JP4592848B2 - 軟質透明性シンジオタクティックポリプロピレン組成物 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、シンジオタクティックポリプロピレン組成物に関し、さらに詳しくは、透明性、柔軟性、耐傷付き性、耐熱性に優れたポリプロピレン組成物に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
ポリプロピレンには、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン等があり、このうちでアイソタクティックポリプロピレンからなるフィルムは、安価で透明性、剛性、耐湿性、および耐熱性に優れているため各種の包装材料に広く使用されている。このアイソタクティックポリプロピレンフィルムのうち、特にエチレン−プロピレンランダム共重合体フィルムは透明性に優れているが、フィルムの厚さが増すとともに透明性および柔軟性が低下するので、例えば、包装材料として内容物の外観を損なわないような充分な透明性を得ようとする場合、フィルムの厚さは60μm程度が限界であった。そのため、透明性および柔軟性の高いポリプロピレンの厚物フィルムは製造困難であった。
【0003】
一方、シンジオタクティックポリプロピレンは、バナジウム化合物とエーテルおよび有機アルミニウムからなる触媒の存在下に低温重合により得られることが知られている。しかしながらこの方法で得られるポリマーは、そのシンジオタクティシティが低く、本来のシンジオタクティックな性質を表しているとは言い難かった。
【0004】
これに対して、J.A.Ewenらにより非対称な配位子を有する遷移金属触媒とアルミノキサンからなる触媒の存在下にシンジオタクティックペンタッド分率が0.7を超えるようなタクティシティの高いポリプロピレンが得られることが初めて発見された(J.Am.Chem.Soc.,1988,110,6255−6256)。
【0005】
上記J.A.Ewenらの方法により得られたポリマーは、シンジオタクティシティが高く、アイソタクティックポリプロピレンよりもエラスティックな性質を有していたが、これを軟質な成形材料として、例えば、軟質塩化ビニルや加硫ゴム等が使用されている分野に利用しようとする場合、その柔軟性やゴム弾性、機械的強度は充分なものではなかった。
【0006】
一般に、ポリプロピレンにエチレン-プロピレン共重合体ゴム等を配合することによりその柔軟性や耐衝撃性を改良する試みがなされているが、この方法により得られる樹脂組成物からなる成形物は、柔軟性や耐衝撃性がある程度良好であるものの、ゴム弾性や機械的強度は充分ではなかった。
【0007】
このような問題点を解決すべく鋭意研究して、本願出願人は、先に、
▲1▼:特開平8-120127号公報において、シンジオタクティックポリプロピレン(A)10〜90重量%、エチレン-オクテン共重合体(B)90〜10重量%を含み、部分的に架橋されている熱可塑性エラストマー組成物、並びにシンジオタクティックポリプロピレンとエチレン-オクテン共重合体とを、有機過酸化物あるいはこれと架橋助剤の存在下に溶融混練しながら動的に架橋することにより得られる上記組成物について提案している。この組成物は、柔軟性、ゴム弾性、機械的強度、表面外観等に優れるものであった。
【0008】
しかしながら、この公報に記載の組成物には、透明性、耐衝撃性、柔軟性、耐熱性、耐傷付性等のバランスの点でさらなる改良の余地があった。
なお、本願出願人は、先に以下のような提案をしている。
【0009】
すなわち、▲2▼:特開平8-85741号公報において、シンジオタクティックポリプロピレン(A)100重量部、エチレン-プロピレン系ゴム(B)30〜380重量部、およびポリブテン樹脂(C)4〜200重量部を含む熱可塑性エラストマー組成物について提案している。この組成物は、柔軟性、ゴム弾性、機械的強度、成形性、外観、感触に優れた成形品を得ることができるものであった。
【0010】
▲3▼:特開平8-109292号公報において、13C-NMRにて測定されるシンジオタクティックペンタッド分率が0.5以上のシンジオタクティックポリプロピレン95〜30重量部、およびエチレン-オクテン共重合体5〜70重量部とからなるポリプロピレン系樹脂組成物について提案している。この組成物は、透明性、柔軟性、成形加工性に優れるものであった。
【0011】
▲4▼:特開平3-12439号公報において、13C-NMRにて測定されるメチル基のスペクトルのシンジオタクティックペンタッド結合のピーク強度が全メチル基のピーク強度の0.7以上である実質的にプロピレン単独重合体とエチレンとプロピレンの共重合体からなるシンジオタクティックポリプロピレン樹脂組成物について提案している。この組成物は、高シンジオタクティシティを有し、耐衝撃性、透明性に優れるものであった。
【0012】
▲5▼:また、特開平5-17589号公報において、実質的にシンジオタクティック構造を有するポリプロピレンとエチレンとプロピレンの共重合体からなる組成物を押出成形してなる耐衝撃性ポリプロピレン成形物について提案している。
この組成物は、耐衝撃性に優れ、物性バランスに優れるものであった。
▲6▼:また、特開平8−59916号公報において、本質的にシンジオタクティック構造を有するプロピレンポリマー1〜99重量%と
非晶質プロピレンポリマー([η]>1dl/g、シンジオタクティックダイアド(r)の量(%)−アイソタクティックダイアド(m)の量(%)>0、(CH2)n(n≧2)序列に含まれるCH2基が2%以下、ベルヌーイアニテイ指数=1±0.2)1〜99重量%
からなる組成物およびこれから得られる製品、特に低温ヒートシールフィルムについて提案している。
この組成物は、従来のシンジオタクティックポリプロピレンと比較して、良好な弾性を有することを特徴としている。しかし、この公報に開示されている非晶質プロピレンポリマーはホモポリマーであり、耐寒性に劣ると考えられる。
【0013】
しかしながらこれら▲2▼〜▲6▼の何れの公報に記載の組成物においても、透明性、柔軟性、耐熱性、耐傷付き性等のバランスの点でさらなる改良の余地があった。
【0014】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、透明性、柔軟性、耐熱性、耐傷付性にバランス良く優れたポリプロピレン組成物を提供することを目的としている。
【0015】
【発明の概要】
本発明に係るシンジオタクティックポリプロピレン組成物は、
(i)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.1〜50g/10分であるシンジオタクティックポリプロピレンと、
(ii) プロピレン成分単位を50〜99モル%、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の成分単位(A)を1〜50モル%の量で含む結晶性プロピレン・α−オレフィン系共重合体(該共重合体(ii)中の全成分単位量を100モル%とする。)とを含み、
上記(i)と上記共重合体(ii)との重量比{(i)/(ii)}が95/5〜5/95であり、上記共重合体(ii)は示差走査型熱量計(DSC)により測定した融解熱量が、0.7J/g以上であり、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.01〜10dl/gの範囲にあり、GPCによる分子量分布が4以下であり、ガラス転移温度Tgが20℃以下であることを特徴としている。
【0016】
本発明の好ましい態様においては、上記シンジオタクティックポリプロピレン組成分のASTMD1003に準拠して測定した曇度(Hase)が、25%以下であり、JIS K 6301に準拠して測定した引張り弾性率(YM)が、250MPa以下であることが望ましい。
【0017】
本発明の好ましい態様においては、上記(i)シンジオタクティックポリプロピレンの13C-NMRで測定されるシンジオタクティックペンタッド分率(rrrr)が0.5以上であることが望ましい。
【0018】
本発明の好ましい態様においては、上記結晶性プロピレン・α−オレフィン系共重合体(ii)が、プロピレン成分単位を50〜99モル%、1−ブテン成分単位または1−オクテン成分単位を1〜50モル%の量で含む共重合体(該共重合体(ii)中の全成分単位量を100モル%とする。)であることが望ましい。
【0019】
本発明の好ましい態様においては、
上記(i)シンジオタクティックポリプロピレン、
(ii) プロピレン成分単位を50〜99モル%、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の成分単位(A)を1〜50モル%の量で含む結晶性プロピレン・α−オレフィン系共重合体(該共重合体(ii)中の全成分単位量を100モル%とする。)のうちの少なくとも1つのポリマーが、
下記成分(a)と、
下記成分(b)、(c)および(d)のうちから選択される1種以上の化合物と、
からなる少なくとも1つの触媒系の存在下に得られたものであることが望ましい。
【0020】
(a):下記式(I)または式(II)で表される遷移金属錯体
【0021】
【化2】
【0022】
[式(I)、(II)中、MはTi、Zr、Hf、Rn、Nd、SmまたはRuであり、Cp1およびCp2はMとπ結合しているシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基またはそれらの誘導体基であり、X1およびX2は、アニオン性配位子または中性ルイス塩基配位子であり、Yは窒素原子、酸素原子、リン原子、または硫黄原子を含有する配位子であり、ZはC、O、B、S、Ge、SiまたはSn原子あるいはこれらの原子を含有する基である。]
(b):成分(a)中の遷移金属Mと反応し、イオン性の錯体を形成する化合物
(c):有機アルミニウム化合物
(d):アルミノキサン。
【0023】
本発明に係る上記シンジオタクティックポリプロピレン組成物は、透明性、柔軟性、耐熱性、耐傷付き性にバランス良く優れている。
【0024】
【発明の具体的説明】
【0025】
以下、本発明に係る軟質透明性シンジオタクティックポリプロピレン組成物について具体的に説明する。
[シンジオタクティックポリプロピレン組成物]
本発明に係るシンジオタクティックポリプロピレン組成物は、
(i)シンジオタクティックポリプロピレンと、
(ii)プロピレン成分単位を50〜99モル%、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の成分単位(A)を1〜50モル%の量で含む結晶性プロピレン・α−オレフィン系共重合体(該共重合体(ii)中の全成分単位量を100モル%とする。)とを含んでいる。
【0026】
以下、まず初めに、このシンジオタクティックポリプロピレン組成物に含まれる各成分(i)、(ii)について説明する。
<(i)シンジオタクティックポリプロピレン>
【0027】
シンジオタクティックポリプロピレン(i)は、実質的にシンジオタックティック構造を有するポリプロピレンであって、少量例えば、20重量%以下、好ましくは15重量%以下の量でエチレン、炭素数4以上のα−オレフィン等が共重合されていてもよい。
【0028】
このようなシンジオタクティックポリプロピレンの製造の際には、触媒としては、下記成分(a)と、
下記成分(b)、(c)および(d)のうちから選択される1種以上の化合物と、
からなる少なくとも1つの触媒系が好ましく用いられる。
【0029】
(a):下記式(I)または式(II)で表される遷移金属錯体
【0030】
【化3】
【0031】
[式(I)、(II)中、MはTi、Zr、Hf、Rn、Nd、SmまたはRuであり、Cp1およびCp2はMとπ結合しているシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基またはそれらの誘導体基であり、X1およびX2は、アニオン性配位子または中性ルイス塩基配位子であり、Yは窒素原子、酸素原子、リン原子、または硫黄原子を含有する配位子であり、ZはC、O、B、S、Ge、SiまたはSn原子あるいはこれらの原子を含有する基である。]
(b):成分(a)中の遷移金属Mと反応し、イオン性の錯体を形成する化合物
(c):有機アルミニウム化合物
(d):アルミノキサン(アルモキサン、アルミニウムオキシ化合物とも言う。
)。
【0032】
この触媒系については、詳細に後述する。
また、本発明においては、上記触媒系に代えて特開平2-41303号公報、特開平41305号公報、特開平2-274703号公報、特開平2-274704号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平4-69394号公報、特開平5-17589号公報、あるいは特開平8−120127号公報に記載の触媒系を用いることもできる。
【0033】
具体的には、このようなシンジオタクティックポリプロピレンを製造する際には、前記本発明の背景技術の項で述べたJ.A.Ewenらの文献「J.Am.Chem.Soc.,1988,110,6255−6256」に記載の触媒系を用いることもでき、また該文献に記載された化合物と異なる構造のものであっても、プロピレンの単独重合体を製造したときに、得られる重合体のシンジオタックティックペンタッド分率(A.ZambelliらMacromolecules vol 6 687(1973).同vol 8 925(1975))が前述したような値、例えば、0.5以上程度の比較的タクティシティーが高い重合体を与える触媒系であれば利用でき、例えば、互いに非対称な配位子を有する架橋型遷移金属化合物と有機アルミニウム等の助触媒とからなる触媒系が挙げられる。
【0034】
このような触媒系を構成する架橋型遷移金属化合物としては、例えば、上記文献に記載された
ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)フルオレニルハフニウムジクロリド、
ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロリド、
イソプロピル(シクロペンタジエニル-1-フルオレニル)ハフニウムジクロリド、
イソプロピル(シクロペンタジエニルー1ーフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
(t−ブチルアミド)ジメチル(フルオレニル)シランチタンジメチル、
ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロリド
等が挙げられる。
【0035】
また有機アルミニウムとしては、アルミノキサン(アルモキサン、アルミニウムオキシ化合物とも言う。)あるいはアルキルアルミニウムが挙げられる。
アルミノキサンとしては、アルキルアルミニウムを水で縮合した形状のもが挙げられ、特にメチルアルミノキサンが好ましく、重合度として、5以上、好ましくは10以上のものが用いられる。
【0036】
上記遷移金属触媒成分に対するアルミノキサンの使用割合としては、10モル倍〜1万モル倍、通常50モル倍〜5千モル倍である。またアルキルアルミニウムと安定アニオン、あるいはそれを発生する化合物を組み合わせたものも使用できる。
【0037】
また、重合条件については特に制限はなく不活性媒体を用いる溶媒重合法、あるいは実質的に不活性媒体の存在しない塊状重合法、気相重合法も利用できる。
通常、重合温度としては、−100〜+200℃、重合圧力としては、常圧〜100kg/cm2が採用され、好ましくは−100〜+100℃、常圧〜50kg/cm2が採用される。
【0038】
また重合に際して20重量%以下、好ましくは15重量%以下、特に10重量%以下の量でエチレン、あるいは炭素数4以上のオレフィン類、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、4-メチル−1―ペンテン、ビニルシクロヘキサン、1−ヘキサデセン、ノルボルネン等;ジエン類例えば、ヘキサジエン、オクタジエン、デカジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等;が共重合されてもよい。なお、これらエチレン、α−オレフィン等が上記の量で共重合されると、物性に優れた組成物が得られる傾向がある。
【0039】
ここで実質的にシンジオタクティック構造であるとは、プロピレンの単独重合体にあっては、シンジオタクティックペンタッド分率(rrrr、ペンタッドシンジオタクティシテー)が0.5以上、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、特に好ましくは0.80以上であるものであり、この範囲のものは耐熱性、成形性に優れ、結晶性のポリプロピレンとしての特性が良好で好ましい。
【0040】
また、プロピレンと他のα−オレフィン等との共重合体にあっては、1,2,4−トリクロロベンゼン溶液で測定した13C-NMRで約20.2ppmに観測されるピーク強度がプロピレン単位の全メチル基に帰属されるピーク強度の0.3以上、好ましくは0.5以上であるものであり、この範囲にあると、物性に優れるので好ましい。また、分子量としては、135℃のデカリン溶液で測定した極限粘度[η]として、0.1〜20dl/g、好ましくは0.5〜10dl/g程度である。
【0041】
この、シンジオタクティックポリプロピレンのシンジオタクティックペンタッド分率(rrrr)が上記範囲にあると、透明性、耐傷付性、耐衝撃性が良好となるため好ましい。
【0042】
なお、このシンジオタクティックペンタッド分率(rrrr)は、以下のようにして測定される。
rrrr分率は、13C−NMRスペクトルにおけるPrrrr(プロピレン単位が5単位連続してシンジオタクティック結合した部位における第3単位目のメチル基に由来する吸収強度)およびPW (プロピレン単位の全メチル基に由来する吸収強度)の吸収強度から下記式(1)により求められる。
【0043】
rrrr分率=Prrrr/PW (1)
NMR測定は、たとえば次のようにして行われる。すなわち、試料0.35gをヘキサクロロブタジエン2.0mlに加熱溶解させる。この溶液をグラスフィルター(G2)で濾過した後、重水素化ベンゼン0.5mlを加え、内径10mmのNMRチューブに装入する。そして日本電子製GX−500型NMR測定装置を用い、120℃で13C−NMR測定を行う。積算回数は、10,000回以上とする。
【0044】
また、シンジオタクティックポリプロピレンのメルトフローレート(MFR、230℃、2.16kg荷重)は、0.001〜500g/10分、好ましくは0.01〜100g/10分、さらに好ましくは0.1〜50g/10分であることが望ましい。MFRがこのような範囲にあると、良好な流動性を示し、このシンジオタクティックポリプロピレンを他の成分と配合し易く、また得られた組成物から機械的強度に優れた成形品が得られる傾向がある。
【0045】
また、その密度が、0.86〜0.91g/cm3、好ましくは0.865〜0.90g/cm3のものが好ましい。このような密度のものを用いると、成形加工性が良好となり、充分な柔軟性を有する成形品が得られる傾向がある。
【0046】
<(ii)結晶性プロピレン・α−オレフィン系共重合体>
結晶性プロピレン・α−オレフィン系共重合体(ii)は、プロピレン成分単位を50〜99モル%、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の成分単位(A)を1〜50モル%、好ましくは、プロピレン成分単位を50〜95モル%、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の成分単位(A)を5〜50モル%、特に好ましくは、プロピレン成分単位を50〜85モル%、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の成分単位(A)を15〜50モル%含んでいる。
【0047】
このような量で、プロピレン成分、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の成分を含有す結晶性プロピレン・α−オレフィン系共重合体(ii)は、シンジオタクティックポリプロピレンとの相溶性が良好となり、得られるシンジオタクティックポリプロピレン組成物は、充分な透明性、柔軟性、耐熱性、耐傷き付性を発揮する傾向がある。
【0048】
このような結晶性プロピレン・α−オレフィン系共重合体(ii)を調製する際に用いられるα−オレフィンとしては、炭素数が4〜20、好ましくは4〜12の範囲にあれば特に限定されず、直鎖状であっても、分岐を有していてもよい。
【0049】
このようなα−オレフィンとしては、具体的には、例えば、1―ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプタン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1―ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン等が挙げられ、1―ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテンが好ましく、さらに1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンが好ましく、特に1−ブテンが好ましい。これらのα−オレフィンは、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0050】
例えば、炭素数4〜20のα−オレフィンの内から選択される1種のα-オレフィン(イ)と、該炭素数4〜20のα−オレフィンの内から選択され、上記と異なるα−オレフィン(ロ)とを、(イ)/(ロ)=50〜99モル%/1〜50モル%((イ)+(ロ)=100モル%)の量比で用いることができる。
【0051】
この結晶性プロピレン・α−オレフィン系共重合体(ii)中には、上記α−オレフィン成分単位以外に、2個以上の2重結合を有する上記ポリエン系不飽和化合物(ポリエン)由来の成分単位、アルコール、カルボン酸、アミン及びこれら誘導体等からなる成分単位等が含まれていてもよい。
【0052】
結晶性プロピレン・α−オレフィン系共重合体(ii)は、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が、通常0.01〜10dl/g、好ましくは0.05〜10dl/gの範囲にあることが望ましい。該結晶性プロピレン・α−オレフィン系共重合体(ii)の極限粘度[η]が、前記範囲内にあると、耐候性、耐オゾン性、耐熱老化性、低温特性、耐動的疲労性などの特性に優れた結晶性プロピレン・α−オレフィン系共重合体となる。
【0053】
この結晶性プロピレン・α−オレフィン系共重合体(ii)は、単一のガラス転移温度を有し、かつ示差走査熱量計(DSC)によって測定したガラス転移温度(Tg)が、通常20℃以下、好ましくは0℃以下、特に好ましくは−5℃以下の範囲にあることが望ましい。該結晶性プロピレン・α−オレフィン系共重合体(ii)のガラス転移温度(Tg)が前記範囲内にあると、耐寒性、低温特性に優れる。
【0054】
またGPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn、ポリスチレン換算、Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)は4.0以下であることが好ましい。
さらに好ましくは、3.0以下であることが望ましい。この範囲にあると、透明性、耐傷付き性、耐衝撃性が良好となるため好ましい。
【0055】
また示差走査熱量計(DSC)によって測定した融解熱量が、通常0.7J/g以上、好ましくは1.0J/g以上、特に好ましくは2.0J/g以上の範囲にあることが望ましい。該結晶性プロピレン・α−オレフィン系共重合体(ii)の融解熱量が前記範囲内にあると、耐傷付性、耐熱性に優れる。
またこの融解熱量の範囲にあれば、その結晶を構成するための構造は特に限定されず、アイソタクチック構造、シンジオタクティック構造、交互構造などいずれでも構わない。
【0056】
[結晶性プロピレン・α−オレフィン系共重合体(ii)の製造]
このような結晶性プロピレン・α−オレフィン系共重合体(ii)は、下記に示すメタロセン系触媒の存在下に共重合させて得られる。
【0057】
このようなメタロセン系触媒としては、
下記式(I)または式(II)で表される遷移金属錯体(a):
【0058】
【化4】
【0059】
[式(I)、(II)中、MはTi、Zr、Hf、Rn、Nd、SmまたはRuであり、Cp1およびCp2はMとπ結合しているシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基またはそれらの誘導体基であり、X1およびX2は、アニオン性配位子または中性ルイス塩基配位子であり、Yは窒素原子、酸素原子、リン原子、または硫黄原子を含有する配位子であり、ZはC、O、B、S、Ge、SiまたはSn原子あるいはこれらの原子を含有する基である。]と、
下記成分(b)、(c)および(d)のうちから選択される1種以上の化合物と、
からなる少なくとも1つの触媒系が用いられる。
【0060】
(b):成分(a)中の遷移金属Mと反応し、イオン性の錯体を形成する化合物
(イオン化イオン性化合物とも言う。)
(c):有機アルミニウム化合物
(d):アルミノキサン。
【0061】
まず本発明で用いられる下記式(I)で表される遷移金属錯体(a)について説明する。
【0062】
【化5】
【0063】
[式(I)中、MはTi、Zr、Hf、Rn、Nd、SmまたはRuであり、好ましくはTi、ZrまたはHfであり、Cp1およびCp2はMとπ結合しているシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基またはそれらの誘導体基であり、X1およびX2は、アニオン性配位子または中性ルイス塩基配位子であり、ZはC、O、B、S、Ge、SiまたはSn原子あるいはこれらの原子を含有する基、好ましくは1個のO、SiまたはCである。]
【0064】
式(I)中、結合基Zは、特にC、O、B、S、Ge、Si、Snから選ばれる1個の原子であることが好ましく、この原子はアルキル基、アルコキシ基などの置換基を有していてもよく、Zの置換基は、互いに結合して環を形成していてもよい。これらのうちでは、Zは、O、SiおよびCから選択されることが好ましい。
【0065】
Cp1、Cp2は遷移金属に配位する配位子であり、シクロペンタジエニル基、インデニル基、4,5,6,7-テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基などのシクロペンタジエニル骨格を有する配位子であり、このシクロペンタジエニル骨格を有する配位子は、アルキル基、シクロアルキル基、トリアルキルシリル基、ハロゲン原子などの置換基を有していてもよい。
【0066】
X1およびX2は、アニオン性配位子または中性ルイス塩基配位子であり、具体的には、炭素原子数が1〜12の炭化水素基、アルコキシ基、アリーロキシ基、スルホン酸含有基(−SO3Ra 、但し、Ra はアルキル基、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アリール基、ハロゲン原子で置換されたアリール基またはアルキル基で置換されたアリール基である。)、ハロゲン原子、水素原子などが挙げられる。
【0067】
以下に、Mがジルコニウムであり、かつシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を2個含むメタロセン化合物を例示する。
シクロヘキシリデン-ビス(インデニル)ジメチルジルコニウム、
シクロヘキシリデン-ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
イソプロピリデン-ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
イソプロピリデン(シクロペンタジエニル-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルシリレン-ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
メチルフェニルシリレン-ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(4,7-ジメチル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2,4,7-トリメチル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2,4,6-トリメチル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(4-フェニル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-フェニル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(α−ナフチル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(β-ナフチル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-(1-アントリル)-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)フルオレニルハフニウムジクロリド、
ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロリド、
イソプロピル(シクロペンタジエニル-1-フルオレニル)ハフニウムジクロリド、
イソプロピル(シクロペンタジエニルー1ーフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロリド
等が挙げられる。
【0068】
また、上記のような化合物においてジルコニウム金属を、チタニウム金属、ハフニウム金属に置き換えたメタロセン化合物を例示することもできる。
【0069】
上記のようなメタロセン化合物は、単独でまたは2種以上組合わせて用いることができる。
また上記のようなメタロセン化合物は、粒子状担体に担持させて用いることもできる。
【0070】
このような粒子状担体としては、SiO2、Al2O3、B2O3、MgO、ZrO2、CaO、TiO2、ZnO、SnO2、BaO、ThOなどの無機担体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体などの有機担体を用いることができる。これらの粒子状担体は、単独でまたは2種以上組合わせて用いることができる。
【0071】
本発明では、下記式(II)で示される遷移金属化合物を用いることもできる。
【0072】
【化6】
【0073】
式(II)中、Mは周期率表第4族またはランタニド系列の遷移金属であり、具体的には、Ti、Zr、Hf、Rn、Nd、Sm、Ruであって、好ましくはTi、Zr、Hfであり、Cp1はMとπ結合しているシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基またはそれらの誘導体基であり、X1およびX2は、アニオン性配位子または中性ルイス塩基配位子であり、Yは窒素原子、酸素原子、リン原子、または硫黄原子を含有する配位子であり、Zは炭素、酸素、イオウ、ホウ素または周期率表第14族の元素(たとえばケイ素、ゲルマニウムまたはスズ)であり、好ましくは炭素、酸素、ケイ素の何れかであり、Zは置換基を有していてもよく、ZとYとで縮合環を形成してもよい。
【0074】
さらに詳説すると、Cp1は遷移金属に配位する配位子であり、シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基あるいはそれらの誘導体基などのシクロペンタジエニル骨格を有する配位子であり、このシクロペンタジエニル骨格を有する配位子は、アルキル基、シクロアルキル基、トリアルキルシリル基、ハロゲン原子などの置換基を有していてもよい。
【0075】
またZは、C、O、B、S、Ge、Si、Snから選ばれる原子であり、Zはアルキル基、アルコキシ基などの置換基があってもよく、Zの置換基は互いに結合して環を形成していてもよい。
【0076】
X1およびX2は、アニオン性配位子または中性ルイス塩基配位子であり、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子もしくはハロゲン原子であるか、または20個以下の炭素原子、ケイ素原子もしくはゲルマニウム原子を含有する炭化水素基、シリル基もしくはゲルミル基である。
【0077】
このような式(II)で示される化合物としては、具体的に、(t−ブチルアミド)ジメチル(フルオレニル)シランチタンジメチル、などが挙げられる。
【0078】
本発明においては、オレフィン重合用触媒としては、上記のようなメタロセン系触媒が好ましく用いられるが、
【0079】
次に、メタロセン系触媒を形成する
(b):成分(a)中の遷移金属Mと反応し、イオン性の錯体を形成する化合物、すなわちイオン化イオン性化合物、
(c):有機アルミニウム化合物、および
(d):アルミノキサン(アルミニウムオキシ化合物)について説明する。
【0080】
<(b)イオン化イオン性化合物>
イオン化イオン性化合物は、遷移金属錯体成分(a)中の遷移金属Mと反応してイオン性の錯体を形成する化合物であり、このようなイオン化イオン性化合物としては、ルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物を例示することができる。
【0081】
ルイス酸としては、BR3 (式中、Rはフッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素原子である。)で示される化合物が挙げられ、たとえばトリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4-フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4-フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p-トリル)ボロン、トリス(o-トリル)ボロン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ボロンなどが挙げられる。
【0082】
イオン性化合物としては、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N-ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスフォニウム塩などを挙げることができる。具体的に、トリアルキル置換アンモニウム塩としては、たとえばトリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。ジアルキルアンモニウム塩としては、たとえばジ(1-プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。さらにイオン性化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを挙げることもできる。
【0083】
ボラン化合物としては、デカボラン(14)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ノナボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッケル酸塩(III)などの金属ボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0084】
カルボラン化合物としては、4-カルバノナボラン(14)、1,3-ジカルバノナボラン(13)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(IV)などの金属カルボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0085】
上記のようなイオン化イオン性化合物は、単独でまたは2種以上組合わせて用いることができる。
前記有機アルミニウムオキシ化合物またはイオン化イオン性化合物は、上述した粒子状担体に担持させて用いることもできる。
【0086】
また触媒を形成するに際しては、有機アルミニウムオキシ化合物またはイオン化イオン性化合物とともに以下のような(c)有機アルミニウム化合物を用いてもよい。
【0087】
<(c)有機アルミニウム化合物>
有機アルミニウム化合物としては、分子内に少なくとも1個のAl−炭素結合を有する化合物が利用できる。このような化合物としては、たとえば下記一般式で表される有機アルミニウム化合物が挙げられる。
【0088】
(R1 )m Al(O(R2 ))nHpXq
(式中、R1およびR2は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が通常1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3を満たす数であって、しかも、m+n+p+q=3である。)
【0089】
<(d)有機アルミニウムオキシ化合物(アルミノキサン)>
(d)有機アルミニウムオキシ化合物は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2−78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
【0090】
従来公知のアルミノキサン(アルモキサン)は、具体的には、下記一般式で表される。
【0091】
【化7】
【0092】
式中、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭化水素基であり、好ましくはメチル基、エチル基、特に好ましくはメチル基である。
mは2以上の整数であり、好ましくは5〜40の整数である。
【0093】
ここで、アルミノキサンは式(OAl(R1))で表されるアルキルオキシアルミニウム単位および式(OAl(R2))で表されるアルキルオキシアルミニウム単位(ここで、R1およびR2はRと同様の炭化水素基であり、R1およびR2は相異なる基を示す。)からなる混合アルキルオキシアルミニウム単位から形成されていてもよい。
【0094】
なお有機アルミニウムオキシ化合物は、少量のアルミニウム以外の金属の有機化合物成分を含有していてもよい。
本発明においては、上記結晶性プロピレンα−オレフィン系共重合体(ii)製造用の触媒(オレフィン系触媒)としては、上記のようなメタロセン系触媒が好ましく用いられるが、場合によっては上記メタロセン系触媒以外の、従来より公知の▲1▼固体状チタン触媒成分と有機アルミニウム化合物とからなるチタン系触媒、▲2▼可溶性バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなるバナジウム系触媒を用いることもできる。
【0095】
本発明では、上記のようなメタロセン触媒の存在下に、プロピレン、エチレン、などを通常液相で共重合させる。この際、一般に炭化水素溶媒が用いられるが、プロピレンを溶媒として用いてもよい。共重合はバッチ法または連続法のいずれの方法でも行うことができる。
【0096】
メタロセン系触媒を用い、共重合をバッチ法で実施する場合には、重合系内のメタロセン化合物の濃度は、重合容積1リットル当り、通常0.00005〜1ミリモル、好ましくは0.0001〜0.5ミリモルの量で用いられる。
【0097】
有機アルミニウムオキシ化合物は、メタロセン化合物中の遷移金属原子(M)に対するアルミニウム原子(Al)のモル比(Al/M)で、1〜10000、好ましくは10〜5000となるような量で用いられる。
【0098】
イオン化イオン性化合物は、メタロセン化合物に対するイオン化イオン性化合物のモル比(イオン化イオン性化合物/メタロセン化合物)で、0.5〜20、好ましくは1〜10となるような量で用いられる。
【0099】
また有機アルミニウム化合物が用いられる場合には、重合容積1リットル当り、通常約0〜5ミリモル、好ましくは約0〜2ミリモルとなるような量で用いられる。
【0100】
共重合反応は、通常、温度が−20〜150℃、好ましくは0〜120℃、さらに好ましくは0〜100℃の範囲で、圧力が0を超えて〜80kg/cm2、好ましくは0を超えて〜50kg/cm2の範囲の条件下に行なわれる。
【0101】
また反応時間(共重合が連続法で実施される場合には平均滞留時間)は、触媒濃度、重合温度などの条件によっても異なるが、通常5分間〜3時間、好ましくは10分間〜1.5時間である。
【0102】
上記プロピレン、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の成分の共重合用モノマーは、上述のような特定組成の結晶性プロピレン・α−オレフィン系共重合体(ii)が得られるような量でそれぞれ重合系に供給される。なお共重合に際しては、水素などの分子量調節剤を用いることもできる。
【0103】
上記のようにしてプロピレン、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の成分の共重合用モノマーを共重合させると、結晶性プロピレン・α−オレフィン系共重合体(ii)は通常これを含む重合液として得られる。この重合液は常法により処理され、結晶性プロピレン・α−オレフィン系共重合体(ii)が得られる。
【0104】
<シンジオタクティックポリプロピレン組成物>
本発明に係るシンジオタクティックポリプロピレン組成物は、
上記シンジオタクティックポリプロピレン(i)と結晶性プロピレン・α−オレフィン系共重合体(ii)とを含んでおり、上記(i)と、(ii)との重量比{(i)/(ii)}が95/5〜5/95、好ましくは85/15〜5/95、特に好ましくは80/20〜85/15である。上記のような量で(i)、(ii)を含むと、得られるシンジオタクティックポリプロピレン組成物は、透明性、柔軟性、耐熱性、耐傷付き性に優れる傾向がある。
【0105】
このようなシンジオタクティックポリプロピレン組成物からなる成形物は、ASTMD1003に準拠して測定した曇度(Hase)が、25%以下、好ま
しくは20%以下であることが望ましい。
【0106】
このようなシンジオタクティックポリプロピレン組成物からなる成形物は、JIS K 6301に準拠して測定した引張り弾性率(YM)が、250MPa以下、好ましくは200MPa以下であることが望ましい。
【0107】
また、本発明に係るシンジオタクティックポリプロピレン組成物は、メルトフローレート(ASTM D 1238,230℃、荷重2.16kg)が、通常0.001〜500g/10分、好ましくは0.01〜100g/10分、さらに好ましくは0.1〜50g/10分であり、135℃のデカリン中で測定される極限粘度[η]が、通常0.01〜10dl/g、好ましくは0.05〜10dl/g、さらに好ましくは0.1〜10dl/gである。
【0108】
また、該組成物からなる成形物の引張り弾性率、マルテンス硬度、TMA(針侵入温度)、曇度(Haze)は、それぞれ下記の範囲にあることが好ましい。
(イ)引張り弾性率(Mpa)は、1〜250Mpa、好ましくは、5〜200Mpaである。
(ロ)マルテンス硬度(l/mm)は、9.0〜100(l/mm)、好ましくは、9.0〜80(l/mm)である。
(ハ)TMA(針侵入温度(℃))は、60〜200℃、好ましくは70〜200℃である。
(ニ)曇度(Haze)(%)は、0〜25%、好ましくは、0〜20%である。
【0109】
<シンジオタクティックポリプロピレン組成物の製造>
上記のようなシンジオタクティックポリプロピレン組成物は、各成分を上記のような範囲で種々公知の方法、たとえばヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラブレンダー等で混合する方法、あるいは混合後、一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練後、造粒あるいは粉砕する方法を採用して製造することができる。
【0110】
このシンジオタクティックポリプロピレン組成物には、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、顔料、染料、発錆防止剤、下記に詳述する「その他の共重合体」(エラストマー)等を、本発明の目的を損わない範囲で配合することもできる。
【0111】
<その他の共重合体>
本発明に係るシンジオタクティックポリプロピレン組成物には、必要により「その他の共重合体」(エラストマー、エラストマー用樹脂)が含まれていてもよい。
【0112】
このような「その他の共重合体」としては、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(A)、水添されていてもよい芳香族炭化水素系ブロック共重合体(B)、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)、エチレン・スチレン系共重合体(D)、エチレン・ジエン共重合体(E)、およびエチレン・トリエン共重合体(F)等が挙げられる。これらの共重合体は、1種または2種以上組み合わせて用いられる。
【0113】
これらの「その他の共重合体」は、本発明のシンジオタクティックポリプロピレン組成物中に含まれるシンジオタクティックポリプロピレン(i)と非晶性α−オレフィン系共重合体(ii)との合計100重量部に対して、通常0〜40重量部の量で含まれていてもよい。またこれらの「その他の共重合体」は、シンジオタクティックポリプロピレン組成物中に、合計で通常0〜30重量%の量で含まれていてもよい。その他の共重合体を上記のような量で用いると、剛性および硬度、透明性、耐衝撃性のバランスに優れた成形体を製造可能な組成物が得られる。
【0114】
[エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(A)]
本発明で用いられるエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(A)としては、密度が0.860g/cm3 以上0.895g/cm3 未満、好ましくは0.860〜0.890g/cm3 であって、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,190℃、荷重2.16kg)が0.5〜30g/10分、好ましくは1〜20g/10分である軟質エチレン・α−オレフィン共重合体が望ましい。
【0115】
エチレンと共重合させるα−オレフィンは、炭素原子数3〜20のα−オレフィンであり、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-ヘキサドデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、4-メチル-1- ペンテンなどが挙げられる。これらの内でも、炭素原子数3〜10のα−オレフィンが好ましい。これらのα−オレフィンは、単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いられる。
【0116】
エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(A)は、エチレンから導かれる単位を60〜90モル%の量で、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから導かれる単位を10〜40モル%の量で含有していることが望ましい。
【0117】
また、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(A)は、これらの単位の他に、本発明の目的を損なわない範囲で、他の重合性モノマーから導かれる単位を含有していてもよい。
【0118】
このような他の重合性モノマーとしては、たとえば
スチレン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナン等のビニル化合物類;
酢酸ビニル等のビニルエステル類;
無水マレイン酸等の不飽和有機酸またはその誘導体;
ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン等の共役ジエン類;
1,4-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、2-メチル-1,5- ヘキサジエン、6-メチル-1,5- ヘプタジエン、7-メチル-1,6- オクタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5-ビニルノルボルネン、5-エチリデン-2- ノルボルネン、5-メチレン-2- ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2- ノルボルネン、6-クロロメチル-5- イソプロペンル-2- ノルボルネン、2,3-ジイソプロピリデン-5- ノルボルネン、2-エチリデン-3- イソプロピリデン-5- ノルボルネン、2-プロペニル-2,2- ノルボルナジエン等の非共役ポリエン類などが挙げられる。
【0119】
エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(A)は、このような他の重合性モノマーから導かれる単位を、10モル%以下、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下の量で含有していてもよい。
【0120】
エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(A)としては、具体的には、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・1-ブテンランダム共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテンランダム共重合体、エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネンランダム共重合体、エチレン・1-ヘキセンランダム共重合体、エチレン・1-オクテンランダム共重合体などが挙げられる。これらのうちでも、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・1-ブテンランダム共重合体、エチレン・1-ヘキセンランダム共重合体、エチレン・1-オクテンランダム共重合体などが特に好ましく用いられる。これらの共重合体は、2種以上併用してもよい。
【0121】
また、本発明で用いられるエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(A)は、X線回折法により測定される結晶化度が通常40%以下、好ましくは0〜39%、さらに好ましくは0〜35%である。
【0122】
上記のようなエチレン・α−オレフィンランダム共重合体は、バナジウム系触媒、チタン系触媒またはメタロセン系触媒などを用いる従来公知の方法により製造することができる。
【0123】
エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(A)は、シンジオタクティックポリプロピレン組成物中に、通常0〜40重量%、好ましくは0〜35重量%の量で含まれていてもよい。エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(A)を上記のような量で用いると、剛性および硬度、透明性、耐衝撃性のバランスに優れた成形体を調製できる組成物が得られる。
【0124】
[水添されていてもよい芳香族炭化水素系ブロック共重合体(B)]
本発明でエラストマーとして用いられる、水添されていてもよい芳香族炭化水素系ブロック共重合体(B)は、芳香族ビニルから導かれるブロック重合単位(X)と、共役ジエンから導かれるブロック重合単位(Y)とからなる芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B1)およびその水添物(B2)である。
【0125】
このような構成の芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B1)の形態は、たとえばX(YX)n または(XY)n [nは1以上の整数]で示される。
このうち、X(YX)n 、特にX−Y−Xの形態をとるブロック共重合体が好ましく、具体的には、ポリスチレン−ポリブタジエン(またはポリイソプレンまたはポリイソプレン・ブタジエン)−ポリスチレンの形態をとるスチレン系ブロック共重合体が好ましい。
【0126】
このようなスチレン系ブロック共重合体では、ハードセグメントである芳香族ビニルブロック重合単位(X)が、共役ジエンブロック重合単位(Y)の橋かけ点として存在し物理架橋(ドメイン)を形成している。この芳香族ビニルブロック重合単位(X)間に存在する共役ジエンブロック重合単位(Y)は、ソフトセグメントであってゴム弾性を有している。
【0127】
上記のようなブロック重合単位(X)を形成する芳香族ビニルとしては、具体的には、スチレンのほか、α−メチルスチレン、3-メチルスチレン、p-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-ドデシルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、2-エチル-4- ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレンなどのスチレン誘導体が挙げられる。これらのうちでは、スチレンが好ましい。
【0128】
また、ブロック重合単位(Y)を形成する共役ジエンとしては、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエンおよびこれらの組合せなどが挙げられる。これらのうち、ブタジエンまたはイソプレンまたはブタジエンとイソプレンとの組合せが好ましい。
【0129】
この共役ジエンブロック重合単位(Y)がブタジエンとイソプレンとから導かれる場合には、イソプレンから導かれる単位を40モル%以上の量で含有していることが好ましい。
【0130】
また、このようにブタジエン・イソプレン共重合単位からなる共役ジエンブロック重合単位(Y)は、ブタジエンとイソプレンとのランダム共重合単位、ブロック共重合単位またはテーパード共重合単位のいずれであってもよい。
【0131】
上記のような芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B1)は、芳香族ビニルブロック重合単位(X)含有量が22重量%以下であり、好ましくは5〜22重量%である。この芳香族ビニル重合単位の含有量は、赤外線分光法、NMR分光法などの常法によって測定することができる。
【0132】
また、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B1)のメルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,200℃、荷重2.16kg)は、通常5g/10分以上であり、好ましくは5〜100g/10分である。
【0133】
上記のような芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B1)の製造方法としては、種々の方法が挙げられ、例えば、
(1) n-ブチルリチウムなどのアルキルリチウム化合物を開始剤として、芳香族ビニル化合物、次いで共役ジエンを逐次重合させる方法、
(2) 芳香族ビニル化合物次いで共役ジエンを重合させ、これをカップリング剤によりカップリングさせる方法、
(3) リチウム化合物を開始剤として、共役ジエン、次いで芳香族ビニル化合物を逐次重合させる方法
などを挙げることができる。
【0134】
また、芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体の水添物(B2)は、上記のような芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体(B1)を公知の方法により水添することにより得ることができる。芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体の水添物(B2)は、通常、水添率が90%以上である。
【0135】
この水添率は、共役ジエンブロック重合単位(Y)中の炭素−炭素二重結合の全量を100%としたときの値である。
このような芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体の水添物(B2)としては、具体的には、スチレン・イソプレンブロック共重合体の水添物(SEP)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体の水添物(SEPS;ポリスチレン・ポリエチレン/プロピレン・ポリスチレンブロック共重合体)、スチレン・ブタジエンブロック共重合体の水添物(SEBS;ポリスチレン・ポリエチレン/ブチレン・ポリスチレンブロック共重合体)などが挙げられ、より具体的には、HYBRAR[クラレ(株)製]、クレイトン[シェル化学(株)製]、キャリフレックスTR[シェル化学(株)製]、ソルプレン[フィリップスペトロリファム社製]、ユーロプレンSOLT[アニッチ社製]、タフプレン[旭化成工業(株)製]、ソルプレン−T[日本エラストマー社製]、JSR−TR[日本合成ゴム(株)製]、電化STR[電気化学工業(株)製]、クインタック[日本ゼオン(株)製]、クレイトンG[シェル化学(株)製]、タフテック[旭化成工業(株)製](以上商品名)などが挙げられる。
【0136】
芳香族ビニル・共役ジエンブロック共重合体の水添物(B2)としては、これらのうちでもSEBS、SEPSが好ましく用いられる。
水添されていてもよい芳香族炭化水素系ブロック共重合体(B)は、シンジオタクティックポリプロピレン組成物中に、通常0〜30重量%、好ましくは0〜25重量%の量で含まれていてもよい。水添されていてもよい芳香族炭化水素系ブロック共重合体(B)を上記のような量で用いると、剛性および硬度、透明性、耐衝撃性のバランスに優れた成形体を調製できる組成物が得られる。
【0137】
<エチレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)>
本発明でエラストマーとして用いられるエチレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)は、
炭素原子数3〜10のオレフィンから誘導される構成単位0〜20モル%と、エチレンから誘導される構成単位100〜80モル%とからなる結晶性ポリエチレン部と、
炭素原子数2〜20のオレフィンから誘導される構成単位を2種以上含む、低結晶性共重合体部または非晶性共重合体部と
からなる。
【0138】
本発明では、エチレンから誘導される構成単位が30〜95モル%の量で含有され、炭素原子数3〜20のオレフィンから誘導される構成単位が70〜5モル%の量で含有されているエチレン・α−オレフィンブロック共重合体が好ましい。特にエチレンから誘導される構成単位が60〜90モル%の量で含有され、炭素原子数3〜20のオレフィンから誘導される構成単位が40〜10モル%の量で含有されているエチレン・α−オレフィンブロック共重合体が好ましい。
【0139】
ここで、炭素原子数3〜20のオレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1- ペンテン、3-メチル-1- ペンテン、1-オクテン、3-メチル-1- ブテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラドデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-エチル-2- ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2-エチル-1,4,5,8- ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a- オクタヒドロナフタレンなどが挙げられる。
【0140】
上記の炭素原子数3〜20のオレフィンまたはエチレンから誘導される構成単位は、2種以上含有されていてもよい。
また、本発明で用いられるエチレン・α−オレフィンブロック共重合体は、炭素原子数4〜20のジエン化合物から誘導される構成単位を5モル%以下の量で含有していてもよい。
【0141】
このようなジエン化合物としては、具体的には、1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,4-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、4-メチル-1,4- ヘキサジエン、5-メチル-1,4- ヘキサジエン、6-メチル-1,6- オクタジエン、7-メチル-1,6- オクタジエン、6-エチル-1,6- オクタジエン、6-プロピル-1,6- オクタジエン、6-ブチル-1,6- オクタジエン、6-メチル-1,6- ノナジエン、7-メチル-1,6- ノナジエン、6-エチル-1,6- ノナジエン、7-エチル-1,6- ノナジエン、6-メチル-1,6- デカジエン、7-メチル-1,6- デカジエン、6-メチル-1,6- ウンデカジエン、1,7-オクタジエン、1,9-デカジエン、イソプレン、ブタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエンなどが挙げられる。
【0142】
このようなエチレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)は、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,190℃、荷重2.16kg)が通常0.0001〜500g/10分、好ましくは0.0001〜300g/10分、さらに好ましくは0.0001〜200g/10分の範囲にあり、密度(ASTM D 1505)は、0.85〜0.90g/cm3 、好ましくは0.85〜0.89g/cm3 、さらに好ましくは0.86〜0.89g/cm3 であることが望ましい。
【0143】
この共重合体(C)における沸騰ヘプタン不溶成分のX線回折法により測定した結晶化度は、通常0〜30%、好ましくは0〜28%、さらに好ましくは0〜25%である。
【0144】
エチレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)の沸騰ヘプタン不溶成分は、以下のようにして調製される。すなわち、攪拌装置付1リットルのフラスコに、重合体試料3g、2,6-ジ-tert-ブチル-4- メチルフェノール20mg、n-デカン500mlを入れ、145℃の油浴上で加熱溶解させる。重合体試料が溶解した後、約8時間かけて室温まで冷却し、続いて23℃の水浴上で8時間保持する。析出した重合体(23℃デカン不溶成分)を含むn-デカン懸濁液をG−4(またはG−2)のグラスフィルターで濾過分離し、減圧乾燥した後、重合体1.5gを6時間以上ヘプタンを用いてソックスレー抽出して沸騰ヘプタン不溶成分を得る。
【0145】
結晶化度は、上記のようにして得られた沸騰ヘプタン不溶成分を試料として用い、次のようにして測定される。すなわち、試料を180℃の加圧成形機にて厚さ1mmの角板に成形した後、直ちに水冷して得たプレスシートを用い、理学電機(株)製ローターフレックス RU300測定装置を用いて測定することにより決定される(出力50kV、250mA)。この際の測定法としては、透過法を用い、またサンプルを回転させながら測定を行なう。
【0146】
本発明で用いられるエチレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)の沸騰ヘプタン不溶成分の密度は、通常0.86g/cm3 以上、好ましくは0.87g/cm3 以上である。
【0147】
また、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)の23℃n-デカン可溶成分量は、0.1〜99%、好ましくは0.5〜99%、さらに好ましくは1〜99%の範囲にある。
【0148】
本発明では、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体の23℃n-デカン可溶成分量は、次のようにして測定される。すなわち、攪拌装置付1リットルのフラスコに、重合体試料3g、2,6-ジ-tert-ブチル-4- メチルフェノール20mg、n-デカン500mlを入れ、145℃の油浴上で加熱溶解させる。重合体試料が溶解した後、約8時間かけて室温まで冷却し、続いて23℃の水浴上で8時間保持する。析出した重合体と、溶解ポリマーを含むn-デカン溶液とをG−4(またはG−2)のグラスフィルターで濾過分離する。このようにして得られた溶液を10mmHg、150℃の条件で加熱してn-デカン溶液に溶解していたポリマーを定量になるまで乾燥し、その重量を23℃デカン可溶成分量とし、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体の23℃n-デカン可溶成分量は、重合体試料の重量に対する百分率として算出する。
【0149】
このような本発明で用いられるエチレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)は、従来公知の方法により調製することができる。
エチレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)は、シンジオタクティックポリプロピレン組成物中に、通常0〜40重量%、好ましくは0〜35重量%の量で含まれていてもよい。エチレン・α−オレフィンブロック共重合体(C)を上記のような量で用いると、剛性および硬度、透明性、耐衝撃性のバランスに優れた成形体を調製できる組成物が得られる。
【0150】
<エチレン・スチレン系共重合体(D)>
本発明でエラストマーとして用いられるエチレン・スチレン系共重合体(D)は、エチレンとスチレンまたはその誘導体とのランダム共重合体である。
【0151】
上記エチレンと共重合させるスチレンまたはその誘導体としては、具体的には、スチレンの外、α−メチルスチレン、3-メチルスチレン、p-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-ドデシルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、2-エチル-4- ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレン等のスチレン誘導体が挙げられる。本発明では、スチレンが好ましい。
【0152】
エチレン・スチレン系共重合体(D)は、エチレンから導かれる単位を5〜99モル%の量で、スチレンおよび/またはスチレン誘導体から導かれる単位を1〜95モル%の量で含有していることが望ましい。エチレン・スチレン系共重合体(D)は、スチレンまたはその誘導体から導かれる単位を1種または2種以上有していてもよい。
【0153】
エチレン・スチレン系共重合体(D)は、密度が0.85〜1.02g/cm3 、好ましくは0.86〜1.02g/cm3 であり、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,190℃、荷重2.16kg)が0.001〜500g/10分、好ましくは0.001〜300g/10分であることがが望ましい。
【0154】
また、エチレン・スチレン系共重合体(D)のX線回折法により測定される結晶化度は、通常80%以下、好ましくは0〜75%、さらに好ましくは0〜70%である。
【0155】
上記のようなエチレン・スチレン系共重合体(D)は、従来公知の方法により調製することができる。
エチレン・スチレン系共重合体(D)は、シンジオタクティックポリプロピレン組成物中に、通常0〜40重量%、好ましくは0〜35重量%の量で含まれていてもよい。エチレン・スチレン系共重合体(D)を上記のような量で用いると、剛性および硬度、透明性、耐衝撃性のバランスに優れた成形体を調製できる組成物が得られる。
【0156】
<エチレン・ジエン共重合体(E)>
本発明でエラストマーとして用いられるエチレン・ジエン共重合体(E)は、エチレンとジエンとのランダム共重合体である。
【0157】
エチレンと共重合させるジエンとしては、具体的には、
ジシクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン等の非共役ジエン;
ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン;
が挙げられる。これらの内では、ブタジエン、イソプレンが好ましい。これらのジエンは、単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0158】
本発明で用いられるエチレン・ジエン共重合体(E)において、ジエンから導かれる構成単位の含有割合は、通常0.1〜30モル%、好ましくは0.1〜20モル%、さらに好ましくは0.5〜15モル%の範囲内にあることが望ましい。ヨウ素価は、通常1〜150、好ましくは1〜100、さらに好ましくは1〜50であることが望ましい。また、エチレン・ジエン共重合体(E)の135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]は、0.01〜10dl/g、好ましくは0.05〜10dl/g、さらに好ましくは0.1〜10dl/gの範囲内にあることが望ましい。このようなエチレン・ジエン共重合体(E)は、従来より公知の方法により調製することができる。
【0159】
エチレン・ジエン共重合体(E)は、シンジオタクティックポリプロピレン組成物中に、通常0〜40重量%、好ましくは0〜35重量%の量で含まれていてもよい。エチレン・ジエン共重合体(E)を上記のような量で用いると、剛性および硬度、透明性、耐衝撃性のバランスに優れた成形体を調製できる組成物が得られる。
【0160】
<エチレン・トリエン共重合体(F)>
本発明でエラストマーとして用いられるエチレン・トリエン共重合体(F)は、エチレンとトリエンとのランダム共重合体である。
【0161】
エチレンと共重合させるトリエンとしては、具体的には、
6,10- ジメチル-1,5,9- ウンデカトリエン、
4,8-ジメチル-1,4,8- デカトリエン、
5,9-ジメチル-1,4,8- デカトリエン、
6,9-ジメチル-1,5,8- デカトリエン、
6,8,9-トリメチル-1,5,8- デカトリエン、
6-エチル-10-メチル-1,5,9- ウンデカトリエン、
4-エチリデン-1,6- オクタジエン、
7-メチル-4- エチリデン-1,6- オクタジエン、
4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン(EMND)、
7-メチル-4- エチリデン-1,6- ノナジエン、
7-エチル-4- エチリデン-1,6- ノナジエン、
6,7-ジメチル-4- エチリデン-1,6- オクタジエン、
6,7-ジメチル-4- エチリデン-1,6- ノナジエン、
4-エチリデン-1,6- デカジエン、
7-メチル-4- エチリデン-1,6- デカジエン、
7-メチル-6- プロピル-4- エチリデン-1,6- オクタジエン、
4-エチリデン-1,7- ノナジエン、
8-メチル-4- エチリデン-1,7- ノナジエン、
4-エチリデン-1,7- ウンデカジエン等の非共役トリエン;
1,3,5- ヘキサトリエン等の共役トリエン;
などが挙げられる。これらのトリエンは、単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0162】
上記のようなトリエンは、たとえばEP0691354A1公報、WO96/20150号公報に記載されているような従来公知の方法によって調製することができる。
【0163】
本発明で用いられるエチレン・トリエン共重合体(F)において、トリエンから導かれる構成単位の含有割合は、通常0.1〜30モル%、好ましくは0.1〜20モル%、さらに好ましくは0.5〜15モル%の範囲内にあることが望ましい。ヨウ素価は、通常1〜200、好ましくは1〜100、さらに好ましくは1〜50であることが望ましい。
【0164】
また、エチレン・トリエン共重合体(F)の135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]は、0.01〜10dl/g、好ましくは0.05〜10dl/g、さらに好ましくは0.1〜10dl/gの範囲内にあることが望ましい。
【0165】
上記のようなエチレン・トリエン共重合体(F)は、従来公知の方法により調製することができる。
エチレン・トリエン共重合体(F)は、シンジオタクティックポリプロピレン組成物中に、通常0〜40重量%、好ましくは0〜35重量%の量で含まれていてもよい。エチレン・トリエン共重合体(F)を上記のような量で用いると、剛性および硬度、透明性、耐衝撃性のバランスに優れた成形体を調製できる組成物が得られる。
【0166】
<成形体>
上記のような本発明に係るシンジオタクティックポリプロピレン組成物は、従来公知のポリオレフィン用途に広く用いることができるが、特にポリオレフィン組成物をたとえばシート、未延伸または延伸フィルム、フィラメント、他の種々形状の成形体に成形して利用することができる。
【0167】
成形体としては具体的には、押出成形、射出成形、インフレーション成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、プレス成形、真空成形、カレンダー成形、発泡成形などの公知の熱成形方法により得られる成形体が挙げられる。
以下に数例挙げて成形体を説明する。
【0168】
本発明に係る成形体がたとえば押出成形体である場合、その形状および製品種類は特に限定されないが、たとえばシート、フィルム(未延伸)、パイプ、ホース、電線被覆、フィラメントなどが挙げられ、特にシート、フィルム、フィラメントなどが好ましい。
【0169】
シンジオタクティックポリプロピレン組成物を押出成形する際には、従来公知の押出装置および成形条件を採用することができ、たとえば単軸スクリュー押出機、混練押出機、ラム押出機、ギヤ押出機などを用いて、溶融したシンジオタクティックポリプロピレン組成物をTダイなどから押出すことによりシートまたはフィルム(未延伸)などに成形することができる。
【0170】
延伸フィルムは、上記のような押出シートまたは押出フィルム(未延伸)を、たとえばテンター法(縦横延伸、横縦延伸)、同時二軸延伸法、一軸延伸法などの公知の延伸方法により延伸して得ることができる。
【0171】
シートまたは未延伸フィルムを延伸する際の延伸倍率は、二軸延伸の場合には通常20〜70倍程度、また一軸延伸の場合には通常2〜10倍程度である。延伸によって、厚み5〜200μm程度の延伸フィルムを得ることが望ましい。
【0172】
また、フィルム状成形体として、インフレーションフィルムを製造することもできる。インフレーション成形時にはドローダウンを生じにくい。
上記のような本発明に係るシンジオタクティックポリプロピレン組成物からなるシートおよびフィルム成形体は、帯電しにくく、引張弾性率などの剛性、耐熱性、耐衝撃性、耐老化性、透明性、透視性、光沢、剛性、防湿性およびガスバリヤー性に優れており、包装用フィルムなどとして幅広く用いることができる。特に防湿性に優れるため、薬品の錠剤、カプセルなどの包装に用いられるプレススルーパック(press through pack)などに好適に用いられる。
【0173】
また、フィラメント成形体は、たとえば溶融したシンジオタクティックポリプロピレン組成物を、紡糸口金を通して押出すことにより製造することができる。
このようにして得られたフィラメントを、さらに延伸してもよい。この延伸は、フィラメントの少なくとも一軸方向が分子配向する程度に行なえばよく、通常5〜10倍程度の倍率で行なうことが望ましい。本発明に係るシンジオタクティックポリプロピレン組成物からなるフィラメントは帯電しにくく、また透明性、剛性、耐熱性および耐衝撃性に優れている。
【0174】
射出成形体は、従来公知の射出成形装置を用いて公知の条件を採用して、シンジオタクティックポリプロピレン組成物を種々の形状に射出成形して製造することができる。本発明に係るシンジオタクティックポリプロピレン組成物からなる射出成形体は帯電しにくく、透明性、剛性、耐熱性、耐衝撃性、表面光沢、耐薬品性、耐磨耗性などに優れており、自動車内装用トリム材、自動車用外装材、家電製品のハウジング、容器など幅広く用いることができる。
【0175】
ブロー成形体は、従来公知のブロー成形装置を用いて公知の条件を採用して、シンジオタクティックポリプロピレン組成物をブロー成形することにより製造することができる。
【0176】
たとえば押出ブロー成形では、上記シンジオタクティックポリプロピレン組成物を樹脂温度100℃〜300℃の溶融状態でダイより押出してチューブ状パリソンを形成し、次いでパリソンを所望形状の金型中に保持した後空気を吹き込み、樹脂温度130℃〜300℃で金型に着装することにより中空成形体を製造することができる。延伸(ブロー)倍率は、横方向に1.5〜5倍程度であることが望ましい。
【0177】
また、射出ブロー成形では、上記シンジオタクティックポリプロピレン組成物を樹脂温度100℃〜300℃でパリソン金型に射出してパリソンを成形し、次いでパリソンを所望形状の金型中に保持した後空気を吹き込み、樹脂温度120℃〜300℃で金型に着装することにより中空成形体を製造することができる。
延伸(ブロー)倍率は、縦方向に1.1〜1.8倍、横方向に1.3〜2.5倍であるであることが望ましい。
【0178】
本発明に係るシンジオタクティックポリプロピレン組成物からなるブロー成形体は、透明性、剛性、耐熱性および耐衝撃性に優れるとともに防湿性にも優れている。
【0179】
プレス成形体としてはモールドスタンピング成形体が挙げられ、たとえば基材と表皮材とを同時にプレス成形して両者を複合一体化成形(モールドスタンピング成形)する際の基材を本発明に係るシンジオタクティックポリプロピレン組成物で形成することができる。
【0180】
このようなモールドスタンピング成形体としては、具体的には、ドアートリム、リアーパッケージトリム、シートバックガーニッシュ、インストルメントパネルなどの自動車用内装材が挙げられる。
【0181】
本発明に係るシンジオタクティックポリプロピレン組成物は、透明性、高剛性を示し、たとえばエラストマー成分を含有していても充分に高い剛性を示すので、種々の高剛性用途に用いることができる。たとえば特に自動車内外装材、家電のハウジング、各種容器などの用途に好適に利用することができる。
【0182】
本発明に係るシンジオタクティックポリプロピレン組成物からなるプレス成形体は帯電しにくく、剛性、耐熱性、透明性、耐衝撃性、耐老化性、表面光沢、耐薬品性、耐磨耗性などに優れている。
本発明のシンジオタクティックポリプロピレン組成物は、主に下記の用途に使用できる。
(1)フィルム:多層延伸フィルム、多層未延伸フィルム、ラミネートフィルム、シュリンクフィルム、ストレッチフィルム、ラップフィルム、プロテクトフィルム、レトルトフィルム、多孔性フィルム、バリアーフィルム、金属蒸着フィルム、農業用フィルム
(2)シートおよびシート成形品:壁紙、発泡シート、電線被覆材、ブリスター包装、トレー、文具、食品容器、玩具、化粧品容器、医療器具、洗剤容器、床材、クッションフロアー、化粧シート、靴底
(3)ブロー成形品:ボトル
(4)押出成形品:チューブ、電線被覆材、ケーブル被覆材、パイプ、ガスケット
(5)ファイバー:繊維、フラットヤーン
(6)不織布および不織布製品:不織布、フィルター
(7)射出成形品:自動車内装表皮材、自動車外装材、日用雑貨品、家電製品、キャップ、コンテナ、パレット
(8)改質材:粘接着剤、潤滑油添加剤、ホットメルト接着剤、トナー離型剤、顔料分散剤、アスファルト改質材
(9)その他:シーラント、真空成形体、パウダースラッシュ体
【0183】
【発明の効果】
本発明によれば、透明性、耐衝撃性、柔軟性、耐熱性、耐傷付き性などにバランス良く優れた成形物を得ることができるポリプロピレン組成物が得られる。
【0184】
【実施例】
以下、本発明について実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はかかる実施例により何等限定されるものではない。
【0185】
以下、物性試験条件等を記す。
[引張り試験]
1.引張り弾性率;
JIS K 6301に準拠して、JIS3号ダンベルを用い、スパン間:30mm、引張り速度:30mm/分で23℃にて測定した。
2.マルテンス硬度(1/mm);
東京衝機製のマルテンス硬度引掻硬度試験機を用いて、厚さ3mmの試験片に引っ掻き圧子20gの荷重を加え試料を引き掻いた時に生じる溝幅を測定し、その逆数を算出した。
3.針侵入温度(℃);
JIS K 7196に準拠し、厚さ2mmの試験片を用いて、昇温速度5℃/分
で1.8mmφの平面圧子に2Kg/cm2の圧力をかけ、TMA曲線より、針侵入温度(℃)を求めた。
6.曇度(Haze)(%);
厚さ1mmの試験片を用いて、日本電色工業(株)製のデジタル濁度計「NDH−20D」にて測定した。
【0186】
[融点(Tm)およびガラス転移温度(Tg)]
DSCの吸熱曲線を求め、最大ピーク位置の温度をTmとする。ベースラインが変曲する際、初期ベースラインと変曲線との交点をTgとする。ASTM―D3417―75、ASTM―D3418−75。
【0187】
測定は、試料をアルミパンに詰め、100℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持したのち、100℃/分で−150℃まで降温し、ついで10℃/分で昇温する際の吸熱曲線より求めた。
【0188】
なおDSC測定時の吸熱ピークから、単位重さ当たりの融解熱量を求め、これをポリエチレンの結晶の融解熱量70cal/gで除して求めることにより、結晶化度(%)を求めることができる。
【0189】
[極限粘度[η]]
135℃、デカリン中で測定した。
[Mw/Mn]
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用い、オルトジクロロベンゼン溶媒で、140℃で測定した。
【0190】
【合成例1】
(結晶性プロピレン・1−ブテン共重合体の合成)
減圧乾燥および窒素置換してある1.5リットルのオートクレーブに、常温でヘプタンを675ml加え、続いてトリイソブチルアルミニウム(以下、TIBAと略す。)の1.0ミリモル/mlトルエン溶液をアルミニウム原子に換算してその量が1.0ミリモルとなるように1.0ml加え、撹拌下に、1−ブテンを30g挿入し、昇温を開始し30℃に到達させた。その後、系内をプロピレンで6.0kg/cm2Gとなるように加圧し、公知の方法で合成した公知の方法で合成したジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロリドのトルエン溶液(0.01mM/ml)を0.75ml、メチルアルミノキサンのトルエン溶液(1.0mM/ml)を4.5ml加え、プロピレンと1−ブテンの共重合を開始させた。この時の触媒濃度は、全系に対してジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロリドが0.01ミリモル/リットル、メチルアルミノキサンが6.0ミリモル/リットルであった。
【0191】
重合中、プロピレンを連続的に供給することにより、内圧を6.0kg/cm2Gに保持した。重合を開始して15分後、重合反応をメチルアルコールを添加することにより停止した。脱圧後、ポリマー溶液を取り出し、このポリマー溶液に対して、「水1リットルに対して濃塩酸5mlを添加した水溶液」を1:1の割合で用いてこのポリマー溶液を洗浄し、触媒残渣を水相に移行させた。この触媒混合溶液を静置したのち、水相を分離除去しさらに蒸留水で2回洗浄し、重合液相を油水分離した。次いで、油水分離された重合液相を3倍量のアセトンと強撹拌下に接触させ、重合体を析出させたのち、アセトンで十分に洗浄し固体部(共重合体)を濾過により採取した。窒素流通下、130℃、350mmHgで12時間乾燥した。以上のようにして得られたプロピレン・1−ブテン共重合体の収量は75gであり、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]は2.7dl/gであり、ガラス転移温度Tgは−2℃であり、融解熱量は15J/gであり、1−ブテン含量は11モルであり、GPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn)は2.4であった。
【0192】
【合成例2】
(結晶性プロピレン・1−ブテン共重合体の合成)
合成例1において、触媒を公知の方法で合成したrac-ジメチルシリレン-ビス(2-メチル-4-フェニル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド0.1mL、メチルアルミノキサンを0.6mL、ブテン量を50g、重合温度を60℃に変えた以外は、合成例1と同様な操作を行った。得られたプロピレン・1−ブテン共重合体の収量は、43gであり、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]は、2.1dl/gであり、ガラス転移温度Tgは−10℃であり、融解熱量は40J/gであり、1−ブテン含量は23モル%であり、GPCによる分子量分布は2.1であった。
【0193】
【合成例3】
(シンジオタクティックポリプロピレンの合成)
特開平2−274763号公報に記載の方法に従い、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライドおよびメチルアルミノキサンからなる触媒を用いて、水素の存在下でプロピレンの塊状重合法によって得られたシンジオタクティックポリプロピレンのメルトフローレートが、4.4g/10分、GPCによる分子量分布は2.3、13C−NMRによって測定されたシンジオタクティックペンタッド分率(r.r.r.r)が0.823、示差走査熱量分析で測定したTmが127℃、Tc(結晶化温度)が57℃であった。
【0194】
【実施例1】
上記合成例3で得られたシンジオタクティックホモポリプロピレン10重量部と、合成例1で得られた結晶性プロピレン・1−ブテン共重合体90重量部とを混練してシンジオタックティックポリプロピレン組成物を得た。
【0195】
この組成物の引張り弾性率は230MPaであり、マルテンス硬度は13.51/mm)であり、針侵入温度は107℃であり、Hazeは22.8%であった。結果を併せて表1に示す。
【0196】
【実施例2】
合成例3で得られたシンジオタクティックホモポリプロピレン10重量部と、合成例2で得られた結晶性プロピレン・1−ブテン共重合体90重量部とを混練してシンジオタックティックポリプロピレン組成物を得た。
【0197】
この組成物の引張り弾性率は240MPaであり、マルテンス硬度は11.7(1/mm)であり、針侵入温度は106℃であり、Hazeは23.4%であった。結果を併せて表1に示す。
【0198】
【比較例1】
実施例2において、合成例3で得られたシンジオタクティックポリプロピレンから三井化学(株)製のアイソタクティックポリプロピレン(B200)に変えた以外は、実施例2と同様にしてアイソタクティックポリプロピレン組成物を得た。
【0199】
この組成物の引張り弾性率は455MPaであり、マルテンス硬度は11.5(1/mm)であり、針侵入温度は151℃であり、Hazeは34%であった。 結果を併せて表1に示す。
【0200】
【表1】
Claims (4)
- (i)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.1〜50g/10分であるシンジオタクティックポリプロピレンと、
(ii)プロピレン成分単位を50〜99モル%、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の成分単位(A)を1〜50モル%の量で含む結晶性プロピレン・α−オレフィン系共重合体(該共重合体(ii)中の全成分単位量を100モル%とする。)とを含み、
上記(i)と上記共重合体(ii)との重量比{(i)/(ii)}が95/5〜5/95であり、上記共重合体(ii)は示差走査型熱量計(DSC)により測定した融解熱量が、0.7J/g以上であり、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.01〜10dl/gの範囲にあり、GPCによる分子量分布が4以下であり、ガラス転移温度(Tg)が20℃以下であることを特徴とする軟質透明性シンジオタクティックポリプロピレン組成物。 - 上記シンジオタクティックポリプロピレン組成物のASTMD1003に準拠して測定した曇度(Hase)が、25%以下であり、JIS K 6301に準拠して測定した引張り弾性率(YM)が、250MPa以下であることを特徴とする請求項1記載の軟質透明性シンジオタクティックポリプロピレン組成物。
- 上記(i)シンジオタクティックポリプロピレンの13C-NMRで測定されるシンジオタクティックペンタッド分率(rrrr)が0.5以上であることを特徴とする請求項1または2記載の軟質透明性シンジオタクティックポリプロピレン組成物。
- 上記結晶性プロピレン・α−オレフィン系共重合体(ii)が、プロピレン成分単位を50〜99モル%、1−ブテン成分単位または1−オクテン成分単位を1〜50モル%の量で含む共重合体(該共重合体(ii)中の全成分単位量を100モル%とする。)であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の軟質透明性シンジオタクティックポリプロピレン組成物。
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