JP4431903B2 - インクカートリッジ - Google Patents

Description

本発明は、交換可能なインクカートリッジからインクの供給を受けてノズル開口からインク滴を吐出しながら記録媒体に印刷を行う記録装置に適したインクカートリッジに関する。

インクジェット式記録装置は、印刷データに対応して駆動信号を圧電振動子や発熱手段等に供給し、圧電振動子や発熱手段等で発生したエネルギによりインクを加圧してノズル開口からインク滴を吐出させる記録ヘッドと、これにインクを供給するためのインクを収容したインクカートリッジを備えている。

そして、印字品質は、記録ヘッドの解像度で決まる他、インクの粘度や、記録媒体上での滲み具合等に大きく左右されるため、印字品質の向上をめざしてインク特性の改善や、また同一のインクであってもインク特性に適した記録ヘッドの駆動方法の改善が行われ、さらにはノズル開口の自詰まりを防止するための空吐出の周期や、キャッピング状態で強制吐出させる等のメンテナンス条件の改善が図られている。

このようにインクの特性ばかりでなく、インクの特性と記録ヘッドの駆動方法等とが一体となった時に初めて記録装置としての印字品質が向上する。このような技術開発による成果は、新しく製造されるインクジエット式記録装置に盛り込むことができるとしても、製造業者を離れた記録装置への適用は、記録装置を製造元に持ち込んで制御データを記録した記憶手段の交換を必要とするから、コストや手間等を考慮すると実用的には不可能に近い。

このような問題に対処するため、例えば特許文献１に見られるように、インクカートリッジに半導体記憶手段とこれに接続する電極を配置するとともに、記録装置本体側にも電極群を配置し、半導体記憶手段に格納されているデータを読み出し、このデータに基づいて記録動作を制御する記録装置が提案されている。

特許第２５９４９１２号公報

しかしながら、ユーザによる乱暴なインクカートリッジの着脱操作や、またキャリッジとインクカートリッジとの遊びにより半導体記憶手段とのコンタクトが不良となったり、また不適切なタイミングでの通電や信号印加がなされて、データの読出しが不可能となったり、最悪の場合にはデータが消失して記録動作が不可能になる等の問題がある。

本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、インクカートリッジの不適切な着脱操作に拘リ無く半導体記憶手段のデータ破損を防止することができるインクジェット式記録装置に適したインクカートリッジを提供することである。

本発明は、
記録ヘッドに連通するインク供給針を備えた記録装置に着脱可能に形成されたインクカートリッジにおいて、前記インク供給針が挿入される１つのインク供給口が形成された一対の長辺と一対の短辺とを有する底面と、前記底面に隣接する垂直壁とを備え、前記１つのインク供給口は前記一対の短辺のうちの一方の短辺の近傍に設けられ、前記一方の短辺に隣接する垂直壁の下部に、半導体記憶手段に接続された複数の電極が形成された回路基板が固定されていることを特徴とする。

本発明のインクカートリッジでは、前記回路基板が、前記インク供給口が形成された面に配置され、前記複数の接点が、複数のグループに分けられ、各グループが前記インクカートリッジの挿抜方向に異なる高さで位置することが好ましい。

本発明のインクカートリッジでは、前記グループが時間差をおいて記録装置本体側の接点に接続することが好ましい。

本発明のインクカートリッジでは、前記回路基板が、前記インク供給口を通る中心線上に位置して設けられていることが好ましい。

本発明のインクカートリッジでは、前記回路基板が、前記インク供給口に隣接する面の幅万向の中心線に合わせて配置されていることが好ましい。

本発明のインクカートリッジでは、前記インク供給針がキャリッジに形成されていることが好ましい。

本発明のインクカートリッジでは、前記複数の接点の１つが、記録装置側の複数の接点に接触して当該インクカートリッジの装着の有無の検出に使用されることが好ましい。

本発明のインクカートリッジでは、前記複数の接点の１つが、記録装置側の複数の接点に接触して当該インクカートリッジの装着の有無の検出に使用され、かつ他の接点よりも大きなサイズとなるように形成されていることが好ましい。

本発明のインクカートリッジでは、前記接点が、インクカートリッジの挿入方向の辺が、他方向の辺よりも大きな矩形状に形成されていることが好ましい。

本発明のインクカートリッジでは、前記半導体記憶手段が、前記回路基板の前記接点が形成されている面に実装されていることが好ましい。

本発明のインクカートリッジでは、前記半導体記憶手段が、前記回路基板の前記接点が形成されている裏面に実装されていることが好ましい。

本発明のインクカートリッジでは、前記回路基板が、取り外し可能に固定されていることが好ましい。

本発明のインクカートリッジでは、前記回路基板に位置決め用の凹部、または貫通孔が、また前記インクカートリッジに前記凹部、または貫通孔に係合する突起が形成されていることが好ましい。

本発明のインクカートリッジでは、前記回路基板の側面に弾接するリブ、または爪が形成されていることが好ましい。

本発明のインクカートリッジでは、前記リブ、または爪が、前記インクカートリッジの挿抜方向に間隔を設けて形成されていることが好ましい。

本発明のインクカートリッジでは、前記回路基板の取付け領域に、前記回路基板を収容できる程度の凹部が形成されていることが好ましい。

本発明のインクカートリッジでは、前記回路基板の固定領域の上部近傍に張り出し部が形成されていることが好ましい。

本発明のインクカートリッジでは、前記張り出し部が、前記回路基板の垂直方向に突出していることが好ましい。

本発明のインクカートリッジでは、前記インク収容室を複数備え、前記回路基板が前記複数のインク収容室の中心に取付けられていることが好ましい。

本発明のインクカートリッジでは、前記回路基板、張り出し部、及びインク供給口が、インクカートリッジの一側面寄りに形成されていることが好ましい。

本発明のインクカートリッジによれば、インク供給針がキャリッジの往復動方向に直交する方向の一側寄りに位置し、またインクカートリッジがインク供給口が形成された側の近傍の垂直壁の下部に回路基板が取付けられ、回路基板の露出面の表面に外部制御手段に接続する複数の接点が形成されていて、接点を介して外部制御手段から半導体記憶手段がアクセスされるので、回路基板がインク供給口側の側面に位置して回路基板が固定された面は、インク供給針に沿って移動することになる。そして、カートリッジの装填時にガタつきが生じてインク供給針を中心とした回動運動が生じたとしても、回路基板はインク供給針の近傍に位置するから、その回動量が極めて小さい。

図１は、本発明のインクジェット式記録装置の一実施例を、印刷機構部について示すものであって、タイミングベルト１を介して駆動モータ２に接続されたキャリッジ３には、上面に後述するブラックインクを収容したブラック用のインクカートリッジ４０と、カラーインクを収容したカラー用のインクカートリッジ５０とをそれぞれ格納するホルダ４が形成され、また下面には各インクカートリッジからインクの供給を受ける記録ヘッド５が設けられている。

図２はキャリッジの一実施例を、ホルダ部とヘッド部に分解して示すものであり、また図３は、ブラック用のインクカートリッジ４０のインク供給口４４での断面構造を示すものである。

記録ヘッド５に連通するインク供給針６，７は、装置の奥側、つまり図中タイミングベルト１側に位置するようにキャリッジ３の底面に垂直に植設されている。ホルダ４を形成する垂直壁のうち、インク供給針６，７の近傍側で対向する垂直壁８の上端には軸９，１０により回動可能にレバー１１，１２が取付けられている。レバー１１，１２の自由端側に位置する壁１３は、底辺部が垂直部１３ａを有し、また上部領域が上方に拡開する斜面部１３ｂとなるように形成されている。

レバー１１，１２は、後述するインクカートリッジ４０，５０の上端の張り出し部４６，５６に係合する突起１４，１５が、それぞれのレバー１１，１２の本体に対してほぼ直角となるように軸９，１０の近傍から延長して形成され、またホルダ４の斜面部１３ｂに形成された鈎部１６，１７に弾性的に係合するフック部１８，１９が形成されている。

そして各レバー１１，１２の裏面、つまりインクカートリッジ４０の蓋体４３に対向する面には、インクカートリッジ４０が正規の位置にセットされたとき、図４に示したように各インクカートリッジ４０，５０の少なくともインク供給口４４，５４に対向する領域を弾圧する弾性部材２０，２１が設けられている。

これら弾性部材２０，２１は、インクカートリッジ４０，５０の蓋体４３，５３に対して０．５以上の摩擦係数を備えた材料、例えばゴム硬度１０°乃至７０°のゴムや、発泡材料、フエルト材、さらにはゲル材が用いられている。

また、インク供給針側に位置する垂直壁８には、上部が開放された窓２２，２３が形成され、各窓を形成する垂直壁２２ａ，２３ａ、及び底面２２ｂ，２３ｂには、連続する溝２２ｃ，２３ｃが形成されていて、これらの溝２２ｃ，２３ｃに接点機構２４，２５が挿入、固定されている。

接点機構２４，２５は、ほぼ同一の構造となるように構成されているので、一方の接点機構２４について説明する。図５（ａ）、図５（ｂ）に示したようにほぼ一定のピッチで、深さが異なる２種類のスリット２６，２６’が形成され、両側に弾性変形可能な爪２７を備えた基体２８に、各スリット２６，２６’に導電性と弾性を備えた接点形成部材２９，２９’を填め込んで構成されている。これら接点形成部材２９，２９’は、それぞれが高低に位置し、かつ基体２８の表面側及び裏面側に露出するように固定されている。

接点機構２４，２５をこのように構成することにより、回路基板３０を基台３２の垂直壁３４の前方に嵌め込むことにより、接点形成部材２９，２９’の一方の面に露出している領域２９ａ，２９’ａが、回路基板３０の接点に弾性的に接触し、また他方の面に露出している領域２９ｂ，２９’ｂが、インクカートリッジ４０，５０の後述する回路基板３１の接点に弾性的に接触して導電関係を形成する。

一方、記録ヘッド５は、インク供給針６，７とともに略Ｌ字型に構成された基台３２の水平部３３を介してホルダ４の底面に固定されている。基台３２の垂直壁３４には接点機構２４，２５と対向する領域に窓３５，３６が穿設されていて、その前方側に前述の回路基板３０を保持している。

回路基板３０は、フレキシブルケーブル３７（図１）を介して制御手段３８に接続されていて、記録ヘッド５にインク滴吐出のための駆動信号を供給する他、インクカートリッジ４０，５０の回路基板３１と接点機構２４，２５を介してコンタクトを形成している。

図６（ａ）は、前述のブラックインク用のインクカートリッジ４０の一実施例を示すもので、図６（ｂ）は、前述のカラーインク用のインクカートリッジ５０の一参考例を示すものであって、ほぼ直方体として形成された容器４１、５１にインクを含浸させた多孔質体４２を収容し、上面を蓋体４３、５３により封止されている。

容器４１，５１の底面には、ホルダ４に装填されたときインク供給針６，７に対向する位置にインク供給口４４，５４が形成され、またインク供給口側の垂直壁４５，５５の上端には、レバー１１，１２の突起１４，１５に係合する張り出し部４６，５６，５６が一体に形成されている。ブラック用のインクカートリッジ４０の張り出し部４６は、一端から他端まで連続体として、またカラー用のインクカートリッジ５０の張り出し部５６，５６は、両側に位置するように個別に形成され、さらに下面と垂直壁４５，５５との間に三角形状のリブ４７，５７が形成されている。なお、図中符号５９は、誤挿入防止用の凹部を示す。

またインク供給口側の垂直壁４５，５５のインク供給口形成側には、それぞれのインクカートリッジ４０，５０の幅方向の中心に位置するように凹部４８，５８が形成され、ここに回路基板３１，３１が装着されている。

回路基板３１は、図７（ａ）に示したようにインクカートリッジに取付けられたとき表面となる側の、前述の接点機構２４の接点形成部材２９，２９’と対向する位置に、カートリッジの挿入方向に複数段、この実施例では２段にグループ化されて接点６０，６０，６０，…が形成されている。また回路基板３１の裏面にはこれら接点６０に接続するように半導体記憶手段６１が実装され、必要に応じて耐インク性材料によりモールドされて非露出状態とされている。半導体記憶手段６１は、これが設けられるインクカートリッジ４０，５０に収容されているインク量や、製造年月日、商標等をデータとして格納し、また必要に応じて記録装置本体から伝送されたメンテナンス状況等のデータを格納するものである。なお、図中符号６０’は、製造工程でチェック用に使用される電極を示す。

この回路基板３１に形成されている電極６０のうち、サイズの小さな電極６０−１（図７（ｃ））は、高さＨ１が１．８ｍｍ、幅Ｗ１が１ｍｍであり、また大きな電極６０−２は高さＨ２が１．８ｍｍ、幅Ｗ２が３ｍｍである。特にサイズの小さい電極６０−１を、インクカートリッジ４０，５０の挿入方向が他の方向よりも長い矩形状として形成することにより、電極の幅Ｗ１を可及的に抑えつつ、インクカートリッジ４０，５０とホルダ４との間に浮きΔｈが生じても（図１１（ｃ））、接点形成部材２９，２９’とのコンタクトを確保することができる。

このように半導体記憶手段６１が実装された回路基板３１は、少なくとも１つの貫通孔３１ａや、凹部３１ｂが形成されており、またインクカートリッジ４０，５０の取付け面である垂直壁４５，５５には貫通孔３１ａ、凹部３１ｂと共同して位置決めをなす突起４５ａ，４５ｂ，５５ａ，５５ｂと、回路基板３１の側面に弾接するリブ、または爪などの張り出し部４５ｃ，４５ｄ，５５ｃ，５５ｄが、カートリッジの挿入方向の、インク供給口４４，５４に近い面に、回路基板３１の垂直方向に形成されている。

これにより、半導体記憶手段６１を突起により位置規制しながら、インクカートリッジ４０，５０の垂直壁４５，５５に押し付けることにより、張り出し部４５ｃ，４５ｄ，５５ｃ，５５ｄに係合させて簡単に装着することができる。これにより、ネジ止め穴形成用にカートリッジを無用に厚くする必要がなく、充分な量のインクの充填が可能となり、また比較的作業が面倒なネジ止めではなく、作業の容易な熱カシメが適用できて製造工程を簡素化することができる。

この実施例において、レバー１１をほぼ垂直な位置まで開いてインクカートリッジ４０を装填すると、インク供給口側に形成されている張り出し部４６が、レバー１１の突起１４に受け止められ、他端側がホルダ４の斜面部１３ｂに支持されインク供給口側を上方とするように保持される（図８）。この装填時に、インクカートリッジ４０が記録装置本体に衝突した場合には、上部の張り出し部４６により回路基板３１が保護され、かつ回路基板３１が凹部４８に収容されているため、回路基板３１に直接衝撃が作用することなく破損が防止される。

この状態でレバー１１を閉めると、突起１４が下方に回動してインクカートリッジ４０がほぼ装填初期の姿勢を保ちながら降下し、インク供給口４４がインク供給針６の先端に接触する（図９）。

この状態でレバー１１を更に回動させると、インクカートリッジ４０は、インク供給口４４の真上を弾性部材２０に押されるから、レバー１１の長さと、軸９と弾性部材２０との間の距離との比率で増幅された押圧力によりインク供給口４４がインク供給針６に押し込まれる。そしてレバー１１が最後まで押し込まれると、図３に示したようにレバー１１は、弾性部材２０を介してインクカートリッジ４０の蓋体４３をインク供給針側に常時弾圧した状態で鈎部１６に固定される。

これにより、インクカートリッジ４０は、そのインク供給口４４をインク供給針６に係合した状態で一定圧で弾圧されることになり、印刷中の振動や、記録装置の移動などによる衝撃や振動に関わりなく、インク供給口４４がインク供給針６に気密性を保持して係合状態を維持する。

また、回路基板３１がインク供給口の近傍の垂直壁４５で、かつインクカートリッジ４０の幅方向の中心に位置しているため、回路基板３１が固定された垂直壁４５は、インク供給口４４がインク供給針６に規制される軌跡に可及的に平行に移動する。

一方、インクカートリッジ４０の装填時にガタつきが生じてインク供給針６を中心とした回動運動が生じたとしても、回路基板３１はインク供給針６の近傍に位置するから、図１０に示したようにその回動量αが極めて小さい。

これらのことがあいまって、回路基板３１は、図１１（ａ）乃至図１１（ｃ）に示したように予め設定された経路を移動して、接点機構２４の接点形成部材２９，２９’に規定の順番で、かつ上下にグループ化された順番で接触し、不用意な順番での信号の印加による半導体記憶手段６１のデータ消失を防止し、インクカートリッジ４０が確実に装着された状態では、接点形成部材２９，２９’が回路基板３１の接点６０に弾接し、半導体記憶手段６１に格納されているデータの読出しや、また記録装置側のデータを書込むことが可能となる。

ところで、インクカートリッジ４０，５０の装填が終了した段階では、図７（ｄ）、図７（ｅ）に示した電極のうち、上段のものには接点機構２４の接点形成部材２９が、また下段のものには接点形成部材２９’が接触する。そして、下段の中央に配置された電極６０−２には２本の接点形成部材２９’が接触している。この電極６０−２に接触する２本の接点形成部材２９’は、アースに接続されるとともに、これらの間の導通の有無を記録装置側で検出することにより、インクカートリッジ４０，５０の装着の有無を判定することができる。さらに、この電極６０−２は、幅Ｗ２が他の電極６０−１よりも大きく、かつインク供給口の中心線上に位置するため、接点形成部材２９’と確実に接触する。なお、接触不良が確認された場合には、電極６０−１，６０−２が露出していて、ユーザが簡単に確認できるので、布等で簡単にクリーニングして導通を回復させることができる。

インクカートリッジ４０のインクが消費された場合には、鈎部１６との係合を解いてレバー１１を上方に回動させると、その過程でレバー１１の突起１４がインクカートリッジの張り出し部４６の下方に係合する（図９）。この状態でさらにレバー１１を回動させると、インクカートリッジ４０がレバー１１に引き上げられてインク供給針６との係合が解かれる。レバー１１をほぼ垂直な位置まで回動させ切ると、図８に示したようにインクカートリッジ４０は、インク供給口側の張り出し部４６をレバー１１の突起１４に支持された状態で上半部をホルダ４から露出させるので、簡単に取出すことができる。

なお、上述の実施例においてインク供給口側だけを押圧するようにしているが、図１２（ａ）、図１２（ｂ）に示したようにレバー１１の長手方向の２個所に弾性部材１００，１０１を設けたり、または幅広なカラーインク用のインクカートリッジ５０にあってはレバー１２の幅方向に分散させて４個所に弾性部材１０２〜１０５を設けると一層効果的である。

また、図１３に示したようにほぼ全面を覆うサイズの弾性部材１０６，１０７を装填すると、大きな摩擦力によりインクカートリッジ４０，５０をより確実に保持することができる。この場合にはインク供給口側の押圧力が他の領域よりも大きくなるように厚みや、弾性係数を選択しておくのが望ましい。

さらには、図１４に示したようにホルダ４の底面のほぼ中央領域に、上面を弾圧している弾性部材と同様の弾性部材１０８，１０９を載置しておくと、インクカートリッジ４０，５０のインク供給口４４，５４とインク供給針６，７の気密性を、振動や衝撃に関わりなく維持することができる。

さらには、図１５に示したように少なくともインク供給口側が突出した少なくとも一枚の板バネ７０を、レバー１１の裏面の自由端側に固定してもインクカートリッジ４０を、ホルダ内に固定することが可能である。この場合には、板バネ７０の自由端７０ａの側、もしくはインクカートリッジの蓋体に滑り止め等を貼着しておくとより効果的である。

図１６は、回路基板をインクカートリッジのインク供給口の近傍の、底面に配置する場合の参考例を示すものであって、キャリッジは、その底面に記録ヘッド５に連通するインク供給針６が植設されており、インク供給針６に可及的に隣接した位置には図１７（ａ）、図１７（ｂ）に示したようにバネ材により形成された弾性変形可能な接点８０−１，８０−２，…，８０−６を作り付けた基板８１が設けられている。

一方、インクカートリッジ４０は、その底面にインク供給針６と嵌合可能なインク供給口４４が設けられ、インク供給口４４に可及的に近い位置で、かつ基板８１に対向する位置に凹部８２を形成して、ここに接点８０−１〜８０−６の頂点面に対して角度θを持つように斜めに回路基板８３が固定されている。

回路基板８３は、図１８（ａ）に示したように位置決め用の貫通孔８３ａ，８３ｂが形成されており、インク収容室側の面、つまり裏面には、図１８（ｂ）、図１８（ｃ）に示したように半導体記憶手段８４が実装され、また露出面側には半導体記憶手段８４のデータ入力端子や駆動電力供給端子に接続し、かつキャリッジ側の接点８０−１〜８０−６と導通関係を形成する接点８５−１，８５−２，…，８５−６が形成されている。

このように半導体記憶手段８４が回路基板８３の裏面に実装されているため、接点の配列の自由度が高くなり、かつ回路基板８３の表面、及び裏面を有効に利用でき、小さな面積に接続の信頼性を確保できる程度の面積で接点８５−１，８５−２，…，８５−６となる電極を形成することが可能となる。また、半導体記憶手段８４が形成された面を、接点８５−１，８５−２，…，８５−６への付着防止のために高い塗布精度を考慮することなく、簡易にモールド剤を塗布することができ、製造工程の簡素化を図ることができる。

さらに、半導体記憶手段８４が回路基板８３に隠れた状態でカートリッジに取付けられているため、ユーザの不用意な接触や、インク等の液体の付着が防止されて、静電破壊や短絡事故が防止される。

半導体記憶手段８４は、接点８５−１，８５−２，…，８５−６と接点８０−１〜８０−６とにより記録装置の図示しない制御手段に接続され、ここに格納されているデータを読み出されたり、また印刷動作により消費されたインク量等のデータの書き込みを受ける。

この参考例において、インクカートリッジ４０を装着すると、インクカートリッジ４０がキャリッジの底面近傍に到達した段階で、図１９に示したようにインク供給針６がインク供給口４４に進入して流路を形成し、また水平面に対して角度θを持つ回路基板８３の一側寄りの接点８０−１〜８０−３が最初に接点８５−１〜８５−３に接触して導通関係を形成する。

さらにインクカートリッジ４０が降下すると、回路基板８３の他側寄りの接点８０−４〜８０−６が接点８５−４〜８５−６に接触して全ての接点が導通状態となる。したがって、最初に導通関係を形成する接点８０−１〜８０−３及び接点８５−１〜８５−３により電源を供給して半導体記憶手段８４をイニシャライズさせ、この導通関係形成の後に導通状態となる接点８０−４〜８０−６及び接点８５−４〜８５−６とにより半導体記憶手段８４のデータにアクセスすることによりデータを破壊を防止することが可能となる。

一方、インクカートリッジ４０をキャリッジから抜き取ると、接点８０−４〜８０−６及び接点８５−４〜８５−６とが最初に切断されるものの、接点８０−１〜８０−３及び接点８５−１〜８５−３により依然として供給されている電力により終了処理を終了した後に電力を断つことができる。このようにして半導体記憶手段８４に対する処理が終了すると、インク供給針６がインク供給口４４から抜かれる。

図２０（ａ）は、インクカートリッジ４０に形成される接点８５−１〜８５−６の他の参考例を示すもので、インクカートリッジ４０の装入段階で最初に導通関係を形成する列の接点８５−１〜８５−３から、後に導通関係を形成する列の接点８５−４〜８５−６の間に延びる導電パターン８６，８７が形成されている。

そして、接点８５−１，８５−３を検出端子とし、また接点８５−４〜８５−６のうちの２つ、例えば接点８５−４，８５−５を電源供給端子として選択する。

このような構成を採ることにより、図２０（ｂ）に示したように電源供給端子となる接点８５−４，８５−５を跨ぐようにインクＫが付着していると、インクカートリッジ装入時にホルダ４の接点８０−１，８０−３と最初に導通関係を形成する接点８５−１，８５−３によりこれらの間の抵抗を検出して、既定値より低い場合には、次に電源供給端子となる接点８５−４，８５−５と導通関係を形成する接点８０−４，８０−５への電力の供給を停止して、インクＫの付着による短絡事故を未然に防止することができる。

図２１は本発明の他の参考例を示すものであって、インクカートリッジ４０の底面に前述の接点８５−１’〜８５−６’が形成された回路基板８３’を、水平に固定する一方、バネ等により常時上方に付勢され、かつ２列の接点８０−１’〜８０−３’，８０−４’〜８０−６’を、列間で先端ｇに段差が生じるように作り付けた基板８１’を設けて構成されている。

この参考例においても図２２に示したように第１列の接点８５−１’〜８５−３’と接点８０−１’〜８０−３’とが最初に導通関係を形成し、つぎにストローク長が短い第２列の接点８０−４’〜８０−６’が接点８５−４’〜８５−６’に当接して導通関係を形成するから、前述の参考例と同様の作用効果を奏する。

なお、上述の参考例においては、接点８０−１〜８０−６，８５−１〜８５−６を複数列に分け、列間で導通関係形成までの時間差を設けているが、図２３（ａ）、図２３（ｂ）に示したように接点８０−１〜８０−６，８５−１〜８５−６を１列に配置して、一端側の接点８０−１，８５−１と他端側の接点８０−６，８５−６と導通時間が異なるように、図２３（ｃ）、図２３（ｄ）に示したように接点８５−１〜８５−６を形成した回路基板８３を傾けたり、また接点８０−１〜８０−６の先端の位置を異ならせても同様の作用を奏することは明らかである。

また、上述の参考例においては、インクカートリッジをキャリッジに搭載する形式のものに例を採って説明したが、インクカートリッジを本体函体のカートリッジ収容領域に収容して、記録ヘッドとインク供給チューブにより接続する形式の記録装置に適用しても同様の作用を奏することは明らかである。

すなわち、インクカートリッジの露出面の所要の位置に接点を形成し、インクカートリッジが装着されたときインクカートリッジの接点に対向し、かつ接触可能な位置に前述の接点８５−１〜８５−６を形成すればよい。

なお、回路基板８３は、図２４及び図２５に示したように、インクカートリッジ４０の底面に形成され凹部にコイルバネ８９や円弧状板バネ８９’を挿入し、開口側に少なくとも両端に弾性変形可能な爪８８ａ，８８ａを突出するように形成した取付け板８８を介して取付けるか、または取付け板８８に半導体記憶手段８４を実装し、接点８５−１，８５−２，…，８５−６を形成しても同様の作用を奏する。この参考例によれば、治具を用意しておけば、ユーザによる無用な取り外しを防止しつつ、工場側では治具により爪８８ａを退避させて回路基板８３をインクカートリッジ４０から取り外すことができる。

また上述の参考例においては、インクカートリッジに位置決め用の突起を形成して回路基板を位置決めするようにしているが、図２６（ａ）に示したようにインクカートリッジ９０の壁面、この参考例ではインク供給口９１が形成されている底面９２に隣接する壁面９３に凹部９３ａを形成し、この凹部９３ａに回路基板８３を収容、固定するようにしても同様の作用を奏する。

そして、必要に応じて図２６（ｂ）に示したように一端部９４ａから剥離可能なフィルム９４を貼付して使用開始時まで封止するようにしてもよい。

本発明の記録装置の一実施例を、記録機構を中心として示す図。 同上装置におけるキャリッジの一実施例を示す組立て斜視図。 同上装置におけるキャリッジの一実施例を、インクカートリッジを装着した状態で示す図。 同上装置におけるキャリッジの一実施例を、インクカートリッジを装着した状態で示す上面図。 （ａ）、（ｂ）は、それぞれ同上キャリッジの接点機構の一実施例を示す図。 図（ａ）は、同上記録装置に適したインクカートリッジの一実施例を示す図であり、図（ｂ）は、インクカートリッジの一参考例を示す図である。 （ａ）乃至（ｃ）は、それぞれインクカートリッジに取付けられる回路基板の一実施例を、その表裏の構造、及び電極のサイズについて示す図であり、また（ｄ）、（ｅ）は、それぞれ接点との接触状態を示す図。 同上インクカートリッジの装填工程を示す図。 同上インクカートリッジの装填工程を示す図。 インク供給針が挿入されたインクカートリッジのインク供給口を中心とする移動量を示す図。 （ａ）乃至（ｃ）は、それぞれインクカートリッジの回路基板とホルダの接点との接触過程を示す図。 （ａ）、（ｂ）は、本発明の他の実施例を、インクカートリッジを装着した状態で示す断面図と上面図。 （ａ）、（ｂ）は、本発明の他の実施例を、インクカートリッジを装着した状態で示す断面図と上面図。 （ａ）、（ｂ）は、本発明の他の実施例を、インクカートリッジを装着した状態で示す断面図と上面図。 本発明の他の実施例を、インクカートリッジを装着した状態で示す断面図。 同上記録装置のヘッドホルダとインクカートリッジの参考例を示す断面図。 （ａ）、（ｂ）は、それぞれ同上ヘッドホルダに設けられている接点の一実施例を示す平面図と側面図。 （ａ）乃至（ｃ）は、それぞれ同上インクカートリッジに取付けられている接点基板の正面図、側面図、及び裏面図。 インクカートリッジの装入工程において最初に導通関係を形成した状態を示す断面図。 （ａ）、（ｃ）は、それぞれ同上インクカートリッジに取付けられている接点の他の参考例を示す平面図と、インクが付着した状態を示す図。 本発明の記録装置のヘッドホルダとインクカートリッジの他の参考例を示す断面図。 同上記録装置におけるインクカートリッジの装入工程において最初に導通関係を形成した状態を示す断面図。 （ａ）乃至（ｄ）は、それぞれ本発明の他の参考例を接点の配列形態で示す平面図、及び側面図。 （ａ）、（ｂ）は、それぞれインクカートリッジへの回路基板の取付け形態の他の参考例を示す断面図と、取付け板の構造を示す上面図。 インクカートリッジへの回路基板の取付け形態の他の参考例を示す断面図。 （ａ）、（ｂ）は、それぞれ回路基板の取付け形態の他の参考例を示す図。

符号の説明

１…タイミングベルト、２…駆動モータ、３…キャリッジ、４…ホルダ、５…記録ヘッド、６，７…インク供給針、８，２２ａ，２３ａ，３４，４５，５５…垂直壁、９，１０…軸、１１，１２…レバー、１３…壁、１３ａ…垂直部、１３ｂ…斜面部、１４，１５，４５ａ，４５ｂ，５５ａ，５５ｂ…突起、１６，１７…鈎部、１８，１９…フック部、２０，２１，１００〜１０９…弾性部材、２２，２３，３５，３６…窓、２２ｂ，２３ｂ，９２…底面、２２ｃ，２３ｃ…溝、２４，２５…接点機構、２６’，２６…スリット、２７，８８ａ…爪、２８…基体、２９’，２９…接点形成部材、２９’ａ，２９’ｂ，２９ａ，２９ｂ…領域、３０，３１，８３’，８３…回路基板、３１ａ，８３ａ，８３ｂ…貫通孔、３１ｂ，４８，５８，８２，９３ａ…凹部、３２…基台、３３…水平部、３７…フレキシブルケーブル、３８…制御手段、４０，５０，９０…インクカートリッジ、４１，５１…容器、４２…多孔質体、４３，５３…蓋体、４４，５４，９１…インク供給口、４５ｃ，４５ｄ，４６，５５ｃ，５５ｄ，５６…張り出し部、４７，５７…リブ、６０，８０−１’〜８０−６’，８０−１〜８０−６，８５−１’〜８５−６’，８５−１〜８５−６…接点、６０−１，６０−２…電極、６１，８４…半導体記憶手段、７０…板バネ、７０ａ…自由端、８１’，８１…基板、８６，８７…導電パターン、８８…取付け板、８９…コイルバネ、８９’…円弧状板バネ、９３…壁面、９４…フィルム、９４ａ…一端部、ｇ…先端、Ｈ１，Ｈ２…高さ、Ｋ…インク、Ｗ１，Ｗ２…幅、α…回動量、Δｈ…浮き、θ…角度。

Claims (3)

1. 記録ヘッドに連通するインク供給針を備えた記録装置に着脱可能に形成されたインクカートリッジにおいて、
   前記インク供給針が挿入される１つのインク供給口が形成された一対の長辺と一対の短辺とを有する底面と、前記底面に隣接する垂直壁とを備え、
   前記１つのインク供給口は前記一対の短辺のうちの一方の短辺の近傍に設けられ、
   前記一方の短辺に隣接する垂直壁の下部に、半導体記憶手段に接続された複数の電極が形成された回路基板が固定されていることを特徴とするインクカートリッジ。
2. 前記回路基板は、前記一方の短辺に隣接する垂直壁の幅方向の中心線に合わせて固定されていることを特徴とする請求項１に記載のインクカートリッジ。
3. 前記一方の短辺に隣接する垂直壁には前記回路基板を収容する凹部が形成され、前記凹部内に前記回路基板が固定されていることを特徴とする請求項１または２に記載のインクカートリッジ。

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