JP4270894B2 - リチウム二次電池用負極及びリチウム二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウム二次電池用負極及びその製造方法並びにそれを用いたリチウム二次電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、高出力及び高エネルギー密度の新型二次電池の1つとして、非水電解液を用い、リチウムイオンを正極と負極との間で移動させて充放電を行うリチウム二次電池が利用されている。
【0003】
このようなリチウム二次電池用負極として、平均粗さ0.03μm以上の集電体上にケイ素を含む活物質を結着剤により付着させたものが提案されている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、ケイ素を含む活物質は、リチウムを吸蔵・放出する際に体積が膨張・収縮するため、充放電に伴い活物質が微粉化したり、活物質が集電体から脱離することが知られている。このため、電極内の集電性が低下し、充放電サイクル特性が悪くなるという問題があった。
【0005】
本出願人は、このような問題を解決するリチウム二次電池用負極として、ケイ素及び/またはケイ素合金を含む活物質粒子とバインダーとを含む活物質層を集電体の表面上に配置した後、非酸化性雰囲気下に焼結して得られるリチウム二次電池用負極を提案している(特許文献2)。
【0006】
この負極に用いるバインダーとしては、ポリイミドなどのように、焼結のための熱処理後にも残存するバインダーが好ましく用いられる。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−12088号公報
【特許文献2】
国際公開第02/21616号パンフレット
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、ポリイミドなどのバインダーを用いた上記負極において、活物質粒子がバインダー中において均一に分散しておらず、このため十分な集電性が得られていないことを見出した。
【0009】
本発明の目的は、バインダー中での活物質粒子の凝集を少なくし、サイクル寿命を向上させることができるリチウム二次電池用負極及びその製造方法並びにそれを用いたリチウム二次電池を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のリチウム二次電池用負極は、ケイ素及び/またはケイ素合金を含む活物質粒子とバインダーと分散剤とを含む活物質層を導電性金属箔からなる集電体の表面上に配置し非酸化性雰囲気下に焼結して得られるリチウム二次電池用負極であって、バインダーが、ポリイミドであり、分散剤が、モノオレイン酸ソルビタンまたはN,N−ジメチルステアリルアミンであることを特徴としている。
【0011】
本発明の限定された局面に従うリチウム二次電池用負極は、ケイ素及び/またはケイ素合金を含む活物質粒子とバインダーと分散剤とを含む活物質層を導電性金属箔からなる集電体の表面上に配置し非酸化性雰囲気下に焼結して得られるリチウム二次電池用負極であって、バインダーが焼結のための熱処理後も残存しているバインダーであることを特徴としている。
【0012】
本発明における活物質層においては、活物質粒子とバインダーと分散剤が含まれている。分散剤が含まれることにより、活物質粒子がバインダー中において均一に分散されており、活物質粒子の凝集を少なくすることができる。活物質粒子が凝集すると、凝集した活物質粒子の周辺にはバインダーが存在しておらず、充放電反応でのリチウムの吸蔵・放出に伴う活物質粒子の体積の膨張・収縮により活物質粒子が脱離し易くなり、電極内の集電性が低下する。従って、本発明に従い活物質粒子の凝集を少なくすることにより、活物質粒子の周辺にバインダーが存在する確率を高めることができ、充放電反応における活物質粒子の脱離を防止することができる。このため、電極内における集電性の低下を抑制することができる。
【0013】
本発明において、焼結後のための熱処理後、活物質層中に分散剤が残存しているか否かは、特に限定されるものではない。分散剤の分解温度が、焼結のための熱処理温度よりも低い場合には、熱処理後、分散剤は分解して残存していないと考えられる。しかしながら、熱処理前におけるバインダー中での活物質粒子の分散は、熱処理後も維持されていると考えられ、そのため活物質粒子の集電体からの脱離を防止することができ、集電性をより高めることができる。
【0014】
また、熱処理により分散剤が分解した場合、分散剤の分解による空隙が活物質層内に形成される可能性があるが、このような活物質層中の空隙に電解液が含有され易くなるので、これによって充放電サイクル特性が向上する可能性があると考えられる。
【0015】
また、焼結のための熱処理後に、分散剤が分解されずに残存している場合、熱処理後においても熱処理前の活物質粒子のバインダー中における均一な分散が維持されているため、活物質粒子の集電体からの脱離が防止され、集電性をより高めることができる。
【0016】
本発明のリチウム二次電池用負極の製造方法は、上記本発明のリチウム二次電池用負極を製造することができる方法であり、ケイ素及び/またはケイ素合金を含む活物質粒子と、バインダーと、分散剤とを溶液中に均一に混合してスラリーを調製する工程と、該スラリーを導電性金属箔からなる集電体の表面上に塗布して活物質層を形成する工程と、活物質層を集電体の表面上に配置した状態で、非酸化性雰囲気下に焼成する工程とを備え、バインダーがポリイミドであり、分散剤が、モノオレイン酸ソルビタンまたはN,N−ジメチルステアリルアミンであることを特徴としている。
【0017】
本発明の製造方法においては、スラリー中に分散剤を混合することにより、スラリー中に活物質粒子を均一に分散させることができる。このため、活物質層において、バインダー中に活物質粒子を均一に分散させることができ、活物質粒子の凝集を少なくすることができる。このため、上述のように、熱処理後の活物質層中においても活物質粒子がバインダー中に均一に分散しており、充放電反応により活物質粒子が集電体から脱離するのを防止することができ、電極内の集電性を高めることができる。
【0020】
本発明において、分散剤の含有量は、用いる分散剤の種類及びバインダーの種類並びに有機溶媒の種類などにより適宜調整されるが、一般にはバインダーと有機溶媒の合計100重量部に対し、0.1重量部以上であることが好ましい。分散剤の量が、これよりも少ないと、活物質粒子のバインダー中での分散が不十分となる場合がある。また、分散剤の量は、バインダーと有機溶媒の合計100重量部に対し、5重量%以下であることが好ましい。分散剤が多量に存在しても、それ以上の活物質粒子のバインダー中における分散性の向上が認められないからである。
【0021】
本発明において分散剤がバインダー中に存在する量は、バインダー100重量部に対し、1〜50重量部の範囲内であることが好ましい。
本発明における活物質粒子は、粒子径10μm以下の範囲に60体積%以上が存在する粒度分布であることが好ましい。このような範囲を外れる幅広い粒子分布である場合、粒度が大きく異なる活物質粒子間においては、リチウムの吸蔵・放出に伴う体積の膨張・収縮の絶対量に大きな差が存在することになるため、活物質層内で歪みが生じ、バインダーが破壊され、電極内の集電性が低下し易くなる。また、平均粒子径は、10μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは3μm以下である。また、活物質粒子がケイ素粉末である場合には、純度が99.9%以上であることが好ましい。
【0022】
本発明においては、活物質層が配置されている集電体の表面の表面粗さRaが、0.2μm以上であることが好ましい。このような表面粗さRaを有する集電体を用いることにより、活物質層と集電体との接触面積を大きくすることができ、活物質層と集電体との密着性を向上させることができる。このため、電極内の集電性をさらに向上させることができる。集電体の両面に活物質層を配置する場合には、集電体の両面の表面粗さが0.2μm以上であることが好ましい。
【0023】
表面粗さRaは、日本工業規格(JIS B 0601−1994)に定められている。表面粗さRaは、例えば、表面粗さ計により測定することができる。
本発明においては、表面に粗面化処理が施された集電体を用いてもよい。このような粗面化処理としては、めっき法、気相成長法、エッチング法、及び研磨法などが挙げられる。めっき法及び気相成長法は、金属箔集電体の上に、表面に凹凸を有する層を形成することにより表面を粗面化する方法である。めっき法としては、電解めっき法及び無電解めっき法が挙げられる。また、気相成長法としては、スパッタリング法、CVD法、蒸着法などが挙げられる。エッチング法としては物理的エッチングや化学的エッチングによる方法が挙げられる。また、研磨法としては、サンドペーパーによる研磨やブラスト法による研磨などが挙げられる。
【0024】
本発明において用いる集電体は、導電性金属箔からなるものであれば特に限定されるものではない。集電体の具体例としては、銅、ニッケル、鉄、チタン、コバルト等の金属またはこれらの組み合わせからなる合金の金属箔が挙げられる。特に、活物質粒子中に拡散し易い金属元素を含有するものが好ましく用いられる。このようなものとして、銅元素を含む金属箔、特に銅箔及び銅合金箔が挙げられる。銅元素は、熱処理によってケイ素中に拡散し易いため、焼結処理を負極に施すことにより、集電体と活物質層との密着性の向上が期待できる。
【0025】
また、集電体表面に、銅元素を含む層が設けられた金属箔を集電体として用いてもよい。すなわち、銅以外の金属元素からなる金属箔の表面に、銅または銅合金層を形成したものを用いることができる。このような金属箔としては、電解めっき法により銅や銅合金のめっき膜を金属箔上に形成したものが挙げられる。具体的には、ニッケル箔の表面に銅または銅合金のめっき膜を形成したものが挙げられる。
【0026】
本発明において、集電体の厚みは特に限定されるものではないが、10〜100μmの範囲であることが好ましい。
本発明において、集電体の表面粗さRaの上限は、特に限定されるものではないが、集電体の厚みが10〜100μmの範囲であることが好ましいので、集電体の表面粗さRaの上限は実質的には10μm以下であることが好ましい。
【0027】
本発明において、活物質層の厚みXは、集電体の厚みY及びその表面粗さRaと、5Y≧X、及び250Ra≧Xの関係を有することが好ましい。このような関係を満足することにより、集電体におけるしわなどの変形の発生を抑制し、集電体からの活物質層の脱離を抑制することができる。
【0028】
活物質層の厚みXは、特に限定されるものではないが、1000μm以下が好ましく、さらに好ましくは10〜100μmである。
本発明のリチウム二次電池用負極は、活物質層を集電体の表面上に配置した後、これを非酸化性雰囲気下に焼結して得られる。非酸化性雰囲気下での焼結は、例えば、窒素雰囲気下またはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行う。水素雰囲気などの還元性雰囲気下で行ってもよい。焼結する際の熱処理温度は、集電体及び活物質粒子の融点以下の温度であることが好ましい。例えば、集電体として銅箔を用いた場合には、融点1083℃以下であることが好ましい。一般に、焼結のための熱処理温度は200〜500℃の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは300〜450℃の範囲である。焼結する方法としては、放電プラズマ焼結法や、ホットプレス法を用いてもよい。
【0029】
また、本発明において、集電体の上に活物質層を形成した後、焼結する前にこの活物質層を集電体とともに圧延することが好ましい。このような圧延により、活物質層における充填密度を高めることができ、活物質の粒子間の密着性及び活物質の粒子と集電体との密着性を高めることができるので、さらに良好な充放電サイクル特性を得ることができる。
【0030】
本発明において用いるバインダーは、焼結のための熱処理後も完全に分解せずに残存しているものが好ましい。熱処理後もバインダーが分解せずに残存していることにより、焼結による活物質の粒子と集電体間及び活物質の粒子間の密着性の向上に加え、バインダーによる結着力も加わり、密着性をさらに高めることができる。また、表面粗さRaが0.2μm以上の導電性金属箔を集電体として用いる場合、集電体の表面の凹凸部分にバインダーが入り込むことにより、バインダーと集電体の間にアンカー効果が発現し、さらに密着性が向上する。このため、リチウムの吸蔵・放出の際の活物質の体積の膨張・収縮による集電体からの活物質層の脱離を抑制することができ、良好な充放電サイクル特性を得ることができる。
【0031】
本発明におけるバインダーとしては、ポリイミドが好ましく用いられる。ポリイミドとしては、熱可塑性ポリイミド、熱硬化性ポリイミドが挙げられる。なお、ポリイミドは、ポリアミド酸を熱処理することによっても得ることができる。
【0032】
ポリアミド酸の熱処理により得られるポリイミドは、ポリアミド酸が熱処理により脱水縮合してポリイミドとなるものである。ポリイミドのイミド化率は80%以上のものが好ましい。イミド化率とは、ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)に対する生成したポリイミドのモル%である。イミド化率80%以上のものは、例えば、ポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液を100〜400℃の温度で1時間以上熱処理することにより得ることができる。例えば、350℃で熱処理する場合、熱処理時間が約1時間でイミド化率80%となり、約3時間でイミド化率は100%となる。
【0033】
本発明においては、焼結のための熱処理後もバインダーは完全に分解せずに残存していることが好ましいので、バインダーとしてポリイミドを用いる場合は、ポリイミドが完全に分解しない600℃以下で焼結処理を行うことが好ましい。
【0034】
本発明において、活物質層中のバインダーの量は、活物質層の総重量の5重量%以上であることが好ましい。また、バインダーの占める体積は、活物質層の総体積の5%以上であることが好ましい。活物質層におけるバインダー量が少な過ぎると、バインダーによる電極内の密着性が不十分となる場合がある。また、活物質層中のバインダー量が多過ぎると、電極内の抵抗が増加するため、初期の充電が困難になる場合がある。従って、活物質層中のバインダー量は総重量の50重量%以下であることが好ましく、バインダーの占める体積は、活物質層の総体積の50%以下であることが好ましい。
【0035】
本発明においては、活物質層に導電性粉末を混合することができる。導電性粉末を添加することにより、活物質の粒子の周囲に導電性粉末による導電性ネットワークが形成されるので、電極内の集電性をさらに向上させることができる。導電性粉末としては、上記導電性金属箔と同様の材質のものを好ましく用いることができる。具体的には、銅、ニッケル、鉄、チタン、コバルト等の金属またはこれらの組み合わせからなる合金または混合物である。特に、金属粉末としては銅粉末が好ましく用いられる。また、導電性カーボン粉末も好ましく用いることができる。
【0036】
導電性粉末の添加量は、活物質との合計重量の50重量%以下であることが好ましい。導電性粉末の添加量が多過ぎると活物質の混合割合が相対的に少なくなるので、電極の充放電容量が小さくなる。
【0037】
本発明において用いる活物質粒子としては、ケイ素及び/またはケイ素合金の粒子が挙げられる。ケイ素合金としては、ケイ素と他の1種以上の元素との固溶体、ケイ素と他の1種以上の元素との金属間化合物、ケイ素と他の1種以上の元素との共晶合金などが挙げられる。合金の作製方法としては、アーク溶解法、液体急冷法、メカニカルアロイング法、スパッタリング法、化学気相成長法、焼成法などが挙げられる。特に、液体急冷法としては、単ロール急冷法、双ロール急冷法、及びガスアトマイズ法、水アトマイズ法、ディスクアトマイズ法などの各種アトマイズ法が挙げられる。
【0038】
また、本発明において用いる活物質粒子としては、ケイ素及び/またはケイ素合金の粒子表面を金属等で被覆したものを用いてもよい。被覆方法としては、無電解めっき法、電解めっき法、化学還元法、蒸着法、スパッタリング法、化学気相成長法などが挙げられる。粒子表面を被覆する金属としては、集電体として用いる導電性金属箔と同じ金属であることが好ましい。導電性金属箔と同じ金属を被覆することにより、焼結の際の集電体との結合性が大きく向上し、さらに優れた充放電サイクル特性を得ることができる。
【0039】
本発明において用いる活物質粒子には、リチウムと合金化する材料からなる粒子が含まれていてもよい。リチウムを合金化する材料としては、ゲルマニウム、錫、鉛、亜鉛、マグネシウム、ナトリウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム及びこれらの合金などが挙げられる。
【0040】
本発明のリチウム二次電池は、上記本発明の負極と、正極材料を含む正極と、非水電解質とからなることを特徴としている。
本発明のリチウム二次電池に用いる非水電解質の溶媒は、特に限定されるものではないが、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状カーボネートと、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの鎖状カーボネートとの混合溶媒が例示される。また、上記環状カーボネートと1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタンなどのエーテル系溶媒との混合溶媒も例示される。また、非水電解質の溶質としては、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3、LiAsF6、LiClO4、Li2B10Cl10、Li2B12Cl12など及びそれらの混合物が例示される。特に、LiXFy(式中、XはP、As、Sb、B、Bi、Al、Ga、またはInであり、XがP、AsまたはSbのときyは6であり、XがBi、Al、Ga、またはInのときyは4である)と、リチウムペルフルオロアルキルスルホン酸イミドLiN(CmF2m+1SO2)(CnF2n+1SO2)(式中、m及びnはそれぞれ独立して1〜4の整数である)またはリチウムペルフルオロアルキルスルホン酸メチドLiN(CpF2p+1SO2)(CqF2q+1SO2)(CrF2r+1SO2)(式中、p、q及びrはそれぞれ独立して1〜4の整数である)との混合溶質が好ましく用いられる。これらの中でも、LiPF6とLiN(C2F5SO2)2との混合溶質が特に好ましく用いられる。さらに電解質として、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリルなどのポリマー電解質に電解液を含浸したゲル状ポリマー電解質や、LiI、Li3Nなどの無機固体電解質が例示される。本発明のリチウム二次電池の電解質は、イオン導電性を発現させる溶質としてのリチウム化合物とこれを溶解・保持する溶媒が電池の充電時や放電時あるいは保存時の電圧で分解しない限り、制約なく用いることができる。
【0041】
本発明のリチウム二次電池の正極材料としては、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、LiMnO2、LiCo0.5Ni0.5O2、LiNi0.7Co0.2Mn0.1O2などのリチウム含有遷移金属酸化物や、MnO2などのリチウムを含有していない金属酸化物が例示される。また、この他にも、リチウムを電気化学的に挿入、脱離する物質であれば、制限なく用いることができる。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能なものである。
【0043】
(実験1)
[負極の作製]
活物質材料としての純度99.9%、平均粒径1.0μmであるケイ素粉末80.4重量部を、バインダーであるポリイミド17.9重量部と、分散剤であるモノオレイン酸ソルビタン(分散剤a1)1.8重量部とを、バインダーの8.5倍の重量のN−メチルピロリドン溶液に混合し、負極合剤スラリーとした。負極合剤スラリーの混合は、1分間に1400回転のスピード(1400回転/分)で攪拌する攪拌機を用い、5分間行った。
【0044】
この負極合剤スラリーを、集電体である表面粗さRaが0.5μmである電解銅箔(厚み35μm)の片面(粗面)に塗布し、乾燥した後、これを圧延した。得られたものを、直径20mmの円板状に切り抜き、これをアルゴン雰囲気下で400℃、30時間熱処理し、焼結して負極とした。焼結体の厚み(集電体を含む)は45μmであった。
【0045】
[正極の作製]
出発原料として、Li2Co3及びCoCO3を用いて、Li:Coの原子比が1:1となるように秤量して乳鉢で混合し、これを直径17mmの金型でプレスし、加圧成形した後、空気中において、800℃、24時間焼成し、LiCoO2の焼成体を得た。これを乳鉢で粉砕し、平均粒径20μmに調整した。
【0046】
[電解液の作製]
電解液として、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの等体積混合溶媒に、LiPF6を1モル/リットル溶解したものを作製した。
【0047】
[電池の作製]
上記の正極、負極、及び電解液を用いて、リチウム二次電池A1を作製した。
図1に電池の構成図を示す。正極1、負極2、セパレータ3、電解液4、アルミラミネート外装体5、正極タブ6、負極タブ7などからなる。
【0048】
正極1及び負極2は、セパレータ3を介して対向している。これらは正極タブ6及び負極タブ7に接続され、二次電池としての充電及び放電が可能な構造となっている。
【0049】
[実施例の充放電試験条件]
充電:定電流充電
定電流充電:電流値3.5mA/cm2、充電終止電圧4.2V
放電:定電流放電
定電流放電:電流値3.5mA/cm2、充電終止電圧2.75V
【0050】
(実験2)
実験1において、分散剤として、分散剤a1の代わりに、N,N−ジメチルラウリルアミン(分散剤a2)、N−ヤシアルキル−1,3−ジアミノプロパン(分散剤a3)をそれぞれ用いたこと以外は実験1と同様にして、電池A2及びA3を作製した。
分散剤a1〜a3の内容を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
(実験3)
実験1において、分散剤を用いなかったこと以外は実験1と同様にして、電池B1を作製した。
【0053】
[充放電サイクル特性の評価]
上記の電池A1〜A3及びB1について、上記の充放電試験条件で充放電サイクル特性を評価した。すなわち、各電池を、25℃において、電流値3.5mA/cm2で4.2Vまで充電した後、電流値3.5mA/cm2で2.75Vまで放電し、これを1サイクルの充放電とした。1サイクル目の放電容量に対する100サイクル目の放電容量を測定し、サイクル維持率とした。結果を表2に示す。なお、各電池のサイクル維持率は、電池A1のサイクル維持率を100とした指数である。
【0054】
【表2】
【0055】
表2から明らかなように、分散剤a1〜a3を用いた電池A1〜A3は、分散剤を用いない電池B1に比べ、サイクル維持率が高いことがわかる。
これは、スラリー中に分散剤を混合させることにより、スラリー中に活物質粒子が均一に分散し、活物質とバインダーが均一に混合し分散したために、充放電反応でのリチウムの吸蔵・放出に伴う活物質粒子の体積の膨張・収縮時にも強度を保つことができ、活物質粒子の脱離が抑制され、集電性を向上させることができたためと考えられる。
【0056】
(実験4)
実験1において、活物質材料として純度99.9%、平均粒径2.7μmであるケイ素粉末を用い、分散剤としてN,N−ジメチルステアリルアミン(分散剤a4)を用いたこと以外は実験1と同様にして、電池A4を作製した。
【0057】
(実験5)
実験4において、分散剤を用いなかったこと以外は実験4と同様にして電池B2を作製した。
【0058】
(実験6)
実験5において、負極合剤スラリーの攪拌回転数を3500回転/分にしたこと以外は実験5と同様にして電池B3を作製した。
【0059】
[充放電サイクル特性の評価]
上記の電池A4、B2及びB3について、充放電サイクル特性を評価した。各電池を、25℃において、電流値3.5mA/cm2で4.2Vまで充電した後、電流値3.5mA/cm2で2.75Vまで放電し、これを1サイクルの充放電とした。1サイクル目の放電容量に対する100サイクル目の放電容量を測定し、サイクル維持率とした。結果を表3に示す。なお、各電池のサイクル維持率は、電池A1のサイクル維持率を100とした指数である。
【0060】
【表3】
【0061】
表3から、分散剤a4を用いた電池A4は、分散剤を用いない電池B2及び電池B3に比べ、サイクル維持率が高いことが明らかである。
分散剤を用いなかった場合には、スラリー作成時の攪拌回転数の高い電池B3の方が、スラリー作成時の攪拌回転数の低い電池B2よりもサイクル維持率が高い。これにより、機械的な攪拌工程が電池のサイクル特性に影響することがわかる。
【0062】
しかしながら、分散剤を用いた電池A4が、分散剤を用いずに攪拌回転数を高くした電池B3よりもサイクル維持率が高い。分散剤を用いた電池A4は、分散剤を用いずに攪拌回転数を高くした電池B3よりも、スラリー中において、活物質粒子とバインダーとが均一に分散されていると考えられる。これにより、電池B3を作製した上記の攪拌条件だけでは、活物質粒子のバインダーへの分散が不十分であることがわかる。
【0063】
従って、分散剤を用いると機械的な拡散工程を省略できるだけでなく、焼結後もより均一に活物質粒子が分散した電極を作製することが可能であり、それにより、充放電反応でのリチウムの吸蔵・放出に伴う活物質粒子の体積の膨張・収縮時にも強度を保つことができ、活物質粒子の脱離が抑制され、集電性を向上させることができると考えられる。
【0064】
【発明の効果】
本発明によれば、バインダー中での活物質粒子の凝集を少なくすることができ、サイクル寿命特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う実施例において作製したリチウム二次電池を示す模式図。
【符号の説明】
1…正極
2…負極
3…セパレータ
4…電解液
5…外装体
6…正極タブ
7…負極タブ
Claims (7)
- ケイ素及び/またはケイ素合金を含む活物質粒子とバインダーと分散剤とを含む活物質層を導電性金属箔からなる集電体の表面上に配置し非酸化性雰囲気下に焼結して得られるリチウム二次電池用負極であって、
前記バインダーが、ポリイミドであり、前記分散剤が、モノオレイン酸ソルビタンまたはN,N−ジメチルステアリルアミンであることを特徴とするリチウム二次電池用負極。 - 前記バインダーが、前記焼結のための熱処理後も残存しているバインダーであることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用負極。
- 前記集電体が、銅箔もしくは銅合金箔、または表面に銅層もしくは銅合金層を設けた金属箔であることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウム二次電池用負極。
- 前記集電体が、電解銅箔もしくは電解銅合金箔、または表面に電解銅層もしくは電解銅合金層を設けた金属箔であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極。
- ケイ素及び/またはケイ素合金を含む活物質粒子と、バインダーと、分散剤とを溶液中に均一に混合してスラリーを調製する工程と、
前記スラリーを導電性金属箔からなる集電体の表面上に塗布して活物質層を形成する工程と、
前記活物質層を前記集電体の表面上に配置した状態で、非酸化性雰囲気下に焼成する工程とを備えるリチウム二次電池用負極の製造方法であって、
前記バインダーが、ポリイミドであり、前記分散剤が、モノオレイン酸ソルビタンまたはN,N−ジメチルステアリルアミンであることを特徴とするリチウム二次電池用負極の製造方法。 - 前記バインダーが、前記焼結のための熱処理後も残存するバインダーであることを特徴とする請求項5に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の負極または請求項5または6に記載の方法により製造された負極と、正極材料を含む正極と、非水電解質とからなることを特徴とするリチウム二次電池。
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