JP4949019B2 - α−オレフィン系重合体組成物、該組成物からなる成形体、新規重合体 - Google Patents

α−オレフィン系重合体組成物、該組成物からなる成形体、新規重合体 Download PDF

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Description

本発明はα−オレフィン系共重合体を含む樹脂組成物、該組成物からなる成形体、及び新規な共重合体に関する。
熱可塑性樹脂、特にポリオレフィンは、安価で剛性、耐湿性、および耐熱性に優れているため自動車材料や家電材料など広範囲な用途で使用されている。
一方で環境ホルモン、ダイオキシン等の問題から脱軟質塩ビの動向が強まる中、柔軟性、透明性を有するポリオレフィンが望まれていた。このような状況の中でTPOと称される熱可塑性ポリオレフィン系エラストマーは柔軟性に優れるが透明性が無く、またPPにスチレン系エラストマーを添加した系は、柔軟で透明性を有するがゴム弾性に劣り、高価であるため、用途が限られていた。(特許文献1〜11)
なお、特許文献12には、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体が記載されているが、透明性、柔軟性に優れかつゴム弾性を有する材料については記載されていない。
また、従来よりポリプロピレンは、剛性、耐熱性、透明性などに優れた熱可塑性成形材料として広く利用されている。このポリプロピレンは、柔軟性および耐衝撃性には劣るので、通常ポリプロピレンに軟質ゴム成分を配合している。
このようにポリプロピレンに軟質ゴム成分を配合すると、柔軟性および耐衝撃性が改善されたポリプロピレン組成物が得られるが、一方耐熱性が低下してしまうという問題点があった。またこのようなポリプロピレン組成物は、低温ヒーシール性の向上も望まれている。
このため柔軟性および耐衝撃性に優れるとともに耐熱性および低温ヒートシール性にも優れたポリプロピレン組成物の出現が望まれていた。
また結晶性ポリプロピレンは、引張強度、剛性、表面硬度、耐衝撃強度などの機械特性、光沢性、透明性などの光学特性、あるいは無毒性、無臭性などの食品衛生性などに優れており、特に食品包装の分野に広く利用されている。この結晶性ポリプロピレンフィルムは、ヒートシール温度まで加熱すると収縮してしまい、このフィルム単層ではヒートシールすることが困難である。このため結晶性ポリプロピレンフィルムには、通常ヒートシール層が設けられており、このヒートシール層は、一般的に低密度ポリエチレン、プロピレン・エチレンランダム共重合体などのポリマーで形成されている。
ところでこのようなヒートシール層を形成するポリマーには、(1)基材(結晶性ポリプロピレンフィルム)よりもかなり低温でヒートシールすることができること、(2)ヒートシール強度に優れていることと、ヒートシール強度の経時変化が少ないこと、(3)基材との密着性に優れていること、(4)基材と同等あるいはそれ以上に透明性に優れていること、(5)貯蔵時にブロッキングを生じないこと、(6)製袋装置、充填包装治具に粘着しないこと、(7)耐スクラッチ性に優れていることなどの性能が要求される。
しかしながら従来公知のヒートシール材料はこれら性能を全て満たしているとはいえず、たとえば上記の低密度ポリエチレンは低温でヒートシールすることはできるが、ヒートシール強度、基材との密着性および透明性に劣り、さらに包装治具などに粘着しやすいなどの問題点がある。
またプロピレン・エチレンランダム共重合体は、上記の性能(2)〜(7)を満たしているが、(1)を満たしておらず、プロピレン・エチレンランダム共重合体をヒートシール層とするポリプロピレン複合フィルムは、ヒートシール温度巾が狭い。このためこの複合フィルムを自動包装機、自動製袋機などによりヒートシールする際には、ヒートシール温度を厳密に管理しなくてはならないという問題点がある。さらにプロピレン・エチレンランダム共重合体とエチレン・α−オレフィン共重合体とのブレンド物をヒートシール材料として用いることも提案されているが、このブレンド物は、プロピレン・エチレンランダム共重合体に比べて低温ヒートシール性は改良されているが、透明性に劣っている。
ところで先に本出願人は、プロピレン含有率が55〜85重量%であり、示差走査熱量計で測定される結晶融解熱量が20〜80J/gであるプロピレン・1−ブテンランダム共重合体は、透明性に優れ、かつ低温ヒートシール性も良好であって、ヒートシール材料として有用であることを見出した。そしてこのプロピレン・1−ブテンランダム共重合体とアイソタクティックポリプロピレンとからなり、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体を50重量%以上の量で含有する組成物をポリプロピレンフィルムのヒートシール層として用いることを提案した(特許文献13)。しかしながら、この組成物から形成されるヒートシール層は、低温ヒートシール性および耐ブロッキング性に優れているが、前記のプロピレン・エチレンランダム共重合体から形成されるヒートシール層に比べると耐ブロッキング性、耐スクラッチ性がやや劣る。
またプロピレン・1−ブテン共重合体と、結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体とからなり、プロピレン・1−ブテン共重合体を10〜40重量%の量で含有する組成物を、アイソタクティックポリプロピレンのヒートシール層とする複合フィルムもヒートシール性に優れた複合フィルムとして本出願人によって提案されている(特許文献14)。
しかしながらこのようなポリプロピレンフィルムは、より高速包装に適用しうるような特性が望まれており、低温ヒートシール性の向上とともに優れたスリップ性、耐ブロッキング性が望まれている。
特開平08−238733号公報にはメタロセン触媒で合成したプロピレン・1−ブテン共重合体と、結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体とからヒートシール層とする複合フィルムが示されているが、プロピレン・1−ブテン共重合体の融点を70℃付近にすると結晶化速度が遅くなり、生産性が低下するといった問題点があった。また、プロピレン・1−ブテン共重合体の含量が多いと、成形性の低下や、フィルム外観の悪化が発生し易いという問題点があった(特許文献15)。
架橋型オレフィン系熱可塑性エラストマーは、省エネルギー、省資源タイプのエラストマーとして、特に天然ゴムの代替として自動車部品、工業機械部品、電子・電気機器部品、建材等に広く使用されている。
架橋型オレフィン系熱可塑性エラストマーは、A.Y.Coran らの文献(Rubber Chemistry and Technology、53巻 (1980年)、141ページ)に詳細に記されているように、広く知られている(非特許文献1)。
一方で非架橋型あるいは部分架橋型のオレフィン系熱可塑性エラストマーについては、たとえば、前記特許文献1〜9に記載されている。
しかしながら非架橋型または部分架橋型熱可塑性エラストマーはゴム的性質(永久伸び、圧縮永久歪など)、耐熱性などに優れるものの、耐摩耗性、耐傷つき性に劣るために軟
質塩ビを代替するには至っておらず、環境問題、廃棄処理問題等のない軟質塩ビを代替しうる耐摩耗性、耐傷つき性に優れたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物の出現が望まれていた。
特公昭53−21021号公報 特公昭55−18448号公報 特公昭56−15741号公報 特公昭56−15742号公報 特公昭58−46138号公報 特公昭58−56575号公報 特公昭59−30376号公報 特公昭62−938号公報 特公昭62−59139号公報 特開平7−149999号公報 特開平8−27353号公報 特開平3−200813号公報 特開昭54−114887号公報 特公昭61−42626号公報 特開平08−238733号公報 Rubber Chemistry and Technology、53巻 (1980年)、141ページ
本発明が解決しようとする第1の課題は、透明性、柔軟性、ゴム弾性、耐熱性、耐磨耗性などから選ばれる物性が改善された熱可塑性樹脂組成物、および該組成物からなる成形体を提供することにある。
また本発明は、透明性、柔軟性、ゴム弾性、耐熱性、耐磨耗性などに優れた熱可塑性樹脂組成物を与えることができるα−オレフィン系共重合体を提供することも課題とする。
本発明が解決しようとする第2の課題は、剛性および耐衝撃性に優れ、かつ耐白化性、耐摩耗性、ヒートシール性のバランスに優れたポリプロピレン樹脂組成物を提供することにある。
本発明が解決しようとする第3の課題は、従来の非架橋または部分架橋型熱可塑性エラストマーの性能を保持し、かつ耐摩耗性、柔軟性にも優れたプロピレン系重合体組成物を提供することにある。
本発明は、熱可塑性樹脂にα−オレフィン系共重合体(S)を配合することにより、熱可塑性樹脂の物性を改善することことに基づく物性が改善された熱可塑性樹脂組成物、およびそれから得られる成形体を提案するものであり、さらにそのようなα−オレフィン系共重合体を提供するものである。
本発明は、エチレン由来の構成単位を1〜30モル%、プロピレン由来の構成単位を30〜79モル%、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位を10〜50モル%(ただしエチレン由来の構成単位と炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位との合計量は21から70モル%である)の量で含み、かつo−ジクロロベンゼン溶液で測定した13C−NMRで、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位のCH(メチン)に由来するシグナルのうち、最も高磁場で存在するピークを34.4ppmと定めたシグ
ナルチャートにおいて、約22.0〜20.9ppmの吸収強度Aと約19.0〜20.6ppmの吸収強度Bが、プロピレンメチルに帰属される約19.0〜22.0ppmの吸収強度Cに対して、下記の関係式(i)と(ii)を満たすα−オレフィン系共重合体(I)と、
(A/C)×100≦8・・・・・・ (i)
(B/C)×100≧60・・・・・・ (ii)
他の熱可塑性樹脂(II)とを含む熱可塑性樹脂組成物、およびそれから得られる成形体を提供する。
また本発明の別の態様においては、エチレンと、プロピレンと、炭素数4〜20のα−オレフィンを、下記一般式(1)で表される遷移金属化合物を含む触媒の存在下に重合して得られ、
エチレン由来の構成単位を1から30モル%、プロピレン由来の構成単位を30〜79モル%、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位を10〜50モル%(ただしエチレン由来の構成単位と炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位との合計量は21から70モル%である)の量で含むα−オレフィン系共重合体(I’)と他の熱可塑性樹脂(II)とを含む熱可塑性樹脂組成物、およびそれから得られる成形体を提供する。
Figure 0004949019
[式(1)中、MはTi,Zr、Hf、Rn,Nd、SmまたはRuであり、CpおよびCpはMとπ結合しているシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基、またはそれらの誘導体基であり、CpとCpは異なる基であり、XおよびXは、アニオン性配位子または中性ルイス塩基配位子であり、ZはC,O,B,S,Ge,SiまたはSn原子あるいはこれらの原子を含有する基である。]。
前記α−オレフィン系共重合体(I)またはα−オレフィン系共重合体(I’)において、示差走査型熱量計(DSC)により測定した融解ピークが存在せず、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.01〜10dl/gの範囲にあり、GPCによる分子量分布が4以下であり、ガラス転移温度Tgが−5℃以下であるα−オレフィン系共重合体である前記の熱可塑性樹脂組成物およびそれから得られる成形体は、本発明の好ましい態様である。
本発明は新規なα−オレフィン系共重合体として、前記した特徴を有するα−オレフィン系共重合体(I)およびα−オレフィン系共重合体(I’)を提供する。
また本発明は、プロピレン系重合体(A)50〜99.8重量%と
プロピレンから導かれる構成単位を90〜40モル%の量で含有し、プロピレンを除く炭素原子数2〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位を10〜60モル%の量で含み、かつo−ジクロロベンゼン溶液で測定した13C−NMRで、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位のCH(メチン)に由来するシグナルのうち、最も高磁場で存在
するピークを34.4ppmと定めたシグナルチャートにおいて、約22.0〜20.9ppmの吸収強度Aと約19.0〜20.6ppmの吸収強度Bが、プロピレンメチルに帰属される約19.0〜22.0ppmの吸収強度Cに対して、下記の関係式(i)と(ii)を満たす、プロピレン・α−オレフィン共重合体(B)0.2〜50重量%
(A/C)×100≦8・・・・・・ (i)
(B/C)×100≧60・・・・・・ (ii)
を含むことを特徴とするポリプロピレン樹脂組成物、およびそれから得られる成形体を提供する。
本発明の別の態様として、
プロピレン系重合体(A)50〜99.8重量%と
プロピレンと、炭素数2〜20のα−オレフィン(ただしプロピレンを除く)を、前記一般式(1)で表される遷移金属化合物を含む触媒の存在下に重合して得られ、プロピレンから導かれる構成単位を90〜40モル%の量で含有し、プロピレンを除く炭素原子数2〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位を10〜60モル%の量で含むプロピレン・α−オレフィン共重合体(BB)(ただしプロピレン・エチレン2元共重合体を除く)0.2〜50重量%を含むことを特徴とするポリプロピレン樹脂組成物、およびそれから得られる成形体を提供する。
さらに本発明は、非架橋であるかまたは部分架橋されたオレフィン系熱可塑性エラストマー(X)30〜80重量部と、プロピレン系重合体(Y)0〜40重量部と、プロピレン由来の構成単位を30〜80モル%、エチレン由来の構成単位を0〜30モル%、炭素数4〜20のα−オレフィン成分由来の構成単位を10〜50モル%(ここでプロピレン由来の構成単位、エチレン由来の構成単位、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位の合計量は100モル%)の量含み、かつo−ジクロロベンゼン溶液で測定した13C−NMRで、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位のCH(メチン)に由来するシグナルのうち、最も高磁場で存在するピークを34.4ppmと定めたシグナルチャートにおいて、約22.0〜20.9ppmの吸収強度Aと約19.0〜20.6ppmの吸収強度Bが、プロピレンメチルに帰属される約19.0〜22.0ppmの吸収強度Cに対して、下記の関係式(i)と(ii)を満たすプロピレン・α−オレフィン共重合体(Z)5〜60重量部(ここで(X)、(Y)、(Z)の合計は100重量部である)
(A/C)×100≦8・・・・・・ (i)
(B/C)×100≧60・・・・・・ (ii)
を含有するプロピレン系共重合体組成物、およびそれから得られる成形体を提供する。
本発明の別の態様としては、非架橋であるかまたは部分架橋されたオレフィン系熱可塑性エラストマー(X)30〜80重量部と、プロピレン系重合体(Y)0〜40重量部と、プロピレンと、炭素数4〜20のα−オレフィン(ただしプロピレンを除く)と、必要に応じてエチレンとを、前記一般式(1)で表される遷移金属化合物を含む触媒の存在下に重合して得られ、プロピレン由来の構成単位を30〜80モル%、エチレン由来の構成単位を0〜30モル%、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位を10〜50モル%(ここでプロピレン由来の構成単位、エチレン由来の構成単位、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位の合計量は100モル%)の量含むプロピレン・α−オレフィン共重合体(ZZ)5〜60重量部(ここで(X)、(Y)、(ZZ)の合計は100重量部である)を含有するプロピレン系共重合体組成物、およびそれから得られる成形体を提供する。
本発明により透明性、柔軟性、ゴム弾性、耐熱性、耐磨耗性にバランス良く優れている
熱可塑性樹脂組成物およびそれから得られる成形体が提供される。
本発明によれば、熱可塑性樹脂に配合することにより、透明性、柔軟性、耐熱性、耐磨耗性のバランスに優れた熱可塑性樹脂組成物を提供し得るα−オレフィン系共重合体も提供される。
また本発明によって、剛性および耐衝撃性に優れ、かつ耐白化性、耐摩耗性、ヒートシール性のバランスに優れたポリプロピレン樹脂組成物が提供される。
さらに本発明によれば、ゴム的性質(永久伸び、圧縮永久歪など)、耐熱性などに優れ、耐摩耗性、耐傷つき性にも優れたプロピレン系共重合体組成物が提供される。
本発明は、熱可塑性樹脂にα−オレフィン系共重合体(S)を配合することによって熱可塑性樹脂の物性を改善されることに基づくもので、物性が改善された熱可塑性樹脂組成物、およびそれから得られる成形体を提供するものであり、さらにそのようなα−オレフィン系共重合体を提供するものである。
本発明の第1の具体的な例
本発明によって提供される熱可塑性樹脂にα−オレフィン系共重合体(S)を配合した物性が改善された熱可塑性樹脂組成物の第1の具体的な例として、下記のような樹脂組成物を挙げることができる。
すなわち、エチレン由来の構成単位を1から30モル%、プロピレン由来の構成単位を30〜79モル%、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位を10〜50モル%(ただしエチレン由来の構成単位と炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位との合計量は21から70モル%である)の量で含み、かつo−ジクロロベンゼン溶液で測定した13C−NMRで、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位のCH(メチン)に由来するシグナルのうち、最も高磁場で存在するピークを34.4ppmと定めたシグナルチャートにおいて約22.0〜20.9ppmの吸収強度Aと約19.0〜20.6ppmの吸収強度Bがプロピレンメチルに帰属される約19.0〜22.0ppmの吸収強度Cに対して、下記の関係式(i)と(ii)を満たすα−オレフィン系共重合体(I)と、
(A/C)×100≦8・・・・・・ (i)
(B/C)×100≧60・・・・・・ (ii)
他の熱可塑性樹脂(II)とを含む熱可塑性樹脂組成物を挙げることができる。
また本発明の別の態様として、エチレンと、プロピレンと、炭素数4〜20のα−オレフィンを、下記一般式(1)で表される遷移金属化合物を含む触媒の存在下に重合して得られ、
エチレン由来の構成単位を1から30モル%、プロピレン由来の構成単位を30〜79モル%、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位を10〜50モル%(ただしエチレン由来の構成単位と炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位との合計量は21から70モル%である)の量で含むα−オレフィン系共重合体(I’)と他の熱可塑性樹脂(II)とを含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物;
Figure 0004949019
[式(1)中、MはTi,Zr、Hf、Rn,Nd、SmまたはRuであり、CpおよびCpはMとπ結合しているシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基、またはそれらの誘導体基であり、CpとCpは異なる基であり、XおよびXは、アニオン性配位子または中性ルイス塩基配位子であり、ZはC,O,B,S,Ge,SiまたはSn原子あるいはこれらの原子を含有する基である。]。
このような熱可塑性樹脂組成物を構成する成分について以下に説明する。
α−オレフィン系共重合体(I)
まずα−オレフィン系共重合体(I)について説明する。
本発明に係るα−オレフィン系共重合体(I)においては13CNMRによる測定によるシグナルの強度が、以下のような関係を満たす。すなわち、
o−ジクロロベンゼン溶液で測定した13C−NMRで、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位のCH(メチン)由来のシグナルのうち、最も高磁場で存在するピークを34.4ppmと定めたシグナルチャートにおいて、約22.0〜20.9ppmの吸収強度Aと約19.0〜20.6ppmの吸収強度Bがプロピレンメチルに帰属される約19.0〜22.0ppmの吸収強度Cに対して、下記の関係式(i)と(ii)を満たし、好ましくは、関係式(i)’、(ii)’、更に好ましくは関係式(i)’’、(ii)’’を満たすことが好ましい。
(A/C)×100≦8・・・・・・ (i)
(B/C)×100≧60・・・・・・ (ii)
(A/C)×100≦7・・・・・・ (i)’
(B/C)×100≧64・・・・・・ (ii)’
(A/C)×100≦6・・・・・・ (i)’’
(B/C)×100≧68・・・・・・ (ii)’’
なお、この構造は、以下のようにして測定される。すなわち、試料50mgをo−ジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン=5/1の混合溶媒約0.5mlに溶解したものを日本電子製EX−400型NMR測定装置を用い、シングルプロトンパルスデカップリングの測定モードで、パルス幅4.7μs、パルス間隔5.5s、180ppmの観測範囲で、化学シフト基準を炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位のCH(メチン)に由来するシグナルのうち、最も高磁場のピークを34.4ppmとして、120℃で13C−NMR測定を行う。積算回数は、10,000回以上とする。なお、共重合体が1−ブテン由来の構成単位を含む場合は、1−ブテン由来の構成単位のCH(メチン)由来のシグナルの、最も高磁場側のピークを34.4ppmとするものとする。α−オレフィン系共重合体(I)がこのような範囲にあるとシンジオタクティック性に優れ透明性、柔軟性、耐摩耗性に優れる傾向にある。α−オレフィン系重合体(I)における炭素数4〜20のα−オレフィンは、1−ブテンであることが好ましい。
本発明に係るα−オレフィン系共重合体(I)はエチレン由来の構成単位を1〜30モル%、プロピレン由来の構成単位を30〜79モル%、炭素数4〜20のα−オレフィン
由来の構成単位を10〜50モル%(ここで該共重合体(I)中のエチレン由来の構成単位、プロピレン由来の構成単位、炭素数4から20のα−オレフィン由来の構成単位の合計を100モル%とし、エチレン由来の構成単位と炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位との合計量は21〜70モル%である)、好ましくはエチレン由来の構成単位を3〜25モル%、プロピレン由来の構成単位を35〜75モル%、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位を20〜45モル%(ここで該共重合体(I)中のエチレン由来の構成単位、プロピレン由来の構成単位、炭素数4から20のα−オレフィン由来の構成単位の合計を100モル%とし、エチレン由来の構成単位と炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位との合計量は25〜65モル%である)、特に好ましくはエチレン由来の構成単位を3〜25モル%、プロピレン由来の構成単位を35〜65モル%、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位を20〜45モル%(ここで該共重合体(I)中のエチレン由来の構成単位、プロピレン由来の構成単位、炭素数4から20のα−オレフィン由来の構成単位の合計を100モル%とし、エチレン由来の構成単位と炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位との合計量は35〜65モル%である)、さらに好ましくはエチレン由来の構成単位を5〜25モル%、プロピレン由来の構成単位を40〜65モル%、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位を20〜40モル%含んでいる(ここで該共重合体(I)中のエチレン由来の構成単位、プロピレン由来の構成単位、炭素数4から20のα−オレフィン由来の構成単位の合計を100モル%とし、エチレン由来の構成単位と炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位との合計量は35〜60モル%である)。このような量でエチレン由来の構成単位、プロピレン由来の構成単位、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位を含有するα−オレフィン系共重合体(I)は、熱可塑性樹脂との相溶性が良好となり、得られるα−オレフィン系共重合体は、充分な透明性、柔軟性、ゴム弾性、耐摩耗性を発揮する傾向がある。
また本発明の新規なα−オレフィン系共重合体(I−a)は、
エチレン由来の構成単位を1〜30モル%、プロピレン由来の構成単位を30〜69モル%、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位(A)を10〜50モル%(ここで該共重合体(I−a)中のエチレン由来の構成単位、プロピレン由来の構成単位、炭素数4から20のα−オレフィン由来の構成単位の合計を100モル%とし、エチレン成分単位と炭素数4〜20のα−オレフィン由来の成分単位との合計量は31〜70モル%である)、好ましくはエチレン由来の構成単位を3〜25モル%、プロピレン由来の構成単位を35〜65モル%、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位(A)を20〜45モル%(ここで該共重合体(I−a)中のエチレン由来の構成単位、プロピレン由来の構成単位、炭素数4から20のα−オレフィン由来の構成単位の合計を100モル%とし、エチレン由来の構成単位と炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成成分単位との合計量は35〜65モル%である)、さらに好ましくはエチレン由来の構成単位を5〜25モル%、プロピレン由来の構成単位を40〜65モル%、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位(A)を20〜40モル%含んでいる(ここで該共重合体(I−a)中のエチレン由来の構成単位、プロピレン由来の構成単位、炭素数4から20のα−オレフィン由来の構成単位の合計を100モル%とし、エチレン由来の構成単位と炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位との合計量は35〜60モル%である)。
組成がこの範囲にあると、特に熱可塑性樹脂との相溶性が良好となり、得られるα−オレフィン系共重合体(I−a)は、充分な透明性、柔軟性、ゴム弾性、耐摩耗性を発揮する傾向がある。なお上記α−オレフィン系共重合体(I−a)は、前記α−オレフィン系共重合体(I)に含まれるものである。
このようなα−オレフィン系共重合体(I)を調製する際に用いられるα−オレフィンとしては、炭素数が4〜20、好ましくは4〜12の範囲にあれば特に限定されず、直鎖状であっても、分岐を有していてもよい。
このようなα−オレフィンとしては、具体的には、例えば、1―ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプタン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1―ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン等が挙げられ、1―ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテンが好ましく、さらに1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンが好ましく、特に1−ブテンが好ましい。これらのα−オレフィンは、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。例えば、炭素数4〜20のα−オレフィンの内から選択される1種のα−オレフィン(イ)と、該炭素数4〜20のα−オレフィンの内から選択され、上記と異なるα−オレフィン(ロ)とを、(イ)/(ロ)=(50〜99モル%)/(1〜50モル%)((イ)+(ロ)=100モル%)の量比で用いることができる。
このα−オレフィン系共重合体(I)中には、上記α−オレフィン由来の構成単位以外に、スチレンなどの芳香族ビニル化合物由来の構成単位、2個以上の2重結合を有する上記ポリエン系不飽和化合物(ポリエン)由来の構成単位、アルコール、カルボン酸、アミン及びこれら誘導体等からなる構成単位等が含まれていてもよい。またエチレン、プロピレン、炭素数4から20のα−オレフィン以外の構成単位が含まれていない態様も好ましい態様である。
α−オレフィン系共重合体(I)は、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が、通常0.01〜10dl/g、好ましくは0.05〜10dl/gの範囲にあることが望ましい。該α−オレフィン系共重合体(I)の極限粘度[η]が、前記範囲内にあると、耐候性、耐オゾン性、耐熱老化性、低温特性、耐動的疲労性などの特性に優れたα−オレフィン系共重合体となる。
このα−オレフィン系共重合体(I)は、単一のガラス転移温度を有し、かつ示差走査熱量計(DSC)によって測定したガラス転移温度Tgが、通常−5℃以下、好ましくは−10℃以下、特に好ましくは−15℃以下の範囲にあることが望ましい。該α−オレフィン系共重合体(I)のガラス転移温度Tgが前記範囲内にあると、耐寒性、低温特性に優れる。
またGPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn、ポリスチレン換算、Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)は4.0以下、好ましくは1.5〜3.0であることが好ましい。この範囲にあると、透明性、耐傷付性、耐衝撃性が良好となるため好ましい。また示差走査熱量計(DSC)によって測定した融解ピークが、存在しないことが望ましい。この場合、柔軟性、耐傷付性、透明性、耐白化性に優れる。
α−オレフィン系共重合体(I)の製造
このようなα−オレフィン共重合体(I)は、下記に示すメタロセン系触媒の存在下にプロピレンとエチレンとα−オレフィンを共重合させて得ることができる。
このようなメタロセン系触媒としては、
(a)下記一般式(1)で表される遷移金属化合物と、
(b)(b−1)上記遷移金属化合物(a)中の遷移金属Mと反応してイオン性の錯体を形成する化合物、
(b−2)有機アルミニウムオキシ化合物、
(b−3)有機アルミニウム化合物
から選ばれる少なくとも1種の化合物とからなる少なくとも1つの触媒系が挙げられる。
Figure 0004949019
[式(1)中、MはTi,Zr、Hf、Rn,Nd、SmまたはRuであり、CpおよびCpはMとπ結合しているシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基、またはそれらの誘導体基であり、XおよびXは、アニオン性配位子または中性ルイス塩基配位子であり、ZはC,O,B,S,Ge,SiまたはSn原子あるいはこれらの原子を含有する基である。]。
上記一般式(1)で表される遷移金属化合物の内でも、CpとCpが異なる基である遷移金属化合物が挙げられ、より好ましくはCpおよびCpのうちのいずれか一方の基がシクロペンタジエニル基またはその誘導体基であり、もう一方の基がフルオレニル基またはその誘導体基であるような遷移金属化合物が挙げられる。これらの内でも、CpおよびCpのうちのいずれか一方の基がシクロペンタジエニル基またはその誘導体基であり、もう一方の基がフルオレニル基またはその誘導体基であることが好ましい。
本発明においては、上記α−オレフィン共重合体(I)製造用の触媒としては、上記のようなメタロセン系触媒が好ましく用いられるが、場合によっては上記メタロセン系触媒以外の、従来より公知の固体状チタン触媒成分と有機アルミニウム化合物とからなるチタン系触媒や、可溶性バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなるバナジウム系触媒を用いることもできる。
本発明では、好ましくは上記のようなメタロセン系触媒の存在下に、エチレン、プロピレンとα−オレフィンを通常液相で共重合させる。この際、一般に炭化水素溶媒が用いられるが、プロピレンを溶媒として用いてもよい。共重合はバッチ法または連続法のいずれの方法でも行うことができる。
メタロセン系触媒を用い、共重合をバッチ法で実施する場合には、重合系内の遷移金属化合物(a)は、重合容積1リットル当り、通常0.00005〜1ミリモル、好ましくは0.0001〜0.5ミリモルとなるような量で用いられる。
イオン化イオン性化合物(b−1)は、遷移金属化合物(a)に対するイオン化イオン性化合物のモル比((b−1)/(a))で、0.5〜20、好ましくは1〜10となるような量で用いられる。
有機アルミニウムオキシ化合物(b−2)は、遷移金属化合物(a)中の遷移金属原子(M)に対するアルミニウム原子(Al)のモル比(Al/M)で、1〜10000、好ましくは10〜5000となるような量で用いられる。また有機アルミニウム化合物(b
−3)は、重合容積1リットル当り、通常約0〜5ミリモル、好ましくは約0〜2ミリモルとなるような量で用いられる。
共重合反応は、通常、温度が−20〜150℃、好ましくは0〜120℃、さらに好ましくは0〜100℃の範囲で、圧力が0を超えて〜80kg/cm、好ましくは0を超えて〜50kg/cmの範囲の条件下に行なわれる。
また反応時間(重合が連続法で実施される場合には平均滞留時間)は、触媒濃度、重合温度などの条件によっても異なるが、通常5分間〜3時間、好ましくは10分間〜1.5時間である。
エチレンとプロピレンとα−オレフィンは、上述のような特定組成のα−オレフィン共重合体(I)が得られるような量でそれぞれ重合系に供給される。なお共重合に際しては、水素などの分子量調節剤を用いることもできる。上記のようにしてエチレンとプロピレンとα−オレフィンを共重合させると、α−オレフィン共重合体(I)は通常これを含む重合液として得られる。この重合液は常法により処理され、α−オレフィン共重合体(I)が得られる。
α−オレフィン系重合体(I’)
本発明のα−オレフィン系重合体(I’)は、
エチレンと、プロピレンと、炭素数4〜20のα−オレフィンを、下記一般式(1)で表される遷移金属化合物を含む触媒の存在下に重合して得られ、
エチレン由来の構成単位を1から30モル%、プロピレン由来の構成単位を30〜79モル%、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位を10〜50モル%(ただしエチレン由来の構成単位と炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位との合計量は21から70モル%である)の量で含むα−オレフィン系共重合体(I’)である;
Figure 0004949019
[式(1)中、MはTi,Zr、Hf、Rn,Nd、SmまたはRuであり、CpおよびCpはMとπ結合しているシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基、またはそれらの誘導体基であり、CpとCpは異なる基であり、XおよびXは、アニオン性配位子または中性ルイス塩基配位子であり、ZはC,O,B,S,Ge,SiまたはSn原子あるいはこれらの原子を含有する基である。]。
用いられるα−オレフィン、量比、他の成分、[η]、Tg、Mw/Mn、融解ピークの有無、遷移金属化合物(1)を含む触媒などは、重複を避けるため記載しないが、αオレフィン系共重合体(I)についてと同じである。
また本発明のα−オレフィン系重合体(I’−a)は、(I’)に含まれるものであり、エチレン由来の構成単位を1〜30モル%、プロピレン由来の構成単位を30〜69モル%、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位(A)を10〜50モル%(ここ
で該共重合体(I’−a)中のエチレン由来の構成単位、プロピレン由来の構成単位、炭素数4から20のα−オレフィン由来の構成単位の合計を100モル%とし、エチレン由来の構成単位と炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位との合計量は31〜70モル%である)の割合で含有するものである。各成分単位の好ましい量比は、重複を避けるため記載しないが前述した共重合体(I’−a)と同じである。
本発明に係るα−オレフィン系共重合体(I)または(I’)は、JISA硬度が90以下、好ましくは80以下であり、引っ張り弾性率が100MPa以下、好ましくは70MPa以下であり、グロス変化率Δglossが60%以下、好ましくは50%以下である。
上記物性は、プレスシートを作製して測定する。成形条件は、190℃で余熱後、加圧(100kg/cm)2分で成形したのち、20℃で5分間加圧(100kg/cm)冷却することにより、測定項目に応じた厚みのシートを作製する。試験条件は、後述する実施例の方法で行う。
熱可塑性樹脂(II)
本発明に係るα−オレフィン系共重合体(I)またはα−オレフィン系共重合体(I’)以外の、その他の熱可塑性樹脂としては融点が50℃以上、好ましくは80℃以上、または融点が存在しない場合はガラス転移点が40℃以上、好ましくは80℃以上の熱可塑性樹脂であれば特に制限無く用いることができる。またその目的によって、熱可塑性樹脂として弾性率が高い樹脂(熱可塑性樹脂(IIa))と低い樹脂(熱可塑性樹脂(IIb))とを適宜使い分けることができる。
熱可塑性樹脂(IIa)
本発明に係る熱可塑性樹脂としては、弾性率が800MPa以上、好ましくは1000MPa以上である熱可塑性樹脂が用いられ、たとえばポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルおよびポリアセタールなどの結晶性熱可塑性樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイドなどの非熱可塑性樹脂が用いられる。なお前記弾性率は、熱可塑性樹脂をプレス成形した後、後述する実施例の方法で引っ張り試験を行うことにより求めることができる。成形条件は、DSCで測定した融点またはガラス転移温度の高い方の温度以上であって200〜300℃の間の適切な温度で余熱後、加圧(100kg/cm)3分で成形したのち、20℃で5分間加圧(100kg/cm)冷却することにより1mm厚のシートを作製することで行う。例えば後述するポリプロピレンの場合は、200℃で余熱後、加圧3分、冷却5分として行う。
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリメチルペンテン、ポリメチルブテンなどのオレフィン単独重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体などのオレフィン共重合体などを挙げることができ、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリメチルペンテンが好ましい。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族系ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレートなどを挙げることができ、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
ポリアミドとしては、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−10、ナイロン−12、ナイロン−46等の脂肪族ポリアミド、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンより製造される芳香族ポリアミドなどを挙げることができ、ナイロン−6が特に好ましい。
ポリアセタールとしては、ポリホルムアルデヒド(ポリオキシメチレン)、ポリアセト
アルデヒド、ポリプロピオンアルデヒド、ポリブチルアルデヒドなどを挙げることができ、ポリホルムアルデヒドが特に好ましい。
ポリスチレンは、スチレンの単独重合体であってもよく、スチレンとアクリロニトリル、メタクリル酸メチル、α−メチルスチレンとの二元共重合体であってもよい。
ABSとしては、アクリロニトリルから誘導される構成単位を20〜35モル%の量で含有し、ブタジエンから誘導される構成単位を20〜30モル%の量で含有し、スチレンから誘導される構成単位を40〜60モル%の量で含有するものが好ましく用いられる。
ポリカーボネートとしては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタンなどから得られるものを挙げることができ、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから得られるポリカーボネートが特に好ましい。
ポリフェニレンオキシドとしては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキシド)を用いることが好ましい。
これらの熱可塑性樹脂のなかでは、ポリオレフィンが好ましく、ポリプロピレンまたはポリブテン、ポリメチルペンテンを主体とした重合体がより好ましく、特に230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが、0.1〜200g/10分であるポリプロピレンが最も好ましい。
ポリプロピレンはアイソタクチックポリプロピレン、シンジオタチックポリプロピレンのいずれも用いられるが、アイソタクチックポリプロピレンが耐熱性に優れ好ましい。アイソタクチックポリプロピレンにはホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンンがいずれも好適に用いられる。
上記のような熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。さらに上記の熱可塑性樹脂とともに、上記以外の熱可塑性樹脂を用いてもよい。
熱可塑性樹脂(IIb)
本発明に係る熱可塑性樹脂としては、弾性率が800MPa未満、好ましくは700MPa未満である熱可塑性樹脂が用いられ、たとえばポリオレフィン、軟質塩ビ、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマーが用いられる。
このなかで、ポリオレフィンが最も好ましく、ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテンなどのオレフィン単独重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体などのオレフィン共重合体などを挙げることができ、中でもポリプロピレン、プロピレン・エチレンランダム共重合体が好ましく、シンジオタクティックポリプロピレンが最も好ましい。
また前記弾性率は、熱可塑性樹脂をプレス成形した後、後述する実施例の方法で引っ張り試験を行うことにより求めることができる。成形条件は、DSCで測定した融点またはガラス転移温度の高い方の温度以上であって、200〜300℃の温度で余熱後、加圧(100kg/cm)3分で成形したのち、20℃で加圧(100kg/cm)冷却することにより1mm厚のシートを作製することで行う。例えば前述のポリプロピレン、プロピレン共重合体(プロピレン・エチレン共重合体など含む)の場合は、200℃で余熱後、加圧3分、冷却5分として行う。
上記のような熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。さらに上記の熱可塑性樹脂とともに、上記以外の熱可塑性樹脂を用いてもよい。
熱可塑性樹脂組成物
次に、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物について説明する。
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、前記α−オレフィン系共重合体(I);1〜99重量部、好ましくは5〜90重量部、更に好ましくは、10〜80重量部と、熱可塑性樹脂(II);99〜1重量部、好ましくは95〜10重量部、更に好ましくは90〜10重量部とから形成されているか、または前記α−オレフィン系共重合体(I’);1〜99重量部、好ましくは5〜90重量部、更に好ましくは、10〜80重量部と、熱可塑性樹脂(II);99〜1重量部、好ましくは95〜10重量部、更に好ましくは90〜10重量部とから形成されている。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、前記α−オレフィン系共重合体に必要に応じて添加材配合されていてもよい。また、本発明の趣旨を逸脱しない限り他の合成樹脂を少量ブレンドすることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、公知の任意の方法を採用して製造することができ、たとえば、α−オレフィン系共重合体(I)またはα−オレフィン系共重合体(I’)と熱可塑性樹脂(II)および所望により添加される他成分を、押出機、ニーダー等を用いて溶融混練することにより得られる。
本発明に係わる熱可塑性樹脂組成物の引っ張り弾性率は好ましくは5MPa以上、より好ましくは10MPa以上である。耐熱性(TMA)は好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上である。グロス変化率ΔGlossは好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下である。残留歪みは好ましくは30%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下である。JIS A硬度が好ましくは95以下、より好ましくは93以下である。ヘイズが好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下である。
このうちでも、複数の物性が上記範囲に入ることが好ましく、耐熱性(TMA)、残留歪、△Glossがともに上記範囲に入ることがより好ましい。例えばTMAが120℃以上、残留歪20%以下、△Glossが50%以下を満たすような熱可塑性樹脂組成物が挙げられる。
この場合、測定項目に応じて、厚み1mmまたは2mmのプレスシートを作成して測定に供する。
成形条件は、DSCで測定した融点またはガラス転移温度の高い方の温度以上であって、200〜300℃の温度で余熱後、加圧(100kg/cm)3分で成形したのち、20℃で5分加圧(100kg/cm)冷却することにより所定の厚みのシートを作製することで行う。例えば代表的な条件としては、200℃で余熱後、加圧(100kg/cm)3分で成形したのち、20℃で5分加圧(100kg/cm)冷却することにより所定の厚みのシートを作製する。熱可塑性樹脂組成物が、例えば、ポリプロピレン、プロピレン共重合体(プロピレン・エチレンランダム共重合体などを含む)を含む場合は、この条件で成形して試験に供することができる。
また、各物性の試験方法は、後述する実施例に記載したとおりである。
熱可塑性樹脂組成物からなる成形体
上記のような本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、従来公知のポリオレフィン用途に広
く用いることができるが、特にポリオレフィン組成物をたとえばシート、未延伸または延伸フィルム、フィラメント、他の種々形状の成形体に成形して利用することができる。
成形体としては具体的には、押出成形、射出成形、インフレーション成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、プレス成形、真空成形、カレンダー成形、発泡成形どの公知の熱成形方法により得られる成形体が挙げられる。以下に数例挙げて成形体を
説明する。
本発明に係る成形体がたとえば押出成形体である場合、その形状および製品種類は特に限定されないが、たとえばシート、フィルム(未延伸)、パイプ、ホース、電線被覆、チューブなどが挙げられ、特にシート(表皮材)、フィルム、チューブ、医療用チューブ、モノフィラメント(不織布)などが好ましい。
本発明に係る熱可塑性組成物を押出成形する際には、従来公知の押出装置および成形条件を採用することができ、たとえば単軸スクリュー押出機、混練押出機、ラム押出機、ギヤ押出機などを用いて、溶融した熱可塑性組成物を特定のダイスなどから押出すことにより所望の形状に成形することができる。
延伸フィルムは、上記のような押出シートまたは押出フィルム(未延伸)を、たとえばテンター法(縦横延伸、横縦延伸)、同時二軸延伸法、一軸延伸法などの公知の延伸方法により延伸して得ることができる。
シートまたは未延伸フィルムを延伸する際の延伸倍率は、二軸延伸の場合には通常20〜70倍程度、また一軸延伸の場合には通常2〜10倍程度である。延伸によって、厚み5〜200μm程度の延伸フィルムを得ることが望ましい。
また、フィルム状成形体として、インフレーションフィルムを製造することもできる。インフレーション成形時にはドローダウンを生じにくい。
上記のような本発明に係る熱可塑性組成物からなるシートおよびフィルム成形体は、帯電しにくく、引張弾性率などの剛性、耐熱性、耐衝撃性、耐老化性、透明性、透視性、光沢、剛性、防湿性およびガスバリヤー性に優れており、包装用フィルムなどとして幅広く用いることができる。特に防湿性に優れるため、薬品の錠剤、カプセルなどの包装に用いられるプレススルーパック(press through pack)などに好適に用いられる。また本発明に係るα−オレフィン系共重合体(I)または他の熱可塑性樹脂との熱可塑性樹脂組成物は水系塗料により得られる塗膜への耐チッピング性付与を、塗膜外観を保ったままで行う場合、プライマーもしくは水系塗料への添加剤として使用可能な水性樹脂組成物としても用いられる。
また、フィラメント成形体は、たとえば溶融した熱可塑性組成物を、紡糸口金を通して押出すことにより製造することができる。具体的にはスパンボンド法、メルトブロン法が好適に用いられる。このようにして得られたフィラメントを、さらに延伸してもよい。この延伸は、フィラメントの少なくとも一軸方向が分子配向する程度に行なえばよく、通常5〜10倍程度の倍率で行なうことが望ましい。本発明に係る熱可塑性組成物からなるフィラメントは帯電しにくく、また透明性、剛性、耐熱性および耐衝撃性、伸縮性に優れている。
射出成形体は、従来公知の射出成形装置を用いて公知の条件を採用して、熱可塑性組成物を種々の形状に射出成形して製造することができる。本発明に係る熱可塑性組成物からなる射出成形体は帯電しにくく、透明性、剛性、耐熱性、耐衝撃性、表面光沢、耐薬品性
、耐磨耗性などに優れてり、自動車内装用トリム材、自動車用外装材、家電製品のハウジング、容器など幅広く用いることができる。
ブロー成形体は、従来公知のブロー成形装置を用いて公知の条件を採用して、プロピレン系重合体組成物をブロー成形することにより製造することができる。
たとえば押出ブロー成形では、上記プロピレン系重合体組成物を樹脂温度100〜300℃の溶融状態でダイより押出してチューブ状パリソンを形成し、次いでパリソンを所望形状の金型中に保持した後空気を吹き込み、樹脂温度130〜300℃で金型に着装することにより中空成形体を製造することができる。延伸(ブロー)倍率は、横方向に1.5〜5倍程度であることが望ましい。
また、射出ブロー成形では、上記熱可塑性組成物を樹脂温度100℃〜300℃でパリソン金型に射出してパリソンを成形し、次いでパリソンを所望形状の金型中に保持した後空気を吹き込み、樹脂温度120℃〜300℃で金型に着装することにより中空成形体を製造することができる。延伸(ブロー)倍率は、縦方向に1.1〜1.8倍、横方向に1.3〜2.5倍であることが好ましい。
本発明に係る熱可塑性組成物からなるブロー成形体は、透明性、柔軟性、耐熱性および耐衝撃性に優れるとともに防湿性にも優れている。
プレス成形体としてはモールドスタンピング成形体が挙げられ、たとえば基材と表皮材とを同時にプレス成形して両者を複合一体化成形(モールドスタンピング成形)する際の基材を本発明に係るプロピレン組成物で形成することができる。
このようなモールドスタンピング成形体としては、具体的には、ドアートリム、リアーパッケージトリム、シートバックガーニッシュ、インストルメントパネルなどの自動車用内装材が挙げられる。 本発明に係る熱可塑性組成物からなるプレス成形体は帯電しにくく、柔軟性、耐熱性、透明性、耐衝撃性、耐老化性、表面光沢、耐薬品性、耐磨耗性などに優れている。
本発明の第2の具体的な例
本発明によって提供される熱可塑性樹脂にα−オレフィン系共重合体(S)を配合した物性が改善された熱可塑性樹脂組成物の第2の具体的な例として、下記のような樹脂組成物を挙げることができる。
すなわち、プロピレン系重合体(A)50〜99.8重量%と、プロピレンから導かれる構成単位を90〜40モル%の量で含有し、プロピレンを除く炭素原子数2〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位を10〜60モル%の量で含み、かつo−ジクロロベンゼン溶液で測定した13C−NMRで、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位のCH(メチン)由来のシグナルのうち最も高磁場で存在するピークを、34.4ppmと定めたシグナルチャートにおいて、約22.0〜20.9ppmの吸収強度Aと約19.0〜20.6ppmの吸収強度Bが、プロピレンメチルに帰属される約19.0〜22.0ppmの吸収強度Cに対して、下記の関係式(i)と(ii)を満たすプロピレン・α−オレフィン共重合体(B)(ただしプロピレン・エチレン2元共重合体は除く)を、
(A/C)×100≦8・・・・・・ (i)
(B/C)×100≧60・・・・・・ (ii)
0.2〜50重量%を含むポリプロピレン樹脂組成物を挙げることができる。
また、プロピレン系重合体(A)50〜99.8重量%と、プロピレンと、炭素数2〜
20のα−オレフィン(ただしプロピレンを除く)を、前記一般式(1)で表される遷移金属化合物を含む触媒の存在下に重合して得られ、
プロピレンから導かれる構成単位を90〜40モル%の量で含有し、プロピレンを除く炭素原子数2〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位を10〜60モル%の量で含むプロピレン・α−オレフィン共重合体(BB)(ただしプロピレン・エチレン2元共重合体は除く)0.2〜50重量%を含むポリプロピレン樹脂組成物を挙げることができる。
プロピレン系重合体(A)
本発明で用いられるプロピレン系重合体の引張り弾性率は400Mpa以上であることが好ましく、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレンから少なくとも1種選ばれることが更に好ましい。 前記弾性率は、プロピレン系重合体をプレス成形した後、後述する実施例の方法で引っ張り試験を行うことにより求めることができる。成形条件は、200℃の温度で余熱後、加圧(100kg/cm)3分で成形したのち、20℃で5分間加圧(100kg/cm)冷却することにより1mm厚のシートを作製することで行う。
まず、アイソタクティックポリプロピレンから以下に説明する。
アイソタクティックポリプロピレンは、NMR法により測定したアイソタクティックペンタッド分率が0.9以上、好ましくは0.95以上のポリプロピレンである。
アイソタクティックペンタッド分率(mmmm)は、13C−NMRを使用して測定される分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクティック連鎖の存在割合を示しており、プロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である。具体的には、13C−NMRスペクトルで観測されるメチル炭素領域の全吸収ピーク中に占めるmmmmピークの分率として算出される値である。
なお、このアイソタクティックペンタッド分率(mmmm)は、以下のようにして測定される。
mmmm分率は、13C−NMRスペクトルにおけるPmmmm(プロピレン単位が5単位連続してアイソタクティック結合した部位における第3単位目のメチル基に由来する吸収強度)およびP(プロピレン単位の全メチル基に由来する吸収強度)の吸収強度から下記式(2)により求められる。
mmmm分率=Pmmmm/P (2)
NMR測定は、例えば次のようにして行われる。すなわち、試料0.35gをヘキサクロロブタジエン2.0mlに加熱溶解させる。この溶液をグラスフィルター(G2)で濾過した後、重水素化ベンゼン0.5mlを加え、内径10mmのNMRチューブに装入する。そして日本電子製GX−500型NMR測定装置を用い、120℃で13C−NMR測定を行う。積算回数は、10,000回以上とする。
アイソタクティックポリプロピレン(A)としては、プロピレン単独重合体またはプロピレンとプロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα−オレフィンとの共重合体を挙げることができる。ここで、プロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられ、エチレンまたは炭素原子数が4〜10のα−オレフィンが好ましい。
これらのα−オレフィンは、プロピレンとランダム共重合体を形成してもよく、ブロック共重合体を形成してもよい。これらのα−オレフィンから導かれる構成単位は、ポリプロピレン中に40モル%以下、好ましくは20モル%以下の割合で含んでいてもよい。
アイソタクティックポリプロピレン(A)は、ASTM D 1238に準拠して230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が0.01〜1000g/10分、好ましくは0.05〜500g/10分の範囲にあることが望ましい。
このようなアイソタクティックポリプロピレン(A)は、例えば(a)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分、(b)有機アルミニウム化合物、および(c)電子供与体からなるチーグラー触媒系を用いて重合することにより製造することができる。またメタロセン触媒を用いても同様に得ることができる。
次に、シンジオタクティックポリプロピレンについて以下に説明する。
シンジオタクティックポリプロピレンは、少量例えば、10モル%以下、好ましくは5モル%以下の量でエチレン、炭素数4以上のα−オレフィン等が共重合されていてもよい。このようなシンジオタクティックポリプロピレンの製造の際には、触媒としては、特開平10−300084に記載してあるメタロセン系触媒を例示することができる。
ここでシンジオタックティックペンタッド分率(rrrr、ペンタッドシンジオタクティシテー)が0.5以上、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、特に好ましくは0.80以上であるものであり、0.5以上のものは耐熱性、成形性に優れ、結晶性のポリプロピレンとしての特性が良好で好ましい。
なお、このシンジオタクティックペンタッド分率(rrrr)は、以下のようにして測定される。rrrr分率は、13C−NMRスペクトルにおけるPrrrr(プロピレン単位が5単位連続してシンジオタクティック結合した部位における第3単位目のメチル基に由来する吸収強度)およびPW (プロピレン単位の全メチル基に由来する吸収強度)の吸収強度から下記式(3)により求められる。
rrrr分率=Prrrr/P (3)
NMR測定は、たとえば次のようにして行われる。すなわち、試料0.35gをヘキサクロロブタジエン2.0mlに加熱溶解させる。この溶液をグラスフィルター(G2)で濾過した後、重水素化ベンゼン0.5mlを加え、内径10mmのNMRチューブに装入する。そして日本電子製GX−500型NMR測定装置を用い、120℃で13C−NMR測定を行う。積算回数は、10,000回以上とする。
また、シンジオタクティックポリプロピレンのメルトフローレート(MFR、190℃、2.16kg荷重)は、0.001〜1000g/10分、好ましくは0.01〜500g/10分であることが望ましい。MFRIがこのような範囲にあると、良好な流動性を示し、このシンジオタクティックポリプロピレンを他の成分と配合し易く、また得られた組成物から機械的強度に優れた成形品が得られる傾向がある。
プロピレン・α−オレフィン共重合体(B)
本発明に係るプロピレンα−オレフィン系共重合体(B)は、13CNMRによる測定によるシグナルの強度が、以下のような関係を満たす。すなわち、
o−ジクロロベンゼン溶液で測定した13C−NMRで、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位のCH(メチン)に由来するシグナルのうち、最も高磁場で存在するピークを34.4ppmと定めたシグナルチャートにおいて、約22.0〜20.9ppmの吸収強度Aと約19.0〜20.6ppmの吸収強度Bが、プロピレンメチルに帰属される約19.0〜22.0ppmの吸収強度Cに対して、下記の関係式(i)と(ii)を満たし、好ましくは、関係式(i)’、(ii)’、更に好ましくは関係式(i)’’、(ii)’’を満たすことが好ましい。
(A/C)×100≦8・・・・・・ (i)
(B/C)×100≧60・・・・・・ (ii)
(A/C)×100≦7・・・・・・ (i)’
(B/C)×100≧64・・・・・・ (ii)’
(A/C)×100≦6・・・・・・ (i)’’
(B/C)×100≧68・・・・・・ (ii)’’
なお、この構造は、以下のようにして測定される。すなわち、試
料50mgをo−ジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン=5/1の混合溶媒約0.5mlに溶解したものを日本電子製EX−400型NMR測定装置を用い、シングルプロトンパルスデカップリングの測定モードで、パルス幅4.7μs、パルス間隔5.5s、180ppmの観測範囲で、化学シフト基準を炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位のCH(メチン)に由来するシグナルのうち、最も高磁場のピークを34.4ppmとして、120℃で13C−NMR測定を行う。積算回数は、10,000回以上とする。なお、共重合体が1−ブテン由来の構成単位を含む場合は、1-ブテン由来の構成単位のCH(メチン)に由来するシグナルの内、最も高磁場側のピークを34.4ppmとするものとする。
プロピレンα−オレフィン系共重合体(B)がこのような範囲にあるとシンジオタクティック性に優れ透明性、剛性、耐摩耗性に優れる傾向にある。
なお、プロピレン・α−オレフィン系共重合体(B)においてα−オレフィンとしては、少なくとも炭素数4〜20のα−オレフィンを含有するものであることが好ましく、当該炭素数4〜20のα−オレフィンとしてはブテンがより好ましい。
本発明に係るプロピレン・α−オレフィン系共重合体(B)は、プロピレンから導かれる構成単位を90〜40モル%、好ましくは85〜45モル%、更に好ましくは80〜50モル%の量で含有し、プロピレンを除く炭素原子数2〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位を10〜60モル%、好ましくは15〜55モル%、更に好ましくは20〜50モル%の量で含有している(ただしプロピレン・エチレン2元共重合体は除く)。
プロピレン・α−オレフィン系共重合体(B)がこのような範囲にあると耐白化性、耐摩耗性、ヒートシール性に優れる傾向にある。
このようなプロピレン・α−オレフィン系共重合体(B)を調製する際に用いられるα−オレフィンとしては、プロピレンを除く炭素数が2〜20、好ましくは2〜12の範囲にあれば特に限定されず、直鎖状であっても、分岐、環状構造を有していてもよい。
このようなα−オレフィンとしては、具体的には、例えば、エチレン、1―ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプタン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1―ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2− メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテンおよび3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンのようなシクロオレフィン類、2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−イソプロピル−2−ノルボルネン、5−n−ブチル−2−ノルボルネン、5−イソブチル−2−ノルボルネン、5,6−ジメチル−2−ノルボルネン、5−クロロ−2−ノルボルネンおよび5−フルオロ−2−ノルボルネンのようなノルボルネン類等が挙げられ、1―ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、
1−デセン、4−メチル−1−ペンテンが好ましく、さらに1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンが好ましく、特に1−ブテンが好ましい。これらのα−オレフィンは、1種または2種以上組み合わせて用いることもできる。例えば、エチレン(イ)と、該炭素数4〜20のα−オレフィンの内から選択され、上記と異なるα−オレフィン(ロ)とを、(イ)/(ロ)=2/98〜50/50モル%((イ)+(ロ)=100モル%)の量比で用いることができる。
このプロピレン・α−オレフィン系共重合体(B)中には、上記α−オレフィン由来の構成単位以外に、少量のスチレンなどの芳香族ビニル化合物由来の構成単位、2個以上の2重結合を有する上記ポリエン系不飽和化合物(ポリエン)由来の構成単位、アルコール、カルボン酸、アミン及びこれら誘導体等からなる構成単位等が含まれていてもよい。また、プロピレン由来の構成単位とα−オレフィン由来の構成単位以外の構成単位を含有しない態様も1つの好ましい態様である。
プロピレン・α−オレフィン系共重合体(B)は、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が、通常0.01〜10dl/g、好ましくは0.05〜10dl/g、更に好ましくは、0.1〜5dl/gの範囲にあることが望ましい。該α−オレフィン系共重合体(B)の極限粘度[η]が、前記範囲内にあると、耐候性、耐オゾン性、耐熱老化性、低温特性、耐動的疲労性などの特性に優れたα−オレフィン系共重合体となる。
このプロピレン・α−オレフィン系共重合体(B)は、単一のガラス転移温度を有し、かつ示差走査熱量計(DSC)によって測定したガラス転移温度Tgが、通常0℃以下、好ましくは−3℃以下、特に好ましくは−5℃以下の範囲にあることが望ましい。該プロピレン・α−オレフィン系共重合体(B)のガラス転移温度Tgが前記範囲内にあると、耐寒性、低温特性に優れる。
またGPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn、ポリスチレン換算、Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)は4.0以下であることが好ましい。この範囲にあると、透明性、耐傷付性、耐衝撃性が良好となるため好ましい。
また示差走査熱量計(DSC)によって測定した融解ピークが、存在しないことが望ましい。この場合、柔軟性、耐摩耗性、透明性、耐白化性に優れる。
このようなプロピレン・α−オレフィン共重合体(B)は、下記に示すメタロセン系触媒の存在下にプロピレンとα−オレフィンを共重合させて得ることができる。
このようなメタロセン系触媒としては、
(a)下記一般式(1)で表される遷移金属化合物と、
(b)(b−1)上記遷移金属化合物(a)中の遷移金属Mと反応してイオン性の錯体を形成する化合物、
(b−2)有機アルミニウムオキシ化合物、
(b−3)有機アルミニウム化合物
から選ばれる少なくとも1種の化合物とからなる少なくとも1つの触媒系が挙げられる。
Figure 0004949019
[式(1)中、MはTi,Zr、Hf、Rn,Nd、SmまたはRuであり、CpおよびCpはMとπ結合しているシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基、またはそれらの誘導体基であり、XおよびXは、アニオン性配位子または中性ルイス塩基配位子であり、ZはC,O,B,S,Ge,SiまたはSn原子あるいはこれらの原子を含有する基である。]。
上記一般式(1)で表される遷移金属化合物の内でも、CpとCpが異なる基である遷移金属化合物が挙げられ、より好ましくはCpおよびCpのうちのいずれか一方の基がシクロペンタジエニル基またはその誘導体基であり、もう一方の基がフルオレニル基またはその誘導体基であるような遷移金属化合物が挙げられる。これらの内でも、CpおよびCpのうちのいずれか一方の基がシクロペンタジエニル基またはその誘導体基であり、もう一方の基がフルオレニル基またはその誘導体基であることが好ましい。
本発明においては、上記プロピレン・α−オレフィン共重合体(B)製造用の触媒としては、上記のようなメタロセン系触媒が好ましく用いられるが、場合によっては上記メタロセン系触媒以外の、従来より公知の固体状チタン触媒成分と有機アルミニウム化合物とからなるチタン系触媒や、可溶性バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなるバナジウム系触媒を用いることもできる。
具体的な製造条件については、重複を避けるため繰り返し記載はしないが、上記α−オレフィン共重合体(I)の製造について記載した方法に準じて製造することができる。
α−オレフィン系重合体(BB)
本発明のα−オレフィン系重合体(BB)は、
プロピレンと、炭素数2〜20のα−オレフィン(ただしプロピレンを除く)を、下記一般式(1)で表される遷移金属化合物を含む触媒の存在下に重合して得られ、
プロピレンから導かれる構成単位を90〜40モル%の量で含有し、プロピレンを除く炭素原子数2〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位を10〜60モル%の量で含むことを特徴としている(ただしプロピレン・エチレン2元共重合体を除く);
Figure 0004949019
[式(1)中、MはTi,Zr、Hf、Rn,Nd、SmまたはRuであり、CpおよびCpはMとπ結合しているシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基、またはそれらの誘導体基であり、CpとCpは異なる基であり、XおよびXは、アニオン性配位子または中性ルイス塩基配位子であり、ZはC,O,B,S,Ge,SiまたはSn原子あるいはこれらの原子を含有する基である。]。
用いられるα−オレフィン、量比、他の成分、[η]、Tg、Mw/Mn、融解ピークの有無、遷移金属化合物(1)を含む触媒などは、重複を避けるため記載しないが、αオレフィン系共重合体(B)についてと同じである。
エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)
本発明に係るエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)としては、エチレンと、炭素数3〜20、好ましくは3〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体が望ましい。 このようなα−オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1− ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げられる。これらは、単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましい。
また、このエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)の調製の際に、必要に応じて、他のコモノマーとして、たとえば1,6−ヘキサジエン、1,8−オクタジエン等のジエン類、あるいはシクロペンテン等の環状オレフィン類等を少量使用することができる。
エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)(エチレン・α−オレフィン・ポリエン共重合体を含む。)におけるエチレンから誘導される構成単位含有量(以下、エチレン含有量と称する。)は、通常、85〜99.9モル%、好ましくは90〜99.5モル%である。エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)の組成は、通常10mmφの試料管中で約200mgのエチレン・α−オレフィン共重合体を1mlのヘキサクロロブタジエンに均一に溶解させた試料の13C−NMRスペクトルを、測定周波数25.05MHz、スペクトル幅1500Hz、パルス繰返し時間4.2sec.、パルス幅6μsec.の条件下で測定して決定される。
エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)は、密度が0.850〜0.960g/cm、好ましくは0.850〜0.930g/cm 、さらに好ましくは0.850〜0.900g/cmである。なお、密度は、ASTM D1505に準拠し、密度勾配管を用いて測定した。また、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)は、
ASTM D−1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重下で測定したメルトフロート(以下、MFR(190℃)と略記する)が0.1〜70g/10分、好ましくは1
〜40g/10分の範囲内にある。エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)の分子構造は、直鎖状であってもよいし、また、長鎖あるいは短鎖の側鎖を有する分岐状であってもよい。
上記エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)の製造法については特に制限はないが、ラジカル重合触媒、フィリップス触媒、チーグラー・ナッタ触媒、あるいはメタロセン触媒を用いて、エチレンの単独重合、またはエチレンとα−オレフィンとを共重合することによって製造することができる。
無機充填剤(D)
本発明に係る無機充填剤(D)としては、微粉末タルク、カオリナイト、焼成クレー、パイロフィライト、セリサイト、ウオラスナイトなどの珪酸塩;沈降性炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物;酸化チタン、酸化亜鉛、亜鉛華、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムなどの酸化物;硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウムなどの硫酸塩;含水珪酸カルシウム、含水珪酸アルミニウム、含水珪酸、無水珪酸などの珪酸または珪酸塩;その他微粉末シリカ、カーボンブラックなどの粉末状充填剤、マイカ、ガラスフレークなどのフレーク状充填剤、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー、チタン酸カルシウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、セピオライト、PMF(Processed Mineral Fiber)、ゾノトライト、チタン酸カリ、エレスタダイト、ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状充填剤、ガラスバルン、フライアッシュバルンなどのバルン状充填剤などが挙げられる。
添加剤
本発明に係るポリプロピレン樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、発砲剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤等の添加剤を配合することができる。またエマルジョン化するためのアクリル系樹脂等が少量配合されていても良い。
ポリプロピレン樹脂組成物
本発明に係る樹脂組成物はプロピレン系重合体(A)50〜99.8重量%と前記プロピレン・α−オレフィン共重合体(B)0.2〜50重量%を含む(ここで(A)(B)の合計量は100重量%である)。さらに好ましくはプロピレン系重合体(A)55〜90重量%とプロピレン・α−オレフィン共重合体(B)10〜45重量%、特に好ましくはプロピレン系重合体(A)60〜85重量%とプロピレン・α−オレフィン共重合体(B)15〜40重量%、を含む(ここで(A)(B)の合計量は100重量%である)。
またはプロピレン系重合体(A)50〜99.8重量%と前記プロピレン・α−オレフィン共重合体(BB)0.2〜50重量%を含む(ここで(A)(BB)の合計量は100重量%である)。さらに好ましくはプロピレン系重合体(A)55〜90重量%とプロピレン・α−オレフィン共重合体(BB)10〜45重量%、特に好ましくはプロピレン系重合体(A)60〜85重量%とプロピレン・α−オレフィン共重合体(BB)15〜40重量%、を含む(ここで(A)(BB)の合計量は100重量%である)。
本発明に係るポリプロピレン樹脂組成物は、上記プロピレン系重合体(A)と、上記プロピレン・α−オレフィン共重合体(B)またはプロピレン・α−オレフィン共重合体(BB)を含み、必要に応じて、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)、上記無機充填剤(D)、上記添加剤の少なくとも1成分を含む。
本発明に係るポリプロピレン樹脂組成物が成分(C)および/または成分(D)を含む場合、プロピレン系重合体(A)は、組成物全体((A)+(B)、組成物が(C)および/または(D)を含む場合はこれらも含む)に対して、30〜99.8重量%、好まし
くは30〜95重量%、さらに好ましくは40〜80重量%の量で含有されている。
プロピレン・α−オレフィン共重合体(B)は、組成物全体に対して、0.2〜70重量%、好ましくは1〜60重量%、さらに好ましくは5〜50重量%の量で含有されている。
またはプロピレン・α−オレフィン共重合体(BB)を用いる場合であって、成分(C)および/または成分(D)を含む場合、プロピレン系重合体(A)は、組成物全体((A)+(BB)、組成物が(C)および/または(D)を含む場合はこれらも含む)に対して、30〜99.8重量%、好ましくは30〜95重量%、さらに好ましくは40〜80重量%の量で含有されている。プロピレン・α−オレフィン共重合体(BB)は、組成物全体に対して、0.2〜70重量%、好ましくは1〜60重量%、さらに好ましくは5〜50重量%の量で含有されている。
プロピレン系重合体(A)およびプロピレン・α−オレフィン共重合体(B)との割合またはプロピレン系重合体(A)およびプロピレン・α−オレフィン共重合体(BB)との割合が上記の範囲にあると、得られるポリプロピレン樹脂組成物は、剛性、耐衝撃性、耐白化性、耐摩耗性のバランスに優れる傾向にある。
必要に応じて用いられるエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)は、組成物全体に対して、通常1〜40重量%、好ましくは5〜35重量%の量で含まれていてもよい。エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)を上記のような量で含有すると、表面硬度、耐衝撃性、特に耐低温衝撃強度の優れた成形体を調製できる組成物が得られる。
必要に応じて用いられる無機充填剤(D)は、組成物全体に対して、通常1〜30重量%、好ましくは5〜20重量%の量で含まれていてもよい。無機充填剤(E)を上記のような量で含有すると、剛性、表面硬度、耐衝撃性に優れた成形体を調製できる組成物が得られ
る。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、公知の任意の方法を採用して製造することができ、例えば(A)プロピレン系重合体(B)プロピレン・α−オレフィン共重合体または(BB)プロピレン・α−オレフィン共重合体と、必要に応じて(C)エチレン・α−オレフィンランダム共重合体、(D)無機充填剤、および所望によりさらに添加される添加剤を、ヘンシェルミキサー、V型ブレンダー、リボンブレンダー等の混合機で混合後、押出機、ニーダー等を用いて溶融混練することにより得られる。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物の引っ張り弾性率は400Mpa以上、好ましくは500MPa〜2500MPaである。本発明のポリプロピレン樹脂組成物の耐磨耗性(ΔGloss(%))は30%以下好ましくは1〜25%である。
また前記弾性率、耐磨耗性は、樹脂組成物をプレス成形した後、後述する実施例の方法で引っ張り試験を行うことにより求めることができる。成形条件は、200℃の温度で余熱後、加圧(100kg/cm)3分で成形したのち、20℃で5分加圧(100kg/cm)冷却することにより測定項目に応じた厚みのシートを作製することで行う。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物のアイゾット衝撃強度(0℃、J/m)は30J/m以上、好ましくは35〜1000J/m(非破壊)である。射出成形条件は(東芝機械製IS−55EPNを用いて、シリンダー温度200℃、金型温度40℃、冷却時間30
秒)である。
ポリプロピレン樹脂組成物からなる成形体
本発明に係るポリプロピレン樹脂組成物は、従来公知のポリオレフィン用途に広く用いることができるが、成形体としては具体的には、押出成形、射出成形、インフレーション成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、プレス成形、真空成形、カレンダー成形、発泡成形などの公知の熱成形方法により得られる成形体が挙げられる。
本発明に係るポリプロピレン樹脂組成物は、従来公知のポリオレフィン用途に広く用いることができるが、特にポリオレフィン組成物をたとえばシート、未延伸または延伸フィルム、フィラメント、他の種々形状の成形体に成形して利用することができる。
ポリプロピレン樹脂組成物からなる成形体の具体的は例としては、前記した本発明の第1の具体例である熱可塑性樹脂組成物からなる成形体について述べた具体的態様をそのままポリプロピレン樹脂組成物に適用することができる。これらの、具体的例は、繰り返し記載することを避けるために記載しないが、先の熱可塑性樹脂組成物からなる成形体についての記載に基づいて、適宜好ましい成形体を形成させることができる。
本発明の第3の具体的な例
本発明によって提供される熱可塑性樹脂にα−オレフィン系共重合体(S)を配合した物性が改善された熱可塑性樹脂組成物の第3の具体的な例として、下記のような樹脂組成物を挙げることができる。
すなわち、非架橋であるかまたは部分架橋されたオレフィン系熱可塑性エラストマー(X)30〜80重量部と、プロピレン系重合体(Y)0〜40重量部と、プロピレン由来の構成単位を30〜80モル%、エチレン由来の構成単位を0〜30モル%、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位を10〜50モル%(ここでプロピレン由来の構成単位、エチレン由来の構成単位、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位の合計量は100モル%)の量含み、かつo−ジクロロベンゼン溶液で測定した13C−NMRで、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位のCH(メチン)に由来するシグナルのうち、最も高磁場で存在するピークを34.4ppmと定めたシグナルチャートにおいて、約22.0〜20.9ppmの吸収強度Aと約19.0〜20.6ppmの吸収強度Bが、プロピレンメチルに帰属される約19.0〜22.0ppmの吸収強度Cに対して、下記の関係式(i)と(ii)を満たすプロピレン・α−オレフィン共重合体(Z)を
(A/C)×100≦8・・・・・・ (i)
(B/C)×100≧60・・・・・・ (ii)
5〜60重量部(ここで(X)、(Y)、(Z)の合計は100重量部である)含有するプロピレン系共重合体組成物を挙げることができる。
また別の態様として、非架橋であるかまたは部分架橋されたオレフィン系熱可塑性エラストマー(X)30〜80重量部と、プロピレン系重合体(Y)0〜40重量部と、プロピレンと、炭素数4〜20のα−オレフィン(ただしプロピレンを除く)と、必要に応じてエチレンとを、下記一般式(1)で表される遷移金属化合物を含む触媒の存在下に重合して得られ、プロピレン由来の構成単位を30〜80モル%、エチレン由来の構成単位を0〜30モル%、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位を10〜50モル%(ここでプロピレン由来の構成単位、エチレン由来の構成単位、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位の合計量は100モル%)の量含むプロピレン・α−オレフィン共重合体(ZZ)5〜60重量部(ここで(X)、(Y)、(ZZ)の合計は100重量部である)を含有するプロピレン系共重合体組成物を挙げることができる;
Figure 0004949019
[式(1)中、MはTi,Zr、Hf、Rn,Nd、SmまたはRuであり、CpおよびCpはMとπ結合しているシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基、またはそれらの誘導体基であり、XおよびXは、アニオン性配位子または中性ルイス塩基配位子であり、ZはC,O,B,S,Ge,SiまたはSn原子あるいはこれらの原子を含有する基である。]。
以下に、本発明に係わるプロピレン系共重合体組成物について具体的に説明する。
[非架橋または部分的に架橋されたオレフィン系熱可塑性エラストマー(X)]
本発明で用いられる非架橋または部分架橋されたオレフィン系熱可塑性エラストマーはポリプロピレンと、非共役ジエンを含有したエチレン・α−オレフィンランダム共重合体を含有していることが望ましいが、これに限らず、例えばポリプロピレンとエチレン・α−オレフィンランダム共重合体を含有する非架橋であるかまたは部分架橋されたオレフィン系熱可塑性エラストマーであってもよく、α−オレフィンとしては、プロピレン、ブテンであることが望ましい。
本発明で用いられる非架橋であるかまたは部分架橋されたオレフィン系熱可塑性エラストマーは、230℃、10kg荷重で測定されるMFRが0.001〜100であることが好ましく、0.01〜80であることが更に好ましい。
また本発明で用いられる非架橋であるかまたは部分架橋されたオレフィン系熱可塑性エラストマーのDSCの吸熱曲線から求められる融点(Tm)は120〜165℃であることが好ましく、130〜160℃の範囲にあることが更に好ましい。本発明に係るオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は、非架橋の熱可塑性エラストマー組成物または部分的に架橋された熱可塑性エラストマー組成物であり、特定の結晶性ポリオレフィン樹脂(X−1)と、特定のα−オレフィン系共重合体ゴム(X−2)とから構成されてなる。
[結晶性ポリオレフィン樹脂(X−1)]
本発明で用いられる結晶性ポリオレフィン樹脂(X−1)は、高圧法または低圧法の何れかによる1種またはそれ以上のモノオレフィンを重合して得られる結晶性の高分子量固体生成物からなる。このような樹脂としては、たとえばアイソタクチックおよびシンジオタクチックのモノオレフィン重合体樹脂が挙げられるが、これらの代表的な樹脂は商業的に入手できる。
上記結晶性ポリオレフィン樹脂の適当な原料オレフィンとしては、具体例には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、2−メチル−1−プロペン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンおよびこれらのオレフィンを2種以上混合した混合オレフィンが挙げられる。
特に、プロピレン含量が70モル%以上、好ましくはプロピレン含量が80モル%以上のアイソタクチックポリプロピレンが好適に用いられる。
重合様式はランダム型でもブロック型でも、樹脂状物が得られればどのような重合様式を採用しても差支えない。本発明で用いられる結晶性ポリオレフィン樹脂は、MFR(A−1STM A−4 1238−65T、230℃)が通常0.01〜100g/10分、特に0.05〜50g/10分の範囲にあることが好ましい。
また本発明の熱可塑性エラストマー(X)に用いられる結晶性ポリオレフィン(X−1)は、DSCの吸熱曲線から求められる融点(Tm)が120〜165℃であることが好ましく、130℃〜160の範囲にあることが更に好ましい。また結晶性ポリオレフィン(X)は、後述する(Y)として挙げられた以外の結晶性ポリオレフィンであることが一つの好ましい態様である。
上記結晶性ポリオレフィン樹脂(X−1)は、組成物の流動性および耐熱性を向上させる役割を持っている。本発明においては、結晶性ポリオレフィン樹脂(X−1)は、結晶性ポリオレフィン樹脂(X−1)およびα−オレフィン系共重合体ゴム(X−2)の合計量100重量部中に、10〜60重量部、好ましくは20〜55重量部の割合で用いられる。
上記のような割合で結晶性ポリオレフィン樹脂(X−1)を用いると、ゴム弾性に優れるとともに、成形加工に優れたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物が得られる。
α−オレフィン系共重合体ゴム(X−2)
本発明で用いられるα−オレフィン系共重合体ゴム(X−2)は、炭素原子数2〜20、好ましくは炭素原子数2〜12のα−オレフィンと、非共役ポリエン、例えば非共役ジエンとを共重合して得られるゴムである。
上記α−オレフィンとしては、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンなどが挙げられる。
本発明においては、上記のようなα−オレフィンを単独で用いても良く、また2種以上の混合物として用いても良い。4−メチル−1−ペンテンと、他のα−オレフィンを混合物として用いる場合、4−メチル−1−ペンテンと、他のα−オレフィンとのモル比(他のα−オレフィン/4−メチル−1−ペンテン)は、10/90〜95/5の範囲内にあることが好ましい。
上記α−オレフィンのうち、特にエチレン、プロピレン、1−ブテンが好ましく用いられる。
非共役ポリエンとしては、具体的には、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−エチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘプタジエン、5−エチル−1,4−ヘプタジエン、5−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、5−エチル−1,5−ヘプタジエン、4−メチル−1,4−オクタジエン、5−メチル−1,4−オクタジ
エン、4−エチル−1,4−オクタジエン、5−エチル−1,4−オクタジエン、5−メチル−1,5−オクタジエン、6−メチル−1,5−オクタジエン、5−エチル−1,5−オクタジエン、6−エチル−1,5−オクタジエン、6−メチル−1,6−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、6−エチル−1,6−オクタジエン、4−メチル−1,4−ノナジエン、5−メチル−1,4−ノナジエン、4−エチル−1,4−ノナジエン、5−エチル−1,4−ノナジエン、5−メチル−1,5−ノナジエン、6−メチル−1,5−ノナジエン、5−エチル−1,5−ノナジエン、6−エチル−1,5−ノナジエン、6−メチル−1,6−ノナジエン、7−メチル−1,6−ノナジエン、6−エチル−1,6−ノナジエン、7−エチル−1,6−ノナジエン、7−メチル−1,7−ノナジエン、8−メチル−1,7−ノナジエン、7−エチル−1,7−ノナジエン、5−メチル−1,4−デカジエン、5−エチル−1,4−デカジエン、5−メチル−1,5−デカジエン、6−メチル−1,5−デカジエン、5−エチル−1,5−デカジエン、6−エチル−1,5−デカジエン、6−メチル−1,6−デカジエン、7−メチル−1,6−デカジエン、6−エチル−1,6−デカジエン、7−エチル−1,6−デカジエン、7−メチル−1,7−デカジエン、8−メチル−1,7−デカジエン、7−エチル−1,7−デカジエン、8−エチル−1,7−デカジエン、8−メチル−1,8−デカジエン、9−メチル−1,8−デカジエン、8−エチル−1,8− デカジエン、9−メチル−1,8−ウンデカジエンなどが挙げられる。特に中でも5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、4,8−ジメチル−1,4,8−デカトリエン(DMDT)、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン(EMND)が望ましい。
本発明においては、上記のような非共役ポリエン、例えば非共役ジエンを単独で用いてもよく、また2種以上の混合物として用いてもよい。さらに、上記のような非共役ポリエンの他に、他の共重合可能なモノマーを、本発明の目的を損なわない範囲で用いてもよい。
本発明で用いられるα−オレフィン系共重合体ゴムを構成する非共役ジエンの含有量は、0.01〜30モル%、好ましくは0.1〜20モル%、特に好ましくは0.1〜10モル%の範囲内にある。
本発明で用いられるα−オレフィン系共重合体ゴムとしては、例えばエチレン・炭素数3以上のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体であって、エチレンと炭素数3以上のα−オレフィンとの比率であるエチレン/炭素数3以上のα−オレフィン(モル比)が40/60−95/5であるものが挙げられる。
本発明で用いられるα−オレフィン系共重合体ゴムの135℃デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]は、1.0〜10.0dl/g、好ましくは1.5〜7dl/gの範囲にある。また本発明で用いられるα−オレフィン系共重合体ゴムは、特に制限はないがDSCの吸熱曲線から求められる融点(Tm)が存在しないかまたは120℃未満に存在することが好ましい。
本発明においては、α−オレフィン系共重合体ゴム(X−2)は、結晶性ポリオレフィン樹脂(X−1)およびα−オレフィン系共重合体ゴム(X−2)の合計量100重量部中に、90〜40重量部、好ましくは80〜45重量部の割合で用いられる。
上記のようなα−オレフィン系共重合体ゴム(X−2)は、以下の方法で製造することができる。本発明で用いられるα−オレフィン系共重合体ゴム(X−2)は、オレフィン重合用触媒の存在下に、炭素原子数2〜20のα−オレフィンと、非共役ジエンとを共重合させることにより得られる。
本発明に係るオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物には、結晶性ポリオレフィン樹脂(X−1)およびα−オレフィン系共重合体ゴム(X−2)の他に、任意成分として軟化剤(X−3)および/または無機充填剤(X−4)を含めることができる。
本発明で用いられる軟化剤(X−3)としては、通常ゴムに使用される軟化剤を用いることができ、具体的には、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系物質;コールタール、コールタールピッチ等のコールタール類;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油等の脂肪油;トール油、蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸またはその金属塩;石油樹脂、クマロンインデン樹脂、アタクチックポリプロピレン等の合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート等のエステル系可塑剤;その他マイクロクリスタリンワックス、サブ(ファクチス)、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、液状チオコールなどが挙げられる。
本発明においては、軟化剤(X−3)は、結晶性ポリオレフィン樹脂(X−1)およびα−オレフィン系共重合体ゴム(X−2)の合計量100重量部に対し、通常200重量部以下、好ましくは2〜100重量部の割合で用いられる。本発明において、軟化剤(X−3)の使用量が200重量部を超えると、得られる熱可塑性エラストマー組成物の耐熱性、耐熱老化性が低下する傾向にある。
本発明で用いられる無機充填剤(X−4)としては、具体的には、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、クレー、カリオン、タルク、シリカ、ケイソウ土、雲母粉、アスベスト、アルミナ、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、二硫化モリブデン、グラファイト、ガラス繊維、ガラス球、シラスバルーンなどが挙げられる。
本発明においては、無機充填剤(X−4)は、結晶性ポリオレフィン樹脂(X−1)およびα−オレフィン系共重合体ゴム(X−2)の合計量100重量部に対して、通常100重量部以下、好ましくは2〜50重量部の割合で用いられる。本発明において、無機充填剤(X−4)の使用量が100重量部を超えると、得られる熱可塑性エラストマー組成物のゴム弾性、成形加工性が低下する傾向にある。
また、本発明に係る部分的に架橋されたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は、上述した結晶性ポリオレフィン樹脂(X−1)と、α−オレフィン系共重合体ゴム(X−2)と、必要に応じて配合される軟化剤(X−3)および/または無機充填剤(X−4)、さらには上記エチレン・α−オレフィン共重合体ゴム、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム等との混合物を、下記のような有機過酸化物の存在下に、動的に熱処理して部分的に架橋することによって得られる。
ここに、「動的に熱処理する」とは、溶融状態で混練することをいう。有機過酸化物としては、具体的には、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert− ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジア
セチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイドなどが挙げられる。
このような有機過酸化物は、被処理物全体、すなわち結晶性ポリオレフィン樹脂(X−1)およびα−オレフィン系共重合体ゴム(X−2)の合計量100重量部に対し0.02〜3重量部、好ましくは0.05〜1重量部となるような量で用いられる。この配合量が上記範囲よりも少ないと、得られる熱可塑性エラストマー組成物は、架橋度が低いため、耐熱性、引張特性、弾性回復および反発弾性等が十分でない。また、この配合量が上記範囲よりも多いと、得られる熱可塑性エラストマー組成物は、架橋度が高くなり過ぎて成形性の低下をもたらす場合がある。
本発明においては、前記有機過酸化物による部分架橋処理に際し、硫黄、p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム、N−メチル−N,N’−m−フェニレンジマレイミド等のパーオキシ架橋助剤、あるいはジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アクリルメタクリレート等の多官能性メタクリレートモノマー、ビニルブチラートまたはビニルステアレート等の多官能性ビニルモノマーを配合してもよい。
上記のような架橋助剤などの化合物を用いることにより、均一かつ温和な架橋反応が期待できる。このような架橋助剤あるいは多官能性ビニルモノマーなどの化合物は、上記被処理物全体100重量部に対し、通常2重量部以下、さらに好ましくは0.3〜1重量部となるような量で用いられる。
また有機過酸化物の分解を促進するために、トリエチルアミン、トリブチルアミン、2,4,6−トリ(ジメチルアミノ)フェノール等の三級アミンや、アルミニウム、コバルト、バナジウム、銅、カルシウム、ジルコニウム、マンガン、マグネシウム、鉛、水銀等のナフテン酸塩などの分解促進剤を用いてもよい。
本発明における動的な熱処理は、非開放型の装置中で行なうことが好ましく、また窒素、炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気下で行なうことが好ましい。その温度は、結晶性ポリオレフィン樹脂(X−1)の融点から300℃の範囲であり、通常150〜250℃、好ましくは170〜225℃である。混練時間は、通常1〜20分間、好ましくは1〜10分間である。また、加えられる剪断力は、剪断速度として10〜100,000sec−1、好ましくは100〜50,000sec−1である。
混練装置としては、ミキシングロール、インテンシブミキサー(たとえばバンバリーミキサー、ニーダー)、一軸または二軸押出機等を用い得るが、非開放型の装置が好ましい。
本発明によれば、上述した動的な熱処理によって、結晶性ポリオレフィン樹脂(X−1)とα−オレフィン系共重合体ゴム(X−2)とからなる非架橋の、または部分的に架橋されたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物が得られる。
なお、本発明において、熱可塑性エラストマー組成物が部分的に架橋されたとは、下記の方法で測定したゲル含量が20%以上、好ましくは20〜99.5%、特に好ましくは45〜98%の範囲内にある場合をいう。ゲル含量の測定熱可塑性エラストマー組成物の試料を100mg秤取し、これを0.5mm×0.5mm×0.5mmの細片に裁断したものを、密閉容器中にて30mlのシクロヘキサンに、23℃で48時間浸漬した後、試料を濾紙上に取出し、室温で72時間以上、恒量となるまで乾燥する。
この乾燥残渣の重量からポリマー成分以外のすべてのシクロヘキサン不溶性成分(繊維状フィラー、充填剤、顔料等)の重量、およびシクロヘキサン浸漬前の試料中の結晶性ポリオレフィン樹脂(X−1)の重量を減じたものを、「補正された最終重量[Y]」とする。
一方、試料中のα−オレフィン系共重合体(X−2)を、「補正された初期重量[X]」とする。ここに、ゲル含量は、次の式で求められる。
ゲル含量[wt%]=(補正された最終重量[Y]/補正された初期重量[X])×100。
[プロピレン系重合体(Y)]
プロピレン系重合体(Y)としては、前記ポリプロピレン樹脂組成物について記載したプロピレン系重合体(A)と同様の重合体を使用することができる。
本発明で用いられるプロピレン系重合体(Y)の引張り弾性率は400Mpa以上であることが好ましく、好ましくは、400MPa〜2500MPa、より好ましくは、500Mpa〜2000Mpaであり、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレンから少なくとも1種選ばれることが更に好ましい。 なお前記弾性率は、プロピレン系重合体をプレス成形した後、後述する実施例の方法で引っ張り試験を行うことにより求めることができる。成形条件は、200℃の温度で余熱後、加圧(100kg/cm)3分で成形したのち、20℃で5分加圧(100kg/cm)冷却することにより1mm厚のシートを作製することで行う。
まず、アイソタクティックポリプロピレンから以下に説明する。
アイソタクティックポリプロピレンは、NMR法により測定したアイソタクティックペンタッド分率が0.9以上、好ましくは0.95以上のポリプロピレンである。
アイソタクティックペンタッド分率の測定は、前記第2の具体的な例の中で挙げたプロピレン系重合体(A)の項において説明した方法で行う。
アイソタクティックポリプロピレンとしては、プロピレン単独重合体またはプロピレンとプロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα−オレフィンとの共重合体を挙げることができる。ここで、プロピレン以外の炭素原子数が2〜20のα−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられ、エチレンまたは炭素原子数が4〜10のα−オレフィンが好ましい。これらのα−オレフィンは、プロピレンとランダム共重合体を形成してもよく、ブロック共重合体を形成してもよい。これらのα−オレフィンから導かれる構成単位は、ポリプロピレン中に40モル%以下、好ましくは20モル%以下の割合で含んでいてもよい。
アイソタクティックポリプロピレンは、ASTM D 1238に準拠して230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)が0.01〜1000g/10分、好ましくは0.05〜500g/10分の範囲にあることが望ましい。
このようなアイソタクティックポリプロピレンは、例えば(a)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分、(b)有機アルミニウム化合物、および(c)電子供与体からなるチーグラー触媒系を用いて重合することにより製造することができる。またメタロセン触媒を用いても同様に得ることができる。
プロピレン系重合体(Y)がアイソタクティックポリプロピレンであるとき、前記結晶性ポリオレフィン樹脂(X−1)で好適に用いられるアイソタクティックポリプロピレンと同じであっても異なっていてもよい。プロピレン系重合体(Y)および結晶性ポリオレフィン樹脂(X−1)のどちらにもアイソタクティックポリプロピレンを用いる場合、本発明の樹脂組成物中に10〜60重量%、好ましくは15〜50重量%含まれることが好ましい。
アイソタクティックポリプロピレンとしては、チーグラー触媒で製造されたポリプロピレン共重合体のうちでは、耐白化性と耐衝撃性のバランスが優れるプロピレン・エチレンランダム共重合体およびプロピレン・エチレンブロック共重合体が好ましい。
次に、シンジオタクティックポリプロピレンについて以下に説明する。
シンジオタクティックポリプロピレンは、少量例えば、10モル%以下、好ましくは5モル%以下の量でエチレン、炭素数4以上のα−オレフィン等が共重合されていてもよい。
このようなシンジオタクティックポリプロピレンの製造の際には、触媒としては、特開平10−300084に記載してあるメタロセン系触媒を例示することができる。
ここでシンジオタックティックペンタッド分率(rrrr、ペンタッドシンジオタクティシテー)が0.5以上、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、特に好ましくは0.80以上であるものであり、0.5以上のものは耐熱性、成形性に優れ、結晶性のポリプロピレンとしての特性が良好で好ましい。
シンジオタクティックペンタッド分率の測定は、前記第2の具体的な例の中で挙げたプロピレン系重合体(A)の項において説明した方法で行う。
また、シンジオタクティックポリプロピレンのメルトフローレート(MFR、190℃、2.16kg荷重)は、0.001〜1000g/10分、好ましくは0.01〜500g/10分であることが望ましい。MFRがこのような範囲にあると、良好な流動性を示し、このシンジオタクティックポリプロピレンを他の成分と配合し易く、また得られた組成物から機械的強度に優れた成形品が得られる傾向がある。
このようなプロピレン系重合体(Y)は、樹脂組成物中に0〜40重量部、好ましくは0〜35重量部、より好ましくは5〜35重量部含まれる。シンジオタクティックポリプロピレン(Y)がこの範囲にあるとα−オレフィン系共重合体組成物の耐熱性とゴム弾性、耐磨耗性のバランスに優れる。
[プロピレン・α−オレフィン共重合体(Z)]
本発明で用いられるプロピレン・α−オレフィン共重合体(Z)はプロピレン由来の構成単位を30〜80モル%、エチレン由来の構成単位を0〜20モル%の量含み、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位を20〜50モル%の量含むことが好ましく、α−オレフィンとしてはブテン、オクテンから選ばれることが望ましい。中でもブテンであることが特に好ましい。なお本発明では炭素数4〜20のα−オレフィンは2種以上使用されてもよくその場合は2種以上のα−オレフィンの合計が30〜60モル%含まれていれば良い。
本発明で用いられるプロピレン・α−オレフィン共重合体(Z)は、プロピレンから導かれる繰返し単位を、30〜80モル%、好ましくは40〜80モル%、より好ましくは45〜70モル%、エチレンから導かれる繰返し単位を0〜20モル%、好ましくは、0〜18モル%、より好ましくは3〜15モル%、α−オレフィンから導かれる繰返し単位
を10〜50モル%、好ましくは15〜50モル%、より好ましくは20〜45モル%の割合で含有している。
このα−オレフィン系共重合体(Z)中には、上記α−オレフィン由来の構成単位以外に、スチレンなどの芳香族ビニル化合物由来の構成単位、2個以上の2重結合を有する上記ポリエン系不飽和化合物(ポリエン)由来の構成単位、アルコール、カルボン酸、アミン及びこれら誘導体等からなる構成単位等が含まれていてもよい。またエチレン、プロピレン、炭素数4から20のα−オレフィン以外の構成単位が含まれていない態様も好ましい態様である。
このプロピレン・α−オレフィン共重合体(Z)は、ヤングモジュラスが好ましくは150MPa以下、より好ましくは100MPa以下、さらに好ましくは50MPa以下である。
また前記弾性率は、共重合体(Z)をプレス成形した後、後述する実施例の方法で引っ張り試験を行うことにより求めることができる。成形条件は、190℃の温度で余熱後、加圧(100kg/cm)2分で成形したのち、20℃で加圧(100kg/cm)冷却することにより1mm厚のシートを作製することで行う。
このようなプロピレン・α−オレフィン共重合体(Z)は、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が、通常0.01〜10dl/g、好ましくは0.5〜10dl/g、さらに好ましくは1〜8dl/gの範囲にあることが望ましい。
このプロピレン・α−オレフィン共重合体(Z)は、単一のガラス転移温度を有し、かつ示差走査熱量計(DSC)によって測定したガラス転移温度(Tg)が、通常0℃以下、好ましくは−3℃以下、さらに好ましくは−5℃以下であることが望ましい。該プロピレン・α−オレフィン共重合体(Z)のガラス転移温度(Tg)が前記範囲内にあると、耐寒性、低温特性に優れる。またゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn、ポリスチレン換算、Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)は4.0以下であることが好ましく、特に3.5以下であることが好ましい。
ここでプロピレン・α−オレフィン共重合体(Z)、特にプロピレン−エチレン−ブテン共重合体にあっては、13CNMRによる測定によるシグナルの強度が、以下のような関係を満たす。すなわち、o−ジクロロベンゼン溶液で測定した13C−NMRで、共重合体中の炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位のCH(メチン)に由来するシグナルのうち、最も高磁場で存在するピークを34.4ppmと定めたシグナルチャートにおいて、約22.0〜20.9ppmの吸収強度Aと約19.0〜20.6ppmの吸収強度Bが、プロピレンメチルに帰属される約19.0〜22.0ppmの吸収強度Cに対して、下記の関係式(i)と(ii)を満たし、好ましくは、関係式(i)’、(ii)’、更に好ましくは関係式(i)’’、(ii)’’を満たすことが好ましい。
(A/C)×100≦8・・・・・・ (i)
(B/C)×100≧60・・・・・・ (ii)
(A/C)×100≦7・・・・・・ (i)’
(B/C)×100≧64・・・・・・ (ii)’
(A/C)×100≦6・・・・・・ (i)’’
(B/C)×100≧68・・・・・・ (ii)’’
この範囲にあると、透明性、耐傷付性、耐衝撃性が良好となるため好ましい。
なお、この構造は、以下のようにして測定される。すなわち、試料50mgをo−ジク
ロロベンゼン/重水素化ベンゼン=5/1の混合溶媒約0.5mlに溶解したものを日本電子製EX−400型NMR測定装置を用い、シングルプロトンパルスデカップリングの測定モードで、パルス幅4.7μs、パルス間隔5.5s、180ppmの観測範囲で、化学シフト基準を炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位のCH(メチン)に由来するシグナルの内、最も高磁場のピークを34.4ppmとして、120℃で13C−NMR測定を行う。積算回数は、10,000回以上とする。この範囲にあると、透明性、耐傷付性、耐衝撃性が良好となるため好ましい。なお、共重合体が1−ブテン由来の構成単位を含む場合は、1−ブテン由来の構成単位のCH(メチン)に由来するシグナルのうち、最も高磁場側のピークを34.4ppmとするものとする。
プロピレン・α−オレフィン共重合体(Z)において、炭素数4〜20のα−オレフィンは、1−ブテンであることが好ましい。
このような、プロピレン・α−オレフィン共重合体(Z)は、下記に示すメタロセン系触媒の存在下にプロピレンから導かれる繰り返し単位が30〜80モル%、エチレンから導かれる繰り返し単位が0〜20モル%、α−オレフィンから導かれる繰り返し単位が10〜50モル%となるようにプロピレンとエチレンとα−オレフィンを共重合させて得られる。
このようなメタロセン系触媒としては、
(a)下記一般式(1)で表される遷移金属化合物と、
(b)(b−1)上記遷移金属化合物(a)中の遷移金属Mと反応してイオン性の錯体を形成する化合物、
(b−2)有機アルミニウムオキシ化合物、
(b−3)有機アルミニウム化合物
から選ばれる少なくとも1種の化合物とからなる少なくとも1つの触媒系が挙げられる。
Figure 0004949019
[式(1)中、MはTi,Zr、Hf、Rn,Nd、SmまたはRuであり、CpおよびCpはMとπ結合しているシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基、またはそれらの誘導体基であり、XおよびXは、アニオン性配位子または中性ルイス塩基配位子であり、ZはC,O,B,S,Ge,SiまたはSn原子あるいはこれらの原子を含有する基である。]。
上記一般式(1)で表される遷移金属化合物の内でも、CpとCpが異なる基である遷移金属化合物が挙げられ、より好ましくはCpおよびCpのうちのいずれか一方の基がシクロペンタジエニル基またはその誘導体基であり、もう一方の基がフルオレニル基
またはその誘導体基であるような遷移金属化合物が挙げられる。これらの内でも、CpおよびCpのうちのいずれか一方の基がシクロペンタジエニル基またはその誘導体基であり、もう一方の基がフルオレニル基またはその誘導体基であることが好ましい。
本発明においては、上記プロピレン・α−オレフィン共重合体(Z)製造用の触媒としては、上記のようなメタロセン系触媒が好ましく用いられるが、場合によっては上記メタロセン系触媒以外の、従来より公知の固体状チタン触媒成分と有機アルミニウム化合物とからなるチタン系触媒や、可溶性バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなるバナジウム系触媒を用いることもできる。
具体的な製造条件については、重複を避けるため繰り返し記載はしないが、上記α−オレフィン共重合体(I)の製造について記載した方法に準じて製造することができる。
プロピレン・α−オレフィン系重合体(ZZ)
本発明のプロピレン・α−オレフィン系重合体(ZZ)は、
プロピレンと、炭素数4〜20のα−オレフィンと、必要に応じてエチレンとを、下記一般式(1)で表される遷移金属化合物を含む触媒の存在下に重合して得られ、
プロピレン由来の構成単位を30〜80モル%、エチレン由来の構成単位を0〜30モル%、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位を10〜50モル%(ここでプロピレン由来の構成単位、エチレン由来の構成単位、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位の合計量は100モル%)の量含むことを特徴としている(ただしプロピレン・エチレン2元共重合体を除く);
Figure 0004949019
[式(1)中、MはTi,Zr、Hf、Rn,Nd、SmまたはRuであり、CpおよびCpはMとπ結合しているシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基、またはそれらの誘導体基であり、CpとCpは異なる基であり、XおよびXは、アニオン性配位子または中性ルイス塩基配位子であり、ZはC,O,B,S,Ge,SiまたはSn原子あるいはこれらの原子を含有する基である。]。
用いられるα−オレフィン、量比、ヤングモジュラス、[η]、Tg、Mw/Mn、遷移金属化合物(1)を含む触媒などは、重複を避けるため記載しないが、αオレフィン系共重合体(Z)についてと同じである。
[プロピレン系重合体組成物]
本発明のプロピレン系共重合体組成物は、非架橋であるかまたは部分架橋されたオレフィン系熱可塑性エラストマー(X)を30〜80重量部、好ましくは40〜70重量部、ポリプロピレン(Y)0〜40重量部、好ましくは0〜35重量部と、プロピレン由来の構成単位を30〜80モル%、エチレン由来の構成単位を0〜20モル%の量含み、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位を10〜50モル%の量含む前記プロピレン・α−オレフィン共重合体(Z)5〜60重量部、好ましくは5〜50重量部を含有する。なおここで(X)、(Y)、(Z)の合計は100重量部である。また本発明における
(Y)と(Z)の比率としては、(Y)/(Z)が重量比で特に0/100〜90/10の割合であることが好ましく、より好ましくは0/100〜70/30であり、さらに好ましくは10/90〜40/60である。
また本発明の別の態様であるプロピレン系共重合体組成物は、非架橋であるかまたは部分架橋されたオレフィン系熱可塑性エラストマー(X)を30〜80重量部、好ましくは40〜70重量部、ポリプロピレン(Y)0〜40重量部、好ましくは0〜35重量部と、プロピレン由来の構成単位を30〜80モル%、エチレン由来の構成単位を0〜20モル%の量含み、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位を10〜50モル%の量含むプロピレン・α−オレフィン共重合体(ZZ)5〜60重量部、好ましくは5〜50重量部を含有する。なおここで(X)、(Y)、(ZZ)の合計は100重量部である。また本発明における(Y)と(ZZ)の比率としては、(Y)/(ZZ)が重量比で特に0/100〜90/10の割合であることが好ましく、より好ましくは0/100〜70/30であり、さらに好ましくは10/90〜40/60である。
本発明のプロピレン系共重合体組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、軟化剤、粘着付与剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、架橋剤、架橋助剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤等の添加剤、無水マレイン酸やアクリル酸、シランカップリング剤等の変性剤、有機過酸化物などの架橋剤やジビニルベンゼン等の架橋助剤等が必要に応じて配合されていてもよい。また、本発明の趣旨を逸脱しない限りその他の共重合体を少量ブレンドすることができる。
本発明に係るプロピレン系重合体組成物は、公知の任意の方法を採用して製造することができ、たとえば、非架橋であるかまたは部分架橋されたオレフィン系熱可塑性エラストマー(X)30〜80重量部と、プロピレン系重合体(Y)0〜40重量部、プロピレン・α−オレフィン共重合体(Z)5〜60重量部(ここで(X)、(Y)、(Z)の合計は100重量部である)および所望により添加される他成分を、押出機、ニーダー等を用いて一括で溶融混練することにより得られる。また別の態様においては、非架橋であるかまたは部分架橋されたオレフィン系熱可塑性エラストマー(X)30〜80重量部と、プロピレン系重合体(Y)0〜40重量部、プロピレン・α−オレフィン共重合体(ZZ)5〜60重量部(ここで(X)、(Y)、(ZZ)の合計は100重量部である)および所望により添加される他成分を、押出機、ニーダー等を用いて一括で溶融混練することにより得られる。
[成形体]
上記のような本発明に係るプロピレン系重合体組成物は、従来公知のポリオレフィン用途に広く用いることができるが、特にポリオレフィン組成物をたとえばシート、未延伸または延伸フィルム、パイプ、電線被覆、フィラメント、他の種々形状の成形体に成形して利用することができる。
成形体としては具体的には、押出成形、射出成形、インフレーション成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、プレス成形、真空成形、カレンダー成形、発泡成形などの公知の熱成形方法により得られる成形体が挙げられる。以下に数例挙げて成形体を説明する。
本発明に係る成形体がたとえば押出成形あるいは射出成形体である場合、その形状および製品種類は特に限定されないが、たとえばシート、フィルム(未延伸)、パイプ、ホース、電線被覆、フィラメントなどが挙げられ、特にシート、表皮材、自動車内外層材、建築資材などが好ましい。
プロピレン系重合体組成物を押出成形、射出成形する際には、従来公知の押出装置、射出装置および成形条件を採用することができる。また押し出し成形の際、電子線やγ線にて架橋処理を行うこともできる。
本発明に係るプロピレン系共重合体組成物は、非架橋または部分架橋されたオレフィン系熱可塑性樹脂に前記特定のプロピレン系共重合体を配合することにより、ゴム弾性を保持して、耐摩耗性、耐熱性とのバランスに優れたプロピレン系共重合体組成物が得られる。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
本発明において用いた物性の試験条件等を以下に記す。
1.残留歪み;
長さ50mm、幅が5mmの形状を有する厚さ1mmtのダンベル片を標線間30mm、引っ張り速度30mm/minで100%(チャック間を60mmまで)歪みを与え、10分間保持した後に除荷10分後の標線長さ(L)を測定した。
残留歪み(%)=[(L−30)/30]×100。
2.引っ張り弾性率;
JIS K6301に準拠して、JIS3号ダンベルを用い、スパン間:30mm、引っ張り速度:30mm/minで23℃にて測定した。
3.耐熱性(TMA):軟化温度(℃);
JIS K7196に準拠し、厚さ1mmの試験片を用いて、昇温速度5℃/minで1.8mmφの平面圧子に2Kg/cmの圧力をかけ、TMA曲線より、軟化温度(℃)を求めた。なお本明細書ではこの軟化温度のことをTMAと呼ぶことがある。
4.ヘイズ(%);
厚さ1mmの試験片を用いて、日本電色工業(株)製のデジタル濁度計「NDH−20D」にて測定した。
5.耐摩耗性試験
東洋精機製、学振摩耗試験機を用いて、厚さ2mmの試験片を用いて、45R、SUS製の摩耗圧子470gの先端を綿帆布#10に覆い、これを23℃、往復回数100回、往復速度33回/min、ストローク100mmで試料を摩耗させ、その前後のグロス変化率ΔGlossを以下のようにして求めた。
ΔGloss=[(摩耗前のGloss−摩耗後のGloss)/摩耗前のGloss]×100
6.耐白化性試験
10cm×10cm×1mmtの試験片を左右対称となるように180°折り曲げ、これに半径5cm、重さ10kgの円筒状の重りを1時間乗せた後の白化の度合いを目視にて観察し下記基準によって評価した。
○:白化無し
△:僅かに白化
×:著しく白化
7.アイゾット衝撃強度
アイゾット衝撃強度は、射出成形試験片を用いて、ASTM D−256に準拠して、下記の条件にて衝撃試験を行なって求めた。
<試験条件>
試験片:12.7mm(幅)×6.4mm(厚さ)×64mm(長さ)
ノッチ:機械加工
測定温度:0℃及び−30℃。
8.ヒートシール性<ヒートシール強度(HST)(g/15mm幅)>;
キャストフィルム成形機を用いて、シリンダー温度230℃、チルロール温度は20℃、スクリュー回転は80rpmの条件下で幅250mm幅、厚さ50ミクロンの試験フィルムを作成し、ヒートシール圧力;2kg/cm、ヒートシール時間;1sec、引っ張り速度;300mm/minにて測定した。
9.融点(Tm)およびガラス転移温度(Tg)
DSCの吸熱曲線を求め、最大ピーク位置の温度をTmとする。
測定は、試料をアルミパンに詰め、100℃/分で200℃まで昇温し、200℃で10分間保持したのち、100℃/分で−150℃まで10℃/minで降温し、ついで10℃/分で昇温する際の吸熱曲線より求めた。
10.極限粘度[η]
135℃、デカリン中で測定した。
11.Mw/Mn
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用い、オルトジクロロベンゼン溶媒で、140℃で測定した。
12.JIS A硬度;
JIS K6301に従って、JIS A硬度(HS)を測定した。
(合成例1)
[プロピレン・ブテン・エチレン共重合体(S−1)の合成]
充分に窒素置換した2000mlの重合装置に、100mlの乾燥ヘキサン、1−ブテン480gとトリイソブチルアルミニウム(1.0mmol)を常温で仕込んだ後、重合装置内温を35℃に昇温し、プロピレンで0.6MPaに加圧し、次いでエチレンで0.62MPaに加圧した。その後、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライド0.005mmolとアルミニウム換算で1.5mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)を接触させたトルエン溶液を重合器内に添加し、内温35℃、エチレン圧0.62MPaを保ちながら5分間重合し、20mlのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、2Lのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃、12時間乾燥した。得られたポリマーは、36.1gであった。また、ポリマーの組成は、プロピレン含量が58.2mol%、エチレン含量が4.1mol%、1−ブテン含量が37.7mol%であり、極限粘度[η]が2.69dl/gであり、ガラス転移温度Tgは−18.3℃であり、融解ピークは存在せず、GPCによる分子量分布は2.4であった。また13C−NMRで測定される吸収強度比(A/C)×100=4、(B/C)×100=78であった。
上記サンプルを用い、熱板温度190℃、余熱6分、加圧(100kg/cm)2分で成形したのち、熱板温度20℃のプレス成形機に移して加圧(100kg/cm)冷却することにより1mm厚のシートを作製した。シート物性を以下に示す。
JISA硬度:54 引っ張り弾性率:4MPa ΔGloss:10%
得られたポリマーについて測定した物性を表1に示す。
(合成例2)
[プロピレン・ブテン・エチレン共重合体(S−2)の合成]
ヘキサンの仕込みを500ml、1−ブテンを240gにした以外は合成例1と同様の方法で重合を行った。得られたポリマーは、39.2gであった。また、ポリマーの組成は、プロピレン含量が67.9mol%、エチレン含量が5.1mol%、1−ブテン含
量が27.0mol%であり、極限粘度[η]が2.89dl/gであり、ガラス転移温度Tgは−19.7℃であり、融解ピークは存在せず、GPCによる分子量分布は2.0であった。また13C−NMRで測定される吸収強度比(A/C)×100=3、(B/C)×100=81であった。
上記サンプルを用い、熱板温度190℃、余熱6分、加圧(100kg/cm)2分で成形したのち、熱板温度20℃のプレス成形機に移して加圧(100kg/cm)冷却することにより1mm厚のシートを作製した。シート物性を以下に示す。
JISA硬度:51 引っ張り弾性率:2MPa ΔGloss:7%
得られたポリマーについて測定した物性を表1に示す。
(合成例3)
[プロピレン・ブテン・エチレン共重合体(S−3)の合成]
プロピレンで5.4MPaに加圧した以外は合成例2と同様の方法で重合を行った。得られたポリマーは、82.6gであった。また、ポリマーの組成は、プロピレン含量が61.3mol%、エチレン含量が10.3mol%、1−ブテン含量が28.4mol%であり、極限粘度[η]が2.67dl/gであり、ガラス転移温度Tgは−24.7℃であり、融解ピークは存在せず、GPCによる分子量分布は2.0であった。また13C−NMRで測定される吸収強度比(A/C)×100=3、(B/C)×100=79であった。
上記サンプルを用い、熱板温度190℃、余熱6分、加圧(100kg/cm)2分で成形したのち、熱板温度20℃のプレス成形機に移して加圧(100kg/cm)冷却することにより1mm厚のシートを作製した。シート物性を以下に示す。
JISA硬度:51 引っ張り弾性率:2MPa ΔGloss:20%
得られたポリマーについて測定した物性を表1に示す。
(合成例4)
[プロピレン・ブテン・エチレン共重合体(S−4)の合成]
ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライドをジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルジヒドロベンゾイルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドに変更した以外は合成例2と同様の方法で重合を行った。得られたポリマーは、48.3gであった。また、ポリマーの組成は、プロピレン含量が64.3mol%、エチレン含量が8.3mol%、1−ブテン含量が27.4mol%であり、極限粘度[η]が3.67dl/gであり、ガラス転移温度Tgは−22.1℃であり、融解ピークは存在せず、GPCによる分子量分布は2.0であった。また13C−NMRで測定される吸収強度比(A/C)×100=3、(B/C)×100=81であった。
上記サンプルを用い、熱板温度190℃、余熱6分、加圧(100kg/cm)2分で成形したのち、熱板温度20℃のプレス成形機に移して加圧(100kg/cm)冷却することにより1mm厚のシートを作製した。シート物性を以下に示す。
JISA硬度:54 引っ張り弾性率:4MPa ΔGloss:9%。
得られたポリマーについて測定した物性を表1に示す。
(合成例5)
[プロピレン・ブテン・エチレン共重合体(S−5)の合成]
プロピレンで0.47MPaとした以外は、実施例3と同様の方法で重合を行った。得
られたポリマーは、120.1gであった。また、ポリマーの組成は、プロピレン含量が40.8mol%、エチレン含量が23.5mol%、1−ブテン含量が35.7mol%であり、極限粘度[η]が1.52dl/gであり、ガラス転移温度(Tg)が−36.3℃、融解ピークは存在せず、GPCによる分子量分布は2.0であった。
また13C−NMRで測定される吸収強度比(A/C)×100=4、(B/C)×100=82であった。
上記サンプルを用い、熱板温度190℃、余熱6分、加圧(100kg/cm)2分で成形したのち、熱板温度20℃のプレス成形機に移して加圧(100kg/cm)冷却することにより1mm厚のシートを作製した。シート物性を以下に示す。
JISA硬度:45 引っ張り弾性率:2MPa ΔGloss:60%。
得られたポリマーについて測定した物性を表1に示す。
(合成例6)
[プロピレン・ブテン共重合体(S−6)の合成]
充分に窒素置換した1500mlの重合装置に、717mlの乾燥ヘキサン、1−ブテン20gとトリイソブチルアルミニウム(0.75mmol)を常温で仕込んだ後、重合装置内温を70℃に昇温し、プロピレンで0.6MPaに加圧した。次いで、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライド0.075mmolとアルミニウム換算で0.45mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)を接触させたトルエン溶液を重合器内に添加し、内温70℃、プロピレン圧0.6MPaを保ちながら30分間重合し、20mlのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、2Lのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃、12時間乾燥した。得られたポリマーは、100.2gであった。また、ポリマーの融点が87.6℃であり、極限粘度[η]が1.40dl/gであり、ブテン含量が20.3モル%で、ガラス転移温度は−5.6℃であった。GPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn)は2.3であった。また13C−NMRで測定される吸収強度比(A/C)×100=2、(B/C)×100=80であった。
(合成例7)
[プロピレン・ブテン共重合体(S−7)の合成]
充分に窒素置換した1500mlの重合装置に、677mlの乾燥ヘキサン、1−ブテン50gとトリイソブチルアルミニウム(0.75mmol)を常温で仕込んだ後、重合装置内温を70℃に昇温し、プロピレンで0.6MPaに加圧した。次いで、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライド0.075mmolとアルミニウム換算で0.45mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)を接触させたトルエン溶液を重合器内に添加し、内温70℃、プロピレン圧0.6MPaを保ちながら37分間重合し、20mlのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、2Lのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃、12時間乾燥した。得られたポリマーは、124.1gであった。また、ポリマーの融点が77.2℃であり、極限粘度[η]が1.18dl/gであり、ブテン含量が27.6モル%で、ガラス転移温度は−6.8℃であった。GPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn)は2.2であった。また13C−NMRで測定される吸収強度比(A/C)×100=4、(B/C)×100=79であった。
(合成例8)
[プロピレン・ブテン共重合体(S−8)の合成]
充分に窒素置換した1500mlの重合装置に、500mlの乾燥ヘキサン、1−ブテ
ン150gとトリイソブチルアルミニウム(0.75mmol)を常温で仕込んだ後、重合装置内温を30℃に昇温し、プロピレンで0.6MPaに加圧した。次いで、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライド0.0325mmolとアルミニウム換算で0.45mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)を接触させたトルエン溶液を重合器内に添加し、内温30℃、プロピレン圧0.6MPaを保ちながら30分間重合し、20mlのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、2Lのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃、12時間乾燥した。得られたポリマーは、109.0gであった。また、ポリマーの融点は存在せず、極限粘度[η]が2.15dl/gであり、ブテン含量が35.6モル%で、ガラス転移温度は−10.6℃であった。GPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn)は2.3であった。また13C−NMRで測定される吸収強度比(A/C)×100=4、(B/C)×100=73であった。
(合成例9)
[プロピレン・オクテン共重合体(S−9)の合成]
充分に窒素置換した1500mlの重合装置に、500mlの乾燥ヘキサン、1−オクテン150gとトリイソブチルアルミニウム(2.25mmol)を常温で仕込んだ後、重合装置内温を30℃に昇温し、プロピレンで0.6MPaに加圧した。次いで、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライド0.075mmolとアルミニウム換算で0.45mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)を接触させたトルエン溶液を重合器内に添加し、内温70℃、プロピレン圧0.6MPaを保ちながら30分間重合し、20mlのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、2Lのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃、12時間乾燥した。得られたポリマーは、51.2gであった。また、ポリマーの融点が87.6℃であり、極限粘度[η]が2.57dl/gであり、オクテン含量が20.1モル%で、ガラス転移温度は−19.6℃であった。GPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn)は2.4であった。
(合成例10)
[プロピレン・ブテン共重合体(S−10)の合成]
充分に窒素置換した2000mlの重合装置に、833mlの乾燥ヘキサン、1−ブテン150gとトリイソブチルアルミニウム(1.0mmol)、次いで、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロリドを0.001mmolとアルミニウム換算で0.3mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)を接触させたトルエン溶液を重合器内に添加し、重合装置内温を40℃に昇温し、プロピレンで系内の圧力を0.76MPaになるように加圧し、内温40℃、系内圧力を0.76MPaにプロピレンで保ちながら20分間重合し、20mlのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、2Lのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃、12時間乾燥した。得られたポリマーは、10.4gであった。
135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]は、1.81dl/gであり、ガラス転移温度Tgは−14℃であり、融解ピークは存在せず、ブテン含量は44.0モル%であり、GPCによる分子量分布は2.1であった。また13C−NMRで測定される吸収強度比(A/C)×100=5、(B/C)×100=70であった。
上記サンプルを用い、熱板温度190℃、予熱6分、加圧(100kg/cm)2分で成形したのち、熱板温度20℃のプレス成形機に移して加圧(100kg/cm)冷却することにより1mm厚のシートを作製した。シート物性を以下に示す。
JISA硬度:95 引っ張り弾性率:120MPa ΔGloss:10%
得られたポリマーについて測定した物性を表1に示す。
(合成例11)
[プロピレン・エチレン共重合体(S−11)の合成]
減圧乾燥および窒素置換してある1.5リットルのオートクレーブに、常温でヘプタンを750ml加え、続いてトリイソブチルアルミニウムの1.0ミリモル/mlトルエン溶液をアルミニウム原子に換算してその量が0.3ミリモルとなるように0.3ml加え、撹拌下にプロピレンを50.7リットル(25℃、1気圧)装入し、昇温を開始し30℃に到達させた。その後、系内をエチレンで5.5kg/cmGとなるように加圧し、公知の方法で合成したジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドのヘプタン溶液(0.0002mM/ml)を3.75ml、トリフェニルカルベニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液(0.002mM/ml)を2.0ml加え、プロピレンとエチレンの共重合を開始させた。この時の触媒濃度は、全系に対してジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドが0.001ミリモル/リットル、トリフェニルカルベニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートが0.004ミリモル/リットルであった。
重合中、エチレンを連続的に供給することにより、内圧を5.5kg/cmGに保持した。重合を開始して30分後、重合反応をメチルアルコールを添加することにより停止した。脱圧後、ポリマー溶液を取り出し、このポリマー溶液に対して、水1リットルに対して濃塩酸5mlを添加した水溶液を1:1の割合で用いてこのポリマー溶液を洗浄し、触媒残渣を水相に移行させた。この触媒混合溶液を静置したのち、水相を分離除去しさらに蒸留水で2回洗浄し、重合液相を油水分離した。次いで、油水分離された重合液相を3倍量のアセトンと強撹拌下に接触させ、重合体を析出させたのち、アセトンで十分に洗浄し固体部(共重合体)を濾過により採取した。窒素流通下、130℃、350mmHgで12時間乾燥した。
以上のようにして得られたプロピレン・エチレン共重合体の135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]は2.4dl/gであり、ガラス転移温度は−28℃であり、エチレン含量は20モル%であり、GPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn)は2.9であった。また13C−NMRで測定される吸収強度比(A/C)×100=4、(B/C)×100=78であった。
(合成例12)
[アイソタクティックプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−12)の合成]
充分に窒素置換した2000mlの重合装置に、833mlの乾燥ヘキサン、1−ブテン100gとトリイソブチルアルミニウム(1.0mmol)を常温で仕込んだ後、重合装置内温を40℃に昇温し、プロピレンで系内の圧力を0.76MPaになるように加圧した後に、エチレンで、系内圧力を0.8MPaに調整した。次いで、ジメチルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライド0.001mmolとアルミニウム換算で0.3mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)を接触させたトルエン溶液を重合器内に添加し、内温40℃、系内圧力を0.8MPaにエチレンで保ちながら20分間重合し、20mlのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、2Lのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃、12時間乾燥した。得られたポリマーは、46.4gであり、極限粘度[η]が1.81dl/gであった。
得られたポリマーの135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]は、1.81dl/gであり、ガラス転移温度Tgは−27.6℃であり、融解ピークは存在せず、エチレン
含量は17.0モル%、ブテン含量は9.2モル%であり、GPCによる分子量分布は2.2であった。
(合成例13)
[シンジオタクチックポリプロピレン(A−1)の合成]
特開平2−274763号公報に記載の方法に従い、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライドおよびメチルアルミノキサンからなる触媒を用いて、水素の存在下でプロピレンの塊状重合法によって得られたシンジオタクチックポリプロピレンのメルトフローインデックスが、4.4g/10min、GPCによる分子量分布は2.3、13C−NMRによって測定されたシンジオタクチックペンタッド分率(r.r.r.r)が0.823、示差走査熱量分析で測定したTmが127℃、Tcが57℃であった。
合成例1〜12で得られた共重合体の諸物性を表1に示した。
Figure 0004949019
(実施例1)
三井化学(株)製アイソタクティックポリプロピレン(アイソ−PP)(グレード:B101、MFR=0.5、融点165℃)(IIa)10重量部と、合成例1で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−1)90重量部とを混合し、溶融混練により熱可塑性樹脂組成物を得た。
この組成物の引張り弾性率は17MPaであり、TMAは126℃、グロス変化率ΔGlossは10、残留歪は6、JIS A硬度は74、ヘイズは7であった。
得られた樹脂組成物について測定した物性を表2に示す。
(実施例2)
実施例1において、三井化学(株)製アイソタクティックポリプロピレン(アイソ−PP)(グレード:B101、MFR=0.5,融点165℃)(IIa)を20重量部、合成例1で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−1)を80重量部に変えた以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について測定した物性を表2に示す。
この組成物の引張り弾性率は27MPaであり、TMAは155℃、グロス変化率ΔGlossは10、残留歪は8、JIS A硬度は82、ヘイズは10であった。
(実施例3)
実施例1において、合成例1で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−1)を合成例2で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−2)に変えた以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。
この組成物の引張り弾性率は34MPaであり、TMAは134℃、グロス変化率ΔGlossは8、残留歪は8、JIS A硬度は85、ヘイズは6であった。得られた樹脂組成物について測定した物性を表2に示す。
(実施例4)
実施例2において、合成例1で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−1)を合成例2で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−2)に変えた以外は、実施例2と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。
この組成物の引張り弾性率は44MPaであり、TMAは154℃、グロス変化率ΔGlossは9、残留歪は8、JIS A硬度は88、ヘイズは7であった。得られた樹脂組成物について測定した物性を表2に示す。
(実施例5)
実施例1において、合成例1で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−1)を合成例3で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−3)に変えた以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。
この組成物の引張り弾性率は17MPaであり、TMAは134℃、グロス変化率ΔGlossは11、残留歪は8、JIS A硬度は76、ヘイズは9であった。得られた樹脂組成物について測定した物性を表2に示す。
(実施例6)
実施例2において、合成例1で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−1)を合成例3で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−3)に変えた以外は、実施例2と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。
この組成物の引張り弾性率は24MPaであり、TMAは154℃、グロス変化率ΔG
lossは10、残留歪は8、JIS A硬度は82、ヘイズは8であった。得られた樹脂組成物について測定した物性を表2に示す。
(実施例7)
実施例2において、合成例1で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−1)を合成例4で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−4)に変えた以外は、実施例2と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。
この組成物の引張り弾性率は27MPaであり、TMAは156℃、グロス変化率ΔGlossは7、残留歪は7、JIS A硬度は81、ヘイズは8であった。得られた樹脂組成物について測定した物性を表2に示す。
(実施例8)
実施例2において、合成例1で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−1)を合成例5で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−5)に変えた以外は、実施例2と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。
この組成物の引張り弾性率は24MPaであり、TMAは126℃、グロス変化率ΔGlossは47、残留歪は9、JIS A硬度は81、ヘイズは38であった。得られた樹脂組成物について測定した物性を表2に示す。
(比較例1)
実施例2において、合成例1で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−1)を合成例10で得られたプロピレン・ブテン共重合体(S−10)に変えた以外は、実施例2と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。
この組成物の引張り弾性率は184MPaであり、TMAは154℃、グロス変化率ΔGlossは9、残留歪は28、JIS A硬度は95、ヘイズは14であった。得られた樹脂組成物について測定した物性を表2に示す。
(比較例2)
実施例2において、合成例1で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−1)を合成例11で得られたプロピレン・エチレン共重合体(S−11)に変えた以外は、実施例2と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。
この組成物の引張り弾性率は14MPaであり、TMAは64℃、グロス変化率ΔGlossは59、残留歪は28、JIS A硬度は75、ヘイズは74であった。得られた樹脂組成物について測定した物性を表2に示す。
(比較例3)
実施例2において、合成例1で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−1)を合成例12で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−12)に変えた以外は、実施例2と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。
この組成物の引張り弾性率は24MPaであり、TMAは154℃、グロス変化率ΔGlossは39、残留歪は8、JIS A硬度は82、ヘイズは12であった。得られた樹脂組成物について測定した物性を表2に示す。
Figure 0004949019


(実施例9)
熱可塑性樹脂(IIb)として合成例13で得られたシンジオタクチックポリプロピレン(シンジオ−PP)(A−1)10重量部と、合成例3で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−3)90重量部とを混合し、溶融混練により熱可塑性樹脂組成物を得た。
この組成物の引張り弾性率は7MPaであり、TMAは106℃、グロス変化率ΔGlossは9、残留歪は6、JIS A硬度は74、ヘイズは7であった。得られた樹脂組成物について測定した物性を表3に示す。
(実施例10)
実施例9において、合成例13で得られたシンジオタクチックポリプロピレン(シンジオ−PP)(A−1)を20重量部、合成例3で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−3)を80重量部に変えた以外は、実施例9と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。
この組成物の引張り弾性率は24MPaであり、TMAは116℃、グロス変化率ΔGlossは5、残留歪は8、JIS A硬度は83、ヘイズは10であった。得られた樹脂組成物について測定した物性を表3に示す。
(実施例11)
実施例10において、合成例3で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−3)を合成例4で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−4)に変えた以外は、実施例10と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。
この組成物の引張り弾性率は17MPaであり、TMAは114℃、グロス変化率ΔGlossは6、残留歪は8、JIS A硬度は80、ヘイズは10であった。得られた樹脂組成物について測定した物性を表3に示す。
(実施例12)
実施例10において、合成例3で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−3)を合成例5で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−5)に変えた以外は、実施例10と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。
この組成物の引張り弾性率は17MPaであり、TMAは100℃、グロス変化率ΔGlossは16、残留歪は10、JIS A硬度は80、ヘイズは20であった。得られた樹脂組成物について測定した物性を表3に示す。
(比較例4)
実施例10において、合成例3で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−3)を合成例10で得られたプロピレン・ブテン共重合体(S−10)に変えた以外は、実施例10と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。
この組成物の引張り弾性率は164MPaであり、TMAは120℃、グロス変化率ΔGlossは5、残留歪は28、JIS A硬度は95以上、ヘイズは14であった。得られた樹脂組成物について測定した物性を表3に示す。
(比較例5)
実施例10において、合成例3で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−3)を合成例11で得られたプロピレン・エチレン共重合体(S−11)に変えた以外は、実施例10と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。
この組成物の引張り弾性率は19MPaであり、TMAは102℃、グロス変化率ΔGlossは25、残留歪は8、JIS A硬度は81、ヘイズは8であった。得られた樹脂組成物について測定した物性を表3に示す。
(比較例6)
実施例10において、合成例3で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−3)を合成例12で得られたプロピレン・エチレン共重合体(S−12)に変えた以外は、実施例10と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。
この組成物の引張り弾性率は19MPaであり、TMAは102℃、グロス変化率ΔGlossは35、残留歪は14、JIS A硬度は81、ヘイズは38であった。得られた樹脂組成物について測定した物性を表3に示す。
Figure 0004949019
(実施例13)
合成例13で得られたシンジオタクティックポリプロピレン(A−1)80重量部と、合成例6で得られたプロピレン・ブテン共重合体(S−6)20重量部とを混合し、溶融混練によりポリプロピレン樹脂組成物を得た。得られた物性を表4に示す。
(実施例14)
実施例13において、合成例6で得られたプロピレン・ブテン共重合体(S−6)の代わりに、合成例7で得られたプロピレン・ブテン共重合体(S−7)を用いた以外は実施例13と同様に行い、ポリプロピレン樹脂組成物を得た。得られた物性を表4に示す。
(実施例15)
実施例13において、合成例6で得られたプロピレン・ブテン共重合体(S−6)の代わりに、合成例8で得られたプロピレン・ブテン共重合体(S−8)を用いた以外は実施例13と同様に行い、ポリプロピレン樹脂組成物を得た。得られた物性を表4に示す。
(実施例16)
実施例13において、合成例6で得られたプロピレン・ブテン共重合体(S−6)の代わりに、合成例9で得られたプロピレン・オクテン共重合体(S−9)を用いた以外は実施例13と同様に行い、ポリプロピレン樹脂組成物を得た。得られた物性を表4に示す。
(実施例17)
三井化学(株)製アイソタクティックポリプロピレンランダム共重合体(グレード:F337D、MFR=6.5,エチレン含量=3.1wt%、融点138℃)(A−2)を80重量部、合成例7で得られたプロピレン・ブテン共重合体(S−7)20重量部とを混合し、溶融混練によりポリプロピレン樹脂組成物を得た。得られた物性を表4に示す。
(実施例18)
実施例17において、合成例7で得られたプロピレン・ブテン共重合体(S−7)の代わりに、合成例8で得られたプロピレン・ブテン共重合体(S−8)を用いた以外は実施例17と同様に行い、ポリプロピレン樹脂組成物を得た。得られた物性を表4に示す。
(実施例19)
実施例17において、合成例7で得られたプロピレン・ブテン共重合体(S−7)の代わりに、合成例9で得られたプロピレン・オクテン共重合体(S−9)を用いた以外は実施例17と同様に行い、ポリプロピレン樹脂組成物を得た。得られた物性を表4に示す。
(実施例20)
三井化学(株)製アイソタクティックポリプロピレンブロック共重合体(グレード:J736、MFR=26.0,エチレン含量=2.6wt%、融点164℃)(A−3)を70重量部、合成例8で得られたプロピレン・ブテン共重合体(S−8)を10重量部、三井化学(株)製エチレン・ブテン共重合体(グレード:A4070、MFR=7.1,エチレン含量=84.1モル%)(C−1)20重量部とを混合し、溶融混練によりポリプロピレン樹脂組成物を得た。得られた物性を表4に示す。
(実施例21)
実施例17において、合成例7で得られたプロピレン・ブテン共重合体(S−7)の代わりに、合成例1で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−1)を用いた以外は実施例17と同様に行い、ポリプロピレン樹脂組成物を得た。得られた物性を表4に示す。
(実施例22)
実施例17において、合成例7で得られたプロピレン・ブテン共重合体(S−7)の代わりに、合成例2で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−2)を用いた以外は実施例17と同様に行い、ポリプロピレン樹脂組成物を得た。得られた物性を表4
に示す。
(比較例7)
実施例17において、合成例7で得られたプロピレン・ブテン共重合体(S−7)の代わりに、合成例11で得られたプロピレン・エチレン共重合体(S−11)を用いた以外は実施例17と同様に行い、ポリプロピレン樹脂組成物を得た。得られた物性を表4に示す。
(比較例8)
三井化学(株)製アイソタクティックポリプロピレンブロック共重合体(グレード:J736、MFR=26.0,エチレン含量=2.6wt%、融点164℃)(A−3)を70重量部、三井化学(株)製エチレン・ブテン共重合体(グレード:A4070、MFR=7.1,エチレン含量=84.1モル%)(C−1)30重量部とを混合し、溶融混練によりポリプロピレン樹脂組成物を得た。得られた物性を表4に示す。
Figure 0004949019
(実施例23)
非架橋または部分架橋されたオレフィン系熱可塑性エラストマー、三井化学(株)製、ミラストマー5030N、60重量部(アイソタクチックポリプロピレン15重量%およびエチレン・炭素数3以上のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体50重量%を含む)に対して、合成例13で得られたシンジオタクチックホモポリプロピレン(Y−1)8重量部と合成例2で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−2)32重量部を添加し、溶融混練によりプロピレン系重合体組成物を得た。得られた組成物を200℃にて溶融プレス成形を行い、所望の試験形状にて物性評価を実施した。物性評価の結果を表5に示す。
この組成物の引張り弾性率は10MPaであり、TMAは145℃、摩耗前後のグロス変化率ΔGlossは15、永久伸びは7、JIS A硬度は83であった。
(実施例24)
実施例23で、合成例2で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−2)を合成例1で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−1)に変えた以外は実施例23と同様に行った。得られた組成物を200℃にて溶融プレス成形を行い、所望の試験形状にて物性評価を実施した。物性評価の結果を表5に示す。
この組成物の引張り弾性率は13MPaであり、TMAは144℃、摩耗前後のグロス変化率ΔGlossは14、永久伸びは8、JIS A硬度は84であった。
(実施例25)
実施例23で、合成例2で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−2)を合成例3で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−3)に変えた以外は実施例23と同様に行った。得られた組成物を200℃にて溶融プレス成形を行い、所望の試験形状にて物性評価を実施した。物性評価の結果を表5に示す。
この組成物の引張り弾性率は14MPaであり、TMAは145℃、摩耗前後のグロス変化率ΔGlossは12、永久伸びは7、JIS A硬度は84であった。
(実施例26)
実施例23で、合成例2で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−2)を合成例4で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−4)に変えた以外は実施例23と同様に行った。得られた組成物を200℃にて溶融プレス成形を行い、所望の試験形状にて物性評価を実施した。物性評価の結果を表5に示す。
この組成物の引張り弾性率は12MPaであり、TMAは145℃、摩耗前後のグロス変化率ΔGlossは9、永久伸びは7、JIS A硬度は82であった。
(実施例27)
実施例23で、合成例2で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−2)を合成例6で得られたプロピレン・ブテン共重合体(S−6)に変えた以外は実施例23と同様に行った。得られた組成物を200℃にて溶融プレス成形を行い、所望の試験形状にて物性評価を実施した。物性評価の結果を表5に示す。
この組成物の引張り弾性率は53MPaであり、TMAは155℃、摩耗前後のグロス変化率ΔGlossは9、永久伸びは12、JIS A硬度は91であった。
(実施例28)
非架橋または部分架橋されたオレフィン系熱可塑性エラストマー、三井化学(株)製、ミラストマー5030N、68重量部と、、上記合成例2で得られたプロピレン・エチレ
ン・ブテン共重合体(S−2)32量部を添加し、溶融混練によりプロピレン系重合体組成物を得た。得られた組成物を200℃にて溶融プレス成形を行い、所望の試験形状にて物性評価を実施した。物性評価の結果を表5に示す。
この組成物の引張り弾性率は8MPaであり、TMAは142℃、摩耗前後のグロス変化率ΔGlossは18、永久伸びは7、JIS A硬度は80であった。
(実施例29)
実施例28において合成例2で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−2)を合成例4で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−4)に変えた以外は実施例28と同様に行った。得られた組成物を200℃にて溶融プレス成形を行い、所望の試験形状にて物性評価を実施した。物性評価の結果を表5に示す。
この組成物の引張り弾性率は11MPaであり、TMAは142℃、摩耗前後のグロス変化率ΔGlossは15、永久伸びは9、JIS A硬度は78であった。
(実施例30)
上記実施例28において合成例2で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−2)を合成例6で得られたプロピレン・ブテン共重合体(S−6)に変えた以外は実施例28と同様に行った。得られた組成物を200℃にて溶融プレス成形を行い、所望の試験形状にて物性評価を実施した。物性評価の結果を表5に示す。
この組成物の引張り弾性率は47MPaであり、TMAは141℃、摩耗前後のグロス変化率ΔGlossは17、永久伸びは12、JIS A硬度は90であった。
(実施例31)
非架橋または部分架橋されたオレフィン系熱可塑性エラストマー、三井化学(株)製、ミラストマー5030N、70重量部(アイソタクチックポリプロピレン15重量%およびエチレン・炭素数3以上のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体50重量%を含む)に対して、三井化学(株)製アイソタクティックポリプロピレン重合体(Y−2)(グレード:B101、MFR=0.5g/10min、融点165℃)を6重量部、上記合成例2で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−2)重24量部を添加し、溶融混練によりプロピレン系重合体組成物を得た。得られた組成物を200℃にて溶融プレス成形を行い、所望の試験形状にて物性評価を実施した。物性評価の結果を表5に示す。
この組成物の引張り弾性率は27MPaであり、TMAは154℃、摩耗前後のグロス変化率ΔGlossは14、永久伸びは8、JIS A硬度は86であった。
(実施例32)
実施例31で、合成例2で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−2)を合成例4で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−4)に変えた以外は実施例31と同様に行った。得られた組成物を200℃にて溶融プレス成形を行い、所望の試験形状にて物性評価を実施した。物性評価の結果を表5に示す。
この組成物の引張り弾性率は29MPaであり、TMAは154℃、摩耗前後のグロス変化率ΔGlossは11、永久伸びは9、JIS A硬度は86であった。
(実施例33)
実施例32で、非架橋または部分架橋されたオレフィン系熱可塑性エラストマー、三井化学(株)製、ミラストマー5030N、50重量部、三井化学(株)製アイソタクティックポリプロピレン重合体(グレード:B101、MFR=0.5g/10min、融点165℃)を10重量部、合成例4で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(S−4)を40重量部に変えた以外は実施例32と同様に行った。得られた組成物を200℃にて溶融プレス成形を行い、所望の試験形状にて物性評価を実施した。物性評価の結
果を表5に示す。
この組成物の引張り弾性率は21MPaであり、TMAは154℃、摩耗前後のグロス変化率ΔGlossは10、永久伸びは10、JIS A硬度は84であった。
(比較例9)
非架橋または部分架橋されたオレフィン系熱可塑性エラストマー、三井化学(株)製、ミラストマー5030Nを200℃にて溶融プレス成形を行い、所望の試験形状にて物性評価を実施した。物性評価の結果を表5に示す。
この組成物の引張り弾性率は3MPaであり、TMAは154℃、摩耗前後のグロス変化率ΔGlossは96、永久伸びは8、JIS A硬度は50であった。
Figure 0004949019
本発明により透明性、柔軟性、ゴム弾性、耐熱性、耐磨耗性にバランス良く優れている熱可塑性樹脂組成物およびそれから得られる成形体が提供される。
本発明によれば、熱可塑性樹脂に配合することにより、透明性、柔軟性、ヒートシール、耐衝撃性とのバランスに優れた熱可塑性樹脂組成物を提供し得るα−オレフィン系共重合体も提供される。
また本発明によって、剛性および耐衝撃性に優れ、かつ耐白化性、耐摩耗性、ヒートシール性のバランスに優れたポリプロピレン樹脂組成物が提供される。
さらに本発明によれば、ゴム的性質(永久伸び、圧縮永久歪など)、耐熱性などに優れ、耐摩耗性、耐傷つき性にも優れたプロピレン系共重合体組成物が、提供される。
本発明により提供される熱可塑性樹脂組成物は、従来公知のポリオレフィン用途に広く用いることができるが、特にシート、未延伸または延伸フィルム、パイプ、電線被覆、フィラメント、その他の種々形状の成形体に成形して好適に利用できるものである。


Claims (5)

  1. エチレン由来の構成単位を1から30モル%、プロピレン由来の構成単位を30〜79モル%、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位を10〜50モル%(ただしエチレン由来の構成単位と炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位との合計量は21から70モル%である)の量で含み、o−ジクロロベンゼン溶液で測定した13C−NMRで、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位のCH(メチン)に由来するシグナルのうち、最も高磁場で存在するピークを34.4ppmと定めたシグナルチャートにおいて、22.0〜20.9ppmの吸収強度Aと19.0〜20.6ppmの吸収強度Bが、プロピレンメチルに帰属される19.0〜22.0ppmの吸収強度Cに対して、下記の関係式(i)と(ii)を満たし、かつ、示差走査熱量計(DSC)によって測定した融解ピークが存在しないα−オレフィン系共重合体(I)と、
    (A/C)×100≦8・・・・・・(i)
    (B/C)×100≧60・・・・・・(ii)
    他の熱可塑性樹脂(II)とを含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. 前記α−オレフィン系共重合体(I)が、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.01〜10dl/gの範囲にあり、GPCによる分子量分布が4以下であり、ガラス転移温度Tgが−5℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 前記他の熱可塑性樹脂(II)が、230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが0.1〜200g/10分の範囲にあるポリプロピレンであることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 請求項1〜のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物から得られる成形体。
  5. エチレン由来の構成単位を1から30モル%、プロピレン由来の構成単位を30〜69モル%、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位を10〜50モル%(ただしエチレン由来の構成単位と炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位との合計量は31から70モル%の量で含み、o−ジクロロベンゼン溶液で測定した13C−NMRで、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位のCH(メチン)に由来するシグナルのうち、最も高磁場で存在するピークを34.4ppmと定めたシグナルチャートにおいて、22.0〜20.9ppmの吸収強度Aと19.0〜20.6ppmの吸収強度Bが、プロピレンメチルに帰属される19.0〜22.0ppmの吸収強度Cに対して、下記の関係式(i)と(ii)を満たし、かつ、示差走査熱量計(DSC)によって測定した融解ピークが存在しないことを特徴とする、α−オレフィン系共重合体(I−a);
    (A/C)×100≦8・・・・・・(i)
    (B/C)×100≧60・・・・・・(ii)。
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