JPWO2004004031A1 - リチウム二次電池用負極及びリチウム二次電池 - Google Patents
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Abstract
Description
このようなリチウム二次電池用負極として、平均粗さ0.03μm以上の集電体上にケイ素を含む活物質を結着剤により付着させたものが提案されている(特開2000−12088号)。
しかしながら、ケイ素を含む活物質は、リチウムを吸蔵・放出する際に体積が膨張・収縮するため、充放電に伴い活物質が微粉化したり、活物質が集電体から剥離することが知られている。このため、集電性が低下し、充放電サイクル特性が悪くなるという問題があった。
本発明のリチウム二次電池用負極は、ケイ素及び/またはケイ素合金を含む活物質粒子とバインダーとを含む活物質層を導電性金属箔からなる集電体の表面上に配置した負極であり、バインダーが、引張強さ50N/mm2以上、破断伸び10%以上、歪みエネルギー密度2.5×10−3J/mm3以上、及び弾性率10000N/mm2以下の機械的特性を有することを特徴としている。
本発明においては、集電体が、引張強さ80N/mm2以上、比例限度30N/mm2以上、破断伸び1.0%以上、及び弾性伸び限度0.03%以上の機械的特性を有していることが好ましい。
ここで弾性伸び限度とは、比例限度における歪みである。
本発明においては、負極の作製が完了した時点において、集電体及びバインダーが、それぞれ上記機械的特性を有している。集電体及びバインダーが上記機械的特性を有することにより、リチウムの吸蔵・放出に伴い、活物質層の体積が膨張・収縮しても、活物質層が集電体から剥離するのを抑制することができ、電極内における集電性の低下を抑制することができる。従って、充放電サイクル特性を向上させることができる。
本発明の集電体は、上記機械的特性を有するものであるので、集電体に大きな力がかかっても、これを弾性変形の範囲内で受け入れることができる。このため、活物質層の体積の膨張・収縮による大きな力を集電体が受けても、集電体にしわなどの変形が生じるのを抑制することができる。集電体にしわなどの変形が生じると、これにより活物質層が集電体から剥離し易くなる。本発明においては、集電体にしわなどの変形が生じにくいので、集電体からの活物質層の剥離を抑制することができる。
また、本発明におけるバインダーは、上記機械的物性を有するものであるので、活物質粒子の体積の膨張・収縮により、バインダーに大きな力が働いても、これを弾性変形の範囲内で受け入れることができる。このため、充放電反応に伴い活物質粒子の体積が膨張・収縮しても、これによってバインダーが破壊されるのを防止することができる。このため、活物質粒子間の接触抵抗の増加が生じず、また集電体からの活物質層の剥離を抑制することができる。従って、電極内の集電性の低下を抑制することができ、充放電サイクル特性を高めることができる。
集電体及びバインダーの上記機械的特性は、25℃において測定した時の値である。また、上記機械的特性は、例えば、インストロン社製のインストロン型5566万能試験機を用いて測定することができる。
バインダーの引張強さは、さらに好ましくは100N/mm2以上であり、特に好ましくは500N/mm2以上である。また、破断伸びは、さらに好ましくは50%以上であり、特に好ましくは100%以上である。また、歪みエネルギー密度は、さらに好ましくは5×10−3J/mm3以上である。引張強さ及び破断伸びは、引張試験において、サンプルが破断した時の応力及び伸びから求めることができる。従って、引張強さ及び破断伸びが大きいほど、応力を緩和する能力が高い。歪みエネルギー密度は、引張試験において応力−歪み曲線の下部の面積により求められる。従って、歪みエネルギー密度が大きいほど、バインダーは破壊されるまでに、より大きなエネルギーを吸収することができる。
また本発明において、バインダーの弾性率は、上述のように、10000N/mm2以下であるが、さらに好ましくは7000N/mm2以下である。バインダーの弾性率が大き過ぎると、バインダーが、活物質粒子の体積の膨張・収縮によって起きる応力を緩和することが難しくなり、電極内の集電性の低下が生じる。
本発明における集電体は、導電性金属箔からなるものであるので、熱処理によりその機械的特性を変化させることができる。活物質層を集電体の表面上に配置した後、活物質層中の活物質粒子間及び活物質粒子と集電体を焼結するための焼結処理を施して負極を製造する場合には、この焼結処理の熱履歴により集電体に上記機械的特性を付与してもよい。すなわち、集電体が上記機械的特性を有するように焼結処理を施してもよい。なお、焼結処理後の集電体の機械的特性は、集電体の上に活物質層を設けた負極の状態では測定が困難であるので、焼結処理と同様の熱処理を集電体に施し、該集電体の機械的特性を測定することにより求めることができる。
また、本発明においてバインダーの機械的特性は、バインダーのサンプルフィルムを作製し、このフィルムについて機械的特性を測定することにより求めることができる。上述のように焼結処理して負極を製造する場合、焼結処理と同様の熱処理をフィルムに施し、熱処理後のフィルムの機械的特性を測定することにより、焼結処理後のバインダーの機械的特性を求めることができる。
また、負極を製造する際に焼結処理を施さない場合や、焼結処理のみでは所望の機械的特性を集電体に付与することができない場合には、活物質層を集電体の表面上に配置する前に、集電体に熱処理を施し、この熱処理によって集電体に所望の機械的特性を付与してもよい。この場合、熱処理した集電体について測定試験を行うことにより、集電体の機械的特性を直接測定することができる。
本発明において、上記焼結処理を行う場合の処理温度は、200〜500℃であることが好ましく、さらに好ましくは300〜450℃である。また、本発明において、集電体に対し上記熱処理を施す場合の処理温度は、500℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは400℃以下である。上記焼結処理及び上記熱処理は、いずれも非酸化性雰囲気下で行うことが好ましい。非酸化性雰囲気としては、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気、窒素ガス雰囲気、及び真空雰囲気が挙げられる。また、水素雰囲気などの還元性雰囲気であってもよい。これらの中でも、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気が好ましく用いられる。焼結処理の方法としては、放電プラズマ焼結法及びホットプレス法を用いてもよい。
本発明において、負極を焼結処理する場合、焼結処理により、集電体中の元素が活物質層の活物質粒子中に拡散してもよい。特に、集電体表面に銅元素が含まれる場合、銅元素が活物質粒子中に拡散することにより、集電体と活物質層との密着性を高めることができる。
本発明における集電体は、上記機械的特性を有するものであればよい。従って、上記焼結処理や上記熱処理を施さずとも、上記機械的特性を有するものは、上記焼結処理や上記熱処理を施すことなく用いることができる。
本発明において、活物質層の厚みXは、集電体の厚みY及びその表面粗さRaすなわち算術平均粗さRaと、5Y≧X、及び250Ra≧Xの関係を有することが好ましい。このような関係を満足することにより、集電体におけるしわなどの変形の発生を抑制し、集電体からの活物質層の剥離をさらに抑制することができる。
活物質層の厚みXは、特に限定されるものではないが、1000μm以下が好ましく、さらに好ましくは10〜100μmである。
また、本発明においては、活物質層が配置されている集電体の表面の表面粗さRaが、0.2μm以上であることが好ましい。このような表面粗さRaを有する集電体を用いることにより、活物質層と集電体との接触面積を大きくすることができ、活物質層と集電体との密着性を向上させることができる。加えて、集電体の表面凹凸部分にバインダーが入り込むことにより、バインダーと集電体間にアンカー効果が発現するため、さらに高い密着性が得られる。このため、集電体からの活物質層の剥離がさらに抑制される。集電体の両面に活物質層を配置する場合には、集電体の両面の表面粗さRaが0.2μm以上であることが好ましい。
表面粗さRaは、日本工業規格(JIS B 0601−1994)に定められている。表面粗さRaは、例えば、表面粗さ計により測定することができる。
本発明においては、表面に粗面化処理が施された集電体を用いてもよい。このような粗面化処理としては、めっき法、気相成長法、エッチング法、及び研磨法などが挙げられる。めっき法及び気相成長法は、金属箔集電体の上に、表面に凹凸を有する層を形成することにより表面を粗面化する方法である。めっき法としては、電解めっき法及び無電解めっき法が挙げられる。また、気相成長法としては、スパッタリング法、CVD法、蒸着法などが挙げられる。エッチング法としては物理的エッチングや化学的エッチングによる方法が挙げられる。また、研磨法としては、サンドペーパーによる研磨やブラスト法による研磨などが挙げられる。
本発明において用いる集電体は、導電性金属箔からなるものであれば特に限定されるものではない。集電体の具体例としては、銅、ニッケル、鉄、チタン、コバルト等の金属またはこれらの組み合わせからなる合金の金属箔が挙げられる。特に、活物質粒子中に拡散し易い金属元素を含有するものが好ましく用いられる。このようなものとして、銅元素を含む金属箔、特に銅箔及び銅合金箔が挙げられる。銅元素は、熱処理によってケイ素中に拡散し易いため、焼結処理を負極に施す場合、集電体と活物質層との密着性の向上が期待できる。
また、集電体表面に、銅元素を含む層が設けられた金属箔を集電体として用いてもよい。すなわち、銅以外の金属元素からなる金属箔の表面に、銅または銅合金層を形成したものを用いることができる。このような金属箔としては、電解めっき法により銅や銅合金のめっき膜を金属箔上に形成したものが挙げられる。具体的には、ニッケル箔の表面に銅または銅合金のめっき膜を形成したものが挙げられる。
本発明において、集電体の厚みは特に限定されるものではないが、10〜100μmの範囲であることが好ましい。
本発明において、集電体の表面粗さRaの上限は、特に限定されるものではないが、集電体の厚みが10〜100μmの範囲であることが好ましいので、集電体の表面粗さRaの上限は実質的には10μm以下であることが好ましい。
本発明におけるバインダーは、上述のように、負極作製完了後において、上記機械的特性を有するものである。従って、上記焼結処理が負極に施される場合は、焼結処理後において上記機械的特性を有していなければならない。従って、焼結処理が行われる場合、耐熱性のバインダーが好ましく用いられる。このようなバインダーとしては、ポリイミドが好ましく用いられる。ポリイミドとしては、熱可塑性ポリイミド、熱硬化性ポリイミドが挙げられる。ポリイミドは、ポリアミド酸を熱処理することによっても得ることができる。
ポリアミド酸の熱処理により得られるポリイミドは、ポリアミド酸が熱処理により脱水縮合してポリイミドとなるものである。ポリイミドのイミド化率は80%以上のものが好ましい。イミド化率とは、ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)に対する生成したポリイミドのモル%である。イミド化率80%以上のものは、例えば、ポリアミド酸のN−メチルピロリドン(NMP)溶液を100〜400℃の温度で1時間以上熱処理することにより得ることができる。例えば、350℃で熱処理する場合、熱処理時間が約1時間でイミド化率80%となり、約3時間でイミド化率は100%となる。
ポリイミドは、数平均分子量が5000〜1000000であることが好ましく、さらに好ましくは10000〜100000である。数平均分子量が低いと、機械的特性が低下する傾向にある。また、数平均分子量が高いと、粘度が高くなり、取扱いが困難になる場合がある。
本発明においては、活物質層を集電体の表面上に配置した後、バインダーによる集電体との密着性を向上させるため、バインダーのガラス転移温度よりも高い温度で熱処理が施されることが好ましい。焼結処理して負極が作製される場合、この焼結処理を上記熱処理とすることができる。従って、焼結処理の温度は、バインダーのガラス転移温度よりも高い温度であることが好ましい。バインダーのガラス転移温度よりも高い温度で熱処理が施されることにより、活物質層中においてバインダーが軟化し、集電体表面の凹凸部分にバインダーを入り込ませることができる。これにより、バインダーと集電体の間にアンカー効果が発現するため、活物質層と集電体の間においてさらに高い密着性が得られる。なお焼結処理の温度は、バインダーの分解温度よりも低い温度であることが好ましい。
以上のことから、バインダーのガラス転移温度は、上記焼結処理または上記熱処理が施される場合、上記焼結処理及び上記熱処理の温度よりも低い温度であることが好ましい。一般に、バインダーのガラス転移温度は、450℃以下であることが好ましく、350℃以下であることがさらに好ましい。バインダーが熱可塑性である場合には、ガラス転移温度より高い温度で熱処理することにより、集電体にバインダーを熱融着させることができ、接着性を大きく向上させることができる。
バインダーの線膨張係数は、0.1×10−5〜30×10−5℃−1であることが好ましく、さらに好ましくは0.8×10−5〜10×10− 5℃−1であり、特に好ましくは1.0×10−5〜3.5×10−5℃−1である。バインダーの線膨張係数が、集電体の線膨張係数と大きく異なる場合、焼結処理や熱処理の際、バインダーと集電体との接触界面において歪みが生じ、応力が発生するため、接着性が低下する傾向にある。例えば、集電体として銅箔を用いる場合、銅の線膨張係数は1.6×10−5℃−1であるため、これに近い線膨張係数を有するバインダーを用いることが好ましい。
本発明において、活物質層中のバインダーの量は、活物質層の総重量の5重量%以上であることが好ましい。また、バインダーの占める体積は、活物質層の総体積の5%以上であることが好ましい。活物質層におけるバインダー量が少な過ぎると、バインダーによる電極内の密着性が不十分となる場合がある。また、活物質層中のバインダー量が多過ぎると、電極内の抵抗が増加するため、初期の充電が困難になる場合がある。従って、活物質層中のバインダー量は総重量の50重量%以下であることが好ましく、バインダーの占める体積は、活物質層の総体積の50%以下であることが好ましい。
本発明においては、活物質層に導電性粉末を混合することができる。導電性粉末を添加することにより、活物質粒子の周囲に導電性粉末による導電性ネットワークが形成されるので、電極内の集電性をさらに向上させることができる。導電性粉末としては、上記導電性金属箔と同様の材質のものを好ましく用いることができる。具体的には、銅、ニッケル、鉄、チタン、コバルト等の金属またはこれらの組み合わせからなる合金または混合物である。特に、金属粉末としては銅粉末が好ましく用いられる。また、導電性カーボン粉末も好ましく用いることができる。
導電性粉末の添加量は、活物質粒子との合計重量の50重量%以下であることが好ましい。導電性粉末の添加量が多過ぎると活物質粒子の混合割合が相対的に少なくなるので、電極の充放電容量が小さくなる。
本発明において用いる活物質粒子としては、ケイ素及び/またはケイ素合金の粒子が挙げられる。ケイ素合金としては、ケイ素と他の1種以上の元素との固溶体、ケイ素と他の1種以上の元素との金属間化合物、ケイ素と他の1種以上の元素との共晶合金などが挙げられる。合金の作製方法としては、アーク溶解法、液体急冷法、メカニカルアロイング法、スパッタリング法、化学気相成長法、焼成法などが挙げられる。特に、液体急冷法としては、単ロール急冷法、双ロール急冷法、及びガスアトマイズ法、水アトマイズ法、ディスクアトマイズ法などの各種アトマイズ法が挙げられる。
また、本発明において用いる活物質粒子としては、ケイ素及び/またはケイ素合金の粒子表面を金属等で被覆したものを用いてもよい。被覆方法としては、無電解めっき法、電解めっき法、化学還元法、蒸着法、スパッタリング法、化学気相成長法などが挙げられる。粒子表面を被覆する金属としては、集電体として用いる導電性金属箔と同じ金属であることが好ましい。導電性金属箔と同じ金属を被覆することにより、焼結の際の集電体との結合性が大きく向上し、さらに優れた充放電サイクル特性を得ることができる。
本発明において用いる活物質粒子には、リチウムと合金化する材料からなる粒子が含まれていてもよい。リチウムを合金化する材料としては、ゲルマニウム、錫、鉛、亜鉛、マグネシウム、ナトリウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム及びこれらの合金などが挙げられる。
本発明において、活物質粒子の平均粒径は、特に限定されないが、100μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは50μm以下、最も好ましくは10μm以下である。また、本発明において、活物質粒子に添加して用いる導電性粉末の平均粒径も、特に限定されるものではないが、100μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは50μm以下、最も好ましくは10μm以下である。
本発明においては、集電体の上に活物質層を形成した後、活物質層を集電体とともに圧延することが好ましい。上記焼結処理または上記熱処理を負極に対して施す場合には、この焼結処理または熱処理の前に圧延することが好ましい。このような圧延により、活物質層における充填密度を高めることができ、粒子間の密着性及び粒子と集電体との密着性を高めることができる。このため、さらに良好な充放電特性を得ることができる。
本発明のリチウム二次電池は、上記本発明の負極と、正極材料を含む正極と、非水電解質とからなることを特徴としている。
本発明のリチウム二次電池に用いる非水電解質の溶媒は、特に限定されるものではないが、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどの環状カーボネートと、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの鎖状カーボネートとの混合溶媒が例示される。また、上記環状カーボネートと1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタンなどのエーテル系溶媒との混合溶媒も例示される。また、非水電解質の溶質としては、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3、LiAs6、LiClO4、Li2B10Cl10、Li2B12Cl12など及びそれらの混合物が例示される。特に、LiXFy(式中、XはP、As、Sb、B、Bi、Al、Ga、またはInであり、XがP、AsまたはSbのときyは6であり、XがB、Bi、Al、Ga、またはInのときyは4である)と、リチウムペルフルオロアルキルスルホン酸イミドLiN(CmF2m+1SO2)(CnF2n+1SO2)(式中、m及びnはそれぞれ独立して1〜4の整数である)またはリチウムペルフルオロアルキルスルホン酸メチドLiC(CpF2p+1SO2)(CqF2q+1SO2)(CrF2 r+1SO2)(式中、p、q及びrはそれぞれ独立して1〜4の整数である)との混合溶質が好ましく用いられる。これらの中でも、LiPF6とLiN(C2F5SO2)2との混合溶質が特に好ましく用いられる。さらに電解質として、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリルなどのポリマー電解質に電解液を含浸したゲル状ポリマー電解質や、LiI、Li3Nなどの無機固体電解質が例示される。本発明のリチウム二次電池の電解質は、イオン導電性を発現させる溶質としてのリチウム化合物とこれを溶解・保持する溶媒が電池の充電時や放電時あるいは保存時の電圧で分解しない限り、制約なく用いることができる。
本発明のリチウム二次電池の正極材料としては、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、LiMnO2、LiCo0.5Ni0.5O2、LiNi0.7Co0.2Mn0.1O2などのリチウム含有遷移金属酸化物や、MnO2などのリチウムを含有していない金属酸化物が例示される。また、この他にも、リチウムを電気化学的に挿入、脱離する物質であれば、制限なく用いることができる。
(実験1)
〔負極の作製〕
活物質粒子としての平均粒径3μmのケイ素粉末(純度99.9%)80.2重量部を、バインダーとしてのポリアミド酸(バインダーα1)19.8重量部を含む8.6重量%のN−メチルピロリドン溶液に混合し、負極合剤スラリーとした。
この負極合剤スラリーを、集電体である表面粗さRaが0.5μmである電解銅箔(厚み35μm)(集電体a1)の片面(粗面)に塗布し、乾燥した後、これを圧延した。得られたものを、直径20mmの円板状に切り抜き、これをアルゴン雰囲気下で400℃、30時間熱処理し、焼結して負極とした。焼結体の厚み(集電体を含む)は50μmであった。従って、活物質層の厚みは15μmであり、活物質層厚み/銅箔表面粗さは30であり、活物質層厚み/銅箔厚みは0.43であった。
また、この負極においては、熱処理によってポリアミド酸からポリイミドが生成され、活物質層中におけるポリイミドの重量比率は18.2重量%となっていた。ポリイミドの密度は1.1g/cm3であり、ポリイミドの占める体積は、活物質層の総体積の31.8%となっていた。
電解銅箔(集電体a1)のみを上記の電極作製時と同条件(アルゴン雰囲気下で400℃、30時間)で熱処理したものを作製し、引張強さ、比例限度、破断伸び、及び弾性伸び限度を測定した。表1に、それらの値を示す。なお、厚みは、マイクロメーターで測定した値であり、引張強さ、比例限度、破断伸び、及び弾性伸び限度は、インストロン社製のインストロン型5566万能試験機を用いて測定した値である。また、表面粗さRaは、表面粗さ計により測定した値である。
ポリアミド酸(バインダーα1)のみを上記の電極作製時と同条件で熱処理した試料フィルムを作製し、引張強さ、破断伸び、歪みエネルギー密度、弾性率、ガラス転移温度、及び線膨張係数を測定した。表2に、それらの値を示す。なお、引張強さ、破断伸び、歪みエネルギー密度、及び弾性率は、引張試験機を用いて25℃において測定した値であり、ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した値であり、線膨張係数は、熱機械分析装置(TMA)を用いて50〜400℃において、5℃/分で測定した値である。熱分解開始温度は、熱重量測定(TG)において、バインダーの重量が減少し始めた温度と同じとした。
〔正極の作製〕
出発原料として、Li2CO3及びCoCO3を用いて、Li:Coの原子比が1:1となるように秤量して乳鉢で混合し、これを直径17mmの金型でプレスし、加圧成形した後、空気中において、800℃、24時間焼成し、LiCoO2の焼成体を得た。これを乳鉢で粉砕し、平均粒径20μmに調製した。
得られたLiCoO2粉末90重量部と、導電剤として人工黒鉛粉末5重量部を、結着剤としてポリフッ化ビニリデン5重量部を含む5重量%のN−メチルピロリドン溶液に混合し、正極合剤スラリーとした。
この正極合剤スラリーを、集電体であるアルミニウム箔の上に塗布し、乾燥した後圧延した。得られたものを直径20mmの円板状に切り抜き、正極とした。
〔電解液の作製〕
電解液として、エチレンカーボネートとジエチレンカーボネートとの等体積混合溶媒に、LiPF6を1モル/リットル溶解したものを作製した。
〔電池の作製〕
上記正極、負極、及び電解液を用いて、扁平型のリチウム二次電池A1を作製した。
図1は、作製したリチウム二次電池の断面模式図であり、正極1、負極2、セパレーター3、正極缶4、負極缶5、正極集電体6、負極集電体7及びポリプロピレン製の絶縁パッキング8などからなる。
正極1及び負極2は、セパレーター3を介して対向している。これらは正極缶4及び負極缶5が形成する電池ケース内に収納されている。正極1は、正極集電体6を介して正極缶4に接続され、負極2は負極集電体7を介して負極缶5に接続され、二次電池としての充電及び放電が可能な構造となっている。
(実験2)
実験1において、表面粗さRaが0.5μmである電解銅箔(集電体a1)の代わりに、厚さ33μmの圧延銅箔(表面粗さRa:0.1μm)に電解銅めっきによる粗面化処理を施し、表面粗さRaを0.5μmとしたもの(集電体b1)を用いた以外は実験1と同様にして、電池B1を作製した。粗面化処理後の集電体b1の厚みは35μmであった。また、実験1において、表面粗さRaが0.5μmである電解銅箔(集電体a1)の代わりに、厚さ33μmの圧延銅合金(Cu−0.03重量%Zr)箔(表面粗さRa:0.1μm)に電解銅めっきによる粗面化処理を施し、表面粗さRaを0.5μmとしたもの(集電体a2)を用いた以外は実験1と同様にして、電池A2を作製した。粗面化処理後の集電体a2の厚みは35μmであった。電極作製時と同条件(アルゴン雰囲気下で400℃、30時間)で熱処理した集電体b1及びa2の厚み、引張強さ、比例限度、破断伸び、及び弾性伸び限度を測定した。表3に、それらの値を示す。
(実験3)
実験1において、表面粗さRaが0.5μmである電解銅箔(集電体a1)の代わりに、集電体a1と同材料からなり、厚みが35μmであり、表面粗さRaが0.2μmの電解銅箔(集電体a3)及び0.17μmの電解銅箔(集電体a4)を用いた以外は実験1と同様にして、電池A3及びA4を作製した。
実験1において、集電体として集電体a1の代わりに、集電体a1と同材料からなり、集電体の厚みが18μmであり、表面粗さRaが0.5μmの電解銅箔(集電体a5)及び0.2μmの電解銅箔(集電体a6)を用いた以外は実験1と同様にして、電池A5及びA6を作製した。
実験1において、集電体として集電体a4を用い、活物質充填量を変え、活物質層の厚みを95μmとしたこと以外は実験1と同様にして、電池A7を作製した。
実験1において、集電体として集電体a5を用い、活物質充填量を変え、活物質層の厚みを55μmとしたこと以外は実験1と同様にして、電池A8を作製した。
また、電極作製時と同条件(アルゴン雰囲気下で400℃、30時間)で熱処理した集電体a3〜a6の厚み、引張強さ、比例限度、破断伸び、及び弾性伸び限度を測定した。表4に、それらの値を示す。
〔充放電サイクル特性の評価〕
上記の電池A1〜A8及びB1について、充放電サイクル特性を評価した。各電池を、25℃において、電流値1mAで4.2Vまで充電した後、電流値1mAで2.75Vまで放電し、これを1サイクルの充放電とした。1サイクル目の放電容量の80%に達するまでのサイクル数を測定し、サイクル寿命とした。結果を表5に示す。なお、各電池のサイクル寿命は、電池A1のサイクル寿命を100とした指数である。
また、充放電サイクル試験後の負極の厚みをマイクロメーターで測定し、充放電サイクル試験前後の負極の厚みの変化を求めた。なお、負極の厚みは、負極内の異なる5点での測定値の平均値とした。
表3から明らかなように、集電体b1は、引張強さ、比例限度、及び弾性伸び限度において、本発明の範囲外のものである。この集電体b1を用いた電池B1においては、表5に示すように、本発明に従う電池A1〜A8に比べ、試験前後の電極厚み変化が大きくなっており、集電体にしわが発生していることがわかる。また、電池B1は、本発明に従う電池A1〜A8に比べ、サイクル寿命特性が低くなっている。従って、本発明に規定する機械的特性を有する集電体を用いることにより、リチウムの吸蔵・放出に伴う活物質粒子の体積の膨張・収縮により生じる大きな力を集電体が受けても、集電体にしわなどの変形を生じることがない。さらには、集電体の変形による活物質層の変形も引き起こされないため、活物質層のバインダーが破壊されず、活物質層内の集電性の低下による充放電サイクル特性の低下が抑制されることがわかる。
また、電池A7においては、集電体の厚みYに対する活物質層の厚みXの比X/Yが5以上になっているが、試験前後の電極の厚み変化が電池A1〜A6に比べ大きくなっている。また、電池A8においては、集電体の表面粗さRaに対する活物質層の厚みXの比X/Raが250以上になっているが、その試験前後の電極の厚み変化は、電池A1〜A6に比べ大きくなっており、集電体にしわが発生していることがわかる。また、このため充放電サイクル特性が若干悪くなっている。
(実験4)
実験1において、バインダーとして、バインダーα1の代わりに、バインダーβ1(ポリアミド酸)を用いた以外は実験1と同様にして、電池B2を作製した。電池B2の負極においては、熱処理によってポリアミド酸からポリイミドが生成され、活物質層中におけるポリイミドの重量比率が18.2重量%となっていた。
また、実験1において、負極合剤スラリーとして、活物質粒子としての平均粒径3μmのケイ素粉末(純度99.9%)81.8重量部を、バインダーとしての熱可塑性ポリイミド(バインダーα2)または熱可塑性ポリイミド(バインダーα3)18.2重量部を含む8.6重量%のN−メチルピロリドン溶液に混合したものを用いた以外は実験1と同様にして、電池A9、A10を作製した。電池B2、A9、及びA10の負極において、ポリイミドの密度は1.1g/cm3であり、ポリイミドの占める体積は、ポリイミドを含む活物質層の総体積の31.8%となっていた。
バインダーβ1、α2、及びα3に対してそれぞれ、バインダーのみを上記の電極作製時と同条件で熱処理した試料フィルムを作製し、バインダーα1の場合と同様の方法で、引張強さ、破断伸び、歪みエネルギー密度、弾性率、ガラス転移温度、線膨張係数及び熱分解開始温度を測定した。結果を表6に示す。
〔充放電サイクル特性の評価〕
上記電池A9及びA10並びにB2について、充放電サイクル特性を評価した。各電池を、25℃において、電流値1mAで4.2Vまで充電した後、電流値1mAで2.75Vまで放電し、これを1サイクルの充放電とした。1サイクル目の放電容量の80%に達するまでのサイクル数を測定し、サイクル寿命とした。結果を表7に示す。なお、各電池のサイクル寿命は、実験1における電池A1のサイクル寿命を100とした指数である。
表6に示すように、バインダーβ1は、その弾性率が本発明の範囲外となっている。このバインダーβ1を用いた電池B2は、表7に示すように、電池A1、A9及びA10に比べ、サイクル寿命が低くなっており、充放電サイクル特性に劣ることがわかる。従って、本発明に従いバインダーが本発明に規定する機械的特性を有することにより、活物質粒子の体積の膨張・収縮によりバインダーが破壊されることによる活物質粒子間の接触抵抗の増加や、活物質層の集電体からの剥離が抑制され、電極内の集電性の低下が抑制され、充放電サイクルが向上することがわかる。
(実験5)
ここでは、電極作製時の焼結処理の温度がサイクル特性に与える影響について検討した。
実験1において、負極合剤スラリーとして、活物質粒子としての平均粒径3μmのケイ素粉末(純度99.9%)81.8重量部を、バインダーとしてのガラス転移温度295℃の熱可塑性ポリイミド(バインダーα2)18.2重量部を含む8.6重量%のN−メチルピロリドン溶液に混合したものを用い、電極の熱処理を230℃、30時間で行ったこと以外は実験1と同様にして、電池A11を作製した。また、実験1において、電極の熱処理を700℃、10時間で行ったこと以外は実験1と同様にして、電池B3を作製した。
これらの電池について、上記と同様にサイクル特性を評価した。なお、サイクル寿命は実験1における電池A1のサイクル寿命を100とした指数である。表8には、電池A1及びA9のサイクル寿命も併せて示す。
表8に示す結果から明らかなように、バインダーのガラス転移温度より高い温度で焼結処理した電池A1及びA9は、バインダーのガラス転移温度より低い温度で焼結処理した電池A11に比べ、充放電サイクル特性が優れていることがわかる。これは、ガラス転移温度より高い温度で熱処理を行ったことにより、バインダーが集電体に熱融着し、バインダーと集電体との接着性が向上し、活物質層の集電体からの剥離が抑制されたためであると考えられる。
また、バインダーα1の分解温度500℃より高い700℃で焼結処理した電池B3においては、充放電サイクル特性が著しく低下している。これは、700℃の熱処理によりバインダーが分解し、バインダーによる電極内の密着性が大きく低下して、集電性が低下したためであると考えられる。
バインダーα2について、電池A11の焼結処理と同様の条件で熱処理(230℃、30時間)を行ったものについて、機械的特性を測定し、その結果を表9に示した。なお、バインダーα1を、電池B3の焼結処理と同様の条件で熱処理(700℃、10時間)を行ったものについては、バインダーが分解したので機械的特性を測定することができなかった。
(実験6)
ここでは、活物質層に添加した導電性粉末がサイクル特性に与える影響について検討した。
平均粒径3μmの銀粉をケイ素粉末との合計量の20重量%となるように添加した以外は実験1と同様にして、電池A12を作製した。
この電池について、上記と同様にサイクル特性を評価した。なお、サイクル寿命は電池A1のサイクル寿命を100とした指数である。表10には、電池A1のサイクル寿命も併せて示す。
表10から明らかなように、銀粉を添加した電池A12の方が、導電性粉末無添加の電池A1に比べ、サイクル特性が向上していることがわかる。これは、導電性粉末が、活物質粒子の周りに導電性ネットワークを形成することにより、活物質層内の導電性が向上したためと考えられる。
(実験7)
ここでは、サイクル特性に与えるケイ素粉末粒径の影響について検討した。
実験1において、平均粒径が8μmまたは29μmのケイ素粉末を用いたこと以外は実験1と同様にして、電池A13及びA14を作製した。
これらの電池について、上記と同様にサイクル特性を評価した。なお、サイクル寿命は電池A1のサイクル寿命を100とした指数である。表11には、電池A1のサイクル寿命も併せて示す。
表11から明らかなように、粒径の大きなケイ素粉末を用いることにより、サイクル特性が低下する傾向がある。特に、平均粒径が10μm以下が好ましいことがわかる。
(実験8)
〔負極の作製〕
活物質材料としての平均粒径3μmのケイ素粉末(純度99.9%)81.8重量部を、バインダーとしての熱可塑性ポリイミド(バインダーα4、ガラス転移温度:148℃)18.2重量部を含む8.6重量%のN−メチルピロリドン溶液に混合し、負極合剤スラリーとした。
集電体として、表面粗さRaが0.5μmである電解銅箔(厚み35μm)をアルゴン雰囲気下で400℃、10時間熱処理した集電体a7を作製した。
負極合剤スラリーを、集電体a7の片面(粗面)に塗布し、乾燥した後、これを圧延した。得られたものを、直径20mmの円板状に切り抜いた。これを、バインダーによる集電体との接着性を向上させることを目的として、アルゴン雰囲気下で170℃、20時間熱処理し、負極とした。負極の厚み(集電体を含む)は50μmであった。従って、活物質層の厚みは15μmであり、活物質層厚み/銅箔表面粗さは30であり、活物質層厚み/銅箔厚みは0.43であった。また、ポリイミドの密度は、1.1g/cm3であり、ポリイミドの占める体積は、ポリイミドを含む活物質層の総体積の31.8%となっていた。
表12に、集電体a7にさらに170℃、20時間熱処理を行ったものの厚み、引張強さ、比例限度、破断伸び、弾性伸び限度、及び表面粗さRaの値を示す。
表12に示すように、熱処理後の集電体a7は、本発明に規定する機械的特性を有するものであることがわかる。
(実験9)
実験8において、集電体として、集電体a7の代わりに、集電体a7を作製するのに用いた電解銅箔に400℃10時間の熱処理を行わなかったもの(集電体b2)を用いた以外は実験8と同様にして、電池B5を作製した。表13に、集電体b2にアルゴン雰囲気下で170℃、20時間熱処理を行ったものの厚み、引張強さ、比例限度、破断伸び、弾性伸び限度、及び表面粗さRaの値を示す。
表13に示すように、集電体b2は、破断伸びが本発明の範囲外であることがわかる。
(実験10)
実験8において、集電体として、集電体a7の代わりに、厚さ33μmの圧延銅合金(Cu−0.03重量%Zr)箔(表面粗さRa:0.1μm)に電解銅めっきによる粗面化処理を施し、表面粗さRaを0.5μmとし、アルゴン雰囲気下で400℃、10時間熱処理したもの(集電体a8)を用いた以外は実験8と同様にして、電池A16を作製した。粗面化処理後の集電体a8の厚みは35μmであった。表14に、集電体a8にさらに170℃、20時間熱処理を行ったものの厚み、引張強さ、比例限度、破断伸び、弾性伸び限度、及び表面粗さRaの値を示す。
表14に示すように、集電体a8は、本発明に規定する機械的特性を有することがわかる。
電池B5及び電池A16について、上記と同様にして充放電サイクル特性を測定した。結果を表15に示す。
表15に示すように、本発明の範囲の機械的特性を有しない集電体b2を用いた電池B5は、サイクル特性が低くなっている。従って、本発明に規定する機械的特性を集電体が有することにより、リチウムの吸蔵・放出に伴う活物質粒子の体積の膨張・収縮により生じる大きな応力を集電体が受けても、集電体がこれを緩和することができ、活物質層の集電体からの剥離を抑制することができる。
(実験11)
ここでは、集電体の表面粗さRaがサイクル特性に与える影響について検討した。
実験8において、表面粗さRaが0.5μmである電解銅箔(集電体a7)の代わりに、集電体a7と同材料からなり、表面粗さRaが0.2μmの電解銅箔をアルゴン雰囲気下で400℃、10時間熱処理したもの(集電体a9)または表面粗さRaが0.17μmの電解銅箔をアルゴン雰囲気下で400℃、10時間熱処理したもの(集電体a10)を用いた以外は実験8と同様にして、電池A17及びA18を作製した。表16に、集電体a9またはa10にさらに170℃、20時間熱処理を行ったものの厚み、引張強さ、比例限度、破断伸び、弾性伸び限度、及び表面粗さRaを示す。
表16に示すように、集電体a9及びa10は、いずれも本発明に規定する機械的特性を有するものである。
これらの電池について、上記と同様にサイクル特性を評価した。なお、サイクル寿命は電池A15のサイクル寿命を100とした指数である。表17には、電池A15のサイクル寿命も併せて示す。
表17に示すように、本発明に規定する機械的特性を有する集電体a9及びa10を用いた電池A17及びA18は、良好なサイクル特性を示している。
(実験12)
ここでは、バインダーによる集電体との接着力がサイクル特性に与える影響について検討した。
実験8において、負極合剤スラリー塗布後の電極の熱処理を行わなかったこと以外は実験8と同様にして、電池A19を作製した。また、実験8において、バインダーとして、バインダーα4の代わりに、ガラス転移温度が355℃である熱可塑性ポリイミド(バインダーα5)を用いたこと以外は実験8と同様にして、電池A20を作製した。
ここで、バインダーとしてのポリイミドと集電体との接着力の検討を行った。バインダーα4、α5のそれぞれについて、バインダー18.2重量部を含む8.6重量%のN−メチルピロリドン溶液を集電体a7に塗布、乾燥し、積層体を得た。バインダーα4を用いた積層体については、さらに170℃、20時間熱処理を行った積層体Z1及び熱処理を行わなかった積層体Z2を作製した。バインダーα5を用いた積層体については、さらに170℃、20時間熱処理を行った積層体Z3を作製した。これらの積層体の厚み(集電体を含む)は50μmであり、従って、ポリイミド層の厚みは15μmであった。得られた積層体を用い、JIS C 6481に準拠してピール強度を測定した。これらの値を表18に示す。
表18からも明らかなように、バインダーをガラス転移温度より高い温度で熱処理することにより、銅箔との密着性が大幅に向上していることがわかる。
バインダーα4及びα5について、上記熱処理条件で処理した後の機械的特性を測定し、測定結果を表19に示した。
電池A19及びA20について、上記と同様にしてサイクル特性を評価した。なお、サイクル寿命は電池A15のサイクル寿命を100とした指数である。表20には、電池A15のサイクル寿命も併せて示す。
表20に示すように、バインダーのガラス転移温度より高い温度で電極を熱処理した電池A15は、熱処理しなかった電池A19及びバインダーのガラス転移温度より低い温度で熱処理した電池A20に比べ、充放電サイクル特性が向上していることがわかる。これは、バインダーのガラス転移温度より高い温度で熱処理することにより、バインダーと集電体との接着性が向上し、活物質層の集電体からの剥離が抑制されたためであると考えられる。
(比較実験)
比較として、負極活物質に天然黒鉛を用いた電極において、バインダーの機械的特性がサイクル寿命に与える影響について検討を行った。
実験1において、負極の活物質粒子として、平均粒径18μmの天然黒鉛粉末を用いた以外は実験1と同様にして、電池C1を作製した。また、実験4の電池B2、A9、及びA10の作製において、負極の活物質粒子として、平均粒径18μmの天然黒鉛粉末を用いた以外は同様にして、電池C2、C3、及びC4を作製した。
これらの電池について、上記と同様にサイクル特性を評価した。なお、サイクル寿命は電池C1のサイクル寿命を100とした指数である。結果を表21に示す。
表21から明らかなように、負極活物質として天然黒鉛を用いた場合、バインダーの機械的特性の違いによる差がほとんど認められないことがわかる。これは、天然黒鉛のリチウム吸蔵の際の体積膨張率が、ケイ素と比べて非常に小さいため、バインダーが本発明の機械的特性の条件を満たさない場合であっても、充放電反応時においてバインダーが破壊されず、電極間への集電性が保たれるためであると考えられる。
Claims (22)
- ケイ素及び/またはケイ素合金を含む活物質粒子とバインダーとを含む活物質層を導電性金属箔からなる集電体の表面上に配置したリチウム二次電池用負極であって、
前記バインダーが、引張強さ50N/mm2以上、破断伸び10%以上、歪みエネルギー密度2.5×10−3J/mm3以上、及び弾性率10000N/mm2以下の機械的特性を有することを特徴とするリチウム二次電池用負極。 - ケイ素及び/またはケイ素合金を含む活物質粒子とバインダーとを含む活物質層を導電性金属箔からなる集電体の表面上に配置したリチウム二次電池用負極であって、
前記集電体が、引張強さ80N/mm2以上、比例限度30N/mm2以上、破断伸び1.0%以上、及び弾性伸び限度0.03%以上の機械的特性を有し、かつ前記バインダーが、引張強さ50N/mm2以上、破断伸び10%以上、歪みエネルギー密度2.5×10−3J/mm3以上、及び弾性率10000N/mm2以下の機械的特性を有することを特徴とするリチウム二次電池用負極。 - 前記活物質層を前記集電体の表面上に配置した後、焼結処理することにより得られる負極であって、前記焼結処理の熱履歴によって前記集電体に前記機械的特性が付与されていることを特徴とする請求項2に記載のリチウム二次電池用負極。
- 前記活物質層を前記集電体の表面上に配置する前に、前記集電体に熱処理を施することにより、前記集電体に前記機械的特性が付与されていることを特徴とする請求項2に記載のリチウム二次電池用負極。
- 前記活物質層の厚みXが、前記集電体の厚みY及びその表面粗さRaと、5Y≧X、及び250Ra≧Xの関係を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極。
- 前記活物質層が配置されている前記集電体の表面の表面粗さRaが、0.2μm以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極。
- 前記集電体が、銅箔もしくは銅合金箔、または表面に銅層もしくは銅合金層を設けた金属箔であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極。
- 前記集電体が、電解銅箔もしくは電解銅合金箔、または表面に電解銅もしくは電解銅合金を設けた金属箔であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極。
- 前記活物質層を前記集電体の表面上に配置した後、焼結処理することにより得られる負極であって、前記焼結処理の熱履歴後において、前記バインダーが前記機械的特性を有していることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極。
- 前記焼結処理の温度が、前記バインダーのガラス転移温度より高い温度であることを特徴とする請求項9に記載のリチウム二次電池用負極。
- 前記焼結処理の温度が、前記バインダーの分解温度よりも低い温度であることを特徴とする請求項9または10に記載のリチウム二次電池用負極。
- 前記活物質層を前記集電体の表面上に配置した後、前記バインダーによる前記集電体との密着性を向上させるため、前記バインダーのガラス転移温度よりも高い温度で熱処理が施されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極。
- 前記熱処理の熱履歴後において、前記バインダーが前記機械的特性を有していることを特徴とする請求項12に記載のリチウム二次電池用負極。
- 前記バインダーの線膨張係数が、0.1×10−5〜30×10−5℃−1であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極。
- 前記バインダーのガラス転移温度が450℃以下であることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極。
- 前記バインダーが熱可塑性であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極。
- 前記バインダーがポリイミドであることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極。
- 前記ポリイミドが熱可塑性ポリイミドであることを特徴とする請求項17に記載のリチウム二次電池用負極。
- 前記ポリイミドがポリアミド酸の熱処理により形成されることを特徴とする請求項17に記載のリチウム二次電池用負極。
- 前記活物質粒子の平均粒径が10μm以下であることを特徴とする請求項1〜19のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極。
- 前記活物質層に導電性粉末が混合されていることを特徴とする請求項1〜20のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極。
- 請求項1〜21のいずれか1項に記載の負極と、正極材料を含む正極と、非水電解質とを備えることを特徴とするリチウム二次電池。
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