中のイントロンは、再構成ヒトV領域をコードするDNAのPCR−クローニングにより除去された(実施例12を参照のこと)。
【0057】
低下した発現レベルの他の可能性のある原因は、再構成ヒトPM−1抗体H鎖V領域をコードするDNAとヒトγ−1C領域をコードするDNAとの間のイントロン内の約190bpの非機能的DNAの存在であると考えられた。再構成ヒトBI−8H鎖V領域(P.T.Jonesら、Nature(1986)321:522−525)をコードするDNAにもともと由来するDNA配列から再構成ヒトPM−1H鎖V領域をコードするDNAを作製した。この最初の再構成ヒトV領域をコードするDNAはマウスNPのH鎖V領域(M.S.Neubergerら、Nature;M.S.Neubergerら、EMBO J.(1983)2:1373−1378)をコードするDNAから作製された。再構成ヒトH鎖V領域をコードするDNAと、発現ベクターに再構成ヒトV領域をコードするDNAを連結するためのBamHI部位との間のイントロン中に存在する約190bpのこのストレッチは、再構成ヒトV領域をコードするDNAのPCRクローニングの過程で除去された。
【0058】
発現レベルを改良するために変形された再構成ヒトPM−1抗体L鎖及びH鎖V領域の最終バージョンのDNA配列及びアミノ酸配列を配列番号:57及び56に示す。これらのDNA配列は、表2に示した再構成ヒトPM−1抗体L鎖V領域のバージョン「a」、並びに表3に示した再構成ヒトPM−1抗体H鎖V領域のバージョン「f」をコードする。HEF−1α発現ベクター(図15)に挿入された場合、これらのベクターはトランスフェクトされたCOS細胞中で約2μg/mlの抗体を一過性に生産する。より多量の再構成ヒトPM−1抗体を安定的に生産させるため、dhfr遺伝子を組み込んだ新しいHEF−1α発現ベクターを作製した(実施例10及び図11を参照のこと)。
【0059】
欠陥のある(crippled)SV40プロモーターを連結したdhfr遺伝子を、ヒトγ−1H鎖を発現するHCMVベクターについて記載したのと同様にして、ヒトγ−1H鎖を発現するHEF−1αベクターに導入した。再構成ヒトPM−1抗体L鎖を発現するHEF−1αベクター及び再構成ヒトPM−1抗体H鎖を発現するHEF−1α−dhfrベクターをCHO dhfr(−)細胞に同時形質転換した。安定に形質転換されたCHO細胞系を、ヌクレオシドを含有せず10%のFCS及び500μg/mlのG418を含有するAlpha−Minimum Essential Medium(α−MEM)中で選択した。遺伝子増幅工程に先立って、CHO細胞系は10μg/106 細胞/日までの再構成ヒトPM−1抗体を生産することが観察された。
【0060】
マウスモノクローナル抗体AUK12−20のV領域と既知のヒト抗体のV領域との比較
マウスモノクローナル抗体AUK12−20のカッパーL鎖(κL)V領域のFRとヒトκL鎖V領域のサブグループ(HSG)I〜IVのFRとの相同性、及びマウスモノクローナル抗体AUK12−20のH鎖V領域のFRとヒトH鎖V領域のサブグループ(HSG)I〜III のFRとの相同性を表4に示す。
【0061】
【表4】
Figure 0003913965
【0062】
表4に示した様に、マウスモノクローナル抗体AUK12−20のカッパーL鎖(κL)V領域は、ヒトκL鎖V領域のサブグループ(HSG)I〜IVとそれぞれ同程度(64〜68%)の相同性を示す。タンパクのData base“LEEDS”の検索より、HSG−IVに属するヒト抗体Len(M.Schneiderら、Physiol.Chem.356,507−557,1975)のL鎖V領域が最も高い68%の相同性を示す。一方、マウスモノクローナル抗体PM−1のヒト型化に用いられているヒト抗体REIはHSG−Iに属し、マウスモノクローナル抗体AUK12−20のL鎖V領域とは、62%の相同性を示す。またマウスモノクローナル抗体AUK12−20のL鎖のcanonical構造を調らべてみると(C.Chothiaら、J.Mol.Biol.(1987)196:901〜917)、特にL鎖CDR2(L2)がLenよりREIとよく一致する。
【0063】
上記により、マウスモノクローナル抗体AUK12−20のL鎖V領域のヒト型化に用いるヒト抗体は必ずしもHSG−IVに属する抗体から選ぶ必要もなく、マウスモノクローナル抗体AUK12−20のL鎖V領域のヒト型化には、マウスモノクローナル抗体PM−1のL鎖V領域のヒト型化の場合と同様にREIを用いる。
【0064】
表4に示す様に、AUK12−20抗体のH鎖V領域は、ヒトH鎖V領域のサブグループI(HSG−I)と最も高い相同性を示す。また、Data base“LEEDS”の検索により、やはりHSGIに属するヒト抗体HAX(Stollar,B.D.ら、J.Immunol.139,2496−2501,1987)がAUK12−20抗体のH鎖V領域に対して約66%の相同性を示す。そこで再構成ヒトAUK12−20抗体のH鎖V領域の設計においては、HSGIに属するヒト抗体HAXのFR、及び同様にHSGIに属するFRを含有するヒト型化425抗体H鎖V領域(Kettleborough C.A.,ら、Protein Engineering,,773−783,1991)のFRを用いる。ちなみに、AUK12−20抗体H鎖V領域はヒト型化425抗体H鎖V領域のバージョンaと約64%の相同性を示す。
【0065】
再構成ヒトAUK12−20抗体L鎖V領域の設計
前記の理由により再構成ヒトAUK12−20抗体L鎖V領域のFRとしてREIのFRを使用し、表5に示すように再構成ヒトAUK12−20抗体L鎖V領域を設計した。
【0066】
【表5】
Figure 0003913965
【0067】
再構成ヒトAUK12−20抗体H鎖V領域の設計
前記の理由により、再構成ヒトAUK12−20抗体H鎖V領域の設計に再構成ヒトVH a425のFRを用いる。ところで、こうして設計した再構成ヒトAUK12−20抗体H鎖V領域をコードするDNAのヌクレオチド配列はスプライス供与配列とよく一致する配列を有することが見出された。このことから、再構成ヒトPM−1抗体の場合と同様に異常なスプライシングが再構成ヒトAUK12−20抗体の発現においても起こる可能性がある。このため、ヌクレオチド配列を部分的に変更することにより、スプライス供与配列様の配列を除去した。この修正された配列をバージョンaと称する。
さらに、再構成ヒトAUK12−20抗体H鎖V領域のバージョンb〜dを設計した。バージョンa〜dのアミノ酸配列を表6に示す。
【0068】
【表6】
Figure 0003913965
【0069】
注:ヒトサブグループIVH 領域(HSGI)において1種類の共通アミノ酸が特定できない位置はXで示す。アンダーラインを付した2個のアミノ酸はHSGIコンセンサス配列中のアミノ酸と異る。RVH b,RVH c及びRVH dについてはRVH aと異るアミノ酸残基のみが示してある。
さらに、ヒト抗体HAX(J.Immunology 139,2496−2501,1987,SLE患者由来B細胞由来のハイブリドーマ21/28細胞の産生する抗体;そのアミノ酸配列はこの文献中のFig.6に記載されており、それをコードするDNAのヌクレオチド配列はFig.4及び5に記載されている)のFRを用いて再構成ヒトAUK12−20抗体のH鎖V領域バージョン「a」〜「d」を次の表7に示すように設計した。
【0070】
【表7】
Figure 0003913965
【0071】
注:sle1220Ha中のアンダーラインを付した2個の残基はHAXのFRからの変化を示す。sle1220Hb,sle1220Hc、及びsle1220HdについてはHAXのFR中のアミノ酸と異るFR中のアミノ酸のみを示す。
ヒトIL−6Rに対する本発明のキメラ抗体又は再構成ヒト抗体の製造のために任意の発現系、例えば真核細胞、例えば動物細胞、例えば樹立された哺乳類細胞系、真糸状菌細胞、及び酵母細胞、並びに原核細胞、例えば細菌細胞、例えば大腸菌細胞等を使用することができる。好ましくは、本発明のキメラ抗体又は再構成抗体は哺乳類細胞、例えばCOS細胞又はCHO細胞中で発現される。
【0072】
これらの場合、哺乳類細胞での発現のために有用な常用のプロモーターを用いることができる。例えば、ヒト・サイトメガロウィルス前期(human cytomegalovirus immediate early;HCMV)プロモーターを使用するのが好ましい。HCMVプロモーターを含有する発現ベクターの例には、HCMV−VH −HCγ1 、HCMV−VL −HCK 、HCMV−12h−g γ1 、HCMV−12κ−gκ等であって、pSV2neoに由来するもの(図1を参照のこと)が含まれる。
【0073】
本発明のために有用なプロモーターの他の具体例はヒト・エロンゲーション・ファクター1α(HEF−1α)プロモーターである。このプロモーターを含有する発現ベクターにはHEF−12h−gγ1及びHEF−12k−gκ(図8及び図9)、並びにHEF−VH −gγ1及びHEF−VL −gκ(図15)が含まれる。
宿主細胞系中での遺伝子増幅のため、発現ベクターはさらにdhfr遺伝子を含有することができる。dhfr遺伝子を含有する発現ベクターは例えばDHFR−ΔE−PMh−gγ1 (図10)、DHFR−ΔE−RVh−PM1−f(図11)等である。
【0074】
要約すれば、本発明はまず、ヒトIL−6Rに対するマウスモノクローナル抗体のL鎖V領域及びH鎖V領域、並びに該L鎖V領域をコードするDNA及びH鎖V領域をコードするDNAを提供する。これらは、ヒトIL−6Rに対するヒト/マウスキメラ抗体及び再構成ヒト抗体の作製のために有用である。モノクローナル抗体は、例えばAUK12−20、PM−1、AUK64−7、及びAUK146−15である。L鎖V領域は例えば配列番号:24,26,28又は30に示すアミノ酸配列を有し、そしてH鎖V領域は例えば配列番号:25,27,29,又は31に示すアミノ酸配列を有する。これらのアミノ酸配列は例えばそれぞれ配列番号:24〜31に示すヌクレオチド配列によりコードされている。
【0075】
本発明はまた、
(1)ヒトL鎖C領域及びマウスL鎖V領域;並びに
(2)ヒトH鎖C領域及びマウスH鎖V領域:
を含んで成る、ヒトIL−6Rに対するキメラ抗体に関する。マウスL鎖V領域及びマウスH鎖V領域並びにこれらをコードするDNAは前記の通りである。前記ヒトL鎖C領域は任意のヒトL鎖C領域であることができ、そして例えばヒトCκ領域である。前記ヒトH鎖C領域は任意のヒトH鎖C領域であることができ、そして例えばヒトCγ1領域である。
【0076】
キメラ抗体の製造のためには2種類の発現ベクター、すなわちエンハンサー/プロモーター系のごとき発現制御領域による制御のもとでマウスL鎖V領域及びヒトL鎖C領域をコードするDNAを含んで成る発現ベクター、並びにエンハンサー/プロモーター系のごとき発現制御領域のもとでマウスH鎖V領域及びヒトH鎖C領域をコードするDNAを含んで成る発現ベクターを作製する。次に、これらの発現ベクターにより哺乳類細胞のごとき宿主細胞を同時形質転換し、そして形質転換された細胞をイン−ビトロ又はイン−ビボで培養してキメラ抗体を製造する。
【0077】
あるいは、マウスL鎖V領域及びヒトL鎖C領域をコードするDNA並びにマウスH鎖V領域及びヒトH鎖C領域をコードするDNAを単一の発現ベクターに導入し、そして該ベクターを用いて宿主細胞を形質転換し、次にこの形質転換された宿主をイン−ビボ又はイン−ビトロで培養して目的とするキメラ抗体を生産させる。
【0078】
本発明はさらに、
(A)(1)ヒトL鎖C領域、及び
(2)ヒトL鎖FR、及びヒトIL−6Rに対するマウスモノクローナル抗体のL鎖CDRを含んで成るL鎖V領域、を含んで成るL鎖;並びに
(B)(1)ヒトH鎖C領域、及び
(2)ヒトH鎖FR、及びヒトIL−6Rに対するマウスモノクローナル抗体のH鎖CDRを含んで成るH鎖V領域、を含んで成るH鎖;
を含んで成る、ヒトIL−6Rに対する再構成ヒト抗体を提供する。
【0079】
好ましい態様においては、前記L鎖CDRは配列番号24,26,28及び30のいずれかに示されるアミノ酸配列であって、該アミノ酸配列の範囲が表9において定義されるアミノ酸配列を有し、前記H鎖CDRは配列番号25,27,29及び31に示されるアミノ酸配列であって該アミノ酸配列の範囲が表9において定義されるアミノ酸配列を有し;前記ヒトL鎖FRがREIに由来するものであり;前記ヒトH鎖FRはNEW又はHGSIコンセンサス配列又はHAXに由来するものであり;前記ヒトL鎖C領域はヒトCκ領域であり;そして前記ヒトH鎖C領域はヒトCγ1である。
【0080】
好ましい態様においては、L鎖V領域は表2においてRVL aとして示されるアミノ酸配列を有し、H鎖V領域は表3にRVH a、RVH b、RVH c、RVH d、RVH e又はRVH fとして示されるアミノ酸配列を有する。アミノ酸配列RVH fが最も好ましい。
【0081】
再構成抗体の製造のためには、2種類の発現ベクター、すなわちエンハンサー/プロモーター系のごとき発現制御領域による制御のもとに前に定義した再構成ヒトL鎖をコードするDNAを含んで成る発現ベクター、及びエンハンサー/プロモーター系のごとき発現制御領域のもとに前に定義した再構成ヒトH鎖をコードするDNAを含んで成るもう一つの発現ベクターを作製する。次に、これらの発現ベクターを用いて哺乳類細胞のごとき宿主細胞を同時形質転換し、そしてこの形質転換された細胞をイン−ビボ又はイン−ビトロで培養して再構成ヒト抗体を生産せしめる。
【0082】
あるいは、再構成ヒトL鎖をコードするDNA及び再構成ヒトH鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに導入し、そしてこのベクターを用いて宿主を形質転換し、次にこの形質転換された宿主細胞をイン−ビボ又はイン−ビトロで培養して目的とする再構成ヒト抗体を生産せしめる。
こうして生産されたキメラ抗体又は再構成ヒト抗体は、常法に従って、例えばプロテインAアフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過等により単離、精製することができる。
【0083】
本発明のキメラL鎖又は再構成ヒトL鎖はH鎖と組合わせることにより完全な抗体を作製するために使用することができる。同様に本発明のキメラH鎖又は再構成ヒトH鎖はL鎖と組合わせることにより完全な抗体を作製するために用いることができる。
本発明のマウスL鎖V領域、再構成ヒトL鎖V領域、マウスH鎖V領域、及び再構成ヒトH鎖V領域は、本来、抗原であるヒトIL−6Rと結合する領域であり、それ自体として、又は他の蛋白質との融合蛋白質として医薬、診断薬等として有用であると考えられる。
また、本発明のL鎖V領域CDR及びH鎖V領域CDRも、本来、抗原であるヒトIL−6Rと結合する部分であり、それ自体として又は他の蛋白質との融合蛋白質として医薬、診断薬等として有用であると考えられる。
【0084】
本発明のマウスL鎖V領域をコードするDNAはキメラL鎖をコードするDNA又は再構成ヒトL鎖をコードするDNAの作製のために有用である。同様にマウスH鎖V領域をコードするDNAはキメラH鎖をコードするDNA又は再構成ヒトH鎖をコードするDNAの作製のために有用である。
また、本発明のL鎖V領域CDRをコードするDNAは再構成ヒトL鎖V領域をコードするDNA及び再構成ヒトL鎖をコードするDNAの作製のために有用である。同様に本発明のH鎖V領域CDRをコードするDNAは再構成ヒトH鎖V領域をコードするDNA及び再構成ヒトH鎖をコードするDNA作製のために有用である。
【0085】
【実施例】
次に、本発明を下記の実施例により具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。
実施例1ヒトIL−6Rに対するマウスモノクローナル抗体のV領域をコードするDNAのクローン化
ヒトIL−6Rに対するマウスモノクローナル抗体の可変領域をコードするDNAを次の様にしてクローン化した。
【0086】
1.全RNAの調製
ハイブリドーマAUK12−20からの全RNAを、Chirgwinら、Biochemistry,18,5294(1979)により記載されている方法に従って調製した。すなわち、2.1×108 個のハイブリドーマAUK12−20の細胞を20mlの4Mグアニジンチオシアネート(Fulka)中で完全にホモジナイズさせた。ホモジネートを遠心管中の5.3M塩化セシウム溶液層上に重層し、次にこれをBeckman SW40ローター中で31,000rpm にて20℃で24時間遠心分離することによりRNAを沈澱させた。
【0087】
RNA沈澱物を80%エタノールにより洗浄し、そして1mM EDTA及び0.5% SDSを含有する10mM Tris−HCl(pH7.5)150μl中に溶解し、そしてそれにProtenase(Boehringer)を0.5mg/mlとなるように添加した後、37℃にて20分間インキュベートした。混合物をフェノール及びクロロホルムで抽出し、そしてRNAをエタノールで沈澱させた。次に、RNA沈澱物を1mM EDTAを含有する10mM Tris−HCl(pH7.5)200μlに溶解した。
【0088】
2.一本鎖cDNAの合成
J.W.Larrickら、Biotechnology,,934(1989)により記載されている方法に従って一本鎖cDNAを合成するため、前記のようにして調製した全RNAの約5μgを40mM KCl, 6mM MgCl2 ,10mMジチオスレイトール、0.5mM dATP,0.5mM dGTP,0.5mMdCTP,0.5mM dTTP,35μM oligo dTプライマー(Amersham),48ユニットのRAV−2逆転写酵素(RAV−2:Rous associated virus2;Amersham)及び25ユニットのヒト胎盤リボヌクレアーゼ阻害剤(Amersham)を含有する50mM Tris−HCl(pH8.3)緩衝液10μlに溶解し、そしてこの反応混合物を37℃にて60分間インキュベートしそして次のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法のために直接使用した。
【0089】
3.抗体可変領域をコードする遺伝子のPCR法による増幅
Thermal Cycler Model PHC−2(Techne)を用いてPCR法を行った。
(1)マウスL鎖V領域をコードする遺伝子の増幅
PCR法に使用するプライマーは、配列番号:1〜11に示すMKV(Mouse Kappa Variable)プライマー(マウスカッパ型L鎖リーダー配列とハイブリダイズする)(S.T.Jonesら、Biotechnology,,88,1991)、及び配列番号:12に示すMKC(MouseKappa Constant)プライマー(マウスカッパ型L鎖C領域とハイブリダイズする)(S.T.Jonesら、Biotechnology,,88,1991)であった。
【0090】
まず、10mM Tris−HCl(pH8.3), 50mM KCl 0.1mM dATP,0.1mM dGTP,0.1mM dCTP,0.1mM dTTP,1.5mM MgCl2 ,2.5ユニットのDNAポリメラーゼAmpliTaq(Perkin Elmer Cetus),0.25μMのそれぞれのMKVプライマー、3μMのMKCプライマー及び一本鎖cDNA合成の反応混合物1μlを含有するPCR溶液100μlを94℃の初期温度にて1.5分間そして次に94℃にて1分間、50℃にて1分間及び72℃にて1分間、この順序で加熱した。この温度サイクルを25回反復した後、反応混合物をさらに72℃にて10分間インキューベートした。
【0091】
(2)マウスH鎖V領域をコードするcDNAの増幅
PCRのためのプライマーとして配列番号:13〜22に示すMHV(Mouse Heavy Variable)プライマー1〜10(S.T.Jonesら、Biotechnology,,88,1991)、及び配列番号:23に示すMHC(Mouse Heavy Constant)プライマー(S.T.Jonesら、Biotechnology,,88,1991)を使用した。前記3.(1)においてL鎖V領域遺伝子の増幅について記載したのと同じ方法により増幅を行った。
【0092】
4.PCR生成物の精製および断片化
前記のようにしてPCR法により増幅したDNA断片をQIAGEN PCR生成物精製キット(QIAGEN Inc.US)を用いて精製し、そして10mM MgCl2 及び150mM NaClを含有する100mM Tris−HCl(pH7.6)中で10ユニットの制限酵素SalI(GIBCO BRL)を用いて37℃にて3時間消化した。この消化混合物をフェノール及びクロロホルムで抽出し、そしてDNAをエタノール沈澱により回収した。次に、DNA沈澱物を10ユニットの制限酵素XmaI(New England Biolabs)により37℃にて2時間消化し、そして生ずるDNA断片を、低融点アガロース(FMC Bio.Products,米国)を用いるアガロースゲル電気泳動により分離した。
【0093】
約450bp長のDNA断片を含有するアガロース片を切り取りそして65℃にて5分間溶融せしめ、そしてこれと同容積の2mM EDTA及び200mM NaClを含有する20mM Tris−HCl(pH7.5)を加えた。この混合物をフェノール及びクロロホルムにより抽出し、そしてDNA断片をエタノール沈澱により回収し、そして1mM EDTAを含有する10mM Tris−HCl(pH7.5)に溶解した。こうして、マウスカッパ型L鎖可変領域をコードする遺伝子を含んで成るDNA断片、及びマウスH鎖可変領域をコードする遺伝子を含んで成るDNA断片を得た。上記DNA断片はいずれもその5′−末端にSalI接着末端を有しそしてその3′−末端にXmaI接着末端を有する。
【0094】
5.連結及び形質転換
上記のようにして調製したマウスカッパ型L鎖V領域をコードする遺伝子を含んで成るSalI−XmaIDNA断片約0.3μgを、プラスミドpUC19をSalI及びXmaIで消化することにより調製したpUC19ベクター約0.1μgと、50mM Tris−HCl(pH7.4),10mM MgCl2 ,10mMジチオスレイトール、1mMスペルミジン、1mM ATP,0.1μg/mlのウシ血清アルブミン及び2ユニットT4DNAリガーゼ(New England Biolabs)を含有する反応混合物中で、16℃にて16時間反応させ連結した。
【0095】
次に、7μlの上記連結混合物を大腸菌DH5αのコンピテント細胞200μlに加え、そしてこの細胞を氷上で30分間、42℃にて1分間そして再び氷上で1分間静置した。次いで800μlのSOC培地(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Sambrookら、Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)を加え、37℃にて1時間インキュベートした後、2×YT寒天培地(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Sambrookら、Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)上にこの大腸菌をまき、37℃にて一夜インキュベートして大腸菌形質転換体を得た。
【0096】
この形質転換体を、50μg/mlのアンピシリンを含有する2×YT培地5ml中で37℃にて一夜培養し、そしてこの培養物から、アルカリ法(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Sambrookら、Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)に従ってプラスミドDNAを調製した。
こうして得られた、ハイブリドーマAUK12−20に由来するマウスカッパ型L鎖V領域をコードする遺伝子を含有するプラスミドをp12−k2と命名した。
上記の同じ方法に従って、ハイブリドーマAUK12−20に由来するマウスH鎖V領域をコードする遺伝子を含有するプラスミドをSalI−XmaI DNA断片から作成し、そしてp12−h2と命名した。
【0097】
実施例2マウスモノクローナル抗体のV領域をコードするDNAのクローン化
実施例1に記載したのと実質上同じ方法をハイブリドーマPM1,AUK64−7及びAUK146−15に適用して下記のプラスミドを得た:
ハイブリドーマPM1由来のカッパ型L鎖V領域をコードする遺伝子を含有するプラスミドpPM−k3;
ハイブリドーマPM1由来のH鎖V領域をコードする遺伝子を含有するプラスミドpPM−h1;
ハイブリドーマAUK64−7由来のカッパ型L鎖V領域をコードする遺伝子を含有するプラスミドp64−k4;
ハイブリドーマAUK64−7由来のH鎖V領域をコードする遺伝子を含有するプラスミドp64−h2;
【0098】
ハイブリドーマAUK146−15由来のカッパ型L鎖V領域をコードする遺伝子を含有するプラスミドp146−k3;及び
ハイブリドーマAUK146−15由来のH鎖V領域をコードする遺伝子を含有するプラスミドP146−h1。
なお、上記プラスミドを含有する大腸菌株は、National Collections of Industrial and Marine Bacteria Limitedに、ブダペスト条約に基づいて、1991年2月11日に寄託され、そして表8に示す受託番号を有する。
【0099】
【表8】
Figure 0003913965
【0100】
実施例3DNAの塩基配列の決定
前記のプラスミド中のcDNAコード領域の塩基配列を、SequenaseTMVersion2.0キット(U.S.Biochemical Corp、米国)を用いて決定した。
まず、前記のようにして得られたプラスミド約3μgを0.2N NaOHにより変性し、配列決定用プライマーとアニールさせ、そしてキット添付の処方に従って35S−dATPにより標識した。次に、標識されたDNAを、8M尿素を含有する6%ポリアクリルアミドゲルにて電気泳動した後、ゲルを10%メタノール及び10%酢酸により固定し、乾燥し、そしてオートラジオグラフィーにかけることにより塩基配列を決定した。
各プラスミドのcDNAコード領域の塩基配列を配列番号:24〜31に示す。
【0101】
実施例4CDRの決定
L鎖及びH鎖のV領域の全般的構造は、互いに類似性を有しており、それぞれ4つのフレームワーク部分が3つの超可変領域、即ち相補性決定領域(CDR)により連結されている。フレームワークのアミノ酸配列は、比較的良く保存されているが、一方、CDR領域のアミノ酸配列の可変性は極めて高い(Kabat, E.A. ら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest 」US Dept. Health and Human Services, 1983)。
ヒトIL−6Rに対するマウスモノクローナル抗体の可変領域の上記のアミノ酸配列に基き、そしてKabatらの報告に従ってIL−6Rに対するマウスモノクローナル抗体の各V領域のCDRを表9に示す如く決定した。
【0102】
【表9】
Figure 0003913965
【0103】
実施例5クローン化されたcDNAの発現の確認(1)発現プラスミドの作製
PCR法によりクローン化されたAUK12−20抗体のκL鎖及びH鎖のV領域をコードするcDNAからキメラL鎖/H鎖をコードするDNAを作製した。マウスAUK12−20のV領域をコードするcDNAを、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)のエンハンサー及びプロモーターを含有する哺乳類細胞発現ベクター(HCMV発現ベクターと称する)(図1.実施例8)中でヒトC領域をコードするDNAに容易に連結するためには、AUK12−20抗体のV領域をコードするマウスcDNA配列の5′−末端及び3′−末端に便利な制限酵素切断部位を導入することが必要であった。
【0104】
5′−末端及び3′−末端へのこれらの修飾はPCR法を用いて行った。2セットのPCRプライマーを設計しそして合成した。マウスL鎖V領域及びH鎖V領域の両方について、リーダー配列の始めをコードするDNAにハイブリダイズし、効率的な翻訳のために必須のDNA配列(Kozak,M.,J.Mol.Biol.196:947−950,1987)を維持しそしてHCMV発現ベクターへのクローニングのためのHindIII 部位を形成するために、L鎖V領域後方プライマー(配列番号:32)、及びH鎖V領域後方プライマー(配列番号:33)を調製した。前方PCR−プライマーは、J領域の末端をコードするDNAにハイブリダイズし、C領域へのスプライシングのために必須のDNA配列を維持しそしてHCMV発現ベクターでのヒトC領域への連結のためのBamHI部位を形成するように、L鎖V領域前方プライマー(配列番号34)、及びH鎖V領域前方プライマー(配列番号35)を調製した。
【0105】
PCRによる増幅に続き、PCR生成物をHindIII 及びBamHIにより消化し、ヒトκ鎖又はγ−1鎖C領域DNAを含有するHCMVベクターにクローン化し、そして塩基配列を決定してPCR法による増幅中にエラーが生じなかったことを確認した。得られる発現ベクターをHCMV−12k−gk及びHCMV−12h−gγ1と称する。
HCMV発現ベクターの構造を図1に示す。プラスミドHCMV−VL −HCκにおいて、VL 領域は任意のマウスL鎖V領域コード配列であることができる。この例において、AUK12−20κL鎖V領域を挿入することによりHCMV−12k−gkを得た。プラスミドHCMV−VH −HCγ1において、VH 領域は任意のマウスH鎖V領域コード配列であることができる。この例においてはAUK12−20のH鎖V領域を挿入してHCMV−12h−gγ1を得た。
【0106】
COS細胞での一過性(transient)発現
キメラAUK12−20抗体のCOS細胞での一過性発現を見るため、前記発現ベクターをCOS細胞において試験した。Gene Pulsar装置(BioRad)を用いる電気穿孔法(electroporation)によりDNAをCOS細胞に導入した。すなわち、COS細胞を1×107 個/mlになるようにphosphate−buffered saline(PBS)に懸濁し、この細胞浮遊液0.8mlにDNA(各プラスミドについ10μg)を加えた。1,900ボルト(V)、25マイクロファラッド(μF)の電気容量にてパルスを与えた。
【0107】
室温にて10分間の回復期間の後、エクレトロポレーションした細胞を、10%のウシ胎児血清を含有するDMEM培地(GIBCO)8mlに加えた。72時間のインキュベーションの後、培養上清を集め、遠心分離して細胞破片を除去し、そして無菌条件下で4℃にて短時間、又は−20℃にて長時間貯蔵した。
【0108】
酵素免疫測定法(ELISA)によるキメラ抗体の定量
トランスフェクトされたCOS細胞の培養上清をELISAにより測定して、キメラ抗体が生産されていることを確認した。キメラ抗体を検出するため、プレートをヤギの抗ヒトIgG(Whole molecule)(Sigma)によりコートした。ブロックした後、COS細胞からの培養上清を段階希釈しそして各ウエルに加えた。インキュベーション及び洗浄の後、アルカリホスファターゼ−結合ヤギ抗−ヒトIgG(γ鎖特異的、Sigma)を加えた。インキュベーション及び洗浄の後、基質緩衝液を加えた。インキュベーションの後、反応を停止しそして405nmにおける吸光度を測定した。標準として精製ヒトIgG(Sigma)を用いた。
【0109】
ヒトIL−6Rへの結合能を確認するための酵素免疫測定(ELISA)
トランスフェクトされたCOS細胞からの培地をELISAにより測定して、生産されたキメラ抗体が抗原に結合し得るか否かを決定した。抗原への結合の検出のため、プレートをMT18マウスモノクローナル抗体(参考例1)でコートした。1% BSAでブロックした後、可溶性組換えヒトIL−6R(SR344)を加えた。
洗浄した後、COS細胞からの培養上清を段階希釈し、そして各ウエルに加えた。インキュベーション及び洗浄の後、アルカリホスファターゼ結合ヤギ抗ヒトIgGを加えた。インキュベーション及び洗浄の後、基質緩衝液を加えた。インキュベーションの後、反応を停止し、そして405nmにおける吸光度を測定した。
【0110】
この結果を図2に示した。キメラ抗体AUK12−20をコードする遺伝子のCOS細胞へのトランスフェクションを実施した。このCOS細胞の培養上清サンプルは、IL−6Rに対する強い結合能を示し、図2に○(オープンサークル)で示す如く、サンプルの希釈度(抗体の濃度)依存的に405nmにおける吸光度が変化し、サンプル中にIL−6Rレセプターに対する抗体が含まれていることが確認された。
【0111】
ヒトIL−6RとIL−6の結合を阻害する能力の測定
トランスフェクトされたCOS細胞からの培養上清を測定して培地中に存在する抗体が、IL−6RとIL−6との結合を阻害するか否かを調べるために、ビオチン化IL−6との競合的結合阻害能を調べた。プレートをMT18マウスモノクローナル抗体(参考例1)でコートした。ブロッキングの後、可溶性組換ヒトIL−6R(SR344)を加えた。洗浄した後、COS細胞からのサンプルを段階希釈し、そしてビオチン化IL−6と共に各ウエルに加えた。
【0112】
洗浄した後、アルカリホスファターゼ結合ストレプトアビジンを加えた。インキュベーション及び洗浄の後、基質緩衝液を加えた。インキュベーションの後、反応を停止し、そして吸光度を405nmにて測定した。精製マウスAUK12−20モノクローナル抗体を陽性対照として用いた。無関係の抗体を発現するCOS細胞からの培地を陰性対照として用いた。
【0113】
この結果を図3に示した。キメラ抗体AUK12−20をコードする遺伝子でトランスフェクトしたCOS細胞の培養上清は、最高、及び2番目に高いサンプル濃度でIL−6RとIL−6の結合を阻害した。すなわち、図3に●で示す如く、サンプル希釈度(抗体の濃度)依存的に405nmにおける吸光度が変化し、サンプル中の抗体がIL−6RとIL−6の結合を阻害していることが認められた。これは陽性対照の吸光度の抗体濃度依存的変化(○)にほぼ一致することからも確認出来た。
なお、陰性対照(△)は阻害活性が全く認められなかった。
【0114】
実施例6クローン化cDNAの発現の確認(2)(キメラPM−1抗体の作製)
発現ベクターの作製
キメラPM−1抗体を発現するベクターを作製するため、それぞれマウスPM−1κL鎖及びH鎖V領域をコードするcDNAクローンpPM−k3及びpPM−h1をPCR法により変形し、そしてHCMV発現ベクター(図1を参照のこと)に導入した。L鎖V領域のための後方プライマーpmk−s(配列番号:38)及びH鎖V領域のための後方プライマーpmh−s(配列番号:40)を、リーダー配列の最初をコードするDNAにハイブリダイズし且つKozakコンセンサス配列及びHindIII 制限部位を有するように設計した。L鎖V領域のための前方プライマーpmk−a(配列番号:36)及びH鎖V領域のための前方プライマーpmh−a(配列番号:39)を、J領域の末端をコードするDNA配列にハイブリダイズし且つスプライスドナー配列及びBamHI制限部位を有するように設計した。
【0115】
κL鎖V領域のため、2種類の前方プライマーを合成した。ほとんどのκL鎖においては、位置107のリジンが保存されているが、マウスPM−1κL鎖においては位置107がアスパラギンである。キメラPM−1抗体の抗原結合活性に対するこの変化の効果を検討するため、前方プライマーpmk−b(配列番号:37)を、位置107がアスパラギンからリジンに変るように設計した。PCR反応に続き、PCR生成物を精製し、HindIII 及びBamHIで消化し、そしてpUC19ベクター(Yanishe−Perronら、Gene(1985)33:103−109)にサブクローニングした。DNA配列決定の後、HindIII −BamHI断片を切出し、そしてH鎖V領域については発現ベクターHCMV−VH −HCγ1にクローン化してHCMV−PMh−gγ1を得、そしてL鎖V領域についてはHCMV−VL −HCκにクローン化してHCMV−PMka−gk及びHCMV−PMkb−gkを得た。
【0116】
COS細胞のトランスフェクション
キメラPM−1抗体の一過性発現を観察するため、前記発現ベクターをCOS細胞において試験した。HCMV−pmh−gγ1と、HCMV−pmka−gk又はHCMV−pmkb−gkのいずれかとを、Gene Pulsar装置(BioRad)を用いてエレクトロポレーションによりCOS細胞に同時形質転換した。DNA(プラスミド当り10μg)を、PBS中1×107 細胞/mlの0.8mlのアリコートに加え、1,900V,25μFの容量にてパルスを与えた。室温にて10分間の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞を、10%のγ−グロブリン不含有ウシ胎児血清を含有するDulbecco′s Modified Eagle Medium(DMEM)(GIBCO)に加えた。72時間のインキュベーションの後、培養上清を集め、遠心分離により細胞破片を除去し、そして無菌条件下で4℃にて短期間貯蔵し、又は−20℃にて長期間貯蔵した。
【0117】
キメラPM−1抗体の発現及び分析
3日間の一過性発現の後、COS細胞からの培地を集め、そしてキメラPM−1抗体について試験した。培地をまずELISAにより分析して、トランスフェクトされたCOS細胞によりヒト様抗体が生産されたか否かを決定した。このアッセイにおいて標準として既知量の精製ヒトIgGを用いることにより、COS細胞からの培地中に存在するヒト様抗体(この場合、キメラPM−1抗体)の量を推定することが可能である。ヒト抗体の検出のため、プレートをヤギ抗−ヒトIgG(全体分子、Sigma)によりコートした。ブロッキングの後、COS細胞からのサンプルを段階希釈し、そして各ウェルに加えた。インキュベーション及び洗浄の後、アルカリホスフェターゼ結合ヤギ抗−ヒトIgG(γ鎖特異的、Sigma)を加えた。インキュベーション及び洗浄の後、基質緩衝液を加えた。インキュベーションの後、反応を停止し、そして405nmでの吸光度を測定した。標準として精製ヒトIgG(Sigma)を加えた。
【0118】
キメラPM−1抗体をコードする遺伝子を担持するベクターによりトランスフェクトされたCOS細胞からの培地はヒト様抗体の発現について陽性であり、そしておよその量が上記のようにして測定された。
次に、キメラPM−1抗体をコードする遺伝子を担持するベクターによりトランスフェクトされたCOS細胞からの同じ培地をヒトIL−6Rに結合する能力について測定した。抗原への結合の測定のため、プレートを、ヒトIL−6Rに対する抗体であるMT18マウスモノクローナル抗体(参考例1)によりコートした。ブロッキングの後、可溶性ヒトIL−6R(SR344)を加えた。洗浄した後、サンプルを段階希釈し、そして各ウエルに加えた。インキュベーション及び洗浄の後、アルカリホスファターゼ結合ヤギ抗−ヒトIgG(γ鎖特異的;Sigma)を添加した。インキュベーション及び洗浄の後、基質緩衝液を加えた。インキュベーションの後、反応を停止し、そして405nmでの吸光度を測定した。この測定のために標準品は存在しなかった。
【0119】
2個のサンプルの内の1つは、マウスPM−1抗体中に見られるV領域と同一のV領域を有するキメラ抗体(キメラPM−1a抗体、図4)をコードする遺伝子によるトランスフェクトからのサンプルであった。他の1つのサンプルはL鎖V領域中の位置107に前記のような1個のアミノ酸変化を有するキメラ抗体(キメラPM−1b抗体、図4)をコードする遺伝子によるトランスフェクションからのものであった。いずれのサンプルも、サンプルの希釈により減少するIL−6Rに対する強い結合を示した。すなわち、作製されたキメラPM−1抗体は機能的であり、そしてその抗原によく結合することができる。
【0120】
最も重要なことは、機能的キメラPM−1抗体の証明は、正しいマウスPM−1V領域がクローン化されそして配列決定されたことの直接の証拠である。L鎖V領域中の位置107にいずれのアミノ酸を有するキメラ抗体も抗原IL−6Rによく結合した。マウスPM−1抗体のL鎖V領域中の位置107は抗原結合のためにあまり重要ではなく、そしてこの位置におけるアスパラギン及びリジンのいずれも満足に機能するようである。マウスPM−1抗体はそのL鎖V領域のこの位置にアスパラギンを有するので、キメラPM−1抗体を用いるその後のすべての研究は、マウスPM−1抗体に見出されるそれと同じバージョンaを用いて行った。
【0121】
より多量のPM−1抗体を安定に生産するために、dhfr遺伝子を含有する新たなHCMV発現ベクターを作製した。キメラPM−1抗体のより高い発現レベルを達成するための第一段階は、ベクターHCMV−VH −HCγ1 (図1)を変形して、このベクターが欠陥のある(crippled)SV40プロモーターエンハンサーにより発現されるdhfr遺伝子を含有するようにすることであった。SV40エンハンサー要素をpSV2−dhfrベクター(S.Subramaniら、Mol.Cell.Biol.(1981)1:854−864)から除去し、そしてSV40プロモーターによって発現されるneo遺伝子の代りに「欠陥のある」SV40プロモーターにより発現されるdhfr遺伝子をHCMV−VH −HCγ1 に挿入した。次に、この新しいHCMV−VH −HCγ1 −dhfrベクターにマウスPM−1V領域を挿入した。この改良された発現ベクターの作製を実施例10に詳細に記載する。
【0122】
CHO dhfr(−)細胞(G.Urlaubら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1980)77:4216−4220)を2種類のプラスミドDNAすなわちキメラPM−1aL鎖を発現するためのHCMV−VL −HCκベクター(HCMV−PMka−gk)及びキメラPM−1 H鎖を発現するためのHCMV−VH −HCγ1 −dhfrベクター(DHFR−△E−PMh−gγ1;実施例10)により同時形質転換した。DNA(各プラスミドにつき10μg/ml)をPBS中1×107 細胞/mlの0.8mlのアリコートに加えた。1900Vの電圧25μFの電気容量でパルスを与えた。
【0123】
室温にて10分間の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞を、ヌクレオシド及び10% FCSを含有するAlpha Minimal Essential Medium培地(α−MEM)10mlに加えた。一夜のインキュベーションの後、培地を、ヌクレオシドを含有せず10% FCS及び500μg/mlのG418(GIBCO)を含有するα−MEMに変えて、dhfr+ 及びneo+ 形質転換細胞の選択を行った。選択の後、選択されたクローンを用いて遺伝子増幅を行った。2×10-8Mメソトレキセート(MTX)中での1ラウンドの増幅の後、約3.9μg/106 細胞/日のキメラPM−1aの抗体を生産する細胞系(PM1k3−7)を選択した。
【0124】
ヒトIL−6RへのIL−6の結合を阻害するキメラ抗体の能力についてのELISA測定
トランスフェクトされたCOS細胞において又は安定なCHO細胞系において生産された抗体を測定して、それらが、IL−6Rへのビオチン化IL−6の結合と競争するか否かを決定した。プレートをマウス抗体MT18によりコートした。ブロッキングの後、可溶性組換えヒトIL−6R(SR344)を加えた。洗浄の後、COS細胞からのサンプルを段階希釈し、そしてビオチン化IL−6と一緒に各ウエルに加えた。洗浄の後、アルカリホスファターゼ結合ストレプトアビジンを加えた。インキュベーション及び洗浄後、基質緩衝液を加えた。インキュベーションの後、反応を停止させ、そして405nmにおける吸光度を測定した。結果を図5に示す。
【0125】
実施例7再構成ヒトPM−1抗体の作製
より迅速に且つより効率的にCDR移植を達成するため、PCRによる逐次CDR移植法を開発した。この方法はPCR変異誘発法(Kammanら、Nucl.Acid.Res.17:5404,1989)に基く。
CDR移植のための選択されたヒトFRをコードするDNAを含有する鋳型DNAを調製するために、適当な再構成ヒトV領域をコードするDNAを便利なベクターに再クローニングする必要があった。プラスミドalys11及びF10のDNAはそれぞれ再構成ヒトD1.3のL鎖及びH鎖をコードしており、ヒトREIからのFRをコードするDNA及びNEWからのFRをコードするDNAをそれぞれ含有する。
【0126】
再構成ヒトD1.3のL鎖V領域をコードするDNA配列を含有する約500bpのNcoI−BamH1断片をalys11から切り出し、そしてHindIII 及びBamHIで開裂されたpBR327にサブクローニングしてプラスミドVl−lys−pBR327を得た。このVl−lys−pBR327からのHindIII −BamHI断片を、HindIII 及びBamHIにより開裂されたpUC19に挿入してプラスミドVl−lys−pUC19を得た。
【0127】
再構成ヒトD1.3のH鎖V領域をコードするDNA配列を含有する約700bpのNcoI−BamHI断片をF10から切り出し、そしてHindIII −NcoIアダプターを用いてpBR327のHindIII −BamHI部位にサブクローニングし、Vh−lys−pBR327を得た。次に、このプラスミドからHindIII −BamHI断片を切り出し、そしてHindIII 及びBamHIにより開裂されたpUC19にサブクローニングしてVh−lys−pUC19を得た。
【0128】
なお、プラスミドalys11及び再構成ヒトD1.3のL鎖V領域FRをコードするDNA配列はヒト型化CAMPATH−1H抗体(Nature 332:323−327(1988))のそれと同じである。鋳型として使用した、プラスミドF10中の再構成ヒトD1.3のH鎖V領域をコードするDNA配列は、V.Verhoeyら、Science237:1534−1536(1988)のFig.2に記載されている。
【0129】
図6は、再構成ヒトPM−1のH鎖V領域の第一バージョンをコードするDNAの作製のために使用されたプライマー及びPCR反応を模式的に示す。後方プライマーA(APCR1;配列番号:41)及び前方プライマーE(APCR4;配列番号:42)は、このベクター上のDNA配列にハイブリダイズする。APCR1及びAPCR4はpUC19ベクターのために特に設計されたが、ユニバーサルM13配列プライマーを使用することもできる。
【0130】
CDR1移植/変異誘発プライマーB(phv−1;配列番号:43)、CDR2移植プライマーC(phv−2;配列番号:44)、及びCDR3移植プライマーD(phv−3;配列番号:45)は40〜60bpの長さを有し、マウスPM−1のH鎖V領域のCDRをコードするDNA及び該CDRをコードするDNAを挟む鋳型DNA中のヒトFRをコードするDNA配列から成る。第一のPCR反応において前方プライマーAPCR4及び後方プライマーDを用いた。マウスPM−1のCDR3配列をコードするDNAを含有する第一PCR生成物を精製し、そして第二PCR反応において後方プライマーとしてのプライマーCと共に前方プライマーとして使用した。
【0131】
同様にして、マウスPM−1のCDR2及びCDR3をコードするDNAを含有する第二PCR生成物、並びにマウスPM−1の3個すべてのCDRをコードするDNAを含有する第三PCR生成物をそれぞれ次のPCR段階のプライマーとして使用した。完全な再構成ヒトPM−1 H鎖V領域をコードするDNAを有する第四PCR生成物を精製し、HindIII 及びBamHIにより消化し、そしてさらに分析するためにpUC19にサブクローニングした。
【0132】
再構成ヒトPM−1抗体H鎖V領域をコードするDNAの作製のために3種類の変異誘発プライマーphv−1,phv−2及びphv−3を合成した。これらは8M尿素を含有する12%ポリアクリルアミドゲル上で精製した。変異誘発プライマーphv−1は、マウスPM−1抗体のCDR1の移植のためのみならずヒトFR1中の位置27及び30におけるそれぞれのSerからTyrへ、及びSerからThrへの変異のために設計された。各100μlのPCR反応物は典型的には10mM Tris−HCl(pH8.3),50mM KCl,1.5mM MgCl2 ,250μM dNTP,50ngの鋳型DNA(Vh−lys−pUC19),2.5uのAmpliTaq(Perkin Elmer Cetus)、及びプライマーを含有した。
【0133】
1μMずつのphv−3プライマー及びAPCR4プライマーを含む第一のPCR反応を行い、94℃にて1.5分間の最初の変性の後、94℃にて1分間、37℃にて1分間及び72℃にて1分間の30サイクルを反復した。アニーリング段階と合成段階の間の変温時間は2.5分間であった。最終サイクルの完了の後、72℃にて10分間の最終伸長反応を行った。523bpのPCR生成物を1.6%低融点アガロースゲルを用いて精製し、そして次に第二のPCR反応におけるプライマーとして使用した。
【0134】
第二のPCR反応において約1μgの精製された第一PCR生成物及び25pmoleの変異誘発プライマーphv−2をプライマーとして使用した。PCR条件は第一のPCR反応について記載したのと同じであった。同様にして、第二のPCR反応からの665bpのPCR生成物をプライマーphv−1と共に第三のPCR反応において使用し、そして第三のPCR反応からの737bpのPCR生成物をプライマーAPCR1と共に第四のPCR反応において使用した。第四のPCR反応からの1.172kbのPCR生成物を精製し、HindIII 及びBamHIで消化し、そして次に再構成ヒトPM−1抗体H鎖V領域を含有する約700bpの断片をpUC19ベクターにサブクローニングした。配列決定した4個のクローンの内2個が正しいアミノ酸配列をコードするDNA配列を有しており、そしてpUC−RVh−PM1aと命名した。
【0135】
再構成PM−1抗体H鎖V領域の他のバージョンをコードするDNAを作製するため5種類の変異誘発PCRプライマーを合成した。各PCR反応は前記の反応条件と本質的に同じ条件下で行われた。バージョン「b」のため、変異誘発プライマーphv−m4(Val−71→Arg−71)(番号はKabatらによる;表4参照)(配列番号:46)及びAPCR4を、鋳型DNAとしてのpUC−RVh−PM1aと共に第一PCR反応において使用した。この第1PCR反応からのPCR生成物を精製し、そしてプライマーAPCR1と共に第二PCR反応における前方プライマーとして使用した。第二PCR反応からのPCR生成物を1.6%低融点アガロースゲルを用いて精製し、HindIII 及びBamHIにより消化し、そしてpUC19にてサブクローニングしてpUC−RVh−PM1bを得た。
【0136】
同様にして、変異誘発プライマーphv−nm(Asp−1→Gln−1)(配列番号:47)及び鋳型pUC−RVh−PM1bを用いてバージョン「c」をコードするDNA(pUC−RVh−PM1c)を得、変異誘発プライマーphv−m6(Ile−48→Met−48)(配列番号:48)及び鋳型pUC−RVh−PM1bを用いてバージョン「d」をコードするDNA(pUC−RVh−PM1d)を得、変異誘発プライマーphv−nm及び鋳型pUC−RVh−PM1cを用いてバーション「e」をコードするDNA(pUC−RVh−PM1e)を得、そして変異誘発プライマーphv−m7(Thr−28→Ser−28、及びPhe−29→Ile−29)(配列番号:49)及び鋳型pUC−RVh−PM1bを用いてバージョン「f」をコードするDNA(pUC−RVh−PM1f)を得た。再構成H鎖V領域バーション「f」のアミノ酸配列及びそれをコードするヌクレオチド配列を配列番号54に示す。
【0137】
図7は、再構成ヒトPM−1抗体L鎖V領域の第一バージョンをコードするDNAの作製において使用したプライマー及びPCR反応を模式的に示す。再構成ヒトPM−1抗体L鎖V領域の第一バージョンをコードするDNAの作製のため、CDR1移植プライマーpkv−1(配列番号:50)、CDR2移植プライマーpkv−2(配列番号:51)及びCDR3移植プライマーpkv−3(配列番号:52)を合成し、そして8M尿素を含有する12%ポリアクリルアミドゲル上で精製した。前記のようにしてPCR反応を行った。第一PCR反応物は1 μMずつのpkv−3プライマー及びAPCR4プライマーを含有した。第一PCR反応からの350bpのPCR生成物を1.5%低融点アガロースゲルを用いて精製し、そして第二PCR反応における前方プライマーとして使用した。
【0138】
第二PCR反応からのPCR生成物を精製し、BamHI及びHindIII で消化し、そしてCDR3が移植されたDNAを含有する500bp断片をDNA配列決定のためにpUC19ベクターにサブクローニングした。正しい配列を有するプラスミドDNAを同定し、そして次のPCR反応における鋳型DNAとして使用した。第三PCR反応において25pmoleの変異誘発プライマーpkv−2及びAPCR4を使用した。第三PCR反応からのPCR生成物を精製し、そしてプライマーpkv−1と共に第四PCR反応におけるプライマーとして使用した。同様にして、第四PCR反応からのPCR生成物をAPCR1プライマーと共に第五PCR反応におけるプライマーとして使用した。
【0139】
第五PCR反応からの972bpのPCR生成物を精製し、BamHI及びHindIII により消化し、そしてDNA配列決定のためにpUC19にサブクローニングした。CDR2領域において問題点が認識され、さらに2回のPCR反応が必要であった。第六PCR反応及び第七PCR反応において、pUC19ベクターにクローニングされた第五PCR反応からのPCR生成物を鋳型DNAをして使用した。第六PCR反応においてプライマーはpkv−2及びAPCR4であった。第六PCR反応からのPCR生成物を精製し、そしてAPCR1プライマーと共に第七PCR反応におけるプライマーとして使用した。第七PCR反応からのPCR精製物を精製し、BamHI及びHindIII により消化し、そして500bp DNA断片をDNA配列決定のためにpUC19にサブクローニングした。配列決定した5個のクローンの内2個のクローンが正しいDNA配列を有していた。このクローンをpUC−RV1−PM1aと称する。この配列を配列番号:55に示す。
【0140】
再構成ヒトPM−1 L鎖V領域の他のバージョンをコードするDNAの作製のため、変異誘発プライマーpvk−m1(配列番号:53)を合成した。PCR反応は本質的に前記の通りであった。第一PCR反応において、変異誘発プライマーpkv−m1(Phe−71→Tyr−71)及びAPCR4プライマーを鋳型DNAとしてのpUC−RV1−PM1aと共に使用した。第一PCR反応からのPCR生成物を精製し、そしてAPCR1プライマーと共に第二PCR反応におけるプライマーとして使用した。第二PCR反応からのPCR生成物を精製し、BamHI及びHindIII により消化し、そしてDNA配列決定のためにpUC19にサブクローニングした。このクローンをpUC−RV1−PM1bと命名した。
【0141】
実施例8遺伝子操作された抗体を哺乳類細胞中で、発現させるためのヒトサイトメガロウイルス前期(HCMV)プロモーターを用いるベクターの作製(図1)
キメラPM−1抗体のL鎖V領域をコードするDNA断片及びキメラPM−1抗体のH鎖V領域をコードするDNA断片を、それぞれ、哺乳類細胞中でヒトκL鎖又はヒトγ−1H鎖を発現するように設計されたHCMV発現ベクター(図1を参照のこと)HCMV−VL −KCκ及びHCMV−VH −HCγ1にまず挿入した。該HCMV発現ベクターの作製のための詳細な記載は、Maedaら、Human Antibodies and Hybridomas(1991)2:124−134;C.A.Kettleboroughら、Protein Engeneering(1991)4:773−783に公表されている。両ベクターはpSV2neo(P.J.Southern et al.,J.Mol.Appl.Genet.(1982)1:327−341)に基礎を置き、そして免疫グロブリンL鎖又はH鎖の高レベルの転写のためにヒトサイトメガロウイルス(HCMV)プロモーター及びエンハンサー(M.Boshartら、Cell(1985)41:521−530)を含有する。
【0142】
L鎖発現ベクターはヒトCκ領域(T.H.Rabbittsら、Carr.TOP.Microbiol.Immunol.(1984)114:166−171)をコードするゲノムDNAを含有し、そしてH鎖発現ベクターはヒトCγ1領域(N.Takahashiら、Cell(1982)29:671−679)をコードするゲノムDNAを含有する。これらのHCMV発現ベクターは多能であり、そして種々の哺乳類細胞タイプにおける一過性(transient)発現及び安定な発現のために使用することができる。
【0143】
実施例9遺伝子操作された抗体を哺乳類細胞中で発現させるためのヒトエロンゲーションファクター1α(HEF−1α)プロモーターを使用するベクターの作製(図8及び図9)
ヒト・ポリペプチド・チェーン・エロンゲーション・フアクター1α(HEF−1α)は最も豊富な蛋白質の1つである。これはほとんどの細胞で発現される。ヒトEF−1αプロモーター−エンハンサーの転写活性はSV40前期プロモーター−エンハンサーのそれに比べて約100倍である(D.W.Kimら、Gene(1990)91:217−223;及びT.Uetsukiら、J.Biol.Chem.(1989)264:5791−5798)。2.5kbのHEF−1αプロモーター−エンハンサー領域は、該遺伝子の5′−末端に接する約1.5kbのDNA、第一エクソン中の33bp、第一イントロン中の943bp、及び第二エクソンの最初の部分の10bpから成る。
【0144】
この後2.5kbのHindIII −EcoRI断片をプラスミドpEF321−CAT(D.W.Kimら、Gene(1990)91:217−223;及びT.Uetsukiら、J.Biol.Chem.(1989)264:5791−5798)から切り出し、そしてpdKCRベクター(M.Tsuchiyaら,Embo J.(1987)6:611−616)、K.O′Haraら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA Vol.78,No.3,1527−1531,(1981)、(R.Fukunagaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA Val.81,5086−5090(1984))にクローニングして、SV40前期プロモーター−エンハンサーを含有する約300bpのHindIII −EcoRI断片を置き換えてpTEF−1を得た。
【0145】
pTEF−1をEcoRIで消化し、Klenowポリメラーゼでフィルーインし、そしてHindIII リンカーに連結した。次に、この修飾されたpTEF−1ベクターDNAから約1.6kbのHindIII −SmaI断片を切り出した。
HCMV−12h−gγ1をEcoRIにより部分消化し、Klenowポリメラーゼによりフィルーインし、そして自己連結することにより、実施例5において作製したHCMV−12h−gγ1からプラスミドHCMV−12h−gγ1(ΔE2)を作製した。
【0146】
プラスミドHCMV−12h−gγ1(ΔE2)をEcoRIで消化し、Klenowポリメラーゼでフィルーインし、そしてHindIII で消化した。ヒトγ−1C領域をコードするDNA配列を含有する約7kbの断片を、HEF−1αプロモーター−エンハンサーを含有する前記の1.6kb HindIII −SmaI断片に連結してHEF−12h−gγ1を得た。このベクター中のHEF−1αプロモーター・エンハンサー領域は、5′−領域に接する380bpのDNAを除き、pTEF−1中のそれと同一であった。HindIII −BamHI断片として存在するこのH鎖V領域は、他のH鎖V領域と容易に交換することができる。
【0147】
再構成ヒトH鎖V領域をコードするDNAを含有するHindIII −BamHIDNA断片をpUC−RVh−PM1a,pUC−RVh−PM1b,pUC−RVh−PM1c,pUC−RVh−PM1d,pUC−RVh−PM1e及びpUC−RVh−PM1f(実施例7)から切り出し、そして前記のプラスミドHEF−12h−gγ1のHindIII −BamHI部位に挿入して、それぞれ発現ベクターRVh−PM1a,RVh−PM1b,RVh−PM1c,RVh−PM1d,RVh−PM1e、及びRVh−PM1fを得た。発現ベクターRVh−PM1a,RVh−PM1b,RVh−PM1c,RVh−PM1e、及びRVh−PM1f、並びにHEF−PMh−gγ1は、それぞれ再構成ヒトPM−1抗体H鎖V領域バージョン「a」,「b」,「c」,「d」,「e」及び「f」、並びにマウスPM−1抗体H鎖V領域をコードするDNAを有する。
【0148】
L鎖発現ベクターHEF−12k−gkを作製するため、HEF−1αプロモーター−エンハンサー領域を含有する約3.0kbのPvuI−HindIII 断片をHEF−12h−gγ1ら切り出し、そして実施例5において作製したHCMV−L鎖発現ベクターHCMV−12k−gkからの約7.7kbのPvuI−HindIII 断片に連結してHEF−12k−gkを得た。H鎖発現ベクターHEF−12h−gγ1の場合と同様に、HindIII −BamHI断片として存在するHEF−12k−gk中のL鎖V領域をコードするDNAは他のL鎖V領域をコードするDNAと容易に交換することができる。なお、プラスミドHEF−PMh−gγ1は、HEF−12h−gγ1(図8)のEF1αプロモーター領域(PvuI−HindIII 断片)によりHCMV−pmh−gγ1のHCHVプロモーター領域(PvuI−HindIII 断片)を置き換えることにより作製したものである。
【0149】
再構成ヒトL鎖V領域をコードするDNAを含有するHindIII −BamHIDNA断片をpUC−RV1−PM1a及びpUC−RV1−PM1b(実施例7)から切り出し、そしてHEF−12k−gkのHindIII −BamHI部位に挿入し、それぞれ発現ベクターRV1−PM1a及びRV1−PM1bを得た。発現ベクターRV1−PM1a及びRV1−PM1b、並びにHEF−PMK −gkはそれぞれ再構成ヒトL鎖V領域「a」及び「b」、並びにマウスPM−1 L鎖V領域をコードするDNAを有する。なお、プラスミドHEF−PMK −gkは、HEF−12k−gk(図9)のEF1αプロモーター領域(PvuI−HindIII 断片) によりHCMV−pmka−gkのHCMVプロモーター領域(PvuI−HindIII 断片)を置き換えることにより作製したものである。
【0150】
実施例10遺伝子操作された抗体をCHO細胞中で高レベルで発現させるための、欠陥SV40プロモーター−エンハンサー配列に連結されたジヒドロフォレートレダクターゼ(dhfr)遺伝子を用いるベクターの作製(図10及び図11)
SV40前期プロモーターからエンハンサー配列を除去するため、プラスミドpSV2−dhfr(S.Subramaniら、Mol.Cell.Biol.(1981)1:854−864)(ATCC33694)をSphI及びPvuIIで消化し、Klenowポリメラーゼでフィルーインし、そして自己連結してpSV2−dhfr−ΔEを得た(図10)。HCMVプロモーター、H鎖V領域をコードするDNA及びヒトγ−1C領域をコードするDNAを含有する約3.7kbのEcoRI断片を、EcoRIによる部分消化によりHCMV−PMh−gγ1から切り出した。この断片を、EcoRI−消化pSV2−dhfr−ΔEに連結してDHFR−ΔE−PMh−gγ1を得た。
【0151】
HEF−1αプロモーター−エンハンサーを用いるH鎖発現ベクターに基いて類似のベクターを作製した(図11を参照のこと)。HCMV−12h−gγ1に由来する約3.7kbのEcoRI断片を、EcoRI−消化pSV2−dhfr−ΔEと連結してDHFR−ΔE−12h−gγ1を得た。DHFR−ΔE−12h−gγ1中のdhfr配列に続くBamHI部位を、BamHIによる部分消化、Klenowポリメラーゼによるフィルーイン及び自己連結により除去した。dhfr cDNAを含有する約4kbのPvuI−BamHI断片をこの修飾されたDHFR−ΔE−12h−gγ1から切り出し、そして実施例12において作製したRVh−PM1f−4からの約3kbのPvuI−BamHI断片に連結してDHFR−ΔE−RVh−PMlfを得た。
上記の改良されたプラスミドは本発明の再構成ヒトPM−1抗体の製造のために使用することができる。
【0152】
実施例11再構成ヒトPM−1抗体の種々のバージョンの発現及び分析
再構成ヒトPM−1抗体のL鎖及びH鎖を発現する各HEF−1αベクターをCOS細胞に同時形質転換(co−transfect)した。標準対照としてキメラPM−1抗体のL鎖及びH鎖を発現する各HEF−1αベクターもCOS細胞に同時形質転換した。3日後,形質転換されたCOS細胞からの培地を集め、そしてELISAにより(1)上清中に存在するヒトIgG抗体の量について、及び(2)IL−6Rに結合するそのIgGの能力について分析した。次に、同じサンプルをさらに、ELISAにより、ヒトIL−6RへのヒトIL−6の結合を阻害する該抗体の能力について試験した。
【0153】
再構成ヒトPM−1抗体L鎖を発現する2種類のベクターの一方(RV1−PM1a又はRV1−PM1b)及びキメラPM−1抗体H鎖を発現するベクター(HCMV−PMh−gγ1)によりCOS細胞を同時形質転換することにより、再構成ヒトPM−1抗体L鎖V領域の2種類のバージョンの評価を行った。細胞をまた、キメラPM−1抗体L鎖及びH鎖を発現する各ベクター(HCMV−PMka−gk及びHCMV−PMh−gγ1)により同時形質転換した。未精製のCOS細胞上清を用いるデーターは、ヒトIL−6Rへの結合についての測定において、再構成ヒトPM−1抗体L鎖のバージョン「a」がキメラPM−1抗体L鎖と同等であることを示した。
【0154】
しかしながら、再構成ヒトPM−1抗体L鎖のバージョン「b」はヒトIL−6Rへの結合能を実質的に保持しなかった。これらの結果から、FR3中の位置71のフェニルアラニン(CAMPAHTH−1Hのために修飾されたヒトREI中に存在する)からチロシン(天然ヒトREI及びマウスPM−1抗体中に存在する)への変化は機能的抗原結合部位の形成に対して非常に有害であることが結論された。
再構成ヒトPM−1抗体H鎖V領域の種々のバージョンを評価する次の実績において、再構成ヒトPM−1抗体L鎖V領域のバージョン「a」を常に用いた。
【0155】
再構成ヒトPM−1抗体H鎖の発現する6種類のベクターの1つ(RVh−PM1a,RVh−PM1b,RVh−PM1c,RVh−PM1d,RVh−PM1e又はRVh−PM1f)及び再構成ヒトPM−1抗体L鎖のバージョン「a」を発現するベクター(RV1−PM1a)によりCOS細胞を同時形質転換することにより、再構成ヒトPM−1抗体H鎖V領域の6種類のバージョンを評価した。細胞を、キメラPM−1抗体L鎖及びH鎖を発現する各ベクター(HEF−PMk−gk及びHEF−PMh−gγ1)によっても同時形質転換した。未精製のCOS細胞上清を用いた予備データーが示すところによれば、ヒトIL−6Rへの結合についての測定において、再構成ヒトPM−1抗体L鎖のバージョン「a」及び再構成ヒトPM−1抗体H鎖のバージョン「f」は、キメラPM−1抗体L鎖及びH鎖と同等であった。
【0156】
この予備データーを確認するため、キメラPM−1抗体及び再構成ヒトPM−1抗体をCOS細胞上清から濃縮そしてプロテインAを用いて精製した。すなわち、COS細胞からの培地を100kdカットオフ限外濾過装置(Amicon)を用いて濃縮した。濃縮した培地をプロテインAアガロース(AffiGelProtein A MAPSIIキット、BioRad)を用いて精製した。要約すれば、濃縮された培地を、5ベッドボリウムの結合緩衝液により平衡化されたプロテインAアガロースカラムに適用した。このカラムを15ベッドボリウムの結合緩衝液で洗浄し、そして次に5ベッドボリウムの溶出緩衝液で溶出を行った。そしてマイクロコンセントレーター(Centricon 10,Amicon)を用いて溶出液を濃縮し、溶出緩衝液をPBSに置換した。
【0157】
キメラPM−1抗体、及び再構成ヒトL鎖V領域のバージョン「a」と再構成ヒトH鎖V領域のバージョン「a」,「b」,「c」,「d」,「e」又は「f」とから成る再構成ヒトPM−1抗体の精製されたサンプルの分析を行った。L鎖の「a」バージョン+H鎖の「f」バージョンが明らかに最良の再構成ヒトPM−1抗体であった。このものは、キメラPM−1抗体と同様にヒトIL−6Rに結合する(図13)。これはまた、マウス抗体及びキメラ抗体と同様に、ヒトIL−6がヒトIL−6Rに結合するのを阻害する(図14)。
【0158】
実施例12発現レベルを改良するための再構成ヒトPM−1V領域の修正
再構成ヒトPM−1抗体L鎖及びH鎖のV領域(配列番号:54及び55)のリーダー配列をコードするDNA配列内のイントロンを除去するため、V領域をコードするcDNAをPCRプライマーを用いて再クローニングした。L鎖及びH鎖の発現ベクターRV1−PM1a及びRVh−PM1fをCOS細胞に同時形質転換した。48時間後、全RNAを調製し(Chirgwinら、Biochemistry(1979)18:5294−5299)、そしてマウス抗体V領域のPCRクーロニングについて記載したようにして一本cDNA合成のために5μgの全RNAを用いた。3種類のPCRプライマーを設計し、そして合成した。LEV−P1(配列番号:60)及びHEV−P1(配列番号:58)はスプライスドナー配列及びBamHI部位を含有し、そしてそれぞれL鎖及びH鎖のV領域のための前方プライマーとして使用した。
【0159】
HEV−P2(配列番号:59)はHindIII 部位及びATG開始コドンの前のKozakコンセンサス配列を含有し、そしてL鎖及びH鎖のV領域のための後方プライマーとして使用した。100μlずつのPCR反応物は20mM Tris−HCl(pH8.8),10mM KCl,10mM (NH4 2 SO4 ,2mM MgSO4 ,0.1% Triton X−100,0.1μgのBSA,250μM dNTP,2.5uのVent DNAポリメラーゼ(Bio.Labs,U.K.)、50%の一本cDNA合成反応物並びに100pmoleずつの前方プライマー及び後方プライマーを含有した。
【0160】
各PCRチューブは50μlの鉱油で覆い、そして94℃にて1.5分間の最初の変性の後、94℃にて1分間、50℃にて1分間及び72℃にて1分間のサイクル反応を30回行い、そして次に72℃にて10分間インキュベートした。L鎖V領域を含有する408bpのPCR生成物及びH鎖V領域を含有する444bpのPCR生成物を、2.0%低融点アガロースゲルを用いて精製し、そしてBamHI及びHindIII により消化し、そしてpUC19ベクターにサブクローニングし、それぞれpUC−RV1−PM1a−3及びpUC−RVh−PM1f−3を得た。
【0161】
再構成ヒトPM−1抗体L鎖及びH鎖のV領域のDNA配列は不適切なスプライスドナー部位及びアクセプター部位を含有することが明らかになった(配列番号:54及び55を参照のこと)。L鎖V領域内のこれらの部位は高頻度には使用されない(mRNAの約10%)が、H鎖V領域内のこれらの部位は高頻度で使用される(mRNAの約90%)。この異常なスプライシングが再構成ヒトPM−1抗体の低レベルの発現をもたらした。V領域の異常なスプライシングを回避するため、スプライス−ドナー部位をPCR法により除去した。H鎖V領域について、後方プライマーNEW−SP1(配列番号:61)及び前方プライマーNEW−SP2(配列番号62)を合成した。このプライマーはDNA配列TGG GTG AGAをDNA配列TGG GTT CGCに変える。PCR反応の条件はcDNAのクローニングについて前記した通りであったが、鋳型DNAは50ngのpUC−RVh−PM1f−3であり、そしてプライマーはHEV−P2とNEW−SP2、又はHEF−P1とNEW−SP1のいずれかであった。
【0162】
2個のPCR反応からのPCR生成物を2%低融点アガロースゲルを用いて精製し、そしてPCR連結反応において使用した。0.5μgの第一PCR生成物を含有する98μlのPCR反応物及び5ユニットのVent DNAポリメラーゼを94℃にて2分間、50℃にて2分間及び72℃にて5分間インキュベートし、そして次に100pmoleずつのHEV−P1プライマー及びHEV−P2プライマーを加えた。PCRチューブを30μlの鉱油で覆い、そして94℃にて1分間、50℃にて1分間及び72℃にて1分間の25サイクルのPCRにかけ、そして次に72℃にて10分間インキュベートした。
【0163】
同様にして、再構成ヒトPM−1抗体L鎖V領域中のスプライス−ドナー領域をPCRプライマーREI−SP1(配列番号:63)及びREI−SP2(配列番号:64)を用いて除去した。該プライマーはDNA配列CAG GTA AGGをDNA配列CAG GAA AGGに変える。両PCR生成物、すなわちL鎖V領域についての408bpのDNA断片及びH鎖V領域についての444bpのDNA断片を2.0%低融点アガロースゲルを用いて精製し、HindIII 及びBamHIにより消化し、そして配列決定のためpUC19にサブクローニングしてpUC−RV1−PM1a−4及びpUC−RVh−RM1f−4を得た。
【0164】
RVh−PM1fのHindIII −BamHI断片を、pUC−RVh−PM1f−4のHindIII −BamHI領域と置き換えることにより、RVh−PM1f−4を得た。再構成ヒトPM−1抗体L鎖V領域のイントロンが除去されたバージョン「a」の配列を配列番号57に示し、再構成ヒトPM−1抗体H鎖V領域のイントロンが除去されたバージョン「f」の配列を配列番号56に示す。
【0165】
実施例13再構成ヒトAUK12−20抗体L鎖V領域をコードするDNAの作製
再構成ヒトAUK12−20抗体L鎖V領域をコードするDNAの作製の工程を図16に示す。鋳型となるヒト抗体L鎖V領域をコードする遺伝子は、制限酵素HindIII 及びBamHI部位を用いてpUC19ベクターに組み込まれている。8個のPCRプライマー(A〜H)を準備し、第1のPCRにより、V領域をコードする遺伝子を4つの領域に分けて増幅させる。プライマーA及びHは、pUC19ベクター上のDNA配列と相補性を持つ。プライマーB,C及びDは、それぞれ移植するCDR領域の遺伝子配列を有する40〜60bpのプライマーである。
【0166】
プライマーE,F及びGは、それぞれプライマーB,C及びDの5′側15〜20bpのDNA配列と相補性を持つ。4個の第1PCRは、それぞれプライマーAとE、BとF、CとG、及びDとHを用いる。PCR生成物A−EはFR1をコードし、B−FはCDR1とFR2をコードする。A−E断片の3′側とB−F断片の5′側は15〜20bpの相補性を持つので、後に、これら断片を連結することが可能となる。同様に、B−F断片は、CDR2及びFR3をコードするC−G断片とも相補性を持つ。そして、C−G断片はさらに、CDR3とFR4をコードするD−H断片とも相補性を持つ。こうしてこれら4種の断片は、互いの相補性により連結が可能となる。
【0167】
PCR反応液中にてこれら4つの断片の連結反応を行った後、プライマーA及びHを加える事により、正しく4つの断片が連結したものが、この第2のPCRによって増幅してくる。こうして得られた第2のPCR生成物は、3つの移植されたCDRを有し、HindIII 及びBamHIの消化後、pUC19ベクターにサブクローニングする。
さらに具体的には、鋳型として再構成ヒトPM−1抗体L鎖V領域バージョン「a」をコードするDNAがプラスミドpUC19に挿入されているプラスミドpUC−RV1−PM1a−4を用いた。
前記プライマーA〜Hは次の配列を有する。
【0168】
【表10】
Figure 0003913965
【0169】
CDR移植用の後方プライマー1220−L1,1220−L2及び1220−L3については、8M尿素を含む12%ポリアクリルアミドゲルを用いて精製後使用した。
100μlずつのPCR反応物は20mM Tris−HCl(pH8.8),10mM KCl,10mM (NH4)2 SO4 ,2mM MgSO4 ,0.1% Triton X−100,0.1μgのBSA,250μm dNTP,5uのVent DNAポリメラーゼ(BioLabs.U.K.),50ngのpUC−RVl−PM1a−4 DNA、そして各100pmolesの前方及び後方プライマーを含有した。各PCRチューブは50μlの鉱油で覆い、そして94℃にて1.5分間の最初の変性の後、94℃にて1分間、50℃にて1分間及び72℃にて1分間の反応を30サイクル行い、そして次に72℃にて10分間インキュベートした。
【0170】
252bp(A−E),96bp(B−F),130bp(C−G)及び123bp(D−H)の各PCR生成物を2.0%の低融点アガロース(FMC,Bio.Products,USA)ゲルを用いて精製した。すなわち、各DNA断片を含有するアガロース片を切り取りそして65℃にて5分間溶融せしめ、そしてこれと同容積の2mM EDTA及び200mMNaClを含有する20mM Tris−HCl(pH7.5)を加えた。この混合物をフェノール及びクロロホルムにより抽出し、そしてDNA断片をエタノール沈澱により回収し、そして1mM EDTAを含有する10mM Tris−HCl(pH7.5)に溶解し、そしてPCR連結反応において使用した。
【0171】
次に、0.2μgの各第1のPCR生成物及び5ユニットのVent DNAポリメラーゼを含有する98μlのPCR反応液を94℃にて2分間、50℃にて2分間及び72℃にて5分間インキュベートし、連結反応を行った。そして次に、各100pmoleのA(REVERSE)及びH(UNIVERSAL)プライマーを加えて反応液を100μlとした後、これを50μlの鉱油でおおい、そして94℃にて1分間、50℃にて1分間及び72℃にて1分間の反応を30サイクル行い、そして次に72℃にて10分間インキュベートした。
【0172】
マウスモノクローナル抗体AUK12−20のL鎖のCDRが移植されたL鎖V領域をコードするDNAを含有する558bpの第2PCRの生成物を2.0%低融点アガロースゲルを用いて精製し、そしてBamHI及びHindIII により消化後、pUC19ベクターにサブクローニングし、塩基配列を確認し、pUC−RVL −1220aを得た。得られたL鎖V領域のアミノ酸配列及びそれをコードするヌクレオチド配列を配列表71に示す。
次いで、L鎖発現ベクターを構築するため、再構成ヒトAUK12−20抗体L鎖V領域を含有するHindIII −BamHIDNA断片を上記プラスミドpUC−RVL −1220aから切り出し、L鎖発現ベクターHEF−12κ−gκのHindIII −BamHI部位に挿入し、再構成ヒトAUK12−20抗体L鎖V領域バージョンaの発現ベクターであるRVL −1220aを得た。
【0173】
実施例14再構成ヒトAUK12−20抗体L鎖の発現及び分析COS細胞での一過性(transient)発現
再構成ヒトAUK12−20抗体L鎖を発現するベクターRVL −1220a及びキメラAUK12−20抗体H鎖を発現するベクター、HEF−12h−gγ1(実施例5)によりCOS細胞を同時形質転換することにより、再構成ヒトAUK12−20抗体L鎖バージョン「a」の評価を行った。すなわち、COS細胞を1×107 個/mlになるようにphosphate−buffered saline(PBS)に懸濁し、この細胞浮遊液0.8mlにDNA(各プラスミドについて10μg)を加えた。Gene Pulsar装置(BioRad)を用い1,900ボルト(V)、25マイクロファラッド(μF)の電気容量にてパルスを与えた。
【0174】
室温にて10分間の回復期間の後、エクレトロポレーションした細胞を、10%のウシ胎児血清(γ−グロブリン不含)を含有するDMEM培地(GIBCO)20mlに加えた。72時間のインキュベーションの後、培養上清を集め、遠心分離して細胞破片を除去し、そして無菌条件下で4℃にて短時間、又は−20℃にて長時間貯蔵した。
【0175】
酵素免疫測定法(ELISA)によるヒト様抗体の定量
トランスフェクトされたCOS細胞の培養上清をELISAにより測定して、キメラ抗体が生産されていることを確認した。ヒト様抗体を検出するため、プレートをヤギの抗ヒトIgG(Whole molecule)(Sigma)によりコートした。ブロックした後、COS細胞からの培養上清を段階希釈しそして各ウエルに加えた。
プレートのインキュベーション及び洗浄の後、アルカリホスファターゼ−結合ヤギ抗−ヒトIgG(γ鎖特異的、Sigma)を加えた。インキュベーション及び洗浄の後、基質緩衝液を加えた。さらにインキュベーションした後、反応を停止しそして405nmにおける吸光度を測定した。標準として精製ヒトIgG(Sigma)を用いた。
【0176】
ヒトIL−6Rへの結合能を確認するための酵素免疫測定(ELISA)
トランスフェクトされたCOS細胞からの上清をELISAにより測定して、生産されたヒト様抗体が抗原IL−6Rに結合し得るか否かを決定した。抗原への結合の検出のため、プレートをMT18マウスモノクローナル抗体(参考例1)でコートした。1% BSAでブロックした後、可溶性組換えヒトIL−6R(SR344)をプレートに加えた。
プレートを洗浄した後、COS細胞からの培養上清を段階希釈し、そして該プレートの各ウエルに加えた。インキュベーション及び洗浄の後、アルカリホスファターゼ結合ヤギ抗−ヒトIgGをウエルに加えた。インキュベーション及び洗浄の後、基質緩衝液を加えた。インキュベーションの後、反応を停止し、そして405nmにおける吸光度を測定した。
【0177】
この結果を図17に示す。再構成ヒトAUK12−20抗体L鎖バージョン「a」とキメラAUK12−20抗体H鎖の組み合せによるヒト様抗体は、キメラAUK12−20抗体と同様にヒトIL−6Rに対する強い結合能を示し、サンプルの希釈度依存的に405nmにおける吸光度が変化し、サンプル中にIL−6Rに対する抗体が含まれていることが確認された。また、この結果は、再構成ヒトAUK12−20抗体L鎖のバージョン「a」がキメラAUK12−20抗体L鎖と同様に抗原結合能を持つことを示している。
【0178】
実施例15ヒトサブグループI(HSGI)コンセンサス配列を用いた再構成ヒトAUK12−20抗体H鎖遺伝子の構築
実施例13で示した方法と同様にして、AUK12−20抗体H鎖V領域のCDRをヒトサブグループIのコンセンサス配列をFRとして有する再構成ヒトVH a425(Kettleboroughら、Protein Engineering,,773−783,1991)に移植した。まず、再構成ヒトVH a425(上記文献中、Fig3)をコードするHindIII −BamHI DNA断片をプラスミドHCMV−RVHa−425−γ1から切り出し、pUC19ベクターのHindIII −BamHI部位にサブクローニングし、pUC−RVH −425aを得た。
【0179】
これを鋳型DNAとして使用した。PCRに用いる8個のプライマー(A1〜H1)を合成した。プライマー1220−H1は、CDR1の移植及びThr−28からSer−28の変更を誘導する様にデザインし、プライマー1220−H3はCDR3の移植及びSer−94からArg−94への変異を誘導する様にデザインした。プライマー1220−H1,1220−H2及び1220−H3は、それぞれ8M尿素を含む12%ポリアクリルアミドゲルを用いて精製後、使用した。各プライマーのヌクレオチド配列は次の通りである。
【0180】
【表11】
Figure 0003913965
【0181】
PCRの条件は、鋳型DNAとしてpUC−RVH −425aを使用し、H鎖CDR移植用プライマーとして上記のものを使用した以外は実施例13に記載したのと同じであった。A1とE1、B1とF1、C1とG1、及びD1とH1のプライマー対を用いて第1PCR反応を行い、それぞれ186bp(A1−E1),75bp(B1−F1),173bp(C1−G1)及び105bp(D1−H1)の各第1PCR生成物を2.0%の低融点アガロースゲルにて精製し、次の第2PCR連結反応において使用した。
【0182】
実施例13にて示した条件に従い、各0.2μgの上記第1PCR生成物を用いて第2PCR(PCR連結反応を含む)を行い、マウスAUK12−20抗体のH鎖V領域CDRが移植されたヒトH鎖V領域を含有する495bpのPCR生成物を得、これを2.0%低融点アガロースゲルを用いて精製した。そしてBamHI及びHindIII により消化後、得られたBamHI−HindIII 断片をpUC19ベクターにサブクローニングし、塩基配列を確認して、pUC−RVH −1220aを得た。
【0183】
ところで、再構成ヒトAUK12−20抗体H鎖V領域をコードするDNA配列を調らべた結果、スプライスの供与配列とよく一致する配列が見い出された。この事は、再構成ヒトPM−1抗体の作成時に問題となった異常なスプライシングを引き起す可能性がある。そこで、この配列をPCR法により変異させた。変異誘導プライマーとして、SGI−SP1(配列番号97)及びSGI−SP2(配列番号98)を合成した。このプライマーは、DNA配列AAG GTG AGCをDNA配列AAA GTC AGCに変える。PCR反応の条件は、前記条件と同様に行い、鋳型DNAは50ngのpUC−RVH −1220aであり、そしてプライマーはSGI−SP1とUNIVERSAL(配列番号82)、またはSGI−SP2とREVERSE(配列番号83)のいずれかであった。
【0184】
2個のPCR反応からのPCR生成物を2%低融点アガロースゲルを用いて精製し、そしてPCR連結反応において使用した。各0.2μgの第1PCR生成物及び5uのVent DNAポリメラーゼを含有する98μlのPCR反応液を94℃にて2分間、50℃にて2分間、及び72℃にて5分間インキュベートし連結反応を行った。そして次に100pmoleずつのUNIVERSAL及びREVERSEプライマーを加え、50μlの鉱油でおおった後、94℃にて1分間、50℃にて1分間そして72℃にて1分間の第2PCRを30サイクル行い、そして次に72℃にて10分間インキュベートした。第2PCRで得られた495bpのDNA断片を2.0%低融点アガロースゲルを用いて精製し、HindIII 及びBamHIにより消化し、これをpUC19ベクターにサブクローニングした後、塩基配列を確認して、pUC−RVH −1220a−2を得た。
【0185】
次いで、再構成ヒトAUK12−20抗体H鎖V領域をコードするDNAを含有するHindIII −BamHI DNA断片を上記pUC−RVH −1220a−2より切り出し、H鎖発現ベクターHEF−12h−gγ1のHindIII −BamHI部位に導入し、再構成ヒトAUK12−20抗体H鎖のバージョンaの発現ベクターであるRVH −1220aを得た。
【0186】
再構成ヒトAUK12−20抗体H鎖V領域の他のバージョン(b〜d)をコードするDNAを作成するために2組の変異誘発PCRプライマーを合成した。各PCR反応は前記の反応条件と本質的に同じ条件下で行われた。バージョン「b」をコードするDNAの作成のため、2種の第1PCRにおいて、UNIVERSALプライマー(配列番号82)及び変異誘発プライマー1220H−m1a(配列番号78)、あるいは、REVERSEプライマー(配列番号83)と変異誘発プライマー1220H−m1b(配列番号79)の各PCRプライマー、並びに鋳型DNAとしてのpUC−RVH −1220aを用いた。それぞれ202bp及び323bpの第1PCR生成物を2.0%低融点アガロースゲルを用いて精製後、前記の反応条件と同様に第2PCR(PCR連結反応を含む)を行い、495bpの生成物(バージョン「b」)を得た。これをHindIII −BamHIにより消化し、そして、pUC19ベクターにサブクローニングし、pUC−RVH −1220bを得た。
【0187】
同様にして、変異誘発プライマー1220H−m2a(配列番号80)、1220H−m2b(配列番号81)及びこの生成物を鋳型pUC−RVH −1220aを用いてPCR生成物(バージョン「c」をコードするDNA)を得、HindIII 及びBamHIで消化し、pUC19ベクターのHindIII −BamHI部位に挿入してpUC−RVH −1220cを得た。さらに、変異誘発プライマー1220H−m1a(配列番号78)、1220H−m1b(配列番号79)及び鋳型としてのpUC−RVH −1220cを用いてPCR生成物(バージョンd)を得、これをHindIII 及びBamHIで消化してpUC19ベクターのHindIII −BamHI部位に挿入することによりpUC−RVH −1220dを得た。
【0188】
なお、プラスミドpUC−RVH −1220b中にコードされているの再構成ヒト抗体H鎖V領域バージョン「b」のアミノ酸配列及びそれをコードするヌクレオチド配列を配列番号84に示し、pUC−RVH −1220d中にコードされている再構成ヒトH鎖V領域バージョン「d」のアミノ酸配列及びそれをコードするヌクレオチド配列を配列表85に示す。
【0189】
次いで、再構成ヒトAUK12−20抗体H鎖の各バージョンの発現ベクターを構築するために、再構成ヒトAUK12−20抗体H鎖V領域をコードするDNAを含むHindIII −BamHI断片をpUC−RVH −1220b,pUC−RVH −1220c、及びpUC−RVH −1220dより切り出し、H鎖発現ベクターHEF−12h−gγ1のHindIII −BamHI部位に挿入して、各バージョンの発現ベクターRVH −1220b,RVH −1220c、及びRVH −1220dをそれぞれ得た。
【0190】
実施例16再構成ヒトAUK12−20抗体の種々のバージョンの発現及び分析
再構成ヒトAUK12−20抗体H鎖を発現する4種類のベクターの1つ(RVH −1220a,RVH −1220b,RVH −1220c、またはRVH −1220d)及び再構成ヒトAUK12−20抗体L鎖を発現するベクターRVL −1220aによりCOS細胞を同時形質転換することにより、再構成ヒトAUK12−20抗体H鎖V領域の4種類のバージョンを評価した。
【0191】
比較のため、COS細胞をキメラAUK12−20抗体L鎖及びH鎖を発現する各ベクター(HEF−12h−gγ1及びHEF−12κ−gκ)によっても同時形質転換した。ヒトIL−6Rへの結合についての測定において、再構成ヒトAUK12−20抗体L鎖と再構成ヒトAUK12−20抗体H鎖のバージョン「b」、あるいは再構成ヒトAUK12−20抗体L鎖と再構成ヒトAUK12−20抗体H鎖のバージョン「d」との組み合せによる再構成ヒト12−20抗体は、キメラAUK12−20抗体と同等の結合活性を示した。これらの結果を図18及び図19に示す。
【0192】
実施例17ヒト抗体HAXを用いた再構成ヒトAUK12−20抗体H鎖遺伝子の構築
マウスモノクローナル抗体AUK12−20のH鎖V領域と最も相同性の高いヒト抗体は、タンパクデータベース“Leeds”の検索により、HAXであった(J.Immunology 139,2496−2501,1987,SLE患者由来B cell hybridoma 21/28の産生する抗体、遺伝子配列はFig.4,5に、アミノ酸配列はFig.6に記載)。再構成ヒトAUK12−20抗体H鎖V領域の設計を、HAX抗体のFR領域とマウスモノクローナル抗体AUK12−20のH鎖V領域のCDRを用いて行った。
【0193】
マウスモノクローナル抗体AUK12−20のH鎖V領域の第一バージョン(Sle1220Ha)のCDRを含む再構成ヒトAUK12−20抗体H鎖V領域をコードする全DNAは化学合成にて作成した。すなわち、全長439bpのSle1220HaをコードするDNAを各々21bpの重複部位を有する90〜94bpの長さの6本のオリゴヌクレオチド(sle1220h1〜6;それぞれ、配列番号86〜91)に分けて設計した。オリゴヌクレオチドの設計にあたり、2次構造の検索を行ない、構造上に問題のある部位に関して、アミノ酸置換がおきない様に、コドンの第3塩基を変換した。これらのオリゴヌクレオチドの相互関係及び2本鎖合成DNAの完成までの過程を図20に示す。
【0194】
PCR法を用いて図20に示す反応を行う。すなわち6本の合成オリゴヌクレオチドを同一PCR反応チューブに加え、第1のPCR反応を行う。これにより、2つのオリゴヌクレオチドのアニーリング伸長を行うことができ、さらに、4つのオリゴヌクレオチド、または、全長のオリゴヌクレオチドを得ることができる。次に、末端プライマーA(配列番号92)及びB(配列番号93)を加え、第2のPCR反応を行うことで、正しく全長を有するオリゴヌクレオチドのみを増幅することができる。得られた生成物を精製し、BamHI及びHindIII により消化後、pUC19ベクターにサブクローニングしてシークエンスを行う。
【0195】
具体的には、100mM Tris−HCl(pH8.3),50mM KCl,0.1mM dATP,0.1mM dGTP,0.1mM dCTP,0.1mM dTTP,1.5mM MgCl2 及び2.5uのDNAポリメラーゼAmpliTaq(Perkin Elmer Cetus)並びに各オリゴヌクレオチド5pmoleを含有する98μlの反応混合物を94℃1.5分間の変性後、94℃3分間、50℃2分間、72℃5分間の反応を3サイクル行い、次に72℃にて10分間インキュベートした。
【0196】
反応液に50μMの末端プライマーAおよびBを1μlずつ加え、80μlの鉱油で覆い、94℃1.5分間の変性後、94℃にて1分間、50℃にて1分間、72℃1分間の反応を30サイクル行い、続いて72℃で10分間インキュベートした。439bpのPCR生成物を1.5%の低融点アガロースゲルを用いて精製し、制限酵素BamHIおよびHindIII により消化後、pUC19ベクターにサブクローニングして、塩基配列を確認した。得られたクローンをpUC−RVH −sle1220Haとした。このプラスミド中にコードされている再構成ヒトAUK12−20抗体のH鎖V領域バージョン「a」のアミノ酸配列及びそれをコードするヌクレオチド配列を配列番号94に示す。
【0197】
次いで、再構成ヒトAUK12−20(sle1220Ha)抗体H鎖V領域をコードする遺伝子を含有するHindIII −BamHI DNA断片をpUC−RVH −sle1220Haより切出し、H鎖発現ベクターHEF−12h−gγ1のHindIII −BamHI部位に導入し、RVH −sle1220Haを得た。
【0198】
再構成ヒトAUK12−20抗体H鎖V領域の他のバージョン(「b」〜「d」)を作成するため、2つの変異誘発プライマーsle1220Hm1(配列番号95)、及びsle1220Hm2(配列番号96)を合成した。各PCR反応では、実施例13で示されているVent DNAポリメラーゼ及び反応液組成を用いた。各PCR反応では、バージョン「b」及びバージョン「c」については、鋳型としてのpUC−RVH −sle1220Ha,50pmoleの変異誘発プライマーsle1220Hm1またはsle1220Hm2及び50pmoleの末端プライマーBを含有する反応混合物を94℃1.5分間の変性の後、94℃1分、50℃1分、72℃1分の30サイクルの反応にかけ、次に72℃で10分間インキュベートした。
【0199】
235bpまたは178bpの生成物を1.5%の低融点アガロースゲルを用いて精製し、第2のPCR反応のプライマーとして使用した。すなわち、50pmoleの末端プライマーAと、0.2μgのPCR生成物を加え、pUC−RVH −sle1220Haを鋳型として、第2PCR反応を行い、439bpの生成物を1.5%低融点アガロースゲルで精製、BamHI及びHindIII で消化後pUC19ベクターにサブクローニングして、それぞれ構成ヒトAUK12−20抗体H鎖V領域バージョン「b」又は「c」をコードするプラスミドpUC−RVH −sle1220Hb又はpUC−RVH −sle1220Hcを得た。
【0200】
再構成ヒトAUK12−20抗体H鎖V領域バージョン「d」をコードするDNAは次の様にして作製した。鋳型としてのpUC−RVH −sle1220Hbを用いた。変異誘導プライマーsle1220Hm2及び末端プライマーBを50pmoleずつ用いて第1のPCR反応を30サイクル行った。得られた178bpのPCR生成物を1.6%の低融点アガロースゲルにより精製し、第2のPCRのプライマーとして用いた。このプライマーと50pmoleの末端プライマーAを用いて第2のPCRを行い、439bpのDNA断片を得た。これを、精製し、BamHI及びHindIII にて消化後pUC19ベクターにサブクローニングし、ヌクレオチド配列を確認し、pUC−RVH −sle1220Hdを得た。
【0201】
次いで、再構成ヒトAUK12−20抗体H鎖の各バージョンの発現ベクターを構築するため、再構成ヒトAUK12−20抗体H鎖V領域をコードするDNAを含むBamHI−HindIII 断片をpUC−RVH −sle1220Hb,pUC−RVH −sle1220Hc、およびpUC−RVH −sle1220Hdより切り出し、H鎖発現ベクターHEF−12h−gγ1のHindIII −BamHI部位に挿入して、各発現ベクター、RVH −sle1220Hb,RVH −sle1220HcおよびRVH −sle1220Hdをそれぞれ得た。
【0202】
分 析
再構成ヒトAUK12−20抗体H鎖を発現する4種類のベクターのうちの1つ(RVH −sle1220Ha,RVH −sle1220Hb,RVH −sle1220HcまたはRVH −sle1220Hd)および、再構成ヒトAUK12−20抗体L鎖を発現するベクターRVL −1220aを用いてCOS細胞を同時形質転換することにより、再構成ヒトAUK12−20抗体H鎖V領域の4種類のバージョンを、IL−6RへのIL−6の結合を阻害する能力について評価した。この結果を図21〜24に示す。なお、これらの結果は、生産された抗体をプロテインAによって精製した後に得られたものである。
【0203】
上記のごとく、本発明によれば、キメラL鎖もしくは再構成L鎖又はキメラH鎖もしくは再構成H鎖のV領域、そして特にFR中の1個又は複数個のアミノ酸を他のアミノ酸に置換してもなおヒトIL−6Rに結合する能力を維持している。従って本発明は、その本来の性質を維持している限り、1個又は複数のアミノ酸が他のアミノ酸により置換されている、キメラ抗体及び再構成ヒト抗体、キメラL鎖及び再構成L鎖、キメラH鎖及び再構成H鎖、再構成L鎖V領域、並びに再構成H鎖V領域、並びにこれらをコードするDNAをも包含する。
【0204】
参考例
本発明において使用される出発ハイブリドーマは次の様にして作製された。
参考例1ハイブリドーマ MT18の作製
ヒトIL−6Rに対するモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマを作製するため、免疫原として、細胞表面にヒトIL−6Rを発現するマウスT細胞を次の様にして作製した。すなわち、Y.Hirataら、J.Immunol.Vol.143,2900−2906(1989)に開示されているプラスミドpZipneo IL−6Rを常法に従ってマウスT細胞系CTLL−2(ATCC TIB214)にトランスフェクトし、生ずる形質転換体を常法に従ってG418を用いてスクリーニングすることにより細胞あたり約30,000個のヒトIL−6Rを発現する細胞株を得た。この細胞株をCTBC3と称する。
【0205】
CTBC3細胞を常法に従ってRPMI1640中で培養し、そして培養細胞をPBS緩衝液により4回洗浄し、そして1×107 個の細胞をC57BL/6マウスに腹腔内注射して免疫感作した。この免疫感作は1週間に1回6週間にわたって行った。
この免疫感作されたマウスから脾臓細胞を得、そして常法に従ってポリエチレングリコールを用いて骨髄腫P3U1細胞を融合せしめ、そして融合した細胞を次の様にしてスクリーニングした。IL−6R陰性ヒトT細胞系JURKAT(ATCC CRL 8163)を、プラスミドpZipneo IL−6Rにより同時トランスフェクトし、そして形質転換された細胞をスクリーニングして、細胞当り約100,000個のIL−6Rを発現する細胞系を得た。この細胞系をNJBC8と命名した。
【0206】
NP−40で細胞溶解したNJBC8を認識するがしかしNP−40で細胞溶解したJURKATを認識しない抗体を生産するハイブリドーマ細胞系をクローン化しそしてMT18と命名した。ハイブリドーマMT18は、工業技術院微生物工業技術研究所にブダペスト条約のもとに1990年7月10日に微工研条寄第2999号(FERM BP−2999)として寄託された。
【0207】
参考例2ハイブリドーマPM1の作製
ヒトIL−6Rに対するモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマを作製するため、抗原として、ヒトIL−6Rを次の様にして抽出した。3×109 個のヒト骨髄腫細胞(IL−6R生産細胞)を1mlの1%ジギトニン、10mMトリエタノールアミン緩衝液(pH7.4),0.15M NaCl及び1mM PMSF(フェニルメチルスルホニルフルオリド;和光純薬)中で溶解した。他方、参考例1において調製したハイブリドーマMT18により生産されたMT18抗体を、ブロムシアンで活性化されたセファロース4B(Pharmacia)に常法に従って結合させた。このMT18抗体結合セファロース4Bを前記の細胞溶解物を混合することにより、セファロース4B上のMT18抗体に前記可溶化したIL−6Rを結合させた。セファロース4Bに非特異的に結合した物質を洗浄除去し、そしてSepharose4BにMT18抗体を介して結合したIL−6Rを免疫原として使用した。
【0208】
前記の免疫原を用いてBALB/cマウスを1週間に1回4週間にわたり腹腔内に免疫感作した。次に、この免疫感作されたマウスから脾臓細胞を得、そして常法に従ってポリエチレングリコールを用いて骨髄腫細胞P3U1と融合せしめた。融合した細胞を次のようにしてスクリーニングした。まず、培養上清及び0.01mlのProteinGセファロース(Pharmacia)を混合して上清中の免疫グロブリンをProteinGセファロースに吸着せしめた。他方、35S−メチオニンにより内部標識された1011個のU266細胞を溶解し、そしてMT18結合セファロース4Bを用いてIL−6Rをアフィニティ精製した。
【0209】
次に、35S−メチオニンで標識されたIL−6Rを、免疫グロブリンが結合している上記のProteinGセファロースにより免疫沈降せしめ、そして沈澱をSDS−PAGEにより分析した。その結果、IL−6Rに特異的に結合する抗体を生産する1個のハイブリドーマクローンを単離し、そしてPM1と命名した。ハイブリドーマPM1は工業技術院微生物工業技術研究所にブダペスト条約のもとに1990年7月10日に、微工研条寄第2998号(FERM BP−2998)として寄託された。
【0210】
参考例3ハイブリドーマAUK12−20,AUK64−7及びAUK146−15の作製
免疫原として可溶性IL−6R(SR 344)を、Yasukawa,K.らの、J.Biochem.108,673−676,1990、に記載されている方法に従って調製した。
すなわち、N−末端から345番目のコドンが終止コドンにより置換されているIL−6RをコードするcDNAを含有するプラスミドpECEdhfr344をCHO(5E27)細胞にトランスフェクトし、そのトランスフェクトされた細胞を無血清培地(SF−0培地、三光純薬)中で培養し、そして得られる上清をHF−Labl系(東ソー)により濃縮しそしてBlue−5PWカラム及びPhenyl−5PWカラムにより精製した。精製された可溶性IL−6RはSDS−PAGEで単一バンドを示した。
【0211】
雌性BALB/cAnNCrjマウス(日本クレア)に、1回の免疫原量を10μg/マウスとしてFreundの完全アジュバント(Bacto Adjuvant Complete H37Ra,Difco)と共に皮下注射し、そしてそれぞれ最初の注射の2週間及び3週間後に、Freundの不完全アジュバント(Bacto Adjuvant Incomplete Freund,Difco)と共に同量の免疫原を第二回及び第三回追加免疫として皮下注射した。最終免疫感作(第四回注射)は第三回注射の1週間後に、アジュバントを使わないで尾静脈内に行った。
【0212】
免疫感作されたマウスから血清試料を採取し、希釈緩衝液により段階的に希釈し、そしてGoldsmith,P.K.,Analytical Biochemisty,117,53−60,1981、に記載されている方法に従ってELISA法により分析した。すなわち、SR344(0.1μg/ml)によりコートされたプレートを1%BSAによりブロックし、そして前記の希釈された試料をそれに加えた。SR344に結合したマウスIgGをヤギの抗−マウスIgG/アルカリホスファターゼ(A/P)(ZYMED)及びアルカリホスファターゼ用基質(Sigma−104)を用いて測定した。
【0213】
血清中の抗−SR344抗体の増加を確認した後、最終免疫感作から3日後に、5匹のBALB/cマウスから脾臓細胞を得た。脾臓細胞及び骨髄細胞株(P3U1)を25:1の比率で混合し、PEG1500を用いて融合し、そして2000個のウエル中で0.7〜1.1×106 細胞/ウエルの細胞濃度で培養した。ウエルからの上清を、SR344に結合するそれらの能力について(R344認識アッセイと称する第一次スクリーニング)、及びSR344とIL−6Rとの結合を阻害するそれらの能力について(1L−6/s1L6R結合阻害アッセイ(RBIA)による)スクリーニングした。第一次スクリーニングが240個の陽性ウエルをもたらし、そして第二次スクリーニングが36個の陽性ウエルをもたらした。
【0214】
上記のSR344認識アッセイは次の様にして行った。ヤギの抗マウスIg(Cappel)(1μg/ml)によりコートされたプレート(MaxiSorp,Nunc)を1%BSAによりブロックし、そして100μl/ウエルのハイブリドーマ培養上清をそれに添加し、次に室温にて1時間インキュベートした。プレートを洗浄した後、20ng/mlのSR344をウエルに加え、そして室温にて1時間インキュベーションを行った。上清に由来する固定化された抗体により捕捉されたSR344の量を、ラビット抗SR344IgG(#2,5μg/ml)、ヤギの抗ラビットIgG−アルカリホスファターゼ(A/P)(1:3000,Tago)及び基質(1mg/ml,Sigma−104)の添加、並びにそれに続く405−600nmでの吸光度の測定により定量した。
【0215】
前記のRBIAは次の様にして行った。MT18抗体でコートしたプレートを100ng/mlのSR344(100μl/ウエル)で満たし、そして室温にて1時間インキュベーョンを行った。プレートを洗浄した後、50μl/ウエルのハイブリドーマ培養上清及び50μl/ウエルのビオチン−IL−6結合体(20ng/ml)をそれぞれのウエルに同時に加え、そしてウエルを室温にて1時間インキュベートした。ストレプトアビジン−A/P(1:7000,PIERCE)及び対応する基質(Sigma−104)を添加し、405−600nmでの吸光度を測定することにより、SR344に結合したビオチン−IL−6の量を測定した。
【0216】
最後に、限界希釈法を2回反復することにより陽性クローンを純化し、そしてSR344とIL−6との結合を阻害する3個のハイブリドーマクローン、すなわちAUK12−20,AUK146−15及びAUK64−7;並びにSR344とIL−6との結合を阻害しないハイブリドーマクローンAUK181−6を得た。
【0217】
【発明の効果】
本発明はヒトIL−6Rに対する再構成ヒト抗体を提供し、この抗体においてはヒト抗体のV領域のCDRがヒトIL−6Rに対するマウスモノクローナル抗体のCDRにより置き換えられている。この再構成ヒト抗体の大部分がヒト抗体に由来し、そしてCDRは抗原性が低いから、本発明の再構成ヒト抗体はヒトに対する抗原性が低く、そしてそれ故に療法用として期待される。
【0218】
【表12】
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【0219】
【配列表】
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【0220】
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【0332】
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【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の抗体ペプチドの発現のために有用な、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)プロモーター/エンハンサー系を含んで成る発現ベクターを示す。
【図2】図2は、ヒトIL−6Rに結合する本発明のキメラ抗体AUK12−20の能力の確認のためのELISAの結果を示すグラフである。
【図3】図3は、ヒトIL−6RへのヒトIL−6の結合を阻害する本発明のキメラ抗体AUK12−20の能力の確認のためのELISAの結果を示すグラフである。
【図4】図4は、ヒトIL−6Rへの本発明のキメラ抗体PM1a及びPM1bの結合についてのELISAの結果を示すグラフである。
【図5】図5は、ヒトIL−6RへのヒトIL−6の結合を阻害する本発明のキメラ抗体PM1a及びPM1bの能力を試験するELISAの結果を示すグラフである。
【図6】図6は、再構成ヒトPM−1抗体H鎖V領域の第一バージョン(バージョン「a」)の作製のダイアグラムである。
【図7】図7は、再構成ヒトPM−1抗体L鎖V領域の第一バージョン(バージョン「a」)の作製のダイアグラムである。
【図8】図8は、H鎖の発現のために有用な、ヒト・エロンゲーション・ファクター1α(HEF−1α)プロモーター/エンハンサーを含んで成る発現プラスミドHEF−12h−gγ1の作製の過程を示す。
【図9】図9は、L鎖の発現のために有用な、HEF−1αプロモーター/エンハンサー系を含んで成る発現プラスミドHEF−12k−gkの作製の過程を示す。
【図10】図10は、H鎖の発現のために有用な、増幅のための欠陥SV40プロモーター/エンハンサー配列に連結されたジヒドロフォレートレダクターゼ(dhfr)及びHCMVプロモーター/エンハンサーを含んで成る発現プラスミドDHFR−PMh−gγ1の作製の過程を示す。
【図11】図11は、H鎖の発現のために有用な、増幅のための欠陥SV40−プロモーター/エンハンサー配列に連結されたdhfr遺伝子及びEF1αプロモーター/エンハンサーを含んで成る発現プラスミドDHFR−ΔE−RVh−PM1−fの作製の過程を示す。
【図12】図12は、ヒトIL−6Rへの結合についての再構成ヒトPM−1抗体L鎖V領域のバージョン「a」及び「b」の能力を示すグラフである。
【図13】図13は、ヒトIL−6Rへの結合についての再構成ヒトPM−1抗体H鎖V領域のバージョン「f」+再構成ヒトPM−1抗体L鎖V領域バージョン「a」の能力を示すグラフである。
【図14】図14は、ヒトIL−6RへのIL−6の結合を阻害する再構成ヒトPM−1抗体H鎖V領域のバージョン「f」+再構成ヒトPM−1抗体L鎖V領域バージョン「a」の能力を示すグラフである。
【図15】図15は、それぞれL鎖及びH鎖の発現のために有用な、ヒトEFI−αプロモーター/エンハンサーを含んで成る発現プラスミドHEF−VL −gk及びHEF−VH −gγ1を示す。
【図16】図16は、再構成ヒトAUK12−20抗体L鎖V領域バージョン「a」をコードするDNAの作製の過程を示す。
【図17】図17は、ヒトIL−6Rに結合する再構成ヒトAUK12−20抗体L鎖V領域の能力の確認のためのELISAの結果を示すグラフである。図中、標準AUK12−20(キメラ)はキメラAUK12−20抗体をCHO細胞により大量に製造して精製したものについての結果を示す。
【図18】図18は、ヒトIL−6Rに結合する再構成ヒトAUK12−20抗体(L鎖バージョン「a」+H鎖バージョン「b」)の能力についてのELISAの結果を示すグラフである。
【図19】図19は、ヒトIL−6Rに結合する再構成ヒトAUK12−20抗体(L鎖バージョン「a」+H鎖バージョン「d」)の能力についてのELISAの結果を示すグラフである。
【図20】図20は、再構成ヒトAUK12−20抗体H鎖V領域の化学合成の過程を示す。
【図21】図21は、ヒトIL−6RへのIL−6の結合を阻害する再構成ヒトAUK12−20抗体(L鎖バージョン「a」+H鎖バージョン「a」)の能力についてのELISAの結果を示すグラフである。
【図22】図22は、ヒトIL−6RへのIL−6の結合を阻害する再構成ヒトAUK12−20抗体(L鎖バージョン「a」+H鎖バージョン「b」)の能力についてのELISAの結果を示すグラフである。
【図23】図23は、ヒトIL−6RへのIL−6の結合を阻害する再構成ヒトAUK12−20抗体(L鎖バージョン「a」+H鎖バージョン「c」)の能力についてのELISAの結果を示すグラフである。
【図24】図24は、ヒトIL−6RへのIL−6の結合を阻害する再構成ヒトAUK12−20抗体(L鎖バージョン「a」+H鎖バージョン「d」)の能力についてのELISAの結果を示すグラフである。

Claims (3)

  1. 配列番号:56に示すアミノ酸番号1からアミノ酸番号119までのアミノ酸配列を有するH鎖V領域を含んでなるH鎖と、配列番号:57に示すアミノ酸番号1から107までのアミノ酸配列を有するL鎖V領域を含んでなるL鎖とから構成される、ヒトIL−6レセプターに対する再構成ヒト抗体を含んで成る、IL−6に起因する疾患の治療又は予防用医薬組成物。
  2. 抗腫瘍剤である、請求項1に記載の医薬組成物。
  3. 抗骨髄腫剤である、請求項2に記載の医薬組成物。
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